<射撃ニュース12月>

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(ペットのイノシシ逃走、男女3人襲われ重軽傷:香川)
ペットとして飼っていたイノシシが逃げ、男女3人を襲い重軽傷を負わせた事件で、香川県丸亀署は14日、イノシシの飼い主である同県丸亀市の夫婦を、過失傷害容疑で書類送検した。夫婦は、逃げるとは思っていなかったが管理が不十分だったと容疑を認めている。逃げたのは体長約1・5メートル、体重約80キロの雄のイノシシ。6月5日の夕方、夫婦の自宅の庭にあったおりから逃げ出し、翌6日の朝に40〜80代の男女3人を襲い、重軽傷を負わせた。会社員(58)と妻(60)の夫婦は、約5年前に知人からイノシシを譲り受け、ペットとして育てていたという。逃げたイノシシは現在も見つかっていないが、DNA鑑定で夫婦が飼っていたイノシシだと分かった。
(パトカーが動き止め電気ショックでイノシシ捕獲:石川)
13日昼過ぎ、石川県川北町でイノシシの成獣が見つかり、同町から直線距離で約3・5キロ離れた白山市内まで逃走した後、警察や市役所職員らに捕獲された。けが人はなかった。石川県警寺井署と白山署の発表によると、同日午後0時40分頃、川北町田子島の田子島神社近くで通行人の男性がイノシシ1頭を目撃し、110番した。両署員や白山市役所の職員など計25人が捜索し、約2時間後、現場から約3・5キロ離れた同市向島町の農道でイノシシを発見。寺井署のパトカー2台が後方からぶつかって動きを止め、白山市役所職員が有害鳥獣用の駆除装置で電気ショックを与え、捕獲した。イノシシは体長約1メートル50、体重約100キロの雄。同町の壱ツ屋公民館や同市のサン・スポーツランド事務所のガラスドアを破り、民家の敷地に入り込んで踏み荒らすなどの被害が出た。
(サル、7件連続襲撃事件:大阪)
12日午前9時から午後5時ごろまで断続的に、大阪府泉南市幡代周辺で50~80代の女性が野生の猿におんぶされたり、かまれたりする被害があった。計7件の“襲撃事件”が発生しており、泉南署は警戒を呼びかけている。午前9時ごろに、69歳女性の背中にサルが飛び乗り、午後3時25分ごろには73歳女性の背中におんぶした。その後、サルは徐々に凶暴化。同45分から同4時半ごろまで67歳、77歳、59歳女性の足や尻をかんだりした。最後に目撃されたのは同52分ごろ。82歳女性が洗濯物を干している最中に背中に乗り、女性は右耳上部を負傷。サルは逃げたという。11月にはこの地域に出没し、住民らが負傷。泉南市はわなを仕掛けているが、捕獲されていない。近くには竹やぶがあり、そこに生息しているとみられる。
(規制区域でシカ駆除へ:北海道)
道は今冬、エゾシカの越冬地となっている宗谷西海岸の鳥獣保護区や国立公園でのシカ駆除モデル事業を初めて行う。国や道の規制などにより、市町村単独での駆除が難しい地域のため、許可手続きから安全な駆除方法、処理の仕方までを紹介した捕獲マニュアルを作成し、積極的に駆除してもらう狙いだ。やぐらの上から狙い撃つ新手法も試す予定で、地元の自治体関係者は期待している。道によると、モデル事業の対象区域は道道稚内天塩線沿いの稚咲内地区やサロベツ原野周辺などで、毎冬約500頭のシカが越冬するという。ただ、この周辺には道の鳥獣保護区や国立公園、国有林も多く、駆除には道や国への許可手続きが必要だ。また、近くの道道周辺は平たんな地形で流れ弾の危険性もあり、「市町村単独では駆除しにくい場所」(エゾシカ対策課)といわれてきた。事業には北海道猟友会、エゾシカ食肉事業協同組合などが協力。対象区域に高さ約3メートルのやぐらを数カ所設置し、餌で誘いこんだシカを上から銃で撃つ新しい手法のほか、ネット柵を張り、餌でシカを呼び込む「囲いわな」も活用する。捕獲したシカは同組合の協力で食肉やペットフードに加工する。来年2月ごろまで駆除を行い、許可手続きから食肉加工までの流れを記したマニュアル冊子を3月までに作成。各自治体に配布するなどして規制区域内での駆除拡大を目指す。現在、許可手続き中で、準備でき次第、駆除を開始する。豊富町によると、サロベツ原野に生息するシカの群れが牧草や家畜用飼料を食い荒らす被害が毎年出ており、町は新しい手法による効果を期待する。道エゾシカ対策課は「マニュアルを作ることで、規制区域での駆除に取り組む自治体を増やしたい」としている。
(エゾシカ捕獲、道が参入:北海道)
北海道が近く、エゾシカの捕獲に本格的に乗り出す。国立公園など規制区域があり、市町村では捕獲が困難な地域で、道が捕獲に乗り出すことで手法の確立を目指す。初年度は浜中町の霧多布地域など5地域で実施し、許可手続きから食肉利用までの捕獲マニュアルを作成する。野生生物の増加で、農林水産被害が全国で深刻化している。生態系にも悪影響がでているため5月に鳥獣保護法が改正され、シカとイノシシは都道府県が捕獲事業を実施できるようになった。道がこの制度を活用するのは初めて。実施は霧多布のほか襟裳岬・目黒(えりも町)▽宗谷沿岸(稚内市〜豊富町)▽ワッカ(北見市)▽糠平(上士幌町)−−の各地域。いずれも国立公園や鳥獣保護区などが含まれ、通常はエゾシカの捕獲が規制されている。希少猛きん類の生息地や観光地などがあり、猟銃による捕獲が難しい地域もある。今年度の捕獲は、北海道猟友会とコンサルティング会社などの協力で実施。シカを猟銃の撃ち手に追い込む「巻き狩り」▽警戒心の高いシカを作らないよう群れ全体を捕獲する「シャープシューティング」▽大型の壁を設置してエサで誘い込む「囲いわな」−−の3手法を、地域の状況に応じて使い分ける。捕獲したエゾシカは食肉やペットフードなどに利用する。道内の生息数は、2014年度に推定約48万頭(データが少ない渡島・檜山・後志地域を除く)。道は17年3月末までに約38万頭に減らす目標で、道エゾシカ対策課は「今はいかに減らしていくかという時期だ。規制が厳しい区域での捕獲体制づくりや実績の蓄積で、被害防止に取り組む市町村を支援できるようにしたい」としている。
(米大統領、銃規制強化へ決意:アメリカ)
米コネティカット州の小学校で児童ら26人が死亡した銃撃事件から3年を迎えた14日、オバマ大統領は銃規制の強化について、フェイスブックに「私は諦めない」と書き込み、残り1年余りの任期中に規制をできる限り前進させる決意を示した。大統領は「3年たったが、連邦議会は再発防止に向けて何もしていない。犠牲者の家族にどう伝えればいいのか」と自問。「(2日の)カリフォルニア州の銃乱射事件の後でさえ、テロ容疑者による武器購入を難しくするのを拒否している」と共和党や業界団体を批判した。
(カラス大群、県庁に襲来:長野)
長野市の中心部で11月中旬頃からカラスが急増している。冬を越そうとする群れとみられ、長野県庁のヒマラヤスギ並木をねぐらに、半径250メートルのエリアに出没。その数は数百羽に上る。同市市街地でのカラスの急増は今年が初めてで、道路や車がフンで汚される被害に苦情も寄せられているが、長野市は有効な対策を打ち出せていない。今月7日、午後4時過ぎ。県庁周辺の市街地上空に、カラスが群れをなして集まりだした。その数、ざっと200羽以上。午後5時を過ぎた頃には、ねぐらとしている県庁駐車場の高さ約10メートルのヒマラヤスギの並木に移動し「カーカー」と低い鳴き声を響かせ始めた。時折、羽音やフンが地面に落ちる音も聞こえ、辺りにとめた車のフロントガラスとボンネットには、カラスの白いフンがびっしりこびりついていた。地元の同市県町地区の最上正彦区長(72)は「フンで道路が汚されるだけでなく、町内のごみ集積所で生ごみが荒らされる被害も出ている。街が汚くなってしまった」と困り顔だ。同市ではこれまで、街路樹などに集まるムクドリによるフンなどの被害が悩みの種だった。群れが集まる同市上千歳町の樹木の剪定せんていのほか、爆竹やロケット花火で追い払うといった対策を講じてきた。だが、今秋になってムクドリはほぼ姿を見せなくなり、代わりに現れたのが、カラスだった。カラスの生態に詳しい宇都宮大の杉田昭栄教授(動物生態学)によると、市街地はエサとなる生ごみの集積所が多い上、ねぐらとなる高い木があるため、カラスが冬を越す絶好の場所になりやすいという。「体が大きく強いカラスが市街地からムクドリを追い出し、すみ着いた可能性がある」と、杉田教授はみている。長野市では、ごみ集積所へのカラス対策として防護ネットの購入費を一部補助している。今回、市中心部の自治会に対し、補助制度の利用についてあらためて周知したが、担当者は「カラス対策に何が有効なのか検討中」と話す。一方、ねぐらとなっている杉並木を管理する県は「枝の剪定などは考えていない」としている。カラスの急増に悩まされているのは長野市だけではない。松本市では約5年前から、夕方に約4000羽のカラスが市内に集まるようになり、フンによる被害に頭を抱えている。東御市では特産の巨峰を育てるブドウ農家から「実がカラスについばまれ、売り物にならない」という苦情が複数寄せられているという。杉田教授は「カラスをねぐらから追い払うのは難しいが、周辺の建物にワイヤを張るなどすれば対策になる」と話している。
(柵とカメラで獣害減:岐阜)
野生の有害獣による農作物被害を減らすため、有害獣の集落への侵入防止と捕獲を一体的に行う県のモデル事業が十一日、関ケ原町の大高地区で始まった。初日は住民と県職員など計三十人が参加して、侵入防止柵の設置方法を教わった。山地と集落が隣接する中山間地域特有の地形をもつ大高地区。二〇一三年のシカ、イノシシ、サルによる農作物被害額は、地区だけで六十一万円にもなり、深刻な状況だ。こうした実態を受け、県西濃農林事務所が同地区をモデル地区に選定。侵入防止柵を設置した上で、自動撮影カメラを設置して動物の行動パターンを探り、地元の猟友会と協力して捕獲する。この日は侵入防止柵製造会社「北原電牧」(北海道)の社員を招き、設置の指導を受けた。住民らは「下に隙間があるとイノシシが突き破るので、隙間はなるべく狭く」などと指示を受け、地面に穴を開けて金属棒を埋め込み、フェンス状の門扉を取り付けていった。年内に集落北側の約七百四十メートルにわたって柵を付ける予定。高木篤一(とくいち)自治会長(67)は「去年はクマの被害もあった。集落全体を囲む柵には、人的被害を防ぐ意味でも期待している」と話した。県は来年一月、柵付近にカメラ四台を設置する。二月には地区住民に観察結果を報告し、捕獲の方法を考える検討会を開く。
(サル出没情報、メールで配信:新潟)
新発田市は来年度から、山沿い地域で農作物被害の原因となっているニホンザルの出没場所を予想するメールマガジンの配信を本格的に始める。今年10~11月に川東地区周辺に生息するサル4群の行動について、試験的に配信し好評だったことから、市内に生息するサル全16群に対象を拡大する。出没の可能性が高い場所を住民に事前に知らせて警戒してもらい、被害の減少を目指す。サルに取り付けた発信機の電波で位置情報を伝えるとともに、目視で群れの動きを予測する。配信期間は6~11月で回数は1日1回。携帯電話やパソコンなどで受信する。当日午後~夕方の位置情報により、翌日の出没位置を予測し、「今日→広域農道沿いの○○集落入り口付近で3頭目視」「明日→○○堤方向へ移動」などと配信する予定だ。市によると11月末現在、市内には約650匹のサルが生息している。市では2002年度からサルの追跡調査による行動範囲の把握を開始。各群には電波発信機を首に付けたメスが1匹いる。毎年6~11月、市職員らが現地近くで電波を拾うとともに目視でもサルを確認し記録している。今年は前年度に蓄積した位置情報から各群の行動範囲とともに行動パターンも分析し、「たまり場」や「集落をのぞく場所」など各群が特徴的な行動を取る場所を把握した。試験的に配信したメルマガは川東地区の農家ら約15人が受け取った。出没が予想されれば、早朝から畑に人が立って警戒するなど対策を取ることができる。メルマガに登録した倉嶋静雄さん(64)は「時季によってサルが狙う作物は分かる。前日に予測があれば大いに役立つ」と話す。市によると、サルによる市内の農作物被害は14年度で約724万円。銃器による追い払いや侵入を防止する電気柵の設置などを受け、ここ数年は減少傾向にある。市農林整備課は「対策を複合的に取ることが重要だ。被害額ゼロを目指して取り組む」と話している。
(3日連続大イノシシ捕獲:千葉)
大多喜町老川地区の小林栄さん(82)が、体長約130センチ、体重約85キロの大イノシシを3日連続で捕まえた。箱わな猟を約20年続け、年間100頭前後を捕獲する小林さんは「1度に10匹捕らえることはあったが、大物が続くのは珍しい」と顔をほころばせた。小林さんは狩猟歴約60年のベテラン。箱わなは縦横100センチ、奥行き200センチで、手作りの金属製。米ぬかをベースにした餌でおびき寄せるという。11月中旬、イノシシの足跡と長年の経験を頼りに、自宅周辺の山中に15カ所ほど仕掛けた。12月初旬に見回ると、ほぼ同じ大きさのイノシシがそれぞれ別の場所に連日掛かっていた。一般的なサイズの体長70~80センチ、体重30~40キロをはるかに超えており、親戚の薗田晃さん(73)と一緒に市原市内の薗田さん方まで運搬して解体した。「脂ののりが良くて最高」と小林さん。肉は近所の人にお裾分けするという。老川地区では4~5年前からイノシシなどに田畑を荒らされる被害が続出しており、地域の有志13人が害獣を駆除する団体「養老渓谷ワナ研究会」(米本郁徳会長)を立ち上げた。小林さんの指導の下、狩猟免許の取得や捕獲技術の向上を目指す。小倉慶二郎副会長(66)は、10アールの田んぼで丹精込めて育てた稲を食い荒らされた経験があるという。電気柵を設置しても百パーセント防ぐことはできず、草刈りなど維持管理も必要。行政に害獣駆除を要望しても改善しなかったといい、「自分たちでやれることはやろう」と決意した。「捕獲する数より、生まれる数が多い」と頭を痛める小倉さん。まずは個体数減を目標としており、「肉も有効活用できれば」と意気込んでいる。
(ビームライフル射撃体験会:茨城)
2019年の茨城国体の正式競技となっているビームライフル射撃を小中学生に挑戦してもらう体験会が12日、桜川市真壁町古城の市真壁体育館で開かれ、参加者が熱心に射撃に取り組んだ。ビームライフル射撃は可視光線銃で、定められた時間内に標的を撃ち点数を競う。安全に射撃を楽しめるライフル射撃の入門編といえる。体験会は選手の発掘・育成と競技のPRが目的。「この中から選手として活躍する子どもたちが出てもらえれば」と主催の県教委担当者。体験をした真壁小5年の山中光我(こうが)君(11)は「初めてだったけどとても楽しかった。いい得点が出るとうれしい」と話していた。体験会は来年1月にも同市内で開かれる。
(富士山麓、動物交通死続く)
静岡・山梨両県の富士山麓(さんろく)で11月までの約1年半の間、野生動物の交通事故死が、確認できただけで177件起きていたことが、山梨県富士河口湖町の環境保全団体「富士山アウトドアミュージアム」の調査でわかった。両県とも「動物注意」の標識があるにもかかわらず、事故が多発している地域があったという。ミュージアム主宰の舟津宏昭さん(42)らが昨年5月29日~今年11月13日、両県の国道138、139、469号とその周辺の県道などを車で回り、交通事故に遭った動物の種類、場所、動物の状態などを記録した。確認できた交通事故死だけで177件に上った。そのうち、ニホンジカが44件と最も多かった。ニホンジカと衝突した複数の車の所有者に話を聞けたが、いずれも野生動物との事故も適用される自動車保険には入っていなかったという。次いで多かったのはタヌキで26件。冬はテン(13件)が目立ったという。富士山周辺で生息が確認されているイノシシの事故死は確認されていない。詳しい理由はわからないという。カラスのほか、アオゲラ、オオルリ、シジュウカラ、ヒヨドリなど鳥類の事故は15件に上った。舟津さんは「目立った外傷はないが、首の骨が折れている鳥も多かった。かなりのスピードで衝突した可能性がある」と話す。舟津さんが調べたところ、調査地域には約140本の「動物注意」の標識があった。しかし、富士宮市根原や山梨県境の国道139号周辺、山梨県鳴沢村の国道139号と県道71号の交差点周辺、山梨県山中湖村の陸上自衛隊北富士演習場近くの国道138号などでは、標識があっても事故が多発している地域があった。舟津さんは「ドライバーへの情報提供の方法を再検討する必要があるかもしれない」と話した。現在、山梨県側の国道事務所などにデータを渡しつつ、情報を提供してもらえるよう話し合いを進めている。
(独協大で狩猟講座:埼玉)
野生鳥獣による農作物被害が増加し狩猟者数の減少が深刻な問題になっていることから、被害の実態や狩猟の魅力などを伝えようと、県越谷環境管理事務所は草加市の独協大学で、同大国際関係法律科の一之瀬高博教授のゼミ生約40人を対象に講座を開催した。同事務所によると、野生鳥獣による農作物の被害は2013年度で1億3326万円。県内の狩猟者は1989年が1万1164人だったのが、14年は4894人。同期間の60歳以上の割合は12%から66%へと増加した。県内で主に被害が出ているのは山がある北部や西部だが、近年では東京に近い県東部や県南部でもシカやハクビシンなどが目撃されているという。既に被害は東京近郊の都市部でも出ていることから、同事務所は、県内都市部の草加市にあり環境の研究に力を入れている同大に協力を依頼した。講師は県農業技術研究センター職員、県鳥獣保護管理員、同事務所職員が務めた。農業被害の実態や原因、防除方法のほか、網猟免許とわな猟免許の取得年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げられたことなど狩猟免許制度などについて紹介した。ハンティングウエアを着用し、猟銃を持参して講義を行った同管理員の内田晃さん(50)ははく製などを扱う会社「東京内田科学社」を三郷市で営んでいる。ボランティアで狩猟を行う内田さんは「猟をやる時は猟犬と一緒に行く。主に鳥類をハンティングしていて、犬と一緒にやり遂げる満足感がある」と狩猟の魅力を伝えた。講座を受講した同ゼミの高畑佳弘さん(20)は「農業を営んでいる人たちにとって鳥獣の被害は生活に直結している。どうにかして解決しないといけない問題だと思った」と話した。
(防げ獣害、約10キロの防護柵設置へ:栃木)
笹原田環境保全の会と笹原田自治会は12日、イノシシなどの獣害を防ぐ柵の設置作業を行った。今後も田畑と山の境界に柵を設け、本年度中に総延長約10キロにわたる「防波堤」を完成させる予定。笹原田では3~4年前からイノシシやシカ、ハクビシンなどによる獣害が増加。中でもイノシシによる被害は深刻で、稲やソバ、ジャガイモなどを食い荒らされているほか、水田の周囲の土手が崩されてしまっているという。そこで同所の住民で構成する同会は2月、柵の支給を市に申請。高さ約1メートル、幅約2メートルのワイヤーメッシュ柵約5800枚の提供を受けた。設置作業は11月から始め、3回目の作業となる12日は約10人が参加して柵を次々と設置。本年度中に住宅や田畑をぐるりと囲む柵が完成する予定という。
(島にイノシシどこから?:山口)
イノシシが田畑を荒らしたり、住宅地に出没して暴れたりする例が各地で相次いでいる。そんな中、山口県東部でイノシシの捕獲数が急増中だ。どこから現れたのか、陸続きの地域だけではなく、周防大島町や平郡島(へいぐんとう)(柳井市)など、従来いなかったはずの島しょ部でも著しく増えている。自治体は奨励金を出すなど駆除対策に力を入れるが、有効策は見つかっていない。夕闇迫る伊予灘。平郡島から約400メートル沖の波間をイノシシが泳いでいるのを、柳井港から平郡東港に向かうフェリーの松永佳一船長(50)が見つけた。体長約1メートルのイノシシは、約5キロ先に見える八島(同県上関町)の方向に向かっていたが、フェリーに気づくと素早く向きを変え、平郡島に戻った。「10月中旬の午後5時40分ごろでした。前にも2回見たことがある。八島に渡ろうとしていたのでしょう」と松永船長は話す。もともと平郡島にイノシシはいなかった。柳井市への報告によると、島で初めてイノシシが捕獲されたのは2014年度。捕獲数は1年間で12頭だったが、今年度は10月末までにすでに77頭。「どこからか海を渡って来たとしか思えない」と市農林水産課の國重和生課長補佐は話す。周防大島町の増え方は顕著だ。この島にもイノシシはいなかったはずだが、02年に初めて8頭が捕獲され、昨年度は200倍を超す1621頭まで増えた。町は捕獲者への委託料(奨励金)と防護柵設置の補助金の両輪作戦で対処しているが、イノシシの進出に押されている。上関町も事情は同じだ。町によると13年度に初めて2頭が捕獲され、今年度は11月末までに82頭が捕獲された。町の呼びかけで農家などが狩猟免許を取って駆除態勢を整えようとしているが、十分に対応しきれていない。
(作物守れ、サル退治だワン:長野)
野菜や果樹などの農作物に被害を与え、農地を踏み荒らすサルを追い払うように訓練した飼い犬「モンキードッグ」の合同訓練が6日、長野県大町市であった。飼い主同士の交流や訓練のおさらい、頭数を増やすためのPRを兼ねて毎年開かれている。モンキードッグは、同市が全国で初めて2005年に導入。現在では28頭が活躍している。なかには、東日本大震災で被災し、飼い主が手放した2頭も含まれるという。この日は、13世帯の15頭が参加。ふいに顔を合わせてもほえたり危害を加えないようにしたり、飼い主の「来い!」の合図で両側に並ぶ犬の間を走り抜け、飼い主の元に走り寄る訓練などをした。モンキードッグは中型犬以上で、飼い主の指示に従うよう5カ月間の専門トレーニングが必要。市も毎年、3頭分の訓練費の一部を助成するなど支援する。市農林水産課によると、市内では15群約700匹のサルが出没、収穫直前の農作物を食べるなど被害は深刻だ。モンキードッグで定期的に追い払いをする農地にはサルが寄りつかなくなるといい、全国的に取り組みが広がっている。
(「ぎふジビエ」安全性PR:岐阜)
県は「ぎふジビエ登録制度」を始めた。県が策定した衛生指針に基づいて解体処理された県産のシカ肉やイノシシ肉を「ぎふジビエ」と命名、安心、安全なジビエ料理を普及させるのが目的。現在、解体処理施設6か所が登録しており、今後、ぎふジビエ料理を提供する飲食店や旅館などを公募して登録店を増やしていく考えだ。登録制度創設の背景には、野生鳥獣による農作物被害の増加と、狩猟免許保持者の高齢化がある。県によると、鳥獣による農作物被害額は2014年度が約4億3000万円(13年度比で8%減)。被害額の7割をイノシシ、シカ、サルで占めており、このうち、イノシシとサルの被害額は増加している。一方、狩猟免許保持者は2014年度で4501人とピーク時の約4分の1に激減。高齢化のため、鳥獣を捕獲しようにも担い手が不足しているのが現状だ。県は13年に、シカやイノシシの肉を処理する際の衛生管理を定めた独自の指針を制定。野生のシカやイノシシは、人にも感染する寄生虫が潜んでいることもあるという。今回の登録制度は、ぎふジビエの安全性をアピールすることで、消費拡大を図る狙いもある。県では、登録された店の店頭に掲げる木製表示板の製作に取りかかっており、来年には飲食店などの登録を始める予定だ。2月にはこれらの店を集めた「ぎふジビエフェア」を開催する。県農村振興課では、「シカやイノシシの肉が普及すれば、地元の活性化にもなる。また、捕獲する人の意欲も高まり、結果的に鳥獣被害の減少にもつながる」と期待を寄せている。
(県産ジビエ食欲を刺激:岐阜)
県産のジビエ(野生鳥獣肉)を使った料理を集めた「ぎふジビエを味わう会」が9日夜、岐阜市玉森町の結婚式場エグゼクス・スウィーツで開かれ、参加者が趣向を凝らした料理に舌鼓を打った。11月15日に狩猟が解禁され、本格的なシーズンが始まったことを踏まえ、ぎふジビエ推進ネットワークなどでつくる岐阜ジビエを楽しむ会が、ジビエ料理を広く知ってもらおうと初めて開いた。会場には、同店料理部長の松田哲夫さんや、ローマ料理店「ピアノピアーノ」(同市栄新町)のシェフ野田幸宏さんら3人が調理した、シカ肉をふんだんに使ったキッシュや香草ステーキ、赤ワインでじっくり煮込んだイノシシ肉など、素材を生かしながらも食べやすい味付けに工夫した約30種のメニューがずらり。岐阜市出身のジャズシンガー川鰭祐子さんによるライブも行われ、来場した約50人が至福のひとときを楽しんだ。
(ミス日本みどりの女神、ジビエを絶賛:東京)
2015年度ミス日本みどりの女神で東農大4年の佐野加奈さん(21)が11日、都内で「みえジビエ」のPRイベントに出演した。「みえジビエ」は三重県に登録された施設で生産されたシカ肉やイノシシ肉を、県独自のマニュアルに基づいて加工したもの。試食した佐野さんは「牛肉のようで本当においしい」と笑顔を見せた。みどりの女神としての一年を振り返り「北海道から九州までいろいろなところに行きました。自然に関わる活動は、自分の学業にも通じるところがあって、本当に幸せな経験でした」と語った。
(洞爺湖のシカ肉、リンゴでピザ:北海道)
胆振管内洞爺湖町と交流協定を結ぶ酪農学園大の食物利用学研究室(筒井静子准教授)が同町で調達できるシカ肉とリンゴを使った2種類のピザを考案し12日、町内の洞爺湖ビジターセンター・火山科学館で初めて披露した。洞爺湖有珠山ジオパークを抱える洞爺湖町などは多様な食材をPRする料理にピザを選び、「ジオパークピザ」の名前で普及に取り組んでいる。食物利用学研究室は3年前からレシピ作りに協力し、これまでに海鮮ピザなどを開発した。シカ肉のピザはチーズのほか、ニンジン、小松菜を使用。シカ肉は細切りにしたものを辛めのたれにつけ込んで炒め、くせのない味に仕上げた。リンゴのピザは地元特産のシソジュースで煮たリンゴや、カスタードクリームなどを使いスイーツ風にした。この日は筒井准教授と学生らが2種類計50枚のピザを調理。筒井准教授は「準備の都合でシカ肉とリンゴは道内の他産地のものを使ったが、洞爺湖町でも手に入る。いろんな場面で作ってもらえたら」と語った。溶岩プレートの釜で焼き上げられたピザは火山科学館の入館者に振る舞われた。シカ肉のピザを食べた町立とうや小6年の岡本寛(ひろ)君(12)は「シカ肉はおいしくてもっと食べたかった」と話した。
(但馬の食材にこだわった“田舎のカフェ”:兵庫)
シカなどの獣肉を有効活用する取り組みをしている香美町小代区の住民グループ「峰鹿谷(ほうろくや)」の井上亀夫理事長(57)が12日、但馬の自然の食材にこだわった「TIMES cafe(タイムズ・カフェ)」を地元にオープンする。昼だけの営業で、週単位で一押しの定食を提供する“田舎のカフェ”だ。井上さんは小代区出身で、東京でブックデザインなどの仕事を続けたが、6年前に妻の愛華さん(41)とUターン。香美町内で問題となっている有害獣の有効利用に取り組み、今年6月から同グループの理事長となった。カフェの営業は「シカ肉やシシ肉などのジビエの本当のおいしさを知ってほしい」と、約1年前から考えた。小代区内で空き工場を見つけ、夫婦で少しずつ手を加えた。酒樽の大きな木のふたを再利用したテーブル(直径約2メートル)や薪ストーブもあり、約20人が利用できる。メーンの定食は、その時期の食材を使った1つにしぼり、値段も千円(税込)にして週単位で提供。初回はスパイスの利いた「白オムライスのシカカレー」と熟成したシカ肉ローストの1品、お茶、手作り柿のジュレを使ったデザートだ。調理は主に愛華さんの担当で、“山の幸”だけでなく、矢田川の“川の幸”や香住のイカやタコなどの“海の幸”も取り入れ、但馬全体の食材を使った定食屋を目指すという。
(温暖化が招いたシカ、イノシシ大繁殖)
最近、紙面で野生の鳥獣肉を料理する「ジビエ」や、農村部を悩ます「獣害」の記事をよく目にするようになりました。11月7日の日本経済新聞夕刊にも「ジビエ食材、国が表示規格、害獣対策へ消費拡大後押し」という記事が掲載されています。背景には、日本の生態系の驚くべき変化があります。たしかに地方の道路を車で走っていてシカやイノシシを見かける機会が増えました。それでも、環境省の推計を見たときは正直、びっくりしました。2012年度末時点の推計(中央値)で、ニホンジカは249万頭と10年前に比べて2倍以上に増えています。これは北海道のエゾシカ(ニホンジカの亜種、推計59万頭)を除いた数です。1990年代半ばには50万頭を下回っていたイノシシも89万頭まで増えています。なぜ、こんなに急に増えてしまったのでしょうか。要因はいくつか考えられますが、もっとも影響が大きいとされるのが温暖化で冬場の降雪量が減り、野生動物がえさをとれる期間や地域が広がっていることです。生息地は東北などの寒冷な地域にも及び始めています。環境省の調べで、1978年から2014年の36年間でニホンジカの生息地域は2.5倍、イノシシも1.7倍に広がりました。世界の人口は70億人を超えて急増を続けています。日常の生活や産業活動によって増える温暖化ガスが世界的な気温上昇の主因とされます。それを抑えようと各国で対策を話し合う第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)が週末までパリで開かれました。足元で進む温暖化が日本ではシカ、イノシシといった野生動物の急増を招いたわけです。自然科学は私の専門分野ではありませんが、日本の生態系にこれほど急速な変化が生じているのであれば、綿密な調査と要因分析、影響予測を急ぐべきではないでしょうか。シカ、イノシシほどではありませんが、農業の現場ではニホンザルやハクビシンなどの被害も目立ちます。カワウがアユなどを食べる漁業被害もあります。こうした野生動物が全国でどれくらい増え、生息地が広がっているのかについては把握すらできていません。農山村の過疎化が進み、人間の活動場所が縮小したことも野生動物の拡大につながっています。農家がなくなり、耕作放棄地などが増えればそこがシカなどの新たなえさ場となります。「人間の生活場所」が「野生動物のテリトリー」に置き換わっているわけです。農業被害の拡大を受け、2007年には市町村が実施する被害防止策を支援するための鳥獣特措法が成立。捕獲数も増えてきています。しかし、それでもシカやイノシシの増殖ペースには追い付いていません。電車や自動車がシカなどと衝突する事故も増加傾向にあります。農業被害額は年間200億円前後で頭打ちになっていますが、「さまざまな対策を打ち出しても被害が減らない」(農林水産省農村振興局)のが実態のようです。農水省は「獣害が農家のやる気をなくし、新たな耕作放棄地を生むケースも多い」といいます。こうした現状を見て、ようやく環境省も動き出しました。ようやくと表現したのは、野生動物は守るべきものという発想からなかなか抜け出せなかったためです。環境省が鳥獣保護法を見直し、増えすぎた動物は人の手で適正水準まで減らす鳥獣保護管理法を施行したのは今年5月です。自民党の鳥獣捕獲議連が主導し、シカ、イノシシの数を10年後に半減する「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」が13年12月に決まったことが保護に偏りすぎた政策の転機になりました。政府は23年度にニホンジカの数を約160万頭(北海道の38万頭を含む)、イノシシを50万頭まで減らす目標を掲げています。基本的に野生の動物は守るべきものです。ただ、特定の動物が増えすぎれば生態系全体への影響も懸念されます。たとえば増殖したシカは生息地の植物を食べ尽くし、それを餌にしていた昆虫などにも影響します。増えすぎたシカやイノシシの数を適正な数まで減らし、農業分野などの被害を防ぐ対策も容易ではありません。中には「海外からオオカミを持ち込み、日本の山に放ってはどうか」という意見もあります。シカなどが増えた要因のひとつに、天敵であるオオカミの絶滅が挙げられるからです。ただ、北海道などの農家にはかつてオオカミによる被害に悩まされ続けた記憶があります。沖縄県や鹿児島県の奄美大島では毒蛇のハブを減らすために持ち込んだマングースが繁殖して鶏などの家畜を襲い、天然記念物のヤンバルクイナやアマミノクロウサギの数を減らしました。こうした事実を踏まえれば外来種である「オオカミ導入」は賢明な策とは言えないでしょう。やはり人の手で、となるわけですが、わな、猟銃などの狩猟免許を持つ人は13年度時点で20万人を下回り、50万人を超えていた1975年度の半分以下にすぎません。そこで政府は各自治体に消防団のような「鳥獣被害対策実施隊」を設置してもらい、隊員には狩猟税を免除し、事故に遭った場合も公務災害を適用できるなどの支援を始めました。実施隊を設置した市町村は今年4月時点で986に増えました。それでも、どう対応していいか戸惑う自治体は少なくありません。今後は狩猟免許を持つ人の多い自治体との連携なども必要になるでしょう。こうした対策の中で浮上してきたのが捕獲したシカ、イノシシの肉を食料として有効活用するジビエ振興です。シカやイノシシ肉の流通量は合わせて1000トン規模です。日本の食料供給の一角を担う役割は期待できません。少子高齢化でさまざまな食料の消費が減少傾向にあるとはいえ、国内には豚肉や鶏肉がそれぞれ年間200万トン前後、牛肉も100万トン強が供給されているのです。ただ、健康食として人気のあるシカ肉などが安定的に供給され、市場で価値が認められれば、高く売れるならがんばって捕ろうという動機付けにはなります。政府は野生鳥獣肉(ジビエ)の衛生管理ガイドラインを作るとともに、とった鳥獣を処理加工する施設の整備や、ジビエを扱う外食店の拡大を支援する計画です。これが冒頭で触れたジビエの振興策です。シカやイノシシを捕獲したり、畑などへの侵入を防いだりして被害を抑える対策が安全第一であることは言うまでもありません。静岡県では今年7月、動物の侵入を防ぐ電気柵に触れて2人が死亡する事故が起きたばかりです。事故を起こした電気柵は自作の電気柵だったといいます。電気柵やわなにも安全規格があり、それに沿った製品を使用しなければなりません。わなや電気柵の設置場所にはそれを警告する表示も義務付けられています。野生動物が出やすい地域では日ごろの心がけも重要です。耕作放棄地をきちんと管理するのは地域ごとの農業委員会などの責任ですが、農家も出荷できない果実などを畑に放置すれば動物の侵入を自ら誘うことになります。農業被害にはカラスによるものもあります。家庭の生ごみなども適切に管理しなければカラスなどの繁殖を助け、被害を生む土壌になります。シカやイノシシについて「害獣」という表現も見かけますが、野生動物を害獣に変えてしまう要因の多くは人間の行動にあることを忘れてはいけません。
(地域おこしという仕事:長崎)
「イノシシ革は毛穴が大きいため通気性が良く、靴などに使われます。シカ革は毛穴が小さいため頑丈で、昔は農業用の服などに使われていました」11月下旬、長崎県対馬市で開かれたレザークラフト講座。獣医師の谷川ももこさん(28)は、受講者に革の特徴を説明していた。市内で捕獲されたイノシシやシカの皮をなめした革で、名刺入れなどを作るのだという。2011年度、同市には約3万人の人口とほぼ同数のツシマジカが生息すると推定されていた。農業や林業、生態系への被害を減らすため、イノシシとシカが毎年1万頭ほど捕獲されるが、うち9割がそのまま山に埋められていた。谷川さんの役割は、そうしたシカやイノシシなどの有害鳥獣を資源として活用することだ。13年4月に着任して以来、被害の把握や、食肉に加工する施設の運営、その肉を使った商品開発、レザークラフト講座での普及啓発活動などに取り組む。「獣害を“獣財”に変えたいんです」と谷川さんは言う。谷川さんは、「地域おこし協力隊」という制度で、対馬にやって来た。対馬市は「島おこし協働隊」と名付けている。地域おこし協力隊とは、自治体の具体的な要望に応じて都市の住民が地方へ移住し、その地域の維持や活性化のために活動し、国が費用を限度内で自治体に補助する制度だ。谷川さんは神奈川県藤沢市から移住した。幼いころから動物が好きだった。大学は獣医学科に進む。2年の夏、ツシマヤマネコの保護活動を体験するため、対馬を初めて訪れた。島の人たちはツシマヤマネコの減少に困っているだろうと思っていたが、実際はイノシシやシカの被害に対する関心の方が高かった。半年後、ボランティアで再び訪れたとき、対馬の人は「おかえり」と言って迎えてくれた。一度しか会っていないのに。「転勤族で地元がない私にとってはとても温かい言葉だった」対馬に関わりたい。対馬の人が困っているイノシシやシカの対策に携わりたい。大学院でそうした研究ができるところを探すが、見つからない。諦めきれずにいた大学院出願の締め切り日、島おこし協働隊の募集を見つけた。すぐに応募を決めた。当初は、島の人たちが鳥獣被害をどこか人ごとに捉えている、と感じていた。「市役所がどうにかしてくれ」という声も聞こえた。自分のこととして考えてもらうため、対策に積極的な地区で「捕獲隊」を結成した。わなを設置し、捕獲を体験してもらう。すると「集まる機会ができて楽しい」と笑顔が生まれた。その変化がうれしかった。1年目は、協力隊員向けの研修で聞いたように、地域の内と外をつなぐ存在にならなければいけないと思っていた。3年目の今、目の前のことを一つ一つすることが大切だと感じる。地域おこしとは何だろう。「目の前にいるおばあちゃんの笑顔のためとか、具体的なことしかできない。『地域』をおこすなんておこがましくて」来年3月には3年の任期が終わる。その後も対馬に残り、獣財をつくる取り組みを続ける予定だ。どのような形で続けていくのか、考えている。最近、ある人から、好きなことをやって生きていけるかではなく、好きなことをやって生きていくにはどうすればいいかを考えなさい、と言われた。不安がすっと消えた。イノシシやシカのウインナーなどをカフェで提供したり、給食に出したり、やりたいことはいくらでもある。「10年後、一緒に鳥獣被害対策に取り組む皆で集まったときに、笑って語れることをやっていきたい」最長3年の任期で「地域おこし」という仕事に就く地域おこし協力隊。制度が始まった09年度には89人だったが、15年度には2450人になる見通しだ。隊員たちの日々を通して、生きること、働くことを考える。

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(クレー射撃の中山由起枝が4度目の五輪代表決定)
日本クレー射撃協会は9日、東京都内で理事会を開き、36歳の中山由起枝(日立建機)をリオデジャネイロ五輪代表に決めた。中山は8月に行われたワールドカップ(W杯)の女子トラップで優勝して国別出場枠を獲得していた。自身4度目の五輪出場となる。2000年シドニー五輪に出場した中山は、出産を経て競技に復帰し08年北京大会で4位に入った。12年ロンドン大会は予選落ちだった。五輪予選を兼ねたアジア選手権が当初の11月から来年1~2月にずれ込んだため、同協会は最有力候補の中山が早めに準備できるよう、アジア選手権の結果を待たずに選考した。大江直之事務局長は「メダルの可能性は十分にある」と期待を述べた。▽中山 由起枝(なかやま・ゆきえ=クレー射撃女子トラップ)五輪は00年シドニー大会で初出場し、08年北京大会4位。アジア大会は10年広州で金、14年仁川で銀メダルを獲得。埼玉栄高出、日立建機。161センチ、55キロ。36歳。栃木県出身。
(ニホンジカ、白神山地で確認:青森)
環境省東北地方環境事務所は8日、世界自然遺産・白神山地(青森、秋田両県)のバッファゾーン(緩衝地域)で初めて、定点カメラが雄のニホンジカ1頭を撮影したと発表した。白神山地周辺では、これまで生息しないとされてきたシカの目撃が近年相次いでおり、貴重なブナの原生林への食害が懸念されている。バッファゾーンは、ほとんど人の手が加わっていない白神山地のコアゾーン(核心地域)を保護するため設定された区域。同事務所によると、10月13日午後、バッファゾーンとなっている西目屋村の「暗門の滝」上流付近に設置したセンサーカメラが、シカ1頭を撮影した。白神山地は広大なブナの原生林が評価され、1993年に世界遺産に登録。ニホンジカは繁殖力が高く、全国各地で頭数増に伴う食害が報告されている。白神山地周辺では今年4月以降、青森側で17頭、秋田側で11頭が確認されている。今月3日には、遺産地域の北約20キロの鰺ケ沢町で、町職員が雄のニホンジカ1頭を撮影した。
(捕獲に道が参入:北海道)
北海道が近く、エゾシカの捕獲に本格的に乗り出す。国立公園など規制区域があり、市町村では捕獲が困難な地域で、道が捕獲に乗り出すことで手法の確立を目指す。初年度は浜中町の霧多布地域など5地域で実施し、許可手続きから食肉利用までの捕獲マニュアルを作成する。野生生物の増加で、農林水産被害が全国で深刻化している。生態系にも悪影響がでているため5月に鳥獣保護法が改正され、シカとイノシシは都道府県が捕獲事業を実施できるようになった。道がこの制度を活用するのは初めて。実施は霧多布のほか襟裳岬・目黒(えりも町)▽宗谷沿岸(稚内市〜豊富町)▽ワッカ(北見市)▽糠平(上士幌町)−−の各地域。いずれも国立公園や鳥獣保護区などが含まれ、通常はエゾシカの捕獲が規制されている。希少猛きん類の生息地や観光地などがあり、猟銃による捕獲が難しい地域もある。今年度の捕獲は、北海道猟友会とコンサルティング会社などの協力で実施。シカを猟銃の撃ち手に追い込む「巻き狩り」▽警戒心の高いシカを作らないよう群れ全体を捕獲する「シャープシューティング」▽大型の壁を設置してエサで誘い込む「囲いわな」−−の3手法を、地域の状況に応じて使い分ける。捕獲したエゾシカは食肉やペットフードなどに利用する。道内の生息数は、2014年度に推定約48万頭(データが少ない渡島・檜山・後志地域を除く)。道は17年3月末までに約38万頭に減らす目標で、道エゾシカ対策課は「今はいかに減らしていくかという時期だ。規制が厳しい区域での捕獲体制づくりや実績の蓄積で、被害防止に取り組む市町村を支援できるようにしたい」としている。
(狩猟者減り獣害深刻化:福島)
東京電力福島第1原子力発電所事故の影響でイノシシの出荷制限が続く福島県などで、銃猟免許を持つ狩猟者不足が続いている。放射性物質の影響で肉を食べることができないため、捕獲後の処分は個人任せで負担は重くのしかかる。11日で東日本大震災から4年9カ月を迎える中、獣害は深刻化する一方で、解決の糸口はいまだに見えない。福島県二本松市の休耕地。イノシシによる食害で米の作付けを見送った田は、あぜの原形を失うほど土が掘り返されていた。「山から下りてくるイノシシは間違いなく増えている。やりたい放題だ」。同市の農家で狩猟者の齋藤恒雄さん(66)は嘆く。地域では今年、電気柵の下をくぐってイノシシが侵入し、稲刈りを断念した農家もいた。同市の狩猟者は106人で平均年齢は63歳。原発事故以来、毎年10人程度がやめていく。その分、獣害は増え、農家から捕獲依頼が相次ぐ。市内の狩猟者を困らせているのが処分方法だ。イノシシを捕獲しても、肉は放射性物質の問題で食べられず、狩猟者自らの判断で埋却処分しているのが実態だ。焼却処分するという選択肢もあるが、焼却施設まで遠く、施設に持ち込むにもイノシシを解体しなくてはならず、相当な手間が掛かる。このため同市岩代地区では農家の協力を得て、20アールの農地を捕獲したイノシシの埋却場所に充てている。齋藤さんは「協力者がいるからなんとやれているが、埋却を続ければいずれは満杯となって限界となる。行政の責任で埋却場所を確保してほしい」と訴える。狩猟者不足と鳥獣害の深刻さは福島県全体の問題だ。県によると事故前の2010年度は1億5800万円だった農産物被害額は、14年度には1億8900万円と4000万円以上増加した。その一方で、猟友会の会員数は10年度の3542人から、事故直後の11年度には2586人に激減し、15年11月末現在も2617人とほとんど回復していない状況だ。被害の深刻さを受けて新規にわな免許を取得した人はいるが、実際に現場で活躍できるようになるまでは時間が掛かる。さらに止め刺しができる銃猟免許を持つベテラン狩猟者は高齢などを理由に狩猟をやめており、県猟友会は「数字以上に事態は深刻だ」とみる。県内には、狩猟者が捕獲したイノシシを解体し、焼却施設で処分している地域もある。県は「埋却地が足りないという話は聞いているが、実態に合わせて狩猟者にお願いするしかない」(自然保護課)とし、対応に苦慮している。近隣県でも構図は同じだ。茨城県猟友会によると銃猟(1種)免許所有者は10年度は3133人だったが、15年11月末現在は2232人。宮城県猟友会でも1591人から同1165人に減った。高齢化と担い手不足は全国的な問題だが、特に福島とその周辺は鳥獣害と狩猟者不足が顕著だ。福島大学の奥田圭特任助教は「捕獲したイノシシの処分を現場任せにしていては解決できない。鳥獣被害と狩猟者不足を一体で考え、対策を講じていく必要がある」と指摘する。
(新千歳空港にシカ防止網:北海道)
国土交通省新千歳空港事務所は8日、本格的な積雪期を前に一部の柵の高さを上げるなどシカの侵入防止対策を行ったと発表した。3月に新千歳空港でシカが侵入し運航に影響が出たことを受けての措置。空港事務所によると、空港の周囲約16キロの柵のうち、近くに斜面があるなどして飛び越えられる可能性のある2カ所の柵の内側に「補助ネット」を設置した。各ネットは全長約28メートル、高さ約3・5メートル。このほか柵付近につるが茂る5カ所で伐採作業を行った。さらに今後、シカが嫌うとされる唐辛子成分の顆粒(かりゅう)が入った袋を柵にぶら下げる。侵入経路の解明などを目的に、4カ所にセンサー付きカメラを置く。
(農産物に被害、イノシシなど捕獲事業:熊本)
県は7日、農産物に被害を及ぼすイノシシやシカの頭数管理のため、年明けから試験的に捕獲事業に乗り出すことを明らかにした。従来の市町村による捕獲に加え、県事業によって広域的・集中的な管理を目指す。ことし5月に施行された鳥獣保護管理法に基づく事業。事業では、イノシシ被害が目立つ天草地域とシカ被害が著しい球磨地域で、それぞれモデル地区を選定し、銃やわなによる捕獲を進める。事業費は約1千万円。県は、例年以上にミカンなど果樹の被害が深刻な宇土半島で、14、15の両日に緊急のイノシシ一斉捕獲を実施することも明らかにした。県と地元2市、JAなどが協力して取り組む。7日の県議会一般質問で、西山宗孝氏(宇土市区、無所属)に田代裕信・環境生活部長が答えた。県によると、県内の2013年度の野生鳥獣による農作物被害は4億5500万円。14年度分は最終集計中だが、横ばい傾向という。
(現場出向き解体処理、専用車両の開発着手)
日本ジビエ振興協議会は、野生鳥獣を解体処理できる車「移動式第1次処理施設」の開発に乗り出した。鹿やイノシシを捕獲した際、その場で血抜きや内臓処理ができる。ジビエ(野生鳥獣の肉)として鮮度・品質の低下を防げる。来年3月を目標に1台目を完成させる予定だ。 野生鳥獣は捕獲しても、離れた場所にある食肉処理施設まで運ぶのに時間、労力が掛かるケースが多い。「捕獲後、処理せず1時間もたつと、食用に適さなくなる」(食肉処理業者)ことが、ジビエの一般に流通しにくい原因の一つになっている。開発する移動処理車には、2トントラックの庫内に鹿やイノシシなどの内臓を処理する作業スペースをつくる。5~15度の冷蔵庫を設け、毛が付いた状態の鹿やイノシシなどを約10頭まで保管できるようにする計画で、トヨタの関連会社に設計を依頼した。鳥獣の捕獲場所まで移動処理車で出向き、備え付けの電動ウインチを使い、鳥獣をトレーに載せて運ぶ。その個体をハンガーに掛け、洗浄した後に血抜きをし、内蔵などを摘出。その後、冷蔵庫内で保管する。ジビエの食肉処理施設は、施設基準や保存基準の取り決めが厳しいため、まだ少ない。農水省によると、2014年度に捕獲した野生鳥獣のうち、食肉などに利活用した割合(頭数ベース)は14%。残りは廃棄されているのが現状だ。同協議会によると、移動処理車の導入を検討している団体も既にあるという。小谷浩治事務局長は「全国的にも飲食店でのジビエの需要は増えており、供給が追い付かない状況だ。移動処理車を導入することで、ジビエの流通量を増やすことにつながる」と期待する。
(サル退治に大型おり:石川)
小松市は八日、ニホンザルによる農作物被害に対処するため、同市麦口町の畑に市内初となる大型の捕獲おりを設置した。おりは五メートル四方、高さ二メートルの鉄製で、費用は二百三十万円。出入り口付近にカメラ一台を置き、インターネットで二十四時間監視できる。市職員や猟友会員らが見守り、サルが数多く入ったところで遠隔操作で出入り口を封鎖し捕獲する。捕獲したサルは殺処分するほか、発信機を着けて放ち、生息状況の調査にも使われる。同町を含め国道360号が通る白山市寄りの山間部では、五年ほど前からサルが畑や水田を荒らす被害が確認されてきた。これまでに二匹のサルに発信機を着け、近づくと現場で追い払って対応してきた。被害区域は年々広がり、住民たちが、市街地へと拡大する前に食い止めるよう対策を市に要望していた。付近で農作物を育てる谷口幹雄さん(64)=中ノ峠町=は「作ったものを家族に食べさせられないのは悲しい。うまく被害を食い止めてほしい」と期待を寄せた。一方で「一つの大きなおりよりも、小さなものをたくさん置いた方が数多く捕まえられるのでは」と話す農家も。サルとの理想的な共存に向け、より効果的に使われることが望まれている。
(朝日新聞、ジビエのまとめサイト:東京)
朝日新聞社は12月6日、参加者がメディアを使って記者とともに社会課題の解決に挑む「未来メディアキャンプ」の2日目のワークショップを開催。11月9日のワークショップで結成された9チームが、チームごとに設定した社会課題に対して、3週間にわたるフィールドワークを通して形にしたアイデアを発表した。日本初となるジビエ(狩猟によって食材として捕獲される野生鳥獣やその肉)のまとめサイトを作る。シカ肉の仕入れ先のリストや、シカ肉の料理を出す飲食店の情報などを表にまとめる「シカ肉業界マップ」、日本全国の地方自治体の取り組みを訴求する「日本全国ジビエの旅」、狩猟の現状を取材して読み物にまとめる「コラム『山に埋まる高級食材』」の3つをコンテンツの柱とする。そのほかには、ジビエを家庭でも食べられるようにするレシピなども掲載する。サイトに掲載する情報は、農林水産省や環境省、地方自治体、飲食店などから受け取る。現在、独立して存在しているこれらの情報に横串を通して、情報の価値を高める。消費者が欲している情報を検索エンジンで見つけやすくしたり、SNSで情報が拡散されやすくしたりする。サイト運営費は地方自治体や飲食店からの広告費でまかなえる可能性があると見ている。
(五葉山とシカ:秋田)
JR釜石線で陸中海岸に向かうと右手に五葉山(ごようざん、1351メートル)のなだらかな山容を望むことができる。岩手県内を列車で旅したとき「ここが五葉山か」と感慨を抱いた。というのも、いま秋田県内で相次いで目撃されているニホンジカたちの古里が、五葉山かもしれないからだ。ニホンジカは大昔から全国に生息していたが、明治から昭和初めにかけて乱獲で激減し、北東北の生息地はほぼ五葉山のみとなった時期がある。岩手県は戦後の一時期、五葉山のシカを禁猟にして保護した。ところが数が回復したことで1980年代から周辺で農林業の食害が目立つようになる。15年前からは一転して捕獲を続けているが、生息域は既に五葉山から全県に拡大し、いまや農林業被害は年3億円に達する。本県では2009年以降、岩手県側から侵入したとみられるニホンジカが県境付近で目撃されるようになった。その数は増え続け、範囲は全県に及ぶ。ついにと言うべきか、白神山地のうち青森県側の世界遺産地域内で今年10月、雄1頭が自動撮影カメラに捉えられた。他県の国立公園では樹皮を食われて木が枯れたり高山植物の群落が食い尽くされたりする被害が起きている。本県でもいずれ捕獲に乗り出すことになる。自動撮影された写真を見て「奥山に紅葉(もみじ)踏みわけ鳴く鹿の声きく時ぞ秋は悲しき」の古歌を連想した。長い旅をして白神山地にたどり着いたのだろう。シカに罪はないだけに、切ない情景である。
(犬ぞり猟、最後の600キロ)
ほおを突き刺す風の中、10頭の犬が雪をけり、そりを引いて疾走する。著書「エスキモーになった日本人」で知られる大島育雄さんは、グリーンランド北西の北極圏の村で43年間、猟師として生きてきた。10日で68歳。標高1300メートルの氷原を越え、半月で600キロを走る犬ぞり猟は「体力的に今回が最後」と話している。その旅に同行した。「アウリッチ(動くな)!」。出発を前に興奮する犬たちの上で、大島さんの鞭(むち)がヒュンと風を切る。零下30度、太陽が4カ月出ない冬が明けた4月。海氷や雪がとけるまでの数カ月間が、「犬ぞり猟に一番いい季節」と大島さん。シロクマの毛皮のズボンに、アザラシの皮のブーツのいでたち。「シロクマを捕り、孫にもズボンを作ってあげたい」と笑う。大島さんが暮らすデンマークの自治領、グリーンランド北西のシオラパルクは人口約30人の「地球最北の村」だ。千年余り続く犬ぞり猟文化を取り巻く環境は厳しさを増す。温暖化で海氷や雪は減り、猟師はこの10年間で半減した。先住民の伝統の防寒服や猟具を作れる人が減り、大島さんの元には注文が絶えない。民族衣装に使うアザラシの皮の処理方法を教えに遠方の学校にも出向く。猟の初日、海氷を進むと、氷河がそびえていた。そりを降り、押して上がる。さらに数時間走り、見渡す限りの氷原に出た。そのあたりの風向きを知っていれば、「雪の筋で方角がわかる」という。日没後も走る。凍える手でテントを張ったのは、出発から約17時間後、午前1時だった。2日目。毛むくじゃらの黒いものが動く。ジャコウウシだ。パーンと乾いた銃声が響き、巨体ががくんとのけぞった。「これで犬ぞりの『燃料』は大丈夫」。ナイフ1本で皮をはぎ、骨をはずす。肉は人と犬の食料にし、骨も犬にやる。ふわっと暖かい毛皮は敷布や防寒具、角は装飾品に。余すことなく使う。「誰もが命を頂いて生きていることを忘れてはいけない」4日目、はるか海氷で白い点が動くのを見て、大島さんが銃をつかむ。「シロクマだ」。犬の声に気づき、シロクマの足も止まる。距離は500メートル近く。1発で命中。「遠いから1メートル上を狙った」という。シロクマは、自治政府から認可された専業猟師しか捕れない。グリーンランド北西の広大な地域で年間6頭までで、大島さんも数年に1頭しか捕れない。他の動物も同様に、厳しく制限されている。大島さんは「生きるために最小限しか捕らない伝統の生活が追いやられている」と嘆く。6日目、海岸に立つ背丈ほどの三角の石の前で、大島さんが歌を口ずさむ。子グマを息子のように育て、その帰りを待つおばあさんが石になったと伝えられ、猟師は自然の恵みへの感謝を捧げるという。そばに残る石の土台は、もとは妻の父の家だった。「貨幣経済が来て変わってしまった」。電気や電話が通れば、お金がいる。仕事を求めて、人は南部の町へと流れ、北部の集落は消えつつある。北部に残る猟師仲間はバイトをしている。観光客を犬ぞりで案内すると1日約3万円。大型のカレイのオヒョウを釣ると、高く売れて日本などに輸出される。14日目の帰路。氷河を下っていると、そりがガクンと止まった。幅約30センチの氷の割れ目、クレバスがばっくり開いている。「犬が落ちた。手伝って」と、大島さんが叫ぶ。ひもを引っ張って1頭、また1頭。3頭目は深くて見えないところで宙づりになっている。2人で力いっぱい引き上げた。15日目の未明、村に戻った。出迎えた息子の顔を見て、大島さんの表情がやわらぐ。でも、一抹の寂しさも。猟師生活は、自然の中で生かされていることを教えてくれ、その過酷さは生きる実感をわき立たせてくれる。「子どもたちは、もう猟師だけでは食べていけない。ぼくはいい時代に生きた」
(「しかぽてち」誕生:兵庫)
北海道を除く国内でシカが急増し、農作物が荒らされるなどの食害が問題になる中、世界でも珍しいシカエキスのポテトチップス「しかぽてち」が誕生した。処理される「シカの命」を有効活用しようと、宝塚市のシカ肉料理研究家らが開発。「シカと自然と人間のしあわせな共存」を考える新しいお菓子が、デビューした。開発したのは、シカ肉料理研究家の林真理さんら。林さんは、「シカのすべてを価値あるものに」を合言葉に、同市中筋山手で「愛deer料理教室」を主宰している。林さんは、かつて国立民族学博物館(大阪府吹田市)に勤めており、南米などに出かけて、食材への造詣を深めた。平成12年、料理教室を開き、25年10月には食材をシカに絞った現在の料理教室にした。以来、普及促進のため、加工品製造やOEM(相手先ブランドによる製造)受託にも取り組んでいる。これまで、シカ肉のキーマカレーやシカ肉スモークなどを手掛けた。今回、「みんなが好きなお菓子のかたちにすれば、きっとなじんでもらえ、命の生かし方を考えてもらうきっかけにもなる」とポテトチップスの開発に取り組んだ。食用に捕獲した野生の「丹波鹿」からとったスープをパウダー化。北海道産のジャガイモとヒマラヤ岩塩などを使い「しかぽてち」を作り出した。パッケージデザインは、24年の「産経はばたけアート公募展」(社会福祉法人「産経新聞厚生文化事業団」主催)の大賞受賞者で、大阪府泉佐野市の障害者支援施設「YELLOW」の利用者、平野喜靖さんがシカを描いた作品3点を選んだ。試食した人は、「清涼感のある辛み、うまみがある。特有のコクがいい」。林さんは「シカのすべてを価値あるものに、というメッセージを考えていただければ、と思っています」と話している。
(クセのない味、珍しい特産品:愛媛)
県南部の山あいに位置する鬼北町(人口約1万1000人)では、野鳥として知られるキジの飼育が盛んだ。生産管理や加工販売を担うのは町農業公社「鬼北きじ工房」で、独自の「鬼北熟成雉(きじ)」のブランドもじわりと浸透している。「ケーン」という特徴ある鳴き声が響く。声の主は小屋の中を元気よく駆け回る色鮮やかなキジたちだ。同工房のほか町内8カ所で計約1万3000羽のコウライキジを飼育。農家は全て兼業で、共通の飼育マニュアルに従い品質の統一を図る。鬼北町などによると、現在は合併して町の一部になっている旧広見町が1992年、第三セクター事業として飼育を開始。珍しい特産品を模索した結果、キジにたどり着いたという。高知県檮原(ゆすはら)町から仕入れた約500羽からのスタートだった。飼育農家の一人、程内覚さん(65)は「加工業などで生まれる雇用は町にとって大きい」と話す。工房長の丸石則和さん(35)によると、春先から200日余りをかけて飼育し、肉に脂が乗る冬に一気に食肉処理。熟成にも気を配り、通年出荷するために冷凍する。松山市の居酒屋「野人料理愛治」では鬼北産のキジ肉を楽しめる。店長の大平重人さん(37)は鬼北町の愛治地区出身。「寒い冬には鍋がよい。肉の甘さを楽しみたいなら塩焼きがベスト」とおいしさを語る。温泉旅館「雉子亭豊栄荘」(神奈川県箱根町)では鬼北産キジ肉のフルコースを提供。「しっかりしたうまみ」「クセがない」などと利用客に好評という。
(長浜の鴨すき、知事がおすすめ:滋賀)
三日月大造知事は11月26日の記者会見で、寒くなるこれからの時期にオススメとして、長浜名物の鴨(かも)料理をPRした。会見には長浜市西浅井町の「道の駅 塩津海道あぢかまの里」のマスコットキャラクター「あぢかもくん」も同席。三日月知事は「仲間が食べられることも気にせずによく来てくれた」と「あぢかもくん」をいたわりつつ、カモの肉やつくね、野菜を割り下で煮焼きし、溶き卵で食べる「鴨すき」を堪能した。長浜観光協会などによると、一般に食べられているカモ肉はマガモとアヒルの交配種の「合鴨(あいがも)」。しかし、長浜などでは琵琶湖で越冬するマガモを食べていたこともあり、琵琶湖とその周辺が鳥獣保護区に指定された後も、北陸などから仕入れた天然マガモを出す店が多いという。
(急増する狩猟女子、国産ジビエの意外な潜在力:京都)
今年10月、京都で3日間に渡り「第3回狩猟サミット」が開催されました。参加者は幅広く、北海道から九州まで32都道府県からゲスト・スタッフを含め総勢177名。参加者の年齢は20代30%、30代40%、40代18%と若く、平均年齢は35.1才。このうち女性の参加者が46名(25.9%)を占めました。ここ最近、様々な分野で「〇〇女子」がもてはやされ、狩猟女子も存在は知っていましたが、ここまで本格的なブームとは思っていませんでした。初日は開会式の後、講演やプレゼンなど夜までプログラムが組まれ、二日目も朝から分科会、夕食をはさみ、交流会へ。会場ではあちこちで活発な議論や情報交換が行われ、交流は深夜23時まで続きました。近頃、若者の話題といえば「ゆとり」や「さとり」ばかりが言われますが、この日会場で垣間見た姿はそうしたイメージとかけ離れた興奮と熱気に満ちたものでした。第1回の狩猟サミットが開催されたのは2013年。岐阜県の里山保全組織「猪鹿庁」が、「狩猟に対する社会の関心の高まりを一過性のブームに終わらせたくない。地域の里地里山の暮らしに狩猟を根づかせたい」と郡上市で開催したのが始まりです。その後、第2回はエコツーリズムの先駆、静岡の「ホールアース自然学校」が、第3回は日本のグリーンツーリズムの先駆、京都府南丹市美山町の「田歌舎」と「野生復帰計画」が中心となった実行委員会がバトンを受け、持ち回り開催しています。関西では今、ほとんどの森で奥山に入るほど獣の影がないといいます。サミットのアジェンダは第1回には狩猟の方法や銃の管理、ジビエ料理など狩猟そのものが中心でしたが、回を重ねるごとに「適切に自然を利用し、循環させる手法」としての狩猟、狩猟を軸とした「自給的な暮らしのあり方、それを支える生態系のあり方」を模索するものへシフトしています。今回は「自然を守り活かす、生き方暮らし方」がメインテーマに掲げられました。参加者には狩猟免許を持たない人が4割含まれ、属性も学生や教育関係者、行政、料理人、狩猟に興味がある人など様々です。目的も近年増える害獣対策としてのジビエ料理の活用、地方への移住や自給自足生活への憧れ、趣味や学術研究など、人によって異なります。今年10月、京都で3日間に渡り「第3回狩猟サミット」が開催されました。参加者は幅広く、北海道から九州まで32都道府県からゲスト・スタッフを含め総勢177名。参加者の年齢は20代30%、30代40%、40代18%と若く、平均年齢は35.1才。このうち女性の参加者が46名(25.9%)を占めました。ここ最近、様々な分野で「〇〇女子」がもてはやされ、狩猟女子も存在は知っていましたが、ここまで本格的なブームとは思っていませんでした。初日は開会式の後、講演やプレゼンなど夜までプログラムが組まれ、二日目も朝から分科会、夕食をはさみ、交流会へ。会場ではあちこちで活発な議論や情報交換が行われ、交流は深夜23時まで続きました。近頃、若者の話題といえば「ゆとり」や「さとり」ばかりが言われますが、この日会場で垣間見た姿はそうしたイメージとかけ離れた興奮と熱気に満ちたものでした。第1回の狩猟サミットが開催されたのは2013年。岐阜県の里山保全組織「猪鹿庁」が、「狩猟に対する社会の関心の高まりを一過性のブームに終わらせたくない。地域の里地里山の暮らしに狩猟を根づかせたい」と郡上市で開催したのが始まりです。その後、第2回はエコツーリズムの先駆、静岡の「ホールアース自然学校」が、第3回は日本のグリーンツーリズムの先駆、京都府南丹市美山町の「田歌舎」と「野生復帰計画」が中心となった実行委員会がバトンを受け、持ち回り開催しています。関西では今、ほとんどの森で奥山に入るほど獣の影がないといいます。サミットのアジェンダは第1回には狩猟の方法や銃の管理、ジビエ料理など狩猟そのものが中心でしたが、回を重ねるごとに「適切に自然を利用し、循環させる手法」としての狩猟、狩猟を軸とした「自給的な暮らしのあり方、それを支える生態系のあり方」を模索するものへシフトしています。今回は「自然を守り活かす、生き方暮らし方」がメインテーマに掲げられました。参加者には狩猟免許を持たない人が4割含まれ、属性も学生や教育関係者、行政、料理人、狩猟に興味がある人など様々です。目的も近年増える害獣対策としてのジビエ料理の活用、地方への移住や自給自足生活への憧れ、趣味や学術研究など、人によって異なります。最初に害獣の現状と狩猟の実態を押さえておきましょう。表1環境省の「平成24年度鳥獣統計情報 -狩猟及び有害捕獲等による主な鳥獣の捕獲数-」によると1960年代、狩猟を除く有害捕獲等による鳥獣の捕獲数は全国でイノシシ5300頭、クマ500頭、シカ200頭、サル100頭で、合わせても6100頭ほどだったものが、2000年代になるとイノシシやシカは10万頭を超え、2012年度にはイノシシは26万頭、シカは27万頭に上りました。その数、イノシシは50年前の50倍、シカは1363倍にも及びます。2007年度には新たにカワウが狩猟鳥獣に追加され、2012年度は合せて591,400頭羽、50年前の100倍近い有害鳥獣等が捕獲されるまでに増加しています。近年ツキノワグマなどでは個体数の減少がみられるものの、イノシシやニホンジカなど特定の鳥獣や外来生物の生息数増加や生息域拡大等による生態系や農林水産業等への被害は深刻化しています。国は科学的なデータに基づく鳥獣保護管理事業を計画的に実施する必要があるとして1999年「鳥獣保護法」を改正。都道府県知事が任意に策定する「特定鳥獣保護管理計画制度」が設けられました。農水省によると野生鳥獣による農作物被害額は平成21年度以降、200億円を上回っており、23年度は226億円。被害のうち全体の7割がシカ、イノシシ、サルによるもので、合計被害額が1億円以上の道府県は32あり、中でも北海道、福岡県、長野県、広島県で大きな被害が出ています。2007年には「鳥獣被害防止特措法」が成立。これにより市町村は被害防止計画を策定。国からの財政支援等を受け対策を講じています。鳥獣による被害は産品そのものもさることながら、高齢化する農家の意欲を削ぎ、農業をやめてしまう生産者も出ています。一方、害獣対策で力を発揮すべき狩猟の現場では猟師の減少と高齢化が進んでいます。2012年度の狩猟免許の交付数は18万0669件。前年度比で1万7749件(9.1%)、1996年度比では27.1%減少しています。2012年度の狩猟免許合格者数は1万0782件で、96年比で195%と倍増していますが、その増加も減少数には追いついていないのが現状です。2012年度と2010年度で免許交付者数を年代別に比較すると、20代では35.7%、30代、40代でも8~9%の伸びを見せていますが、免許交付数に占める20~40代の割合はわずか17.2%、3万0928人に過ぎません。免許交付数の82.8%を占める50代以上では2年で7.9%、3万0929人も減少しています。地域別の分布では北海道や長野県で免許交付、免許合格者、女性の比率が高く、北海道では20~40代の比率も32.7%と高くなっています。一方、青森県では60代以上が64.7%を占めるなど、高齢化と後継者不足は深刻です。若者を中心にブームを巻き起こしてはいますが、狩猟の現場は危機的状況にあります。また年間約60万羽捕獲されている有害鳥獣等の多くは有効活用されないまま処分されています。業として食用とする野生鳥獣の食肉加工を行う場合には食品衛生法の規制対象となり、厚生労働省では「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」を出しています。今年農水省が支援を行う地域を対象に調査したところ、食肉解体加工施設の設置があると回答した地域は14%に留まりました。本州では現在、捕獲されたシカの9割以上がゴミや産業廃棄物として捨てられているといいます。我が国のフード・マイレージ換算のCO2排出量は世界第1位。背景には低い食料自給率、輸入にかかる輸送エネルギーや海外飼料に依った食肉流通の問題があります。もし飼料を必要としないこうした野生動物(ジビエ)を市場に流通させることができれば、フードマイレージ換算CO2排出量を1/2000以下に抑制することもできるといいます。しかし獣肉の普及には販路の確保、コストや安定供給などクリアすべき課題が少なくありません。近畿財務局によると牛や豚などの可食部分は 70%であるのに対し、シカは10~30%で、シカは1 頭当たり100kg前後と牛や豚と比べ小さく、解体作業の手間は同じなのに残滓が多いため、処理コストは相対的に高くなるといいます。食肉価格もグラム当たり400~800円と普及のため販売価格を安く設定しており、利益率は高くありません。これを有効活用し、収益を上げられる産業に育てられれば、地域はそれを糧として豊かに生きることができます。美山における野生復帰計画の挑戦もそこを目指すものです。野生復帰計画の取り組みを紹介する前に、そのバックグラウンドであり、フィールドである京都府南丹市美山町について軽く触れておきましょう。美山町は日本のグリーンツーリズムの先駆的地域として知られています。美山町で農林業による村おこしが始まったのは1978年。美山町では若者が減少し、農地の荒廃が深刻化していました。そこで農事組合による集落営農や農産品加工などの特産品開発、生協とタイアップで産直を行うなど、早くから農業の多角化、今でいう6次化に取り組んできました。80年代に入ると農業体験や観光交流を行う「美山町自然文化村 河鹿荘」を開設。10万人を超す交流人口を集める施設となりました。その後、茅葺の民家が数多く残る知井地区の北集落が1993年国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されたのを機に、北集落で農産物や加工品の販売、民宿やレストランの営業などを開始。「かやぶきの里」として観光客の人気を集めるようになり、その後「美山と交流する会」や「かやぶきの里保存基金」などの地域保全活動へも発展していきました。野生復帰計画の原点は今から50年ほど前、芦生地区で起こったダム建設反対運動に遡ります。当時、大飯原子力発電所の余剰電力を蓄積するためダム建設の計画が持ち上がり、建設予定地の芦生集落以外では「ダムは金になる。自然よりお金」という空気が大勢を占めていました。そんな中、関西で最大規模の原生林が残る芦生を失うことに断固反対したのが野生復帰計画立ち上げの中心メンバーである江和地区に住む大野安彦さんや、井栗秀直さんのお父さんでした。芦生地区の人ではない大野さんの反対運動は地域の強い反発にも合いましたが、ダム建設計画中止が濃厚となる中、大野さんは20年勤めた郵便局を退職、観光農園江和ランドを立ち上げ、グリーンツーリズムに取り組み始めました。その後、Uターンしていた井栗秀直さんが芦生地区にNPO 法人芦生自然学校を10年前に立ち上げると、島根大学の助手を退職した鹿取悦子さん、大阪から移住し田歌舎を設立した藤原誉さんらが集まり、美山で自然を守り活かす活動を連携して行うようになりました。その活動に狩猟というテーマが加わったのは2006年。それまで美山においても狩猟は自給自足のイノシシ猟が主流でした。それが、森林の荒廃や農業被害を受けて2006年に有害鳥獣対策勉強会、2007年に駆除講座などが開催されたのをきっかけに、2008年知井地区の猟友会、地域住民、NPO等の連携により「知井地区鹿有効利用プロジェクト」が立ち上りました。狩猟はイノシシからシカへ、狩猟による鹿肉の有効利用を進めるため京都府から交付金を受け、鹿肉の解体処理施設を建設。自給自足から食肉として出荷、宿やレストランでジビエ料理として提供できるようになりました。知井地区鹿有効活用プロジェクトは年間200頭以上のニホンジカを捕獲、流通させ、年間約600万円の実績を上げるまでになりました。2010年には鹿の解体などが生態系や循環型社会、食育などを学ぶ教育旅行や観光交流プログラムに組み込まれるようになり、これを基盤としてNPO芦生自然学校の井栗さん、江和ランドの大野さん、田歌舎の藤原さんを中心とした連携組織として、2014年株式会社野生復帰計画を設立。2015年、これまでの鳥獣の捕獲、解体、加工、流通の実績を元に、簡易獣肉解体施設設置事業をスタートさせました。簡易獣肉解体施設設置事業については地域住民や保健所、行政と強い連携協力関係を有し、食品流通に関する大手商社などの専門家らの協力も得ています。10月には簡易獣肉解体施設現地見学会も実施。ハード建設だけでなく、獣肉の営業販売、人材育成のノウハウを組み合わせたプログラムを提供するもので、これまで開催した4回の説明会・研修会には計71名が参加。獣害等に悩む地方自治体の参加も少なくありません。防除のために捕獲しても廃棄するしかない獣肉を有効活用できれば、狩猟から加工流通という狩猟産業の六次化を図ることができ、地域の雇用や猟師の数を増やしていくことにもつながります。野性復帰計画では11月に第三種旅行業を取得。今後インバウンド誘致も視野に入れたDMO(地域観光推進組織)事業を本格化させる予定です。野生復帰計画はこのプロジェクトを推進する人材として新たに青田真樹さんを招き入れました。青田さんは大学卒業後、京都ユースホステル協会で足掛け15年に渡り旅を軸にした青少年の学びの場づくりをしてきました。子供時代は小学2年の頃からキャンプに親しみ、中学の頃には一人旅や一週間かけて120kmの道のりを歩く旅に挑戦するなど、自然と旅に傾注。ユースホステル協会時代も1年間の休養を取り、ワーキングホリデーでカナダに行き、ヒッチハイクやアイスクライミング、登山学校でガイド養成を学ぶ等しました。美山には学生時代、芦生の森に行ったことがありましたが、藤原さんたちとの出会いは2006年。2014年にユースホステル協会を辞め、野生復帰計画のメンバーになりました。今後、狩猟が地場産業として発展していくには、単なる食肉加販売業に留まらないビジネスモデルの構築やブランド化が必要ですが、そこでネックとなるのが安定供給の問題です。シカなどの獣肉を牛や豚などのように市場に流通させるには地域間ネットワークが不可欠であり、着地型旅行を含めた収益構造を作り上げる必要があります。青田さんの経験や実績、ノウハウは特に力を発揮する部分となるでしょう。奇しくも京都では2016年8月、森の京都博(仮称)が開催されます。これに合わせて南丹市では5月には「美山サイクルグリーンツアー」、6月には「京都丹波トライアスロン大会」も開催されます。現代人が失いつつある野生を守り継ぎ、自然を守り活かしながら暮らす人を野生復帰計画では「野人」と呼んでいます。美山町の人口は現在4200人、高齢化率は42%にも上ります。野人たちの挑戦は美山、そして日本の農山漁村をどう変えていくのか。狩猟の新たなムーブメントの到来を期待するものです。

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(ホテルで猟銃暴発、隣の部屋に貫通:北海道)
1日午後、北海道中標津町東20条北1丁目のトーヨーグランドホテルで、宿泊中の男性が「猟銃を暴発させた」と中標津署に通報した。同署によると、暴発したのは男性所有のライフル銃。弾1発が隣の部屋まで貫通していたが、当時は無人でけが人はいない。猟銃はエゾシカ狩猟のため所持していたという。
(脚引きちぎりワナから脱出、3人襲ったイノシシ:香川)
5日夕から6日朝にかけ、高松市西植田町の山林で男性3人がイノシシに襲われ、重軽傷を負った。イノシシはそのまま逃走し、高松東署や地元の猟友会が行方を追っている。5日午後4時頃、狩猟をしていた同市香川町の男性(67)がわなに掛かったイノシシを仕留めようと近づいたところ、イノシシは自分の脚を引きちぎって脱出し、男性の右脚や尻にかみついた。6日午前8時頃には、同じ山林で農作業をしていた近くの男性(78)が両腕などをかまれ、助けに入った別の男性(82)も右手の人さし指をかみちぎられる大けが。同署では、同一のイノシシの可能性もあるとみている。
(イノシシ民家に突入、100頭近く生息か?:三重)
鳥羽市の離島・答志島の答志町答志地区で2日午前4時過ぎ、漁業、橋本善文さん(75)方にイノシシ1頭が玄関のガラス戸を突き破って進入、引き戸などを壊して逃げ去った。居間にいた橋本さんと妻のひで子さん(73)にけがはなかった。5年前に初めて島でイノシシが確認されて以来、住家への被害は初めて。ひで子さんの話によると、漁に出るため早起きをして居間でくつろいでいると、突然、ドーンという音がした。「地震かと思い飛び上がった。廊下を見ると1メートル以上はある大きなイノシシが座っていた」という。2人は別の部屋に隠れて難を逃れたが、玄関のガラス戸や引き戸などが壊され、壁にはけがをしたイノシシの血が付着していた。「1、2分間の出来事だった」という。橋本さん方は島の中心街にある。島ではイノシシが確認されて以降、毎年、田畑が荒らされる事案が発生。4基の捕獲柵を設置し駆除をしているが、年々、被害は拡大している。市農水商工課は、島での生息数が100頭近くに増えたとみて、本格的な駆除を検討している。
(イノシシ被害、芝荒れ誘客に水:福島)
いわき市内郷の白水阿弥陀堂の敷地内で、イノシシに芝生を掘り起こされる被害が後を絶たない。阿弥陀堂は県内唯一の国宝建造物で、平成28年度に市全域を博覧会会場に見立てて催す「いわきサンシャイン博」の目玉の一つになっている。景観を損なえば誘客に水を差しかねず、市は捕獲者への報奨金の増額などの対策を強化する。被害が深刻なのは、阿弥陀堂の敷地約24万3600平方メートルのうち、市有地約6万5000平方メートルの一部。市は今年2月に住民からの通報で芝生やハスが咲く池の周辺で被害を確認し、地面が大きく陥没した数カ所を重機で固める応急措置を講じた。被害はその後も拡大し、市は約50万円で周囲に電気柵を設置した。参拝者や観光客の往来のため敷地全体を囲えず、秋には柵の切れ目からイノシシが侵入した。対策を講じても荒らされる「いたちごっこ」に市文化・スポーツ課は「観光客が増える来春に再び応急処置を行い、景観の維持に努めたい」としている。周辺の農作物が荒らされる被害も相次いでいる。地元住民の1人は「震災前までイノシシの被害は無かったのに年々、深刻化している。県や市の早急な対策が必要だ」と事態打開を訴える。個体数の抑制に向けた県のイノシシ管理計画を基に、市が推計した市内の生息数は平成26年度で約1万300頭。農業や生態系に影響しない「安定生息数」は約1100頭で、約10倍に相当する。市環境企画課の藁谷孝夫課長(54)は「震災と原発事故に伴う捕獲の減少で個体数が急増したと推測している。山の餌が足りず、里に下りているのではないか」と話す。市は10月に1頭当たりの捕獲報償金を従来の1万円から最大2万円に引き上げるとともに、今年度の捕獲目標数を2400頭から3000頭に増やした。今年度から始まった県の直接捕獲事業と合わせた市内の捕獲目標数は4000頭となる。県猟友会平支部の国友昭和支部長(76)は「会員への呼び掛けを強め、駆除する人数を確保したい」と話している。
(電気柵感電死で書類送検、容疑者死亡のまま:静岡)
静岡県西伊豆町で7月、川遊び中に手製の電気柵に感電した男性会社員ら2人が死亡、小学生2人を含む5人が負傷した事故で、県警は1日、柵を設置し、8月に首つり自殺した男性(当時79)を容疑者死亡のまま重過失致死傷の疑いで書類送検した。県警によると、男性は事情聴取に「普段は夜間しか電源を入れていなかった。当日は切り忘れていた」と説明。電気関係の仕事に従事した経験もあることから、危険性を認識していたと判断した。実験で電気柵に通電すると、少なくとも数百ボルトの電圧が流れることを確認したという。送検容疑は西伊豆町の川べりに安全対策を施していない電気柵を設置した結果、7月19日午後4時半ごろ、神奈川県逗子市の会社員、岩村知広さん(当時47)と川崎市宮前区の飲食店従業員、尾崎匡友さん(同42)を感電により死亡させ、2人の家族ら5人にやけどを負わせた疑い。男性は2007年ごろ、シカから花壇を守る電気柵を設置した。初めはバッテリーを使っていたが、故障したため、12年ごろに家庭用電源に接続。漏電防止装置や危険を知らせる表示板は設置していなかった。
(クマ、わなにかかる:和歌山)
和歌山県高野町で、体長1メートルほどのツキノワグマが捕獲されました。イノシシを捕獲する罠にかかっていたということです。「クマはこちらの民家の奥に仕掛けてあったイノシシ用の罠にかかっていたということです」午前11時半ごろ、和歌山県高野町で、オスのツキノワグマがイノシシを捕獲するための罠にかかっていたところを土地の所有者が発見し、和歌山県に通報しました。麻酔で眠らせて保護されたクマは、体長97センチ、体重30キロほどで推定2〜3歳の若いクマだということです。「わしも50年ほど猟師したけどな。クマ初めて。でかいよやっぱし」(土地の所有者)「冬眠前にむけて、脂肪をたくわえている季節なんですけど、たまたま通りかかってかかってしまった。」(野生動物保護管理事務所の担当者)クマがふたたび住宅地にこないよう檻を叩いたり爆竹を鳴らして人間は怖いということを学習させ、民家から離れた山に放すということです。
(大学にイノシシ、目撃相次ぐ:山口)
2日午前11時半ごろ、山口市吉田の山口大吉田キャンパスに、いずれも体長約70センチのイノシシ2頭が現れた。同キャンパスでは今秋、イノシシの目撃が相次いでおり、同大は学生や教職員にメールで注意を呼び掛けている。
(サル捕獲へ大型おり設置:徳島)
昨秋、住民18人がサルに襲われる被害が起きた板野町で、ニホンザルを捕まえるための大型おりが同町川端の山裾に設置された。町が再発防止策として計画していた。地区周辺には20匹程度の群れが確認されており、一網打尽を狙う。おりは縦16メートル、横8メートル、高さ3メートル。内部には四方にトタンの壁を設置しており、サルが外に出るには扉がある1カ所の出入り口を通るしかないという構造となっている。民有地を無償で借り、2日設置した。町はおりの中にある木の上にミカンやリンゴなどを置き、サルを招き寄せる。監視カメラ1台を取り付けており、町役場にあるモニターを通じ、職員が行動を確認する。サルが警戒心を解き、日常的にエサを食べに来るようになれば、扉を閉める。群れで捕まえることを想定しており、捕獲までには数カ月かかる見通し。町では昨年10~11月、同町吹田の板野東小学校近くの住宅地で児童らが相次いでサルに襲われ、17人が負傷した。今年も果樹畑や家庭菜園などで食害が出ていて、住民から抜本的対策を求める声が高まっている。町は「とにかく捕獲していかなければ、解決にはならない」(玉井孝治町長)として、群れを捕獲するおりの設置を決めた。山間部を含む大坂地区にもう1基設置することを検討している。県農林水産政策課によると、サル捕獲用の大型おりは同町以外に牟岐町や佐那河内村など8市町村で計24基設置されている。
(サル1匹うろつく:福岡)
6日午前7時ごろ、福岡県筑紫野市針摺南2丁目付近で、サル1匹がうろついているとの目撃情報があった。福岡県警筑紫野署は「発見しても近づかず、避難して下さい」「サルとは目を合わせないように」と話している。
(繁華街サル出現、吹き矢で御用:大阪)
2日午後3時35分ごろ、大阪市中央区西心斎橋2丁目の雑居ビルで、男性から「サルがいる」と110番があった。連絡を受けた同市職員らが捕獲に乗り出し、約3時間後の午後6時25分ごろ、ビル5階のベランダにいたサルを麻酔薬の吹き矢を打ち込んで眠らせ、捕獲した。ニホンザルの雄とみられ、体長50~60センチだった。けが人はなかった。現場はアメリカ村と呼ばれる繁華街で、若者ファッションの店舗が集まる。観光客らでにぎわっており、一時騒然とした。市によると、11月25日から市内各地でサルの目撃情報が相次いでおり、注意を呼び掛けていた。いずれも同じサルとみられ、大阪府北部の山間部から降りてきた可能性が高いとしている。サルはおりに入れられて、市動物管理センターに収容された。サルが捕獲されたビルにある写真スタジオで働く女性(36)は「アメリカ村でサルを見るなんて。びっくりした」と驚いていた。
(捕獲のサル、2日後に死ぬ:大阪)
大阪市は4日、同市中央区西心斎橋のアメリカ村で捕獲されたサルが死んだと発表した。死因は不明。サルは2日午後、アメリカ村の5階建てビルに現れ、府の職員が麻酔の吹き矢で眠らせて捕獲し、引き取り先を探すため市動物管理センター(住之江区)に収容された。その後、サルは目を覚ましたが、バナナなどを与えてもほとんど食べず、4日午前9時頃、横たわって苦しそうな様子を見せ、同36分に死んでいるのが確認された。死体は市立自然史博物館に引き渡す予定。
(農作物被害拡大で狩猟登録者増加:富山)
イノシシなどの野生動物による農作物被害の拡大に伴い、県内の狩猟登録者数が増えている。捕獲数の増加にもつながることから、県は鳥獣被害対策として、狩猟免許取得を積極的に促していく方針だ。県によると、イノシシやニホンザルなど、野生動物による農作物の被害額は2013年度8711万円、14年度9047万円と増えている。このうち、イノシシによる被害は13年度3656万円、14年度4109万円と、4割以上を占め、2年連続で増加している。鳥獣被害の拡大を背景に、県内の狩猟者の登録数も増えている。▽網猟▽わな猟▽空気銃や装薬銃を使用する第1種銃猟▽空気銃のみを使用する第2種銃猟の計4種類の登録者数は、13年938人、14年1018人で、今年は11月12日現在、1059人に上っている。この中でも、わな猟の登録者数の増加が目立っており、10年の132人から5年連続で増え続け、今年は約2・5倍の342人に上った。イノシシによる農作物被害が増えている影響で、猟銃などに比べて扱いやすいわな猟に取り組む人が増えているとみられる。狩猟登録者数の増加に合わせ、イノシシの捕獲数も12年度640頭、13年度1015頭、14年度1888頭と増えた。今年度も9月末時点で、前年同期と比べて585頭増の1329頭となっており、前年度の捕獲数を上回る見込みだ。捕獲数の増加につなげようと、県は年2回だった狩猟免許試験を13年度から3回に増やしたほか、県猟友会による初心者向けの講習会を開くなどの取り組みも進めている。県の担当者は「ハンターの高齢化も進んでいるので、若い人が狩猟免許を取得しやすい環境を作り、捕獲数を増やしていきたい」と話している。
(鳥獣駆除、猟銃以外で:静岡)
ニホンジカやイノシシなどの本格的な狩猟のシーズンを迎えた。有害鳥獣による農作物被害は、県内で年間4億円超に上る一方、高齢化と後継者不足でハンター数は減少している。人手不足を受け、最近では、銃よりも手軽な「わな猟」に注目が集まっているほか、動物の習性を利用した硝酸塩入りの餌による駆除の研究も進んでいる。最近は誤射による死亡事故などのリスクがある猟銃に頼らない動きが出てきた。県自然保護課によると、猟銃免許の所持者は1970年度の約2万人をピークに2014年度には3266人に減った。一方、わなを仕掛けて鳥獣を捕獲する「わな猟」の免許所持者が近年増えている。県内の合格者数は09年度以降、年間300~400人台で推移。わな猟免許の所持者は12年度に計3268人で猟銃免許の所持者を逆転した。狩猟者の拡大を目指す改正鳥獣保護法の5月施行でわなと網猟の取得年齢が「18歳以上」に2歳引き下げられ、今後も増えそうだ。獲物を求め、休日に大人数で行うことが多い猟銃での狩りに比べ、わな猟は1、2人で設置できる手軽さが見直されているという。また、わなは数千円から購入でき、1日1頭程度を連日捕獲できる効率の良さも注目される要因の一つだ。県猟友会の長田浩一事務局長(60)は「市街地近郊にも仕掛けられるわなとうまくすみ分け、わなと銃の両輪で対応していきたい」と話している。狩猟による駆除を後押しするため、駆除した獣肉を食用に活用する動きも進む。県農山村共生課によると、シカなどの野生の獣肉を取り扱う食品加工センターは県内に10か所あり、大半が設置5年以内だ。伊豆市は唯一、行政主体で加工センターを設けた。銃による狩猟よりも人への危険性が少ないとして、硝酸塩を使った餌で駆除する方法も検討されている。県農林技術研究所森林・林業研究センター(浜松市)は、一度胃にのみ込んだ食べ物を口に戻して徐々に消化する「反芻はんすう動物」の特徴を生かし、ニホンジカを中毒死させる手法を開発した。大場孝裕上席研究員によると、餌に仕込んだ硝酸塩を摂取すると、反芻動物の胃の中にいる特定の微生物が亜硝酸塩に変え、血中の酸素を運ぶヘモグロビンと結びつき、酸欠状態にして死に至らせる。「鳥や熊など胃の中が酸性の生物が誤って摂取しても影響はない」(大場上席研究員)という。13年に東伊豆町の野生のニホンジカで実験した結果、12月~2月で7頭の致死に成功。成果を学会などで発表したところ、約10自治体から問い合わせがあったという。これに対し、県動物保護協会は、「食害による損害は深刻」と受け止めた上で、「中途半端な量だと苦しむだけ。天然記念物のニホンカモシカへの影響など、クリアすべき課題も多い」と指摘する。
(イノシシ解体場完成:宮城)
白石市が、駆除したイノシシを解体処理するため福岡八宮弥治郎地区に建設していた「有害鳥獣解体場」が3日完成した。県内では今年4月に使用を始めた蔵王町に続くもの。県内では、東京電力福島第1原発事故に伴う放射能汚染でイノシシ肉が食用にできなくなり狩猟者が減ったことから繁殖し、駆除と処分の効率化が急務になっていることが背景にある。県内で捕獲したイノシシの肉から国の基準の1キロあたり100ベクレルを超える放射性セシウムが検出されたことから、2012年6月以降、全県で出荷停止が続いている。捕獲されなくなり、頭数が増えた結果、農作物の被害も急増。白石市では12年度に568万円だった被害額が、13年度は2761万円、14年度は5634万円と10倍に増えた。このため市で猟友会の猟銃による駆除のほか、箱わなや電気柵、ワイヤメッシュ柵などを設置して捕獲を進め、捕獲数も12年度の85頭から、13年度589頭、14年度834頭と急増している。一方で駆除した体重80?100キロのイノシシの処分には、土を約2メートル掘って埋める必要があり、労力の負担や埋設場所の不足が課題に浮上。10キロ程度に解体すれば、角田市の角田衛生センターで焼却が可能だが、個人では容易でなかった。解体場は、こうした作業の効率化が目的。木造平屋の建物に天井からつるして移動させ、刃物を使っての解体作業ができるフックや、保存する冷凍庫などを備える。管理は地元猟友会に委託し、1日5頭の処理が可能という。国の鳥獣被害防止総合対策交付金を活用し、総事業費は3472万円。風間康静市長はこの日の落成式で「捕獲頭数の増加で埋設にも限界がある。解体処理の迅速化と、作業負担の軽減化につながる」と期待を述べた。県のまとめでは、イノシシによる県内の農作物被害は昨年度で1億1963万円。原発事故直後の2011年度は2673万円で、4倍以上に増加した。昨年度の獣類による被害全体(1億8746万円)の6割と農家を悩ませている。県によると、県南部を中心に頭数が増加。子だくさんな上に、原発事故に伴う出荷規制や狩猟者の高齢化も影響しているという。各市町村や農協などで作る協議会が国の交付金を活用してわなや柵の設置や捕獲隊員の賃金補助をしている。それでも被害は増え続けており、県の担当者は「対策は少しずつ効果が出ているが、イノシシ被害は急速に拡大しており追いつかない」と頭を抱える。
(おじろ用心棒:兵庫)
兵庫県香美町で考案されたサル害対策の簡易電気柵が好評だ。ワイヤメッシュ(WM)柵上部に電気線を付加し、支柱にも通電性を持たせた形で設置するもので、集落名を採り「おじろ用心棒」と呼ばれる。2年前から製品化もされている。
(ハンターの魅力紹介、「狩猟体感ツアー」:青森)
県内のハンターが激減しているのを受け、県民に狩猟への興味を持ってもらおうと、県と県猟友会は6日、初めての「狩猟体感バスツアー」を、弘前、つがる両市で行った。狩猟免許を持たない20~70代の男女29人が猟の様子や銃砲店を見学したり、野生鳥獣の肉を使った「ジビエ料理」を試食したりして、狩猟の魅力を肌で感じた。つがる市では、強風の中、カモ・キジ猟を約100メートル後方から見学。銃を撃つ場面は見られなかったが、猟の過酷さと楽しさを垣間見た。弘前市では上鞘師町の宇野銃砲火薬店を見学し、ヒロロで、現役ハンターとの座談会を開いた。中弘猟友会の工藤昭副会長は「猟は3日に1日しか成功しない。でも、獲物を捕った後の料理はおいしく、つらさを忘れる」と語った。また、カモ鍋やエゾシカのサラミに舌鼓を打ったり、模擬射撃をしたりして、狩猟の魅力を満喫した。青森市の会社員、中村一星さん(42)は「とても面白かった。来年、ぜひ免許を取りたい」と満足した様子。弘前大学農学生命科学部2年の後藤杏香(きょうか)さんは「狩猟を見て感動した。料理もくせがなく、おいしかった」と笑顔で語った。同ツアーは13日、南部地方でも行われる。
(縄文食から有害鳥獣問題考える:長野)
信濃毎日新聞社は20日、長野市大岡乙の市大岡公民館でシンポジウム「縄文食から有害鳥獣問題を考えるin大岡」を開く。農作物への食害が深刻なニホンジカ捕獲頭数は、県内で年間4万頭に迫るのに対し、食肉に処理されるのは約1800頭にとどまる。身近な鳥獣を食料としていた縄文時代を参考に、鹿肉を新たな食材として活用の幅を広げる方法を考える。県鳥獣対策・ジビエ振興室によると、シカなどの獣は食用にする際、捕獲してから解体まで、短時間で衛生的に処理しなければならない。柔らかくて味のいい部位は「和牛並み」(長野市いのしか対策課)の値段という。シンポでは、縄文食を生かす方法を考える。当日は午後1時開会。元県立歴史館総合情報課長の宮下健司さんが縄文食の体験について解説する。黒曜石で石器を作り、切れ味を試したり、鹿肉料理を試食したりする時間も設ける。宮下さんのほかに、大町市の「農園カフェラビット」オーナーでジビエ料理研究家の児玉信子さん、長野市いのしか対策課長の山崎千裕さん、大岡地区住民自治協議会長の中村哲夫さんが登壇。野生鳥獣による農林業被害の現状や、ニホンジカ捕獲の状況や料理法などについて意見を交わす。
(急な遭遇はクマも困る、音で存在アピール大事:富山)
上市町伊折の登山道で十一月二十二日に男性登山者二人がツキノワグマに襲われた。二人はクマを避けるのに有効とされる鈴を持っていなかった。県は、冬眠前の年内はまだ出没の危険があるとし、山に入る際にはクマ鈴の携帯など対策を呼びかける。なぜ、鈴でクマを避けられるのか。そもそもなぜ人を襲うのか。専門家に聞いた。県によると、上市町に出没したクマは、男性二人を襲う前に別の登山者に遭遇していた。斜面にいたクマは登山者が近づいてきたことに驚き、急斜面を転がり落ちると、そのすぐ近くに男性二人がいたことに驚き、反射的にかみついたとみられる。富山市ファミリーパークの動物課課長代理の村井仁志さんは、クマが人を襲うのは「急に出合い、びっくりしてパニックになるから」と指摘する。クマの食性は専ら植物で「昆虫は少し食べても、人間を食べることはない」という。「聞き慣れないものや身近にいないものがあると、避けて茂みに入っていく」と村井さん。クマは耳が良いため、音で存在を知らせることが大切。鈴やラジオだけでなく、大きな話し声も有効だという。村井さんは「できるだけ距離があるうちに知らせることが重要」と強調。ただ、風や雨、川の音が邪魔することもあるため、油断は禁物だ。万一、クマに遭遇した場合はまずは落ち着いて、その場を立ち去ることだという。逃げるものを追う習性があり、刺激しないよう背中を見せずに逃げることもポイント。クマとの遭遇を避けるには、県の「クマっぷ」が役立つ。二〇一四年度からのクマの目撃情報が地図上にまとめられている。県によると、今年は主な餌となるドングリが豊作だったため、目撃・痕跡情報は十二月四日現在で百五十六件で、昨年の半数以下。人身事故は、五月に富山市(旧山田村)高清水の山中で山菜採り中の男性がツキノワグマに襲われ左腕をけがした事故と、十一月に上市町であった事故の二件にとどまる。冬眠時期は十一月~翌年四月ごろが一般的だが、天候にも左右され、十二月中に目撃された例もある。冬眠直前は脂肪を蓄えるために食べ物を求めて活発に行動するため、注意が必要だ。
(親子グマ、来年は目撃増?:長野)
二〇一六年は子連れのツキノワグマを見る機会が増える-? 県内の森林で今秋、餌のドングリが豊富に実ったため、この冬は栄養を十分に蓄えた多くの雌が子どもを産み“ベビーブーム”が起こる可能性があるからだ。目撃情報が少なかった一五年から一転、クマ対策に気を抜けない一年になりそうだ。クマは冬眠準備で食いだめする秋ごろ、食べ物がないと餌を求めて人里に下りてくる。県によると、ナラやブナなどのドングリが凶作だった昨年は二千八百四十三件の目撃があり、三十二人が襲われた。一方、豊作だった今年の目撃は千百二十三件と少なかった。ツキノワグマは六~七月に交尾し、秋ごろまでに栄養を十分に蓄えた場合、冬の間に出産する。母グマは出産後一年間を子連れで過ごし、出産翌年は交尾しないとされる。凶作だった昨年は多くの雌が栄養不足のため出産しておらず、今年は多くの雌が一斉に子どもを産む可能性があるという。豊作の翌年に子グマが増えれば、当然必要となる餌の量は増える。さらに凶作が重なると人里でクマの目撃が増えるという。前年が極めて豊作だった〇六年には、前年比四・五倍の四千五百四十六件の目撃があった。県鳥獣対策・ジビエ振興室は「来年は雪解けと同時に親子で出てくる可能性が高い。母グマは子どもを守ろうと凶暴になる。鈴の携帯など遭遇を避ける対策をしてほしい」と注意を促している。
(野生のキジ2羽が民家周辺に日参:大分)
中津市耶馬渓町の伊福集落(23世帯)に、野生のキジ2羽が1カ月ほど前から毎日のように現れている。農作業をしている人のそばや民家の庭先にやって来たり、道路を歩くなど周辺で自由に過ごすキジ。集落の住民は「癒やされる」「新たな住民がやって来たようだ」と温かく見守り続けている。一帯は「裏耶馬渓」と呼ばれている奥深い山間部の一画。イノシシやサルなどの鳥獣が見掛けられるのは珍しくないが、住民は「人家すぐ近くまでキジがいつも来るのは今までで初めて」という。キジは赤い顔、濃い青や濃い緑色の羽を持つきれいな姿の雄2羽。体長約60~70センチ。片方がやや小ぶりなので「親子ではないか」とみられる。現れ始めたのは10月下旬ごろから。前触れもきっかけもなく、人家のそばにふと来るように。最初はカメラに収めるなど「珍しい!」と喜んでいた地域の人々も、今では「居るのが当たり前の存在」になっている。キジは昼間滞在。作業をしている人のそばに近寄って“交流”したり、道を闊歩(かっぽ)し、庭木に止まって遊ぶなど気ままに動いている。地域からは「道で2羽、駆けっこしていた」「郵便局員のミニバイクの後ろを追いかけていた」「くちばしでノックして家の中に入ってきた」などいろんな声。雌も一緒に現れる時もあり、「合わせて4羽が一緒に日なたぼっこをしていた」と、ほのぼのとした光景も見られている。9カ月前にUターンした矢野隆英さん(73)は直接手から焼き米を渡すなど仲がいい。「ケンちゃんとケン君と呼んでいつも触れ合っている。友達ができた」。畑にいるとよく来るという江渕稔さん(63)は「特に悪さをするわけでもなく、何よりも見た目がきれい。いい兆しでは」と目を細めている。
(シカの皮で太鼓、三味線:熊本)
美里町畝野の元左官で農業の宮崎清一さん(72)は、増えすぎて駆除が続くシカの皮を使って、太鼓と三味線を作っている。作り方は誰からも教わらず、見よう見まねの我流という。撃たれたり、わなにかかったりしたシカの皮が材料。皮は雑誌で紹介されていた方法を参考になめす。近くの山のセンダンやモチノキをくりぬいて本体に利用。三味線には竹も使った。弦は楽器店、太鼓の鋲[びょう]はホームセンターで購入する。「捨てるのはもったいない」と思い立った。農作業の合間を使って、この3年余りで三味線3さお、太鼓3張りを作った。ただ、宮崎さんに音楽や和楽器の知識はほとんどなく、「出来栄えは不明」と笑う。直径30センチ前後の太鼓は「ポンッ、ポンッ」と軽快な音色で「祭りで使える」と自信をみせる。実際に地区の祭りで子どもたちが試しに演奏したこともあるという。三味線は、妻のたづ子さん(68)が踊り子を務めるスコップ三味線の舞台で利用できないかと出番を模索中だ。宮崎さんは「どこかで使えるとうれしい。ほかにもシカ皮の利用法も考えたい」と、意欲満々だ。
(カモねぎ料理、3000人味わう:新潟)
カモ料理や、地元野菜の「やわはだねぎ」の魅力を味わってもらおうという「かもん!潟東カモねぎまつり」が6日、新潟市西蒲区の潟東農村環境改善センターで開かれた。約3000人が訪れ、温かいカモ汁や、カモ猟の寸劇を楽しんだ。地元の旧潟東村周辺では、約50年前からカモ猟が続いている。まつりは同区役所などで作る実行委員会が主催し、今年で20回目だ。この日はカモ汁定食800食が、まつり開始約1時間弱で完売。同市南区から訪れた会社員、安達一博さん(45)は「カモの肉を買ったので家でカモ鍋に初挑戦したい」と顔をほころばせ、カモ汁を食べる娘の可南ちゃん(7)も「おいしい」と笑顔を見せた。寸劇では潟東猟友会の会員らが、カモ猟の様子を披露した。カモのかぶりものを着けた会員が、地面にまかれた餌のクズ米に歩み寄ると、猟師役がすかさず、仕掛けてあった差し渡し20メートルに及ぶ網をかぶせて捕獲。観客からはどよめきがあがった。
(「料理人の卵」にジビエ授業:熊本)
シカやイノシシなどを食材にする「ジビエ料理」の特別授業が4日、熊本市中央区本荘町の専修学校常盤学院であった。ジビエはフランス語で、食用の野生鳥獣肉を指す。県内の飲食店などでつくる「くまもとジビエ研究会」(村田政文会長)が、同学院の調理師養成科と調理科で学ぶ“料理人の卵”たちにジビエ料理を知ってもらおうと、毎年実施している。県猟友会のメンバーがシカの解体も実演。その後、生徒約60人が「筋肉のかたまりに沿って切り分けて」とアドバイスを受けながら、シカのもも肉を切り分けた。「筋に沿って包丁を入れるとうまくできた」と、調理科3年の後藤崇仁さん(18)。シカの背骨でだしを取ったカレーや、イノシシ肉のソーセージも試食した。県自然保護課などによると、県内で昨年度、捕獲されたシカ、イノシシは計約4万7千頭で、食用加工は約4%にとどまる。県は、農作物被害対策の一環としてジビエ料理の普及に力を入れている。
(最優秀賞にシカ肉ソテー:福岡)
野生のイノシシやシカの肉を使ったオリジナル料理を発表する「みやこ肉ジビエ料理レシピコンテスト~みやこ☆ジビ☆レピ」がみやこ町役場・犀川支所前駐車場であった。将来のご当地グルメになることが期待される独創的な料理が提案され、最優秀賞にはシカ肉を使ったソテーが選ばれた。ジビエは野生鳥獣の肉のこと。食材として全国的に人気が高まっている。みやこ観光まちづくり協会が町内のジビエを「みやこ肉」としてPRしており、初めてコンテストを企画した。町内を始め、行橋市、築上町、福岡市、大分県宇佐市などの高校生、飲食店経営者、主婦らから12点の応募があった。一次の書類審査を通過した8点(7個人・団体)が本選に進出。11月14日の本選で、参加者は1時間の制限時間内に、肉まんやロールキャベツ、スープパスタなどの料理をレシピ通りに調理した。完成した料理は、料理漫画「クッキングパパ」の作者のうえやまとちさん、井上幸春町長、料理研究家ら5人が試食し、斬新さや創意工夫、普及性などを140点満点で審査した。最優秀賞は122・5点を取った福岡市東区のパート従業員、中村富貴子さん(66)の「鹿のこんがりパン粉ソテー」。ワインと塩麹で一晩漬け込んだシカの肩肉を焼き、煎ったパン粉とチーズを載せるシンプルな料理に仕上げた。うえやまさんは講評で「手軽に作ることが出来る。ジビエ料理の普及につながりそうだ」と話した。優秀賞には、みやこ町のパン店経営、古田明日香さん(34)の「猪いのししのボロネーゼ」、豊前市の創作ずし研究家、清水みちよさん(53)の「イノシシそぼろたっぷり太巻きお寿司」が選ばれた。同協会の中村政弘・事務局長は「工夫を凝らした質の高い料理ばかり。みやこ肉を使ってもらえるよう料理の普及に努めたい」と語った。受賞した三つの料理は来年3月19、20日、犀川体育館周辺で開催されるジビエ祭に出品し、多くの人に味わってもらう。
(ジビエ料理、食べて賞品を:岡山)
狩猟で捕獲した鹿やイノシシの肉「ジビエ」を使った料理や加工品を提供する店を巡る「おかやまジビエ・スタンプラリー」(県備前県民局など主催)が、岡山市など3市1町で開かれている。
(この冬は猪鍋をぜひ:愛知)
設楽町観光協会は1日から、設楽猪鍋セット注文販売受け付けを開始した。商品は特上ロースセットとお得セットの2種類があり、注文を受けて順次発送される。同町では、鳥獣害対策や猟師育成保護を目的として、2001年度から獣肉の商品化を進め、冬季限定販売してきた。猪肉は、豚肉などに比べ高タンパクで低脂肪、低カロリーのヘルシーな食材。同町内で捕獲されたイノシシの新鮮肉を地元産コンニャクや八丁味噌、ダイコンなどとセットにして販売する。特上ロースセット(猪肉600グラム)は9000円で、お得セット(猪肉500グラム)が6000円。同協会によると、販売初日から昨年を上回る勢いで注文が入ったとのこと。
(銀座でジビエづくしの特別コースを開始:東京)
「小熊(こぐま)」は厳選した旬の食材と日本各地の希少な地酒を揃える東京・銀座の日本料理屋ですが、2015年12月1日からジビエづくしの特別コースを始めると発表しました。10品中6品にジビエを使ったという、その気になるコースの内容とは?コースの目玉はロース肉を使った「熊鍋」 コースは鴨の骨からしみでたエキスと脂を少しの塩と醤油一滴のみで味付けした鴨ガラの出汁と、鴨の砂肝、レバー、心臓にささみを加えて甘辛く煮つけたキモのしぐれ煮の「鴨づくし」からスタート。鴨のミンチを餡にした鴨まんじゅうも登場します。続いて焼き物。その日の仕入れ状況によって、鴨、イノシシ、鳩などさまざまなジビエが食べられます。天然真鴨はジューシーで濃厚な味わい、鳩のエトフェはしっとりとした食感、ドンコ(イノシシの仔)はしっかりとした弾力なのにやわらかい肉質。絶妙な火加減とシンプルな味付けによって、臭みのない、肉本来の味を十分に味わうことができます。コースの目玉となるのは、ツキノワグマのロース肉を使った熊鍋です。冬眠前にどんぐりなどをたっぷり食べた熊の肉は、芳ばしい木の実の香りと脂身の美味しさが特徴。赤味噌と白味噌の合わせ味噌で、肉本来のしっかりとした風味を引き出しつつ煮込んでいくと、脂が溶け出しバターのように芳醇な香りが広がります。そこに牛蒡、セリ、葱などを入れて軽く火を通せば、野菜の美味しさが一層引き立ちます。締めには、鍋の残り汁と土鍋で炊いた炊きたてご飯で雑炊も作ってくれます。また、ジビエ料理だけでなく、小熊名物の"熟成刺身"や今が旬の香箱蟹など、この時季ならではの料理もコースに入っています。小熊には、ワインソムリエ、日本酒利酒師が常駐しているのもポイント。ジビエと相性のいいブルゴーニュのワインや大分県の純米大吟醸「ちえびじん 愛山」など、シチュエーションと料理にぴったりのお酒も一緒に楽しみましょう。
(「熟成キジ」肉の甘み楽しんで:愛媛)
愛媛県南部の山あいに位置する鬼北町(人口約1万1千人)では、野鳥として知られるキジの飼育が盛んだ。生産管理や加工販売を担うのは町農業公社「鬼北きじ工房」で、独自の「鬼北熟成雉」のブランドもじわりと浸透している。「ケーン」という特徴ある鳴き声が響く。声の主は小屋の中を元気よく駆け回る色鮮やかなキジたちだ。同工房のほか町内8カ所で計約1万3千羽のコウライキジを飼育。農家は全て兼業で、共通の飼育マニュアルに従い品質の統一を図る。鬼北町などによると、現在は合併して町の一部になっている旧広見町が平成4年、第三セクター事業として飼育を開始。珍しい特産品を模索した結果、キジにたどり着いたという。高知県檮原町から仕入れた約500羽からのスタートだった。飼育農家の一人、程内覚さん(65)は「加工業などで生まれる雇用は町にとって大きい」と話す。工房長の丸石則和さん(35)によると、春先から200日余りをかけて飼育し、肉に脂が乗る冬に一気に食肉処理。熟成にも気を配り、通年出荷するために冷凍する。松山市の居酒屋「野人料理愛治」では鬼北産のキジ肉を楽しめる。店長の大平重人さん(37)は鬼北町の愛治地区出身。「寒い冬には鍋がよい。肉の甘さを楽しみたいなら塩焼きがベスト」とおいしさを語る。温泉旅館「雉子亭豊栄荘」(神奈川県箱根町)では鬼北産キジ肉のフルコースを提供。「しっかりしたうま味」「クセがない」などと利用客に好評という。
(シカ被害に悩む、駆除だけでは済ませられない事情:アメリカ)
米農務省は動植物検疫所と野生動物庁とともに、ニューヨーク州内のシカ被害対策について査定原案を作成し、30日発表した。スタテン島のシカ被害に頭を悩ますニューヨーク市では、この原案を元に市独自の対策案を立てる予定で、市民からも意見を募っている。スタテン島では近年シカがその数を増やしており、島内の公園や私有地を荒らす被害が出ているほか、車との衝突事故やシカに寄生するダニが媒介する病気の懸念などがある。昨年の航空測量調査では島全体で763頭のシカが確認されたが、専門家らはその数を1000頭以上と推測している。このためニューヨーク市公園局では今夏、特別組織を作り、州の査定原案をもとに市の対策案の作成を始めた。この原案では、被害対策として殺傷駆除策と殺傷以外の防除策の併用を提案しており、殺傷駆除は銃猟や狩猟、安楽死で頭数を減らすことを指し、防除策としては柵やバリケードの建設、シカの移動や威嚇、産児制限など施策が挙げられている。しかし市独自の対策案作成にあたっては、動物愛護団体がビル・デ・ブラシオ市長のサポーターであり、市長は殺傷駆除に否定的であるうえ、同市の規定では狩猟が禁止されていることから、併用ではなく殺傷駆除以外の手段が望ましいと考えられている。

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(クマ出現、会社内で大暴れ:福島)
27日早朝、福島県本宮市荒井の建築資材卸売会社「イワキ」(沖田満好社長)の本社近くに体長1メートル以上のツキノワグマが現れ、建物内に侵入して備品を壊すなどして暴れた。事務所に閉じ込められたクマは3時間後、駆けつけた県環境創造センターの獣医師に麻酔銃で撃たれて眠らされ、山に運ばれて放された。けが人はなかった。関係者によると、午前6時半ごろ、イワキの男性社員が同社前の県道でクマを発見。クマはそのまま同社敷地内に逃げ込んで走り回り、倉庫内にある事務所の屋根によじ登った。体重で屋根が抜け、事務所内にそのまま落ちた。社員が素早くカギをかけて閉じ込め、警察に通報。クマはその間、床を走り回ったり、壁に体当たりしたり……。午前9時40分ごろ、駆けつけた獣医師に麻酔銃で撃たれるまで、棚によじ登って備品を床に落とし、壁やイス、パーティション(仕切り板)などを壊し続けた。社員の添田盛光さん(53)は「あんなのに体当たりされたらひとたまりもなかった」と恐怖の体験をふり返った。現場は東北自動車道本宮インターチェンジの近く。周りには住宅や商業施設が広がる。クマはメスで5~7歳ぐらい。冬眠に備えて体重を増やしている時期だが、今年はドングリなどが豊作で、体重は100キロを超えていた。県自然保護課は「食べ物が不足していたようではない」とし、「山から出てきた理由は不明」という。
(イノシシ、飼い犬襲う:群馬)
群馬県安中市松井田町で8月以降、飼い犬がイノシシに襲われたとみられる被害が相次いでいたことが分かった。市は珍しいケースとして、緊急の捕獲事業を実施し、近隣住民に注意を呼び掛けた。市農林課によると、8月25日に同町国衙(こくが)の民家付近で、中型犬がイノシシに襲われて死んだ。鎖につながれた犬の鳴き声を聞いた住民が駆け付けたところ、現場で倒れた犬と、イノシシの姿を確認し、市などに通報した。
(JR山陰線列車、シカにぶつかる:兵庫)
27日午後3時ごろ、豊岡市城崎町湯島のJR山陰線城崎温泉−竹野間で、城崎温泉発浜坂行き普通列車(2両編成)がシカ1頭にぶつかった。シカは車両下部に巻き込まれ、撤去作業などのため列車は約70分間停車した。乗客46人にけがはなかった。JR西日本福知山支社によると、現場は芦谷トンネル東側の出入り口付近。普通列車4本が部分運休したほか、特急列車1本と普通列車4本が遅れ、約250人に影響があった。
(アライグマが生息場所を拡大:福島)
帰還困難区域で外来種のアライグマが生息場所を拡大している―。福島大環境放射能研究所の奥田圭特任助教(野生動物管理学)は28日、福島大で講演し、原発事故に伴う避難区域にアライグマが「非常に高密度で生息」しており、将来の住民帰還の際に問題になるとして、対策の必要性を訴えた。人口減少社会に適した野生動物管理の在り方を考えようと、同大と山形大が主催した東北野生動物管理研究交流会で、避難区域の実態について発表した。奥田さんは帰還困難区域などで野生動物を調査し、イノシシやキツネ、タヌキとともにアライグマが数多く生息しているとみられることを確認。「帰還困難区域などでは繁殖場所となる空き家が多く、柿など放置された果樹などの食べ物も多い。使っていない田んぼの水路などをたどって生息場所を拡大している」と指摘した。その上でアライグマが集落に入ってくることで住民が帰還した際、アライグマが持つ感染症のリスクが懸念されるとして、駆除など野生動物管理対策を求めた。ただ「全域の管理は不可能」として「管理する地域をまず選定することから始めるべき」とも述べた。
(有害鳥獣の捕獲急増:和歌山)
和歌山県田辺市で有害鳥獣の捕獲が急増している。本年度11月10日現在の捕獲数はイノシシが1066匹で前年度同期と比べ1・8倍、シカが1420匹で1・6倍に増加した。いずれも過去最多。市は捕獲の補助金を拡充する補正予算案を30日開会の市議会12月定例会に提案する。捕獲は「狩猟」(11~3月)と、農作物被害防止を目的とした「有害鳥獣」に分かれる。「有害」の捕獲は2005年度がイノシシ210匹、シカ117匹、サル152匹、アライグマ149匹だった。年々増加傾向で、14年度はイノシシ607匹、シカ867匹、サル213匹、アライグマ209匹、カラス581羽。15年度はアライグマ以外、14年度を上回るペースで増えている。有害捕獲の補助金合計は05年度が922万5千円。捕獲数の増加で、15年度は11月10日までに3464万1千円に達した。市は補助金を1300万円増額して4922万円とする補正予算案を市議会に提案する。市は有害鳥獣から農作物を守るため、電気柵やトタン板などの防護柵の設置も支援。15年度は1300万円の予算を投じた。05~14年度の設置延長は267キロ。一方、耕作放棄地の増加などにより、イノシシの活動範囲は人里に近づいている。市農業振興課によると、本年度は旧田辺市内の稲成、新庄、芳養地区でも被害が増えているという。農作物の被害額は3千万円台が続いている。14年度は3874万6千円。作物別では果樹が3746万8千円と大半を占める。その他、水稲75万1千円、野菜30万4千円など。農作物以外でも石垣の破壊などの被害もある。
(クマの人身被害受け、鈴の携行徹底を確認:富山)
今月22日、上市町でクマによる人身被害が発生したことを受けて県は27日関係機関を集めて対策会議を開きました。会議では登山者が山に入る際には鈴やラジオなどの携帯を呼びかけることを確認しました。会議には県や市町村、県猟友会などからおよそ50人が出席し、クマの被害防止対策について話し合われました。上市町伊折(いおり)の北アルプス中山(なかやま)では今月22日、登山をしていた男性2人が斜面を滑り落ちるように出てきたクマに襲われ、けがをしました。会議では男性2人が鈴などを持っていなかったことがクマと接近してしまった要因として挙げられ、登山者が山に入る際には鈴やラジオなど音がでる物を携帯し自分の存在を知らせることを徹底するよう呼びかけました。県によりますと26日現在でクマの目撃・痕跡情報は155件と去年1年間の386件を大きく下回っていますが、年内は冬眠に備えて活発に活動するため、県は出没警報を出し、引き続き注意を呼びかけています。
(猟友会支部、児童らとキジ24羽放鳥:佐賀)
佐賀県猟友会有田支部(原口隆支部長)が27日、地元の小学生と一緒に有田町内2カ所でキジ計24羽を放鳥した。子どもたちは、力強く大空に羽ばたくキジに「頑張れ」と声をかけていた。同町大木宿の大山小(熊本英俊校長)近くの田んぼでは、同校の1年生と5年生が見学した。猟友会のメンバーが抱き上げたキジに触れ、「初めて見た」「かっこいい」などと話し、キジが一斉に飛び立つ姿に歓声を上げた。同町黒川の(ほのお)の博記念堂でも、曲川小の3年生が放鳥のようすを見守った。国鳥のキジの姿を見たことがない子どもたちが多いことから、同支部が初めて行った。放ったキジは今春誕生し、体長は70センチほど。鹿児島県の業者から仕入れた。原口さんは「有田焼の図柄には鳥を描いたものも多い。子どもたちが生き物に関心を持つきっかけにもなってくれれば」と話していた。
(鳥獣対策担当が狩猟免許取得、5自治体の11人:山形)
サルやクマなどの野生鳥獣が農作物を食い荒らす被害が後を絶たない。県内では、自治体の鳥獣対策の担当職員が狩猟免許を取得する動きが出始めている。猟友会のメンバーが高齢化する中、若い公務員ハンターに期待がかかっているが、業務として狩猟を行うかは、各自治体の判断にかかっている。県内の全35市町村に取材したところ、鳥獣対策担当者のうち、5市町の計11人が狩猟免許を取得している。わな猟免許が9人で、散弾銃などを扱える第1種銃猟免許が2人だった。このほか、他の担当に異動した職員で免許を取得している人が少なくとも4人いる。昨年度、農作物の鳥獣被害は約6億5500万円。電気柵の普及や耕作放棄地の増加などで、ピークの約13億800万円からは半減しているものの、農家の悩みの種となっている。こうした有害鳥獣の駆除は市町村の業務だが、実際には猟友会に委託しているのが現状だ。しかし、県猟友会の会員は今年3月現在1397人で平均年齢は61・7歳。65歳以上の高齢者が47・8%と半数近くを占める。1970年代の狩猟ブームの影響で団塊の世代に会員が多いが、あと数年もすれば年齢的に狩猟が難しくなるとみられる。狩猟免許を取得した職員が最も多かった山辺町では、昨年に4人、今年は3人がわな猟免許を取った。同町産業課では、「鳥獣被害が拡大しており、狩猟者拡大の一環として免許を取っている」と説明。あくまで「個人」として免許を取得し、町の業務として狩猟を行う予定はないという。有害鳥獣の捕獲や駆除を効果的に進めるため、県内では19の市町で鳥獣被害防止特措法に基づく「鳥獣被害対策実施隊」が設置され、国も補助金を増やすなどして支援を強化している。猟友会メンバーの隊員らが「捕獲員」となり、非常勤の公務員として公務災害の補償も適用される。大江町と朝日町では、わな猟免許を取得した町職員を捕獲員とする予定だ。ただ、「狩猟」に抵抗感を持つ自治体職員もいる。ある自治体の担当者は「免許を取るのは可能だが、生き物の命を奪いたくないという理由で誰も取っていない」と打ち明ける。今後、職員の抵抗感を解消することが、公務員ハンターが増加するかの鍵となりそうだ。県猟友会の海和邦博事務局長は、「猟友会に丸投げするだけでは鳥獣対策はどんどん難しくなる。火事になれば行政の消防隊員が出動するように、鳥獣被害も市町村の業務として取り組んでもらいたい」と訴える。長井市農林課の横山幸明さん(39)は9月、第1種銃猟免許試験を受験し、合格した。「銃器の取り扱いの試験は、講習を受けていたので何とかできた。今後、受ける人にアドバイスできれば」と話す。2012年から鳥獣被害対策の担当となった。長井市では農作物の食害が問題となっている上、10年には中学校にクマが侵入し、職員が軽傷を負う被害もあった。仕事柄、猟友会のメンバーと関わる中で、「何となく怖い」という狩猟のイメージが、「いたずらに命を奪っているのではなく、計画的で生態系を意識したものだ」と変化した。猟友会が高齢化し、狩猟の担い手をいかに確保するかが課題となっているが、「自分がやらないことには、実情も分からない」と受験を決意した。今後、狩猟登録を行う予定だが、実際の狩猟の現場にはまだ行ったことはない。「実施隊」の捕獲員になるかは検討中で、「市役所内での議論が必要だ」としている。
(「スマート害獣捕獲センサー」実用化へ:岐阜)
農作物に被害を及ぼす鹿やイノシシなどの害獣を捕獲する「わな」の動作情報をスマートフォンなどでリアルタイムにチェックできるシステムの実証実験が、西濃地域で進められている。情報処理会社「電算システム」(本社・岐阜市、東京都)と公益財団法人「ソフトピアジャパン」(大垣市)が共同で開発する「スマート害獣捕獲センサー」で、来年中にも実用化される予定だ。わなの見回りなどの手間が省け、人件費の抑制にもつながるため、農林業従事者が期待を寄せる。県内では2012年度以降、鹿やイノシシなどによる農作物被害が毎年4億円を超える。農林業従事者が高齢化し、耕作放棄地が増えていることに加え、狩猟者の減少などで害獣の生息域が広がっているためだ。開発されたシステムは、害獣を捕獲する「くくりわな」にセンサーを取り付け、害獣がわなに掛かると、携帯電話の通信網を通してスマートフォンやパソコンなどにメールで通知が届く仕組み。農林業従事者は通常、数十カ所に及ぶわなを仕掛けているが、害獣がかかったかどうかを確認するには毎日、わなの見回りをしなければならない。地域によっては住民総出の輪番制で巡回している。必要な機器はくくりわなにつないでセンサーの役割を果たす子機と、電波の中継機、中継機からの情報を受け取ってネットワークに接続する親機だけ。電源も乾電池やソーラーパネルとシンプルだ。わなと子機はひもでつながれ、わなに掛かった害獣が暴れると、ひもが子機から外れ、その情報がほぼリアルタイムに通知される。同様のシステムはこれまでもあったが、わなとセットの大がかりなもので、導入コストも高かった。シンプルな構成にすることで導入コストが抑えられ、市販時は子機約30台で100万円程度の価格が想定されるという。消費電力の少ない通信網を使っており、電源のない山中でも半年は電池交換の必要がない。子機の設置台数も自由で、小規模農家でも導入しやすくなっている。実証実験は今年9月から大垣市上石津町の山中で始まり、今月13日までの約2カ月間で、鹿が4頭、イノシシが1頭、猿が2匹かかった。子機16台を山中の木々にくくりつけたが、いずれも使用や通信に問題はなく、メール通知も正常だった。12月からは大野町で追加の実証実験に取り組み、改良を加えて、来年中には市販したい考えだ。上石津町一之瀬地域振興会役員の三宅一司さん(67)は「集落にわなの免許を持った人が3人しかおらず、わなを見回るだけでも大変。昔はそばにいなかった鹿が今は目の前にいて、イノシシは防護柵を破って山から下りてくる。システムが実用化されれば助かる」と期待する。電算システムの大畠淳範・システムサービス事業部長は「電池を入れてスイッチを入れれば動く。まだ改良の余地はあるが、害獣被害に悩む人たちの負荷軽減に役立てば」と話す。県農村振興課によると、2014年度の野生鳥獣による農作物被害は4億3249万円に上る。鳥獣別にみると、イノシシ1億9240万円▽鹿5777万円▽猿が6557万円−−など。全国で12番目に多い4億7095万円だった前年度に比べると減少したが、12年度以降は毎年、4億円を超える被害が出ている。特に被害が多いのは中濃、西濃、飛騨の中山間地。県や各自治体は鹿の集中捕獲や地域に柵を設置するなどの対策に乗り出している。
(カラスハイレマ線:北海道)
黒色の極細ワイヤを使った低コストのカラス防除法がじわり広がっている。高さ1.7メートルのところに格子状(2.5メートル間隔)に張るだけで果樹園などへの侵入が防止できる。山梨県総合農業技術センターが開発し、北原電牧(本社・札幌市)が「カラスハイレマ線」として商品化した。
(広がれシカ肉、おいしさ追求:北海道)
農業被害の軽減や森林維持のため、捕獲したエゾシカを食材として積極的に活用する動きが年々活発化している。札幌市内でもエゾシカ肉を通年で提供する飲食店が増えてきた。とはいえ、来店者には「食わず嫌い」も多く、最初においしい肉を口にできるかどうかで好き嫌いが決まってしまうこともあるという。処理や加工に秀でた業者を選んで肉を取り寄せたり、メニューに工夫を凝らしたりと、おいしさにこだわる店を探した。「シカは火入れが難しい。脂身がほとんどないので、ゆっくり火を入れないと肉がパサパサになってしまう」。ビストランテ「ヴィレクール」(中央区)の椎名健太シェフ(35)はそう言いながらフライパンで表面を軽く焼いたエゾシカ肉の塊をオーブンに移した。店の一番人気は「日高熟成エゾ鹿肉のロースト」。オーブンに移した肉は、じわりじわりと熱を入れた後、取り出して常温で余熱を加え、再びオーブンに入れるという作業を、状態を見ながら2、3度繰り返す。熟成肉は郷里の日高管内新冠町にある北海道食美楽(しょくびらく)から購入している。処理技術に精通した登録ハンターを約20人擁し、自前の熟成庫で数週間、乾燥熟成してから出荷している専門業者だ。「シカ肉は苦手という人がいますが、肉の処理、熟成、調理がすべて整ってこそ本来のおいしさが引き出せる。牛肉よりおいしいと言って帰るお客さんも多いですよ」と椎名シェフ。出されたローストは思いのほか柔らかで口の中でほぐれていく感覚だ。雑味がなく、肉汁とともにうまみが広がった。ショーケースにテリーヌやサラミ、ソーセージなどエゾシカ肉の加工品がずらりと並ぶ。売店を併設するレストラン「カマラード・サッポロ」(中央区)。狩猟から解体、熟成、加工製造までを一貫して行う十勝管内豊頃町のエレゾ社が直営している。190万都市へのアンテナショップだ。「シカ肉は狩猟や解体の仕方で、味や肉質に大きな違いが出ます」と飲食部門のマネジャー新沢有也さん(33)は力説する。狩猟では一瞬で絶命させ、肉が硬くなったり、血なまぐさくなったりするのを防ぐ。仕留めるのも豊頃の工房から1時間以内の場所で行い、解体までに時間をかけない徹底ぶりだ。「目の前にある、ひと皿の背景にまで思いをはせてもらえたら」と新沢さん。同社の10人ほどの社員は全員が料理人であり、ハンター。狩猟という命の現場に立つことでこそ、「命をいただいている感覚」で、骨から内臓までシカを余すことなく使う。豊富な加工品にその姿勢が表れている。「エゾシカに罪はないけど、このまま増え続けると森が丸裸になってしまう。その危機感を大金畜産と北川食品の社長に共有してもらって始められた」。エゾシカ佃(つくだ)煮「雪もみじ熱々茶漬け」を昼時に限らず終日出している茶の卸小売り「玉木商店玉翠園」(中央区)。玉木康雄社長(53)は自分でもシカを撃ち、山で森の荒廃ぶりに心を痛めてきたという。その思いを伝えた結果、大金畜産(中央区)から新鮮な肉を提供してもらい、小樽市の老舗つくだ煮メーカー丸一北川食品で仕上げてもらう工程ができた。食した清田区の境世津子さん(66)は「エゾシカ肉は初めて食べたけど、ほかの肉と変わらないおいしさで優しい味わい」と顔をほころばせた。コース料理のメーンディッシュに原則、シカ肉を提供しているのがフレンチレストラン「黒島」(中央区)だ。安全、安心なエゾシカ肉の普及を進める「AAOエゾシカ料理推進協議会」(札幌)認定の「マイスター」第1号に選ばれたオーナーシェフ黒島祥之さん(37)が上川管内南富良野町産などを目利きして仕入れている。調理の基本はローストだが、季節によって脂の入り方など肉の状態は違うため、骨付きで出したり、パン粉を付けて焼いたり、くん煙したりしている。給仕長の伊辺耕祐さん(36)は「その時々で、最もおいしい調理の仕方を考えています」と話す。
(県産ジビエ上品な味に:愛媛)
道後の老舗旅館「大和屋本店」(松山市)で27日、県産ジビエ(野生鳥獣肉)のイノシシ、シカ、キジの肉を使ったフレンチと中華のコース料理の発表会があった。鳥獣害対策の一助にしたいとメニューを考案。今治市大三島町のイノシシ、松野町のシカ、鬼北町のキジをそれぞれ使用した。発表会で大和屋本店の奥村敏仁専務は「多様な味を楽しめ、さまざまな部位を使えるよう和食ではなくフレンチと中華で開発した」と説明。招待客らはシェフの説明を受けながらシカのパイ包み焼きやキジのロティ、イノシシの角煮などを試食し、臭みを抑えた上品な味に満足していた。

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