<射撃ニュース1月>
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(カラス駆除中の鷹が下校中の小学生らに襲いかかる、鷹の爪で挟まれてケガ:滋賀)
滋賀県甲賀市で13日午後、カラスの駆除をしていた鷹が襲いかかり、小学生が頭などにけがをしました。13日午後3時20分ごろ、甲賀市水口町の路上で、50代の男性から「鷹に襲われた。小学生も襲われた」と警察に通報がありました。鷹は、通報した50代男性を襲った後、下校中だった小学1年生の男子児童の耳や頭などを後ろから爪で挟みました。小学1年生の男子児童は軽いけがをして、病院で手当てを受けたという事です。鷹はその後、近くにいた人が棒で追い払い、飼い主の32歳の女性鷹匠が捕獲しました。鷹は生後11ヶ月のモモアカノスリで、翼を広げると横幅が約1メートルになる大きさということです。当時、近くの会社からの依頼を受け、女性鷹匠がカラスの駆除を行っていました。警察は、管理をしていた女性鷹匠に事情を聞くとともに、業務上過失傷害などを視野に捜査しています。

(豚熱の感染が県内初確認:香川)
坂出市で見つかった死んだ野生のイノシシが、ブタの伝染病CSF=豚熱に感染していることが確認されました。県内で豚熱の感染が確認されるのは初めてで、県は養豚場に対し消毒などを徹底するよう呼び掛けています。県によりますと、今月4日、坂出市神谷町の住宅街で野生のイノシシが死んでいるのが見つかり、県が豚熱の遺伝子検査を行ったところ陽性が確認されたことから、国で検査が行われた結果、豚熱への感染が確認されたということです。県によりますと、県内で豚熱の感染が確認されるのは初めてだということです。県は、感染が確認されたイノシシが見つかった場所から、半径10キロ以内を「感染確認区域」に指定し、今後、死んでいたり、猟友会が捕獲したりしたイノシシについては豚熱の検査を強化することにしています。また県は、県内の26の養豚場に対し、出入りする車の消毒の徹底や、豚舎ごとの衣服や長靴の交換など、国の衛生管理基準で定められる対策を徹底するよう呼びかけています。

(イノシシ・ニホンジカの目撃急増、増える農作物の被害:青森)
本来青森県内には生息しないとされていたイノシシやニホンジカの目撃件数が急増している。生息数が増えているとみられ、農作物被害も出ている。人里に近い中山間地で耕作放棄地が広がったことなどで野生動物が他県から北上しやすくなっているとみられ、県は情報通信技術(ICT)を活用した捕獲態勢の整備など、対策を強化している。県によると、イノシシは県内で100年以上前に絶滅したとされてきた。だが、2017年度に初めて姿が確認されると、21年度は81件に上った。ニホンジカの目撃も増えている。21年度は334件で、県が把握する13年度(7件)から8年で約50倍に増えた。林野庁東北森林管理局は昨年、世界自然遺産・白神山地周辺の青森県側でセンサーカメラ前をうろつくメスのニホンジカを初めて捉えており、繁殖が懸念される。目撃件数の増加は、野生動物が県内で増えている可能性を示唆する。農作物を荒らすなどの被害も出ており、特に21年度のイノシシによる農作物被害額は138万円で、前年度の約4・1倍に増加し、過去最高を記録した。ニホンジカによる被害も13万円確認された。深浦町の男性(68)は、栽培する町の特産品「ふかうら雪 人参にんじん 」が被害に遭い、「なぜこんな北までイノシシが来るのか」と衝撃を受けた。畑には16年からニホンジカも現れるようになり、駆除してもきりがないという。野生動物の北上について、山形大農学部の江成広斗教授(野生動物管理学)は、人口減少に伴い、土地の利活用が減ったことが原因とみる。全国的に、人里と森林の中間地で人が手入れする農地がなくなり、森林の割合が高まっているという。「森林同士の連結性が高まり、野生動物が移動しやすくなった」と分析する。イノシシによる農業被害を食い止めるため、県は22年度から三戸町と田子町でICTを活用したセンサーカメラ付きわなを設置。県南地域で赤外線カメラを搭載したドローンによる監視を予定する。市町村の担当者が捕獲方法などを学ぶ研修会も開催している。県食の安全・安心推進課は「イノシシは養豚場の豚に豚熱の感染を広げる可能性がある。初期段階で被害を最小限に抑えられるよう、切迫感をもって対応にあたりたい」と強調している。

(異変?ヒグマ急増のワケ:北海道)
ヒグマが増え続けている北の大地で一体、何が起きているのでしょうか。現地でヒグマの調査をしている酪農学園大学環境共生学類・佐藤喜和教授に話を聞きました。北海道内にどれくらいヒグマが生息していると見られているのか、1990年代から右肩上がりで増え続けていて、最新の調査2020年では1万頭を超えるとみられています。なぜ、これだけ増えているのか。佐藤教授によりますと、1990年の「春グマ駆除」廃止が関係しているということなんです。この「春グマ駆除」とは、冬眠中や冬眠があけたクマを狙って駆除をして個体数を減らしていくものですが、一時、減りすぎて絶滅の危機があったため、1990年に廃止になり、そこから増加の一途をたどっています。それまで定期的に減らしてきたんですが、1990年が一番クマが少ない時期だったのですが、そこから増えていて、人里にクマが下りてくるようになりました。佐藤教授によりますと、人間側の変化の影響で下りてきているということなんです。私たちの生活は昔からどんどん変わってきていて、1つ農業の観点から佐藤教授に教えて頂きました。以前は畑に人間がたくさんいて、北海道内では農業に携わる仕事をしている方が多く、四六時中働いていたのでクマも人間に警戒して畑に近付かなかった。ただ、近年は農業人口も激減していて、効率化も進んでいて、機械で作業する所も多くなってきました。ですから人間もそこまで、一日中いないということでクマも警戒しない。人もいないしおいしいものいっぱいあるよという事で、すごく住みやすい場所ということで、この辺りに住み始めたといったことかあるようです。どうすればいいのか佐藤教授に聞きますと、電気柵などを活用して人間が住む世界はこっち側、クマが住む世界はそちら側と教えてあげることが大事。人間側とクマ側の境界線をはっきりさせること、それが大事だとおっしゃっていました。

(野生動物による農業被害の対策“森林管理”を専門家が授業:石川)
近年、各地で相次いでいるイノシシやシカなど野生動物による農業などへの被害を減らそうと、金沢市で13日、森林を管理するための講座が開かれました。金沢森林組合で開かれた講座は、将来、林業の担い手を目指す学生が通う金沢林業大学校の公開講座として開かれたもので、13日は、一般の市民も含めて30人ほどが参加しました。森林生態学を専門とする石川県立大学の大井徹教授が講師を務め、野生動物による被害が森林の状態と密接に関わっているとした上で、対策となる森林の管理方法について説明しました。石川県立大学 大井徹教授「被害を出す動物も生態系の中で役割を果たしている。そういった動物たちが生活できる森林を、人間の生活域から離した場所に残してあげることが大切」。大井教授は、石川県内の状況について、年々イノシシによる農業被害が深刻となっているほか、二ホンジカによる被害も今後、深刻な状況に陥る可能性があると指摘しました。

(ドローン×AIで狩猟効率化:千葉)
ドローンの運航や飛行訓練支援を手がける千葉市のダイヤサービスなど5者は、ドローンと人工知能(AI)を組み合わせた獣害対策に乗り出す。ドローンでイノシシなどの野生獣を見つけ、別の運搬用のドローンで近くまでわなを搬送。狩猟者の負担を減らす。千葉県や協力企業の担当者を集め、昨年末に実証実験を行った。まずは赤外線カメラを付けたドローンが上空を巡回。撮影した画像は、ロボット開発会社のロックガレッジ(茨城県古河市)がAIで分析し、イノシシや鹿の発生区域を地図上にまとめる。これを基にわなの設置場所を決め、SkyDrive(愛知県豊田市)が運搬用ドローンでくくりわなと遠隔通報装置を運ぶ。運搬用ドローンの積載量は最大30キロ。狩猟者は重いわなを持って山道を歩かなくて済み、捕獲作業の負担を軽減できる。地元の猟友会も協力する。ダイヤサービスは、2024年度に仕組み確立を目指す。今後はAI検知の精度を高め、捕獲した獣のドローン輸送も検討する。将来的にはわなにかかった獣をAIで判別し、狩猟者に情報を送る仕組みを構想する。県の先進的デジタル技術活用実証プロジェクト補助金を使う。同社の戸出智祐代表は「パッケージ化し、県外にも千葉モデルとして普及させたい」と意気込む。県は「高齢化が進む狩猟者の人手不足解消につなげてほしい」(産業振興課)と期待する。

(“侵略性高い”外来種・サンジャク捕獲へ:高知)
高知県の県鳥で、「幻の鳥」とも言われるヤイロチョウに危険が迫っている。野鳥のヒナや卵を食べる雑食の鳥が県内で増加し、保護団体が警鐘を鳴らしている。2022年8月、高知・黒潮町の無人島「鹿島」で、鳥の親子が水を飲んでいる映像が撮影された。この鳥は、主に中国や東南アジアに分布する外来種・サンジャクだ。全長70cmほどのカラスの仲間で、優雅な見た目に似合わず、他の野鳥のヒナや卵を食べるとされている。実際、鹿島では、元々生息していたメジロがいなくなってしまった。警鐘を鳴らすのが、国の絶滅危惧種・ヤイロチョウの保護に取り組む団体、生態系トラスト協会だ。生態系トラスト協会・中村滝男会長:これほど侵略性の高い外来種が日本に来たのは初めて。このまま10年もしたら四国中に広がる。2021年、協会が管理する四万十町のヤイロチョウ保護区の森林で、サンジャクが初めて発見された。その影響もあってか、この森で毎年生まれていたヤイロチョウの巣立ちが、2022年は全く確認されなかった。サンジャクは、数年前から高知県西部で度々目撃されていたが、2022年は中部の南国市や東部の安芸市でも目撃情報があり、数百羽が生息していると考えられている。生態系トラスト協会・中村滝男会長:われわれ市民団体がいくら努力しても、逆立ちしても解決できない。なかなか根が深いというか、非常に大きな問題を抱えているというのが分かりました。原因は、愛媛・宇和島市のリゾート施設「南レク」内で日本で初めて飼育されていた35羽のサンジャクが、24年前に全て逃げ出したことだった。当時は公表も捕獲もせず、そのままにしていた。そこで生態系トラスト協会は2022年11月、愛媛県に公開質問状を提出。公園を運営する「南レク」と愛媛県から、「捕獲されたサンジャクを可能な範囲で受け入れる」という回答をもらった。協会は2月に要望書を提出し、愛媛県や県内の市町村と協力して迅速に捕獲を進めていきたいとしている。

(人里から消えるニホンノウサギ)
令和5年の干支である「ウサギ」。『古事記』に神話「因幡の白兎」があるほか、「飛躍」や「子孫繁栄」の象徴とされ、日本人になじみ深い動物だ。誰しも動物園などで一度は愛でたことがあろうウサギだが、日本の固有種で、かつては里山の生き物の代表格だった野生のニホンノウサギが、いま人里から姿を消そうとしている。草木に溶け込む茶褐色の毛に、天敵を察知するピンと立った耳と俊敏に走るための筋肉質な後ろ脚-。「この10年で見かける回数は確実に減った。近いようで遠い存在になってしまった」。そう話すのは、八王子市内に東京ドーム約4個分の面積がある長池公園を管理するNPO法人「フュージョン長池」の小林健人さん(35)。都内では、八王子市や町田市など4市にまたがる多摩ニュータウンが、実はニホンノウサギが人間と共生する数少ない生息地となっている。大規模宅地や農地が点在する広大な多摩丘陵の雑木林や草原にひっそり生息しているのだ。ニホンノウサギは、一般に飼育されるアナウサギとは別種のノウサギに分類される。アナウサギが地面に穴を掘って身を隠すのに対し、ノウサギは低い草木が茂る藪(やぶ)を隠れ家とする。天敵であるタカの仲間などの猛禽(もうきん)類らに狙われやすい日中を避け、夜間にエサとなる下草が豊富な草地や林に姿を見せる。体長50センチほどの小ぶりな体ながら、時速80キロもの速さで疾走する個体もいるという。長池公園で昨年、園内に設置したセンサーカメラが捉えたニホンノウサギは1羽のみで「この地区ではあと数年でいなくなる可能性もある」と小林さんは危惧する。昭和30~50年代ごろにかけて、木材供給のための森林伐採が行われた結果、草地が創出され一時的に増殖したことがあった。ただ、平成10年代には林業の衰退や耕作放棄地の増加で、ニホンノウサギにとって好条件な草原や藪が消え、個体数は減少に向かった。都心に近い地域では宅地造成で緑地面積が縮小。自然の野山も、手入れの行き届いていない針葉樹が生い茂る「暗い」人工林に変容していった。いずれも落葉樹林や若齢樹からなる林が減ったことで、エサとなる草や低木がなくなっていった。ニホンノウサギは、北海道や沖縄県などを除き、現在も日本列島のほぼ全域に分布するが、全国的に減少傾向にある。都が公表する絶滅のおそれのある野生生物をまとめたレッドリスト(令和2年版)では、北多摩地域(立川市や武蔵村山市など)において、すでに絶滅危惧Ⅱ類に指定されている。いまやほとんど目にすることがないニホンノウサギだが、人間と共生してきた歴史は長い。旺盛な繁殖力から、日本では古くから「子孫繁栄」や「安産」の象徴とされ信仰の対象でもあった。十五夜の月とウサギを歌った童謡「うさぎ」や、「兎追いしかの山」の歌詞から始まる唱歌「ふるさと」に見られるように、牧歌的な日本の原風景を連想させる生き物でもあった。小林さんはいう。「ニホンノウサギは里山のシンボリックな生き物だ。生活に身近な場所にいることに価値がある。人間と生き物が共生することを考えるきっかけになる存在が、ニホンノウサギだと思う」。

(拳銃構えた警察官に威嚇され逃げたイノシシ:愛知)
11月20日、名古屋市守山区などで野生のイノシシ2頭が出没し、その後も名古屋市周辺で目撃情報が相次ぎました。イノシシの生態について専門家に話を伺いました。11月20日、名古屋市守山区の矢田川河川敷を走る2頭のイノシシ。駆け付けた警察官が拳銃を構えて「撃つぞ!」と大声で威嚇したところ、イノシシは逃げていきました。発砲はせずケガ人もいませんでした。逃げたイノシシは体長1メートルほどで、その後も名古屋市周辺で相次いで目撃されました。イノシシの生態について、野生動物の研究をしている長岡技術科学大学の山本准教授に伺いました。イノシシは時速40キロくらいで走り、大人のオスには牙が生えるため、全速力で襲われて牙が刺さると、大ケガや死に至ることもあります。頭が良く、おいしい食べ物があることを知っているので、里山近くに生息しています。その他にも意外な習性があるといいます。山本准教授:「基本的には臆病な生き物だといわれています。本来は昼行性といって、昼間も行動する動物です」。イノシシは夜行性と思っている人が多いかもしれませんが、本来は昼に行動する動物です。ただ臆病なため、人目を避けられる夜にも動くことがあるといいます。また、今回は矢田川沿いで多く目撃されましたが、これには理由があります。山本准教授:「イノシシは泳ぐのがすごく得意ですので、全然川も泳ぎますし、海も何キロも泳ぐ力を持っています」。イノシシは泳ぐことが得意で、器用に顔を出し、犬かきのように泳ぎます。エサを求めて海を渡り、離島にまでたどり着くイノシシもいるということです。そして市街地に出てくる時は、山から川の流れに乗って下流にやってくることが多いことから、矢田川で多く目撃された可能性があるといいます。もしイノシシに遭遇してしまった時は、どうすればよいのでしょうか。山本准教授:「イノシシというのは臆病なので、自分に逃げる余裕があれば逃げてくれると思うんですけど、自分がもう逃げられない・危ないって思うと、最後は人間に突進してきます」。電柱や木に隠れたり体を丸めるなど、刺激しないことで攻撃される可能性は低くなるそうです。イノシシによる農作物の被害もでています。被害額は愛知県で年間約1億円、全国で約47億円もあります。また、イノシシの「穴を掘る」という習性によって、金額以上の被害もでています。山本准教授:「イノシシってすごく掘るのが得意な動物なんですね。鼻を使ってにおいを嗅ぎながら、バフバフって土を掘ります。掘ることによって、例えば農地の法面が掘られてしまったり、道路の斜面、そういう所がバカバカってイノシシに掘られて穴が開いたり」。農作地やゴルフ場の芝が荒らされたり、斜面が削られて土砂災害の危険性が増すのだそうです。山本准教授によると、農村では過疎や高齢化により耕作放棄地が増え、イノシシが里山に下りてきやすくなっていて、「農村を守るための対策」を考えていかないといけないと話しています。

(「マタギ」発祥の秋田、残る伝統:秋田)
秋田県内陸部にある小さな駅。雪の中を進む列車を降りると、ホームでは大きな木彫りが存在感を放っていた。集団で狩猟をする「マタギ」。そのふるさとを歩いた。雪が辺り一面を覆う。山と川に囲まれた駅に列車が来るのは1日に10数本。列車を待つ間、聞こえるのは川の静かなせせらぎの音だけだ。秋田県を縦に貫く秋田内陸縦貫鉄道(秋田内陸線)の阿仁(あに)マタギ駅(同県北秋田市)では、編み笠をかぶり、銃を持つ木彫りの像が迎えてくれた。一瞬たじろぐ置物は、山々とともに暮らす人々が生んだ伝統に由来する。駅から送迎バスで3分ほどのところにあるマタギ資料館を訪ねた。

(ハンターと歩いて動物の痕跡探し:長野)
熟練の狩猟者と動物の痕跡を探す「ハンターと歩く里山」が15日、安曇野市東部の長峰山で開かれた。市猟友会と「さとぷろ。」の主催で、登山口から山頂までの約1.8㌔を往復して、ニホンジカの足跡やツキノワグマの爪痕などを見つけた。市内を中心に子供から大人までの19人が参加した。曇っていたものの1月にしては暖かい陽気の中、3班に分かれて野生動物の手がかりを探した。少しぬかるんだ土の上には、鹿の足跡がくっきりと残っていた。山頂付近では木の幹に鹿が角をこすりつけたり、熊が爪で引っかいたりした痕跡があった。ハンターの視点を学ぶことで新たな里山の魅力を発見し、ハンターのすそ野も広げようと、平成30(2018)年から年1、2回開いている。母親と参加した松本市島立の大沢篤士君(11)=島立小学校5年=は狩猟に興味があるといい、「鹿が角で木をこすると初めて知った」と喜んでいた。

(移住の若者、狩猟を通じ山で生きる知恵学ぶ:山形)
任期3年の地域おこし協力隊のメンバーとして2013年、鶴岡市南部の限界集落・大鳥地区(旧・朝日村)に移り住んだ田口比呂貴さん(36)。すっかり地域に溶け込み、毎年この時期は地元で除雪業務に駆け回りながら、春の足音をじっと待っている。クマが眠りから目覚め、山菜が芽吹く時を――。大鳥地区では5~10人が連携しながら、「巻き狩り」と呼ばれる方法でクマを捕らえる。双眼鏡をのぞく親方が見つけたクマを、数人が大声を出して山頂部へ追いやり、待ち構えていたメンバーが猟銃で仕留める。田口さんも、猟銃を構えることがある。狩猟がない日には、タラの芽やコシアブラ、ウドなどを採り、いためるなどして味わう。「動物を捕まえ、山菜やキノコを採り、伐採した木から薪を作る。山の資源に生かされていると、つくづく感じる」山での生活に憧れたきっかけは、会社員だった20歳代半ばの大型連休中のできごとだった。ヒッチハイクで知り合った男性が山小屋で暮らし、裏山で採れた山菜やタケノコを家の七輪で焼いて食べているのを見て、衝撃を受けた。「山には生きていくために必要なものがそろっている。自分も、金を払って物を手に入れるのではなく、山の恵みを生かし、生きていきたい」。そのための手段として思い浮かんだのが、地域おこし協力隊への応募だった。地域おこし協力隊の先輩が多くいた、第1希望の中国地方の山間部の自治体には採用されず、縁があったのは「保険」で応募した鶴岡市だった。母親の実家が村山市にあったが、山形県については、「田舎で自然がたくさんあるところ」といった漠然としたイメージしかなかった。「ここに住むんだったら、鉄砲を持て」。横浜市から鶴岡市の大鳥地区に着任した13年5月、あいさつに訪れた住民宅でいきなり求められた。狩猟には関心がなかったが、「この地区は、そういうところなのか」と素直に受け入れた。言われるがままに、狩猟免許と銃の所持許可を1年目に取得したが、簡単に獲物を捕獲できるわけではない。10キロほどの荷物を背負い、半日以上かけてクラ(猟場)までの山道を歩くこともある。雪で足を滑らせ、危うく滑落して命を落としかけた時は、足が震え、声が出なかった。危険と隣り合わせの猟を続けるうちに、獲物をたくさん授かり、無事に猟から帰れるよう祈りをささげる、見えない「山の神」を大切にして生きる地区の人の精神が自然と身についてきた。クマをはじめ、ウサギやヤマドリ、カモ――。猟歴数十年のベテラン猟師たちが、動物たちの動きを的確に読み、仕留める姿に感激した。「もっと自分も動物や山のことを知りたい」。近くで商店を営むベテラン猟師、工藤朝男さん(86)の自宅に毎週のように通い詰め、動物の習性を学んだ。高齢を理由に2年ほど前に狩猟をやめた工藤さんは、「猟師が減る中、若い人が来てくれるのはありがたい」と感謝し、「今は未熟だが、これからも勉強して経験を重ねれば、きっと猟師としてリーダー的な存在になれる」と期待する。協力隊の任期中に出会った、同市内の女性と19年に結婚した。現在は大鳥振興企業組合に勤め、地域の除雪や草取りなどの仕事に従事。その合間に、狩猟や山菜採り、地区の民俗調査を行っている。大鳥地区の人口は66人(昨年12月末現在)で、8割近くが高齢者だ。「高齢化が進み、山の恵みを生かして生きてきた人たちの話を聞けるのは、あと数年かもしれない」。そう考え、狩猟や山菜採りなどをする地区住民にインタビューし、文献を読み、様々なサイトや自費発行の民俗誌で発信している。山で生きるための知恵は地域の宝。「少しでも一緒に経験させてもらい、この地区の人たちの見る山の世界に触れ、残していきたい」と力を込める。

(元会社員の女性がイノシシ肉に魅せられ猟師に:鳥取)
都会での会社員生活に見切りをつけ、憧れの田舎暮らしを実現した山本暁子さん。そんな彼女の田舎暮らしを支えているのが、IT在宅ワーカーと猟師の二足のわらじだ。最近『初めてでも大丈夫 狩猟入門』(扶桑社刊)を上梓した山本さんに、猟師になるまでの道のりとその生活を聞いた。山本さんは、もともと東京のIT企業で会社員として働いていたが、2018年に夫婦で鳥取県の山奥にある集落に“孫ターン”した。現在は亡き祖父と曾祖父が建てた築70年の家に、山本さん、夫、犬1匹、猫1匹、デグー1匹という家族構成で暮らしている。プログラミングやウェブデザインの仕事は期日までに仕上げればいいので、わりと自由が利く。そのため、午前中は主に仕掛けた罠の見回りや捕獲といった狩猟活動に充て、午後からは在宅ワークに励んでいる。山本さんが移住してから数カ月後、集落の草刈り活動のあとに慰労会があり、そこでイノシシ肉をごちそうになった。塩コショウをして焼いただけだったが、そのおいしさは衝撃的だった。感動しながら食べていると、地域のおじさんがこう教えてくれた。「猟師になって自分で獲れば、いつでも食べられるで」。すっかりイノシシ肉のおいしさに魅せられた山本さんは、「イノシシ猟をやるなら強力な銃がいるんだろう」と、迷うことなく散弾銃と罠の免許を取ることを決めていた。行政や周囲の助けもあり、無事「わな猟免許」と「第一種銃猟免許」を取得した山本さんを、銃を譲ってくれた猟師が、銃でシカの止め刺しをしてみないかと誘ってくれた。先輩たちに見守られるなか、初弾を外したが、励まされながら撃ち続け、4発目でやっと命中させることができた。シカには申し訳ないと思いながらも、初めて自分で止め刺しできた喜びと興奮は大きかった。この年の猟期が終わる最後の日曜日に、近くの集落に住んでいる猟師たちから巻き狩りのお誘いを受けた。巻き狩りとは、日本全国で行われている集団猟法のひとつ。勢子(せこ)と呼ばれる誘導役が犬を使って追い立てた獲物を、タツマと呼ばれる複数の仕留め役が待ち伏せ、銃で撃って仕留めるというものだ。山本さんは、結局この日は発砲するチャンスはなかったが、巻き狩り後に参加した反省会という名の宴会が楽しかった。有害鳥獣駆除や罠をかけるコツなども聞けたし、困ったらいつでも相談に来いといわれたことで、安心して狩猟ができる後ろ盾を手に入れた気がしたという。猟期が終わると、山本さんの元に有害鳥獣駆除の従事者証が届いた。さっそく駆除に使う標識を作成し、くくり罠を設置したものの、獲物はかからなかった。しかし、少しずつ捕獲の兆しも見えはじめていた。罠は発動するのだが、あと一歩で獲物に逃げられてしまう“空はじき”が発生するようになったのだ。このころから徐々に体力と土地勘がついてきたこともあり、罠を設置するエリアも広がっていき、猟師仲間との情報交換も大きな助けとなった。そして、ついに獲物がかかった。2歳くらいのメスジカだ。初めてひとりで行う止め刺しは銃で行うことにした。当時の山本さんには若いメスジカでさえ近づくのは怖かったし、技術が未熟な自分が確実に安楽死させられる手段は、銃だと考えたからだ。興奮と緊張で手が震えたが、一発でシカに当てることができた。獲物が捕れない時期も、ベテラン猟師にイノシシなどで経験を積ませてもらったおかげだと山本さんは感謝したそうだ。ただ、その後が大変だった。道具が不十分だったため、市の職員に手伝ってもらってなんとかシカを運び出して処理をした。十分に備えていたつもりだったが、いざとならないとわからないことが多いと痛感したという。そんな試行錯誤を繰り返し、翌年には猟犬を飼い始めた山本さんは、3年目からはひとりで年間130頭以上を捕獲するまでに成長した。捕獲した獲物はジビエとして楽しめる。山本さんは、食肉処理施設に通って解体を学び、いまでは自宅の庭で、自分で獲物を解体している。牛肉にも「〇〇牛がおいしい、△△産のブランドが絶品」などの違いがある。これらは育て方や品種、処理方法などの違いによって生まれるものだ。野生鳥獣は自然界で育っているため、季節や個体差が味に顕著に表れる。「私は狩猟だけではなく年間を通して有害鳥獣駆除を行い、処理施設でもたくさん解体してきたので、『これはおいしそうなシカ肉だ』とか『これはイマイチなイノシシ肉だ』などと、なんとなくわかるようになりました」と山本さん。スーパーで肉を見たとき、「お、これはステーキで食べたらおいしいかも」「カレーならこれくらいの肉でも」と考えて購入すると思うが、それと同じということだ。「とにかく種は何であれ、おいしいジビエ肉は焼いて塩コショウするだけでおいしいのですが、個人的にはしゃぶしゃぶや寄せ鍋がお気に入り」という山本さんは、一時期、獲ってその場で食べることにハマり、SNSを参考にあれこれ試したが、一番おいしかったのが「ヒヨドリラーメン」なのだそう。少ない調理器具で簡単にでき、味も最高。ヒヨドリはとても身近な鳥で、銃猟初心者でも捕獲しやすい種のひとつ。雪が降った日に熟した柿を雪の上に置いて、じっと待っているだけで飛んでくることも多いという。「獲ったヒヨドリの羽根をその場でむしって丸鶏にし、丸ごと煮込みます。アクを除くときれいな黄色いスープができます。そのスープにインスタントの塩ラーメンを投入し、麺がほぐれたら付属の粉末スープを半分くらい入れれば完成。あっさりしているのに濃厚なヒヨドリの旨味が、塩味の調味料とよく合う。肉はそのままかぶりつきます」。さらに、白菜や白ネギなどの野菜を入れると甘味が増すそうだ。「スープが染み込んだ野菜を、シャクシャク食べるのがたまらない。誰もいない寒い林の中で温かいスープを飲み干すと、体がポカポカと暖まり、とても満ち足りた気持ちになってきます」と山本さんは教えてくれた。山本さんおすすめのイノシシ肉の調理法は“イノカツ“。イノシシの脂は豚肉よりもあっさりしていて胃もたれしないので、揚げ物に合う。とくにカツは衣で肉を包んで揚げる料理法なので、赤身がしっとりやわらかく仕上がるそうだ。シカは「ローストベニソン」がオススメの調理法。いわばローストビーフのシカバージョンだが、実は炊飯器で簡単につくることができる。「シカ肉はレバーっぽくて苦手という友人が、『シカってこんなにおいしいの?』と感動していました。このシカ肉のレバーのような臭みは100℃以上に加熱することが原因なので、低温調理が向いています」と山本さん。調理法も簡単。味が染み込むようにフォークで突いたシカ肉に、塩、コショウをまぶし、酒、醤油、蜂蜜、ニンニク、ローズマリーとともに、ジッパー付き保存袋に入れて冷蔵庫でひと晩寝かせる。炊飯器を保温にして沸騰させたお湯を張り、その中に保存袋ごと入れて90分ほど放置。最後にフライパンで表面を焼けば完成だ。ソースは漬け込んだ調味液にバルサミコ酢とワイン、ジャムを加え、肉を焼いたフライパンで煮詰めてつくる。そんな、移住先での狩猟に携わる暮らしを存分に楽しんでいる山本さんだが、獲物の命を奪う際には、いろいろな感情が複雑に絡み合い、それが塊となって一気に押し寄せてくるともいう。「この感情を理性で受け止めるためには、自分の狩猟行為についてよく考えて、裏づけをしておくことが大切だと思う」と山本さん。「狩猟をはじめておよそ4年。自分でいうのもなんですが、狩猟の技術や知識もだいぶ上がった自信はあります。でも、自然を相手にする狩猟には常に危険がつきまとうもの。初心を忘れない。そんな想いを胸に、今日も私は山を歩きます」。

(狩猟・田舎暮らし体験プログラムを初開催:京都)
上世屋獣肉店運営推進協議会が、環境省の「国立・国定公園での利用拠点を活用した自然体験プログラム推進事業」を活用し、狩猟・田舎暮らし体験プログラムを初開催します。「京都 棚田の村『上世屋集落』」では、「上世屋ジビエサステナブルツーリズム~自然・文化的景観と人々の暮らしを守るジビエ~」事業が展開されています。その一環として、「楽天トラベル観光体験」と高品質なジビエを生産する上世屋獣肉店等が連携して造成した観光体験プログラムが、初めて開催されます。

(「困ったカモ」たちに立ち向かう「農家ハンター」:熊本)
稲葉達也(いなば たつや)さん44歳。農業を本業とするかたわら「農家ハンター」として、野生動物による農作物被害を防ぐ活動を熊本県内各地で行っています。野生動物による被害額は、昔からイノシシが不動の1位。しかし、稲葉さんが今、最も危機感を持っているのは全く別の動物です。毎年冬になると大陸から海を渡ってきて、カワイイ姿を見せてくれるカモ。しかし、県の最新の調査では、カモの農業被害額がおよそ1億8千万円とイノシシの被害に並ぶ勢い。10年前と比べると、およそ40倍にも増加しているのです。県内でも被害額が最も大きいのが、海沿いに広大な農地が広がる八代市です。八代市農業振興課 野田良晴 課長補佐「2016年ぐらいから被害額が増えだして、2019年からは毎年約1億円。以前は鹿・猪あたりの被害がずっと出ていたが、近年は鳥の方がはるかに大きい」。そのカモの被害が本格化し始めたと聞き、JAやつしろを訪れた稲葉さん。そこで目にしたのは、八代市の農家が撮影した1本の動画でした。そこには、無数のカモが飛んでいる映像が…。急拡大するカモの被害。はっきりとした原因はわかっていませんが、考えられる理由の1つが、栽培される農作物の変化だといいます。野田課長補佐「2019年、露地野菜が1000haを超えた。5~6年前はまだ600haほど。相当増えてきている」。露地野菜とは、ハウスなどを使わない露天の畑で栽培する野菜のこと。カモは、元々収穫が終わった後の稲を食べていたため、農家の被害にはなりませんでした。しかし、露地野菜が増えたことでカモの食生活に変化が。この被害を食い止めるため、2021年3月、県や八代市などが対策協議会を立ち上げ、稲葉さんもこれに協力することに。畑の上に何本もの糸を張りめぐらせ、空からの侵入を防ぐ仕掛けや、動くものに反応して光を出すレーザーライトを導入するなど、様々な取り組みがなされています。一方、イノシシでは有効だった駆除や捕獲で数を減らすことは、解決には繋がらないといいます。有効な対策が確立されていないカモ被害。農業を守るため、農家ハンターの挑戦は続きます。

(目標は「狩猟アイドル」?)
公開中の映画「嘘八百 なにわ夢の陣」の宣伝のため、7日の情報番組「めざましどようび」(フジテレビ系)に主演の中井貴一と共演の関ジャニ∞・安田章大が登場した。この映画は2018年から公開されている「嘘八百」シリーズで、今回は豊臣秀吉の出世を後押ししたといわれる「秀吉七品(しちしな)」の1つである“鳳凰の銘がついた茶碗”を巡って物語が展開。中井は詐欺師まがいの古美術商・小池則夫役、安田はカリスマ波動アーティスト・TAIKOH役を演じている。インタビューで「年末年始笑ったことは」の話題になり、安田は「北海道のジビエ友達から熊肉を送ってもらった」と話し、「ほっぺたが落ちてもうて、美味しすぎて」と満面の笑みでコメント。中井からは「どんな友達やねん」とツッコまれていた。実は、安田は大のジビエ好きで知られている。2020年に出演した「関ジャニ∞クロニクルF」(フジテレビ系)では、超絶美味いと噂される冬眠前の熊肉を求め、岐阜県の飛騨高山で猟師を生業にしている一家を訪問したことも。「安田は1月5日に放送された『ダウンタウンDXDX 芸能界2023最強運ランキング!』(日本テレビ系)に出演した際、MCの浜田雅功から今年の目標を聞かれると、『狩りの番組をやりたい』と宣言。さらに『狩猟の免許を取りに行きたくて』僕ジビエが好きなんです。それで、命をちゃんと扱おうと思って』と続け、ジビエの魅力に魅せられたことを熱く語っていました」(芸能ライター)。番組では、占術家・水晶玉子が安田を占うと、「未開の地を開拓することで運気がアップ」「火と土のパワーが強くなり、特に火と自然に関することがいい」との鑑定結果に。ただし、いきなり仕事という風には考えないほうがいいらしく「ゆっくり自分の趣味とか、腕を上げてからのほうがいいと思います」とアドバイスされていた。2023年の安田は「狩猟アイドル」に?

(クマの目撃2件「この時期の目撃珍しい」:宮城)
1月14日、宮城県仙台市と丸森町でクマが目撃されました。警察は「この時期の目撃は珍しい」と話していて、付近の住民に注意を呼び掛けています。14日午後6時40分頃、仙台市青葉区荒巻坊主門の市道でクマ一頭が歩いているのを通りがかった人が目撃し警察に通報しました。警察によりますとクマの体長は1メートルほどで、東側の山林に逃げていったということです。現場はJR国見駅の南側の住宅地で、警察が周辺の住民に注意を呼び掛けています。また、きょう午後5時頃、丸森町大内山ノ神の田んぼでも体長1.5メートルほどのクマが目撃されました。クマは南側の山林に逃げていったということです。警察は「この時期のクマの目撃は珍しい」と話していて、付近をパトロールするとともに注意を呼び掛けています。

(「令和4年度ジビエ連携フォーラム」の開催:岡山)
農林水産省中国四国農政局は、令和5年2月1日(水曜日)に岡山第2合同庁舎10階A・B会議室において「令和4年度ジビエ連携フォーラム」を開催します。これにより、捕獲した野生鳥獣の食肉以外での多用途利用(ペットフード、皮革等)の普及拡大を図るとともに、これらの活動に取り組む関係者の相互連携を図ります。本フォーラムは、捕獲した野生鳥獣をペットフード、皮革等に多用途利用することが、捕獲に伴う廃棄物を減らすだけでなく、自然の恩恵として得られる野生鳥獣を地域資源として有効活用していく流れをより力強いものにするものであり、地域社会の維持等の効果を生み出す社会的意義のある取組であることに鑑み、野生鳥獣を地域資源として利用する関係者の相互連携を図ることによりジビエ利活用の取組を発展・充実させることを目的として開催します。

(鹿めしの缶詰を備蓄食に:兵庫)
災害時のための備蓄食にできる鹿めしの缶詰を、私立東洋大付属姫路高校(兵庫県姫路市)の特産品開発チーム「プロジェクトTOYO」が商品化した。獣害対策で駆除された鹿の命を有効活用するとともに、被災者の命を救おうという思いから商品名を「絆・鹿めし」と名付け、17日に神戸市中央区で開かれる「ひょうご安全の日のつどい」の交流ひろばでお披露目される。同チームは、地域の資源を生かして地元の活性化を目指す取り組みを進める部活動。鹿については令和元年度から関心を持ち、駆除鹿の肉を原料にした缶詰の商品開発を進めて2年度に発売した。その後、メンバーたちは「鹿の命を余すことなく有効に活用したい」と、骨に着目。苦心して試作を重ねた鹿骨のスープが満足できる出来栄えだったため、これを生かした商品開発を目指し、牛丼風の鹿めしが完成した。鹿肉は、スライスして三温糖やしょうゆ、甘酒と煮込み、加温しなくてもおいしく食べられるよう甘めの味付け。ご飯は、JA兵庫西(同市)から提供を受けた県認証食品のブランド米「にっしぃライス輝」で、淡路島産タマネギなどを炊き込むなどし、栄養価の高い備蓄食に仕上がった。1個600円。17日には、交流広場で絆・鹿めし20個を無料配布するほか、特別価格(500円)で販売。同日から姫路市のじばさんびる・播産館でも販売を始める。「『つなごう、いのちを未来に』をテーマに、自然からいただいた命を困っている人につなぐ備蓄食になれば」と2年の木口八雲部長(16)。「発売後も味の改良を続け、米についても自分たちで生産していきたい」と話している。

(小学生が有害鳥獣のシカの革でキーホルダー作りに挑戦:和歌山)
農作物を食い荒らす有害鳥獣として捕獲されたシカの革を使って、広川町の小学生たちがキーホルダー作りに挑戦しました。和歌山県は、有害鳥獣による被害の実態とその有効活用方法について子どもたちに知ってもらう取り組みを行っていて、13日は、広川町の広小学校で、シカの革を使ったキーホルダー作り教室が開かれました。教室には6年生21人が参加し、県の職員から、有害鳥獣によって毎年2億円を超える農作物への被害が出ていることや、被害を防ぐために捕獲したシカやイノシシを有効に活用しようと、「ジビエ」として肉を食べる取り組みが進められていることが説明されました。そのあと、子どもたちは、シカの革を使ったキーホルダー作りに挑戦し、あらかじめハートや動物の形などに加工された革に金具を付けたり、花やアルファベットのスタンプを押したりして完成させていました。参加した女子児童は、「いい体験になりました。農作物を食い荒らす悪いやつだと思っていたけど、私たちの命のためにもなっていることを学びました」と話していました。

(猟師夫妻の国産ジビエいかが:岐阜)
ゆったりとした雰囲気の日本家屋でシカやイノシシ肉などの国産ジビエをどうぞ―。大野町野にある家屋を改装した飲食店「ぎふ銀杏(ぎんなん)」が、昨年十二月にオープンした。ともに猟師の羽賀将光さん(56)と真由美さん(48)夫妻が「猟師ならではの提供方法で、ジビエ肉を感じてもらいたい」との思いで店を開いた。店舗横には民泊「お宿銀杏」があり、料理を楽しんだ後にくつろげる。

(ジビエ扱う精肉店を営む:長野)
イノシシ、シカ、ウサギ、キジ…。店内にはスーパーでは見かけないような動物の肉や部位が、ずらりと並ぶ。その数、百五十種類。飯田市の遠山郷の南信濃和田で精肉店「肉のスズキヤ」を営む鈴木理(まさし)さん(62)は「遠山の食文化を守ろう」と、丁寧な仕事を続ける

(当地コラボ『天城伊豆鹿バーガー』:静岡)
静岡・東京を中心に飲食店を展開している株式会社フーディアム・インターナショナル(本社:静岡県沼津市寿町23-1、代表取締役社長:三木 信治)は、静岡・沼津港に位置する「ハンバーガー&カフェ 沼津バーガー」(以下、沼津バーガー)にて、ご当地コラボ商品の今年第1弾を、販売開始します!!昨年10月から期間限定販売・ご好評いただいております、DomDomとのコラボレーションによる「丸ごと!カニバーガー」の販売を終了し、1月14日(土)より新たに「天城伊豆鹿バーガー」の販売を開始致します。「沼津バーガー」は、沼津港に位置しており、魚系のバーガーだけでなく、地元静岡の”あしたか牛”を使った肉系バーガーも販売しています。今回は肉系でも昨今注目されている~自然の尊い命をいただく~ジビエに挑戦!!海の幸から山の恵みまで堪能できる、静岡の魅力満載「沼津バーガー」へ、この期間に是非足をお運び下さい。

(「獣害」で駆除した鹿肉、ペットフードに変身:兵庫)
鹿肉を加工したペットフードが、兵庫県丹波篠山市内で相次いで発売されている。鹿肉や猪(しし)肉はジビエ(野生鳥獣の肉)として注目されているものの、害獣として駆除される鹿の肉は、地中へ埋めるなど廃棄されることが多い。「鹿肉はヘルシーで栄養価が高い食材。ペットフードとして、命を少しでも無駄なく使えれば」と関係者らは語る。2020年末に東京から丹波篠山へ移住した森重希美さん(36)は昨年起業し、自宅に「ささやまジャーキー工房」を開いた。扱うのは市内で捕獲された鹿の肉のジャーキーや乾燥させた鹿肉を粉砕したふりかけなどだ。犬や猫用のおやつで、地元の猟師から仕入れた冷凍肉を自らがスライスし、フードドライヤーで乾燥させ、袋に詰める。地元の猟師から、ハンターの高齢化や食肉利用へのさまざまなハードルのため、鹿肉が利用されず、大半が捨てられている実情を聞き、自らペットフードの製造販売に乗り出した。ネット販売のほか、各地のマルシェ、イベントで対面販売する。「いい物件が見つかれば、実店舗も開きたい」と将来を描く。市内でカフェを営む西田博一さん(48)と農家の長井拓馬さん(32)はともに猟師としても活動。2人で「mogana(もがな)」のブランドで、自らが仕留めた野生の鹿などを素材にした「ハンティングドッグスープ」を19年に試作し、20年からネットショップなどで販売している。狩猟で険しい山を20キロ以上走り回ることもある猟犬のことを考えたスープで、鹿肉と骨、地元産の野菜を長時間煮込む。ドッグフードにかけて使い、「うちの猟犬も大喜びする」と西田さん。鹿肉は高タンパク、低脂肪、低カロリーで鉄分も多く含む。「食欲増進の効果があり、毛の色つやもよくなる。アレルギーの犬にもいい」と説明する。猪肉専門店「おゝみや」(同市乾新町)は昨年、ドッグブリーダーと共に、天然の鹿肉を用いたドッグフードを共同開発した。自社工場で加工したジャーキーやスペアリブなどを販売している。

(ジビエをおいしくたべる会:千葉)
小湊鐡道の飯給駅からすぐの場所にある「cafeうさぎや」さんは、本格エスニック料理や美味しいスイーツをいただける里山のレストランです。昨年はドッグランも併設したそうですよ!そんな「cafeうさぎや」さんの魅力あるお料理のひとつが「ジビエ料理」です。昨年から開始した人気の「ジビエをおいしくたべる会」が2023年1月21日(土)に開催されます。

(イノシシ出没:宮城)
登米市によると、16日午後1時15分ごろ、登米市中田町石森室木にイノシシが出没しました。

(イノシシ出没:宮城)
登米市によると、16日午前9時50分ごろ、登米市迫町佐沼上舟丁にイノシシが出没しました。

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(狩猟仲間にライフル銃を誤射:福島)
9日午前10時50分頃、福島県磐梯町大谷の山林で、イノシシを狩猟していた会津地方在住の60歳代男性の左足に、一緒に狩猟をしていた仲間が撃ったライフル銃1発が当たり、全治3週間程度の軽傷を負った。福島県警猪苗代署は、銃を撃った郡山市の無職の男(68)を業務上過失致傷容疑で任意捜査している。男は軽傷を負った男性と約60メートル離れた位置にいたといい、調べに対し、「イノシシだと思って間違って撃ってしまった」と容疑を認めている。

(男女3人でイノシシ猟中、フロントガラス貫通し首に被弾:山口)
9日午後1時半ごろ、山口県下関市菊川町の山中で、男女3人が猟をしていたところ、猟銃の弾が近くの車内にいた男性(80代)に当たりました。男性は首にけがをしましたが、命に別状はないということです。警察によりますと、けがをした男性は元狩猟者で、男女3人と現場に向かい、3人が猟をするのを車の中で待っていたということです。男性が運転席に座っていたところ、弾がフロントガラスを貫通し男性に当たりました。山に入った3人は、イノシシやシカ猟をしていて、そのうち1人の男性が気付き119番通報したということです。警察では業務上過失傷害の疑いも視野に、誰の弾が当たったのかなどを捜査しています。

(弾3発入りの散弾銃、80代男性が紛失:大阪)
10日午前8時50分ごろ、大阪府高槻市の80代男性が「猟銃をなくした」と府警高槻署に届け出た。府警によると、男性は狩猟のために入った同市の山で8日、実包3発を込めた散弾銃1丁を紛失したと説明しており、約50人態勢で捜索している。保安課によると、男性は8日午前10時ごろ、知人2人と同市の山に入った。入山後は別々に行動し、午後2時ごろに背負っていた猟銃がなくなっていることに気づいたという。男性は9日まで山中で銃を捜したが見つからなかった。男性は銃刀法に基づき、1973年から猟銃所持の許可を受けていたという。府警は紛失場所の詳細を明らかにしていないが、防犯情報を配信する「安まちメール」で、同市内の山に近づかないよう呼びかけている。

(住宅街でイノシシに襲われ3人けが:山形)
今月7日、南陽市内の住宅街で男女3人がイノシシに襲われ、足をかまれるなどのけがをしました。市は、イノシシに出くわした場合、不用意に近づかないよう注意を呼びかけています。今月7日午前10時すぎ、南陽市宮内の住宅街にある店の駐車場で、市外に住む40代の母親と10代の娘がイノシシに襲われ、ふくらはぎや太ももをかまれました。さらに、店の駐車場から数百メートル離れた路上で、近くに住む70代の男性もイノシシにかまれ、太ももなどをけがしました。警察や消防、地元の猟友会がイノシシを捜索したところ、正午すぎに市内の水路にはまって動けなくなっているイノシシを見つけ駆除しました。市によりますと、捕獲されたイノシシは、▽体長およそ1.5メートル、▽体重およそ130キロだということです。これを受け、県はすべての市町村に対し、市街地でイノシシが出没した場合、警察や猟友会などと連携してパトロールを行うなど、被害を防ぐための対応策を確認するよう通知文を出しました。南陽市総合防災課は、イノシシに出くわした場合、▽不用意に近づかず、▽背中を見せないまま慌てずに逃げてほしいと呼びかけています。

(イノシシに襲われ負傷:広島)
広島県尾道市瀬戸田町名荷で25日午前、80代の女性が自宅の庭でイノシシにかまれ負傷していたことが27日、分かった。15日には同市因島田熊町で4人が負傷しており、市内の島しょ部でのイノシシ襲撃は今月2件目。市や尾道署によると、25日午前11時ごろ、庭木の手入れをしていた女性がイノシシに襲われ、左脚や尻をかまれた。女性は出血し、市内の病院に搬送された。現場は瀬戸田高の南東約600メートルの住宅地。

(イノシシに襲われ女性けが:愛媛)
6日午前、今治市の路上で60代の女性がイノシシに襲われ、手首や太ももに軽いけがをしました。6日午前11時20分ごろ今治市美保町の路上で「女性がイノシシに襲われた」と女性の家族から消防に通報がありました。警察によりますと、襲われたのは近くに住む60代の女性で道路を歩いていたところ、イノシシに左手首や左足の太ももをかまれて軽いけがをしたということです。警察によりますとイノシシは体長1メートルくらいで女性を襲ったあと、東の方向へ逃げたということです。また、通報からおよそ15分後に現場から800メートルほど離れた路上に体長1メートルあまりのイノシシが死んだ状態で発見されたということで、警察は女性を襲ったイノシシとの関連について調べています。

(庭で作業中の女性(60代)にイノシシ突進:山口)
9日午後6時50分ごろ、山口県美祢市美東町大田で、女性(60代)が庭で作業をしていたところ、とつぜんイノシシ3頭が現れ、このうち1頭が、左側から女性に突進しました。女性はろっ骨2本を折り、全治4~6週間の重傷です。イノシシは逃げていったということです。美祢署によりますと、現場は民家が点在する地域で、女性によると襲ってきたイノシシは体長1メートルほどあったということです。警察では周囲をパトロールするなどして、警戒をしています。

(男女2人が相次いでイノシシに襲われけが:香川)
10日午後、香川県の小豆島にある港やその周辺で男女2人が相次いでイノシシに襲われ、腕や太ももなどをかまれてけがをしました。イノシシはまだ捕獲されておらず警察は注意を呼びかけています。10日午後4時半ごろ小豆島の土庄町にある小海漁港の東側の路上で近くに住む79歳の女性が犬の散歩をしていたところイノシシに襲われ右腕や右足の太ももを数回にわたりかまれてけがをしました。女性は病院でかまれた部分を縫うなどの手当てを受けたということです。警察によりますと、イノシシは体長1メートルくらいで女性を襲ったあと、南の方向へ逃げたということです。それから、およそ3時間後の午後7時20分ごろ、小海漁港で釣りをしていた70歳の男性が体長およそ1メートルのイノシシに襲われ右手の親指をかまれてけがをしました。警察によりますと2人を襲ったイノシシが同じかどうかはわからないものの、まだ捕獲されていないということで警察は現場周辺をパトロールして注意を呼びかけています。

(救急車が鹿と衝突し、到着30分遅れる:長野)
9日午後9時20分ごろ、東筑摩郡筑北村坂井の県道で、緊急走行中の救急車と道路脇から飛び出してきた鹿が衝突する事故があった。松本広域消防局(松本市)が10日、発表した。同消防局によると、救急車は村内の患者宅に向かう途中で、事故を受けて別の救急車が出動したが、患者宅への到着が約30分遅れた。患者の容体について「影響はない」としている。同消防局によると、救急車は急病の通報を受けて麻績消防署(東筑摩郡麻績村)から出動。事故のため車体前方の赤色回転灯などが壊れたが、乗っていた救急隊員3人にけがはなかった。同消防局は患者本人に対し事故について説明、謝罪したとし「全職員で情報を共有し、再発防止に努める」とコメントした。

(鳥インフル最多、早期発見で拡大を防げ)
高病原性鳥インフルエンザへ最大限の警戒が必要だ。今季の発生は長期化し、殺処分対象は全国で1000万羽を超え、過去最多となった。拡大を防ぐには鶏の異常を早期に発見し、初期段階で封じ込めることが鍵だ。経営を守るために、地域を挙げて防疫態勢を一段と強化しよう。殺処分対象羽数が過去最多となったことを受け、野村哲郎農相は「最大限の緊急警戒を呼びかけたい」と強調。今季の発生は、金網や壁の穴から野生動物が侵入した疑いや、衣服や長靴の交換・消毒が不十分だった例があるとして、飼養衛生管理の取り組みの確認、改善を訴えた。これほどの大発生が起こる背景の一つには、ウイルスの変化があるとみられる。死に至らない毒性の弱まったウイルスが渡り鳥の体内で生存し続け、ウイルスを持ったまま日本に渡る鳥が増えたという見方だ。北海道大学大学院の迫田義博教授は「感染しても宿主を殺してしまうウイルスが減ってきているのではないか」と分析する。今季の野鳥は、初期の段階からハヤブサなどの猛禽(もうきん)類で陽性個体が見つかった。感染しても死なない渡り鳥を食べた猛禽類が感染したと考えられるという。ただ、このウイルスは鶏に対して致死率75%以上の高病原性を示す。感染の拡大を防ぐには殺処分が必要となる。日本に侵入するウイルスと同系統が見つかっている欧州では昨年、流行期ではない夏でも発生が相次いだ。フランスでは5~11月に1900万羽を殺処分。米国では2月以降で5800万羽と過去最多の殺処分となった。国内では年末年始の需要期を過ぎ、鶏卵に関しては大きな不足感はないとみられる。しかし、大規模な農場での発生が長期にわたって続けば、需給への影響が懸念される。殺処分に費やす労力や時間は相当だ。昨年12月15日に青森県で発生した137万羽を飼養する農場では、処理に15日を費やした。現在も搬出、移動制限区域が続いている。国の防疫指針では条件を満たせば制限範囲内でも出荷できる場合もあるが、「安全性を確保した上で(制限範囲の緩和など)もっと柔軟な運用を検討すべきだ」(迫田教授)との声も上がる。拡大を防ぐ鍵は、早期通報だ。新潟県で発生した約130万羽を飼養する大規模農場では、発生前日までの死亡鶏は、県によると1日1桁だった。当日は約20羽死亡し、すぐに通報。初期の封じ込めで面的拡大を抑えている。養鶏経営(2022年)は採卵鶏1810戸、ブロイラー2100戸と減少が続く。政府や自治体、地域を挙げて防疫対策を強化し、早期発見で感染拡大を食い止めよう。

(クマ人身被害、30年ぶりゼロ:秋田)
秋田県内では昨年、クマによる人身被害が7月以降1件もなかった。例年、キノコ採りやクリ拾いが盛期を迎える9~10月に死傷者が多く、7月以降に人身被害がなかったのは1992年以来、30年ぶり。ブナの実の豊作などが理由とみられるが、今年は凶作の可能性もあり注意が必要だ。県自然保護課によると、2022年に確認されたクマの人身被害は6件、死傷者は6人で、ともに21年に比べて半減した。被害者のうち1人が死亡し、5人が負傷した。5月25日、北秋田市の水田で農作業中の70代男性が襲われ、3日後に亡くなった。6月末には鹿角市八幡平の市道で、ごみ出し中に80代女性が体当たりされて軽傷を負った。これを最後に人身被害の発生はなかった。県自然保護課ツキノワグマ被害対策支援センターの近藤麻実主任は、ブナの実の豊作地点が多かった点を理由の一つに挙げ「22年は山中のクマが食べ物を探しに人里へ下りることが少なかったのではないか」と話す。

(野生のイノシシ2頭が豚熱感染:秋田)
秋田県横手市と東成瀬村で捕獲された野生のイノシシ2頭が豚熱に感染していたことがわかりました。県内での確認はこれで6例目です。県によりますと、2022年12月31日に横手市で捕獲されたオスのイノシシと、2023年1月4日に東成瀬村で捕獲されたメスのイノシシについて秋田県立大学で遺伝子検査を行ったところ陽性と確認されました。県内で豚熱が確認されるのはこれで6例目です。これまで野生のイノシシの感染は湯沢市内でのみ確認されていて、湯沢市以外で見つかるのは初めてです。豚熱はブタやイノシシの伝染病で高い致死率が特徴です。人には感染しません。県では養豚農家に対して消毒を徹底することや敷地内への野生動物の侵入を防ぐよう呼び掛けています。

(鳥インフルエンザの陽性確認について:石川)
金沢市内で1月4日に回収されたハヤブサ1羽の死亡個体について、確定検査を国立環境研究所(茨城県つくば市)において実施したところ、11日、高病原性鳥インフルエンザウイルスが検出されました。1月8日に回収されたフクロウの死亡個体については、現在、高病原性の有無を国立環境研究所で確認中です。通常では人には感染しないと考えられていますが、死亡した野鳥は素手で触らないでください。

(風力発電計画、地元猟友会が建設中止求め町に要望書:宮城)
「大崎鳥屋山風力」を含め、加美町の6カ所で計画されている大型風力発電事業を巡り、県猟友会大崎支部加美分会(佐藤健喜会長)は27日、建設中止を求める要望書を町役場で猪股洋文町長に提出した。

(クマ出没相次ぐ、19年ぶりに狩猟解禁:京都)
ツキノワグマの狩猟が昨年11月から始まっている。京都府はこれまで「絶滅寸前種」に指定して狩猟を禁じてきたが、生息数が増えて住民がクマに襲われる被害も出てきたため、昨年度から解禁した。だが、20年にわたる禁止期間で、クマ専門のハンターもおらず捕獲頭数が伸び悩んでいる。今年度は目撃情報も増えており、冬眠期でも山でクマと遭遇する可能性があるとして、府は注意を呼びかけている。「クマに襲われた!」。昨年10月末、福知山市の山間部に住む70代の男性方から119番通報が入った。男性は、自宅の庭の柿の木付近から物音がすることに気づき、外へ出たところ体長約70センチのクマに襲われ、顔や首に大けがを負った。クマはそのまま逃げたという。11月にも、伊根町で60代の男性がクマに襲われた。福知山市には今年度、12月下旬までに100件以上の目撃情報が寄せられている。例年よりも件数が多いという。市は、目撃情報の多かった地域におりを設置。市の担当者は「目撃が最近増えてきている。えさとなる木の実などが残っていないか確認してほしい」と呼びかける。府によると、今年度は餌のドングリ類が「凶作」だったため、冬眠が明ける春には、餌を求めたクマが現れる可能性もあるという。

(タカサゴキララマダニ、イノシシが運搬か:栃木)
足利赤十字病院の島田瑞穂(しまだみずほ)医師(55)らの研究グループがこのほど、県内ではほとんど生息しないとされてきたタカサゴキララマダニによる県内での刺症例を日本衛生動物学会誌で初めて報告した。住宅地に出没するイノシシがタカサゴキララマダニを運んでいるとみられるという。患者は3~10月に増える傾向があるとして、注意を呼びかけている。

(「シカ駆除先進地」生息数が減っても尽きぬ悩み:兵庫)
「ターン」「ターン」-。猟犬が獲物を追う声が響く山に、乾いた猟銃の音が鳴り渡った。狩猟期間中の昨年12月28日、神鍋高原(兵庫県豊岡市日高町)の山中。豊岡市などの狩猟者グループが銃による狩りをしていた。ササなどが茂った斜面を登り、それぞれ林の中の持ち場へ。犬が追い込んできた獲物をライフル銃や散弾銃で狙った。午前は11人、午後は8人が参加。計3回の猟でイノシシ3頭を仕留めた。29日にも銃猟でシカ2頭の成果を上げている。参加者たちの大半が市の有害鳥獣捕獲班にも所属する。うち北村由郎さん(75)と富山利夫さん(73)は27日朝、同町頃垣の山中に来ていた。設置した檻(おり)型の「箱わな」にかかったシカを殺処分するためだ。市の補助を受けた地元が箱わなを購入し、市有害鳥獣捕獲班と協力して農作物などの被害を防いでいる。北村さんは、積雪のある時期を除き、自らのわなを30個近く仕掛けた上、頃垣地区などの20個程度にかかったシカの殺処分なども受け持つ。ただ、わなに誘引するための餌入れや、獲物の有無を毎日確認する必要がある。北村さんは「地元との連携があってこそできる」。一方、わなの管理を担う地元の農会長は「シカは野菜はもちろん、家の生け垣まで食べることもある。負担は重いが、続けなければ」と嘆息した。県が昨年4月にまとめた「ニホンジカ管理計画」によると、豊岡市は朝来市などとともに、シカの推定生息数が「減少に転じた地域」に位置づけられた。有害鳥獣捕獲数と狩猟数は、統計の残る2012年度から21年度までの合計で豊岡市が県内1位。しかし、当初は達成率が低かった。市域が広く、目標が高く設定されたためで、市議会などでも厳しく追及されたという。同市は全国的にも早い14年度に有害鳥獣対策員を採用した。今は3人になった対策員が事務職員と協力、猟友会や地域と連携して体制の強化などに努めた。主任対策員の岡居宏顕さん(54)は「市民が困っていることに細かく対応できるような仕組みをつくった」と当時を振り返る。銃猟なら大規模な群れの捕獲だけでなく、小規模な専任班を編成し、要望にすぐ対応できるようにしたという。一方、朝来市の捕獲数は減少傾向にある。20年の同市の平均「SPUE」(狩猟者1人が1日に目撃した頭数)は1・40と、但馬の市町で最も低い。南但はかつて県内で最も生息密度が高いとされた。猟友会朝来支部長の上田剛平さん(45)は「20年近く前には、猟の時に、シカがずらっと1列に並び、走ってきて『どれを撃とうか迷った』なんて話が普通にあった」と述懐する。狩猟に詳しい上田さんは「約50年前から、和田山町(現朝来市)はイノシシやシカの駆除をやっていた。お金になるイノシシを数多く捕るために技術改良も進めており、そんな気風が地域に引き継がれた」と、早期にシカを減らせた背景を分析する。シカの生息数が減少傾向に転じた「駆除先進地」では、農作物の被害が減り、森林の下草など自然環境も回復しつつある。一方で、「行政のシカ対策の予算が減らされるのでは」「狩猟者や住民の高齢化、人口減で、現在の体制が維持できるのか」など、不安を口にする関係者は多い。捕獲圧力が弱まれば、繁殖による増加や周辺に逃げたシカが徐々に戻る恐れもある。環境が大きく変わりつつある中、状況に合わせた新たな仕組みが求められる。

(イノシシ3年ぶり千頭超:富山)
氷見市内で今年度に捕獲されたイノシシが3年ぶりに千頭を超えた。28日現在で前年度より511頭多い1307頭となっている。市内では10年ほど前から急増し、農作物などへの被害も拡大。市の積極的な対策で2020年に一度減少したが、再び数を増やしている。豚熱(CSF)の流行が落ち着き、生息数を増やしていることも一因とみられ、市は来年度以降のさらなる増加を警戒している。市農林畜産課によると、今年度のイノシシ捕獲数は4、5月はそれぞれ57頭、38頭と少なかったものの、6月に110頭、7月に183頭と推移した。特に夏場になってからは大量に捕獲されるようになり、8月372頭、9月292頭と秋口で前年度の総数を超えた。市内の捕獲数は2012年度は30頭足らずだった。その後増加の一途をたどり、19年度に過去最多の3238頭を記録した。翌20年度は587頭と大幅に減らしたものの、21年度は796頭と再び増加に転じた。水稲や果樹など農作物への被害金額も19年度は2182万円を数えた。20年度は130万円となったが、21年度は354万円、今年度はすでに542万円と右肩上がりに増えている。市は大量に捕獲した19年度でいったん落ち着いた生息数が自然繁殖で増えていると推測する。同年秋ごろから石川県境周辺で流行した豚熱が、収束してきたことも一因とみている。市の対策の進展も捕獲数の増加に影響しているとみられる。市では深刻な農業被害が出た19年度に捕獲後の運搬費用の補助を通年に拡大した。費用を半額補助する電気柵の設置にも力を入れており、電気柵は現在、総延長884キロ(前年度比約20キロ伸長)、おりの設置数も438基(同21基増)と年々拡充している。市は30万円を上限とした緩衝帯の整備補助なども実施しており、今後も制度の活用を呼び掛けていく構えだ。市の担当者は「雪解け時期からのイノシシの増加や被害に備え、電気柵の設置など、早めの対策を周知したい」と話した。

(伝統猟×ICTで負担軽減、イノシシ探索にドローン活用:茨城)
茨城県大子町で、伝統的なイノシシ猟「巻(まき)狩り」に情報通信技術(ICT)を融合させる実証が進む。赤外線カメラを搭載したドローンで上空からイノシシを探索。山中を歩いてイノシシを探す過程を効率化する。狩猟者の高齢化が進む中、最新技術による狩猟の効率化で伝統文化の保全を目指す。「巻狩り」はイノシシの生息する山に猟犬を放ち、獲物を追い立てて捕獲する。鎌倉幕府を開いた源頼朝が富士山麓などで行ったことで知られ、町内でも古くから行われる。町の鳥獣被害対策推進員・石井良一さん(60)は「獣害対策として発生場所でピンポイントに対応でき、即効性がある」と話す。ただ、イノシシを探して山中を歩きまわるため労力がかかる。高齢化や後継者不足が進む中、効率化に向けて新技術の導入を検討した。京都府の自治体がドローンで獣害対策を行う事例を聞いて、取り組みを決めた。ドローン教室などを開く水戸市の「スカイガード」と2021度から実証を開始。21年度は国の鳥獣被害防止総合対策交付金、22年度は県の事業を活用した。このほど、県北・県央農林事務所が開いたイノシシ被害の防止に向けた会議で2度目の実証を行った。約500ヘクタールで町の鳥獣被害対策実施隊11人が狩猟に当たった。スカイガードが赤外線ドローン2台で上空からイノシシを捜索した。ただこの日、人や猟犬はドローンの映像で確認できた一方、イノシシの位置は特定できなかった。スカイガードの富岡基浩さんは「山の地形が頭に入っていないと、イノシシを的確に探すのが難しい。回数を重ねる必要がある」と課題を話す。ドローン活用に地元の期待は高く、土地勘のある実施隊のメンバー2人がスカイガードの講習を受け、操縦資格の取得を目指す。実施隊の金澤博喜隊長は「ドローンをうまく活用できれば隊員の負担も大幅に軽減されるし、効率もずいぶん上がるのではないか」と意欲的だ。

(ドローン×AI検知×マッピングによる狩猟のデジタルイノベーションと「害獣DX千葉モデル」確立プロジェクト実証実験を実施:千葉)
ドローン運航事業会社の株式会社ダイヤサービス(本社:千葉県千葉市花見川区、代表取締役:戸出智祐、以下「当社」)は、株式会社SkyDrive・株式会社ロックガレッジ・合同会社房総山業と共同採択を受けた千葉県「先進的デジタル技術活用実証プロジェクト補助金」において、ドローン×AI検知×マッピングによる狩猟DXの実証実験を行いました。今後、この経験をもとに害獣対策の千葉モデルを作り上げ、最終的には全国展開を目指して進めてまいります。

(市街地のクマ被害を防げ、出没対応強化や人材育成)
市街地に出没するクマによる人身被害が全国で相次いでいることを受け、環境省は今年度から6道県でクマ対策強化のモデル事業に乗り出した。行政や地元猟友会などが連携し、迅速に捕獲したり追い払ったりできる体制を整えることや、クマの侵入を予防することが柱で、自治体ごとに決める。同省は捕獲や電気柵の設置などの技術を持つ専門家を派遣し、人材育成を支援する。モデル事業は3年程度を予定しており、北海道と岩手、新潟、長野、福井、奈良の各県が参加。初年度となる今年度は地域の状況に応じたクマ対策の計画を策定する。このうち、岩手県は県内市町村と警察、猟友会などが共同でクマ出没時を想定した実地訓練を検討。県内では2022年4~11月、クマによる人身被害が全国最多の23件に上っており、市街地からクマを追い払ったり、麻酔銃を撃ったりする判断を誰がいつ行うかといった手順を明確にしておき、被害を抑えたい考えだ。福井県は、出没予防や捕獲などのノウハウを持つ県OBや猟友会メンバーで構成する「クマ対策アドバイザー」を現在の4人から20人程度に増やす方針。長野県などは、人が住む地域とクマの生息地域を分けて対策を講じる「ゾーニング」により、市街地への侵入を防ぐ。奈良県は人身被害防止を目指し、隣接する三重、和歌山両県と広域連携する。同省の担当者は「モデル事業を通じてクマ対策の先進事例を全国に広め、人身被害を減らしたい」としている。クマは、餌となる木の実が不作の年には市街地に出没しやすくなる。さらに、中山間地域で過疎化や高齢化が進み、耕作放棄地が増えた結果、クマの生息地との境界線があいまいとなり、市街地での出没件数が増えたと考えられる。同省によると、20年度のクマによる人身被害は140件超。うち「住宅地・市街地」と「農地」がともに2割近くを占め、過去5年間で最多となるなど、対応が急務となっている。

(「キョン」が大繁殖…なぜ?:千葉)
近年、急激なスピードで生息地を拡大させ、数を増やし続ける“ある厄介者”。その被害は住宅街にも広がり、夜になれば「ギャー!」という不気味な鳴き声が響き渡る。昼夜を問わず、住民を悩ますその厄介物の正体は、中国や台湾が原産地の「キョン」。体長は約1m。濃い茶色の毛並みに鹿のようなかわいらしい見た目をしているが、特定外来生物に指定されている。このキョンが大繁殖しているのが千葉県勝浦市。キョンが庭で育てている花や作物を食べてしまうため、それぞれの家で対策をしているという。1980年代に勝浦市のレジャー施設からキョンが脱走し、野生化したという。その後、数は増え続け、2014年度には推定で約3万4700頭だったキョンが、2021年度の調査では約6万7300頭に。7年間で2倍近くに急増している。さらに生息域も拡大。勝浦だけにとどまらず、千葉県の半分ほどにまで広がっているという。家の庭など、人々の生活エリアに何匹ものキョンが入り込んでいる。勝浦市と同じように柵や網で対策をしている家は多いが、効果はあるのだろうか?低い柵だと、簡単に飛び越えて家の敷地に入ってくるという。千葉県では、猟友会に委託しキョンの捕獲などを行っているが、繁殖力の高さなどから、なかなか進んでいないのが現状だ。

(イノシシ北進の懸念、現状と対策は?:青森)
みなさんは、イノシシにどのようなイメージをお持ちでしょうか。青森県では、なじみのない方も多いかもしれません。それもそのはず、イノシシは、県内では明治時代に絶滅したとされてきたからです。しかし、絶滅したはずのイノシシが県内で相次いで目撃され、被害も出始めていることがわかりました。いったい何が起きているのか、特に目撃の多い県南の地域で取材することにしました。まず訪れたのは、ナガイモの生産が盛んな五戸町。畑を案内してもらうと土が掘り返されている場所がいくつも見られました。イノシシが鼻を使って掘り返したとみられるといいます。町内では同様の被害が相次いでいて、罠を設置するなどの対策を始めているものの、これまでのところ目に見える効果は出ていません。こうした被害は五戸町以外でも広がっています。県によると、農作物被害は年々増え続け、昨年度の被害額は過去最高の約140万円。しかし、懸念は食害だけにとどまりません。養豚業者の間でも、目撃が相次ぐイノシシへの危機感が高まっています。その理由は、ウイルスの伝染病「豚熱」です。「豚熱」はブタやイノシシの間で広がります。仮に飼育しているブタが感染してしまうと処分しなければならないからです。上十三地域の養豚場では、すべてのブタにワクチン接種を行ったほか、柵も導入していました。柵は、イノシシが掘り返すことができないよう地面まで覆う特殊な形状になっています。しかし、目撃が相次ぐ現状に不安は尽きないといいます。なぜ、最近になって青森県でイノシシが目撃されているのか。東北地方で捕獲されたイノシシの数を調べると、南ほど、数が多いことがわかりました。その理由を解き明かすべく、岩手県の森林総合研究所東北支所を訪ねました。イノシシ研究にあたっている大西尚樹さんは、一度絶滅した東北地方のイノシシが、南から北上を続けていると指摘します。大西さんが作成したのが、目撃や捕獲情報などの様々なデータを元にしたイノシシの将来的な出没予測マップ。赤が濃いほど出没率が高いことを示しています。三八上北の地図を見せてもらうと、平野部でも出没率が高くなる可能性があることがわかります。対策を行わなければ、青森はどうなってしまうのか。すでに頭数が増えている岩手県の中でも、特に大きい被害が出ているという岩手県雫石町を訪れました。雫石町に入ると、大きなイノシシに遭遇。民家のすぐ近くでも、群れが出没しました。イノシシを初めて見かけた私(=記者)は、その大きさや迫力に若干恐怖を感じました。雫石町では、2016年にイノシシを捕獲して以降、その数は増え続け、イノシシを群れで見かけることも珍しくないといいます。被害も深刻です。その多くを占めるのがイネです。イノシシが直接食べる「食害」だけではなく、イノシシが体についた寄生虫を払うために田んぼに入ってしまうのです。イネが踏み倒されるほか、獣くさい匂いが付くので商品になりません。岩手県全体でも、イネの被害を中心に農作物被害が右肩上がりになっています。そこで、雫石町が力を入れているのが、電気柵の設置です。張り巡らされた柵には電気が流れていて、イノシシが鼻で触れると刺激を感じるようになっています。町では、多くの農場で電気柵の設置を進めていて、被害を抑えることができるようになってきたといいます。一方、先ほどの大西さんは、目撃頭数の限られている青森県では、罠を設置するなどして捕獲を強化すれば、まだ、増加を抑えることができるのではないかと指摘しています。八戸市でも、今年10月、農業関係者たちを対象にした罠の設置の講習会が開かれるなど、本格的な対策に向けた動きも出てきています。青森でも、かつては私たちと共存していたイノシシ。しかし、今後増えると、食害や豚熱、それに県内でも生産が盛んなコメの被害など、広い範囲で被害のリスクに向き合っていかなくてはなりません。まずは、目撃頭数が少ない今のうちに手を打っていくことが求められています。

(「令和4年度鳥獣対策優良活動表彰式」及び「第10回全国鳥獣被害対策サミット」の開催並びにサミットにおける資機材展示等の募集について)
農林水産省は、「令和4年度鳥獣対策優良活動表彰式」を令和5年2月17日(金曜日)に農林水産省本館7階講堂において行います。表彰式は公開で、式典中のカメラ撮影も可能です。併せて、「第10回全国鳥獣被害対策サミット」を開催し、本サミットにおける資機材展示等の出展については、本日から令和5年1月30日(月曜日)17時00分まで募集いたします。農林水産省は、全国の農村地域等において鳥獣被害防止や捕獲した鳥獣の食肉(ジビエ)の利活用等に取り組み、地域に貢献している個人及び団体を表彰する「鳥獣対策優良活動表彰」を実施しており、令和4年度の農林水産大臣賞及び農村振興局長賞の表彰式を、令和5年2月17日(金曜日)に農林水産省本館7階講堂において行います。また、17日(金曜日)の表彰式典終了後、鳥獣対策に携わる関係者の情報共有の場として、「第10回全国鳥獣被害対策サミット」(以下「サミット」という。)を開催し、受賞者からの取組事例の報告の他、サミットテーマに合わせた全国の取組事例の発表、パネルディスカッションや鳥獣対策及び利活用(ペットフード、皮革等を含む)等に係る研究成果、技術情報、製品情報等の取組に係るポスターセッション、資機材・カタログ・利活用の展示を行います。受賞者につきましては、来年1月下旬頃に改めてお知らせいたします。

(クマの目撃件数381件、去年同時期より3割近く増える:福島)
ことし4月から11月までに警察に寄せられたクマの目撃件数は381件と、去年の同じ時期よりも3割近く増えたことが福島県のまとめでわかりました。福島県によりますと、ことし4月から11月までに通報などで警察に寄せられたクマの目撃件数は去年の同じ時期よりも85件多い381件で、率にして29%増えました。目撃情報の増加とともに住民がクマに襲われる被害も増えていて、去年よりも4件多い7件となっています。このうち1件では、会津若松市南部の門田町でクマに襲われたとみられる80代の女性が死亡しています。また、4月には、会津若松市中心部の鶴ケ城公園内にクマが出没し5時間以上にわたって観光客の立ち入りができなくなったほか、8月には福島市郊外で住民が自宅付近でクマに襲われるケースが相次ぎました。ことしは主食のブナの実が豊富でクマの栄養状態がよいため、県は、この冬に出産するクマが多くなるとみています。このため来年春に親子グマが出没する危険性が高まるとして、引き続き、目撃情報がある場所を避けたり、山に入る際にはなるべく多い人数で行動したりするよう呼びかけています。

(「アーバンベア」目撃多発:岩手)
2022年の岩手の出来事を振り返るシリーズ「いわてこの1年 2022」。今回のテーマは「クマ」です。2022年も岩手県内ではクマの出没が相次ぎました。近年は山間部ではなく、「アーバンベア」=「都市部に出没するクマ」の目撃が多発。身近なところで不安が広がりました。4月、閑静な住宅街が騒然となりました。クマの目撃情報があったのは紫波町日詰の住宅地。近くにあるサクラの名所で知られる「城山公園」は立ち入りが禁止され、駐車場で引き返す姿も見られました。5月。大槌町吉里吉里の住宅。軒下に置いていた米ぬかが散乱し、たい肥を入れたポリバケツは無情にも壊されていました。これもクマの仕業です。その5日後には同じ町内の住宅が再び被害に遭いました。親グマ1頭と子グマ2頭が目撃され、物置小屋が荒らされたほか住宅の網戸が壊されました。幸い、けが人はいませんでした。大槌町ではわずか1週間の間に物的被害が立て続けに4件発生しました。クマの出没はさらに日常生活を脅かしました。宮古市田老にある菓子工房「ふくちゃん工房」。泡渕福治さんが経営する店舗兼工房です。泡渕さんの店は去年もクマの被害に遭っていて、この日は工房内の小麦粉などが荒らされ、1.5リットル入ったサラダ油のボトル1本は中身が無くなっていました。さらにその翌日も。近所の人から大きな物音がすると報告があり泡渕さんの妻が工房を確認すると…。引き戸は「く」の字に曲がり、中にあった米粉とサラダ油がまた荒らされていました。しかし被害はまだ続きます。なんと、翌日の朝も。泡渕さんの妻が入り口に取り付けてあったベニヤ板が外れているのを見つけました。倒れた冷蔵庫の扉は開き、中に入っていた小麦粉や黒砂糖が狙われていました。3日連続でクマの被害に遭った宮古市田老の「ふくちゃん工房」。その後はどうなったのでしょうか?クマ被害から4か月。店を訪ねてみると…。工房はすっかり片付いていました。一度は諦めかけたまんじゅう作り。しかし、応援してくれる言葉が泡渕夫妻の支えとなりました。クマが冬眠するまでは休み、その後、安心してまんじゅう作りに励むということです。クマはこんな場所でも目撃されました。赤い丸で囲んだ黒い物体がクマです。歩いているのは盛岡市のJR盛岡駅から500メートほどの場所。駅前の開運橋の近くです。IBCの情報カメラがその姿を捉えました。11月、釜石市の住宅地が騒然となりました。クマが釜石市中妻町で目撃された後、空き家の敷地内に逃げ込み、最後はビルの駐車場に立てこもりました。この翌日、再び、盛岡市中心部です。ドライブレコーダーが捉えたのは国道4号を横切る2頭のクマです。あたりには住宅が立ち並び、近くには保育園もあることから職員や保護者に緊張が走りました。岩手県のまとめによりますと、2022年のクマによる人的被害は、12月11日現在で23件24人と2021年の14件14人に対して増加しています。一方、出没件数は4月から11月末までのまとめで、2022年は2132件、2021年は2568件で436件減少しています。動物生態学が専門の森林総合研究所東北支所の大西尚樹さんは、出没件数と人的被害について次のように話します。(森林総合研究所東北支所 大西尚樹さん)「出没が多くないにも関わらず人身事故が多かったということは、人の方が山へ入って行ったりとか、クマの生息域と人間の生活圏が隣接するようになってきたと考えています。境界線でクマと人が出会ってしまう確率が増えてくるので、それが事故という結果につながってきていると思います」。大西さんは「クマは身近な存在である」ということを認識して生活を送る必要があるとしました。(森林総合研究所東北支所 大西尚樹さん)「クマの対策など考える必要がなかったという地域にお住まいの方が多いと思いますけど、これから来年も、5年後も、10年後も、クマが自分たちの身の回りにいるんだということを前提とした生活スタイルをとっていく必要があると思います」。2022年、さまざま場所で相次いだクマの出没。山から里に下りてきたクマは、岩手の自然の変化を改めて私たちに教えてくれているのかも知れません。

(AI×ドローン、ネズミ追い払い:長野)
ドローンでネズミを追い払え――。食品や燃料などの卸業を手がけるヤマサ(長野県松本市)は、信州大学、長野県松本工業高校と共同で、ドローンと立体マップ、人工知能(AI)を組み合わせた新しい鳥獣被害対策システムを開発する。

(獣害防止へ専門家育成、酪農大など全国6大学連携)
全国で深刻化するシカやクマなどによる獣害に対処できる専門人材を育成するため、酪農学園大(江別)など全国6大学が連携して10~12月、野生生物対策に特化した教育課程を試験的に開講した。自治体などに履修生を送り出し、野生生物の個体数の調査や駆除・防除を担う専門人材が不足する現状を解消するのが狙い。講義内容の策定には農林水産省と環境省も関与し、資格制度の創設も視野に入る。試験開講したのは「野生動物管理コアカリキュラム」。酪農学園大のほか、東京農工大、兵庫県立大、山形大、岐阜大、宇都宮大が参加する。野生動物対策は複数の学問分野にまたがり、一つの大学が単独で授業を実施することが難しいため、6大学で講義を分担し、学生はオンラインで受講できるようにした。本年度の受講生は6大学の学生と大学院生の計291人。28日に本年度最終となった講義は5科目30項目で、動物の生態や個体数の調査方法、欧米の野生動物管理システム、野生動物対策の関係法令などを教えた。11月には兵庫県丹波市で実地講習も行った。

(収入源を食い荒らされ、高齢者は畑を諦める:兵庫)
その獣は、夜の闇から忍び寄るように現れる。兵庫県香美町香住区余部の御崎地区。日本海に突き出た岬の突端にある人口40人の小さな集落に、5、6年前からその獣が頻繁に出没するようになった。集落の外れの斜面に広がるサンショウ畑は戦後、養蚕に代わる収入源として栽培が本格化。日本料理に添える芽は、9割が京都に出荷される。その獣はサンショウの芽を好み、木の皮まで剥がして食べる。サンショウは新芽を摘んでもまた芽吹くが、生産者が大切に育てる二番芽や木の皮を食われると、木全体が弱り、やがて枯れる。高齢の生産者にとって、自宅から遠い段々畑で柵や網を設置するのは難しい。「網を張っていない畑は全滅に近く、高齢者は畑を諦めている」と、香住野菜生産組合山椒(さんしょう)部会の岡田和(かなお)会長(69)。相次ぐ引退で耕作放棄地が増え、ここ数年で収穫量は半減した。夜、獣たちは集落まで入り込み、花や野菜も食い荒らす。御崎自治会は今年10月、海に面する集落の下手に延長約230メートルの金網を設置した。「雄は子牛ほどの大きさ。夜道で出くわすと大人でも恐ろしい」と門浦光吉自治会長(68)。「自分たちの集落は自分たちで守らなければ」。明治から戦前にかけて、その獣は毛皮を目的に乱獲され、全国的に激減した。神戸新聞社が1974年に発行した「兵庫探検・自然編」には「県下全体での頭数は(中略)1千頭をかなり割っていると思われる」とある。国は戦後、雌を禁猟として保護してきたが、80年代には県内でも数が増え、農林業の被害が顕在化。県は94年度、全国に先駆けて雌の狩猟を解禁したが、2010年ごろまで増え続けた。20年度末の県内の推定個体数(中央値)は15万8798頭で、但馬地域が7万2889頭(46%)を占める。一昔前まで県内で最も生息密度が高いエリアは南但馬だったが、近年は日本海の沿岸部まで分布を拡大。特に美方郡の2町の増加が際立つ。生息域の北上について、県自然・鳥獣共生課被害対策班の石川修司班長(47)は、いくつかの要因を挙げるが、その一つは近年の積雪の減少という。雪深い山間部でも谷筋や人里近くで冬を越せるようになり、峠を越えて雪の少ない沿岸部へ侵出した。森林にはササなどの食糧が手つかずで残る。狩猟者も少なく、自治体の対策が後手に回った。猟師1人が1日に目撃した頭数の平均値を示す「SPUE」という指標がある。1・0以下の生息密度になると農業・森林被害が減るとされ、県は全市町で1・0以下を目標に掲げるが、香美町は3・16、新温泉町は4・01(いずれも20年度)と県内でも突出する。県はこの2町を「緊急捕獲市町」に指定。石川班長は「美方の状況は危機的。今、対策を強化しなければ、手遅れになる」と警鐘を鳴らす。

(厚岸町に「OSO18」に勝った牛がいた!:北海道)
2019年7月に北海道標茶町(しべちゃちょう)オソツベツの牧場で初めての被害が確認されて以来、この4年半の間にOSO18は少なくとも65頭の牛を襲ってきた。被害総額は2000万円を超え、各地の牧場では電気柵などの対策のために多額の費用が投じられている。地元では捕獲作戦が進められているが、OSO18は知能が高く警戒心も強いため、なかなかその姿が捉えられない状況が続いている。その被害の多さと神出鬼没ぶりから”最凶のヒグマ”とも呼ばれるOSO18だが、実は必ず牛の襲撃に成功しているわけではない。標茶町の隣町である厚岸町上尾幌では、乳牛を襲撃しようとして逆に返り討ちにあっていたことが本誌の取材で明らかになった。厚岸町で久松牧場を営む久松昭治さんが明かす。「あれは今年の8月20日のことです。朝6時頃、うちのお母ちゃん(久松さんの妻)がいつものように牧場に出ると、搾乳の時間になっても戻ってこない牛がいることに気づいたんです。放牧地を探すと、1頭の乳牛が立ちすくんでいた。生後24ヵ月、体重500kg程度のリオンという牛です。リオンの両肩には、鋭い牙の痕が刻まれていて、また、ぬかるみを引きずられたのか全身泥だらけでした。襲われた時間は正確にはわかりませんが、リオンの体についた血や泥の乾き具合から見て、夜中だと思います」。久松さんの牧場では基本的に乳牛の角を切り落とさないため、リオンには先端が鋭く尖った角が生えている。その角に、ゴワゴワとした茶色の毛が残っていたという。「鬼の角のようなイメージですね。その左の角に3本、毛が残っていたんです。DNA鑑定の結果、OSO18の毛だと特定されました。おそらく、リオンは横からオソに噛まれた拍子に首を振って抵抗したんだと思います。リオンはもともと気の強い牛ですからね。あの太い首と鋭い角で反撃されたら、いかにオソといえどアバラくらい折れているはずです。実際、例年は9月頃まではOSO18による被害が出ますが、今年はリオンを襲撃して以降、ぱったりと姿を現さなくなった。オソにとって反撃されたのは初めてだったんでしょう。これに懲りて牛を襲うのは諦めてくれればいいんだけどね……」。久松さんは牧場主でありながら、その道30年のベテランハンターでもある。これまでにヒグマを仕留めた経験もある久松さんは、OSO18への思いをこう語る。「オソが目の前に出てきたら撃ちたい。うちの牛が襲われた今、その気持ちは強くなっています。ただ、クマは夜中に行動するのでなかなか見つけられないのが現実です。そもそも、夜中だと真っ黒なクマはどこにいるかわからず、非常に危険ですからね。道内各地からハンターが派遣されていますが、よそ者にオソを獲られたくないという思いはありません。むしろ、誰でもいいから獲ってほしい。個人的には、本気で駆除したいのであれば、オソには懸賞金をかけるべきだと考えています。そうして全国からクマ撃ちの猛者を集めるしかない。それくらいのことをしないと、オソほどの賢いクマを獲ることはできない」。このまま時間が経てば経つほど、OSO18の子供の出現など、危険性は増すと語る久松さん。牧場の牛たちは襲撃以来、OSO18に怯えながら暮らしているという。「リオンは元気ですが、いまだに傷は完治していません。他の牛たちも、放牧しても群れで体を寄せ合って離れないことが続きました。おそらく、リオンがオソに襲われたことを知っているので、怖がっているのでしょう。恐怖を抱いているのは、私たち家族も同じです。お母ちゃんも息子も、オソが現れたとみられる場所には一切行こうとしません。どうしても行かなければいけない場合は、大声を出しながら向かっています」。当然のことながら、強いストレスは乳牛に様々な悪影響を及ぼす。襲われた65頭だけでなく、見えない被害は確実に広がっているのだ。地元の人々が安心して酪農を営むためにも、一刻も早い問題解決が待たれる。

(コロナ禍の人減少で「タヌキの食事スタイル」が大胆になっていた!)
新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、人々の活動スタイルは大きく変わりました。以前に比べて、外出時間が減ったり、人ごみを避けるようになった方も少なくないでしょう。その一方で、生活スタイルが変わったのは人間ばかりではありません。人々の屋外活動が減ったことで、野生動物たちが市街地に出没するようになったのです。そしてこのほど、東京農工大学の研究により、コロナ禍がもたらしたタヌキとニホンアナグマの採食行動の変化が明らかになりました。コロナ前は両種とも夜間や見通しの悪い場所で採餌していたのに、コロナ禍では、昼間や人に見つかりやすい場所でも積極的に食事するようになっていたのです。研究の詳細は、2022年12月25日付で科学雑誌『Ecology and Evolution』に掲載されています。

(林床砂漠、災害リスク生態系にも影響:兵庫)
兵庫県香美町村岡区黒田の山奥。スギの幼木が植わる造林地に、高さ1・8メートルのシカよけ柵が2キロにわたって延々と続く。「私が働き始めた二十数年前は山でシカなんか見なかった」。美方郡の森林を保全する北但西部森林組合の田中伸欣(のぶよし)森林整備課長(46)が語る。香美町村岡区から増え始めたシカは、やがて同町香住区や新温泉町まで広がった。シカはヒノキの苗木を好んで食べる。シカが出始めた頃、嗜好(しこう)を逆手に取ってヒノキの代わりにスギの苗木を増やし、被害を軽減しようとした。ところが、ヒノキが減るとスギも次第に食べられるようになった。一方、好物のヒノキは、成木の皮まで食べられるのでたちが悪い。皮を剥がされた樹木は腐っていき、枯れる前にチップに加工するしかないからだ。広大な林を柵でぐるりと囲っても、積雪や強風で1カ所でも倒れると、せきを切ったようにシカがなだれ込む。「柵の整備、点検、補修…。シカのために多大な費用と労力をかけている」と田中課長。「シカさえいなければ、と何度思ったか」。県の呼びかけで同組合は昨年7、8月、初めてシカの捕獲に取り組んだ。香美町香住区隼人や新温泉町田井などシカが多い造林地でくくりわなを設置。68頭を捕獲した。但馬の森林では、シカがササや低木などの下層植生を食べ尽くす「林床砂漠」が広がっている。県森林動物研究センター(丹波市)の藤木大介主任研究員(48)は、県内全域の落葉広葉樹林で、4年ごとにシカによる下層植生の衰退状況を調べている。但馬地域の被害は南但馬から氷ノ山、妙見山を経て、蘇武岳、三川山へと拡大。2022年の調査では、新温泉町まで広がり、扇ノ山でも被害が深刻という。森林で下層植生が失われると、落ち葉がその場にとどまらずに斜面の下方へ流れ落ち、地表が露出。雨が降るたびに土壌が削られ、土がやせていく。藤木さんは土壌流出による災害リスクを懸念する。04年の台風23号被害では、当時シカの生息密度が高かった南但や西播磨で、強風により倒壊する人工林が続出。09年の県西・北部豪雨で山腹崩壊が起きた場所の多くは、台風23号被害の後、元に戻らず荒廃した人工林跡だった。藤木さんは「シカの食害がその後の森林再生も妨げた」と指摘する。下層植生の喪失や土壌の流出は、生態系にも影響を及ぼす。シカの過剰な摂食で森林環境が変化した京都大学の芦生研究林(京都府南丹市、約4200ヘクタール)では、ウグイスやコルリなど、やぶを利用する鳥が減少。研究林を流れる川では、森から流れ込んだ土砂が川底に堆積し、れき地を好むウグイに代わって砂地を好むカマツカが増えた。香美町立ジオパークと海の文化館の西田昭夫館長(68)によると、矢田川中流域にすむ昆虫「ヒゲナガカワトビケラ」も、10年前から生息数が4割減った。川底の石の隙間にクモの巣のような捕獲網を張り、網にかかった藻や植物片を食べるが、川底に砂が堆積し、網を張れなくなったとみられる。西田館長は「シカによる環境変化は目に見えないところで徐々に深刻化し、気づいた時には取り返しがつかなくなっている」と話す。農地や森林を荒らし、私たちの生活や生態系を脅かす獣・シカ。但馬が直面する被害の実態を追いかけた。

(レールキル、列車の大事故招く恐れ:兵庫)
ブレーキの利かなくなった列車が、下り坂で止まらなくなる-。背筋の凍るような事案が、2020年10月4日夜、京都丹後鉄道(丹鉄)の宮津線で起きた。「ボスン」。西舞鶴発豊岡行き1両列車の運転士は、京都府宮津市を走行中に鈍い音を聞いた。線路に侵入した野生動物と衝突したのである。ブレーキの利きが悪くなり、床下から空気の漏れる音がした。非常ブレーキを使うと、ゆるゆると停止。運転士は車輪とレールの間に挟む「手歯止め」をかませようと考えたが、下り坂に抗しきれず、降車する前に車両が動き始めた。制御不能で坂を滑り落ちる列車は時速30キロに達し、停車予定の栗田(くんだ)駅を通過。1・6キロ走った後、上り坂で失速・停止したが、今度は逆方向に動き出し、約150メートル戻ってようやく止まった。乗客乗員5人は無事だったが、国の運輸安全委員会は「鉄道重大インシデント」に認定。事故調査報告書は、動物との衝突で車輪横のブレーキ管が折れ、ブレーキに使う圧縮空気が漏れたことが原因と結論づけた。丹鉄の畑山穣(ゆたか)・運行本部長(63)=兵庫県朝来市=は「大事故につながりかねない危険な事態だった」と話す。衝突した動物はシカだった可能性が高いという。車にひかれた動物の事故を「ロードキル」と呼ぶのに対し、鉄道による事故を「レールキル」と呼ぶ。京都府北部と豊岡市を走る丹鉄では21年度、動物との事故が575件あった。大半がシカだ。レールキルは鉄道の安全を脅かし、定時運行を妨げる。車両のステップやスカート(排障器)がゆがんだり、床下の配線や油圧管が損傷したりすることもあり、修繕費が経営を圧迫する。丹鉄は20年10月の事故を受け、全車両のブレーキ管を車輪の内側に移した。事故調査報告書が提言するシカ柵の整備にも着手したが、沿線は計114キロあり、草木が茂って積雪も多く、整備や維持管理のハードルが高い。「結局、沿線地域のシカを減らさなければ、今後も事故が起き続ける」と畑山本部長。丹鉄は20年12月、沿線市町に捕獲の強化を要望して回った。いち早くこれに応じたのが豊岡市だ。市の鳥獣害対策員、岡居宏顕さん(54)と加藤貴士さん(43)は、コウノトリの郷-久美浜間の約1・6キロで線路をまたぐ獣道を調べた。猟友会から推薦された捕獲班員が21年3月、獣道沿いにくくりわなを計10カ所設置。22年11月までに67頭を捕獲し、この区間で18年度に23件あったレールキルは21年度に2件まで減った。「シカにとってわなは地雷のようなもの。1頭がかかると、それを見た仲間はしばらく寄りつかない」と岡居さん。今後、わなの設置区間を2・3キロ延長する予定で、畑山本部長は「豊岡をモデルケースに、ほかの沿線自治体にも捕獲を働きかけていきたい」と話す。JR西日本に但馬地域でのシカとの衝突事故を尋ねたところ、21年度は山陰線165件、播但線9件だった。2日ごとに起きている計算だ。農地や森林を荒らし、私たちの生活や生態系を脅かす獣・シカ。但馬が直面する被害の実態を追いかけた。

(人喰いヒグマに襲われた男から学ぶ「絶対に守るべき鉄則」)
毎年のように悲劇は繰り返される。ヒグマが人間を襲う事件のことだ。ヒグマは、北海道やアメリカのアラスカ、ロシアの全域などに生息している。<ヒグマによる農業被害は増加傾向で、毎年のように死傷者も出ているが、国際的にみれば希少動物で、道内でも個体群の存続が危ぶまれる地域がある>(毎日新聞・2019年10月29日)のだという。また、<北海道内で2021年度に駆除や狩猟により捕殺されたヒグマが、北海道庁の統計が残る1962年度以降、初めて千頭を越え、1030頭台に上ることが分かった。農作物被害額は2億6200万円、死傷者数は14人で、いずれも最多となった>(北海道新聞・2022年12月21日)という。山に生息しているヒグマは警戒心が強く、本来であれば人間社会には寄り付かない動物だ。山の草木や木の実、昆虫を主食として、肉や魚を一度も口にしないで一生を過ごすクマも多い。しかし、近年のヒグマは、耕作を放棄された果樹園跡で実る果実や人間の残飯の美味しさを知ってしまった。徐々にではあるが、積極的に人間社会に出てきて食べ物を漁るようになっている。そこで人間と接触し、人間を襲うのだ。食肉目クマ科のヒグマは、日本に生息する陸棲哺乳類で最大の種だ。大きなオスになると体長2・5~3メートル、体重は400~500キログラムを超える。人を食う恐ろしい動物であるにもかかわらず、駆除、つまり殺処分をすると全国のクマ愛好家からは「殺処分すべきではない」「麻酔銃を使って山に返すべき」などという抗議が殺到する、行政としては厄介な動物だ。身体が大きすぎるために、麻酔銃を撃ち込んでも静かになるには数時間がかかる。また、山へ帰したところで人間の世界に美味しいものがあると知ったヒグマは、近い将来必ず人間社会に入って、たとえば生ゴミを漁りに来てしまう。最近では釧路管内標茶町(しべちゃちょう)オソツベツで、2019年から4年間にわたり、放牧中の牛65頭を襲ったヒグマ、通称「OSO18(オソ18)」が有名になった。ちなみに、「OSO」とは住所の「オソツベツ」から、「18」とは「幅18cmの大型の足跡」(NHK取材班によれば、実際は16cm)から由来する名前だ。OSO18による被害範囲は東京23区の3倍に及んでいるのだが、目撃されない上に罠にもかからない。北海道の農家にとって、いまも恐怖の日々は続いている。ロシアでは相当に広い範囲で出没することから、ロシア人はヒグマに対して大きな愛着を持っている。ロシアの代表的な世論調査会社であるVCIOMの調査によれば、ヒグマがロシアのシンボルと考える人はロシア人の62%にものぼる(2位はシベリアトラで、3位は国章に用いられている双頭のワシ)。ヒグマは世界で20万頭程度生息していると考えられており、その半数がロシアにいる。そんな「ヒグマ先進国」である、ロシアの「ロシア科学アカデミー・シベリア支部クラスノヤルスク科学センター」の国際研究チームが、「クマが人を襲う主な理由」(2019年7月8日)と題する調査結果(2000年から2015年の間に世界中でヒグマが人間を襲った664件のデータを分析)を発表している。・20カ国から集まった数十人の科学者が、熊が人を襲う主な状況を分析・記述し、共通する特徴や紛争状況の特殊性を明らかにした・約半数は、メス熊が子熊と一緒にいるときに発生している。人間との遭遇で攻撃的な反応を示すのは、子グマを守るメス・子連れのメス熊は、人が住んでいる場所に餌を探しに来る可能性が高い・攻撃のほとんどは、人間の不適切で危険な行動が引き金になっている・クマが人間を襲った場合、9割が人間に怪我を負わせ、1割が死亡。研究の成果として念が押されているのは、「遭遇しても逃げないことが重要」であり、逃げることはヒグマの「捕食本能」を刺激するのだという。そのため、安全な距離まで後退しながら、音を立てて威嚇し続けなければならないし、もしヒグマが人間に対する恐怖心を失っているのならば射殺しなくてはならないという。逃げると捕食本能を刺激するというのは、本当に厄介な性質だが、昔から言われている「クマに対しては死んだふり」というのは正しい振る舞いのようだ。では、実際に襲われてしまったら、どうすればよいか。実際の事件をもとに検証してみよう。この事件を報じたのは、米ニュースサイト『ALASKA’S NEWS SOURCE』(2021年5月20日)だ。61歳のアレン・ミニッシュ氏は、アラスカ州のリチャードソン・ハイウェイから森の中へ、未開発の分譲地の土地調査のため歩いていた。トウヒやハンノキなどの植物が生い茂った森を行き来しながら、敷地の隅から隅まで測量用の旗を振って回ったのだが、途中で邪魔が入った。ヒグマである。視線を上げると、30フィート(10メートル弱)先に巨大なヒグマがいた。ミニッシュ氏を確認したヒグマが近づいてくる。彼は急いでハンノキの茂みに避難したが、後ろから倒されてしまう。必死の思いでヒグマの開いた口に手を突っ込み、下歯とアゴをギュッと掴んだ。ミニッシュ氏は過去に、「犬の下アゴを掴めば、犬に噛まれない」という教訓があったことを思い出したのだという。ヒグマの臼歯によって手は血まみれになったものの、ヒグマは口を閉じることができなくなった。一命を取り留めたように思ったのも束の間、ヒグマは頭を猛スピードでひねり、口の中にある彼の手をほどいてしまった。それからミニッシュ氏を目がけて突進すると、頭を掴み、そして、2度噛んだ。ミニッシュ氏は頭蓋骨にヒビが入ってしまう。ヒグマは、ミニッシュ氏の頭を噛んだものの殺そうとせず、そして食べようともせず、その場を去った。ミニッシュ氏は深い傷を追いながらも、持っていた携帯電話から自ら救急車を呼び、一命を取り留めたのだった。ミニッシュ氏は、ヒグマに襲われたことをこう振り返っている。全文を引用する。「自分を襲ったオスのヒグマは、何一つ悪いことはしていない、彼はただ歩いていただけだ。私とそのクマにとってまさに『場所が悪い』『タイミングが悪い』ということだ。クマ除けのベルを持っておくべきだったかもしれないが、私の持ち歩いているGPSは、いつもとても大きな音を出すのでその必要性は感じなかった。(クマに殺される幻影に悩まされるが)今はなるべく明るい気持ちでいようと思っている。哀れみに浸らないようにしてる。だって、生きるって決めたんだから」(同ニュースサイト)。ヒグマは、基本的には人間を襲うつもりがないが、逃げると捕獲本能が目覚めてしまう。ミニッシュ氏も、逃げなければひょっとしたら頭をかじられることもなかったかもしれない。現地の警察当局によると、クマはミニッシュ氏を襲った後、その地域から逃走したという。

(南アルプス光岳の高山植物、鹿食害で激減:長野)
南アルプス光(てかり)岳(2592メートル)でニホンジカによる食害が進み、20年余り前と比べて高山植物群が激減していることが4日、分かった。光岳を含む南ア南部の飯田市側で環境を厳格に守る「エコ登山」を進めている南信州山岳文化伝統の会と、専門家らが昨年8月に現状を調査して判明。関係団体は2023年度、光岳で高山植物を保護する取り組みを本格的に始めようとしている。

(「北限のサル」生息範囲が拡大:青森)
青森県の下北半島に生息する「北限のサル」は近年、生息数が増え、生息域も拡大しています。住宅街での目撃情報や農作物の被害も増えています。下北半島のむつ市を取材しました。4日、雪が降りしきる青森・むつ市で野生のニホンザルに遭遇しました。細い枝の上に乗り、木から木へ飛び移るサルや、食事をするサルがいました。青森県北東部・本州最北端の下北半島で生息するサルは、野生のサルの中で世界で最も北で暮らすことから「北限のサル」と呼ばれています。2019年には、列をなして電線を綱渡りする姿も撮影されました。集団で雪を避け、器用に移動する様子は一時、話題になりました。そんな「北限のサル」に近年、変化が起きているといいます。調査を行う団体によると、生息域が拡大しているというのです。ニホンザル・フィールドステーション 松岡史朗事務局長「(このエリアで)私が見たのは、5年くらい前から。それ以前は、ここにサルはいなかったです」。1970年に「北限のサル」は国の天然記念物に指定され、保護の対象となりました。青森県によると、当時の生息数は187頭でしたが、50年あまりが経った2020年度には、確認されただけでも2796頭以上に増加しました。これに伴い、今まで見かけることのなかった地域にまで出没し、「北限」がさらに広がっているというのです。取材を進めていた4日、住宅街の近くでも、雪の上に複数頭のサルの足跡がありました。近年、住宅街での目撃も増えているといいます。ニホンザル・フィールドステーション 松岡史朗事務局長「民家の(屋根)平気で登りますから、電話線を伝って、登って下りたりするから、電話線が切れることもありますよね。生活被害が(今後)増えるかもしれない。この地区では」。さらに特産品のイチゴを育てている農園では、昨年6月に手塩にかけて育てたイチゴが収穫直前に食べられる被害に遭っていました。あべファーム 阿部伸義代表「(ビニールハウスの)奥の方を破って、侵入した感じで。ハウスをあけると真っ赤な実が見えるが、真っ赤な実が1つもない」。ビニールハウスの入り口に音を出す装置を設置するなど対策をして、8年間イチゴを守ってきたといいますが…。――今まで被害は?あべファーム 阿部伸義代表「ないです。サルも知恵をつけてきているので、農家としては脅威になっている」。こうした被害に、むつ市は犬とパトロールを行ったり、電気柵を設置したりするなど対策を強化しました。被害の拡大が食い止められているなど効果が出ている地域もある一方で、被害が続いている地域もあるということです。ニホンザル・フィールドステーション 松岡事務局長「なかなか人が思うようにいかないんですよね。(対策を)地道にやっていくということが(被害)軽減につながっていく」。青森県は地元住民とサルの共存に向けて、引き続き生息数や被害状況などの調査を進めるということです。

(北海道のクマ捕獲、最多1056頭:北海道)
北海道内の2021年度のヒグマの捕獲頭数が過去最多の1056頭となり、初めて1000頭を超えました。道によりますと2021年度のヒグマの捕獲頭数は1056頭で、初めて1000頭を超え過去最多となりました。内訳は害獣駆除が999頭、ハンターを育成するための許可捕獲が12頭、狩猟が45頭でした。ヒグマによる被害は、人身被害が14人で、農業被害額は2億6千万円を超え、いずれも過去最悪です。道のヒグマ対策室は「人とヒグマの軋轢(あつれき)が深刻な状態にあり、春の許可捕獲を増やすなど市街地や農地への出没を防ぎたい」としています。

(シカ捕獲、年間通じ対策に力:兵庫)
日の出とともに家を出て、田んぼの周りや獣道に設置したくくりわなを3時間かけて見回る。シカがかかっていれば、心の中で「ごめんな」とつぶやき、手早くとどめを刺す。昨年11月、香美町の「お米コンテスト」で最優秀賞に輝いた白岩寧(やすし)さん(61)=兵庫県香美町=の毎朝の日課だ。3年前に消防を退職し、4・6ヘクタールの田んぼを耕作する。地元の農業被害を少しでも減らそうと狩猟免許も取得。町が地元猟友会に委託する「有害鳥獣捕獲」に従事する。

(固有種を食べ尽くす「野生化アライグマ」という大問題)
日本は世界有数のサンショウウオ王国である。82種以上もあるサンショウウオ科のうち、少なくとも44種は日本の固有種だ。ところがその一部は絶滅危惧種となっている。人気テレビ番組「池の水ぜんぶ抜く大作戦」(テレビ東京)の解説をつとめる久保田潤一さんは「野生化したアライグマが最凶の天敵となっている。許可のない捕獲や殺処分は違法で、対策は難しい」という――。アライグマは、1970年代後半にアニメ『あらいぐまラスカル』の影響で飼育ブームとなった。愛嬌あいきょうのある顔にしましま模様のしっぽ。食べ物を洗うような行動もかわいらしい。ペットとして人気が出るのもよくわかる。だが、ペットに向いている動物と向いていない動物というのはある。ペットに向いているのは、人間が長い期間かけて品種改良し、飼育できるようにしてきた動物だ。犬や猫、豚や鶏などの家畜・家禽かきんがこれにあたる。ペットに向いていないのは、野生動物だ。一見かわいくて、赤ちゃんのころは懐なついたとしても、成長すれば手に負えなくなるのが常だ。そしてアライグマは、アメリカ大陸の大自然の中で暮らしている、れっきとした野生動物だ。日本にペット用に持ち込まれたものの、気性が荒くなって飼いきれなくなり、アライグマたちは野外に捨てられた。このアライグマ、手がすごく器用だ。タヌキとやや似た風貌ふうぼうをしているが、手の構造はまったく違う。タヌキはイヌ科なので、肉球がある犬そっくりの手だが、アライグマの手はまるで人間のような形をしていて、物を掴つかむことができる。しかも賢くて学習能力が高い。そのため、飼育ケージを開けての脱走が相次いだ。こうして日本の自然の中に放たれたアライグマたちは野生化して繁殖し、日本中に広がっていった。その結果、さまざまな問題が起こった。アライグマは雑食なので、農作物や養魚場の魚などを食べる。お寺や神社など歴史的、文化的に重要な建物に入り込んで傷める。狂犬病やアライグマ回虫などの危険な病原体を保有している可能性もある。性質が荒く、牙きばが鋭いため、噛かみ付かれれば大怪我を負う危険性がある。そして、日本の野生動物に悪影響を及ぼす。その被害を受けた生き物の一つが、トウキョウサンショウウオだ。「サンショウウオ」と聞いて、あなたの脳裏には何が浮かぶだろうか。もっとも多いのは「あの大きいやつね」という反応。オオサンショウウオだ。日本では、「サンショウウオって、オオサンショウウオのことよね」という認識が多数派のようだ。オオサンショウウオは日本の固有種。しかも世界最大の両生類という肩書きを持っていて、最大150cmほどにもなる。その姿形や存在感は素晴らしく、僕もその生息地に引っ越したいと思うぐらい好きだ。日本を代表する野生動物の一つだと言えるだろう。実は日本には、サンショウウオと名のつく生物が46種類もいる(2021年現在)。オオサンショウウオはその一つ。残りの45種類は、大きさ7~19cmの小型サンショウウオだ。せっかくなので、少し説明しておきたい。両生類というのは、皮膚がヌメヌメしていて背骨がある生物で、大きく3つのグループに分けられる。サンショウウオは②のしっぽがある仲間で「有尾類」と呼ばれている。この有尾類、2021年現在、世界中に757種いる。その中のグループの一つ「サンショウウオ科」には少なくとも82種が知られているが、そのうちの45種が日本産で、うち44種が日本の固有種だ(2022年2月時点)。日本は、サンショウウオ王国だ。日本にサンショウウオが何種類もいると言っても、実際に野外で出会った経験を持つ人は少ない。ただそれは、サンショウウオが人の近づけない深山幽谷しんざんゆうこくに棲んでいるからではない(そういう種類もいるが)。夜行性だったり、森の落ち葉の下に隠れたりしていて、見つけることができないだけだ。実は人間のすぐ近くに棲んでいる。その代表格がトウキョウサンショウウオだ。現在の東京都あきる野市で採集されたので、「東京」の名がついたトウキョウサンショウウオ。世界中でも日本の関東地方周辺だけ(群馬県、茨城県を除く関東1都4県)にしか生息していない。両生類はその名のとおり、陸と水辺の両方を利用して生きる動物だ。トウキョウサンショウウオは、普段は森の落ち葉の下で小さな虫などを食べて暮らしているが、3月ごろになると繁殖のために水辺に集まってくる。湧き水でできた水たまりや沢のよどみなど、流れのない水の中で産卵する。卵、そして孵化ふかしたオタマジャクシのような幼生の期間は水の中で過ごし、成長すると陸に上がる。愛嬌のある顔を眺めたり、ぷるぷるの卵のうの感触を確かめたりするのは、僕にとって早春の楽しみの一つであり、風物詩だ。そんな身近なトウキョウサンショウウオだが、近年は数が急激に減り、レッドデータブックに掲載される絶滅危惧きぐ種となってしまった。原因は3つあるが、いずれも解決が難しいものばかりだ。第1に、宅地開発や道路建設などによってトウキョウサンショウウオの生息地そのものがなくなってしまったこと。高度経済成長期以降、サンショウウオたちの棲む場所は急激に減ってきた。そして現在、破壊のスピードはゆるくなっているものの、終わってはいない。第2に、里山の手入れがされなくなったため、成体(おとなのサンショウウオ)の生活場となる雑木林や産卵場所となる水場が荒れてしまったこと。さらに最近ではゲリラ豪雨によって斜面の土砂が流され、水場が埋まってしまうことが頻発している。これだと、サンショウウオは卵を産むことができなくなってしまう。第3に、外来種によって食べられてしまうこと。その外来種というのは、北米~中米原産のアライグマだ。これがまた、サンショウウオたちにとっては最凶とも言える天敵なのだ。アライグマは水辺が大好き。水の中に前脚を突っ込んで獲物を探し、何でも食べてしまう。トウキョウサンショウウオは爪も牙も持たず、毒もない。動きもゆっくりで、狙われたら何の抵抗もできない。一つ不思議なのは、食べ残すことだ。アライグマはサンショウウオやカエルの一部だけをかじって、残りをポイッと捨ててしまうことがある。なぜそんなことをするのかわからないが、殺しておいて全部食べないというのは、もったいない感じがしてちょっと腹が立つ。また、最近の観察では、アライグマがトウキョウサンショウウオの卵を食べることもわかってきた。開発で棲み場所を追われ、人間社会の変化や気候変動で産卵場所が減る中、そこに追い打ちをかけるアライグマは、トウキョウサンショウウオにとって死神とも言える存在ではないだろうか。ただし、そのアライグマも人間にもてあそばれた被害者であることは忘れてはならない。アライグマは、生じる悪影響の大きさから、環境省によって「特定外来生物」に指定されている。アライグマ対策としてやることは二つ。まず簡単にできることは、アライグマが捕食しづらい状況を作り出すこと。各地で行われている事例を見ていると、産卵場の水面に板を浮かべるのが効果的なようだ。シェルターとなって、その下にいるサンショウウオや卵のうが守られる、シンプルな対策だ。もっと根本的な解決策としては、アライグマを捕獲することだ。ただ、これがなかなか難しい。特別な許可が必要だし、捕獲も簡単ではない。大きめのカゴ罠わなを設置し、餌を入れて捕まえるのだが、これを毎日見回る必要がある。タヌキなどの在来種が間違ってかかってしまった場合、なるべく早く放してやる必要があるからである。うまくアライグマが捕獲できたとしても、最大の難関が待っている。それは殺処分だ。外来種とはいえ、苦痛を与える方法での殺処分はやってはいけない。動物愛護管理法という法律で決められている。現在、私たち公園管理者としては、行政が試験的に行う捕獲・駆除に少し協力する、というぐらいのことしかできていない。今後、捕獲・駆除を行う体制をしっかりと確立して、トウキョウサンショウウオが安心して暮らせる場所を増やしていくつもりである。

(AIドローン、食害の鳥退散させたい:長野)
AIドローンで畑から鳥を追い払え―。電子回路・ソフトウエア設計開発のマリモ電子工業(上田市諏訪形)が、鳥による農産物被害を防ぐシステムの開発に向け、信州大工学部(長野市)などと共同研究している。ドローン(無人機)を自動で飛行させ鳥を嫌がらせる試みで、2026年以降の実用化を目指す。現在は手動でドローンを操作して効果を確かめつつ、鳥を認識するAI(人工知能)の精度向上に取り組んでいる。共同研究には長野高専(長野市)と岐阜大(岐阜市)も参加。現在は装置を使って爆音を鳴らすといった対策があるが、鳥が慣れて効果が薄れてしまう課題がある。ドローンも同様のため、開発を目指す新たなシステムでは鳥の認識の精度向上に加え、効果的な飛行パターンをAIに判断させる考えだ。21年から上田市のワイン醸造所「シャトー・メルシャン椀子(まりこ)ワイナリー」の畑で、ムクドリによるワイン用ブドウの食害を防ぐ実証実験をしている。同年9月20日~10月20日の10日間にドローンを手動操作して追い払ったところ、食害が進んでいなかった。マリモ電子工業取締役の土屋博之さん(64)は「ドローンを嫌がっている」と手応えを口にする。ワイナリー長の小林弘憲さん(48)によると、約30ヘクタールの畑は森に近いこともありムクドリによる食害が多い。爆音を鳴らす装置や猛禽(もうきん)類を描いたたこなどで対策してきたが、ムクドリが慣れ、効果が薄れているという。共同研究する信大工学部の小林一樹教授(45)=情報学=は「鳥は非常に賢く、侮れない。悪さをしていない時に爆音が鳴った場合、自分とは関係のないことと学習してしまう」。ドローンもムクドリが畑に近づいた時にだけ飛ばさないと効果がないという。22年は農研機構生物系特定産業技術研究支援センター(川崎市)の支援を受けて8~10月にドローンを飛ばした。詳しいデータは解析中だが、ドローンで鳥を追い払ってから戻ってくるまでの時間が早まり、慣れる兆候が見られたという。同社は23年以降、高さや速さを変化させながら飛ばし、ムクドリが慣れないよう追い払えるか実験で確かめる予定だ。ムクドリをAIで認識するシステムは17年に開発に着手。上田市内の農園でムクドリの画像を撮影し、AIに学習させた。現在は90%の確率でムクドリを検出。建物など他の物体を誤検出することがないよう改修を進めている。土屋さんは「農薬散布などを含め、AIドローンはトラクターのように農家にとって当たり前の道具になる時代が来る」と予測。農産物については鳥以外の獣害や盗難被害防止にも役立てたい考えで、空港周辺でのバードストライク防止などへの応用も見据えている。

(イノシシ遭遇、身近に迫る危険性:山形)
気候変動なども影響し、野生のイノシシの生息分布は北上していると専門家は指摘する。県内では約20年前に、天童市の山中で野生イノシシが見つかった。現在では市街地でも出没事例がある。全国的には2016年11月に群馬県桐生市で、自宅敷地内で60代男性がイノシシに襲われて死亡した。酒田市では22年9月、市中心部で走る姿の目撃情報が相次ぐなど、危険性は身近に迫っている。東北芸術工科大(山形市)で環境学や狩猟文化などが専門分野の田口洋美教授(65)は「(イノシシの)人間への警戒心がなくなってきたのではないか。南陽市の住宅地に出没した事例は、県内で20年前にはなかったような出来事で、今は『まさか』がない時代だ」と警鐘を鳴らす。さらに「イノシシは凶暴になると、ものすごいスピードで襲いかかってくる。ナイフのように牙が鋭く、かまれると血が吹き出ることもある」とし、「日常の中でイノシシに襲われる危険性が常にあることを知ってほしい。車の中に逃げ込むことも有効だ」と話した。一方、山形大農学部(鶴岡市)で野生動物管理学を専門とする江成広斗教授(42)はイノシシの特性に関して非常に機敏な動きをし、急カーブもでき、急斜面も上ると説明する。特に雪国の冬季は、雪が多い山から、雪の少ない里に近い森林に集まる傾向がある。森林から流れる河川をたどり、住宅地に侵入することも多いとの見解を示した。万が一、遭遇した場合はどう対処すればいいのか。江成氏は基本的な対応として、絶対に刺激しないことが鉄則だと強調する。もともと警戒心が強い性質を踏まえ、見通しの良い場所を嫌う。遭遇を避ける予防策として、河川脇の刈り払いなどを行い、見通しを良くすることも重要だ、と指摘した。

(寄生虫研究者が語った「エキノコックス」から身を守る方法)
2021年、愛知県での定着が報告され話題になった寄生虫「エキノコックス」。北海道に生息するキタキツネの感染率は40%以上にも上ります。本来、キツネとネズミの間でライフサイクルが完結するはずのエキノコックス。しかしイレギュラーに人間に寄生してしまった場合、死に至る病を引き起こします。日本で本格的に対策が始まったのは戦後復興期。北海道礼文島出身者から相次いでエキノコックス症とみられる患者が発見され、その謎を解明すべく調査団が島に派遣された。河﨑秋子さんの最新小説『清浄島』ではそんな史実をもとに、エキノコックス症と闘った研究者と島民の姿を描きます。今なお新規感染者が発生し続けるエキノコックス症。『清浄島』の刊行を記念して、北海道立衛生研究所で30年以上、エキノコックスの研究に携わってきた八木欣平さん(現北海道大学獣医学部客員研究員)と著者との対談が実現しました。河崎秋子(以下=河崎):北海道のエキノコックスは、まだまだ予断を許さない状況ですよね。八木欣平(以下=八木):そうですね。僕は札幌の山のほうに住んでいますが、感染源となるキツネの糞を拾うとエキノコックスの虫卵が簡単に見つかります。河崎:エキノコックスはまず幼虫としてネズミに寄生して、それを食べたキツネの消化管の中で親虫になって卵を産みますよね。本州で拡大しないのは、キツネが少ないというシンプルな理由なんでしょうか。八木:それはひとつの要因だと考えてよいでしょう。もうひとつ、北海道にはキツネが食べるエゾヤチネズミという、草地で増えるタイプのネズミがいるんです。本州にもそれに相当するネズミはいなくはないけれど数は多くない。そこからいろんな仮説は立てられますね。河崎:キツネやネズミと人間では感染しやすさは違うのでしょうか。八木:あれだけキツネに感染しているのに人の患者が少ないことを考えると、人に感染しづらいと予測できます。また、最近は個人情報の問題もあり、感染した人の情報がなかなか出てこないんですね。それが、身近に感染者がいると認識している人が減ってきていることの理由の一つと思われます。学校の先生とエキノコックスの話をすると「え、まだエキノコックスっているんですか」と驚かれたりすることもあるようです。河崎さんは、小さい頃に学校で、「キツネを触るのはやめましょう」って教えられたでしょう? 河崎:それはもう。他にも、木の実を採っても絶対生のままで食べるな、と厳命されていました。八木:ところが最近は、そうした危険性を子供に教えるべき先生まで「まだいるんですか」と言うわけです。リスク回避の必要性が認識されづらくなっている。でも、キツネに餌をやらない、外で遊んだら手を洗う、物を食べる時は気を付けるなどといった予防法で、感染率は確実に下がります。河崎:エキノコックスは人間に寄生しても親虫になれず、卵を産めないですよね。そうした、寄生虫にとっても望ましくないエラーというのは結構あるものなんですか。八木:クジラの回虫のアニサキスなんかもそうですよ。河崎:ああ、あれは寄生されるとものすごく痛いといいますね。八木:そう。魚にアニサキスの幼虫が寄生し、その魚をクジラが食べると消化管の中で親虫となって卵を産む。でも、寄生された魚をクジラではなく人間が食べると、「ここ違うな」と思うのか、胃壁に潜り込んで幼虫のままでいようとするんですね。で、そのまま死んじゃう。そのような偶発的な感染は、強い病原性を発揮することが多いようです。小説の中でも、エキノコックスが人間の脳に寄生したケースが出てきますよね。河崎:あれは、根室のほうの郷土資料館の方からお話をうかがいました。八木:好適宿主、つまり望ましい宿主であるネズミなんかは必ず肝臓か、隣接した場所にしか寄生されないんです。でも人の場合、脳や骨に寄生されることがある。アニサキスと同じように人が好適宿主でないことが原因なのかもしれません。ただ、寄生虫が非好適宿主、つまり望ましくない宿主に寄生するのは、もしかすると新しい宿主を獲得するチャンスを狙っている個体がいるのかもしれません。歴史の中で、寄生虫が宿主をスイッチするってことはありましたから。河崎:それは進化といっていいんでしょうか。八木:難しいですね。謎が多いんです。でもそここそが、エキノコックスのポイントだと僕は考えています。ウイルスや寄生虫は悪いものだから根絶しなければならない、と考えておられる方もたくさんいますが、僕は基本的に、共存していくしかないという考え方なんです。共存しながら感染をどう防ぐかを組み立てるのが自分の仕事だと思っています。小説の主人公・土橋もそういう視点を持っていて、共感する部分がありました。河崎:共存していくなかで、今後、人間は何ができるでしょうか。八木:大きく分けてふたつあります。ひとつは人側の治療薬。治療薬が開発できれば、それほど恐れなくてすみます。もうひとつは、人への感染がどのような状況で成立するのか、そのメカニズムを明らかにする研究ですね。今のコロナウィルスも同じです。感染のメカニズムがわかれば、感染を回避する有効な方法が見つかるものと考えています。河崎:日常生活において、手洗いなどの他に気を付けたほうがいいことはありますか。八木:飼い犬は人とのコンタクトが多いですから、僕は犬のリスクについてはもう少し気をつける必要があると思っていますね。河崎:春の狂犬病ワクチンみたいな形で、定期的に予防接種ができると、だいぶリスクは減りますか。八木:まさにその通りで、作中にも出てくるプラジカンテルという薬を実験的に犬に30日ごとに薬を飲ませると、感染はほとんどゼロなんですね。エキノコックスが寄生してから卵を産むくらい成長するまでに30日くらいかかるので。いわゆるフィラリアの薬もひと月に1回投与するので、その時一緒に薬を飲ませるように指導している獣医さんもいます。河崎:それは安心ですね。八木:小説のなかで土橋も言っていますが、研究者にはまだまだやることがたくさんある。先ほどの笹の実の話のように、何が駄目なのか分かれば、リスク回避の選択肢は増えますから。崎:そうした理系の研究者たちの頑張りを、私は好き勝手に物語で扱わせてもらった形になってしまって……。八木:いやいや、丁寧に書いてくださっていて、とても印象の良いストーリーでした。河崎:今研究されている方々の存在は本当にありがたいです。得た知識は後の世代にもなくてはならないものになりますし。八木:まあ、マンパワーと研究費の問題はありますが。今はどの研究もそうですが、ある程度業績を残さないと研究費がもらえない。そのなかで、若い人たちをどう育てるのかは僕たちの悩みどころです。でも寄生虫の研究ってマイナーで、何をやっても世界初、みたいなことがあるんですね。そういう意味では恵まれた環境にいるんです。今後、それをどう若い人たちに繋いでいくか、真剣に考えないといけないと思っています。

(ウサギに戦々恐々、大豆食害「イノシシよりひどい」:石川)
在来品種の大豆の生産が盛んな石川県珠洲市北東部で、野生のウサギによる豆の食害が、ここ数年深刻になっている。今年の干支(えと)で、かわいらしいイメージもあるウサギだが、農家は「今年も大きな被害が出るのではないか」と戦々恐々としながら、対策に頭をひねる。市も対策用の電気設備への助成対象拡大を検討している。「ケンケンパ、みたいな足跡があるんだ。ここにもある」。在来種の「あさひ大豆」を生産する同市川浦町の東守さん(68)が、雪で覆われた畑を見ながら指さす。現在は冬のため、何も栽培していないが、足跡は多く見られるという。東さんの畑では、ウサギによる食害が二年ほど前から起きた。昨年は三割の大豆が新芽や葉を食われ、損害は三十万円余りに。畑を漁網で囲ったこともあったが、かじって穴を開けられ効果はなし。イノシシ用電気柵でも、跳び越えるのか、下をくぐるのか、防げなかった。イノシシ被害に次いで起きたウサギの食害に「(栽培を)やめてしまいたくなることもある。小さい見た目で、イノシシよりひどいとは」。現在は小動物用電気ネットの購入を考えている。ただ、ネットをかけると草刈りがしづらくなり、費用もかかる。「何かうまい方法があればいいが」と嘆く。能登半島最先端に近い同市狼煙町で在来種の「大浜大豆」を栽培する二三味(にざみ)義春さん(75)の畑では、二〇二一年に二十万円ほどかけて小動物用電気ネットを導入。被害はなくなったが、ネット周りに土がたまり、管理が大変なため、もっと簡単に効くものはないかと、畑にライトを置くなど工夫を続けている。ウサギ増加の理由は不明だ。ウサギを捕食するキツネが減っているためとみられ、二三味さんは近年増えるイノシシと何らかの関係があるのではと推測している。他にも小豆を食べられたなどの被害の声があり、市はこれまでイノシシ用電気柵のみに限っていた助成を、新年度から小動物用電気ネットにも広げるなどの対策を検討している。JAすずし(珠洲市)の担当者は「負担増になるが、ネットで対策するしかない。被害が増えつつあるので心配しており、呼びかけなど、さらなる対策を打つことが必要になるかもしれない」と不安げに語る。

(北アルプスの環境保護へ知見結集:長野)
気候変動が北アルプスの自然環境に与える影響を横断的に把握して生態系保護などの対策に結び付けるため、環境省と林野庁が3月にも、全国の大学や研究機関と連携してコンソーシアム(共同事業体)を発足させる。北ア一帯の動植物や気象などの研究に関わる専門家が集まって情報を共有し、気候変動による環境の変化を多面的に分析。さまざまな知見をつなげて調査研究の幅を広げ、効果的な対策を実践したい考えだ。北アでは、地球温暖化などの影響で高山植物の群落が減る一方、キツネやサルなどが高山帯に現れ、国特別天然記念物ニホンライチョウの生息環境が脅かされている。こうした植生や動物の生息域の変化に加え、降雪量なども地球温暖化の影響を受けているとみられる。各種調査が行われているものの、従来は主に個別の研究にとどまり、気候変動が北アの自然環境に与える影響について網羅的に把握する場がなかったという。環境省中部山岳国立公園管理事務所によると、過去2年間に同公園内での学術調査を申請した約50機関にコンソーシアムへの参加を呼びかけている。3月中に設立式と初回会合を開く方針で、年1回程度集まり、北アで行った調査や研究の成果を発表し合う。さまざまな角度から気候変動の影響を考察、北アでフィールドワーク(現地調査)をする研究者らがネットワークを築き、調査研究の幅が広がる効果も期待する。同事務所の森川政人所長は、国が独自に調査するには人員や予算が足りず、現状では研究機関が行った学術調査の結果の追跡や共有も十分にできていないと説明。コンソーシアムのメンバーから研究内容を聞き取り、環境保護に必要な対策の提言も受けたいとし「気候変動はどんどん深刻化する。国の資源を後世につないでいくため、研究者と行政が協力する場としたい」と話している。

(なぜ真冬にヒグマが出没? 対策どうすれば:北海道)
年末、札幌市の円山地区に出没したヒグマについてです。なぜ真冬のこの時期に出没したのか、冬のヒグマ対策について考えます。12月31日、札幌市中央区。円山西町2丁目の住宅街にある児童相談所の敷地内でクマの姿が目撃されました。体長は2メートルほどだったということです。その後も、町内では円山西町1丁目で2件、円山西町3丁目で1件、クマの姿や足跡を目撃したという通報が相次ぎました。現場は円山動物園にほど近い住宅街で山沿いにあります。市によりますと、クマは比較的若い個体と推定され、出没したあとは付近の山に入っていったとみられています。ヒグマの生態に詳しい酪農学園大学の佐藤喜和教授は、この時期にクマが出没したことについて、「クマが冬眠に入る時期というのはかなりばらつきがあり、12月下旬に出る個体がいても珍しくはない。まだ冬眠に入る前のクマが森の中を歩いていたら住宅街に出てきてしまったということではないか」としています。冬眠しているクマが人が森の中で行う作業などによって目を覚ましてしまうケースもあるということで、佐藤教授は「過去には林業の作業中や、山中を人が歩いていて冬眠穴の近くを通過したときにクマが飛び出してきた事例もあり、そうした恐れはあると思う」と話しています。そのうえで、クマとの事故を引き起こさないための対策について、佐藤教授は「クマを正しく恐れることが重要で、『札幌市周辺にある森林にはいつでもクマが暮らしている』ということをよく知ってもらうことが大切だ。ゴミを出す際もネットで囲むなど、きちんとルールを守ってもらうことが大事だ」と話しています。

(ヒグマ、エゾシカ対策を検討:北海道)
生活圏に出没し、農業被害も増えているヒグマやエゾシカとどう向き合うか。北海道上川総合振興局と上川地方の自治体の担当者が対策を話し合う会合がこのほど開かれた。野生動物への対応をめぐって、出没情報の共有、捕獲や駆除の是非などの課題を話し合った。一昨年、旭川駅の近くに現れたヒグマの対応を迫られた旭川市の担当者は、当時の問題点と今後の課題を発表した。市環境総務課の猪股正孝主任は2021年6月、旭川駅近くの忠別川でヒグマのフンが見つかった問題を報告。市民の憩いの場である河川沿いの公園の閉鎖を迫られたほか、パニックを防ぐため、フンの発見場所など、情報の一部を非公表としたことなどを語った。また市街地近くでは、鳥獣保護管理法や警察官職務執行法によって発砲による駆除ができなかったことや、河川敷のヒグマの動向を把握できなかったことなどの問題点を認めた。こうした教訓から、22年度はヒグマの隠れ場所になる河川敷のクマザサを刈りとったり、電気柵を設置したりするなどの対策を取ったという。ヒグマ出没情報の広報について各自治体担当者からは、「スマートフォンで情報を流してもあまり伝わらない。屋外で作業する農家に伝えるにはやはり、防災無線が効果的」との声が出た。エゾシカ対策については、道内での推定生息数は約70万頭で近年大きな変化はないが、捕獲数は全道で年約13万頭、特に雌ジカの捕獲が7万頭ほどと伸び悩んでいることが報告された。

(狩猟体験:高知)
土佐市観光協会は14日午前9時~正午、同市波介で狩猟体験プログラムを行う。地元の猟友会メンバーを講師に獣の痕跡を探したり、わなを設置したりするほか、ジビエソーセージの試食もある。対象は県内在住の小学5年生以上で、高校生以下は保護者同伴。定員10人(応募5人未満の場合は中止)。参加費3千円。

(古くから狩猟が盛んな南信州・遠山郷、生物供養碑:長野)
飯田市南信濃八重河内の八幡神社の氏子総代らが、境内に生物供養碑を建立した。南信濃を含む「遠山郷」一帯は、古くから狩猟が盛んな地域。動植物の命をいただきながら人の営みが支えられてきたとして、「将来にわたって、さまざまな生命に感謝しよう」と思いを込めた。17日には神社で初めて生物供養祭を開いた。

(ハンターに聞く、野ウサギはどこへ?:長野)
山に囲まれ、昔から野生動物を食べる文化がある信州は、ジビエ(野生鳥獣肉)の本場だ。特に近年、数が増えて栄養価も注目されるシカをはじめ、イノシシやクマを提供する店はあるが、ウサギは聞かない。「以前は捕って食べた」という話はあるが、今はどうなっているのか―。猟友会員や関係機関に聞いた。松本市の百瀬壽英さん(82、里山辺)は、松塩筑猟友会里山辺支部の顧問。支部最長老で、今も毎週猟に出る。百瀬さんや支部長の布野兼一(かねいち)さん(73、同)によると、一帯の里山には、以前は今のシカと同じくらい野ウサギが多くいて、「山鳥やキジは捕れなくても、ウサギはたいてい捕れた」(百瀬さん)。山の斜面を通るウサギを下から缶をたたいて追い立て、上で待ち伏せして銃で仕留める。ウサギが飛び出すと、犬もほえて追うなど猟に一役買った。「一人でも仕留めたよ」と布野さん。わな猟免許を持つ人は、細い針金で輪を作り、ウサギが通ると重みで輪が締まる「くくりわな」などで捕ったという。同支部では獲物を解体してうさぎ汁にし、忘年会や新年会などで食べた。「肉は軟らかく、さっぱりしていて独特な味わい。おいしいよ」(百瀬さん)。それほど捕れたウサギだが、1985(昭和60)年ごろから少なくなり、90年を過ぎるとたまに見かける程度になり、近年はほとんど見ないという。県の統計だと、猟や有害鳥獣の駆除による県内の野ウサギの捕獲数は、70年代半ばに7万匹を超えていたが、その後はほぼ右肩下がりに。2021年度はわずか17匹と、半世紀近くの間に激減した。県鳥獣対策室によると、野ウサギによる苗木の食害が深刻だった75年、県は対策としてウサギを補食するキツネを禁猟(85年まで)にし、76年には野生のキツネ32匹を岡山県から連れてきて、県内全域に放した。同対策室は「キツネの効果もあっただろうが、野ウサギに感染症がはやった時期もあり、複合的な理由で減ったのでは」と見る。県内の21年度のシカの捕獲数は3万834頭。長年、里山の動物たちを見てきた百瀬さんは、ウサギが減るのに反比例して、シカやキツネ、タヌキが増えたと言う。「まれに野ウサギを見かけても、今は捕らない。里山にはいろいろな動物がいてほしいし、増えれば昔のように猟もできるしね」と百瀬さん。「うさぎ追いしかの山…」で始まる唱歌「故郷(ふるさと)」が発表されたのが1914(大正3)年。その後60年間ほど維持されていた里山のウサギの生息環境は、その後のおよそ50年で変化したと考えられる。ハンターや子どもたちが里山でウサギを追う日は、再び訪れるのだろうか―。【ニホンノウサギ】本州と四国、九州に広く生息し、体長は50センチほど。日本の固有種で、世界に生息するノウサギと比べると小柄で、足や尾、耳は短い。積雪がある地域では、冬は耳先の黒い毛を残して、体毛が白くなる。

(シカと一緒に暮らす道探る:鳥取)
森林・林業に関する技術や取り組みについて情報交換し、産業の成長を目指す「森林・林業交流研究発表会」(近畿中国森林管理局主催)で、智頭農林高3年の谷本愛翔さん(18)と堀村展汰さん(18)が、食害被害をもたらすシカと共生するための植樹の研究結果を発表し、審査委員長賞を受賞した。同校の出場は7回目で、受賞は5回目。

(成獣のクマ1頭を駆除、数日前から複数の目撃情報:長野)
今月5日からクマの目撃情報が複数寄せられていた木曽町で、7日成獣のクマ1頭が駆除されました。駆除されたのは、体長およそ1メートル20センチの成獣のメスのクマ1頭です。警察によりますと7日午前9時半ころ、木曽町日義のホームセンターの近くにクマがいるなどと、通りかかった人から通報がありました。付近は国道19号沿いの住宅が点在している地域で、警察や町の職員、猟友会など10人以上が駆けつけ、午前11時すぎに射殺したということです。町には5日からクマの目撃情報が複数寄せられていて、警察では駆除したのは同じクマだと見ています。

(イノシシ侵入、校庭無残:鳥取)
南部町法勝寺の西伯小で、野生のイノシシが校庭を掘り起こす被害が相次いでいる。10月から12月初旬までの間に10回以上にわたって被害が確認され、校庭は整地が必要な状態となった。児童が安心して学校生活を送れる環境を確保しようと、町は整地を急ぐとともに抜本的な被害防止に向けた対策に頭を悩ませる。

(ツキノワグマの足跡確認、住民に注意呼びかけ:三重)
三重県名張市赤目町一ノ井でツキノワグマの足跡が見つかったと、市が26日発表した。現時点で被害はないというが、住民に対し、ごみを出す際などには注意するように呼びかけている。市によると、24日朝、犬の散歩をしていた住民が、雪の上にある足跡を見つけた。その写真を26日に県を通して専門機関に照会し、「成獣とみられる」との判断が示されたという。市内では6月に市南部で目撃情報があり、初めてツキノワグマと確認されている。

(クマの目撃情報、2日連続・同じマンションで:新潟)
南魚沼警察署は12月30日、「湯沢町土樽のマンションの駐車場に、体長約1.2メートルのクマ1頭がいる」と、午後3時前に住民から通報を受けたと発表しました。このマンションでは29日午後3時すぎにも、「体長約1.2メートルのクマ1頭」の目撃情報が、住民から寄せられています。クマは29日も30日もいずれかの方向に立ち去ったということです。南魚沼署は「クマを見つけたら近寄らず、通報してほしい」としています。

(大みそかにクマ目撃:北海道)
年末、札幌市中央区の住宅街でクマが目撃されたことを受けて、市は、住民に対しゴミ出しのルールを徹底するとともに、見通しの悪い夜間に外出する場合は十分に注意するよう呼びかけています。札幌市内では先月31日、中央区円山西町の住宅街でクマの姿や足跡を目撃したという情報が相次ぎ寄せられました。クマは比較的若い個体で、出没したあと、山林に向かったとみられていますが、市は周辺の住民に対し、エサになるゴミを放置しないようゴミ出しのルールを徹底するとともに、見通しの悪い夜間に外出する場合は十分に注意するよう呼びかけています。これについて秋元市長は4日の記者会見で、「再びクマが出没する可能性もあり、必要な対策や調査を進めていきたい」と述べました。一方、ここのところの雪で北区や東区では例年に比べて1週間ほど早く積雪が50センチを超えていて、市は、北区あいの里や東区丘珠など一部の地区に今シーズンから新たに設けた3段階の対策のうち「フェーズ1」を適用し、幹線道路の排雪を前倒しして行うことを決めました。

(シカの足跡発見、クマの痕跡発見されず:北海道)
1月9日夜から、札幌市手稲区でクマの目撃が相次ぎました。札幌市が調査したところクマの痕跡は見つかりませんでした。10日午前1時前、札幌市手稲区稲穂2条1丁目で「後ろからパタパタという音が聞こえて振り向くと、50センチから60センチのクマがいた」と付近を歩いていた男性から警察に通報がありました。札幌市が調査したところクマの痕跡は見つからず、小型の動物と見られています。一方、3時間ほど前の9日午後10時すぎ、この現場から約2.5キロ離れた同じく手稲区富丘5条3丁目付近でも、散歩中の夫婦からクマを目撃したと通報がありました。市の調査では、付近にシカの足跡が見つかっていて、シカと見間違えられたとみられています。

(屠体給餌、全国24施設に拡大)
捕獲した鹿の肉を、皮や骨付きのまま動物園のライオンやトラなどの肉食動物に与える「屠体(とたい)給餌」が注目されている。愛知県東栄町では住民6人が専用処理施設を新設し、くくりわなで捕らえた鹿を解体して全国の動物園に年3トン超を販売。動物園側も動物のストレス解消や集客につながると歓迎する。駆除された鳥獣の命を生かす取り組みは全国24の動物園・水族館に広がっている。ボキボキー。雄のライオン「アース」が約5キロの毛や皮が付いた鹿の脚肉を、前脚で押さえ付け、2時間かけてたいらげた。愛知県豊橋市の動植物公園「のんほいパーク」は親子連れの来園者が多い日曜など毎週2回、ライオン4頭に屠体給餌する。週5日間は1日1回、食用の輸入馬肉や鶏頭など6~8キロを与える。丸のみできるので食事時間は5~10分と短いが、屠体給餌は肉を引きちぎって骨をかみ砕くため、野生に近い行動が再現され、動物のストレス発散につながっているという。消化にも時間がかかることから、便が健康的な状態になった。週2回の理由は、野生の場合は何日も食事にありつけない日があるためで、現在、消化力を研究しながら給餌回数を増やせないか探っている。鹿肉を供給するのは、東栄町の鳥獣肉処理会社「野生動物命のリレーPJ」だ。のんほいパークは4年前、動物に心地よい環境をつくろうと、福岡県糸島市から鹿やイノシシの肉を調達し、屠体給餌を始めた。ところが、地元の愛知県内でも獣害対策として鹿が駆除されていたことから、元町長で茶農家の尾林克時さん(73)に相談。園に鹿肉を提供するため21年5月、尾林さんが猟師ら計6人で同社を設立した。同社はくくりわなで鹿を捕獲したり、他の狩猟者が捕まえた鹿を1頭3000円で購入したりして調達。専用の解体場で洗浄後に内臓を除き、頭を切断。屠体給餌用の脚4本と、2分割した胴体を圧縮袋に入れ、63度で30分間の低温加熱殺菌や冷凍処理をしてダニなどを死滅させる。成体1頭の体重は30~50キロで、内臓や頭を取り除くと20~30キロ。22年12月までに約200頭6トンを生産し、サンプルを含め3・5トンを販売した。現在、同園を含め静岡や広島などの6動物園に1カ月当たり平均250キロを届けている。農水省によると、2021年度に捕獲された鹿とイノシシ125万頭のうち、自家消費を除きジビエとして食肉加工・流通したのは1割で、残りの大半は需要がないため廃棄処分されたという。一方で屠体給餌する動物園・水族館は、大牟田市動物園(福岡県大牟田市)が17年に導入して以降、約5年間で20都道府県の24園に急増した。調査した産官学の任意団体「ワイルドミートズー」の伴和幸・動物研究員は、「動物福祉と教育の両面から屠体給餌をする動物園はまだ増える」と語る。「野生動物命のリレーPJ」の尾林さんは言う。「安い輸入肉や廃鶏を使った餌と比べて価格がどうしても高くなる。屠体給餌に取り組む動物園に国や自治体が購入のための助成をすることで需要が増えれば、駆除された動物の命を無駄にせずに済む」。

(警笛装着というスペシャル技でクマもシカも裸足で逃げ出す?)
人里に顔を出す野生動物の話題をテレビでもよく見掛けるようになった。ドライブレコーダーによる遭遇映像もネット上で多く出回っていることからも、道路上でかち遭う機会もきっと増えているのだろう。山林が多くの面積を占める日本の土地にあって、ちょっとした移動でも峠道を走る機会は意外に多く、運転時に野生動物と遭遇するリスクも顕著かもしれない。こういったケースに対する備えとして、衝突時の衝撃を和らげるバンパー等がアフターパーツにラインナップされているものの、避けられるならそれに越したことはないし、そもそも動物の方から逃げてくれれば御の字である。 実際、こうした回避装置も今までもあるにはあったが、業務用機器が大半で一般のカーユーザーにとっては敷居が高いものでもあった。その点、ここで紹介するアイデアグッズは価格そのものも手頃なら、電源も必要としない点で取り付けもメンテナンスもカンタンだ。それがカー用品メーカー・ABAのオリジナルブランド「EDO-STA」にラインナップされる「動物除け警笛 ver.2」だ!仕組みはシンプルで、走行風を利用した警笛と考えると分かりやすい。しかも50km/hほどの速度から機能してくれるため、ごく一般的なカーユーザーにとっても現実的である。サイズそのものは小さく、目立たずに装着できるのも良いところ。そしてその警笛自体も、人間には認識されない超音波の高音というから、付けていることが気になることもない。発せられる音は20kHzで、これが前方400mの範囲に広がることが確認されている。この音が野生動物に届くと、異変を感じて立ち止まらせることができ、のこのこと道路上で遭遇することもないというのがそのリクツ。都合のいいことだらけで眉唾に感じる人もいるかもしれないが、製品開発にあたっては、北海道科学大学の協力を得たものでもある点に注目。彼の地では、エゾシカとの遭遇が大きな問題にもなっており、製品開発におけ実証試験では、まさにそのような状況でも効果が確認されているという。

(獣害問題に着目、全国大会へ:兵庫)
高校生が授業の一環で取り組んだ地域活動の体験や成果を披露する全国高校生体験活動顕彰制度「地域探究プログラム」の近畿地区予選会が27日、兵庫県洲本市宇原の市民交流センターであり、洲本実業高校(同市宇山)の2組が発表した。3年生女子3人のチームが全国大会への出場を決めた。

(山と共に:長野)
山中に雪を踏み締める音だけが響き、冷たい空気が頬をさす。広葉樹は落葉し、視界は良い。雪で白く染まった地面には、シカやクマなど野生動物の足跡が点々と残っていた。二十五年来、夫婦で猟を続ける上伊那猟友会中川支部(中川村)の木下重幸さん(61)と直美さん(62)。重幸さんが動物を追い出す「勢子(せこ)」、待ち受けて仕留める「タツマ」の直美さんは、小高い場所にある岩場に身を潜める。猟銃を背負った重幸さんが二匹の猟犬を放った。勢いよく斜面を駆け降り、すぐに遠くからほえる声。「追ってる」。犬に追い立てられ、斜面を駆け上るシカが視界の隅をかすめた。「ナオ、そっち行ったぞ!」。.

(農家を救い村守る:静岡)
真っすぐに伸びた天竜杉が覆う浜松市天竜区龍山町の斜面で、猟師宮沢三明さん(67)が切り株に腰を据えた。手がかじかむほど冷えた十二月初旬、他地域の猟師と総勢十二人で狩り場を囲んだ「巻き狩り」。「猟とは、待つことなんだ。初心者にはこの我慢が難しいんだな」。わずかな暖を求めるようにたばこに火を付けると、にやりと笑った。その時、猟犬の首に付けた鈴の音が聞こえ、空気が一変した。たばこをもみ消すと猟銃に弾を込め、銃口を音のする方向に向けた。身じろぎもせず、じっと待つ。やがて木立の合間を猟犬が駆け抜けた。宮沢さんが「犬だけか」と残念そうにつぶやくと、しばらくして遠くから銃声が聞こえた。他地域の猟師が、立派な角の雄ジカを仕留めていた。今、龍山で猟銃を扱える猟師は七人だけ。宮沢さんが二十一歳で狩猟免許を取った当時は、五十人ほどいた。猟を教えてくれた亡き祖父・頂士(ちょうし)さんは八十八歳まで現役で、度々、大物のイノシシを持ち帰ってきた。「イノシシは一頭数十万円、シカは数万円で肉屋が買い取ってくれた。今は頭数が増え過ぎてお金にならない」とこぼす。

(有害獣対策で地域おこし協力隊員:千葉)
鴨川市は、有害獣の被害対策と、捕獲動物の肉や革などの活用を通じた地域活性化を推進するため、新たに地域おこし協力隊員として、石川慎也さん(32)と髙橋彩さん(32)の2人を委嘱した。同市の地域おこし協力隊員は、15人目。有害鳥獣対策での委嘱は、初めて。同市では、農地への侵入防止や捕獲などの対策を推進しているが、高齢化や人手不足などが課題となっており、2人の力を借りて改善を図りたい考え。石川さんは、埼玉県東松山市出身。ゴルフ場のコース管理部に勤務していた際、増加していく獣害を目の当たりにして、わなの免許を取得。シカやイノシシを捕獲した後、何かに活用したいと考えていたところ、鴨川の協力隊員募集が目に留まったという。「ゴルフ場の管理経験から、管理の行き届かない場所は、有害獣の生息地になることを知り、定期的な草刈りの必要性などを学んだ。将来的には、捕獲した獣の食肉利用や、加工技術を身に付け、鴨川の地域おこしに貢献したい」と話している。髙橋さんは、愛知県名古屋市出身で、動物病院に動物看護師として勤務していた。地元の畑が獣に荒らされていることから、狩猟の技術を学び、革の加工技術を習得して作品をマルシェなどに出品していた。猟師として成長したいと、協力隊員に応募した。「肉も皮も骨も捨てるところなく活用できるように、知識や技術を高めたい。ジビエやクラフト体験を開催し、将来は観光イベントとして地域振興の一助にしたい」と話している。委嘱期間は、来年3月31日まで。以降、1年単位で更新可能で、最長7年11月30日まで。活動内容は▽有害鳥獣による農作物への被害調査、防止▽対策を通じた地域振興、活性化▽捕獲後の処分――など。同市では「2人は、地元猟友会の会長や捕獲従事者の指導を受けながら知識、技術の習得に努めている。ジビエや革などの加工にも興味を持っているので、捕獲後は埋設だけでなく、さまざまな活用につながるのでは」と期待している。

(ジビエ盛り上げたい:岩手)
大槌町地域おこし協力隊 松橋翔(かける)さん(25)。移住した3月に大きい地震があり、東日本大震災を思い出した。秋田県出身で同じ東北だが、沿岸の人が切に怖い思いをしたのだと11年を経て実感した。車には非常食や寝袋など、避難を想定した荷造りをする。実家は代々のマタギで、現在は大槌のジビエ利活用サイクルを勉強している。だんだんと地域になじめてきているのがうれしい。「東北ジビエ」発祥地として盛り上げていきたい。

(捕獲した猪「1頭でも埋めない」が信念:島根)
2022年5月、松江市の山あいに、地域で獲れた猪肉をふるまう食事処がオープンしました。「安分亭」(あんぶんてい)です。猪肉を軸に地域振興に取り組む合同会社「弐百円」の代表社員、森脇香奈江さん(41歳)が、店じまいを決めた前店舗を引き継ぐ形で始めました。駆除され、ただ埋められていく夏のイノシシ。人情味と風情がありながら、幕を下ろしていく農家食堂。価値があるのに生かされぬものを「知足安分」(高望みをせずに自分の境遇に満足すること)の精神で見つめなおそうとしています。

(規格外の富有柿とシカ肉、カレーで活用:岐阜)
岐阜県本巣市特産「富有柿」の規格外品のフードロスを減らそうと、同市の商品プロデュース業「アミー」と、ジビエ料理を手がける「エムズキッチン」が、富有柿とシカ肉を使ったスパイスカレーを考案した。市内で捕獲したシカの肉を柔らかく煮込み、10種類以上のスパイスと合わせたカレーで、富有柿のジャムを入れるのが隠し味。県内外の料理イベントで提供し、本巣の食の魅力を発信する。アミーは昨年、規格外の富有柿を活用してジャム状の「コンフィチュール」を開発し、地元の就労支援事業所の協力で製造している。商工会の集まりでエムズキッチンと知り合った縁で、両者が「めぐるプロジェクト」と銘打った活動をスタートさせ、本巣市の豊かな食材を無駄にしないカレーを作ることにした。シカ肉は腕とすねの部分を使用し、長時間煮込むことで食べやすく仕上げた。脂身が少ないシカ肉に富有柿のジャムを合わせることで、コクが増している。エムズキッチンの井上真理子代表は「本巣の恵みが詰まっている。おいしく、体も元気になる」と話している。アミーで試食会が開かれ、地域住民らにスパイスカレーを振る舞った。アミーの戸川康子代表は「柿の概念を覆すようなカレーになった。県外の人にも魅力を広めていきたい」と語った。

(シカのジビエをブランド化:栃木)
産業廃棄物収集運搬業の白石環境(上三川町上蒲生、白石純也(しらいしじゅんや)社長)は、新規の環境保全事業として展開しているシカのジビエ(野生鳥獣肉)を「芭蕉鹿(ばしょうじか)」の名称でブランド化している。料理用からジャーキー、ペットフードまで幅広い商品をそろえる。大手スーパーや猟友会との連携で安定供給体制の確立と販路拡大を進め、輸出も視野に入れる。同社は廃棄物を扱う業者の立場から、森林や農作物の食害対策で駆除されたシカの肉をジビエとして有効活用できないか県と協議した。しかし東京電力福島第1原発事故による放射性物質の問題から出荷制限が続き、本県でのシカの食肉化は当面できないという。このためシカの食害に悩み、駆除を行っている三重県と協議。地元猟友会の協力を得る体制を整え、2020年5月、伊賀市守田町に「鹿加工センター 伊賀上野工場」(約200平方メートル、従業員9人)を開設、国際基準の食品製造工程管理手法「HACCP(ハサップ)」の認証取得事業所として稼働した。

(シシ肉5種類、鮮度こだわり:熊本)
海のイメージが強い天草だが、山間部にはイノシシが多く生息し、農作物を食い荒らす厄介者でもある。そのジビエ(野生鳥獣肉)をウインナーやサラミなどに加工。

(イノシシ、おいしさ感じて:兵庫)
丹波篠山市の冬の味覚「ぼたん鍋」をPRしようと、市観光協会が同じイノシシの肉を使うしし汁を振る舞うイベント「ぼたんに会ひに」を年末年始にかけて3回開く。市内のぼたん鍋料理店が腕を振るった本格的な味で、味の違いを楽しめるよう各回異なる料理店が調理する。地域の食文化の継承を目的とした文化庁の「100年フード」に同市のぼたん鍋が認定されたことを受けて企画された。

(栄養満点の鹿肉を食べて、ジビエグルメを当てよう:京都)
京都府亀岡市、南丹市、京丹波町、福知山市、綾部市、京都市右京区京北の6市町村からなる「森の京都」エリアでは、計38の飲食店が参加する「第6回 森の京都ジビエフェア」を開催している。2022年11月19日から2023年2月12日(日)まで、それぞれに創意工夫が凝らされた多彩なジビエ料理が提供。ジビエ料理を食べてWebアンケートに答えると、抽選で豪華ジビエグルメが当たるチャンスも。京都のジビエ(鹿肉)の魅力発信と消費拡大を目的に開催されている、冬恒例の「森の京都ジビエフェア」。鳥獣被害対策と地域活性化の一挙両得を狙うもので、6回目となる今回も、和食、フレンチ、イタリアン、中華、焼肉など、ジャンルをまたいだ多くの鹿肉料理が登場している。低脂肪、高タンパク質で鉄分やビタミンも多く含まれる優秀食材の鹿肉を、さまざまな味付けで試してみる絶好の機会だ。

(ジビエ流通、活発化を:富山)
狩猟者の育成や新たな食文化開拓を目指したジビエ(野生鳥獣肉)の処理施設が、立山町に完成した。

(「ヤマシシ」の年越し沖縄そば:沖縄)
大みそかの31日、沖縄本島北部の国頭村では、イノシシを使った年越しの沖縄そばが販売され、訪れた人たちが珍しい味を楽しみました。沖縄県国頭村の与那地区では、イノシシを「ヤマシシ」と呼んで、昔からよく食べています。地域おこしに生かそうと、地区では13年前から大みそかに、地元で捕獲したイノシシの肉を使った「ヤマシシそば」を、年越しの沖縄そばとして特別に販売しています。一般的な沖縄そばには豚肉が入っていますが、用意されたおよそ100人分のそばにはイノシシ1頭の半分のおよそ20キロの肉が使われ、豚肉よりも歯ごたえがあり、あっさりしているのが特徴です。ことしは、新型コロナの影響で3年ぶりに販売され、沖縄本島の各地から訪れた人たちが珍しい味を楽しんでいました。宜野座村から訪れた家族連れは、「イノシシの味がしみて、ショウガもきいていて温まります。ことしは新型コロナの影響もありましたが、イノシシを食べたので、来年は元気に頑張りたいです」と話していました。また、「ヤマシシそば」を販売した、地区で地域おこしに取り組む「ユナムンダクマ協議会」の大城靖会長は、「山の恵みなのでイノシシを食べて英気を養い、来年1年を過ごしてもらいたいです」と話していました。

(初のジビエフェア:神奈川)
大山で古くから食されてきたジビエ料理を、より多くの人に知ってもらおうと大山猪鹿(ジビエ)フェアがスタート。12月22日に参加店舗の一つであるCafe TAKEDAでお披露目会が開催された。野生鳥獣の食肉を意味するジビエ。大山では古くから猪鍋などがふるまわれていて豆腐料理にならぶ名物として多くの宿坊や飲食店で提供されてきた。これまでは登山客など一部の観光客や地元住民などの間で食べられてきたが、伊勢原うまいもの遺産創造委員会から、「大山で何かできないか」との提案が3年ほど前に持ち上がると、大山先導師会旅館組合女将の会のメンバーらがジビエ料理を提供する市外の店舗に出向いたり、料理教室でジビエメニューの試食を重ねてきた。フェアの開催に向け、昨年10月に大山先導師会旅館組合、同組合女将の会、大山飲食店物産組合で実行委員会が立ち上がり、大山の旅館や飲食店17軒が参加。各店で提供されるジビエ料理は、主に大山で捕獲され、子易の食肉処理施設「阿夫利山荘」で加工された肉が使われる。近年市内ではシカやイノシシなどの野生鳥獣による果樹や野菜などの農業被害が増加。市によれば被害額は年間1千万円を超え、フェアの開催によるジビエの周知で、捕獲された野生鳥獣の有効活用のほか、猟師の収入源の確保などにもつなげたい考えだ。武田安司実行委員長は「ジビエ料理は低カロリー高たんぱく。参加店舗の各店が特長を出したメニューを提供するので多くの方にジビエを味わっていただければ」と話す。

(ジビエ料理、命に感謝:兵庫)
暁の冷気に身震いしつつ、播磨の山中で獲物を射抜くのが、冬の猟期の日課になった。金色のピアスをつけて笑っていても、オレンジ色のキャップをかぶり、スパイク付きの長靴を履くと、目には一転して鋭い光が宿る。昨年12月上旬、市川町のため池。土手の斜面に身を潜めた清瀬文さん(44)(姫路市)が、狩猟仲間とともに狙うのはカモ。平常心で猟銃を構え、引き金に指を掛けた。高校生の頃に起きた阪神大震災で、叔父の暮らした神戸市長田区のアパートが全壊した。無事だったが、後に仮設住宅に母親と食事を届けるたび、叔父は申し訳なさそうに受け取った。ブルーシートに覆われた家屋の並ぶ街を歩くと、いくつもの疑問が募った。「家を失い、食べ物がなくなる。そんな時、どう生きるのか」。自給自足の暮らしを意識した原点だった。小児ぜんそくで通院した病院の看護師を慕い、自身も同じ道に。病院で外科や精神科医療に携わるかたわら、休日には母親の家庭菜園を耕し、播磨灘で釣りざおをのばした。「私の場合、生きていくってのはお金じゃなく、食べ物。どうやって食料を手に入れるかを考えている」。結婚や出産も経験したが思いは変わらなかった。狩猟に興味を持ち、37歳の頃、同僚の父親の紹介がきっかけで、姫路市の銃砲店「都商事」の橋本勝弘店長(49)を訪ねた。狩猟歴20年のベテランに、清瀬さんは頼み込んだ。「ジビエ料理に興味があるので狩猟を教えてください」。橋本さんは案内のパンフレットを手渡したが、小柄できゃしゃな清瀬さんを見て「長くは続かないかもしれない」と思った。山歩きには体力が必要で、獣の解体は力仕事。食べるまでの過程を楽しめるようでないと狩猟はできないという。ただ、清瀬さんの興味は本物だった。橋本さんが所属する猟友会が実施した狩猟の見学会に参加し、シカの解体作業に率先して加わり、ひるむことなく丁寧にナイフを動かしていた。初めての射撃練習では、右肩に青あざを作ってもくじけなかった。ひたむきさに打たれてサポートするうち、一緒に猟に出る仲間になっていた。仕留めたカモをさばき、初めての鍋料理で味わったコクのあるだしが、忘れられない。「おいしくて栄養価が高い肉の魅力を伝えよう」と、3年前から地元の料理店で働き、その後、専念するため病院の看護師を辞めた。腕によりをかけ、考案したシカ肉を使うクリームソースのパスタはもちもち食感が好評の自信作。注文してくれたお客さんには、「おいしいでしょう」とつい声をかける。撃ち、さばき、調理し、食べる。その折々で命をささげてくれた動物に感謝し、余さず利用すること。身につけたハンターの流儀が、ジビエ料理にうまみを加える。

(厄介者(シカ)を町名産に、食肉加工場建設し供給へ:兵庫)
住民を悩ませているシカをジビエとして売り出すビジネスを、新温泉町地域おこし協力隊の尾関栄海さん(23)らが計画している。町内に野生動物の食肉加工場を建設し、ジビエを活用したい宿泊施設や飲食店などと地元の猟師をつなぐ供給体制を構築。厄介者のシカを、但馬牛やズワイガニに並ぶ町の名産にすることを目指している。

(日田産ジビエやナシでフルコース料理:大分)
日田市の日田三隈高3年生6人が昨年12月20日、日田産のジビエやナシを使ったフルコース料理作りに挑戦した。食物・調理を選択した生徒の卒業制作。

(ジビエで秦野を活性化:神奈川)
2023年の新春を飾る企画として、秦野市の経済界のリーダーである秦野商工会議所の佐野友保会頭にインタビューした。「私は地域経済活性化の起爆剤としてジビエに着目してきました。秦野市は丹沢という恵まれた自然を有し、それが大きな財産となっています。しかし、シカやイノシシが里に下り、畑の農作物を荒らす食害が問題となっています。これまでは駆除した野生動物は、ほとんど利用されていませんでした。ジビエはヨーロッパでは貴族の特別な料理として古くから愛されていた歴史があります。近年では高タンパク低カロリーで栄養豊富な食材として注目されています。この天然資源の活用は、鳥獣被害対策はもちろん、様々な可能性を秘めていると捉えています。市内の飲食店がそれぞれ趣向を凝らし料理に活用していく。秦野に来ればジビエが食べられる。そんなまちの魅力のひとつになれば良いと思います」

(「ぼたん鍋」をPR:兵庫)
兵庫県丹波篠山市発祥の名物「ぼたん鍋」をPRしようと、同市北新町の大正ロマン館前で8日、ぼたん汁(猪(しし)汁)が無料でふるまわれる。提供は2回(正午と午後2時)で、いずれも先着100人限定。新型コロナウイルス禍や野生イノシシの豚熱(CSF)感染拡大の影響で打撃を受ける店を盛り上げようと、市観光協会が企画した。店ごとに工夫を凝らしたみそやだしがあり、その味の違いを知ってもらう狙いで、調理は料理旅館「潯陽楼(じんようろう)」(正午)と料理旅館「高砂」(午後2時)がそれぞれ担当する。観光案内所や市役所などでは、各店を紹介する冊子を配布している(31日まで)。

(猟師の女性の晴れ着は「〇〇製」!:奈良)
3日、十津川村ではひと足早い成人式が行われました。出席した若者のなかで猟師の女性が身に付けた晴れ着に注目が集まりました。3日、十津川村役場には晴れ着に身を包んだ19人が集まりました。このなかで新成人代表を務めた中垣十秋さん。華やかな三色の衣装を身に付けています。実はこの衣装はすべて鹿の革で作られています。十津川村で生まれ育った中垣さんの職業は猟師。同じく猟師の父の背中を追ってこの仕事を選びました。衣装は中垣さんが1年間で捕獲した鹿34頭分の革を使い、奈良市の和服専門学校、宇陀市の皮革製造会社とともに仕立て上げました。足元にあしらわれたもみじは中垣さんのこだわりポイントです。村ではシカやイノシシによる農作物被害に悩まされていて、その被害額は約1400万円に上ります。中垣さんはこれらの被害を防ぐための活動への理解と、捕獲した命を無駄なく使うための活動を続けていきたいと話します。猟師・中垣十秋さん「命をいただく職業が猟師なので、それを大切に有効活用するのも猟師として獲る責任使う責任があると思うので、有効活用していく活動がどんどん広まっていけたらと思います」。

(ソーシャルグッドなジビエ狩猟体験ツアー:山梨)
社会によりよい取り組みを行うソーシャルグッドなホテルを、トラベルエディター伊澤慶一が紹介。今回は河口湖を望む丘陵に立つ、日本初のグランピングリゾート「星のや富士」へ。クラウドテラスで大自然を満喫した翌日、ジビエの狩猟・解体現場を見学する「命と食を学ぶ狩猟体験ツアー」に参加。地元の猟師と共に、富士山麓の森へと向かった。星のや富士が提唱する「グランピング(グラマラスなキャンピング)」は、私が想像していた以上に本格的だった。敷地の広さはおよそ6ヘクタールで、これは東京ドームの面積よりも大きい。キャビンと呼ばれる客室棟からウッドデッキが何層にも重なるクラウドテラスまでは斜面を階段で上っていくのだが、その高低差は約100mにも及ぶ。息を切らせながら上がると、香ばしい香りと共に焚(た)き火の爆(は)ぜる音が出迎えてくれて、ちょっとしたトレッキングのような達成感さえある。赤松の森に囲まれたクラウドテラスでは、好みのウッドチップを選んで季節の食材を燻製に仕上げたり、焚き火で豆を焙煎し煮出すようにコーヒーを抽出したり、木漏れ日の中で柔らかな布に包まれてストレッチをしたり、さまざまなアクティビティを体験できる。不思議なもので、自然を身近に感じながらだと、どれもが非常においしく、心地よく感じられる。「五感が研ぎ澄まされる」という表現も、これだけ素晴らしい自然環境を目の前にしたら決して大げさではないだろう。アウトドア体験に興味はあるが、道具をそろえたり準備したりするのは面倒という私のような人間にとっても、ここではグランピングマスターと呼ばれるスタッフがお膳立てから片付けまで至れり尽くせりサポートしてくれるからありがたい。夜になると出現する「焚き火BAR」で、満天の星を眺めながら味わったワインやウイスキーも最高だった。ついつい飲みすぎてしまっても、焚き火の後始末を心配する必要もないのだから。「なんてグラマラス!」。その語源どおり、ここは魅力に満ちたキャンプがかなう、究極に快適なリゾートなのである。そんな星のや富士には、数ある星野リゾートのホテルアクティビティのなかで「最も尖っている」とうわさされるものが存在する。毎年秋から冬にかけて開催される「命と食を学ぶ狩猟体験ツアー」だ。これは地元の猟師と共に、本栖湖周辺の森で罠(わな)を使用したジビエ猟に同行。野生動物をその場で仕留め、ナイフでさばく一連の工程を見学するというものだ。2日目の朝、ホテルまで迎えに来てくれた猟師の古屋永輔さんと共に、私は生まれて初めて狩猟の現場へと出発した。山梨県内では毎年11月になるとニホンジカやイノシシの狩猟が解禁される。ジビエの季節の到来である。(エサの少なくなる)冬に備えて栄養を蓄えはじめた野生動物は、この時期が最も脂肪分が豊富になり、文字通り“脂が乗った”状態になるのだという。「命と食を学ぶ狩猟体験ツアー」では、実際に狩猟を見学した後、ランチとディナーで食べ頃のジビエを味わうところまでがセットになっている。それゆえ、おいしいジビエ料理が食べたいというグルメな方の参加も多いという。私はというと、健康診断の際に自分の採血を見るのも苦手なため、野生動物の解体を直視できるかいささか不安でいた。行きの車内、猟師の古屋さんは富士五湖周辺の自然の魅力から自らの狩猟の武勇伝まで、さまざまな話を聞かせてくれた。夏は本栖湖でダイビングのインストラクターとして、秋冬は狩猟ツアーのガイドとして活動する古屋さんは、いわばこのエリアの自然のスペシャリストだ。安心感があり、職人にインタビューさせてもらっているかのような高揚感もあった。森の脇に車を止め、古屋さんの後を追って、事前に罠をしかけた場所まで歩いていく。途中、シカのフンやキツネの足跡と思われる痕跡に遭遇するものの、野生生物の姿は見えない。なにしろ相手は自然である。果たして、狩猟は行われるのだろうか。道なき道を進むこと約10分、森の中で何かが動くのが見えた。自分の鼓動が、急速に早くなっていく。罠にかかったメスのニホンジカが1匹、木の影からじっとこちらを見つめていた。そこから先の光景は、今でも脳裏に焼き付いている。古屋さんはカバンからトンカチを取り出すと、シカを背後から押さえつけ、素早く一撃、脳天をたたいた。先ほどまで命乞いをするかのように鳴きつづけていたシカは、脳震盪(のうしんとう)を起こし、膝から崩れ落ちるように地面へと倒れ込んだ。古屋さんは電光石火の早業で首にナイフを入れ、心臓をマッサージして一気に血抜きを行っていく。あたり一面に広がる鮮血。ものの1、2分の出来事なのだが、私にとってはまるでスローモーションを見ているように長く感じられた。残酷とは思わなかった。むしろ仕留めてから解体までの一連の作業はある種の神々しささえ感じられた。私もその場で解体されたロース肉を触らせてもらったが、ビニールの手袋越しでもしっかりとシカの体温を感じることができた。数分前までこの肉は生きていたのだと実感する。筋肉もまだ自分が仕留められたことに気付いていないのか、手のひらの上でピクッピクッと痙攣(けいれん)を繰り返していた。古屋さんいわく、ジビエ猟ではストレスのない仕留め方や、即座に血抜きを行うことが非常に重要であり、それがおいしくて臭みのないジビエをいただくことにつながるのだという。実際、このあと本栖湖のレストハウスに戻りジビエ三昧を体験するのだが、特有の臭みはまったく感じられず、特にシカ肉のタタキは今まで食べたことのない上質な赤身肉で、舌の上でとろけるようだった。私は改めて、この日参加したツアーについて思いを巡らせていた。私が目撃したあのニホンジカの狩猟は、命が食へと変貌する儀式だったように思う。それが今、皿に料理として盛られることで、今度は食が私たちの命へとつながっているのだと実感していた。命を奪われたシカは、猟師たちの職人技ともいえる血抜きや解体の技術によって、ジビエという究極のグルメに昇華した。食と命、そしてこの地で脈々と受け継がれる豊かな食文化を、このツアーでは目の当たりにすることができたと思う。ツアー参加者はこのあと星のや富士に戻り「狩猟肉ディナー」を楽しむのだが、星のや富士ではツアーの参加有無にかかわらず、年間を通じてジビエを提供している。それは狩猟肉を食材として使ったメニューを開発することで、地域の課題でもある「獣害」を減らそうと考えているためだ。「命と食を学ぶ狩猟体験ツアー」は、実は農林業に被害を及ぼすシカやイノシシの消費促進という意味合いも担っており、まさにさまざまな側面においてソーシャルグッドと呼べるアクティビティなのである。実は参加する前、もしかすると人生観が変わってベジタリアンに転向することもあるかもしれないと想像していた。実際には、「命と食を学ぶ狩猟体験ツアー」を体験してから、私が肉食をやめることはなかったし、逆にジビエについて関心を持ち、鍋かグリルか燻製か、どうしたらよりおいしく、より味わって食べられるか追求することが、食と命へに対しての真摯(しんし)な向き合い方だと今は捉えている。肉を食べる際の「いただきます」と「ごちそうさま」のあいさつは、以前よりも大声で、心を込めて発するようになった。自然のサイクルの中で生きる者として、一番大切なこと。それを学ぶことができた、星のや富士の旅だった。

(狩猟・放牧から料理まで一手に:北海道)
野菜やハーブを栽培したり生産者の近くに店を構えたりすることで、自分にしかできない味の実現を目指す料理人が増えている。なかでも北海道豊頃町を拠点とするエレゾ社社長の佐々木章太さん(41)は、肉にこだわり自分で生産した肉を洗練された美食に仕上げる稀有(けう)な料理人だ。ジビエの狩猟から豚の放牧、家禽(かきん)の飼育や供給、レストラン経営まで手がけ、2022年10月には、本拠地に「エレゾ エスプリ」という名のオーベルジュを開業した。オーベルジュとはフランスの地方にある、レストランを兼ねたホテルのこと。最近では日本でも地方創生の動きとともに、地元の食文化や著名シェフを軸としたオーベルジュの開業が続いている。「エレゾ エスプリ」は、「ジュエリーアイス」で知られる大津海岸を臨む丘の上に立つ。十勝川を覆う氷が海に流れ出して浜に打ち上げられ、太陽の光で宝石のように輝く冬の風物詩だ。オーベルジュは2人用のヴィラが3つとレストラン、戸外のサウナというシンプルなつくりだが、牧場、本社、山林を含む敷地は東京ドームおよそ2.5個分にも及ぶ。広大な自然の中で育てた放牧豚、カモ、シャモや猟師が山で仕留めたジビエなどを主な素材に、佐々木さんが腕を振るう。「素材が生まれ、料理が作られる土地でエレゾの世界観を体感してもらいたい」との思いでこの地にオーベルジュを造った。ペアリングで料理を引き立てるワインは、入手困難なことで知られるオーストラリアの著名ワイナリー、シロメィがエレゾのために造った。きっかけは、かつて佐々木さんが東京・松濤で運営していたレストラン「エレゾハウス」にシロメィの社長らが訪れたこと。数カ月後、佐々木さんはスタッフを連れてワイナリーを訪問し、「ブドウを極力自然に育てる当時の醸造責任者、マイク・ヘイズさんと意気投合し、エレゾの料理に合わせたワイン造りが実現しました」。専用の畑に佐々木さんが選んだ5種のブドウが900本ずつ植えられ、17年から2期にわたって造られた5種類のワインが、今、「エレゾ エスプリ」のテーブルに乗る。1日10名を上限に供されるディナーコースのメニューには、書物のように第1章、第2章……と記されている。第1章のアミューズは、「命のスープ」と名付けられた、エゾ鹿の筋、骨、香味野菜の澄んだ温かいコンソメ。胃を落ち着かせるため最初にサーブするという。合わせるのは加糖していないシャルドネのスパークリングワインだ。

(ジビエを活用、新名物に:秋田)
売店に入ってすぐ目の前にジビエコーナーが設けられている。クマ肉の缶詰3種(1300円)やクマ肉を使ったレトルトカレー(1080円)、シカ肉のカレーや缶詰が並ぶ。レストランではサラダ付きのクマカレーを1200円で提供している。いずれも、2022年春からの1年足らずで続々とラインアップに加わった。当初はクマのレトルトカレーのみの販売だったが「肉だけ買いたい」との要望があり、シカも取り扱いつつ、缶詰の販売へと展開してきた。

(鹿のミートソース・イノシシのシチュー:神奈川)
新鮮な野生のイノシシやシカの肉を使ったジビエ料理を楽しんでもらおうと、神奈川県伊勢原市の大山地域で「大山猪鹿(ジビエ)フェア」が初開催されている。日本遺産の「大山詣(まい)り」で知られる宿坊などが実行委員会を組織。ジビエを豆腐料理と並ぶ地域の特産品に育てようと、意気込んでいる。大山のふもとに広がる自然豊かな大山地域では、古くから「鹿鍋」やイノシシ肉を使った「しし鍋」などの食文化があった。一方でこうした動物による農作物などへの被害が広がっており、有害鳥獣として捕獲された動物の有効利用のあり方が、各地で大きな課題になっている。そこで、いただいた命を食材として大切に生かそうと、宿坊の13店と飲食店4店の計17店舗で、昨年12月下旬からフェアを始めた。近くにはジビエ用の食肉処理施設があり、主に大山で捕獲されたシカやイノシシの肉料理を地産地消で振る舞う。店ごとにメニューは異なるが、イノシシの「牡丹(ぼたん)鍋御膳」やシカの「紅葉鍋御膳」、「猪(いのしし)シチューセット」、「鹿のミートソース」など、様々な料理を味わえる。フェアを盛り上げようとのぼり旗や、イノシシとシカが仲良く鍋に入った姿をデザインしたおそろいの赤いエプロンも用意。実行委員長の武田安司さん(67)は「ジビエは低カロリーで高たんぱく。大山のジビエを多くの人に知ってもらい、来年も再来年もフェアができたら」と話す。

(親子でクラフト体験を楽しめる国産鹿革の小物入れ)
株式会社ロゴスコーポレーション(本社:大阪市住之江区、代表取締役社長:柴田茂樹)が展開するアウトドアブランドの「LOGOS」は、様々なシーンで便利に使えて、親子でクラフト体験も楽しめるこだわりの小物入れ「鹿革クラフトコインパース・カードケース」を2022年より発売いたしました。本アイテムは、クラフト体験を楽しめて、完成後は小物入れとして便利に使えるアイテムです。有害鳥獣として駆除されたニホンジカの革をジビエ革として有効活用した”自然の恵み”アイテムであり、クラウドファンディングにて先行販売した際には達成率401%に到達しました。レザーのカシミヤとも呼ばれる鹿革は、しっとりやわらかい触り心地が特徴で、通気性、吸湿性にも優れます。さらに、型崩れしにくく長期間使えるほか、環境にも配慮した「ノンクロムなめし」により、使えば使うほどに色の深みが増すので、革本来のエイジングを楽しむことができます。また、仕上げの組立て作業は製品が届いてから行う仕様になっており、とても簡単なので、ご家族で一緒にクラフト体験を楽しめます。

(ジビエ、利用促進の取り組み進む:兵庫)
シカの枝肉を丁寧にさばき、部位ごとに切り分けていく。兵庫県朝来市和田山町宮内にある北川修平さん(44)の作業場。市地域おこし協力隊員の北川さんは、自ら捕ったり、知り合いの猟師から買い取ったりしたシカを処理し、「但鹿(たじか)」のブランドでシカ肉を販売している。捕獲した現場で血抜きし、作業場に運んで皮をはぎ、内臓を出す。枝肉は冷蔵倉庫で1週間熟成。内ももや外もも、背ロースなどの部位を切り出し、筋など食用に向かない部分を動物園の飼料用やペットフードの材料用にえり分けていく。大事なのはスピード。食用にするためには、とどめを刺してから2時間以内で血抜きや内臓の処理などをすることが望ましいとされる。「速いほど肉の状態はいい」と北川さん。大阪での飲食店経営から転身してきただけに質を追求する。昨年5月、地元の地域自治協議会が催した登山会では、北川さんが販売したシカの焼き肉が昼食に振る舞われた。その後、参加者が相次いで購入に来てくれた。「『おいしい』と言ってもらえるとうれしい」とやりがいを話す。精肉にするのは、おおむね1日1頭のペースだが、相手は野生だ。昨年12月半ばのある日は9頭も入荷したが、雪が降った1週間後は数日にわたってシカが全く捕れなかった。養父市大塚のフランス料理店「ラ・リビエール」は秋の厳選食材として、但馬地域のシカ肉を供する。肉は北川さんから仕入れる。赤身のため高タンパクで低脂肪、鉄分やビタミンを多く含む。同店総料理長の廣氏佳典さん(52)は「しっかり処理された良質なシカ肉は、レストランでメインとして利用できる。カロリーが気になるが、肉をしっかり食べたい人にはもってこい」と高く評価する。かつて英国ロンドンのレストランで働いた際、シカ肉を好んで食べていたのは、モデルやスポーツ選手などの女性だったという。同店では2016年、シカ肉料理の提供を始めた。「但馬牛や松葉ガニに代わるとは思わないが、シカ肉を一度食べると今までのイメージが必ず変わる」と、廣氏さんは訴える。県は捕獲したシカ肉の普及に努めており、現在「第3回ひょうごジビエコンテストのレシピ」を募集中。シカ肉料理や皮革製品の販売などがある「文鹿(ぶんか)祭」も15年から神戸市で開催している。さらに処理施設へのシカの持ち込みに助成制度を設ける市町もある。県内で捕獲したシカのうち、肉を食用やペットフード用に利用した割合は16年度の8・9%から、21年度に26・5%へ急上昇した。30年度には35%を目指す。一方、京都府でも府の主導で、福知山市や南丹市をはじめ府中部などの36店が参加し、「第6回森の京都ジビエフェア」を2月まで開催している。豚熱の流行を受け、2年前からシカ肉のみの催しとなったが、昨季は前季に比べて来客数が増えており、今季、新たに4店が加わったという。シカ肉を利用するためには、殺処分直後に処理施設への搬入に手間がかかり、「駆除が優先」との意見もある。ただ、廣氏さんは話す。「田舎に住んでる以上、シカとは上手に付き合っていかなければならない。駆除するなら、食材などとして使っていきたい」。

(ジビエ料理で地域活性化、田畑荒らす厄介者を貴重な資源「地美恵」に)
厄介者を貴重な資源に。田畑などを荒らすイノシシやシカを食肉にした、「ジビエ」が注目を浴びている。千葉県では「房総ジビエ」として2016年(平28)からPRし始めた。その2年後の18年からはジビエ料理のコンテストも開催。あす11日には第5回の実食が行われる。県内で指定された13カ所の食肉処理加工施設で、厳しい衛生基準を通ったものだけを食材として提供し、普及拡大を目指す。このほか、同県鋸南町(きょなんまち)や静岡県伊豆市、埼玉県横瀬町などでもジビエで「地域活性化」を図っている。「地美恵」と書いて、ジビエと読む。まさに、土地の美しい恵みのメニューへと変身する。コンテストは、書類審査で優秀作品の5メニューを選出する。実食審査によりグランプリ(千葉県知事賞)と準グランプリ(千葉県農林水産部長賞)を決める。房総ジビエを使い、販売価格の上限が1100円(税込み)と定められている。これらの作品が「房総ジビエフェア2023」で、参加した店舗で提供される。食材は、県内でさまざまな農作物などを食い荒らしていた有害鳥獣だ。被害の4割はイノシシ(シカはイノシシの10分の1)。里山に現れては稲を食べたり、踏み倒したり、畑を荒らす。特に房総半島の南側で目立った。そこで県としてはこれらを駆除すると同時に、飲食店と連携して消費者への普及、拡大を目指した。もともとジビエはヘルシー。別名「ぼたん」と呼ばれるイノシシの肉は肌にも骨にもいいコラーゲンが豚肉に比べて多く含まれている。タンパク質は牛肉や豚肉より多く、脂質は牛肉より少ない。疲労回復や肌の健康、新陳代謝を促すビタミンB1、B2は牛肉の約2倍とされている。「もみじ」と称されるシカ肉は、牛肉や豚肉に比べて高タンパク、低カロリー。脂質も少ない。鉄分も多く、貧血気味の女性にはうってつけだ。安定供給できる牛肉、豚肉、鶏肉に比べ、流通量の保証はない。ハンター不足などの課題もある。それでも県では衛生基準の徹底、流通確保のため、茂原市、君津市、鴨川市などに13カ所の食肉処理加工施設を設置。ここを通した食肉を提供することを定めた。3年前に3億5937万円だった被害額は、翌年約3億円にまで減少した。農地周辺への防護柵の設置など、減らす対策もしている。「一定の効果は出ている。被害を減らしつつ、流通拡大を目指したい」。千葉県農林水産部流通販売課の久保村俊己さん(29)はこう話す。房総といえば、海の幸が思い浮かぶ。実は江戸幕府8代将軍、徳川吉宗公の時代に今の鴨川市や南房総市の一帯で始めたのが、日本の酪農の発祥とされている。房総は農業も充実している。地産地消ならぬ「千産千消」の取り組み、大切な命をいただくという食育にもつながっている。千葉県で先駆者的存在なのは、内房にある鋸南町だ。海水浴場の保田海岸をはじめ、海釣りに訪れる人も多いが、町内から鴨川市へとつながる街道は山林がほとんど。イノシシが収入源となる水仙や農作物を食い荒らしていた。そこで白石治和町長(72)が「有害鳥獣の捕獲を通じて狩猟の役割、方法を紹介し、対策の担い手となる猟師募集のきっかけを提供し、里山の魅力を伝えよう」と発案。15年から「けもの道トレッキング」「ジビエ料理ワークショップ」「解体ワークショップ」を軸とした、「狩猟エコツアー」が始まった。それよりも前の09年からジビエ・バーベキューも行われてきたが、コロナ禍で数年開催されていない。町では、こちらの復活も視野に計画しているという。静岡県伊豆市では、珍しい公営の食肉加工センター「イズシカ問屋」が11年4月に開設された。市内の8割を山林が占め、特産品のワサビの葉やシイタケの実をついばんだり、農作物を食い荒らすとか、木の皮をはいで枯れさせてしまうなどの被害が目立った。しかも、シカやイノシシは合わせて年間約2000頭捕獲されていたが、猟師が処理しきれずに山に埋設していた。そこで、全国に先駆ける形で建設した。持ち込み可能なのは、捕獲後4時間以内で、伊豆市在住の静岡県猟友会員か、同市の有害鳥獣捕獲隊員で「搬入研修」を受けた人に限られる。血抜きした個体は、持ち込み後すぐに内臓を摘出。電解水で洗浄、殺菌後、低温熟成(シカは7~10日、イノシシは2~3日)される。これでうま味成分となるアミノ酸を増やす。処理に要する時間は30~40分。しかも、どこで誰がどのように捕獲したか、どの肉をどこに卸したかをデータ管理している。食肉は真空パック後、マイナス30度の急速冷凍で販売され、味の品質も保たれている。現在、同市では年間5000~6000頭の有害鳥獣が捕獲される。年間の被害額はひどい時で2億円近かったが、今では3000万~4000万円程度に下がっている。埼玉県横瀬町は、昨年12月から地元ベンチャー企業と組んで、都会の狩猟免許保持者を呼んで有害鳥獣を駆除してもらい、それをジビエ肉として町の特産品にしていく事業を始めた。ベンチャー企業「カリラボ」を立ち上げたのは、吉田隼介(しゅんすけ)さん(44)。都内の会社に勤めるかたわら、自身も猟友会のメンバーに名を連ね、実際に同町で狩猟を行っている。「猟師が高齢化しており、猟場とハンターをマッチングさせる会社として組織した」と言う。さらに、解体場を昨年11月に建設したことから、主に駆除したシカの肉の加工も請け負う。今後は、ふるさと納税の返礼品などにもしていきたいとしている。

(でもジビエを勧めたわけ:高知)
高知市立高知商業高校ジビエ部の生徒らが昨年末、首相官邸に招かれた。農林水産省などが主催する「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」の選定証授与式。ジビエ部は特別賞(ジビエ賞)に選ばれていた。部長の池知美優さん(2年)は「高校生は私たちだけだったので緊張した。貴重な経験になった」と話す。ジビエ部は通称で、正式にはジビエ商品開発・販売促進部。イノシシやシカの肉を使ったソーセージなどを開発し、販売利益を森林保護活動に寄付している。佐々木翼教諭(38)が2017年に、担任のクラスの生徒が地域課題研究で取り組むテーマを考えている時、「ジビエとかあるで」と勧めたのがきっかけ。高知県は森林率が全国1位で野生鳥獣による農林業被害も大きい。捕獲したイノシシやシカの肉を活用すれば、「マイナスをプラスに変えられる」と紹介した。生徒たちはシカ肉を使ったカレーパンを地元のパン屋と開発し、イベントで販売した。翌年は別の生徒らが鹿ジャーキーを作った。19年に同好会、20年には部活動として学校から認められた。コロナ禍で制約はあったが、高知市内でジビエレストランを出し、シカ肉チャーシューのラーメンや、オムライスを売り出した。21年には市役所の食堂でも、イノシシのカレーライスなどを提供した。ジビエに抵抗のある人が多いことも来客アンケートから分かった。シカやイノシシの肉に地元特産の「土佐あかうし」や「四万十ポーク」を混ぜてつくった「土佐オールスター☆ソーセージ」は、県内外で売れるヒット作になった。活動をする中で、部員たちは森林被害を学び、ジビエの販売で得られた利益を、食害を受けた森林の防鹿ネットや植樹費用に充てられる保護活動に寄付するようになった。

(愛南食材カレー第2弾はジビエと海鮮:愛媛)
まちの農水産物の魅力を広めようと、愛媛県愛南町の地域おこし協力隊がオリジナルカレーを制作し、キッチンカーで町内を巡り販売している。18日まで。町が取り組む食プロジェクトの一環で、昨夏に続いて企画。商工観光課に所属する協力隊の関根麻里さん(43)=東京都出身=が前回のアンケート結果などを参考にし、町内産の材料にこだわったスパイスカレー2種(ジビエ、シーフード)を準備した。カレーは13日までジビエ、14日以降はシーフードを提供する。800円。販売場所は11日内海支所、12日一本松支所、13日役場本庁、14~15日町内の道の駅など(予定)、16日御荘支所、17日役場本庁、18日西海支所。アンケートも実施しており、さらなるブラッシュアップも進める。

(駆除のシカ、犬猫用ジャーキーに:愛知)
新城市富永の就労継続支援B型事業所「ウィングス」が、奥三河で捕獲された野生のシカを使い、ペットの犬や猫用ジャーキーを商品化した。調味料を全く使わない無添加を特長に、これまでに千袋以上を売り上げ、出足は上々。事業所のメイン業務に育てたい考えだ。

(房総ジビエコンテスト 2023年の優勝は:千葉)
千葉県内で捕獲したイノシシやシカの肉を使ったジビエ料理の腕を競い合うコンテストが、1月11日、千葉市内で開催されました。2023年の「房総ジビエコンテスト」は、「消費者が手軽に食べられるジビエ料理」をコンセプトに、メニューの販売価格を1100円以下に設定。最終審査に残った市川市の「ジビエ焼肉じゅん平」の「房総猪鹿ジビエ担々麺」や、長南町の「カフェこっとんぼーる」の「イノシシとひじきのごろごろミートソース」など、5つのメニューを各店の料理人が調理し、頂点を争いました。実食による審査の結果、最優秀賞には、猪ミンチ肉と地元の旬の野菜を別々の味付けで煮て盛り付けた「ジビエつくねと季節の野菜の炊き合わせ」が選ばれ、南房総市の和食店「隠れ屋敷 典膳」の山本剣さんに熊谷知事から表彰状などが贈られました。審査員は、ジビエや地元に対する愛など「美味しいの先にある何か」を評価したとし、山本さんは、「農家でありハンターでもあるので、ジビエをいろいろな人に食べてもらうのが使命」と述べました。県によりますと、イノシシやシカなど野生鳥獣の影響による農作物の被害額は2021年度、3億円あまりに上り、その生息域は拡大傾向にあるということです。県は、引き続き房総ジビエの普及と消費拡大に力を入れていく方針です。

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