<射撃ニュース12月>
12/23
(イノシシ豚熱、県内今年3例目確認:愛知)
県は二十日、豊田市松平志賀町の道路脇で十四日に死んでいるのが見つかった野生イノシシが、豚熱(CSF)に感染していたと発表した。県内での感染確認は今年三例目。

(ユキウサギとアライグマ捕獲対象に:北海道)
北見市は市鳥獣被害防止計画(2022~24年度)で、ユキウサギとアライグマを対象鳥獣に加える。ユキウサギは農業被害が増加傾向にあるためで、アライグマは被害は確認されていないものの、同種と思われる足跡の目撃情報があることなどを加味した。14日の市議会産業経済委員会で、計画案を示した。計画は10年度から3年ごとに定め、対象鳥獣の捕獲、防護柵設置など被害防止に向けた取り組み方針などを盛り込む。2種の追加により対象はエゾシカやヒグマ、カラス類など8鳥獣となった。対象鳥獣については国から被害防止策にかかる費用の一部助成などを受けられる。

(マダニに咬まれ日本紅斑熱感染、80代男性死亡:岐阜)
岐阜市は20日、市内に住む80代の男性が、マダニが媒介する日本紅斑熱に感染し死亡したと発表しました。岐阜県内で日本紅斑熱の感染者が確認されたのは初めてです。日本紅斑熱は、病原体を保有するマダニに咬まれることで感染する病気で、主な症状に発熱や発疹などがあります。岐阜市によりますと市内に住む80代の男性は、11月1日に発疹や倦怠感などの症状が出て、3日後に医療機関を受診し入院しましたが、その日に死亡しました。日本紅斑熱の疑いがあり、国立感染症研究所などが検査したところ陽性が判明しました。男性は日ごろから、趣味で山歩きをしていたということです。岐阜市は、森林や草地などマダニが多く生息する場所に入る場合は、長そで長ズボンを着用するなどして対策をするよう呼び掛けています。

(泳いで上陸か、繁殖400頭?:兵庫)
兵庫県姫路市沖の播磨灘に浮かぶ家島諸島でイノシシが増えている。海を10キロ以上泳いで上陸したとみられ、島内ではサツマイモなどの作物や森が荒らされる被害も発生。人が襲われる恐れもあるため、住民たちが狩猟免許を取得するなど、官民一体となって捕獲に乗り出している。家島諸島では最も広い西島。「県立いえしま自然体験センター」があり、年間に約2万5000人がキャンプや環境体験学習などに訪れている。今月8日、キャンプ場周辺の見回りをしていた同センターの萩本義郎所長(69)が声を上げた。萩本所長によると、2013年にイノシシの死骸がセンター近くの海岸に打ち上げられた。イノシシはこの頃から西島に渡って来たとみられ、15年以降はセンター職員がたびたび生体を目撃している。繁殖していたアカテガニやスナガニが減り、放し飼いのウサギも全滅。希少植物のササユリが掘り起こされるなどの被害が島内で続いた。キャンプに来た子どもがけがをする恐れがあることから、自らの手で島内の安全を守ろうと、19~20年にセンター職員6人が狩猟免許を取得。12か所にわなを仕掛け、これまで計約60頭を捕獲した。県猟友会飾磨支部に所属し、捕獲したイノシシは自分たちでさばいて食べる。家島本島では4人、坊勢島では2人の島民がそれぞれ狩猟免許を取得し、捕獲に当たっている。地域おこし協力隊として赴任してきた伊藤真美さん(36)も7月に免許を取得。「島民がけがをしないか心配」と、10月末に3年間の隊員任期が満了した後も島に残り、捕獲に協力している。兵庫県立大と県森林動物研究センターは20年度から、家島諸島で生息状況を調査しており、男鹿島を含む有人4島には計約400頭のイノシシがいると推定されるという。横山真弓・兵庫県立大教授(野生動物保護管理学)の話「瀬戸内海の島々に泳ぎ着いたイノシシが繁殖し、爆発的に数が増えている。被害を減らすためには、定期的に生息状況を把握して計画的に捕獲し、その効果を検証していくことが重要だ」。

(カラス除けのキット開発、内閣総理大臣賞に:秋田)
学校単位で取り組む全国のエコ活動の表彰で大曲農業高校の生徒が最高賞の内閣総理大臣賞を受賞しました。カラスによる果樹被害を防ぐ取り組みが高く評価されました。20日は受賞した大曲農業高校の山野大樹さんと片野芹菜さんが県教育庁を訪れました。高校の部活動で果樹部に所属する2人は学校のリンゴ園でカラスの被害が相次ぐ中、仙北市にある玉川温泉の湯の花に注目しました。被害に悩む果樹農家がカラス除けとして硫黄石をつるしていることを知った2人は、湯の花を染み込ませた紙で試験を行ったところ、カラス除けの効果があることがわかり、キットを開発しました。この取り組みが学校単位のエコ活動を表彰する「イオンエコワングランプリ」で最高賞の内閣総理大臣賞とベストプレゼンテーション賞を受賞しました。2人はカラスの学習効果にあわせて改良を続け、湯の花を使った土壌改良についても調査・研究していきたいと抱負を語っていました。

(カラス被害に悩む町が“新しいワナ”で対策:岐阜)
夕方になると、どこからともなく集まって来るカラス。岐阜市の中心部では、冬になると毎日見られる光景で、市によると、約5000羽いるといいます。そんなカラスのふんや騒音被害に悩む岐阜市が、12月から新たなカラス対策に乗り出しました。果たして、撃退できたのでしょうか。長年、カラスのふんや騒音に悩む岐阜市。岐阜駅にほど近い金神社でも、その被害は深刻です。去年10月に撮影した映像では、日が暮れる時間になると、すごい数のカラスがどんどんと集まってきているのがわかります。社殿の屋根や本殿の裏側にある社など、境内のいたるところに、カラスのふんの痕跡が…。金神社では、カラス対策として、木にライトを当てて驚かし追い払ったり、爆竹の大きな音で追い出したりしていますが、効果は出ていないようです。こうしたカラスによる被害を少しでも減らそうと、岐阜市は、12月から新たな対策に乗り出しました。それは、カラスを捕獲するワナの設置。岐阜市文化センターの屋上に置かれていたのは、全体が網で囲まれた人が入れるほどの小屋のようなもの。市内の3か所に設置され、上に開いた穴からカラスを誘い込み、捕獲しようというのです。中には鶏の唐揚げやささみ肉などカラスの好物が置かれ、おびき寄せる仕組みです。ところが、肝心のカラスはというと…。穴の近くに置かれたエサを食べるばかりで、中に入りません。設置から2週間以上たちますが、捕獲数はゼロ…。岐阜市では、来年2月までこの捕獲作戦を行う予定で、カラスとの攻防は、しばらく続きそうです。

(ススキ草原、シカ食害で3分の1に:兵庫)
希少な植物が群生し、住民によるススキ草原の再生も進む兵庫県新温泉町の上山高原で近年、急増するシカによる食害が深刻化し、植生が激変している。穂波が輝いたススキ草原は今秋、最盛期の3分の1ほどまで縮小。兵庫県森林動物研究センター(丹波市)は「シカが植物を食べ尽くし、ススキにまで影響が及んだと見て間違いない。保護策は追いついておらず、希少種を含めて生態系が元に戻らないところまで進みかねない」と警鐘を鳴らす。上山高原は鳥取との県境に位置する扇ノ山(1310メートル)の山系にあり、ブナなど落葉広葉樹の森が広がる。地元のNPO法人「上山高原エコミュージアム」は約20年前から間伐や山焼きを続け、ススキ草原を約35ヘクタールまで復活させてきたが、3年ほど前から減少が著しくなってきた。同法人が行った夜間の生息数調査では、2014年に上山高原周辺で一晩に出合うのはわずか4頭だったが、19年46頭、20年71頭、21年74頭と一気に増えた。定期的な刈り取りを行った区域では、シカが新芽を食べるためはげ山状態になっている。同法人の山本一幸理事(62)は「今年は特に茎が細り背が低くなった。以前は道の両脇がススキに囲まれ、トンネルのようだったのに」と声を落とす。兵庫では20年度、野生動物による農林業被害額が4億6千万円に上り、獣種別でシカは3分の1を占める。10年度、県は全市町の協力を得て報奨金制度を設けるなど駆除の後押しを進め、被害額を半減させた。一方、狩猟による脅威が低い地域にシカが移動する問題が起きている。新温泉町では17年、シカによる農林業被害額が前年比30倍に急増。19年の目撃頻度は県内トップだった。扇ノ山ではハイカーの目を楽しませていたスミレやオミナエシなどが次々と姿を消した。リョウブやナツツバキは樹皮を食べられ、無残な姿をさらす。兵庫県版レッドデータブックAランクに指定される「ヤナギタンポポ」や、同Cランクの「ノハナショウブ」など希少種も食害に遭っている。山本理事は「森の健康状態は危機的。生物多様性が連鎖的に失われかねない」と憂慮する。同センターの藤木大介主任研究員は「獣害対策は農林業中心の傾向があるが、上山高原の生態系はあと5年放置すれば元に戻らなくなる。下草が失われると土砂災害も起きやすい」と指摘する。但馬ではさらに以前から氷ノ山や神鍋高原などでシカの食害が起き、住民らが希少種保護に努めてきた。全国の国立公園などでも広大な湿地をフェンスで囲った例もあるという。高原を所管する兵庫県自然環境課は「シカの駆除を強化してもらっているが、植物の保護が十分とは言い難い。柵の設置は費用がかさみ、維持管理も必要になるため、地元との協議を進めたい」としている。

(猟友会ピンチ、後継難深刻:埼玉)
野生動物による農業被害などを食い止める各地の猟友会が、深刻な後継者不足に直面している。狩猟免許を取る若者は増えているのに、なぜなのか。山の中で放された猟犬が獲物を追い始めると、猟師が持つ無線機から緊張感のある声が飛び交った。「犬が早い。モノに迫ってる」「北斜面にいる人は気をつけろ」「来るぞ、落ち着いて」。バキッ、バキッ。逃げてきたニホンジカが枝を踏む音が静かな山に響く。パァァン。ニホンジカを仕留めた一発の発砲音が山にこだまして3回きこえた。今月中旬、埼玉県の小川町猟友会都幾川(ときがわ)支部(都幾川猟友会)による集団猟「巻き狩り」に同行した。県の委託を受けた捕獲事業だ。「私が若い頃、ときがわにシカは出なかった」と支部長の内田富三男さん(72)が言うように、野生動物の生息地は年々広がっている。県みどり自然課によると半世紀前、ニホンジカやイノシシの生息区域は秩父から飯能にかけてだったが、近年はときがわ町を含む比企郡など東側や本庄市など北側に拡大している。人口が減り、人里近くに住み着く個体が増えたとみられる。県境にある秩父の甲武信岳など2千メートル級の山で積雪が減ったため、長野や山梨などから稜線(りょうせん)づたいに埼玉に入っている可能性もある。山には、シカが食べたり角を研いだりして樹皮がぼろぼろの木が何本もあった。シカが好む若い木を守るため、2メートル近い高さの網で囲われた区域もある。「シカは首が届く範囲の草木をなんでも食べる。植物が根こそぎなくなると、土壌の保水能力が失われてしまう。生態系保全のために捕獲は不可欠」。課の担当者はそう話す。農業被害も大きい。昨年度の野生鳥獣による農作物被害は、県内39市町村で約8千万円にのぼる。防除技術の向上で、この10年で減ってはいるが、高齢化が進む農家にとっては痛手だ。自治体の委託を受けて捕獲にあたるのは地元の猟友会が多いが、いずれも後継者不足に悩んでいる。都幾川猟友会は町内外の約15人で活動するが、30代以下はおらず、ほとんどが70歳以上。最高齢は85歳だ。一方で狩猟免許を取る若い世代は近年増えている。環境省によると、1975年をピークに減少が続いた20~30代の狩猟免許所持者数は、2006年度から増加傾向に転じ、17年には06年の約2・5倍の2万5900人。集計中の17年以降も同じ傾向という。環境省によると、ライフスタイルの変化で若者の間で地方や自然に関心が高まってきたことや、漫画やYouTubeなどで狩猟がとりあげられることが増えたことなどが理由として考えられるという。しかし、若い世代は趣味にとどまり、猟友会に入って獣害対策に携わることは少ない。ときがわ町で昨年から地域おこし協力隊員として猟友会で活動する泉名健三さん(44)は、若い人にはなじみにくいと実感している。「活動は想像以上に厳しい。始めた頃は初耳なのに『さっき言ったろ』と怒鳴られるなど、理不尽なことはいっぱいあった」と苦笑いする。ただ、猟には技術や経験が必要で、地域の理解も欠かせない。若い世代は我流でやる人も多いというが、泉名さんは「結局1人じゃうまくいかない。ベテランたちのノウハウを学ぶことは必要」と考えている。県みどり自然課は、ベテラン猟友会員が若者を含む初心者と共に巻き狩りをする「共同捕獲事業」を約10年前から開催し、両者の接点をつくる努力をしている。今年度に参加した20~30代は計7人。指導役のベテランが約50人参加したのと比べて若者の少なさが際立つが、課の担当者は「現場で経験豊富な人に指導してもらって初めて身につくことも多い。現場での講習に参加しやすい雰囲気づくりを模索し、レベルに応じて段階的に学べる場を増やしたい」と話している。

(野生動物の被害対策:群馬)
シカ、イノシシといった野生動物の増加や生息域の拡大が、農林業被害だけでなく、住宅地の暮らしにも影響を与えている。群馬県の農林業被害額は、2012年度の約12億2000万円をピークに昨年度は約5億6000万円まで減少したが、過疎化と高齢化が進展する中で対策の継続、捕獲の担い手の確保など課題は山積。近年は市街地に出没するケースが目立っている。「十数年前から急にイノシシが増えた。個人で対策をしても限界があった」。高山村判形田尻地区の深代清さん(63)は、獣害にさらされた当時をこう振り返る。水を張った水田が、イノシシが泥浴びをする「ぬた場」になり、イネが一晩で全滅して収穫がゼロになった年もあった。同地区では2015年度に国の補助金などを活用し、集落の22人が協力して約4ヘクタールの農地の周囲を電気柵で囲った。雑草が伸びて柵に触れると漏電して効果が弱まるため、定期的な草刈りに加え、樹脂製の防草シートを敷いて対策。深代さんは「集落をみんなで守るという気持ちがあれば被害は防げる」と胸を張る。その後、同様の地域ぐるみの対策が村内で拡大。同地区は今年、鳥獣被害対策に貢献した人や団体を対象とし、初めて実施された県の功労者表彰を受けた。対策で被害はなくなったが、深代さんは「大変なのは管理」とこぼす。今後は補修も必要となるため、「集落の人数が減る中で、維持や更新を続けていけるのか」と不安も抱える。野生動物の生息域拡大を防ぐため、すみかや通り道となる耕作放棄地の対策も重要となる。下仁田町は放棄地に牛を放牧するなどの鳥獣被害対策が評価され、10年度に農林水産省から表彰されたものの、管理の難しさから放牧を中止。高齢化や人口減少が進む中、持続可能な対策が課題だ。侵入を防ぐのに加え、捕獲も欠かせない。捕獲で重要な役割を担っているのが、約1700人の会員がいる県猟友会。趣味としての狩猟だけでなく、市町村による有害鳥獣捕獲や、県の個体数調整事業などの実行役となってきた。有害捕獲は定められた秋冬の狩猟期間以外も出猟でき、捕獲数を押し上げてきた。昨年度の主な野生動物5種(シカ、イノシシ、サル、クマ、カモシカ)の捕獲数は過去最多の2万861頭。霜田和志(かずゆき)会長(78)=太田市=は「経験や道具の進化もあり、捕獲技術は向上している」と強調する。ただ、会員は7割近くが60歳以上、4割が70歳以上と高齢化し、「10年後も同じ態勢を維持できるかは分からない」と危機感も持つ。わなの定期的な見回りなど、負担は小さくない。群馬県の狩猟者登録者がピークだったのは1970年度の1万8947人。年々減り続け、2019年度は3373人となった。「ゴルフもやってみたが楽しめなかった」という霜田会長が狩猟免許を取得したのは20歳。「特殊な趣味だと思う。一日中、山を歩き回って、猟果がなくても楽しいと思えないと続かない」と言う。ベテラン狩猟者の松島義一さん(71)=同市=は「有害捕獲に使命感を持っている。わなの餌を自分で工夫するなど、楽しみの延長線上でもある」と語る。狩猟免許の取得に伴う経費補助など行政による後押しもあり、近年は全国的に女性や40代以下の免許所持者が増えているが、抜本的な担い手不足の解消には至っていない。同会の女性会員は36人。「10年前はほぼゼロだった」(霜田会長)状況からは変化が見られるものの、参入の壁は低くない。所有する竹林でイノシシによるタケノコの食害に困っていた前橋市内の女性(45)は、2年前に取得した狩猟免許を活用できていなかった。今年、県猟友会に入会して技術を教わりながら出猟するようになった。ただ、銃やわなを使い、野山を駆け巡る狩猟は「危険などのイメージがあり、家族の理解も必要。周囲に狩猟をする人が昔に比べて少なく、身近さがなくなっている」と実感を込める。市街地では外来種のアライグマ、ハクビシンによる家屋破損やふん尿、騒音などの被害が増えている。川沿いや空き家、耕作放棄地などがすみかになっているとみられる。県内の生息数の統計はないが、捕獲数が急増。「屋根裏にすみ着いた」などの相談を受け、一部の自治体は地域住民に箱わなを貸し出している。高崎市は2019年度の貸し出しが54件で両種合わせ30匹、20年度は57件で37匹が捕獲された。アライグマは北米原産で、環境省が特定外来生物に指定。1970年代に放送されたアニメで人気が出て飼育が広がり、気性が荒く放棄された個体が野生化したとみられている。同省によると、2017年度までの10年間で全国で生息域が3倍近くに拡大。都市部から広がり、関東平野ではほぼ全域に生息する。ハクビシンが国内に入った時期は不明で、同省は重点対策外来種に指定している。イノシシも近年は住宅地に現れ、死傷事故も起きている。16年に出没が相次ぎ、9月に伊勢崎市のアパートの部屋に突入、11月に桐生市でかみつかれるなどした男性が死亡。高崎市では同年10月にJR高崎駅前で大捕物があり、12月に通学中の高校生ら4人が襲われて負傷、19年12月には大型商業施設の周辺にも出没した。ある自治体関係者は「市街地は子どもなどへの危険もあるため、わなを仕掛けづらい。抜本的な対策は難しい」と打ち明ける。交通への影響もある。JR東日本高崎支社管内の列車と動物の衝突事故は、17年度53件だったが、20年度82件と年々増加。シカが半数以上を占めるという。日本自動車連盟(JAF)群馬支部によると、動物との衝突による救援要請が本年度は20件で、うち15件はシカ。安中市の鳥獣対策の担当者は「10年前は市内に広く生息していなかった。最近は国道18号でも接触事故がある」と嘆いた。県内の野生動物による農林業被害額が減少してきたのは、地域ぐるみの対策や捕獲の効果とみられる。県は2010年に高崎市に県鳥獣被害対策支援センターを設立し、集落や市町村の取り組みを支援。集落ぐるみの対策は年間15地区を目標に広げ、これまでに計117地区が取り組んだ。シカ、イノシシの捕獲数も増えてきたが、推定生息数は増加傾向にある。昨年度、県内の捕獲数が特に増えたのがシカで、前年度比36.8%増の1万2779頭。増加の理由について、県は「市町村による有害捕獲の強化」を挙げる。1243頭を有害捕獲した沼田市は「餌となる植物や木の実が凶作で行動範囲が広がり、わなに掛かる回数が増えた」とみる。北海道を除く全国のシカの推定生息数は14年度以降減少に転じたが、本県では増加傾向が続き、18年度は4万140頭(推定中央値)。シカの被害は作物や樹木の苗、高山植物の食害、木の皮を角ではぐなど幅広い。地表の植物を食べて山地の保水力が低下し、土壌流出を招くなど環境全体に影響を及ぼす。環境省によると、積雪減や造林による餌の増加と生息環境の改善、狩猟者減など増加理由は複合的だ。明治期の乱獲で減少したのを受けて捕獲が規制され、メスジカの禁猟が07年まで続くなど増加に応じた施策が遅れたとの見方もある。イノシシの推定生息数は変動が大きく、県内は18年度に2万3290頭(推定中央値)。同年度まで増加傾向にあったが、CSF(豚熱)の流行で減少している可能性がある。今後、抗体を持つ個体が生き残り、増加していくことも考えられる。同省によると、18年度の調査で40年前に比べ全国でシカの生息域は2.7倍、イノシシは1.9倍に拡大。近年は過疎化や高齢化に伴う山地や森林での人の活動の減少が、野生動物の分布拡大、人里への出没の原因になっているとみられる。野生動物の被害対策と個体数の管理を巡っては、自治体と大学などが連携した研究や取り組みが展開されている。情報通信技術(ICT)を活用して捕獲の負担を軽減する仕組みの開発が進み、近年は調査や駆除に参入する民間事業者も現れた。駆除して処分するだけでなく、全国的な動向として、野生鳥獣肉を用いたジビエ料理が注目されている。野生動物と向き合う最前線を追った。県は日本獣医生命科学大(東京都)と2009年に包括連携協定を締結し、共同研究に取り組んできた。野生動物の生息分布、生態、感染症の調査、群れ管理など成果は幅広い。県が進めてきた、地域ぐるみの鳥獣害に強い集落づくりでは、現地の実態調査に同大が協力。研修の講師を教員が務め、市町村などで実務に当たる指導者育成にも貢献した。県内の取り組みについて、初期から携わった羽山伸一教授は「県が早期に鳥獣被害対策支援センターを立ち上げ、関東の中でも頑張っている」と評価する。羽山教授が警鐘を鳴らすのは、野生動物を通じた家畜伝染病の拡大。18年に国内で26年ぶりに感染が確認されたCSF(豚熱)は瞬く間に広がり、群馬県の養豚場でも昨年9月以降5例が発生した。この数十年の間にイノシシが養豚場周辺にも活動範囲を広げた。羽山教授は「CSF拡大の要因になった。大規模にイノシシの対策をしないと収まらない」と指摘する。国内に入った場合、壊滅的な影響を及ぼす可能性があるのが、ASF(アフリカ豚熱)。CSFよりも病原性が強く、有効なワクチンや治療法がない。アフリカや欧州で広がり、アジアでも15カ国・地域に拡大している。羽山教授は「国内で広がったら制御できない」と危機感を強める。また、野生動物の感染症対策や関係法令が整っている欧米に比べ、日本は不十分だとして、「人の保健所、家畜の保健衛生所があるように、野生動物にも保健所が必要。人や家畜が健全であるために、野生動物も健全でなければならない」と訴える。18年度からアライグマに詳しい加藤卓也講師が共同研究を引き継ぎ、市街地出没の対策にも貢献。「国内にはより上位の捕食者がいないので増えてしまう。都市部など群馬より先に生息が広がり、すでに対策が進んでいる地域の取り組みが参考になる」と助言する。同大が群馬県を含め全国的な課題として挙げるのが、行政などの専門職員の不足だ。神奈川県では民間から派遣された専門知識、技術を持つ「ワイルドライフレンジャー」6人が丹沢山地のシカを捕獲、管理し、成果を上げているという。県内では警備会社などが新規事業として捕獲に乗り出したが、専門事業者は少ない。そんな中で、「群馬野生動物事務所」(高崎市)は全国でも珍しい、調査と被害対策を担う民間企業だ。08年に創業し、利根沼田地域を中心に官公庁と関わる仕事を多く手掛ける。通報や被害対応の業務委託を沼田市から受け、市役所に社員2人が常駐する。春山明子社長は宇都宮大在学中から野生動物の管理を学び、全国各地の対策に携わった。科学的な調査や麻酔銃の取り扱いなど、行政、狩猟者だけではできない対応が可能だとする。「一件ずつ丁寧に」と地域に密着し、長期にわたって携わる。「クマが出ているので来て」と県外に呼ばれることも。「年ごとの変動も大きいが、手いっぱいの年もある」とし、専門家の不足を実感している。群馬県のシカやイノシシ、クマなどの肉(ジビエ)は東京電力福島第1原発事故の影響で出荷制限が続く。ただ、狩猟者による自家消費は可能で、ジビエの利用が狩猟や鳥獣害に関心を高める新たな入り口となっている。旅行ツアーの飲食メニューの考案などを手掛ける諸田史(あや)さん(41)=前橋市=は、都内のレストランで食べたシカ肉に感動し、狩猟免許を取得した。狩りは初心者だがシカの解体も経験し、命と向き合う。家畜の牛や豚は雄なら去勢され、一定の月齢で出荷される。ジビエは性別、月齢や育った環境もさまざまで、「どこで何を食べていたか背景まで分かった上で調理したい」と力を込める。出荷制限の中、県の検査では2019、20年度に、シカで基準超の放射性物質は検出されていない。解除後の活用を見据え、川場村の道の駅「川場田園プラザ」は、各地のジビエ商品を集めたコーナーを設置。村独自にエゾシカ肉と地元のリンゴを使ったカレーも開発した。全国ではロッテリアが今年、シカ肉を使ったハンバーガーを発売。NTTドコモは売り手と買い手をつなぐ消費拡大の取り組みに乗り出すなど、大手企業も参入している。ジビエは安定供給が難しいといった課題があり、コロナ下で飲食店での消費が減った影響も受けたが、野生動物との向き合い方を考える契機の一つになりつつある。高齢化する狩猟者の負担を軽減しようと、野生動物のわな捕獲に情報通信技術(ICT)を活用する動きが広がっている。群馬大太田キャンパスの研究者7人によるグループは、課題となっている通信コストを低減し、人工知能(AI)で動物の種類や体重が分かるシステムを開発している。わなの見回りの労力を軽減するため、捕獲時に遠隔で通知するシステムはすでに複数ある。安中市は今年、NTT東日本の協力を得て通知システムを試験運用した。同市の担当者は「負担は軽くなるが、導入時と通信費などの維持コストが課題」と話す。同大大学院理工学府の白石洋一特任准教授らのチームは今年、AIを使った通知システムの開発を始めた。国内で普及していない通信方式「LPWA(ローパワーワイドエリア)」に着目。西田進一助教は「低容量だが遠くまで届く公衆無線LAN(Wi―Fi)のような通信。中山間地に設置するわなに適し、維持コストが格安」と説明する。捕獲された動物が大型の場合、複数人での対応が必要な場合もある。同大のシステムはAIが動物の種類や体重、写真をスマートフォンに通知するため、十分な準備をして現場に臨める。光化学が専門の山路稔准教授は狩猟免許を取得し、現場の声を伝える。「来年には試験運用したい。わなに置く餌も交換不要なものに改良すれば、見回りの負担がなくなる」と意気込む。ICTを使った通知システムは県デジタルトランスフォーメーション課も独自に開発を進めている。「放置すれば、あっという間に動物だらけになる」。取材で専門家から指摘され、縁遠いと思っていた野生動物はすぐそこにいると実感した。近代以前のように生息域を広げつつある動物もいる。市街地に近づけないためには、空き家や使われていない納屋、やぶとなった放棄地などを適切に管理しなければならない。動物があさるごみや食品を屋外に置かないなど地域住民ができる対策もある。アライグマはペットだったものが捨てられ野生化したとされる。最近も希少な外来種など「エキゾチックアニマル」を珍重する流行がある。第2、第3のアライグマを生んではいけない。狩猟者や中山間地の住民は高齢化している。狩猟愛好者の地域貢献に頼ってきた捕獲は、情報通信技術(ICT)の活用による負担軽減や、専門性のある人材による生息管理の体制構築が急務だ。駆除するのは「かわいそう」などの意見もあるかもしれないが、人間が関与しなければ共存可能な環境を保てない時代になった。むやみに殺すのを避けるには生態を知り、効率的な捕獲や侵入防止を進める必要がある。都市の住民も含め、持続可能な野生動物との関わり方を考えていかなければならない。

(獣害防護の金網設置進む:長野)
南木曽町田立の向粟畑地区の住民が、イノシシや鹿による食害の解消を目指して、里と山の境界でワイヤメッシュ柵(溶接金網)の設置を進めている。2年前に始め、20日時点で全長1.4㌔の金網の壁が集落を囲むようにそびえる。農家に限らず住民一丸で獣害被害軽減に取り組み、農山村の景観維持につなげていく考えだ。向粟畑地区は町西部の摺鉢山のふもとに位置し、約30世帯が暮らす。南向きで日当たりの良い緩やかな傾斜の土地柄を生かし、コシヒカリを中心とした稲作や茶栽培が盛んだ。金網の柵は令和元年11月に設置を始め、これまでに高さと幅がいずれも2㍍の金網約700枚を連ねた。町有害鳥獣対策協議会を通じて得た国の鳥獣被害防止総合対策交付金などを活用してきた。以前から電気牧柵を設置してきた。しかし、葉やツタが絡まって効果を発揮しなくなったり、高さが40㌢ほどと低いため鹿の脚力なら悠々と飛び越えたりする懸念があった。落雷で故障したこともある。作業リーダーの小幡安英区長(65)は「イノシシが畑を掘り起こし、近くの山から鹿の鳴き声を聞くこともあった」と振り返る。これに対し、金網の柵は通電管理や除草といった手間はなく、定期的な点検で済む。イノシシが境界の地面を掘った様子や、柵に体当たりした形跡はあるが、集落内の作物への被害は確認されなくなった。通学や散歩で行き来がある歩道の安全も確保され、住民の男性は「柵があるのと無いのとでは安心感が全然違う」と話す。設置した人からは「農作物の被害対策には他地区との連携が欠かせない」との声が上がる。隣接する地区に声を掛け、賛同を得られれば来年にも金網の壁を延長したい考えだ。小幡区長は「仲間の力が結集しなければできなかったこと。地域で取り組む事例として広く伝わればうれしい」と話している。

(「令和3年度鳥獣対策優良活動表彰式」及び「第9回全国鳥獣被害対策サミット」の開催)
農林水産省は、「令和3年度鳥獣対策優良活動表彰式」を令和4年2月16日(水曜日)に農林水産省本館7階講堂において行います。表彰式は公開で、式典中のカメラ撮影も可能です。併せて、「第9回全国鳥獣被害対策サミット」を開催し、本サミットにおける資機材展示等の出展については、本日から令和4年1月27日(木曜日)17時00分まで募集いたします。また、今年度は、「イノベーション創出強化研究推進事業」と連携することとしており、本事業での研究成果発表報告を兼ねた「イノベーション成果発表会」を2月17日(木曜日)に開催します。農林水産省は、鳥獣被害防止や捕獲した野生鳥獣の食肉(ジビエ)の利活用等に取り組み、地域に貢献している個人及び団体を表彰する「鳥獣対策優良活動表彰」を実施しており、令和3年度の農林水産大臣賞及び農村振興局長賞の表彰式を、令和4年2月16日(水曜日)に農林水産省本館7階講堂において行います。また、16日(水曜日)の表彰式典終了後、鳥獣対策に携わる関係者の情報共有の場として、「第9回全国鳥獣被害対策サミット」(以下、「サミット」という。)を開催し、受賞者からの取組事例の報告の他、サミットテーマに合わせた全国の取組事例の発表、パネルディスカッションや鳥獣対策及び利活用に係る研究成果、技術情報、製品情報、人材育成等の取組に係るポスターセッション、資機材・カタログ・利活用の展示を行います。なお、今年度は「イノベーション創出強化研究推進事業」と連携し、本事業での研究成果発表報告を兼ねた「イノベーション成果発表会」も併せて開催することとしており、2月17日(木曜日)の午前にサミットのうち資機材展示の出展者にプレゼンテーションしていただくコアタイムを設け、同日午後に「イノベーション成果発表会」を開催します。受賞者につきましては、来年1月下旬頃に改めてお知らせいたします。

(ヒグマ被害をソルガムで防げ:北海道)
長年、北海道の酪農家を悩ませてきた飼料用のトウモロコシ被害。ヒグマの被害に 遭わない方法に挑戦したのは酪農家と農業研究機関。栽培する飼料作物を変えてみたら成果が!ヒグマによる飼料作物のデントコーン(トウモロコシ)の被害が深刻な北海道の上川町で、北海道ではまだ馴染みが少ない新しい飼料作物を利用して、ヒグマ対策を行う試みを取材しました。訪ねたのは大雪山の北東にある上川町。標高が300m~600mの高原の冷涼な気候が牛の成育に適しているということで昭和49年から乳牛の生産が始まり、その後肉牛も生産されるようになりました。現在では2つの農業法人と、2軒の個人経営の酪農家が牛を育てていて、町内では乳牛と肉牛合わせておよそ2000頭が育てられています。経営を安定させようと自らの手で飼料用のデントコーンを生産してきましたが、長年ヒグマに食べられ、大きな被害に悩まされてきました。これまでヒグマは夏でも奥深い山の中にいると思っていた私の認識は大間違いでした。奥山だけで生活する一部のヒグマをのぞくと、植物性の食べ物が固くなり栄養価の落ちる夏の終わり頃、多くのヒグマは人が育てた作物を食べるため畑に集まるのです。専門家によるとヒグマは食べ物への対応力が高く、これまでにトウモロコシ、麦、米、カボチャ、ニンジン、ビート、牧草、スイカ、リンゴなど様々な農作物の味を覚えてきたといいます。この様子を自分の目で確かめるところから取材を始めました。8月下旬、上川地方北部の畑で白昼堂々とビートを食べるクマに出会いました。夕陽が射しこむ美しい風景の中、森の前に広がる畑には親子と思われるクマがいて食べたり、無邪気にじゃれ合ったりしていました。デントコーン畑に暗視カメラを設置しました。すると3日間で3頭の子連れと2頭の子連れの親子や単独で行動する3個体。あわせて10頭が映りました。いったい何頭のヒグマが目の前の広大な畑に通って来ているのか?ただただ驚きました。これまで本州や北海道で野生のクマを撮影してきた私にとって、ヒグマが畑に当たり前のように畑にいる風景を目の当たりにして、どう解釈して良いか困ってしまいました。現れるヒグマの多さにも衝撃を受けました。でもこれが現実の姿でした。国と北海道は飼料作物の自給率を高めようと、牧草に比べて栄養価が高いデントコーンの作付けを奨励しました。この結果、今日に至るまで栽培面積は増え続け、令和2年度の道の統計によれば全道の作付面積は57.400haで、現在でも毎年1.000haずつ増え続けています。栽培面積の拡大はそれまでデントコーンを作っていなかった地域のヒグマにもデントコーンの味を覚えさせる結果を招き、ヒグマによる農作物被害の増加につながったと考えられます。研究者は「デントコーンをたくさん食べたヒグマは、そのまま冬眠に入ることができるくらいの栄養を蓄えることができるのでは」と指摘します。取材で訪ねた熊倉伸幸さんは上川町内の農業法人で乳牛370 頭を育てている酪農家です。酪農家にとって牛のエサを自給自足することは経営の安定につながるため、これまで牧草とデントコーンを作ってきました。しかしヒグマによる被害が年々増え続け、6年前には収穫前のデントコーンおよそ7割が食べられてしまった事がありました。熊倉さんは対策として48haある畑の広範囲に電線を張り巡らせましたが、漏電を防ぐために電線に接触する草木を刈り払うなど、広大な範囲を維持管理せねばならず大きな負担となっていました。また畑に出入りするヒグマと予期せぬ鉢合わせしてしまう危険もありました。4年前、上川町のヒグマの被害を気にかけていた道の上川農業改良普及センターの職員が熊倉さんにデントコーンに変わる飼料として、イネ科のソルガムという植物を栽培することを持ちかけました。ソルガムは温暖なアフリカ原産で、気温が高くて乾燥している地域でも育つためアフリカからインド、中国などに広がり日本にも入ってきました。日本にいつ入って来たのか正確には分かっていませんが、ソルガムは日本では「もろこし」、「たかきび」、「ほうきぐさ」と呼ばれ、アワやヒエなどと同じ雑穀のひとつとされています。「もろこし」も日本でも古くから食用として栽培されてきました。日本では主に山間部の畑でなど作られることが多く、気候が厳しい環境でも一定の収量があるのが特徴です。ソルガムにはデントコーンのような実がつかないので栄養価は劣りますが、穂を出す時期前後になると茎の糖度が高まり、発酵させて保存性を高めた飼料とするのに適しています。シンプルにいえば牧草と同じような栄養価で、収量が格段に多い飼料作物だといえます。ソルガムの育種は日本では温暖な戦後広島県福山市にある農林水産省中国農業試験場で始まりました。その後、熊本県にある九州沖縄農研究センターや長野県畜産試験場などで試験栽培や品種改良が行われてきましたが、これまで北海道の気候に適したものはありませんでした。こうした中、北海道にも拠点をもつ群馬県の種苗会社がドイツの冷涼な地域で栽培された品種を9年前に輸入し、群馬県と北海道の圃場で栽培試験を行ったところ、順調に育つことが確認されました。このソルガムは栽培期間中の平均気温が従来の15℃から3℃低い12℃で育つのが特徴です。上川農業改良普及センターはこの品種を含めた3種類のソルガムの栽培試験を上川町で行い、生育状況のよい1種類を選びました。翌年には熊倉さんの牧場20haで本格的に導入に栽培したところ順調に育つとともに、クマが寄ってこないことも確認されました。熊倉さんは、今では48haのデントコーン畑のうち33haをソルガムに切り替えて順調な収穫をあげています。3.6m~4mほどの高さにまで成長し、今年の収量は当初の予想より2割ほど多くなりました。収穫したソルガムは9月下旬ごろからサイロで発酵させ、同じく発酵させた牧草と配合飼料を混ぜます。厳しい寒さとなる冬には、牛の体力を維持するために栄養価の高いデントコーンも与えますが、春から秋にかけてはソルガムを与えます。酪農家 熊倉さん「たくさん食べてくれているので良かったと思います。嗜好性が良いのか、食いつきが良いので牛の健康状態もこれで良い方に保てるかなという感じですね。うちの牛たちはソルガムの味を覚えていると思うので毎年楽しみにしてくれているんじゃないかなと思います」。北海道立総研機構で長年ヒグマ対策を行ってきた間野勉さんにソルガムがヒグマ対策に有効なのか聞きました。間野さん「ソルガムは穀物なので、これまで麦や米、蕎麦を食べてきたヒグマはソルガムの実を食べることを覚えてしまう日が来る可能性がある。上川町でソルガムの栽培が成功して今のところヒグマがソルガムに寄りつかない状況だからといって安心はしないで欲しい。ヒグマは好奇心旺盛なので試しに食べてみる個体がでてくるかもしれない。美味しいと思ったら親から子へ。ほかのクマにも広がっていく」。その上で「10年から15年間様子を見てそれでもクマがソルガムを食べなければはじめて安心できるかもしれない。今後も地元でソルガム畑へのヒグマの態度を観察し、ヒグマが食べ始めた兆候があれば、そのヒグマを特定して素早く排除することが大切だ」と話していました。また間野さんは新しい作物をヒグマの生息地に導入するときは、栽培の技術や普及を研究する行政機関や地域の農家、獣害対策を支える猟友会の人たちなど皆で考えて欲しいと言います。そのための仕組み作りが実効的な対策に結びつくと話します。ソルガムは国や県の研究機関や大学、種苗メーカーなどで品種改良が進められています。その中でも長野県畜産試験場は標高760mの塩尻市にあり、寒冷地におけるソルガムの育成試験や品種改良を1984年から進めてきました。これまでに飼料用だけでなく食用やバイオマス燃料に利用するソルガムの開発にも取り組んできました。今後はニーズに合わせて幅広い種類のソルガムをつくることを目指しています。長野県畜産試験場では最近、病気に強く牛の消化を早める遺伝子を取り入れたソルガム「東山交37号」を民間の種苗会社と共同で育成しました。消化率を高めたことで、栄養が多く摂取できるようになりました。さらに牛が好んで食べる傾向も見られ、東山交37号と従来のソルガムの品種を牛の鼻先に並べて食べる量を比較する実験では、牛は好んで東山交37号を食べました。また長野県畜産試験場では極晩生品種のソルガムの育成も行っています。この品種は丈が3mにもなり十分な収量が確保できるうえ、動物たちのエサとなる穂を出す前に収穫期を迎えます。クマやイノシシ、野鳥による農作物への被害をおさえるために試験を行ってきました。獣害対策にもなり牛が好んで食べるソルガムが、涼しい北海道でも育つように改良されれば、ヒグマがソルガムを食べ始めた時の対策の次の一手になるかもしれません。

(イノシシ捕獲、過去最多282頭:広島)
廿日市市内で、イノシシの捕獲頭数が増えている。イノシシの活動範囲が広がる中、市が捕獲用のわなを増設しているためで、2020年度は過去最多を記録した。農家からは農作物被害を訴える声が相次いでおり、JA佐伯中央もわなを市に初めて寄贈するなど対策を強めている。

(ウミガメ産卵数は過去10年で最少、イノシシ採食行動恒常化か:鹿児島)
奄美海洋生物研究会(興克樹会長)は22日、2021年度奄美大島におけるウミガメ上陸・産卵、リュウキュウイノシシによるウミガメ卵採食状況調査結果をまとめ公表した。産卵回数は前年比59・7%と減少、過去10年間で最少となった。リュウキュウイノシシによる卵の食害は減少したものの、採食行動の恒常化の可能性が出ている。調査は、ウミガメの産卵モニタリングなど奄美市ウミガメ保護監視員業務の一環で同研究会が実施した調査データおよび環境省、県、島内5市町村、地域団体、地域住民が実施した調査データを集計し分析したもの。調査期間は4~9月の上半期。まとめによると、上陸回数は431回(アカウミガメ75回、アオウミガメ298回、種不明58回)、産卵回数は326回(アカウミガメ59回、アオウミガメ241回、種不明26回)。産卵回数は前年比約6割も減少したが、種別ではアカウミガメは13年の663回をピークに減少傾向がみられ、低い水準で推移。21年度は前年比53・1%の59回と減少した。アオウミガメの産卵回数は、前年比71・9%で減少割合は28・1%となり、「減少したが、過去10年間は安定的に推移している」と分析。16年からアカウミガメの産卵回数減少により、「アオウミガメが奄美大島の産卵優占種となっている」としている。過去10年間で最少となったアカウミガメの産卵回数の減少傾向について、「近年、漁業活動が活発な主な摂餌海域である東シナ海の餌資源の減少による産卵頻度の低下や混獲等が考えられる」とするが、現時点では明確な因果関係は認められていないという。興会長は「数年おきに産卵するウミガメ類の生息数の増減については中長期的な分析が必要であり、継続した調査が求められる」と指摘する。リュウキュウイノシシによるウミガメ卵および幼体の採食は、21年も確認。被食産卵巣数は81巣で、前年比65・3%と減少した。被食率は20年22・7%から21年24・8%と増加。12年から10年間の平均被食率は18・7%で、「毎年一定比率の被食が継続的にみられる」と考察。被食が発生した浜数は、21年は7浜で、「浜の多くは前年も被食があり、採食行動の恒常化が示唆されている」としており、こうした浜では、その地域の産卵個体群の減少も懸念されることから、保護対策の強化を求めている。被食が確認された浜のうち、大和村ヒエン浜では産卵が5回あり、うち2巣は産卵後数日内に全ての卵が被食されたと報告。同研究会では、卵が残存していた産卵巣3巣上にワイヤーメッシュを設置する被食防止対策を実施。ヒエン浜の産卵巣に設置したカメラでは、リュウキュウイノシシが産卵巣を掘削している様子や砂浜を徘徊する様子が確認されたという。

(「最後の猟師たち」語り部に:栃木)
栃木県内に今も残る貴重な狩猟文化を後世に伝えようと、宇都宮市出身のフリーライター、丸山美和さんが「下野猟師伝 聞き書き 猟師たちの物語」(随想舎、1980円)を出版した。厳しい自然の中、野生動物と対峙(たいじ)してきた「最後の猟師たち」を語り部に、狩猟の目的が生活から害獣駆除へと変わったことによる課題についても浮き彫りにする。丸山さんは「多様な生き方を求められる今こそ、若い人に読んでほしい」と話す。同書は「くらしの中の狩猟」「狩猟に生きる」「被害と闘う」などの6章で構成。戦中戦後の古い時代を知る年配の猟師から、行政による鳥獣被害対策に協力する猟師まで、80代を中心とした16人が登場。時系列に沿って描かれる。1章に登場する佐野市作原の須藤一さんは、昨年6月に84歳で亡くなる直前まで現役を貫いた「数少ないマタギ(職業としての猟師)の一人」(丸山さん)だ。大けがを負いながらシカやクマと対峙する、死と隣り合わせの猟に「獲ったものは最後まで食べること。それが供養」と猟師の心得を語る。長年、地元紙の観光ガイド本や経済誌などの記事執筆と編集に携わってきた丸山さんが同書を手がけたのは、5年前に野生生物保護管理の専門家である夫から「狩猟者が高齢化している今、貴重な狩猟文化を記録に残したい」と取材依頼を受けたのがきっかけだ。県猟友会の協力を得て、猟師20人以上を取材。自身の留学や新型コロナウイルス禍にも見舞われ、取材・執筆は思うように進まなかったが、取材した猟師の相次ぐ死にも直面したことで執筆に向けた思いを新たにし、脱稿した。

(日本のカラス、世界一の賢さの秘密に迫る)
――カラスに匹敵する頭脳を持った鳥は「いませんね」。――カラスは鳥の世界の霊長類ですか「それより、すごい存在ですよ」。東大名誉教授・慶応大学訪問教授で、鳥類学者の樋口広芳さんへの取材の一コマだ。カラスは優れた知能で私たちを驚かせる。ときに感心させられ、ときには迷惑。レッドカード級の危険行為さえもある。こうした野生のカラスたちとの出合いを探索記風にまとめた『ニュースなカラス、観察奮闘記』が出版された。著者はもちろん樋口さん。登場するカラスは多才。クルミの殻をタイヤで割らせる「車ガラス」、線路に石を載せる「置き石ガラス」、煙浴に通う「銭湯ガラス」、風呂場に入る「石鹸(せっけん)ガラス」、神社から火のついた蝋燭(ろうそく)を持ち去る「ぼやガラス」などについて紹介されている。その多くは樋口さんが現場を訪れ、カラスの行動をつぶさに観察した結果の報告だ。いずれも新聞やテレビでニュースになっている。カラスは話題に事欠かない鳥なのだ。中でも第一級の驚きは2018年3~4月に横浜市内の公園で観察された「水道ガラス」の例だろう。雌のハシボソガラスが噴水型の水道の栓を嘴(くちばし)で回し、数センチほど上がる水を飲むのだ。水浴びをするときは栓を大きく回して水量を増すのだから、すごい知能だ。近隣の人の話だと17年から始めていたらしい。野生のカラスの水道利用は札幌市など他の4地域でもあって他の研究者によって観察されている。うち3例はレバー式の水道。操作は回転式の方が難しい。樋口さんは海外の例を調べたが、中国での1例があったのみ。水道はレバー式でカラスはペットだった。いずれにしても水道を操作するカラスは世界的にも珍しく、栓を回せるのは、日本のカラスだけなのだ。クルミ割りガラスも世界に例がない。秋田市や仙台市などには車にひかせて堅い殻を割り、中身を食べるものがいる。うまく割れるように位置を移す巧者もいる。仙台市では確実性を増すために、赤信号で止まった車のタイヤの前に歩み寄り、クルミを置く個体も現れたというから驚きだ。なぜ日本のカラスたちは賢いのか。私たちが日常、目にするハシブトガラスは東アジアに、ハシボソガラスは欧州にも生息しているのだが、海外では日本でのような行動は見られないのだ。「考えられる原因は、ゴミだと思います」と樋口さんは語る。海外の都市域では大型のゴミ箱が一般的だが、日本は道路の狭さもあって、路上に生ゴミの袋を置いて回収を待つ方式が主流。高度成長期に都市の生ゴミは量と種類を増し、カラスたちはいつ、どこで、どんな食べ物が手に入るかを貪欲に学習していった。多様性への弾力的な対応が、賢さの発達を促すことになったらしい。午前中に食べ物を得た都市のカラスは、一部を隠して「貯食」する。こうして食探しの苦労から解放された彼らには時間のゆとりが生まれ、滑り台ガラスや電線で遊ぶ大車輪ガラスの出現につながったのだ。ちなみに横浜市内で1996年に発生した線路への置き石騒動は、カラスの貯食行動が関係した、お騒がせ事件だった。もともと知能が高かったカラスが人間社会との関係を深め、人工物を積極利用することで、持てる能力をさまざまな形で発揮する機会が増えたのだ。京都市の伏見稲荷大社に出没するハシブトガラスは燃えている和蝋燭が好物だ。嘴で蝋燭を切り取って炎がついたままを、くわえて空へ舞い上がる。こうして盗んだ蝋燭をカラスは林の落ち葉の間やわらぶき屋根の隙間に隠すので物騒だ。カラスは油脂分が大好きで、石鹸を浴室や洗い場から盗むのもそのためだ。主食ではなく、嗜好(しこう)品のようなものらしい。炎を全く恐れず、熱でとけた蝋(ろう)を味わう行動は準調理。火の利用に他ならないではないか。樋口さんによると天才的なカラスはまれにしか現れない。その新行動が集団内で広まる様子を研究するには、個体識別をしたカラスを対象に幼少期から観察することが必要だ。横浜の公園で水道の栓を回していたハシボソガラスの雌は、ひなを育てていたので格好の研究対象だったが、外敵に襲われたらしく突如、ひなも姿が消えた。残されたつがいの雄に栓を回す才覚はない。その姿に樋口さんが一句。「妻逝きてわびしきなかに夏すぎぬ」―。樋口さんのカラス研究は50年に及ぶ。

(共生への道しるべに『アーバン・ベア となりのヒグマと向き合う』)
2021年6月、札幌にヒグマが出没。4人が負傷した。住宅街を走り回る大きな野生動物の姿は、衝撃的な映像として何度も繰り返し報道された。遠い存在だと思っていた野生動物が、人の生活圏のすぐそばまで来ていること、同時に我々の動物に対する対策や意識の変革が迫られている事態にあることを、これほど強烈に思い知らされるニュースもないであろう。「アーバン・ベア」というタイトルから、そんな今の時代に合わせた時事的な問題を解説・考察する内容が想像されるが、単にそういう内容の本ではない。まずは市街地に出没するクマではなく、自然に生きるクマの暮らしの話から始まる。著者自らが関わってきたフィールドワークを紹介しながら、クマにとって「晩夏」という季節がどういうものかを解説し、クマが人間の生活圏へ迷い込んでいく原因の話に繋げていく。私はこの構成に非常に好感をもった。読者に本来の「ヒグマ」という動物を知ってほしい、という著者の思いが感じられたからだ。ヒグマと人間社会との軋轢を取り上げる本でありながら、クマに対する深い愛情を感じる内容になっている。次に農地や市街地に出没するクマの行動を膨大な調査結果から分析・解説する。人間社会との軋轢を減らすための活動や、我々にできる対策法も教えてくれる。さらに終章では、これからのクマとの関わり方に対する提言がたっぷりと述べられている。街に出るヒグマに脅威を感じる方にも、森に暮らすヒグマを愛する方にも、ぜひ読んでいただきたい良書である。

(2頭のイノシシ、住宅街に現れる:福岡)
北九州市八幡東区の住宅街に2頭のイノシシが現われ、警察や北九州市が注意を呼びかけています。北九州市八幡東区の桃園球場近くに現れた2頭のイノシシ。20日午前7時半ごろ、通行中の人から「イノシシがはいかいしている」と警察に通報がありました。警察官が警戒にあたりましたが、イノシシは山の方に逃げていったということです。これまでにケガ人などの被害は確認されていません。桃園球場周辺では10月、5頭の子どものイノシシが目撃されています。北九州市は、桃園球場周辺に捕獲用のワナを仕掛け、市民にはイノシシを見つけてもエサを与えず、速やかに区役所などに連絡してほしいと注意を呼びかけています。

(住宅地にイノシシ、カメラが捉えた捕獲騒動:愛媛)
先月以降、愛媛県松山市の市街地で野生のイノシシが相次いで目撃されています。住宅街に突如現れたイノシシが捕獲されるまでの騒動をカメラが捉えていました。車の周りを歩き回るのは…イノシシです。今月18日、松山市内にあるコンビニエンスストアの駐車場で撮影された映像です。交通量が多い住宅街に突如現れたイノシシ。現場近くにある美容室の防犯カメラが“大捕物“を映していました。車道を猛スピードで駆け抜けるイノシシ。そのあとを追いかけるのは警察官です。その手には警棒が。さすまたや警棒を持った警察に囲まれ、追い込まれたイノシシは捕獲されたと言います。松山市の市街地では、先月から今月にかけてこうしたイノシシの目撃情報が3件寄せられています。山に近い場所では以前からイノシシによる畑の被害も多いというこちらの地区。愛媛県の担当者によりますと、イノシシはえさを探して行動しているうちに住宅地に迷い込んだ可能性があるということで、遭遇した場合は威嚇したり追い払ったりせず、静かにその場を離れるよう呼びかけています。

(ジビエ料理コン大臣賞:宮城)
地産地消のジビエ(野生鳥獣の肉)料理はいかが――。ジビエを身近な食材として楽しんでもらおうと、日本ジビエ振興協会が開いた「第6回ジビエ料理コンテスト」の結果が22日、発表された。最高位の農林水産大臣賞には、仙台市の専門学校生・松浦祐未恵さんの、鹿肉や「仙台曲がりねぎ」、仙台みそなど地元食材を活用した料理が選ばれた。国産のイノシシ肉または鹿肉を使ったメニューを公募する同コンテストには今回、全国から218点のレシピが集まり、ジビエの良さを生かした9作品が入賞した。農水省の事業の一環で開いた。松浦さんの料理は、鹿肉のローストを主役に、サトイモや根菜などを使い、東北の郷土料理である芋煮をフランス料理に仕立てた一品。「地産地消を意識した。もっと広くジビエが利用されるよう、料理を通じてジビエのおいしさなどを発信したい」と語った。

(駆除のシカ肉を有効活用:宮城)
有害駆除されたニホンジカの肉を加工販売する石巻市小船越の「丸信ワイルドミート」が13日、市内の水産加工会社と連携し、シカ肉の大和煮缶詰「伊達の黄金鹿」を発売した。駆除されたシカの多くは埋設処理されており、食肉として有効活用して消費拡大につなげる。同社は2009年にも駆除されたシカを活用し大和煮缶詰を数量限定販売した。県猟友会河北支部が市内で捕獲したシカを使用。木の屋石巻水産が缶詰に加工し、砂糖としょうゆ、ショウガなどで甘辛い大和煮にした。新鮮なうちに下処理しているため臭みがなく、はしで簡単にほぐれるほど柔らかく仕上げた。シカによる農作物被害は深刻化している。県や市などでつくる牡鹿半島ニホンジカ対策協議会によると、20年度に市内で報告された農作物の被害額は約2150万円。防護柵の設置や捕獲といった対策を強化しており、市内の捕獲数は過去最多の約2960頭に上った。しかし食肉となるのはそのうち1割に満たず、ほとんどが埋設処理されているという。県猟友会河北支部長も務める三浦信昭代表(79)は「命をただ捨てるのはしのびない。シカは高タンパク低脂質で鉄分も豊富。食べることで有害駆除に参加してほしい」と呼び掛ける。缶詰は170グラム(固形120グラム)で650円。来年1月11日まで、市役所1階の石巻観光協会駅前案内所と市雄勝地区の道の駅「硯上の里おがつ」の海産物直売所で販売している。

(「ジビエカー」実証実験:長野)
野生動物を食肉用に処理する施設がない地域では、農作物への被害を防ぐために捕獲されたシカなどの肉を、ジビエとして活用することに課題がありましたが、長野県はこれを解消するため処理施設の機能を備えた「ジビエカー」を活用する全国的にも珍しい実証実験を始めました。長野県内では増えすぎたニホンジカによって多くの農作物に被害が出ていて、県は捕獲されたシカの肉をジビエ料理に活用する取り組みを進めていますが、食肉処理する施設がない地域では捕獲しても処理できず、活用につながらないことが課題となっていました。これを解消するため、県は今月から実証実験を始めました。実験では国内に数台しかない解体室や冷蔵庫などを備えた「ジビエカー」を活用し、食肉処理施設に持ち込むことなく、捕獲したシカの食肉処理の一部を、猟師がその場で行います。その後、シカ肉を精肉店に持ち込むことで、ジビエ料理を扱う飲食店の細かな要望に合わせて、シカ肉を供給することが期待できるということです。県によりますと、こうした実証実験は全国でも初めてとみられ、食肉処理をしやすくすることでシカの捕獲数を増やし、ジビエとしての活用の幅を拡大することを目指します。長野県鳥獣対策・ジビエ振興室は「捕獲と活用のモデルを作ることで、県内全域のシカ肉の活用が拡大すると考えている。個体数の管理にもつながるので普及できるように進めたい」とコメントしています。

(ユニーク活用法が続々、エゾシカに再注目:北海道)
ハイヒールやアクセサリーにちりとり。すべてシカの角が使われているんです。つくったのは札幌市立大学デザイン学部の学生たち。「こちらが送られてきたシカの角になります」。これまでは廃棄していたシカの角を有効活用し、商品化できないかと北海道のシカ肉加工会社が大学に依頼しました。製作にあたり先生が生徒に指示したテーマは「生活に密着したものづくり」。若いアイデアで20点あまりの作品ができました。(ハイヒールを作った学生)「よくみると、模様がかわいらしくておしゃれな服に合いそう」なかには、コロナ禍ならではのこんな作品も。(テンキーを作った学生)「最近オンラインで授業ばかりしていて、一番触っているものといえば、パソコンのキーボードだなと思って」。(札幌市立大学デザイン学部 矢久保空遥先生)「エゾシカは特に道東では害獣という風に呼ばれていたりするが、実際は1つの資源でもある。それを積極的に広めていけるようなきっかけになればと思って協力した」。市街地に頻繁に姿を現すなど、やっかい者扱いされることが少なくないエゾシカ。近年ジビエブームでシカ肉の消費は伸びていましたが、コロナ禍で一転外食需要が減り、消費が落ち込んでいます。そんななか、新たなシカの活用方法が注目されているのです。南富良野町の食肉加工会社ではこんな取り組みも。「こちらの工場ではシカ肉をジャーキーなどのペットフードに加工しています」。乾燥機から出てきたのはエゾシカ肉のジャーキー。高たんぱく・低脂質という特徴を生かし、ヘルシーなペットフードとして売り出しています。こちらの会社ではコロナ禍で外食用ジビエ肉の売り上げが減る一方、ペットフードはステイホームの影響で好調です。(南富フーズ 糠谷雄次社長)「前年対比で1.5倍。目標は1.8倍で見込んでいる」。ふるさと納税仲介サイトのランキングでは、返礼品のペット用品部門でトップ3に入るほどの人気ぶり。おいしそうなハンバーグもペットフード。ジューシーな食感をペットに届けるため、今後はレトルト商品にも力を入れていくということです。やっかいものとされがちなエゾシカのユニークな活用方法。今後、さらに広がりをみせそうです。

(シェフ開発のジビエキット:鳥取)
鳥取県は県内で捕獲したイノシシとシカを使い家庭で簡単に調理できる本格イタリアンのミールキットを開発した。イタリアンレストラン「LIFE」(東京・渋谷)のオーナーシェフ、相場正一郎氏に依頼した。20日から2022年1月10日までアンテナショップ「とっとり・おかやま新橋館」のオンラインショップで予約を受け付け、1月中旬に発送する。LIFE店舗でも2月28日まで販売する。商品化したのは「ポルチーニとイノシシのラグーソース ブラータチーズ付き」(2人用、送料別3680円)など3品。県のジビエ利用促進へ向けた取り組み「とっとりジビエ」の一環として企画した。

(猪肉を獣害対策に取り組む地元農家の声とともに提供:和歌山)
和歌山県の世界遺産・熊野古道沿いにある一棟貸し宿「SEN.RETREAT TAKAHARA」(田辺市中辺路町高原)は、地元で獲れた猪肉を使用した「オール和歌山にこだわった”猪肉しゃぶしゃぶ”プラン」のご予約を12月21日より、開始します。熊野古道の参詣道「中辺路ルート」沿いの山間に位置する「SEN.RETREAT TAKAHARA」は、日常の自分と距離を置き、大自然の中でストレスをリセットする「リトリート体験」ができる無人運営の宿として、2021年10月8日に開業しました。「SEN.RETREAT」ブランドの宿は2022年末までに、中辺路ルート沿いに他3カ所が順次開業する予定で、SEN.RETREATAKAHARAはその第一弾となります。この度、地元の梅・みかん農家が近年悩まされてきた獣害を解決する一助となるべく、捕獲された猪をしゃぶしゃぶ鍋としてご提供するプランを導入します。地元の獣害対策の活動や尽力されている方々の思いを知っていただける冊子を宿に配置し、ジビエを味わうだけでなく、その背景まで宿泊客の方に理解していただける取り組みも行います。

(幼馴染の青年たちが手がける“絶品”なジビエ:京都)
今年も「ジビエ」のシーズンがやってきました。京都府のほぼ中央、かやぶきの里で知られる南丹市美山町に、この地で育った幼馴染の青年たちが手掛けるシカやイノシシなどジビエを提供する会社(組合)があります。その名も「有限責任事業組合 一網打尽」。メンバーの本業も猟師、料理人、大工、林業とさまざま。そんな彼らがなぜ、一緒にジビエを提供する会社(組合)を始めたのか、お話を伺いました。京都市内から車で約1時間。京都府のほぼ中央に位置する美山町は、かやぶきの里で知られ、日本の農山村の原風景が息づく町。面積の約96%が森林に覆われ、京都大学芦生研究林があるなど自然豊かな地としても有名です。そんな美山町で、小学校の時から仲の良かった幼馴染7人が集まり、ジビエを提供する「有限責任事業組合 一網打尽」を作ったのは今から約4年前。なぜ、このような会社(組合)を作ったのか……メンバーの一人で、美山町でかやぶきの古民家レストラン・厨房「ゆるり」を営む梅棹レオさんにお話を伺うと、学年は違うけれど仲の良かった7人は学校を卒業後、美山に残ったり、京都市内で働いたり、外に出たけれど戻ってきたりと皆バラバラの人生を歩んでいましたが、ことあるごとにこのメンバーで飲み会をしていたのだとか。「元々は、その席で漠然と、ジビエを売れないかという話をしていたんです」。というのも今、日本中の山里で獣害が発生していますが、美山町もその例に漏れず、シカやイノシシによる農作物への被害が深刻でした。「一晩で畑の作物がすべてなくなることもあるんです。金額にすると恐ろしい被害額ですし、防御用の電気柵や金網フェンスを取り付けるとなると、これもかなり高額になります。加えて、自動車と衝突して車を破壊されたり……とにかくみんな獣害には困っていました」。そんなある日、梅棹さんは仲間の一人、4代目猟師で後に一網打尽の代表になる藤田敏雄さんにジビエの解体について教えてもらうことに。「その肉を東京でレストランを営む友人に送ったんです。そうしたらすぐに連絡があって、『とても美味しい!こんなジビエ、東京では確実に手に入らないよ』と言われたんです」。それまで地元の猟師さんは害獣駆除としてシカやイノシシを撃っても、自分たちで食べるには量が多すぎて消費しきれず、土に埋めたりしていたのだとか。ですが、そんなに美味しいと喜んでもらえるのなら「これを商売にしてはどうだろう。害獣が駆除でき、肉を有効活用できる。しかもここに産業を生むことができるのでは!?」と考えたのが会社(組合)設立のきっかけとなりました。捕獲から解体、精肉、販売までを一貫して行う、一網打尽。最初は藤田さんをはじめ地元・鶴ケ岡地区の猟師さんから肉を仕入れていましたが、あまりの美味しさに評判となり、今では鶴ケ岡地区だけではまかなえきれず、信頼のおける他の地域の猟師さんにも声をかけて肉を仕入れているのだそうです。そんな一網打尽が提供する肉の美味しさの秘密はどこにあるのでしょうか。よく“ジビエとは野趣を味わうものだ”という人もいれば、“クセがあって嫌い”という人もいますが、「一網打尽の肉はクセが無さすぎると言われるんですよ」と梅棹さん。というのも、一番大事にしていることは「鮮度」なのだそうです。肉は温かいと劣化してしまうことから、一網打尽では、猟師さんからシカやイノシシが届くとすぐに血抜きして内蔵を取り、半日ほど水につけて完全に冷やしてから解体します。そして、すぐに業務用の機械で真空パックにし、業務用冷凍庫で急速冷凍されるのです。それゆえクセがほとんどでない肉になるのだとか。これならジビエ初体験のかたも安心していただけそうです。また、ジビエと一口にいっても動物の生活環境や自然条件で肉質や味が変わるのだそうです。面白いことに味だけでなく肉の色もまったく違うそうで、特に美山町はまちの96%が森林に覆われ、山の勾配が険しいことから筋肉質で肉が赤いのが特徴。「シカを扱うには好条件な土地なのかなと思います」。ところでジビエは狩猟時期が決まっており、京都府では11月15日から2月15日まで(ただしシカ、イノシシは3月15日まで)。しかし、美山町では害獣として一年中猟ができるので、一網打尽では一年中、肉を提供できるのも強みです。梅棹さんによると「ジビエは冬のイメージがありますが、実はシカに限っては夏も美味しいのです。特に春から山菜や新芽をお腹いっぱい食べたシカは、夏~初秋にかけて脂がのるんですよ」とのこと。一方、冬のシカ肉は高たんぱく・低脂肪で、鉄分やビタミンB2を豊富に含み、脂が少なくてヘルシー。アスリートやダイエット中のかた、貧血、冷え症のかたにもオススメなんですって。

(シカ肉を使ったジビエバーガー登場:長崎)
五島市玉之浦町で駆除したシカを有効に活用し町おこしにつなげようとシカ肉を使ったジビエバーガーの試食会が開かれました。ハンバーガーにするパテはシカ肉でできています。チーズをのせて、スペイン風ジビエバーガーの完成です。五島市玉之浦町ではシカが農作物を食べたり踏み荒らしたりする被害が増えていて去年は1500頭以上が捕獲されています。玉之浦町の協議会ではシカを地元の名産にして町おこしにつなげようとシェフの栗原靖武さんとともにジビエバーガーを開発。試食会には地元の主婦などおよそ20人が参加し作り方を学びました。玉之浦町未来拠点協議会・野澤努代表)「オリジナルのハンバーガとして自信を持って出すことができる。これによって地域が活性化していけば非常にいい」。ジビエバーガーは来月中旬から玉之浦町の鶴田商店で販売される予定です。

(高校生がジビエ料理対決:熊本)
熊本市・白川河川敷「緑の区間」(熊本市中央区新屋敷1)で12月25日、「白川クリスマス」が開かれ、八代農業高校泉分校と芦北高校の生徒が出店する「ジビエ甲子園」で、両校のジビエ料理対決が始まる。出店企画は、熊本県・県南広域本部。年々深刻化するシカによる森林被害の削減に向け、林業関係高校と連携した対策に取り組んでおり、出店はこの活動の一環。白川「緑の区間」利活用推進協議会主催のイベントでは「白川クリスマス」で初出店となる。両校の生徒たちが、手がけたジビエ料理を販売し、その販売数を競う。両校のジビエ料理は、地元企業の協力を得て、それぞれ試作を重ねてきたもの。生徒たち自らシカを狩猟し、精肉から調理、全ての工程を実践し販売する。両校それぞれ300食を用意し、今回の料理対決に挑む。4年前から対策活動に取り組み、ジビエ料理を開発してきた八代農業高校泉分校は、ローストしたシカ肉を使う「シカピザまん」(300円)と、地元の味噌と合わせた「シカ味噌まん」(300円)を提供する。同校・グリーンライフ科3年生の廣岡風香(ふうか)さんは「シカを捕獲するだけではなく、その後の活用方法などを、来場の皆さんに広く伝えたい」と意気込む。担当教諭の西山智美さんは「捕獲から活用まで自分達で行ってきたからこそ作れる料理を楽しんでほしい。生徒には、人に届けることを実践で学んでほしい」と話す。地元ハンターと「林業ハンター」を立ち上げ、自衛の狩猟をする芦北高校は、シカ肉を練り込んだ「シカコロッケ」(プレーン味・カレー味=300円)を提供し、シカ肉の普及に取り組む。同校・林業科3年生の髙嶋奈々華(ななか)さんは「シカ肉は、高タンパク質、低カロリー、鉄分豊富なヘルシー食品。森を元気にするため、シカ肉のおいしさを伝えたい」と意気込む。担当教諭の前島和也さんは「捕獲したシカの命を、地域環境の大切な資源として、循環するとうれしい。高校生の力に期待したい」と話す。出店企画担当の県南広域本部、鳥居真臣さんは「高校生のエネルギッシュな活動を通じて、より多くの方々にジビエの魅力とシカによる被害の現状を知っていただきたい」と話す。「白川クリスマス」の開催時間は11時~16時。「ジビエ甲子園」は11時~。売り切れ次第終了。

(イノシシ肉のカレー、シカ肉ミートボール:兵庫)
兵庫県南あわじ市の女性グループ「美菜恋(みなこい)グランマ」が、農作物被害が深刻なイノシシとシカの肉を使ったジビエ料理2品を開発した。調理法を工夫し、肉を軟らかく仕上げたイノシシ肉のカレーと、ショウガやゴボウを使い食べやすくしたシカ肉のミートボール。22日に市内で試食会があり、参加者の意見を踏まえて来年春からの販売を目指す。県によると2020年度、島内で約1万2千頭のシカとイノシシが捕獲され、大半は埋設や焼却処分された。食肉利用は少ないという。郷土料理の普及などに取り組む同グループは、県の支援を受け、2年前からシカとイノシシを使ったジビエ料理作りに励む。これまでに考案したレシピのうち、カレーとミートボールの販売に向けて準備した。カレーのイノシシ肉は、塩こうじに漬け込み、圧力鍋で軟らかくした後、トマトジュースなどで2~3時間煮込んだ。ミートボールのシカ肉も塩こうじに漬け、ショウガやゴボウで臭みを取り除いた。試食会は同市八木養宜上の農畜水産物直売所「美菜恋来屋(みなこいこいや)」であった。行政関係者らが参加し、「マイルドな味わい」「子どもも食べやすい」と講評した。肉は吉備国際大南あわじ志知キャンパス内の施設で処理されたものを仕入れ、あえて脂身の少ない赤身肉を使った。グループの福永英美代表(74)は「使い道の少ない肉を使って工夫を重ねた。意見を参考にして活用に協力していきたい。カレーの辛さ設定は悩むところ」などと話した。試食した県森林動物研究センター(丹波市)の野口和人森林動物専門員は、「島内は特にイノシシの個体が増えている。狩猟者の減少や繁殖能力の高さが背景にある。ジビエの消費拡大につなげてほしい」と期待を込めた。早ければ春から同直売所で販売し、その後、家庭用のレトルト商品も売り出す予定だ。価格未定。

(わかやまジビエ出前授業:和歌山)
和歌山県内で捕獲されるイノシシやシカの肉「わかやまジビエ」について学んでもらおうと、県農林水産部畜産課は12月から1月にかけて県内五つの小学校と一つの支援学校で出前授業を実施。21日には和歌山市立今福小学校(今福、土本悦子校長)で開かれ、5年生の児童ら約30人が県の取り組みについて学んだ他、シカの革を使ってキーホルダー作りを楽しんだ。県では2017年度から地産池消の取り組みの一環で、小中学校などの給食食材としてジビエを提供しており、同課の橋本典和主任から「ジビエという言葉を知っていますか」と質問された児童たちは元気よく「給食で食べたことある」と答えた。橋本主任は、県内のシカやイノシシなどによる農作物の被害金額は例年3億円ほどにまで上ると説明。実際にシカの捕獲に使われているわなに似たものを用意し、シカに扮(ふん)した職員がわなにかかる様子を児童らに見せ、「せっかくいただく命だからこそ、無駄にせずいろんなことに役立てていきましょう」と呼び掛けた。県内で捕獲されたシカやイノシシの皮を活用し、財布やキーケースなどの革製品に加工する事業を行う、有田川町のLettMelodia(レタメロディア)の代表、中井謙次朗さん(35)が講師を務めるクラフト教室も開催。児童らは柔らかくしなやかなシカの革に触れながら、世界に一つだけのオリジナルキーホルダーを完成させた。大城朱里(あかり)さん(10)は、「一つひとつ大切な命なんだなと改めて感じた。シカの革は柔らかくて気持ちがいい。ランドセルに付けて大事にしたい」とにっこり。中井さんは、「和歌山にはスポットライトさえ当たれば、すごく良い素材はまだまだたくさんあるので、将来を担う子どもたちに見つけてもらって、これからの和歌山の産業が明るく面白くなっていけば」と期待を込めた。

(シェフ自らが狩猟した猪や鹿肉を独自のソースでふるまう:東京)
銀座2丁目の裏通りに構えるフレンチレストラン。シェフの皆良田光輝さんは、日本にジビエを広めたといわれる高橋徳男シェフに師事。当時、高橋シェフが総料理長を務める有楽町「アピシウス」にいた皆良田シェフは、初代オーナー・森一さんの勧めで狩猟免許を取得。猪や鹿といった“大物”を自ら銃を構え、捕らえている。「最初は撃つことに抵抗がありました。やってダメなら辞めようとっていましたが、やってみたらできた。それだけに命の尊さも感じ、感謝しながら調理しています」。狩猟期間中の日曜は毎週猟に出る。数にして年間20回。狩猟は基本的に長野県で行う。ジビエとともに、その土地の素材も仕入れ、料理に用いる。師の教えを受け継いだ皆良田シェフが作るソースは、ジビエ肉の長所をグンと引き出す絶品の味。その旨さに唸ることだろう。

(「第6回ジビエ料理コンテスト」の結果について)
ジビエの普及啓発等に取り組む農林水産省の「鳥獣利活用推進支援事業」の一環として開催した「第6回ジビエ料理コンテスト」において、農林水産大臣賞等の受賞者が決定されたのでお知らせします。農村地域で深刻な被害をもたらす有害鳥獣の捕獲数が増加傾向にある中で、これを地域資源としてとらえ、野生鳥獣肉(ジビエ)として有効に活用する前向きな取組が広がっています。このような状況の中で、農林水産省では、平成28年度からジビエの普及啓発や調査実証に取り組む「鳥獣利活用推進支援事業」において、ジビエの全国的な需要拡大を推進しています。本コンテストは、同事業の一環として事業実施主体である「一般社団法人日本ジビエ振興協会」が実施したもので、選定・表彰された料理レシピを広く紹介・提供することで、消費者等への普及啓発を図り、ジビエの全国的な需要拡大や鳥獣利活用の推進を図るものです。第6回となる今回は218点の応募があり、書類審査及び実食審査の結果、農林水産大臣賞ほか8賞の受賞者が決定しました。

(命を無駄なく循環させる、タンナーが提案する革の魅力:兵庫)
あらゆる命を無駄にしてはいけないと、多様な野生動物の皮を鞣すタンナーの取り組み。「たった一枚からでも、求められる革を作る」――そんな姿勢が、デザイナーやクリエイター、ブランドから支持されている、姫路のタンナー「オールマイティ」。国産原皮を得意とするが、近年増加しているのが、地方自治体や猟師から持ち込まれる皮の鞣しだ。「数年前から鳥獣害のことを耳にしていました。そんな時、地方の自治体から、捕獲した野生動物の皮を再利用できないものか、そんな相談を受けたのです」。そう話すのは、オールマイティの水瀬大輝さん。姫路の次世代の製革業を担う、キーパーソンのひとりである。もともとは大量生産される婦人靴の素材を供給していたが、13年前、オールマイティへ屋号をあらためたことをきっかけに企業活動の内容も刷新。若いクリエイターや新しいブランドを支援すべく、小ロットから素材を供給するタンナーに生まれ変わった。現在では色味、風合い、柔らかさ、厚さ……つくり手のクリエティビティにマッチする革を、1枚から作り上げている。

(駆除シカ、革製品に変身:兵庫)
害獣として駆除されたシカの命を無駄にしない――。神戸市中央区の革職人・松木真麻さん(39)がオリジナルブランドを設立し、シカ革製品の商品化に取り組んでいる。全国的に見て兵庫は駆除動物の加工施設数が多いものの、ジビエ(食肉)以外の活用は不十分。ブランド化には、そんな現状を知ってほしいとの思いがある。野生のひっかき傷やムラをあえて残したシカ革のバッグやポーチが、中央区の工房兼店舗に並んでいる。松木さんが2020年1月に設立した新ブランド「 ENISICAエニシカ 」。今年には、同市長田区の業者と協力し、革靴の商品化にもこぎ着けた。「山を駆け巡るシカは、栄養状態や虫刺され、傷などが個体によって違う。その分、革製品にも個性が出るんです」と魅力を語る。専門学校でグラフィックデザインを学んでいた約20年前、イタリア製の革財布を購入し、使い込むほど味わい深くなる革製品に引き込まれた。東京でフリーのデザイナーをしながら革製品を作っていたが、15年、母親の死をきっかけに、生まれ育った神戸に戻り、両親が営んでいた美容院の一角に工房を開設した。「触り心地が良く、使いやすい素材はないか」。当初は牛革を使っていたが、納得のいく製品を模索するうちに出会ったのがシカ革だった。歴史的に足袋や武具に使われるほど、しなやかで軽く、劣化しにくい素材の魅力にはまった。シカは牛などと異なり、1頭からとれる皮の量は少ない。大きめのバッグだと数頭分が必要で、原価は高くなる。だが、一枚一枚の風合いは牛舎で管理された牛革よりも個体差が出やすく、「生きた証し」を感じられる。そんな魅力を広めようと、たつの市の工場から仕入れたシカ革を材料に製品を作り始めた。全国では、年間約60万頭のシカが駆除されている。松木さんは「商品を通じ、シカの命を生かす方法を考えてほしい」と話している。

TOPへ

12/20
(ヒグマ駆除で銃所持取り消しは「違法」:北海道)
自治体の要請でヒグマを駆除したのに猟銃所持許可を取り消されたハンターが地元公安委員会を訴えた裁判で12月17日、札幌地裁(広瀬孝裁判長)はハンター側の訴えを認め、当初の処分を「著しく妥当性を欠き違法」とする判決を言い渡した。原告の男性は「多くのハンターにとって朗報」と判決を高く評価し、「自治体や警察はこれを機に改めて話し合い、ヒグマなどの駆除要請についてよく考えてもらいたい」と呼びかけている。訴えを起こしたのは、北海道・砂川市のハンター池上治男さん(72)。道猟友会の砂川支部長を務め、狩猟歴30年を超えるベテランだが、ここ3年ほどは銃を持つことができていない。地元・砂川市に請われて引き受けたヒグマの駆除行為が鳥獣保護法違反などに問われ、北海道公安委員会に猟銃所持許可を取り消されたためだ。きっかけとなった“事件”が起きたのは、2018年8月。砂川市郊外の住宅近くにヒグマが出たと通報があり、同市農政課が猟友会に出動を打診、支部長の池上さんを含む2人のハンターが現場に駈けつけた。そこで問題のクマを目撃した池上さんは「撃つ必要はない」と提案する。地域を騒がせていたのが体長80センチほどの子グマだったためだ。「子どもが出たということは、近くに母グマがいるはず。いずれ母親のところに戻ると思うから『撃たなくていい』と言ったんです。我々は普段からできる限り撃たないようにしているし、そもそもクマを撃ちたくてハンターになったわけじゃないですから」(池上さん)だが市の担当者は、あくまで銃による駆除を要請した。地域では2、3日ほど連続して同じ個体とみられるクマが出没し、住民の不安が高まっていたところだった。現場に立ち会っていた砂川警察署(のち滝川署に統合)の警察官もこの方針に異を唱えず、駆除を前提として周囲の人払いにあたり始めた。現場には高さ約8メートルの土手があり、狩猟の世界でいうバックストップ(弾止め)の役割を果たす。標的がその土手を背にするような位置から銃を撃てば、仮に銃弾がその身体を貫通したとしても周辺に危険が及ぶことはない。そう判断した池上さんは、まさにクマが土手を背にして立ち上がった瞬間、約16メートルの距離からライフル銃を発砲、1発でクマを倒した。同行したもう1人のハンターが至近距離から「止め刺し」の1発を撃ち、駆除は無事に終了。市や警察が一連の駆除行為を問題にすることもなく、地域住民も安堵の声を漏らすことになる。この駆除行為が突然「事件」となったのは、駆除から2カ月ほどが過ぎたころ。砂川署は鳥獣法違反などの容疑で池上さんを取り調べ、自宅から銃4丁を押収した。結果として地元の滝川区検察庁は事件を不起訴処分とするに至ったが、警察が差し押さえた銃は今も池上さんのもとに戻っていない。北海道警察の上申を受けた道公安委員会が、銃所持許可の取り消し処分を決めたためだ。一方、狩猟免許を扱う北海道の担当部局は、駆除行為に違法性がなかったとして免許を取り消さないことを決めている。池上さんを「鳥獣被害対策実施隊員」に任命している砂川市も、その後も変わらず隊員の委嘱を続けている。地元検察も駆除行為の違法性を認めなかったのは、すでに述べた通りだ。公安委の処分を不服とした池上さんは2019年6月、同委に対して行政不服審査請求を申し立てる。だが一方当事者である公安委自身による審査には、もとより公平な扱いが期待できず、はたして翌2020年4月に請求棄却が決定。これを受けた池上さんは同年5月、所持許可取り消し処分の撤回を求めて裁判を提起するに至った。本記事の冒頭に伝えた実質勝訴判決により、その主張は提訴から1年半を経てようやく認められることになった。きっかけをつくった駆除行為からは、3年以上が過ぎたことになる。ここまで問題がこじれたのは、なぜなのか。裁判の被告となった公安委は、銃を取り上げた理由を「建物のほうに向かって撃ったため」としていた。ところがこれはいわゆる“後づけ”で、当時の砂川署が捜査を始めた理由とは異なっている。同署は当初「池上さんがクマを撃った銃弾が跳弾してもう1人のハンターの銃を破損した」なる容疑で調べにあたっていたのだ。駆除行為から捜査開始まで2カ月ほどの間が空いているのは、銃を壊されたという「もう1人のハンター」(共猟者)が突然その時期に「事件」を告発したことによる。この跳弾説はこれまで、事件に関心を寄せる一部関係者の間などでまことしやかに語られてきた。だがそれを裏づける証拠は存在せず、破損したという銃は警察に保管されていない。クマに致命傷を負わせた弾丸には当然ながら体液や体毛などの痕跡が残るはずだが、その弾丸で破損したという銃からそれらが検出された記録はない。そもそも銃の被害が調べられた形跡がなく、跳弾したとされる銃弾も現場から発見されていない。何よりも、告発を受けた警察自身がこの容疑での立件を早々に諦めている。筆者は2020年8月、告発者(共猟者)本人と直接やり取りする機会があり、次のような証言を得た。「警察には『あなたの件ではやらない(捜査しない)』と言われました。『時間かかるし、タマみつからないから』って」この時点で事実の解明を放棄した警察は、突如として「建物に向かって撃った」なる新説を持ち出し、池上さんからなんとしても銃を奪う方針に切り替えたようだ。各地のハンターが注目する行政訴訟は、その「建物」説を鵜呑みにした公安委が所持許可取り消しを決めた結果、当事者が提起せざるを得なくなったものだった。ただ、警察の新たな主張は客観的に見ても無理があり過ぎた。池上さんがヒグマを撃った現場に高さ8メートルのバックストップがあったのは、すでに述べた通り。銃口が向けられたのはその土手であり、決して「建物」ではない。だが、警察は現場周辺を真上から俯瞰した平面図を根拠に「銃弾の発射された先に住宅がある」と言い募り、土手の存在を伝える池上さんの言い分に耳を傾けようとしなかった。行政訴訟の審理にあたった札幌地方裁判所の廣瀬孝裁判長は、池上さんらの「現場を見てほしい」という声に応えて異例の現地調査に踏み切り、昨年10月に駆除現場を訪ねて自ら現地の高低差などを確認している。さらに今年10月に同地裁で設けられた証人尋問では、駆除に立ち会った警察官がはからずも池上さんの発砲の安全性を請け合う証言を残すことになった。原告代理人・中村憲昭弁護士(札幌弁護士会)による反対尋問の一部を、下に引いておく。言わずもがなの念を押しておくが、問いに答える警察官は“被告側の証人”だ。――周りの家に弾丸が当たることがあり得ると思いましたか。「いえ、ないと」。――判断に迷う時は署に連絡しますよね。「はい」。――今回、連絡しなかったのは、判断に迷わなかったから。「具体的な危険はないと」。――駆除が終了して、あなたは。「…適切に終了したと思いました」。同じ日の法廷では、砂川署による不適切な取り調べがあった疑いさえ指摘されている。中村弁護士と原告・池上さん自身のやり取りを、以下に記す。――調書では「弾丸が100%の確率でバックストップに刺さるとは断定できない」と。そう説明した記憶はありますか。「ないですね。捜査員が外に出てって書いてきたやつに『サインしろ』と言われたので。とにかく長時間の取り調べで、しょっちゅう文章を書き直しては戻ってくるんですよ。私が言った趣旨とは違う」。――これ「供述録取書」といって、池上さんが言ったことを警察官が書いている。今の話だと、捜査官はその場で調書にしたわけじゃなく、誰かに相談してたんですか。「外で課長と話してたようで『とにかくこうやって書いたほうがいいから』なんて、何回も行ったり来たりしてました」。裁判が続いた1年半の間に北海道ではヒグマの被害が相次ぎ、今年に入ってからの死傷者は10人を超えている。6月には札幌市の住宅街で男女4人が重軽傷を負う被害に遭い、11月には夕張市の山林でクマに襲われたとみられる男性の遺体がみつかった。池上さんの地元・砂川市でも目撃情報は絶えず、今も市の鳥獣被害対策隊員を引き受ける池上さんは要請のあるたびに現場へ駈けつけている。当然ながら丸腰だが、「撃てば犯罪者にされる」という状況が変わらない限り、地元猟友会メンバーは引き金に手をかけることができないままだ。折に触れ「私だけの問題ではない」と訴えてきた池上さんは、17日の判決言い渡し後も同じ言葉を口にすることになる。「これが許されるなら、ほかのハンターも駆除に従事できなくなる」――。だが判決は文字通りの全面勝訴となり、言い渡しの瞬間は「これで多くのハンターが安心できる」と意を強くした。札幌地裁の廣瀬裁判長は、判決の主文で公安委の処分を「取り消す」と明言、続く理由説明で「原告の出動は公益目的で、公共の利益に適う」とし、池上さんに違法行為はなかったと結論づけた。また仮に鳥獣法違反と判断する余地があったとしても、それを理由とする銃所持許可取り消しは「もはや社会通念に照らし著しく妥当性を欠き、裁量権の範囲を逸脱、濫用したものと言わざるを得ない」と言い切り、公安委の処分を「違法」と断じた。さらに当初の捜査のきっかけとなった「跳弾」疑いについても、次のようにほぼ全否定することになる。「原告が発射した弾丸については、本件ヒグマから逸れたりすることもなく、これに命中したものである。またこの弾丸がヒグマの身体を貫通し、さらに跳弾してどこかへ飛んだような事実を窺わせる証拠もみあたらない。そもそも原告が発射した弾丸が現場付近の建物に当たったとか、その建物を損壊させたなどといった事実は、本件証拠上まったく認められない」池上さんはこれに「私の代わりに喋っていただいた」と意を強くし、「被告の主張にとどめを刺すような判決だった」と評価。代理人の中村弁護士も「行政の裁量権について『著しく逸脱』としてくれたことを評価したい」と感慨深げに語った。一方、今後の銃によるヒグマ駆除について「判決は必要条件ではあったが十分条件とは言えない」と池上さんは訴える。「これを受けて、改めて地元自治体、北海道、及び警察の三者で話し合ってもらいたい。それから(何らかの合意を経たら)我々に駆除を要請してもらいたい。私自身の銃が戻る・戻らないの問題ではなく、地域を守るにはどうするか、ハンターを含めた4者が協力すべきと以前から言い続けてきました。『何かあったら逮捕します』ではなく、一所懸命やってるハンターが私のような目に遭ったらどうなるかを考えてもらいたい」判決後、当時の駆除要請を出した砂川市農政課は「正当な行為が認められてよかった。池上さんには3年あまりも不自由な思いをさせて申しわけなく思っている」と話し、今後改めてヒグマ駆除について協議の場を設ける考えをあきらかにした。被告・北海道公安委の事務を担当する道警は「判決内容を精査し、今後の対応を検討して参りたい」とコメント。同日時点で控訴の意思の有無などはあきらかにしていない。

(「県立総合射撃場」の概要判明:兵庫)
兵庫県三木市吉川町内に整備予定の「県立総合射撃場」(仮称)の概要が17日、明らかになった。さまざまな銃種に対応した射撃練習場やわな猟の練習場を備えた全国初の施設となり、西日本では最大規模。全国レベルの射撃大会も開催できるといい、オープンは2023年度を予定している。施設本体は県の事業で、市は周辺道路の整備などを進める。同日の市議会民生産業常任委員会で示された。同施設は、県が狩猟者育成の拠点として吉川町福井・上荒川地区で整備を目指している。県有林約80ヘクタールのうち、射撃場として約12ヘクタール、残りの約68ヘクタールを狩猟体験フィールドとして活用する。3面のクレー射撃場に加え、「ライフル」「スラッグ」「空気銃」での標的射撃場、管理棟などを備えるという。県は10月に工事を担当する企業体と契約を締結した。今月から県有林の伐採を開始しており、来年1月から造成工事に入る予定。市は射撃場と狩猟体験フィールドのアクセス道路として、市道上荒川吉安線の未整備区間約500メートルと、県有林内にある老朽化した農業用ため池の整備を行う。費用は、県が市に1億円を拠出。市は基金に積み立て、進捗(しんちょく)に合わせ予算化し、事業費に充てる。来年1月に県と市で覚書を交わすという。県の担当者は「獣害は農業被害につながる。猟友会も高齢化しており、人材を維持できるように取り組む」とし、市の担当者は「県と協力しながら、獣害対策を担う人材を育てる場所にしていきたい」と話している。

(鳥インフル感染源「まだ近くに」:青森)
三戸町の養鶏場で発生した高病原性鳥インフルエンザは、国の解析で今季国内外で確認されているウイルスと同じ「H5N1亜型」と判明し、世界的な流行が青森県にも及んだとみられる。鳥インフルを研究する京都産業大学感染症分子研究センターの高桑弘樹教授(獣医微生物学)は取材に対し、積雪がまだ少ない県内にウイルスの“運び屋”となる渡り鳥が長く居座っている可能性を指摘。「感染源はまだ近くにいる可能性が高い」とし、関係者へ注意を呼び掛けている。高桑氏によると、同町の養鶏場で発生した「H5N1亜型」は、国内で2000年代に流行した型で、近年息を潜めていたが、今季は欧州や韓国のほか、鹿児島、広島など7県で確認された。これに対し、隣県の秋田で先月確認されたのは「H5N8亜型」で、昨季18道府県で流行したタイプ。高桑氏は、青森県の被害は秋田に被害を出したルートと由来が異なる-とし、「少なくとも2種類のウイルスが複数のルートで国内に入ってきている」と警戒する。家禽(かきん)に感染する鳥インフルは、自然宿主であるカモ類が主因と考えられている。秋ごろに越冬のためシベリアなどから南下したカモ類が日本の湖やため池に降り立ち、水場をともにした鳥に感染を広げる。やがて抵抗力が落ちて死ぬと、死骸やふんにネズミなどの小動物が接触。養鶏場の隙間から小動物が侵入してウイルスが持ち込まれ、感染するとみられる。なぜ青森県に感染が及んだのか。水鳥は本来、雪が降り水場が結氷すると、餌が取れる場所を求めて飛び立っていく。ただ県内は積雪がまだ少ないため、「感染した鳥が飛び立たず、そこから感染が広がったのかもしれない」と高桑氏は推測する。また、高桑氏は「感染した小動物や感染源となる鳥がまだ近くにいる可能性が高い」と呼び掛ける。ウイルスに触れた服や靴から感染が広がる可能性もあるとし、「鳥の死骸を見つけたら近づかず関係部署に連絡してほしい」と話した。

(野生イノシシの「豚熱」感染急増:山形)
県内で家畜伝染病「豚熱」(CSF)に感染した野生イノシシの確認が相次ぎ、県などは警戒を強めている。8月までは小康状態だったが、9月に入って急増。イノシシを介して養豚場で発生する恐れもあり、飼養衛生管理の徹底を呼び掛けている。県のまとめによると、昨年12月に小国町で初めて野生イノシシの感染が確認された。今年は7月まで0~1頭で推移し、8月も4頭にとどまっていたが、9月は8頭、10月は14頭と増え続け、狩猟期間を迎えた11月は32頭に上った。市町村別では山形、上山両市が各18頭で最も多く、大きさは幼獣から成獣まで確認されている。イノシシは5、6月ごろに出産し、7~9月ごろに子どもを連れ、餌を求めて活発に動き回るとされる。鶴岡市で発生したケースでは、感染した野生イノシシ由来のウイルスがスズメなどの野生動物や人を通じて侵入した可能性があると指摘されている。県内の全ての養豚場では豚熱ワクチンの接種が行われている。感染リスクは抑えられている一方、県は継続的な検査を通じて感染状況を把握し、注意喚起に努めるとしている。県は鶴岡市の養豚場で昨年12月に発生した豚熱の経験を踏まえ、豚熱対策本部の対応マニュアルを見直した。当時、県庁内の対策本部で対応に当たった職員から意見を集め、課題を整理。県庁内や関係機関の役割を明確化したほか、情報共有体制の強化を図り、より迅速に対応できるようにした。鶴岡市の養豚場では昨年12月25日に豚熱の発生が確認され、県は同日付で対策本部を設置。防疫対策や移動規制、保健衛生など各班に分かれて現地と連携しながら、豚の殺処分や消毒などの防疫措置を行った。当時、県庁内をはじめ市町村や農協といった関係機関の役割分担が不明確な部分があり、作業を始めるまでに時間がかかった場面があったという。対策本部と現地間などで情報共有がうまく図られず、連絡体制に課題も残ったとする。県は各班の中心メンバーを対象に行ったアンケート結果などを踏まえてマニュアルを改訂した。作業内容が一目で分かるように班ごとに時系列化したほか、県庁内や関係機関の役割について事前調整を行い、混乱が生じないようにした。情報共有体制の構築に関しては、ビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」で県庁の対策本部と現地対策本部、市町村などを24時間接続し、情報の共有、集約、一元化を図ることを明記した。マニュアルは細部を調整した上で県庁内で共有する。県畜産振興課は「情報伝達体制を強化し、よりスムーズに対応できるようにしたい」としている。

(シカの農作物被害額、過去10年で最高:福井)
イノシシやシカなどの野生動物による県内の農作物の被害額は、昨年度7300万円あまりで、前の年度と比べて減少したものの、シカの被害額が過去10年で最も高くなったことから県はわな猟などの普及を図り、被害を抑えることにしています。県によりますと、イノシシやシカなどの野生動物による農作物への被害額は昨年度、7300万円あまりで、前の年度と比べておよそ1300万円減少しました。被害額の内訳ではイノシシによるものが最も高くおよそ3200万円、次いでシカがおよそ1400万円、カラスがおよそ1300万円などとなっています。イノシシによる被害額が半減した一方で、シカの被害額は前の年度と比べて600万円増え、過去10年で最も高くなりました。シカによる被害が増えたことについて、県は嶺北地域の東部と南部の山あいでシカが多く確認されたことから、滋賀や岐阜で生息していたシカが県境を越えるなどして頭数が増えたためではないかとみています。福井県中山間農業・畜産課は「シカの生息数が増えている可能性があるので、エサとなる田畑の草を取り除くなど、シカを寄せ付けない環境整備を進めるとともに、わな猟などの普及促進を強化したい」としています。

(クマ捕獲上限引き上げ、過去最多:いわて)
県内に生息するツキノワグマについて、県は2022年度の捕獲上限数を過去最多の626頭に引き上げる。農業被害は近年増加傾向で、出没や人的被害も高止まりの状況が続く。県内の推定個体数は3700頭とされ、約10年前の調査から300頭増加。県は安定的な個体数維持と被害防止の両立に向け、適切な管理に努める。新たな上限数は現在の546頭から80頭増やした。県によると本年度は10月末までに2513件の出没を確認し、人身被害は14件に上った。今年10月15日までの捕獲は469頭と過去5年間で2番目に多い。

(ポニーはなぜ撃たれたのか:北海道)
北海道夕張市で11月、ペットとして放し飼いにされていたポニーが、エゾシカの駆除猟をしていたハンターに撃たれ、その後安楽死させられた。警察は誤射とみて捜査している。飼い主はかわいがっていたポニーの突然の死を悲しみ、家族が出入りする敷地内での発砲に憤る。一方、シカによる農作物被害が深刻な道内では各地で駆除猟が行われており、危険と隣り合わせの現実が浮かんだ。「うちのハンターが、クマと間違ってお宅の馬を撃ってしまったかもしれない」。11月27日夕、清水沢地区の飼い主宅を訪ねてきた北海道猟友会夕張支部の関係者がそう告げた。飼い主の女性(58)が振り返る。清水沢地区には昭和の時代に炭鉱があり、労働者が住んでいた団地の廃虚が残る。事故が起きた放牧地は国道から1・2キロほど入ったところにある。

(シカはなぜ増えたのか?高校生が5年かけ解明:京都)
京都府宇治市五ケ庄の莵道高科学部が、校舎の裏山の学校林にすむ哺乳類について、自動撮影装置を使った研究を5年間続けている。膨大な写真から動物の種類や時間帯ごとの出現頻度を集計し、3年前の台風による植生の変化でシカが増えたことなどを突き止めた。2018~20年度には、計約1600枚の写真が撮影された。13種類の哺乳類を確認し、どの年もシカが最も多かった。特に19、20年度は18年度より約3割頻度が上がり、全体の6割以上を占めるようになった。部員らは、その原因を18年9月の台風被害とみている。学校林で多くの木が倒れ、地表に光が差し込むことで草が生えやすくなっており、「柔らかく食べやすい新芽を求めてシカが多く来ている」。逆に、樹上で暮らすテンやリスは台風後に少なくなった時期があるといい、「枝が折れるなどすみづらくなったのでは」と推測する。シカは日の出や日没前後に多く撮影され、学校に人が多い時間帯は避けているとみられる。例年は繁殖期で活発に動く夏前と秋に多いが、昨年4~5月は新型コロナウイルス禍で臨時休校したためか、撮影頻度が増した。部員らが中庭の畑で育てていたサツマイモも葉を食べ尽くされる被害に初めて遭い、シカよけのネットを張るようにした。イノシシの急減も分かった。18、19年度は撮影数の15%程度を占めていたが、20年12月以降は1頭しか写っていない。宇治市内では昨年冬に豚熱(CSF)でイノシシが全滅したといわれており、学校林からも消えたと考えている。副部長の2年押田逞弥さん(16)は「餌になる植物の場所と動物の出現頻度の関係などを今後も研究したい」と意気込む。莵道高は校舎の裏に広葉樹やスギの林が広がる約1ヘクタールの学校林を有し、生物の授業などで活用してきた。グラウンドにもシカのふんや角が落ちていることがあり、2017年、科学部が自動撮影装置による調査を開始。現在は1、2年生計12人が取り組む。赤外線センサーで動物の体温を感知し、自動でカメラのシャッターが降りる。体についたダニなどを落とすために動物が泥水を浴びる「ぬた場」や獣道など3カ所に仕掛けて2週間ごとにデータを回収し、時刻や写った動物の種類を記録する。体の一部しか写らないこともあるが、尾にしま模様があればアライグマ、細長い尾はハクビシン―といった特徴から分類する。2年佐竹葵さん(16)は「最初は先輩や先生に聞いていたけれど、ずっと見ていると分かってきた」と話す。10月末、府高校総合文化祭で研究成果を発表して優秀賞に輝き、来年夏の全国高校総合文化祭(東京都)に初出場する。

(イノシシなど有害鳥獣の捕獲確認、リモートでOK:宮城)
ノシシなど有害鳥獣のおりによる捕獲を遠隔地で検知できるシステムの実証実験が、仙台市太白区秋保町で行われている。システムを開発した仙台高専(青葉区)と地元住民が市の官民連携窓口「クロス・センダイ・ラボ」の支援を得て来年3月まで実施し、来年度以降の本格導入を目指す。実証実験は秋保町湯元太夫の太白カントリークラブ敷地内で、12月上旬に始まった。幅80センチ、奥行き150センチ、高さ90センチの鉄製のおりを設置。有害鳥獣が入り扉が閉まると、磁気センサーが感知し、約600メートル南側にある省電力無線技術(LPWA)の中継局を経由して、おりから約2キロ東側の基地局に情報が伝わる。仙台高専が開発したスマートフォン用アプリを通じ、捕獲した時間や場所が住民にメールで即時通知される。おりに鳥獣がいなくても、10分ごとに情報が更新される仕組みという。太夫地区では毎年20頭前後のイノシシが捕獲され、ジャガイモやカボチャの食害も相次ぐ。これまでは住民が地区内に6基あるおりを直接見て回っていた。

(「狩猟者のための森林講座」を開催:北海道)
12月9日(木曜日)17時から、夕張市拠点複合施設「りすた」で行われた、北海道猟友会夕張支部の臨時総会において、「狩猟者のための森林講座」を開催しました。今回の臨時総会は、夕張市内で発生したポニー誤射事案や狩猟者のヒグマによる死亡事故等を踏まえ、支部会員に対して再発防止策の周知を行い、法令遵守と狩猟におけるルール・マナーを徹底することを目的として実施されました。当日は、武森空知森林管理署長のあいさつの後、保全課藤本生態系管理指導官から「森林管理者からのお願い~狩猟の安全確保に向けて~」の講話を行いました。

(フレッシュハンター大型獣実践巻狩り実践研修開催:新潟)
県内に生息を見なかったイノシシやニホンジカ等の大型獣が県下全域に生息域を拡大したことなどから、農林業被害と共に人的危害にまで及ぶ現況であります。本来、趣味の狩猟やスポーツとして楽しんできた狩猟免許取得者も近年は大型獣の狩猟や有害鳥獣捕獲の社会貢献が主体傾向であります。これらの現況ですが、高齢化が進む狩猟免許取得者の後継者担い手育成事業の一環として、ベテランハンターの指導の下での[大型獣(イノシシ・ニホンジカ)巻狩り実践研修会]の要望が多くありますので、下記により計画いたしました。この機会に大型銃猟捕獲に興味や意欲のある会員の参加をお願いします。

(兵庫県森林動物研究センターシンポジウム:兵庫)
兵庫県では平成19年の森林動物研究センター設立以来、野生動物管理の3つの概念「個体数管理」、「生息地管理」、「被害管理」を科学的な研究結果に基づいて実践してきました。10数年にわたるモニタリング調査では、サルやクマの生息数やシカによる下層植生の変化、地域ごとの遺伝構造などを、調査手法の開発から毎年の変化まで情報を蓄積してきています。これらの研究成果は被害地域での、密度管理や地域の主体的な対策進展に活かされ、改善が進んでいる事例も確実に増えてきました。一方、今まで生息していなかった地域への野生動物の分布拡大や耕作放棄などの地域の環境変化により、野生動物を取り巻く状況も変化し、地域間で解決すべき課題に大きな差が生じつつあります。そこで、本シンポジウムでは兵庫県および森林動物研究センターが進めてきた研究や実践を紹介し、課題解決に向けた今後の挑戦を提示したいと思います。

(ソウルでイノシシの捕獲数70%急減:韓国)
ソウル市消防災難本部によると17日、ことし11月のイノシシの安全措置出動件数は414回と集計された。イノシシ関連の出動は2019年に740回、2020年に576回と毎年減少している。特にことし11月の出動件数は18回で、前年同月の61回に比べて70.5%も急減した。ソウル市消防災難本部は、2019年に発生したアフリカ豚熱(ASF)がイノシシの捕獲数に影響を与えたものと推定している。場所別ではイノシシの主な生息地である山地が856回で、全体の半分に達していることが分かった。山地に隣接するマンションや住宅街、公園などに出没する場合も多く、注意が求められている。地域別ではウンピョン(恩平)区が306回で全体の17.7%を占めた。続いてカンブク(江北)区の271回、ノウォン(蘆原)区237回、トボン(道峰)区208回などの順だった。2019年からことし11月までの3年間、イノシシの安全措置の出動件数は計1730回だった。このうち、繁殖期が始まる10月から冬に入る12月までの出動が626回で、全体出動件数の36.2%を占めた。イノシシは主に夜間に活動する。イノシシの出没地域では日没時間帯の登山を控えることが肝要だ。イノシシに遭遇(そうぐう)した場合、大声を出したり脅かしたりして興奮させないようにする。イノシシに背中を見せて逃げないようにし、周辺の木や岩などを探して隠れなければならない。ソウル市消防災難本部はイノシシ発見の連絡を受けると救助隊が出動し、安全措置を取る。必要な場合は各区で運営しているイノシシ機動安全措置団や警察などと共同して対応する。ソウル市消防災難本部のソ・スンタク災難対応課長は「登山や散歩中にイノシシと遭遇した場合に備えて安全規則を熟知しておいてほしい」と語り、「迅速な出動を行い、市民の安全確保に万全を期す」と述べた。

(害鳥撃退装置、3月まで設置:石川)
金沢市は16日までに、害鳥が嫌がる音を出す装置を香林坊、木倉町周辺に設置した。都心部ではカラスやムクドリによるふん害が問題となっており、来年3月まで装置による追い払いを実施し、効果を検証する。装置は香林坊周辺に8台、木倉町周辺に4台設置し、午後4時~7時半と午後11時~午前0時に鳥の嫌がる音を出す。市によると、香林坊周辺では設置後、職員の目視でカラスやふんの数が減っていることが確認された。市はまちなかの環境美化に向け、商店街など地域団体に道路の清掃作業を委託し、鳥のふんを除去する取り組みを行っている。

(麻布大、野生動植物を調査:島根)
麻布大(相模原市)が17日、島根県美郷町で学生のフィールドワーク実習を始めた。4月に町内に設けた教育研究施設「フィールドワークセンター」を拠点に19日までの3日間、野生動植物を調査したり、鳥獣害対策をした農地や山くじら(イノシシ肉)の加工施設を見学したりして理解を深める。センター開設後、実習で学生が来町するのは初めて。環境科学科3、4年生12人と大学院生2人、教職員3人が参加した。初日は、鳥獣害対策機器製造販売のタイガー(大阪府吹田市)が運営する食肉処理施設(美郷町吾郷)を訪問した。イノシシを捕獲するわなや捕獲後の適切な取り扱い方を学び、体重63キロのイノシシ肉から骨や筋を取り除いて加工する作業を見学した。18日以降、鳥獣害対策をした農地や食肉加工施設を見学し、イノシシ皮の有効活用を学ぶ予定。3年の重松悠太さん(20)は「野外で実習する機会は少ないので楽しみにしていた。自然の中で動物を中心に学びたい」と話した。実習に先立ち、嘉戸隆町長がセンターで「町を勉強に役立ててほしい」と歓迎した。

(イノシシ被害への対処法を学ぶ:熊本)
住宅街に出没するイノシシの対策を学ぶ勉強会が14日、熊本市西区の上高橋地区であり、駆除に取り組む住民や市職員約20人が参加した。

(コロナで減った?人間とカラスのあつれき:北海道)
新型コロナウイルスの影響で飲食店の休業や酒類提供禁止が続いた6月、明け方の歓楽街ススキノでシャッターを切った。3年前の6月にも同じ場所で、しかも同じ曜日、同じ時間帯に撮影したが、その時に比べ、カラスの数が激減したように見えた。当時はゴミ出しのネットを張るわずかな時間に、カラスがあっという間に群がっていたが、まばらだった。札幌市を中心にカラスの生態を調査しているNPO法人「札幌カラス研究会」の中村眞樹子代表(56)は「数は減っていない」と言う。「ゴミはカラスにとってはおやつ程度。主食のエサは自然界にありますから」と話した。では、新型コロナの余波による変化は全くなかったのか。改めて聞くと、中村さんは「一つある」と話した。それは、カラスの繁殖期(4~7月ごろ)における相談件数という。この時期、カラスは警戒心が強く、威嚇行為に対する対策や巣から落ちたひなの相談などが例年増えるが、今年は劇的に減ったらしい。だが、例年問題になる場所などを調べても、カラスの繁殖数が減るといった変化はないようだ。「人間の方がコロナへの意識が強くなり、カラスへの意識が弱くなったのでは」と中村さん。「繁殖期のカラスへの一番の対策は無視。カラスを見ないという行動が自然とできたことで、人とカラスのあつれきが減ったのではないか」と話した。感染状況が落ち着けば、再びあつれきが増えるのだろうか。来年の変化が気になる。

(鹿が高速道路を疾走:栃木)
16日午後、栃木・宇都宮市で撮影された映像。高速道路上をシカが走っている様子が確認されました。

(アライグマにご用心:神奈川)
川崎市内で近年、アライグマの捕獲数が増加傾向にある。農作物や生態系、人の生活などへの被害の恐れがあるとして、市は6月にチラシを作成するなど、注意を呼び掛けている。アライグマはペットとしてアメリカから輸入され、捨てられたり逃げ出したりして野生化、山奥から都会までどんな場所でも生活できるため、全国的に生息範囲が広がった。市動物愛護センターによると、市内では1998年頃から生活被害が報告されているという。市は神奈川県が2016年に策定した「第3次神奈川県アライグマ防除実施計画」に基づき、積極的に捕獲を推進。その結果、16年度に11頭だった捕獲数は、20年度には102頭(麻生区45頭・多摩区23頭・高津区17頭・宮前区14頭・川崎区2頭・中原区1頭)まで増加した。アライグマは外国から来た生物のうち、特に生態系や人間の生活に多大な影響を与える特定外来生物に指定。輸入や運搬、飼育、野外に放つこと等が禁止されている。市の担当者は「防除のためには捕獲が必要。見かけた際はご連絡を」と話している。

(獣を”足”止め、”手”間なく設置:群馬)
群馬県渋川市の土木資材メーカーが販売する樹脂製の害獣侵入防止溝ぶた「わたれませんLIGHT」の導入が、獣害防止に向けて各地で進む。獣の侵入経路になる道路に設置する。

(「日田ジビエ」の生産施設、来年3月末で休止へ:大分)
「日田ジビエ」生産拠点の市獣肉処理施設(日田市上津江町川原)について、市は14日、「来年3月末でいったん休止せざるを得ない」との見通しを明らかにした。

(「命大切に」ジビエ料理挑戦:富山)
県の「命の授業」は15日、富山市黒崎の日本海ガスプレーゴで開かれ、中央農高の1、2年生19人がイノシシやシカの肉を自分たちが育てた野菜とともに調理して味わった。フランス料理店「ル・ジャルダン・ドゥ・サン」(同市白銀町)の小室徳幸オーナーシェフが指導し、生徒はイノシシ肉のピロシキ、シカ肉のパイ包み、野菜のテリーヌの3品を作った。県は県産ジビエを「とやまジビエ」として売り込んでおり、野生鳥獣肉の魅力を知ってもらおうと授業を企画した。同校もイノシシに畑を荒らされる被害がある。農業から見れば「厄介者」の野生鳥獣だが、石川みずきさん(2年)は「自然の命を大切にして、おいしく食べたい」と話した。

(高校生がジビエ料理:島根)
飯南高校(飯南町野萱)の生徒3人が、田畑を荒らすイノシシの肉を使ったメニューを開発した。19日に公衆浴場「加田の湯」(下来島)のレストランで提供するのを前に、準備を進めている。

(ジビエサミット、参加募る:岡山)
農作物に被害を及ぼす野生のシカやイノシシを資源として活用することを考える「日本ジビエサミット」が、来年1月27、28日、岡山市北区の岡山理科大で開催される。ジビエは地方の新たな産業創出やSDGs(持続可能な開発目標)など様々な観点から注目されており、活用に関心のある行政や民間団体などから参加者を募っている。日本ジビエ振興協会が主催。猟師と獣医師の対談や、シカ肉のペットフードの利用についてなどのセミナーなどが予定されている。また、開催地の優良事例として農林水産省の「国産ジビエ認証施設」に指定された「地美恵の郷みまさか」(美作市)も紹介される。参加費は1人税込み5000円(資料冊子代を含む)で、オンラインによる参加も可能。

(ジビエ条例可決:神奈川)
第4回松田町議会定例会でこのほど「松田町ジビエ処理加工施設の設置及び管理に関する条例」が可決された。条例は、ニホンジカやイノシシによる農作物被害、森林環境や生活環境の悪化などの課題を持続的に解決するとともに、ジビエ肉の利活用を図ることが目的。施設では、解体処理、食肉加工などを行うことになる。同事業は、予定地周辺住民の同意や施設管理を予定している猟友会との調整などから凍結することとなっていた。

(廃棄するイノシシ革を活用:愛媛)
地域課題の解決に向け、学生が考案したビジネスプランを審査する「EGFキャンパスアワード2021-2022」(愛媛県、えひめ産業振興財団主催)が18日、松山市大手町1丁目の愛媛新聞社であり、鳥獣害対策で捕まえたイノシシの革製品を販売するプランを提案した愛媛大農学部3年で学生団体「Re―anima」代表の門本玄さん(21)が最優秀賞に輝いた。県内の高校生や大学生の8組19人が地元の水産物や水、古民家などの地域資源を生かした活性化策をプレゼンテーション。4人の審査員が実行力、企画力、課題解決力、プレゼン力の4項目で審査した。門本さんは県内の鳥獣被害状況を説明。箱わなによる狩猟を経験し「命を奪うのは並大抵のことではないと知った」と振り返った。「県内で捕れたイノシシは肉と異なり、革はほとんどが捨てられる。命の資源に経済的価値を与えるという理念の実現に向け、一歩一歩進んでいく」と述べた。

(地産シカ肉カレー食べてみて:岐阜)
池田町田畑の共有スペース「SHARE & COMMUNITY SPACE Wa(シェアー・アンド・コミュニティ・スペース・ワ)」で十九日、池田山で捕れたシカ肉を使ったカレーの販売が始まった。

TOPへ

12/16
(イノシシに襲われ男性死亡:茨城)
15日午前9時15分ごろ、茨城県常陸大宮市諸沢の山林で、同所、無職、男性(84)が、わなにかかったイノシシにかまれて右脚を負傷、市内の病院に搬送されたが、右太ももの動脈損傷による出血性ショックで死亡した。イノシシは午後6時現在、見つかっておらず、大宮署は猟友会と連携して巡回するなど警戒している。県警大宮署などによると、イノシシはオスで、体長約1.2メートル、体高約0.7メートル。男性は午前9時前に家を出て、次男(55)と2人で山林に入り、過去に設置したわなにイノシシ1頭がかかっているのを見つけた。こん棒で仕留めようと近づいたところを襲われた。次男が救急隊を呼んで現場に戻ると、イノシシは姿を消していた。くくりわなが付いた状態の可能性があるという。救急搬送時、男性は心肺停止状態だった。10年以上前から、わなによる狩猟をしていたという。県内で近年、イノシシに人が襲われた例として、つくば市内の自転車専用道「つくば霞ケ浦りんりんロード」で2018年1月、同市の男性が手足をかまれ、指を切断する重傷を負っている。

(イノシシ駆除中に襲われ70代の男性と警察官2人がけが:兵庫)
14日朝、相生市でイノシシの駆除にあたっていた70代の男性と警察官2人が襲われてけがをしました。警察によりますと14日午前7時頃、相生市那波野で「イノシシがうろついている」と通りかかった人から通報がありました。見つかったのは体長が1メートル40センチほどあるイノシシ1頭で、現場が住宅地であることから地元の猟友会の70代の男性と警察官5人が出て駆除にあたりました。およそ1時間後に駆除されましたが、男性がかまれるなどして病院に運ばれ、足を縫うなどの手当を受けたほか、警察官2人も靴の上から足をかまれたり、手にきばをぶつけられたりして軽いけがをしました。警察は「イノシシに遭遇した場合は、刺激せずにその場から離れてほしい」と注意を呼びかけています。近くに住む自治会長は「2、3か月前からイノシシが近所の畑を荒らし、回覧板を回して注意するよう呼びかけていた。今後もほかのイノシシが出るかもしれないので、気をつけていきたい」と話していました。

(女性がサルにかまれ軽傷:山口)
13日午前、岩国市の店舗の敷地内で、60代の女性が突然出てきたサルに右足首をかまれて軽いけがをし、警察は、付近の住民に注意を呼び掛けています。13日午前9時40分ごろ、岩国市由宇町にある雑貨店の外で作業をしていた60代の女性従業員が、突然、後ろからやってきたサル1匹に右足首をかまれたということです。警察によりますと女性は病院で手当てを受け、全治4日の軽いケガだということです。現場は、岩国市立由西小学校から西に300メートルほど離れた、住宅や店舗が点在する地域です。岩国警察署によりますと、ことしに入って、管内で人がサルに襲われたという被害は初めてで、警察は、付近の住民に注意を呼び掛けています。

(ヒグマ駆除「民家に弾当たる恐れ」争点:北海道)
ヒグマ駆除の際、適切に発砲したのに、道公安委員会から違法に猟銃の所持許可を取り消されたとして、北海道猟友会砂川支部長の池上治男さん(72)=砂川市=が道公安委を所管する道を相手取り、処分の取り消しを求めた行政訴訟の判決が17日、札幌地裁(広瀬孝裁判長)で言い渡される。駆除現場はクマの後方が斜面で、登った先には民家があった。民家に弾が当たる危険性はあったのか―。道内でクマによる死傷者が相次ぐ中、司法判断に注目が集まる。池上さんは2018年8月、砂川市の要請を受けて訪れた同市内の山林で、クマ1頭を猟銃で駆除。ただ、弾が届く恐れのある建物の方向に撃ったとして鳥獣保護法(銃猟の制限)違反などを理由に19年、猟銃の所持許可を取り消された。最大の争点は、発射した弾が周辺の建物に当たる恐れがあったかどうかだ。池上さん側は、クマの後方にあった高さ8メートルほどの斜面が「弾を遮る安土(あづち)(バックストップ)として機能していた」と主張。クマとの距離も約18メートル以内と近く、狙いを外す危険性はなかったと訴える。一方、公安委側は「斜面や樹木に当たって弾道が変わる可能性があった」とし、建物が完全に安土の陰に隠れていなければ、バックストップがあるとは評価できないと指摘。危険な発砲だったと反論する。広瀬裁判長は昨年10月、現場の山林で「検証」を行い、自ら斜面の形状などを確認。判決では双方の主張・立証と検証の結果を踏まえ、発砲の危険性を判断することとなる。原告側によると、道庁は池上さんが害獣駆除中だったことなどから「悪質性が低い」とし、狩猟免許取り消し処分を見送った。

(新たに4頭が豚熱:三重)
三重県は14日、4市町で捕獲された野生イノシシ四頭が豚熱に感染していたと発表した。県内で豚熱の感染が判明した野生イノシシは573頭となった。県によると、新たに感染が判明した野生イノシシは菰野町、熊野市、紀宝町、南伊勢町で1頭ずつ。いずれも地元の猟友会員が今月上旬に捕獲した。

(野生イノシシにワクチン入りの餌:福島)
12日、宮城県の養豚場でブタの伝染病「CSF」=豚熱が確認されたことを受け、福島県は感染源とみられる野生イノシシにワクチンの入った餌をまく取り組みを始めました。宮城県の養豚場では12日、CSF=豚熱が確認され、養豚場のブタなどおよそ1万1900頭の殺処分が行われています。県内での感染拡大を防ごうと、14日は2か所の山林で県の担当者が野生イノシシ向けにワクチンが入った餌、あわせて360個をまきました。県によりますと、とうもろこしの粉で作ったビスケットの中にワクチンの入ったカプセルが埋め込まれていて、イノシシが食べることで免疫が獲得され、ほかへの感染を防ぐことができるということです。来年3月末までに、福島市や二本松市などのあわせて9市町村の72地点で2880個がまかれる予定です。福島県ではこれまでに養豚場での豚熱の発生は確認されていませんが、野生イノシシ、あわせて36頭で感染が確認されているということで、養豚場では定期的にワクチンの接種が続けられています。福島県畜産課は「養豚農家でのワクチン接種も継続して行われていて、豚熱の収束に向けて長丁場の取り組みになると考えている」としています。

(特定難しい感染経路、関係者に動揺広がる:宮城)
豚熱(CSF)が宮城県の養豚場で初めて確認された現実は、見えないウイルスを相手に感染を防ぐ困難さを浮き彫りにした。患畜が出た養豚業者は県内大手で、対策には細心の注意を払っていたとされる。感染防止の高い壁に、関係者の動揺が広がっている。県によると、感染が判明したのは、大河原町の養豚場で飼育していた生後約80日の子豚で、皮膚が変色するチアノーゼの症状が出たり、死んだりした。いずれも11月上旬、豚熱ワクチンを接種済みだった。子豚は母豚の乳やワクチンを通じて抗体や免疫を獲得し、ウイルスから身を守る。ただ、免疫の程度は個体によって異なり、感染した子豚は十分な免疫を得られていなかったとみられる。同町の養豚場は防護柵の設置など「ハード面の対応が十分になされていた」(県家畜防疫対策室)。豚熱ウイルスは野生イノシシや小動物を介して養豚場の豚に伝染した疑いなどが想定されるが、感染経路の特定は難しいという。2018年以降、国内の養豚場での感染は今回が75例目。1カ所当たりの殺処分頭数は数百から2万超まで幅があり、県は殺処分の対象となった約1万1900頭を大規模な事例と捉える。県内では約140カ所の養豚場の大半が防護柵の設置を完了。県は11月下旬、野生イノシシに対する経口ワクチンの埋設に乗り出し、県南を中心とした8市町の計80地点に1600個を仕掛ける予定だ。県の宮川耕一農政部長は「県内の養豚場は衛生管理基準をしっかりと順守している。全国的に見ても、厳格な衛生管理をしている農場ですら豚熱に感染している」と指摘。「豚熱は野生イノシシが拡大傾向にあるため歯止めがかからない。引き続き最高度の警戒態勢を維持する」と話す。宮城県大河原町の養豚場で豚熱(CSF)の感染が12日に確認され、県内の養豚業界は警戒を一層強めた。県内では6月から野生イノシシへの感染が広がり、各業者はワクチン接種や消毒、防護柵の設置といった水際対策を徹底。「現場では限界がある」などと、国や県に抜本策を求める声が相次いだ。「不運としか言いようがない」。白石市の養豚場から年間6000頭を出荷するしまざき牧場(神奈川県)の嶋崎裕吉社長(47)は、隣接する大河原町での発生を残念がる。嶋崎社長によると、年明けから家畜保健所に加え、農場の管理獣医師も柔軟な日程でワクチンを打てるようになる矢先だった。「(大河原は)扱う数の多い養豚場。食肉の国内相場に与える影響も大きいだろう」と予測した。加美町の養豚業者は「衛生管理がしっかりした養豚場だったのでびっくりした」と率直に語る。自社でも敷地に出入りするトラックや豚舎での作業員の消毒を励行するが、「今後はさらに消毒の数を増やしていくつもりだ」と気を引き締めた。「県内いつどこで豚熱が発生してもおかしくない。これ以上の対策を取れないというのが現場の本音だ」と危機感をあらわにするのは県北の養豚生産者(54)。豚の放牧を手掛ける大崎市の田尻農産加工販売の高橋精一社長(72)も「急増する野生イノシシを駆除して数を抑え込まないと、被害は広がってしまう」と根本的な対策を訴えた。県南の生産者は、2018年9月に国内の養豚場で26年ぶりに豚熱が確認されてから、国の対策が不十分だったと指摘。「国は小手先の対応ばかりではなく、もっと予算をかけて防疫の研究を計画的に実施してほしい」と注文した。食べたとしても健康への影響はないが、「2件、3件と続けば消費に影響が出るかもしれない」(県北の養豚生産者)と風評被害への懸念も出た。県南の生産者は「肉は安全に食べられること、生産者は対策に気を使っていることを消費者には理解してほしい」と力を込めた。

(野鳥の大量死確認、農薬原因か:沖縄)
石垣市平田原地区の水田でカルガモなど野鳥が大量死しているのを12日から14日にかけて、複数の通行人が発見。環境省石垣自然保護官事務所が鳥インフルエンザの簡易検査を実施したところ陰性だった。死んだ野鳥はさらに詳しく調べる遺伝子検査のため研究機関へ送られる。同事務所や県自然保護課などによると、12日から14日にかけてカルガモやコガモなどカモ類9羽とバン1羽の合わせて10羽の死体が同一区画の田んぼから見つかった。農薬を食べたことで死んだ可能性があることから、県では今後、使われた農薬についても調査する。同地区は国の特別天然記念物カンムリワシの生息地でもあり、生態系への影響も懸念される。野鳥の捕獲や殺生は鳥獣保護管理法で禁じられており、違反した場合は1年以下の懲役、または100万円以下の罰金が科される。

(山城地域で初のクマ捕獲:兵庫)
京都府和束町湯船で子どものツキノワグマが捕獲された。京都府がデータを取り始めた2004年以降では山城地域での捕獲例がなく、周辺自治体では住民に注意を呼び掛けた。一方で、山城広域振興局によると、わな猟の規制が変わる可能性もあるという。

(野生動物被害5年ぶり50億円超、ヒグマ出没急増:北海道)
北海道では、エゾシカやヒグマなど野生動物による農林水産業への被害額が2020年度、5年ぶりに50億円を上回った。21年度に入ってもヒグマの出没は急増しており、自然との共存が絶対条件の北海道の1次産業は難しい対応を迫られている。北海道がまとめた20年度の野生鳥獣被害調査によると、野生鳥獣による農林水産業への被害額は前年度比7%増の50億円。2年ぶりに増加に転じた。最も被害額が大きかったのはエゾシカだった。

(ヒグマ死傷者、最多更新:北海道)
北海道は13日、夕張市の山林で11月に見つかった男性の遺体について、ヒグマの爪痕や歯形とみられる傷があったことなどから、ヒグマによる死亡事故である可能性が高いと発表した。本年度の道のヒグマによる死傷者は計12人となり、統計が残る昭和37年度以降過去最多を更新した。道によると、男性は狩猟に出かけた江別市の50代。普段はシカの猟をしており、11月25日に遺体が見つかった。猟銃のスコープにもヒグマのものとみられる歯形を確認。発砲した痕跡があり、現場ではヒグマの血液も見つかった。昨年度までの死傷者が最も多かったのは39年度の8人。

(「ヒグマ管理計画」意見募る:北海道)
北海道は10日、今年度に改定予定の「北海道ヒグマ管理計画」について、改定案に対するパブリックコメントの募集を始めた。改定案では、市街地に出没したヒグマについて、直ちに被害を及ぼすおそれがある場合は実際に被害がなくても駆除できることや、出没に対して警報、注意報を発令する運用を進めることを明記している。

(個体数増のツキノワグマ、保護から管理へ移行:山口)
県は鳥獣保護管理法の規定により5年に1度見直す鳥獣保護管理事業計画について、島根、広島との3県共同で保護計画を策定しているツキノワグマの生息数が一定規模を超えたなどとして、生息数と分布域の現状維持を目標とする管理計画へ移行する方針を14日の県議会環境福祉委員会で明らかにした。県自然保護課によると、3県にまたがる西中国地域で昨年度実施した調査の結果、生息数(推計)は約1300頭。

(全国で勢力拡大する「シカ」増えると困る理由)
冬の山といえばスキーですが、「狩猟」の場としての顔もあります。日本の場合、鳥獣の狩猟期間は安全確保の観点から木の葉が落ち見通しの良い、かつ鳥類の繁殖や渡りに影響のない冬期に限定されています(都道府県によって期間は若干異なる)。私の住んでいる静岡県では、11月1日より銃によるニホンジカ(以下シカ)・イノシシ猟が解禁となり、他の都府県よりやや早いスタートとなりました。静岡県で一足先にこれらの種の猟が解禁になるのは、頭数を減らす目的があるからです。今回は、その中でもシカに焦点をあて、シカ増加の原因と、シカがもたらす問題について解説していきます。シカの個体数は、時代によって増減を繰り返してきました。環境省によると、全国のシカ(北海道を除く)の推定個体数は 189 万頭( 2019 年度)で、2014 年度をピークに減少傾向にありますが、生息数を国が目指す適正水準とするためには、引き続き捕獲強化が必要とされています。また、1978年度から2018年度のまでの40年間で、生息分布が約2.7倍に拡大していることが明らかになっており、拡大の一途をたどっています。ではなぜ全国でシカが「勢力拡大」しているのでしょうか?その原因はひとつの単純なものではなく、様々な要因が絡み合っています。①天敵の不在 かつての日本には、シカを捕食するニホンオオカミが1900年代初頭まで生息していましたが、感染症の流行や、家畜被害対策の観点による駆除などによって、絶滅しています。自然界に天敵がおらず捕食圧がないことが、シカの生息数増加の一助となっています。②降雪量の減少 近年、スキー場の開業時期が例年に比べ遅れたり、雪が降らずに営業を見合わせるスキー場がでるなど、冬の積雪異常がニュースになることが多くなりました。昨今の地球温暖化によって冬季の積雪量が減ったことは、自然界にも影響を与えています。シカにとっては、豪雪がなくなったことで冬季も充分なエサを食べられるようになり、自然減の原因となっていた冬季の豪雪によるエサ不足が軽減され、結果として生存率が上がっています。③日本の森林政策「拡大造林」 シカの生息する山林を巡る政策もまた、シカの増加に拍車をかけています。日本の森林環境の大きな転換期となったのが、戦後日本の「拡大造林政策」です。太平洋戦争後の復興に伴う木材需要が増加すると、国内での木材生産が推進されました。政府は、1950年代から60年代にかけて、木材の安定供給を図るために山林を開拓し、木材として有用なスギ・ヒノキを主とした大規模な人工林を造成しました。これが戦後日本の「拡大造林政策」です。人工林を造るために、それまであった天然の広葉樹の森を皆伐し、一面はげ山となった山には、スギやヒノキの稚樹が大量に植樹されました。高い木が切り倒され、日当たりがよくなった山林が草原化したことや、植樹されたスギ・ヒノキの稚樹は、シカにとっては大量のエサとなりました。このことがシカの爆発的増加の引き金になりました。スギ・ヒノキの人工林の造成は、私を含め多くの方が苦しんでいる花粉症の原因ともなっていることを考えると、現代を生きる私たちにも影響を及ぼしているといえますね…。④シカの捕獲禁止措置 現在では増加傾向のシカも、かつては絶滅の危機に瀕したことがあります。1900年代初頭までの、食料や毛皮利用を目的とした乱獲によって、全国的に個体数が激減し、地域によっては絶滅したところもあります。その後1950年代までは禁猟、1955年からオスジカのみ解禁され、全国でメスジカが狩猟解禁されたのは2007年と、つい最近のことです。この規制緩和の遅れも、シカの増加に大きな影響を与えています。⑤人のくらしの変化 現在の日本では、耕作放棄地の増加が全国的な問題となっています。人間がそれまで管理していた土地に人手が入らなくなることにより、放棄地が生息場所として利用されるようになっています。また、狩猟人口が減少していることにより、シカに対する捕獲圧が低下していることも、シカの増加を促進する一因となっています。大日本猟友会によると、1980年の狩猟免許交付数は約46万件だったのに対し、2016年には約20万件と半数以下になっています。このように、シカが増加している原因は様々ですが、すべて人間の営みが関係しているといえます。時代に応じた様々な人間活動が自然に対し与えた影響は、結果としてシカが繁殖しやすい環境を作り出し、それに適応したシカがその個体数を徐々に増やして今日に至っているというのが現状です。これまで見てきたように、シカは様々な要因から増加の一途をたどっています。かつては自然のサイクルの中で保たれていたシカの生息数が過剰に増加していることで、自然界や人間社会に様々な影響をもたらしています。シカの増加がもたらす問題には、どのようなものがあるでしょうか?①山林の生態系破壊 増えすぎたシカは、自然界の植物を餌として大量に消費しています。シカが草を食べ尽くし地表がむきだしになると、雨が降った時に地中に水がしみこみにくくなり、地表を流れ去る水量が増え、土壌流出を引き起こします。私たちが使う水は、森林が起こす水のサイクルの恩恵を受けているので、この問題は我々の暮らしと無関係ではありません。また、山には水を貯えることで、河川の流量を調整し、洪水や渇水を緩和している保水機能が備わっているので、森林の荒廃が進むことで、災害の頻度や規模も大きくなることが予想されます。また、シカは数ある植物の中でも、好きな植物を選り好みして食べています。シカの多い地域では特定の植物がなくなり、シカが好まない植物種のみが残る森になることがあります。また、シカが届く高さの葉を食べ尽くし、葉がなくなった木の下部と、葉の残った上部の境界“ディアライン”が出現します。これらの食害の影響は、昆虫や鳥などの生息環境に影響を与えており、森の生物多様性が損なわれる原因ともなっています。②農作物や林業への被害 シカの増加原因に、耕作放棄地の増加を挙げました。それまで農作業で人間が頻繁に出入りしていた場所に、農業を辞めることで人間の圧がかからなくなります。すると、自然界と人間の境界があいまいになり、野生動物は人里近くまで進出してくるようになります。農林水産省によると、2018年度の野生鳥獣による農作物被害額は約158億円で、そのうちシカによる被害額は約54億円で、種別でみると最も被害額が大きい結果となっています。シカの食害は、林業にも及んでいます。植樹した木の枝葉や、樹皮を剥いで食べることが原因で、林野庁の調査によると2019年度の調査で野生鳥獣による森林被害面積は全国で約5000ha、そのうち約3,500haがシカによるもので、実に約7割を占めます。このように、シカの増加は一次産業にも多大な影響を及ぼしています。③交通事故 一般生活の中で、最も直接的な被害を受ける可能性があるのが、シカの交通事故。シカが多数生息している山沿いの道や林道などの道路では、警告看板が出ているのを目にされたことがあるかと思います。道路のわきの茂みから突然飛び出して来て、衝突事故を起こすというもの。ひどい場合は自走不可能や、とっさのハンドル操作を誤り重大事故に発展する恐れもあります。シカの飛び出しの可能性があるところでは、スピードを出し過ぎず安全運転を心掛けましょう。1匹が道を横切ると、同じ群れの仲間があとから飛び出すことがあるので、注意が必要ですよ。ここまで見てきた通り、シカは様々な原因によって個体数を増やし、生息地を拡大しています。この問題を解決するにあたり忘れてはならないのは、シカは古来日本の自然環境の中に居場所を持つ野生動物であり、外来種問題のように、駆除することのみによって問題を解決することができないという点です。現在の行われている取り組みとして、猟期のスポーツとしての狩猟以外に、生息数を抑えるための許可捕獲の実施(環境大臣・都道府県の許可があれば年中狩猟可能)、シカ柵を設置することでの農林業被害防止、生息地拡大の抑制などの措置が取られています。しかしながら、シカと共存する社会を実現するには、捕獲数が繁殖力を抑制するに至っていないなど、まだまだ課題が多いのが現状です。シカの生息数を、自然環境を損なわない適切な数に抑え、森林環境や一次産業への害を抑えつつ、適切な生息環境と規模にシカを位置づけていくことが重要です。ここまで見てきたシカ問題。日常とかけ離れすぎて、縁遠い話と感じられる方も多いのではないかと思います。そこで、少しでもシカを身近に感じ、問題解決に貢献する手段として、シカ肉を食べてみてはいかがでしょうか?私がガイドとして活動する富士山でも、シカ肉を販売する取り組みが進んでいます。静岡県富士宮市にある野生動物解体処理施設「富士山麓ジビエ」では、地元猟師の方から買い上げたシカを、精肉し販売しています。販路は卸売業者、飲食店のほか、一般販売やふるさと納税の返礼品にもなっています。「許可捕獲等で獲られたシカが、野山に放棄されることなく、頂いた命をありがたく頂戴できるようにしたい。食材にするために育てられた畜産の肉では味わえない、自然の中で育った野生の味を多くの人に楽しんでもらいたい」(「富士山麓ジビエ」責任者の浅子智昭氏)。しっかりと処理されたお肉は、臭みもなくとっても美味。シカ肉は赤身で脂肪分が少なく、鉄分豊富なヘルシー食材です。ジビエ産業の普及は、地域産業の活性化や、狩猟者の狩猟意欲の向上、そしてなにより捕獲した動物の命を無駄にしないことにつながります。このクリスマスは、シカ肉のジビエ料理を楽しんでみてはいかがでしょう?シカと聞いて、一番に思い浮かぶのは、奈良公園のシカでしょうか?シカは、日本では北海道から九州の屋久島まで分布しており、6つの亜種(同じ種で繁殖可能。地域的に体長などに変化が見られるもの)に分かれています。シカの特徴といえば、立派な角。オスのみについており、一年に一回、春先に落として生え変わります。1歳年を重ねるごとに枝分かれしていくので、満4歳までは、角の分岐の数を見ると年齢を推測することができますよ。1歳ごとに秋の発情期になると、オスのシカは自慢の角を使ってなわばりを争い、勝ったオスがなわばりを持ち、そこに入ってきたメスの群れとハーレムを形成します。メスのシカは1歳半になると出産できるようになり、毎年1頭の子を産みます。ちょっと遊びに行った山などで、偶然実物に出くわすことは容易ではありません。動物が自然の中に残す特定の痕跡“フィールドサイン”を知っていると、その場にどんな動物がいるかを把握できます。山でよく見るシカの痕跡を紹介します。フンは1センチ程度の黒い粒がパラパラと落ちています(200粒を超えるくらいの場合は、別種のカモシカ)。足跡は2本の蹄の跡がくっきりと残ります。ぬかるんでいる場所をチェックするとよく見つかります。食痕は草や木の先端がぷっつり切れているのは、シカが葉や新芽を食べた跡です。角研ぎ跡は樹木の根本からすぐの部分に、削られたような跡があれば、オスジカが樹皮に角をこすりつけて研いだ跡。キャンプや山登りなど、自然の中にお出かけの際にはちょっと目線を変えて探してみると、シカが生息している痕跡を見つけられるかもしれません。ぜひ探してみてください。

(高校生、今度は獣害対策に挑戦:福島)
福島県田村市の福島県立船引高等学校(猪狩良一校長)ドローン科学探求部が、地域の農作物に深刻な影響を与えているクマ、イノシシなど鳥獣による農作物被害などについて、ドローンを活用した対策を講じる取り組みを進めている。12月11日には、地元の猟友会(福島県猟友会田村支部、同小野支部)を中心に構成する田村市鳥獣被害対策実施隊が部員に取り組みについて説明した。部員も鳥獣被害対策ドローンについての構成を発表した。船引高校ドローン科学探求部は今後、田村市と包括連携協定を結んでいる慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム(古谷知之代表)の支援、助言を受けて、鳥獣害対策に適したドローンの開発も視野に活動を進める。この日の取り組みは田村市の白石高司市長も視察し、「高校生が地域の課題に正面から向き合い大変心強いです」と目を細めていた。船引高校ドローン科学探求部が鳥獣害対策に取り組むのは、ドローンを地域の課題に役立てることができる期待が高まっているためだ。田村市では今年5月、市内でツキノワグマが捕獲されるなど鳥獣被害不安が深刻化している。また対策にあたる鳥獣被害対策実施隊の高齢化が進み、捕獲の効率化を必要だ。一方、船引高校では2016年12月以降、田村市と包括連携協定を結んだ慶應義塾大学の教員、研究所員が定期的にドローンの担い手育成に力を入れており、すでに防災、観光振興などドローンを活用した取り組みに実績がある。このため田村市は、船引高校ドローン科学探求部、慶応SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム、鳥獣被害対策実施隊と連携し、ドローンを活用した鳥獣被害対策に中長期的に取り組む方針を決め、12月に公表した。12月11日の活動では、慶応による特別講座を開催。講座の中で田村市鳥獣被害対策実施隊が、獣害駆除の方法を駆除に使う猟銃の実弾を見せながら説明した。説明の中では、駆除活動がいくつもの法令に従って行われていること、狩猟捕獲と有害鳥獣捕獲との違い、地域での捕獲実績のほか、実施隊の高齢化の実態などについて説明を受けた。この中で「どこにいるか分からないクマの所在が分かる、どこに向かって移動しているかが分かることは駆除にとって大切」などの話があると、聞き入っていたドローン科学探求部員がメモを取るなどしていた。ドローン科学探求部員は説明を受けたあと、ドローンを活用する場合の、「最善の方法」について班ごとに考えを発表。えさでおびき寄せて捕獲したり動物園に引き渡したりする案や、害獣の苦手な音や光を発して近寄らせないようにする案などと、そのために考えられるドローンの案を示した。中には、クマのエサとなるサカナをつりさげ、クマを誘導する水空両用ドローンを提案するユニークなアイデアもあった。提案した部員は「クマの走る速度より速く移動できる性能を持たせたい」などと説明し、見学していた市の担当者らものぞき込んでいた。発表を受けて、この日の講座の指導を担当した慶應の下田亮研究所員が「みなさんが考えたアイデアを具体的に形にするため、ドローンを開発していきましょう」と述べ、今後、中長期的にドローンの開発も含めた対策に取り組む方針を示した。この日の特別講座では、ドローンでカプセルを運ぶデモンストレーションも実施。3月の法改正で認められることになった、地上から1メートル以内の高さから積み荷であるカプセルを切り離す様子を示した。下田研究所員は「この方法は、ルールがかわるまではできませんでした。ルールはかわります。いまできないことでも、必要なことであればルールを変えることができます。ドローンがなかった時代のルールを、ドローンがある時代のルールに変えられる可能性も含めて考えていきましょう」と呼びかけた。この日の取り組みを見ていた田村市の白石高司市長は「大変心強い」と述べ、「ドローンには大きな期待を寄せています。空を使うことで解決できる課題や、叶えられる望みは多いと思うので、田村で進められることは進めていきたいと考えています」と話していた。

(イノシシ対策の勉強会:熊本)
近年、住宅地でのイノシシの出没が相次ぐ中、駆除や農作物を守る方法を住民が学ぶ勉強会が熊本市で開かれました。この勉強会は熊本市西区上高橋で開かれ、イノシシの駆除に取り組む住民およそ20人が参加しました。イノシシ対策に詳しい宇城市のみかん農家、稲葉達也さんが講師を務め、参加者と一緒にイノシシが出没する地区の畑を見て回りました。このなかで稲葉さんは捕獲用のわなはイノシシに気づかれないよう茂みの中に設置することや電気柵を設置する際は24時間電流を流しておくことなどをアドバイスしていました。熊本市によりますと昨年度、市に寄せられたイノシシの目撃や被害に関する情報は428件に上り、前の年度の1.8倍に急増したということです。勉強会に参加した上高橋地域駆除隊の志賀竜也隊長は「わなでイノシシを捕獲した経験があまりなく、エサの撒き方など学ぶ点が多かったです。引き続き、地域で協力して駆除に取り組みたいです」と話していました。

(ハクビシンとアライグマ、報償金で捕獲数3倍に:栃木)
農産物のイチゴやブドウを荒らす野生の小動物ハクビシン、アライグマの捕獲に対して栃木市は本年度から報償金制度を導入。捕獲数が前年比3倍増になり、効果を上げていると発表した。市農林整備課によると、同市内のイチゴ、ブドウの被害額は昨年度、約五百万円に上る。市では、被害の深刻さに加え、生命力の強さ、病気を運ぶリスクなどを考慮して同制度を導入した。一般被害者を対象にハクビシン、アライグマ捕獲で報償金を出す制度は県内で唯一という。四月からの半年間でハクビシン五十七頭(前年同期二十五頭)、アライグマ五十一頭(同十頭)を捕獲したという。対象は被害を受けた市民。市の捕獲許可を受ける必要があり、市は捕獲用の「箱わな」貸与も行っている。報償額は、捕獲者自身が処分した場合一頭三千円、捕獲後に処分を依頼した場合は一頭千円。同課の担当者は「アライグマが埼玉県内で急増し、市内でも増えている。積極的に制度を活用してほしい」と呼びかける。

(悲しき農村:山口)
今年はサルが村中を荒らし回っている。一時はサルと言えば須金だったが、12、3年くらい前から中須にも群れが定着し出没し始めた。台所の窓ガラス越しに、真っ赤なものが見えると思ったら、サルのおけつだったとか、笑えない話もある。今年は、特にひどいように思える。7月5日、サル3頭が我が家のトタン屋根に上がってどんどん走り回り、翌日には、大きなやつが屋根を越えて隣の畑のトウモロコシに。大声で怒鳴ると遠くを迂回して中学校の方に引き上げて行った。11日には「のぶこの畑」に侵入、トウモロコシ、枝豆、かぼちゃ、ナス、胡瓜(きゅうり)がやられた。かぼちゃは全滅した。見回り中のてっちゃんが「畑にサルが入っちょるど」と知らせてくれた。畑に駆けつけるとサルたちはいっせいに中学校の方に逃げて行く。子ザルもいる。てっちゃんが車で追いかけて行ったが、校舎の2階のベランダの縁を悠然と歩いている。人気のない校舎をねぐらにしているのか。農林課に知らせると翌日猟友会の人がモンキードッグを連れてきてくれてサルを追った。そのあとは、自宅周辺には現れなかったが、12月10日、日曜版の配達中、相地の同級生のKさんの畑のそばを通りかかると白菜がよく出来ている。Kさんの夫さんが居たので「よくできてますね」と声をかけると、「できてるじゃない。サルに荒らされてこのありさま、20、30くらいでやってきた。白菜は食いちらかすは、ニンジンを抜いてポリポリ囓(かじ)る。見よったらおそろしゅうなる」「福岡に居たのだけど、退職後野菜作りを楽しみにこちらにきたのに」。老後の生きがいを奪われては気力が失せていくという心情だ。サルはイノシシより厄介だ。防護柵も、人間同様手を使うのだから、仕掛けがむつかしく費用がかさむ。行政の補助があるにはあるが、小規模の家庭菜園ではとても追いつかない。安価で有効な防護柵ができないものか思案を始めた次第だが、果たして?

(シカ乱入!マラソンランナーに体当たり:奈良)
国の天然記念物にも指定されている奈良のシカが、驚きの行動をとり、話題となっています。12日に行われた奈良マラソンのレース中に“まさかの事態”が起きました。沿道から撮られたレースの動画。走るランナーの後方を見ると…シカの大群が一斉に交差点を横切っています。その数、数10頭はいるようにみえます。普段、コース横の奈良公園にいるシカたちが、突如、マラソンコース内に乱入したのです。予想外の事態に、走りながら振り返るランナー。シカはコースに設けられたテープを身軽に飛び越え、そのまま走るランナーに、体当たりしました。体当たりされたランナーは、そのままレースを続行しました。別の映像ではランナーの邪魔をしないよう、警察官がシカを誘導していました。大会事務局にケガ人の情報は入っていないということです。

(「シカを追いかけるようにクマが道路を横断していった」:北海道)
13日午後4時前、道路を横切るクマが目撃されました。札幌市南区真駒内の山林で「シカを追いかけるようにクマが道路を横断していった」と車で通りかかった人から110番通報がありました。警察によりますとクマの大きさは1.5メートルから2メートルぐらいということです。これ以降に目撃情報はありませんが、警察と市の担当者がパトロールを続けています。

(わな猟の匠、知恵を次世代へ:北海道)
わな猟の「匠(たくみ)」こと、岩見沢市の猟師原田勝男さん(81)。11月6、7の両日、猟の技術講習合宿に参加した北大狩猟同好会と酪農学園大狩り部の計10人に、エゾシカの解体を約2時間掛けて丁寧に指導した。原田さんは狩猟歴50年。主にわな猟で年間100頭以上のエゾシカを1人で捕らえ、ヒグマも捕獲する。大切にするのは、動物の習性を熟知して仕掛ける伝統的な手法と、捕獲する野生動物への畏敬の念だ。〝原田流〟の狩猟は、いたずらに数を求めず、「人と野生動物が共生できる環境づくり」を重視する。

(ハンター入門オンラインセミナー:千葉)
本セミナーは、有害鳥獣捕獲の担い手となるハンターを育成・確保するため、狩猟に興味はあるがどのように始めたらいいかわからない方を対象に、先輩ハンターとの交流や狩猟に関する講座を通じて、狩猟を始めるきっかけを提供することを目的としています。皆様のご応募をお待ちしています。

(熊捕り名人、27歳女性はいつしか親方に:青森)
青森県東通村役場の農林畜産課に勤務して6年目。庁内では「熊捕り名人」として知れ渡る舘香菜子さん(27)は、50歳以上も年が離れたベテラン猟師たちから、親しみと尊敬の念を込めて「親方」と呼ばれている。獣害対策を担う先輩たちをサポートしてきたが、この春から本格的に任されるようになった。経験を重ね、前向きな姿勢と農家の顔を覚えたことなどが評価された。ツキノワグマはブルーベリーなど果実を好む。一方で、畜産農家が保管のために地中に埋めているトウモロコシも掘り返して食べてしまう。民家近くに出没するクマは、ドラム缶で作ったワナで捕獲するのだが、設置場所を間違えるといつまでたっても入ってくれない。「どうしたら入ってくれるのか」。きっかけはベテラン猟師のぼやきだった。えさを求めてクマが通る「獣道」は決まっており、すぐそばにワナを仕掛けなければ捕獲することは難しい。現場に出向くと倒伏した雑草があり、かすかにクマの残り香が漂っていた。「根拠があるわけではないけれど、必ずここを通る」と直感した場所にワナを移設すると、その日の夜にかかった。同じパターンが何度か続いた。抜群のセンスだと猟師たちに評価され、設置場所への相談が舞い込むようになった。生まれも育ちも東通村。祖父の代からホルスタインを育てる畜産農家だ。幼い頃から遊び場は広大な農場と牛舎で、友だちは干し草やトウモロコシをはみ、良質な乳を出す牛たちだった。家業を継ごうと、田名部高校を卒業すると北海道江別市の酪農学園大学に進学し、効率的な牛舎の構造や農機具の活用方法などを学んだ。だが、父親は重労働の畜産業に関わることに強く反対した。畜産農家は年中無休で、牛の具合が悪ければ夜通し見守ることも少なくない。給餌(きゅうじ)や牛舎の管理、農場の維持は肉体的な負担も大きい。その一方で、2人の兄は地元を離れており、村に戻ってほしいとも言われていた。「だったら役場に入って人脈を広げよう。農畜産業に関する幅広い経験を積み、いずれは父親を説得して家業を継ぐことに備える」。気持ちを切り替えて、村役場を働く場に選んだ。村は黒毛和牛の「東通牛」の肥育もしている。慣れ親しんだ牛を育む仕事に携わっていこうと、改めて思い描いている。

(高校で生徒たちがつくった「ジビエ料理」の試食会:大分)
農作物の被害を防ぐために捕獲した、イノシシや鹿などの肉を使ったジビエ料理。日田市の高校では、消費拡大には若い世代への浸透が鍵になるとして、生徒たちがつくったジビエ料理の試食会が開かれました。この試食会は、新型コロナウイルスの影響で、日田市内でジビエや特産の梨の消費が減っていることを受けて、日田三隈高校で開かれたもので、調理師や栄養士などを目指す3年生の生徒が参加しました。イノシシや鹿などのジビエと地元産の梨を使って、5品以上をつくることが条件で、メニューの考案や調理、それにテーブルコーディネートまで、すべて生徒が行います。生徒たちは、下ごしらえした材料に手を加えたうえで、イノシシの赤ワイン煮込みや梨のレアチーズケーキなどを手際よく調理し、盛り付けまで工夫していました。このあと、ジビエ料理の指導をしている料理研究家などが試食し、生徒たちに、味付けや盛りつけなどについてアドバイスしていました。地元で料理人を目指すという男子生徒は「祖父が猟師をしていて、ジビエを扱うのは得意なので、くさみを抜く作業もスムーズにできた。ジビエを和食でも扱って、その良さを多くの市民に知ってもらいたい」と話していました。

(学校給食にジビエ:京都)
京都府福知山市立小中学校23校で、市内で捕獲されたジビエ(シカ肉)を使ったカレーが学校給食で10日に提供された。市の学校給食でシカ肉が出されるのは初めてで、児童、生徒たちは、森の恵みを堪能した。ヨーロッパでは古くから、狩猟で捕獲されたシカやイノシシなどの食肉が高級食材として使われていて、日本でも近年人気が出て来たジビエ料理を、給食で気軽に味わってもらおうと、市学校給食センターが献立を考えた。カレーには市内のジビエの認証施設で処理されたシカ33頭のもも肉計165キロを使用。薄切りにしてニンジンやジャガイモなどと一緒に煮込んだ。水内の大正小学校(渡邉重則校長、349人)では、子どもたちが「どんな味なんだろう」と食べる前から興味津々で、一口食べると「おいしい」と、お代わりする子もいた。6年の荻野大地君は「初めて食べましたが、肉は軟らかくて、めっちゃおいしい。今度は肉だけを食べてみたい」と話していた。

(ペット用鹿肉商品が人気:北海道)
食品加工製造の「南富(なんぷ)フーズ」(糠谷雄次社長)が、鹿肉などを町内で加工して製造するペット向け商品「ペットシリーズ」の売り上げが伸びている。2020年度は19年度の1・5倍で、本年度はさらにこれを上回る見込みだ。新型コロナウイルス感染症の影響で在宅時間が増え、ペット需要が高まっていることが主な理由と見られている。ペットシリーズは、道内のハンターが処分したエゾシカの心臓やレバー、肺、骨などを乾燥させたペットフードや玩具。全て無添加にこだわった商品だ。インターネットや全国各地のペット用品店で販売する。特にふるさと納税サイトで人気を集め、「さとふる」の全国のペット用品ランキングでは、同社の商品が常に5位以上に入っている。

(楽しく調理しジビエ学ぶ:和歌山)
田辺市上芳養の市立上芳養小学校で13日、捕獲された有害鳥獣の肉(ジビエ)の活用について学ぶ授業があり、6年生15人が地元でフランス料理店を経営するシェフ、更井亮介さん(31)から講義や調理指導を受けた。県が取り組むジビエ普及策の一環。2020年度の県内のシカとイノシシの捕獲数は約3万4300頭だが、ジビエとしての利用率は4・7%にとどまっている。同…

(ジビエらーめん またぎ:静岡)
「ジビエらーめん またぎ」さんがあるのは沼津市東椎路。「ららぽーと沼津」や沼津市民病院からも近く、東名高速道路の愛鷹スマートインターチェンジに向かって上る道の途中にあります。お店のそばには駐車場も数台。クルマでも入りやすいお店です。お店で出されるスープは完全自家製、なんとイノシシから取ったダシを使っているそう。メインのメニューは白濁濃厚スープの「ラーメン(塩・味噌・醤油)」各850円税込、淡麗スープの「中華そば」750円税込。トッピングのチャーシューはイノシシとシカから選べるそう。

TOPへ