<射撃ニュース12月>
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(まるでこちらが悪者、ハンター報償問題視も:北海道)
ヒグマの個体数抑制を視野に入れる道は、来春の捕獲事業を強化するため、ハンターへの報償を半額補助することを決めた。道内には一律の報償基準がなく、私費で装備をそろえるハンターに行政が依存する構図も残る。過去には報酬を巡り騒動に発展したケースもあった。「責任感で現場に出ていたのに、まるでこちらが悪者のようでした」。あるハンターは苦い経験をそう振り返る。

(シカの飼育施設で職員が死亡した事故、県が再発防止策を発表:島根)
島根県飯南町にある県の研究施設で、二ホンジカを飼育する飼育場の中で男性職員が血を流して見つかり死亡した事故から約2か月。27日、県が会見を開き、職員とシカとの接触が起きないよう飼育場に隔離扉を設置するなどして、再発防止に努めると発表しました。10月25日、島根県中山間地域研究センターで、飼育していたオスジカの近くに60代の男性職員が出血して倒れているのが発見され、間もなく死亡が確認されました。職員の全身に複数の傷があり、二ホンジカの角に血のようなものが付いていたことなどから、県は「目撃者はいないため断定はできないが男性がシカに襲われた可能性が高い」として、再発防止策を発表しました。島根県中山間地域研究センターの松尾和巳所長は、「ライオンのように扱わないといけないという認識はありませんでした。ずっとシカと同じ空間にいながら作業をしてきました」と会見でコメントしました。具体的な再発防止策として、シカの飼育場での職員とシカの接触を防ぐため、場内に3か所の隔離扉を設け、シカの農林作物の食害を防ぐ研究などを行う「試験区域」と、シカにエサなどを与える「飼育区域」に区切って、試験および飼育管理をすること。また、場内での作業時は、シカに「試験区域」「飼育区域」間を移動させる「隔離作業」は、2人以上で行うこと。隔離作業」を確実に行い、安全が確保できて1人で作業を行う場合は、安全ブザーを携帯し、1時間ごとに事務所へ連絡するなど、安否確認を行うことなどを徹底するとしました。隔離扉については、2024年春の完成を目指していて、完成までは、シカのいる区域内での試験及び飼育管理は実施しないということです。

(無許可で空気銃製造し所持容疑で王寺の男再逮捕:奈良)
許可を受けずに空気銃を製造し、所持したとして西和署は29日、武器等製造法違反と銃刀法違反の疑いで、奈良県王寺町の会社員の男(49)を再逮捕した。逮捕容疑は今年6月ごろから12月までの間、自宅で空気銃1丁を製造し、所持した疑い。容疑者は空気銃でネコを撃ち、けがを負わせたとして、動物愛護法違反の疑いで今月26日に逮捕されている。同署によると、容疑者は「ネコなどの小動物を狩るために製造した」と話しているという。

(クマとの「すみ分け」模索続く:秋田)
顔じゅうを縫った術後の診察でCTを撮った。画像を見せられて、「なんだがまだ、ゆがんでいるようだっけな」。自宅わきの畑でクマに襲われ、顔面や頭に大けがを負った八峰町の川村正一さん(82)。居間のストーブに薪(まき)をくべながら、声を落とした。唇のしびれが消えない。知らず知らずのうちに、口から食べ物がぽろぽろとこぼれてしまう。「これだば、わらす(子ども)と同じだべ」と苦笑する。歯茎が痛み、硬い物が食べられない正一さんのために、妻のリツさん(79)は、ごはんをおかゆのように軟らかく炊いている。クマが飛び出してきた畑は雪に埋まり、誘引物もない。それでも夫妻は、「おっかなくて、近づくのも嫌だ」と話した。災害級、異常事態、過去最多……。クマ出没の激しさは数字にも表れた。人身被害は70人に達し、目撃情報も3600件以上。農畜産物の被害は約1億3千万円(速報値)に上った。「クマの生息域と人間の生活圏が、近いどころか、すでに重なってきていると思う」。クマ対策の専門家として、市街地などでの現場対応に奔走してきた県自然保護課主任、近藤麻実さんの実感だ。人びとが里山を活用し、暮らしそれ自体が「棲(す)み分けの境界線」となっていた昔と違って、過疎化が進む今は、それも望めない。クマの出没が激増するなか、保護と駆除のバランスの難しさが際立った。県の対応も、捕獲圧強化→自粛要請→自粛解除・狩猟再開と「迷走」した。ボランティアの域を超えた任務と重責を担い、有害駆除に出動するハンターたち。県猟友会の佐藤寿男会長は「捕れ、捕れと言って、今度は捕るなと止める。振り回されているようだ」と不満を漏らした。「場当たり的」との批判も向けられたが、県野生鳥獣保護管理対策検討委員会会長の星崎和彦・秋田県立大教授は「生息頭数4400もあくまで推定値。実際どの程度か分からない。対策を吟味するのに必要な科学的データが、著しく足りない」と打ち明けた。山ぎわの草木を刈り払って、クマと人の間に緩衝帯をつくり、延々と電気柵を張りめぐらす――。そんな学者の提案に、県北のある首長は「言うはやすしだ。広大な山間地を抱え、人手も資金もない秋田にとっては、ハードルが高すぎる」と話す。冬眠の機会を逸した「穴持たず」が出没する可能性もゼロではないが、一時期に比べて落ち着いたかに見える秋田のクマ騒動。雪解けとともに、「共生」への模索がまた始まる。

(知床のクマ駆除、2023年は過去最多:北海道)
令和5年に世界自然遺産の知床で駆除されたクマの数は11月までに182頭にのぼり過去最多となっています。世界遺産の知床のクマについて、国や道などは2012年、クマとの共存を目的に保護管理方針を定めて、市街地に繰り返し出没するなど人に危害を加えるおそれがあるとして駆除されたクマの数を調査しています。環境省釧路自然環境事務所によりますと、知床半島にある斜里町と羅臼町、それに標津町の3町でことし、11月28日までに駆除されたクマの数は182頭でした。これは過去最多だった2015年1年間の73頭をすでに大きく上回り過去最多となっています。内訳は、斜里町が95頭、羅臼町が72頭、標津町が15頭となっています。釧路自然環境事務所によりますと近年、クマの数が増加傾向にあることに加え、2023年はエサとなるハイマツやサケなどが少なかったことが影響した可能性があるということです。釧路自然環境事務所は「知床ではどこでもクマと遭遇する可能性があるためクマスプレーなどを持ち歩き1人で行動しないなどの対策を徹底してほしい」と話しています。

(白神山地でニホンジカ目撃増、ブナに影響懸念:秋田)
木の葉や樹皮などを餌として森林や農作物に被害を及ぼすニホンジカは、2014年ごろから白神山地の周辺でも目撃例が増え、原生的なブナ林が広がる世界遺産地域にも入り込んでいる。昨年10月20日、世界遺産核心地域にある秋田県藤里町の三蓋沢合流点近くで、東北森林管理局の自動撮影カメラが雄の成獣を捉えた。15年10月に青森県西目屋村の緩衝地域で初めて確認されて以来、世界遺産地域内での目撃は5例目。

(鹿の保護、課題浮き彫り:奈良)
国の天然記念物「奈良のシカ」を巡って10月2日、保護活動を行う「奈良の鹿愛護会」の獣医師が、奈良市の保護施設・ 鹿苑ろくえん の「特別柵」に収容された鹿に十分な餌が与えられていないとする内部通報を県と市に行っていたことが明らかになった。農作物を荒らすなどして死ぬまで収容される鹿の飼育環境が不適切とされた一方、制度上の課題や愛護会の人手不足も浮き彫りとなった。獣医師は市に提出した9月の通報書で「特別柵の雄鹿に対し必要最低限の餌を与えず、毎年50頭以上を死なせている」など虐待の可能性を指摘し、対応を求めた。特別柵には200頭以上が収容されていた。通報を受け9~11月、県と市保健所が調査を実施。職員への聞き取りや鹿の健康状態を確認した。都市公園法に基づいて調査した県は「飢え、渇きからの自由」「痛み、負傷、病気からの自由」など動物福祉に関する5項目の国際水準に抵触していると結論づけた。愛護会の人手不足や多岐にわたる業務にも触れ、鹿苑の管理主体の県にも「一定の責任がある」とした。動物愛護管理法に基づき調べた市は、虐待はなかったと判断したが、栄養不良や適正頭数での飼養管理の必要性を指摘。改善を求める行政指導を行った。仲川げん市長は11月24日の記者会見で「ここで暮らす鹿が本当に望ましい状態なのか」と疑問を呈した。この問題を受け、専門家は鹿を保護対象とする地域を整理する必要性を指摘している。鹿の生息域は、農家が鹿害の損害賠償を求めた訴訟の和解条項に基づき4地区に分けられる。保護地区と駆除が可能な管理地区の間の緩衝地区では、人や農作物に害を及ぼした個体が特別柵に死ぬまで収容される。市の調査に加わった専門家は、適正頭数を超えても収容しなければならない制度上の問題点を指摘し「特別柵という制度の見直しが必要」と提言した。県は21日、市や有識者らと保護のあり方を検討する部会の初会合を開催した。来年度末までに対策を取りまとめる。通報や調査を契機に、人と鹿の共生の在り方が改めて問われている。

(「クマとの共生」秘策は犬と発信器:長野)
クマに襲われてけがをするなど被害を受けた人は今年、過去最多となっています。さまざまな工夫をしてクマとの共生を実践している長野県軽井沢町のNPO法人ピッキオのクマ保護管理チームの田中純平さん(50)に話を聞きました。猟銃の使用が限られる中、秘策は犬や発信器のようです。自然との向き合い方も試されています。――クマの駆除が進む一方で、捕殺への批判もあります。駆除か保護かの二者択一で解決する問題ではありません。そこを調整していくのが「保護管理」という考え方です。30年ほど前に欧米から入ってきて、専門家の間で研究が進められてきました。でも、人々の感情としては、駆除か保護かという話になってしまいます。現に人的被害が出ているのですから駆除は必要です。ただ、駆除だけで被害をなくすことはできません。というのは、捕獲は受け身の面があるからです。市街地ではむやみに猟銃は撃てませんし、ワナを仕掛けても掛からないクマはたくさんいます。クマは市街地に出て来てしまえば、「野放し」状態といえます。だから、しっかりとすみ分けをして、クマを森から市街地に来させないようにしなければなりません。――ピッキオの取り組みを教えてください。私たちは、追跡できる発信器をクマに付けて個体管理しています。それぞれに名前もついています。クマが別荘地や住宅地に近づいたら「ベアドッグ(クマ対策特殊犬)」という訓練された犬と、クマのいる地点に向かいます。ベアドッグがにおいでクマを察知し、大きなほえ声で威嚇して山に追い返します。こうすることで、クマに「人が活動する場所は危険だ」と認識させ、市街地に出て来ないよう学習させているのです。ここまでやっても出てきてしまうクマは、ルールにのっとって排除しています。ただ、今では、そのようなケースはほとんどありません。

(地域おこし協力隊講師に46人が獣害に理解深める:千葉)
鴨川市中山間地域等活性化協議会(石井一雄会長)は、「集落における有害鳥獣対策」をテーマにした研修会を、同市役所で開いた。獣害対策に取り組む地域おこし協力隊員2人を講師に、46人が理解を深めた。山あいの地域にある集落間の情報交換や交流、相互連携による農村景観の保全などを目的に設置されている同協議会。研修は、農作物被害にとどまらず、住民が襲われるなど、生活を脅かすほど深刻化している有害鳥獣問題を考えようと開かれた。講師を務めたのは、同市内で有害鳥獣捕獲従事者として活動する地域おこし協力隊員の石川慎也さんと、髙橋彩さん。2人はこれまでの活動を踏まえ、サルやイノシシ、キョン、アライグマなど、それぞれの特徴と有効なわな、捕獲事例を交えながら対策を説明した。また、とどめ刺しについて▽銃の場合は遠くからできるため安全だが、脳以外に弾が当たった場合は食肉不可▽ナイフは、品質の良い食肉にできるが、近寄るため危険▽電気はナイフよりやや安全だが、毛細血管の血が出ないので食肉に不向き――といったメリット、デメリットも紹介。屋台営業許可を取得して、イベントでジビエを提供していることにも触れ、最終的には解体所と居酒屋を設立し、地産地消で捕獲と消費の輪を円滑にしたいことなどを語った。同協議会では「今後も関係者間の情報共有、連携強化を図り、中山間地域の活性化に向けて取り組んでいきたい」と話している。

(県内クマの出没、12月の件数過去最多:福井)
全国でクマによる被害が相次いだことし、県内では例年出没が落ち着く12月上旬以降も出没が相次ぎ、12月の出没件数としては過去最多になっています。専門家は冬眠が遅れていて、今後も出没の可能性があるとして屋外にエサとなるものを置かないようにするなど注意を呼びかけています。県によりますと、県内では木の実の不作などの影響でクマの出没が相次いでいて、ことし9月から11月までの出没は470件と、去年より380件多くなっています。例年、12月上旬ごろに出没は落ち着きますが、ことしは12月21日までに46件となっていて、統計を取り始めた平成16年以降、12月の件数としてはすでに過去最多となっています。特に鯖江市、越前市、池田町、南越前町、越前町からなる丹南地域での出没が相次いでいて全体の半数以上となる24件の出没が確認されています。専門家は、エサの木の実の不作でクマに十分な脂肪が蓄積されておらず、先月以降も気温が平年より高い日が続いたため、冬眠が遅れてエサを探す活動的な状態が続いていると指摘しています。今後もクマの出没が続く可能性があるとして、住宅や倉庫の戸締まりを徹底するとともに、エサとなる柿や生ゴミ、ペットのエサなどを屋外に置かないよう引き続き注意をしてほしいとしています。

(千葉県にはクマがいない?)
2023年は各地にクマが出没し、過去最悪の人的被害が発生した。そんな中、本州で唯一、クマがいないとされているのが千葉県だ。房総半島は木々が生い茂り、自然豊かなイメージもある。真偽を確かめるため、専門家を訪ねた。動物学を研究し、同県内の哺乳類などの生態に詳しい県立中央博物館(千葉市中央区)の下稲葉さやか研究員(43)に直球質問した。

(シカ生息拡大.、食害を懸念:福島)
地球温暖化が進む中、農作物や生態系に深刻な被害をもたらすニホンジカの生息域が福島県内で急速に広がり、裏磐梯の周辺でも数が増加していることが分かった。本県などにまたがる尾瀬国立公園では2000年代に希少植物の食害が問題となり、関係者は裏磐梯を含む磐梯朝日国立公園での「再発」を懸念。県は6月に始めた衛星利用測位システム(GPS)による追跡調査を24年度にも拡大する方向で検討しており、対策を強化する考えだ。発見されたふんの数からシカの生息状況を推定する県の調査結果は【図】の通り。22年度は裏磐梯に近い猪苗代町や喜多方市でも増加が見て取れる。県によると、北塩原村を含めた3市町村での捕獲数は19年度ごろから増え、22年度は30頭だった。18年度まではほぼ生息が確認されず、温暖化の影響などで活動場所が広がったとみられる。21年3月策定の県管理計画では、生息数を千頭まで減らすため「年1400頭」の捕獲目標を掲げた。20年度以降の実績は毎年1800~2300頭前後と目標を上回っており、生息数は20年の推計3100頭から増えている可能性が高い。22年度の野生鳥獣による県内農作物被害額はイノシシの4404万円が最も多く、シカは813万円だった。一方、全国はシカの被害額が65億円と全鳥獣類の中で突出する。また尾瀬国立公園では00年代、ニッコウキスゲなどの希少植物で被害が広がり、環境省や自治体が対策に追われた。このまま各地でシカの増加が続けば、観光や農業への深刻な影響も懸念される。県が今年4月に公表した「気候変動と影響の予測」によると、発展途上国などで化石燃料への依存が続いた場合、平均気温の上昇によりニホンジカの分布は2100年までに全県に広がる。仮に国や県の脱炭素目標が達成されたとしても、浜通りを含めてほぼ全県で生息する見込みだ。県は本年度、GPSを使った追跡調査を南会津地方で初めて実施した。群れをつくるシカの1頭に機器を取り付けた結果、冬季は栃木県日光市に移動していることが分かったという。時期別の生息地や移動経路が分かれば捕獲が効率化できるとして、県は対象数や地域の拡大を検討している。県自然保護課の担当者は「生息状況の正確な調査や捕獲、狩猟者の育成など対策を進め、被害をできる限り抑えたい」としている。

(急増するクマに「死んだふり」は本当に有効なのか?)
全国各地でクマの出没が相次ぎ、人的被害も多発している。万が一、クマに遭遇してしまったらどう対処するべきなのか。前編記事『「気づいたら顔の一部がなくなっていた」…! クマと戦って命を失いかけた男性が明かす「壮絶体験」』では予期せぬ形でクマと遭遇し、危うく命を失いかけた岩手県大槌町在住の八幡徳美さんの経験を紹介した。八幡さんの告白を続けよう。「顔にタオルを当てたとき、顔がべコッとへこんでいるのがわかりました。そのとき初めて顔をえぐられていたと気がつきました」。クマに襲われ、鼻や耳など顔の一部を失った八幡さんは右手で顔の失血を押さえ、左手でハンドルを握って、近くにある森林組合を目指した。「幸運なことに森林組合には若い衆がいて、クラクションを鳴らすと、走って駆けつけてくれました。彼は私の姿を見ても動揺することなく、タオルを持ってきてくれました。同時に、もうひとりの従業員が来て、私の名前と生年月日を確認すると、すぐに救急車を呼んでくれました。彼らの迅速な対応で今こうして生きていられるわけです。彼らには感謝しかありません」。八幡さんは釜石市内の県立病院に運ばれたが、そこでは手に負えず、盛岡医大まで搬送され、手術を受けた。「盛岡で看護師をしている孫が盛岡までの救急車に同行してくれました。わざわざ釜石まで来てくれたのです。うっすらとした記憶しかありませんが、孫が救急車でずっと手を握ってくれていた。この記憶はあります。気づいたら手術台の上でした。目の前の大きな電気で目が覚めた形です。全身手術は命に影響するということで部分麻酔でした。鼻の中を針で縫うときの尋常ではない痛さ。これをよく覚えています。手術後、先生から『目を開けられますか』、続けて『二重に見えますか』と聞かれました。ちゃんと見えましたが、自分だけではなく先生たちも安心しているように感じました。長時間の手術で、腹部の肉と骨を鼻に移植しました。あと、頭皮の一部を鼻に移植しています。傷跡は生々しいですよね。顔の右側に爪の跡が3本くらいあります。クマの襲われた影響で目と耳の調子が良くありません。年齢の問題もあるかもしれませんが、やはりショックもあったんでしょう」。八幡さんは「クマとは絶対に戦うべきではない」としみじみと振り返った。「私は小学生のときに終戦を経験。苦しい時代を生きてきたこともあり、クマになんて負けるもんかという思いがありました。だからいつでも反撃できるようにカマを常備していました。しかし、実際に遭遇してみると、野生の動物にはどうやっても勝てないということがよくわかりました。決して野生の動物には歯向かってはいけない。戦うべきではありません。運よく生き延びることができた人間としてこれを伝えたいです」。当時の取材から3年が経ったが、傷はいまでも完治していない。自宅周辺では人家にクマが侵入するなど出没が多発しており、山に近寄ることは一切なくなったという。八幡さんのようにクマに遭遇してしまったとき、どう対処すべきか。3000頭以上のクマに遭遇し、9回襲われた経験があるNPO法人日本ツキノワグマ研究所理事長の米田一彦氏に聞いた。米田氏によれば、「クマに遭わないようにすること」「遭遇しても慌てず動かないこと」「もし攻撃されたら首と頭を守ること」の3つが基本的なポイントという。「クマに遭遇しないことが最優先です。クマは本来、憶病で慎重な動物であり、クマの方が先に人間の存在に気づいて人間を避けてくれますが、人間の方も遭遇しないように注意し、クマに気づいてもらう努力が必要です。最も安価で効果的なクマよけの手段はホイッスルと鈴を持ち歩くことです。高額になりますが、撃退スプレーも有効な手段になります」。万が一遭遇してしまった場合、どうするべきか。クマとの距離が離れているのであれば、まずは慌てないこと。クマは本能的に逃げるものを追うので、走って逃げるのは逆に危険という。「一般的に『ゆっくりと後ずさりするのが有効』と言われていますが、平地であれば有効です。一方で、山の場合、転んで怪我をするケースが多く、そのまま襲われてしまうことも考えられます。クマは動かないものに興味を示さないため、動かないことを優先し、木の陰に隠れ、木のふりをするほうが有効です。問題は距離が近い場合です。クマが攻撃態勢にない場合、こちらから話しかけるのが有効ですが、現実には難しい。私はいつも『ほい! 』などと声をかけています。クマが攻撃態勢にある場合、まずは距離をとること。バッグやカマなどを振り回し、クマが得意な接近戦にならないようにしましょう。クマは自分より大きなクマに襲われる経験をしてきています。バッグなどを振り回し、できるだけ自分の体を大きく見せて大きなクマだと思わせると、立ち去るかもしれません。もし襲われた場合は致命傷を負わないようにすることを意識してください。クマは首と顔を狙います。ここを攻撃されると致命傷を負ってしまうので、うつぶせになり、頭を地面につけ、首の後ろで手を組んで首と顔、そしておなかを守ります。こうして防御姿勢を取ってもクマはお尻などに攻撃してくるかもしれませんが、この状況においては無傷で済むのは不可能です。であれば致命傷を負わないことを優先すべきです」。巷間よく言われる「死んだふり」は効果があるのか。「首などを守る防御態勢は死んだぶりと同じです。その意味では死んだふりを否定することはできません。専門家によって意見が分かれますが、私は効果があると考えます」。クマに9回も襲われ、そのたびに生還した稀有な経験を持つ米田氏もやはり「クマとは戦ってはいけない」と強調する。「積極的に抵抗しないことも大切です。昭和の人は負けん気が強く、またクマに慣れていることもあり、応戦してしまうケースもありますが、致命傷を負いかねません。もうひとつ訴えたいのが、即座に治療を受けることの大切さです。そのためにも連絡手段として携帯電話を必ず持ち歩きましょう」。クマの出没は10月に増える傾向がある。これからますます秋の気配が深まり、山に出かけようと考えている人も多いはずだが、ぜひ参考にしてもらいたい。

(唸り声を上げ襲いかかる人食いヒグマを撃退した消防署員の告白:北海道)
北海道函館市の南西、福島町にそびえる大千軒岳は標高1072メートルと、松前半島の中でもっとも高い山だ。その大千軒岳の山中で今年11月2日、一人の大学生の遺体が発見された。性別が不明なほど損傷が激しいその遺体の近くに横たわっていたのは、血に塗れたクマの死骸。クマが人を襲う被害が各地で起きる中、この事件も大々的に報じられ、世間の注目を集めた。なぜ、クマは大学生を襲いながら息絶えたのか。実は、その陰に地元消防署員による知られざる「格闘」があった――。10月31日、地元消防署員の船板克志さん(41)が大千軒岳を登山中にそう叫んだ。大学生の遺体が見つかるわずか2日ほど前、時刻は午前10時半頃だった。この日、船坂さんは消防署員の同僚である大原巧海さん(41)と後輩(36)の3人で人気のないこの山を登っていた。「一人亡くなられた方がいるので、取材はお断りしていたんですが……」。と苦しい胸のうちを語るのは、その大原さんである。「僕らは大千軒岳に行ったことがなく、今後、消防署員として捜索することはあるので、いざという時のために、捜索ルートを確認しておこうと登山を計画していたんです」。明治29年に一等三角点が設置され、日本三百名山に数えられる大千軒岳。松前藩によって処刑されたキリシタンの殉教碑が建ち、天気が良ければ、山頂から青森県の八甲田山まで絶景を眺めることができる。ただ、観光客でごった返す山というわけではなく、登山客はまばらだ。3人は大千軒岳への登山を昨年から計画していたものの、予定があわず、なかなか実現しなかった。「どうせ行くなら、1人や2人 でない人数で山に入り、ルートを確認できたらと思っていました。行く前に下調べはしていましたよ。登山の2週間前から、『ヤマップ』というアプリで大千軒岳を登った人の投稿をチェックしながら、最近、クマのフンの跡があったなどの情報は把握していました。クマに遭遇する危険も念頭に、計画を立てていたんです」。事前に購入していたのが刃渡り5センチほどのナイフ。結果的にこのナイフが3人の命を救うことになる。「今年に入って、山菜を採るために入山したところ、クマを目撃したことがありました。50メートルほど先のところにクマがいて。そのときに何も身を守るものを持っていなかった。そこで、何かのときのためにと、ホームセンターでナイフを買っていました。魚や山菜を切ったりするような目的のナイフです。で、登山の直前に確認したところ、誰もクマスプレーを持っていなかったので、ナイフを持っていこうと思いました」(大原さん)。同じく大千軒岳に登った船板さんが言う。「3人とも登山経験はそんなにありません。ただ、地元の山だし、登山者や山菜採りの方々が遭難すると応援要請が入り、捜索に入ることもあります。“どんな山か知っておこう”“経験として登ってみるのもいいよね”と登ることにしました」。3人で入山したのは、31日の午前7時頃だった。「12時には頂上に着いて、夕方くらいには帰るつもりでした。4、5キロくらいのリュックを背負い、服装は一般的な登山用です。いま振り返ると、登山口の駐車場にはクマに襲われて亡くなった方のものと思われる車がありました」。亡くなった大学生が大千軒岳に入山したのが、10月29日のこと。20代男性が遭難した可能性があると北海道松前署が発表したのが、11月1日のことだった。10月31日の夜になり、北海道警は登山口に残された大学生の車を発見している。「登山に際し、クマよけの鈴やホイッスルはそれぞれが持っていました。人がいるということをクマに知らせるため、要所要所で鳴らしていたんです。クマは臆病だとも言われていますし。さらに、火薬で音が鳴るピストルを2丁用意していました。こちらは私と後輩で持ち、時折発砲するようにしていました。クマの気配がないか、匂いが変わったりしていないか、気をつけながら登り、それを万全と言っていいかわかりませんが、我々なりの対策はしていたつもりでした。クマスプレーがあったら良かったかもしれませんね。急遽登ることが決まったので、個人的に持っていこうとはしていたんですけど、買いに行く時間がなかったんです」(船板さん)。登山口を出発しておよそ2時間半後、急な登り坂の途中で“異変”が起きた。その“黒い物体”に最初に気づいた船板さんが続ける。「私は2人からちょっとだけ遅れている状態でした。立ち止まって休憩しているところで、私は追いかける形で登っていた。その時はホイッスルも鳴らしていなかったと思います。そして、私がふと振り返ったときに、カーブのところから、クマが四つ足でのそのそ歩いているのが見えたんです。音もせず、私には猫が忍び寄ってくるように感じられました」。しかし、そのクマは体長1.5メートルほどで、船坂さんが気づいたときにはわずか約5メートル先にいた。「“クマだ!”と思わず声を上げました。あまり刺激しないように睨み合いながら徐々に後退りするも、クマは気にせず、距離を詰めてきました。目を合わせるのはよくないと知っていたので漠然とクマ全体を見るようにしていました」(船板さん)。一方、登山道の先で立ち止まっていた大原さんによると、「クマが近づいていることには全く気がつきませんでした。“クマだ!”という声が聞こえて、振り返ったら、クマが歩いていた。いつから尾けられていた のだろうという感じでした。声を出して威嚇しても、クマは怯むこともなく近づいてきました」。思わぬ形でクマと遭遇した3人は「おい!」と大声をあげ、ピストルを3発放った。しかし、クマは全く意に介さない。登山道の脇は急斜面。逃げる場所もなかった。再び船板さんが言う。「クマを発見して10秒ほどしたでしょうか。このままではまずいと思い、木の陰に逃げ込もうとしたその瞬間、クマの左手の爪で右太ももを引っかかれるように引きずり倒されたのです。倒されてから、私はかなり抵抗しました。噛まれないように両足を使って、足を突っ張り、クマの顎を蹴り上げました。それでも、右太ももを噛まれ、今度は首を噛まれました。その時は必死で、傷がどうなっているかとか、全く考えられませんでした。不思議なんですけど、死ぬかもしれないと思う余裕もなく、どうやって逃れようとしか。目の前にあるのは、牙と爪。致命傷にならないようにとにかくもがいていました」。抵抗はなおも続いていた。大千軒岳に 登山中にクマに遭遇した船板さん。クマと揉み合いになりながら、必死に抵抗した。「歯形はついていましたけど、もろに噛まれたわけではなかったんだと思います。噛みちぎられていたら終わりでしたね。その揉み合っているときに所持していたピストルも破壊されていました。クマは私を襲っている間、唸り声を上げていました。揉み合っていたのは10秒か20秒ほどだったと思います」(船板さん)。それを間近で見ていた大原さんは、「船板を襲ったのは一瞬の出来事で、彼のどこを襲ったのかはわからなかった。クマと船板がごろんと転がって、揉み合っていて……」。大原さんは意を決し、ベルトに差していたナイフを握りしめた。「咄嗟に急所の目を狙うしかないと思ったんです。右手でナイフを握り、クマの右目を狙いました。刺しに行く瞬間、怖さを感じませんでした。とにかく船板を助けなくてはという一心で」。しかし、その渾身の一撃は“カツン”という音とともに跳ね返されてしまった。「目の周囲の骨に当たってしまったんだと思います。するとクマが標的を変え、私に襲いかかってきました。右の前足で足を払われ、バーンと倒されたんです。尻餅をつくような格好になり、覆い被さるように襲ってきた。そこでクマの顎を左足で押し出し、顎をロックして、巴投げのような姿勢になりました。クマの力に負けないように左足をビーンと張って。クマは顔を近づけるように押してきました。それと同時に、右前足の爪が太もも裏に食い込んでいて、ぐーっと熱くなっていった」。「その瞬間、“あ、これは肉持っていかれるな”と。足をやられたら、力が入らなくなるからとても勝負できない。そこで力が残っているうちに何とかしようと思ったんです」(大原さん)。まさに命を賭した闘いである。「クマの喉元にナイフを刺そうとしたんです。直感で首しかないと思いました。致命傷にならなくても、怯んでくれればいいかなって。もうこちらはナイフしかないし、最後の切り札です。左足の力を緩め、前屈みのクマの頭部が手前に落ちる形に仕向けた。首元にナイフを無我夢中で刺しました」。一連の様子を船板さんはどう見ていたのか。「クマが自分の前からいなくなったことはわかりましたが、大原さんと格闘しているところは見ていません。大原さんとクマの格闘も10秒から20秒程度だったのでは」。再び大原さんの談。「ナイフで刺したら、のっし、のっしとクマは離れていきました。僕は仰向けから尻餅の状態へと態勢を戻して、その後、クマが僕と船板の方にもう一回向かって来たんです。しかし足で蹴って追い払いました。喉への攻撃が効いたのか、じわじわと後ろに下がって、逃げていきました」。「自分が起き上がった時は、クマは後ずさりしているところでした。首にはナイフが刺さったままで、血が流れていた。4、5メートル離れたところでクマが止まり、我々と睨み合いになりました」(船板さん)。睨み合うこと1分弱。クマはその間も首から血が滴り落ちていた。「我々はクマの目は見ず、全体を見るようにして。その時間はものすごく長く感じました。そして、クマは振り返って、山を下って行きました。クマが見えなくなると、警戒しながら下山することになりました。後で聞くと、同行していたもう一人の後輩は私が襲われたとき、知らぬ間に道脇の斜面を2、3メートル滑落していたみたいです」(船板さん)。二人とも服はボロボロ。船板さんは出血していたものの自力での歩行は可能で、大原さんも幸い軽傷で済んだ。その場で10分ほど様子を見て、クマが戻ってこないことを確認した上で、3人はお互いに声を掛け合いながら、ゆっくりと山を下りていった。「“とりあえず命が助かってよかった”“下りるまで何があるかわからないから、警戒していこう”と話し合っていました。大原さんには“よく助けに来てくれたね”と感謝を述べました。彼は“ほっといたら死んでしまう”と助けようという一心だったそうです。下山中には何ヶ所かクマの血痕と思われる跡がありました。そうした痕跡を見つける度に5分ほど待ったりして、ゆっくり下りて行きました。今さら怖がっても仕方ないと思って、たわいもない会話をしていました。登山用のスティックを持って、また遭遇したらそれを武器にしようと考えていましたね」。二人は下山後、病院で治療を受けた。まさに「奇跡の生還」だった。地元猟友会のメンバーが言う。「福島町はクマがよく出るところなので、出くわすのはある程度仕方のないことなんです。地元の人間は大山軒岳に山菜を採りに行っても、登山道入り口近くのところまでしか行きません」。実は、船板さん、大原さんが襲われたのは、クマが大学生の遺体を隠していた場所の近くだった。大学生の遺体の近くでクマは息絶えたのだ。「クマは獲物を仕留めると一度に全部食べきれないので、土を被せ、土饅頭にして保管するんですね。その周囲に安易に近づくと襲われることがあります。3名はそのテリトリーに足を踏み入れてしまったのではないでしょうか。最近では高温の影響でどんぐりなどの木の実も少なく、鹿の肉を食べるクマが出てきている。肉の味を覚え、冬眠もしない。備えとしては、クマスプレーを持って撃退するしかありません。襲われたら大きな音を鳴らしても効果はありませんから。ナイフを使ったのは結果的に良かったですが、一般の人には難しいでしょう。消防隊員で訓練されていたから、対処できたのかなと思います」。最後に船板さんが振り返る。「大原さんとは事前にクマについて話はしていました。“危険だから慎重に行こう”と。大原さんはクマを何度か目撃したことがあると話していました。でもまさかこんなに近距離では遭遇していないはずです。大原さんがナイフを持ってきていたのは、万が一を考えてのことでした。冗談半分で“クマと出くわしたら俺のナイフがある”と話していた。まさかそれを本当に使うことになるとは……」。船板さんは助かった後も、クマの恐怖が脳裏をよぎると語る。「首の傷は病院でホッチキスみたいなもので止 め、軽傷で入院もせず、翌日には仕事に出ていました。私は去年から登山を始め、いくつか山を登った程度の経験でした。クマとの格闘のトラウマは時間が解決する思っていますが、夜、寝ようとして目を閉じると目撃した一連の光景がフラッシュバックするんです。当分、登山はする気にならないと思います」。

(姿消したムクドリ、高周波音が一定の効果か:兵庫)
JR加古川駅南のベルデモール商店街(兵庫県加古川市)に夕方集まり、騒音や「ふん害」をもたらしていたムクドリがいなくなった。岡山理科大の辻維周教授による実証実験で、高周波音を発生させたことが奏功した模様。同市は高周波音を止めた上で、ムクドリが戻らなければ今シーズンの実験を終え、来シーズンに備える。商店街入り口のケヤキにムクドリが集まるのは例年秋。今年は12月に入っても飛来していたため、実験を始めた。3日から高周波音を流したが、周辺から体調不良を訴える声が上がり、一度中断。9日に周波数やスピーカーの向きを変えて再度流したところ、13日からケヤキに止まらなくなった。ただ、近くの電線で夜を明かす様子が見られ、「これでは被害場所が変わっただけ」との声も出ていた。その後も、JR加古川駅南西ロータリーの電線に飛来していたが、20日以降は姿を見せなくなった。市によるといなくなった理由として「時期が来た」「ケヤキの葉が落ちた」なども考えられるが、「(高周波音が)一定の効果があったと考えられる」とする。来シーズンは飛来前に流して集まらないようにする。ムクドリとの闘いは続く-。

(野菜直売所で寝ているイノシシ:新潟)
新潟県長岡市小国町で28日午前、無人の野菜直売所で体長1mほどのイノシシ1頭が見つかりました。イノシシは野菜を食べて寝ていたということで、警察や市役所の職員が駆け付けると、山のほうへ逃げて行ったということです。イノシシが見つかったのは、長岡市小国町八王子にある主要地方道近くの無人野菜直売所です。28日午前10時ごろ、近くの住民が直売所を訪れると、体長1mほどのイノシシ1頭が中で動かなくなっていたということです。住民は長岡市役所小国支所に連絡。市役所の職員や警察官が駆け付けると、イノシシは動き出し、山のほうへと逃げていったということです。けがをした人はいませんでした。直売所にあった野菜が食べられていて、警察はイノシシが野菜を食べお腹がいっぱいになって寝ていたものとみています。この直売所近くには民家があることから、警察や市役所はパトロールするなどして住民ら注意を呼び掛けています。

(クマ目撃情報、雪のない山注意:富山)
29日午後0時半ごろ、富山市牛ケ増の県道で、車で通りかかった人が「クマ成獣1頭を目撃した」と富山南署に通報した。同署から連絡を受けた市は職員による現地調査を実施したが痕跡は確認できなかった。現場は神通川沿いの集落で、猿倉山森林公園の近く。クマの生態に詳しい富山県自然博物園ねいの里(富山市)野生鳥獣共生管理員の赤座久明さんは、秋に十分にエサを食べることができなかったクマは、雪が積もってエサが探せなくなるまでは山の周辺で活動する可能性があると説明した。クマは雪が積もると冬眠する傾向があるが、ここ数日の暖かさで現場周辺の雪が解け、エサとなる草を食べに来た可能性があるとしている。今年は暖冬傾向で、雪のない時期が続く可能性があるとし「冬場でもクマと遭遇する可能性があることを念頭に行動してほしい」と話した。

(「害獣=ジビエ」は日本の食料自給率アップの未来!?:千葉)
特定外来生物キョンの大量繁殖が止まらない。千葉県によると、キョンの県内推定生息数は2006年度には中央値で9,194頭であったが、2019年度には約4万4,000頭まで増加。2022年には約7万1,500頭と爆発的に増えている。「私の実家は海が近くて民家が多い町なんですが、キョンはもうフツーに野外で出くわしますよ。野良猫と同じくらいの頻度で!」千葉県在住の50代の主婦がこう話す。キョンは小型のシカ科で、中型犬と同じくらいの大きさの動物だ。本来は中国南部や台湾に生息し、日本には生息していなかったが、いつしか国内に持ち込まれ、60~80年代に野外に定着したと考えられているという。そのキョンは、環境省が「生態系に被害をおよぼすおそれのある特定外来生物」に指定しており、「野外に定着した個体の根絶を目指した防除が必要」なのだが、国内では千葉県房総半島や東京都の伊豆大島などで繁殖してしまっている。「キョンは早ければ生後半年程度で妊娠し、一頭のメスが一頭の子を産むとされています。千葉県にキョンが定着して以来、生息数は増え続け、県によれば、県中南部の17市町で繁殖が確認されているんです」(全国紙社会部記者)。千葉県や東京都はキョンの捕獲を進めているが、生態系への影響や、農作物などの被害をもたらす動物は、キョンだけではない。いま、日本中でシカやイノシシ、クマまで人里に現れ、農作物のみならず人家、人まで襲うニュースは、後を絶たない。なぜこのような状況になったのだろうか。「昨今、動物が人里に降りてきて被害をもたらしているのは、動物の性質が変わったわけではなく、日本人が山を管理できなくなってきているからという側面が強いと思われます。少子高齢化で、以前は人が管理していた山に人が入らなくなり、山にある家も放置され、草が生え、森になり……。つまり、人間のテリトリーが後退して、鳥獣のテリトリーが広がったからなんです」。日本ジビエアカデミー代表の山末成司さん(50)はいう。人の領域が山からだんだん下降して来れば、山に住む動物は活動領域がどんどん広くなる。人里、民家が動物たちにとって、身近な存在にどんどんなってきているというのである。「国全体で困っているのは、農林業などの被害です。たとえば、シカが木の皮を食べてしまえば、皮を経て水分・養分を得る木は枯れてしまいます。これは土砂崩れの原因となります。農業では収穫前の稲穂が食べられるのはよくある話です」(山末さん、以下同)。国は、農林業被害を食い止めるためにシカやイノシシの捕獲報奨金を出しているが、捕獲の現場では問題点があるのだと、山末さんは話す。「狩猟された動物は、山林に捨てられている場合が多いんです。たとえば農家さんが獣害にあっていて、猟友会に頼むと、猟師が捕獲してくれます。しかし、報奨金の証拠となる尻尾だけを切って持ち帰り、死骸は放置して行ってしまいます。すると放置された死骸にほかの鳥獣が群がり、結局そこにまた動物が集まるという悪循環に陥ってしまう。これでは、農家さんの被害は終わらないんです」。有害鳥獣の死骸を処理するのには、一般廃棄物業者で、扱える廃棄物の種類が「動物死体及び付随汚物」の許可を有している必要がある。またジビエ処理施設に持ち込まれた鳥獣の残滓は産業廃棄物となり、焼却や埋葬など、追いつかないのが現状だ。そこで、山末さんの会社はもともと食肉加工業を営んでいたが、その捕獲された死骸が放置されないための対策を考えてきたのだという。「それが、ジビエでした。大分県では捕獲したシカやイノシシの97%が廃棄されていましたが、狩猟された動物を人が食べる『おいしい肉』として加工することによって、命の循環、命のバトンになると気づいたのです」。山末さんが代表を務める日本ジビエアカデミーは、大分県宇佐市にあり、ジビエの処理の研修を行う日本発の施設として、23年5月にオープン。同社はジビエ処理加工場を『宇佐ジビエファクトリー』として運営し、オンラインショップでジビエ肉の販売もしている。「ジビエとは、フランス語で、狩猟で捕獲された野生鳥獣を指します。ですので、クマ、イノシシ、シカ、キョン、ウサギ、スッポン、カモ、キジなどのことを指します。一般の家庭でも食することができるように流通しているのは、シカやイノシシが多いですね」。獣害への社会的関心や、人と自然界の持続可能性を考える風潮の高まりもあって、家庭でもジビエを試してみたいと思う人は増えているという。だが、猟師が捕獲した動物の肉など、どうやって入手するのか、どうやって調理するのか、ネットでも買えるのか……。まだわからないことも多い。なにより、野生の動物は「臭いんじゃないか?」という先入観ももってしまいがちだ。「たとえば、豚でいえば、『臭い』といわれるのはオスが出すホルモンですので、食用の豚は去勢されます。しかし天然のイノシシは去勢なんて当然されていませんから、繁殖期のオスは臭います。『ジビエは臭い』という先入観はそこから来ています」。今は技術も進み、加工処理の段階で選別をして、臭いのないものを食肉用にし、臭うものや人の食用に適さないものは、ペットフードやサファリパークの動物用にする。そのように、極力、仕分けして加工していくことで、『ジビエは臭い』という先入観を覆すジビエ肉を加工することに成功している。カロリー、たんぱく質は、イノシシ肉は豚肉とほぼ同じくらいだが、ビタミンB12が豚肉の約3倍含まれているという。また、鹿赤肉は牛赤肉に比べてカロリーは半分以下、逆にたんぱく質は1.5倍くらい多く、鉄分も約2倍多く含まれるそう。ジビエ肉のスペシャリストである山末さんに、おいしいジビエの食べ方を教えてもらうと、「まず、イノシシの肉は『焼き肉』にして、よく火を通して、塩コショウだけの味付けがいいですね。豚とは違う食感で、特に脂身がおいしいです。イノシシの脂を味わえるのは、バラスライス。イノシシは山の天然のもの――ドングリやキノコをふだんから食べているので、肉のうまみ成分が違います。そしてシカ肉は、薄く切って、火を軽く通します。こちらの味付けは、わさび醤油、もしくは西洋わさびで。鹿肉はロースがヘム鉄豊富です。体にダイレクトに吸収されます」。害獣が加工・調理することで、一気に栄養豊富なたんぱく源になるというのは驚きだ。「ジビエ肉は、栄養があって、おいしく食べられる。そして命をつなぐことにもなる。しっかり食べるべきです。サステナブルの観点からもメリットがありますし、日本の食料自給率を上げる一助にもなります」。台湾では高級食材として知られるキョンも、千葉県で食肉として消費する動きもある。ただし、特定外来生物であるため、撲滅を掲げる立場の千葉県としては商業的利用には慎重だ。手に取りやすいジビエから、まずは、一度試してみてはどうだろうか。

(ジビエ×スイーツ=地方活性化:兵庫)
丹波のジビエと台湾のスイーツ、茶を通じて交流を図り、互いの地方活性化を考えるツアーが、丹波市内であった。台湾からは社会起業家や研究者らが参加。丹波の獣害対策などについて興味深そうに学んでいた。大阪大学台湾研究講座の主催。

(「クマ汁」のお味はいかに:京都)
京都府京丹波町産の食材を使った具だくさんの「クマ汁」を味わえるイベントが12月29日、同町坂原の道の駅「和」で開かれる。前回は大雪にもかかわらず、100食を完売する好評ぶりで、今回は倍の200食を用意する。地元の若手事業者らでつくるサークル「SEW(ソウ)」が主催。ジビエ(野生鳥獣肉)の中でも希少なクマ肉を手軽に味わってもらおうと企画した。材料には町内で捕獲したクマの肉と、豆腐や根菜など町内産の食材を使用。臭みの少ないあっさりとした口当たりで、ジビエ初心者や子どもでも食べやすいという。2023年1月の初開催では、大雪で国道9号の観音峠が通行止めになり、亀岡方面からの来場に影響が出たが、多くの人が訪れた。メンバーの一人(52)は「今回は晴れの予報。前回来られなかった人や、まだ食べたことのない人に、この地でしか味わえない冬の味覚を楽しんでほしい」と話している。クマ汁は1杯800円。販売開始は午前11時からで、売り切れ次第終了。

(ジビエ料理店:静岡)
ジビエ料理店「天然肉料理 わなし」(浜松市中区板屋町、TEL 053-489-8912)がオープンして1カ月がたった。静岡県産のイノシシやシカなどを中心に使ったジビエ料理を提供する同店。オープンのきっかけは、店長の世田和也さんが、浜松市天竜区で活動するジビエ料理人でもある猟師の片桐邦雄さんと知り合ったこと。片桐さんのジビエに対する思いや哲学に感銘を受け、ジビエ料理店を作りたいと考えオープンを決めた。鮮度を保ったまま下処理することで臭みなく調理できるため、猟銃を使わない「わな猟」で捕れた肉のみを仕入れるという。店舗面積は約20坪。席数は、テーブル=8席、カウンター=12席、個室=1室6席。店内デザインは、木目や塗り壁などを使う落ち着いた和モダンスタイル。調理スペースの中央には炭を積み上げたいろりを置く。カウンター越しに調理している様子を見られるよう設計しライブ感を演出する。仕入れ状況によりアレンジした和食スタイルのコース料理を提供する。「おまかせコース」(8,250円)は、6品で構成。「イノシシのしゃぶしゃぶ鍋」は、薄く切った肉を花びらのように盛り付ける。炭火で串焼きして塩のみで味付けする「ジビエの焼き物」は2種類を用意。「肉のうま味が強いので、本来の味がダイレクトに伝わるようにシンプルに仕上げている」と世田さん。締めのごはんは、土鍋で炊く魚沼産コシヒカリに春野産ジネンジョを添え、鍋のスープを使った雑炊も用意するため2つの味を楽しめる。このほか、低温調理したシカ肉ロースなどの一品料理、デザートなどを提供する。「極上おまかせコース」(11,000円)は、「おまかせコース」をベースに焼き物が3種類に増え、季節の焼き野菜も加わる。「猪しゃぶコース」(5,500円)は、一品料理、イノシシのしゃぶしゃぶ鍋、焼き物1種類などをセットにする。世田さんは日本ソムリエ協会の認定ソムリエでもあり、ジビエ料理と相性の良いワインや日本酒、焼酎なども多くそろえる。オープン後は、満席の日も多く順調な滑り出しでリピーターもいるという。「今後は『天然』をコンセプトに、カモ肉やウナギ、アユなどの提供も予定している」と世田さん。「食べてもらえばジビエ料理のイメージが変わると思う。自信を持って薦められるので、まずは一度試してもらいたい」とも。

(「ジビエ料理」身近に)
野生のシカやイノシシなどの食肉を使ったジビエ料理の人気が高まっている。高級なイメージに加え、味やにおいに独特のクセがある印象もあるが、最近は、気軽に楽しめるジビエ料理の提案が増えている。東京都墨田区の「フレンチ居酒屋UWASHIMA」では、狩猟シーズンに合わせ、11月から、シカ肉を使ったタコスを提供している。北海道産の蝦夷鹿のすね肉などを野菜とじっくり煮込み、トルティーヤに挟んで食べる一皿で、1200円。女性客を中心に、「クセを感じないあっさりした味わいでおいしい」と好評だ。同店では毎シーズン、シカ肉のステーキを提供している。今季は「気軽にジビエを楽しんでほしい」と、片手で食べられるタコスにシカ肉を使った。フランス料理店で経験を積んできたオーナーシェフの上嶋良之さん(46)は「フランス料理ではジビエがより一般的な食材だ。シカ肉は香りが豊かで食べやすく、日本でもここ数年で、人気が高まっている。『食べず嫌い』の人にも食べてほしい」と期待する。東京都新宿区の「ワインバル ボローニャ」では今秋から、イノシシ肉を使ったボロネーゼ(1680円)を提供する。オーナーの川崎隆志さんは「イノシシ肉になじみがない人は多いが、野性味あふれる甘みが新鮮に受け止められている」と話す。JR東日本グループのカフェ「ベックスコーヒーショップ」では毎秋、ジビエのカレーを展開。「興味のあったジビエを初めて味わえた」などと好評を得ている。今年は9月から1万1000食を販売し、11月中に終了した。高級店や、里山の郷土料理で提供されるイメージがあるジビエ料理だが、日常的な料理に使われたり、身近な店で買ったりできるなど、広がりを見せている。「良品計画」(東京)が展開する無印良品の店舗でも2021年から、イノシシやシカの肉を使った2種類のレトルトカレーを数量限定で販売している。農林水産省などは11月、ウェブサイト「全国ジビエフェア2023」を開設。ラーメンチェーン店のシカ肉を使ったギョーザや、ダイニングバーのシカのすね肉と根菜のポトフなど多彩なメニューが掲載されている。飲食店のほか、ジビエ製品が購入できるECサイトなど、約1500店の情報を紹介している。国が、ジビエの消費を広げようと力をいれる背景には、野生動物による深刻な農作物被害がある。農水省によると22年度の被害額は156億円。全体の約6割をシカとイノシシが占める。「捕獲した野生鳥獣を地域資源と捉え、ジビエ料理に有効活用していきたい」と担当者は話す。栄養も豊富だ。日本ジビエ振興協会(長野)によると、シカやイノシシの肉にはビタミンや鉄分が多く含まれている。同会代表理事の藤木徳彦さん(52)は「シカ肉は赤身の筋肉が発達しており、うまみを存分に味わえる。イノシシの肉は甘く、とろける脂が魅力」と話す。飲食店情報サイトを運営する「ぐるなび」(東京)の小崎俊幸さん(41)は、「サステナブル(持続可能)を重視する価値観の広がりや、身近なチェーン店でも販売されたことも加わって20代など若い人たちのジビエへの関心が高まっている」と分析する。プルコギやビビンバなど流行の韓国の料理にもジビエが取り入れられるようになっているといい、「ジビエに親しむ機会がさらに増えていくのではないか」と予想している。

(エゾシカ食害、食べて減らす:北海道)
エゾシカによる農作物の被害を減らすため、道と飲食店がタッグを組んでシカ肉の消費量アップを目指すキャンペーンが、今冬も始まった。狩猟期間と冬の観光シーズンが重なる2月中旬まで、飲食店など約100店がシカ肉の料理や加工品を販売。需要を喚起して狩猟するハンターに経済的支援が届くようにする。「脂身が少なくほぼ赤身。ほどよい野性味もあり、ジビエの 醍醐だいご 味がつまっている」。道の「エゾシカフェア」に参加する札幌市中央区のフランス料理店「プティサレ」の深澤陽友シェフはエゾシカの魅力をそう語る。看板料理「 蝦夷鹿えぞしか のロースト」は多い日にはランチ客の4割が注文する。深澤シェフは「臭い、硬いという先入観を忘れてほしい。食べれば必ず気に入るはず」と胸を張る。フェアは、コロナ禍で外食需要が冷え込みシカ肉の在庫がだぶついたため、昨冬から始まった。今冬は2月12日まで開催される。農林水産省によると、2018、19年度に600トンを超えた道内のシカ肉販売量は、22年度は466トンにとどまった。ただ、感染状況が落ち着き、2月のさっぽろ雪まつりにも国内外から大勢の観光客が訪れると予想される中、道は「シカの魅力を知ってもらえるチャンス」と期待する。将来的にはシカ肉の販売量を19年頃の2倍まで増やしたい考えだ。シカ肉をPRする背景には、増える農作物被害がある。道によると、シカによる農林業の被害額は19年度の38億円から22年度は48億円に増加。18年11月にハンターの誤射で森林事務所職員が死亡し、国・道有林での狩猟が1年3か月にわたって制限され、18年度に65万頭だった推定生息数が22年度は72万頭に増えたことが、原因の一つとみられる。道は18年度から狩猟でシカを食肉処理施設に運んだハンターに1頭8000円の助成金を支払っているが、処理施設がシカを食肉用に受け入れ、ハンターが助成を受け取れるかどうかは、在庫状況に左右される。ハンターによるシカ狩りを促進するには需要の増加がカギで、道野生動物対策課の坂村武課長補佐は「エゾシカ肉は高たんぱく質で鉄分も多い。忘新年会のごちそうの選択肢にエゾシカ料理を入れてほしい」と話す。

(『ゴールデンカムイ』で話題!狩猟メシ「ジビエ料理」魅力)
異色のグルメ漫画としても有名な人気漫画『ゴールデンカムイ』が来年1月に実写化される。漫画の中に次々と登場するのは、狩猟によって捕獲された野生鳥獣の肉を使った「ジビエ料理」だ。猪や鹿、兎、熊などがその代表的なものになる。この漫画を読んでジビエ料理に興味をもった人もいるのではないだろうか。近年、実際に自ら捕獲した野生鳥獣を捌き、料理する人たちも増えているという。なぜ、今、ジビエ料理にスポットが当たっているのか。猟師の娘で猪を捌いた経験もある筆者が、背景にある猪や鹿などによる日本の野生鳥獣被害についてレポートする。ジビエ」の語源はフランス語=gibier。その歴史は古く、ジビエ料理はヨーロッパ貴族の伝統料理として高貴な人だけが食べられるものだった。今でもジビエは高級フランス料理でよく使われており、世界中のグルメたちが森への感謝を抱きながら、自然の恵みを堪能している。また、ジビエは栄養価の高さが特徴の一つ。鹿肉は牛肉よりも高タンパクで鉄分は牛肉の約2倍かつ低脂質で、エネルギーは約半分だ。食感は牛肉に似ており、赤みが強く、味は淡白でパサパサしている。猪肉は豚肉と味がよく似ている。そもそも猪を家畜化したものが豚であるが、鉄分は豚肉の約4倍、ビタミンB12も3倍あり、鹿肉同様に高い栄養価がある。食感は豚肉と比べて身が固く、こちらも脂身が少ない。ただ近年、ジビエ料理は食とは別の観点から、その必要性が再認識されている。理由の一つとして挙げられるのが、森林や畑における野生鳥獣による食害や農作物の被害の拡大だ。農林水産省によると、2022年度の森林の被害面積は年間約5000ヘクタール(東京ドーム約1087個分)、このうち鹿による被害が約7割を占める。鹿の食害を受けた森林は植生が失われ、森林崩壊につながっている。野生鳥獣による農作物被害額も2022年度は156億円に上り、全体の23%が猪、42%が鹿によるものという。そこで被害拡大防止に一役買いそうなのが、ジビエ料理の普及だ。野生鳥獣肉の需要が高まり、狩猟活動が活発化されれば結果的に被害も減り、一石二鳥と言える。しかし、その壁になっているのが狩猟免許所持者数の減少だ。1970年に約53万人だった免許所持者数は、2010年には約19万人へと大幅に減っている。さらに60歳以上の高齢者が占める割合が64%(2010年)にも上り、免許所持者の高齢化も進んでいる。若年層の免許取得者をどう増やすかが今後のカギになってくる。野生鳥獣の狩猟からジビエ料理に至るまでには、捕獲した個体の解体作業も不可欠となる。11月中旬、岡山県にある筆者の実家に地元の猟師から鹿3頭が運び込まれた。このうちの2頭を捌いたのは私の甥で高校1年生の優斗(仮名)。彼は小学校のころから猟師である祖父の雑用を手伝い、高学年になると、猪や鹿の捌き方も学び始めた。捌きながら優斗は話す。「はじめはな、お小遣いがほしくて手伝っていたんだけど、じーちゃんは高齢だから俺が手伝うしかないんよ。罠にかかった猪は、ちゃんと食べてやらんといけん。その命を無駄にしたらいけん」。そう言いながら慣れた手つきで鹿の皮を剥ぎ、肉の塊にしていく。最近は、噂を嗅ぎつけたジビエ好きな人たちが、父に捌き方を教わるためにやってくることも多くなってきた。ジビエを自家消費するだけであれば、捌くための免許や資格は必要ない。この日、手伝いにきた40代の男性、林和也(仮名)さんもその一人だ。ジビエが好きで時折捌きに来て、捌いた肉は自宅に持ち帰って料理するという。中でも、鹿の唐揚げや、猪のスペアリブは最高だそうだ。「新鮮な猪や鹿の肉はホンマにうまい。自分のように捌き方を学び、もっと捌ける人が増えればええのになあ」と林さんは話す。対象となる野生鳥獣を捕獲し、証拠となる尾や写真などを提出すると数万円の報奨金が自治体からもらえるのだが、捕獲しても設備や住宅事情の都合上、捌けない猟師は多いという。私の父親のような存在が、狩猟活動拡大の後押しにつながっていくと信じている。かくいう筆者は幼い頃から猪、兎、キジ、鴨といった野生鳥獣を見る機会が多く、食卓には猪や兎、キジなどの料理が並んでいたが、野蛮な食べ物だと嫌い、それらの料理に手をつけなかった。大人になり登山を趣味に持つようになった筆者は、山の中で多くの鹿や猪の被害を目撃し、山を守るためにはどうすれば良いかを考えるようになった。そこで出た答えの一つが「ジビエを食べること」だ。父に猪の捌き方を教わり、今ではシチューやカレー、猪汁などの具材として我が家の食卓に並ぶようになった。劇的な変化と言っていい。ジビエの肉は自らが狩猟しなくても最近では加工食品が「道の駅」で売られていたり、ジビエ料理専門店も見かけたりするようになった。高タンパクな鹿肉はペットフードにも最適で、筆者も手作りジャーキーを愛犬に与えている。毛艶がよくなり、効果は抜群である。この記事を読む人の中には登山が趣味という人も多いだろう。北アルプスの山小屋「三俣山荘(みつまたさんそう)」の夕食には、鹿シチューが出てくる。高タンパクで鉄分の多い鹿肉は、登山で疲れた体を回復させるのに最適で人気メニューになっている。ジビエ料理を食べることは、ただ単に栄養価の高い美味しい料理を楽しむことだけではない。より多くの人が食べることによって、ジビエがもっと注目を浴び、結果として鳥獣対策につながることを期待している。

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12/29
(ハエが鳥インフルエンザウイルス媒介関与か:福岡)
鳥インフルエンザウイルスの媒介に、ハエが関与している可能性があることが九州大学の研究グループの調査でわかりました。これまでは小動物などを想定して感染防止対策がとられていて、グループではハエの侵入を防ぐ対策を行って効果を検証することにしています。鳥インフルエンザは昨シーズン全国26の道と県で確認されて過去最多の1771万羽が処分され、この冬もすでに各地で確認されています。九州大学大学院農学研究院衛生昆虫学分野の藤田龍介准教授の研究グループは去年12月、感染が相次いだ鹿児島県出水市の養鶏場近くなど30か所あまりでおよそ900匹の「オオクロバエ」を採取して詳しく調べました。その結果、最も多かった地点では、15%ほどのハエから高病原性の鳥インフルエンザウイルスを含む鳥のふんが検出され、ウイルスは感染力を維持していたということです。藤田准教授によりますと、オオクロバエは主に冬に活動し2キロほど移動が可能で鶏舎周辺でもよく見られ、ニワトリもハエを食べる性質があるということです。藤田准教授は、ハエが、感染した野鳥のふんや死がいからウイルスを取り込み鶏舎に持ち込んでいる可能性があるとして、「今まで小動物や人などがウイルスを持ち込む想定で対策がとられてきたが改善せず、ハエを疑ったところウイルスが検出された。今後さらに詳しく調査してハエの侵入を防ぐ対策を行い、効果を検証していきたい」と話していました。

(クマ対策にわな捕獲や夜間銃猟の要望相次ぐ)
クマによる人的被害が今年度、過去最悪となっている事態を受け、環境省は26日、対策検討会(座長・山崎晃司東京農大教授)の初会合を東京都内で開いた。参加した被害自治体の担当者からは、頭数管理の対象となる「指定管理鳥獣」にクマを追加するよう求める声が相次いだ。鳥獣保護法に基づく指定管理鳥獣捕獲はイノシシとニホンジカを対象とし、捕獲計画を定めた都道府県に国が交付金を出す。クマが加われば、わなによる捕獲や夜間銃猟も認められる。会合では「クマを捕獲する人材の育成が必要だ」(岩手県)、「人とクマのすみ分けを目指す研究を資金的に担保してほしい」(秋田県)といった意見が出た。同省は来年3月までに、クマの頭数管理の妥当性を判断する見通し。

(緊急時以外もクマ捕獲許可権限を市町村に委譲するか県が検討へ:長野)
クマが出没した際の迅速な対応につなげようと、長野県は、来月予定されている専門家などの会議で、緊急時に限らず、捕獲許可の権限を市町村に委譲するかどうか検討することにしています。ことし4月から先月末までの県内のクマの目撃件数は、昨年度1年間に比べて600件以上多い1373件に上り、10月には、県内で平成18年以来となる死亡事故が飯山市で起きています。鳥獣保護管理法では、クマの捕獲許可は国か都道府県が行うことになっていて、長野県は、緊急性がある場合に限って市町村が許可できると条例などで定めています。県は、クマが出没した際は、何よりも迅速な対応が必要だとして、来月予定されている専門家などの会議で、緊急時に限らず、捕獲許可の権限を市町村に委譲するかどうか検討することにしています。これを前に、県は今月、検討材料の1つとするため、全市町村を対象に緊急時の捕獲許可で判断に迷ったことがあるかや、権限の委譲を希望するかどうか、アンケートを行ったということです。県鳥獣対策室は「各市町村と専門家の意向を踏まえて、何が被害防止に有効か考えていきたい」とコメントしています。

(クマが人身事故を起こしたのに駆除しない?自治体は有害性で判断)
人や農作物に被害を与える危険があるヒグマを駆除した自治体には、非難が押し寄せる。だが、そもそも、自治体にとっても駆除はできる限り避けたい選択肢だ。釧路市阿寒町の山奥で10月13日、釣りをしていた50代男性が子連れの母グマに顔をひっかかれ、右肩をかまれ重傷を負う事故があった。翌日に対策会議を開いた市などは駆除しない方針を決める。遭遇した場所が人の生活圏から離れた山中であり、人への攻撃は子グマを守るための防衛行動だったと判断したためだ。道のヒグマ管理計画をもとにした市の対策手引では、有害性を判断する手順として人間を攻撃したとしても「防衛行動は除外」とされている。一方で、人を恐れずに民家付近に頻繁に出没したり、農作物に被害を与えたりするヒグマを「問題個体」とし、道は駆除の許可を出している。駆除すべきかどうか。全国でのクマによる人身被害が2006年度以降で過去最多となるなか、各地でわく議論だ。

(クマ出没警報を1月末まで延長、「年またぎ」の発令は初:秋田)
秋田県は27日、県内全域に発令中の「ツキノワグマ出没警報」を、来年1月末まで1カ月延長した。12月の目撃件数が例年を大幅に上回っているため。5月11日の発令以降、延長は7度目。年をまたいでの発令は初めてとなる。県自然保護課によると、今月1~26日のクマの目撃件数は80件で、過去5年間の12月の平均(4・4件)の18倍超。クマが冬眠する時期となり、中旬以降は目撃件数が減ってきてはいるものの、依然として集落になる柿を食べに来る姿などが目撃されている。

(道内ヒグマ捕殺、22年度940頭:北海道)
道は27日、2022年度のヒグマの捕殺統計を公表した。道内で駆除や狩猟などで捕殺された個体は940頭で前年度比116頭減。農業被害は2億7100万円と過去最高を更新し、道ヒグマ対策室は「生息数は依然、増える傾向にあり、人とのあつれきが高い状況に変わりない」と話す。捕殺数減の背景にはハンター不足もあるとみられ、道は担い手確保を急ぐ。捕殺数は20、21年度にそれぞれ過去最多を更新したが、22年度は3年ぶりに減少した。それでも道の公式記録が残る1962年度以降で2番目の多さ。食料を求めて人里に下り、畑を荒らすなどした個体を駆除したケースが多かったとみられる。22年度の捕殺のうち、農作物の食害や人への危害を防ぐ目的の「害獣駆除」は883頭(道許可875頭、環境省許可8頭)、ハンター育成のための「許可捕獲」が14頭、10~1月の猟期にハンターが趣味で行う狩猟が43頭だった。

(クマ被害ゼロ、過信は禁物)
クマによる人身被害が各地で多発する中、被害が出ていない地域もある。本州で唯一クマがいないとされる千葉県、絶滅に近づいているという四国、既に絶滅した九州――。これらの地域で将来、被害ゼロは続くか。有識者は「過度に恐れる必要はないが、出没可能性が少しでもある限り、もしもを想定した備えは忘れないように」と語る。

(「猫を食料として狩ろうと」、自作銃で撃った疑い:奈良)
自作した銃を撃って他人が飼っていた猫にけがをさせたとして、奈良県警西和署は26日、奈良県王寺町王寺、会社員の男(49)を動物愛護法違反(殺傷)容疑で逮捕した。「猫を食料として狩ろうとしたが、むやみに傷つけようとしたわけではない」と一部否認しているという。発表では、上南容疑者は今月1~18日頃、町内の河川敷で、手製の銃のようなもので金属製の弾丸を放ち、猫の左前足に命中させてけがを負わせた疑い。署によると、けがをした猫を目撃した住民が動物保護団体に通報。団体から情報提供を受けた署員や飼い主が捜索して猫を発見した。署が押収した銃の殺傷能力や余罪の有無を調べている。

(クマ出没や人身被害の情報を通知するメールシステム導入へ:秋田)
ことしクマに襲われるなどしてけがをした人の数が、過去最多となったことなどを受け、秋田県は来年6月をめどにクマの出没や人身被害の情報を登録者に通知するメールシステムを導入することにしています。県内では、ことしクマに襲われるなどしてけがをした人の数が70人となり、これまでの過去最多を大幅に更新しました。こうした状況を受け、被害数の削減が急務となっていることから、県は来年6月をめどにクマの出没や人身被害の情報を登録者にメールで通知するシステムを導入することにしています。メールシステムに登録すると、出没情報は1日2回程度、人身被害の情報は情報が入りしだい、すぐにメールで通知されるということです。また県は、現在、クマの情報があった日時や場所をインターネット上の地図に落とし込むかたちでホームページに掲載していますが、このシステムも改修していくということです。県自然保護課は「クマが活発に動き出す時期までに早く導入できるよう準備を進めたい」としています。

(山に積雪、猟の季節:岐阜)
まとまった積雪があった郡上市北部で狩猟が本格化し、猟友会員たちが険しい雪山に分け入ってシカやイノシシを狙う大物猟を繰り広げている。大物猟は勢子(せこ)に連れられた猟犬が獲物を追い出し、獣道に待機した仲間が猟銃で撃つ。郡上の山は地形が複雑で広いことから、獣の足跡が確認しやすい積雪は猟場の範囲を絞り込む上で大きな助けになる。

(クマを「人類の敵」と呼んだ北大教授が、“共存・棲み分け”を目指すようになるまで)
ここ数年、クマ被害は数知れないが、その中でも大きなインパクトを与えた個体にOSO18と呼ばれたヒグマがいる。そのOSO18を特集した2022年のNHKスペシャル『OSO18 ある“怪物ヒグマ”の記録』の中で、1962年に起きた北海道標津町でのクマ騒動(この騒動の詳細は拙稿で紹介)の映像を流しつつ、ヒグマの根絶を目指そうとした「当時の状況を示す文章」として、1963年に出版された本に書かれた一節を紹介している。「北海道の熊は文化の敵、人類の敵である」。この部分を読む限り、この人物はヒグマ根絶を主張しているようにしか見えないだろう。余りに“強い”文章のせいか、文章を書いた人物について、NHKは「北海道大学教授 動物生態学の第一人者」としか伝えていない。だが、この文章を書いたのは、戦後北海道の自然行政に大きな影響を与えたばかりか、日本社会にも足跡を残した人物だ。そして、かつては「人類の敵」と呼んだヒグマとの共存を模索するようになった。彼の業績や主張の変遷を辿ることで、かつてのクマ問題と行政の対応の変化、そして現在の問題を理解する手がかりになるだろう。本稿ではその彼、北海道大学の犬飼哲夫名誉教授について紹介したい。犬飼の名を知らずとも、多くの日本人がその業績に間接的に触れている。例えば、ナキウサギの北海道での存在の証拠を発見し、ゼニガタアザラシを発見・命名した動物学的業績の他、もっとも知られているものには、日本が戦後初めて南極観測隊を送り出す際、南極特別委員会の委員としてソリ用の樺太犬を手配し、訓練を施したことだ。第1次観測隊と共に南極に渡った樺太犬たちだったが、第2次観測隊は悪天候で越冬を断念。空輸問題から樺太犬15頭が昭和基地に残された。その後、無人の昭和基地で1年間生き延びたのが、「奇跡の生存」として日本中で話題となったタロとジロの兄弟犬2頭だった。犬飼はタロとジロの名付け親で、生存が確認される前に「2頭は7対3の確率で生き残るだろう」と予測していたが、まさにその予測通りとなり、樺太犬に対する犬飼の深い理解も証明する形となった。1989年7月に犬飼はその生涯を閉じたが、その年の9月に天皇(現上皇)が北海道大学博物館を視察された際、タロの剥製を前に「先日、犬飼先生はお亡くなりになりましたね」と説明員に話されたことが伝わっている。生物学者でもある天皇からも一目を置かれていたことが窺われる。犬飼が長年大きな関心を持っていた動物に、北海道のヒグマがいる。ヒグマの生態のみならず、人間社会との関係についても関心を持ち、戦前からアイヌの熊送り(イオマンテ)といった祭祀を記録し、またヒグマによる人的・経済的被害情報の収集を行い、『熊に斃れた人々 : 痛ましき開拓の犠牲』といった一般書も著し、北海道のクマ被害の深刻さを世に訴えかけていた。戦前の犬飼のヒグマ観が窺える記述がある。1933年の論文「羆の習性」の中で、ヒグマについて次のように書いている。“今から50年程前に北海道の山野に暴威を振ひ開墾の進行を阻止していた狼が絶滅してから残る猛獣は熊だけで、北海道を独り舞台に今なお人類と抗争を続けている。然し如何に熊でも到底人類の敵ではない。北海道の未開地の開墾と共に年々多数に捕殺されて早晩滅亡させられる運命にある。”北海道の開発と共にヒグマは滅亡する運命にあるとしており、NHKスペシャルで取り上げられた1963年の「人類の敵」とそう変わらない認識だったと思われる。そして、この頃の犬飼は、戦後北海道の人とクマの関係に、大きな影響を及ぼす政策を訴えるようになる。現在、北海道のクマ問題で言及される事が多いのが、春グマ駆除だ。北海道では1966年から、クマの生息頭数を抑制するために冬眠中や冬眠明けのクマを駆除する春グマ駆除を行っていた。この春グマ駆除を戦前から提言していたのが犬飼だった。1932年の論文「北海道に於ける熊の被害(予報)」の中で、犬飼はクマを減らす効率の良い方法として春グマ駆除を提案し、そのメリットを次のように述べている。“又春季は冬眠後で猟し易い故に、熊を減少せしめんとするなら春季に於ける猟数を増加することが唯一の方法である。この時期は捕殺頭数の割合に人の死傷数は少ない。”早春は山林の見通しもよく、クマの発見も容易でハンターが逆襲されることも少ない。この時期に積極的にクマを駆除することで、人の被害も少なく、効率的にクマを減らせることを説いたのだ。1966年の春グマ駆除開始も、犬飼の建議によるものだった。この春グマ駆除によって60年代に多発していたクマ被害は減少し、逆に北海道のクマの絶滅が心配されるまでになり、1990年に中止された。現在の北海道のクマ問題を取り上げる時、かつての熊害の少なかった時期、そして近年の熊害増加の要因について、この春グマ駆除の開始と中止がよく言われている。春グマ駆除が行われるようになってしばらく経つと、犬飼のヒグマ観に変化が見える。1971年に刊行された『熊・クマ・羆』(時事通信社)の序文に次のように記している。“現在の三千頭といわれるクマを、半分以下に減らして凶暴性のクマを駆除、おとなしいクマを残して、アメリカの国立公園のような、クマは愛嬌のある動物として、親しまれるものにしなければならない。”ここで犬飼は、凶暴な個体を淘汰し、温和な個体を残すことで、ヒグマとの共存を目指す方向にシフトしている。人間本位ではあるものの、ヒグマとの共存の方向性に動いている。そして、語学に堪能だった犬飼は、海外の動物研究・自然保護の潮流を見つつ、北海道の実情に沿う形でその姿勢を変化させていく。春グマ駆除の結果、開始から30年経たずして北海道のヒグマは激減し、人身被害も大きく減った。その意味で犬飼は目的を達成したことになる。ところが、晩年の彼はヒグマ政策を保護に転換する時が来たと考えていた。1983年に発症した脳梗塞で運動障害、発語障害を抱えつつも研究を続けた犬飼は1985年に発表した共著論文「北海道におけるヒグマの捕獲並びに生息実態について(Ⅱ)」の結論の中で、次のように述べている。“全道的には既にヒトとヒグマとの間に日常の生活圏の上で棲み分けが成立しており、ヒトと自然との調和ある共存という観点から、ヒグマの生息域と個体数は現在より減少させるべきではなく、そのためには年間の捕獲数を300頭に抑制することが望ましいと筆者らは考える。”この当時、北海道でのヒグマ被害は減少しており、生活圏での棲み分けが成立したならば、ヒグマとの共存は可能になったと判断したのだ。この論文の共著者のひとりである門崎允昭氏によれば、この調査結果をみた犬飼は「クマとの共存も夢ではなくなった」と喜び、北海道の森林面積を10%を保護区として残し、最奥人家から2kmの範囲を通年でクマの狩猟を可能とする緩衝地帯に設定することで、人とクマ双方の生活圏を離して共存する方向性を考えていたという。生息数を低く抑える政策から、棲み分けによる共存への転換である。この晩年の犬飼の構想が正しかったかは分からない。犬飼の死後、そのような政策は取られず、検証のしようがないからだ。しかし、現在のクマ問題では、農村地域の過疎化によって、人口密集地とクマの生息域間の緩衝地帯が消滅したことがクマ出没の一因と指摘する専門家は多い。1990年に中止された北海道の春グマ駆除は、今年になって4年間の期間限定で再開されることになった。クマ被害の多発から春グマ駆除に至る過程は、半世紀以上前のそ

(28年クマを撮る写真家が感じた異変:秋田)
秋田市の写真家で、全日本写真連盟秋田中央支部会員の加藤明見さん(75)は今年、たくさんのクマを撮影した。クマを撮りはじめて30年ほど。今年は特に多くのクマと出会ったが、住民の被害も多く、「中長期的な対策が必要」と考えている。加藤さんは1995年からクマを撮っている。草を踏んだ跡や倒れた木の枝といったクマが歩いた痕跡を注意深く確認しながら、撮影する。最も気をつけているのが、こちらが先にクマを見つけ、刺激しないこと。「刺激しなければ、ほとんど普通の状態で、エサを食べている」という。しかし、今年は少し様子が違った。里にいるクマが圧倒的に多く、親子グマを見る機会も多かった。木の上で声を発して威嚇し、イライラしているようなクマも多かったと感じる。秋田市内では5頭の集団を撮影。市内のダム近くでは母親とみられるクマの背中に、子グマ2頭が必死でしがみついている様子も撮った。エサになる植物や木の実が少なければ、来年以降も同じような状況になる可能性もある。加藤さんは「自然の影響が大きい。中長期的な対策が必要」と話す一方、こうも考えている。「身近にたくさんいるが、クマのことをほとんど知らない。人の方の対策が必要。どういう状態の時にどう対応をすればいいか。もう少し知る必要がある」。

(「イノシシなどが出ないように竹の伐採作業」なぜ竹は伸び放題になったのか:宮城)
2019年の台風19号の豪雨被害で甚大な影響を受けた宮城丸森町で27日、東京の大学生らがイノシシなどが出没しないように竹の伐採作業をしました。丸森町の筆甫地区を訪れたのは中央大学の学生18人です。学生らは、川沿いに生えた高さ4mほどの篠竹をノコギリを使って伐採する作業に汗を流しました。篠竹のしげみは、イノシシなどが出没するけもの道にもなっていて、従来は地域住民が伐採をしていましたが、高齢化が進み、竹が伸び放題になっています。学生ボランティア:「僕自身、宮城県出身で、何か宮城に貢献したいなと思っていたので。より自分事というか、自分の町に近いので頑張りたいと思いました」筆甫まちづくりセンター 吉澤武志事務局長:「こうして学生の方々が来てくれることで、地域の活気も生まれてくるのでありがたいです」学生らは、28日は旧筆甫保育所の片付け作業などにあたる予定です。

(「令和5年度鳥獣対策優良活動表彰式」及び「第11回全国鳥獣被害対策サミット」の開催並びに資機材展示等の募集について)
農林水産省は、「令和5年度鳥獣対策優良活動表彰式」を令和6年2月15日(木曜日)に農林水産省本館7階講堂において行います。表彰式は公開で、式典中のカメラ撮影も可能です。併せて、「第11回全国鳥獣被害対策サミット」を開催し、本サミットにおける資機材展示等の出展については、本日から令和6年1月31日(水曜日)17時00分まで募集いたします。農林水産省は、全国の農村地域等において鳥獣被害防止や捕獲した鳥獣の食肉(ジビエ)、ペットフード、皮革等の利活用等に取り組み、地域に貢献している個人及び団体を表彰する「鳥獣対策優良活動表彰」を実施しており、令和5年度の農林水産大臣賞及び農村振興局長賞の表彰式を、令和6年2月15日(木曜日)に農林水産省本館7階講堂において行います。また、15日(木曜日)の表彰式典終了後、鳥獣被害対策に携わる関係者の情報共有の場として、「第11回全国鳥獣被害対策サミット」(以下「サミット」という。)を開催し、受賞者からの取組事例の報告の他、サミットテーマに合わせた全国の取組事例の発表、パネルディスカッションや鳥獣被害対策及び捕獲した鳥獣の利活用(ペットフード、皮革等を含む。以下、「利活用」という)等に係る研究成果、技術情報、製品情報等の取組に係る資機材展示・ポスターセッション・カタログ展示・利活用展示を行います。なお、受賞者につきましては、来年1月下旬頃に改めてお知らせいたします。

(科学者らは「ゾンビジカ病」が人間に広がる可能性があると警告:アメリカ)
昨年米国で数百頭の動物がこの病気に感染したことを受け、科学者らは「ゾンビジカ病」が人間に広がる可能性があると警告した。ワイオミング州のシカ、ヘラジカ、ヘラジカの800標本から慢性消耗病(CWD)が発見され、動物たちはよだれを垂らし、無気力で、ぐったりしており、目がうつろになっている。しかし専門家らは、この病気は「ゆっくりと進行する災害」であると警告し、各国政府に対し、人への感染の可能性に備えるよう求めた。「英国での狂牛病の発生は、人間から家畜への波及事象が一夜にして狂気を引き起こす可能性があるという一例を示した」とCWDの研究者コリー・アンダーソン博士はガーディアン紙に語った。同氏は「同様のことが起こる可能性について話し合っている。確実に起こるとは誰も言っていないが、人々が備えることが重要だ」と述べた。英国では、汚染された肉骨粉を牛に与えた牛海綿状脳炎の発生により、1980年代から1990年代にかけて440万頭の牛が殺された。この病気は通常牛にとって致命的であり、中枢神経系に影響を及ぼし、動物に攻撃的な症状や協調性の欠如をもたらします。 1995年以来、178人の死亡が人間の多様性に起因すると考えられている。Coalition for Public Wildlife によると、2017 年には年間 7,000 頭から 15,000 頭の CWD に感染した動物が人間によって食べられていました。この数字は毎年 20% 増加すると予想されていました。 ウィスコンシン州では、数千人が感染した鹿の肉を食べた可能性があるとアンダーソン博士は述べた。CWD は、環境が一度感染すると根絶するのが非常に困難です。 汚れや表面に何年も耐えられ、消毒剤、ホルムアルデヒド、放射線、600℃ (1,100F) の温度での焼却にも耐性があると科学者は報告しています。これは、米国のバイオテクノロジー企業ギンコ・バイオワークスが、動物から人間に伝染する病気によって、2050年には2020年よりも12倍多くの人が死亡する可能性があると警告した後のことだ。同研究所は、気候変動や森林伐採により、スピルオーバーとして知られる人獣共通感染症の発生が将来的により頻繁になる可能性があると述べた。研究チームの調査によると、1963年から2019年にかけて、感染者数は毎年5%近く増加し、死亡者数は9%増加した。同報告書は、「このような年間増加率が続けば、分析された病原体によって2050年には2020年に比べて4倍の流出事故が発生し、12倍の死者が発生すると予想される」と警告した。

(住宅街に珍客、サルも電線から落ちる!?:京都)
京都市中心部で野生のサルの目撃情報が相次いでいる。26日朝には京都御所(上京区)そばの住宅街で電線や民家の屋根を渡り歩く2頭のサルが見つかった。今のところ人的被害は確認されておらず、市地域自治推進室は「見かけても近づかないで」と注意を呼びかけている。市によると、今月19日に北区の大宮交通公園付近で2頭のサルが目撃された。これ以降、京都府立医大(上京区)や京都市役所(中京区)付近でもサルの目撃情報が複数寄せられるようになった。市は、同じ2頭のサルが住宅街の中を南下してきた、とみている。26日午前7時50分ごろには、京都御苑から約400メートル南の中京区夷川通麩屋町東入ルで、通勤中の男性が頭上の電線をわたるサルを発見し、その様子を動画撮影した。男性は「撮影できたのは1頭だが、サルは2頭いた。電線でこけかけていた」としている。京都市内では年数回、住宅街でのサルの出没があるといい、市の担当者は「数日で山に帰る可能性が高い。見かけても刺激したりせず、そっとしておいて」と話している。

(ふるさと納税でもらえるジビエの返礼品は?)
ふるさと納税の返礼品には、地域の特産品の他にジビエもあります。寄付およびジビエの返礼品をもらうことは自治体や地元農家の支援につながるので、ジビエが好きな方だけでなく地域の獣害問題や社会貢献活動に関心を持っている方にも注目のプロジェクトです。そこでこの記事では、ふるさと納税でもらえるジビエの返礼品や自治体の獣害対策に関する取り組み事例について詳しくご紹介します。獣害対策へ個人で貢献できる方法がないか気になっている方、社会貢献活動へ関心を持っている方などは、参考にしてみてください。ジビエは、フランス語で野生の鳥獣肉を指し、たとえば、野生の熊やイノシシ、シカなどを使った料理は、ジビエ料理となります。国や自治体、農家などでは、獣害対策によって捕獲された野生鳥獣の命を無駄にせず、なおかつ獣害問題をポジティブな方向へ転換できるようジビエやジビエ料理の提供といった取り組みを行っています。私たち生活者にとって返礼品のジビエを美味しく味わうことは、鳥獣の命を無駄にしない取り組みの貢献、獣害被害の間接的な支援につながっています。また、寄付金は地域の街づくりに活用され、幅広く役立ててもらえます。なお、ジビエの品質管理については、農林水産省の国産ジビエ認証制度で定められています。同制度の認証を受けた機関は、約80もの衛生基準に関する審査を通過しているので、客観的に安全性が認められているのが特徴です。ここからは、自治体の獣害対策に関する取り組み事例をいくつか紹介します。岩手県盛岡市猪去地区のツキノワグマ対策。富山県氷見市のイノシシ対策。北海道のエゾシカ対策。岡山県のサル対策。鹿児島県鹿屋市のイノシシ、サル対策。ジビエの返礼品にはさまざまな種類があり、シカやイノシシなどをペットフードに加工されたものやBBQ用に加工されたものなどバラエティ豊かです。以下では、ふるさと納税を通して自治体の取り組みなどを応援できる「ふるさと納税forGood!」より、ふるさと納税でもらえるジビエの返礼品を6つ紹介していきます。ふるさと納税でもらえるジビエの返礼品は、イノシシやシカ、熊などのバラ肉やロース肉、モモ肉などをまとめたセット品やブロック肉単体、BBQセットなどバラエティ豊かな内容です。また、ふるさと納税の寄付金は地域の課題解決などに活用されるので、社会貢献や地域活性化につながる行動といえます。ジビエ料理に関心を持っている方やふるさと納税を通じた社会貢献を行いたい方は、今回紹介した返礼品や自治体の取り組み事例を参考にしながら、ジビエの返礼品について調べてはいかがでしょうか。

(猪ギョーザを“旗揚げ”:静岡)
飲食業のにしはらグループ(三島市)と加工品製造販売やホテル、レストラン経営などを手がける時之栖(御殿場市)が、源頼朝の旗揚げに由来した「頼朝公旗揚げ餃子(ギョーザ)」を共同開発した。県東部の歴史文化資源を生かした商品で、27日に発売した。三島市で7~9月に開かれた商品プラン開発セミナー(静岡県など主催)で、2社と日本大国際関係学部の学生が考案した。伊豆に流された源頼朝が三嶋大社で源氏再興を目指し旗揚げした故事や、頼朝が富士山麓で行った「富士の巻狩り」の大猪(いのしし)退治のエピソードにちなみ、伊豆市産のイノシシ肉を使用したギョーザを新規開発した。イノシシ肉は風味や甘みが豚肉に比べて深い特徴があるという。主張が強いため、飛騨高山のサンショウでうまみや香りをまとめたという。時之栖が持つ「伊豆の国ビール」と特に相性がよく、「頼朝公旗揚げビール」としてラベリングした限定仕様も用意した。にしはらグループの西原洋平社長(42)は「旗揚げで縁起が良く、新年にぴったり」と笑顔を見せ、「県外の人に県東部の魅力を伝えると同時に、地元への恩返しとして活性化に貢献できれば」と期待する。時之栖側の担当者の加藤弘一朗さん(45)は「今後も地域との関わりを重視した企画を展開したい」と話した。時之栖手づくり工房で販売を開始し、「頼朝公旗揚げ餃子」は18個入り税込み千円、「頼朝公旗揚げビール」は330ミリリットルの瓶で1本税込み440円。にしはらグループでは、沼津市と富士宮市の無人販売店でギョーザを、一番亭やかつ銀、ぼて福各店でビールを近く提供開始する予定という。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、27日午前7時50分ごろ、仙台市泉区住吉台東3丁目にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、26日午後2時30分ごろ、仙台市泉区西田中松下にクマが出没しました。

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12/27
(規制や罰則強化盛り込んだ銃刀法の改正案提出の方針)
銃を使った凶悪事件が相次いでいることを受けて、警察庁は、現在の銃刀法で拳銃などを対象に設けられている「発射罪」を、猟銃やその他の銃にも適用することなど、銃をめぐる規制や罰則の強化を盛り込んだ銃刀法の改正案を、来年の通常国会に提出する方針を固めました。現在の銃刀法では「拳銃など」を対象に、法定刑の上限が無期懲役の「発射罪」が設けられています。一方、去年7月、安倍元総理大臣が銃撃された事件では、被告の自宅から拳銃以外の手製の銃が押収されたほか、長野県でことし5月、警察官2人を含む4人が殺害された事件では、「ハーフライフル銃」と呼ばれる猟銃が使われています。銃はその形状にかかわらず、凶悪犯罪に悪用されるおそれがあるとして、警察庁は、従来の「拳銃など」に加え「猟銃」や「空気銃などその他の銃」についても「発射罪」を新たに適用し、人を殺傷する目的でこれらの銃を所持した場合の法定刑も、拳銃などと同じ「懲役1年以上10年以下」に引きあげることにしました。また、インターネットで、銃の製造方法が容易に入手できる現状への対策が必要だとして、銃を製造して所持するようそそのかす内容の投稿を行うことについて、新たに罰則を設けます。警察庁はこうした内容を盛り込んだ銃刀法の改正案を、来年の通常国会に提出する方針で、調整を進めています。

(クマによる被害過去最悪、環境省が対策の検討始める:青森)
クマによる被害が過去最悪となる中、環境省はクマをニホンジカなどと同様に「指定管理鳥獣」として、捕獲などにかかる費用を支援の対象とするかの検討を始めました。環境省のまとめでは、クマに襲われてけがをしたり死亡したりした人はことし4月から11月までで全国で合わせて212人に上り、過去最悪だった2020年度の158人をすでに上回りました。北海道や東北の自治体から、クマをニホンジカやイノシシと同様に「指定管理鳥獣」として国が交付金を出して捕獲などにかかる費用を支援する対象にしてほしいとの要望を受けて、環境省は専門家による検討会を開きました。1回目の26日の検討会では、今年度のクマ被害の分析や対策についての情報共有が行われ、4月はすべてクマの生息地である森林で発生していたが、9月と10月は全国でおよそ40%が住宅の周辺で発生し、被害が多かった東北では特に秋田県で人の生活圏内での被害が多かったことが報告されました。専門家からは、クマのエサとなるどんぐりが全国的に凶作だったが、被害が増えていない地域もあることから地域ごとにどのような対策をしているのか分析するべきだとか、クマの個体数が減って保護が必要な地域もあることから、捕獲の一方で保護についても国の支援を検討すべきではないかといった意見が出ていました。検討会では2月末めどに方針をとりまとめることにしています。青森県によりますと、クマの出没件数は今月20日までに961件に上り、去年の同じ時期の3倍以上に増えています。出没件数のうち、人がクマに襲われた被害は10件、けがをした人数は11人で、統計を取り始めた平成23年以来、これまでで最も多くなりました。このほかクマや足跡などが目撃された件数は739件と去年より460件余り増え、クマによるとみられる農作物の食害の件数は212件と去年より190件余り増えています。県自然保護課は「クマが冬眠に入る時期を迎えてはいるものの、例年、12月以降も目撃情報があるため、引き続き注意してほしい」としています。

(安すぎる「熊出動手当て」に猟友会員が悲鳴)
年間を通して「熊」の話題が取り上げられ、悲しき被害や、あるいは駆除に成功した事例の記事をよく目にする。その一方で、実際に“熊対応”を強いられる人々の事情に耳を傾けてみると……。「さすがに“やってられるか”と思わざるを得ませんよ」。そう話すのは、長野県内で熊の出没対応にあたっている猟友会員である。「私の住む地域では、熊が罠にかかった際などに自治体から連絡が入り、猟友会員でその対応にあたることになっています。ですが、今年の熊の出没数は異常なほど多く、例年の4、5倍くらいのペースで対応を強いられているんです。これまでは一度も熊の出没がなかった年もあったくらいなのに、ここ2、3か月だけで、すでに十数回も出動しているほど。狩猟歴50年以上の大ベテランも『こんなことは今までなかった』と嘆いています」しかし、熊が増えたからといって、対応にあたることのできる人員はごく限られたままなのだという。「もちろん、地域の猟友会員は何人かいるのですが、熊の対応には特別な技術が必要になるので、このエリアで出動するのは、私と、もう一人の先輩を含めて2人だけなんです。ですから、時間帯も休日も問わず要請が舞い込み、その都度対応に向かわざるを得ない状態。しかも、猟友会は高齢化が進む一方、熊対応ができる人材の育成も進んでいないので、さすがにこのままではパンクしてしまうのではと憂慮しています」。熊の増加に、人材不足が重なり、既に現場では悲鳴があがっているようだ。だが、問題はこれだけではないという。「こうして何度も現場に駆り出されながら、自治体から支給される手当てはたったの時給1000円です。熊を捕った場合の報奨金が出るわけでもなく、現場に駆け付けるためのガソリン代が出ることもありませんから、実態としてはほぼボランティア状態ですね。割に合うどころの話ではないですよ」。熊の対応時には、命の危険を感じることもあるそうで、「出動時は、基本的には罠にかかった熊と対面することになります。熊専用の罠の場合はまだ良いのですが、そうではない場合、括りつけられたワイヤーが外れそうになったり、あるいは既に外れかけている状態だったこともあったりして、大事故の一歩手前ということが何度かありました。これだけ命を張っておきながらの『時給1000円』ですから、こう言っては悪いですけど、人を舐めてますよね。北海道や東北など、突出して熊の数が多いところは事情も違うのかもしれませんが、それ以外では、似たような状況なのではないでしょうか」。知られざる現場からの悲鳴――。長野県の担当者に実態を尋ねてみると、「はっきりした原因まではわかっていないものの、今年の熊の目撃数は格段に多く、昨年度と比較して、10月は50頭から156頭に、11月は26頭から117頭にまで増加しています。基本的には山林での目撃ですが、農林業の被害額も大きく、ここ数年は1億円超えが続いています。たしかに、熊対応の担い手を確保することは課題としてとらえていまして、狩猟免許取得の呼びかけや、腕を磨いていただくための研修会の開催などは行っていても、簡単に増やせる状況ではないというのが現状です」。待遇面については、「『活動経費』としての補助金が出ている町村も一部ありますが、実際に熊が出没した際の対応や、それに関する手当てや報奨金については、各市町村の裁量になっています」。ということで、実際にいくつかの市町村に聞いてみると、捕獲等までの一連の対応に数万円を支給するという地域も一部あったものの、多くは「時給1000円」「1回の出動につき3000円」などという似たり寄ったりの状況であった。ある市の担当者からはこんな声も。「出没数が多くなったことで、このような問題が浮き彫りになったように思います。ですが、予算にも関わる話なので、一自治体で簡単に『では手当てを拡充しましょう』というわけにもいかない事情はあります。これを機に、県や国として、何かしらの補助を検討していただけたら、というのが正直なところです」。容易には変わりそうにない実態に、先の猟友会員はこう漏らす。「自分の時給を上げてほしいという話ではありません。技術が必要になるため、担い手を増やすのもあまり現実的ではないのもわかります。だからこそ、限られた人員でも持続的に対応にあたることができるよう、体制や待遇面をもう少し考え直していただくことも必要なのではないでしょうか」。今や熊は大きな社会問題の一つである。現場からの問題提起に耳を傾けなければならないのは、当事者だけではないのかもしれない。

(クリスマスも相次ぐ“クマ出没”、シカが関係?)
寒波が去ったクリスマスのきょう、そしてイブのきのうと、各地でまたクマの出没が相次ぎました。今も、冬眠しないヒグマが確認されている北海道では、「3頭の子グマ」を連れた親子の目撃情報が増加。人への影響を危惧する声が上がっています。寒波の影響で大雪が降った新潟県。新発田市の住宅地では、寒波が去った24日、クマが目撃されました。午前6時15分ごろ、体長50センチほどの子グマが自宅前の道を歩いていくのを見たといいます。新発田市では、12月の目撃は3年ぶり。年末に差し掛かった時期の出没は、珍しいといいます。新潟県は、今年、「クマ出没特別警報」を3年ぶりに発表。当初、11月末だった期限を、1月末まで延長し、この冬、警戒を続けています。今年12月の目撃などは、過去最多の51件に上っています。新潟県鳥獣被害対策支援センター・葉葺久尚副所長「暖冬の影響でクマの冬眠が遅くなる可能性があると専門家に言われていた。冬眠しているクマもいるだろうが、中には、冬眠せずエサをまだ求めているクマもいる可能性。最近、アーバンベアという人里で生活するクマもいるので」。25日も各地でクマが出没。福井市では、駆け付けた警察官が、成獣2頭を目撃しました。年末になっても、冬眠しないクマ。北海道では、去年、札幌市中央区で、大みそかにヒグマの姿や足跡が目撃され、通報が相次ぎました。札幌市 熊対策調整担当・清尾崇係長「年末年始もいつでも出動できるように、電話を持ち歩いている。通報が入れば出勤して現場に行く」。北海道猟友会も警鐘を鳴らしています。北海道猟友会札幌支部防除隊・玉木康雄隊長「クマのエサとなるドングリが今年、不作だった。その影響もあって皮下脂肪を十分、蓄えないと冬眠に入る条件が整わないので、遅れたと危惧している」。北海道猟友会札幌支部の玉木康雄さん。ヒグマが出没した際に、緊急の対応にあたる防除隊の隊長を務めています。この冬、「穴持たず」と呼ばれる、冬眠しないクマが出没することを危惧しています。北海道猟友会札幌支部防除隊・玉木康雄隊長「穴持たずは非常にまれな例で、冬寝ないで越すのは、非常に難しい。ただ冬に生き延びようとするクマがいるとすれば、人間から食べ物を奪取する能力があるか、エゾシカをハンティングする能力があるか、どちらかのクマ」。エゾシカを捕食することで、冬眠せずに冬を越すクマが現れる恐れがあるといいます。24日、猟友会のメンバーは、急増するエゾシカを駆除するため、札幌市内の森へ―北海道猟友会札幌支部防除隊・玉木康雄隊長「食物連鎖の頂点のクマのエサになっている可能性もあるので、エゾシカの頭数を減らすことは必要」。エゾシカを狙うヒグマ…。根室市では、今年10月、シカを飼育する養鹿場にクマが侵入。北海道猟友会札幌支部防除隊・玉木康雄隊長「(クマが)冬の間にタンパク質やカロリーを摂取しようとすれば、当然、シカを仕留めなければ冬には生息できない。シカが増殖すればクマが摂取できる栄養源として考えられる」。ヒグマはどのようにエゾシカを捕まえているのでしょうか。これは今年8月、北海道の北部で撮影されたドローンの映像です。ヒグマが猛スピードでエゾシカの親子を追いかけています。早稲田大学 野生動物生態学研究室・風間健太郎准教授「鳥を目的に撮影していたが、後から映像を見返すとシカをかなりの速度で追いかけるヒグマが映っていた。かなり驚いた」。その後、あぜ道に出ると、シカの親子は二手に分かれて逃走。ヒグマは分かれ道で立ち止まり、親を追いかけるもその差は開き、捕まえられなかったようです。ヒグマがシカを捕まえるのは容易ではありません。北海道大学大学院 獣医学研究院・下鶴倫人准教授「シカが多いところでシカの数を減らす狩猟活動とか、有害捕殺の活動が盛んになればなるほど、その地域周辺にシカの死体が落ちている可能性が高まる。それを利用するヒグマも一定数、現れる」。さらに、今年は、ヒグマをめぐって、新たな懸念が―北海道猟友会札幌支部防除隊・玉木康雄隊長「実は、一番私が懸念しているのは、3頭連れの母グマが市街地近辺で目撃されたこと」。札幌市では、今年、3頭の子グマを連れたクマが出没。子グマ3頭が、生ごみをあさる姿が目撃されました。ヒグマは、冬眠中に1頭か2頭を生むことが多いとされるなか、3頭子グマの目撃が相次ぎ、人への被害拡大が懸念されています。北海道東部・興部町(おこっぺちょう)の住宅近くの山で、10月に撮影された映像です。母グマが、3頭の子グマを連れています。こちらは、2021年10月の映像です。背こすりする母グマの周りには、子グマ。1頭、2頭… 遅れて、3頭目がやってきます。自動カメラで撮影した写真家の黒澤さんは、これらの映像から、あることに気が付きます。写真家・黒澤徹也さん「親の肩に白い部分が同じ場所にあるので、おそらく同じ親じゃないかと」。肩の模様が似ていることから、母グマは同一個体であると、黒澤さんは推測しています。写真家・黒澤徹也さん「2年後にまた三つ子を産んだという感じじゃないかと。母グマが栄養状態が良くないと3頭は産めないと思う」「シカの死骸とか、食べるものには困っていない感じ。映るヒグマは丸々と太っている」。そもそも、ヒグマは、一度に、3頭産むことがあるものの、栄養が不足していると、その数が少なくなるといいます。北海道大学大学院 獣医学研究院・下鶴倫人准教授「例えば栄養状態が悪いと受精卵が体に吸収されて、本来3つあった受精卵のうち、1つが体に吸収されて2頭しか産まないことは起こりうる」。「3頭連れ」が目撃されていることと、クマがシカを食べていることは関係しているのでしょうか?北海道大学大学院 獣医学研究院・下鶴倫人准教授「シカに限らず、栄養状態が良ければ産んだ子の生存率が高まる可能性がある」。子グマが増えることで、今後も、人への被害が出る恐れがあると、猟友会は、注意を呼びかけています。北海道猟友会札幌支部防除隊・玉木康雄隊長「市街地近辺に巣穴を作るので、当然、そういうところに、子グマが出てくる確率が増えた。年明けの2月くらいに冬眠穴から母グマが出てくるが、母グマが子グマの周りに接近しようとしている人間を襲うリスクがある状況だと覚えてほしい」。

(身近に迫るクマ、私たちはどう向き合う?:北海道)
12月1日、北海道羅臼町に設置されたカメラの映像です。ヒグマがにおいを付け存在を示す「背こすり」をしています。木にはクマの爪でひっかかれた跡や毛がついていました。(中標津猟友会羅臼支部 桜井憲二さん)「ここはクマの通り道で足跡がいっぱいつく。俗にいう『獣道』ですよ」。カメラを設置したのが羅臼町の漁師で猟友会に所属する桜井憲二さんです。地元にはどんなクマがいて、どんな行動をしているのか。桜井さんが住む町内会ではクマの生態を把握しようと、春から冬にかけ、町内の数か所にカメラを設置し、観察しているといいます。桜井さんたちが仕掛けたカメラには先ほどのような「背こすり」や木登りをするクマ。時には地面に腰を下ろしてじっとする様子も。川の近くに設置されたカメラには川岸を歩いたり、水の中を歩くクマも映っています。ほかにも親子とみられるクマなど、桜井さんが確認したところ、全部で7、8頭の個体が映っていたということです。中標津猟友会羅臼支部 桜井憲二さん)「(カメラは)7、8年前からつけていたけど、年々増えてきましたよね。前は1、2頭だったのが頻繁に映るようになった。クマと人との距離がめちゃくちゃ近い」。桜井さんが言うように、道内では年々クマの出没が増えていて、私たちの日常生活にも影響を及ぼしています。北海道内では市街地にも出没し、住宅の庭を歩いたり、札幌市でも、住宅の庭でクマが草を食べる様子がみられました。痛ましい事故も起きました。ことし5月、釣りの名所でもある幌加内町・朱鞠内湖で、釣りに来ていた男性がクマに襲われ死亡しました。10月には道南の福島町・大千軒岳で、登山をしていた北大生と消防士が、それぞれ同じクマに襲われ、北大生が死亡しました。クマのニュースでは「OSO18」の駆除も大きな話題となりました。道東の標茶町などで、4年前から60頭以上の牛を襲い、通称「忍者グマ」とも呼ばれたOSO18は今年の流行語にも選ばれるほど。一方、北海道では、冬眠するはずの12月に入っても市街地でのクマの出没が続いています。今、自然環境で何が起きているのか。私たちはどうクマと向き合っていけばいいのでしょうか。振り返って見るとクマのニュースの多さが目を引いた1年でした。北海道内の今年1年のクマによる人身事故は5月の幌加内町朱鞠内湖と、10月の福島町大千軒岳の事故で2人が亡くなっているほか、7人の方が負傷しています。また8月には2019年から道東地方で66頭もの乳牛を襲っていた「OSO18」が駆除されたというニュースもありました。道警に寄せられたクマに関する目撃情報や痕跡の通報を表したグラフではことしが異例の多さだということがわかります。なぜこれほどクマの出没が多かったのかでしょうか。2023年の新語・流行語のトップテンにはクマに関する用語が選ばれました。授賞式に登壇したのは「アーバンベア」という本の著者でクマの研究で知られる酪農学園大学・佐藤喜和教授です。(授賞式での佐藤教授)「こういう言葉が少しでも流行しないように、研究者としてできる限りのことをしたいと思っています」。流行語になるほどクマの話題が多かった理由について佐藤教授は―酪農学園大学 佐藤喜和教授)「年々増え続ける傾向にはあるが、その中で特に突出して多かった理由は秋のエサ不足と言うか、木の実の不作・凶作傾向が北海道内でも広くあった」「やはり1990年代以降クマの生息数が徐々に回復をして、それに伴って分布が人の生活圏の近い方まで広がってきている」「人の生活圏の近くで定着してきたクマたちというのが、人の存在とか人間社会のさまざまなものに慣れてきている。それほど身近に音や気配を感じても怖がらず生活できるようになっているというようなことが影響している」。Q12月に入ってからもクマの出没が多い印象だが、冬眠に入っていないのか?「基本的には北海道のヒグマの場合は12月、今ごろから下旬にかけて、かなり個体差はあるが、どんどん冬眠に入っていると思う」「今年のように秋の木の実が少なくて、森にエサが少ないのであれば、早い段階で冬眠に入ってしまうだろうと思う」「いっぽうで最近のように雪が少なく、いつまでも森の中で地面まで見えている状況が、去年もそうだが、ことしも同じような状況になっている。そうすると地面に落ちた木の実などがいつまでたっても見つけられるような状況なので、エサさえあれば冬眠に入るのが遅くなるかもしれない」。(授賞式での佐藤教授)「人に慣れ、増え続けるクマに対し、佐藤教授は対策の見直しを訴えています。単なるクマ問題と問題を問題を矮小せず適切な予算と専門人材の育成をお願いしたい」。佐藤教授はこれまでのクマ対策では不十分な段階に来ていると話します。(酪農学園大学 佐藤喜和教授)「何かあった時にだけ対応できる仕組みはやっぱりもう不十分で、日頃からいつでも備えておいて、そういった問題が起きないような対策をしていく」「そう考えると、日常の中で、例えば大雨、台風、地震、津波に備える地域防災のような考え方で、ハザードマップを作ったりとか日常的にモニタリングをして異変があった時にはすぐに対応できるような準備をしたり、本当に地域防災としてクマに強い地域づくり、クマが進入できない街づくりというのを進めていく。そのための予算と人を配置するっていうことが何よりも大事だと思う」。ことしのクマに関する話題でいいますと、駆除をしたハンターや自治体への苦情が相次いでいることについてこの番組でも取り上げました。佐藤教授は「クマとは共存できない」「クマを駆除しないで欲しい」という極端な考えの間に答えがあると話しています。人間側がクマが出て来ないような街づくりをしっかりした上で、出てきたクマに対しては駆除をしますよ、ときちんと説明できるような状況にすることが大事だと話しています。そして市民もクマ対策は行政がやることと他人事の意識ではなく正しい知識を持って正しく恐れる、もしもの時にどう行動できるかについて考えてほしいということです。

(2023年…全国各地でクマ被害)
全国各地でクマによる人への被害が相次いだ2023年。各地で出没し、連日、全国ニュースで報道されてきた。人々の関心も高く、SNSにも熊にまつわる情報が集まった。動物の骨を扱う専門店を営む男性は、鋭く湾曲した形のクマの爪が5つ並ぶ写真を投稿。「雑菌だらけのこんな爪でヤル気満々のクマにぶん殴られりゃ致命傷だわな」と綴り、クマの恐ろしさを伝えた。また、実際にクマに襲われた様子を投稿した人も。注目のクマに関するニュースを振り返ります。10月下旬にSNSに投稿された1枚の写真が話題になっています。写真には鋭く湾曲した形のクマの爪が5つ並んでおり、見た人たちは「エグすぎる」「クマの映像よりリアルで怖い」「爪だけで凶器」「クマを駆除するなと言ってる人、向こうはこんな爪で襲ってくるんですよ」などと恐怖におののいています。「雑菌だらけのこんな爪でヤル気満々のクマにぶん殴られりゃ致命傷だわな」と投稿したのは、動物の骨専門ブランド「galvanic」を20年以上運営する「骨オヤジ」さん(@honeoyaji)。クマの駆除に反対する声があることを知り、「こんな爪を持つ生き物が生活圏内に来たら、悲しいけれど駆除はしょうがないという自分の考えを伝えるために」と投稿に踏み切りました。爪はツキノワグマとヒグマと、海外に生息していたシロクマのものだそう。こんな鋭い爪で人間が襲われると、どうなるのか。石川県の公式ホームページの中にわかりやすい解説がありました。「クマによる人身被害の傷は顔面が多く、クマの爪、または牙で顔面の皮(皮膚と筋肉)がめくられたり、眼球がえぐられて失明するなどの重症を受けることがあります」(石川県「Q&Aクマとどうつきあうか?」から引用)。クマを駆除した際、必ずと言っていいほど上がる「麻酔銃で捕獲できなかったのか」というご意見。そんな中、タレントのデヴィ夫人が「アメリカでは、クマを麻酔銃で捕獲し、沢山の果物などの食物をつけて山に帰してあげます」とインスタグラムに投稿し、「いろいろ勉強不足のコメント」「すさまじくのんきなご意見だ」と批判が相次ぎました。デヴィ夫人が唱える麻酔銃で捕獲して山に帰するというやり方はどこまで現実的なのでしょうか。ミリタリー系のイラストや漫画を描いているX名・ねんまつたろう(@KITASAN1231)さんは以前、麻酔銃の理想と現実を漫画にして話題になりました。【麻酔銃の現実】・麻酔銃は動物に薬をうてる資格のある人(基本的に獣医師)しか撃つことができない。動く熊を撃つ訓練をしたことがある獣医師は少ない・射程距離はピストル型で15m、ライフル型で40m、連発はできない・命中しても効果が出るまで時間がかかる・当たりどころによっては効果が出ない。熊が興奮するリスクもある人とクマとの関係は、もちろん「共存」できればそれに越したことはない。しかし現実に被害が続出し人命が奪われている以上、放置するわけにはいきません。ねんまつたろうさんは「生命を大切にしてほしいという思いで電話をしていると思うので、その気持ち自体は大切なことだと思います。ただ、麻酔銃や駆除、現場の実態について少しでも正しい知識を持ってほしいと思います」と話しています。熊に襲われたリアルな動画も話題になりました。入山許可を得て、岩手県内の山に入ったのは、X名・原生林の熊(@tennen6606)さん。山菜や天然きのこ、ジビエなどを加工・販売する工房を経営する原生林の熊さんは、朝から旬の「天然舞茸」などを収穫しながら、YouTube用の動画を撮影していました。笹藪に向かって突如、「おいこらっ!こらぁーっ!」と、大声をあげる原生林の熊さん。その直後、薮の中から突然現れた黒い影が、ものすごい速度で襲いかかりました。凄まじい速さと力で原生林の熊さんの腕に噛みつき、さらに鋭い爪を太ももに突き刺した黒い影の正体は「熊」。想像を超える熊の攻撃力に驚くコメントが殺到しました。原生林の熊さんは当時の心境ををこう話しています。「何が起こってるのかわからないほど、ツキノワグマの動きは早いです。熊に遭遇したのはあの時が初めてでしたが、日頃から、もし熊に襲われる!と思ったら逃げても間に合わないので闘おう、と決めて入山していました。背を向けて弱みを見せれば確実に後ろからアタックされますから。今回致命傷を負わなかったのは、熊に背を向けず、倒されなかったことが大きいです」。

(「冬眠しないクマ」専門家も驚く:広島)
例年12月には”冬眠”するクマ。しかし今年は専門家も驚く動きを見せています。全国各地でクマの出没が相次いだ今年…。県内では住宅地でも度々目撃されたほか、廿日市市内では防犯カメラに姿が捉えられていました。また、広島市安佐動物公園では野生のツキノワグマの親子が出没し園の一部を封鎖する事態に…。そうした”脅威”は例年”冬眠している”はずの12月に入ってからも続いています。北海道では痩せたメスのクマが雪の中を走り回る姿が…。冬眠前に十分に食べられておらず人里に出てきたとみられています。石川県白山市ではクマに襲われ男女3人がケガをしました。県内でも例年12月には冬眠するため数は少なくなっていますが…。”エサ不足”の影響か、これまであまり目撃されていなかったエリアに出没…。【広島修道大学人間環境学部・奥田圭准教授】「クマのサイズが大きいのとそこまでガリガリの個体ではないので、栄養状態がいいクマなのかなというのをみてとれる。この時期は基本的に冬眠の時期に入るので今年は例年にない状況になっているというのは確かなのかなと思う」。庄原市には現時点で今月、7件の目撃情報などが寄せられています。一方、呉市仁方本町でも24日午前、体長1m50cmほどのクマとみられる動物の姿が目撃されました。呉市によるとこの地域での目撃情報はこれまでほとんどなく、25日朝から猟友会とともにクマを探しましたが痕跡も見つかりませんでした。一方、近くでは体の黒いイノシシが生息していることが確認されました。【奥田准教授】「東北のほうでもまだクマがでるという状況ですので、西日本のほうではさらに長くなることが考えられるので、年明けもしくは2月まで入り込むのも十分に考えられる」。Q:冬眠をしない可能性も?「そういうクマももしかしたら出てくる可能性というものも考慮していかないといけないと思う」。

(ヒグマ被害相次ぐ、捕獲の社会的合意形成を:北海道)
「本当にオソなのか?」。知人のハンター誰しもが驚いていた。8月下旬、2019年から乳牛66頭を襲った雄ヒグマ「オソ18」が、1カ月前の7月30日に釧路町で駆除されていたことが分かったからだ。オソとは知らない同町職員が、町内の牧草地にいたところを数十メートルの距離で撃ったという。わなにも待ち伏せにもかからず、「忍者」と呼ばれたイメージとは、かけ離れた最期だった。

(ツキノワグマ目撃、県内でも増加:山口)
今年は全国でクマによる人身被害が相次ぎ、山口県内でもツキノワグマが多く目撃された。県自然保護課によると2023年度は、県内での目撃情報(痕跡、捕獲含む)と捕獲頭数が、いずれも過去2番目に多かった。特に県東部の岩国、周南市で秋に目立った。人身被害は出ていないが、クマは里山まで行動範囲を広げているようだ。県によると、23年度は今月22日までの目撃情報が421件に上り、52頭が捕獲された。市町別では、目撃、捕獲いずれも最多が岩国市で、185件と32頭だった。次いで周南市が73件、14頭。目撃は両市で県内全体の6割、捕獲は9割近くを占めた。これまであまり見られなかった光市や柳井市でも目撃された。岩国市によると10日現在、同市美和町の目撃情報が99件で、2022年度の33件から3倍になった。特に多かった10、11月は特産の岸根(がんね)栗の収穫期で、生産者たちは警戒しながら作業した。市地域おこし協力隊員の沖野修吾さん(54)が岸根栗の苗木を育てる畑そばでもクマが目撃された。沖野さんは「常に周囲に注意を払っていた」と明かした。美和町では中国新聞が10月下旬、クマの自動撮影に成功した。クマよけスプレーなどを準備し、山に入ってセットしたカメラ近くの木には、爪痕が残っていた。目撃や捕獲が相次いだ周南市鹿野地区では10、11月に2度、県がクマの出没警報を出した。トタン壁が壊された民家もあった。市は、鹿野地区の柿の木の数と被害本数の調査に着手。今後、職員が所有者を訪問し、木の伐採や、クマが木に登れないよう木の幹にトタンを巻くことを助言する。クマに遭遇したときの対処法を学ぶ研修会も始めた。市鹿野総合支所の福本英生産業土木課長(57)は「収穫した野菜や生ごみなど餌になるものを身近に置かないよう、住民に協力を求めていきたい」と継続的に対応していく考えを示している。また、県西部に多かったニホンジカは頭数を増やし、東部でもたびたび出没するようになった。10月下旬には、岩国市特産である岩国れんこんのハス田一帯で雄1頭が複数の人に目撃された。海に近い市街地周辺で出没するのは珍しく、市や岩国署が警戒に当たった。イノシシ、サル、外来種のヌートリア…。さまざまな野生動物が生息域を広げ、里に迫っては人や農林業に害を与えている。野生動物とどう向き合い、共生の道を探っていくのか。山間部に暮らす人だけでなく、多くの人があらためて考える年となった。

(クマ出没を想定し訓練:北海道)
北海道・浦河警察署は26日、クマが出没した時を想定した対応訓練を実施しました。この訓練は浦河警察署や役場職員、ハンターなど20人が参加し、ことし9月に実際にクマが出没した浦河町スケートリンクの敷地内で実施されました。訓練では、警察が規制する範囲や住民への呼びかけ、場所に応じてどのようにクマを追い払うかなど、対処方法とそれぞれの役割を確認することが目的です。警察はパネルに書いたクマを、パトカー3台を使ってクラクションを鳴らしながら川の方に追い込むなど、猟友会の意見を聞きながら確認しました。浦河警察署管内のクマの目撃件数は12月25日までで41件となり、去年の23件から2倍近くに増えています。警察は「役場などと意識を共有することができた。今後の対応に生かしていきたい」としています。

(猟師の担い手増やそう、市が初の体験会:兵庫)
兵庫県丹波篠山市はこのほど、狩猟に関心のある市民を対象にした初めての「狩猟体験会」を、泊まれる学校おくも村(同市中)などで行った。同市猟友会の協力で、参加者は同施設近くの山へ入り、銃猟の様子を間近で見学。昼食にシカ肉のジビエ料理に舌鼓を打った後、猟師から実際の活動や暮らしぶりなどを聞いた。同市は、市猟友会から推薦を受けた猟師を「鳥獣被害対策実施隊」に任命し、有害捕獲活動を行っている。今後の体制強化のために、より多くの人に関わってもらうきっかけをつくり、担い手を増やそうと企画した。参加者は4つのグループに分かれ、猟犬を従えた猟友会員の後に付き、山へ入った。猟犬がシカを追い込み、猟師が待ち伏せするポイントで見学。シカ1頭を仕留める瞬間が見られたグループもあった。同施設に戻り、市の担当課が獣害対策の取り組みや同実施隊制度、市の支援制度などを説明。また、元同市地域おこし協力隊で、若手猟師の長井拓馬さん(33)が猟師になったきっかけなどを語った。長井さんは、「自分は農業が主体だが、農業をするには農業ができる環境がいる。農業にも影響する山の荒廃を防ぐために、お金を得ながら猟をしたり、木を切ったりしながら環境を整えることを一つの仕事と捉えている」などと話した。また、車座になり、猟友会員に気軽に質問できる場も設けられた。宝塚市から参加した男性(63)は、「猟友会のチームワークは見事だった。農業も含めて里山の暮らしに関心があり、狩猟がにわか体験できる、数少ない機会だと思い参加した。猟をする人が減っているという背景にも触れることができた」と話していた。

(クマの住宅街への侵入防止の電気柵整備に町が“緊急”クラウドファンディング:北海道)
今年、北海道内ではクマの目撃や出没が相次ぎましたが、知床半島の羅臼町も例外ではありません。「過去に例がない異常事態」に緊急のクラウドファンディングを始めました。羅臼町内のクマの目撃件数は、今年は6月以降、急速に増え始め、月別で平年の2倍から9倍に迫る、正に異常事態です。来年に向けて、クマを住宅地に出さないための有効な対策は、人が住む住宅地とクマのエリアを隔てる「電気柵」です。しかし、9年前に整備した「電気柵」は老朽化が激しく、全面改修が必要。さらに、維持管理の費用もかかります。また、羅臼町の住宅地は、海岸線に沿って細長いため、電気柵も長い距離になってしまうのです。羅臼町産業創生課 田澤道広さん「夏場はこの柵に電気の線が並行して通る。電気柵は唯一のクマと人を隔てるモノだと思っていて、管理さえ行き届けば(柵が)張っているところは(クマは)ほぼ出なくなる」。羅臼町は、電気柵の整備のため、今月15日からクラウドファンディングを始めました。すべての寄付がふるさと納税の対象になり、寄付額に応じて、羅臼町の海産物や特産品などがもらえます。羅臼町産業創生課 田澤道広さん「クマに労力もお金もつかっているんだというところと、人の生活がありクマとの共存が大きな課題になっているところを全国のみなさんに知っていただきたい」。6000万円の目標に対し、集まった寄付は、25日現在、およそ800万円。クマとの共存に向けた羅臼町のクラウドファンディングは、来年3月14日まで募集しています。

(長野立てこもり事件から7ヶ月)
地方の有力者の長男として生まれ、両親に溺愛されて何不自由なく育ったはずの青年は、ためらいなく4人を惨殺する無慈悲な殺人鬼になった。長野県中野市で今年5月、散歩中の女性2人が狩猟用ナイフで刺殺され、さらにパトカーで駆けつけた警官2人が猟銃で撃たれて殉職した事件の爪痕は、いまだ生々しい。現職の市議会議長(事件後に市議を辞職)を父に、果樹園やジェラート店を営むやり手経営者を母に持つ、気難しいボンボン息子が起こした深みも背景もない凶悪なだけの事件が、今も地域をじわじわと苦しめている。4人を殺害後、自宅に12時間籠城し、その後、身柄を拘束された青木政憲容疑者(32)は8月から約3カ月間にわたって鑑定留置された。そして長野地検は11月16日、責任能力があるとして4人に対する殺人罪などで起訴した。起訴状などによると青木被告は5月25日夕方、自宅前の路上を散歩中だった近くに住む村上幸枝さん(当時66歳)と竹内靖子さん(同70歳)の2人を刃物で殺害。さらに通報で駆けつけた長野県警中野署地域課の池内卓夫警部(同61歳)と玉井良樹警視(同46歳)=ともに2階級特進=の2人をパトカーの内外で銃や刃物を使って殺害したとされる。使用したのは「スラッグ弾」と呼ばれる殺傷能力の高い銃弾で、刃物も「ボウイナイフ」と呼ばれる大型の狩猟用だった。県警の調べに、女性2人については直接の面識はないとしながら、ふだんから孤独感を募らせていたところ事件当日に「『(ひとり)ぼっち』と言われたように聞こえ、恨みを爆発させた」と動機を供述していた。女性2人の遺族は、事件後半年を契機に弁護士を通じて以下のコメント(一部を抜粋)を出した。11月25日で事件から半年が経ちます。時間だけが無情に過ぎていく一方で、私たちの気持ちは一歩も前に進むことはなく、会いたくて、会いたくて、涙が溢れ止まらなくなることがあります。できることなら、事件前の平穏だったあの頃に戻りたい。せめて一度でもいいから会いたい。でも、もうそれも叶いません。私たち遺族の心の傷は癒えるどころか、大切な家族の命を奪った被告人への怒りや憎しみは増すばかりです。どんな言い訳を並べようと、絶対に許すことはできません〉(村上幸枝さんの遺族)。〈朝起きれば朝食が用意されており一緒に食べ、畑に一緒に行って作物を作ったりしていました。何げない日々でしたがこのような形で妻・母を失い何げない日々がとても幸せだったと思います〉(竹内靖子さんの遺族)。遺族が哀しみのコメントを出してから1カ月が経つが、凄惨な事件現場の「青木家」の周囲には、いまなお規制線が張られていた。田園地帯にポツンと建っている家はまったく人の気配がしないが、荒れ放題というわけではなく誰かが手入れを行っているようだ。近くに住む女性は困惑を隠せない。「事件後、政憲くんのご両親はどこか別のところで生活しているみたいです。たまに自宅に帰ってきて草刈りをしたり、家から荷物を運び出しているようですが、どこで何をやっているのかは知りません。ジェラート屋の方は店名も変わり、噂ではオーナーも変わったと聞いています。ご両親が2人で自宅に帰ってきたところを見かけたことはありますが、こちらから声をかけていいものかもわからず、挨拶はできませんでした」。青木被告の母親の親族も、痛々しい様子だった。「事件の後は誰とも連絡はとってないんだ。10年以上前に政憲のおばあちゃんが亡くなったとき、葬儀で会ったのが最後でずっと話もしてなかった。だから、何があったのかなんてまったくわからない。政憲のことは報道で鑑定留置も終わったって見た。もう諦めてるんだよ。4人も…、あれだけの事件を起こしたんだ。もう諦めている…」。青木家の古くからの知人にとっても、事件は青天の霹靂だった。 「政憲が事件を起こしてから本当に世界は180度変わってしまったと思っています。私は昔から政憲もその両親も知っています。もちろん一番つらいのは遺族の方たちですし、一番に大切にしないといけません。しかし政憲のしたことは被害者やその遺族だけでなく、加害者の親族も苦しめています。母親は事件のあった夕方の時間帯になるとフラッシュバックのようなことが起こり、いまだに眠れぬ夜を過ごしています。通院を続けていて、精神的にも追い込まれています」。青木被告は自宅で籠城していたとき、自殺するために母親を利用しようとしたという。「政憲がうつぶせになって、『ここを撃てばいい。ここを撃てば必ず死ねる』と母親を促したそうです。でも『私には撃つことがどうしてもできなかった』と母親は言っていました。母親が息子を撃つなんて……そんなことできるはずないですよね。事件を起こすまで、母親は政憲が特別な孤独感を募らせていることにまでは気づいてなかったように思います。ふだん対人関係がうまくいかない政憲を心配はしていましたが、それは親なら誰もが心配することで、まさかあんなことをするなんて夢にも思っていなかったはずです」。知人から見た青木被告は、両親の操り人形というわけではなかったという。「政憲は母親の経営するジェラート屋も手伝っていて、とても研究熱心に働いていました。寡黙でしたが、私にとってはいい子でした。母親は『政憲が抱えていたものになぜ気づけなかったのか』と自分をずっと責めていて、自分の親族たちにも迷惑がかかることを恐れて、どこで生活しているのか居場所も告げていません。事件後、私が最後に見たときも驚くほど痩せてしまって、今にも死んでしまうのではないかと心配になるほどでした。両親ともに今は働いたり、ジェラート屋などはやっていないと思います。政憲のお父さんも事件後、市議を辞めましたが、それは妻を1人にしておけないという理由もあったと思います。政憲の家が裕福だ、名士だと好き勝手報じられていますが、私が知る限りはジェラート屋も借金がまだあったし、お金持ちではありませんよ」。両親も親族も知人も、4人の命を瞬時に奪うほどの「動機」が思い当たらないのだという。知人が続ける。「当人しかわからないと思いますよ。でも政憲は弁護人にすら自分のことを話さず、弁護人も困っていると聞いています。弁護士が今の政憲の唯一の味方なのに。自暴自棄になっているのか、いったい何を考えているのか……。何があってあんな大きな事件を起こしてしまったのかは本人にしかわからないわけですから。政憲のしたことを考えれば……極刑……でしょうね。政憲の両親は月命日に遺族の方のもとに謝罪に行き、手紙を渡そうとしているそうですが受けて入れてもらってないと聞いています。遺族の方々の気持ちを考えればそれは当然のことだと思います。これは事件が起きてから初めて実感したことですが、本当に全員が苦しむ。被害者遺族の方々をはじめ、加害者家族も……」。幼いころから成績優秀で、野球などの部活動にも打ち込み、高校も地域で1番の名門校に進んだものの、大学進学後に人間関係でつまずき中退、帰郷後は農業に活路を見出していた青年。挫折というほどの挫折も経験していないように見える青木被告の半生に、いったいどんな闇があったのか。それが法廷でつぶさに明らかにされない限り、犠牲者の魂は彷徨い続けることになる。

(房総野生探訪記:千葉)
9月の中旬、狩りを生業にしているある若者に会いに千葉県君津市の山間へ向かった。車を走らせるだけで、その地域は限界集落だということを肌で感じるほどのどかな景色が広がっていた。ポツリポツリとしか人家は見当たらず、畑では一匹の白やぎが草を食んでいる。エンジンをやや吹かし気味に急な坂道を上ると、大きな平家の一軒家が現れた。築200年にもなるという古民家の玄関には「狩人の会」という筆で書かれた看板が掛けられている。広々とした敷地には無造作に獣の骨が置かれていたりと、どこか秘密基地のような雰囲気を感じた。「狩人の会は東京大学の狩猟サークルで、猟期中に活動するときの拠点場所です。もともと東大の農業系サークルが富津市を拠点にボランティア活動をしていて、狩り部にも拠点がほしいよね、って話していたら空き家を斡旋してもらえて2018年から借りています。猟期にはサークルの現役に限らずOB・OGも泊まり込みで猟をしています」。語ってくれたのは、サークルの立ち上げメンバーである小林義信さん。東京大学在学中から、房総半島へと移り住んだ若きハンターだ。「昔からサバイバルや自給自足に興味があって、自分で食べるものは自分でとりたいっていう考えがあったんです」。小学生のときに手にした『冒険手帳』という本をきっかけに、ロープワークなど、さまざまなサバイバル術を実践していく小林さん。彼の人生に大きな影響を与えることになったのは、中学2年生のときに体験した東日本大震災だった。住んでいた街のインフラが機能しなくなった日常に無力さを感じ、生きる知恵を身の回りから本格的に学び始めた。身近にある雑草や山菜を食べることに始まり、両生類や爬虫類にもチャレンジ。食べられるものはなんでも食べてみたと語る。「カエルとか。山椒魚は数が少ないんで捕らないほうがいいですけど…トカゲやヘビとかですね。もちろん昆虫も食べてました。クワガタは腹の部分しか食べるところがないですけど、セミが一番ですね。茹でても焼いてもいいし」。生きるために食べることへの執着を続ける小林さんは、鳥類・哺乳類を次の捕獲ターゲットにしたときにある壁にぶつかった。「調べたら免許が必要で。網とわな猟は18歳からで、鉄砲は20歳からじゃないと取れないんで、大学に入るまで準備して待つことにしたんです」。東大を目指した理由を聞くとこう答えてくれた。「中学、高校と陸上の中距離をやっていて、高校二年生のときに関東大会に出場しました。けど高校三年生のときに疲労骨折などもあってインターハイに行けなくて。もともと北海道大学を目指していたんですが、部活の不完全燃焼から大学はもうちょっと上を目指そうと思って、東京大学に志望を変えました」。2016年、一浪の末に念願の東京大学合格を果たす。だが狩猟を行おうにもツテもコネもなく、他大学の狩猟サークルへと連絡を取ってみるが、なしのつぶて。小林さんは4人の仲間で「狩人の会」を立ち上げることを決めた。網猟、わな猟、そして鉄砲と一つずつ目標に向かって狩猟免許を取得していく小林さんが捕獲した念願の獲物は、わな猟で獲れた雌鹿だった。2018年初めのことだ。「アドレナリンがすごく体の内から湧き出て、生きているって感じでしたね」。周囲は官僚や企業へと卒業後の進路を決めるなか、迷いなく狩猟の道を選んだという。「在学中から野生動物管理の仕事を行っていたので、このままいけそうだなと。人生一回だけだから、冒険したいなって思って」口元を緩めながら小林さんは少しだけ熱っぽく語ってくれた。

(房総野生探訪記:千葉)
快晴の秋晴れといった天気ではあったが、10月にしては少し汗ばむほどの気温だった。この日、私は2度目の訪問となった。実は前回9月に訪れたとき、早朝から半日ほど君津の山々に仕掛けた罠を小林さんと見回ったのだが残念ながら獲物の姿を見ることはできず、再訪を約束し東京へと戻ったのだった。お互いのタイミングがなかなか合わず、前回から三週間が経とうとしていた頃だった。前日の撮影が長引いてしまい体調も万全ではなかったが、朝の9時半ごろに鳴った携帯で目が覚めた。「狸と猪が獲れているのですが如何しますか?」待ちに待った捕獲報告のLINEが届いた。すぐさま、本人へと連絡をすると、捕獲場所は館山のほうなので止め刺し(放血)を終えた状態でよければ君津の古民家で落ち合いましょうとのこと。仕留める瞬間を撮りおさめたいという欲求と、このタイミングを逃すと次はいつになるのかわからないという不安との間で葛藤したが、迷いを断ち切りカーシェアを房総半島へと走らせた。前回同様にアクアラインを通り東京湾を渡る。都心を背に、前方には青々とした山が見えてきた。東京から1時間ほどで景色が様変わりする感覚に心が躍る。気負うことなく旅をするこの距離感は少しクセになりそうだ。古民家に到着したのはお昼を過ぎた頃で、小林さんは獲れたばかりの猪をシャワーで洗っているところだった。「15キロぐらいですね。今年生まれたての、うり模様が消えたぐらいの猪です」暑さで肉が痛みやすいらしく、すぐに解体が始まった。先っぽに返しがついたガットナイフを使いながら、腹へ切れ目を入れていく。ほんの数時間まで生きていた猪の内臓を取り出しながら、部位の説明をしてくれる。「これが胆嚢です。鹿にはないんですよ。若いけどレバーはそんな綺麗じゃないですね」ジャッジャッジャッと胸骨を切る音がリズミカルに鳴る。解体作業を眺めていると、不思議といつからか美味しそうな肉として見ている自分に気がつく。「冬のいい個体だったら脂がのっているんですけど、脂があるのはバラの部分だけですね」小林さんは僅かな脂でも取りこぼさないように丁寧に皮を剥いでいく。1時間ほどで猪は獣から鮮やかな赤みと薄い脂を纏った肉の塊へと変わった。今日はまだ君津の罠の確認ができていないとのことで、休む暇もなく愛犬のアンズと共に軽トラに乗り込み出発した。猟期外は、君津では鉄砲をもちいた捕獲を行わないため、わなで獲物を獲る。罠を仕掛ける場所は人里近い裏山のような場所が比較的多い。猪や鹿などに田畑を荒らされて困っている農家が多いらしく、民家の敷地を通って山へと入ることもある。害獣の種類は、鹿、猪、キョン、アライグマ、狸とラインナップも豊富だ。獣の足跡を探し、けもの道を見極めながら罠を仕掛けていく。「くくり罠」と呼ばれる罠は、獣が踏み板を踏むと一瞬でワイヤーが縮まり、獣の足を捕らえる仕組みになっている。罠の周囲に枝を置きながら、餌となる米糠を撒いていく。これは、けもの道上に仕掛ける通常の捕獲法とは違い、「小林式誘引捕獲」と呼ばれる森林管理署の方が発案した方法だ。箱罠という大きなゲージの罠にも米糠を撒き、獣を誘うために細かな仕掛けを施すが、今回はゲージの網目からすり抜けてしまう狸に場を荒らされてしまったらしい。狸以外にもアライグマ・アナグマ・鳥類など色々な動物が荒らすこともあり、人間と獣の駆け引きにはかなりの根気が必要なようだ。屋久島犬の猟犬、アンズは楽しそうに縦横無尽に山林を駆け回る。時折吠えているのは獲物がいることを知らせているのだという。「最近一番楽しいのは犬とやる、一銃一狗(いちじゅういっく)ですね。犬が匂いをとって、獣を見つけて吠えて追い立てたり、その場所まで人間を案内してくれる。そこで鉄砲で撃つというのが最高に興奮しますね。罠だと一人で完結しちゃうけど、犬と一緒なら喜び合えるし。山だと人間よりも犬の方がすごく役に立つんですよ」小林さんはアンズの話になると父親のような表情で饒舌になる。私も少しでも小林さんの役に立てればと思いつつ、必死に山の斜面に目を凝らしながら獣道を探していると、突然茂みからガサガサッと音がした。人の気配を察したのか、鹿の群れが一斉に走り去っていった。人家から10メートルぐらいしか離れていない場所だが房総半島は生き物が豊かな場所だということを実感させられた。

(テレ朝『林修』番組、2重の重大ミスの原因)
テレビ朝日はバラエティ番組『林修の今知りたいでしょ!』の番組ホームページ上に突然、「東京大学名誉教授・樋口広芳様のご見解を誤って放送した件について」と題するお詫び文を発表した。何があったのだろうか。長年、日本テレビ報道局記者兼ドキュメンタリー番組ディレクターとしてテレビ局の報道畑を中心に番組制作の現場に携わってきた上智大学の水島宏明教授に検証してもらう。同番組は知的バラエティ番組だ。ふだん教える側にいる予備校講師・林修が生徒役に回って他のタレントたちと一緒に、さまざまな分野の講師たちによる授業を受けるという設定だ。博覧強記で知られる林でも実際には知らないことがある。そのギャップがお笑いのポイントで、視聴者は楽しみながら専門的な知識を学ぶことができるという仕組みだ。問題になったのは11月23日(木)放送回。2.5時間に拡大してのスペシャル番組で「今身近に迫る危機!衝撃映像ミステリー62連発」として、地球環境の変化でクマやイノシシなどの野生動物が住宅街に出没するなど生態域が拡大している問題などを取り上げた。万一クマに遭遇した場合に自分の身を守る方法など、いざという場合の対処のヒントになる情報がたくさん紹介され、映像からわかることは何かを一種のクイズ形式で展開していく番組だ。今回謝罪の対象になった場面のテーマは「カラス」だった。このコーナーに登場した講師は東京大学名誉教授の樋口広芳氏。鳥類研究の第一人者でリモートでの出演だった。カラスの生態を観察して記録したさまざまな映像が出てきた。たとえば公園などにある水飲み場でカラスがくちばしを使って蛇口の栓をひねって水を出して飲んだり、水を大量に出して体中に水浴びをしたりする様子が出てくる。透明のプラスチックの筒の中にカラスの餌を入れておいて、カラスがどうするかを観察していると、長い棒を筒の中に押し込んでエサを外に押し出してから食べるなど、人間と同じように「道具を使う」という生態が描かれていた。鳥類のなかでも学習能力が高いというカラスの生態を伝えていた。樋口氏も「カラスは鳥類約1万種のなかダントツに賢い。相当な学習能力や認識能力、記憶力があるのは確か」だと説明する。このカラスのコーナーの冒頭で樋口氏がカラスの冬の生態について説明する部分がある。「樋口先生によると、冬は寒さをしのぐために群をつくる集団生活期。『集団ねぐら』をつくり、身の寄せ合って過ごすのだそう」というナレーションや樋口氏の発言音声が放送された。この「寒さをしのぐために群をつくる」というナレーションが誤りであることを樋口氏から指摘されたことが「お詫び」の背景にあるようだ。番組のHPに掲載された文章は以下のようになっている。<「カラスはなぜ、冬に大きな集団を形成するのか?」の理由として、番組では「樋口先生によると、冬は寒さをしのぐために群れを作る集団生活期。集団ねぐらを作り、身を寄せ合って過ごす」と放送しました。しかし、樋口教授から理由としてお伺いしたご見解は、「外敵がやってくることをたくさんの目で見ていち早く察知するため」 「どこに食べ物があるかをたくさんの目で見つけるため」でした。また、樋口教授によれば「そもそも『冬は寒さをしのぐために群れを作る集団生活期。集団ねぐらを作り、身を寄せ合って過ごす』という内容は、誤りです。カラスはそのような目的で集まるのではありませんし、寒さをしのぐために身を寄せ合って過ごすということもありません。カラスは群れて木にとまっているような時でも、個体同士がくっつき合うことはなく、ある間隔を保っている。」とのことです。番組側が誤った理解の上で放送し、しかも樋口教授の主張として紹介するという二重の大きな過ちを犯してしまいました>。その上で、以下のように謝罪している。<樋口教授が発言していない内容を、樋口教授のご見解として紹介するという番組側の重大な間違いにより、この分野を長きにわたりご研究されてきた樋口教授の名誉を著しく傷つけたことを深く謝罪いたします>。流れを見る限り、樋口氏の生の言葉をナレーションに置き換えた際の誤解が原因のミスだ。では、なぜこうしたミスが起きてしまったのだろうか。こうした大型の番組になればなるほど、細かい点でのファクトチェックが求められる。樋口氏のような専門家の言葉をナレーションにして書き直す場合には、その原稿を樋口氏本人に送って、前後も含めて「確認」してもらう、というのがこうした番組を制作する際の鉄則である。できればVTR全体を見せた上で確認してもらうことが望ましい。なかなかナレーション原稿のチェックだけでは自分が伝えたかったことが番組にきちんと反映されているのかどうかはわからないことが多いからだ。ニュアンスが伝わらないこともある。事前にこの「確認」をしなかったのか。あるいは、確認における「ミス」があったのだろう。こうした厳密な事実の確認が必要な番組は、かなり細かい部分まで「分業」が進んでいて、多くの場合はその部分だけを担当するディレクターやアシスタントディレクターなどに委ねられている。その担当者が少しでも「面倒だ」と思い確認を怠ってしまうと、今回のようなミスが起きてしまうことがある。番組のエンドクレジットを見ると、ディレクター13人でアシスタントディレクターが9人という大所帯の制作スタッフだ。大半が制作会社のスタッフで、テレビ朝日の社員プロデューサーと制作会社のプロデューサーの計3人がチェックする体制になっている。こうした体制だと報告・連絡・相談の「ほうれんそう」が日頃からできていないと大きなミスやトラブルに発展しかねない。さまざまな専門家たちの研究成果を活用しながら制作する知的な情報バラエティ番組は、いつになってもニーズが大きい。それだけに事実を扱う際の確認は慎重にならなければならない。少しでも手を抜いてしまうと大変な事態を引き起こしてしまう。今回は「事実確認」でミスが生じたというケースだが、過去には2007年に放送された関西テレビ制作の『発掘!あるある大事典Ⅱ』で組織的なねつ造が発覚し、番組そのものが打ち切りになり、関西テレビが日本民間放送連盟から一時は除名になるなど、局全体や放送業界全体を揺るがす大きな問題に発展したケースもある。番組制作にかかわる人たちは「事実を確認する」ことの大切さを肝に銘じてほしい。

(「いただきます」は「あなたの命をいただいて生きていきます」)
SDGs達成期限の2030年に向けた新たな価値観、生き方を語る今回の賢者は猟師の黒田未来雄氏。北海道に暮らし、狩猟を行いながら、自然と人間が共生するライフスタイルを実践。命に向き合う生き方を執筆や講演、狩猟に同行するツアーなどを通して伝えている。その経歴は異色。大学卒業後、商社に就職。しかし、4年後NHKに転職し、自然をテーマにした番組のディレクターに。北海道への転勤を機に狩猟を開始。そして2023年8月、24年間勤めたNHKを退職して、猟師に転身した。賢者には「わたしのスタイル2030」と題して、話すテーマをSDGs17の項目の中から選んでもらう。――黒田さんは何番でしょうか?猟師 黒田未来雄氏:15番、「陸の豊かさも守ろう」です。――この実現に向けた提言をお願いします。黒田未来雄氏:「人間よ謙虚であれ」。――猟師とはどういう仕事なのですか。黒田未来雄氏:猟師は職業として獣を獲って生活をするというのが第一義だと思うのですが、僕の場合は生計を立てるための手段というよりも、自分自身の生き方として狩猟採集を生活の根本に置きたいと思っていて、自分の食べる肉を自分で獲っていきたいと考えて暮らしています。――どんなところに住んでいるんですか。黒田未来雄氏:実は僕は東京生まれの東京育ちで、今年北海道に移住したばっかりです。今トイレも水道もないんですけど、もちろんこれからできますが、そういう中で3か月ぐらいずっとリフォームを大工さんと一緒にやりながらそこで暮らしている。――東京生まれの東京育ちで大変じゃないですか。黒田未来雄氏:僕の師匠は(カナダ・ユーコン準州の)ターギッシュ/クリンギット族という部族で、野生動物に対して礼を尽くして、きちんと解体してきちんとそれを喜びに変換して、村のみんなに分けてというその世界がすごく美しくて、自分もそういうふうになりたいなと思っていたんです。たまたま仕事で北海道に転勤になって、札幌に6年間いたんですが、転勤してすぐに狩猟の免許を取って、そこからはクリンギット族の教えに基づきながら自分でも狩猟を始めて、やっぱりこれだと。それで会社を辞めて北海道に移住しました。――最初に生き物を撃ったときはどうだったんですか。黒田未来雄氏:最初に撃ったのはメスのシカだったんですが、わかりやすく言うと感謝しかなかったです。ありがとうございます。あなたをいただきますっていう。ふっと立っているだけでシカってものすごく美しいんです。すごく神々しいというか。マイナス20度、30度になる北海道の冬を、笹の葉っぱとか木の皮だけでもかじりながら生きていく力はあるんです。僕らなんかすぐ死ぬじゃないですか、裸一貫で冬山に入ったら。それだけ強くて美しい生き物を自分が食べて、自分が命を長らえるんであれば、彼らに対して絶対恥じるようなことだったり、彼らを辱めるような人生を送っちゃいけないという覚悟も生まれるんです。肉を食べるってこういうことなんだなっていう。単にタンパク質を摂取するということではなくて、責任感や覚悟が生まれてくる。そういう力が湧く。撃って、シカはそこで息絶えるじゃないですか。多分そのシカは痛かっただろうし、意識を失っていく間は苦しいと思うんです。それをありがとうとちゃんと感謝をして全部解体して、僕が肉を背負って10~20メートル行くと、鳥たちが降りてきて、できるだけきれいに解体するんですが、残っているカスみたいなものを食べるんです。キツネがそこに突っ込んできてキツネも食べて。シカだったものが一瞬でワシになって空を飛ぶし、キツネになってまた雪原を駆けているんです。一つの苦しみがこれだけ多くの喜び、これだけ多くの命にあっという間に鮮やかに変換していくんだなと。リアルタイムでそれを見ているとき、輪廻転生みたいなものを実感して。――そういう命のやり取りから生まれてくるものをできるだけ多くの方に伝えたいということでしょうか。黒田未来雄氏:食べるってことはみんなするわけじゃないですか。皆さん「いただきます」ってもちろん言いますよね。命をいただきますという意味だと思うんですが、一体自分が感謝をしている命って何なの?というところが、スーパーでお肉を買っているだけだと本当のところは見えてこないんです。「いただきます」っていう言葉は「あなたをいただきます」、「その力をいただいて、私はそれで生きて行きます」っていうことなんだと皆さんに感じていただければ。1回しっかり感じていただけると相当世の中が変わってくるんじゃないかなと思うんです。そういうことを伝えていきたいなと思っています。――私たちはどんなところに謙虚さを失っていると感じますか。黒田未来雄氏:SDGsの言葉自体「陸の豊かさも守ろう」っていう。いや守られているのはこっちの方でしょう。陸を守りましょうっていうのは、ちょっと上から目線な言葉に聞こえてしまう。山の中でシカやクマを追うと、自分がどれだけ無力な存在かということをひたすら体感するんです。彼らがブワッと走って逃げていくところも僕はズボッとゆっくりしか歩けないし、山の中に入ると彼らには何一つかなわないです。自然をコントロールするとか自然を守るという意識はもちろん大事ですが、かといってすぐ変わるものでもないですし、もうちょっと根底的な意識の改革というか、本当に謙虚になることが一番大事だなと思います。――会社を辞めるのを止められましたか。黒田未来雄氏:テレビ局を辞めるときも、もったいないってすごく言われました。僕にとっては自分の人生のこれからの限られた時間をそのポストでいる方がよっぽどもったいなくて、今の方がいいです。たくさん稼いでたくさん消費してという、ライフスタイルに慣れすぎちゃっているというか。そうじゃないやり方がたくさんあって、それはその人が自分の一番心地いいやり方を選べばいいんじゃないかなと思います。――以前は物々交換の世界が存在していた。黒田未来雄氏:「人間よ謙虚であれ」というのも、人間としての常識は狩猟採集民族として何十万年やってきた。農業が1万年前に始まり、貨幣経済が始まったのはごく最近じゃないですか、人類史から見ると。そんなものはなくても20何万年、ホモサピエンスはずっと幸せに生きてきたわけです。一つの目線でこれが常識でしょうみたいになってしまうと、いろんなものがおかしくなってきて、今自然のバランスが大きく崩れてきている。例えば駆除の問題があります。農業被害額は北海道で年間40億を超えているんです。農家さんもせっかく育てたものが食べられちゃう。コントロールするためにシカをある程度駆除しなくちゃいけないっていう問題が今起きているんです。駆除せざるを得ない状況をどう思われますか。――駆除すべきだと思います。黒田未来雄氏:そうすると、地球上で一番増えすぎている種って何なんだろうと僕は思うんです。1950年代は25億匹だったのが、2050年には100億匹になろうとしている種がいるんです。その種は地球の環境をものすごい勢いで変えていって、いろんな動物を絶滅させている。問題になっている種は本当にエゾジカなんですか、それは人間でしょうっていう。人間の論理で例えば経済という観点から見て、シカを悪者だとか駆除すべきだ、コントロールしようという考え方や行動自体が、僕から見るとちょっと切ない。「人間よ謙虚であれ」というのはそういうことなんです。――「わたしのサステナ・ライフ」ということで、ずっと続けたいと思う趣味や日課を教えてください。黒田未来雄氏:趣味で生け花をやっておりまして。――4年前から始めた生け花は、人に教えることができる資格を持つほど。黒田流の生け花とは?黒田未来雄氏:自分で生ける花も自分で採ってきたいという願望があるんです。山に入って、何百本か何千本だかわからないですけど、そういう木の中から1本いただいて。命を扱っているという意味では狩猟と近しいものがあると思っていて、逆に、僕にとってはシカを撃つよりもカタクリの花を1本摘む方が倫理的な割り切りが難しいような気がしているんです。シカは自分が食べるために撃って、それを食べないと自分の命を継続できない。食べるという大義名分があるんですが、花を生けるということにおいてそこまでの大義名分が。家に花が飾ってなかったとしても死ぬわけじゃないですから。美を表現するということは、花の命を奪ってまでそれをやっていいのだろうかみたいな葛藤があったりもするんです。――シカも黒田さんもカタクリの花も生き物としては同じ存在ということですか。黒田未来雄氏:そうですね。それでも、花を生けていく。そこまでしてもやっぱりこういう表現がしたかったんだなと思っていただけるような美しさみたいなものを表現できて初めていい花を生けたなって思えるんじゃないかなと。全然僕はまだそんな境地に行っていないんですが、いつか花にありがとう、ごめんね、でも、こんなにきれいに生けたけたよって言えるような花を生けるのが夢です。

(猟師が獲物でアクセサリーを作るワケ:静岡)
シカやキジでつくったアクサリーを山の展望休憩所で販売している猟師がいる。値札はついていない。猟師と客がその場で話しあって値段を決める。猟師は妹の死をきっかけにアクセサリーづくりを始めたという。静岡市葵区の山間部、通称「オクシズ」。この場所に小さな展望休憩所がある。県内外からの観光客や地元の人など多い日には、1日約600人が訪れる。休憩所では静岡おでんやラーメンなど食事も提供していて、客からは「おいしい」と喜ばれている。客と会話を楽しんでいるのは猟師の岡本直也さん(35)。5年前、静岡市葵区の市街地からこの地に移住してきた。「不便を楽しむ」がモットーの岡本さんは、電気が止まったらロウソクを焚いてその雰囲気を楽しみ、水が止まれば水場を直して楽しみながら生活している。岡本さんは移住後、新型コロナなどの影響で休業が続いていたこの休憩所の運営を、地元の人たちの後押しもあって引き継ぎ、2023年で3年目を迎える。休憩所にはシカの角で作ったネックレスやキジの羽をあしらったピアスなど、岡本さんが制作したこだわりのアクセサリーが並ぶ。ニスは塗らず、紙やすりや研磨でつやを出す。シカやキジは農作物に被害をもたらす有害鳥獣として駆除の対象に指定されている。販売されているアクセサリーには値段がついていない。岡本さんと客が会話をしながら商品に合った価格を決めて、お互いが合意した金額で売買されるそうだ。休憩所を営業する傍ら、岡本さんは猟師でもある。この日、仲間とともに険しい山道を進むこと約10分。岡本さんは何かを感じた様子。木々が生い茂る急斜面にシカの気配。さらに歩みを進めると、そこには半分だけ残された葉っぱが…。「シカが柔らかい先の部分だけ食べて半分残していく。だからこの辺はシカが通って食べた後」と岡本さんは教えてくれた。捕獲した有害鳥獣はそのまま埋められてしまうことが多いものの、岡本さんは有効に活用したいと考えている。アクセサリー作りではシカの角を切り出し、やすりを使って自然なつやを出すまで1週間ほどかかる。岡本さんは「親指がけんしょう炎になりそうなぐらい痛くなる。私の思い入れがすごく強いので、お客さんが本当に気に入って連れて帰ってもらえるのが一番うれしい」と笑顔で話していた。岡本さんが狩猟に興味を持ち始めたのは17歳の頃。最初は鷹狩りをしていたが、鷹が獲物を捕る姿に惚れ、自分で獲物を捕る狩猟を始めた。そして獲物から作品を制作するようになった。本さんが22歳の時、人生を変える大きな出来事があった。妹を病気で亡くしたのだ。亡くなるまで岡本さんも両親も、妹が回復して普通の生活に戻れると思っていた。だから両親から「最期になるかもしれないから一緒に旅行に行こう」と言われても、岡本さんは行かなかった。猟師・岡本直也さん:妹が亡くなった時にすごく後悔しました。なんでもっとたくさん話をして、たくさん思い出を作れなかったのか…。妹のゆりかさんは20歳でこの世を去った。そして、岡本さんの命への考え方が変わった瞬間でもあった。その後、駆除された動物の肉や骨をしっかり活用していこうと考えるようになり、アクセサリー作りを始めた。猟師・岡本直也さん:こと人間に関しては亡くなってしまってからではどうしようもできないんですよね。想いを募らせることしかできない。(動物は)捕る前は、どういう生活していたか把握できないけれど、捕った後は何があったか自分がわかっている。だからこそ最大限に利用してあげたい。「命を無駄にしない」が岡本さんの信念だ。そして狩猟について多くの人に知ってもらいたいと考えている。岡本さんは「今の狩猟の環境がどういうもので、どういう現実があるのかを知ってもらえるだけで満足です。それが一番うれしい。感謝の一言に尽きる」と話す。命を大切する取り組みはまだ始まったばかりだ。岡本さんは今後 野生動物の解体処理施設を作り、ジビエ料理も提供していきたいと考えている。

(民家の敷地にクマ2頭、エアコン室外機の上に:福井)
25日午前4時半ごろ、福井市美山地区の民家の敷地内にクマ2頭が出没しました。雪が降る季節になっても冬眠しないクマたちに住民から不安の声が聞かれました。市などによりますと、住民から「獣が争っているような音がする。クマかもしれない」と警察に通報があったもので、警察官が駆け付けたところ、体長1メートルほどのクマ2頭がいたということです。けが人はいませんでした。県によりますと、暖冬の影響で例年よりも冬眠が遅れているとみられ、12月のクマの出没は21日時点で46頭に上り、過去5年で最多となっています。雪が降ると冬眠するクマが多くはなるものの、活動を続けるクマもいることから、市は生ごみを外に置かないなど、クマを寄せ付けない行動を呼び掛けています。

(クマを自宅前の道路で目撃:新潟)
新潟県新発田市で24日朝、クマの目撃情報がありました。警察がパトロールなどをして警戒を強めています。警察によりますと、24日午前6時20分に、「クマ1頭(体長約0.5メートル)が自宅前の道路にいます」と新発田市上中山の住人から通報がありました。クマはその後、立ち去ったということです。警察は市役所と連携して、近くの住人に注意を呼び掛けるとともに、パトロールなどを実施して警戒を強めています。

(民家敷地内の柿の木に登る子グマ:山形)
24日午後、山形県飯豊町の民家の敷地内でクマ1頭が目撃されました。警察によりますと、きのう午後1時10分ごろ、飯豊町椿で、民家の敷地内にある柿の木に登るクマ1頭を、近くに住む女性が目撃しました。クマは体長およそ60センチの子グマで、その後、民家の北側にある杉林に移動したということです。今のところ、人的・物的な被害は確認されていません。警察では、子グマが目撃された場合は近くに親グマがいる可能性もあることから、パトカーを出し、付近住民に注意を呼びかけています。

(ロケット型の害獣駆除ロボ:京都)
2023年12月18日、電動ロボ・モビリティ開発メーカーの「テムザック」が多機能型農業ロボット「雷鳥2号」の開発を発表した。まるで某TV番組に登場するメカのように見えるが、雷鳥3号も放水ノズルが特徴的だ。テムザックは、電動モビリティや産業用ロボットの開発・製造を行うサービスロボットメーカー。医療用のシミュレーター用ロボット、災害用レスキューロボット、馬乗り型の斬新な電動車椅子など、人間の役に立つロボットを幅広いジャンルでラインナップしている。とくに、電動車椅子「RODEM」は、その個性的な見た目と機能性から、病院に導入されたり、日本橋の観光ツアー用モビリティとして採用されているため、街中で見かけたことがある人もいるかもしれない。「雷鳥2号」は、各種アタッチメントを付け替えることで、耕起、収穫など従来の機械にはない機動的な動作を完全電動で行うことができる、多機能型農業ロボット。名前、デザイン面の両方でイギリスの某人気テレビ番組に登場するメカを意識しているのかも知れないが、残念なことに秘密基地から発進して飛行したり、交換可能なコンテナを搭載することはできないようである。ただし、脚部のアタッチメントをつけるとそれっぽく見え、しかも4輪を独立して動作させることで、前後移動・横移動・その場旋廻といった動きが可能になる機能性も備える。将来的には完全自律走行および群れ化による更なる省力化をめざしているそうだ。また、小型サイズであるため、耕作放棄が懸念される小規模な圃場や不整形の条件不利農地での稼働が期待されており、2023年12月15日に宮崎県延岡市の圃場にて、二番穂の刈り取りを実施し、収穫作業に活用できることが確認されている。「雷鳥3号」は、稲作をはじめ農業において大きな問題となっている、イノシシなどの害獣対策として、夜間に圃場に侵入した害獣を検知し、高圧で対象物に向けて放水を行うことで、害獣を圃場から追い払う効果を狙っている害獣駆除ロボットだ。対象物を自動的に検知し対象物に向けて放水するため、夜間の圃場の見回りや遠隔監視など、人手をかけた対策を行う必要がなくなるそうだ。こちらのロボットも例に漏れず、ナニかを模したデザインをしているが、ロケットではないので宇宙ステーションとドッキングすることはできない。「雷鳥2号」、「雷鳥3号」があるなら、もちろん「雷鳥1号」にも期待が膨らむものだが、なぜか「雷鳥1号」だけはそのエッセンスが全くない”普通の農業用ロボ”として開発されている。「雷鳥1号」は、水田における雑草抑制と遠隔監視を行うロボットで、水を攪拌して泥を巻き上げることで光合成を妨ぎ、雑草の生育を抑える機能を備えた「自律航行型のα版」と、離れた場所からカメラ映像を見ながら遠隔操作し、水田の様子を確認可能な「遠隔操作型のβ版」の2種類がある。水面を移動するという本機の性質上、ロケット型にできなかっただけなのか、はたまた「雷鳥1号」は真面目に開発していたが、「雷鳥2号」以降の開発時に「雷=サンダー、鳥=バード」だからという文字遊びで、デザインを寄せに行ったのか真相は不明だが、世間の注目を集めるという意味では効果はあるだろう。もっとも、日本語の「雷鳥」は英語だと「ptarmigan(ターミガン)」であり、「Thunderbird(サンダーバード)」は、ネイティブアメリカンに伝わる「伝説の生物」のことを指している。実在する"雷鳥"のように、実在する「雷鳥2号」と「雷鳥3号」も、農業のレスキュー分野で活躍を見せて欲しいものだ。

(侵入防止柵「イノシシガードシリーズ」:鹿児島)
アムザス株式会社(本社:鹿児島県出水郡長島町、代表:大戸留美)はイノシシの習性を研究しつくした新開発の侵入防止柵「イノシシガードシリーズ」を2023年12月26日に発売いたします。 自社ほ場へのイノシシ侵入被害の経験から考案した「非完全固定」タイプの侵入防止柵で、2021年には特許を取得いたしました。また、2022年には鹿児島県発注トライアル製品にも採択されております。 「イノシシガードシリーズ」はイノシシの習性を研究しつくした新開発の侵入防止柵です。農家やゴルフ場管理者、道路管理者を悩ますイノシシ被害。最近は住宅街で子供たちを襲う被害も・・・。既存の侵入防止柵では破壊や潜り抜けに改善の余地がありました。     イノシシの被害実績がある自社のじゃがいも農地で長年にわたる実証研究の末、「非完全固定」タイプの侵入防止柵(イノシシガードシリーズ)の製品化に成功。さらに特許も取得。もうイノシシのやりたい放題にはさせない。これからは、頭を悩ますのはイノシシの番だ!

(「常陸国天然まがも」県が新ブランド創設:茨城)
この時季、茨城県内には全国で最も多く野生のマガモが飛来する。生産量全国一のレンコン農家はマガモによる食害に悩むが、捕獲数は少ない。県は捕獲数を増やすとともに新たな特産食材として売り出そうと、新ブランド「常陸国(ひたちのくに)天然まがも」を創設した。マガモは高級食材で知られ、狩猟者、食肉処理施設、飲食店が連携し誘客につなげる狙いだ。県庁で11月末にブランド名のお披露目があり、料理を提供する県内7店の料理人をはじめ猟友会員、食肉処理業者らが集まった。大井川和彦知事には、フランス料理店「ル・ポワロン」(水戸市)のオーナーシェフ野沢昌史さんが手がけた料理が振る舞われた。稲敷市で捕獲されたマガモの雄と雌を使い、胸肉はローストし、もも肉と砂肝は低温の油で煮る伝統的な調理法「コンフィ」に。ソースはマガモのエキスとフォンドボーを合わせた。知事は「肉にすごくうまみがあってアイガモとは全然違う。雄と雌で味が違ってどちらもおいしい。これなら自信を持ってプロモーションできる」と満足げ。野沢さんは「マガモは香りが良く、雄は少し硬いがかみしめると味わいがあり、雌は軟らかく繊細」と説明した。食肉処理業者は各店に1羽4千円、さばいて骨などを取った胸肉は1キロ当たり6千円で販売する。担当者によると、他の鳥獣肉と比べ「圧倒的に高級品」だ。和食店「よし町(ちょう)」(土浦市)社長で料理人の木村英明さんは炭火焼きや、もも肉のミンチとキノコでしんじょにして椀(わん)物で提供するという。7店は今月以降、マガモ料理のメニューフェアを実施する。新ブランドは、県内で11月15日~翌年2月15日の狩猟期間に、伝統的な網猟で捕獲されたマガモが対象。味が良いうえ、期間限定という希少性もあるが、県ではこれまで捕獲数が少なく流通量は限られていた。環境省の調査では、マガモは昨年、県内に全国最多の5万433羽が飛来。2位の新潟県は3万3720羽。この10年間の平均でも県の5万1689羽に対し新潟は4万1555羽だ。マガモは冬に県内では霞ケ浦に多く飛来する。霞ケ浦周辺はレンコンの主産地で冬は収穫の最盛期。レンコンを食べるマガモやカルガモなどは、生産農家にとっては迷惑な存在だ。レンコンは節が4~5個連なり、1個でも食べられると商品として出荷できないという。2022年度の県内の全農作物被害額のうち、カモ類による被害は約1億6500万円で全体の46・2%を占め、その大部分がレンコン被害だ。一方、県によると、捕獲数は新潟県が最近10年間の平均で1万4千羽余に対し、県は4千羽余にとどまる。県内では網による狩猟者が少ないことが主な理由。このため今季は新ブランドの取り組みに参加する7店にのみ提供される。ある猟友会員は「これまでは自家消費か、友だちに分けていた。新たに販路ができたことは大きい」と喜ぶ。レンコン農家も、ブランド化による捕獲数増加に期待する。県の担当者は「ぜひ茨城に来て、マガモを味わっていただきたい」とPRする。メニューフェアの詳細は、県内の食と農林水産物を紹介するホームページ「茨城をたべよう」で。

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12/25
(手製銃や猟銃、悪用防止へ規制強化)
相次ぐ銃による凶悪犯罪を受け、警察庁は手製銃や猟銃の悪用防止を念頭に銃刀法の罰則や規制を強化する方針を固めた。インターネット上に銃の自作動画などを投稿する行為も、不法所持をあおる内容を伴えば刑事罰の対象とする。2024年の通常国会への同法改正案の提出を目指し、調整を進める。新たな対策は安倍晋三元首相の銃撃事件や、5月に長野県中野市で4人が殺害された事件を踏まえた。大きな柱が元首相の事件で使用された手製銃への対応強化だ。現行の銃刀法は、公共の場所などでの発射罪(無期または3年以上の懲役)を適用する場合、使用された銃が同法の規定する「拳銃等」に該当する必要がある。手製の銃は形状などによっては拳銃等に当たらない恐れがある。実際、元首相銃撃事件で山上徹也被告(43)=殺人罪などで起訴=の自宅などから押収された手製銃7丁のうち1丁は拳銃等に該当しなかった。改正案は手製銃などを念頭に発射罪の対象を拡大し、拳銃等に当たらない猟銃や装薬銃砲、空気銃といった銃砲を新たに加える。これらの銃について、人の殺傷などを目的に所持すれば拳銃等と同様に「1年以上10年以下の懲役」を科す方向で検討している。悪質なネット投稿にも罰則を新たに設ける。ネット上には銃の自作方法を解説する動画などが散在し、山上被告も銃や火薬を自作する際にネット情報を参考にしたとされる。製造方法の提示のみで違法とするのは「表現行為の規制につながりかねずハードルが高い」(警察幹部)ため、併せて銃の自作を呼びかけるなど不法所持をあおったり、そそのかしたりした場合に適用する想定だ。警察庁はサイバーパトロールを強化しており、2月中旬から民間団体を通じてサイト側に削除を依頼する情報の対象に爆発物や銃器の製造、拳銃などの譲渡に関する情報を加えた。11月末までに18件の削除を依頼。うち12件が実際に削除された。こうした取り組みも進める。所持を許可されている猟銃の悪用対策も強める。警察庁によると、許可猟銃は22年に全国で15万728丁。長野の事件で4人に対する殺人罪などで起訴された男も「狩猟」などの用途で、計4丁の猟銃などの所持許可を受けていた。うち1丁のハーフライフルが犯行で使用されたが、いずれの用途でも2年以上使われていない時期があった。本来の用途で長く使用されていない銃について、警察は事故防止などの観点から所有者に自主返納を指導してきたが、事件の教訓も踏まえ規制を強める。所持許可の取り消し要件となる未使用期間を「3年以上」から「2年以上」に縮める。犯行に使われたハーフライフルに関しても、より厳しい許可基準が適用されるようライフル銃の定義を見直す。立正大の小宮信夫教授(犯罪学)はネット上の銃の自作動画などに対応する法改正は「一定の抑止力につながる」としつつ「犯行の予兆把握や爆発物の原材料購入者の本人確認強化など、多層的なアプローチで対策を進めていくことが重要だ」と話している。

(「クマ対策に役立てて」、匿名の寄付5000万円で基金:秋田)
秋田県鹿角市議会は22日、「クマ対策に役立てて」と市に匿名で寄付された5000万円をもとに市が提出した有害鳥獣被害防止対策基金設置条例案を可決した。関厚市長は「多額の寄付をいただき、大変ありがたい。クマをはじめとする有害鳥獣被害対策に大切に使わせていただく」とコメントした。同県では今年5月以降、ツキノワグマによる被害が多発し、クマ出没警報を発令中。同市農地林務課によると、市内での目撃・被害通報件数は11月末現在、前年度を186件上回る311件に上る。人身事故は同9件多い11件を数えており、市は10月に緊急対策本部を設置して啓発活動や捕獲に追われている。

(伊勢原射撃場が停電で業務停止:神奈川)
神奈川県は21日、指定管理施設の伊勢原射撃場(伊勢原市上粕屋)内で倒木による停電があり、業務を停止したと発表した。県によると、同日午前11時ごろ、射撃場内で倒木とともに電柱が倒れて停電が発生。復旧作業が完了し業務環境が整い次第、再開する。倒木で利用者にけが人などはいなかったという。

(わなにかかったイノシシが暴れてワイヤーが切断、確認に出向いた85歳の男性猟友会員が足などを噛まれけが:長野)
長野県上松町で22日朝、85歳の猟友会員の男性がイノシシに襲われ、けがをしました。軽傷とみられています。22日午前7時ごろ、上松町のJR上松駅からおよそ4キロ西側の山林で、85歳の猟友会員の男性がイノシシ1頭に襲われました。男性は、両足や片方の手をかまれ、軽傷とみられています。男性が猟友会の仲間と一緒に「くくりわな」と呼ばれるワイヤー製のわなの確認に行った際、かかっていたイノシシが暴れ出してワイヤーが切れ、襲われたということです。イノシシは成獣とみられ、逃げたまま行方がわからなくなっています。

(クマ農業被害を防止へ、鳥獣対策交付金に99億円)
22日に閣議決定された2024年度政府当初予算案で、クマによる農業被害防止対策に使える「鳥獣被害防止総合対策交付金」として99億円が計上された。23年度当初予算と比べ、約3億円増額となった。

(危うい「第二のOSO」、凶暴ヒグマ今なお脅威:秋田)
人の背丈よりも高いトウモロコシが踏み倒され、ミステリーサークルのような痕跡が残っていた。「今年もか」。北海道厚岸町の酪農家で、飼料用トウモロコシ34ヘクタールを栽培する佐々木操さん(41)は9月、畑の異様な光景に表情を曇らせた。毎年のようにヒグマによる食害を受ける。作付面積約34ヘクタールのうち、今年の被害面積は推定50アール。「過去最大規模」という。町内は、2019年ごろから乳牛を襲い続けた通称「OSO(オソ)18」による被害も続出していた。OSO18は今年7月に捕獲されたものの、トウモロコシの味を覚えた熊が今後、さらに別の食べ物も探すことを続ければ「第二のOSOが出かねない」と佐々木さんは危惧する。電気柵も設置済みだが土を掘り返して侵入されることもある。減収だけでなく牧場で飼う乳牛350頭、さらに自身や家族、従業員が熊に襲われる事態を懸念。「遭遇するのだけは避けたい」として、畑になるべく近づかないようにしている。「雌の育成牛が1頭、腹が引き裂かれて死んでいます」。2021年7月の朝。町営牧場で牧場長を務める櫻井唯博さん(58)に、巡回から戻った職員がそう告げた。当時、隣の標茶町でOSO18の被害が目立っており「これもOSOの仕業だ」と確信した櫻井さんは、襲撃場所周辺にいた144頭をその日のうちに別の場所に移動。途中でさらに2頭、同じような死体が見つかった。1カ月後、別の放牧地の1頭が犠牲になった。両町などでつくるOSO18捕獲対応推進本部のまとめによると、計4頭はOSO18の被害だったと判明している。事態を重く見た櫻井さんは、被害のあった2地区計900頭の放牧を断念。冬場に使う牛舎に大半を移した。追加の飼料代などで3500万円程度の経費が新たに生じた。2地区には今夏まで3年間かけ、総延長28キロの電気柵を設置した。ただ、カバーできた場所は6割程度。OSO18は捕獲されたが、櫻井さんは「牛が襲われる可能性がなくなったわけではない。でも、これ以上電気柵を広げるのは予算的に厳しい」と打ち明ける。OSO18を含め乳牛や飼料用トウモロコシへの熊被害が相次ぐ中、町は「これまで主な食料だったドングリ以外の味を覚え、行動範囲を広げて食べ物を探す熊が出てきた」(環境林務課)とみる。特に飼料用トウモロコシは飼料高騰を背景に自給飼料を確保するため、町内でも酪農家らの作付けが増加。今年は397ヘクタールに上り、直近5年間で43%増えた。町は「熊が飼料用トウモロコシを見つける可能性が高くなっている」(同課)と指摘。作物や家畜の被害回避のため狩猟者の育成に力を入れる方針だ。

(市街地のクマ出没に奔走、専門職員が考えるクマとの「適度な距離」:秋田)
2023年は、クマの出没が激増した一年だった。人とクマとの不幸な遭遇をなくし、「適度な距離」を保つにはどうすればいいのか。クマの生態や現場対応に詳しい専門家、近藤麻実さん=秋田県自然保護課主任=に聞いた。東北地方の自治体で初めてクマ対策の専門職として採用され、現場の指導にあたっています。麻酔銃を使えるかといった法的問題を含め、全体状況を見ながら対応を助言しています。今年度の秋田のクマ出没は異常です。人身被害は過去最多だった2017年度の20人を大きく上回る70人に達し、警察に報告のあった目撃情報だけでも昨年度の約730件に対して今年度は3600件以上。農作物被害は10月末現在で1億3千万円に上ります。市街地の出没など対応の難しいケースでは、市町村や警察からの要請で急行しますが、そうした「緊急出動」を含め現場対応は100回を超えました。人が襲われた悲惨な現場では、住民や地域に及ぼす恐怖を実感します。農作業で外出するのも怖い、犬の散歩もできなくなったなど、日常生活が制約され、数字に表れない精神的被害の大きさを感じます。

(ハンターが「顔なじみ」のクマに感じた追い払う限界:北海道)
クマによる被害が例年になく相次いでいる。人里に出たクマの駆除をめぐり、人間社会では意見がぶつかり合う。クマと人間、共生はできるのか。知床で何百回と「追い払い」をしてきた「野生動物被害対策クリニック北海道」代表の石名坂豪さんに、これからのクマ対策を聞きました。ハンターとしてヒグマ対策に携わってきました。世界的にもヒグマの高密度な生息地である北海道・知床では、早くからクマと人間の「境界線」を引く努力をしてきました。市街地や水産加工場を電気柵で囲う。何度も市街地に侵入したり、人間の食料を食べるようになったりした問題個体のクマは、被害が大きくなる前に捕殺する――といったことです。1985年を最後に知床で死亡事故は起きていません。90年代からは、人への警戒心を学習させるため、ゴム弾やスプレー、DNAがとれる麻酔針などを使った「追い払い」もしてきました。13~18年に個体識別をして、いつ、どこに出没し、何度追い払ったかなどの記録をとりました。残念ながら、多くのクマは3~4年後、問題個体になって捕殺されました。

(シカの森林被害は土壌微生物にも波及する:京都大学)
現在、日本の森林では、多くの地域において、ニホンジカ(以下、シカ)の食害による植生の荒廃が深刻化しています。シカの食害が森林に与える影響を理解するためには、土壌を含む生態系全体への波及効果の分析が必要となります。植物が減ると土壌の性質や土壌微生物に影響を与え、その影響が植物自体に跳ね返ってくるため、土壌微生物の多様性が低下し、さらなる生態系の変化の引き金となる可能性があるからです。しかし、シカによる食害が、土壌微生物の多様性や種組成にどのような影響を与えるかは明らかになっていませんでした。門脇浩明 白眉センター/農学研究科特定准教授、本庄三恵 生態学研究センター准教授、中村直人 農学研究科博士課程学生らの研究グループは、芦生(あしう)生物相保全プロジェクト(ABCプロジェクト)メンバーら(高柳敦 農学研究科准教授らのグループを中心に、福島慶太郎 福島大学准教授、藤木大介 兵庫県立大学准教授、井上みずき 日本大学准教授、境優 国立環境研究所主任研究員ら)との共同研究を行いました。研究では、シカの食害を防ぐ大規模防鹿柵による生態系操作実験と、環境DNA分析のアプローチを組み合わせることで、防鹿柵による長期的な植生の回復・維持が土壌細菌・真菌の多様性を守ることにつながり、とくに、アーキア(古細菌)や担子菌類などの一部の微生物群の多様性を維持する効果があることを示しました。また、防鹿柵を設置していない対照区では防鹿柵内と比べて、動物病原菌が検出されやすくなるなど、従来報告されていなかった土壌微生物群集の変化を検出することに成功しました。今後は、こうした土壌微生物群集の変化が、植生の回復や維持にどのような影響を与えるのかを解明することで、シカの食害が生態系に与える影響の全貌に迫り、生態系回復に資する研究を展開する必要があります。本研究成果は、2023年11月28日に、国際学術誌「Environmental DNA」にオンライン掲載されました。

(クマ異常出没、住宅街の人身被害に衝撃:秋田)
東北地方のクマは通常、11月末ごろから冬眠に入るとされるが、今月に入ってからも県内各地で目撃が続く。人身被害は11月22日の秋田市での発生を最後に収まっているが、県は全域に発令している「ツキノワグマ出没警報」を今月末まで延長し、注意を呼びかける。県警が発表した今年の目撃件数3660(今月20日現在)は、過去最多だった2017年の1299件の3倍近い。人身被害も最多だった17年の19件20人の3倍以上となる62件70人で、いずれも突出した数字となっている。死者はいなかった。

(クマ目撃12月では過去最多、原因はエサ不足か:宮城)
宮城県内では例年、12月にはクマが冬眠するため目撃情報が減少する傾向にありますが、今月に入ってから目撃情報が相次ぎ、20日時点で55件に上り、統計を取り始めて以来最も多くなっていることが県の調査で分かりました。県は、エサ不足が原因で冬眠を始めることができないクマがいる可能性があるとして注意を呼びかけています。ことし東北地方を中心に、全国ではクマが人に襲われる被害が相次ぎ、宮城県でも3人がけがをするなど、国のまとめでは、クマの被害にあった人はことし4月から11月までで212人にのぼり、統計を取り始めて以降、初めて200人を超える過去最悪の被害になりました。県によりますと、例年、12月に入るとクマが冬眠することなどから、姿を見かけたりフンなどで確認されたりした目撃件数は減少する傾向にあり、去年12月は8件、おととしは5件でした。しかし県内では、今月に入ってから目撃情報が相次ぎ、今月20日現在で55件と去年12月の6倍以上に増えていました。21日は仙台市太白区の山林でクマ1頭が目撃されています。これはこれまで最も多かった平成28年12月の26件を大幅に上回り、記録が残っている平成17年度以降で最も多くなっているということです。これについて県は、エサ不足が原因で冬眠を始めることができないクマがいる可能性があるとして今月いっぱい「クマ出没警報」を出して警戒を呼びかけています。また、例年1月はさらに目撃件数が減少する傾向にあり昨年度は3件でしたが、県は状況をみて今月中にも警報を継続するかどうか判断したいとしています。クマの生態に詳しい森林総合研究所の大西尚樹動物生態遺伝チーム長は、12月に目撃情報が相次いでいる理由についてクマ自体の個体数が増加していることをあげています。個体差があるためクマの中にも冬眠の時期が早いクマや遅いクマがいるということで個体数の増加で冬眠時期が遅いクマが一定数増えている可能性があると指摘しています。その上でことしはエサ不足が要因として考えられると指摘しています。大西チーム長は「この時期に動いているのは冬眠していないクマだと思う。冬眠中は十分に脂肪を蓄えていないと春まで生存できない状況だ。ことしはエサが少なく、冬眠に耐えられる脂肪の蓄えができていないのではないか。だから冬眠できないクマが増えている」と指摘しました。さらに1月には例年、目撃情報が大きく減少する傾向にある一方でことしは今月下旬から来月にかけてクマの目撃が相次ぐ可能性はあるとした上で、「気温や積雪は冬眠を促す要因ではあるが、栄養状態や脂肪の蓄積状態に左右されると思う。そのため、クマの出没はまだ続くかもしれない」と話し、今後気温が下がったとしてもクマが出没する可能性があると指摘しています。その上で「油断しているときに襲われると思うので、山間部の住民や山に出かける人には、クマが出没する可能性もあると思って注意してほしい」と呼びかけています。

(タイワンリス、捕獲数が過去最多ペースに:神奈川)
農作物や建物などに被害をもたらす特定外来生物「クリハラリス(タイワンリス)」の神奈川県鎌倉市での捕獲数が今年度、過去最多ペースで推移している。原因は不明だが、山林などで増えすぎた個体が市街地にあふれ出てきた可能性も取り沙汰され、市は捕獲関連予算の増額に動くなど対応に追われている。専門家によると、横浜市、川崎市でも生息しており、生息域を拡大させて生物多様性が損なわれることが懸念される。県内では三浦半島で生息し、これまでに庭の果実や店の商品が食べられたり、寺社の建物、電線がかじられるなどの被害が確認されてきた。鎌倉市は平成12年度から捕獲に乗り出し、捕獲数は30年度には過去最多の1571匹を記録した。今年度は11月末時点の速報値で1553匹に達し、過去最多を更新する可能性が高まっている。「冬季にハイキングコースなどで実地調査を行っているが、山奥よりも民家に近い場所で目撃することが多い」。市の担当者はこう説明するが、「生態を研究していないので、捕獲数が増えている理由は不明」と困惑する。令和3年12月に生息情報の収集と捕獲対策のために「クリハラリス情報ネット」を設立した森林総合研究所の田村典子・研究専門員は「鎌倉市だけで推定1万匹ほど生息している」と述べた上で、「増加しすぎた個体が市街地にあふれ出てきているのではないか」と指摘する。市は捕獲で約200台のおりを無料で市民に貸し出し、1匹当たり6270円の費用で処分を進めている。今回の急増を受け、今月の市議会で今年度の処分関連の予算を700万円増額して約1860万円とする議案が可決され、過去最高額となった。観光客らには人気もあるタイワンリスだが、市の担当者は「餌付けによって個体数が増加したり、人間を恐れなくなったりする。細菌も持っているので触らないでほしい」と注意を呼び掛ける。田村氏は三浦半島の北側の横浜市、川崎市で生息し始めているとする一方、西側に生息域を拡大させて丹沢山塊の生物多様性が損なわれることを懸念。「何としても防がなくてはいけない」とし、関係自治体の捕獲強化が必要と訴える。

(「北限のサル」下北半島のニホンザルの調査が始まる:青森)
「北限のサル」として国の天然記念物に指定されている下北半島のニホンザルの生息数や行動範囲などを調べる調査が21日からむつ市で始まりました。この調査は下北半島のニホンザルの生息数の変化や行動範囲などを把握するため、NPO法人「ニホンザル・フィールドステーション」が、毎年、夏と冬に行っています。21日は、県内外から集まった研究者や大学生など14人が5つのグループに分かれて、むつ市大畑町での調査に向かいました。そして、雪の上に残されたサルの足跡をたどるなどして群れがいる場所を探し、兎沢地区では2頭のオスのニホンザルがヤマグワの木の芽や皮を食べている姿が確認され、双眼鏡を使って離れた場所から観察していました。県によりますと、下北半島のニホンザルは、昨年度、74の群れであわせておよそ2900頭が確認されていて、生息範囲も少しずつ拡大しているということです。調査にあたっているNPO法人の松岡史朗事務局長は、「ことしは夏が暑かったことと秋の実りが悪かったことがサルにどんな影響を与えているか調べたい」と話していました。このニホンザルの生息調査は今月25日まで行われます。

(12月にもある「クマ襲来」、私たち日本人が戦う方法)
以前、北海道・知床への運転中にヒグマの親子を見かけた。思わず車を停めて写真を撮ろうとしたが、助手席に乗っていた相方にこっぴどく叱られた。専門家に聞くと、鍵をかけていてもドアノブなどに爪がたまたまでも引っかかれば壊れて開いてしまうという。熊の走るスピードは時速約60キロメートルと言われる。オリンピック100m金メダルリストよりも早く走る(ウサイン・ボルトのトップスピードが時速45㎞)ので、走って逃げるというのは到底不可能だ。最近ようやく寒くなって来たが、12月初旬まで暖かい日が続いていたように、最近は昔ほど寒くない。熊は12月に冬眠に入るケースが多いが、昨年の大みそか12月31日に、札幌市中央区の住宅街で熊がうろついていたのも目撃されている。最近は穴の中で冬眠せずに、お尻の大きさ程度に穴を掘り、そこで寝ている熊もいるという。暖冬だけでなくブナやどんぐりの実などの不作による餌不足、耕作放棄地の拡大で緩衝地帯であった畑が熊の住処になりつつある。大概、強い熊はそのまま山にいて、餌の競争に負けた熊が餌を求めて別のエリアや市街地まで侵入することになる。特にこうして餌を求めて母熊が人里近くへ子熊を連れて来る事で餌の取り方を教えている面もある。次世代からはその場所が彼らの棲息エリアになる。冬眠する場所も人間の近くになり、人間を怖がらなくなる。どんどん状況は変わっていく。”日本の田舎"を標榜し、人口5000人ほどの福島県西会津町では今年は90頭も捕獲されたいう。とてもではないが、追いつかない。

(鹿の駆除の範囲「広げざるを得ない」:奈良)
畑を荒らした鹿が収容される鹿苑(ろくえん)(奈良市)の特別柵の飼育環境をめぐる問題で、山下真知事は22日の定例会見で、「鹿の駆除の範囲を広げて行かざるを得ない」と述べた。これまで駆除が認められない区域の鹿が特別柵に収容されてきたが、その条件を見直し、収容数を減らすことで過密な飼育環境の改善につながるとの考えだ。奈良の鹿は、合併前の旧奈良市一円の範囲で天然記念物に指定されており、奈良公園とその近隣は「保護地区」、その周辺は「緩衝地区」、さらに外側は「管理地区」となっている。管理地区は2017年以降、年180頭を上限に鹿を駆除できる。一方、「緩衝地区」では駆除ができないため、畑を荒らして捕らえられた鹿は特別柵に収容され、衰弱と過密状態が課題となってきた。知事の発言は、駆除ができなかった緩衝地区の見直しを意図している。

(クマ被害防止へ、自治体の担当者などが対策学ぶ研修会:青森)
県内でクマによる人や農作物への被害がことし相次いだことを受け、21日、自治体の担当者などを対象にした被害防ぐ対策を学ぶ研修会が開かれました。青森市で開かれた研修会には、県内の自治体や農協などの団体からオンラインも含めておよそ70人が参加しました。会議ではまず、県からことし県内では20日までにクマの出没が961件、クマによる人への被害が10件、10月末の時点での農作物への被害額はおよそ1700万円と、いずれも例年と比べて大幅に増えていることが報告されました。その後、野生動物に詳しい岩手大学の青井俊樹名誉教授が講演し、青森県ではこれまで生息していなかった地域でも近年クマの出没が確認されている点や、出没が多いとされる夜明けや夕暮れ以外の時間帯にも注意が必要といった点を説明していました。また、被害を減らすために、余った果物を畑などに捨てないことや、森や林の下草を刈り見通しをよくすることなど、住民や自治体が一体となって取り組むことが重要だと強調していました。青森県食の安全・安心推進課の中村義人課長は「クマの出没が多かった年の次の春も注意が必要なので、しっかりと対策するよう自治体などに呼びかけていきたい」と話していました。

(ヒグマ対策重点エリア:北海道)
札幌市は、人の生活圏とヒグマの生息域を分ける「ゾーニング(区域分け)」を見直し、クマの生息を許容するエリアを縮小した上で、草刈りや電気柵設置、捕獲などの対策を強化する区域を拡充した。市内でクマ出没が相次いでいるため。目撃情報が多い三角山や藻岩山周辺を「ヒグマ対策重点エリア」とし、今秋から、クマの定着を抑えるため出没場所の分析など対策を強化している。

(クマ被害にどう対処)
市街地でクマと遭遇してけがをする人や、亡くなる人が増えている。山の中に生息していたクマが、近年では街中にも姿を見せるようになった。地球温暖化の影響や、人の暮らしが変わり、山が荒れているのも原因のひとつとされる。どんな対策があるのか。人間と自然との向き合い方も問われている。戦後占領した米軍が国内を上空から撮影した写真を見ると、山には木がなく、焼き畑や、飼料や肥料にする採草用の茅場(かやば)になっている場所が多いことが分かる。戦争の影響だけではない。里山に住む人々は、戦前からずっと山の広葉樹を定期的に伐採してマキや炭に利用し、斜面を開墾してきた。森を好むクマやカモシカ、サルは、開墾されたハゲ山を緩衝地帯にして人を恐れて山奥で生息し、人里に出てきたら捕獲されてきた。

(相次いだ“クマ被害”、人里での目撃数増加はドングリなど「エサ不足」が原因:北海道)
2023年、北海道で起きたニュースを振り返る「プレーバック2023」。4回目の今回は、道内各地で被害や目撃が相次いだ「クマ」がテーマです。「え?待って!怖い!」「わかったから!わかったから!」。威嚇するかのようにバックする車を追いかける親子グマ。これは2023年5月、日高の新冠町で撮影された映像です。クマの目撃が相次いだ道内。目撃件数は11月末時点で3970件と過去5年で最も多かった2022年の2240件の約1.8倍と過去最多となり、深刻な状況となっています。人が襲われる被害も相次ぎました。道南・福島町の大千軒岳では11月、大学生がクマに襲われ死亡。さらに、このクマは大学生のほかにも登山中の消防隊員のグループにも襲い掛かりケガをさせていました。また、2023年5月には上川の幌加内町で釣り客がクマに襲われ、死亡する事故も起きています。連日のようにクマのニュースが話題となった2023年。流行語大賞のTOP10には2019年から道東で乳牛66頭を襲い、世間を騒がせた「OSO18」。そして人里に出没する「アーバンベア」という言葉が選ばれるほど注目が高まった年でした。2019年から乳牛を襲い続けたOSO18。警戒心が強くわなにもかからないことから「忍者グマ」などと恐れられてきましたが、2023年7月、釧路町で駆除されました。そして人里に出没する「アーバンベア」。9月には札幌市南区南沢にある大学の敷地内にクマ1頭が出没し一時騒然となりました。クマは猟友会によって駆除されました。2023年、札幌でクマが目撃されたのは12月現在で227件と、2022年の162件を大きく上回っています。冬の足音が迫る11月になっても札幌市西区山の手では住宅の裏側を通る親子グマ3頭の姿が防犯カメラに…。クマの生態に詳しい専門家は目撃数の増加は「エサ不足」が原因だと指摘します。「冬眠前は相当な量のエサを食べなくちゃいけないんですけども、その時の主食になる食べ物がドングリですね。この秋のドングリのなりは悪かった。ですので人里に出没した」(北海道大学 獣医学研究院 坪田 敏男 教授)。札幌市の目撃件数を詳しく見ると227件のうち、南区が156件、西区が34件です。2つの区だけで全体の8割を超える状況となっているのがわかります。専門家は今後もこの傾向は続くと指摘します。「相当数いると思っていい。10~20年同じ傾向で、やっぱり札幌市の中で南区とか西野の方、出やすいところは決まってる」(坪田教授)。では「アーバンベア」は今後、どうなっていくのでしょうか。「人里に近いところに生活しているクマの数が急に減るとか人を怖がらないクマがいなくなるとか、そういうことはありません。少なくとも(クマが人里に出る)そういう状況は変わらない」(坪田教授)。深刻化するクマの脅威にどう備えれば良いのか。新たな試みも始まっています。これはヒグマの出没リスクが高い場所と、出没経路を示した「マップ」。市町村ごとにこのマップを作成し、市街地での人身被害や農業被害を防ぐのが狙いです。「緑色に塗っているところがヒグマの生息地としての森林。そこから市街地に向けて森林がつながっているところをヒグマの生息地からの距離に応じて色分けています。対策を行うべき場所を明らかにするのが最終的な形になる。誰でも利用できるようなオープンデータで作っていく。興味がある市町村は試してみてヒグマ対策に生かしていただきたい」(北海道ヒグマ対策室 武田 忠義 主幹)。人の生活圏との境界があいまいとなり被害が相次ぐクマの問題。これ以上の被害を食い止めるため、待ったなしの対策が求められています。

(捕殺か保護かの二元論ではない、クマと人間の共生に必要な三つの柱)
過去最悪のペースで、クマによる人身被害が増えている。環境省によると、今年度は11月までの被害人数が全国で計212人(速報値)。昨年度の75人を大きく上回っている。今年、なぜクマはこれほど人里に出没するのか。人とクマは共生できるのか――。岩手大学の山内貴義准教授(動物管理学)に聞いた。――全国各地でクマの出没が相次いでいます。今年秋は全国的にブナの実が大凶作だったことが原因だと言われています。「クマの大好物であるブナは、比較的標高の高い場所で育ちます。大凶作になったことで、クマの生息域が全体的に人里に下がってきたことが要因の一つだと考えられます。ただし、ニュースでクマが話題になると、クマを目撃して通報する件数が増える傾向にあるので、出没数以外のデータで慎重に考察すべきです」。「人身被害の状況をみると、岩手県では今年度は12月2日現在で48人(死者2人)と、過去最多の被害人数です。最も多い秋田県は70人(同0人)。富山県など北陸でも被害が急増しています」。――人身被害が激増した要因は何でしょうか。「ブナの実が大凶作になると、有害捕獲で駆除されるクマの頭数が多くなる傾向は昔からありました。ですが、最近は、畑での農作業中や近所の散歩中など、人里での被害発生が非常に多くなっています。これはブナの実の豊作、凶作だけでは説明できません。クマの行動自体が変容していると考察します」。山内さんは「人里の味を覚えたクマは駆除する必要がある」とする一方で、「人に危害さえ加えなければ クマは何頭生息してもいい」とも話します。なぜでしょうか。共生に必要な三本柱について語ってもらいました。

(カメラが捉えた死闘20秒:岩手)
ミズナラの木が立ち並ぶ山中で、自生するキノコを採取していた時だった。手前の草やぶから「ガサガサ」という音が聞こえた。「動物か」。山道を歩く際のつえ代わりに使っていた枝をとっさに握り、身構えた。その瞬間、ツキノワグマが飛び出し、突進してきた。「こらー、こらー」。大声を出し、先のとがった枝を何度突き出しても執拗(しつよう)に飛びかかってくる。20秒ほどのもみ合いの間、牙や前足の爪が腕や足に食い込んだ。熊の体長は80センチ程度。素早く動き攻撃を止めない。「もう駄目かもしれない」。そんな思いがよぎった瞬間、熊の方から山奥に逃げ出していった。岩手県岩泉町でキノコ採取やペット用品販売などを営む佐藤誠志さん(57)は9月、山中で熊に遭遇した。山に入り続けて25年ほど。熊を見かけたことはあるが「襲ってきたのは初めて」と戸惑いを隠せない。熊が去った後、自身の体を見回すとズボンに穴が開き、皮膚が裂けていた。腕にも引っかき傷が残り、血が流れ出ていた。襲われた場所は、盛岡市と同町にまたがる山中。急な斜面が広がり、近くに沢が流れる。キノコ採りなどで度々訪れていた。山に入る際、熊よけとして犬を連れて蚊取り線香をたいて気配を残してきた。「よもや熊が出るとは思わなかった」と打ち明ける。山の景色やキノコ採りを自身の視点でインターネット配信しようと、頭部にカメラを付け、動画を撮影しながら山に入っていた。熊とのもみ合いも、動画の中に残っていた。草やぶから音が聞こえた後、10メートルほど先で子熊が木に登る様子が見えた。「子熊が木に登るのは、親熊が襲ってくる合図」。かつて聞いた俗説通り次の瞬間、熊が襲ってきた。「最近は山の変化を感じる」と佐藤さん。熊だけでなく鹿やイノシシを見かけることも増えているという。「動物間でも食べ物が取り合いになり、普段出現しない場所にも来るようになっているのかもしれない」とみる。山林が広がる町内で熊の目撃例は珍しくない。それでも今年は被害につながるケースも多く、人身被害は3件、飼料用トウモロコシや果樹などの食害も89件発生している。いずれも過去最多だ。町は「今後、集落で農作物などの味を覚えた熊が再び集落に近づく恐れがある」(農林水産課)と懸念。パトロールに加え、熊の出没情報を防災端末で提供するなど、農家を含む地域住民の安全確保に奔走している。

(クマの出没増で注目度急上昇!国内でも数少ない猟銃メーカー:高知)
2023年はクマの出没情報が例年にないペースで増加しています。環境省によると、2023年の秋田県のクマの出没情報は10月までで3,000件。昨年は通年で730件でした。岩手県も今年は5,158件で、倍増しています。東京都では、奥多摩町だけでなく八王子市や町田市でも目撃情報が出ています。2023年10月まで(暫定値)のクマの駆除(捕殺)件数は6,287。昨年は3,755でした。クマは多くの場合、罠か猟銃で駆除します。日本で猟銃を製造販売している数少ないメーカーがミロク。その収益構造と猟銃の売れ行きについて解説します。ミロクの歴史は古く、創始者・弥勒蔵次氏が猟銃の生産を開始したのは1893年でした。終戦直後は日本での銃器製造が禁じられていたため、クジラを捕獲するための捕鯨砲の製造で会社を存続させていました。1951年に銃器の製造が解禁され、猟銃の生産を再開します。1980年に狩猟者として登録していた日本人は43万2,000人。現在は13万人ほどしかいません。かつての日本では、狩猟がメジャーとはいかなくとも、比較的広く行われていた文化・スポーツでした。しかし、猟銃を使った事件が重なるにつれて規制を強化したため、所持者が減少。需要が失われます。ミロクは1977年に山本鉄砲製作所を買収するなど、銃業界の再編が進みました。同じころ、拳銃ニューナンブM60で有名な新中央工業は、ベアリングのミネベアミツミに吸収合併されています。ミロクがユニークなのは、アメリカの銃器メーカーとして有名なブローニング・アームズ向けのOEM製造を行っていること。1966年から散弾銃を供給しています。2013年にオバマ元大統領が、射撃を楽しんでいる自身の写真を公開しました。このとき使われていた競技用の上下二連銃がブローニングのシトリというモデルであり、ミロクが製造したものです。ミロクの猟銃は本場アメリカでも支持される技術力の高いものです。2009年に国内の競合会社だった新SKB工業が業務を停止。現在、国内で猟銃を製造する会社はミロクの他、自衛隊に自動小銃を提供している豊和工業が狩猟用のライフル銃のみを製造するなど、ほとんど残っていません。ミロクは国内の猟銃メーカーとしてはトップ企業です。そんなミロクの主力事業である猟銃事業の売上はどのように推移しているでしょうか?後編で解説していきます。

(「滋賀県ニホンザル第二種特定鳥獣管理計画(第5次)(案)」の意見・情報の募集:滋賀)
滋賀県では、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」に基づき「滋賀県ニホンザル第二種特定鳥獣管理計画(第5次)」の策定を予定しています。本計画の策定にあたり、滋賀県民政策コメント制度に関する要綱に基づいて、以下のとおり計画内容を公表するとともに、県民の方からの御意見・情報の募集を行います。

(追い払い作業していたタカが鳥インフルに:大阪)
大阪市内でカラスの追払い作業に使われたハリスホークが、鳥インフルエンザに感染していたことが分かりました。カラスを介して感染したとみられ、その後、死んだということです。神戸市によりますと、ハリスホークはタカの一種で、市内の個人宅で飼育され、13日に大阪市内でハシブトガラスの追払い作業をしていました。ハリスホークはその際、衰弱していたカラスと接触していたため、飼い主が検査を依頼したところ、14日に陽性が判明したということです。衰弱していたカラスは鳥インフルエンザに感染していたことが分かっていて、ハリスホークはこのカラスを経由して感染したとみられます。飼い主は他にも複数の鳥を飼育しているということですが、現在、他の鳥への感染は確認されていません。環境省は飼い主の家の周辺10キロを野鳥監視重点区域に指定し、監視を強化しています。

(23年間、1坪の檻に閉じ込められ胆汁を取られた熊:韓国)
韓国では熊を飼育して10年を超える場合、合法的に胆汁を取り出して熊胆(bear bile)を作ることができる。熊は1坪ほどの檻に閉じ込められ、胆嚢に管がぶら下げられて胆嚢汁を抜かれている。熊は死んで初めて檻から出ることができる。このような境遇の熊(2001年生まれ)が23年間閉じ込められていた檻から逃げ出し、約2時間後に射殺された。2時間あまり自由を味わった熊は、忠清南道唐津市松岳邑(チュンチョンナムド・タンジンシ・ソンアクウプ)のある熊飼育農場で飼育中だった体重100キロのツキノワグマ。唐津消防署と唐津警察署によると、ツキノワグマは17日午後7時ごろ、檻から逃げ出した。当局の要請で熊捕獲に乗り出した有害鳥獣駆除団の猟師は、同8時55分ごろ飼育場近くで、逃げ出した熊を発見した。猟師は農場主の要請により、その場で射殺した。国際絶滅危惧種であるツキノワグマを保護せよという国際的世論により、韓国政府は「クマを自然に淘汰させる」とし、2012年にすべての飼育熊に対して中性化手術を断行した。したがって2013年以後に国内の熊飼育農場で生まれた熊、すなわち10歳未満の飼育熊はいない。残った問題は既存の飼育熊たちだ。熊農場もこれ以上熊の熊胆採取業を営むのが難しいと判断し、施設への投資などをしておらず、大部分の熊農場は30年以上の老朽化した施設のままだ。その結果、熊が簡単に檻を壊して逃げ出す可能性が高くなった。今回、熊が逃げ出した忠清南道唐津の熊飼育農場でも、2013年と2017年の2回、熊が逃げている。また、農場主が熊の飼育をあきらめても熊を受け入れる施設は動物園だけ。事実上、熊が行くところはない。こうした現実を踏まえ、熊の飼育と熊の胆嚢採取を終息させ、残った熊を保護できる「野生生物法改正案」が今年5月に国会で発議されたが、まだ法制司法委員会に係留中だ。

(鳥インフルが南極で拡散、野生生物に甚大な被害の恐れ)
H5型高病原性鳥インフルエンザが南極地域でさらに拡散し、野生生物に甚大な被害を及ぼす公算が大きくなっていることが、国際獣疫事務局(WOAH)と国連食糧農業機関(FAO)の専門家らで構成するOFFLUが21日公表したリポートで明らかになった。伝染力の強い鳥インフルが遠く南極地域に広がったことで、これまでウイルスにさらされたことのないペンギンやアザラシなど隔離された場所の群で感染の懸念が高まっている。10月8日には英海外領サウスジョージア・サウスサンドイッチ諸島バード島のカモメの一種から同ウイルスを検出。ほぼ同時期にフォークランド諸島近辺のフルマカモメとアホウドリからもウイルスが検出された。OFFLUは、鳥インフルウイルスが南極の野生動物の間で広がり、この地域に生息する鳥類48種と海洋哺乳類26種に感染の恐れがあると警告。何千頭ものアザラシと数十万羽の鳥類が密集したコロニーで生息しており、感染が広がって高い死亡率をもたらす可能性があるとした。また南極における鳥インフルは、特に絶滅の危機に瀕している皇帝ペンギンにとって脅威で、ウイルスが皇帝ペンギンのコロニーに侵入すれば群全体に感染が広がる可能性があるという。

(アライグマに餌やりは破滅への道、人にも動物にも「最悪」)
TikTokやInstagram、Facebookをスクロールしているとき、マシュマロからホットドッグ、タルトや手づくりのラザニアまで、あらゆる食べ物を野生のアライグマに与えている動画を見たことがある人もいるだろう。アライグマはフワフワでかわいく見えるが、このような行為は破滅への道だと専門家は警告する(編注:日本では侵略的外来種のアライグマは特定外来生物として、飼育、保管、運搬、野外へ放つことが禁止されています)。「人々がアライグマと仲良くなりたがるのは素晴らしいことです」と米国ペンシルベニア州狩猟鳥獣委員会の野生生物学者ジャニーン・フリーグル氏は前置きし、「その気持ちはよくわかりますが、問題があります」と指摘した。まず、野生動物に餌を与えるとすぐ、動物は人間に懐き始める。餌を与える人は愛情と解釈するかもしれないが、動物の行動はすぐ暴力的に変わりうる。「あなたはそのアライグマを受け入れるかもしれませんが、隣人は違うかもしれません。そして、アライグマにはその違いがわかりません。アライグマは人を食べ物と関連づけてしまいます。それは良いことではありません」とフリーグル氏は説明する。「特に体が小さな人や子どもに対して、アライグマは攻撃的になることがあります。ペットに対しても同じです」。そしてこれは、フリーグル氏が野生のアライグマに餌を与えることを「最悪のアイデアのトップ10に入る」と言う理由のほんの一面に過ぎない。アライグマには鋭い歯があり、かむ力が強いため、指や手をかまれると、確実にけがをする(アライグマにかまれる動画も拡散している)。ある研究によれば、米国では2001~2004年、毎年1300人以上がアライグマにかまれて救急医療を受けている。しかし、野生の哺乳類にかまれたときにもっと心配すべきは、病原体が体内に入り込むことだ。「アライグマは私たち人間やペットに感染するさまざまな病気を持っています」とフリーグル氏は話す。「特に重大なのは、もちろん狂犬病です。狂犬病は命に関わります。しかし、パルボウイルスもいます。ジステンパーウイルスもいます。回虫もいます。レプトスピラもいます。つまり、数え切れないほどの病気を持っています」。危険なのは人やペットだけではない。野生動物に餌を与えると、動物たちは自然界にいるときより多く集まるようになる。その結果、互いに病気を感染させる可能性が高まる。フリーグル氏はTikTokでアライグマの動画を何本か見た後、「動物同士の攻撃や競争も問題です」と指摘した。「けんかはけがにつながります。このような状況は、私たちがどう考えようと、アライグマにとってはストレスです。そして、ストレスによって免疫系が抑制され、そうでなければ問題にならない病気に感染しやすくなります」。これらのリスクをすべて考慮したうえで、動物を寒さや空腹から守る方が大切だと判断することもあるだろう。しかし、動物を助けようとしているその行動が、むしろ害をもたらす可能性もある。「アライグマをはじめとする野生動物には生存能力があり、母なる自然から与えられる試練に耐えることができます」とフリーグル氏は話す。「彼らは何千年もそうしてきました。彼らは私たちの助けを必要としていません」。さらに、アライグマが人を引っかいたり、かんだりした場合、そのアライグマが狂犬病にかかっていないかどうかを判断するには、安楽死させて脳を調べるしかない。「長い目で見て、あなたは助けになっているのでしょうか?」とフリーグル氏は問いかける。「もし何かが起きれば、あなたが動物の命を奪うことになるのです」。

(“ベアドッグ”のお仕事:長野)
「あら、クマを追い払うワンちゃんよね」「おりこうね」。軽井沢の林の中、クマ鈴を付けて散策中の女性たちが、犬に目を留め、声をかける。「どうぞ撫でてください」と、犬の傍らで田中純平さんはにこやかに返した。タマというその犬は、「ベアドッグ」と呼ばれるクマを追い払う仕事をする犬だ。田中さんは日本で最初のベアドッグハンドラーである。おとなしく伏せるタマのまわりに人が集まり、頭や背中をやさしくさする。ひととき、ベアドッグやクマの話題で盛り上がった。黒と白の毛色、立ち耳に巻き尻尾、顔つきは日本犬にも似ている。「カレリアン・ベア・ドッグ」というフィンランド原産のヒグマ猟を行う猟犬だ。アメリカでクマ対策に力を発揮する犬として導入され、クマの匂いや気配を察知するための特別な訓練を受けたのち「ベアドッグ」として活躍している。2004年に軽井沢に初めてベアドッグが導入され、タマはその2代目となる。令和5年度のクマが関わる人身被害数は、ツキノワグマで203人(うち死亡4人)、ヒグマは9人(うち死亡2人)にのぼる。また、10月末時点で、捕獲されたクマのうち、98%にあたる6287頭が捕殺(駆除)されている。捕獲されたクマの大半が駆除されるなか、駆除をしない「非捕殺」の件数が全国一多いのが長野県だ。そのカギを握るのが軽井沢町である。軽井沢は人とクマの共生に取り組み、NPO法人ピッキオが中心となって、四半世紀にわたりクマ対策に力を入れてきた。ベアドッグやIT技術も駆使し、6月から10月末までは、毎日24間体制でクマから町を守っている。田中さんは、ベアドッグを“人とクマの親善大使”と表現し、人との触れ合いも大切な仕事と位置付ける。軽井沢でどのように駆除以外のクマ対策を行なってきたのか。ベアドッグと人はどのような関係にあるのか。軽井沢の林で田中さんと9才のタマに会い、話を聞いた。避暑地として知られる軽井沢。人が賑わう市街地から林の中の静かな別荘地、上信越高原国立公園の森林へと続く森の町だ。居住区域と自然が重なることから、野生動物とのすみ分けが難しい場所でもある。町は国指定の鳥獣保護区に含まれ、多種多様な鳥獣が生息している。ツキノワグマの生息地でもある。  ピッキオが軽井沢でクマの保護管理に乗り出したのは、クマが市街地に出没してゴミに餌付く状態が顕在化した1998年のことだった。北海道でヒグマやエゾシカ等の大型野生動物の保護管理に携わっていた田中さんが2001年にピッキオに加わり、本格的に実態調査と対策が始まった。当時、クマが食べ物を求めて市街地に出没する状態を見て、「きちんと対策を行わないと、人身被害も含めて大変なことになる」と危機感を感じたという。「軽井沢のクマは人に追われた経験がなくどこかのんびりしていて、『人間は怖くない』と学びやすい環境でもありました。人とクマにルールがなく、市街地にゴミが出ていればクマも入ってきます。のんびりとしているクマも、初めて人に遭遇してパニックになることもあります。森が近いといえど、人とクマがある一定の緊張感を持って暮らす必要がありました」。軽井沢は国際的な保健休養地として豊かな自然の中で心身を癒す場である。クマによる人身事故は観光地としても大損失であり、町をあげたクマ対策が急がれた。しかし、駆除を続けることは休養地としてのイメージにも関わり、滞在者の心も休まらない。「クマを駆除し続けることも人身事故も避けなければなりません。両方クリアしていくことを目指し、2000年から軽井沢町が主体となって、本格的なクマ対策が始まりました。それに合わせ、私たちは専門家としてサポートしていくことになりました」。まず行ったのが、誘引物の除去である。ゴミステーションが餌場となるのを防ぐために、クマに開けられない鉄製のゴミ箱を開発した。クマは学習能力が高く、開かないことを学習するとゴミステーションに近づかなくなる。町内の該当するゴミステーションに徐々に設置するとともに、ゴミ出しのルールも徹底した。農作地には電気柵の設置を促し、クマの侵入を防ぐ対策を講じた。同時に、罠を仕掛けてクマを捕獲し、麻酔で眠らせたクマに発信器をつけた。発信器によって個体識別を行い、クマの行動を監視することができる。個体ごとに作られたカルテには、行動監視を通して得られた情報や、性格、癖などを記録している。「私たちがクマを捕獲するのは、殺すためではなく、生かして個体を調べるためです。クマは個性が強く、なわばりもなく神出鬼没です。問題を起こすクマもいれば何もしないクマもいて、個体の識別を行わないと必要のないクマを駆除することにもつながります」さらに、町を、森林(クマ生息地)、別荘地(緩衝)、市街地・住宅地(人間優先)、耕作地(防除)の4つのエリアに分け、それぞれの場所でのクマへの対応の方針を明確に決めた。これによって、クマが出没した際に素早く的確に対応できるようになった。誘引物の除去やクマの個体識別を行いながら、アメリカのベアドッグ育成機関「Wind River Bear Institute」からのベアドッグ導入に向けて動き出した。田中さんは、渡米してベアドッグのハンドリングを学び、ペアを組む犬と生活した。2004年に初代となる「ブレット」を連れて帰国し、軽井沢でベアドッグとの活動が始まった。ベアドッグにはさまざまな仕事がある。そのなかで重要なのが「追い払い」だ。発信器による調査で、人の居住エリア近くにクマが出たことがわかったら、ハンドラーとともに近くまで行き、大きな吠え声で追い払う。ベアドッグがクマに吠えて追い払うことで、「いてはいけない場所」を教えていく。ベアドッグの吠え声は大きい。ハンドラーの指示のもと、クマを追い払い終えるまで、けたたましく吠え続ける。もちろん夜間も活動する。「23時から明け方の4時までは、発信器をつけたクマの電波をキャッチする夜間監視班とベアドッグ班に分かれて活動します。夜間監視班は、車で人とクマとのすみ分けのボーダーライン近くを走りながら林に入り、アンテナを使ってクマのいる方向を絞ります。地図上でクマのいる場所を推定し、クマがボーダーの中に入ってきたことがわかると、ハンドラーはベアドッグと出動します。暗い林の中でベアドッグと追い払いを行い、ボーダーの外に出るまで、吠えてクマに教えていくのです。今朝も、2頭のクマの追い払いを行いました」。ここで気になるのは、ベアドッグがクマからの攻撃を受けてケガをしないかだ。ベアドッグはクマに吠えるが、襲いかかることはしない。クマと一定の距離を保つことが得意なため、クマと接触することなく追い払いができる。犬もクマも傷つかずに済むという。また、ベアドッグは別荘地も含めた人の活動エリアで追い払いを行うことが多く、交通事故などのさまざまな危険もある。そんなリスクを避けながら、クマに人に対する警戒心を植え付けるため、基本的にハンドラーはベアドッグをリードで繋ぎ、一緒にクマを追っていく。罠にかかったクマに発信器をつけて森へ返す際も、ベアドッグが活躍する。クマを罠から放つときにベアドッグが吠え、人は声を出して鈴を鳴らし、クマを森の奥へと追い立てる。これは「学習放獣」と呼ばれるもので、クマは人や犬が怖い存在だと学んでいく。そして、パトロールも大事な仕事だ。クマ出没の通報が入れば、ハンドラーと現場に駆けつけ匂いをたどって探索する。発信器のついていないクマが付近に潜んでいる場合は、匂いや音からクマの存在を察知し、ハンドラーに知らせる。マラソン大会などの野外イベントの事前パトロールも行う。ベアドッグはハンドラーの用心棒をしながら日夜活動をしているのだ。ベアドッグとハンドラーは、クマへの“教育”に加え、人への教育普及活動にも力を入れてきた。町内すべての小学校をベアドッグとともにまわり、野生動物との共存をテーマに子どもたちへ特別授業を行なっている。2011年以降、軽井沢では、人間の活動エリアにおけるクマによる人身事故は1件も起こっていない。軽井沢町は少ない駆除頭数で、人身被害をゼロに抑え続けている。クマに勇敢に立ち向かうベアドッグだが、穏やかでやさしい性格を持ち、ときに人に「癒し」をもたらすのも仕事のひとつだ。「クマが出たという通報があったとき、ハンドラーはベアドッグとすぐに現場にかけつけ対応します。一般の方がクマを目撃したり突然遭遇したりすると、強い衝撃でしばらく動揺が続くものです。そんなときでも、追い払い後に足元でおとなしく伏せて待つベアドッグに気づくと、みなさん安心した表情になるんです。『よろしければ撫でてください』『一緒に褒めていただけますか』とお伝えすると、かがんでベアドッグに触れてくださいます。そして、『よくがんばったね。怖かったけどありがとう』『こんなに働いてくれてえらいね。私もちゃんと対策をするね』と、撫でながら話してくださるんです。ベアドッグに触れることで、クマに遭遇した恐怖心が少しずつ落ち着き、癒されていきます」。ベアドッグの存在は町の暮らしにも根付いてきた。ベアドッグがパトロールをすると住民は安心し、クマ対策への意識が高まるきっかけにもなっている。「クマを探して追い払い、人をも癒す。人間にはできないことを彼らはしています。ハンドリングをしながらその力に気づかされました。ベアドッグが人との触れ合うことがいかに大切か実感しています」。現在、4頭のベアドッグが軽井沢で活動している。タマとナヌックはシニア期を迎え、タマの子で軽井沢に生まれ育ったレラとエルフは5才になり働き盛りだ。さらにレラは、2024年の初夏に、繁殖を予定している。年齢やタイミングから、次に控える自然繁殖が最後のチャンスだという。「世代を繋いでいかないと、ベアドッグの技術は残すことができません。ベアドッグの育成には先住犬の存在が大きく、今いる犬たちが元気なうちに繁殖を成功させ、犬を育ててひとり立ちさせる必要があります。それがちょうど今なのです。軽井沢にベアドッグの体制を残していけるよう、繁殖の成功を祈りながら準備を進めています」。タマとナヌック、レラ、エルフがいる軽井沢で、繁殖と育成を行い、次の世代を育てること。田中さんは、クマの追い払いやパトロールとともに、ベアドッグの技術を繋ぐための繁殖の準備にも力を注いでいる。さらに12月11日からは「ベアドッグ未来プロジェクト(https://readyfor.jp/projects/picchio-beardog2024)」のクラウドファンディングに挑戦し、支援も募っている。さらに、人も育てていくという。ベアドッグのハンドラーは、ほかの働く犬とは異なり、1ドッグ1オーナーという特徴がある。仕事上のペアだけでなく、自宅でも一緒に過ごし、生涯ともに生きていく関係だ。ベアドッグを訓練し、出没現場でハンドリングをするハンドラーは、野生動物全般の知識のほか、クマの行動パターンや生態の知識を持っていることも必須だ。軽井沢でクマ対策が始まって25年。地域を守りベアドッグの技術を繋いでいくために、田中さんとベアドッグの活動はまだまだ続いていく。

(放置の柿をリキュールに、クマ被害軽減も期待:富山)
若鶴酒造(富山県砺波市三郎丸)が、収穫されずに木に残された柿の実を漬け込んだウイスキーベースのリキュールを10月から販売している。実の有効利用に加え、山から下りてきたクマの餌となることも防げるとし、同社は「クマの被害軽減につながれば」と期待する。リキュールに使われているのは、南砺市の山あいで生産される「三社柿(さんじゃがき)」。実が大きくて渋みが強いが、収穫後に皮をむいて乾燥させると、しっかりした歯応えと甘みのある干し柿になる。贈答用として人気だ。富山干柿出荷組合連合会によると、現在約140軒の農家で年約400万個の柿を生産しているが、干し柿に加工できる量が決まっているため約10%が木に残されたり、処分されたりしていた。同社は新商品の開発を模索する中、生産者との意見交換で大量の柿が廃棄されていることを知り、2020年から収穫されなかった柿を使ったリキュールづくりを始めた。「柿を使ったリキュールは前例がなく、配合に苦労した」と製造担当の村井俊之さん(50)。原料となるグラニュー糖の量の微調整を重ね、蒸留所を訪れた客にも意見を聞くなどして、約3年で販売にこぎつけた。商品名は「KAKISKY(カキスキー)」で、柿の甘さを感じることができ、若い女性のほか、ウイスキーの一大消費地・台湾から訪れた観光客にも好評だ。企画マーケティング課の篠田凪沙さん(27)は「寒くなるこれからは、お湯割りで楽しむのがおすすめ」と語る。現在は直営店だけで販売しているが、24年からウェブでも取り扱う予定だ。1本、300ミリリットルで1045円。県内では23年、ドングリ不作の影響で、柿などを求めて人里に出てきたクマの目撃件数が急増。渋柿でも食べるとされ、県は対策として実を取り除くか、木を伐採するよう住民に求めている。稲垣貴彦社長(36)は「製造を通じて柿の有効利用とクマ対策、二つの社会課題に取り組みたい」と意気込んだ。

(型染め施した鹿革製品誕生:長野)
ほとんど活用されてこなかった、有害鳥獣として駆除された鹿の皮。藍染めの浜染工房(松本市庄内2)が、県内の革製品製造販売会社と協力し藍の型染めによる鹿革製品作りに取り組んでいる。皮革製品を扱う業者らが連携し、鹿革などの有効活用を目指す「信州エシカルプロジェクト」の一環。環境や社会問題に配慮した商品の開発・消費と地元の伝統技術の可能性を広げる試みだ。工房代表の浜完治さん(74)は全国に数人しかいない藍の型染め職人。3年前から「新しい藍染めを」と革に着目、難易度の高い素材に挑戦してきた。当初はうまくいかず諦めかけたが、必然の出会いでプロジェクトの一員に。工房近くの「逢初(あいぞめ)橋」にちなんだ「逢初レザー」が生まれた。繊細な模様が連続して続く型染めの長財布、藍の濃淡により不思議な模様が広がる絞り染めのバッグや小銭入れ…。「逢初レザー」は、鹿革の柔らかな手触りと職人による緻密な技術の融合が特長だ。革を手に取り「難しいけれど楽しい。もっと精度を上げていきたい」と浜完治さん。藍染め職人の道を歩んで半世紀以上になる。3年ほど前、市内のジビエ(野生鳥獣肉)加工施設から依頼され、鹿革への藍染めに初挑戦。その厚さから染料のつぼに入れたり干したりする際にとても重いことや、一つの革を30回以上染めても色が出なかったり、型染めにむらが出てしまったりと苦戦した。その後も取り組むが、失敗。諦めかけていた昨年、テレビ番組で千曲市の革製品製造販売会社「Groover Leather(グルーバーレザー)」代表の徳永直考さん(46)が、「信州エシカルプロジェクト」を発足させたことを知った。プロジェクトに賛同し革の藍染めについて相談したいと思っていた矢先、偶然にも徳永さんから鹿革の藍染め製品を開発したいと声がかかった。徳永さんが発起人となり、浜さんと飯田市の革製品製造会社「メルセン」で「逢初レザー」を企画。難しいといわれる革の藍染めに挑戦することになった。メルセンが藍染めしやすいよう革を薄めになめし、浜さんは革専用に藍の濃いかめを用意して、本格的に着手。革には個体差があって、布のように均一に染まらない課題はあるが、取り組みが軌道に乗り始めた。染まった革はメルセンで仕上げをし、徳永さんの会社で仕立てる。「藍の型染めレザーは想像以上にきれいな仕上がりで、希少価値も高い。信州の魅力発信につながれば」と徳永さん。9月末に最初の製品が完成した。型染めの長財布や絞り染めのショルダーバッグ、スリッパなどだ。県内のジビエレザーは、ほとんど使われず破棄されてきた。もともと鹿革は軽くて柔らかく、通気性にも優れた良さがある。浜さんは「鹿革の有効活用にも役に立てれば。3人のアイデアを持ち寄り、いろいろな製品を作っていきたい」と話す。同プロジェクトはこのほか、千曲市の「更級花織工房」によるアンズ染めの製品なども展開。12月22~24日、アイシティ21(山形村)で開く「信州クラフトマンズフェア」で展示販売する。

(エゾシカを有効活用したビジネス展開と意識改革:北海道)
株式会社24Kは増えすぎてしまった北海道のエゾシカの革の活用を進め、企画デザイン、製造、販売まで一貫して行ってきました。代表取締役の高瀬季里子は、札幌生まれで生まれた時からエゾシカのお肉をいただいて育ちました。メインのお肉が鹿という家庭はほとんどないでしょう。普通じゃないとわかるようになって、葛藤しながら真剣な課題として、生きることに向き合ってきました。保護されていた動物が駆除される対象として社会問題となり、頭数の調整だけをしていて良いのか。地球は人間だけの世界ではない、ということを改めて意識しなくてはならないのです。それは自然がずっと人々に問いかけてきたことです。

(聖夜に贅沢「ジビエ」、気鋭のフランス料理2店で食す)
フランス料理で、もっともぜいたくな食材は何だと思うだろうか? 答えにはトリュフ、フォアグラ、キャビアが多く挙がると思うが、ノン。正解はジビエ、野生鳥獣類の肉である。日本ほど食に季節感を重視しないフランスだが、ジビエだけは別格。冬越えのため鳥獣類が身に脂を蓄えて旬を迎える秋から冬になると、レストランの厨房はがぜん活気づく。フランス革命までは王侯貴族に独占されていたジビエの料理には、フランスの肉食文化と狩猟文化の粋が詰まっている。日本では最近、害獣として駆除されたシカとイノシシが夏でも食べられるようになったが、ベストシーズンは11月15日~翌年の2月15日(北海道は10月1日~翌年の1月31日)の狩猟期。特にクリスマスシーズンには、最高のごちそうとしてレストランの食卓をきらびやかに飾る。なかでもジビエがおいしいと評判の2軒を紹介しよう。東京・銀座のフランス料理店「KAIRADA」のオーナーシェフ、皆良田(かいらだ)光輝さんがジビエを扱うようになって、もう30年以上がたつ。皆良田さんは「魚は養殖より天然がおいしいとされますよね。肉も同じです」と言う。一言でジビエといっても、日本で食べられるジビエにはカモ、キジ、キジバトなどの鳥類と、シカ、イノシシ、クマなどの哺乳類がある。種それぞれの違いはもちろんだが、同じ種でも獲る時期、獲れる場所、オスかメスか、年齢と体の大きさ、発情しているかいないかなどで味も食感もまったく異なってくる。これが野生の肉ならではの魅力だ。見た目や手でさわった触感、匂いで一つひとつ異なる個性をとらえ、どの調理法がベストかを見極めるのは、なまじな経験ではうまくいかない。難しいからこそ、やりがいがある。家畜と違って個体差が大きく、ときにはやせて脂の少ない個体が届くことも。ピンからキリまで、どんな肉も上手に使いこなす腕が求められるから面白い。皆良田さんがジビエと出合ったのは、東京・有楽町のフランス料理店「アピシウス」だった。今年で創業40年、シャガールやユトリロの名画、ロダンの彫刻が飾られる重厚なグランメゾンである。初代料理長の高橋徳男さんは、日本のフランス料理に「地産地消」の概念をもたらしたシェフの1人。北海道に牧場と農園を開いて専用の食材を育てたうえ、日本各地の産地を訪ねてすぐれた魚介や青果物を探し出し、料理界全体の食材レベルを引き上げた。とりわけジビエの野性味あふれる味わいを紹介したいという気持ちが強く、自ら狩猟免許を取ってハンターになったほどの熱の入れようだった。「アピシウス」には全国から多種多様な国産ジビエが届き、皆良田さんは駆け出し時代から豊富な食材に触れる幸運に恵まれた。はじめてカモ肉の切れ端を口に入れたときは「こんなものか」程度の感想だったが、次に鍋に残ったソースをつけて食べてみると「あまりにもおいしく、雷に打たれたような感動」を味わい、ソースの力を実感した。皆良田さんはそれからジビエ料理で知られるレストランを食べ歩いたが、どこも同店ほどの感動はなく、高橋さんの技術と知識がずば抜けていることを知ったという。高橋さんのもとで修業を続け、狩猟免許も取得した。師は「KAIRADA」開店の翌年に亡くなったが、その味は皆良田さんの作り出す皿のなかに生き続けている。ジビエ料理で重要なのは、第1に良い材料の確保。「臭い」「クセが強い」というイメージを持たれがちだが、狩猟後に素早く適切に処理された肉には臭みがまったくない。特にシカ肉は本来、牛肉より淡泊な低脂肪・高たんぱく・高ミネラルのヘルシーミートである。やや力強い風味を持つエゾジカと、やさしい味わいのホンシュウジカを盛り合わせたメインディッシュは、皆良田さんの自慢の1皿だ。一方、シカと並ぶ国産ジビエの代表格であるイノシシ肉は、牛肉と豚肉にはない独特な歯応えがある。特に脂が美味で「かむとサクッとして心地よく、ジュッと甘みが広がるのがたまらない」と皆良田さん。イノシシはワイン煮込みを基本にし、匂いのやや強いオスは赤ワイン、匂いのおだやかなメスは白ワインと作り分けている。臭みがないとはいえ、ジビエらしい特有の香りは確実に存在する。それを消しすぎるとジビエらしさがなくなり、生かしすぎると食べづらい。ジビエがはじめての人でもおいしく食べられるよう、どこまで残すか。そのバランスにいつも傾注するのだという。皆良田さんが特に気に入り愛用しているのが、鳥取県の地域ブランド「若桜(わかさ)ジビエ」である。処理技術の確かさでは全国でも定評があり、HACCP(ハサップ)適合施設認定と国産ジビエ認証施設認定を取得する「わかさ29(にく)工房」(鳥取県若桜町)から、シカ肉とイノシシ肉を中心に取り寄せている。ときにはアナグマの肉が届くこともあるそう。良いだしが出て、脂も美味と近年、ジビエ好きが注目の食材だ。工房の施設管理責任者、河戸建樹さんにも、皆良田さんの料理の魅力をうかがった。「例えば『若いメスを』と指定して注文するシェフが多いなかで、皆良田さんは絶対に指定せず、どんな個体でもおいしく料理してくれる。とびきり腕がよく、ジビエのことをよく理解している最高のシェフ」とのことだ。「KAIRADA」のジビエ料理を堪能するなら、ムニュ・ナチュール(1万7600円)を。そのときどきに入荷したジビエをふんだんに使った6皿の特別コースで、12月23日~25日にも提供される。ジビエ尽くしのクリスマスを楽しんではいかが。今、新進気鋭のジビエの名手として注目を集めているのが、「ラチュレ」(東京・渋谷)の室田拓人さんだ。フランス料理の世界に入ったばかりの頃からジビエ料理にあこがれ、その道を究めるために努力してきた。いろいろな店を食べ歩き、この人のもとで勉強したいと定めたのが、吉野建(たてる)さん。権威あるフランスのジビエ料理コンテストで最優秀賞を獲得し、フランス政府より農事功労章シュバリエ受勲などの栄誉に輝いた。高橋徳男さんの次の世代を代表するジビエの使い手である。吉野さんのレストラン「タテルヨシノ」で修業を積むかたわら、狩猟免許を取得。「より上質で、誰の手によってどこで獲られたか、はっきり分かるジビエを手に入れるには、自分で獲るのが手っ取り早いと気づいた」のが理由だというが、狩猟を体験することで、いただいた生命を無駄なく使い切る大切さを身に染みて感じるようになったという。2016年に独立し、オーナーシェフとして「ラチュレ」を開店。すぐに「ミシュランガイド東京」で一つ星に輝いた。そして、「ミシュランガイド」掲載店のシェフらと22年にはジビエの価値向上を目指す「ボンジビエ委員会」を発足するなど、ジビエ料理の普及にも積極的に取り組んでいる。「ラチュレ」では、冬は提供する肉の9割がジビエになる。シカ、イノシシはもちろん、マガモ、ヒドリガモ、カルガモ、コガモなど、カモだけでも味の違いを楽しむことができる。珍しいところではスズメやヒヨドリ、哺乳類ではヒグマ、ツキノワグマ、アナグマも。日本で食べられるジビエのほとんどがそろうという。最近、クマの駆除に対する批判の声が上がっているが、人間を襲ったり、農業被害を与えたりしていることも事実。やむなく奪った生命は、おいしくいただくことが供養になるのではないだろうか。「ジビエは個体によって、全部が違う。システマティックに使いこなせる家畜に対し、臨機応変さと深慮の両方が求められる。料理する楽しさをより深く味わえる食材」という室田さんが、特に愛してやまないのが、ヤマシギだ。フランスでは「ジビエの王様」と呼ばれ、希少価値がとくに高い。室田さんがヤマシギを料理するとき、ラチュレの調理場は緊張感で研ぎ澄まされる。室田さんのジビエ料理のテーマの1つが、日本産ジビエに適した調理法の開発。エサの違いによるものか、フランスのジビエよりも風味が繊細なので、イノシシとハマグリ、シカとカキといったように、魚介と組み合わせると素晴らしいマリアージュが生まれることがある。現代料理では素材にはできる限り手を加えず自然のままに、という考え方が主流なのに対し、「ジビエは重ねて重ねてさらにおいしくなる。手間はかかるが、素材主義を超えた力を発揮し、もっともフランス料理らしい表現ができる」と室田さん。そんな室田さんに自分のジビエ料理への評価を聞いてみると「食べる人によって、フレキシブルに変えられることが強み」という答えが返ってきた。ジビエを食べ慣れた食通、デートで訪れたカップル、ジビエ初体験の人、臭みやクセを求める人……千差万別な客の求めに応じ、一番心掛けるのは、それぞれの顧客にとってのストライクゾーンとなる味わいを確実に提供すること。ポイントになるのが、熟成度による味の違いだ。ジビエ体験を積んだ人には、少し熟成が進んだ状態を。特にキジ肉は独特な香りが出るまで1カ月は寝かせないと、真の魅力は味わえない。逆に初心者には、どんな種でも熟成させず軽い味わいで提供するという。ジビエを心ゆくまで楽しめるのが、夜の「シェフのおまかせコース」(2万4000円)と「スペシャルコース」(1万6800円)。使うジビエは日替わりなので、予約の際にはぜひ要望を伝えよう。12月23~25日だけのクリスマスコース(2万8500円)にも、むろんジビエ料理が供される。世界に目を向けると、各地で野生動物が減少の傾向にある。フランスでも昔のようにジビエが食べられなくなった。ところが日本では、この30年でシカの個体数は10倍以上、イノシシは3倍以上に増え、生息域も全国で広がっている。世界的に見ても、日本は高品質なジビエ肉が豊富に手に入る希少な国なのである。いまの室田さんの目標の1つは、ジビエ料理をインバウンド観光の目玉にすることだ。野生鳥獣による農作物被害は駆除で減ってはいるものの、21年度の被害額は155億円。駆除したシカとイノシシの9割が利用されず、捨てられているのが現状だ。「もっと利用されるよう環境が整えば、日本のジビエの可能性はもっともっと広げられる。そのために、ジビエの魅力をさらに発信するのが自分の役割だと思っています」。世界的な日本ジビエブームを起こす。それが室田さんの抱く夢である。

(クマ出没:宮城)
栗原市によると、22日午前11時30分ごろ、栗原市金成有壁鍛冶屋にクマが出没しました。

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12/22
(「発射罪」の適用拡大へ、ハーフライフルの所持厳格化も)
警察庁は21日、現行の銃刀法で「拳銃等」にのみ適用され、法定刑の上限が無期懲役の「発射罪」について、猟銃など銃刀法が規定する全ての銃砲とクロスボウ(洋弓銃)への対象拡大を検討していると明らかにした。昨年の安倍晋三元首相銃撃事件を受けた銃規制対策で、罰則強化による抑止が狙い。来年の通常国会にも銃刀法改正案を提出したい考えだ。また、長野県で5月に4人が殺害された事件を受け、犯行に使われたハーフライフルの所持許可の基準を見直し、射程が長く基準が厳格なライフルと同程度にすることも検討。狩猟や競技といった本来用途で3年以上使われなかった場合としている許可取り消しの要件も、2年以上に短縮する方針だ。

(ネットの銃製造情報を規制)
警察庁は21日、安倍晋三元首相銃撃事件を受け、インターネット上などで銃の製造方法を解説し、不法所持をあおる行為について規制する方針を明らかにした。罰則も整備する。また、長野県で警察官ら4人が殺害された事件を踏まえ、猟銃の一種「ハーフライフル銃」を所持できる要件を厳しくする。同庁は銃による凶悪事件対策を盛り込んだ銃刀法改正案を来年の通常国会に提出したい考えだ。安倍元首相を銃撃した山上徹也被告(43)=殺人罪などで起訴=は「ネット上の動画を見て学んだ」などと話し、自宅で複数の銃を製造したとされる。同庁は、銃製造や譲渡に関するネットの情報を問題視。不法所持をあおったり、そそのかしたりする悪質な投稿などに罰則を科す方針だ。山上被告が製造した銃7丁のうち1丁は形状から、「拳銃等(小銃、機関銃)」に該当せず、罰則が比較的軽い「その他銃(装薬銃、空気銃など)」として立件された。検討案では、形状要件を満たしていない自作銃でも、人の殺傷を目的とした所持であれば、「拳銃等」と同じ罰則を科すことができるよう加重規定を設ける。さらに、現行は「発射罪」の対象が「拳銃等」に限られるため、猟銃や「その他銃」にも拡大する。猟銃規制も強化する。5月に長野県中野市で4人が殺害された事件で、青木政憲被告(32)=殺人罪などで起訴=は警察官1人の殺害にハーフライフル銃を使用したとされる。同銃の所持許可要件をライフル銃と同等まで厳しくする。現在、ライフル銃の所持には「継続して10年以上の猟銃の所持許可を受けていること」など厳格な基準があるが、ハーフライフル銃は初心者でも許可申請を出すことができる。散弾銃より射程が長く命中精度も高いため、警察庁は青木被告のように悪用するケースを想定し、規制強化が必要と判断した。

(銃刀法改正へ、ローン・オフェンダーの事件防止狙い)
警察庁は21日、手製銃や猟銃の規制強化を柱とする銃刀法改正案を来年の通常国会に提出する方針を決めた。手製銃が使われた昨年7月の安倍晋三・元首相銃撃事件や、今年5月に長野県中野市で4人が殺害された猟銃発砲事件などを受け、銃による重大犯罪への対策を強化する。警察庁によると、現在の銃刀法で規制対象としている「銃砲」は、拳銃や機関銃などの「拳銃等」と、「猟銃」、「その他の銃(空気銃など)」の3類型に大別され、それぞれ罰則などが異なる。公共の場所などで発射した場合に最大で無期懲役を科す「発射罪」は、3類型のうち「拳銃等」だけに適用される。だが、手製銃は殺傷能力が高くても、形状などによっては「その他の銃」に分類される。安倍氏の事件で逮捕された山上徹也被告(43)(殺人罪などで起訴)の自宅などから押収された手製銃も、7丁のうち6丁は「拳銃等」だったが、残る1丁は「その他の銃」と判断された。そこで、法改正案では、猟銃とその他の銃も「発射罪」の対象に加える。罰則を強化し、事件抑止につなげる狙いがある。所持罪の法定刑も、猟銃とその他の銃は現在、拳銃等より軽い。これも見直し、人を殺傷する目的で猟銃やその他の銃を所持した場合は、拳銃等(1年以上10年以下の懲役)と同じ水準まで刑罰を引き上げる。ネット上では近年、銃の作り方などを紹介する悪質な情報が流布されている。これを取り締まるため、銃の所持などを公然とあおり、そそのかす行為を新たに刑罰の対象に加える。そこで、法改正案では、猟銃とその他の銃も「発射罪」の対象に加える。罰則を強化し、事件抑止につなげる狙いがある。所持罪の法定刑も、猟銃とその他の銃は現在、拳銃等より軽い。これも見直し、人を殺傷する目的で猟銃やその他の銃を所持した場合は、拳銃等(1年以上10年以下の懲役)と同じ水準まで刑罰を引き上げる。ネット上では近年、銃の作り方などを紹介する悪質な情報が流布されている。これを取り締まるため、銃の所持などを公然とあおり、そそのかす行為を新たに刑罰の対象に加える。このほか、猟銃のうち、ライフル銃より射程が短い「ハーフライフル銃」について、所持許可の基準をライフル銃並みに厳しくする。ハーフライフル銃が長野の事件で使われたことを受けたものだ。今回の法改正は、長崎県佐世保市のスポーツクラブで2007年に起きた銃乱射事件を受けた規制強化以来の大幅改正になるとみられる。警察庁幹部は「法規制の強化により、組織に属さず過激化するローン・オフェンダー(単独の攻撃者)による事件の防止につなげたい」と話している。

(散弾銃実包を自家用車に保管か、火薬類取締法違反の疑い:神奈川)
日本クレー射撃協会の強化担当役員が銃弾を不適切に取り扱ったとして、火薬類取締法違反の疑いで神奈川県警に刑事告発されたことが19日、複数の関係者への取材で分かった。県警は告発状を受理した。告発したのは、複数の日本協会関係者。告発状によると、当該役員は神奈川県内のナショナルトレーニングセンター(NTC)競技別強化拠点での合宿で、規定の数量を超える散弾銃実包を火薬庫でなく、宿泊先の駐車場で自家用車に保管していたとしている。この件を含め、組織運営を問題視する匿名の文書が4月に日本オリンピック委員会(JOC)に届き、日本協会はJOCからの要請を受けて第三者の弁護士による調査を行ったが、一部理事が無効を訴えるなど混乱している。銃弾は当該役員が、自ら経営する鉄砲店で販売。弁護士の調査では、一定の店舗外で運搬して販売したとみられる行為が法律で禁じる「行商」にあたる可能性が「否定できない」と指摘したほか、利益相反取引として「理事会の承認を得るべきだった」としている。告発された役員は取材に応じ「保管方法は(法律上)どう捉えられるかは判断できないが、行商に関しては地元の関係各所に細部まで確認しているので問題ない」と反論した。日本協会は2006年の不明朗会計を発端に長期間の内紛が続き、09年にはJOCが補助金などの支給を差し止めたこともある。

(死んでいたカラスから「鳥インフルエンザウイルス」:青森)
青森県五所川原市で19日、死んだカラス1羽が見つかり、簡易検査の結果、鳥インフルエンザウイルスが確認されました。高病原性の可能性について国立環境研究所が遺伝子検査を行っています。県によりますと、弘前大学農学生命科学部が19日、五所川原市でカラスの調査研究をしていたところ、死んだハシブトガラス1羽を見つけて回収しました。弘前大学が簡易検査したところ、鳥インフルエンザの陽性反応が確認されたということです。簡易検査のため、高病原性か低病原性なのかは遺伝子検査が必要なため、現在、国立環境研究所で検査が行われています。この結果は判明次第、公表するとしています。環境省は、19日付でカラスが回収された地点を中心に半径10キロ圏内を野鳥監視重点区域に指定しました。県はこの区域内の湖や沼、河川など10か所で野鳥が大量に死んでいるなどの異常がないか緊急調査するとともに、死んだ野鳥などを見つけた場合は県や市町村に連絡するよう呼びかけています。

(野生イノシシ2頭の「豚熱」確認:秋田)
秋田県北秋田市で捕獲されたイノシシ2頭から豚熱ウイルスが検出された。秋田県によると、12月11日と13日に北秋田市の林の入り口で野生のイノシシが捕獲され、県立大学で遺伝子検査を行ったところ、20日に2頭の豚熱感染が確認された。県内で豚熱が確認されたのは、8例目と9例目。イノシシの捕獲場所から半径10キロ以内には2つの養豚場があり、県が21日に立ち入り検査を行っているが、異常はなく、県内82の養豚場でも変わったことはないという。県内で飼育されているブタは、豚熱ワクチンを接種しているため、移動や出荷に制限はない。豚熱は、ブタやイノシシが感染する病気で、感染力が強く致死率が高い一方、人にうつることはなく、仮に感染したイノシシの肉などを食べても健康に影響はないという。

(年の瀬も相次ぐクマ被害、冬眠に「-4℃の壁」)
19日も秋田県や新潟県で出没するなど、年の瀬になっても相次ぐ「冬眠しないクマ」。実はエサ不足とは別に気温が大きく関係していることが分かりました。「マイナス4度の壁」に迫ります。神奈川県の名所に緊張が走りました。大山詣りで知られる神奈川県の霊山・大山。先週土曜日、見晴台付近でクマが出没したのです。登山道の一部は今も通行禁止となっています。さらに19日も新潟県長岡市で1頭、秋田県大館市で2頭のクマが目撃されました。未だ冬眠につかないクマ。その異変を目の当たりにしている現場がありました。取材班が訪れたのは―。冬季休園中の飼育施設、ベア・マウンテン。東京ドームおよそ3個分15ヘクタールの広大な森のなか、自然に近い環境で11頭のヒグマを観察することができます。今年は2日に今年最後の食事を終え、全頭、冬眠の準備に入りました。飼育スタッフが向かったのは、ヒグマが眠る獣舎。その屋上です。突き出た筒に、耳をあてます。すると―。ベア・マウンテン 坂出 勝 園長「(クマの呼吸が)ここはだいぶ深い。吸ってから吐くまでが12秒。1分間に2回」。クマがぐっすり。冬眠中は1分間に2~3回しか呼吸をしないといいます。ベア・マウンテン 坂出 勝 園長「クマの場合は冬眠のカテゴリーの一つ、“冬ごもり”という言い方をしている。冬ごもり中は(体温が)3~4度下がり代謝も下がる」。しかし、今年は異変が。17日、獣舎を確認しに行くと…。ベア・マウンテン 坂出 勝 園長「起きていますね」。そこには、完全に起き上がっているクマ。敷布団代わりのワラを前足で手繰り寄せるようにいじっています。眠らずに、活動しているクマは一頭だけではありませんでした。この日、11頭中、実に4頭が目を覚ましていました。エサ不足が冬眠に影響するともいわれるなか、こちらの施設のクマは十分な食事をしてから冬眠に臨んでいます。一体なぜ、眠らないのでしょうか。ベア・マウンテン 坂出 勝 園長「やっぱり暑い。ここに(獣舎内の)温度計があるが、いまマイナス1度ですね。マイナス4度くらいにならないと、全頭安定して眠らない」。オープンから15年以上、記録をとり続けた結果、こちらのクマは、室温がマイナス4度を下回らないと、冬眠しにくいことが判明したのです。ベア・マウンテン 坂出 勝 園長「12月20日前後になると例年だと、しっかり寝てくれる状況になるが、気温が高くてベッド作りがうまくいかず、今は気温が高くて起きている。特に今年は多いかなと思う」。ベア・マウンテン 上岡 真衣 飼育担当「気温が高くてベッド作りがうまくいかず、この子はわらを細かく切って、ふかふかの布団を作るタイプ」。ベア・マウンテン 上岡 真衣 飼育担当「気温が高いと結露などができて、水に濡れてしまうなど寝心地がよくないのだと思う」。12月上旬、新得町の平年の平均最高気温は1.7度。今年は5.1度と、3度以上も暖かくなっています。クマが満足に冬眠できないまま、春を迎えるとどうなるのでしょうか。ベア・マウンテン 坂出 勝 園長「きっちり代謝を下げて寝かせてあげないと、春の段階でガリガリになる。実際にうちでは一例だけあった。野生のクマは、やせすぎてエサが無くて眠れなくなると、危険を冒して街に出てでもなんとかエサを得たい」。ベア・マウンテンでは、クマが冬眠しやすい室温、マイナス4度以下を保つため、扇風機で冷たい外気を送り込むなど対策を行っています。

(年の瀬は冬眠しないクマ『穴持たず』に注意せよ:北海道)
今年世間を騒がせた、クマ被害。冬になった今も、12月19日に秋田県や新潟県で出没しており、年の瀬も予断を許さない状況が続いている。そのなかでも、冬眠をせずに冬をしない個体「穴持たず」に危機感が募っている。北海道猟友会札幌支部防除隊隊長の玉木康雄氏が解説する。「札幌市では、今年は12月中旬くらいから冬眠に入るとみられていましたが、私も19日時点で大方のヒグマは冬眠に入ったと思っています。ただし、『穴持たず』という冬眠しないクマもいますから、注意が必要です。クマは餌が取れなくなった時点で、そのままのたれ死ぬか、眠って春まで我慢するかの選択に迫られて、おおかたの個体は冬眠に入ります。眠るリスクと餌が取れないリスクを天秤にかけて寝るリスクをとる、というだけです。餌が取れれば寝る必要はありませんから、非常に狩猟が上手な特殊な個体や、人間の作った作物などを上手く奪取する能力がある個体は寝なくていいわけです。そうした特殊な個体を『穴持たず』といい、昔から存在してきました」。「穴持たず」の危険性を“現場”の人間はどのように見ているのか。玉木氏が続ける。「『穴持たず』の一番の特徴は、高いハンティング能力です。真冬に餌が取れるということは、基本的に動物を食べているとしか考えられない。冬は山のどんぐりも取れない状況ですからね。そのような状況のなかで、カロリーを摂取する能力があるということは当然、鹿を仕留めるだけのスピードを出せるなどの狩猟能力に長けているということです。場合によっては、本当に限られた個体ですが、人間を襲う可能性が十分あります」。さらに、「穴持たず」以外にもこれからの季節で危険なクマがいる、と玉木氏は警鐘を鳴らす。一度冬眠したクマが、早めに起きてしまう可能性があるというのだ。「クマは冬眠に入る時には胃の中は空っぽです。皮下脂肪を蓄えて眠りに入るのですが、今年は北海道だけでなく、全国的にクマの餌が非常に少ない。ですから、皮下脂肪が十分に蓄えられないまま冬眠に入ったクマが、通常よりも早い時期に目を覚ますという可能性もあります。一般的には餌が豊富であれば冬眠に入る時期が遅れ、少ないと早まります。今年で言うと、秋田県や石川県、新潟県などでは、この時期でもまだ出没しています。暖冬の影響があるからかもしれません。これだけクマの生息地が増えた以上は、そういう『穴持たず』や冬眠期間が短いクマに出会うリスクがあり得る。山に入ること自体をやめる必要はないかもしれませんが、『山に入るには常にリスクがある』という用心だけはしないといけませんよね」。クマの恐怖は、冬になったとて消えることはないのだ。

(シカと衝突事故多発で注意喚起「ハイビーム活用を」:愛知)
東三河北部の北設楽地域や隣接する浜松市北部で今年、シカと車両の衝突事故が多発している。浜松市天竜区では11月末時点で前年同期より5割以上増えており、人身事故も2件発生。警察は注意とともにハイビームの活用などを呼びかけている。静岡県警天竜署によると、1~11月にシカが関係する交通事故は25件に上り、既に昨年1年間の18件を超えた。国道152号で10件、同362号で9件など、交通量の多い幹線道路での発生が目立ち、その8割が夜間(午後6時~午前6時)に起きている。

(クマ大量出没から浮かび上がってきた課題は:富山)
富山県内の今年1年を振り返る「ニュースこの1年」は「クマ問題」。今年過去最悪の被害が出たクマ出没についてです。県内での大量出没から浮かび上がってきた課題について考えます。道路を横断し、住宅街へと走り去るクマ。県内では今年クマの出没が相次ぎ、人が襲われる被害が続出しました。最初の人身被害は8月、レジャー客で賑わう夏のキャンプ場でした。富山市有峰の折立キャンプ場周辺で、30代の男性が背後からクマに襲われ擦り傷を負いました。10月に入り、平野部でクマの目撃情報が急増。特に富山市で連日、目撃、痕跡情報が相次ぎます。2週続けて、住宅で人が襲われます。富山市安養寺では「クマが自宅の庭に潜んでいる」との情報があり、警察と猟友会が出動しました。男性がクマに襲われた住宅は、3日前にクマが潜んでいた家の真横でした。その8日後には富山市の別の住宅で女性2人が襲われ、70代の女性が頭から出血、30代の女性が鎖骨を折る大けがをしました。2人は家の中に逃げ込みましたが、クマは玄関を壊して家の中に侵入し、2人を襲いました。今年のクマによる人身被害は7件。8人が負傷し、1人が死亡しました。県のまとめでは、先月末時点でツキノワグマの目撃・痕跡情報は618件。大量に出没した2019年に次いで、過去10年で2番目の多さです。富山市の郊外とはいえ、住宅が点在する地域。今年の特徴は、人が生活する場所に出没するクマです。こうした街中や人里に現れるクマは「アーバンベア」と呼ばれています。クマの生態に詳しい県自然博物園「ねいの里」の間宮寿頼さんはクマに対する認識を改める必要があると話します。*県自然博物園ねいの里 間宮寿頼さん「特に平野部にも出ている数カ月間はクマを意識した生活様式にしないといけない。現実的かどうかは難しいが作業をするときはヘルメットをするとか」。クマを引き寄せるカキの実。今年はクマが出没し始めると、実の除去や木の伐採を行う住民が多く見られました。中には、カキの木を伐採しているところをクマに襲われたケースもあり、対策は後手に回っている現状があります。*県自然博物園ねいの里 間宮寿頼さん「山に木の実がなくなるのは植物の戦略としてどうしても周期的に今後も来る可能性がある。ブナ・ミズナラが凶作の年はクマが大量出没する危険性が高いと分かっている。早めに秋の堅果類の豊凶の予測が出た時点で、カキなどの誘因物を除去するのが鉄則。だからと言って全部を取り切れるかという課題はもちろんある。個人・地域でできること。公の力な必要なところもある」。また、クマの移動経路になっているとされる河岸段丘や河川敷のヤブの整備に加え、クマの生息域と人間の生活圏の「境界線作り」も必要になってきていると指摘します。*県自然博物園ねいの里 間宮寿頼さん「(クマが)移動経路に入れないように、分断していくというのも必要になってくる。完全に入れないように、電気柵を含めて恒久的なものを作っていくのも対策として必要になってくるのではないか。ただそれも地域の合意形成が必要」。県は今年度、市町村からクマ対策費用の補助申請が相次いだことから、カキの木の除去などへの予算を来年度拡充する方針を示しています。抜本的な解決策を見い出せない野生動物との共存。できる対策から進めていくことが求められます。県では5年に1度クマの生息数調査を行っていて、来年度が調査年度に当たります。県は国に対して調査費用の補助を申請し、これまでの調査に加え、奥山だけでなく人里に現れる恐れのある個体なども調べることにしています。

(死亡の大学生を襲ったクマ、過去に周辺で人を襲ったクマとは別個体:北海道)
北海道南部の福島町で男子大学生や消防士らあわせて4人がクマに襲われた事故で、DNA型の分析の結果、過去に同じ地域で人を襲ったクマとは別の個体であることがわかりました。福島町の大千軒岳ではことし10月、登山中の男子大学生がクマに襲われ、その後、遺体が見つかりました。同じクマは消防士3人も襲いましたが、消防士が刺した首付近のナイフの刺し傷が致命傷となり、その後、死がいが見つかりました。これまで北海道立総合研究機構は、このクマの死がいから歯や内臓、毛などを回収しDNA型などを分析していました。

(クマ対策にデジタル技術生かせ:富山)
2023年被害が相次いだクマの出没。デジタル技術を使った対策の現状を取材しました。今年はクマによる人身被害が相次ぎました。最初の被害は8月。登山口で男性が襲われ、けがをしました。10月以降は富山市の郊外で立て続けに被害が発生します。県内では2006年以来となるクマの被害による死亡者も。2023年、クマに襲われけがをした人は9人にのぼります。県内でのクマの出没は10月と11月で433件。2022年の同じ時期と比べると15倍以上で、この10年では大量出没と言われた2019年に次いで2番目に多くなっています。背景には、クマの餌となる山のドングリの不作があるとみられ、各地でクマが好んで食べるカキの木の伐採が行われました。そしてこの秋は、デジタル技術を使った新たなクマ対策の導入が進みました。栴檀山自治振興会 前田幸雄会長「カメラはねこちらに設置してあるんですよ。これカメラの設置になります」。カメラを設置したのは砺波市栴檀山地区の自治振興会です。センサーが熱を感知すると撮影し、撮った画像はリアルタイムで前田会長などのスマホに届く仕組みです。栴檀山地区では2023年、害獣用のおりに小グマがかかっていることがたびたびありました。近くに親グマが潜んでいる可能性もあり、不用意に近づくのは危険です。離れたところからでもおりの状況を把握できるよう、地区の10か所にカメラを設置しました。前田会長「まずここにエサを入れています。エサを食べて無くなったかどうかをこれまではしょっちゅう確認しに来られてました。それが確認に行かなくてもこのカメラを通じて減ったか分かります。見えますから。(クマが)どこにいるか分からないってのがありますから、そんな現状の中(安全に)確認できるっていうのが大変にありがたいと」。おりにクマがかかった場合は、地区が導入している回覧板アプリ「結ネット」を通じて住民に、画像付きで情報発信しています。前田会長「『注意してください』っていう喚起にも大変役に立っていると思ってます。この結ネットの場合は瞬時に皆さんのほうにご案内できると」。ただ、クマ以外の動物がおりにかかった場合も画像が送られてくるため、1つ1つ確認するのが大変、といった課題もあります。前田会長「一番来るのはタヌキです。あとハクビシン。たまに鹿も来ます」。一方、富山市はクマ、シカ、イノシシなどを見分けることができるAIカメラをクマの出没が確認された場所を中心に10台設置しました。その精度は99.9パーセントということですがAIカメラが検知して、捕獲に至ったのはこれまでに1件のみ。原因として市の担当者は「出没範囲が広すぎて網羅できない」としています。専門家は、クマ対策にカメラは有効であるものの一定の成果につなげるにはかなりの台数が必要だろうと指摘します。県自然博物園ねいの里  赤座久明さん「もし設置するんなら相当莫大な予算を投資して、ハンターが減って見回りする頻度が低くなったから、それをカメラで補おうと考えると、相当な台数を準備しなきゃいけないことになりますよね。高いやつを小数置くよりも普及品をたくさん置くほうが良いっていう場合が多いように私は思うんです」。赤座さんはクマの移動経路となる川沿いなどへ集中的に設置すると検知数が増えるのではないかと話しました。クマによる被害は2023年だけの話ではありません。対策の見直しや新たな対策の導入。そして、人材の育成も急務です。被害防止に向けて積極的な取り組みが必要です。

(ヒグマを甘くみた「にわか猟師たち」を襲った惨劇:北海道)
いま日本全国でクマによる被害が急増している。じつは約100年前の北海道でもクマ被害が急増したことがあるのをご存じだろうか。ノンフィクション作家の中山茂大さんは「かつて日露戦争で余った村田銃の払い下げを受けた『にわか猟師』が増えたことから、むしろクマ被害が相次ぐことになった。人間の経済活動とクマによる被害には密接な関係がある」という――。今年は全国でクマの出没が相次いでいる。環境省の統計によると、2023年4月から9月の間にクマの被害にあった人は109人にものぼる。特に北海道では、2023年5月に朱鞠内湖(しゅまりないこ)で釣り客の男性が襲われ死亡。10月には渡島半島で登山中の大学生が襲われてやはり死亡している。いずれも五体がバラバラになるほど食害されていたといわれる。なぜこれだけ被害が続いているのか。いくつかの理由が考えられるが、まず猛暑など環境の急変によって山で十分なエサが手に入らず、やむを得ず人里に下りてくる個体が増えたこと、次に過疎化によってクマの生息域と人里が近接するようになったこと、最後にクマの個体数自体が増えたこと、などがあげられる。かつての日本でもクマによる被害が相次ぐ時代があったが、そこには上記の理由以外にも、別の大きな理由があったと考えられる。筆者は、明治から昭和にかけての約70年分の地方紙を通読し、ヒグマに関する事件を拾い上げてデータベース化している。これをもとに、北海道・樺太でヒグマによる死者数が多かった年と、その理由を、可能な範囲で考察してみよう。・明治34年 11名。当時の北見枝幸(えさし)はゴールドラッシュに沸いていた。砂金掘り人夫の小屋にヒグマが乱入し、2名が喰い殺されている。・明治41年 14名。上川郡士別(しべつ)地方では、わずか2カ月の間に7名がヒグマの犠牲になった。(前年に大流行した狂犬病との因果関係が疑われる)・明治43年 9名(樺太1名)。・大正元年 16名。上川郡東川村、美瑛(びえい)村で、5名が喰い殺される事件が起きている。晩秋には士別朝日村で、4名が喰い殺された。・大正2年 18名(樺太7名)。この年は北海道開拓史上最悪ともいわれる大凶作の年だった。上川郡愛別村では、親子3名が自宅前でヒグマに襲われ死亡している。(この事件の加害クマが、前年の士別朝日村の事件を引き起こした可能性があることは、別稿で述べた)また「北海タイムス」によれば、この年に日高の浦河(うらかわ)管内で6名がヒグマによって死亡したという報告がある。さらに樺太では、巡業中の活動写真隊7名が行方不明となっているが、ヒグマが多数出没していた栄浜付近であったため、全員が喰われたのではないか、という記事がある。こちらも詳細は不明である。・大正3年 8名。・大正4年 16名(樺太2名)。かの「苫前三毛別事件」が発生した年である。三毛別事件のわずか2週間前にも、近くの浜益村で、14歳の少年が喰い殺される事件が起きるなど、凄惨(せいさん)な事件が相次いだ年だった。・昭和3年 7名。昭和の初め頃には凶作の年が続いた。特にこの年、士別村温根別(おんねべつ)集落で、子連れの人喰いクマが出没し、測量隊を次々と襲うなど、負傷者が続出した。・昭和7年 7名(樺太6名)。この年は樺太での被害が大きかった。紙パルプの需要増加により、急速に樺太の森林が切り出された。これによって棲み処を奪われ食物に窮したヒグマが凶暴化し、昭和に入ると人喰いクマ事件が続出するようになる。この年には北部の敷香(しすか)、恵須取(えすとる)を中心に7名が犠牲となった。このように見てくると、明治の終わり頃から人喰いクマの犠牲者が急増していることがわかる。明治の終わり以降に人喰いクマ事件が急増した理由として、明治30年に制定された「北海道国有未開地処分法」があげられる。この法律により、開墾地は無料で開拓者に付与されることになった。「明治41年6月までの貸付面積は実に142万5000町歩を数え、道内における農耕適地の大部分が処分されたのである」(『新北海道史』)。とあるように、日当たりのよい、滋味豊かな北海道の土地は、おおむね人間の手に帰してしまった。一方で、ヒグマは農耕に適さない土地、つまり傾斜地や沼沢地、深山幽谷に追いやられてしまったのである。もう1つの理由として、日露戦争後に大量に余っていた旧式村田銃を、猟銃として安く一般に払い下げたことがあげられる。拙著『神々の復讐 人喰いヒグマたちの北海道開拓史』(講談社)でもくわしく述べたが、「にわか猟師」が激増したことで、撃ち損じが増え、手負いのクマを大量に生み出したことが、大正期の被害激増の一因と考えられる。『北海道庁統計書 第三十回』によれば、明治42年における狩猟免許の「乙種免許所持者」は392名に過ぎなかったが、大正7年には5066名と激増している。その一方でヒグマの捕獲頭数がたいして増えていないことは、『新版ヒグマ』(門崎允昭 犬飼哲夫)掲載の統計を見ても明らかである。要するに「にわか猟師」が増えたことが、その理由だろう。大正後期に入ると、人喰いクマによる被害はやや落ち着いて「小康状態」となるが、昭和期に入ると再び増え始めた。それまでとは異なり、人の住む地域での事件よりも、ヒグマのテリトリーで人が襲われるケースが増えている。先述した通り、紙パルプの需要が増えたことで、北海道・樺太の森林が切り出されるようになり、造材人夫がヒグマに襲われる事件が続発するようになったのだ。昭和9年に起きた次の事件は、まさに凄惨の極みというべきだろう。

(特別講演は「山の環境とクマの活動の変化」がテーマ)
インプレスグループで山岳・自然分野のメディア事業を手がける株式会社山と溪谷社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:二宮宏文)が設立した日本山岳遺産基金は、来る2024年2月3日(土)に「2023年度 日本山岳遺産サミット」を開催いたします。第1部では、基金の一年間の活動を紹介するともに、2023年度の「日本山岳遺産」認定地および認定団体を発表します。また、各認定団体の代表者には登壇いただき、活動内容や課題について説明をいただきます。第2部では、東京農工大学大学院教授の小池伸介先生をお招きし、「山の環境とクマの活動の変化」をテーマとした特別講演を行います。

(クマと人とが棲み分け、共に生きていくための活動支援金を募ります:秋田)
自立自走可能な地域創生の実現を目指すレッドホースコーポレーション株式会社(本社:東京都墨田区、代表執行役社長:山田健介、以下 当社)は、秋田県にかほ市(市長:市川 雄次、以下 にかほ市)のふるさと納税事業を2015年度よりサポートしています。にかほ市では全国の他の地域と同様、今年は例年より多くのクマが目撃されました。人口が密集する市街地にまで出没したことにより、地域住民に大きな不安が広がりました。この状況に着眼したにかほ市が、住民の安全安心な暮らしを守るとともに、クマとの共生・自然との共生を目的とした『クマといい距離プロジェクト』を立ち上げました。当社は同プロジェクトについてふるさと納税を活用し、支援するための企画を立案し、公開までの一連の業務をフルサポートしました。今回は限定返礼品として、農作物で被害を受けている農業協同組合の協力のもと、JA秋田しんせいのブランド米「土づくり実証米」を選びました。来年度、さらなる整備事業の拡大を目指し、今後も協力体制を強化し取り組んでいます。

(イノシシと衝突し列車が緊急停車:広島)
19日午後6時15分ごろ、広島市安佐北区上深川町のJR芸備線狩留家―上深川間で、狩留家発広島行きの普通列車がイノシシとぶつかり、緊急停車した。JR西日本中国統括本部によると、広島―下深川間で上下2本が運休、上下7本が最大約40分遅れ、計約千人に影響が出た。

(中心部でクマの目撃情報相次ぐ:福井)
勝山市の中心部で20日朝、クマの目撃情報が相次ぎました。市によりますと、けが人などはいませんが、クマは現在、倉庫の中に潜んでいるとみられるということで、市は捕獲のためのおりを設置するとともに、住民に注意を呼びかけています。勝山市によりますと、20日午前7時ごろに、市の中心部にある住宅の庭で、クマ1頭が目撃されたと住民から市に連絡があったということです。その後も、クマを目撃したという情報が相次ぎ、午前8時ごろには、住宅から約50メートル離れた倉庫で、クマ1頭が目撃されたということです。勝山市と警察、それに地元の猟友会が倉庫を確認したところ、動物のようなものが動く音がしているということで、市などはクマが倉庫に潜んでいるとみて、捕獲のためのおりを複数しかけました。市によりますと、今のところ、クマによるけが人などの情報は確認されていないということで、市は警察などと周辺のパトロールを強化するとともに、住民に注意を呼びかけています。現場は、勝山市役所から南に150メートルほど離れた、市の中心部にある住宅街です。

(クマ多数出没:神奈川)
全国でクマの出没情報が頻発する中、相模原市内でも11月から4頭のクマがイノシシ用のわなに掛かった。目撃情報はそれ以上にあり、現場で対応する県猟友会津久井支部の小坂義和支部長は「クマがイノシシの領域にまで来ている。十分に気を付けてほしい」と注意を促す。クマは、11月7日寸沢嵐、11日千木良、25日澤井、12月6日小渕(いずれも緑区)で見つかった。どれもシカやイノシシを捕獲するためのわなにツキノワグマが掛かっていた。現場で対応した同支部の小坂支部長は「イノシシの領域にクマが出没しているということは、人家からとても近い距離で出ているということ」と危機感を口にする。幸いにも今のところ大きな人的被害はない。今夏は、全国で猛暑日が過去最多を更新するなど、暑さで作物が育たないなどの影響が出た。「山でも実ができず食べるものがない。さらにナラ枯れによりドングリができない。山の餌がなくてクマが出てきているのでは」と分析する。実際にわなに掛かったクマを見た小坂支部長は「痩せ細っていて本来の体重の半分ほどになっていた」と話す。なお、シカやイノシシの捕獲については「例年同様」という。対策として、小坂支部長は音の出るものを身に着けてほしいと強調する。「初詣や初日の出などで山に入る人もいると思う。近くの山でも鈴やラジオを持って行くなどの対応をしてほしい。音がすればクマは逃げる傾向にある」と遭遇しないような準備が必要と言う。もし遭遇した場合は「走って逃げてはいけない。動物の習性でこちらが逃げると動物は追いかけてくることが多い。視線を逸らさずに後ずさりして対応を」と話す。

(台所をあさるクマ住宅に侵入、どうやって?:栃木)
冬本番の寒さを迎えるなか、20日も市街地でクマが目撃されました。冬眠の遅れも指摘されていますが、栃木県では先週、住宅に侵入したクマが台所のゴミをあさる被害も出ています。住宅にクマが近づく異常事態が続いています。栃木県の那須塩原市の住宅でも、先週、驚きの110番通報が…。11日の早朝午前5時すぎに『家の中にクマが入ってきた』という内容の通報がありました。クマは、2階まで上がってきたといいます。警察によりますと、早朝5時、物音で目が覚めた60代の女性が2階の台所を確認したところ…クマがごみ袋をあさる姿を目撃しました。幸い、女性にけがはありませんでした。本来、臆病なはずのクマが、寝ていたとはいえ、人がいる住居に入り込むことはあるのでしょうか?『クマの生態に詳しい』石川県立大学・大井 徹 特任教授「今出没しているクマは、エサが無くて飢えたクマ。普段は警戒心が強いクマだが食欲が警戒心に勝った」。今回、驚くべきはそのクマの侵入経路です。通報した人によると、実はその日、女性は窓の戸締りを忘れてしまったそうです。クマはその隙をつき、窓を開けて侵入したとみられます。本当にクマにそんなことができるのでしょうか?それが「できる」ことを裏付ける…クマがドアを開ける瞬間の映像がありました。クマが「建物」に入り込むケースは、12月に入ってからも各地で報告されています。北海道芦別市で、雪が積もるなか姿を見せたクマ。このクマは、木材会社の「倉庫内」に入り込んでいました。またつい先日も、石川県白山市で「車庫」の奥にいたクマに女性が襲われけが。「エサを食べる」以外の目的でも、クマは建物の中に入ることがあるといいいます。石川県立大学・大井 徹 特任教授「(クマは)市街地の中では、人目を避けるために夜活動する。エサにありついて、うろうろしているうちに夜が明けて、右往左往している間に人と出会って、人目を避けるために隠れ場所として家屋の中に侵入することが考えられる」。ただ、そんな簡単に「建物」の中に入れるものなのでしょうか?アメリカでは、クマが建物の中に入ろうとする姿がたびたびカメラに捉えられています。住居に近づく親子グマ、すると母グマが―。当たり前のようにドアを開けました。しっかりとドアノブを握っているように見えます。住人が音を立てると、クマはそのドアから離れました。さらに、驚きなのが―こちらも当たり前のように、シャッターを開け…中を物色。右手と左手を交互に使っています。このクマの「手」について、専門家は―石川県立大学・大井 徹 特任教授「柔軟な手のひら・指・長い爪を使って、ドアノブを引っかけたりして、引き戸を開けることができる」。クマの手の写真を見てみると、長い爪に加え、足の裏と違い、肉球と肉球の間に隙間が。特に、この部分がしなやかに曲がることで、クマは、器用にモノを掴むことができるといいます。そんなクマの侵入をひとたび許せば、家の中は大変なことに―食材がパンパンに詰まった冷蔵庫をあさるクマ。手にとったのは…アイスクリーム。住宅の中に入ってきたのは、3頭の子グマです。小グマが姿を消した次の瞬間。撮影者の男性が、異変を察知。 窓の外にカメラを向けると、さらなる危険が迫っていました。その後、慌ててドアを閉める撮影者。窓の外を見てみると、一回り大きなクマが。一歩間違えば、子育て中の母グマと鉢合わせていたかもしれません。日本でも、10月に北海道八雲町で、冷蔵庫の食べ物が食い荒らされる被害が発生。いつ、人身被害に繋がってもおかしくありません。石川県立大学・大井 徹 特任教授「食欲のほうが警戒心より増している状態だが、普段いないところにクマたちはいることになる。高いストレス状態にあると思う。人間と出会ったりすると、人間を攻撃する可能性が高まる」。石川県立大学・大井 徹 特任教授「住宅はもちろん車庫や倉庫の扉、窓をしっかり閉めておく必要がある」。

(ジビエ料理で町おこし:岩手)
シカの肉を使ったジビエ料理で町おこしに取り組んでいる大槌町の食肉加工会社が20日町役場を訪れ新たな生産体制で取り組んだ今年度の活動を報告しました。20日は畑を荒らすシカなどを食肉として活用したジビエ料理で町おこしに取り組んでいる町内の食肉加工会社の担当者など9人が大槌町役場を訪れました。この会社では町の財政支援も受けて、ことし4月、新たな工場を稼働させ、解体から加工、販売までを一貫してできるようになり、急速に冷凍できる設備も備えうまみを保ったまま肉の保存も可能になりました。会社の担当者は大槌町の平野公三町長に4月からの新工場の稼働でシカの処理頭数が去年の同じ時期の2倍以上のおよそ500頭に増えたと報告していました。さらに今年度、開発したこうじに漬けたシカ肉が県産農産物を使用した加工食品を表彰するグランプリで最優秀賞をとるなどあわせて5つの賞を受賞したことも報告していました。会社によりますと売り上げも3倍近く伸びたことということです。平野町長は「若い人たちが地域のジビエを盛り上げ町を元気づけてくれている。町として今後もサポートしていきたい」と話していました。食肉加工会社の兼澤幸男代表取締役は「大槌町を『ジビエの町』にするため、自然との共存を考えながら処理頭数をさらに増やしていきたい」と話していました。

(「うまいジビエ」技術確立:大分)
食肉加工や飲食店の経営を手がける大分県宇佐市の「サンセイ」は、コロナ禍で大きく売り上げを落としたが、ジビエ(野生鳥獣肉)の販売に活路を見いだした。5月には処理の仕方を学べる施設「日本ジビエアカデミー」を民間企業として初めて創設。技術力を底上げして業界の裾野を広げ、牛や豚、鶏と肩を並べる食材として確立させたい考えだ。「自分のせいのようで心苦しい。どうにかならないか」。社長の山末成司(50)は数年前、農家の女性から相談を受けた。猟師にシカを駆除してもらったが、そのまま捨てられてしまうことに心を痛めていた。2022年度に大分県内で捕獲されたイノシシやシカのうち、ジビエとなったのは4%ほど。山末は「あやめた命と向き合い、責任を持って活用する使命が自分にはあるのでは」と考えた。コロナ禍では飲食店の客足が途絶え、学校やホテルへの納入分もキャンセルが相次いだ。1か月の赤字が約1000万円に達したこともあり、一時は会社をたたむことも頭をよぎった。通信販売に参入して自宅での消費需要を狙う中で、牛や豚などと比べて扱う業者が少ないジビエに狙いを定めた。心を砕いたのは、「臭いがあっておいしくない」というイメージを 払拭ふっしょく すること。個体差に加えて鮮度や加工方法でも大きく状態が変わる。加工の手法も確立されておらず、試行錯誤を繰り返した。商品に適さないものを地元の「九州自然動物公園アフリカンサファリ」(宇佐市)が餌として買い取ってくれたことも、大きな支えになった。ソーセージやハンバーグとして20年に発売すると、初めは4000円だった月の売り上げは右肩上がりとなり、1年後には300万円を超えた。猟師が持ち込んだ鳥獣を買い取る仕組みも評判を呼んだ。昨年は約1300頭を引き取り、5年前の5倍近くまで増えた。「うまいジビエ」を増やすことがさらなる社会貢献につながるとの思いを深めた山末は、蓄積したノウハウを伝授するアカデミーの設置に行き着く。食肉に適した加工手順だけでなく、山でのわなの仕掛け方や仕留め方などの狩猟方法、出店の助言や調理法といった経営面まで網羅的に取り上げる。「手間はかかるが、実践的にしないと身につかない」というのが山末の思いだ。猟師らが付きっきりで助言し、この半年で約50人が利用した。福岡県田川市で建設会社「豊潤」を経営する中島真二(49)もアカデミーに足しげく通う一人だ。地元でも鳥獣被害が増えており、人に危害が及ぶのではと懸念していた。ジビエ加工施設を建てる土地を探す中島は「一から十まで教えてもらえるのは本当に助かる」と感謝する。山末は「今はジビエ文化の 黎明れいめい 期」とし、「鳥獣被害を減らしつつ、いただいた命を大切にする循環を作り上げたい」と力を込める。

(イノシシの肉を活用したケーキをお披露目:島根)
農作物に被害をもたらすイノシシの肉を活用したユニークなケーキが島根県松江市で開発され、市の関係者にお披露目されました。これは害獣として処分されることが多いイノシシの肉を有効活用し、地域の魅力を発信しようと、松江市の菓子製造会社などが開発したものです。ケーキのスポンジにイノシシ肉を混ぜ込んで焼き上げ、塩で味付けしたもので、試食した松江市の山根幸二副市長は「臭みがなくて、イノシシ肉という感じがせず、おいしい」などと話していました。食材のイノシシ肉は地元の生産組合から提供を受けていて、ことし8月からはオンライン販売を始めているということです。開発した菓子製造会社の松浦孝則業務課長は「今後も地元食材を使ったケーキを販売し、山陰の魅力を全国に発信していきたい」と話していました。

(「冷燻」ジビエ、自慢の味に:石川)
小松市江指町の獣肉処理加工施設「ジビエ アトリエ 加賀の国」が、冷たくてもおいしく味わえるイノシシ肉の「冷燻製(くんせい)ソーセージ」を作った。手軽に食べられるジビエ商品を求める客の声に応え、1年以上の試行錯誤を繰り返して開発。23日に施設で開く産直販売会で数量限定で発売する。ソーセージは1パック5本入り(約170グラム)。低温で長時間煙をくゆらせる特殊な方法「冷燻」で仕上げた。焼かずにそのまま食べることができ、奥深い風味が特徴。「ジビエは手軽ではないとずっと言われてきた」と施設で技術指導を務める福岡大平さん(32)。誰もが気軽に食べられる商品にしようと、塩はグラム単位で調整し、煙のくゆらせ方にもこだわったという。同施設は、北陸3県で唯一、国のガイドラインに基づいた適切な衛生管理を行う施設として「国産ジビエ認証」を取得している。福岡さんは「誰もがおいしく食べられる自慢のソーセージになった。クリスマスの家族だんらんの場やプチぜいたくをしたい時に味わってほしい」と話している。

(クマ出没:宮城)
登米市によると、21日午後4時ごろ、登米市登米町寺池金沢山にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、20日午後5時ごろ、仙台市泉区松陵4丁目にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、19日午後4時ごろ、仙台市泉区野村新八木沢にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、18日午後4時30分ごろ、仙台市青葉区芋沢大竹原にクマが出没しました。

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(野菜の仕分けの女性、クマに顔ひっかかれ搬送:石川)
16日午前9時55分頃、石川県白山市安養寺町の住宅で「クマが出て、(女性が)顔をひっかかれた」と、家族から119番があった。被害に遭った70歳代の女性は顔や左腕に重傷を負い、病院に救急搬送された。消防によると、女性は倉庫前で1人で野菜の仕分け作業をしていたという。白山署や同市が周辺をパトロールしている。

(住宅街にクマ男女3人襲う、麻酔銃を使い捕獲:石川)
石川・白山市の住宅街で、男女3人がクマに相次いで襲われ、けがをした。クマは住宅街に逃げ込んだが、16日午後に捕獲された。午前10時ごろ、白山市の住宅街で、70代の女性がクマに襲われて顔などをひっかかれ、重傷を負った。さらに午後0時45分ごろ、1件目の現場のすぐ近くで、70代の男性がクマに襲われけがをした。その後、午後2時過ぎには、最初の現場からおよそ300メートル離れた神社前で、女性がクマに襲われた。3人とも、命に別条はないという。クマは、付近の老人ホームの敷地内で目撃されたあと住宅街に逃げこみ、その後、麻酔銃を撃たれて、つい先ほど捕獲されたという。

(1頭捕獲もさらに別の個体が潜んでいる可能性:石川)
16日午前9時53分ごろ、白山市鶴来地域にある安養寺町の住宅の庭で、家人の女性(70)がクマに顔や左腕を引っ掛かれて重傷を負った。午後には同町で男性(75)、近接する桑島町では女性(67)が襲われ軽傷を負った。3人とも命に別条はない。クマは午後5時、民家敷地に逃げ込んだところを猟友会によって駆除された。クマはもう1頭いる可能性がある。石川県内で12月に入ってからのクマの人身被害は初めてで、専門家は冬眠期の出没に暖冬の影響を指摘する。75歳の男性は午後0時35分ごろ、襲われた。男性は襲われたクマとは別の1頭が自宅車庫に侵入するのを目撃。その後シャッターを閉めて閉じ込めた。白山市は17日に車庫を調べる。市によると、駆除されたクマは体長約130センチで、体重80~90キロの成獣。70歳女性は自宅前の倉庫付近で、野菜の仕分けや草むしりをしていた時に襲われた。白山署や市などは、襲われた男性の証言と、午後の同じ時間帯にクマの目撃情報が複数あったことなどから2頭いるとみて捜索。午後2時10分には1頭が近接する野々市市上林1丁目の老人福祉施設「百々鶴荘(ももづるそう)」の敷地に侵入。同2時14分には、白山市鶴来桑島町で67歳女性が襲われた。クマは同市部入道町の民家敷地に逃げ込み、カーポート付近に潜んでいたところを駆除された。3人が襲われたのは国道157号に近接する鶴来地域の住宅街で、近くに鶴来総合文化会館クレインがある。市は、別のクマが出没する可能性があるとして防災メールで注意を呼び掛けている。16日夜も現場周辺を警戒し、17日は目撃情報が多かった場所を中心に猟友会、白山署と巡回する。県によると、2005年の統計開始以来、これまで県内では12月の人身被害はなかった。今年、県内では20年11月以来となる人身被害が発生、10月に金沢市の大乗寺丘陵公園で84歳男性、小松市の木場潟公園東園地で60代男性がそれぞれ襲われている。クマの生態に詳しい石川県立大の大井徹教授は、例年なら12月はクマが冬眠に入る時期となるが、今年は気温が高いため冬眠入りが遅れている個体がいると指摘した。鶴来地域に出没したクマについて、餌となるカキなどを求めて夜に山を下りるうちに平地までたどり着いたのではないかと推測。「日が昇り、人の姿を見てパニックになって襲い、逃げ道を探す中であちこちで複数人に危害を加えた可能性がある」と話した。大井教授によると、クマは12月から翌3月ごろにかけて冬眠する。体内に餌をため込み、冬眠中は仮死状態になる。ただ今年は暖冬の影響で活動を終えていない個体が少なくないとみられる。大井教授は、クマは嗅覚が鋭いため、平地に取り残したカキがあると、臭いにつられて人里まで下りてくるとし、「民家敷地のカキは収穫するなど、クマを寄せ付ける要因をなくしてほしい」と呼び掛けた。

(国の交付金で改修したジビエ施設が休止、連絡とれず:神奈川)
国の交付金を使って改修された神奈川県南足柄市のジビエ処理加工施設が、運営開始から4カ月余りで休止状態になっている。狩猟団体が市の施設を改修して利用していたが、運営が行き詰まったとみられ、10月に閉鎖。市は別の業者を選んで加工を再開する方針だが、団体の代表と連絡が取れず施設再開への条件を整えられないという。ジビエ施設は同市の「足柄森林公園丸太の森」の旧売店。一般社団法人「ジャパン・ハンター・ガールズ」(JHG)が国の鳥獣被害防止総合対策交付金620万円やクラウドファンディング(CF)の資金などを工事費に充てて改修し、6月から利用している。JHGが処理したシカは7月に4頭、8月に6頭だったという。市によると、8月上旬、施設の施工業者が工事代金の一部の未払いを市に訴え、市担当者はJHG代表に「払っていただきたい」と伝えた。しかし、9月中旬から代表と連絡が取れなくなり、10月下旬には施設が閉鎖されたという。今月8日の市議会では、JHGと協定を結んで改修と運営を任せた市の対応が問われ、松岡武・環境経済部長が「(施設の)計画は確認したが、JHGの自己資金がどれだけあるかの確認はできていない。しっかりした確認が必要だった」と答えた。

(「まるでこちらが悪者のよう」ヒグマハンターの報償攻防:北海道)
ヒグマの個体数抑制を視野に入れる北海道は、来春の捕獲事業を強化するため、ハンターへの報償を半額補助することを決めた。道内には一律の報償基準がなく、私費で装備をそろえるハンターに行政が依存する構図も残る。過去には報酬を巡り騒動に発展したケースもあった。「責任感で現場に出ていたのに、まるでこちらが悪者のようでした」。あるハンターは苦い経験をそう振り返る。2018年7~9月、島牧村でヒグマの出没が相次いだ。ヒグマは連日、深夜に住宅地に出没。道猟友会寿都支部島牧分会の花田雄二さん(55)らハンターは村の要請に応じて出動し、報償は総額1000万円を超えた。「高額すぎる」と問題視した村議会は翌19年、報償の上限を240万円とする条例を可決した。積み上がる報償費を心配したのは猟友会側も同じだった。「もう数百万円になっている。大丈夫なのか」。分会で事務を担当する花田さんの問い合わせに対し、村側は「人命には代えられない」と答えた。1000万円超の数字は高額に見えるが、実際は14人で協力し、3カ月間連日深夜に、命の危険が伴う仕事に従事し続けた結果だ。寝る時間がないまま海に出た漁師もいた。1人当たりの受け取り額は、多い人で1カ月60万~70万円。何度もヒグマを撃てる場面はあったが、深夜の住宅地で発砲許可が下りず、事態が長引いたという事情もあった。村議会が可決した「定額働かせ放題」とも言える条例内容に反発した猟友会は、村への協力を見合わせるようになった。再開したのは21年10月に上限額が撤廃され、以前と同水準の報償が復活してからだ。村は現在、緊急駆除の報償としてハンター1人につき1時間当たり3750円を支払っている。人への警戒心を植え付けるために道内で残雪期に実施されている「春期管理捕獲」と、箱わな設置を要請した際の見回りの報償は同2500円だ。猟銃の購入代金にも補助を出すなど年間約1400万円の予算を計上している。報償は市町村によってさまざまだが、道ヒグマ対策室によると、島牧村の水準は「平均もしくは多い方」だという。一方、協力するハンターには持ち出しがある。ライフル銃の弾は1発1600円。ヒグマを仕留めるには2、3発が必要で、5、6発撃つこともある。高騰するガソリン代も、540円の足代が出る箱わなの見回り以外は報償から捻出する。そもそも1人前のハンターが誕生するまでには、安くても数十万円する銃やスコープ、無線機、スノーシューなどの冬山装備一式といった高額の初期投資が必要だ。銃や狩猟の免許の取得や、実弾講習にもお金が掛かる。補助が出る場合もあるが、万が一の安全はこうした個人の出費で担保されているのが実情だ。島牧村で活動する道猟友会寿都支部長の高島紀彦さん(66)は「島牧村の補助は最低ラインだ」と語る。「若い人にとっては高額の装備品をそろえるだけでも負担だ。十分な報償がないのに弾代やガソリン代を自腹で払い、危険が伴うヒグマ駆除に協力する人がどれだけいるだろうか。道がヒグマの数を減らす必要があると考えているのであれば、適正な報償基準を示し、ハンターの身分を保障するべきだ」と主張する。実際、道が5月に実施した市町村アンケートでは、157市町村(回答率90%)のうち、78%が「ヒグマに対応できる人材(捕獲者)の確保」がヒグマ対策の課題になっていると答えている。23年に19市町村で実施された春期管理捕獲では、計20頭が捕獲された。島牧村での実施日数28日間は最長で、捕獲数も9頭とトップだった。同村産業振興課は「溝ができたこともあったが、昔から報奨や補助の制度を整えていたことが、ヒグマに対応できる人材の確保につながっていると感じる」と話す。ヒグマの人身被害が相次ぐ中、道は捕獲目標数の設定を検討しており、24年は春期管理捕獲を40市町村に拡大することを目指している。12月14日に閉会した道議会では、ヒグマ対策推進費1500万円を計上した補正予算が成立した。報償のほか、弾代やガソリン代も半額を補助し、参加者を増やしたい考えで、道ヒグマ対策室は「市町村には補助金を活用した制度拡充を検討してほしい」と話している。

(マタギも恐れる、冬眠しないクマ)
今年、東北地方や北海道など各地でクマによる人的被害が後を絶たない。やがて彼らが冬眠すれば惨事も収まるはず――と思ったら、眠らないクマがいるらしい。どういうことか。識者に尋ねた。まず話を聞いたのは、森林総合研究所四国支所(高知市)の支所長、岡輝樹さんだ。岩手県でクマの生態について調査研究を手がけた経験がある。岡さんによると、秋口にたくさん栄養を取り、十分に体を太らせた上で、木のうろや土の中に潜って春まで過ごす。これが一般に知られるクマの冬眠だ。「途中で起きて餌を探すことなどはせず、じっとしています」。

(とてつもない力!真正面からイノシシ衝突:千葉)
千葉・館山市で12月12日、罠にかかったイノシシを捕獲しようと近づいた猟師の男性ら2人が暴れたイノシシに襲われ、背中や太ももを30針縫う大怪我をした。映像には、鬱蒼とした山の中で猟師がイノシシを捕獲する道具を持ち、イノシシを捕獲しようとする様子が映っている。足を罠にはさまれ、激しく暴れ回るイノシシに道具を近づけた瞬間、猟師はバランスを崩して斜面を転がり落ちてしまった。「まさに『猪突猛進』。そういう状況で突進してくる」(猟師・太田政信さん、以下同)。11月上旬には、群馬県でも罠にかかったイノシシの捕獲に向かった男性2人が襲われ重傷を負った。イノシシは、罠にかかっていても危険だという。「イノシシが最後の力をふり絞って『絶対に生きてやる』という気持ちで突進されると、ワイヤがちぎれたりする。何回も何回もイノシシが同じ方向に転がってワイヤが解けたりという状況」。襲われれば大怪我どころか、死の危険すらあるイノシシ。最近、人の生活圏に近づいてきていると専門家は話す。「イノシシと出合う頻度が、明らかに今年度は多い感じがする。(イノシシが)増え切ってしまっている状況」(日本大学・生物資源科学部・中島啓裕准教授)。今年、過去最多となっているクマ被害。市街地に出没する「アーバンベア」と同様、エサ不足が影響してイノシシも人里に下りてきているという。

(インターネット環境活用したクマ監視システム:山形)
全国的に、クマによる人的被害や農作物の食害が多かった今年。山形県酒田市では、猟友会など見回りをする人の労力軽減と安全を確保するため、ある先進的な取り組みを始めています。酒田市によりますと、4月から先月27日までに寄せられたクマの目撃件数は、2006年以降で最も多い201件となっています。市では、目撃件数が多い場所を中心に箱ワナを仕掛けるなどしていますが、ここで問題となるのは、猟友会など、見回りや駆除に行く人の労力軽減と安全の確保です。そこで・・・。酒田市環境衛生課・高橋一臣さん「鳥獣わな監視装置を導入しています。それがこちらです」。今年9月、酒田市では、インターネットを使った鳥獣の監視装置を導入しました。仕組みはこうです。装置にはカメラがついていて、クマが入り、ワナの扉が閉まると、磁石の付いた紐が装置から外れ、画像が撮影されます。酒田市環境衛生課・高橋一臣さん「このシステムでは捕獲の状況がメールで送られてきますので、事前の情報共有ができることと見回りの回数が2日に1回と労力の削減にもつながっています」。監視装置は山間部の多い平田地区の生石、松山地区の山寺などに設置され、先月までに、これまでよりも少ない労力で5回捕獲に成功するなど、一定の効果を上げています。酒田市環境衛生課・高橋一臣さん「現在、センサーは2機と機器の台数に限りがあるので、全ての捕獲現場での活用は難しい状況ですが、今回の効果を踏まえて来年度以降の体制について検討したい」。県猟友会のまとめでは、今年3月末時点で、およそ6割の会員が65歳以上の高齢者となっています。先進的なシステムが、クマの駆除や見回りにあたる人の負担を減らし、市民の安全につながるか、注目です。

(ヒグマ出没、赤外線カメラ搭載ドローンで追跡しハンターが駆除:北海道)
北海道内全域で今年、ヒグマの被害や出没が増えたことを受け、室蘭市は13日、ドローンを使ってクマを追跡し、地元猟友会のハンターが捕獲・駆除するまでの野外訓練を初めて実施した。同市では今年、市街地でのクマの出没が相次いだ。同市でクマの捕獲にあたる北海道猟友会室蘭支部のハンター2人と、室蘭署や市担当者、ドローン事業者など12人が参加した。過去に目撃情報が多いチマイベツ浄水場(同市石川町)で、職員が市道を横切るクマらしき動物を目撃。クマの痕跡が次々発見され、同市香川町の牧場の敷地内でクマを確認し、人の気配に気づいたクマが森に逃げ込んだ――との想定で、市職員やハンターがドローンによる捜索と銃を使った捕獲の手順を確認した。訓練では、赤外線カメラを搭載したドローンが約70メートル上空から森林を撮影。人工知能(AI)を使って撮影画像を処理すると、森に身を隠していたクマ役の職員の姿がディスプレーに浮かび上った。クマ役が再び牧草地に現れたため、市と警察が発砲による周囲への危険性を協議し、警察が「危険性はない」と判断。模擬銃を持ったハンターが森から出てきたクマ役に銃口を向け、「駆除」した。市内でのクマの目撃は、2021年度に1件だったが、22年度に6件、今年度はこれまで10件と、年を追うごとに増えている。特に今年は市街地でクマ出没が相次いだ。このため、市は、市内を「市街地」「市街地周辺」「森林地帯」の三つに分類し、人の生活圏やクマの生息域などに応じた対策を講じる「ゾーニング管理」を導入した。市地域生活課の中野茂樹課長は「市内10か所に監視カメラを設置し、巡回も強化している。道や警察とも情報を共有して最善の対策をとり、人間とヒグマのすみ分けを図りたい」と話した。

(県警と県猟友会防犯協力会:岡山)
行方不明者の捜索など地域の安全安心につながる活動に協力してもらおうと、岡山県警は14日、県猟友会防犯協力会と連携協定を結んだ。同協力会は県猟友会の会員約3500人で9月に発足。協定では、県警が行方不明者などの情報を協力会に提供し、会員らが狩猟活動中に発見した際に速やかに連絡する。会の中で特殊詐欺被害や交通事故の防止に向けた啓発活動も進める。県警本部(岡山市北区内山下)で締結式があり、協力会の中村伸一会長、県警の荻野英俊生活安全部長、井上卓彦交通部長が協定書に署名した。中村会長は「山中などでの捜索力を生かし、積極的に協力したい」と話した。

(キョンが大量発生中!:千葉)
「ギョアー!」。千葉県内ではいま、毎晩のようにキョンの恐ろしい鳴き声が響き渡っている。房総半島に溢れ返ったこの小さな草食獣が、次なる縄張りを求めて向かう先は―。その足跡を追った。太平洋を一望できる千葉県勝浦市の別荘地「ミレーニア勝浦」。よく晴れた11月下旬の週末、瀟洒な邸宅と美しい庭が並ぶこの住宅街を“3匹の中型犬”を連れた70代の女性が歩いていた。しかし、よく見ると、リードにつながれているのは2匹だけだ。1匹は犬の少し後ろを自由に歩き回っており、女性がそれを怪訝な顔でチラチラと振り返っている。茶色の体にツヤツヤとした黒い瞳、細くしなやかな脚と小さな角……。記者の近くまでやってきたその生物は犬ではなく、キョンだった。記者がスマートフォンのカメラを向けると、シャッター音を聞いたキョンはすさまじいスピードで逃走。女性はこう嘆息した。「最近は、昼間でもこうして姿を見せるようになりました。うちの庭の花は全部食べられてしまって、家庭菜園も全滅。ホームセンターでネットを買ってきても、かじって穴をあけて入ってきちゃうんです。体が小さいから、小さな穴でもくぐれちゃうみたいで」さらに恐ろしいのは、その鳴き声だという。「キョンは基本的に夜行性なので、夜になると、『ギョアー! 』とか『ギョン! 』という声が響き渡ります。まるで女の人の叫び声ですよ。それが一晩中続くから、私たち年寄りは不眠症になっちゃった。で、朝起きたら庭はフンだらけでしょ。オシッコもそこら中でするから、雨上がりの日には町中に牧場のようなムッとした臭いが充満するんです。キョンを庭に入れさせないために、家を高い塀で囲もうかと夫と話しています。せっかく景色のいいところに別荘を建てたのにね……。キョンが自由に歩き回って、人間が塀のなかに入れられるなんて変な話ですよ。近所の人たちと会っても、最近はキョンの話ばっかりです」。千葉県内で特定外来生物のキョンが急増、各地で農作物などに甚大な被害をもたらしている。体長70~100cm、体重10kg程度のキョンは、ニホンジカをひと回り小さくしたような小型の草食獣である。原産地は中国や台湾だが、'01年に勝浦市の動植物園「行川アイランド」が経営難により閉園すると、同園で飼育されていたキョンが脱走。クマの生息しない千葉県では人間以外に天敵がいないため、自由を得たキョンはその数を急激に増やしていった。千葉県自然保護課の市原岳人副課長が言う。「'19年度には5万9500頭にまで増え、現在は7万1500頭が確認されています」特徴的なのはその繁殖力だ。生後7ヵ月で妊娠し、出産した翌日には再び妊娠することができるという。「稲や大豆、イチゴなどの農作物を食い荒らすだけでなく、鳴き声によって住民への睡眠妨害も起きています。市には『キョンを殺すな』といったクレームも届いていますが、『法律に則って駆除をしています』と答えています」(同前)。動植物園からの脱走当初は勝浦市にしか生息していなかったキョンだが、すぐに君津市、鴨川市、大多喜町など周辺地域に勢力を伸ばし、近頃は住宅街にも出没するようになった。千葉県内で取材をすると、キョンの目撃情報は次から次へと出てきた。この小さな草食獣は、県内各地でパニックを引き起こしているようだ。「行川アイランド」跡地近くのラブホテル経営者が嘆く。「夕方になると決まって、『ギュアー! 』という恐ろしい声が響くんだよ。最初は、ホテルの客室で女が首を絞められたのかと思って警察に電話しそうになった。近頃は慣れたけど、いまでも驚いた客からクレームが入ることがある」。一方、鴨川市の農家は怒り心頭だ。「白菜やキャベツ、ナスにトマトにソラマメ、あいつらは何でも食うよ。ビニールハウスで栽培していれば大丈夫かと思ったら大間違い。どこかの隙間から入って、食い散らかすんだ。一度、ハウスのなかで見つけて30分近く追いかけまわしたことがあるけど、動きが速すぎて捕まえられなかった。朝起きて大切な作物を食べられていると、殺意を覚えるよ」。君津市内で墓地を管理する女性は、「お墓に供えられた生花をムシャムシャ食うもんだから、たまらんよ。いつもポケットに石を入れて、見つけたら投げてるけど、すばしこいから当たりゃしない。あんな罰当たりな獣はいなくなったほうがいい」。と恨み節を語り、勝浦市のゴルフ場従業員はこう呆れた。「ゴルフ場周辺の林で生息しているようなんですが、喉がかわくとコース内の池の水を飲みに来ます。バンカーやグリーンの上で寝ていたり、フンをしていくこともよくありますね。姿を見せるのは明け方や夕方以降が多いので、お客様には迷惑をかけていないと思いますが……。最近は、『キョンが見たいから案内してくれ』と言われることもあります。こんなことで人気になるのはちょっと複雑ですね」。

(ツキノワグマの保護管理の成果と広域管理:兵庫)
令和5年度は全国各地でツキノワグマ・ヒグマの出没や人身被害が多発し大きな社会問題になりました。兵庫県ではセンターの設立当初から、ツキノワグマの個体群の保全と被害の抑制の両立を目指して、個体数の推定のほか、行動特性や食性の解明、対策の効果検証を行ってきました。本年度のシンポジウムでは、兵庫県および森林動物研究センターが進めてきたツキノワグマの生態や生息状況、対策について最新の知見を紹介し、科学的根拠に基づいた保護管理の在り方、今後の課題を提示するシンポジウムをオンライン開催します。

(狩猟歴53年の73歳猟師とツアーへ:大分)
大分県杵築市山香町で食肉加工所「山香ジビエの郷」を営む猟師の甲斐清英さん(73)は、自らの狩猟に同行してもらう体験ツアーを来年2月15日まで実施している。モニター参加者に同行して取材したところ、野生動物による農産物への被害、猟師の高齢化や狩猟を始めるハードルが意外に低いことなど、これまで知らなかった事実が見えてきた。甲斐さんの狩猟歴は53年。主な獲物は鹿とイノシシで、ジビエの加工処理も14年前から始めたという。狩猟期の冬は猟師、夏は造園業、春と秋は農業で生計を立ててきた。ツアーでは、まず野鳥の猟に向かった。国東半島に点在するため池を車で巡るが、現場に着くと甲斐さんは少量の塩と水をまき、山の神様に狩猟の安全を祈った。野鳥に気付かれないよう息をひそめ、ため池外側の土手を登った。甲斐さんが銃を構え、3発の銃声が響いた後、1羽のカモが参加者の頭上を通過した。失敗だ。「こんなのは仕留めんとなあ」と悔しそう。その後も数カ所のため池を巡ったが、他の野鳥には出合わなかった。次は事前に仕掛けたわなの見回りだ。わなは猟師1人につき30個に制限されており、甲斐さんはイノシシ用の箱わなと、くくりわなを15個ずつ雑木林などに置く。箱わなは、イノシシの好物の米ぬかをまいておびき寄せ、箱内の空間に張った透明なテグスにイノシシが触れると入り口の扉が落ちて生け捕りにする。警戒心の強いイノシシは入り口近くの米ぬかを少しずつ食べ、奥のテグスまで進むのに1週間かけることもあるという。甲斐さんは足跡の位置を調べ、米ぬかの補充場所を工夫する。相手との根比べだ。毎日2時間かけ、15カ所の米ぬかを補充する。くくりわなは、シカなどの足をはさんで捕らえる器具。獲物がかかると発信器から携帯電話へ通知が来る。今回のモニターは、同町立石の看護師、芋岡祐美さん(39)と長男で高校2年の佑陸(ゆうり)さん(17)親子。昨秋からわな猟を始めた祐美さんは「勤務先の知的障害者施設で育てた落花生が、アナグマやタヌキに食べられてほぼ全滅したのが悔しくて『わな猟免許』を取った」と動機を語り、「免許取得は簡単だし、箱わなの見回りは帰宅後。勤務しながらでも猟はできます」と続けた。2人は甲斐さんの指導を受け、イノシシの解体も体験。ナイフで皮をはぎ、筋を除去して骨から肉をはずしていく。甲斐さんは炭をおこして肉を焼き、用意しておいたスペアリブの煮込み、シシ汁、おにぎりなども加え、参加者は山里の恵みを味わった。甲斐さんによると、杵築市にいる猟師約100人のうち半分は70代以上。このため、「10年たてば狩猟文化は息絶えてしまう。一方でイノシシや鹿に荒らされて田畑作りをあきらめる農家が増えている」と悩みを明かした。明るい材料はジビエの需要が高いことだ。甲斐さんが加工したジビエのうち7割は市のふるさと納税の返礼品、残り3割がJAや道の駅などでの販売だが、生産が追いつかず、新規取引は断っているという。甲斐さんは、長年培った技術を若い猟師に伝え、杵築の里山に元気を取り戻すことを願っている。狩猟体験については「自然と共に暮らす楽しさや命をいただく意味を知ってほしい」と話した。

(ベテランから学ぶ若手ハンター:北海道)
北海道ではことしもクマの出没が相次いでいます。身近に迫りつつあるクマとどう向き合うか。クマ対策を「自分事」として捉え、知識と技術を身につけ始めた人たちを取材しました。銃を構える1人のハンター。仕留めたのは、シカです。肉をとるため解体を始めたのは、栗山町の農家・吉田努さん47歳です。(吉田努さん)「まったくこんなことやるとは想像していなかったですね。向こうに住んでいた時は」。神奈川県に住み、サラリーマンとして働いていた吉田さん。7年前に栗山町に移住し、メロンなどを育てる傍ら、シカを撃つハンターとして活動しています。シカの解体を手伝っているのは、猟友会の正井文雄さんです。(記者)「いまの撃ち方は?」。(北海道猟友会栗山支部 正井文雄支部長)「完璧でないのかい、さばき方はいまいちだけど」。吉田さんにとって正井さんはハンターの師匠。そんな師匠から最近学び始めたことがあります。2人が向かったのは町内に仕掛けられた箱わな。出没が相次ぐクマを捕まえるために町が設置したものです。(北海道猟友会栗山支部 正井文雄支部長)「吉田、見とけよ。クマ入る、えさ食いに来たら踏み板を踏む」。教えているのは箱わなでクマを獲る方法。吉田さんはまだクマを撃った経験がありません。(北海道猟友会栗山支部 正井文雄支部長)「こっから爪出してくるから、下手にこういうところに銃やったらバンってくるから」。檻の中のクマにどのようにとどめを刺すかー。ベテランハンターの貴重なアドバイスに、吉田さんの目は真剣そのものです。(北海道猟友会栗山支部 正井文雄支部長)「クマも10匹いたら10匹性格が違うから、逃げるクマもいるだろうし、かかってくるクマもいるだろうし」。(吉田努さん)「やっぱり怖いですね、シカは襲ってくることないですけど、クマは襲ってくるかもしれないので。できるだけ先輩たちの技術は吸収したい。でも本音を言えば、クマには山で遭いたくないし撃ちたくない」。ときに危険を伴うクマの駆除。それでも吉田さんが技術を学ぶのには、切実な理由がありました。これは栗山町内で11月に撮影された映像です。1頭の大きなクマが横切っていきます。実は、この場所は吉田さんの家のすぐ裏手。メロンなどを育てるハウスからも近い場所です。これまでにない場所での出没に衝撃を受けたといいます。(吉田努さん)「100メートルくらいしか離れていない場所で。寝ていても家の周りにいるのではないかとか、そういうのはすごい感じるようになりました」。取材中、吉田さんの家の周りを歩いているとー。(吉田努さん)「これクマですね」。家から350メートルほどの場所に、比較的新しいクマの足跡がー(吉田努さん)「初めてですね、ここで見たのは。家の周りとかも今まで見たことがなかったので、だいぶ増えているのではないかと思う」。ことしも道内ではクマの目撃が相次ぎました。市街地などにも出没し、道警によると先月末までの出没件数は3720件と、この5年で最多となっています。一方で、道内のハンターはピーク時に比べて4分の1に。クマとの向き合い方を教えるベテランハンターの不足が問題となっています。森の奥から人里へ。境界を踏み越えるクマから生活を守るため、吉田さんは日々腕を磨いています。(吉田努さん)「自分の技術というか知識で対応できるようになりたいと思っています。他人事ではなくて自分事だと思う」。札幌市南区の東海大学です。(東海大学2年生 高橋拓輝さん)「人のにおいがすると逃げる。でもたまに来ちゃうクマもいるから、見かけて近寄ったらだめ」。子どもたちにクマの生態について教えているのは、東海大学2年生の高橋拓輝さんです。先月から所属するボランティアサークルでクマについて学ぶ取り組みを始めました。きっかけはことし9月。大学のすぐ近くに1頭のクマが相次いで出没したことです。このクマはまもなく駆除されましたが、学生の間で衝撃が広がりました。(東海大学2年生 高橋拓輝さん)「こんな身近なところにクマが出るのか、こんなところに降りてくるのかと。すぐ近くに体育館もあって高校もあって」。この日、高橋さんたちはクマについて教える授業のリハーサルをしていました。来月2日、近くの小学校で実際に授業をするのを前に、知り合いの子どもを相手に反応を確かめます。(学生)「ヒグマは怖がりでしょうか?」。用意したのは、楽しみながら学べるマルバツゲームです。(学生)「正解は〇です。怖がりです、ヒグマさんは怖がりです」。子どもたちの反応に、高橋さんは少し不安を覚えた様子です。(東海大学2年生 高橋拓輝さん)「個人的に思ったのは、ヒグマは怖くない生き物だって結構思っちゃっているのがあったから。遭ったらやばいでしょ、実際」。クマの問題が身近になっていることをどのように伝えるかー。学生たちは試行錯誤を続けています。(東海大学2年生 高橋拓輝さん)「対処法だったり生態だったり、ある程度詳しかったらおのずと被害も減らせるんじゃないかと。知識をつけておくことが大事かなと思います」。来シーズンも続くとみられるクマの出没。専門家は、人とクマの距離感をすべての道民が考え直す必要があるといいます。(酪農学園大学 佐藤喜和教授)「これまでクマがあまりいなかった地域で、クマの個体数が回復していて人の生活圏に近づいている。それだけでなく、生活圏に近いクマが少しずつ人の存在に慣れて行動するようになっている。自分事として地域が考えたときに、これだけ近くにいることはリスクが高い。近くにいすぎるクマは駆除をやむを得ないというあり方、だけど山奥にはクマがいるよねと。そういうあり方を受け入れるのが大事だと思います」。栗山町のハンター・吉田努さんです。炭火でじっくりあぶっているのは脂がしたたる肉。実はこれ、クマの肉です。近くで駆除されたクマをもらったといいます。(吉田努さん)「脂ものっていておいしいと思います。駆除したものも無駄にしてはいけないなと、命なので、それは無駄にできないと思います」。生活のために命を奪う。その現実から目をそらさず、吉田さんは踏み越えるクマと向き合っています。(吉田努さん)「自分事なんですね、すべて、他人事ではないんですね。駆除することも他人任せじゃなくて。知識とか技術を身に着けることが地域のためになると思う」。クマとの距離が近づく中、北海道に住むすべての人が、クマの問題を自分事として考える時が来ています。

(異常事態に直面するベテラン猟師の密着レポート:長野)
環境省によれば、今年4月から11月の全国のクマによる人身被害人数が212人になったという。昨年の75人と比べると尋常ならざる増加ぶり。いったい何が……。秋田(70人)、岩手(47人)、福島(14人)……と東北地方が上位を占めるが、次いで挙がるのは、長野県の12人である。その長野県のあるベテラン猟師のクマ撃ちに密着した――。人身被害人数増加の原因は「都市型クマ(アーバンベア)」の言葉が示すとおり、人の暮らす場所にクマが現れるからに他ならない。長野県高山村は長野市内から車で30分ほどの静かな温泉地で、今年6月に棋士の藤井聡太が七冠目となる「名人」を獲得した決戦場の老舗旅館があることでも知られる。この村で猟師歴45年の宮川仁司さん(67)は言う。「今年の夏、郵便局に子グマが自動ドアを開けて入ったんだ。すぐに出たけど、そんな話はいくらでもある」。事実、宮川さんは近頃自宅の裏山で重さ130キロ、猟師人生で最大のクマを撃ったという。「11月15日の猟解禁から2週間、コイツを含めてすでに3頭撃った。こんなに出てくることは今までなかった。今日も出るかもしれないな……」。そう言って、同行取材を認めてくれたが街中で撃つわけではない。あくまでも猟区は決められた山の中にあり、そこに潜むターゲットを自らの目で見つけなければならない。この日は後輩猟師3人と共に山を取り囲む「巻き狩り」という手法を取った。集落脇の薄暗い杉木立の急斜面を直登して数十分。宮川さんは濡れ落ち葉を指さして言った。「クマの足跡だ。色が変わっているから1週間ほど前のものか」。そう言われても、素人には分からないが、テリトリーに入ったのだろう。宮川さんは袋からライフルを取り出した。そして、さらに登って杉林を抜けると、稜線は明るいコナラ林だった。コナラの実はいわゆるドングリだが、ここが彼らの「餌場」となる。「クマもシカもイノシシもドングリを食うからな。でも今年は猛暑で、不作だった」。たしかにコナラ林でありながら、ドングリがほとんど見当たらない。増えすぎたシカが食い尽くしたともいう。宮川さんは時にスコープをのぞきながら微妙な変化を感じ取ろうとする。と、別の斜面にいた仲間から「シカを撃った」との無線が入り、この日の猟は終わった。ところで、有害鳥獣駆除として各所に仕掛けられたわなに掛かったクマを仕留めるのも猟師の仕事だ。人家から50メートルほどの場所にあるわなに掛かったクマは、前足を取られて足掻(あが)くあまり、杉の木が激しく抉り取られたという。これこそがクマの力であり、そのクマがすぐそこにすんでいる――。「殺すのはかわいそう」という優しいだけの言葉が虚しく響く現実が、ここにはあるのだ。

(ドローン活用の鳥獣捕獲方法確認:静岡)
静岡県はこのほど、ドローンを活用した効果的な野生鳥獣捕獲に関する研修会を伊豆市役所で開いた。猟友会や県内外の行政、調査会社の関係者ら25人が参加。実証実験で成果を上げたドローン活用によるニホンジカ捕獲の仕方などを確認した。県の担当者、ドローン専門業者らが調査や捕獲手法などについて説明した。夜行性のニホンジカは夜間に餌を求めて森林内から出てくる習性があり、実証実験では赤外線カメラ搭載のドローンを飛ばして生息状況を把握した。データを地図上に示す形で、猟友会など捕獲従事者と素早く情報共有し、効率的な捕獲活動ができることを示した。県は昨秋から今春まで伊東市岡、鎌田地区で実施した実証実験で、捕獲効率が県管理捕獲の平均と比較して約1・6倍に向上する結果を得たという。伊豆市内の猟友会関係者は「捕獲従事者が減っているため、ドローンを使った効率的な調査や捕獲が必要不可欠」などと話した。

(クマ目撃、最多の93件:静岡)
クマによる人身被害が全国で相次ぐ中、県は14日の県議会12月定例会危機管理くらし環境委員会で、4~11月の県内のクマの目撃件数が、記録の残る2013年度以降、年度末を前に最多の93件に上ったと公表した。93件のうち61件が10~11月に集中した。本年度は14日現在で人的被害はないが、一昨年度、昨年度と連続して被害が出ており、県は「クマ出没マップ」を作成したり、チラシで注意喚起したりするなど警戒を呼びかけている。県によると、クマの生息数が増えたのか、生息地が変化しているのかは分かっていないという。県の担当者は「目撃した場合は、むやみに近づかずに農林事務所や市町の担当課に連絡して情報提供をお願します」。

(シカ衝突多発:静岡)
浜松市天竜区内で今年、シカと車両が衝突する交通事故が多発している。11月末時点で前年同時期より5割以上増えており、人身事故も2件起きている。天竜署は市と協力しながら注意を呼びかけている。署によると、今年1~11月、シカが関係する交通事故が25件発生した。昨年1年間の件数(18件)をすでに超えている。国道152号で10件、同362号で9件など、交通量の多い幹線道路での発生が目立つ。その8割が夜間(午後6時~午前6時)に起きている。今年の傾向として、4~6月で6件を数えるなど、春先から途切れなく発生している点が挙げられる。

(円熟の技で優勝つかむ:神奈川)
60歳以上が参加するクレー射撃の大会「2023年度第7回グランドマスター大会」が先月5日、伊勢原市の県立伊勢原射撃場で行われ、遠藤在住の渡辺博美さん(73)がトラップ部門で優勝した。日本クレー射撃協会が主催する同大会。渡辺さんが参加したトラップ部門では、3カ所から放出される的(クレー)を狙う。放出の順番は不規則で、飛び出した一瞬で狙いを定めるテクニックと、途切れない集中力が求められる。40人以上が参加した同部門で、渡辺さんは6人で競うファイナルに進出。失敗すると一人ずつ脱落していく方式で、最後まで勝ち抜いて優勝を決めた。同大会には毎回出場しており、一昨年は2位まで進んだが、優勝は初めて。「うれしい。自分でもよくできたと驚いた」と満面の笑み。狩猟をしていた父の影響で、22歳の頃から猟銃を手にする渡辺さん。「昔は藤沢市内でも狩猟ができる場所があって、よくキジを狙ったよ」と振り返る。現在も、11月から春先までの狩猟期間中は仲間とともに静岡県を中心に、イノシシを追って毎週のように山に入る。禁猟期間になると、腕がなまらないようにクレー射撃で技を磨く。「いつまで続けられるかはわからないけれど、体の動く限りは続けていきたいね」と目を細める。

(「県立伊勢原射撃場」の代表理事を務める:神奈川)
高橋義博さん横浜市在住75歳。ひとり親家庭を対象に12月24日(日)、伊勢原射撃場で行う食品の無料配布会で5kgの米110世帯分を寄贈する。射撃場のレストランで使う食材を無駄にしないために「10円食堂」を計画。市の担当者に相談すると配布会に米を寄贈する提案があった。「自分も両親が離婚した家庭で育ったこともあり、地域に貢献したいという思いが以前からあった。理事会の承認を得ることができたので、今後も継続して支援していきたい」。藤沢市出身。銀行員の父に育てられ、当時1日100円をおかず代としてもらい、安価なサバの干物やみそ汁を自炊していた。「皆が穴の開いた服に布を充てて着る時代だった。そうした子ども時代の想いがあるから、困っている人を助けたいという思いが強い」と話す。父親が趣味で猟をしていたため、小学校1年生の頃からカモを獲ったりし、大学に入ると射撃部に所属した。卒業後、伊藤忠商事に入社。木材部に配属され、2年間ボルネオに赴任した。帰国して1年後に独立、木製の食器類を扱う会社を立ち上げた。同射撃場を指定管理で運営する県射撃協会には30代で入会。クレー射撃に出合うと、メキメキと実力をつけ、国体や世界選手権に出場するまでに。県のスポーツ表彰も数えきれないほど受賞した。現在はリゾートホテルなどを運営する会社の会長。「息子が会社で経営を学んでいる。射撃で五輪に出たいと言っているよ」と嬉しそうにほほ笑む。現在は県射撃協会の会長も務める。若くして愛娘を亡くした経験があり、「夜景はキレイだと皆思うだろうが、陰では人それぞれにいろいろな問題があるもの。ひとり親の支援など、残された人生でできることは何でもやりたい」と力強く語った。

(野性でペロリ、心身健康:埼玉)
バキバキ、ボリボリ――。野性をむき出しにしたホワイトタイガーが骨や皮が付いたままの肉を食いちぎる姿に来園者はくぎ付けにされる。埼玉県宮代町の東武動物公園では2021年から月1回ほどライオンやトラなどネコ科の動物に頭と内臓を取り除いたシカの肉を与えている。この取り組みは屠体(とたい)給餌と呼ばれ、檻(おり)の中で管理された動物のストレス緩和に一定の効果があり、各地の動物園や水族館でも行われている。同園では普段、食べやすく切った馬肉を与えているが数分で食べ終えてしまう。一方、屠体給餌の場合は前脚でがっちりと肉塊を押さえ皮をはぎながら食べるため、1時間以上はかかる。この取り組みで、えさの時間以外は退屈そうに寝そべったり、同じ場所をぐるぐると歩き回ったりする行動が減少した。また、のみ込んだ毛や肉の繊維で腸内がきれいになる効果もあったという。

(「イノシシ肉カレー」美味:富山)
富山県の氷見高校農業科学科の3年生4人は11月末、地元産のイノシシ肉を使った「イノシシのすね肉ジビエカレー」のレシピを完成させた。14日、同校で報告会を開き、研究成果を発表した。同科3年生は氷見市内の農作物に被害をもたらすイノシシの肉を活用しようと、2015年から商品の開発に取り組んでいる。18年からは名城大農学部と連携し、肉を軟らかくする研究を重ねてきた。本年度は石田勇輝さん、川谷内翔さん、酒井優月さん、渡邉純さんが担当した。同大の林利哉教授から助言を受けて、すね肉を2段階の温度で煮込み、軟らかく調理。煮込む際に昆布を加えてうまみを引き出した。5種類のスパイスを使って肉の生臭さを消し、本格的な味わいに仕上げた。報告会には同科3年生19人が参加した。カレーの試食もあり、生徒からは「おいしい」「スパイスが効いている」と声が上がった。石田さんは「最初はうまくいかなかったが、完成させることができてよかった。レシピは後輩に引き継いでいきたい」と話した。

(クマ出没:宮城)
富谷市によると、15日早朝、富谷市とちの木1丁目の国道沿いにクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
利府町によると、15日午前6時30分ごろ、利府町赤沼細谷にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
富谷市によると、15日午前3時30分ごろ、富谷市源内にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
栗原市によると、15日午前7時25分ごろ、栗原市築館木戸にクマが出没しました。

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