<射撃ニュース1月>
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(今シーズン2回目の渡り鳥調査、ガンの飛来が倍増:宮城)
今シーズン2回目の渡り鳥調査が行われました。ガンの数は過去4番目の多さで2021年よりも倍増していました。調査は宮城県内520ヶ所の沼や川で行われ、調査員が双眼鏡や望遠鏡で鳥の数をカウントしていきました。県全体ではガンが18万7000羽、ハクチョウが1万6700羽、カモが5万2500羽でした。ハクチョウとカモは2021年とほぼ同じでしたが、ガンは2021年に比べ倍増しました。県伊豆沼・内沼環境保全財団嶋田哲郎研究室長「年末年始の寒波が大きく影響していると思います。北(秋田)から群れが来ていますし」ガンが増加していることについて、県はこの冬は昨シーズンほど厳しくないため、ガンが宮城からさらに南下しなかったと見ています。なお、例年2月上旬に始まる北帰行は、秋田など経由地の雪解け次第で遅れる可能性もあるということです。

(160匹捕獲、前年度の4倍:栃木)
農作物被害などを及ぼすハクビシンとアライグマの捕獲が栃木県栃木市内で増えている。市農林整備課によると、昨年4~11月の捕獲数は計160匹を数え、2020年度1年間の4倍を超えた。市は21年度から、被害を受けた市民の捕獲に対して報償金制度を導入。処分を近隣の猟友会の駆除従事者に依頼できるようにもしたため、捕獲数の大幅増につながったとみている。昨年4~11月のハクビシンの捕獲数は75匹、アライグマは85匹に上った。20年度は1年間でハクビシン26匹、アライグマ13匹だった。被害を受けた市民が市に捕獲許可を申請し、自宅や自身の農地などで捕獲している。市は捕獲用の小型箱わなの貸与も行っている。新たに始めた報償金制度は、捕獲者自身が処分した場合に1匹3千円、処分を駆除従事者に依頼した場合は1匹千円を支給する。昨年4~11月の捕獲許可件数は、前年同期を28件上回る87件。「これまでは『自分では処分できない』と捕獲をためらう市民もいた」(同課)が、処分を依頼できるようになり、捕獲許可申請をしやすくなった。一般市民に対して報償金を支給する制度は県内で唯一という。市内のイチゴとブドウの被害額は20年度、約500万円。住宅の屋根裏などにすみつくため、ふんなどによる生活環境への被害の相談も増えているという。同課は「捕獲しないと、さらに被害が深刻になる懸念がある」とし「被害を受けた際は、積極的に制度を活用してほしい」と呼び掛けている。

(観光農園で獣害多発:広島)
広島県世羅町の観光を支える花観光農園でイノシシやシカの獣害が多発している。柔らかい花や芽を食い荒らし球根を掘り返すため、今年の花祭りが中止に追い込まれた施設もある。農地にとどまらず、花にも被害が出る状況に事業者は対策に追われている。

(角に漁網が絡まった“網シカ”を防げ:北海道)
道東の別海町と標津町にまたがる野付半島では、近年、漁に使う網などを角に絡ませてしまったシカの姿が確認されています。こうした事態を改善するため、NPO法人など地域の人たちが新たな活動を始めました。

(里山の再生:新潟)
イノシシの狩猟が各地で最盛期を迎えている。栄工業(新潟県燕市)は、知る人ぞ知る鳥獣捕獲器のメーカー。社長の山村則子さんによると、近年は温暖化で新潟県でも根雪が少なくなり、イノシシが越冬できるようになった。イノシシの一部は、イノブタと交雑が進み巨大化する。猟師の間で「スーパーイノシシ」と呼ばれ、体重は優に100キログラムを超える。脂肪をたっぷり蓄え、寒さに強い。温暖化も味方し、北へ北へと生息域を広げているそうだ。野生鳥獣による農作物の被害は約161億円(2020年度)に上る。減少傾向にあるものの、農林水産省は依然高水準とみて、駆除の手を緩めない。営農意欲の減退や耕作放棄地の増加など、数字に表れる以上に深刻な影響を及ぼしている。「山の恵みは山へお返しする。昔は作物を動物に分かつ文化があった」と山村さん。種や生態系を守るため、捕獲した動物を自然界に戻すこともある。同社では狩猟者だけでなく、動物の安全にも配慮した製品づくりを基本にしている。人獣の境界に電気柵を張り巡らしても、スーパーイノシシの猛進は止められない。人と野生動物のコモンズ(入会地)として里山を再生できないものか。

(列車がイノシシと衝突:鹿児島)
JR九州によると、13日午後8時10分ごろ、鹿児島線海老津―教育大前間で、上り普通列車(鳥栖駅午後6時4分発小倉行き)がイノシシと衝突した。この影響で同8時26分現在、同線小倉―南福岡間で一部上下列車に遅れが発生している。

(市街地にシカの群れ:北海道)
13日午前10時から午後2時ごろにかけ、苫小牧市矢代町の空き地に「エゾシカの群れがいる」と市や苫小牧署に通報が相次いだ。先週も同じ場所での目撃情報があり、市は「近寄らないで去るのを見守ってほしい」と注意喚起している。同日午前11時現在で群れは9頭おり、前脚で積もった雪を掘り起こして草木を食べたり、休んだりする光景が1時間以上続いた。「角が大きくて格好いい」「乗ってみたい」などと大はしゃぎする児童たちを、大人たちが心配そうに見守っていたが、人畜への被害は確認されていない。市によると、エゾシカは例年1月から3月にかけて市街地での出没が増加。山林で餌不足になると姿を見せる傾向にあり、過去には市民から「庭木の皮を食べられた」といった被害が報告されている。市環境生活課の担当者は「シカは人を積極的に襲うことはないが、急に近づいたりすると走りだしたりして危険なため刺激をしないことが大切」と強調。「脚をけがして何日も動けないような場合にはすぐ連絡をしてほしい」と呼び掛けている。

(バイパスにシカ出没:群馬)
13日午後7時半ごろ、安中市松井田町入山地内の国道18号(碓氷バイパス)の路上に、シカの成獣1頭が出没した。安中署は「運転する際は、進行方向をよく見て運転に集中し、交通事故には十分注意してください。シカやイノシシなどの野生動物を目撃した際には、不用意に近づかないでください」と注意を呼び掛けている。

(ジビエ自販機が好評:和歌山)
和歌山市の精肉店「いの屋」が店先に設置したジビエ(野生鳥獣肉)の自動販売機が好評だ。イノシシとシカの肉を24時間いつでも気軽に楽しめる。店主の北浦順嗣さん(73)は「山の恵みを多くの人に堪能してほしい」と期待を込める。すき焼き用のイノシシ肉240グラムやシカ肉のミンチ350グラムなど計4種を各千円で販売。鉄分などの栄養が豊富で、捕獲後すぐに血抜きなどの処理をするため臭みも感じられず、ジューシーな味わいが自慢だ。客層は20~30代も目立つ。

(房総ジビエコンテスト:千葉)
千葉県内で捕獲されたイノシシやシカの肉を使った、ジビエ料理の腕を競い合うコンテストが13日、千葉市内で行われました。「房総ジビエコンテスト」には県内外から応募のあった21人の中から、書類審査を経てファイナリストとなった5人の料理人が集結。4回目となる今回は、コロナ禍で苦境に立たされる飲食店の新メニュー開発に役立ててほしいと、テイクアウト・デリバリーメニューがテーマとなりました。料理人たちは“ジビエ料理ナンバーワン”の称号を目指し、静かな闘志を燃やしていました。そして審査の結果、最優秀賞を見事勝ち取ったのは、船橋市の「SEASONS」下田健太さんの「鹿肉のラザニア」で、 下田さんは「こういった賞を頂ける機会はなく、初めてなので嬉しい。千葉県には房総ジビエ以外にも魅力的な食材がいっぱいある。1年を通して色んな食材に触れて、色んな料理で表現してよろこんでもらいたい」と喜びを語りました。県によりますと、イノシシやシカなど野生鳥獣の影響による2020年度の農作物の被害額は、県全体で約3億6000万円に上り、高止まりの傾向です。

(ジビエ味わって:福井)
シカやイノシシを使ったジビエ料理を提供する福井県嶺南の店舗で「嶺南ジビエフェア2022」が1月15日から始まる。一部店舗で期間限定のジビエ料理を楽しめるほか、抽選で鹿肉ウインナーがもらえる。2月15日まで。ジビエ料理の普及や食肉加工施設の販路開拓などを目的に、嶺南6市町でつくる嶺南地域有害鳥獣対策協議会が昨年から行っている。対象は高浜町を除く嶺南5市町の14店舗。シカやイノシシ肉を使ったホットドッグが楽しめる「カフェMIROKU」(美浜町)やぼたん鍋が楽しめる「新佐」(おおい町)などがある。期間限定メニューを用意する店舗もあり、「きんた」(若狭町)では鹿肉のミンチカツを特別に提供するという。ジビエ料理の注文で配られるアンケートに答えると、抽選で50人に県産の鹿肉を使った「デリカわっかハム工房」(同町)のウインナーが当たる。

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(シカで陽性率36%、ヒトからコロナ拡大:アメリカ)
新型コロナウイルスがヒトから野生のシカに感染が広がっていることを米オハイオ州立大などのグループが確認した。シカで広がった新型コロナが再びヒトに感染する恐れもあり、グループは監視体制が急務だと訴える。オハイオ州では昨年12月半ば、1日の新規感染者数が7日間平均で1万2千人を超え、流行のピークを迎えていた。グループはそれから6~11週間後、州内9カ所で1~3回調査した。計360頭のシカの鼻から検体を採り、PCR検査を実施すると、全体の36%にあたる129頭で陽性が確認された。二つの検体から生きたウイルスを分離でき、感染力があるウイルスをシカが排出することも確かめた。さらに、6カ所の調査地で、14の検体からウイルスのゲノム(全遺伝情報)も得られた。遺伝情報に基づく系統で見ると、3種類。いずれもヒトで見つかっており、一つはオハイオ州で当時最も優勢な系統だった。また、調査地ごとに同一の系統のウイルスしか見つからなかった。このため、グループは、ヒトからウイルスが持ち込まれた後にシカからシカへの感染も起きていたとみている。新型コロナは、イヌやネコ、ゴリラなどヒト以外の動物に感染することが知られている。2020年春に欧州では、イタチ科のミンクの農場で大規模なクラスターが起きた。オランダのグループの調査で、ミンクで広がったウイルスがヒトに感染していたことを示すデータも得られている。一方、ヒトと距離を置いて生活する野生動物は情報が限られ、実態はわかっていない。今回とは別のグループが、米国4州で計152頭のシカの血液を調べ、4割で新型コロナの活動を抑える中和抗体が見つかったと報告している。中和抗体があると、新型コロナに過去に感染したことを示唆する。ただ、感染当時の状況はわからず、別の種類のコロナウイルスに対する中和抗体が誤って検出された可能性も考えられた。今回はPCR検査なので、その時点でシカがウイルスに感染していることを示す。グループによると、シカからヒトへの感染は確認されていない。だが、「新型コロナが米国の野生動物に対して感染能力を持ち、進化の新しい道を開く可能性がある」として、監視体制の確立が急務と訴える。新型コロナの起源を調べる世界保健機関(WHO)の調査団に参加した国立感染症研究所の前田健・獣医科学部長も「シカは感染が広がりやすい動物だということがはっきりした。ウイルスが動物の種を超えて広がれば、新たな変異が積み重なり、これまでにない性質になってヒトに戻ってくる恐れもある。ウイルスを広げないことが重要で、世界的にデータを取って監視を強めていく必要がある」と指摘する。一方、調査日が限られているにもかかわらず、陽性率が4割近い非常に高い値だった。「調査のタイミングがちょうどシカの感染拡大時期と重なったのか、シカでは感染が持続しやすいのか、現段階では判断できない」と話す。前田さんのグループも国内で昨冬、シカ296頭(5県)、ハクビシン64頭(2県)、タヌキ36頭(3県)を調べたが、このときには新型コロナの感染は確認されなかったという。

(ヒグマ人身事故12人、過去最多:北海道)
道内で今年度、ヒグマによる人身事故に遭った人は、1962年度の統計開始以降で最多の12人(死者4人、負傷者8人)に上ることが、道のまとめで分かった。道南でも、7月に福島町で女性(77)が死亡した。道は人を恐れないクマが多くなったとみて、農作業など外出時は音の鳴るものを携帯するなど、一層の防止策を講じるよう訴えている。道によると、これまでの年度別最多は64年度の8人(死者5人、負傷者3人)だったが、今年度は12人まで拡大。福島町では、女性が農作業中にクマに襲われ、命を落とした可能性が高い。今年度は、福島町の事故も含め農作業中の事故が相次いだのが特徴。8月にはオホーツク管内津別町で、女性(66)と別の女性(39)が農作業中にけがを負った。また、4月から11月まで長期間にわたり、クマの事故が発生しており、季節を問わず警戒を強める必要がある。全道のヒグマ個体数は、捕獲の容易な残雪期の駆除事業「春グマ駆除」を廃止した90年度に5200頭だったのに対し、2020年度には1万1700頭まで増加したと推定される。渡島総合振興局環境生活課は、過去の事例をみると、山菜採りや、登山などのレジャーでクマの事故に遭うケースが多かったが、農作業時のクマとの遭遇による人身被害が複数発生した点に着目。同課は「作業中にラジオを携帯したり、煙を出したりして人間の存在をアピールするとともに、くわやなたなど身を守るものを携帯するなど、対策を強化してほしい」とする。また、札幌市東区の住宅街では、ごみ出しなどで4人が襲われ重軽傷を負ったことから「市街地でも、クマの出没情報に十分注意し、人身事故の防止を図って」と呼び掛ける。道はホームページで18年度からヒグマ事故の概要、発生要因、対策を公表している。

(野生イノシシから豚熱を確認:愛知)
県は十一日、豊田市穂積町の道路脇で四日に見つかった死んだ野生イノシシが、豚熱(CSF)に感染していたと発表した。県内での感染確認は、昨年十二月十日に捕獲された野生イノシシ以来。

(新幹線、シカと衝突:山形)
9日午後6時ごろ、山形県米沢市のJR奥羽線峠―板谷間で、山形発東京行き山形新幹線がシカと衝突し、一時停車した。乗客約40人にけがはなかった。JR東日本山形支店によると、車両を点検し、32分遅れで運転を再開した。山形新幹線は在来線と同じ区間を走る「ミニ新幹線」。

(特急がシカと相次いで接触:滋賀)
3日午後7時25分ごろ、長浜市のJR湖西線永原―近江塩津間で、金沢行き特急サンダーバードがシカ1頭と接触した。さらに、約1時間半後には、大津市の湖西線北小松-近江高島間で大阪行き特急サンダーバードがシカ1頭と衝突した。いずれも乗客にけがはなかった。JR西日本によると、大阪行き特急の衝突時に、周囲の列車に緊急停止信号が発信され、東海道線の列車が安全確認のため一時停止したという。

(シカと電車が衝突:奈良)
1日午後6時10分ごろ、JR奈良線の長池駅(城陽市長池)-山城青谷駅(同市市辺)間で、奈良行き快速電車がシカと衝突し、約35分間、運転を見合わせた。上下線計4本が運休。7本が最大40分遅れ、約440人に影響した。

(列車がシカと接触し緊急停止:北海道)
29日午前6時10分ごろ、JR宗谷線兜沼(宗谷管内豊富町)―豊富(同)間を走行中の稚内発名寄行きの普通列車(1両編成)がシカと接触し、緊急停車した。乗客6人にけがはなかった。車両の安全を確認し、運行を再開。この列車は約1時間15分遅れで運行した。これとは別に、29日午前5時20分ごろ、JR宗谷線名寄運転所(名寄市)構内で、車両に不具合が見つかった。この影響で、音威子府発名寄行きなど普通列車2本が運休した。

(列車とイノシシ接触:広島)
4日午後7時20分ごろ、広島市西区山手町のJR山陽線横川―西広島間で、広島発岩国行き普通列車の運転士から、イノシシと接触したとJR西日本広島総合指令所に連絡があった。運転士や後続の列車の運転士が現場を確認。線路の間にイノシシの死体があった。運行には支障がなかったため、運転を再開した。上下5本が最大20分遅れ、横川―五日市間で上下2本が運休し、計約2500人に影響が出た。

(エゾシカの群れ、札幌中心部の河川敷に:北海道)
札幌市中心部を流れる豊平川の河川敷や中州で8日から12日にかけて、複数のエゾシカの姿が目撃されている。エゾシカの群れが札幌都心で確認されるのは珍しく、木々の間から警戒心のこもった視線を向けていた。札幌市によると、8日午後10時ごろ、豊平川の中州の北約400メートルの河川敷(同市中央区)で「20頭前後のシカの群れが豊平川を南に移動している」と北海道警を通じて市民から情報提供があった。約2時間後には中州の南約800メートルの河川敷で約20頭が目撃された。毎日新聞の取材では、11日夜に9頭、12日正午ごろに7頭を中州で確認。餌を探すように、地面に鼻先をうずめながらうろついていた。冬場のシカは木の枝や皮などを食べる。

(イノシシ掘り返し、公園に大規模被害:兵庫)
兵庫県丹波篠山市にある県立丹波並木道中央公園内の芝生が、至るところで野生のイノシシによって掘り返され、穴ぼこだらけになっている。同公園によると、「これまでになかった」ほどの大規模被害。昨年11月上旬から、約70ヘクタールの敷地(うち7割は森林)の中で、広場や歩道沿いなど約3ヘクタールが被害に遭った。家畜伝染病「豚熱」のまん延に伴い、捕獲数が減っていることも原因と考えられ、同公園は「お手上げ状態」とため息をつき、対策に頭を悩ませている。現地を確認した市農都整備課によると、成獣の集団による”犯行”である可能性が高く、県森林動物研究センター(同県丹波市青垣町)によると、餌となる土の中のミミズなどを狙い、芝生を掘って穴を開けていると考えられるいう。公園西側の「森の広場」周辺や、かやぶき民家付近で特に被害が目立ち、トラクターで耕した田んぼのような光景が広がっている。被害拡大を受け、公園スタッフは、山に向かって爆竹を鳴らしたり、忌避剤をまいたりし、できる限りの対策を講じてきたが、被害が収まることはなかった。現在も2日に1回は獣害柵の点検を欠かさず、被害を最小限に食い止めるべく、奮闘している。同公園は多くの家族連れや地元住民らの憩いの場。昨年度は約17万人が来園した。登山路もあるため、来園者の安全面を考慮し、わなの設置や猟師による駆除活動が容易にできない事情もある。開園した2007年当初から毎年のように被害は確認されていたが、いずれも小規模なものだったという。同公園の梶村徳全所長は「芝生広場でゆっくりしたいと訪れる方も多い。頭が痛いどころではない。来園者の方には申し訳ない」と苦慮している。被害を受け、同公園は県と市へ相談。県は3月ごろに芝の修復工事を行う予定で、新年度以降も現地調査を続け、効果的な対策を模索していくという。市は、地元猟師に対し、公園周辺地域で重点的に狩猟をするよう呼び掛けている。イノシシ肉を使った冬の名物「ぼたん鍋」で知られる同市。しかし今シーズンは、18年から拡大が続く豚熱のまん延防止のため、猟師が捕獲したイノシシは市場への流通が禁じられている。市農都整備課は、豚熱の影響を要因として挙げる。「今シーズンは他地域から訪れる猟師の数は例年の半分程度。一番、お金になるイノシシを獲っても、埋めるか、自家消費するしかない」と話す。市は独自で鳥獣被害対策実施隊員に限り、イノシシ1頭当たり1万3000円の報奨金を出している。また、「科学的根拠はないが」と前置きした上で、「豚熱にかかったイノシシが熱を冷ましたり、喉を潤わせたりしようと、水を求めて麓へ下りてきているのでは」という仮説も立てる。事実、市内では、豚熱感染が確認された死骸が、麓の水辺で多く発見されているという。

(「クマ担」記者が見た2021年:北海道)
2021年の北海道は、ヒグマに人が襲われる事故が相次ぎ、狩猟中の男性など4人が死亡、8人が重軽傷を負った。死傷者が12人に達したのは1962年度の統計開始以来、初めてのこと。札幌市東区の住宅街のど真ん中にクマが出没し、男女4人を次々に襲う「異常事態」が発生したほか、山の中ではなく、農作業中の人が被害に遭うケースも相次いだ。なぜクマによる被害は増えたのか。有効な再発防止策はあるのか。「クマ目線」で現場を歩いてきたクマ問題担当(クマ担)記者が、今年のクマ被害を振り返った。「東区にクマが出て大騒ぎになっている。すぐ出社して」。6月18日早朝、札幌本社報道センターからの電話でたたき起こされた記者は耳を疑った。「東区だって? 記憶にある限り、少なくともこの数十年、東区にクマが出たという話は聞いたことがない」。記者はちょうど前日、住民による草刈りや放棄された果樹を伐採する活動が進んだ結果、人里に出没するヒグマが減ったという記事を出稿したばかり。あまりのタイミングの悪さに「やられた」という思いを胸に、慌てて会社に向かった。最初にヒグマの目撃通報があったのは午前3時28分。東区北31東19の路上で、通行人から「クマが歩いている」と110番があった。クマはいったん南下し、北に戻りながらごみ捨てに出た高齢者や通勤中の会社員を次々に襲撃。陸上自衛隊丘珠駐屯地への侵入を防ごうと、駐屯地の正門を閉めようとした自衛隊員までなぎ倒した。クマは最初の目撃から約8時間後の午前11時16分、丘珠空港北東の茂みでハンターに駆除されたが、市内は一時騒然となった。クマは体長約1・6メートル、体重約160キロの雄で、5~6歳と推定された。札幌市東区の人口は約26万5千人で、東京の港区や渋谷区よりも多い。北部には特産のタマネギ畑が広がっているが、クマが最初に目撃されたのは札幌と小樽を結ぶ高速道路「札樽自動車道」のすぐ近くだ。確認すると、東区で人がクマに襲われたのは、1878年(明治11年)に当時の丘珠村(現在の東区丘珠町)などでクマが開拓民の夫婦らを襲い、死者3人、重傷者2人を出した「札幌丘珠事件」以来、143年ぶりのことだった。クマはいったい、どこからやって来たのか―。クマ出没から約2週間後の6月末、クマの足取りを自転車でたどってみることにした。時間は、最初の110番があった午前3時28分。現場に着くと、周囲はうっすらとは明るいが、人影はなく、車通りも少ない。近くのラーメン店では午前5時の開店に向けた準備が始まっていたが、もし物陰にクマが潜んでいたとしたら、すぐには気づけないだろうな、と思った。

(「湯の花」でカラスよけ開発:秋田)
高校生による環境保全活動のコンテスト「イオンエコワングランプリ」の普及・啓発部門で、大曲農業高校(秋田県大仙市)による仙北市・玉川温泉の湯の花を使ったカラスよけキット開発の取り組みが、内閣総理大臣賞を受賞した。大曲農高の取り組みは本年度、2年生4人が学校の課題研究の一環として行ったもの。同校の果樹園ではカラスによる食害が頻発しており、地域の農家や住民も同じ悩みを抱えているのではないかと研究を始めた。地域の一部農家がカラスよけに硫黄石を使っていることを知り、より低コストな代替品として玉川温泉の湯の花に着目。実証実験で効果が認められたため、牛乳パックをリサイクルして湯の花成分を含む再生紙を作製し、リンゴの葉っぱの形に似せたキットを作製した。

(カモシカに出会ったら…遭遇時のマニュアルを作成:福井)
国の特別天然記念物ニホンカモシカの人里での出没が福井県内で増えていることを受け、福井県は遭遇時の対応マニュアルを作成し、ホームページで公開した。「必要以上に接近せず、逃げ道をふさぐなど興奮させるような行為をしないでほしい」と呼び掛けている。カモシカはかつて密猟などで激減したが、保護施策の強化やヒノキなどの造林による餌環境の好転に伴い、徐々に個体数が回復し生息域も拡大。県内では2021年、越前町の県道トンネルでたびたび目撃された。県によると、カモシカが人を襲うことはめったになく、遭遇時は様子を見るのが原則。無理に捕まえようとしたり、近づいて驚かせるような行動をとったりすると、興奮し人に危害を及ぼす可能性があるという。市街地への出没や車両との衝突の危険性があるなど、緊急性が高い場合は最寄りの警察署に連絡する。農作物被害などトラブルの恐れのある場合は、市町の鳥獣害担当や文化財担当の部署に相談する。有害鳥獣捕獲用のわなにかかった場合は、逃がすのが原則。極度に興奮して人に襲いかかろうとするなど危険のある場合のみ、鳥獣保護管理法や文化財保護法に基づく許可を得て捕獲できるという。

(サル追い払う「モンキードッグ」デビュー間近:京都)
作物を荒らすサルを追い払うため訓練された犬「モンキードッグ」が京都府宇治田原町で養成されている。昨年12月、猟犬の子の5歳コタローと、元保護犬の4歳タケルの2頭が訓練を終え、デビューを控えている。

(自然守り命と向き合う:山口)
高齢化や担い手不足が叫ばれる狩猟の世界に今、女性たちが新しい風を呼び込んでいる。看護師から転身し、4年前に猟師の道に飛び込んだ下関市の菊川猟友会所属、木原由紀恵さん(43)もその一人。捕獲した有害獣の解体、加工品製造まで単身でこなし、ふるさと菊川町の豊かな自然の中で命と向き合う。

(サル目撃相次ぐ:福島)
28日午前7時55分ごろ、福島県白河市の中心市街地でニホンザルとみられるサル1匹が目撃された。市内では、今月だけで23件の目撃情報があり、市が警戒を呼び掛けている。市によると、現時点で人的被害は確認されていない。同日に目撃されたのは白河旭高と白河三小に近い住宅街で、近隣住民が白河署に通報した。市職員が現場に到着した際は民家の倉庫内にいたが、その後は姿が見えなくなったという。市は同署と約2時間にわたり付近を巡回し、近くの学校や公共施設などに注意喚起した。市農林整備課の担当者は「例年に比べ、出没数が大幅に増加している。見つけた場合は不用意に近づかず、すぐに市に連絡してほしい」と話した。

(「おはよう」カラスがあいさつ?:岡山)
倉敷市真備町市場の薗小学校で、鳴き声が「おはよう」と聞こえるカラスがいると、児童や近隣住民の間で話題になっている。同小によると、最初に目撃したのは、同小嘱託職員の小池康文さん(63)。12月15日午前8時前、教員や児童と一緒に、学校の裏山の木に止まって「おはよう」と鳴いているのを聞いたという。小池さんは同17日、運動場東側の電柱に止まっている様子を動画でも撮影。その動画では、なじみのある「カア、カア」とは異なる声で鳴く1羽のカラスが映っている。同小の高津智子校長は、12月下旬に発行した校内報で取り上げ、「子どもたちの元気の良いあいさつの声を聞き、覚えたのではないか」とつづった。その後の目撃談はないが、冬休みが明け、子どもたちの声が学校に響くようになると、再びあいさつに飛んで来るかも―。

(「地域おこし協力隊」特産品PRやシカ肉加工、販売に従事:兵庫)
兵庫県養父市の新たな「地域おこし協力隊」に、大阪府出身の松井黎於(れお)さん(25)と松山朋弘さん(22)が委嘱された。松井さんは建屋や三谷地区で特産品のプロモーションに、松山さんは大屋町で研修しながら、シカ肉加工や販売などに携わる。任期は1年だが、最長3年まで延長できる。松井さんは大阪電気通信大を卒業後、映像制作会社などで働いてきた。建屋や三谷地区を拠点に、朝倉サンショウのつくだ煮とピーマンみそ入りの田舎風巻きずし「ちょんまげ寿し」などのPR活動を行う。

(地元産の食材を活用し新たな観光振興策:鳥取)
鳥取県は、新型コロナウイルスで大きな打撃を受けた観光業界を支援しようと、旬の果物を使ったスイーツやジビエ料理など、地元産の食材を活用した、新たな観光振興策を検討していくことになりました。県は新年度・令和4年度の予算編成に向けて、各部局が連携して新しい観光振興策を検討するプロジェクトチームを去年11月に立ち上げていて、11日に2回目の会議が開かれました。会議では振興策のひとつとして、地元産の食材を活用した新しい事業を検討していることが報告されました。具体的には県内の洋菓子店などと協力して、旬のフルーツを使ったスイーツメニューを「とっとりスイーツ」として情報発信して、若い世代の呼び込みにつなげるほか、地元産のシカやイノシシなどの肉を使ったジビエ料理を、県産ワインとともに楽しめるモニターツアーを行って商品化を目指すということです。また、鳥取でとれる水産物を広く知ってもらうため人気投票を行ったり、ことし5年ぶりに開かれる全国の和牛の品評会に向けて、鳥取和牛のPRを強化したりすることも検討しているということです。プロジェクトチームのチーム長を務める亀井一賀副知事は「スイーツや酒といった食の部分で、観光客を取り組もうという案が出てきた。これから検討を重ねてブラッシュアップしていく」と話していました。

(マタギ弁当:岡山)
地元の食材を使った手づくり弁当で、まちおこしに取り組んでいる鏡野町のグループが、イノシシとシカの肉をたっぷり使った冬の新作弁当を完成させました。「マタギ弁当」と名付けられたこの弁当は、鏡野町の民宿や飲食店などでつくるグループが、地元で捕獲された野生のイノシシとシカの肉を使って作りました。12日は、地元の飲食店で猟師の弁当をイメージした2種類の新作が披露され、イノシシの肉のトウバンジャン焼きや、デミソースをかけたシカ肉の串カツなどが紹介されました。弁当を企画した「やま弁友の会」の丸山恵さんは「鏡野町特産のジビエをふんだんに使った弁当ができました。おいしくできましたのでぜひ食べてください」と話していました。弁当は、1月15日から2月28日まで、1個1200円で販売されます。

(ジビエやモクズガニでキャンプ飯:和歌山)
観光客が減少する冬場の集客強化や、冬の一大イベント創出を目指し、和歌山県の古座川町観光協会は8、9日、首都圏の旅行会社や食品会社の社員らを招き、キャンプ場を併設する道の駅「一枚岩monolith(モノリス)」(古座川町相瀬)で、1泊2日のキャンプイベントを開いた。参加者は地元食材をふんだんに使った「キャンプ飯」を調理して味わったり、テントサウナなどさまざまな体験をしたりして、古座川の魅力を堪能した。町観光協会は、コロナ禍で失われた観光需要の回復や地域経済の活性化に向け、関係者が連携して観光資源を磨き上げる実証事業を支援する観光庁の取り組みに選ばれている。今回のキャンプイベントもその一環で、全国的に「冬キャンプ」の人気が高まっていることに着目した。新型コロナウイルス感染対策として事前にPCR検査を受けた上で、11人が参加した。バーベキュー芸人として活躍している「たけだバーベキュー」さんら芸能人もゲストとして参加した。キャンプ飯では、地元の猟師が昔から食べているイノシシのあばら肉の鍋、アユの塩焼き、ジビエピザやソーセージ、鹿肉のステーキなどを味わった。たけだバーベキューさんは、古座川で取れたモクズガニや近隣の海で取れたマンボウの内臓、地元産のニンニクなどを材料にして、大きなバーベキューグリルで「パエリア」を調理。米や材料を炊くスープにはモクズガニのゆで汁を使った。JTB東京多摩支店営業担当課長の中澤俊彦さん(41)は「モクズガニのパエリアはこれまで食べたことがない味ですごくおいしかったし、猪鍋や他の料理も全ておいしかった。生産者の話をじかに聞いた上で食べられるという特別感は何物にも代え難い」と舌鼓を打っていた。イベントにはジビエ関連施設や道の駅の運営事業者、アユのおとり店、北海道大学和歌山研究林、革製品の職人など町内のさまざまな事業者が協力しており、参加者は鹿革のポーチや渓流釣りのための毛鉤(けばり)作り、木工クラフトなども体験した。町観光協会の須川陽介会長(37)は「参加者から頂いた意見を生かし、キャンプ飯やテントサウナを中心にした『冬キャンプ』を、新たな冬の観光の柱にしていきたい」と話していた。

(鴨ネギ鍋に行列50人:埼玉)
埼玉県の越谷名物「鴨ネギ鍋」など、お薦めグルメを販売するイベントが25日、越谷市立総合体育館前広場で行われた。鴨ネギ鍋ブースには正午の販売前から50人以上が並び、熱々の鍋に舌鼓を打った。越谷を本拠地とする男子プロバスケットボールクラブ「越谷アルファーズ」応援企画の一環で、試合日に合わせて実施。ケバブやクレープなどのキッチンカー5台のほか、越谷土産ブースも出店した。市内にある宮内庁鴨場の「鴨」と、江戸時代からの市特産「ネギ」にちなんで誕生した鴨ネギ鍋は、しょうゆベース。地元産野菜をふんだんに入れ、カモはスライス肉以外につくねなどを使用。2005年に越谷市商工会青年部(当時)が考案した。イベントでは商工会議所メンバーが限定300食(1杯300円)で販売。地元産野菜7~8種類を入れてじっくり煮込み、最後に軟らかいカモ肉を添えて完成。家族連れらは冬空の下、夢中で鍋を頬張っていた。近くの直売所で買い物帰りに立ち寄ったという越谷市瓦曽根の宮村ハツエさんは「具だくさんでカモ肉も柔らかく、だしも味わい深い。なかなか自宅では料理できないので、こういう機会に味わえるのはうれしいですね」と、心も温まった様子で話した。

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(イノシシに襲われ3人けが:福島)
30日、福島県檜枝岐村で野生のイノシシが住民など3人を襲う被害があった。南会津警察署と南会津消防によると、30日午前9時35分頃、檜枝岐村下ノ台で埼玉県から宿泊に来ていた50代の女性と住民の40代男性が野生のイノシシに襲われ、足など数カ所を噛まれた。また10分後には同じ地区で60代の住人の男性が足などを噛まれ、病院に運ばれた。南会津消防によると管内で野生のイノシシによる人的被害が出たのは今年初めてで、イノシシと出くわした時は、刺激せずゆっくりと後ずさりしながら逃げるよう注意を呼び掛けている。南会津警察署では現場付近をパトロールして警戒にあたった。

(親ザルが女性襲いかみつく:栃木)
日光市の住宅で女性が玄関先でゴミをまとめていたところ、すぐ近くに親子とみられるサル4匹がいることに気づいた。女性は親とみられるサル1匹に服の上から左肘を噛まれたがけがはなかった。サルは捕まっておらず、警察は注意を呼びかけている。

(丸森で豚熱確認、7000頭殺処分へ:宮城)
宮城県は25日、丸森町の養豚場で豚熱(CSF)の感染が確認されたと発表した。県は同日、特定家畜伝染病対策本部会議を県庁で開き、この養豚場と大崎市の取引先の農場の豚計約7000頭の殺処分を始めた。埋却、消毒といった一連の防疫措置は31日までに完了する見込み。農林水産省によると、岩手、山形など宮城以外の計10県の農場で飼育する豚のうち、丸森町の農場から移動したり、採取した精液で人工授精したりして感染の疑いがある豚計約900頭も殺処分する見通し。宮城県内の養豚場での感染確認は、今月12日の大河原町の農場に続き2例目。同町の農場と白石市の系列農場では計1万386頭を殺処分し、防疫措置を18日に終えた。県によると、丸森町の養豚場から24日、「生後約70日の子豚約60頭に、せきや下痢の症状がある」などと通報があった。検体の豚を対象とした仙台家畜保健衛生所の遺伝子検査と国の研究機関の精密検査を経て、25日に感染が確定した。殺処分するのは子豚や肥育豚、繁殖豚、種豚など。対象外の豚については経過観察を続ける。丸森町の養豚場の近くでは野生イノシシの死体が見つかり、豚熱の感染が確認されている。養豚場から半径10キロ圏内に2農場があるが、県内の養豚場では豚熱ワクチンの一斉接種が完了しており、県は豚の移動や出荷を制限しない方針。村井嘉浩知事は対策本部会議で「年末にかけて厳しい寒気が予想される。防疫措置を迅速に進めるのはもちろんだが、安全にも十分注意してほしい」と指示。報道各社の取材に「団体や市町村、生産者と一緒になって防疫対策を取る中で2例目となり大変残念。しっかりと殺処分を完了し、県民に安心してもらえるようにしたい」と話した。豚熱は豚やイノシシの病気で、ヒトには感染しない。県内では今年6月、七ケ宿町の野生イノシシから豚熱感染が初確認され、今月9日現在、野生イノシシの感染確認は81頭。

(「イノシシ見掛けない」県南で捕獲数激減:宮城)
宮城県南の養豚場で豚熱(CSF)が相次いで確認される中、県南地域で主な感染源となる野生イノシシの捕獲数が激減している。生息数の多い白石市では11月末時点で440頭と前年同期に比べ71%減った。猟友会や自治体の関係者は、これらの数字が伝染力と致死率の高いウイルスのまん延を裏付けているとみている。県猟友会刈田支部長を務める同市の安彦(あひこ)哲男さん(76)は、市内の福岡地区で箱わななどを使って10年以上イノシシを捕獲している。「7月ごろから少なくなり、9月になってほとんどいなくなった感じだ」と言う。安彦さんの相棒の高橋敏彦さん(69)は秋以降、畑や水路で死んでいる若いイノシシを10頭見た。「人目に付く場所で死んでいるのはこれまでなかった。山中だと普通は小動物などに食い尽くされるが、今年は数が多いせいか、そのまま腐敗している」と語る。支部福岡分会の捕獲頭数はグラフの通り。夏以降の落ち込みが顕著で、安彦さんらは「相当数が豚熱で死んだのでは」と推察する。県内では6月、白石市に隣接する七ケ宿町の野生イノシシから豚熱感染が初確認されており、捕獲数の変動と関連している可能性もある。県の23日現在のまとめで、野生イノシシ362頭を検査し、感染が確認されたのは81頭。うち80頭が県南2市6町に集中する。11月末現在の捕獲数は蔵王町238頭(前年同期比41%減)角田市620頭(同40%減)など。蔵王町農林観光課の担当者は「豚熱以外の影響は考えにくい」と話す。25日に養豚場で県内2例目の豚熱が確認された丸森町は817頭(同30%減)だった。一方、県内1例目が出た大河原町は前年同期と同じ82頭。町農政課の担当者は「県南でも例外的に横ばい。少し不可解」と話す。隣県の山形、福島でも捕獲数は減っている。10月末時点で山形約1000頭、福島約6700頭とそれぞれ3割減、6割減で推移。「原因は判然としないが猟友会はイノシシを見掛けなくなったと話している」(山形県みどり自然課)という。国の野生イノシシ豚熱対策検討会メンバーの小寺祐二宇都宮大准教授(野生動物管理学)は「2018年に国内に入った豚熱は中程度の毒性で、かかってもそれなりに生き残る」と捕獲数との関連に慎重な見方を示した上で「防疫は長期戦。ワクチン散布や捕獲を徹底するしかない」と話す。

(威嚇射撃でタンチョウ死なす、農家の男性を略式起訴:北海道)
北海道池田町で国の特別天然記念物タンチョウが空気銃で撃たれて死んだ事件で、帯広区検は28日、種の保存法違反などの罪で同町の農業の男性(63)を略式起訴した。道警などによると、男性は6月5日午前、所有する畑でタンチョウ1羽を空気銃で撃ったとされる。男性によると、畑に入ろうとしたタンチョウを威嚇するため空気銃を5発発砲。近くで1羽が倒れているのを見つけ、警察に連絡した。「長年タンチョウに畑を荒らされて困っており、釈然としない思いが募っていた」と話している。釧路湿原などに生息するタンチョウは絶滅の危機にあったが、国や自治体の保護活動が進み、近年は個体数が増え、人里に近づくケースが相次いでいる。

(冬眠中のクマ起こしちゃった、狩猟中に猟犬騒ぎ発砲:福井)
福井県鯖江市は12月26日、同市上河内町の山中で25日に狩猟を行っていた県外の70代男性が、冬眠中のクマ1頭を誤って起こしたと発表した。市は再び冬眠するまで周辺を徘徊(はいかい)する可能性があるとして、住民らに注意を呼び掛けている。市農林政策課によると、現場は上河内町の集落の北東約300メートル、標高約400メートルの山中。25日午後3時半ごろ、男性が猟犬が騒いでいる方を見ると、穴から出た体長約1メートルのクマがいた。自衛のため猟銃を発砲すると、クマは逃げたという。市は付近の住民に対し、外出時は鈴やラジオなどを持ち歩き、夜間は外出を控え、クマを目撃したり痕跡を見つけたりしたときは連絡するよう呼び掛けている。

(イノシシが住宅街に出没、署員ら6人負傷:広島)
23日午前11時20分頃、広島市安佐北区口田の住宅街にイノシシ2頭が現れ、捕獲しようとした広島県警安佐北署員や猟友会員ら6人がかまれたり、牙で突かれたりして負傷した。命に別条はないという。2頭は捕獲され、約5時間後、駆除された。2頭はいずれも雄で、体長1メートル以上の大型。1頭の体重は推定135キロという。市や同署は、住民に外出を控えるよう呼び掛け、近くの小学校では、児童が保護者に連れられて下校した。近くの主婦は「見たこともない大きさだった。子供が付近で遊んでいたらと思うと怖い」と話していた。市は「付近の山にはイノシシやクマが生息し、人里に出てくることがある」と注意を呼び掛けている。

(豚熱初確認、野生イノシシの死骸から:兵庫)
兵庫県は28日、洲本市で見つかった野生イノシシ1頭の死骸から、豚熱の感染を確認したと発表した。県内での確認は72頭目で、洲本市では初めて。県によると、26日、同市中津川組の山中で死んでいる1頭を地元の猟師の男性が発見し、市に通報。県がPCR検査を実施した。県は、野生イノシシの死骸を発見したら速やかに市に通報するよう呼び掛けている。

(野生イノシシの豚熱感染相次ぐ:兵庫)
兵庫県の淡路島内で、野生イノシシの豚熱(ぶたねつ)感染が相次いでいる。人には感染しないが、養豚場などで見つかった場合は全頭処分となるため畜産業に響く。県は各施設に衛生管理の徹底を呼び掛け、狩猟者にも消毒を促すなど、注意喚起を続ける。豚熱は、以前は豚コレラと呼ばれた家畜伝染病。ふんや病原体を含んだ水などから、豚・イノシシに広がる。国内では2018年9月に岐阜県で26年ぶりに確認された。その後、各地に広がり、県内では21年3月に丹波市で初めて判明。12月末までに県内で死骸・捕獲を合わせて、野生イノシシ73頭の感染が分かった。このうち、淡路島内では21年7月下旬に淡路市興隆寺で見つかったのが最初。その後も相次ぎ、同市内で15頭を確認した。さらに12月下旬になり、洲本市中津川組と南あわじ市灘でそれぞれ1頭ずつ確認した。島内へは本州からウイルスが入ったとみられるが、野生イノシシが海を渡ったのか、人や車に付着して運び込まれたのか、特定は難しいという。感染の広がりを受け、淡路県民局は12月下旬、「県重大家畜伝染病警戒淡路地方本部」を設置して対応を強化。県畜産課は「感染した豚などは流通しないが、仮に食べても人に影響はない。ワクチンを接種した豚などを食べても健康に影響はない」と説明した上で、「ウイルスは既に島内3市に入ってきている。関係者は危機感を持って対応してほしい」とする。県によると、観光向けなどを除いて島内には養豚場が5カ所ある。養豚場で飼育されている豚には全て、ワクチン接種で免疫を持たせるようにしている。ただ、ワクチンを接種しても感染の可能性は残る。また、生まれてからの日数が短くてワクチンを打てていない子豚は感染のリスクがあるといい、注意喚起を継続する。このほか、山に入る狩猟者にも、洗浄や消毒をして、ウイルスを運んで広げないよう啓発している。

(野生イノシシ8頭が豚熱感染:三重)
三重県は27日、3市町で捕獲された野生イノシシ8頭が豚熱に感染していたと発表した。県内で豚熱の感染が判明した野生イノシシは582頭となった。県によると、感染が判明したのは松阪市と鳥羽市で3頭ずつ、紀北町で2頭。いずれも地元の猟友会員が今月中旬に捕獲し、検査で陽性と判明した。

(野生イノシシが豚熱感染:神奈川)
神奈川県は4日、厚木市飯山の山林で捕獲された野生イノシシ1頭が豚熱(CSF)に感染していたと発表した。県内の感染確認は7例目。県は県内全ての養豚場に対し飼養豚の異常の有無を確認するとともに衛生管理の再徹底を指導する。県によると、1月22日、地元の猟友会メンバーが雄の成獣(体長133センチ、体重60キロ)を捕獲。県が遺伝子検査を実施したところ、2月4日に陽性が確認された。県内のこれまでの6例はいずれも相模原市緑区での確認だった。

(線路に置き石、犯人はシカ?:兵庫)
9日午前1時40分ごろ、兵庫県神河町のJR播但線長谷駅近くの線路上に大きな石があるのを係員が発見した。この影響で、寺前-和田山間で始発列車の運転を見合わせるなど上下2本を運休し、上下2本で最大16分の遅れが発生。午前6時36分に運転を再開した。JR西日本によると、石は約20センチ四方。線路に面した山にシカと思われる動物の足跡があったことや、線路に敷き詰めた砂利に動物が歩いたようなくぼみがあったことから、周辺に出没した動物が、線路沿いにある山の斜面を掘りおこした際に、石が転がり落ち、線路上で止まった可能性が高いとみている。

(猟銃訴訟で道側が控訴:北海道)
ヒグマ駆除の際、適切に発砲したのに、道公安委員会から違法に猟銃の所持許可を取り消されたとして、北海道猟友会砂川支部長の池上治男さん(72)=砂川市=が道を相手取り、処分の取り消しを求めた行政訴訟で、道側は公安委の処分を取り消した一審判決を不服とし、札幌高裁に控訴した。控訴は24日付。札幌地裁の一審判決は当時の発砲について、市の依頼による駆除だったことや、警察官から特に制止されなかったことから「不当だったとは言えない」とし、公安委による猟銃の所持許可取り消しは「社会通念上著しく妥当性を欠き違法」と判断していた。

(拳銃庫、実弾5発を紛失:奈良)
奈良県警は7日、奈良西署で管理していた実弾5発を紛失したと発表した。県警は持ち出しの可能性を含め、詳しい経緯を調べている。発表では、同署の拳銃庫で7日午前、拳銃の手入れをしていた署員が気づき、紛失が判明。実弾が記録上の総数よりも5発足りなかったという。拳銃庫は施錠されており、鍵は責任者が管理。庫内に入る際は立会人が必要で、1人では立ち入ることができない仕組みにしているという。実弾の数が全て確認できたのは、昨年2月18日の点検時が最後で、県警は出入りのあった関係者を対象として、聞き取り調査を進めている。現時点で被害は確認されていないという。県警施設装備課の松本幸三次席は「多大なご迷惑をおかけして申し訳ない。事実関係について、徹底して調査を行う」とした。

(ヒグマ人身事故防止へ管理計画見直し:北海道)
世界遺産の知床半島でヒグマとの人身事故をなくそうと管理計画が見直され、写真を撮るためヒグマに接近するなどの行為を見つけた場合、指導を強化することになりました。知床半島ではヒグマによる人身事故がたびたび起きていることから、環境省などはヒグマの第1期管理計画を策定し、平成29年度から今年度までの5年間、取り組みを進めてきました。しかし、人身事故をゼロにする目標や、市街地への出没件数を半減させる目標は達成できていないことが、先月釧路市で開かれた知床世界自然遺産地域科学委員会の会議で報告されました。こうした現状を踏まえて、来年度から5年間の第2期管理計画では取り組みを強化することになりました。世界遺産の区域内でヒグマを撮影するためむやみに接近したり、川沿いに釣った魚を放置したりする行為を「非常に悪質な行為」と位置づけ、確認された場合には、ただちにやめるよう指導を徹底するということです。会議の座長を務めた東京農工大学大学院の宇野裕之特任教授は「第1期の計画は目標をほとんど達成できず厳しい結果となった。第2期の計画ではより実現可能な短期的な目標を掲げて、ヒグマとの事故を減らしたい」と話していました。

(「ニホンザルが魚を捕食」撮影した写真発表:長野)
松本市の上高地に生息するニホンザルがイワナ類を食べて冬を乗り切っていることを発見した信州大(本部・松本市)などの研究チームは1日、上高地のニホンザルが魚を食べる様子を撮影した写真を英国の科学専門誌で発表した。

(ヒグマ捕殺最多930頭:北海道)
道内で2020年度、有害駆除や狩猟で捕殺したヒグマは計930頭となり、1962年の統計開始以来、最多となった。積雪期にクマ撃ちを奨励した「春グマ駆除」の影響で一時は絶滅が危ぶまれるまで数を減らしたが、90年度の廃止以降、生息数が回復。ここ数年は毎年700~900頭を捕殺しているが、数は減っておらず、頭数増加を裏付ける結果となった。農業被害額も2億4900万円で過去最多を更新した。道が鳥獣関係統計で発表した。内訳は、「有害駆除など」が過去最多の891頭(ハンターの後継者を育成するために捕獲した8頭を含む)で、「狩猟」が39頭。駆除が96%を占めており、畑など人里への出没が増えたことがうかがえる。これまでの最多は18年度の918頭で、駆除などが879頭、狩猟39頭だった。ヒグマによる農業被害額も前年度を3千万円近く上回る2億4900万円で、こちらも過去最多を更新。デントコーンやビートなどの作物被害に加え、釧路管内標茶、厚岸両町で放牧中の牛が襲われる家畜被害も相次いだ。クマの好むデントコーンの作付面積が、釧根管内で増えたことも被害額を押し上げた。道自然環境課は、農業被害が増えたことに伴い、畑周辺での駆除が増えたと指摘。「毎年千頭近いヒグマを捕殺しても数が減っておらず、それ以上に増えているのは間違いない」とみる。

(ヒグマが住宅街で人を次々襲い空港封鎖も:北海道)
北海道で今年度、ヒグマに人が襲われる被害が相次いでいる。死傷者12人、目撃2163件(11月末時点)といずれも過去最多で、札幌市の市街地でも住民ら4人が負傷。駆除を中止したことによる生息数の増加や、ドングリなどのエサ不足も影響しているとみられる。道は、1月末までとしている狩猟期間を春まで延長することも検討している。札幌市東区の住宅街で6月の早朝、40~80歳代の住民ら4人がヒグマに襲われた。オスのヒグマ(体長約1メートル60、体重158キロ)がごみ出しの男性らを次々と襲い、近くの陸上自衛隊丘珠駐屯地に侵入。滑走路を共有する札幌丘珠空港が封鎖され、計8便が欠航する事態となった。山がない東区での出没は、市が記録を取り始めた2004年以降で初めて。市は、繁殖期にメスを探し、山間部から河川や水路を伝ってきたとみている。近年は年間の死者が0~1人だが、今年度は4人が犠牲になった。津軽海峡に面する福島町では7月、農作業中の70歳代女性が襲われて亡くなった。畑はヒグマが生息する地域だが、これまで人を襲うことはなかった。現場を調査した道立総合研究機構の釣賀一二三研究主幹は「ヒグマはある程度、人と共存できていたとみられる。今回は女性とばったり遭遇し、本能的に襲った可能性がある」とみている。道は1965年度から、冬眠明けに捕殺する「春グマ駆除」を行ってきたが、頭数減少で90年度から中止。その結果、推定生息数は増え、2020年度は1万1700頭と90年度から倍増した。さらに今年は、川を 遡上そじょう するサケやカラフトマスが減り、ドングリも不作で深刻なエサ不足が発生。クマがエサを求めて人家に接近し、目撃が増えたとみられる。ヒグマの生態に詳しい酪農学園大の佐藤喜和教授は「生息数の増加などで人とクマとの接点が増え、新しいフェーズに入った。生活圏をできるだけ分け、森に入る際はクマがいることを前提として行動しないといけない」と指摘する。道は現在、狩猟期間(10月~翌年1月)を最長4月15日まで延長することを検討中だ。担当者は「人間への警戒心が薄い個体に恐怖心を持たせ、被害を減らしたい」としている。

(ヒグマ被害死傷者9人、過去最多の見通し:北海道)
北海道内で今年、ヒグマによる死傷者が確認中も含め9人に上り、被害者数は記録が残る1962年以降過去最多となる見通しだ。専門家はかつてヒグマの生息地域と人里を隔てていた緩衝地帯が消滅し「すぐ近くにいる」と警鐘を鳴らす。クマの目撃情報があるなど、出没が多いと感じる」。ヒグマに襲われたとみられる性別不明の遺体が山中で見つかった滝上町の職員は、こう語った。12日午後2時ごろ、同町滝ノ上原野の林道脇の草むらで、頭部から大量の血を流して倒れている遺体を車で通りかかった森林管理署の職員が見つけ、紋別署に通報した。

(ムクドリ対応に苦戦:神奈川)
平塚駅周辺で夕暮れ時に群れをなすムクドリ。鳴き声による騒音、ムクドリの留まる木の下が糞で白く汚れる等被害が出ている。平塚市は手を変えて対策を打つも、その効果は一時的であり、対応に試行錯誤している。バス利用客からは「鳴き声が大きいので、はじめは何の音かわからず驚いた。これだけ多いと被害としては糞害が一番心配。タクシー乗り場等人の行き交いが多い場所は特に対策してほしい」との声が寄せられた。市道路管理課によると、駅周辺のムクドリは春から秋にかけて南口に、秋から春にかけて北口に集まる傾向がある。現在、木の剪定と、街路樹へのネット張り、鳥の嫌う音を発する駆除装置で対策している。ムクドリは夜、周囲が明るく身を隠せる場所で眠る習性があるため、葉のある木には特に集まりやすい。今季も、ムクドリは駅北口でMNビルの屋上付近に集まり、バスロータリー周辺の木、特にターミナル中央のクスノキには大量に群がっている様子が見られた。同課は現状の対策について「木の剪定は毎年やっているが、葉を全て落とすのは景観的に良くない。ネットを張るのも木の成長を妨げないためと、台風で飛ばされる危険性を避けるため春には外す。こうした対策との両立が難しい」と話す。昨年、市は新たな対策として、ムクドリの天敵であるフクロウの模型を木に設置した。一時効果があったが、現在は当初の様子に戻ってしまった。「手を変えても慣れてしまい、いたちごっこになってしまう」と担当課は頭を悩ませる。同課は「今までもインターネットで駆除方法を調べ、実践できるものから試してきた。現状の対策を継続し、新しい方法を模索していきたい」と話した。

(猟友会、演習場内で有害鳥獣を捕獲:大分)
玖珠、九重両町の猟友会は、陸上自衛隊日出生台演習場内で有害鳥獣の捕獲をしている。

(シカとの衝突事故現場、一目で:北海道)
浦河署は同署管内の浦河、様似、えりもの各町でシカと車の衝突事故が増えていることから、ドライバーに注意をよびかける「鹿事故セーフティーマップ」を作成した。詳細な事故現場を地図に明記。既にコンビニエンスストアに配布したほか、同署でも配っている。同署によると、2016~19年に3町で発生したシカとの事故は計120件で、年間25~37件で推移。しかし20年は56件と急増、今年も今月22日時点で49件起きている。午後4~8時台に81件が集中していることも踏まえ、地図を作った。

(北へ広がるシカやイノシシ、絶滅したはずの県で被害)
全国でイノシシやシカなど野生動物の生息域が広がり、農作物の被害がやまない。人口減少や高齢化による耕作放棄地の拡大が要因とみられるが、従来いなかった東北や北陸に入り込んでいるのは、気候変動に伴う温暖化が一因との指摘もある。被害の一方で、野生動物を地域おこしに生かす試みもある。岩手県遠野市の山あいにある小友町の集落には、田んぼが一面に広がる。12月初め、足元にはあちこちにニホンジカのフンや足跡が残っていた。収穫直前に田んぼを荒らされた菊池陽佑さん(37)は「年々食害がひどくなっている」とため息をつく。肥料と農薬を使わない米作りを始めて11年になる。被害を防ごうと、これまでも電気柵、今年はネットを巡らせ、敷地にわなも仕掛けたが、被害はやまない。最近は近所でイノシシも現れた。ほとんどの世帯で米作りに励むが、「高齢化が進み、被害もひどくてやめてしまう人もいるのでは」と心配する。農林水産省によると、鳥獣による全国の農作物被害は2020年度で161億円に上る。そのうちシカとイノシシが計100億円と大半を占める。近年目立つのが、東北の被害だ。東北でのシカの被害は岩手県内がほとんどだが、明治~昭和初期に絶滅したと言われていた青森、秋田でも、この数年で被害が出ている。イノシシの生息域については、環境庁(現・環境省)が1978年の調査以来、宮城以南としてきた。だが山形県内では2002年1月に1頭が捕獲され、19年度末時点で8500頭が生息しているとみる。秋田では11年度、青森でも17年度に初めて確認された。環境省の推定によると、19年度末時点の全国のシカの生息数は約189万頭で、30年前の7・3倍(北海道を除く)。イノシシは約80万頭で同2・9倍になった。全国を5キロ四方のメッシュで区切って分布区域を調べると、40年間でシカが2・7倍、イノシシが1・9倍に広がったという。なぜシカやイノシシがこれだけ増えたのか。農水省は、過疎や高齢化で里山が荒れた▽耕作放棄地も増えた▽狩猟者の減少、などを挙げる。さらに環境省などが一因と考えるのが、温暖化だ。1962年以降の気象庁の観測では、温暖化で国内の積雪は減少傾向にある。野生動物が生息しやすい環境が広がり、越冬しやすくなったとみられるという。国立の森林総合研究所などは、今世紀末の気温が今より3度ほど上がると、現在はシカがほとんどいない多雪地域にも生息するようになり、2103年には国土の9割以上に生息域が広がると予測する。イノシシも同様だ。主任研究員の大橋春香さんは「生息していなかった地域では、対策が後手に回ってしまう懸念がある。早期発見で拡大を防ぐ必要がある」と話す。野生動物の被害は交通インフラにも及ぶ。JR東日本の東北3支社管内では20年度、列車との衝突事故が955件起きた。統計を公表する16年度以降で最も多く、1日2~3回は運行に支障を来している計算だ。JRは列車のスピーカーからシカの嫌がる音を発したり、ライオンのフンから抽出した忌避剤をまいたりといった対策を取るが、効果は限定的だという。かつて被害が少なかった東北や北陸では、シカやイノシシを地域振興に生かす試みも広がっている。害獣を「まちの財産」に――。岩手県大槌町はそんな合言葉で、昨年5月から地元企業と協力し、様々な事業を生み出している。なかでも人気なのが、ハンターの狩猟に同行する体験ツアーだ。山を一緒に探索し、シカを捕らえ、解体現場を見学する。ジビエ料理を楽しみながら、住民との交流を通して自然の豊かさや命の循環を体感してもらう。毎回、募集直後に定員に達するという。シカの角や革を使ったインテリア雑貨の開発や、ハンター育成にも取り組む。ツアーを率いるハンターの兼沢幸男さん(37)は「実際に来てもらうことに意味がある。若者があこがれるような持続可能な産業に育てたい」と意気込む。冬場の気候が厳しい能登半島も、かつてはほとんどイノシシが見られなかったが、近年被害が急増している。玄関口の石川県羽咋市はジビエ処理施設を整備し、ハンターの協力でイノシシ肉の販売を始めた。道の駅で買える「のとししカレー」などは、ふるさと納税の返礼品としても人気となり、特産品にすっかり定着した。今年は豚熱が広がった影響で、捕獲数が大きく減った。だが、「のとしし団」代表の加藤晋司さん(34)は「今も各地から引き合いはある。今後も増えるはず」と期待する。《日本獣医生命科学大の羽山伸一教授(野生動物学)の話》 野生動物の被害がここまで増えたのは、人間が自然や農地を適切に管理しない状態に置き続けたせいだ。だからといって、個体数の調整だけでは即効的な効果しか期待できず、対症療法でしかない。今後、温暖化を伴う気候変動によって、野生動物を介した感染症が流行しやすくなったり、冬の死亡率の低下で個体数が増えやすくなったりして、人の命や地域経済にも大きな影響を及ぼすだろう。問題を解決するには、すみ分けができるよう、野生動物と人間と土地利用を適切に管理する専門職の「野生動物管理官」を都道府県に置き、地域の自然環境に合わせた処方箋(せん)を書く必要がある。

(ムクドリの大群、長い闘い:愛知)
豊橋市に赴任して間もない十月上旬の夕方、豊橋駅東口で空を見上げながら歩いていると、うねるように旋回する巨大な黒い影を発見した。耳を澄ますと、「ギー、ギー、ギー」と大きな鳴き声も。正体はムクドリの大群だ。全国の駅や市街地などで確認され、一部の地域でフン害や鳴き声による騒音も問題化。市役所などに尋ねてみると、豊橋での歴史も意外に古いことが分かった。黒褐色の体と黄色のくちばしが特徴のムクドリ。豊橋駅周辺には日没から日の出にかけ、ねぐらとして集まる。一般的に外敵から身を守りやすいことから、通行人や住民の多い地区が狙われやすいとされる。だが、東三河野鳥同好会の稲田浩三さん(60)は「これほど多くの地方都市で駅前がねぐらになる理由は、ただ安全というだけではないのでは」と首をひねる。稲田さんによると、ムクドリの大群は一九八〇年代半ばから豊橋駅西口で目撃されていた。現在は主に七~十一月に東口に集まり、ピークは繁殖で増えた個体などが集まる八~九月ごろ。特にケヤキを好み、今年八~九月に観察した際には、約五千羽が集まっていたという。

(ニホンザル被害、県内拡大:福井)
ニホンザルによる農作物や生活環境への被害が、県内でも広がっている。県は二〇二二年四月からの第二期県第二種特定鳥獣管理計画策定に向けて、二〇年に実施した生息状況調査の結果をまとめ、昨年十二月の計画検討委員会で公開した。六年前の調査に比べ、ニホンザルの頭数は減っているものの、農作物などに被害を及ぼす群れは増えていることが分かった。調査結果によると、一四(平成二十六)年の調査では県内に約四千四百頭(六十三群)がいたが、二〇年は約三千八百頭(八十六群)に減った。ただ加害レベル1以上の群れは、一四年が四十三群だったのに対して二〇年は六十八群に増加。農作物に被害を与えるレベル2以上の群れは四十一群から六十四群に増えていた。県中山間農業・畜産課によると、ニホンザルの集落への出没は、まきや炭を利用しなくなったため生息できる森林が里まで拡大してきたことなどが原因とみられる。一四年から二〇年にかけて頭数が減少したのは、嶺南で年間五百~八百頭を捕獲、殺処分した影響とみられる。頭数が減っても加害群の増加はなぜ起きるのか。同課の山内良治参事は「捕獲により群れが分裂してしまった可能性があるが、十分な調査を行わず捕獲が先行してしまったため分析が難しい。今後は調査結果に基づいて計画的に捕獲していくことが課題」と話す。二二年から新たに策定される管理計画では、県内を北福井、丹南、嶺南の三つの管理ユニットに分け、計画的に追い払いや捕獲などを進める。これは全国的にも先進的な取り組みだ。山内参事は「集落ぐるみで柿などの放置された果樹を撤去し組織的な追い払いや電気柵を設置するなどの対策が大切」と力を込める。群れの数が多すぎると対策の効果は上がらないといい「計画的な捕獲により、三十頭程度の群れに個体数を管理するのが狙い」と話す。同課ではニホンザルの被害に困っている際は、まず各市町の担当者に相談することを勧めている。また一七年から設けている「サル出没情報共有システム」の活用を呼び掛ける。ニホンザルを見かけたときに書き込んだり、出没情報を受け取ったりすることができる。

(元産廃処分場の島に木登りタヌキ:大阪)
木の上で、赤いピラカンサの実をむしゃむしゃ食べているのは、タヌキ。しばらく一心不乱にほおばると満足したのか、くるりと枝の上で振り返り、慎重に地面に下りていったという。タヌキが現れたのは、堺市の海沿いにある「共生の森」だ。大阪府内の産業廃棄物を受け入れてきた埋め立て処分場だった土地で、埋め立て終了後の2004年以降、一部に植林を進めている。当初から森づくりに携わるNPO法人「共生の森」の奥田喜代子代表(76)によると、タヌキは植林を始めて5年ほどで現れるようになり、ここ10年ほどでためフン場の数がぐっと増えたという。同じ場所で排泄(はいせつ)を繰り返すタヌキのトイレだ。奥田さんは「フンに大量の実が入っていたので食べているのは分かっていたが、木に登って食べているのは初めて知った。元々何もないところだったけれど、動物や昆虫の種が増えてきてうれしいことです」と話した。タヌキはイヌ科の動物で、北海道にエゾタヌキ、本州~九州にホンドタヌキがすむ。環境省によると、雑木林や水辺近くの下生えのある場所を好んですむが、都会近くにもおり、野生動物の中では交通事故に遭うことも多い。果実のほか、トカゲなどの小動物も食べる雑食性で、木登りや水泳もできる。アライグマと見間違えられることがあるが、アライグマには鼻から額にかけて黒い線がある。

(全国で「カワウ」による漁業被害が深刻化、原因は住処奪う河川工事?)
ここ数年、急激に数を増やしている鳥であるカワウ。大きな経済的被害をもたらす「害鳥」としての側面が大きくなっています。皆さんは「迷惑な黒い鳥」といえばなにを想像されますでしょうか。多くの方はきっと、ゴミを漁り、人に危害を加えることもある「カラス」を想像されるのではないかと思います。しかし近年、人に対して最も大きな被害をもたらしている「黒い鳥」は、もしかするとカラスではないかもしれません。カラスに代わるその鳥の名は「カワウ」。体長80cmほどの水鳥で、ペリカンとやや近い種類です。身近な都市鳥でもあり、今や全国の水辺で見かけない日はないカワウですが、実はいま最も問題となっている鳥の一つでもあります。その問題とは、漁業被害です。カワウの特徴は、魚をたくさん食べること。潜水力と遊泳力が高く、1日に500gもの魚を捕まえて食べるといわれています。そのため、養殖されている魚を食べてしまったり、漁業価値の高い種が捕食された結果不漁になってしまうなどの被害が発生してしまっています。現在カワウは全国に10万羽ほども生息しており、その漁業被害は内水面のアユから海面の養殖魚まで多岐にわたっています。平成20年の漁業被害額は、アユを中心とした内水面漁業だけでも全国で103億円にも登っており、海面漁業も含めるとその被害はかなりの規模になってしまっています。まさに「漁業の大敵」なのです。カワウはかつては環境破壊により大きく数を減らしたのですが、近年は逆に非常に増えています。河川改修が進み、餌となる魚の隠れ場所がなくなった結果、カワウが餌を取りやすくなったからであるとも言われており、これも一つの環境破壊の形と言えるのかもしれません。カワウは高い移動能力を誇り、1日で直径数十~50kmほどの広い範囲を移動する事が可能です。そのため自治体ごとで漁業被害の対策を行うのは難しく、広域で連携した対策が必要となっています。例えば内水面漁業の盛んな京都、滋賀を含む関西広域連合では、カワウの個体数調査や効果的な対策の情報共有を図っています。カワウのねぐらを把握し、捕獲数を増やして個体数抑制につなげる狙いがあります。また環境省でも、カワウを鳥獣保護法に基づく狩猟鳥に指定しており、狩猟による繁殖抑制を狙っています。2014年には、カワウの個体数を2023年度までに半減させる目標を設定するなど、様々な方面から対策が進められているのです。

(市街地に出没のサル捕獲:新潟)
新潟県上越市内に昨年末から出没し、高田地区の市街地で目撃情報が相次いでいたサル1匹が8日午前8時ごろ、同市大手町4の榊(さかき)神社本殿内で捕獲された。上越市によると、サルは昨年末から出没し、6日には同市大町の大町小学校付近で目撃されていた。市職員が7日正午ごろ、サルが榊神社の本殿に逃げ込んだのを確認。わなを仕掛け、8日朝まで様子をみたものの、わなにはかからず、本殿入り口付近の大きな額の後ろに身を潜めていた。市は8日午前6時半ごろから捕獲作業を開始。麻酔を打ちサルが眠ったところを捕まえておりに入れた。市によると、サルは山から下りてきたとみられ、人や建物などへの被害は確認されていないという。榊神社宮司の渡部吉忠さん(89)によると、本殿内のご神体などにも被害はなかった。渡部さんは「正月参りに来る人のために戸を開けていたら、サルが入ってしまったようだ」と話した。市は今後、サルを山に返す予定だ。

(増え続ける「ワカケホンセイインコ」のヤバすぎる戦闘力:東京)
いま、東京の上空では異変が起こっている。長きにわたり「都市鳥界」のトップに君臨してきたカラスに迫る勢いで、ワカケホンセイインコが増え続けているというのだ。もともとはペットであったこのインコが、なぜ野生化しここまで増えてしまったのか、そしてこれ以上増え続けたらどんな被害が起こるのか…? 前編の「東京でいま「巨大インコ」と「カラス」のヤバすぎる「縄張り争い」が勃発している…!」の引き続き、専門家が警笛をならす。そもそも、東京のインコはなぜカラスと競合するまで増殖してしまったのか。帰化鳥類研究会代表の日野圭一氏が語る。「ワカケホンセイインコはインドやスリランカが原産の鳥で、'60年代後半から'70年代にかけてのペットブームに乗じて日本へと入ってきました。しかし、'69年にワカケホンセイインコを輸入、運送していた業者のコンテナが東京都内で壊れるという事故がありました。そこから、100羽近い数の個体が逃げ出してしまったのです」彼らは原産国に似た温暖な気候を好む一方、ヒマラヤなど標高の高い地域でも生きながらえることができる。平均寿命は20年以上と長生きするうえ、繁殖力も極めて強い。実際に、つがいでインコを購入した人たちが、次々と卵を産んで数を増やしていくのに嫌気がさし、飼育放棄して密かに放してしまった例も少なくないという。放された個体と逃げ出した群れが合流し、インコは着々と繁殖していく。東京都内には天敵のタカ、フクロウなど猛禽類が少ないことも好条件だった。緑多い東京工業大学のキャンパス(目黒区・大岡山)でインコは大規模な群れを作り、100羽から1500羽近くまで爆発的に数を増やしていった。そして、ここを拠点に東京都内各地へと生息域を広げたのだ。2000羽近い群れを形成してしまったことによる害も発生している。鳴き声のほか、糞の害も深刻なのだ。川崎市役所の職員が語る。「ねぐらとなっているイチョウの木の下は、常に糞で真っ白です。公園の敷地内にある、滑り台とブランコが一緒になっている遊具も糞まみれになって、『子供を遊ばせることができない』という苦情も寄せられています」公園を管理する中原区では、職員が対策に駆り出されている。中原区役所道路公園センターの職員は定期的なパトロールを行っており、遊具の清掃といった業務に追われている。「どうにかしてインコの群れを追い払えないかと、角材でイチョウの木の幹を叩くなどしているのですが、数羽が逃げるだけで、多くはとどまったままです。大繁殖したムクドリ駆除として、浜松市が採用しているLEDライト照射も実施したことがあるのですが、効果はありませんでした。完全に人を馬鹿にしているとしか思えません」(市役所職員)インコは国の定める鳥獣保護管理法により保護対象となっている。そのため捕殺して数を減らすことは不可能だ。「日本での被害報告はまだありませんが、海外では穀物、果実などの農作物を食い荒らしてしまうため、害鳥として指定されています。今後、原産国と同じように被害が出ることがないとは限りません。それに、感染症など衛生面で問題となる可能性もあります。鳥インフルエンザが流行した場合にはウイルスを媒介する可能性もありますし、オウム病などの病原菌を持っていることも考えられます」(京都大学野生動物研究センターの幸島司郎特任教授)インコとカラスが東京の空で生存を懸け、血で血を洗う闘いを始めた時、どのような惨状が繰り広げられるのか。ハトなどの鳥類も殺してしまうほど獰猛なことで知られるカラスが、インコを次々と駆逐していくと想像する方も多いだろう。幸島氏が語る。「私がかつて東京工業大学に赴任していた時、木にとまっているインコめがけてカラスが突進していき、インコを捕まえて食べてしまうというショッキングな場面に出くわしました。校舎の屋上に行くと、カラスにやられたインコの死骸や骨が散らばっているのを見たこともあります。しかし、インコの方もただ黙って食べられるわけではありません。群れに近づいてきたカラスを何十羽ものインコが追いかけまわし、逆に追い払う場面もありました」帰化鳥類研究会代表の日野圭一氏もインコとカラスが争う場面を目撃している。だが、その時は一転してインコが優勢だった。「ワカケホンセイインコは、カラスと戦う時、空中で体当たりをするんです。彼らは急上昇や急旋回といった飛び方ができる上、飛行中の最高速度は時速70kmに達します。飛行能力はカラスより上どころか、狩猟用のオオタカに匹敵するほどです。それに、嘴も鋭いため噛む力も強い。人間が噛まれたら肉が削がれてしまうほどです」インコは、自分たちのねぐらに侵入してくる外敵に対しては集団で立ち向かっていく。こうなった時、カラスは1羽や2羽では太刀打ちできないだろう。だが、もしカラスもまた集団となって襲ってきた場合、インコが勝つか、カラスが勝つかは予想がつかない。カラスが自分たちの繁栄のためには手段を選ばないところも、戦況を読みにくくさせている。「カラスは親のインコが餌を探しに行っている隙をついて、巣穴の中のヒナを狙って殺してしまいます。こうすることで相手の繁殖を邪魔し、効率よくダメージを与えるのです。これを繰り返されれば、インコもかないません」(日野氏)スピードに勝るインコと体格でリードするカラスは、それぞれ自分たちの得意とする戦い方で相手を追い込んでいく。東京を舞台にした争いは、都会のオアシスであるはずの森が、インコやカラス、そして巻き込まれた鳥類の死骸だらけの荒廃した空間に一変する危険性も秘めている。鳥類同士の最終戦争は、果たしてどちらが勝利を収めるのだろうか。

(アライグマ生息域広がる?:新潟)
特定外来生物に指定されているアライグマの繁殖が、新潟県内で広がっているのかもしれない。そんな懸念からNPO法人「新潟ワイルドライフリサーチ」(長岡市)は7月下旬~9月末に、誰でも参加できる方法で分布調査をした。すみかになりやすい神社や寺で爪痕などの痕跡を探し、アライグマの分布状況を調べるものだ。約2カ月で35カ所の情報が集まり、そのうち22カ所がアライグマとの関連が考えられ、中でも10カ所の痕跡は可能性が高いとされた。10カ所のうち5カ所は上越市内で、残りは妙高市2カ所、長岡市3カ所という結果だった。今年、上越市内で初めて4頭のアライグマが捕獲された。長岡市では、これまで目撃や捕獲の情報がほとんどなかったが、調査結果によって中越地方にもアライグマの生息が広がっている可能性が出てきた。新潟ワイルドライフリサーチ副会長を務める長岡技術科学大の山本麻希准教授は「各地で近しい痕跡を見たことがあった。あまり驚いていない」と語る。山本さんは繁殖期の来年3月以降、アライグマと思われる痕跡が見つかった場所にカメラやわなを置き、詳しい生息状況を調査する予定。調査は、県内に広く生息するハクビシンとの混同をどう避けるかという難しさもあるという。アライグマは、その生態系への影響の大きさから特定外来生物に指定され、国内での繁殖を防ぐ対象となっている。現時点で県内では深刻な被害は表面化しておらず、そうした状況で具体的な対策は困難、という声もあるが、対策を講じなければ生息数は10年間で50倍に増えるという試算もある。「在来種の被害が分かった時には手遅れ」と危惧する専門家もいる。ペットとして日本に持ち込まれ、繁殖するアライグマに罪はないが、生息数が膨らんでからでは対処も難しい。対策としては、狩猟免許の取得者だけでなく、一定の知識がある人の協力も得られる「防除実施計画」を作る方法もある。行政主体による早めの対処の必要性を感じさせられる、この夏の調査結果だった。アライグマは北米原産の哺乳類。1970年代以降にペットとして輸入が増えたが、飼いきれなかったり、逃げたりした個体が野生化。環境省の調査では、最近約10年で国内で生息域が約3倍に拡大した。雑食のため、農作物や日本固有の両生類や爬虫(はちゅう)類などを食べる。

(冬眠前?クマ目撃:山形)
23日午後11時45分ごろ、東根市野川でクマ1頭を目撃したと、車で通り掛かった朝日町の20代男性が110番通報した。村山署によると、クマは体長約80センチで道路を北から南に横断していった。現場は野川橋から約300メートル。クマの生態に詳しい東北芸術工科大の田口洋美教授は「まだ冬眠前だった可能性があるほか、冬眠の入りは少し動く場合もある」と分析している。

(”サル”居座る:新潟)
上越市高田の中心部で複数寄せられているサルの目撃情報。今朝は上越市立大手町小学校付近で目撃されました。サルは7日(金)午前の時点で、大手町周辺に居座っている可能性が高いとして、市がパトロールするとともに、猟友会が箱罠を設置し捕獲も試みています。市ではサルを見かけたら刺激せず、市や警察などに連絡するよう呼び掛けています。6日(木)、大町小学校付近で目撃されたサルは、7日(金)午前8時前、大手町周辺で目撃したと市民から市に通報がありました。その後、市の職員が付近をパトロールし状況を見守っています。周辺の大町小学校ではきょうから学校がはじまりました。大手町小学校は来週からです。市によりますと、周辺の住民には町内会長を通じて連絡しているということです。上越市環境保全課 古川陽一 主任「サルはこの周辺に居座っている状態で、捕獲も考えなければいけない」。サルの捕獲にむけて今朝、猟友会が周辺の2か所に箱罠を設置しました。市では箱罠に近寄らないよう呼び掛けています。上越市環境保全課 古川陽一 主任「(捕獲は)相当難しい。上越市はサルの捕獲経験がないので、実例の状況を聞きながら、罠以外にも方法があれば検討しなければいけない」。上越市内では先月、下新町の国道18号付近や大和4 丁目などでサル1 頭の目撃情報がありました。また4日には南本町などで、6日は大町や西城町などで目撃されています。いずれも同じ個体とみられています。市ではサルを見かけたときは目を合わせたり脅かしたりして刺激せず、エサを与えないよう注意を呼び掛けています。サルを見かけたら市の環境保全課や各区の総合事務所、警察まで連絡してください。

(渡良瀬遊水地でイノシシ確認:栃木)
栃木市藤岡町の渡良瀬遊水地で27日、イノシシが疾走している場面を下野写真協会会員の岡本邦彦さんが撮影した。岡本さんによると、イノシシは約1・2メートル、川で水浴びをした後、道路を横切って遊水地を疾走していったという。渡良瀬遊水地では近年、イノシシの出没が増えている。

(帯広市街地にシカ:北海道)
1日午後3時ごろ、帯広市西4南1の市川一馬さん(69)宅の庭に、推定年齢1歳の若いオスとみられるエゾシカ1頭が迷い込んだ。帯広署員やおびひろ動物園職員、市職員、猟友会員が出動し、同午後4時15分ごろに捕獲された。現場は若竹会館と六花亭西三条店の間にある住宅で、付近は一時騒然となった。けが人はいなかった。若竹会館の女性職員(65)によると、シカは当初、同会館前の国道38号沿いにいたのを発見され、その後、午後3時半ごろ、会館の横にある市川さん宅の庭に逃げ込んだという。

(イノシシ目撃:栃木)
3日午後3時25分ごろ、佐野市出流原町の河川敷で、通行人がイノシシを目撃した。佐野署によると、イノシシは1頭で体長約1.5メートル。関係機関と連携し、近隣住民に警戒を呼び掛けている。

(サル20匹目撃:富山)
7日午前10時20分ごろ、富山市中滝の富山地方鉄道上滝駅周辺で、パトロール中の富山南署員が20匹ほどのサルの群れを目撃した。サルは東へ移動し線路を横断して山へ逃げた。けが人はいなかった。同署は近くの小中学校や保育園に連絡し、防犯メールで注意を呼び掛けた。署員数人が周辺で警戒に当たった。

(鹿が急速に増え森林生態系に深刻な脅威、柵を設けるなど生物多様性に取り組むサントリー)
近年、鹿が急速に増え農林業への被害に留まらず森林生態系全体への脅威になりつつある。環境省の2019年度の発表によると 17年度のニホンジカ(本州以南)の推定個体数は約244万頭で14年度以降減少傾向にあるものの、繁殖力が高く、23年度の半減目標(約130万頭)を達成するには18年度の約1.77倍の捕獲率を確保する必要がある。鹿の増加原因について、昨年12月に開催された記者向け勉強会でサントリーホールディングスの山田健サステナビリティ推進部チーフスペシャリストは「オオカミと若い猟師という天敵の不在」と説明する。オオカミなど生態系ピラミッドの頂点に位置するアンブレラ種の役割は、ピラミッドの下位に位置する生き物の人口調整で、様々な森でこれが機能しなくなりつつあるという。天敵が消えて鹿だけ増える原因については、鹿が4つの胃を持つ反芻動物であることを挙げる。「最初の3つの胃は食道が変化したもので胃液を出さず発酵している。3つの胃で発酵させた発酵食品を4番目の胃で消毒して腸に送っている」と述べる。これにより、鹿はおいしい草を食べ尽くすと笹のようなケイ酸が多い硬い葉やトリカブトのような毒草まで食べるようになる。鹿の繁殖が進むにつれて、鹿が食い尽くす順番でその植物を糧や守りとしていた動物・微生物・土壌生物などが減少し生物多様性が失われ生態系ピラミッドが崩れていく。一方、生物多様性に富んだ森林は、水源涵養林としての高い機能を持ち洪水や土砂災害が起きにくくなる。サントリーでは、全国の工場の水源涵養エリアで地下水を育む力の大きい森を目指し03年から「天然水の森」と名付けた水源林保全活動を行っている。森の中で落ち葉や草の根など有機物が供給されると小動物や微生物が地下で土が団粒化しフカフカの手触りに変わっていくことから、地下水源涵養で最も重要なカギを健全な森林土壌の育成と位置付ける。フカフカな森林土壌には雨水が浸み込みやすく微生物的な水質浄化機能も高まる。この土壌を育む大きな役割を担うのが木や草の根で「多様性に満ちた森では様々な植物の根が万遍なく張り巡らされ、それらの根の先端にある細根が冬に枯れ春にまた新しく伸びる。この繰り返しで土はゆっくりと耕される」。植物の根は、積極的に栄養分を浸出させ植物を守る菌根菌やバクテリアを呼び寄せ、多様な植物が生えている森ほど土の中の微生物の多様性も高まる。微生物には、雨に含まれる汚れや動物の糞や死骸などから汚れを浄化してくれる役割がある。間伐や植樹など様々な森林整備を行う中で、生物多様性を脅かす鹿の増加に対しては、重要な植物が生えている場所や植樹・間伐エリアを鹿柵で囲み、柵の外では鹿が好まない植物で地表を被覆することで土砂流失や斜面崩壊を防いでいる。「サントリー天然水」の全国に4ヵ所ある水源の中では、「天然水の森 南アルプス」で鹿の増加が見受けられることから「影響が出ているまでには至っていないが、鹿問題をなんとか解決すべく外部との合同調査・研究をスタートした」。なおサントリーが現在整備している森林の面積は、全国15都府県21ヵ所で東京山手線内のほぼ2倍に相当する約1万2000haに及ぶ。これは「工場でくみあげている地下水の2倍を森で育むという理念を充分に満たしている」という。

(大槌ジビエソーシャルプロジェクト、第5回ジャパンSDGsアワード特別賞受賞:岩手)
株式会社ソーシャル・ネイチャー・ワークス(所在地:岩手県大槌町、代表:藤原 朋)が運営事務局を担う、市民・行政・民間企業が協働で取り組む地方創生ジビエ事業「大槌ジビエソーシャルプロジェクト」が、この度、第5回ジャパンSDGsアワードにおいて特別賞を受賞し、12月24日(金)に首相官邸にて行われた授賞式で、SDGs推進本部長である岸田総理から直々に表彰いただきましたことをご報告いたします。大槌ジビエソーシャルプロジェクトでは、市民・企業・行政が協働で取り組む地方創生事業として、岩手県初となるジビエ事業をソーシャルビジネスとして展開することで、自然との共生と課題解決を図っています。当プロジェクトは、害獣とされてきた山林資源であるニホンジカをまちの特産品として価値のある物に変え、関係人口・交流人口拡大へ繋げるまちの財産とするスローガンの元「大槌ジビエサイクル」を構築し協働で展開しています。当プロジェクトは、2021年2月に行われた復興庁主催の「新しい東北」復興ビジネスコンテストにおいては、優秀賞を受賞しています。鳥獣被害を地域の財産へと変えていくための挑戦。現地へ足を運べるジビエツアーや女性も増えてきているハンターの育成等、個々人だけでは決して実現できない課題解決を協働により好循環を生み出していくことを目指します。岩手県大槌町は、三陸海岸の栄養豊富な海水による養殖業が盛んな土地。その一方で山は害獣被害が多発。そこでハンターたちが立ち上がり「命に感謝」しながらいただくことを大事にし、その恵みを多くの人々に知ってもらうため会社を設立。全国の専門店と一般家庭にお届けしています。広葉樹の森で育った3歳以下の雄と4歳以下の雌のシカのみを選別し狩猟。素早い処理によって「旨み」・「柔らかさ」・「臭みのなさ」を実現した質の高い鹿肉は、家庭でも調理しやすく、美味しいジビエ料理をお召し上がりいただけます。鹿肉は脂質が少なく鉄分やタンパク質が多いため、健康思考の高い方やアスリートからも注目されています。食肉としての活用だけでなく、革小物などの雑貨としても加工。命を無駄にしません。

(鳥獣保護管理員を務め、自然保護功労者として表彰:神奈川)
「地元の自然環境を熟知し、野生鳥獣の生息調査や茅ヶ崎市全域での保護に貢献している」として11月、県から表彰を受けた。11年前から鳥獣保護管理員として活動。違法飼養の取り締まりのほか、事故防止のためにハンターの違法行為の見回り・指導に力を尽くしている。「住んだのは堤だけ」という生粋の地元人。農家の長男に生まれ、中学校卒業後は当時の県農業大学校に進学。畜産について学び、卒業後は農業や養豚を行った。しかし事業が厳しくなり、たまたま募集していた市消防署に20歳で入署し、救助隊に所属。「悲惨な現場をたくさん見てきた。自分自身が危険にさらされる場面もあった」と振り返る。しかし、使命感を胸に長年、人命救助の第一線で活動してきた。キャリア終盤には消防長も務めた。約50年前、父の影響で狩猟を始めた。現在は県猟友会副会長、茅ヶ崎支部長を務める。箱根、湯河原など県内のほか、北海道などで狩猟することも。有害鳥獣が現れたと聞けば、すぐさま駆けつけ対応する。ハンターの誤射や事故に心を痛めており「法律・マナー違反が悲惨な事故につながる。必ず決められたルールを守ってほしい」と話す。「狩猟についてもっと理解が広まってほしい」と訴える。「鹿が草や木の皮を食べて山の植物が減ると、大雨で土砂災害が起こるかもしれない。そうならないように、野生動物が多すぎれば減らし、少なくなれば守るのが私たちの役目。ハンターが日本の自然と人々の生活を守っていると思う」。今秋、猟犬として生後2カ月の屋久島犬を迎え入れた。デビューを控える相棒と共に、自然を守る使命にこれからも奔走する。

(野生の力“滑らない”お守り:群馬)
群馬県の長野原町猟友会長の大矢力さん(74)=同町大津=が、町内の中学2校の3年生40人全員にシカやイノシシの爪で制作したお守りを贈った。シカやイノシシは爪の効果で下り坂でも滑らないことに目を付け、受験生のために心を込めて自作した。捕獲した野生動物の爪の活用が進まない中、大矢さんは、ひづめの後方にある地に着かない小さな爪(蹴爪(けづめ))が、滑り止めの役割を果たしていることに着目した。ひづめと蹴爪をセットにしたお守りで、シカには「跳躍力で困難を飛び越えるぞ!」、イノシシには「猪突(ちょとつ)猛進!全力で困難を突破!」のメッセージを添え、受験生を激励している。大矢さんは「野生生物は生命力がある。動物の力を皆さんに少しでも伝え、みんなの希望がかなってほしい」と話している。受け取った長野原東中の腰原理良さん(15)は「進路に向けて勉強を頑張りたい」と感謝していた。

(命と向き合う19歳”女性猟師”:奈良)
奈良県・十津川村に暮らす中垣十秋さん、19歳。18歳で猟の免許を取り、1年が過ぎた。倉庫に保管しているのは鹿のしっぽ。この日は2カ月に1度の捕獲状況の報告日だ。大きさや捕獲場所を記入した書類と一緒に、しっぽを村役場に提出すると、1頭につき1万4000円の補助金が支給される。猟師・中垣十秋さん:主な収入が、これを出したら得られるって感じですね。提出を取りまとめている猟友会のベテラン猟師の元へ向かう。猟師・中垣十秋さん:おはようございます、9月と10月分です。ベテラン猟師:鹿3頭ですね、はい、分かりました。(Q.これくらい若い猟師はいる)最近は少ないですな、嬉しい限りやね。十秋さんの猟の対象は、鹿や猪などを初めとした有害鳥獣と呼ばれる動物たち。農作物などの被害を防ぐための狩猟だ。1年を通してみると、その被害額は全国で161億円ほど(2020年度)。人口3000人ほどの十津川村でも、約3500万円(2018年度)に上っている。地元の住民:ほっといたらやられる、全部。この地域はみんなそう、ほっといたら鹿とか猪とかにやられる。十秋さんが猟師になったきっかけは、猟師として働く父、英一さんの手伝いを始めたことだった。父 英一さん:家でやっていることが忙しいから、ちょっと手伝ってほしいなって。手伝ってもらっているうちに、だんだん上達してきてる。そんなきっかけで始めた猟師という仕事。ところがその後、十秋さんは向き合わなければならない重い現実を知ることになる。父の手伝いではじめた猟師 直面した現実父親の仕事を手伝い始めた高校2年生のころ、街に出て鹿肉の出張販売をしていた時だった。中垣十秋さん:すれ違う人に、『鹿なんで殺すの?かわいそう』とか『野蛮だ』とか『そんなことやって、恥ずかしいくないの』とか、そういう言葉をすごい言われて、メンタルがズタボロで帰ってきて。想像以上の偏見があることを知った瞬間だった。誰かがやらなくてはいけない厳しい世界に飛び込んだ十秋さん。感じるのは、自分たちの生活を守るために狩る”命の重み”だ。猟師・中垣十秋さん:ずっと殺す瞬間のことが頭によぎっている感じですね、さばいている時は。自分で殺すってなったら、手の感覚とかもずっと残ってて。命に感謝して、さばいています。十秋さんの猟は、罠にかかった鹿を捕まえるものだ。この日、十秋さんたちの元に、鹿がかかったと知り合いから連絡が。父の英一さんとともに、罠のある場所へ向かう。強い脚力をもつ鹿。一瞬たりとも油断できない状況の中、素早くテープで手足を縛って固定させせる。インタビューで見せてくれる笑顔は一切ない。 捕獲した鹿は生きたまま施設へと持ち帰る。 そして迎える、その瞬間。自分たちの手で、1頭の動物の命を終わらせる時間だ。19歳の女性が、命の重みと向き合う。十秋さんの母校・奈良県立十津川高校。ここに十秋さんが恩師と慕う男性がいる。阪口剛先生。生徒指導を担当するほか、陸上部の顧問として、やり投げ選手だった十秋さんと多くの時間を過ごした。出張販売の際に心ない言葉を浴びせられ、自信を失っていた十秋さんに、猟師の道を歩むきっかけをくれたのが阪口先生だった。阪口剛先生:25年ほど教師やってますけど、生きた鹿とかイノシシをさばくっていうのは聞いたことがなかったので、そこはしっかり自信を持ちなさいと。自分としては背中を押しただけなんですけど。中垣十秋さん:お前より勉強できるやつもいっぱいおるし、お前よりスポーツできるやつもいっぱいおるし。でもこうやって狩猟するのは全国探してもお前くらいしかおらんのやから、自分にしかできない仕事をしたらって言われたので。猟師やってて良いのかなって感じるようにはなりましたね。十秋さんは、もともと精肉店で働いていた父、英一さんから動物のさばき方を教わった。そんな自分だからこそ、変えたいことがある。 毎年、捕獲された有害鳥獣の約9割が、そのまま廃棄処分されているという現実だ。動物をさばいて食べられる状態にできる猟師が少ないことが大きな理由だ。この日、向かったのは十津川村にある老舗旅館。1年ほど前から十秋さんたちが作るジビエを使って、盛りだくさんの「ジビエ懐石」としてふるまっている。湖泉閣吉乃屋 館主 植村賢一さん:全然臭みもなくて、美味しいです。お客さんも柔らかくて美味しいと、初めて食べる人も喜んでくれてます。十秋さんは、ジビエの魅力を広げようとしている。そして十秋さんの次なる挑戦。それは、自分のジビエ料理専門店を開くことだ。「猟師への偏見をなくしたい」、そして「無駄になる」命を減らしたい。資金集めでは多くの賛同が寄せられている。猟師・中垣十秋さん:カウンターの店にしたのも、一人一人と会話できるような環境にしたいなって思って。そうすることで猟師に対する偏見だったり、有害鳥獣ってどんな被害があるのかなど、教育食育もできる飲食店にしたいなって思っています。19歳の猟師。命と向き合う生活は続く。

(高校生「狩りガール」に:岡山)
岡山県高梁市で高校生の「狩りガール(女性ハンター)」が誕生した。狩りガールになったのは大森麻琴さん(18)で、わな猟免許を取得した。

(2021年の「銃販売数」は1990万丁、約2万人が銃で死亡:アメリカ)
2021年にアメリカで販売された銃器の総数は2020年との比較で12.5%減少した模様だ。しかし、銃の所有に対する関心は依然として高い状態にある。FBIの身元調査データを使って銃の販売台数を推定するコンサルティング会社のSAAF (Small Arms Analytics and Forecasting)によると、2021年の銃の販売数は1990万丁で、2020年の記録の2280万丁には及ばなかったものの、2016年の1670万丁を大きく上回っていた。米国の銃業界は昨年、国民100人あたり約6丁の銃を販売したことになる。2021年の月ごとの販売台数では1月が最多で220万丁以上が販売されていた。また、12月は190万丁で、前年同期比で6.1%の減少だった。SAAFによると、2020年の銃の販売数は2019年を64%近くも上回る空前のレベルに達していた。この理由としては、政治を取り巻く状況とパンデミックの影響が考えられている。2020年初頭には、新型コロナウイルスによる混乱が人々の不安を煽り、全米を抗議活動が吹き荒れた夏にも銃の販売数は上昇していた。一方で、昨年は新型コロナウイルス関する懸念がやや薄れたことで、銃器への関心が弱まったと考えられる。しかし、全米射撃協会(National Shooting Sports Foundation)のデータでは、2021年上半期に約320万人の人々が初めて銃を購入しており、需要がまだ衰えていないことが示唆されている。パンデミックの間には、銃による死亡者数も急増していた。米国での銃による暴力事件を集計するサイトの「Gun Violence Archive」によると、2021年には2万726人が銃による殺人(自殺は除外している)や不慮の事故で亡くなっており、この数字は2020年(1万9486人)や2019年(1万5468人)を上回っていた。また、米国では昨年、4人以上の負傷者を出した銃の乱射事件が693件も発生し、その件数は2020年(611件)と2019年(417件)を上回っていた。銃規制を推進する人々は、銃販売の増加が人々のリスクを高めることを懸念している。しかし、銃規制に反対するグループは、ほとんどの銃犯罪は正式なルートで購入された銃ではなく、違法に入手された銃や中古の銃によって行われていると主張している。

(鳥獣被害予防アプリを開発:長崎)
長崎県五島市は、シカやイノシシなど鳥獣の出没情報を収集し、出没地に近づくと警告音で知らせる市民・観光客向けの鳥獣被害予防アプリ「けものおと」を開発した。情報通信技術(ICT)を活用した鳥獣被害対策事業の一環。来年1月から試験運用を始め、同4月から本格運用する予定。同市によると、同様のアプリ開発は国内で初めて。アプリは、住民の協力者がシカやイノシシを目撃した場所、日時などを投稿し、利用者がスマートフォンにダウンロードして各情報が蓄積されたリストや地図で状況を確認する仕組み。さらに「けもの予報」として、スマホの位置情報を基に、出没地周辺を通過すると警告音が鳴る機能を搭載。自動車で走行中に速度を落として未然に事故を防いだり、危険を避けて散歩したりすることができる。警告音が鳴る範囲は、出没地の半径300メートルから10キロまで6段階に設定が可能。警告音はシカの鳴き声など3種類から選ぶ。市広報誌の1月号に、アプリにアクセスできるQRコードを掲載している。市の地域おこし協力隊で有害鳥獣対策に取り組む野澤努さん(54)によると、市内では、地元住民の自家用車や観光客のレンタカーがシカなどと衝突する事故が報告されている。野澤さんは「獣害対策への関心を高めることにもつながる。五島モデルとして全国に広がれば、例えばヒグマの出没情報など応用も可能になる」と話した。市内の捕獲従事者向けの同様のアプリは先行して導入。捕獲情報を従事者同士で共有するなどしており、捕獲隊の一人近藤秀二さん(43)=木場町=は「効率が上がる」と語る。同市では10月、ICTを活用し、より広範囲の捕獲通知が届く機材「ほかパト」の運用も始めており、アプリと連動させてさらなる効率化を図る。

(動物園でイノシシを丸ごと餌にする取り組み)
〈シカ・イノシシ肉 愛称選定中止〉12月6日付読売新聞夕刊社会面の見出し、何のことかと思ったら、農水省がシカとイノシシのジビエ(野生獣肉食)利用を拡大しようと愛称を昨年募集したものの、選定を中止したそうな。同省に経緯を聞くと、「コロナ禍で落ち込んだジビエの需要回復のため愛称を募りました。しかし、応募を取りまとめた後で飲食店や流通業者の方々に伺うと“ジビエの名称が浸透している”等の意見があり、決定しかねていたのです。やがて消費も回復したため、作業継続を見合わせました」(鳥獣対策・農村環境課)。募集にあたって作られたサンプルは「天然のプロテイン」や「森のジューシーミート」で、まずはセンスが泣けてくる。同課は害獣駆除で捕えたシカやイノシシを捨てずにジビエで利用するよう、意味ある呼びかけをしているが、ならば以下の取り組みはどうだろう。動物園の中にはイノシシなど屠殺動物の肉を皮も骨もついたまま餌として与えるところがある。これを「屠体給餌(とたいきゅうじ)」といい、東京都の羽村市動物公園は先月、シマハイエナにこれを実施した。「最初は昨年2月、サーバルキャットに、次いで8月、アンデスコンドルに行いました。ハイエナで3例目。普段は見られない採食行動を観察でき、これを目当てに来園されるお客さまもいますね」(園担当者)。残酷でグロテスク? とんでもない。同園では「動物福祉」の観点から屠体給餌を始めたと話す。動物のストレスを減らすなど、より動物福祉に配慮した飼育が模索されるなか屠体給餌の促進に取り組む「ワイルドミートズー」の西村直人理事がその意義を説く。「動物福祉を考える際、動物本来の生活を参考にします。たとえば大型肉食獣なら、獲物を狩り、毛皮の内側の肉を骨から噛みちぎって食べる、というように野生下の動物は採食行動に多くの時間を費やしますが、現状、動物園の多くは小さく切った肉を与えるため食事は刺激や喜び、行動の多様さに乏しく数分で終わってしまいます。檻の中を動物が行ったり来たりし続ける“常同行動”は暇すぎるストレスから発現するといわれています。屠体給餌後は常同行動も改善されています」。屠体は感染症対策のため頭部と内臓を除去し、低温殺菌・凍結処理したものを解凍して与えている。「屠体給餌を続けると食べ方も上手になります。切り身しか与えていないと口だけ使って食べますが、前脚で餌を押さえて食いちぎるなど多様な動作ができるようになります」(同)。屠体給餌の際は動物の生態に関する解説イベントも併せて行われるそうだ。害獣減に飼育動物のストレス軽減、来園者への教育にも役立つといいこと尽くめ。政府も妙な愛称選定に時間を費やすくらいなら、こちらにわずかでも予算を割いてあげてはどうなのか。

(第4回獣がいフォーラム:兵庫)
地域に与える負の影響から「獣害」と表記されることが一般的ですが、本来、野生動物は豊かな里地里山の構成員であり地域の魅力の一つです。また、人口減少・高齢化社会が迫る現在、確実な手法で「害」を軽減するとともに、地域を活性化していく新たな対策が必要です。このフォーラムでは、参加者と共に、魅力ある地域を守るために、被害を受ける当事者だけでなく地域内外の多様な関係者が協力できる仕組みをつくり、野生動物を地域にとってプラスの存在に変えていく対策(獣がい対策)を考えます。

(鳥獣被害対策カレンダー制作:長野)
農作物を食い荒らし、時に人に害を与える動物への対応策を呼びかけるため、須坂市や関係団体で構成する協議会が初めて「鳥獣被害対策カレンダー2022」を作った。いつごろ出没したのかの情報や、住民自身で注意すべきことなどを紹介。市は「関心をもってもらうことで対策につながれば」と期待している。A1判サイズで、市有害鳥獣駆除対策協議会(事務局は市農林課)が1千枚を作製。800枚は協議会関係者に、200枚は希望する市民向けに用意した。クマやイノシシ、シカ、サル、ハクビシンなど20年に目撃・捕獲情報があった日にちに、それぞれの動物のマークをつけた。月ごとには、動物の生態や、被害を減らす上での対策などを取り上げている。1月は「エサ場をなくす!」として、畑に放置された果実や生ゴミがエサとなり、越冬を助けて個体数の増加を招くと指摘する。春先でエサが少ない3月は「捕獲に最適な時期です!」。ハクビシンなど小動物は、狩猟免許がなくても市への申請で捕獲が可能と説明。電気柵やロケット花火を用いたサルの追い払いの効果に触れ、空き家や荒れた林などが動物の絶好の隠れ家になっているとして、こうした場所をなくす意義を強調している。市の担当者は「カレンダーを通じて、身近な問題ということを知ってほしい」と話している。

(シカ肉NGの慎重派、最近なぜだか積極的:愛知)
放飼場に置かれた野生ジカのモモ肉は約6キロ。骨ごと、ひづめも毛皮も残っている。飼育室から放たれた「ネコ科の猛獣」は、さっそく近付き、臭いをかいでなめ回した。それから、落ち着ける場所に運び、1時間余りかけてゆっくりと毛皮ごと食べていった。愛知県豊橋市の豊橋総合動植物公園(のんほいパーク)が、昨年12月から日曜日に公開を始めた屠体(とたい)給餌(きゅうじ)。バリバリ――。骨をかみ砕く音を聞きながら、間近に見た入園者から「すごいね」「迫力あるね」と声が上がった。屠体給餌とは、シカやイノシシなど駆除された「有害鳥獣」を切り分け、低温殺菌した後に、飼育されている肉食動物に与える取り組みだ。駆除した動物を有効利用すること、飼育動物の環境を少しでも野生に近づけることを目的に、近年、国内外の動物園で採り入れられている。のんほいパークでは、2年前、試験的に九州から取り寄せたシカ肉を与えたことがあった。しかし、運搬コストなどがかさみ、継続できなかった。昨秋、同県東栄町に処理施設ができ、東三河地方で駆除されたシカが持ち込まれるようになった。ジビエとして流通する肉のほかに、一部が屠体給餌用に提供されるルートができた。同園には、ネコ科最大といわれるアムールトラがいる。雌の17歳「マリン」。迫力ある姿でシカ肉に食いついただろうと想像するが……。

(鹿による林業被害低減のため狩猟体験イベント開催:奈良)
ジビエ事業「かりつなぎ」サービスとは?今まで狩猟になじみの薄かった方に狩猟を体験してもらい、これをきっかけに狩猟を始めたい方と獣害に悩む林業家・農家とを将来的につなぐことを目指したサービスです。当面は交付金を活用して実証実験を行い、狩猟体験イベント2回を開催する予定です(実証期間は2021年11月8日~2022年3月11日) 。来年度以降の本格的なサービス運用に向けた検討を行ってまいります。貴重な「命」をいただき、私たちが生かされていることを、再認識できること。イベントでは安全性などに配慮し、箱罠・くくり罠でのニホンジカなどの狩猟を参加者に体験してもらいします。本事業は、林野庁事業・株式会社Sprero主催『SUSTAINABLE FOREST ACTION2021(SFA2021)』にて入賞した事業アイデアです。実証実験については一般社団法人 社会実装推進センターよりサポートを頂いています。

(ドローンも活用、デジタルで目指す野生動物との「共存」:新潟)
野生動物による農作物などへの被害が深刻化するなか、デジタル技術を駆使して数をコントロールするなど、動物との「共存」を模索する動きが出ている。猟師の長年の経験に裏打ちされたノウハウとの融合で、新たな駆除の担い手を育成する試みも始まっている。長岡市東中野俣の山あいにある田んぼのあぜ道から1機のドローンが飛び立った。市消防職員が操るリモコン画面に、300メートルほど先の田んぼを上空から赤外線撮影した映像が映し出された。赤や紫の背景に白い複数の点が動く。「この白い点がそう。1、2、3……。19頭ですね」。市環境政策課の担当者が指さしたのは野生のニホンザル。この地域で四つあるとされる群れの一つだ。多い群れでは60頭を超す。農作物への被害が毎年確認されている。長岡市の2020年度のニホンザルによる被害は約311万円に上り、コメや野菜、果物など様々な農作物に及ぶ。家庭菜園など自ら消費する農作物への被害を含めると、さらに被害は膨らむと見込まれる。市鳥獣被害対策課の担当者は「食べ物を一口かじり、捨ててしまう。精神的にもやられてしまう」と頭を悩ませる。意欲を失った農家が耕作をやめ、サルが人里に近づきやすくなり、さらに被害が拡大する。そんな悪循環が懸念される。被害拡大を止めるには群れの頭数を正確に把握し、数を管理することが必要だ。手当たり次第駆除すれば、生態系のバランスが崩れ、新たなサルの群れが別の地域から流入する。生態系に影響を与えない範囲で被害を抑えつつ、人間との「共存」を図る。一般的には、一つの群れで40~50頭ほどがその目安とされる。これまでは、わなで捕まえたサルに首輪型発信器を取り付け、信号を頼りに道路などに出たところを目視で数えていた。だが、ばらつきが出たり、物陰に隠れたサルを見逃したりすることもあり、正確な数の把握が難しかった。そこで、市が20年から始めたのがドローンを使った頭数把握だ。上空から広範囲にわたって赤外線撮影することで、葉の茂った木々の下にいるような場合を除けば、群れの全体像を映像に収めることができる。目視に比べ、より正確な数を把握できるようになった。頭数の多い群れの数を減らすのか、サルが人里に近づかないようにやぶを刈るのか。対策の優先順位を決めやすくなったという。市の担当者は「絶滅ではなく共存が目的。適切な数で管理したい」と話す。猟師の高齢化も課題だ。県内の狩猟免許所持者延べ4629人の6割は60歳以上(2020年度)。県はベテラン猟師の狩りでの動きをデータ化して、若手育成に役立てる試みを始めた。長岡技術科学大学と新潟県農業共済組合に委託し、猟師にGPSを携行してもらい、その動きを解析し、ノウハウとして可視化を試みる実証実験。解析するのは、猟師が集団で、イノシシなどの野生動物を狙撃する「射手」の前に追い立てて捕らえる「巻き狩り」で、「勢子(せこ)」と呼ばれる誘導役をする猟師の動きだ。雪が降る季節は、わなを仕掛けられないため、冬場の巻き狩りは通年のイノシシ駆除には欠かせない。夏と違い、積雪でイノシシの動きが鈍くなったり、足跡が見つけやすくなったりする利点もある。だが、猟師の高齢化により、巻き狩りの技術は失われつつある。新潟県猟友会長岡支部の桑原一郎さん(73)が巻き狩りを行うときのメンバーは「70~73歳が中心」で高齢化が進んでいるという。体力的な問題からも「デジタル技術を活用し、猟の効率化をはかり、猟師の負担を減らすことにつなげたい」と話す。昨年12月下旬、実証実験の予備調査が長岡市小国町であった。ドローンで、イノシシが生息する場所やその数、好んで滞在する場所などを把握するためだ。この日の調査では4カ所でイノシシの生息が確認された。山の斜面や、雑木林にある一本杉の根元に群れで眠っていたりしていた。今回の調査で判明した生息地点を記録し、GPSを装着した猟師による巻き狩りに活用する。ただ、調査には猟師の長年の経験と勘も生かされている。イノシシの目撃情報や地元猟友会の助言をもとにドローンを飛ばす場所を選んだ。長岡技術科学大学とともに調査を行う県農業共済組合中越支所(長岡市)の服部政宏・損害防止係長は「発信器の付いたニホンザルと違い、イノシシの生息地は、実際に山に入って足跡を探さなければ分からない」と話す。県の担当者は「対策方法がまだない中で、イノシシの被害が深刻化している県内の実情に対応するため、伝統的な巻き狩りの技術を生かしながら若手育成にもつなげたい。イノシシを一網打尽にできるポテンシャルがある」と話す。県は実証実験を2月末までに行い、データ化を試みる。野生動物による被害と猟師の高齢化 20年度に県内で確認された野生動物による農作物への被害は約3・2億円(前年度比約1・3倍)。特にイノシシによる被害は約1億2500万円(同2・4倍)で、捕獲頭数は20年度は4689頭(速報値)で直近10年で最多となった。狩猟免許所持者に占める60歳以上の割合は、最も高い71%だった13年度以降は若返りつつあり、20年度は60%だった。21年度に免許を取得した人は567人(速報値)で、1980年以降で過去最高となった。対処の必要性の高まりが一因とみられる。ただ、免許を取得しても、野生動物の痕跡を見つけ、山の地形を熟知するなど経験が必要となることから、即戦力としては期待できない。県や市町村は捕獲の担い手確保のため、免許取得にかかる費用の補助や、免許取得5年以内程度の人に巻き狩りの方法を教えるといった支援をしている。

(LPWA通信ネットワークを用いた有害鳥獣捕獲検知システムの実証実験:宮城)
仙台市は、民間企業等のノウハウや技術を市民サービスの向上や行政課題・地域課題の解決につなげる連携窓口「クロス・センダイ・ラボ」を開設している。仙台高等専門学校からクロス・センダイ・ラボへの提案を受け、イノシシなどの有害鳥獣対策にかかる住民の負担軽減を図るため、省電力無線技術LPWA※通信ネットワークを用いた有害鳥獣捕獲検知システムの実証実験を12月13日から開始した。

(オンラインシンポジウム「野生生物保全の30年」)
有志の研究会として野生生物保全論研究会が始まったのは1990年。バブル景気のさなか日本に多くの野生生物製品が輸入され、「生物多様性」や「持続可能な開発」などの言葉が広がり始めた頃です。それから30年、これまでに何が起こり、野生生物保全のためにこれからどうすべきなのでしょうか。シンポジウムでは多方面から野生生物保全の30年を振り返り、未来を展望します。

(寅形の鳥獣撃退バルーン:兵庫)
兵庫県内で、今年の干支(えと)である寅(とら)の形をした鳥獣対策グッズが活躍している。商品名は「鳥獣撃退タイガー」。農業用資材を製造・販売する同県三木市の「龍宝丸刃物工房」が開発した。塩化ビニール製のバルーンで、高さ50センチ、全長90センチの大きさ。2005年に発売し、年間約2万5000個を売り上げる。田畑に立てた支柱にひもでつるして使うと、風に揺れる不規則な動きと虎の鋭い眼光で、鳥獣を追い払う。水田や養魚場などに設置した同市の神行武彦さん(62)は「アオサギが来なくなった」と効果を実感する。同社の高芝伊知郎代表は「歩いているようなポーズで、リアルさを追求した。自立もできる」と話す。JAの資材店やホームセンターなどで販売している。

(あこがれのハンター:高知)
太平洋を望む龍馬像のイメージそのままに海のイメージが強い高知ですが、住んでみると山々に抱かれた土地だと実感します。平野は少なく、車で走ると、幾多の山と川に行く手を阻まれます。その里山にはたくさんの動物がすんでいます。数年越しで望んでいた取材の機会が訪れました。「下に何かおる。向こうに犬つけるき。ここにおって」。前を歩くハンター歴50年の五百蔵邦秀(いおろいくにひで)さん(70)が振り返り、静かな声で指示しました。ともに歩き始めて1時間余り。猟犬のビーグルが周囲をかぎまわり、首に付けた鈴の音が響きます。昨年12月中旬、香美市内の山中。青空が広がり、木々には穏やかな光が当たります。香北地区のベテランハンターと、県猟友会の青年部が開いた広域捕獲体験に同行しました。午前7時半、アンパンマンミュージアム近くの駐車場に集合。到着すると、オレンジ色のベストを着た一団がいます。20人ほどでしょうか。2020年5月に発足した猟友会青年部が、地元の香北有害鳥獣駆除班から「巻き狩り」を学ぶ機会です。戸田英作・青年部長があいさつに立ちます。「(巻き狩りには)去年初めて参加させていただいた。猟のルールはいくつもあるが、地元には地元のルールがある。今日は肌でそれを感じたい」。

(年間200人が事故死し、車被害は1億円に:アメリカ)
今日もまた道端からこちらを見つめている可愛い動物と目が合った。出退勤時、ゴルフ場との往復時、買い物に車で出かける時、特に夕方頻繁に会う。相手は「シカ」だ。米国は野生のシカがそこら中にいる。過去の動物保護活動も奏功し、数が増え続けている。ワシントンDC地区も例外でなく、「シカ密度」が全米でも有数の高さであるロック・クリーク公園がある。ゴルフ場に行けばほぼ毎回出くわすし、自宅の周辺でも頻繁に見かける。2020年にトランプ前大統領が新型コロナウイルス感染で入院したワシントン郊外のウォルター・リード米軍医療センターの敷地ではシカの大群を見たことがある。シカの増殖はさまざまな問題を引き起こしている。木々の若芽や花を食べてしまうため、森林が若返れなかったり、鳥や昆虫の生態にも悪影響を及ぼしている。そして最大の問題は、車との衝突事故の増加だ。保険会社によると、全米で毎年約150万頭のシカが衝突事故で死んでいる。さらに約200人が命を落とし約2万人がけがをしている。事故は、繁殖期の10~12月、朝方および日没後が多いと言われているが、通年終日発生している。路肩から突然飛び出してくるため、よほど注意していないと避けられない。シカは平均100キログラムにもなるため、衝突の衝撃は大きい。車のダメージも大きい。筆者の知人が以前ゴルフ場に向かう途中、シカに接触してしまった。その時は、車は動いていたためゴルフ場に到着できたが、帰路エンジンがかからず結局レッカー移動せざるを得なかった。全損も珍しくなく、事故のコストは平均4300ドル(約47万円)を超えるらしい。保険会社によると全米で年間90億ドル(約1兆円)のコストになっている。

(ジビエ、認証食肉施設増を:広島)
イノシシやシカなど野生鳥獣を処理した食肉「ジビエ」の需要拡大には、衛生管理基準をクリアした食肉処理施設での「国産ジビエ認証」の取得と、学校給食での普及が欠かせない―。中国四国管区行政評価局(広島市中区)は、全国の評価局で初となるジビエの利用実態調査を中国地方5県で実施し、こんな提言をまとめた。普及の旗振り役である中国四国農政局(岡山市北区)へ通知し、改善を求めた。

(ジビエセンター「前沢友作応援基金」を活用:千葉)
館山市が整備を進めていたジビエ加工処理施設「館山ジビエセンター」(同市西長田)のオープニングセレモニーが23日、開かれた。房総半島で有害鳥獣による農作物被害が深刻さを増す中、捕獲したイノシシなどを加工処理して飲食店に販売する施設で、24日に開業する。実業家の前沢友作氏が2019年にふるさと納税した寄付金で設立した「前沢友作館山応援基金」20億円のうち1200万円を充てた。市が進めている「食のまちづくり」の一環で、センターでは捕獲者からイノシシなどを買い取って加工処理し、飲食店などに販売するほか、捕獲者自らが持ち込み、利用料を支払って加工する。

(ジビエセンター開業、35人がセレモニー:千葉)
獣害対策で館山市内で捕獲したイノシシを加工処理したり、飲食店向けに販売したりするため、館山市が整備を進めていた「館山ジビエセンター」(ジビエ加工処理施設)が24日、オープンした。23日には現地で関係者を集めたセレモニーがあり、ジビエ肉のカット式で開業を祝った。イノシシ肉などを館山産ジビエとしてブランド化を図り、有害鳥獣対策にもつなげようという市の取り組み。同市西長田の市の未利用施設を改修して整備。改修費は1200万円で、前澤友作さんがおととしふるさと納税で寄付した20億円の一部を活用している。同市の獣害対策の地域おこし協力隊を務めた、沖浩志さんが代表社員の合同会社「アルコ」が、指定管理者として運営する。施設では、捕獲したイノシシなどを買い取って、加工処理をして飲食店などに販売する他、捕獲者が持ち込んで加工処理をしたり、施設職員に処理を代行してもらえたりする。式典には、市有害対策協議会、安房猟友会、農協、商工会議所、観光協会などの関係者ら35人が出席した。冒頭あいさつした金丸謙一市長は「イノシシを館山ならではのご当地食材として有効活用し、食の魅力アップを図るとともに、有害鳥獣対策に尽力する捕獲者の負担軽減などを図るのが目的。官民連携でブランド化を図り、地域産業の振興につなげたい」と思いを語った。「新しい道を切り開く」という思い込めたジビエ肉カット式では、金丸市長と沖代表の2人がイノシシの枝肉にナイフを入れて、オープンを祝った。その後、施設内の見学などの他、煮込みやベーコンなどジビエ料理の試食も行われた。

(ジビエの受発注オンラインで:北海道)
勝管内音更町のベンチャー企業「Fant(ファント)」が、エゾシカなどを狩猟するハンターと、ジビエ(野生鳥獣肉)を求める全国の飲食店をオンラインで自動的に結ぶ受発注システムの開発に着手し、今年秋までに運用を始める。近年、野生動物による被害が全国で深刻化。安定した流通網を構築してジビエの魅力を発信し、消費拡大を目指す。ほしい肉の種類や価格、期日を飲食店が示し、手を挙げた全国のハンターが猟に出る仕組み。飲食店が払う代金からハンターは報酬、食肉処理施設は解体費用、ファントがシステム利用料をそれぞれ受け取る。

(食害もたらすニホンジカに「食」で対抗:宮城)
食べて減らそうニホンジカ-。農作物の食害に頭を悩ませる宮城県石巻市で、駆除したシカの缶詰「伊達の黄金鹿」が誕生した。市内のシカ肉加工販売会社と缶詰会社がコラボレーション。宮城県猟友会の会員が仕留めたシカを新鮮なうちに下処理し、ショウガを加えた大和煮に仕立てた。1個650円。販売する三浦信昭さん(79)は「命を無駄にせず、有害獣の駆除に参加できます」。野生の魅力をたっぷり詰め込んだ缶詰に関係者が懸ける思いは一つ。食うしかない。

(シカ「一頭まるごと活用」:兵庫)
全国各地で農林業に多くの被害を及ぼしているニホンジカ。農地に柵を設けたり、狩猟で頭数を削減するなど対策が練られている。一方で近年、人気が高まっているのが天然の野生鳥獣の食肉「ジビエ」だ。メリケンヘッドクォーターズ(神戸市)の入舩郁也社長は、10年以上前から猟師など供給者と消費者を結ぶ役割を担っている。もともとはアパレル関係の仕事をしていた入舩社長。ファッションブランドの設立などを手掛けていた。シカとのきっかけは趣味のアウトドアから。2000年代前半、山間部に通う中で農家などから「シカ害」について頻繁に耳にするようになった。入舩社長は社会課題解決に向けたソーシャルビジネスにも興味があった。増えすぎたシカを狩猟して減らす事業を継続していくためには、流通、消費の部分での変革が必要と見ていた。狩猟後、廃棄されることもあったシカ。「命を無駄にしたくない。有効活用できれば」とも考えた。まず目を付けたのは「皮」。軽くて丈夫、保湿性にも優れているところから、バッグなどに加工した。同時に出てくるのが「肉」。自身が経営しているレストランでスタッフらとともに研究を重ね、料理のアイデアを練った。そして13年、兵庫県産のシカ肉専門のレストラン「鹿鳴茶流入舩」を神戸元町にオープン。鹿肉料理専門のジビエ料理店としては全国でも先駆けの一つとなった。「シカ肉は低脂肪、低カロリー、鉄分などの栄養も豊富で健康的な食材。アスリート食にも適している」と入舩社長。煮込みもいいが、シンプルに焼いて食べるのがおいしい。「特に兵庫県産はうまみが強いと評判」という。現在は肉そのものの小売り販売も手掛け、好評を得ている。同時にシカ肉をはじめとした産業全体の普及、啓発にも力を入れる。16年4月「ひょうごニホンジカ推進ネットワーク」の会長に就任。イベントや同業者を招いてのシカ料理の教室を開催するなど、築き上げたノウハウを惜しげもなく伝えている。「全国各地のシェフや関係者が来て、シカ肉料理の可能性を感じてもらっている」と笑う。また、鹿骨を粉状に加工し活用した焼き物ブランド「ボガボガボーンブレンド」の製品開発、販売。動物園の肉食獣の飼料としても鹿骨を活用している。動物のストレス軽減を目的とした「環境エンリッチメント」にも協力するなど活用法は多岐にわたっている。兵庫県の資料では19年度のシカによる農林業への被害は約1億5400万円と、5年前から3割以上減少している。ジビエ人気もあり、事業全体で追い風が吹いているが、入舩社長は課題も見据える。一番は供給面で不安定な点だ。同県の狩猟期は11月中旬から3月中旬まで。禁猟期は許可を得た者しか取ることができず、肉も皮も量が大きく減少する。さらに狩猟したシカ肉の処理加工施設は山間部の小規模な所が多い。時期だけでなく、狩猟者によっても供給量が大きく上下するという。「今後、広めていくためにも通年での安定供給の仕組みが必要になってくる」と話す。レストランなどからの需要面でも求められる肉質が異なる。「和洋中のジャンルによっても、料理の仕方によっても、変わってくる」。多種の料理で大量に使用する洋食店もあれば、少量を揚げ物一品だけに使う和食店などさまざま。スタッフなどマンパワーが限られてる小規模な各加工場が対応するには手に余る。そこで同社では県内の加工施設と連携。十数の認定処理加工施設と連絡を取り合い、禁猟期でも肉や皮、骨の量を確保する仕組みを構築した。また、貯蔵施設を確保し、飲食店や消費者のニーズに合わせて、鹿肉各種部位やさまざまなコンディションを調整する取り組みも進めている。「消費者、供給者の結束点になりたい」と入舩社長。同時にそれは新しい食文化、衣料品の在り方への挑戦だ。「現在、衣料品の一部は障害者施設で生産している。日本に生息する野生鳥獣の利活用を推進し、エコでサスティナブル(持続可能)なブランドを世界に発信したい」と強く願う。

(猪肉鍋、獣害対策に取り組む地元農家の声とともに提供:和歌山)
和歌山県の世界遺産・熊野古道沿いにある一棟貸し宿「SEN.RETREAT TAKAHARA」(田辺市中辺路町高原)は12月21日、地元で獲れた猪肉を使った「オール和歌山にこだわった”猪肉しゃぶしゃぶ”プラン」の予約を開始した。熊野古道の参詣道「中辺路ルート」沿いの山間にある「SEN.RETREAT TAKAHARA」は、日常の自分と距離を置き、大自然の中でストレスをリセットし「リトリート体験」ができる無人運営の宿として10月8日に開業。「SEN.RETREAT」ブランドの宿は2022年末までに、中辺路ルート沿いに他3か所が順次開業を予定している。その第一弾となる「SEN.RETREATAKAHARA」では、地元の梅・みかん農家が悩まされてきた獣害を解決する一助となるよう、捕獲された猪をしゃぶしゃぶ鍋として提供するプランを導入。地元農家のメンバーが獣害対策のために立ち上げた株式会社日向屋の活動や尽力する人々の思いを綴った冊子を宿に配置すし、ジビエを味わうだけでなく、その背景まで宿泊客に理解してもらう取り組みを行う。

(ジビエカレー、うまさ届け:石川)
七尾市能登島須曽町でイノシシ料理を提供している「狩女(かりじょ)の里」のオーナー、山本善則さん(72)=同市八幡町=が、里山の恵みを結集させた「のと里山ジビエカレー」を開発した。イノシシや豚が感染する伝染病「豚熱(ぶたねつ)(CSF)」の拡大で製造を断られる苦境も乗り越え、2年以上前から温めていたレトルトカレーの商品化にこぎ着けた。「多くの人においしさを味わってほしい」と望む。山本さんは二〇一五年に狩猟免許を取得。同市の能登島や中島、田鶴浜地区など往復一時間圏内でイノシシ狩りをする。一六年にイノシシの処理施設を能登島に設け、一八年に施設隣に完全予約制でイノシシ料理を堪能できる専門店「狩女の里」をオープンした。自身が狩ったイノシシ肉は店で提供し始めたほか、県内の焼き鳥店やイタリア料理店などにも卸したが、さばききれず冷凍庫がいっぱいになる時期もあった。「もっと広めるにはレトルトカレー」と思い、カレールーの開発販売を行うケービーエフ(金沢市)と連携。一九年三月ごろに商品開発に着手した。数々のご当地カレーの開発に携わった同社だが、イノシシ肉を扱うのは初めて。東克也社長(53)は「伝染病が拡大した影響で、どの工場も衛生面から製造に慎重だった」と振り返る。製造を依頼した最初の一社には豚熱を理由に断られ、二社目は思うような仕上がりにならず断念。ようやく三社目で、工場に入れる前に加熱殺菌することを条件に請け負ってくれた。イノシシ肉は塊として存在感を際立たせ、山本さんが能登島で栽培する原木シイタケも入れうま味をぎゅっと凝縮させた。山本さんは「イノシシの臭みもなく、食べた人からおいしいと好評だ」と手応え。東社長は「シイタケも意外と風味がカレーにマッチする。お客さんの反応を見て必要なところは改良したい」と語った。カレーは税込み八百円で、現在は狩女の里で販売。今後、JAが運営する直売所やのと里山海道のサービスエリアなどに販路を拡大する予定。

(アイディア料理コンテスト、最優秀賞は鹿肉メニュー:神奈川)
秦野市食生活改善推進団体(飯田あや子会長)が主催する「お皿にいっぱい秦野の味 アイディア料理コンテスト」の入賞者が決まった。このコンテストは、市内の小・中学生を対象に、伝統的な郷土料理に加えて、秦野の特産物を使ったオリジナル料理を募集するもの。秦野の子どもたちの健やかな食生活の実現、秦野の食文化の継承を図ることが目的。今年で12回目。共催は秦野ガス株式会社、後援に秦野市、秦野商工会議所観光飲食部会、秦野市PTA連絡協議会。コロナ禍で2年ぶりの開催となったが、会場での調理審査は行われず、応募者が料理写真や調理風景の写真を提出する形式で行われた。コンテストに参加できるのは、秦野市内在住・在学の小中学生。落花生・そば・ほうれん草など秦野の特産物のなかから1品以上を使用することなどが参加条件となっている。今年の応募総数は、488点。11月10日に最終審査が行われた。最優秀賞に決まったのは「鹿肉のラグーソースパスタ」を作った島津義央(よしなか)さん(南中・2年)。「害獣被害のニュースを見て思いついた。食べ慣れない鹿肉を豚肉と合わせて食べやすくした」という。

(期待のジビエ「エゾシカ消費」が大苦戦:北海道)
[エゾの杜代表取締役]三坂一茂氏。ジビエブームで徐々に市場を広げてきたエゾシカ消費が大きく低迷している。ハンターの高齢化など悪条件も重なり、市場再生へのハードルは高い。それでも「何とか売る工夫を続けていきたい」と前を向く。新型コロナウイルスの影響で、私たちが手掛けるエゾシカ肉の需要が消えてしまいました。感染拡大が始まる2年前には、多いときで月に1トンほど売れていましたが、それが一時はゼロ。エゾの杜の売り上げでいえば、2019年に2500万円程度あったものが、21年には600万円くらいまで減ってしまいそうです。ハンバーグやジャーキーなど加工食品も生産・販売していますが、エゾシカ肉は嗜好品ですから、やはり宿泊施設や飲食店による大量消費がないと量はさばけません。営業時間の規制や自粛が効いています。かつてエゾシカ肉は、「硬い、臭い」というイメージがあり、地元・十勝エリアですら食べる習慣がありませんでした。それが、近年は「ジビエ」として徐々に市場に浸透しつつあり、手応えを感じていました。この流れが先細ってしまわないか懸念しています。肉の調達面にも課題があります。エゾシカは畑を荒らす害獣です。北海道の調査(20年度)では、野生鳥獣による農林水産業の被害額50億円のうち、エゾシカが40億円余りを占めました。有害鳥獣駆除の今の仕組みでは、エゾシカを駆除した場合、1頭当たり数千円の報酬が交付されます(編集部注:細かくは自治体によって異なる)。食用に活用すれば報賞金も追加されますが、金額にあまり差がありません。駆除の際に胴体を撃って内臓が損傷してしまうと、雑菌が周囲の肉に入り込み衛生上、食肉に使えなくなります。(内臓を傷つけない)頭や首で仕留めた場合と報賞金の差を付ければ、食肉活用がもっと進むかもしれません。このあたりのエゾシカは畑を荒らす害獣である一方で、豆や小麦、ジャガ芋、ビートなど、幅広い農作物を食べることで3歳で100kgくらいまで成長します。エサがいいので、食肉としても、1年を通して軟らかく、脂が乗っておいしいのです。

(伝統を未来へ繋ぐ鹿革の加工技術:埼玉)
木製の階段を上ると、明るい光が差し込む、広大な空間が目の前に広がる。色鮮やかな革がずらりと並ぶ光景に、「自然の風の中で日向ぼっこしているみたい!」と篠原ともえさんが微笑んだ。ここは埼玉県草加市のタンナー(製革業者)、伊藤産業。昨年度、革のアクセサリーのデザイン・ディレクションを手がけた篠原さんは、革という素材に魅了され、新たなクリエイションに取り組みたいという思いを強くしていた。「職人さんに直接お話を聞いて感動したり、心が揺れたりする、その思いを形にしていくことがすごく大事だと思ったんです」。だから今回も、職人さんと出会い、彼らとコミュニケーションを取るところからスタートしたい。そんな篠原さんの願いを、伊藤産業の社長・伊藤達雄さんが快諾。今回の訪問が実現した。いま全国各地で問題になっている、野生の鹿による農作物や森林の被害。捕獲された鹿の肉はジビエと呼ばれ特産物になるものの、皮は廃棄されてしまうことがほとんどだった。命をいただいているからこそ、皮も有効活用したい。そんな声が草加の伊藤さんたちのところに届くようになった。もともと製品開発、PR事業を事業者同士の連携でチームとして取り組んでいたため、この社会問題に草加の技術が役に立てるのであれば、と鹿皮鞣しから制作への動きは早かった。2016年には埼玉県秩父の鹿皮を使ったセーム革のメガネ拭きやポーチなどを発表。すでにオリジナルブランド開発の実績もある草加の革づくりは高く評価された。そして2018年に、北海道北見市のエゾ鹿皮との出合いがあった。生態系保全のために鹿が捕獲される現状に心を痛め、“命を繋ぐサイクルをつくりたい”との思いからエゾ鹿肉加工会社「ポロ ワッカ(poro wacca)」を立ち上げた林徹さんが、草加のチームにコンタクトを取り、エゾ鹿皮の鞣しと染色を依頼。林さんのブランド「レザレクション(LEATHERECTION)」で美しいバッグや革小物となり、ブランド名の由来である“復活(resurrection)”の言葉どおり、新たな命が吹き込まれた。創業時から鹿皮の鞣しを手がけてきた伊藤産業が、その重要な役割を担った。

(ジビエBBQパーティー:静岡)
静岡市葵区梅ケ島の梅ケ島新田温泉「黄金の湯」は、1月16日に開催する「ジビエBBQパーティー」の参加者を募集している。梅ケ島の冬の味覚を味わってもらおうという企画で、地元猟友会が取ったシカのモモ肉を提供する。食べ放題だが、在庫の肉が無くなり次第終了する。定員は先着20人。参加費は中学生以上の大人1380円、3歳から小学生690円。3歳未満は無料。別途入浴券が必要。

(牛豚鹿のジャーキー:和歌山)
県内や大阪、奈良で食肉の業務卸や小売などを手掛ける㈱神戸屋(和歌山市中、永井宏一郎代表取締役)は、このほど新ブランド「DANKE SCHWEIN(ダンケシュバイン)」を立ち上げ、紀州和華牛、紀州鹿、熊野ポークの3種類のジャーキーを11月から発売しています。永井代表は、「和歌山の地産のものを提供していきたい」と、常温で日持ちのする商品開発に取り組み、同商品を発売することとなりました。それぞれ、県産肉の赤身を使い薄くスライス。スモークハウスでじっくり水分を飛ばし乾燥させています。日本人の好みに合うよう、しょうゆベースに仕上げています。食べたときにしっかりとした味が楽しめることを目指したといい、しょうゆや赤ワイン、みりんなどで味付け。かめばかむほど肉のうま味が口いっぱいに広がり止まらないおいしさです。お薦めは、鹿肉ジャーキー。鉄分が多く、高タンパクで低脂肪。ジビエ独特のクセがなく、「ジビエが苦手」という人でも食べやすい一品です。ヘルシーでおやつにもピッタリです。和華牛は、ことしプレミア和歌山特別賞を受けた和華牛を使っています。上質な脂のうま味と柔らかな赤身がクセになります。熊野ポークは近畿大学と和歌山畜産試験場が産学共同で実現した霜降り豚肉です。あっさりした味わいが食べやすいと人気です。永井さんは「どれもお酒との相性は抜群。和歌山にはおいしいお酒があるので、お酒とジャーキーのマッチングをぜひ試してもらえたら」と話しています。紀州和華牛15㌘780円、紀州鹿25㌘680円、熊野ポーク30㌘580円。県内の道の駅や同市深山の休暇村紀州加太などで購入できます。

(ジビエ祭り、天神中央公園で開催:福岡)
福岡県主催の「全国ジビエ祭り」が、2月12日と13日の2日間、福岡市の天神中央公園で開催されている。ジビエとはフランス語で、狩猟によって食用として得たシカやイノシシ・カモなどの野生鳥獣をさす。ヨーロッパでは古くから発展してきた食文化であり、日本でも山間地では農耕や牧畜が普及されていない時代から今日まで行われている。狩猟解禁のジビエシーズン到来で、全国からジビエ料理が集結したこの催しは、グルメにはたまらない。山野を駆け巡り、大空を舞った野生鳥獣の天然の赤身肉は、生命力に満ちた森からの贈り物。九州をはじめ全国から出店されており39のブースが並ぶ。ガラポンの抽選会や試食が各所で行われているので、ぜひ足を運んでみては。

(「おうちジビエ」楽しんで:高知)
高知県香美市のジビエ料理専門店が、動画投稿サイト「YouTube(ユーチューブ)」に専門チャンネルを開設し、県内の特産物と合わせたレシピや、肉の下処理の方法などを紹介している。「新型コロナウイルス禍で自宅で過ごす時間が増えた今、おうちジビエを楽しんで」と呼び掛けている。香美市香北町吉野の「ヌックスキッチン」。代表の西村直子さん(50)が「ジビエ料理のおいしさを知ってほしい」と昨年10月にチャンネルを開設し、これまでに5~10分程度の動画5本をアップした。

(新庄ししメン:岡山)
新庄村特産のもち米・ヒメノモチのもち粉を練りこんだ太麺と、イノシシ肉のチャーシューを使用した里山の恵みを堪能できる一杯。新鮮なやわらかい雌のシシ肉は、冬ならではの味わいで、鳥塩ベースのあたたかいスープが体をあたためてくれる。2018年4月にリニューアルした道の駅「がいせん桜 新庄宿」で味わえる。

(たき火を囲んで猟師とジビエで一献:長野)
冬のキャンプは寒い。9月のキャンプですら寒かったのだから、とんでもなく寒いに違いない。何を好きこのんで寒さに震えなければならないのか。でも冬には冬の魅力がある。なにより、たき火のありがたさがよく分かる。寒いのは嫌だが、たき火は楽しみたい。出た結論は、いっぱいのたき火とバンガロー泊だった。12月中旬にもかかわらず、はや十数センチの積雪にすっぽりと覆われていた。標高1440メートル、長野県茅野市の奥座敷・白樺(しらかば)湖畔にある「takibi hut」。2018年にオープンした小さなキャンプ場だ。ここの特徴は▽テントサイトは冬場だけ▽管理人が猟師――の二つ。キャンプ地のほとんどが冬場はテントサイトを閉じる。「雪かきが大変なんです。うちは通路だけかいちゃえばOKなので」と話すのは管理人の工藤健市さん(53)。近隣スキー場のスキー客を当てにして、12月上旬から3月末の冬場だけ持ち込みテントを張れるようにした。ところが、「スキー客は一人も来ません。来るのは冬キャンプを楽しむお客さんだけです」。テントサイトはキャンプ場の中央にあり、真ん中に共同のたき火場。地面でやる直火にこだわったと話す。「直火でたき火ができるキャンプ場は少ないので」。工藤さんにあいさつし、早速たき火場に。たき付けの小さな木を燃やし、薪を入れる。炎が上がる。どんどん薪を入れる。暖かい。暗くなるにつれ気温が下がる。今度は寒い。たき火と寒さの競争だ。「お客さんが集まる語らいの場が作れたらと思ったんです。昔からこういうことをやりたかったので」。薪を加えながら工藤さんが言う。岡山県倉敷市の出身で、大学卒業後、アミューズメント業界に就職。その後に石川県内で就いた林業関係の仕事を辞め、思い立って徒歩行脚に。倉敷から熊本県まで歩き、次は石川県から北海道の稚内まで歩いた。「ザックにテントを入れて、お金がなくなったらバイトして」。踏破後、長野県内のリゾート地でアルバイトをしてその魅力にはまる。白樺湖畔のホテルに勤めていた時、なじみの居酒屋がジビエ料理のためにハンターを募集した。「もともと自給自足に興味があったので、思い切って」応募。居酒屋の経営母体の会社に転職し、免許を取得してわな猟師になった。会社がキャンプ場を開いて管理人となり、その傍ら、猟師を続けている。「猟をするのは4~11月。わなはこの辺の山に30くらい仕掛けています。駆除の許可をもらって。獲物を山に埋めるのは資源としてもったいないので、ジビエにして……」獲物は社の施設で解体する。たき火場の魅力は工藤さんの話と、このジビエ。「やっぱ寒いですねえ。もうマイナス5度くらいじゃないかな」。暗くなった湖の方に目をやりながら、工藤さんがシカ肉を出した。「これ、僕が捕って、僕が解体したものです」。たき火の上に網を載せ、肉をあぶる。口に入れる。柔らかい。ビールと一緒に流し込む。うまい。シカ肉をあぶりながら、もっとおいしい肉があるんだよと明かしてくれた。アナグマだ。似た動物にタヌキやハクビシン、アライグマがいるが、それらはそれぞれイヌ科、ジャコウネコ科、アライグマ科で、アナグマはイタチ科。「体にすごく脂を蓄えてて、その脂が肉を柔らかくしてくれて。塩こしょうして焼くと最高。うますぎてヤバイっす」これはもうアナグマを食べてみるしかないと思ったのだが……。残念ながらこの日はなし。運がよければありつける、ということらしい。缶ビールに手を伸ばしたら、いつの間にか凍っていた。「一番寒いのは1月末から2月ですね。最低気温はマイナス15~16度になります」夜更け、バンガローで寝袋にもぐり込んだ。寒いので石油ファンヒーターをつける。が、寒い。寒さで何度も目がさめる。翌朝、事務所横の温度計の記録を見ると、最低気温は深夜0時のマイナス9度だった。母親と一緒にバンガロー泊していた清水結斗君(9)が朝、元気いっぱい走ってきた。「動物の足跡、見に行こうよ」。引きずられるようにキャンプ場の外へ歩く。と、あった。シカの足跡らしい。雪の中に点々と足跡がついている。「トイレに来たんだよ、ほら、フンがある」。目を輝かせる結斗君の向こうに白樺湖が朝の光を放っていた。

(山海「ジビエ」缶詰に:岩手)
大槌町の水産加工業たかのり海産(佐々木貴範社長)と食肉加工業MOMIJI(兼沢幸男社長)は、町内産のイルカとシカ肉を加工した缶詰商品を開発した。野生鳥獣肉「ジビエ」を手軽に味わえるコラボ商品で、ふるさと納税の返礼品に選ばれた。栄養価が高く日持ちがする、おいしい防災食としての活用も期待される。リクゼンイルカの大和煮「海のジビエ」(1缶702円)は、ショウガの効いた甘辛味がやわらかい肉に染み込み、食欲をそそる一品。シカ肉を使った「山のジビエ」(同800円)は、トマトベースのソースに八木沢商店(陸前高田市)の無添加みそを加えたコクのある和風シチューに仕立てた。

(小型犬用の天然国産「屋久島産・鹿角ドッグガム」を自販機で販売開始:東京)
株式会社トランスタイル(本社:東京都荒川区、代表取締役:高添 義浩)は、小型犬用の「屋久島産・鹿角(しかづの)ドッグガム」を2021年12月11日より谷中銀座商店街(東京都台東区)の自動販売機で販売を開始しました。小型犬用のおもちゃであるこの「鹿角ドッグガム」は、鹿児島県屋久島の自然保護と農林業の鳥獣被害対策のため合法的に駆除した屋久鹿(ヤクシカ)のみを使用しています。販売価格は1,000円(税込)です。自動販売機の設置場所は、「谷中たこ坊」(東京都台東区谷中3-9-18)の横です。谷中は猫のイメージがありますが、近隣の住宅街では犬も多く飼われており、朝夕散歩する姿が日常的に見受けられます。今回の販売は愛犬家の需要に応えると共に、珍しい自動販売機を設置することで谷中銀座商店街に新たな名所を誕生させることも目的としています。トランスタイルでは、屋久島の自然環境保護と、東京の商店街のさらなる発展への貢献を考え、今回の販売を開始いたしました。

(「ジビエそば」いかが:大分)
佐伯市内の二つの飲食店が「ジビエそば祭り」と銘打ち、市内産シイタケとイノシシ肉を使った特別メニューを期間限定で提供している。24日まで。「体の芯から温まる佐伯の山の幸を食べに来てほしい」と呼び掛ける。2店は直川上直見のレストラン「コリーヌ」と、本匠小半(おながら)の「水車茶屋なのはな」。「コリーヌ」は大ぶりなシイタケの天ぷらとイノシシ肉が入ったそばの定食「うまみだけイノシシ南蛮そばスペシャル」(税込み1300円)を用意。「なのはな」は本匠産のこしの強いそばにイノシシ肉とシイタケ、ニンジン、ネギを添えた「猪仔(いのこ)南蛮そば」(同千円)を販売する。企画した東九州バスク化構想佐伯推進協議会は「食で地域を盛り上げるため、冬の佐伯名物として定番化してほしい」と期待する。

(シカふんで野菜栽培:茨城)
茨城県鹿嶋市の鹿島神宮(鹿島則良宮司)で暮らすシカのふんを肥料にしたニンジン「鹿キャロット」の販売が、同神宮奥宮(おくのみや)脇のカフェ「まち珈琲 あらみたま」で始まった。鹿嶋市にUターン就農した七帖(しちじょう)計太さん(46)と安菜さん(24)の夫妻が栽培し、規格外品はシカの餌になる「持続可能な開発目標(SDGs)」に沿った取り組み。七帖さん夫妻とカフェを運営するまちづくり会社の担当者は「鹿島神宮にゆかりある品々を発信したい」と意気込んでいる。同神宮では、シカの神霊天迦久神(あめのかくのかみ)が使いとなって、天照大御神(あまてらすおおみかみ)の命を、同神宮の祭神となっている武甕槌大神(たけみかづちのおおかみ)に伝えたという伝承があり、現在も30頭余りのシカが暮らしている。処分されるふんに着目したのは、2019年に市内で就農した七帖さん夫妻。「シカのふんを使った野菜を作れないか」と、まちづくり会社「まちづくり鹿嶋」(猿田博明社長)に打診したところ、トントン拍子で企画が進み、今年夏から栽培を開始。11月から店で販売が始まった。計太さんによると、シカふん由来の肥料で栽培されるニンジンは秋3アール、春3アールの計6アール。1アール当たり10キロの肥料を使用するという。計太さんは「ニンジンは全て有機栽培なので味もいい。ぜひ食べてほしい」と話す。同社タウンマネジャーの済藤哲仁さん(51)は、シカのふんを使った野菜販売について「まさに鹿島神宮でしかできない取り組み」と太鼓判を押す。収穫量に応じて、今後はニンジンを使ったクッキーなど、加工品の開発にも取り組みたい考えだ。カフェは12月末でオープン1周年となる。店内では、鹿キャロット(1袋250円)のほか、オリジナルブランド「Namaz(なまず) Coffee」のドリップパック(7個入り千円)などを販売している。

(人間が奪った動物の命、捨てずにつなぐ:埼玉)
犬、モルモット、ハムスター、プレーリードッグ、インコ、熱帯魚……。埼玉県飯能市の会社員・遠藤拓耶(たくや)さん(36)は動物に囲まれて育った。今は山に入り、害獣とされるシカを捕獲して加工している。自らの手で命を奪う葛藤を抱えつつ、この取り組みを始めたのには理由があった。先月12日。遠藤さんは小学5年の長男・春翔(はると)くん(11)を連れ、自宅近くの山に入った。「ここが獣道だから、この木にしよう」。2人で相談して決めた木の周囲に金属製のワイヤをめぐらした。近くの地面に小さい穴を掘り、直径12センチの筒状の仕掛けを埋め、木に回したワイヤとつないだ。シカが仕掛けの上を歩くと、くるぶしがワイヤに締め付けられ、逃げられなくなる仕組みだ。遠藤さんはまだ息のあるシカにナイフでとどめをさして解体し、犬用のジャーキーなどに加工して販売している。平日は会社員として働く遠藤さんは4年前、自然豊かな環境で子どもを育てるため、神奈川県から飯能市に移住した。この活動を始めたのは1年前だ。もともと動物との関わりは深かった。両親が動物好きで、実家には常にペットがいた。動物は感情表現がストレートで「彼らは表裏がない。一緒にいる時は自分も素のままでいられた」と話す。犬の「プリン」と「チョコ」は帰宅するとしっぽを振って出迎えてくれた。遠藤さんに嫌なことがあった時は横に座って寄り添ってくれた。最後をみとる経験もたくさんした。みとってすぐは、心に穴があいたような気持ちになったが、今はいい思い出ばかりがよみがえる。「最後まで命を全うした」からだ。移住して2年後、動物の命が途中で奪われる場面に立ち会った。山でわなにかかったシカを見に行こうと知人に誘われた。「解体してみる?」と言われ手伝ったが、ぬくもりが残る腹をナイフで開くと、白い湯気がもうもうと立ち上がり、心が痛んだ。一方、この地域では農業を営む人も多く、シカやイノシシに畑の作物を食い荒らされる被害に悩まされていた。遠藤さん一家が畑に植えたサツマイモも食い荒らされた。移住した時、温かく迎えてくれた地域の人のため役立ちたいと思った遠藤さんは「害獣」のシカを捕獲する活動を手伝うようになった。その過程で捕獲されたシカの多くは一般ゴミと一緒に焼却処分されていると知った。「人間のために奪われた命がゴミのように扱われ、捨てられるなんて」。命をつなぐ手伝いをしたいと思った。鹿肉は低カロリー高タンパクで栄養豊富。ペットフードの需要があり、犬のおやつとして有効活用しようと考えた。仕事の合間に「わな猟」の免許を取り、自分で狩ったシカを生かす「飯能ジビエールプロジェクト」を始めた。飯能市によると、市は昔は木材の生産地だったが、1960年代ごろから需要が減り、山に入る人間が減ったという。シカによる被害が増えたのは、シカの行動範囲が広がったことも背景にある。「動物をあやめていながら『活用しているから自分はいいことをやっている』とは言えない。でも、これ以上の答えが見つからない」。遠藤さんにはまだ葛藤がある。春翔くんが小学3年になったころから、わなをかける作業や解体する場面を見せるようにしている。腹が膨らんだメスのシカがわなにかかると、遠藤さんは腹をナイフで開き、生まれるはずだった子鹿を包んでいる羊膜を切り開く。その姿を春翔くんと見つめ、手を合わせる。初めてシカを解体した時に「人間は動物という他の存在の死の上に生きている」と感じた思いを、子どもたちにも伝えたいと考えている。

(古道の宿でジビエ料理:和歌山)
和歌山県田辺市中辺路町高原の熊野古道沿いにある宿泊施設「SEN.RETREAT TAKAHARA(センリトリート タカハラ)」は今月から、地元で捕れた猪肉を使った猪鍋の提供を始めた。地元農家らを困らせている獣害を解決する助けになればと導入したプランで、運営会社は「ジビエの良さやおいしさを知ってもらうきっかけにもなれたら」と話している。施設は、空き家となっていた古民家を改装して昨年10月に開業した。運営しているのは不動産開発などを手掛ける「日本ユニスト」(今村亙忠社長、大阪市西区)。ゆくゆくは中辺路町と田辺市本宮町、新宮市熊野川町の古道近くに計四つの宿泊施設を整備する予定という。料理に使う猪肉は、鳥獣害対策などに取り組む田辺市上芳養の農業会社「日向屋(ひなたや)」から仕入れている。猪鍋はロースやバラ肉を使った「猪肉しゃぶしゃぶ」を提供。具材や調味料も和歌山県産の食材にこだわり、田辺市龍神村産のシイタケや同市伏菟野産のキクラゲなどを使用している。また、地元の鳥獣害対策の取り組みやその背景を知ってもらおうと、「日向屋」の取り組みや地域住民の働き掛けで誘致した野生鳥獣肉(ジビエ)の処理施設「ひなたの杜」などについて紹介する冊子も施設に置いている。施設は最大10人が宿泊できる1棟貸しとして運営。猪肉を提供するプランの料金は、1泊2食付きで大人4人の場合、1人1万8700円。宿泊代とドリンク代、菓子代なども含んでいる。ドリンクや菓子も和歌山産にこだわり、ビールや梅酒、ジュースなどを用意している。

(ジビエ鹿肉ゴーダチーズバーガー)
ロッテリアは「ジビエ鹿肉ゴーダチーズバーガー」を、1月13日に全国43店舗で数量限定で発売する。価格は700円。ロッテリアでは、SDGsにも通じるジビエの普及・振興の取り組みとして、2016年4月から「ジビエ鹿肉バーガー」を店舗・数量限定で発売。2021年には「ジビエ鹿肉バーガー(エゾ鹿ラグーソース)」と「ジビエ鹿肉バーガー(3種きのこのコンフィと北海道チーズ)」を全国のロッテリアで発売した。ジビエ鹿肉ゴーダチーズバーガーも、ジビエ利活用の循環構築を目指した商品。自然物である鹿肉の安定供給との兼ね合いから「国産ジビエ認証制度」を受けた施設をようする地域や大都市の43店舗に限定して販売する。ジビエ鹿肉ゴーダチーズバーガーのパティは、牛肉や豚肉に比べて高タンパク、低カロリーで鉄分豊富といわれる鹿肉を全体の6割に使用し、パン粉や黒胡椒、ナツメグなどの香辛料を加えている。そのほか、ゴーダチーズ、アルゼンチン産はちみつを使用したほのかな辛味が特長の「ハニーマスタードソース」、レタス、トマト、スライスオニオンなどを挟んでいる。

(ジビエ使ったラーメン:岡山)
環太平洋大(岡山市東区瀬戸町観音寺)の学生は、県産ジビエ(狩猟肉)を使ったラーメンを作った。ジビエの消費拡大を目指し、骨まで活用できる商品として発案。シカとイノシシを材料に、骨を煮込んだスープとチャーシュー代わりの肉が堪能できる一杯に仕上げた。12日に同市内のカフェで開かれるイベントで提供する。しょうゆラーメンで、スープは「がぶ飲みしても体に良い」がコンセプト。低脂肪のシカの肉が付いた骨を多めに入れて5~6時間煮込んでおり、美容効果が期待されるコラーゲンも多く含むという。あっさりしたスープに合うよう特別に製造依頼した細麺に、軟らかく焼き上げたシカとイノシシの肉、黄ニラをトッピングした。併せて別の楽しみ方として、まぜそばも開発。細切れのシカ肉やパクチー、少量のスープが麺に絡む一品にしている。同大経営学部の3、4年生6人が商品開発やブランディングについて学ぶ授業で、昨年11月に同市の食肉処理場を訪れた際にシカの解体を見学したのがきっかけ。「ジビエを余すところなく使う商品を作りたい」と考え、骨からだしを取れるラーメンを思いついた。授業を担当する同大非常勤講師の扇野睦巳さん(51)やジビエ料理研究家の中川妙子さん(53)=同市北区=らの協力を得て、12月下旬からレシピを作成。今月5日に試作会を開き、スープに使うシカとイノシシの配合比率などを決めて完成させた。12日のイベントは、カフェ「B―style」(同柳町)で開催。シカ肉のステーキといった他のジビエ料理とともに、シカ肉のギョーザやイノシシ肉の春巻きなどとセットにして1500円程度で販売する。午前11時半~午後3時。リーダーの3年前田有希さん(21)は「スープまで飲み干したくなる自信作ができた。臭みもなく、ジビエのマイナスイメージを変えてもらえれば」と話している。今後はメニューとして採用する飲食店探しや、皮を使った小物作りに取り組むという。

(お守りにシカ角ガチャ:高知)
土佐郡土佐町田井のうどん屋さんの店先。カプセル玩具販売機(ガチャガチャ)に子どもが群がっていた。100円玉を5枚入れ、レバーをくるくる。ポンっと出てきたカプセルを開けると…ひもが通されたシカの角。わ!ワイルド~。同封されていた土佐和紙の説明書によると、水難よけや豊穣(ほうじょう)祈願、金運、武運と、一つ一つご利益の違う「お守り」らしい。

(イノシシのベーコンとふわふわ卵:千葉)
捕獲したイノシシなどの有害獣を加工処理して、食肉の「ジビエ」として販売する持続的な仕組みづくりが、各地で始まっている。「かみ応えのあるイノシシのベーコンとふわふわ卵」「和風だしで煮込んだイノシシと館山産落花生などが入った煮込み」――。千葉県館山市が昨年末、オープンした「館山ジビエセンター」。開所式典では、参加者がジビエを使った料理の試食の箸をすすめるたび、「うんうん」とうなずく笑顔が広がった。「捕まえたイノシシは全部利用することを目指してがんばりたい」。式の最後には、センターの指定管理者、アルコ代表社員の沖浩志(38)が真剣な表情であいさつした。長年の懸念を自分なりに解決する試みが始まろうとしていた。釣り好きの父の影響で、沖は幼いころから生き物好きに育った。専門学校では野生生物調査を勉強。環境調査会社に就職したが、専門学校時代の友人が島根県でクマ対策をしている姿を知り、自分も獣害対策に取り組みたいと決意した。交際中だった妻の実家がある館山市に移住し、有害鳥獣対策の会社を設立した。その頃公募していた市の地域おこし協力隊員に応募し、2018年から21年3月末まで、鳥獣対策の指導を専門に活動してきた。活動を始めて深刻な現実を改めて実感した。獣害対策は、防護策の設置など地域が一体で取り組まないと効果がない。だが、人口減少で耕作放棄地が増え、隠れ家を得たイノシシは急増している一方で、狩猟免許を持つ捕獲者は高齢化し減少していた。高齢者がわなを日々見回る負担は大きい。捕獲できても運び出す人手が足りず、解体処理も労力。そのため、捕獲された大半が地中に埋設されていた。センターは、捕獲者にとっての利便性を大切にする。捕獲したイノシシはセンターが買い取り、解体処理してジビエに加工し、飲食店などに販売。「館山産ジビエ」として特産化を目指す。捕獲者が施設利用料を払って、自分で処理して持ち帰ることも可能だ。センターで、わなにかかった獲物を仕留める際の危険な「止め刺し」の仕方も指導する。「ジビエが売れて、むだが無くなれば。狩猟をする若い担い手も育てたい」と沖は話す。

(キッチンカーで鹿肉の魅力発信:兵庫)
鹿肉のおいしさを広めようと、神戸大学(神戸市灘区)の学生が鹿肉専門キッチンカーを製作する計画を立て、インターネットで支援を募っている。「くさい」「かたい」などと偏見を持たれることも多いが、「かむほどに肉汁があふれ、あっさりした後味。肉々しさを存分に味わえる」。農作物の鳥獣害対策としても注目されるジビエ(野生鳥獣肉)料理。学生は「鹿肉のおいしさを常識にし、日本に新たな鹿肉文化を醸成したい」と話す。同大学農学部4年の「あかりんご」(本名・鵜沼(うぬま)明香里)さん(23)。大学の農業サークルで訪れた丹波篠山市の農家で初めて鹿肉を食べ、おいしさに魅了された。仲間とサークルを立ち上げ、鹿肉を食べたことがない同大学の学生を対象に鹿肉パーティーをしたり、神戸市内のイベントで鹿カツを販売したりした。新型コロナに見舞われた2020年は大学を休学し、高知県へ。猟師の手伝いをする傍ら、ジビエ専門メディアで、縄文時代から続くシカの文化や歴史などの記事を執筆してきた。

(鹿革ブランドが手掛けるストラップが魅力:スイス)
スイス発の老舗ウォッチブランド・ORIS(オリス)は10年以上前から環境美化や保全に取り組んでいた、いわば先駆け的な存在。1月下旬より発売がスタートする「BigCrown」の最新コレクション「BigCrown×Cervo Volante(ビッククラウン×チェルボボランテ)」(25万3000円)も、その姿勢をしっかりと表現。自然界のバランス維持を目的とした“個体数調整のための害獣駆除(狩猟)”を行っている企業・チェルボボランテより提供された野生の赤鹿の革をベルトに用いた機械式腕時計です。野生の赤鹿の革は切り傷や擦り傷、打撲の跡などひとつひとつに個性が備わっているのが特徴。これをスイス国内に残る鞣し工場で化学物質を使わないタンニン鞣(なめ)しを施した後、腕時計用のストラップに加工。

(最新ロジスティックス技術を活用した食品流通事業「サステナフード」:東京)
最新ロジスティックス技術の活用による社会課題解決を推進する、ロジスティクスイノベーションプラットフォーム株式会社(東京都中央区、代表取締役 堀出 大介、以降、ロジップ)による、<100年後の世界の食と地球環境を良くしていくこと>を目指す食品流通事業「サステナフード」事業にて、静岡県河津町でジビエ肉加工工場を運営する「株式会社湘南じびえ」との協業し、自社のコールドチェーン技術を活用し、国内のジビエ肉の活用を推進するプロジェクトを開始いたしました。この第一弾として、大阪の老舗洋食店「新世界グリル 梵」とコラボレーションした『湘南じびえ×新世界グリル 梵の鹿カツサンド』を2022年1月11日(火)より「新世界グリル 梵 銀座店」にて販売開始いたします。

(鹿肉カレー、情報科学高生が考案:島根)
島根県立情報科学高校(安来市能義町)の生徒3人が、郷土の人気武将・山中鹿介をコンセプトにしたご当地カレーを企画した。ごろっとした鹿肉が食べ応え抜群のトマト系本格スパイスカレーで、地元事業者がレトルト品として今春にも発売する。3人は「月山富田城鹿肉カレー」と名付け、安来ファンの獲得につながってほしいと願う。梶村聖音(まさと)さん(17)、河野太一さん(18)、高橋珀(はく)さん(18)の3人。3年の課題研究の授業で、食を入り口にした観光業の活性化をテーマに昨年4月から取り組んできた。地域の歴史や現状を調べる中、月山富田城跡(広瀬町富田)の整備と山城ブームにより登頂者数が増加傾向にあるにもかかわらず、土産物が少ないため地元にお金が落ちないという課題を知った。ならばと山中鹿介にちなみ、鹿肉を使ったスパイスカレーを売り出そうと考えた。レトルト品も開発するカレー工房ダーニャ(松江市東出雲町錦新町8丁目)の門脇幹尚副代表(39)が協力。鹿介の忠心を象徴するせりふとして有名な「願わくば、我に七難八苦を与えたまえ」から着想を得て、「七つ」のパウダースパイスと「八つ」のホールスパイスを使用した。商品化に当たり、パッケージの筆文字は鳥取県在住の書家・河田広樹さん(38)が手掛けた。今後は学校や道の駅で試食アンケートを行う予定。反応を踏まえて改良し、安来市内の事業者から3月ごろの発売を目指す。3人は「知名度を高め、将来的にはカレーをきっかけに安来に来てもらいたい」と期待する。

(地酒で飲み鉄の旅、地元ジビエ弁当も:鳥取)
八頭、若桜の両町を走る若桜鉄道で9日、地酒や地元の食を楽しむ貸し切りの「とことん地酒列車」の運行があった。沿線の酒蔵が製造した銘柄や地元産の酒米を使った日本酒、リキュールを用意。参加者は車窓の景色を楽しみながら、ほろ酔い気分で「飲み鉄」の旅を堪能した。

(農業公園で野生のシカさばく:滋賀)
日野町西大路小学校の五、六年生が十日、地元の滋賀農業公園「ブルーメの丘」を訪れ、町内で捕獲された野生のシカをさばいて命の大切さを学んだ。

(ジビエ料理のPRポスターなど展示:愛知)
ジビエの消費拡大につなげようと、東海農政局は、特別展示「ジビエをもっと身近に」を名古屋市中区三の丸一の同局内にある「消費者の部屋」で開催している。

(クマ出没:宮城)
大崎市によると、1月上旬、大崎市鹿島台広長湿畑にクマが出没しました。

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