<射撃ニュース3月>

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(イノシシ住宅地に、2男性かまれ軽傷:京都)
12日午前7時35分ごろ、京都市山科区御陵黒岩の市道で、散歩していた近くに住む80代男性の前に、体長約1メートルのイノシシが突然現れ、両足をかんだ。イノシシは近くにいた70代男性の両足もかみ、北へ逃走した。2人は軽傷という。山科署によると、現場は山林に近い住宅地。署員が約1時間にわたって付近を捜索したがイノシシは見つからなかった。山林に逃げたとみられるという。
(サルの目撃情報:福岡)
福岡県警博多署によると、10日から11日までの間、福岡市博多区那珂及び博多区東光寺町付近で、連続でサルの目撃情報があった。署は目撃した際には絶対に近づかないよう、呼び掛けている。
(本州以南のシカ3百万頭超、四半世紀で10倍に)
環境省は11日、農作物に深刻な被害を及ぼしているニホンジカの2013年度末の生息数は、北海道を除く本州以南で推定305万頭だったと発表した。1989年の調査開始以降、増加が続いており、89年の約30万頭からほぼ四半世紀で10倍になった計算になる。捕獲率が現状と変わらなければ、2023年度には453万頭に増えると見込まれる。同省は、23年度までに11年度比で半減にすることを目指しているが、目標達成には2倍超のペースで捕獲し続ける必要がある。生息数は、都府県の捕獲数や狩猟者登録数を基に推計。北海道は独自に計算するため除外した。
(イノシシ捕獲、報奨増:千葉)
千葉県南房総市が、農業被害の原因となっているイノシシの捕獲に力を入れている。捕獲頭数は2014年度に3000頭を突破し県内トップとなり、今年度は4000頭の「大台」を超える勢いだ。市は新年度、捕獲報奨金を独自に1000円積み増すとともに、捕獲枠予算も5000頭に拡大し対策を強化する。市農林水産課によると、新年度からのイノシシ成獣1頭当たりの報奨金は、国8000円、県3000円、市5000円(今年度4000円)の計1万6000円で、県内最高水準という。駆除許可を受けた銃やわなの狩猟免許所持者が、捕獲の証拠となる尻尾などを指定場所に持ち込むと、報奨金が後日支給される。捕獲頭数は、2008年度は1000頭以下だったが、11年度に2000頭台に達し、14年度に初めて3000頭を超えた。今年度は2月末で3878頭で、4000頭超えは目前だ。国の助成は14年2月から始まり、報奨金倍増で捕獲頭数が増えた。なかには「100万円プレーヤー」(関係者)の猟師もいるという。しかし、イノシシの生息数について、あるベテラン猟師は「捕獲頭数に対し、最低でも3倍、最大10倍はいる」と語る。実際、生息報告の少なかった市南部の旧千倉町や旧白浜町でも捕獲頭数が急増中だ。過疎化に伴い耕作放棄地が拡大する中で、免許所持者の高齢化が進んでおり、市は報奨金アップで捕獲意欲を刺激する狙いだ。ただ、捕獲したイノシシの8割を埋設処理しているが、埋設地の確保といった新たな課題も浮上しており、市の担当者は「捕獲、防護、えさ場や隠れ家など生息環境の寸断を地道に進めるしかない」と話している。
(9検体、放射性セシウム基準値超:栃木)
県環境森林部は11日、県内7市町で有害鳥獣駆除として捕獲されたイノシシとシカの肉から、一般食品の基準値(1キログラム当たり100ベクレル)を超える放射性セシウムを検出したと発表した。今回は2015年9~11月にかけて捕獲されたイノシシ18検体とシカ10検体の計28検体を検査した。このうち基準値を超えたのは9検体で、イノシシは那須塩原市で1キログラム当たり640ベクレル、那須町で550ベクレル、日光市で250ベクレル、宇都宮市で190ベクレル、矢板市で140ベクレル、大田原市で130ベクレル。シカは矢板市で220ベクレル、那須塩原市で200ベクレル、塩谷町で110ベクレルだった。これら以外は基準値を下回った。
(吸血ヒル連れ山麓へ、増えるシカ被害:神奈川)
冬の間は雪の多い神奈川県奥地の丹沢山地でも、春が近づくとシカや野鳥などが動き出す。普段は目にすることのない野生動物を見られるのは山歩きの醍醐味だが、最近ではシカやイノシシの個体数が増えたことによる食害やトラブルも広がってきた。生息範囲の拡大による想定外の関連被害も出始めているといい、実態を探ってみた。伊勢原市など3市の市境にある大山(標高1252メートル)。ケーブルカーで山頂近くまで行ける人気の山だ。麓の料理店をのぞくと名物田楽料理に交じり目に付くのが「シカ鍋」の文字。「鹿を食べるなんて」という声が聞こえてきそうだが、丹沢山地でシカの食害が広がっているのが背景にある。神奈川県の資料によると、シカの生息が確認されている秦野市、相模原市など8市町村での2014年度の農業被害額は約2100万円。09年度から5年で2倍以上に膨らんだ。現在、丹沢山地でのシカの生息数は推計3000~5500頭。一時期は300頭前後まで減少したことを考えると膨大な数だ。鳥獣保護区の広域設定のほか「狩猟対象はオスのみ」などの保護政策が影響した。現在はメスのシカも狩猟対象に加え、猟期もニホンジカは他の動物よりも2週間長い2月末までに拡大した。神奈川県が14年度に捕獲したシカの数は2000頭超。記録をさかのぼれる1981年度以降で最多だ。しかし、一度増えてしまったシカは急には減らない。シカの妊娠率はほぼ100%と言われており、成熟したメスの大半が子供を出産する。いたちごっこの感は否めない。シカの増加は招かざる客も連れてきた。「ヤマビル」だ。丹沢では近年ヤマビルの被害が拡大している。秦野市職員の岩田雅弘さん(36)は「自分が子供のころはヒルの吸血被害はなかった」と語る。ヤマビルは丹沢山地の奥地に生息していたが、シカの分布拡大などで山麓まで拡大。厚木市の三峰山(標高935メートル)では昨年7月、登山道のあちこちでヒルが動く姿が確認できた。周辺の自治体では山小屋組合や近隣住民でヒルの駆除を進めるが、シカの増加と表裏一体なため急には減らせないのが現状だ。秦野市環境保全課の今井敏明課長代理は「『あそこの畑はヒルが出る』となれば人がそこから離れていく。荒廃地化につながらないか心配」と話す。シカの被害防止へ周辺の自治体は防護柵の設置などで対応する。電気柵や動物の嫌がる音を出す機械を設置するなど工夫を凝らすが、ゲート部分を開けっ放しにするなど「人災」が効果を半減させている部分もある。シカなどが運搬するヤマビルには天敵がいない。イノシシや鳥はヤマビルを食べないためだ。靴で踏んだ程度では死なず、40度以上の高温や乾燥した場所以外では生きられる。越冬する個体が多いのも駆除を難しくする。
(ニホンジカ生息域「北へ拡大」:長野)
ニホンジカによる農林業被害が急増する中で、県松本地方事務所(松本市)の林務課は、生息現況を把握して実効性の高い捕獲や被害の拡大防止につなげようと「ニホンジカ行動マップ」を作成した。対象は松本地域北部の筑北、麻績、生坂の三村。マップ情報を北信地域とも共有して実効性の高い対策に生かしていく考えだ。県内でニホンジカの行動マップを作ったのは、諏訪地域に次いで二カ所目。同地域に生息しているシカ(南アルプス・八ケ岳地域の個体群)は生息域を拡大し、美ケ原高原から松本北部に侵入しており、北安曇や長野地域への拡散が懸念されている。同地方事務所は昨年七月、林務課や農政課職員らによる「野生鳥獣被害対策先端地域サポート隊」を設置。農林業被害や捕獲実績、目撃情報などの基礎データを集積し、職員による現地確認なども加味してシカの行動マップを作成した。林務課の担当者は、松本北部三村のニホンジカによる農業被害が、二〇〇三年の百八十八万円から一三年には七百三十六万円へと十年で四倍近くに増えたことを指摘。「シカが北に生息域を拡大している証左だ。さらに北上が続けば、北アルプスが危ない」と警告する。シカの分布拡大推定ルートは(1)筑北地域の南側山地を通って犀川を渡り、大町市や池田町を北進して北アルプスへ(2)筑北地域の東側山地から聖山を通って長野市へ入り、北進して戸隠、妙高方面へ-の二つだ。今後はマップ情報を関係者で共有し、効率的なシカ捕獲に結び付けるのが課題。県林務部の森林GIS(地理情報システム)にマップ情報を掲載して有効活用を図ることも計画している。
(シカ食害被害深刻化、頭数管理で捕獲も:奈良)
奈良市一円で保護対象となってきた国の天然記念物「奈良のシカ」について、県は重点保護地区や生け捕り地区など、保護の仕方に違いをつけた四つのエリアを設けることを決めた。専門家や保護団体による検討委員会で了承された。奈良のシカは春日大社の神の使いとされ観光名物となっているが、農作物を食い荒らす被害も深刻化。県は文化庁に現状変更の申請をし、狩猟期となる今秋から捕獲などによる頭数管理を始めることにしている。計画では、生息地として重点的に保護する奈良公園や市中心部の「重点保護地区」、付近の若草山や世界遺産・春日山原始林などは「準重点保護地区」に指定。両地区を取り囲む「保護管理地区」は緩衝地域とし、入り込んだシカは生け捕りにして保護する。それ以外は「管理地区」とし、策定中の鳥獣管理計画に基づき、被害状況に応じ頭数管理する。奈良の鹿愛護会によると、奈良のシカは戦前約900頭いた。1957年に国の天然記念物に指定されて手厚く保護され、現在は約1200頭いる。一方、春日山原始林の植物を食べたり、人をかんだりする被害も出ている。中西康博・県奈良公園室長は検討委で「シカが人と共生し100年後も市街地を闊歩できるようにしたい」と話した。
(カラス巣作りの停電防げ:四国)
四国電力は停電の原因となる電柱へのカラスの巣作りを防ぐため対策を急いでいる。独自に開発した営巣防止装置を取り付けてカラスが止まりにくくしたり、巡回パトロールを強化したりしている。2~5月はカラスの繁殖期で毎年、停電の原因となっているためだ。営巣防止装置「アンブレラボーン」は傘の骨組みのような形をしている。らせん状に組んだ骨を下に広げており、カラスが巣作りのために持ち込んだ枝などが自然に落ちるようになっている。四国電によると、カラスは繁殖期になると、金属製のハンガーや木の枝を使い、電柱への巣作りが増える。高圧線に接触すると、漏電して停電を引き起こす。昨年は4県で1万8千以上の巣を撤去したが、25件の停電事故があったという。
(ジビエ“味力大盛り”:岐阜)
飲食店などが考えたジビエ料理を味わう「地美恵(ジビエ)料理試食会」が、岐阜県郡上市大和町剣の旅館「彦河屋」で行われ、シカ肉、シシ肉を使った料理が並んだ。試食会は郡上市調理師会(林健吉会長)が開催した。中華料理店、和食店、寿司店、精肉店、猟友会などが参加し、料理を手掛けた店主らが直接、来場者に料理の特徴や工夫した点を説明する場面もあった。シシ肉、シカ肉のそぼろを提供した「三河屋」の店主河合岳夫さんは「そぼろなら、くず肉も使える。味付けにニンニクやショウガを使うことで獣の臭みも減る」と話した。また、「八屋」は「シシ肉ふわふわ牛蒡(ごぼう)団子」と「真空低温ロースト鹿」を提供。ロースト鹿は低温調理したことで柔らかく仕上がったという。ほかにも、にぎりやシカ肉のパイ、シカ肉カレー、中華風スープなどもあった。試食会に協力した郡上やまと獣肉利活用推進協議会の松森勇会長(65)は「ジビエ料理を食べることが広がれば、獣害対策も進むと思う」と話し、調理師会の林会長は「ジビエに関心が高まることが大切」と話した。

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(イノシシ捕獲へわな、猟友会が設置:静岡)
8日に浜松市浜北区の静岡県立森林公園で、イノシシが来園者を襲い、9人がけがをした事故を受け、県猟友会の会員は9日、襲ったイノシシの捕獲を目的に公園内にわなを仕掛ける作業を行った。作業を行ったのは、地元猟友会の会員6人で、イノシシが踏むと足がくくられる「くくりわな」と呼ばれる幅12センチ、長さ20センチの装置を設置した。来園者が襲われた場所から山側にあるイノシシのねぐらがありそうな斜面などに仕掛けた。わなは悪天候のため、9日は2カ所のみ設置した。天候が回復し次第、現在立ち入り禁止になっている区域に順次設置する。県は公園西側を引き続き立ち入り禁止にするほか、パトロールを強化して注意を呼び掛ける。
(ウミガメの卵食害深刻化、イノシシ産卵巣24.8%襲う:鹿児島)
奄美大島でウミガメの卵が野生のリュウキュウイノシシに食べられる被害が深刻化している。ウミガメの産卵を調べている奄美海洋生物研究会(興克樹会長)によると、昨年に食害を受けた産卵巣は調査開始以来最高の24・8%。恒常的に食害が起きている浜があり、研究会は「個体の減少が懸念され、今後の産卵状況を注視したい」と話している。研究会の調査によると、奄美大島(加計呂麻島、請島、与路島を含む)では昨年、ウミガメの産卵が355回確認され、島内5市町村の12の浜、計88カ所の産卵巣が食害を受けていた。産卵回数が2倍の715回だった2014年(116カ所)と比べると、被害に遭う率が高くなっている。奄美市住用町で食害が初めて確認されたほか、瀬戸内町請島ではすべての産卵巣が4年連続で被害に遭っていた。また、食害が拡大している大和村の浜では昨年6月、親子と思われる2頭のイノシシの足跡と、砂浜を掘り起こし産卵巣に頭を突っ込んでいる姿が、研究会が設置したカメラに映っていた。イノシシの食害は08年に初めて確認され、研究会などが巡回などの調査を始めた。12年からは大和村ヒエン浜などでセンサー付きのカメラを設置し、被害状況を詳しく調べている。アカウミガメの産卵回数は近年大幅に減っており、研究会の興会長は「このまま食害が続くと、産卵に来るウミガメがいなくなる。何らかの対策が必要」と危機感を募らせている。
(小学生、キジを放鳥:島根)
島根県飯南町の来島ダム鳥獣保護区で、地元猟友会員と小学生らがキジを放鳥した。豊かな自然に恵まれた生息適地に人工繁殖のキジを放すことで生息数を増やそうと、県が県内各地の猟友会に委託しているもので、五十数年前から毎年続いている恒例行事だ。町立頓原小学校の1、2年生20人が生き物学習の一環としてダム湖に近い高台に集合。飼育業者が9カ月間育てた体長70センチほどの雄と雌の幼鳥50羽を抱きかかえ、交代で次々に放した。児童は元気いっぱい飛び立つキジに驚きながらも「体が温かかった。早く大きくなってほしい」と歓声を上げて見送った。
(山陰線に鹿検知装置:京都)
JR西日本福知山支所は9日、シカなどと衝突して列車が遅れる獣害の対策として、センサーとパトライトを組み合わせた「鹿検知通報装置」を設置すると発表した。山陰線の福知山-上川口駅間の福知山市牧など管内の2カ所で16日以降、準備が整い次第設置を始めるという。この装置は、1つのセンサーで線路50メートル分をカバー。シカなど大型動物が線路内に侵入すると近くのパトライトに無線で信号を送ってパトライトを点灯させ、列車の運転士に知らせる仕組み。パトライトの点灯に気づいた運転士はスピードを落とし、シカなどとの衝突を避ける。この装置の設置は、JR西日本管内では米子、岡山、和歌山に続いて4支社目。福知山-上川口駅間では226メートルの区間にセンサーを5つ、パトライトを3つ設置するという。JRではシカなどの大型動物が列車と衝突して1分以上の遅れが出たケースを「獣害」としており、同支社管内での発生件数は昨年4月から12月までで904件と増加傾向にある。同支社は「今回の装置を付けることで列車とシカなどが衝突する事故を減らしたい」としている。
(イノシシ肉、来年度で生産終了:青森)
むつ市脇野沢地区のイノシシ肉の生産が来年度で終了することが10日、明らかになった。イノシシを飼育・販売している同市脇野沢農業振興公社の累積赤字が拡大しているため。地域おこしを願い、旧脇野沢村時代から育ててきた名物が消えることに、住民から「とても残念。何か手だてはないのか」との声が漏れた。
(自然栽培、ジビエに夢:石川)
「自然栽培とジビエについてとことん語る会」と題したパネルディスカッションが八日夜、羽咋市旭町の市商工会館であり、同市の取り組みと将来展望が語られた。羽咋青年会議所(JC)が主催。羽咋市農林水産課の崎田智之さんと同市地域おこし協力隊員で自然栽培を担当している遠藤勝敦さん、ジビエ担当の吉村祐紀さん、加藤晋司さんの四人をパネリストに、羽咋JCの会員が司会を務めた。遠藤さんは「いいステージを用意してもらっている」と感謝の言葉に加え、羽咋市が自然栽培の先進地として全国に名を知られていることに触れ「ずっとパイオニアとして先頭を走っていってほしい」と語った。ジビエについて、吉村さんは「大阪や東京で人気が上がってきている。おしゃれな食べ物として食べられ、ジビエの専門店も出てきている」と報告。「とにかく一度食べてほしい」と会場に語りかけた。加藤さんは「イノシシの肉を食べたいから羽咋に行く。そんなまちにしたい」と夢を語った。市の取り組みについて、崎田さんは「若者が夢を持ってやっていけることを目指しているのが他とは違うところ」と胸を張った。
(広がれ「飛騨ジビエ」:岐阜)
イノシシやシカなどジビエ(野生鳥獣肉)を使った料理の講習会が9日、高山市奥飛騨温泉郷一重ケ根の一重ケ根公民館で開かれた。飛騨地域の料理人ら約80人がジビエの魅力や安全な調理法を学び、試食を楽しんだ。上宝調理師会(和田邦彦会長)が、農用作物被害を防ぐために捕獲されるイノシシやシカを食材として有効活用し、消費拡大につなげようと県の後援で初めて開いた。名古屋市のフランス料理シェフ内藤達雄さんが、シカ肉の部位と調理方法を説明。「E型肝炎などを防ぐためシカ肉は生肉では食べず、十分加熱するように」と呼び掛け、実際にシカのロース肉を調理し、赤ワインやシカのスネ肉から煮出したソースで味付けした一品を提供した。イノシシ肉の鍋や炊き込みご飯なども用意され、参加者はいろいろな味で楽しめるジビエを堪能。高山市の料理人新井京一さん(75)は「柔らかくておいしい魅力ある素材。試してみたい」と話していた。

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(イノシシに襲われ7人搬送:静岡)
八日午後二時十分ごろ、浜松市浜北区の静岡県立森林公園ビジターセンター「バードピア浜北」に、来園者から「イノシシに襲われ、けが人がいる」と連絡があった。県などによると、センター西側のエリアで浜松や磐田市の五十~八十代の男女九人が相次いで足や腕をかまれるなどしたが、いずれも命に別条はない。イノシシは一頭とみられるが見つかっておらず、県は現場近くの駐車場や歩道の入り口を閉鎖して一帯の入園を当面禁止し、警戒を続ける。市消防局によると、搬送した七人のうち、腕をかまれるなどした浜松市の男性(79)と女性(60)が中程度のけがを負った。残りの五人は転んだりして、手や足に軽いけがをした。県西部農林事務所によると、イノシシは体長約五〇センチで中型犬ほど。センター西側の「水辺の広場」と呼ばれる場所など計三カ所で人を襲ったという。県西部猟友会浜北分会の米沢純一会長(67)は「イノシシは夜行性で昼間は暗い草むらで寝ている。人の声で起こされ、人間とばったり出くわして興奮したのかもしれない」とみる。九日に園内にわなを設置して捕獲を試みる。現場は新東名高速道浜松浜北インターチェンジの北西約四キロ。森林公園は浜松市天竜区との境に東西に広がる約二百十五ヘクタールで、約千種類の植物や約八十種類の野鳥のほか昆虫も豊富に生息し、人気スポットになっている。
(イノシシ、堤防に穴700か所:栃木)
栃木県足利市などを流れる渡良瀬川でイノシシが堤防を掘り起こす被害が増え、2015年度は同市と群馬県の桐生市、太田市の3市で700か所以上に達している。増水時に堤防の強度が低下する恐れもあり、国土交通省関東地方整備局渡良瀬川河川事務所が対策を進めている。同事務所によると、堤防に生えたクズの根などをイノシシが掘り起こして食べるためで、11年度に238か所だった3市での被害は14年度には675か所に増加。今年度は既に700か所以上に達しているという。土を深くまで掘り起こすために周辺の土が軟らかくなり、増水時に崩れてしまう可能性もあるという。同事務所は予算削減に伴って堤防の除草作業の回数を減らしており、野草が増えてイノシシの生育に適した環境になっていることが被害増加の一因になっていると見ている。そこで、野草を生えにくくするために芝を張ることや、根を食べられないように土の中にネットを埋めることなどで被害を防ごうとしている。しかし、野草が芝の生育を妨げるほか、広い堤防をネットで覆うのも難しく、決定的な対策になっていないのが現状で、担当者は「穴を埋めている横でイノシシが土を掘り起こしていることもある」と頭を抱えている。そのため、2月に雑草や野生鳥獣などについて研究する宇都宮大の「雑草と里山の科学教育研究センター」と協定を結んだ。同センターと協力して穴を開けられやすい場所の分析などを行い、対応策を探る計画で、同事務所は「研究結果を基に、進入防止のフェンスの設置など、効果的な対策を考えたい」としている。
(野生ザル目撃情報:福岡)
福岡県警福岡南署によると、7日午前9時ごろ、福岡市南区塩原1丁目付近でサル1匹が徘徊(はいかい)しているのが目撃された。署は、サルを見かけても不用意に近づかず騒いだりしないよう注意を呼び掛けている。
(若い担い手育成へ:岩手)
野生動物の捕獲に携わる若い担い手を育成しようと、県猟友会の青年部が設立されました。県内ではクマなど野生動物による、農林水産物や生活環境などへの影響が増加する中で、被害対策の担い手となる狩猟者の高齢化が課題です。県猟友会青年部は若手の人材育成を目的に設立されたもので、20歳から40歳まで200人以上が所属することになり、きょうの設立総会には、そのうちおよそ40人が出席しました。発起人の一人で岩手町地区猟友会の志田崇さんは、「県猟友会全体の活性化につながれば」とあいさつしました。県猟友会青年部は講習会などを開いて、若手の技術向上を支援します。
(イノシシ、津軽海峡目指す?:秋田)
秋田県上小阿仁村で昨年11月末、イノシシの足跡が確認されていたことが8日、分かった。北限は7、8年前まで宮城県とされていたが、近年は岩手、秋田両県内でも目撃や捕獲が相次ぐ。今回の発見地点は青森県境まで約40キロ。最北の確認例とみられる。イノシシは農作物を食い荒らし、大きな被害をもたらす。専門家は「津軽海峡に迫る日も遠くない」と警告する。秋田県自然保護課によると、足跡が見つかったのは上小阿仁村長信田沢地区。11月27日、住民の通報を受け、村職員らが足跡を発見。ひづめの特徴などから県がイノシシと断定した。2012年に秋田県湯沢市など県南部で捕獲や目撃されて以降、報告例が増加。15年1月には、奥羽山脈西側の秋田県横手市山内でオスの成獣1匹を捕獲。同年5月には秋田市に接する由利本荘市岩城の海岸で死骸が見つかった。県の担当者は「県南のごく一部で生息していると思っていたのに、短期間でこれだけ北上するとは」と驚きを隠さない。岩手県内でも生息域が広がっている。盛岡市の御所湖東側の猪去集落近くで13年12月、岩手大農学部の青井俊樹教授(野生動物管理学)らがクマ用に設置したセンサーカメラに偶然イノシシが写り込み、北緯40度付近まで北上したことが確認された。昨秋には赤ちゃんイノシシも撮影され、定着と繁殖が確実になった。青井教授は「イノシシによる被害はシカやサルとは桁違いに大きい」と指摘する。特に心配されるのが稲作への影響だ。泥浴びや踏みつけられた後は収穫できなくなる。米どころの岩手南部や秋田では今後、甚大な被害が出る恐れがある。青井教授によると、江戸時代に盛岡藩を挙げて駆除した記録があり、明治初期までは岩手県内に広く生息していた。「北限が変わったというより、再分布が始まったとみるべきだ。青森に入るのも時間の問題。北東北は行政も農家もイノシシに無防備なだけに、対策が急務だ」と強調する。中山間地の過疎化が背景にあるとの見方もある。東北芸術工科大芸術学部の田口洋美教授(環境学)は、狩猟や林業が下火になった影響と推測する。ハンターでもある田口教授は「人々が自然に目を向けない間に、静かに生息域を広げたのだろう」と語る。
(イノシシに線量計とGPS:福島)
福島大環境放射能研究所は7日、福島市で成果報告会を開いた。トーマス・ヒントン教授(放射生態学)は、浪江町で捕獲したイノシシに線量計と衛星利用測位システム(GPS)を搭載した首輪を付け、野生動物の被ばく量を調べる研究に着手したことを明らかにし、「調査結果は、人が入れない地域の放射線量の把握につなげることができる」と意義を語った。成果報告会は昨年に続き2回目。河川・湖沼・海洋での放射性物質の動きや、環境中での放射性物質の存在形態、放射線の生物への影響など、各分野の研究者がそれぞれ成果を発表した。ヒントン教授は1月、浪江町でイノシシを捕獲し、首輪を付けたことを紹介。首輪からは30分ごとに位置情報と外部被ばく線量データが送られてくる。チェルノブイリ原発事故の汚染地帯のオオカミについて同様の調査に取り組んできたヒントン教授は「野生動物は行動範囲が広いので新しいツールが必要。得られたデータを従来の汚染マップと比較したい」と話した。報告会ではこのほか、奥田圭特任助教(野生動物管理学)が避難区域でイノシシやアライグマ、ハクビシンが激増している実態について発表。「アライグマとハクビシンは、地震で損傷した部分などから空き家に入り込み、繁殖場所やねぐらとして使っている」と話し、将来の帰還に向けて野生動物管理や感染症のリスク対策に取り組む必要性を指摘した。
(県庁食堂でシカ肉メニューを提供:徳島)
ジビエ料理のおいしさを知ってもらおうと7日から県庁内の食堂で県産のシカ肉を使った料理の提供が期間限定で始まりました。県では、県産のシカやイノシシの肉など安全で安心な「阿波地美栄」の普及と消費拡大を進めていて、7日から県庁内の食堂で県産のシカ肉を使った料理の提供が5日間限定で始まりました。メニューはシカ肉を使った和風ステーキや甘酢あんかけ炒め、ハンバーグなど13種類のうち毎日2、3種類を数量限定で提供します。価格は、おかず2品の定食で税込み520円です。初日は約20分で完売する盛況でした。県庁の食堂でシカ肉を使ったメニューが提供されるのは、今月11日までで職員以外でも利用できます。
(シカ肉でジビエ料理:岡山)
赤磐市内で捕獲されたイノシシやシカを使ったジビエ(狩猟肉)料理を岡山市内のイタリア料理店が創作した。目玉メニューの一つとして売り出し、好評を得ている。岡山市北区錦町にある「Duomo(ドゥオモ)」。森永勝店長(36)が赤磐市内の知人(60)の勧めで調理し、魅力ある食材とほれ込んだ。メニューに「赤磐産」と明記し提供している。料理は、シカ肉をミンチにして自家製の手打ちパスタとからめた「赤ワイン煮込み」(1人前1400円)と、手作りのピザ生地にシカ肉やチーズ、ミニトマトを乗せた「ピッツァドゥオモ赤磐」(同1500円)、さらにイノシシ肉の表面を軽く焼いて肉汁を閉じ込め、オーブンで10~12分焼いた「赤磐産ロースト」(同1500円)の3種類。臭みがなく、あっさりとした味に仕上げており、いずれも1週間で約30食の注文が入るという。倉敷市出身で、東京や本場イタリアで修行を積んだ森永店長は「赤磐産のジビエ料理が店の看板になれば。赤磐の特産フルーツや野菜も積極的に仕入れたい」と話す。
(植生荒らすシカ、革製品化で命生かす:福島)
群馬や福島など4県にまたがる尾瀬国立公園周辺で、捕獲されたシカを地域資源に生かす「尾瀬鹿プロジェクト」が今春、本格始動する。尾瀬では近年、シカが貴重な植生を荒らす被害が深刻化し、毎年数百頭が捕獲後に殺処分されている。命を無駄にしたくないと女性2人が立ち上がり、シカの革製品を販売。将来的に、東京電力福島第一原発事故の影響で出荷制限されているシカ肉としての流通を目指す。環境省によると、尾瀬にシカは生息していなかったが、一九九〇年代半ばに初めて確認。餌を求めて春に尾瀬へ入り、冬に尾瀬を出て周辺で越冬する季節移動をしているとみられ、主に栃木県の日光方面から侵入。群馬や福島県側からも出入りしている。シカは年々増え、近年はニッコウキスゲなど貴重な植物の食害が深刻化。湿原の一部では根の掘り起こしで土がむき出しになり、別の植物が生えて尾瀬本来の植生に戻らないことも懸念されている。尾瀬山小屋組合の関根進組合長は「景観が損なわれれば死活問題だ」と頭を抱える。同省は二〇〇九年にシカ管理方針を改定し、尾瀬内と群馬、福島両県で捕獲を強化。猟友会と連携し、一三年度は約三百十頭、一四年度は約四百八十頭を捕獲し殺処分した。だが越冬地に向けてシカが集中的に通る地点では昨年十一月、前年と同じ六百頭ほどを確認。同省の担当者は「シカの捕獲で植生被害を食い止めているのが現状」と嘆く。「国立公園の線引きをしたのは人間で、シカは悪くない。命を奪ってただ捨てるのはおかしい」プロジェクト発起人の小山抄子さん(51)=福島県南会津町=はこう話す。福岡県出身で、自然に魅了され〇六年から尾瀬のビジターセンターで働いており、「自然も動物も好き。どうすれば良いの」と思い悩んだ末、命を生かそうと一四年春から革製品の商品化に奔走。昨年四月に群馬県片品村の地域おこし協力隊員に着任した、東京都出身の本間優美さん(33)もシカを地域活性化に生かす構想を持っており、仲間に加わった。昨夏には初めて商品化にこぎ着け、名刺入れやブックカバーなどに加工して小山さんが尾瀬沼近くの休憩所で直接販売した。柔らかな肌触りが好評で計約四十万円を売り上げた。尾瀬で販売することで、観光客にこの問題を考えてもらう狙いもあった。この冬は前年の約十倍の七十頭分を確保。皮なめしの費用などを捻出するためネット上で資金を募り、約百万円を集めた。五月の山開きに合わせ尾瀬の山小屋などで販売しようと、今は革製品に加工する請負先を福島や群馬で探している。群馬県で捕れたシカ肉は一二年十一月から出荷制限が続く。今も県の測定では国の基準値を超える放射性セシウム濃度を度々検出する。東日本大震災から間もなく五年たつが、原発事故の影響がにじむ。猟師でもある本間さんは「命のありがたさを感じてもらうには食べてもらうのが一番。当分は厳しいが、いつかジビエとして地域の特産品になれば」と願う。
(原発事故は狩猟生活に何をもたらしたか:千松信也)
昨年の12月、環境省は、東京電力福島第1原発事故に伴う福島県内の除染作業について、「生活圏から離れ、日常的に人が立ち入らない大部分の森林は除染を行わない」という方針を表明しました。具体的には、キャンプ場や遊歩道、キノコ栽培地などを除いて、住宅などから20m以上離れた森林を除染対象としないということです。福島県では当然反発が起きていて、まず林業関係者からの批判が相次いでいます。森林がまさに仕事場である林業者にとっては切実な問題です。しかし、これは森で働いている人だけの問題ではなく、森林に関わる暮らし方を行っているすべての人に関係する問題です。各方面からの批判を受け、一部「里山」エリアも除染の対象とする方向での見直しも検討されているとの報もありますが、国が人々の「生活圏」を一旦はたかだか住宅から20m程度だと認定したということの意味を考える必要があるのではないでしょうか。狩猟者という立場からこの問題を考えてみても、私たちのような山と関わる暮らしを営む者の存在は無視されているように感じます。東北の多くの地域では、森の野生鳥獣の肉からいまだに放射性物質が検出されています。特にイノシシ肉は、摂取および出荷制限が依然として多くの自治体で続いています(摂取制限まで出ているのは福島県の一部のみ)。エサや飼育環境を改善することで、家畜の肉からは放射性物質が検出されることはまずなくなりましたが、除染されない森林で暮らすイノシシなどの野生鳥獣は、まだまだ汚染されています。森の中では、イノシシが食べ物を探して、そこら中の地面をほじくり返しています。彼らの大好物はドングリで、落ち葉に埋もれたものでも優れた嗅覚で見つけ出します。また、腐葉土の中のミミズなんかも大好物です。こういったイノシシの暮らし方は、放射性物質を濃縮しやすいと言われています。東北地方では、放射性物質を気にして狩猟をやめた人も出てきています。食べられないなら獲る意味が無いというわけです。これまで喜んで食べてくれていた子どもや孫から「そんな危ないイノシシ肉はもう食べない」と言われた猟師の話も耳にしました。  野生鳥獣以外でも、山菜、キノコ、渓流魚などの森林に依拠する食べ物からも高い数値が出ていて、豊かな狩猟採集文化を持っていた東北地方でその伝統や技術の継続が難しい状況になってきています。ただでさえ全国的に減少傾向にある猟師ですが、これらの地域では減少ペースが加速しています。放射性セシウムの半減期が30年であることを考えると、森林の除染を行わないということは、現在高い数値が出ている地域はかなり長期にわたって今のような状況が続くということを意味します。30年前に起きたチェルノブイリ原子力発電所の事故の際には、ソ連だけでなく近隣諸国のカリブーやトナカイ、イノシシも被曝したそうです。現在でもチェルノブイリから1500キロ離れたドイツでさえ、同国の基準値を超えるイノシシが多数捕獲され、廃棄処分となっています。私が暮らす京都は事故を起こした原発から、540キロしか離れていません。風向きによっては、私が獲るシカやイノシシが放射能に汚染される可能性も十分あったということです。チェルノブイリ事故の影響を受けた近隣各国では、汚染された野生鳥獣の肉について様々な対処を行っています。ドイツでは基準値以上のイノシシを獲った場合、行政が狩猟者に補償してくれる制度があります。スウェーデンなどでは、トナカイ・へラジカなどの野生動物の肉を普通の食品の五倍の基準値に設定しています。これは野生鳥獣の肉は頻繁に食卓に上らないというのが理由です。ただ、猟師や先住民族など食べる頻度の高い人たちには、リスクに関する情報を提供した上で自分たちで判断してもらっているとのことです。森林の除染が行われないのであれば、日本でも近い将来、こういった対処法を考えないといけなくなるのかもしれません。チェルノブイリでは人間の活動が著しく減少した立入制限区域内に、広大な「自然の楽園」ができ、豊かな生態系が現れているというレポートもあります。ただ、オオカミという捕食動物を失った日本の生態系ではそううまくは行かないでしょう。人の立ち入りが制限され狩猟が行われなくなった地域では、イノシシはすでに極端に増えています。野生化した家畜の豚とイノシシの混血による自然界の遺伝子汚染も危惧されています。有害駆除も行われていますが、汚染の数値の高い個体の捕獲後の処理の問題もあり、なかなかうまく行っていないのが現状です。このように森林が汚染されたままになるということは、狩猟者にとっては切実な問題ですが、一方で、住宅から森林に20mも入ったら、もはやそこは「人間の生活圏」ではなくなってしまっているという現実も、狩猟者ゆえに感じています。放射性物質に汚染されたわけでもない京都の森においても、かつて薪炭林として活用された里山林は放置されています。コナラやクヌギは大木化し、たくさんのどんぐりを実らせ、それを目当てにイノシシなどの野生動物が住宅地のすぐ裏手まで跋扈し、野生の王国と化しているのが現状です。管理されなくなったスギやヒノキの植林地も目に付きます。こういった森から恵みを受け取る暮らしの衰退が、結果として国による「森林は生活圏ではない」という定義を引き出してしまったとも言えます。そして、それはさらにこういった暮らし方に対してのダメージとして返ってきます。野生鳥獣の肉だけではありません。放射性物質の数値の高い森林においては、そこの木を薪にすることもその灰を畑に撒くことすらできません。放射性物質は、森林・土壌、そこにつながる川や湖沼、そして自由に移動する様々な生き物たちという生態系の豊かなつながりと寄り添って暮らそうとすればするほど循環します。原子力発電所自体、森林に依拠しない暮らしの代表のようなシステムですが、今回の森林除染に関する発表は、原子力発電所に再度依拠し始めた私たちの暮らしの現状をある意味象徴するようなものであったとも言えるかもしれません。

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(冬鳥大量死、鳥インフル「陰性」:福島)
県は1日、白河市大信増見の道路や水田で、冬鳥のアトリが86羽死んでいるのが見つかったと発表した。検体で鳥インフルエンザの簡易検査をしたが、陰性だったという。県自然保護課によるとアトリはスズメ目の冬鳥で、日本にはシベリア方面から秋に飛来し、群れで行動。草木の種などを食べる。簡易検査は陰性だったが、県は環境省のマニュアルに基づき、国立環境研究所に検体を送り、遺伝子検査をする。結果判明には1週間程度かかる見込み。鳥インフル以外の原因も考えられるため、解剖して胃の内容物も調べている。鳥の大量死を巡っては昨年12月、今回の現場から約15キロ離れた鏡石町で計86羽のカラスの死骸が見つかり、胃の内容物から殺虫剤が検出された。同課は「カラスとアトリはえさが違い、関連性は低いのでは」としている。
(害獣一斉捕獲:三重)
名張市、奈良県宇陀市と両市の猟友会は6日、三重と奈良の県境付近で鹿とイノシシの広域一斉捕獲をした。名張市から約40人、宇陀市から約15人が参加し、イノシシ5頭、鹿2頭を仕留めた。食肉利用のための解体を高校生も見学した。名張市農林資源室によると、県境を越える一斉捕獲は年2度のペースで実施し、この日で5回目。名張市役所に集結してから大きく3班に分かれて、犬と共に各猟場に入り、7頭を捕獲した。吉岡昌行室長は「イノシシ5頭はこれまでで最多」と話し、“大物”は100キロ近かったという。現地で内臓を取り出し、血抜きして、名張市が農協から借りている作業場に運び込んだ。名張市猟友会員がナイフを使って手際よく皮や骨を外し、ていねいにこそぎ取って食肉にしていった。見学中「脂が乗っている」とつぶやいた県立名張高2年の新見広夢さん(17)は「想像していた通りだけど、生々しい。勉強になります」と話した。
(狩猟登録者37年ぶり増3265人、農家が有害鳥獣自衛目的:栃木)
県内の狩猟登録者が今年1月末時点で3265人となり、すでに平成26年度を164人上回り、制度改正で微増した19年度を除けば、37年ぶりに増加したことが分かった。狩猟登録者数は、銃の規制強化や経済の低迷を背景に昭和53年度の1万6676人から年々減少してきたが、野生鳥獣による農作物被害が深刻となる中、自衛のために狩猟免許を取得する農家が増えたようだ。県によると、1月末時点の27年度登録者数は、小鳥などを捕る「網猟」8人▽シカやイノシシを捕る「わな猟」1069人▽散弾銃やライフルなどを使う「第一種銃猟」2112人▽空気銃などを使う「第二種銃猟」76人-だった。このうち、取得・維持が難しい第一種銃猟(昭和53年度は1万5935人)と第二種銃猟(同645人)の登録者はピーク時と比べて大幅に減少する一方、わな猟は年々増加。制度改正した平成19年度の526人から倍増した。県自然環境課は「有害鳥獣による農林業被害が増加する中、農林関係者が狩猟免許を取得するケースが増えた」とみる。同課によると、26年度の鳥獣による農作物被害は3億5400万円、シカやクマによる林業被害は3億6400万円に上る。中でもイノシシなど獣類による農作物被害は2億7200万円で過去最大となり、田畑への侵入を防ぐ電気柵などの被害防止策と同時に、有害鳥獣の捕獲も喫緊の課題だ。25年度末のイノシシの生息数は3万3500頭と推定され、捕獲数が現状の年間6800頭とすると、10年後には7万9千頭に増えるという。シカ(推定生息数2万3600頭)の場合も同様に、現状の捕獲数であれば増加すると予想される。こうした状況を受け、県は27年度から、免許試験の数を増やし、これまで行っていなかった鳥獣被害が深刻な地域でも実施。26年度はイノシシが1万3010頭捕獲され、捕獲数も増加傾向にあるため、「捕獲目標を修正しつつ、ハンターを増やすことで(有害鳥獣の)10年かけて半減を目指す」としている。
(下妻に珍客:茨城)
下妻市半谷(はんや)で1日、イノシシ1頭が捕獲された。中山間地域など各地に生息域を広げて農作物被害などが問題になっているが、平地が広がる同市では珍しい。わなを仕掛けた県西農業共済組合(大山佳功組合長)によると、メスで体重は34キロ。1月ごろから付近で目撃情報があり、市から捕獲要請を受けた同組合が2月29日、ササやぶに1台を置いたところ、1日朝にかかっているのが見つかった。近くには住宅などがあり、人に危害を加える恐れがあるため有害鳥獣として駆除したという。同組合は、農作物被害を防ぐためイノシシの捕獲に取り組んでおり、今年10頭目。だが担当者は「昨年以前も含め、下妻では捕獲の経験がない」と話した。
(防護柵「効果は確実」、諏訪でニホンジカ食害対策報告会:長野)
美しい環境づくり諏訪地域推進会議と霧ケ峰自然環境保全協議会は3日、「ニホンジカ食害対策報告会」を県諏訪合同庁舎で開いた。信州大学農学部の泉山茂之教授が、外周4キロを防護柵で囲む国天然記念物・八島ケ原湿原(下諏訪町、諏訪市)について、今年度に湿原内へ侵入したシカは1頭だったと報告。「柵の完成から4年が経過し、効果は確実なものになってきた」と強調し、柵の点検作業を徹底して効果を持続させていく必要性を説いた。防護柵は高さ2メートルで2010年度に半周が、11年度に全周が完成した。泉山教授は一部個体にGPS発信器を付けたり、柵周辺に置いた自動撮影カメラでシカの行動変化や侵入状況を調べている。泉山教授によると、全周完成後に、高さが不足していた場所などから侵入したシカは計9頭。「当初は無理して柵を跳び越えようとする個体もいたが、年を追うごとにその数も減り、仮に侵入しても短期で出ていくようになった」と説明。「設置前は一晩で100頭以上が入り込んでいた。柵の設置でシカの湿原利用はほぼなくなった」とした。その上で、木道と交差する箇所にある散策者用ゲートの閉め忘れが、侵入を許す一因になると改めて指摘。柵の点検や修理とともに、散策者への注意喚起を継続していくよう呼び掛けた。霧ケ峰でシカの出現状況調査(ライトセンサス)を続ける県環境保全研究所の黒江美紗子技師は「調査を始めた10年前に比べ、発見頭数は約3倍になっている」と報告。森林帯から離れた場所でも見掛けるようになったとし、「植物への影響は、以前より広い範囲でいろんな種に及んでいる可能性がある」と警鐘を鳴らした。関係者や一般市民ら約90人が聴講した。
(ミツマタの産地に、植樹から3年で初収穫)
那賀町木沢地区の林業家でつくる木沢林業研究会が、シカの食害対策などのために同町掛盤の山林に植えたミツマタが初めて収穫された。植樹から3年間、食害に遭わなかった上、自生のものより加工しやすい形に育ったことから、会員らは産地化に手応えを感じている。研究会は、ミツマタがシカに食べられていないことに着目。山肌を守るとともに、紙幣の原料として出荷して新たな収入源にしようと、2013年3月、苗木約800本を植えたのを皮切りに、木沢地区の十数カ所の山林など約25ヘクタールに約3万本を植樹した。このうち約500本が1・2~2メートルに成長し、今月2日、会員と地域おこし協力隊員の辻蘭子さん(44)ら約10人が収穫。3日には同町小畠のミツマタ加工場で、樹皮をはぎ紙幣の原料となる「白皮」にする作業を行った。亀井廣吉会長(67)=同町沢谷、林業=は「等間隔で植え雑草処理もしたので、幹がまっすぐに伸び、太さも均一で皮はぎが容易だった」と喜んだ。3日に作業を視察した独立行政法人国立印刷局四国みつまた調達所(三好市池田町)の山根基専門官は「品質に問題はなさそう。増産してほしい」と期待を寄せた。白皮の出荷価格は30キロ当たり9万円程度。研究会は産地化を目指して生産・加工体制を整えている。15年度は白皮加工機を導入し、試験加工品も含め白皮約150キロを生産した。近く、加工場敷地内に、研修生らを受け入れる体験交流施設を建設する。亀井会長は「植樹なら栽培場所を選べる上、質の良いものを安定供給できるなどメリットは多い。今後も栽培面積を増やしていきたい」と話している。
(奈良女子大に狩猟サークル:奈良)
奈良女子大学(奈良市)で30日、狩猟サークルが誕生する。狩猟文化の習得やジビエ(野生の鳥獣肉)料理などを通じ、狩猟の魅力を発信し、担い手を増やして若返りを図るのが狙い。狩猟を通して、同大学と交流のある県南部の野迫川村の活性化につなげる考えで、活動資金は県がバックアップする。大日本猟友会によると女子大の狩猟サークルは「極めて珍しい」という。サークルの発起人でリーダーを務めるのは、同大学大学院人間文化研究科1年の竹村優希さん(23)。昨年5月、地域づくりに関するゼミの調査で野迫川村を訪れたとき、高齢化に伴って狩猟者が減り、農作物の鳥獣被害が深刻化していることを知ったのがきっかけ。被害実態を目の当たりにしたことで、狩猟サークルを設立しようと決めた。竹村さんは「村は過疎高齢化が進み、一番若い人が60歳という集落もある。猟友会から『若者が動いてくれないとどうにもならない』と切実な訴えも聞いた。この思いに応えたい」と明かす。活動資金を捻出するため昨年7月、県内の大学生が参加した県主催の政策提案コンペに応募。最優秀賞に輝き、県は2016年度予算案に「若手狩猟者確保育成事業」として326万円を計上して、支援に乗り出す。活動はまず、サークルのメンバーがわな猟免許の取得を目指し、毎月1回同村に通い、猟友会に教えを請う。狩猟から解体までの流れを学びながら、尾根や谷の地形や地名、イノシシや鹿の通り道などを盛り込んだ若手ハンターが活用できる狩猟マップを作成する。横のつながりをつくるため、積極的に全国の若手ハンターとも交流する。食にもこだわる。同村の郷土料理研究会や同大学食物栄養学科にも協力を求め、若者にも作りやすく栄養価の高いジビエのレシピを開発。同村の宿泊施設や県内のイベントなどに提供する。今秋には狩猟体験ツアーを開いて、地域の交流人口の拡大につなげる計画だ。活動はインターネット上の交流サイトから発信する。同村職員で、猟友会の曽我部和英さん(55)は「若い人たちは高校進学と同時に村外に出てしまい、20代は珍しい。女子大生が地域に関わってくれるなんてとても喜ばしい。狩猟者を増やし若返りを図るためにも、彼女らに狩猟手法を伝えたい」と歓迎する。県も「女子大生が狩猟の魅力をPRすることで狩猟者の担い手確保につながればうれしい」(森林整備課)と期待する。竹村さんは「どんどん若者を巻き込んで、村の活性化にも役立ちたい」と張り切る。県によると、14年度の鳥獣害による農作物被害額は約2億円で、被害面積は約400ヘクタールに上る。県内の狩猟登録者数は、1970年度は3795人だったが、14年度には1218人と、40年余りで3分の1まで激減した。
(鳥獣供養祭:静岡)
伊東市で地元の猟友会による鳥獣供養祭が行われた。これは、2015年度の狩猟シーズンと県の委託を受けた鹿の管理捕獲が8日で終わる事から、田方猟友会伊東分会が行ったもの。7日は、会のメンバーらおよそ50人が集まり、供養塔の前で手を合わせて動物の霊を慰め期間中の無事故を感謝するとともに、2016年度の猟の安全を祈願していた。田方猟友会では、2015年11月から2月15日までの間、イノシシの駆除を中心に猟を行っていた。鹿の管理捕獲は4月から再び始まり、伊豆半島全体で個体数の増加を抑える8000頭を目標に猟を行っていくという。
(鳥獣害の防止策や捕獲事例学ぶ:和歌山)
和歌山県田辺市龍神村、中山路地域の住民でつくる中山路生活圏寄合会と龍神林業開発会議は3日、龍神村安井の龍神市民センターで鳥獣害対策の学習会を開いた。イノシシやシカ、サルなどによる植林や農作物への被害に悩む住民ら約30人が出席し、囲いわなによる捕獲技術や他地域で成功している事例などを学んだ。
(ストップ鳥獣害:滋賀)
滋賀県農業技術振興センター(近江八幡市)は今年度、麦作のシカ害軽減技術を開発した。品種や播種時期と食害の関係を明らかにし、食害後の施肥、低コストの通電柵などの組み合わせで効果的で普及可能な防除策を確立した。早播きを避けると被害を受けにくい▽食害された場合も播き性の高い品種は減収しにくい▽穂肥を増やすことで減収を緩和できる▽通電性のリボンワイヤの1段張りでも侵入を抑制できる――などがこれまでに分かった。
(「伝説の猟犬」紋次郎、鹿追い払い農作物守る:京都)
鹿による農作物被害に悩む京都府南丹市美山町に、住民が「伝説の猟犬」と呼ぶ犬がいる。同町佐々里地区の民宿「段」の紋次郎(雄、15歳)。体長約70センチの中型犬だが、鋭い眼光で数十頭を山へ追い払い、今では民宿に近寄る鹿はいない。老犬となり、現在は悠々自適の日々を送るが、10匹以上いる子どもたちも各地で父譲りの活躍を見せる。うわさを聞きつけた市は、獣害対策への活用も視野に入れる。紋次郎はシバ犬の雑種。2000年の夏頃、民宿を営む林江津子さん(68)が、知人から譲り受けた。生後数か月で、まだあどけない表情。「おとなしくて、かわいらしい子犬」という印象だった。紋次郎が1歳になったある日。散歩中に人家近くまで下りてきた鹿を見つけた。大声でほえながら詰め寄ると、鹿は一目散に逃げていった。〈座敷犬〉だった紋次郎は、その日から猟犬としての才能を発揮。山に散歩に行っては、たびたび鹿を追い払うようになり、次第に周辺で鹿の姿を見ることはなくなったという。天王寺動物園(大阪市)の榊原安昭獣医師は「犬は本来、集団で狩りをする動物。訓練していない犬が、単独で自分より体の大きい鹿に向かっていくのは珍しい」と驚く。府内では山間部を中心に、有害鳥獣の農作物被害が深刻だ。府などによると、2014年の被害額は3億8000万円に上り、イノシシ(1億4000万円)、鹿(1億2000万円)、猿(4000万円)の順で多い。農林水産省の調査では、犬による追い払いを実施しているのは全国で71自治体(13年度)あり、計360頭が登録されている。猿を追う「モンキードッグ」はよく知られ、発祥の地とされる長野県大町市では約30頭が活躍。「防護ネットや電気柵設置の手間が省ける」など農家から好評で、市は訓練費用の8割(20万円程度)を補助している。府森林保全課によると、府内でモンキードッグなどを導入している自治体はないという。南丹市農林整備課は「農家などから対策を求める声は多い。紋次郎のように優秀な犬がいるなら、『ディア(鹿)ドッグ』の制度化を検討する余地はある」と話している。
(ゆっくり育って下さいな:愛媛)
千メートル級の山に囲まれ、四万十川の支流、広見川沿いに広がる愛媛県鬼北(きほく)町。しんと冷え込んだ1月末、キジ農家の藤城英秋さん(65)と妻のけい子さん(65)は、出荷作業に奮闘していた。飛び回るキジを傷つけないよう、直径60センチほどの魚釣り用の網でひょいとすくい、羽の根元をつかんで手際よく出荷用ケースに入れていく。「寒くなると脂が乗って身は締まる。だから冬場に一気に出荷するんよ」と英秋さん。キジを育てて11年目。雌雄合わせて年に約3500羽を飼育する。かつて建設業を営んでいた英秋さんが手作りした飼育小屋は100平方メートルほどの部屋が九つある。生まれた時期ごとに分けられたキジは、それぞれの部屋で自由に動き回り、止まり木で羽を休める。「自然に近い方が肉付きがいいけんね」春に孵化(ふか)してから出荷まで200日以上。50日ほどで出荷するブロイラーの4倍だ。「大変やけど、その分歯ごたえが生まれ、脂もしつこくない。肉のうまみが凝縮されるんよ」と、けい子さん。鬼北町でキジの生産が始まったのは24年前。それが今や、国内有数の産地だ。過疎に悩む町の自慢の特産品に成長した。千メートル級の山に囲まれ、四万十川の支流、広見川沿いに広がる愛媛県鬼北(きほく)町。しんと冷え込んだ1月末、キジ農家の藤城英秋さん(65)と妻のけい子さん(65)は、出荷作業に奮闘していた。飛び回るキジを傷つけないよう、直径60センチほどの魚釣り用の網でひょいとすくい、羽の根元をつかんで手際よく出荷用ケースに入れていく。「寒くなると脂が乗って身は締まる。だから冬場に一気に出荷するんよ」と英秋さん。キジを育てて11年目。雌雄合わせて年に約3500羽を飼育する。かつて建設業を営んでいた英秋さんが手作りした飼育小屋は100平方メートルほどの部屋が九つある。生まれた時期ごとに分けられたキジは、それぞれの部屋で自由に動き回り、止まり木で羽を休める。「自然に近い方が肉付きがいいけんね」春に孵化(ふか)してから出荷まで200日以上。50日ほどで出荷するブロイラーの4倍だ。「大変やけど、その分歯ごたえが生まれ、脂もしつこくない。肉のうまみが凝縮されるんよ」と、けい子さん。鬼北町でキジの生産が始まったのは24年前。それが今や、国内有数の産地だ。過疎に悩む町の自慢の特産品に成長した。愛媛県鬼北町は人口1万人あまりの山あいの町だ。この地でキジの飼育が始まったのは1992年。過疎と高齢化が急速に進む地域を活気づけようと、合併前の旧広見町などが、隣の高知県梼原(ゆすはら)町のキジ農家から500羽を仕入れたのが始まりだ。「キジの美しいたたずまいが自然豊かな町のイメージにぴったりやった」。当時、町職員として携わった入舩秀一さん(66)は、そう振り返る。当時は地域あげてキジの飼育を試みる例は少なく、差別化を図ることができた。育ててみると、豚や牛に比べて力仕事が少ないなどの利点もあり、飼育数が徐々に増えて特産品として定着。10年ほど前には、ビール会社のプレゼントキャンペーンでキジ肉が選ばれ、知名度がアップ。販路開拓につながった。現在、8軒の農家が年間約1万3千羽を飼育。共通のマニュアルを導入し、品質にばらつきが出ないよう気を配る。入舩さんは「キジは低脂肪でアミノ酸が豊富。おいしいだけやない。体にもいいんよ」と胸を張る。町内で育てられたキジの加工・販売を一手に担うのが、町の農業公社「鬼北きじ工房」だ。特徴は、さばいたキジ肉を48時間、低温で「熟成」させること。「うまみ成分のイノシン酸がぐんと増え、コクと深みが出るんです」と、工房長の丸石則和さん(35)。熟成させた肉は零下30度のエタノール液に浸して急速に凍らせる。解凍時に水分が出て肉がパサパサになるのを防ぎ、うまみを保ちながら通年出荷ができる。今では、「鬼北熟成きじ」のブランドで、全国のレストランやホテルなどと取引する。鬼北熟成きじは100グラム当たり約千円と高価だが、その味わいのファンは多い。大阪市北区の居酒屋「酒や肴(さかな)よしむら」ではここ数年、鳥は鬼北のキジしか扱っていない。店主の吉村康昌さん(45)は「鶏肉よりも味が濃く、鼻に抜ける香りがいい。初めてのお客さんも、ほぼ100%おいしいって言いはります」。定番の「鬼北熟成きじの炭火焼き」は、肉本来の味を引き立てるため、味付けは塩のみ。光沢のある紅色の肉をあぶると何とも香ばしい。一切れいただく。かむほどに滋味深い味わいが口いっぱいに広がる。これはくせになりそうだ。
(鉄道とシカ衝突)
鉄道では、年間5000件ものシカとの衝突件数が発生しています。旅客や貨物の安全運行の妨げになり、鉄道会社にとって大きな悩みでした。近隣住民にとっても精神的負担になり、社会問題化していました。そんな中、建材総合メーカーが問題解決につながる製品を開発し、注目されています。衝突増加の背景として、(1)狩猟者が高齢化で減少している上、銃刀法改正で狩猟免許の更新手続きが煩雑になり担い手が減少(2)シカの頭数が増加(3)里山が減り、シカが餌を求めて山を下りてくる-ことなどが挙げられます。鉄道会社にとって山間部を走る鉄道とシカの衝突は、列車遅延や部品損傷、死骸処理などで経済的な損失が大きい。対策としてこれまで、シカが嫌うライオンなどの糞尿(ふんにょう)を薄めた水を線路上にまいたり、線路沿いに背の高い柵を設置したりするなど、さまざまな防止策に取り組みましたが、決め手がなく根本的な衝突防止にはつながりませんでした。鉄道会社の窮状を知り、問題解決につながる製品開発に取り組んだのが日鉄住金建材です。同社は鉄鋼建材事業を中核にしていますが、鉄道用の防風柵や防音壁の製造・販売も手掛けており、2011年にシカ被害対策の製品開発プロジェクトをスタートさせました。プロジェクトの中心を担ったのは、同社で新ビジネスの展開を担当する開発企画部開発企画グループ長の梶村典彦氏と同部員の見城映氏です。これまで道路などインフラ関係の顧客との取引が多いことから、そうした分野の市場調査を始めたところ列車とシカの衝突件数が急増しているという問題に着目しました。それにしても、なぜ線路で衝突が起きるのか。その実態調査はこれまで誰も行っていませんでした。専門家らに聞き取り調査を行い、シカ肉に鉄分が豊富に含まれていることが分かったほか、シカ牧場での観察でシカが繰り返し鉄パイプをかじる様子を確認しました。「餌を食べるための歯を削ってまで硬い鉄をかじるのは、シカにとって自殺行為といえます。よほどの理由がないとしないはずで、私たちは鉄不足を補うためではないかという仮説を立て、野生でも同じか現地調査を行いました」(梶村氏)梶村氏と見城氏は鉄道会社に協力してもらい、岐阜県の関ケ原地区と垂井地区の2カ所に野生動物用カメラと赤外線動物カウンターを設置し、シカを徹底的に観察しました。これらに衝突情報、運転士の目撃情報を加え、調査データを収集していきました。2カ月に1度は現地に入り、線路に集まるシカの様子を観察。衝突後の現場を何度か目撃したこともあります。「シカが線路周辺の草を食べた後、レールをなめる行動を示したのです。レールには車輪との摩擦で生まれた微細な鉄粉がついています。シカは鉄分を補うために線路に入り、レールをなめるという仮説が裏付けられていきました」(見城氏)「13年3月、岐阜県関ケ原町の雑木林で鉄粉を散布する実証実験を行い、20~30頭のシカの群れが集まってきて鉄粉をなめる様子が確認できました。鉄分を補給するため、シカが線路に近付いていると確信しました」と梶村氏。これは、専門家も驚く新発見でした。この発見を基に、塩に鉄粉を混ぜた固形物を試作し、シカの通り道に置くと、シカが次々とやってきてなめ始めました。鉄粉を地面にまくと、その場所の土をえぐり取るように食べていました。こうした実験を積み重ね、塩に鉄粉を主体としたブロック状の固形の誘鹿材「ユクル」(1個5キログラム)が誕生しました。「さびたレールやパイプでも実験しましたが、鉄が酸化した状態では誘引効果はありませんでした。パウダー状でイオン化しやすい鉄粉であれば摂取できるようです」(見城氏)ユクルの設置方法は用途によります。例えば、シカが線路に向かう通り道の途中にユクルを置けば、シカを足止めしてそれ以上、線路に近付かないようにすることができます。従来のシカ用わなは、そばに餌を置いて、頻繁に取り換えに行く必要がありましたが、ユクルは最大で半年間放置でき、手間がかからないのもメリットです。ユクルと各種わなを組み合わせれば季節を問わずシカの生体捕獲を行え、地域環境全体のトラブルを減らすことが期待されます。さらにシカが“入りにくく出やすい”形状の侵入抑止柵「ユカエル」を開発。ユクルとセットでシカ対策システム「ユクリッド」をつくりました。これも現地調査から開発したもので、従来とは逆の発想からの開発です。これまでは、シカが侵入しないように背の高い柵を置くのが一般的でした。「ところが映像を観察すると、シカは柵の切れ目などからそっと入り、柵から出るときはピョンと飛び越えて逃げます。列車に追い立てられると脱出しようとしても柵が高いと飛び越えられず、衝突が起きやすくなります。従来品の半分の高さで、鉄道特有の盛り土の斜面に垂直に立ててやることで入りにくくて脱出しやすい構造にしました」(梶村氏)「製品化までの約3年、会社が自由に取り組ませてくれたことに感謝します。シカに詳しい人材を増やし、もっとお客さまや社会に貢献したい」「ゼロからのモノづくりができてうれしい」と話す両氏が企画、開発の基礎から応用、営業の領域まで関わっていることも日本の大企業では異例のことでしょう。両氏の笑顔から「やるぞ!」という気概が伝わってきます。鉄道会社からの問い合わせに加え、獣害に悩む自治体や森林組合、猟友会、最近は海外からも問い合わせが来ています。自分の目で確かめ、世の中にないものを生み出した創造力に拍手を送りたいです。
(ファン急増中、ヘルシーな「ジビエ料理」)
ここ数年ブームのジビエ。野生の鳥や鹿などの狩猟肉を使った料理だ。もともとはフランス料理などで扱われる秋冬が旬の料理だが、最近は一年中ジビエを出す店も増えてきた。また、国産ジビエの存在も知られるようになり、獣害被害への対策が転じて地域おこしのグルメ食材へと進化しているところもあるほどだ。食肉として飼育される牛や豚などと異なり、ジビエとなる野生の自然環境に生育しているシカやイノシシ、キジや真鴨は、基本的に各自治体によって狩猟解禁となる期間が定められている。しかし昨今、とくに鹿や猪などの数が増えすぎたため、狩猟期間外は「有害鳥獣駆除期間」とされ、むしろ「積極的に」駆除することが奨励されている。そのためほぼ年間を通して流通するようになった。また熟成肉や加工肉などのバリエーションも増えている。こうしたジビエには、野生の生き物ならではの魅力がある。とくに鹿や猪などの味わいとしては、脂肪分が少なくしっかりした赤身肉が特徴だ。赤身はたんぱく質や鉄分など栄養豊富でいて、カロリーは牛の4分の1程度とヘルシーなところから、昨今ブームとなっていることは以前にも紹介したとおりだ。その延長上でジビエが注目されるという面はもちろんあるが、人気の理由はそれだけではない。上質な赤身肉の持つうまみと食べごたえを好む人が増え、今までなかなか味わえなかった野生の狩猟肉という「希少性」や「プレミアム感」から注目されている側面もある。
(新しい特産品開発:北海道)
豊頃町が本年度行った「名品づくり支援事業」で、町内で処理される食肉を使った新たな豊頃の特産品として開発されたテリーヌなどの試食会が2日夜、町える夢館で開かれた。町内でエゾシカ肉などジビエ(野生鳥獣肉)の処理、加工販売を手掛けるエレゾ社(佐々木章太社長)が開発。昨年7月からスタッフ13人がエゾシカやキジバト、短角牛などの肉を使って試作を重ね、テリーヌ7種、サラミ4種、生ハム1種の計12品の商品化にこぎ着けた。試食会には宮口孝町長ら関係者20人が参加。佐々木社長やスタッフの解説を聞きながら、切り分けたテリーヌやサラミを味わった。テリーヌの中には、シカの肉・内臓とキノコを合わせたものや、シカ・キジバト・ヒグマなどを組み合わせたものもあり、意外なおいしさに参加者は驚きながら舌鼓を打った。
(獣の骨や皮で作品作り:愛知)
獣害に悩む豊田市の山間地で、シカの角やイノシシの骨や皮を使った作品づくりに取り組む男性がいる。竹尾博史さん(57)。ジビエ料理への関心が高まり獣肉の活用が進む中、「あますことなく骨も皮も大切にいただこう」との思いで始めた。骨や皮を加工する工房は、一月に操業を始めた獣肉処理施設「猪鹿工房 山恵」(新盛町)の横に立つ。竹尾さんが地元の間伐材や廃材を使い、七カ月かけて昨年末に完成させた。「いずれは施設で廃棄物として出る骨や皮を使い切りたい」セカンドライフの準備をしようと、五十一歳の時に市やトヨタ自動車などが開いている「豊森なりわい塾」に参加し、里山で暮らす人や猟師と交流を深めたのがきっかけ。もともと関心があった里山暮らし。子どもが自立したこともあり、「早めにセカンドライフのスタートを切ろう」と思い切って五十五歳で早期退職した。塾で出会った人と交流を重ねていくうちに、獣害に悩む山間地の姿が見えてきた。そんな折、自身も被害に遭った。休耕田を耕し、タラノメを育てていると、根こそぎイノシシに荒らされ、「獣害は課題であると同時に資源だと気付いた」。昨年五月、「山の恵みである獣たちの命を大切に扱おう」との思いから、任意団体「しし森社中」を立ち上げた。七月には狩猟免許も取得し、獣に関する知識を深めてきた。現在はシカの角を使ったアクセサリーを作り、工房などで販売を始めている。「角の模様が一番生きる造形を考えている」といい、輪切りにした飾りが付いたネックレスや、削りだした指輪やピアスなどが並ぶ。「夢が広がりすぎて寿命が足りない」と笑う竹尾さん。作品の幅を広げようとイノシシの皮をなめすことにも挑戦している。「皮のなめしに成功すれば、作品づくりの幅が広がる。まずは雪の上に座る敷物を作りたい」と話している。

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(サラブレッド2頭、短時間で射殺か:北海道)
北海道新冠町の「競優牧場」で放牧中のサラブレッド2頭が死んでいるのが見つかった問題で、2頭は短時間のうちに相次いで射殺された可能性があることが1日、分かった。銃の発砲音とみられる音は2月27日午後9時ごろ、同牧場の従業員が聞いていることがこれまでに分かっているが、近隣住民がその後の同9時過ぎにも聞いていた。北海道警静内署はライフル銃が使われたとみているが、弾丸は見つかっていない。同署は事件と事故の両面で捜査しているが、1日の北海道は発達した低気圧が通過した影響で「とても現場を見られる状況ではない」(捜査関係者)という。
(鹿対策実証、新たな捕獲法で10頭:長野)
林野庁中部森林管理局(長野市)は1日、伊那市長谷の国有林で行ったニホンジカ被害対策に関する報告会を市長谷総合支所で開いた。林道沿いの複数箇所に餌をまいて鹿をおびき寄せ、車で移動しながら猟銃で仕留める「モバイルカリング」と呼ばれる新たな捕獲方法による成果について報告。鹿による食害が深刻な南アルプスでの対策に生かしていく考えだ。モバイルカリングは、移動(モバイル)と計画的な個体数調整(カリング)を組み合わせた造語。南信森林管理署(伊那市)管内では初の取り組みで、民間会社の野生動物保護管理事務所(東京都町田市)が、林野庁の森林鳥獣被害対策技術高度化実証事業の委託を受け、浦国有林の西風巻林道と三峰川林道の2ルートで実施した。昨年10月15日から、干し草を5センチ角のサイコロ状に固めた市販の餌をまき始め、同11月4~6日と10~12日の計6日間、地元猟友会員が射手となって車から猟銃で狙った。この結果、成獣8頭(雄2、雌6)と幼獣2頭の計10頭の捕獲に成功した。ただ、捕獲頭数は予想より少なかったという。猟を行う日中に鹿の出没数が少なかったのが要因で、山に雪がなく、餌を求めて下りてくる鹿が少なかったためとみられている。捕獲頭数を増やすためには、積雪期や春先の残雪期での実施や誘引期間の延長が考えられるとした。同社の奥村忠誠さんは「環境省などのデータから冬に鹿が集まる越冬地とみてルートを選定したが、やや見込みが外れた。降雪量の影響のほか、個体数自体が減っている可能性もあるが、情報が少なく、この結果だけでは分からない」と話した。同事業は今年度で終了する。同森林管理局は「それぞれの地域に合った手法が必要であり、今回の結果も踏まえて効率的な捕獲を検討していきたい」としている。
(「速さ命」テキパキさばく「移動解体処理車」)
増えすぎて農業被害をもたらしているニホンジカやイノシシなどを、人気の「ジビエ(野生鳥獣の肉)料理」に利用しやすくするため、レストラン経営者らが作るNPO法人が大型獣を捕ったその場でさばける「移動解体処理車」を開発している。食肉として売れるようになればハンターの収入が増え、駆除のための人材確保にもつながるため、農林水産省は普及に向けた支援を検討している。野生鳥獣による農業被害は2014年度は全国で191億円に上った。特に、被害が大きいシカとイノシシは年間40万頭以上を捕獲しているが、個体数増加に歯止めはかかっていない。さらに、国内ではハンターが高齢化する一方、収入が確保できないことから若手の参入も少ない。このため、切り札として食肉の利用拡大が期待されているが、肉の処理方法が課題だった。野生の鳥獣は捕獲から数時間以内に処理しなければ内臓の臭いがうつってしまうが、捕獲した山間地からふもとの処理加工施設まで搬送に時間がかかるという難点があった。そこで、レストランや企業、自治体関係者らが作るNPO法人「日本ジビエ振興協議会」(埼玉県)が大手自動車メーカーなどと、捕獲現場まで移動できる解体処理車の開発に着手した。2トントラックを改造して車内に冷蔵室や作業室を設け、シカであれば一度に最大5頭程度の処理ができる。保健所の営業許可を得たうえで、今年5月に初号車が完成する見通しという。この取り組みに注目した農水省は来年度、鳥獣対策の交付金を活用した解体車の購入費への補助を検討している。フランス料理店を営む同協議会の藤木徳彦理事長は「無駄に捨てていた捕獲鳥獣を有効活用できる。ジビエ人気で需要は高まっており、解体車に期待する関係者は多い」と話す。
(鳥獣対策、女性向け勉強会:神奈川)
野生のニホンザルによる農作物被害などに悩む伊勢原市は1日、同市日向の集会所で、「女性による女性のための鳥獣対策勉強会」を初開催した。男性が仕事などでいない時間帯を見計らって出没するなどサルの動きが巧妙になっている実情を踏まえ、女性にも自衛・撃退に立ち上がってもらおうと企画。〈1〉近寄らない〈2〉目を合わせない〈3〉背中を見せない〈4〉叫ばない――の「セザル4か条」などを伝授した。市によると、市内では約200頭のサルが生息しており、農作物被害は毎年600万~1000万円ほどで推移。追い払い対策を続けているが、歯止めが掛からず、住宅内の食料品、仏壇のお供え物まで奪われるケースも出ているという。この日の勉強会には、日向地区周辺の主婦ら16人が参加。講師も千葉科学大学動物危機管理学科の加瀬ちひろ助教ら全員女性が務め、鳥獣の生態などを学んだうえで、エアガンやロケット花火などを使ったサル追い払いの実習を行った。勉強会に参加したミカン農家の主婦秋山良江さん(68)はエアガンを豪快に連射し、「どこかに当たるとはじけるような弾の方が効果的かも」と話していた。
(モンキードッグ、猿害から集落を守る:和歌山)
和歌山県農業環境・鳥獣害対策室によると、ニホンザルは県中部から南部の山林に分布し、1986年度調査では80の群れで2210~2735頭でしたが、2012年度は180の群れで3972~7308頭と推定され、個体数・群れ数が増えています。農作物被害は年間約5千万円で、農家に与える心理的な負担が大きく、集落ぐるみの対策が求められます。日高川町寒川地区の取り組みを2月、取材しました。人工林や雑木林が織り成す山々に囲まれた集落で、住民は約370人で高齢化率は54%。地区産業・鳥獣部会長の堺典雄さんによると、作物を自家栽培する住民にはサルの被害は深刻で、収穫期のカボチャを抱えていったり、稲穂をしごいたりされるそうです。シイタケは軸の部分しか食べず、少しかじっては捨て、次々と作物を引き抜くので被害が拡大します。地区寄合会会長の堺好孝さんは「サルは一筋縄でいかない。総合的にやらなければ」と、県の過疎集落再生・活性化支援事業を活用した、モンキードッグの育成や、獣害に対応したシイタケのホダ場づくりを教えてくれました。モンキードッグは、農作物を守るためにサルを追い払うよう訓練された犬で、寒川地区では4頭が認定されました。訓練士の濱田由美子さんによると、「人に従順で、吠(ほ)えながらサルを追い払い、命令ですぐ戻る。作業中、人間と犬自身の安全に注意する」働きが求められます。モンキードッグのハナ(メス9歳)と対面しました。「ワンワン」と体格に見合わない大きく響く声。飼い主の森岡スミ子さんは「訓練を受けて合図でほえるようになり良かった。サルが来なくても、おやつの時など定期的にほえさせる」と話しました。モンキードッグがいる家の谷ではサルを見かけることが少ないそうで、集落全体に犬の姿や声、人の行き来が増えると、サルの接近を阻む効果がありそうです。森岡さんは「モンキードッグとしてもう少し頑張るかな」とハナに笑顔で話しかけました。
(ジビエ加工食品の開発活発化:岡山)
岡山県内の猟師や精肉店が、有害獣などとして捕獲されたイノシシやシカの肉を使った加工食品の開発を活発化させている。県産ジビエ(狩猟肉)で収入増を図りながら、深刻化する農作物被害の抑制につなげる“一石二鳥”の取り組みで、塩漬けやソーセージなどを相次いで発売している。新見市の猟師、長尾一三さん(72)はハムやベーコン製造のトリオ倶楽部(岡山市)などと共同で、イノシシ肉の塩漬けの缶詰を先月発売した。自身や仲間の猟師が捕獲したイノシシを新見市内の食肉解体施設で処理。トリオ倶楽部がハーブや香辛料を使って塩漬けし、薄味に仕上げた。1個60グラムで700円。JAあしん広場(新見市)などで扱い、年1万個の販売を目指す。長尾さんはイノシシ猟歴約40年のベテランで、仲間も含め年100頭超を捕獲。これまで捨てていた骨周りや端切れの肉を活用した。「しっかりとしたうま味があり、酒の肴(さかな)やサラダ、炒め物にぴったり」と話す。シカ肉の加工食品を商品化したのは、福池精肉店(岡山市)。県産のシカ肉と豚の脂身を細かくひいて羊の腸に詰めたソーセージ(約150グラム、税抜き570円)、骨付きロースをガーリックスパイスやオリーブオイルで味付けしたマリネ(約100グラム、570円)など4品をそろえ、2月から岡山市内の直営店で販売している。ジビエの消費拡大に取り組むJAグループの岡山県農業開発研究所(赤磐市)と意見交換を重ねて開発。福池匡洋社長は「手ごろな値段に設定した。シカ肉の風味を残しながらも食べやすく工夫している」とPRする。飲食店経営者ら4人でつくる企業組合「鏡野やま弁クラブののもん」(鏡野町)は4月、シカ肉を使った缶詰を売り出す。和ハーブで味を調えたカレー(約160グラム、税抜き900円)、油に漬けて熱を加えたコンフィ(約160グラム、800円)、シカ肉ソーセージとキャベツの酢漬けを合わせたシュークルート(約200グラム、1400円)の3品。これまではシカ肉のみそ煮など土産用をメーンとしていたが、「新商品は百貨店でも扱ってもらうため、西洋風の料理にした」と丸山恵代表理事。今月3~5日に東京で開かれた見本市にも出展するなど、販路開拓に力を入れる。吉備中央町の猟師らでつくる加茂川有害獣利用促進協議会(二枝茂広会長)は、イノシシとシカの肉を混ぜたスモークソーセージ(約150グラム、卸売価格750円)を、昨春から道の駅かもがわ円城(同町)などで販売。スモークならではの香ばしさから売れ行きは順調という。岡山県によると、イノシシによる農林水産物の県内被害額(14年)は前年比8%増の1億5864万円。シカによる被害額は8095万円と前年比では8・4%減ったものの、この10年でみると増加傾向にあるという。県は1月に鳥取県と共同で、県産ジビエのフェアを東京で開催した。岡山県農村振興課は「ジビエへの関心を高め、消費を喚起したい」としている。
(シシ肉を「コンビーフ風に」加工:岡山)
岡山県西部を流れる高梁川の流域で生まれた食や文化の魅力を発信する社団法人「水辺のユニオン」(倉敷市阿知3、TEL 086-086-434-8400)が1月29日、県内で捕獲されたイノシシの肉を加工した「コンビーフのイノシシ版」となる缶詰「コン猪(しし)」を企画・開発した。現在、倉敷美観地区の複合商業施設「林源十郎商店」などで販売している。シシ肉を塩漬けしたものを缶詰にした同商品。シシ肉は、高梁川上流の新見市哲多町でイノシシを年間約100頭捕獲する猟師グループによるもので、自家製ハムなどを手掛ける「トリオ倶楽部」(岡山市)の菅生ななさんが、天然塩、ハーブ、香辛料などを使った塩漬けなどの味付け工程をプロデュースした。企画を担当した同法人代表の岡野智博さんは「『シシ肉には臭みがある』というのは、正しく解体されなかったシシ肉によって広まった勘違い。当商品は高い解体技術を持つ猟師たちによるもので、シシ肉本来の味が引き出されており、偏見を払拭(ふっしょく)できるのでは」と期待を寄せる。「酒・ワインとの相性も良く、サラダ、チャーハン、サンドイッチなどの食材としても柔軟に使えるのが魅力。この商品を通じて、人間とイノシシの関係、里山の保全など、地域の自然環境について考えるきっかけにもなれば」とも。価格は702円(70グラム入り)。常温で約3年保存可能。
(シカ肉料理6品を堪能、養鹿研が今年もパーティー:北海道)
恒例の鹿肉パーティーが2月27日夜、村内のホテル森夢(りむ)で開かれ、菊池博村長ら約170人がエゾシカ肉の料理を堪能した。村養鹿(ようろく)研究会(中原慎一会長)主催で、今年が21回目。地域の資源を活用した料理を囲み、親睦を深めることが狙いだ。中原会長が「シカ肉は村の特産品としてすっかり定着しました」とあいさつ。出席者たちは歓談しながら、ホテルの大地哲栄(おおちのりまさ)料理長が腕を振るった、ちらしずし、ソテー、天ぷら、トマトの煮込みなどシカ肉ずくめの6品を味わった。上川管内音威子府村から参加した公務員の一岡政紀さん(40)は「シカ肉を食べたのは初めて。臭みがなくとてもおいしい」と話した。村内では昨年1年間でエゾシカ約700頭が捕獲されている。

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