<射撃ニュース11月>
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(クマに母娘襲われけが、玄関で鉢合わせ顔をひっかかれた男性負傷:秋田)
秋田県で9日朝、クマによる人身被害が相次いだ。午前6時5分頃、五城目町馬場目の住宅敷地内で、住人の70歳代の母と50歳代の娘がクマに襲われた。五城目署の発表によると、母が顔を、悲鳴を聞いて助けようとした娘が左脚を、それぞれひっかかれた。クマは体長1メートルほどだった。美郷町小荒川の民家では午前6時半頃、80歳代の男性がクマに襲われたと、妻から119番があった。大仙署の発表によると、男性が玄関を出たところ、クマと鉢合わせて顔をひっかかれた。近くに別のクマもいたといい、親子とみられるという。
(飼い猫を探して庭に出たら…60代男性クマに襲われケガ:新潟)
新潟県新発田市で9日午前7時15分頃、60代男性が自宅の庭でクマに襲われ左わき腹を引っかかれる軽傷を負いました。男性は飼い猫を探していたということです。男性がクマに襲われたのは新発田市向中条の自宅敷地内です。警察によりますと午前7時15分頃、この家に住む60代の男性が裏庭に出たところ、藪から突然体長1メートルほどのクマがあらわれ男性に向かって突進。男性は慌てて逃げましたが転倒し、覆い被さられて左わき腹を引っかれる軽傷を負ったということです。クマは男性を襲ったあとすぐに逃げ去ったということです。庭に出た時、男性は姿が見えなくなった飼い猫を探している最中でした。また、午前7時30分頃には男性が襲われた場所からほど近い別の民家でもクマが現れ、家の窓ガラスを叩いている様子が住民に目撃されました。このほか、きょうも県内各地でクマの目撃が相次いでいて、警戒が続いています。
(ラーメンの仕込み中にクマに襲われ男性けが:青森)
9日の朝早く、青森県三戸町で男性がクマに襲われました。男性は顔にけがをしましたが、命に別状はありませんでした。警察や町によりますと、9日午前4時ごろ三戸町川守田のラーメン店の敷地内で、57歳の男性従業員が体長約1mのクマに襲われました。男性は眉間のあたりを引っかかれてけがをしましたが、命に別状はありませんでした。店の関係者によりますと、男性は当時1人で開店前の仕込み作業をしていて、襲われた際に反撃し、クマは逃げたということです。その後、出勤した店の関係者が、作業を続けていた男性のけがに気づき、事情を聴いたところ「やられて、投げ返した」と被害について話したことから、警察と消防に通報しました。男性は病院に運ばれ、店は9日、臨時休業しました。現場は町役場から約1km離れた国道沿いで、警察と町は周辺をパトロールするなど警戒を強めています。
(参拝のため神社に向かっていた88歳男性がクマに襲われけが:秋田)
10日午後、秋田県鹿角市で参拝のため自宅近くの神社に向かっていた88歳の男性がクマに襲われけがをしました。警察によりますと10日午後0時50分ごろ、秋田県鹿角市花輪の路上で88歳の男性がクマ1頭と遭遇し襲われました。男性は頭を引っかかれるなどして市内の病院に運ばれましたが、その際に意識はあり会話も可能だったということです。男性は参拝のため自宅の北側にある神社に向かって歩いていたところを襲われました。男性がクマに襲われた現場は、県立鹿角高校から北に約350メートルの住宅地で、警察が付近の警戒にあたるとともに住民に注意を呼びかけています。
(クマに襲われ猟友会員けが:新潟)
新潟県糸魚川市は7日、同市の山中で10月27日、設置したわなを1人で見回りしていた地元猟友会の70代男性がクマに襲われ、右腕を骨折するけがをしたと発表した。成獣に右腕や右膝をかまれたという。男性は自力で下山し、救急搬送された。現在も入院している。
(週末もクマ被害相次ぎ、4人負傷)
秋田県と新潟県で9日、クマによる被害が3件あり、4人が負傷した。秋田県では麻酔銃による緊急銃猟も実施された。9日午前6時5分頃、秋田県五城目町馬場目の民家敷地内で、外に出た住人女性(78)がクマ(体長約1メートル)に襲われ、顔などを引っかかれた。悲鳴を聞いて家の中から駆けつけた娘(50)も、左太ももを引っかかれた。県警五城目署によると、クマはそのまま立ち去った。秋田県美郷町小荒川の民家では9日午前6時半頃、男性(83)が玄関を出たところでクマと鉢合わせし、顔を引っかかれた。県警大仙署によると、別のクマ1頭も付近におり、2頭は現場から立ち去った。9日午前7時15分頃には、新潟県新発田市向中条の民家敷地内で、住人の60歳代男性が茂みから出てきたクマに脇腹を引っかかれた。搬送時、男性に意識はあった。クマは体長約1メートルの成獣とみられる。県警新発田署はパトカーで周辺を巡回し、注意を呼びかけている。一方、秋田県美郷町土崎の千畑小学校では9日午前8時50分頃、校庭の木にクマ(体長約80センチ)が登っているのを近くの住民が発見した。約3時間その場にとどまっていたため、町は緊急銃猟を実施。麻酔銃で眠らせた後、駆除した。
(河川敷で見つかった遺体は行方不明になっていた女性(79)と判明:北海道)
北海道・士別警察署は2025年11月8日に剣淵町で見つかった遺体について、士別市に住む79歳の女性と判明したと発表しました。警察によりますと、女性は6日から行方不明になっていて、遺体は女性をヘリコプターで捜索していた道警航空隊によって発見されたということです。遺体は犬牛別川の河川敷でうつぶせの状態で見つかり、駆けつけた救急隊によってその場で死亡が確認されました。体は服を着た状態で、目立った外傷はないということです。警察が詳しい状況を調べています。
(「猟友会の信頼損なった」町長、クマ問題で陳謝:北海道)
ヒグマの駆除を巡るハンターと町議とのトラブルをきっかけに、積丹町内での地元猟友会の活動休止が1カ月以上続いている問題について、松井秀紀町長は7日の町議会産業建設委員会で、「猟友会の皆さんの信頼感を損なった。町民の皆さんに不安を与え、町政を預かる立場から心からおわび申し上げる」と陳謝した。
(環境省、クマ退治に躍起)
環境省は、全国各地の人里に現れるクマの駆除にあたる人材確保に本腰を入れる。これまでは自衛隊OBの隊友会にも狩猟免許を取得してほしいと協力を呼びかけることはあったが、今後は警察庁を通じ、新たに警察OBにも取得を要請することが6日、分かった。免許を持つハンターらでつくる大日本猟友会(東京)によると、散弾銃やライフルを扱う「第一種銃猟免許」を持つ会員は5万6577人(2024年度末現在)。他に、エアライフルでの猟のみ認められた第二種銃猟免許(2651人)などがあるが、高齢化が進んでいる。正確な人数は把握できないが「中には外国人もいる」(同会)という。凶暴なクマに対峙(たいじ)するこうした一人一人のハンターらの負担は大きい。同会は「クマは学習能力や闘争心が高く、捕獲は非常に難しい。経験の浅いハンターでは無理だ」と指摘する。9月からは市町村の独自判断で発砲を認める「緊急銃猟」が始まったが、捕獲許可が出てもクマが物陰に潜む現場に急行するまでにはそれなりの時間がかかるという。それだけに、同省の鳥獣保護管理室の担当者は「出没時には、近隣に捕獲の有資格者が多くいたがいい」と指摘する。そこで、危機管理にも詳しい警察OBにも同免許の取得を求めることになった。同会によると、免許を取るには自分の住所がある最寄りの猟友会で事前に講習会を受け、都道府県での試験をクリアしなければならない。さらに、地域の警察署に銃の所持許可を申し込み、別の試験も突破しなければ実際に銃は撃てない。環境省は今後、クマやイノシシ、シカなどの捕獲者育成のために開く研修会への参加も警察OBらに求める。同省は今月中旬をめどに、他省庁とクマ被害対策施策の政策パッケージを策定するが、「野生生物対策全般は環境省が鳥獣保護管理法に基づき、主導する立場にある」(同省関係者)として、取りまとめを急ぐ。
(ライフル銃での駆除開始に備え、警察官が猟友会員から生態や手順など学ぶ講習:秋田)
警察官によるライフル銃を使ったクマ駆除が可能になるのに合わせて、秋田県警は7日、猟友会員からクマの生態や駆除の手順などを学ぶ講習を北秋田署(北秋田市)で行った。同県警の警察官と警察庁が県外から派遣した警察官の計32人が受講した。秋田県猟友会の田中文隆副会長が「クマの歯はドングリなどをすりつぶせるよう変形している」、「近年は渋柿だけでなくトマトも食うようになった」など、クマの生態や食性、出合った際に避ける行動などを講義。田中さんは「中途半端な形で発砲して万一の事態にならないよう、心構えが必要」などと訴えた。これに対し、参加者は「親グマと子グマで狙うところが違うのか」「発砲後にクマは射手に向かってくるのか、逃げるのか」などと熱心に質問していた。県警警備課の中川俊昭次長(56)は「クマによる危険が迫った場合は、警察官職務執行法(警職法)で猟友会員らに発砲を命じている。新たな運用で警察官自身もライフル銃を発砲するようになるので、銃弾の跳ね返りを防ぐなど周辺の安全確保を第一にしながら、いろいろな場面を想定して教養や訓練を重ねていく」と話す。警察官のライフル銃による駆除は、深刻化するクマ被害に対応して、警察庁がライフルなど特殊銃を警察官がクマ駆除に使えるよう国家公安委員会規則を改正したもので、13日に施行する。同庁が特殊銃の扱いに慣れた機動隊員を秋田、岩手両県に派遣し、両県警はそれぞれ地元警察官と射手を含め1組4人のチームを2組編成。自治体が行う緊急銃猟が間に合わない場合などに、警職法に基づき警察官が駆除を行う。中川次長は「チームの拠点をどこにするかなどは検討中で、11日には実際に緊急銃猟が行われた横手市の同じ河川敷で市担当者から説明を受ける研修も行う」としている。
(自衛隊後方支援2日目、運び出しをサポート:秋田)
秋田県でのクマ対策の後方支援2日目のきょう、鹿角市で自衛隊が支援する中、わなに掛かったクマが駆除されました。鹿角市では、きょう午前9時半ごろ、クマの目撃が相次いだ市内のリンゴ畑の近くに設置された箱わなに掛かったクマを地元猟友会が駆除しました。箱わなの周辺にはクマスプレーを携行した自衛隊員が20人ほどいて、駆除したクマの運び出しをサポートしました。今後も自衛隊員は、市や猟友会との調査活動や、捕獲・駆除の支援を行う予定で、鹿角市のほか、大館市などの秋田県内の自治体に配置されます。その大館市では、きのうから市中心部の民家に居座っていた子グマ1頭が捕獲されました。きのう正午ごろ、民家敷地内にクマがいると110番通報があり、夕方に市が箱わな1基を設置。きょう午前6時半ごろに、警戒にあたっていた警察官が箱わなにクマ1頭が入っているのを確認しました。市によりますと、捕獲されたのは体長およそ50センチの子グマということです。子グマは午前10時すぎに運び出されました。
(クマ対策で陸自を秋田に派遣、河野元統合幕僚長「猟友会の重荷の部分を担う意義大きい」)
河野克俊・元統合幕僚長と、自民党のクマ被害対策プロジェクトチームで座長を務める笹川博義衆院議員が6日、BS日テレの「深層NEWS」に出演し、クマによる人身被害の拡大を受け、陸上自衛隊を秋田県に派遣した意義について議論を交わした。今回、自衛隊は武器によるクマの駆除は行わず、箱わなの運搬などの後方支援に徹する。河野氏は「緊張度が上がった状況で自衛隊を派遣するのは当然だ」と強調。笹川氏は「クマの駆除は猟友会に経験の蓄積がある。猟友会の重荷になっている部分を自衛隊が担う意義は大きい」と述べた。
(機動隊のクマ駆除に「ありがたい」とハンター)
クマ襲撃による死者数が過去最悪となるなか、警察官が銃でクマを駆除できるように、急ピッチで準備が進められている。ハンターは、実効性を十分に高めるには「山ほど修羅場をくぐらないと」と語る。警察官が銃でクマ駆除を行う――。そんなクマ対策が現実味を帯びてきた。 「猟友会は大きな組織なのでさまざまな意見があると思いますが、クマ駆除の最前線にいる立場としては、警察がクマの駆除に乗り出してくれるのは、ありがたいことです」。そう率直に語るのは、北海道猟友会・札幌支部「ヒグマ防除隊」の玉木康雄隊長だ。玉木さんは、札幌市で老舗日本茶専門店を営みながら、ハンターとして活動してきた。自治体からのクマの駆除要請はいつ来るかわからない。「24時間365日、備えています。積雪期でもクマに襲われた事例があるので、一時も気が抜けない。クマが人を殺傷するような事案が発生すれば、夜間でも隊員を出動させなければならない」(玉木さん)。クマ被害が相次ぐ今年は、ハンターたちは緊張の糸が切れる暇もないという。「警察官がクマを駆除できるようになれば、切迫したこの状況も改善されるかもしれない」(同)。全国で相次ぐクマ被害に、国が対策に乗り出している。10月28日、秋田県知事は自衛隊派遣を要請。11月5日からは陸上自衛隊がクマ駆除の後方支援活動を行っている。自衛隊が銃を使用してクマを駆除することは、法令上できないためだ。警察官によるクマ駆除について、木原稔官房長官が発言したのは10月30日のことだ。「警察においてはクマに関する知識を習得し、訓練をした警察官の確保、装備・資機材の整備なども含め、ライフル銃を使用したクマの駆除について早急に対応していく」。11月6日には、警察庁がクマの人身被害の相次ぐ秋田、岩手両県に機動隊の銃器対策部隊を派遣した。あわせて、同日、警察官がライフル銃を使用してクマの駆除ができるよう、国家公安委員会規則を改正した。13日に施行される。機動隊はハイジャックやテロの発生に備えてライフル銃を装備しているが、13日から運用を開始する予定だ。機動隊派遣はクマ駆除に有効な一手となるのだろうか。玉木さんはこう話す。「所持している銃の性能や、銃器を取り扱う技能については、尊敬に値するだけの能力があり、全く問題ないと思います」。ただし、警察官が戸惑うかもしれない差異もある。銃によるクマ駆除は、対象の制圧ではなく、一撃必殺が基本だ。脳(脳幹)や心臓、肺などの「バイタルポイント」を確実に撃ち抜く必要がある。バイタルポイントに命中しても、1発だけでは動きを止められない場合もある。「興奮して、口から泡を吹きながら反撃してきて、弾を5発ほど放ってようやく静止したクマもいました」(同)。銃弾についても駆除に適した銃弾を使用する必要がある。クマの駆除に使用される銃弾は、通称「ダムダム弾」と呼ばれるもので、着弾時に展開炸裂する。体を貫通せず、内部組織を大きく破壊する。「非人道的として、自衛隊を含めて、軍隊での使用は国際法で禁止されています。けれども、クマはこのような威力のある銃弾でないと駆除できない」(同)。使用したことのない銃弾を使うのなら、射撃訓練も必要だ。銃弾の種類によって、弾頭が発射されてから着弾するまでの経路、「弾道」が変化するからだ。射撃するシチュエーションによって、課題もある。同じ場所に居座っているクマを撃つのであれば、射撃訓練を積んだ警察官であれば、比較的容易だ。だが、クマが隠れている場合は違う。「クマ駆除で最も難しいことのひとつは、クマを探し出すことです。クマ駆除には、何度も死線をくぐらないと見えてこない大きなリスクがある」(同)。たとえば、親子グマがいたとして、箱ワナを仕掛けると、子グマだけがかかる場合がある。周囲に潜む母グマも見つけて駆除しなければならない。地形を知り、そこに生息するクマの行動を予測できなければ、見つけることは困難だ。クマを探す間に、クマに襲われる可能性もある。クマを発見できたとしても、射撃で仕留めきれず、逃げられる可能性もゼロではない。「手負いとなったクマがどう動くかは、山ほど修羅場をくぐらないとわからない。追跡して、仕留める。そこまでできて、初めて一人前のクマの駆除ハンターといえるのです」(同)。クマ駆除に関する膨大なノウハウを身につけるには、「警察官がハンターとともに山に分け入り、実際に獲物を捕獲する必要があると思う」と、玉木さんは言う。つまり、制度を整備し、射撃の訓練を重ねただけでは、クマの駆除に対して実効性を持たないということだ。「クマ出没地域で、ハンターとともにクマ問題に関わってきた警察は、こうした課題をよくご存じだと思います」(同)。では、派遣される機動隊たちはどうか。蓄積した知識はスムーズに共有できるのだろうか。「クマ駆除に携わる人たちと警察が会議体を設けて、忌憚なく議論し、連携することが必要だと思います」(同)。札幌市は、行政と警察、猟友会が連携し、クマの防除体制は整った地域といえる。だが、残念ながら、行政と猟友会が対立している地域もある。北海道積丹町ではクマ駆除を巡りハンターと町議がトラブルになり、猟友会が出動を拒否したことが報じられた。「双方に理由はあるのでしょうけれど、クマが駆除されないと、地元の人たちはとても困るわけです」(同)。ハンターの高齢化も深刻だ。環境省によると、狩猟免許所持者の約6割が60歳以上(2020年度)で、クマの駆除は年々困難になってきている。「住民が警察にクマ駆除の『最後の砦』として期待を寄せるのは仕方ないと思います」(同)。けれども、玉木さんは、警察がクマの駆除を行うことの費用対効果についても目を向けるべきだという。「今年はクマの大量出没を受けて議論が過熱しましたが、来年以降、同様の頻度での出没が繰り返されるかはわかりません。『クマ駆除』という特殊な任務を警察が担うことが、国民が納得する税金の使い道なのか。冷静な議論が求められるでしょう」(同)。玉木さんは、有害獣の駆除を行う「ガバメントハンター(公務員ハンター)」制度の立ち上げと育成に期待を寄せる。「狩猟免許を持つ猟友会員や行政職員、自衛官、警察官らがクマの駆除が必要な際に、一時的に本職から離脱して、『臨時の公務員』としてクマの駆除を行ってはどうか」(同)クマ被害を防ぐためには、柔軟性のある組織づくりは急務かもしれない。そして、やはりその中心に、狩猟免許を持つ、クマ駆除に精通した人材が必要なことに変わりはないようだ。
(高市総理クマ対策は「スピード感を持って」)
高市総理大臣は全国で被害が広がるクマへの対策について「スピード感を持って必要な施策を実行に移す」と強調しました。高市総理大臣「例えば警察官によるライフル銃を使用したクマの駆除について早急に対応していくということのほか、狩猟免許を持つものを公務員として任用する、いわゆる『ガバメントハンター』の確保などを進めていくことを想定しております」。また、クマとの緩衝地帯となっていた里山が過疎化などで人が利用しなくなったことも被害拡大の要因の一つとの認識を示しました。
(クマ対応で、警察官が緊急銃猟の現場で研修:秋田)
13日から警察がライフル銃でクマを駆除することができるようになります。これに合わせて、警察官が実際に緊急銃猟が行われた現場で安全確保や対応の手順を確認しました。横手市の河川敷周辺に集まったのは、駆除対応に関わる県警や県外から派遣された警察官らおよそ40人です。市街地に面するこの現場では、10月県内初となる緊急銃猟によってクマ3頭が駆除されました。緊急銃猟の対応に携わった市の職員や猟友会の会員が発砲時の状況、安全確保の手順などを説明しました。警察によるライフル銃での駆除については、緊急銃猟の市町村長判断が間に合わない場合や、現場のハンターが足りない場合などが想定されています。警察は、横手市以外にも能代市や仙北市の緊急銃猟が行われた現場で研修を行っているほか、環境省や大学の研究者らからクマへの対応について説明を受けるなど準備を進めています。
(”クマ駆除”対応する警察官が研修:岩手)
13日から警察がライフル銃を使ってクマを駆除できるようになるのを前に、駆除を担当する警察官が盛岡市で研修を行いました。研修には、駆除にあたる県警察本部の機動隊員などおよそ20人が参加しました。研修が行われたのは、10月23日にクマが出没した盛岡市中心部の中津川河川敷です、研修では、当時対応にあたった警察官が状況を説明したほか、県猟友会が、撃った弾が跳ね返る「跳弾」のリスクや、親子で出没した時は親グマから仕留めることなど市街地で銃を扱う際の注意点を説明しました。警察官がライフル銃を使ってクマを駆除できるように改正された国家公安委員会の規則は13日施行されます。
(クマ駆除で警察官がライフル銃使用へ、凶悪犯罪の鎮圧などに限定の規則改正)
警察官がライフル銃で駆除できるようになります。警察庁 楠芳伸長官「ライフル銃を使用してクマを駆除することができる体制を確保するため、6日から特に被害の大きい岩手県及び秋田県に、他の都道府県警察から交代で応援部隊を派遣することとしている」。これまでライフル銃の使用が認められていたのは、ハイジャックや凶悪犯罪の鎮圧などに限られていましたが、国家公安委員会は13日から規則を改正すると決めました。応援部隊はクマに関する教育と訓練を受け、13日から実際に駆除できるようになる予定です。
(クマ対応、疲労深刻:秋田)
クマによる人身被害が多発する秋田県では、対応に当たる自治体や猟友会の担当者らが疲労を隠せないでいる。出没は昼夜を問わず、休日に捕獲作業を行うこともある。箱わな不足も問題になる中、自衛隊が支援に乗り出す事態になった。県によると、クマによる2025年度の死者は4人で、負傷者は約60人(7日時点)に上る。目撃情報などをまとめた県のサイト「クマダス」によると、出没は10月だけで5500件を超えた。10月に約500件の目撃情報があった大仙市。情報が入ると、市職員が状況に応じ現地を確認したり追い払ったりする。「土日や時間外を問わず対応しなければいけない」と疲れた表情の担当者。出没が続いた結果、市は所有する箱わなをほぼ使い切り、急きょ8基を追加購入した。10月24日に男女4人がクマに襲われて死傷した東成瀬村では、同月下旬までの出没数と捕獲数のいずれもが、過去5年で最多だった23年度の総数を上回った。担当者は「村単独では対策が難しい」とこぼす。対応に伴う負担は、箱わな設置や捕獲を担う猟友会にも重くのしかかる。県猟友会の佐藤寿男会長(81)によると、クマが出没しても日中に仕事がある人はすぐには集まれない。その結果、高齢会員が中心となって出動せざるを得ないという。箱わなの重さは100~200キロ程度。運ぶには6人ほどが必要といい、佐藤さんは「いつ出動要請の電話が来るか分からない。必ず家にいないといけない」と苦労を語る。「物も人も足りない」(鈴木健太知事)状況を受け、県は11月末までに箱わな14基を購入し、自治体に貸与することを決めた。防衛省には殺処分後のクマの運搬などの後方支援を要望し、陸上自衛隊が5日から鹿角市で活動を始めた。県では11月に入っても人身被害が続いており、幹部の一人は「自衛隊が来たからといって出没が収まるわけではない」と気を引き締めている。
(旅館にクマ、経営者ら救助後「緊急狩猟」で駆除:山形)
7日午前7時半ごろ、山形県米沢市の旅館「滑川温泉福島屋」にクマが侵入したと経営者の70代男性から110番があった。1頭がそのまま1階にとどまり、男性ら家族3人が2階に避難した。3人は間もなく非常階段から警察に救助された。市は午前11時50分ごろ、自治体判断で発砲を可能とする「緊急銃猟」を実施し駆除。けが人はいない。米沢署と市によると、旅館は冬季閉鎖中で宿泊客はいなかった。クマは体長約1・2メートルで雄の成獣。緊急銃猟は市長から委任を受けた市民環境部長が判断し、交通規制などで現場の安全を確保した。
(緊急銃猟、1発で命中:福井)
勝山市内の工場に7日夜からクマ1頭が居座ったため、市は8日午前に緊急銃猟を実施し駆除しました。福井県内では2例目となりました。現場は勝山市滝波町のセーレン勝山工場です。市によりますと、7日午後10時頃、工場付近でのクマの目撃情報が警察を通して市に入り、捜索したところ工場の中にいることが確認されました。市は従業員を避難させて工場を封鎖。夜明けを待って、8日午前8時半頃に緊急銃猟の方針を決定。午前10時16分に出動していた猟友会のメンバーが発砲し駆除しました。クマがいたのは建物から出た中庭で、猟友会のメンバーが屋上から発砲1発で駆除。体長約1メートル20センチ、体重約120キロの成獣でした。勝山市・藤澤和朝技幹:「建物の屋上からクマの所在を確認するように係員に指示を出したところ、中庭にいるクマを発見。猟友会に屋根に上がってもらい、ちょうど真上から撃ち下ろせる状況だったので発砲して一発で仕留めた」。緊急銃猟の実施は10月29日の勝山市内に続き県内で2例目です。
(小学校敷地にいたクマ、緊急銃猟で駆除:秋田)
9日正午ごろ、秋田県美郷町土崎字上野乙の千畑小学校敷地にいたクマ一頭が、緊急銃猟により駆除された。クマは地上から約8メートルの木の上におり、県自然保護課の職員が麻酔銃を打って眠らせた後、地面に落ちてきたクマを網で抑え、電気ショックをかけて駆除した。町が緊急銃猟を実施したのは初めて。
(クマ緊急銃猟、1頭駆除:富山)
10日午前6時半ごろ、砺波市庄川町古上野の住宅敷地にツキノワグマ1頭が侵入し、その後、物置内に居座った。約2時間後、市は自治体の判断で発砲可能な「緊急銃猟」により駆除した。けが人はいなかった。クマはメスの成獣で体長約1・3メートル、体重約70㌔だった。緊急銃猟は砺波市では初めて。富山県内で緊急銃猟で駆除されたのは富山市の2例に続く3例目となる。砺波市によると、午前6時31分ごろ、周辺をパトロールしていた市職員が住宅敷地に入るクマを目撃。市と鳥獣被害対策実施隊、砺波署が敷地内を探し、物置にいるのが見つかった。市は銃猟の体制を整え、午前8時5分ごろに夏野修市長が発砲を許可し、同8時34~35分に物置にいたクマに散弾銃で計2発を発砲して駆除した。現場は国道156号から東へ約600メートル、県道本町高木出線の約100メートル西側で、田んぼや畑の中に住宅が点在する散居村。クマが侵入した家には当時家族4人がいた。付近住民などから連絡を受けて2階から庭にクマがいるのを目撃し、警察に通報。4人で2階からクマが駆除される様子を見守った。現場周辺は普段はクマの目撃情報がほとんどないという。70代男性は「物置の戸を開けたらいたのでびっくりした。ほかに逃げずに、ここで駆除されてよかった」と安堵した。駆除では実施隊員と砺波署員がクマがいる物置を取り囲み、東側の窓から銃を差し込み、一発目を発砲。約40秒後、南側の戸のすきま間から2発目を撃ち「バーン」との音が計2回響いた。一発目が頭に当たり、クマ動かなくなり、2発目で死亡を確認。壁に覆われた屋内に向けた発砲で、実施隊の男性は「理想的な駆除だった」と振り返った。
(クマと猟友会の“2日間”攻防を激撮、住宅近く「撃てない」:秋田)
住宅近くに出没したクマと猟友会の2日間に渡る攻防を、番組のカメラが捉えました。猛烈な勢いで何度も何度も箱わなにかみつきます。これは先月末、秋田県・東成瀬村で猟友会が捕獲したツキノワグマです。よく見ると、発達した犬歯と鋭いかぎ爪が確認できます。クマは人と遭遇した際、このような攻撃を主に顔面を狙って行うといいます。そしてきのう8日、同じ村で―。「今、東成瀬でクマを見つけました」。カメラの前、体長70センチほどのクマが住宅近くの柿の木にのぼります。実はこのクマ、正午すぎにも現れ―。一度は立ち去ったものの、また戻ってきたと言います。地元の猟友会が対応にあたりますが―。(東成瀬村猟友会のハンター)「ここで撃てないもの」。目の前にクマがいても、住宅や道路が近く、銃で駆除するには、安全の確保が難しいと言います。「ほう!ほう!」。木を叩いて揺らしたり、爆竹を投げ込んだりしますが―。Q.全然動きませんね?(近くの住民)「もう慣れていたもん」「あの柿の木に執着しちゃっている」。攻防が続く中、日が暮れて暗くなり、猟友会は木の下に箱わなを設置することに。Q.かかりそうですか?「わからん、それはわからん」。この日の早朝6時にふたたび出動。しかし、クマの姿は木の上にも箱わなの中にもありませんでした。Q.捜索されるんですか?(東成瀬村猟友会のハンター)「はい。(クマが)向こうの山に行けるように」。きょう9日も、秋田県内ではクマによる人身被害が相次ぎ、3人がけがをしています。
(高病原性鳥インフルエンザ発生で約28万羽のニワトリを処分へ:新潟)
新潟県胎内市の養鶏場で9日、県内今季2例目の高病原性鳥インフルエンザが発生し、県がおよそ28万羽の処分を進めています。県によりますと、胎内市の養鶏場で8日、20羽をこえるニワトリが死んでいるのが見つかり、遺伝子検査の結果、9日午前8時に高病原性鳥インフルエンザの陽性が確認されたということです。県は、飼育されていたおよそ28万羽の処分を開始し、9日正午までに2800羽以上を処分。作業は今月16日までかかる見通しです。胎内市では今月4日、別の養鶏場でも鳥インフルエンザが発生していて県内では今季2例目です。
(クマのエサ「ブナの実」2年ぶりの大凶作:岩手)
クマのエサとなるブナの実について、東北森林管理局が2025年の状況を調べた結果、岩手県内は2年ぶりの大凶作であることが分かりました。東北森林管理局が2025年9月から10月にかけて県内24カ所でブナの結実状況を調べた結果、「ごくわずかに実がついている」のが3カ所で、残りの21カ所は「全く実がついていない」状態でした。これにより豊凶指数は「0.1」となり、大凶作と判断されました。県内で大凶作となるのは2023年度以来2年ぶりです。2023年度も県内ではクマの出没が相次ぎ、人身被害が死者2人を含む49人と過去最多に上っています。県自然保護課では「山に食べ物がなく人里に慣れたクマが今後も出没する可能性が高いので、生ごみの管理を適切に行うなど注意を続けてほしい」と呼びかけています。
(ドローンでクマの生息調査、上空100mから体温感知:山梨)
山梨県内でもクマの目撃が相次ぐ中、市川三郷町は6日、赤外線カメラを搭載したドローンによるクマの生息調査を行いました。県内では今月に入り、クマの目撃情報が5日までに6件相次いでいますが、6日は富士河口湖町で新たに2件の目撃が確認されました。こうした中、クマによる被害防止へ対策に乗り出す自治体もあります。市川三郷町と隣の富士川町を流れる笛吹川周辺では、先月からクマとみられる5件の目撃情報が相次いで寄せられています。そのため市川三郷町は民間企業と連携し、目撃情報があった約1.5kmの河川敷を赤外線カメラを搭載したドローンで調査しました。暗闇の中、ドローンの赤外線カメラは上空100メートルの高さから体温を感知して、動物の位置を特定。モニターに白く映るクマがいないか、確認しました。約1時間に及ぶ調査の結果、河川敷では69頭のシカが見つかりましたが、クマは発見されませんでした。市川三郷町 産業振興課 望月啓汰さん「クマの(被害も)全国的に多くなっている中で、(住民は)不安に思っていると思うので、この調査で本当にクマがいるのかということを調査できてよかったと思います」。町は今後も引き続き、パトロールを行うなど、クマへの警戒を強めるとしています。
(安全な狩猟を呼びかけ、イノシシとニホンジカの狩猟解禁:静岡)
イノシシとニホンジカの狩猟が県内で解禁され、県警は各地の山の麓などで狩猟者らの免許確認や安全指導を行った。全国で人的被害が相次ぐクマの狩猟は県内では自粛されており、人に危害が及ぶ緊急時を除き駆除もしていない。狩猟が解禁された1日、県警や県の担当者らは県内各地で、携帯が義務付けられている狩猟免許状や猟銃所持の許可証などを確認した。来年3月15日までの猟期に、安全な狩猟活動をするよう求めた。静岡市清水区では、清水猟友会のメンバー14人が山間部に集まり、仕掛けるわなの注意点や猟銃の適正管理を確認した。
(クマ出没が相次ぐ魚野川の河川敷の草木を除去:新潟)
新潟県南魚沼地域振興局地域整備部は11月11日から、魚野川河川敷の草木をバックホウなどにより踏み倒す作業を実施することを発表した。この作業により河川敷に緩衝帯を設け、クマの早期発見や移動範囲を狭める効果が期待されるという。新潟県魚沼市や湯沢町などを流れる魚野川の近隣ではクマの出没が相次いでおり、クマの通り道となっている魚野川河川敷の草木の除去などの対策要望が寄せられていた。実施場所は、南魚沼市の城巻橋周辺と、湯沢町の松川橋周辺。実施は11日から。なお、悪天候などにより作業を延期する可能性がある。
(クマ対策、柿の木伐採で奨励金:群馬)
前橋市は7日、市内でクマの食害や目撃情報が相次いでいる状況を踏まえ、柿の木を伐採した世帯に1本当たり1万円の奨励金を交付する事業を始めた。1世帯上限3本で、事業費150万円は予備費で対応する。来年2月27日まで受け付ける。市農政課によると、対象地区は大胡、宮城、粕川、富士見の4地区と田口町、小坂子町、嶺町、金丸町。周辺では柿の木のそばでの出没や柿の実を食べたとみられるふんの確認が相次ぎ、10月下旬以降に31件の被害が報告されているという。
(四国のツキノワグマは約20頭で絶滅危惧:愛媛)
ツキノワグマによる被害が各地で相次ぎ、東北地方を中心に警戒が強まっている。一方、四国では現在、徳島、高知両県に約20頭が生息するのみ。絶滅の危機にある四国のツキノワグマとどのように向き合うべきか、実態を学ぶワークショップが8日、愛媛県久万高原町の面河山岳博物館で開かれた。ツキノワグマの生態調査を行う四国自然史科学研究センターの安藤喬平さんが講師を務めた。会場にはツキノワグマの毛皮や頭骨も展示され、約15人の参加者は、観察したり触ったりしながら生態を学んだ。かつてツキノワグマは四国の広い範囲に生息していたが、現在は徳島、高知両県にまたがる剣山周辺だけ。2017年時点で推定16~24頭とされ、昨年は子グマ2頭を含む26頭が確認された。GPSの解析では、四国では林道や登山道などに近づかず、人を避けて移動する傾向があるという。愛媛では、1972年に旧中山町(現伊予市)でオス1頭が捕獲されたのを最後に記録が途絶えている。この個体の剥製(はくせい)は特別展に合わせ、24日まで同館で展示されている。環境省の調査によると、2003~18年の間で生息範囲が縮小したのは四国だけだった。安藤さんは「個体数や生息地が減ると、遺伝的な多様性が劣化し、生存率も下がる。それが強く影響した場合、2040年頃に約60%の確率で絶滅するとされている」と説明した。減少の要因は、森林開発によって生息できる環境が減ったことや、木の皮を剥ぐ害獣として駆除されたことなどが挙げられる。徳島、高知両県では約40年前に捕獲禁止措置を講じたが、生息数回復の兆しは見えていない。安藤さんは「四国にクマがいるというだけで、漠然と恐怖を感じる人も多い。現状を正確に学んでもらいたい」と訴えた。講演後、参加者は「愛媛にクマが生息してもいいか」というテーマで議論。「人間が受け入れる体制を整えられたら、いいと思う」「クマと共生する文化が四国にはないので難しい」など、さまざまな意見が飛び交った。参加した久万高原町の会社員(59)は「四国のクマを守っていかなければと感じた。一方、愛媛は人工林が多く、エサになる木の実が少ない。仮に生息しても食料が足りず、共生のための中間点を見つけるのは難しいと感じた」と話した。
(北アルプス上高地の鹿にGPS発信器:長野)
北アルプス南部の上高地(約1500メートル、松本市安曇)でニホンジカによる食害が広がるのを防ごうと、一般財団法人自然公園財団上高地支部が、鹿に衛星利用測位システム(GPS)の発信器を内蔵した首輪を着けて放し、越冬地の位置や越冬地からの移動経路を探る実験を始めた。
(盛岡市、クマ出没情報をメールで配信へ:岩手)
盛岡市は岩手県が行政情報を伝える「いわてモバイルメール」で、クマ出没情報の配信を始めた。緊急性が高い場合に限り市公式交流サイト(SNS)で発信していたが、被害の拡大を受けて出没情報も伝えることにした。モバイルメールの情報は、県警から市に寄せられたクマやイノシシの目撃日時、場所、頭数など。配信時間は原則平日午前8時半~午後5時半。出没情報が同一地域に集中したり、人身被害が発生する危険性が高い場合は、従来通り市公式SNSで伝える。
(露天風呂に柵、半額補助へ)
観光庁は10日、クマによる被害を防止する一環として、旅館やホテルの露天風呂などに柵を設置する費用の半額を補助する方針を固めた。クマが宿泊施設に出没する事案が多発しているためで、政府が今月中旬までに取りまとめる被害対策施策パッケージに盛り込む。同庁は今年度当初予算に観光地の安全対策のための費用として3億円を確保しており、その枠内で対応する。不足した場合は来年度予算で事業費確保を目指す。具体的な補助対象は今後詰める。景観の悪化などを懸念して利用をためらうケースもあるとみられることから、同庁は宿泊施設のニーズを聞き取った上で対象を決める考えだ。今年は東北地方を中心にクマが宿泊施設内に侵入する事案が相次いでいる。10月には岩手県北上市の温泉施設で露天風呂を清掃していた従業員が行方不明となり、その後遺体で発見された。
(重さ約200キロ!自衛隊がクマ対策で「デカい箱罠」を運ぶ様子が公開される:秋田)
小泉進次郎防衛大臣は2025年11月5日、秋田県知事から緊急要望を受けたクマ対策支援の一環として、秋田駐屯地の陸上自衛隊第21普通科連隊が、約200kgの箱罠を運搬する様子を公式Xで公開しました。秋田県では全域でクマが目撃され、人身被害が相次いでいます。県はクマを捕獲するための活動支援として、防衛省に箱罠の輸送支援などを要望。これを受け、自衛隊法第100条に基づく輸送事業を実施するための調整が進められ、5日午前に県と陸上自衛隊がクマ被害防止を目的とした協定を締結しました。自衛隊はクマ対策支援にあたり、安全確保に万全を期すため、猟友会と共同で行動するほか、鉄帽や背面に金属のプレートの入った防弾チョッキを装着するとのこと。また、クマとの遭遇時に威嚇を行うための頑丈な木銃、防護盾、ネットランチャー、熊スプレーなども携行するそうです。公開された写真は、自衛隊員が軽トラックの荷台から4人がかりで箱罠を降ろす様子を捉えたものとなっています。
(警察OBに「狩猟免許取得」呼びかけも“駆除の難しさ”を指摘)
クマの出没が相次ぐ中、2025年度のクマ被害による死者が13人に達し、の状況となっている。ツキノワグマによる被害が急増する一方で専門家は、ヒグマも依然として危険だという。その2頭についてどのような違いがあるのか、詳しく見ていく。そんな中、環境省は警察OBの狩猟免許取得を促し、駆除体制の強化に乗り出している。全国でクマの出没や人への被害が急増している中、2025年度のクマ被害による死者数は、13人と過去最悪の状況となっている。身近に迫る危険をどのように回避すればいいのか。そもそも世界に存在するクマは8種類。実は、ジャイアントパンダもそのうちの1つだ。他には、北極圏に生息するホッキョクグマや北米に生息するアメリカクロクマ。さらに、インドやスリランカなど南アジアに生息するナマケグマや東南アジアの熱帯雨林にいるマレーグマ、目の周りの白い模様が眼鏡のように見えるメガネグマがいる。そして日本に生息するのが、ツキノワグマとヒグマの2種類。このツキノワグマとヒグマは、どう違のか。クマの生態に詳しい岩手大学農学部の山内貴義准教授は、「ヒグマは北海道のみに生息している。本州以南、九州をのぞいた本州と四国に生息するのがツキノワグマ」と説明する。ほどだという。主食はブナの実やドングリなどをよく食べて、慎重で臆病な性格だといい、首に白い月の輪のマーク、生息密度が高いのが特徴だという。一方ヒグマは、体重は100~300kgとツキノワグマよりも重く、体長も140~200cmほどで、基本的には植物を食べるが、サケやマス、昆虫なども食べるという。ヒグマも性格は臆病で人との接触を嫌うといい、特徴は爪が長くパワーが強く、体格が非常に優れているという。そして、過去に牛66頭を襲い続けて“怪物ヒグマ”として日本中を震撼(しんかん)させたOSO18や、体重約400kgと規格外の大きなヒグマも発見されている。ともに臆病な性格ということだが、2025年度の死者の数はヒグマによるものが2人、ツキノワグマによるものは11人に上っている。ツキノワグマによる被害が増えているが、専門家はヒグマにも引き続き警戒が必要だという。クマの生態に詳しい岩手大学農学部・山内貴義准教授:ヒグマも今年やっぱり多い。農作物はじめ人身被害もかなり多い。実際に死亡事故も何件か起きていて、ヒグマもかなり危険な状態と思う。ツキノワグマ、例えば岩手や秋田は非常に高密度状態で生息する場所もあるが、(北海道は)密度がそれほど高くないので、件数としては上がってこない。ただ、重大なインパクトのある事件・事故が発生しているのでヒグマも警戒が必要。過去最悪のクマ被害となっている日本。環境省は7日、警察OBにも狩猟免許取得の呼びかけを行うことを明らかにした。石原宏高環境相:ハンター、ある意味ボランティア。だんだん高齢化しているので、しっかりと緊急銃猟ができる人材確保をしていかなければならない。一方で、山内教授はクマの駆除の難しさについて、こう指摘する。クマの生態に詳しい岩手大学農学部・山内貴義准教授:クマを捕獲すること自体、実はかなりテクニックがいる。わなの捕獲率って高くなくて、おそらく2~3割ぐらいなんですよ捕獲率って。わなで捕まえるのは、クマも非常に警戒心強いですし、餌でおびき寄せるので餌入れておけばすぐ入るようなイメージが普通の人だとあるが、なかなかそうはいかない。非常に警戒したり、場合によっては全く近づかなくなってしまったりするので、その辺は猟友会というかハンターの腕の見せどころ、技量が高い人の方がうまく捕獲することができます。青井実キャスター:クマの駆除、難しいみたいですね。SPキャスター・中村竜太郎氏:野生動物ですから動きがよく見えないこともありますし今回、自衛隊とか警察も駆除に出動することになったわけですけれども、慣れているわけではない。ですから、市街地で我々が被害に遭う可能性が出てきたということを念頭に入れて行動をする必要があると思いますね。遠藤玲子キャスター:クマの習性とすると、冬眠もそろそろすると思うんですけどしないんですかね?青井実キャスター:その辺り、専門家によりますと、人の食料に依存しているクマは早くても年内までは冬眠しない。12月末ぐらいまではクマの被害は続きそうだということです。
(「1発で仕留めないとより凶暴に」ヒグマ防除隊員が語る「緊急銃猟」制度の課題)
過去最悪のペースでクマの被害が拡大している。2025年度、クマに襲われて死亡したのは、11月6日時点で13人。これまで最多だったのは2023年度の6人で、すでに2倍以上の数となっている。出没件数も上半期(4~9月)だけで2万件超と、過去最高のペースだ。各自治体は猟友会にクマ駆除の協力を要請しているが、そんななか、あるXの投稿が注目を集めた。長野県内の猟友会に所属している「信州ジビエ職人」さんが10月30日に投稿したのは、県内のある自治体から依頼されたクマハンターの報酬明細書。「獣種 ツキノワグマ」「報酬金額 3000円」などの記載があり、支払いの対象時間は2時間。つまり、時給は1500円ということだ。「信州ジビエ職人」さんはこの投稿で《この時給で命張れって言われてもね》《まあそれでもやるけどさあ》とつづっている。本誌の取材に応じた「信州ジビエ職人」さんは、1500円という報酬についてこう話す。「駆除など、命の危険がともなう特殊技能を有した人を緊急的に呼んで対応させる仕事に支払う対価ではないと思います。駆除に使う散弾銃の銃弾は、1発300円から1500円で、1発で仕留めるのは稀で2、3発は使います。出動すればガソリンもかかりますので、ボランティアというか赤字です」。“厳しい現状”を明かすが、さらに危惧することがあるという。「高齢のハンターが多いため、この先はどんどんハンターが減っていきます。いままでのような、ボランティアに近い対応だと、正直、自分たちの世代で積極的にやろうという人は少ないです」(同前)。クマ駆除の報酬額は、自治体によって異なる。ヒグマの生息する北海道内でも、8万円超から1万円と大きく異なっている。北海道奈井江町では2024年、報酬額が低すぎるとして、ヒグマ駆除の協力要請を地元の猟友会が辞退する事態となった。奈井江町側が提示した額は、日当8500円。発砲した場合は1万300円だった(その後、額を引き上げ)。国は2025年9月、人の生活圏にクマなどが出没した場合、首長の判断があれば猟銃が使える「緊急銃猟」制度の運用を始めた。警察や自衛隊などの協力も検討されている。だが、そこにも課題はあるという。北海道猟友会・札幌支部「ヒグマ防除隊」の玉木康雄氏はこう語る。「ヒグマを仕留めるには、散弾銃では威力が足りないので、ほとんどの場合ライフルを使用します。緊急銃猟では、ヒグマを1発で仕留める必要があります。そうしなければ、ヒグマはより凶暴さを増し、街のなかを走り回ることになり、非常に危険だからです。一撃でもって、相手の行動能力を完全に失わせる狙撃をしなくてはいけない。市街地での発砲は難しいです」。クマと対峙するには経験が不可欠だと、玉木氏は断言する。「標的射撃がうまいだけでは、到底無理です。紙の的は動きません。襲って来ないし、反撃もしません。しかしクマは動くし、襲ってくる、反撃してくる。そして、1発で行動能力を奪わないと、さらに狂暴になります。それだけのスキルがないと、クマに対峙する能力はないといえるでしょう」。クマ対策は、猟友会などのハンターの“善意頼り”になっているのが現状だが、それにも限界がある。持続可能な体制を構築することが急務だろう。
(「知事時代、2300頭は駆除した」:秋田)
全国でクマ被害が相次いでいる。クマによる死者数は13人を記録し(2025年11月7日時点)、これまでの過去最多年の2倍を記録した。事態を受け、各自治体はクマ駆除に乗り出しているが、「クマを殺すな」などとクマ擁護派から役場に苦情電話が入り、業務に支障をきたすこともしばしばあるという。そのなかでも、クマが頻繁に出没する秋田県では、佐竹敬久前秋田県知事が長年クマ問題に対して、積極的な発信を行ってきた。佐竹前知事に話を聞いた。――佐竹前知事は、2023年10月の記者会見で悪質な苦情の電話について、「すぐ切ります。ガチャン」「付き合っていると仕事ができない。業務妨害です」と発言されていましたよね。こっちが仕事できないんだから、電話なんて切って当たり前。ああいうのとね、付き合っていると時間がなくなる。あの連中はね、話してもわかんないんだよ。そしたら「税金泥棒」「お前ら何も仕事してないな」と公務員バッシングをするわけ。そんなの全く受ける必要ないんだよ。こっちは住民の命を守るのに必死なんだわ。――2024年12月にクマの駆除をめぐって「殺さないで」といった苦情が県庁などに相次いだとき、「お前のところに今(クマを)送るから住所を言え。そんなに(クマが)心配だったらお宅に送ります」と発言したことが印象的です。住民の生活がクマによって脅かされていて、生活の様式が変わってきているんです。農家は農作物を荒らされて生活に困っています。コメ農家はよく保険に入っているけど、果物農家は入っていないことが多いから、生活再建が困難化する傾向にある。また、朝晩は一人で出歩くこともできない。学生の運動会や、遠足、マラソン大会まで中止になっている。クマに出会ったら生き延びることは難しいし、毎日恐怖と一緒に生活しているわけです。クマを殺すなと電話をかけてくるやつは、クマによる被害の悲惨さを知らないんです。――知事時代にはその悲惨さをこの目で見てきたのでしょうか。クマは市内でも平気でコンビニの前に朝いたり、公園にまで出てきたりする。ある日、高齢の男性が自転車を漕いでいたら、クマが急に出てきて顔を引っ掻かれて両方の目玉が飛び出てしまった。クマがちょっと手で顔を押さえただけで、相当な圧力がかかるんだ。大学病院でクマに襲われた人の遺体を何度も見たことがあるが、死んだ人間は顔の半分がないんだ。頭蓋骨(ずがいこつ)をグシャッとやられていることもあるし、首がない場合もある。クマに襲われたら社会復帰は難しいと考えてもいいでしょう。――クマは人間の味を覚えているのでしょうか。人間を襲ったクマは、味を覚えてしまい、再び襲い始めます。だから駆除をしなければならない。――秋田県ではクマによる被害が多発しています。死者は2016年度と並び4人と過去最悪を記録し、人身被害は60人と過去最多となります。陸上自衛隊もクマ対策の支援で、11月末まで県内で活動することになりました。クマの出没は50年前からのことです。昔も年に数人は被害者がいたんですよ。ただ、町の中まで出ることはなかった。2023年ごろから変わってきて、駅とか公園、住宅街に出没し始めました。2023年に私が知事をやっていたときに、2300頭は駆除したんですよ。この駆除はね、通常の市街地に出て、人間の生活に支障をきたすようなときに罠をかけて行うものです。捕獲したクマを山に返すことは、ほとんどありません。数百キロあるわけですし、運搬が困難です。なにより、人間の食べ物をあさって、ドングリよりもこっちがうまいってことで、すぐ市街地に戻るんですよ。――クマはなぜ増えているのでしょう。クマが増える地域は人口が減少しているところがほとんどです。今まで里山だったところが森林化する。東北でも特に秋田なんかは人口減少がひどく、農村部や山間地は、逆に自然が豊かになっているんですよ。クマの居留地がどんどん増える。クマも今までこの中にいたのが、どんどんこっち(人里)に来るわけです。――クマの学習能力はすごいと...。アーバンベアと呼ばれる市街地に出没するクマは、車の音にも慣れており、爆竹も無害だということを学習して音に驚きもしません。勝手に民家に入り、冷蔵庫を開けて、食糧を食べてしまう始末です。そんな賢いクマが人間の味を覚えたら、どんな事態が起こるか一目瞭然です。だから駆除が必要なんです。――クマの出没数にハンターの数も追いついていないような感じがします。猟友会はもう高齢化していて、常に人材不足です。日本では、銃の規制は厳しいし、射撃場もどんどん減っている。昔は“お金に余裕がある人の趣味”で、猟をやる人がいたんだけど、今はそんな余裕のある人がいないんです。だからもう、“猟友会に任せる”っていうモデル自体が破綻しているわけです。本当に必要なのは、行政とか警察が動ける体制。いわゆるガバメントハンターですよね。元自衛官とか元警察官とか、銃を扱う素地がある人がきちんと現場で動けるような枠組み。そのためには、免許の取得費用とか、銃の購入費とか、訓練の費用とか、そういうところをちゃんと公的に補助しないとダメなんです。それから、ドローンです。熱源センサーを使えば夜でも探索できる。アメリカでもウクライナでももう普通に使っていますよ。でも日本は“前例がない”で止まるんです。その間にも、子どもは通学できない、農家や山菜採りは収入を失う、明日から飯が食えない、そういう生活が実際にあるわけです。“クマと共存”って言いますけどね、まずは人間が普通に生活できる環境を取り戻さなきゃいけないんですよ。その上で初めて、共存の話ができるんです。秋田県庁によれば、クマ駆除による電話は例年より数が少なくなっているという。一方で、他の地域ではいまだに「クマを殺すな」などの電話が相次ぐこともある。クマ擁護派と役所が“共存”できる日は来るのだろうか――。
(クマ対策の切り札「ガバメントハンター」ってどんな人?:北海道)
クマ対策の切り札として期待される「ガバメントハンター」。聞きなじみのない名前ですが、一体どんな役割を果たすのでしょうか?先月30日に行われたクマに関する関係閣僚会議。石原環境大臣の口からは聞きなれない言葉が。石原環境大臣)「ガバメントハンター等の人材育成の確保を…」。政府にクマに関する緊急提言を提出した野党からも。国民民主党 村岡敏英衆院議員)「ガバメントハンターという形もこれから取り入れていって…」。「ガバメントハンター」とは?実際にガバメントハンターとして働く職員が北海道の羅臼町にいました。今年7月、羅臼町では国道でクマがシカを襲い、山の中に引きずりこむ様子が撮影されるなどクマの目撃が相次いでいます。羅臼町役場で働く田澤道広さん66歳。狩猟免許を持ち、自治体職員としてクマを含む鳥獣被害の対策も行う「ガバメントハンター」です。田澤さん)「やっぱり最終手段を自分で持っていないとなかなか対応に行き詰まる部分が多くて、それで必要性を感じて銃の所持許可と狩猟免許を同じ時にとった」。今年、羅臼町では23頭のクマを駆除しましたが、その半分近くは田澤さんによるものです。田澤さんがガバメントハンターになったのは今から30年以上前のこと…クマの対応へのスピード感がメリットだといいます。田澤さん)「ハンターは別に本業がありますので、ハンターの必要があって何人かいるハンターに電話をしても『今、羅臼にいない』とか『仕事中だから無理』という場合が多々あるんですが、そのハンターへの連絡の手間が省けるというのはある」。羅臼町役場は24時間体制で通報を受けており、依頼があった場合、田澤さんが出動。ガバメントハンターの活動に羅臼町や地元ハンターは…羅臼町 湊屋町長)「今年から緊急銃猟とうものが始まりましたけども、私の責任においてしっかり(クマ被害に)対応していくということになりますから、(ガバメントハンターは)自治体の役割である町民の生命、財産を守るという上では非常に効果的に働いていると思っている」。羅臼町のハンター櫻井さん)「撃っていいかの判断も役場職員で専門家でもあるわけなので法的な判断とかその場でできるわけですからそういう面でも素早く対応できるというメリットはとてもあると思います。住んでいる町民の方々にとってやっぱり最高の体制だと思います」政府が今月中旬までにまとめる緊急のクマ対策パッケージにガバメントハンターの人材確保を盛り込んでいます。ハンターが自治体職員になるパターンと職員が狩猟免許を取得するパターンが考えられますが…田澤さん)「新人ハンターであると銃を持ってすぐにクマを撃てるという状況にはならないですから、そういうところもネックになるのではないか。国や北海道が力を入れてくれるのであれば羅臼に限らず道内の市町村ガバメントハンターを導入しやすく、育てやすくする制度を作っていただけたら北海道全体が助かるのかなと」。
(被害「災害級」過去最悪ペース、13人が犠牲に)
全国各地でクマによる被害が止まりません。取材班のカメラが現場で捉えたのは、知られざるクマの実態でした。連日、各地でクマが出没する異常事態!山形県・鶴岡市では住宅の庭にクマがー。体長約70センチで、1時間ほど庭にいましたが駆けつけた市の職員が麻酔銃で捕獲。再び市街地に戻ってくる恐れがあることから、駆除されたということです。猟友会らが集まり、騒然となったのは富山市内にある、野菜などの直売所。「銃を持った猟友会がやぶに入っていきます。猟友会が銃に弾を詰めています」。隣の茂みにクマが潜んでおり、緊急銃猟が行われました。「発砲音です。発砲音がしました」。猟友会はメスの成獣1頭を駆除しました。一方、10月から毎日、クマが出没しているというのは群馬県みなかみ町にあるりんご園。クマの姿を捉えるべくドローンで捜索、すると……。草むらを歩く1頭のクマ。りんごを見つけると、器用に両手で押さえて食べ始めます。すると、匂いにつられたのかもう1頭やってきました。専門家によると2頭は親子とみられ、最初のクマがいなくなるとりんごを食べ始めました。その後、満腹になったのか眠りについたクマ。その場所は、民家の近くでした。クマの生態に詳しい岩手大学 山内貴義 准教授「特に今年はエサがないので引き寄せられて来る。ずっと食べ続けてしまう可能性。冬眠が遅れる可能性もある。こういう所にエサがある、と、学習する個体が増加すると、来年度以降の出没につながる」。今回、同行したのは北海道・砂川市でクマハンターとして活動をする池上治男さん。北海道猟友会砂川支部長 池上治男さん「箱わなナンバー3を見に来ました。作動していません」。市からの依頼を受け、設置された箱ワナの確認作業。見回りを続ける中で、クマと対面する瞬間が。安全を確保した上で、カメラを向けると……。北海道猟友会砂川支部長 池上三治男さん「1メートル50センチはあると思う」。捕獲したクマは市に渡し、駆除されるといいます。この日、クマは別の場所でも。警察官も出動していました。シカの死骸があるということは、向こうで倒したということ。しかし、周囲で見つからず移動しようとした時。池上さん「そこにいるってこと?今?」。警察官「今の話なので」。そこで見つけたのは。探していたクマを発見。子グマです。Q:親グマが近くにいる可能性も?池上さん「親は林に隠れているかも」。より危険な親グマが近くにいる可能性があるといいます。Q:すぐ駆除することはできない?池上さん「できない」。周りに建物などがあるためハンターも銃をすぐに撃つことはできません。自分の獲物を取られないようにシカを埋めるような行動も。これは「土饅頭(どまんじゅう)」といって、人里で見られるのは珍しいといいます。その後、市の職員やハンターが対応し、クマは餌のシカを置いて山の方へと去って行きました。北海道猟友会砂川支部長 池上治男さん「保護すべきものは保護するし、駆除しなきゃいけないものはやむを得ず駆除する。地元に密着しているハンターは住んでいる農家の人や地域住民の安全願っている」。クマの出没は大阪府でも。今年度の目撃情報は過去24年で最多の19件にのぼり、府北部の豊能町や能勢町、高槻市を中心に報告が相次いでいます。大阪府・吉村洋文知事「こういったものを持って山に行くときは、クマに警戒をお願いしたい」。関西でも増えるクマの目撃情報。来週には、警察によるライフル銃でのクマの駆除も開始へ。対策は新たな局面を迎えようとしています。林道をゆっくりと歩くクマ。5日夜、富山県・砺波市に設置されているAIカメラがとらえた、クマの様子です。富山市では、住宅近くの畑や道路に、クマとみられる足跡も……。環境省は6日、クマによる人身被害の発生エリアについて今年7月~9月は7割以上が市街地や公園などの「人の生活圏」だったと発表。今年、秋田県鹿角市で捕獲されたクマの数は、293頭に。私たちの生活への影響も日に日に大きくなっています。高校駅伝の東北大会では当初、公園周辺のコースを走る予定でしたが、陸上競技場内のトラックを周回する形で開催されることに。“襷をつながない”異例の駅伝となりました。今年度の全国のクマによる死者数は“過去最悪”の13人(環境省、5日時点)。そのうち12人は北海道と東北で確認されていて……。6日、その知事らが集まった会議で「クマ対策」のための国への提言をまとめました。山形県 吉村 知事「捕獲の担い手、猟友会も高齢化している。中長期的な視点でしっかりと提言するのがよいと」。北海道 加納 副知事「明日環境省に要望に行く。自衛隊と自治体の連携体制を構築していただきたいと話そうと」。また、全国最多の5人が亡くなっている岩手県の副知事は、6日、環境省を訪れ、クマ被害の防止対策への支援を要望。岩手県 佐々木 副知事「現場では大変苦労しながら対応しているので、是非ともご支援賜ればとよろしくお願い致します」。各地で進む、クマ対策。警察庁は来週木曜日から秋田県と岩手県でクマが生活圏に出没しハンターが間に合わない時などに、機動隊の警察官がライフル銃を使って駆除する運用を始めるとしました。6日から「銃器対策部隊」を現地に派遣。出没地域でハンターに同行したり特性を学んだりして準備を進めるということです。物流業界も“クマ対応”に追われています。日本郵便は、クマが出没している地域では、原則として午後5時以降、バイクや自転車での配達業務を見合わせる方針を明らかにしました。そのため、郵便物の配達に遅れが生じる可能性があるとしています。ヤマト運輸では、各地の営業所がクマよけスプレーなどの対策グッズの配備をさらに拡充できるよう、社内の環境を整備。佐川急便では、従業員向けのホームページに出没情報を掲載するなどして、注意を促しています。全国でクマによる人的被害が“過去最悪”を上回るペースで増えるなか、大阪でもツキノワグマの出没情報が増加しています。クマとの遭遇を避けるため大阪府は、山に行く際、クマ鈴の携帯や不要な柿の木の伐採などを呼びかけています。
(元自衛官でも「狩猟は難しい」高度な“戦い”)
過去最悪を記録しているクマの被害。こうした中、熱い視線が注がれるのが、「クマハンター」です。しかし、その数は年々減少し、いまやピーク時の3分の1以下に。専門家からは「やりがい搾取」という言葉も出るほど過酷な現場です。「命がけ」で対応するハンターたちの実態に迫りました。北日本を中心に、人への被害が相次いでいる「クマ」。クマによる死者は13人にのぼり、過去最多だったおととしの2倍以上に。関西でも、目撃情報が相次いでいて、生息しないとされてきた地域でも初めてクマが確認されています。対応が急がれる中、この事態を一手に担うのが、「クマハンター」です。国はことし9月、市町村の判断で市街地でハンターがクマを駆除できる「緊急銃猟」を可能にしました。また、京都府と滋賀県では今月15日から、ハンターによるクマの狩猟がスタートします(個体数には制限あり)。クマの数を抑えたり、人の怖さを植え付けることで、クマを山奥に押し返す効果が期待されます。その狩猟解禁を前に、多くのハンターが集まる場所が、兵庫県三木市にある“ハンターの養成施設”です。甲子園球場およそ20個分の西日本最大級という敷地には、イノシシに見立てた的を狙い撃つ射撃場などを完備。この日も、多くのハンターが狩猟解禁を前に腕を磨いていました。(Q.お上手ですね)【京都府のハンター 秋良克温さん】「きょうはやっぱり後ろでカメラが回っていたから緊張しました。25枚撃って19枚やし6枚外している」。(Q.きょうの目的は?)【京都府のハンター 秋良克温さん】「射撃のトレーニング。11月15日からイノシシとシカを撃ちにいくので」。そう話すハンターは、射撃の練習に余念がありません。この日は兵庫県の隣、鳥取県からも大勢のハンターが訪れていました。【鳥取県のハンター】「イノシシ、シカ、クマも含めて銃に対する素養というか県からもっと勉強してくださいということで」【鳥取県のハンター】「県自体も必要性を感じているからこういったものを企画してくれたので参加した」。ことしは、関西以外からも緊急銃猟ができる人材を育成できないかなどの問い合わせがあるというこちらの施設。“重要なミッション”も課されています。【兵庫県立総合射撃場 藤本恵一朗場長】「若い方のハンターの加入っていうところがやはり少ない。新規の狩猟者の方の確保であったり、高いレベルでの狩猟技術の継承ということで、こちらで講習とかをやって、技術の向上に努めております」。ピーク時の3分の1以下にまで減少しているというハンター。なぜ、クマ対策を担うハンターはここまで、数が減ってしまったのでしょうか。実際の活動を知るため、取材班は京都府福知山市で京都府猟友会に所属するハンターの狩猟に同行しました。この日はまだ狩猟解禁前でしたが、農作物に被害を与えるシカやイノシシの駆除のために山に入ります。(Q.ここではどういう動物が?)【京都府猟友会に所属するハンター】「今日の目的はシカです。許可が出ているのは、シカ、イノシシ」。Q.クマが出ることもあるんですか?)【京都府猟友会に所属するハンター】「出るかもしれませんね」。猟犬がハンターの元へ獲物を追い込み、猟銃で仕留める“巻き狩り”という手法でその時を待ちます。間もなく、ハンターが銃を構えます。山にシカが2頭現れましたが、残念ながら弾は外れ、シカは山の中へ走り去ってしまいました。(Q.残念ながら外しましたけど難しいですか?)【京都府猟友会 下元照男理事】「難しいですね。自衛隊におって、鉄砲何百発、何千発撃ってますけど、それでも狩猟は全然違いますので、最初は全然当たらなかった」。今月15日からはクマも狩猟の対象ですが、クマを撃つのは他の動物とは違う難しさがあると言います。【京都府猟友会 下元照男理事】「クマは猛獣ですので、外すとハンターも被害を受けますし、余計どう猛になって市街地に出ていくと、人を襲ったり。クマを撃つ場合は一発で仕留めないと。それがなかなか難しいですね。命がけですよ」。高齢化もハンター不足を加速させている要因です。狩猟歴30年以上のベテランハンター・山本さんはこう話します。(Q:ハンターも体力勝負ですね?)【京都府猟友会洛北支部 山本俊晴会長】「体力勝負やな。場合によっては3時間くらい歩き回ることもあるしな。昔は(若いときは)今はもう、ようせんけど」。そんな中、次の世代の育成がベテランハンターに求められています。【京都府猟友会洛北支部 山本俊晴会長】「教えるもんがいなかったら、3年でやめる子も(出てくる)。3年切り換えやから、鉄砲所持許可と狩猟免許とほなもうこんな面倒くさいことやめとこうかなってなって、辞める人が多いんで、今の間に自分も体が動く間に育てとかんと、今後大変なことになる」。この日は10人以上のハンターでおよそ5時間山に入り、シカ2頭を駆除しました。長年、クマを研究している専門家は、対策がハンター頼りになっている現状について指摘します。【森林総合研究所 大西尚樹さん】「そもそもハンターさん、猟友会の人たちに出没したクマの対応をお願いするということ自体に無理がありました。命がけというかかなり危険を冒しての作業になるので、民間の人たちにお願いするというのは、最近の言葉で言うと“やりがい搾取”ともいえるかなと思います」。さらに、被害者を増やさないためには、この冬が重要だと指摘します。【森林総合研究所 大西尚樹さん】「これから冬眠期間に入っていってしばらく時間が稼げます。来年度始まるときには新たな制度を進められるように準備をしていただきたい」。クマから身を守るために今、早急な対策が求められています。「ハンターの方にお話を聞くと、クマを駆除する時に発砲する際、熊に当たらずに流れ弾がどこかに当たってしまうことがあり、その場合に罪に問われるんじゃないかということを不安に感じていました」「大事なのはインセンティブとリスクヘッジなんですけども、リスクの中には襲われるという現象面でのリスク以外に、例えば発砲自体は正当業務行為だとしても、それが結果的に人を傷つけたり物を壊したりした場合には、業務上過失致死傷罪に問われる可能性や、損害賠償請求を受ける可能性もある。そういう法的なリスクヘッジをちゃんと考える必要があると思いますね」。
(日常生活に大きな影を落としているクマ、国や県が進めようとする新たな対策とその課題は?:秋田)
政府は新たなクマ対策の実施に向けて、急ピッチで体制の整備を進めています。人の日常生活にも大きな影を落としているクマ。国や県が進めようとしている新たな対策とその課題を整理します。暗闇の中、エサを求めて人里に現れるクマ。秋田市河辺にある民家に設置した無人カメラの映像です。カキの木の枝を咥えると、勢いよく折りました。そして実を手繰り寄せ、食べ始めます。クマは午後8時から深夜2時頃まで約6時間にわたって断続的にカキを食べていました。自宅のすぐそばで連日のように姿を現すクマに住民は不安な日々を過ごしていました。クマが出没するようになり、女性は窓やカーテンを締め切った生活を送っています。カキの木は自宅の敷地外にあるため、自治会を通じて持ち主に伐採を依頼したといいますが…。相次ぐクマによる人への被害。今年は全国で過去最多となる13人が死亡。このうち県内では4人が亡くなっています。こうした中、県内では5日、自衛隊による支援活動が始まりました。「自衛隊の力を借りなければ国民の命は守れない」として防衛省に派遣を求めた鈴木知事。派遣をきっかけに、クマ対策を大きく前に進めたいという思いを明らかにしました。鈴木知事「これをきっかけに、国の方では本腰を入れた今までとはまったく違う有害鳥獣に対する対応策というものをぜひ検討していただきたいという問題提起をする、そのきっかけにもしていこうと思います」。私たちの日々の暮らしに大きな影響を与えているクマ。国や県の対策、そしてその課題を整理します。約3,000世帯8,000人が暮らす秋田市の御所野地区です。先月31日の深夜民家のすぐそばにある畑には体長1.5メートルほどの大きな成獣のクマがいました。郊外の田んぼでは稲穂を食べるクマの姿も。農地での出没によって生産者の不安感が広がっているとして、鈴木農林水産大臣は捕獲の強化に乗り出す方針を示しました。鈴木農水大臣「農作業を行う方々の人命にも関わるきわめて深刻な問題です。現場からはクマの出没が怖くて農作業が行えないなどの心理的な被害も伺っております」。国会では6日、高市総理大臣がクマ対策について方針を述べました高市首相「警察官によるライフル銃を使用したクマ駆除について早急に対応していく」「スピード感を持って必要な対策を順次実行に移してまいります」。同じく6日。青森県で開かれた北海道東北地方知事会議で鈴木知事は県内の現状をこう訴えました。鈴木知事「2年前、人身(被害)が70人出たんですよ、その年。ただ出方が全然違うんですね、今回」「うそでしょっていうくらい中心市街地に出てきます。これは肌感覚ではありますが、 2年前に学習をしたクマが成長して子どもも増やしてさらに領域を拡大してきた」。国への緊急要望として、対策事業の財源確保やクマを寄せ付けるカキなど放置された果樹の伐採について、制度の弾力的な運用を求める内容が取りまとめられました。青森県 宮下宗一郎知事「通常のことではないことが東北・北海道の中で起こっている」「もしかしたら自分が襲われるかもしれないという恐怖感の中で暮らしている方々が東北・北海道の中でたくさんいらっしゃるということはしっかりこのタイミングで国に関係知事と連携して訴えていくということは大事なことだと思いますし、国にこの課題感を共有していただくためにも通常の要望ではなくって緊急要望することが非常に重要」。動き始めた新たなクマ対策。背景にあるのが、最前線でクマと対峙するハンターの高齢化と不足です。鹿角市のハンター「射殺(駆除)してもいいんだけれども、そのあとが大変だからね。そして(見回りも)朝・早朝でしょ、あと夕方でしょ。仕事もあるし、 きょうも一頭射殺(駆除)したんだけれども、たまたま日曜日だから解体・処分する人がもっといるのでやれたけれども」。ハンター頼みが現状のクマ対策。石原環境大臣はクマの駆除を担う公務員、いわゆるガバメントハンターの確保に向けて国が支援する方針を示しました。石原環境相「将来的にハンターの方の高齢化が進んでいてガバメントハンターも環境省としても支援していく」。ガバメントハンターの先進地・占冠村。北海道のほぼ中央に位置する人口1,300人ほどの小さな村です。村役場には現在、ハンターの資格を持つ専門の職員がいます。この日はヒグマが出没した際の訓練が行われていました。地元の猟友会員「最終的に判断する、特に発砲にかかわることを判断してくれる人がいる状況で動けるというのは、指示を出される側としてはやりやすかった」。占冠村野生鳥獣専門員 浦田剛さん「野生鳥獣専門員を置いて仕事させてもらっているのは地域社会の住民のひとつの決意でもある。地域を動かしていく。そういうトリガー(きっかけ)になれたらなと思っています」。今年度、クマの目撃情報が1万件を超え過去最多となっている県内。県議会でもガバメントハンターの導入をめぐって激しい議論が交わされました。佐藤信喜県議「ハンターは団塊の世代であったり 、一気に離職されていく方々がいると思うので 」「ガバメントハンター・公務員で構成されるハンターを組織していくことが必要になってくる時が来るんではないか」。県生活環境部 信田真弓部長「狩猟者に占める65歳以上の割合が現在約57%となっておりまし て、将来の減少が懸念されております」。鈴木知事「現実にはそのどこに(銃・弾丸を)保管するのだとか 誰の銃を使うのだとか、様々な制約がある中で、国の制度自体を変えていただかなければ対応できないということは間違いないことです。一方で現場は本当に高齢化し、 しかもそれが本業ではない猟友会の協力を得なければ、こうした極めて公的な、住民の安全確保ということができない状況っていうのも問題があるのは事実だと、私も考えておりますので」。国と県、それぞれで走り出したクマ対策の数々。クリアしなければならない法的な問題も多く、実際に動き出すまでにはある程度の時間がかかることが予想されます。ここからはクマの取材を続けている川口記者とお伝えします。鈴木知事が自衛隊の派遣を要望したのが、先月28日でした。その8日後、今月5日には鹿角市で自衛隊による後方支援が始まりました。同時に警察官によるライフル銃での駆除の体制整備も進められています。政府の対策が急ピッチで進んでいるように見えますが、現状についてどう受け止めていますか?連日のように中心市街地でクマの出没が相次いでます。いまできる建物などへの侵入対策についてです。青森県の村役場にある防犯カメラの映像では、一頭の子グマが自動ドアにぶつかりながら室内に侵入してきました。透明なガラスの存在がわからない、つまり認識せずに突進してパニック状態になっているようにも見えます。続いては山形県の中学校に現れたクマです。立ち上がったあといきなり走り出してガラスに突進しました。自動ドアに移った自分の姿を違うクマと認識して興奮状態に陥ったとみられています。県内ではすでに自動ドアを手動に切り替えて侵入対策している店舗なども見受けられますが、この2つの映像を見た県のクマ対策の専門職員は自動ドアや風除室のガラスに目隠しとなるシールやこのような緩衝材を張り付けると侵入を防ぐ効果があるのではと話しています。おととし以降、県内では冬眠しないクマが相次いで目撃されています。そうしたクマは冬の間も枝に残ったり、落ちて雪の中で貯蔵されたりしたカキを食べています。今のうちから集落に寄せ付けないためにも、繰り返しになりますがカキの木の管理を徹底して下さい。また、冬眠を迎えるこれからのシーズン、クマは暗く、狭いスペースを好む傾向があります。小屋や地下室など建物への侵入を防ぐため、戸締りも忘れないようにして下さい。
(クマ被害の現状と各自治体の対策まとめ:東京)
TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤 Live Junction」(毎週月~金曜20:00~)。TOKYO MXの報道記者が注目したニュースを深掘り・生解説する「ツイセキシャ」のコーナーでは、都内でも頻発しているクマによる被害と対策について取り上げました。現在、都内では多摩地域に160頭ほどのツキノワグマが生息していると推定され、クマ目撃情報は例年200件ほど。しかし、今年は8月末の時点ですでに約180件にのぼっています。そうしたなか、8月23日には奥多摩町の大丹波川で渓流釣りをしていた50代の男性がクマに襲われ、顔や首に重傷を負いました。奥多摩町でクマによるケガ人が出たのは、6年ぶりです。そこで今回は、山田清太朗記者が都内におけるクマ被害の現状と自治体の対応を取材しました。奥多摩町でも今年はクマの目撃・痕跡の件数が増加しています。奥多摩町観光産業課の大串課長によると、昨年度は年間約130件だったところが今年度は7月末までにすでに約70件。「(クマ被害の)リスクは高まっている」と警鐘を鳴らします。そうした背景から、同町では昨年からSNSを使った目撃情報の発信を住民に向かって行っている他、クマが人の生活環境に立ち入るのを防ぐため、餌となる生ごみなどを放置しないよう呼びかけています。大串課長は「山の中に餌がなく、(クマが)人里・人家に近いところに出没している状況がある。引き続き、住民の方には生ごみや野菜くずを庭先に放置せず、匂いでクマを寄せないよう注意喚起し、観光客に対しても観光ゴミは基本持ち帰っていただくようにしている」と言います。この状況に、キャスターの堀潤は「山と里の間のバッファゾーン、農地のようなところがなくなってきていて、(クマが)ダイレクトに食べ物を獲りに(民家などに)来るようなことが起きてしまっている」と危惧。続けて、山田記者も「この40年ほどで見ると、(クマの)生息域が約2倍に増えている。それで市街地への侵入が増えているので、やはり注意は必要」と呼びかけます。また、堀が「山が枯れると、山で暮らしていた動物は(山を)出ざるを得ない。山の食べ物を増やす、山の保全という議論もある」とコメントすると、コラムニストの河崎環さんからは「こういう議論になると、特に動物愛護の方々は人間が自然、山の中に入っているからだと指摘する人もいる。それは確かだと思うが、この件に関して私たちは、圧倒的に消極的な対応しかとれないことが疑問」といった意見が。そして、「人の世界とクマの世界が重なる部分が大きくなり、これだけの遭遇率、事件・事故が増えている。にも関わらず、私たちがやれることは『せめて餌をやらない』、『食べ物の匂いをさせない』などしかないというのは、思考がスタックしているように感じる」と持論を述べます。自治体がクマ対策に苦悩するなか、9月から「改正鳥獣保護管理法」が施行。これにより、安全管理などいくつかの条件を満たせば、自治体の判断で市街地での猟銃の発砲が可能になりました。今回の改正に対し、東京農工大学大学院・小池教授は「警職法といって警察官の指示のもと発砲するのが今までの流れだったが、市町村の担当者の判断で発砲できるようになり、出没事案を早く解決する効果が期待できる」とメリットを挙げます。一方で、「自治体の職員が判断するのは、非常に負担が重い」とデメリットも示唆。「市町村の職員は、(鳥獣、農業、林業、観光など担当する業務が)兼業で当然専門知識がない。そうしたなかで、どういう状況で発砲していいか判断できない」と案じます。今回、山田記者はツキノワグマが生息しているとされる6つの自治体に法改正の影響について取材。すると、奥多摩町などいくつかの自治体では、住宅などに流れ弾が当たってしまった際の物的な被害をカバーするため、保険に加入していたそうです。課題としては、職員向けの自治体独自のマニュアル作成が追いついていないこと、さらには、職員の安全確保の判断に専門知識がないといったことなどが浮き彫りに。そのため、専門知識を持つ猟友会や警察の助言を受けて判断するというのが、現時点での対応となっています。総じて、小池教授は「自治体が職員の知識アップを図る必要がある。そして、専門の職員を正規職員として配置することが長期的には必要」と助言します。例えば、秋田県や島根県では野生動物の専門知識がある職員を採用していたり、職員の知識アップを目指し東京農工大では一昨年から全国の自治体職員など社会人向けの教育課程を開始し毎年数十人程度が受講。少しずつ専門知識向上に向けた取り組みが図られているそうです。堀は、法律改正によってより潤滑な対応を期待する一方で「人の育成には時間がかかりそう」と苦慮。ジャーナリストの風間晋さんも「自治体の判断で発砲できるようになり自治体にフォーカスされがちだが、猟友会など実際に発砲した人への結果責任をいかにカバーしていくのかは、まだ議論の段階でどうなるかわからないところがある。それも時間がかかりそう」と懸念していました。
(クマ対策で出動も「発砲できない」自衛隊)
クマによる死者を含む人身被害が相次ぐなか、ついに自衛隊の派遣が始まった。だが、クマ対策の“切り札”となる印象とは裏腹に、自衛隊には課される制約があまりに多い。今、求められるのは「誰がクマを殺す役割を担うのか」という問題に正面から向き合うことではないか。陸上自衛隊の秋田駐屯地では、異例の“派遣”に向け、訓練が急ピッチで進められた。トラックにクマ捕獲用の「箱わな」が積まれ、周りをヘルメットと防弾チョッキを着けた陸自隊員が固める。ただ、隊員たちが手に構えているのは、銃ではなく「クマ撃退スプレー」だった。「防衛省・自衛隊の力を借りなければ国民の命が守れない」と語った鈴木健太・秋田県知事の要請を受け、11月5日、県内でクマ対策のための自衛隊派遣が始まった。北海道・東北各県の中山間部や市街地を中心にクマの被害が相次ぐなか、秋田県内ではこれまで4人が死亡、60人近くが負傷する事態となっている。冬眠期を前に、秋田市中心部でもクマが多数出没した。JR秋田駅から徒歩数分の千秋公園では10月下旬から目撃情報が相次ぎ、現在は公園内への立ち入りが制限されている。身近に迫るクマの脅威に、市民は怯えている。そうしたなか、鹿角市や大館市など複数の自治体から要請を受けて陸自秋田駐屯地所属の部隊が出動したが、その任務はクマの駆除ではない。自治体職員・猟友会会員らが箱わなの設置や移動、エサの入れ替えや巡回などを行なう際の「後方支援」に留まる。後方支援の内容は、箱わなの運搬と、わなの設置や見回りを担う猟友会の会員らの輸送、駆除されたクマの運搬や解体など。前述の通り、人的被害を避けるために隊員が持つ「武器」は、銃ではなくクマ撃退スプレーだ。元陸自1佐で前参院議員の佐藤正久氏が言う。「自衛隊の銃器使用は憲法などで厳しく制限されているため、クマを探して、駆除のため撃つという武器使用はできない形になっています。そのため、今回の派遣は自衛隊法100条に定められた民生支援である『土木工事等の受託』による出動になりました。民生支援ではもちろん小銃は持ちませんから、クマの駆除のために撃つことはできないのです」。「発砲できない」という法的制約以外にも、自衛隊がクマの駆除に向いていない理由が2つあるという。「1つは訓練の問題です。クマの駆除にはライフルを用いますが、自衛隊の訓練は目標を数百メートル離れた位置から狙うもので、至近距離で動物を狙う訓練はしていません。市街戦を想定した至近距離での射撃訓練は一部ありますが、街中でのテロリストなどを想定したもので、森と市街地を行き来するクマを狙うような訓練はやっていません」(同前)。2つ目が「装備」の問題だ。佐藤氏が続ける。「自衛隊の小銃はクマを撃つ猟銃より貫通力が高いため、市街地などで外した場合に流れ弾が道路に跳ねるなどして民間人や建物などに被害が及ぶ危険があります。弾丸もフルメタルジャケットと呼ばれる完全被甲弾を使っており、命中後は貫通するためクマの動きを止めることができません。駆除のためには弾頭にキズをつけて引っ掛かるようにし、貫通せずクマの体内に残るようにしなければなりませんが、そのような弾を用意していないのです」。小泉進次郎・防衛相も会見などで「自衛隊は猟銃を使った訓練をしておらず、狩猟のノウハウも有していないため、鳥獣の駆除を担うのは困難」「自衛隊が協力し得るものから速やかに実行に移す」と述べており、自衛隊の能力がクマの駆除に向かないことを認識している。ただ、後方支援とはいえクマの出没エリアで活動する以上、自衛隊が任務中にクマと遭遇するケースは十分想定される。その場合、自衛隊員はどう対応するのか。「小銃を持たないので、クマと遭遇した場合は一般の人と同じ対応を取るしかない。クマ撃退スプレーを使うか、伏せてかわすくらいでしょう。自衛隊員といえども、さすがに白兵戦でクマには敵いません」(佐藤氏)。危険なクマに対して自衛隊はほぼ“丸腰”で挑まなければならないということだ。そもそも、日本周辺の安全保障環境が緊張下にあるなか、国防任務にあてるべき自衛隊のリソースをクマの駆除に割くべきなのかという意見も少なくないが、前出・佐藤氏はこう言う。「これだけ多数のクマが民家近くや市街地に出没する状況では、通常任務の負担にならない程度という条件で、自衛隊が都道府県からの要請によるクマ対策に当たってもいいと私は考えます」。
(クマ対策に出動しても「撃てない」自衛隊、唯一の可能性は凶暴化&大量出没した際の“超法規的措置”としての防御出動)
「防衛省・自衛隊の力を借りなければ国民の命が守れない」と語った鈴木健太・秋田県知事の要請を受け、11月5日、県内でクマ対策のための自衛隊派遣が始まった。しかし、自衛隊の任務はクマの駆除ではなく、自治体職員・猟友会会員らが箱わなの設置や移動、エサの入れ替えや巡回などを行なう際の「後方支援」に留まる。銃器使用は憲法で厳しく制限されており、駆除のために撃つという武器使用も不可能だ。誰がクマを殺す役割を担うのか──。自衛隊がクマ対策に当たるうえで、様々な制約をどうクリアするかという問題がある。自衛隊が「撃てる」ようになるための条件は厳しい。元陸自1佐で前参院議員の佐藤正久氏が言う。「自衛隊法83条に基づく『災害派遣』であれば、同94条の定めにより、警察官同様、民間人や自分自身を守るために緊急避難として武器使用が認められる場合があります。警察官職務執行法4条には『狂犬、奔馬の類等』が出た場合に、他の民間人などを守るために、民間人がいなければ、自分自身の緊急避難として武器が使用できるとあります。しかし、それでもやはり自衛隊が駆除のために自らクマを索敵して(探して)撃つことはできません」。過去には北海道でヒグマの被害が頻発した際、自衛隊が「災害派遣」の枠組みで出動し駆除に当たったケース(1962年)や、トドの駆除で火器が使用されたケース(1967年)などがあったが、「多くは訓練の名目で行なったもので、コンプライアンスが問われる現在、訓練名目の獣害対応は現実的ではない」(同前)という。今後、唯一可能性があるのが、“超法規的措置”としての「防衛出動」だ。「クマがさらに凶暴化し、しかも20頭といった単位で現われるようなことが起きた場合、超法規的措置として防衛出動と同等の命令が首相から出ないとは言えません。防衛出動が出れば凶暴なクマ20頭がいる近隣に避難命令を出し、そのうえで駆除活動をします。火器を使うのは難しいでしょうが、最低でもエリアに包囲網を敷き、ゲリラに対する山狩りのような作戦を行なうことになると思います」(同前)。防衛省陸上幕僚監部広報室に今回の派遣に対する見解を求めると、「個別の任務の性質や具体的な活動内容に即して武器の携行を判断するが、自衛隊は猟銃等を使用した鳥獣駆除の訓練を実施しておらず、狩猟のノウハウを有していないため(クマへの発砲は)現状困難」とし、今回の秋田県での任務中における隊員らの安全確保に関しては「猟友会と連携しつつ、防護盾や熊スプレー等を使用し、安全に万全を期す」と説明した。ほぼボランティアとなる各地の猟友会に駆除を委託するだけでは対応がままならず、自衛隊にも多くの制約があるなかで考えなくてはならないのは、国民の命を守るために、「誰がクマを殺す役割を担うのか」という問題である。現在、政府が白羽の矢を立てようとしているのが警察だ。10月30日に立ち上げたクマ被害対策の関係閣僚会議では、警察庁に対し、「警察官がライフルを使って駆除すること」を検討するよう指示が出された。実現すれば、警察が“ガバメントハンター”として駆除に乗り出すことになる。【※追記:警察庁は11月13日から、機動隊の警察官がライフル銃でクマを駆除する運用を、秋田県、岩手県で始める】。「政府のクマ被害対策が『関係省庁連絡会議』から『関係閣僚会議』に格上げされたことによって、各都道府県公安委員会に方針を強く指示できるようになった。自衛隊の超法規的措置としての防衛出動にしても、警察官がライフルでクマに対抗するための措置にしても、法整備やそれに対する議論は急務となってきます」(佐藤氏)。加えて、自然保護団体や動物愛護団体など、クマの駆除そのものに反対する世論が根強いことも見逃せない。クマの個体数の減少が取り沙汰された1990年代以降、「駆除中止」を求める動きが活発化。保護が優先された結果、近年はクマの個体数が急速に回復し、そのことが今日の人里への大量出没を招いたとの見方もある。そうしたクマの駆除自体に反対する意見が存在するからこそ、「誰がクマを殺す役割を担うのか」という議論が先延ばしになってきた現実もある。ただ、自衛隊が“丸腰”で派遣されるような状況下では、悠長な議論はもはや許されないはずだ。
(ヒゲの隊長が明かす“自衛隊がクマを駆除できない理由”)
最強専門家軍団が、ニュースの正しいミカタを徹底解説する情報バラエティ番組「教えて!ニュースライブ 正義のミカタ」(ABCテレビ)。東留伽アナウンサーがMCを務める番組公式YouTubeチャンネル「正義のミカタチャンネル」に、元自衛官の佐藤正久氏が登場。クマによる被害が全国で増加する中、自衛隊がクマを駆除できない理由を語った!クマ被害が特に多い秋田県では、知事が小泉防衛大臣に自衛隊の派遣を要請。これを受けて10月末、防衛大臣は自衛隊の派遣を表明した。佐藤氏は11月1日の「正義のミカタ」生放送内で「自衛隊派遣は異例中の異例」とコメント。自衛隊の主な任務は国防であり、クマ駆除は本来の自衛隊任務の管轄外なのだという。YouTubeチャンネルでも、佐藤氏は「今までクマと人間の住み分けがうまくいってたんです。なので自衛隊はあまりクマに対する知識もないし、クマに対する射撃っていう部分(の訓練)はあんまりやっていない」「元自衛官の秋田県知事は、やむにやまれず、苦渋の選択肢として自衛隊をお願いしたいと(要請した)」と現状を語る。佐藤氏によると、自衛隊派遣を行う際の3条件とされるのが「緊急性」「公共性」「非代替性」。本当に緊急の案件なのか、本当に公共の福祉のためなのか、自衛隊じゃないといけないのか。これが議論になった事例として、京都府福知山市の自衛隊が鳥インフルエンザの災害派遣を行なった時のことを語り始めた。「京都の福知山の自衛隊が、一番最初に鳥インフルエンザの災害派遣に出たんですよ。死んだニワトリを埋めて消毒するだけなんですけども。ニワトリは家畜ですから、農林水産省の所掌なんです。でもスーパーで売ってる鶏肉は、食品になるので厚生労働省(の管轄)。じゃあ、鳥インフルエンザで死んだニワトリは自衛隊(の管轄)、って馬鹿みたいな話だった」「早くやらないとどんどん感染が広がってしまうというので、当時の知事はどうしようもないので防衛省の事務次官に直接電話をして『(自衛隊を)出してくれ』と」と、当時のいきさつを説明。「そういうふうに、自衛隊って本当は国防が任務なんだけど、この緊急性(があって)、自衛隊しかできないという場合は出る。じゃあ今回のクマはどうか。もう秋田県のあの状況は、自治体の限界を超えているというふうに知事が判断をした」と言葉を続けた。頼みの猟友会の方もどんどん高齢化し、捕獲用の罠を運ぶだけでも重労働だ。さらに、罠にかかった個体を駆除した後に運ぶのも大変だということで、自衛隊に「銃は使わないまでも、そういう側面支援をお願いしたい」と要請があり、小泉防衛大臣も「住民のことを考えるとやむを得ない」と許可したのだという。ここまで話を聞いて、「でも、自衛隊は銃でクマを撃つことができないんですよね?」と問いかける東アナ。すると佐藤氏は「今回の派遣は、自衛隊法百条という民生支援。その枠組みで出しているので武器は使えないんです」と答える。「これが災害派遣という形の枠組みになれば武器は使えるんですけども、それも本当に限定的な撃ち方で。クマが向かってくる(ときに)、自分またはそのそばにいた人を守るために正当防衛、緊急避難で撃つことはできても、クマを森の中で探して駆除するっていう撃ち方はできないんです」と説明した。さらに、「自衛隊の銃、あるいは弾。その特性からいって、これもね、クマの駆除には向かないんです」と驚きの事実を明かした佐藤氏。東アナが「自衛隊の持ってらっしゃる銃の方が(猟友会の持つ銃よりも)よほど強そうに思ってしまうんですけど」と話すと……佐藤氏からは「強すぎてダメなんですよ」との発言が。「猟友会の方が持つ銃の許可っていうのは、空気銃、散弾銃、ライフルって分かれるんですよ。イノシシとかクマになるとライフルじゃないと。散弾銃ではダメなんです」という。そして、そのライフルにも、猟友会の持つものと自衛隊のものとで違いがある。自衛隊のライフルは200m~300m先を撃つことを想定しているため、近い距離での駆除となると威力が強すぎ、弾が個体を貫通してしまい致命傷になりづらく、クマの動きがすぐには止まらないのだと佐藤氏。また、自衛隊の使う弾薬にも“クマ駆除に向かない理由”があるそうで…。佐藤氏が生々しく語った、その理由とは!?現在、秋田の自衛隊では猟友会のメンバーや警察関係者と情報交換を行っているそうで、どこまでを自衛隊が行なって、どこから先の対応を猟友会や警察が行うのか、という話し合いがなされていることを佐藤氏は示唆。が、「警察官が持っている拳銃ではクマは止まらないんです」と、佐藤氏からまたもや驚愕の発言が飛び出して…!?
(人喰いグマに対しても"専守防衛"を貫かなければならない自衛隊のリアル)
熊による被害が拡大している。秋田県では、陸上自衛隊による活動が始まっている。ライターの深笛義也さんは「今回の自衛隊の活動はあくまで『支援』になる。これまでのケースでも武器による駆除は行われてこなかったが、過去の史料には壮絶な状況の中で発砲したケースがあった」という――。全国で熊による被害が拡大している。秋田県では今年、熊に襲われて怪我した者が57人、命を奪われた者は3人に上っている(11月5日現在)。県の猟友会に所属するハンターは2025年だけで、1000頭以上の熊を駆除したという。これは昨年度の2.5倍。それでも、熊による被害を根絶できていない。この状況を鑑みて、10月28日、秋田県の鈴木健太知事は防衛省を訪れ、小泉進次郎防衛相に自衛隊の派遣を要請。11月5日から、陸上自衛隊秋田駐屯地の第21普通科連隊が鹿角市で熊対策の活動を始めた。自衛隊法100条に基づき、「訓練」として業務を請け負う「民生支援」の形で行う。彼らは捕獲に必要な箱わなの輸送や見回りなど地元猟友会の後方支援を務める。火器は携行せず、武器による熊の駆除は行わない。自衛隊員の役割は熊を射殺することではない。なぜ自衛隊員は熊を撃てないのか。これは「鳥獣保護及び管理法」によって、熊への発砲は、狩猟免許を持つ者に限られることや、そもそも自衛隊法に明記された自衛隊の任務に「野生動物の駆除」や「有害鳥獣対策」は含まれていない。また、銃や訓練の性質からも熊の駆除は難しいという。しかし、過去には、自衛隊員の銃が、熊を仕留めたことがあった。1962年、北海道の東端にある、標津(しべつ)郡標津町古多糠(こたぬか)部落でのことだ。これを詳しく報じた『週刊読売』(1962年11月4日号)を参照しながら、当時を振り返ってみよう。9月の初めより、乳牛、馬、綿羊など20頭以上がヒグマの餌食となった。人家にも熊が現れ、村民は自らの命の危険も感じるようになる。この村には、若い頃から63頭の熊を仕留めたという、当時では日本一の記録を持つ熊狩り名人、角田川運太郎さん(73)がいた。角田川さんは、山に熊狩りの罠“トラバサミ”を仕掛ける。その見廻りに1人で山に入ったところ、熊に襲われ命を奪われた。頭が砕かれ、カーキ色の作業着が裂かれた、無惨な姿で発見されたのだ。父親の敵を取ろうと、息子の春雄さんが銃を手に山に入ったが、熊に襲われ全治2週間の傷を負った。標津町から出動要請を受けた陸上自衛隊第5師団第27普通科連隊は、戦車2台を先頭に、トラック4台、ジープ1台で古多糠部落にやってきた。24人の隊員は、いずれも精鋭だ。熊の出没によって休校となっていた、古多糠小中学校、上古多糠小学校は、自衛隊員の付き添いで登下校することによって再開された。その他、自衛隊が行ったのは、危険地帯をパトロールすることだ。熊を撃つことはできないと、自衛隊は「鳥獣保護管理法」の規定を村民に説明した。だが「人の生命より法律がだいじなのか」と詰め寄られた。そこで自衛隊は、パトロールの最中に遭遇した場合の熊への発砲を決めた。これは推測するに、自衛隊法第94条「災害派遣時等の権限」(警察官職務執行法に準ずる)に則ったものだろう。「狂犬、奔馬の類等の出現、極端な雑踏等危険な事態がある場合においては」、「危害防止のため通常必要と認められる措置をとることを命じ、又は自らその措置をとることができる」とある。熊の出没地帯に、毒入りの豚の臓物をばらまくという罠もしかけられた。10月15日の昼過ぎ、その罠を食べた熊が、川のほとりで苦しみながらうずくまっていた。自衛隊員2名、古多糠農協秘書長、そして傷も癒えていない角田川春雄さんの4名が腹這いで熊に近づいていった。30メートルほどに接近したところで、顔を見合わせた自衛隊員1名と農協秘書長が立ち上がった。「やにわに立ちあがった二人はライフルと二連発銃を頭部めがけて、必死に撃ち込んだ。不意の急襲に、クマはワッといったん立ち上がり、一歩二歩とよろめくと、そのままドッとくずれ落ちた『やった、やったぞ!』大きなオスグマだ。四発ともみごとに頭に命中し、まだ真っ赤な血が吹きだしていた」(『週刊読売』)。打ち取ったのは、250キロほどの大ヒグマだった。1971年にも、自衛隊員が熊を撃っている。陸上自衛隊元師団長で現在はNPO平和と安全ネットワーク理事の山下輝男氏による独自取材記事『羆(ヒグマ)を撃った男』に詳しい。以下参照しつつ、状況をみていこう。北海道の剣山は、上川郡清水町と河西郡芽室町の2町にまたがる標高1,204.9mの山。その清水町に5月、陸上自衛隊丘珠駐屯地・北部方面航空隊所属のヘリコプターが墜落した。捜索には第5特科連隊第6大隊が入った。すると、5月18日午後2時頃、頂上から400メートルの剣山東南山腹(芽室町)で、突然現れたヒグマが隊員の1人に襲いかかったという。彼は持っていた小銃を熊に向かって撃った。それを目撃した、当時一等陸士だった隊員の言葉が紹介されている。「熊は、立っても精々1メートルそこそこの小さな羆だった。兎も角、恐ろしかったのだろう、小銃を射撃した隊員は、当初慌てて連発で射撃した為、弾丸は殆ど熊の足に命中して、致命傷を与えることは出来なかった。射撃をした隊員は○○3曹と△△士長の両名であり、△△士長の発射した弾で熊は絶命した」(『羆を撃った男』)。熊は雄で4歳、体長は約1メートル、体重は約120キロだった。防衛法制に詳しいライターの稲葉義泰さんによれば、「これは『緊急避難』に該当し、任務遂行中の生命防衛として例外的に認められる」という。熊は剥製にされ、帯広駐屯地や美幌駐屯地に展示された。一方で、熊に傷つけられながらも、発砲しなかった自衛官の例もある。2021年6月に起きた、札幌市東区ヒグマ襲撃事件でのことだ。東区は札幌市で2番目に人口の多い住宅地。それまで札幌市に熊が出没することはあったが、山に近い南区や西区がもっぱらだった。これ以前に東区で人が熊に襲われたのは、これより143年前の1878年(明治11年)。つまりは、まだ住宅地ではなかった頃だ。今でこそ、当たり前のように熊が住宅地を跋扈しているが、2021年当時にはあまりにも稀なことだった。クマの襲撃により4人が負傷したが、死者はいない。それでもこの頃は「事件」だった。これを報じた『北海道新聞』2022年4月10日、14日、『文藝春秋』2022年3月号を参照しつつ、事件を見てみよう。6月18日、熊が目撃されたのは、最初は北区で午前2時15分、東区では午前3時28分。午前5時台のテレビニュースで、報道された。最初の被害者は、76歳の男性。熊出没をニュースで知っていたので、周囲を確認した上でゴミ出しのために外に出た。約15メートルの至近距離で、熊に遭遇。走って逃げると、熊が追いかけてきた。男性は足がもつれて転倒。その背中を熊は踏みつけて、走って行った。背中と尻に、熊の爪による傷ができた。それが、5時55分頃のこと。この頃に、札幌市は広報車1台、消防車両13台を巡回させ始めていた。警察も出動した。2人目の被害者は、81歳の女性。パトカーが熊への警告を呼びかけているのを耳にしたが、東区に熊など出るはずがないと、かまわずゴミ出しのために外に出た。6時15分頃、突進してきた熊に突き飛ばされ、2メートルほど先の路上に叩きつけられた。彼女もまた、熊に踏みつけられる。そのための傷ができたほか、地面に打ち付けた両膝と両肘が、翌日に鬱血した。3人目の被害者は、44歳の男性会社員。熊出没のニュースは聞いていなかった。通勤で地下鉄東豊線新道東駅に向かっていた。スーパーマーケット周辺にパトカー数台が停まっていたが、熊への出動とは思ってもみなかった。その直後の7時18分頃、熊に襲われた。被害者の言葉が『北海道新聞』に紹介されている。「ものすごい勢いで人からタックルされたと思った。右腕をかまれている時に目が合い、ヒグマに襲われていると認識した。殺気立った表情で興奮状態だった」。とっさにあおむけになって体を丸め、手と足で顔や腹部を守った。肋骨を6本折り、140針を縫う重傷。入院とリハビリで、職場に復帰するには、7カ月間を要した。4人目の被害者が、自衛官だ。熊出没の情報を警察から受けて、陸上自衛隊丘珠駐屯地は、いつもは全開にしている正面扉を半開にしていた。7時58分頃、そこに熊が入ろうとしたのだ。警備の自衛官があわてて扉を閉じようとしたが、熊はそこに頭を押し込み、前足でこじ開けた。熊は自衛官の脇腹を噛んで裂傷を追わせて、駐屯地を出て行った。この頃には、北海道警航空隊のヘリコプター3機が、熊の行方を上空から追い、緑地に入ったことを確かめた。ハンター歴45年のベテランで北海道猟友会札幌支部長を務める斎藤羊一郎氏ら猟友会のメンバーが緑地を探ったが、熊の足跡が追えない。斉藤氏は、後ずさりしながら自らの足跡を消す「止め足」という技法を熊は使っていると指摘した。ヘリコプターが低空飛行して、草をなぎ倒しても熊は出てこない。熊が緑地から出てきたのは1時間ほど経ってから。ハンターの発砲によって仕留められた。雄で、体長161センチメートル、体重158キログラム。ヘリコプターの他、機動隊を含む警察官105名、車両39台が出動する大捜査であった。このケースでは、自衛隊員が負傷したが、「緊急避難」による発砲はなかった。冒頭で自衛隊員が熊を撃てない理由を述べた。では、自衛隊員が狩猟免許を取ればいいのではないか。任務に必要であれば、取得にかかる費用は自衛隊が負担、取得のための専門教育課程も整備されている。資格・免許を取るために入隊するという者も珍しくない。だが、自衛隊の任務は「防衛」「災害派遣」「治安維持」「海上警備行動」などに限定されている。自衛隊法のどこを探しても、その任務に野生動物の駆除は含まれていない。狩猟免許は任務と関係がないとされるので、自衛隊の費用負担で取得することはできない。ただ、自衛隊員が退職後に狩猟免許を取得し、地域で鳥獣駆除隊員として活動している例は多くある。もともと、銃器の扱いに慣れているので、適性は抜群に高い。現役隊員でも、自費で、あるいは自治体の補助を受けて狩猟免許を取得し、趣味や地域活動に役立てている者もいるようだ。しかしいくら狩猟免許を持っていても、任務中は「緊急避難」に当たらなければ、熊を撃つことはできない。野生動物の駆除は任務外だからだ。ハンターのように熊を待ち構えて射撃できるのは、私的な時間のみということになる。先の稲葉氏によれば「鳥獣管理法に基づいて市町村長からの委託を受けて緊急銃猟を行うことも可能性としては考えられる」という。その例外がなければ、これまでの例で挙げたように熊に襲われれば任務中に撃てるが、熊を見つけただけでは撃てないということになる。熊が相手でも、専守防衛というわけだ。
(クマに遭遇した70人が教える“助かった姿勢”)
2025年11月4日、東京都江戸川区・西葛西の市街地をイノシシが走り抜けました。翌5日には浦安市でも出没。実は秋田出身の筆者は、毎日のように熊の被害情報が出る地域が実家近くであったり、よく知る場所だったり、これらのニュースもリアルなものとして感じていましたが帰省時に対処すれば良い問題でありました。それなのに、今度は実際に自分の自宅近所でのイノシシの目撃情報があり、目の前をパトカーがスピーカーで注意喚起しながら走っていきます。まさか関東でも被害に遭う可能性がますますリアルな現実になるとは驚きです。熊にイノシシ、そんな中、クマよけに音を出していたらスズメバチに襲われたという報道もあり「もう、何が出てくるか分からない」。そう感じている方も多いのではないでしょうか。本来すみわけするべきの自然との距離が急速に近づく中、私たちに必要なのは「想定外を想定した備え」。だと思います。前回の記事にも書きましたが今回追加で命を守るためにクマ対策とイノシシ対策“いま知っておくべき行動”をお伝えします。クマに襲われたら死んだふり」――これは誤りです。秋田大学医学部の教授らのチームが、令和5年度に秋田県で実際にクマの被害に遭った70人を分析したところ、防御姿勢を取った7人には重症者がゼロという結果が出ました(出典:秋田大学医学部整形外科学講座・臨床整形外科2024年7月号掲載)。この姿勢とは、うつ伏せになり、両腕で首と頭を覆い、足を広げて踏ん張る。環境省も同様の姿勢を「致命的なけがを軽減する可能性がある」としています。頭部・顔面を守る行動が、命を分けるのです。「正しくできているか」家族などと一度練習してみて下さい。一方、環境省によるとイノシシによる人身被害は令和4年度に64件、うち住宅地・集落地内での発生が最多です(出典:環境省「イノシシによる人身被害について」2023年)。浦安警察署も11月5日夜、市民にこう呼びかけました。「イノシシを見かけたら静かにその場から離れましょう。犬に過剰に反応するため、犬の散歩を控えてください」(出典:浦安警察署公式メール 2025年11月5日19:43配信)。もはや「山に行かないから大丈夫」ではありませんね。香川県の公式マニュアルでは、イノシシに遭遇した際の行動をこう示しています(出典:香川県環境森林部みどり保全課「イノシシへの正しい対処法」)。静かに距離を取る大声や走る動きはイノシシを興奮させます。焦らず後退し、背を向けない。高い場所に逃げる塀・階段・車のボンネットなど、少しでも高い位置へ。イノシシは坂や段差を苦手とします。傘を開いて身を守る視線を遮り、興奮を抑える効果があります。(防災グッズとして“傘を広げて防ぐ”シーンは、映像で伝える価値大)。もし襲われそうになったら、体を丸め、内股と腹部を守る。クマの「うつ伏せ防御」とは異なり、イノシシには「丸まる姿勢」が有効です。クマ・・・狙う部位 頭・顔・首、攻撃方法上から振り下ろす、有効な対処法うつ伏せで首と頭を覆う。イノシシ・・・狙う部位 太もも・腹部、攻撃方法 下から突き上げる、有効な対処法 高所に逃げる・体を丸めて守る・有色の傘を広げて身を隠す。また裏技のような対処法ですがイノシシを見たら有色の傘に身をひそめるというのも一つの手だといわれています。実際に市町村の公式HP(新潟上越市他)などに掲載されたり動画案内をしているところもあります。写真はイメージなので実際は姿がすべて隠れるようにしましょう。そして「音を出す(クマ)」と「静かに離れる(イノシシ)」この“行動の切り替え”が、今後の危機管理のカギになります。秋田大学の研究チームはこう警告しています。「人とクマの不意の接触は避けられない。対応を知っているかどうかが生死を分ける」(出典:秋田大学公式リリース 2024年)。これは、イノシシにも共通します。異常気象や高齢化で人の生活圏と自然が重なり、“動物が出るかもしれない”前提で日常を考える時代ですね。家族で「防御姿勢」を練習する(クマ対策)、通学路で「高い場所」を確認する、大きめの傘を持ち歩く(イノシシ対策)、自治体アプリや警察メールで出没情報を受け取る、どれも特別な準備は不要。しかし、これだけで「守れる命」が確実に増えます。
(専門家が語るクマ被害「全国で8万頭&人間の味を学習」の悪夢)
クマによる被害が止まらない。’23年のクマによる死亡件数は6件、’24年は3件だったが、今年は10月31日現在、クマによって犠牲になった人は12人と過去最多。環境省によると、今年度上半期(4~9月)の全国のクマの出没件数は2万792件で、昨年度同時期の1万5832件を大幅に上回り、秋田県に自衛隊が支援に向かうことも決まった。「こうなることは5年前からわかっていました。大変なことになりますよと、警告を出し続けていたんですけど……」。無念そうにこう言うのは、クマなどの野生動物の保全管理を研究している、兵庫県立大学の横山真弓教授。東北地方の場合、クマが人里に出没するのは、ブナの実が大凶作のためといわれる。しかし、横山教授はこう話す。「ブナの実が凶作でエサがないというのは、秋だけのこと。けれど、4月からクマは出没し始めているんです」(横山真弓教授・以下同)。確かに環境省の調査によると、全国で4月775件、5月2461件、6月4142件と出没がブナの実の不足だけではないことを裏付けている。「クマは桑の実やサクランボなど、いろいろなものを食べています。それらが少しでも凶作になると、人里に出てしまう事態になってしまいました」。東北森林管理局では平成元年から37年間、ブナの結実調査を行っている。それによると、7割の年が凶作か大凶作。計算上、5年に一度は凶作になっているのに、これほどクマが出没していない。’23年にもクマの大量出没が話題になったが、何が原因で、こんなに出没しているのか。「クマの生息数が増えているんです。環境省が発表した’20年調査の『クマ類(ヒグマ・ツキノワグマ)の分布・生息状況』によると、北海道、秋田県、福島県、長野県、岐阜県には4000頭以上のクマが生息しているとなっています。私たちの研究で、クマは年間15%ぐらい増えることがわかってきました。何も捕獲せずにいると、5年間で倍になる計算になります」。4000頭以上いるという数値は、あくまで概算。クマが大量出没した’23年に秋田県では2000頭ほどを殺処分したが、「今年は2年前よりも被害が大きいといわれています。ということは、2000頭以上増えていることが示唆される。そこから推定すると、秋田県だけで1万頭ほど生息している可能性があります」。’20年には7000頭以上、’23年には9000頭以上を全国で捕獲しているが、それでも増えていることを考えると、「’20年の環境省の調査をみると、その段階で全国で5~6万頭はいるのではないかと思われます。それなりの頭数を捕獲しているので、倍増はしていないと思いますが、5年後の現在は8万頭になっている可能性もある。そのぐらいの勢いで増えています」。人里に降りてきたクマの映像を見ると、親子連れの姿をよく見かける。「山の中でも密度が高まればエサ場を争うことが起きていて、当然オスのほうが強いですから、親子が押し出されて人里へやって来る。人里へ来れば、田畑や果樹園が広がり、おいしい匂いが充満している。 しかも、人間はクマを見ると逃げてくれる。クマは非常に学習能力が高いといわれていて、『人間は怖くない』という学習が積み重なっている可能性があります」。学ぶのは「人間は怖くない」ということだけではない。10月11日には、宮城県でキノコ採りをしていた人がクマに襲われて亡くなるという事件があった。「クマもキノコが好きなので、クマにしてみれば自分のエサ場に侵入者が来たということで、攻撃を仕掛けた。 ご遺体は、クマにとっては『肉』に変わってしまう。それによって『人間は食べ物』と学習してしまった。 また、10月16日には岩手県北上市で露天風呂を掃除していた人が襲われた事件がありましたが、おそらく『人間を獲物』と学習した可能性があり狙って襲ったのではないかと思います」。それにしても、なぜ、こんなにクマの生息数が増えてしまったのか。「太平洋戦争前までは、燃料となる薪を取るために日本は禿山だらけの状態でした。同時に毛皮の需要も高かったので、野生動物は乱獲された。クマも絶滅危惧種に指定されるほどでした。 その後、狩猟規制を強化して、野生動物は数を回復させていきました。戦後はガスや電気が普及し、山の資源を使わなくなったので、1990年ごろには豊かな森林が回復して、動物たちも増えていきました」。しかし、九州では絶滅、四国も20頭以下と、西日本では’90年代まで絶滅の危機が深刻化した。’99年には「特定鳥獣保護管理計画」制度が始まり、西日本ではクマの保護に乗り出した。集落に侵入したクマも殺処分せず、一度は麻酔で眠らせ、クマの年齢や栄養状態、繁殖状況などを調べて、マイクロチップを埋めて山に返した。また、イノシシ用の罠にかかったクマには唐辛子スプレーなどをかけて人間や人里を嫌いにさせて放獣する「学習放獣」を導入するなどして、できるだけ殺さない取り組みをしてきた。そうした取り組みの結果、西日本では正確な生息数を把握することができた。保護政策をとった結果、100頭もいないのではないかといわれていた西日本のクマも、’10年には600頭に。このまま同じ方策をとっていると、どんどん増え続けてしまうということで、’12年には『学習放獣』をやめ、集落に一度でも来たら殺処分。’16年には狩猟も解禁した。「’17年からは、集落から200m以内に来たクマを捕獲するという『ゾーニング捕獲』をスタートしました。環境省から800頭生息していたら絶滅の危機はないというガイドラインが出ていたので、700~800頭に抑えるようにしています。 近畿地域でもドングリが大凶作だった昨年には大量出没が起きましたが、なんとか対処することができました」一方、東日本はそれなりにクマがいたため、特別に管理することはしなかった。その結果、東日本には精度の高いデータが極めて少ない。たとえドングリなどが豊作であっても、里に行けば効率よくエサを得られると学習しているクマを放置すれば、季節に関係なく人里に出没するだろうと横山教授は言う。どうすればいいのか。「まず科学的な管理。クマの個体数を把握し、適正な個体数にコントロールするための司令塔となるような科学行政官を配置していかなければなりません。今は捕獲するのにも、クマに対する知識が少ないハンターさんたちにお願いしている状況で、非常に危険な状態です。不安の声も多数寄せられています。専門的な捕獲者の育成・配置も重要です」。なんだかとても時間がかかりそうだ。「とりあえずは予防原則という形で、人の生活圏の近くにいるクマは、あらかじめ捕獲して、個体数を大幅に減らす取り組みが必要です」。人里に出てきたら、それだけで殺される。かわいそうな気もするが……。「もちろん、かわいそうです。何度も殺す現場に立ち会ってきましたが、慣れることはありません。かわいそうだと思いながら、やっている。メンタル面でも大変な作業です。 現場の方たちには、そういう作業をやっていただいているということを理解しなくてはいけない。しかし、個体数管理をやらないと、次の凶作のときには、もっとひどいことになると思います」。これ以上増えたら、たとえ山の木の実が豊作でも、エサが足りなくなることも考えられる。人間と共生するためには、個体数を管理するのは必要なことなのだ。
(小さな島国なのに、2種類のクマが生活圏を住み分けて暮らすワケ)
北海道・東北地方を中心に、連日クマによる人身被害が絶えません。東京農業大学・山崎晃司教授(崎は立つ崎)は、クマは「可愛さ」と「恐ろしさ」というまったく異なる印象を一身にまとう、不思議な動物だと言います。山崎氏監修の『眠れなくなるほど面白い 図解 クマの話』(日本文芸社)より「クマとは何か?」という基本を紹介します。背骨を中心とした骨格を持つ動物を脊椎(せきつい)動物といいます。脊椎動物は両生類、は虫類、鳥類、魚類、哺乳(ほにゅう)類の5つのグループに分かれていますが、このうちクマは、私たち人間と同じく「哺乳類」の仲間です。哺乳というのは、母親が子どもにおっぱい(母乳)をあげて育てる行為のこと。さらに、クマは哺乳類(分類上は哺乳綱)のなかでも食肉目のクマ科に属しています。食肉目はその名の通り肉食動物たちのグループで、クマ科のほかに、イヌ科やネコ科の動物たちも含まれます。とはいえ、決して肉だけを食べるわけではありません。とりわけクマの仲間は雑食性で、木の実や草の若芽、昆虫、小動物、魚など、さまざまな動植物をバランスよく口にする食の幅が広い動物といえるでしょう。現在、クマ科の仲間は世界に8種類しかいません。アメリカクロクマ、ヒグマ、ツキノワグマ、ホッキョクグマ、マレーグマ、アンデスグマ、ナマケグマ、そしてジャイアントパンダといった顔ぶれです。どの種にも共通するのが、大きな体とたくましい四肢、鋭く伸びる長いツメ、そして発達した嗅覚。このような特徴に加えて、柔軟な適応力を持ったクマの仲間たちは、それぞれの土地でたくましく生活を送っています。クマの仲間は、世界のどの地域にすんでいるのでしょう。現存する8種類のクマのうち、もっとも広範囲に分布するのが日本にもすむ「ヒグマ」です。ユーラシア大陸西部から北極圏、東アジア、中央アジアの高地のほか、アラスカやロッキー山脈など北アメリカ大陸にも分布しています。「アメリカクロクマ」は、北アメリカに生息するクマの仲間です。カナダからアメリカ合衆国、メキシコ北部と、北アメリカ大陸全域にまたがって暮らしています。そして、生息するクマの種類がもっとも多いのがアジア地域です。先に挙げたヒグマのほか、ロシアや中国、日本には名の知れた「ツキノワグマ」、インドやスリランカにはナマケモノに似た姿の「ナマケグマ」、東南アジアのジャングルには小柄で器用な「マレーグマ」がすんでいます。また、中国の山林には竹を食べて過ごす「ジャイアントパンダ」が生息し、北極の海氷上には真っ白な姿が特徴的な「ホッキョクグマ」が暮らしています。さて、ここまでは北半球の話でしたが、実は南半球にはクマはほとんど生息していません。例外が「アンデスグマ」。赤道直下のアンデス山脈にすむこの種が、現在確認されている最南端のクマです。クマ科の仲間のうち、日本にいる野生のクマはヒグマとツキノワグマの2種類だけです。ヒグマは北海道に、ツキノワグマは千葉県を除く本州全域と四国の一部にすんでいます。小さな島国である日本に、8種類のうち2種類の野生のクマが暮らし、その生活圏をすみ分けているのはかなり珍しいことだといえるでしょう。ヒグマとツキノワグマは同じクマ科でありながら、その生き方やたたずまいにははっきりとした違いがあります。体のサイズひとつとってみても、ヒグマはオスで体長2m超、体重300kg以上にもなる日本最大級の哺乳類です。一方のツキノワグマは、体長1.2~1.5mで体重は60~150kgほど。ヒグマの半分以下の体格しかありません。両者は性格も異なります。人の気配を感じると身を隠すほど警戒心が強い半面、追いつめられると非常に攻撃的になるヒグマに比べ、ツキノワグマは臆病で人との接触をなるべく避ける慎重な性格をしています。ともに雑食性ながら、サケを捕まえ、昆虫なども口にするヒグマはややガッツリタイプ。一方、木の実や果実がメインのツキノワグマは草食タイプと、食事の好みも異なります。狭い国土をうまくすみ分けられる理由も、こうした性質の違いにあるのかもしれません。クマは一生の大半を“ひとりぼっち”で過ごす動物です。多くの哺乳類が群れや家族単位で行動するのに対し、子グマ時代を除いて基本的に単独で生活します。オスもメスも関係ありません。クマはそれぞれ自分の生活場所を持ち、エサを探したり眠ったり、あるいは危険に対処したりといった毎日の行動すべてを自らの力だけでこなしています。オスとメスが顔を合わせるのも繁殖期のわずかな間だけ。交尾が終われば、それぞれすぐにもとの生活へと戻っていきます。メスは冬に巣穴で出産すると、春先には小さな子グマと一緒に活動をはじめます。この子育て期間も1年半から長くて2年半ほど。子グマを自立させると再びひとりぼっちに戻ります。ちなみに、オスは子育てにまったく関わりません。一見して孤独に思えても、自然界では群れないことが生きやすさにつながる場面が多くありるものです。たとえば、クマは巨体を維持するため大量の食べ物を必要としますが、単独で行動することでエサの奪い合いを避けられます。ほかにも、自分のペースで活動できるといった利点もあります。つまり、クマにしてみれば合理的な生活スタイルを貫いているだけなのです。それは厳しい自然を生き抜くため、彼らが身につけた知恵といえるでしょう。温帯や寒帯に生息するクマは、日中に活動し、日が沈んで暗くなると静かに休むのが基本です。ただし1日の活動は、季節に寄り添って少しずつ変化していきます。冬眠から覚めたクマは、春は新葉や花、昆虫などを食べて体力回復に努め、夏になると涼しい時間帯に果実や昆虫を探して森のなかを歩き回ります。そして秋に木の実やドングリをたっぷり食べて脂肪を蓄えると、冬は巣穴にこもって冬眠するのです。母グマはこの冬眠の時期に子グマを産み、四季の移り変わりに身をゆだねて暮らしています。とはいえ、自然のなかでの暮らしは一様ではなく、環境に応じて行動を変化させないと生き延びることができません。たとえば、東南アジアにマレーグマというクマの仲間がいます。クマはもともと昼間に活動する昼行性の動物。しかし、暑い地域に暮らす彼らは、太陽の昇る昼間を避けて夜間に活動することがあるのです。つまり、環境によって生活スタイルを変えているのですが、人の多い土地にすむクマが、人間との接触を避けるために夜間に活動するようになるのも同じこと。クマたちは時間と季節に合わせたルーティンを持つ一方で、このように環境に適応する柔軟さも持ち合わせているのです。ヒグマは、北半球の森林や山岳地帯に広く分布する大型のクマです。特にユーラシア大陸北部と北アメリカに多く見られ、日本では北海道にのみ生息しています。圧倒的な体格と力強さから「山の王者」とも呼ばれる存在ですが、実は繊細で臆病な一面も持っています。日本で「クマ」といえば、多くの人はヒグマをイメージします。北海道に生息するヒグマは、国内最大の野生動物であり、森に暮らす生き物のなかでも象徴的な存在です。アメリカクロクマよりもはるかに大きく、オスでは600kgを超える個体もいます。肩に盛り上がった筋肉のコブが特徴で、土を掘り返したりと、力仕事に優れた体つきをしています。また、前足のツメはしっかりと直線的に伸び、鋭さもバツグンです。ヒグマは世界的には「ブラウングマ(Brown Bear)」と呼ばれており、ロシアやヨーロッパ、中央アジア、北アメリカの一部まで、北半球の広い範囲に分布しています。地域によっては「グリズリー」とも呼ばれ、個体の大きさや性格も多様です。北海道に生息するものは、エゾヒグマと呼ばれる亜種で、先住のアイヌの人々からは「キムンカムイ(山の神)」として崇められてきました。その歴史は長く、化石記録によれば、今から50万~100万年ほど前には、すでにユーラシア大陸に広く定着していたと考えられています。過酷な氷河期やさまざまに変化する環境を生き延びてきた、まさに適応の王者ともいえるでしょう。その堂々とした風格とは裏腹に、人の気配を察知すると静かに立ち去ることも多いといいます。しかし、場合によっては攻撃に出ることもあるため、油断は禁物。山の王者には、人間側も敬意を持って、それなりの距離を取ることが必要なのです。とはいえ、ヒグマはただの怖い生き物ではありません。長い歴史を背負い、知性と繊細さを併せ持った、私たちと同じ時代を生きる同胞でもあります。ヒグマは、その大きな体に反してとても警戒心が強く、人間の気配を察知すると、スッと森の奥へ引いてしまうこともしばしばです。驚くほど慎重で、怖がりな一面を持っています。しかし、子グマを連れた母グマや、食べ物を確保している最中の個体は、わずかな刺激にも敏感に反応し、ときには攻撃的になることがあります。実際、北海道ではヒグマと遭遇してケガを負うという事故が毎年のように報告されており、注意するに越したことはないでしょう。また、食性は実に多彩で、春には山菜や新芽、夏から秋にかけては果実や昆虫、川上りするサケなどを食べます。冬眠前は特にエネルギーを多く必要とするため、栄養価の高いものを大量に食べて脂肪を蓄えます。季節に応じて賢く食べるのが、ヒグマの生きる知恵なのです。ヒグマの魅力は、「大きくて強い」だけではありません。近年の観察記録からは、知性や柔軟な発想力を備えていることがわかっています。たとえば、岩の下にエサがあるのを発見し、それを前足で器用に転がして取り出す固体もいれば、ドアやクーラーボックスのしくみを理解して開けてしまう個体も。さらには、石をいくつも積み上げて踏み台のように使おうとする行動も確認されました。これは、道具を使うという知的行動の初歩です。実際、ヒグマの脳容積はクマ科のなかでも大きく、その分、記憶力や学習能力も高いと考えられています。「見た目は猛獣、中身は知恵者」―そんなギャップも、ヒグマを語るうえで欠かせない魅力のひとつでしょう。ツキノワグマは、日本を代表するクマの一種。深い森を静かに歩き、実を食べ、ときには高い木の上で休む姿が見られます。ヒグマほどは大きくなく、その分、動きが軽やかで繊細。日本の四季とともに生きる野生動物です。ツキノワグマは、西アジアから東アジアにかけて広く分布しています。日本では、亜種のニホンツキノワグマが本州、四国の山林に暮らしています。体は控えめなサイズで、オスでも体重はおよそ100~150kg程度です。とはいえ、その身軽さから運動能力が高く、木登りを得意としています。木の上でのんびり休んだり、枝先まで登って木の実を食べたりと、非常に器用です。最大の特徴は、胸もとに浮かぶ白い模様。三日月のような形から「月の輪」と呼ばれ、この模様こそが名前の由来です。形や濃さには個体差があり、なかには模様のない個体もいます。英語では「ムーン・ベア(Moon bear)」という愛称でも親しまれており、特に海外の保護団体やメディアでは、この神秘的な名前で呼ばれることが多くあります。ツキノワグマはもともと東南アジア方面にルーツを持つとされ、氷河期の気候変動に伴って北方へと広がり、ヒグマとは異なる進化の道を歩んできました。中国から朝鮮半島、そして日本へとわたってきたと考えられています。インド北部やヒマラヤ山脈周辺にも亜種の個体群が生息しており、広い範囲にわたって姿を変えながら暮らしている、文化と自然をまたぐクマだといえるでしょう。また、昼行性ですが、地域や季節によって夜に活動することもあります。そして、秋には冬眠に向けてしっかりと脂肪を蓄え、冬には巣穴にこもって春を待ちます。日本各地では古くから「山の主」として語られ、神格化されたり、あるいは民話のなかで人間と交流する存在として描かれたりしました。ツキノワグマは、人との精神的な距離が近い動物でもあったのです。ツキノワグマは臆病で人を避ける――確かに、それは間違ってはいません。しかし、だからといってこちらを視界に入れていないわけではないのです。たとえば、登山道近くのカメラには時折、人の動きを目で追うような行動を取る個体の姿が映っています。木陰に身を潜め、こちらをじっと見つめるそのまなざしには、ただの警戒ではない「観察」の意志が宿っています。さらに興味深いのは、人間の行動を見て覚える知性を持っていること。なかには、研究者が仕掛けたカメラやトラップに気づき、それらを避けたり、逆にいじったりする個体も確認されています。ツキノワグマはとても繊細で臆病だからこそ、よく見て、よく考え、記憶する力を備えているのです。ツキノワグマは、森に暮らす間にさまざまな痕跡を残していきます。その代表格が「クマ棚」。これは木の上で食事をした跡です。木の股に座って実を食べ、折り曲げた枝を体の下に敷いてどんどん積み重ねていきます。木の枝が不自然に固まっていたら、そこでツキノワグマが食事したり、くつろいだりしていたということかもしれません。また、はがされた樹皮や、果実をたっぷり食べたあとのフンも、その暮らしぶりを物語るヒントといえるでしょう。特に、木の幹に残ったツメ痕は、ツキノワグマの存在を推測する手がかりにもなります。直接姿を見せなくても、何かしらの痕跡を残し、ツキノワグマは森のあちこちにその気配をにじませています。
(クマ被害の裏側で進行するシカ急増と森林破壊の危機)
「クマは絶滅させるべき」という声まで上がるほど、社会の危機感が高まっています。2025年度のクマによる被害は過去最多となり、毎日のようにニュースが流れる今、人々の間に「クマ=殺して食べる恐ろしい猛獣」というイメージが浸透しつつあるからです。しかし、そのイメージは本当に正しいのでしょうか?本記事では、日本のツキノワグマ研究をリードしてきた小池伸介氏の著書『ある日、森の中でクマさんのウンコに出会ったら~ツキノワグマ研究者ウンコ採集フン闘記』(辰巳出版)より、クマの真の生態を紹介。さらに、「シカの増加による森林の衰退」という、この先クマ被害をもっと深刻化させかねない大問題を明らかにします。山村や里山の衰退によって野生動物が人里に下りてくることが増えてきた昨今、クマに対する人間の意識も変わってきているように思う。クマが人間を襲い、それがニュースになれば、人びとは、クマは怖い、クマは嫌いだ、と思うようになる。しかし、多くの人はヒグマとツキノワグマの区別がついてない。区別がついている人の多くも本州にヒグマがいると思っている。だから、北海道でヒグマが人間や家畜を襲えば本州のツキノワグマまで嫌われるし、ツキノワグマが登山客と遭遇事故を起こせば北海道のヒグマまで怖がられる。そして、特にテレビの報道はどうしても視聴者の関心を惹かなければいけないので、事実を伝えるよりも話を大袈裟にして恐怖心に訴えてしまいがちだ。すると、人々の間に「クマは人間を殺して食べる恐ろしい動物だ」という偏ったイメージが浸透してしまう。もうひとつ、日本の林業は今、衰退傾向にあるが、海外の木材が高騰すれば再び盛んになるはずであり、そうなるとクマハギもまた問題になってくるだろう。このような背景から、今後は今以上にクマを駆除しろという風潮が高まっていくのではないだろうか。私たちが気づいたときにはすでに九州のツキノワグマは絶滅し、40年以上前の駆除の結果、四国には10頭か20頭しか残っていない。四国のツキノワグマを絶滅させないため、ほかの地域からクマを移入させる再導入も検討されている。しかし、地元の人にアンケートを取ると「クマは家から100kmくらい離れた場所ならいてもいい」と回答される。四国の中で100km離れた場所というと、往々にしてそこは四国ではない。四国の人にとってはクマとは接点がなく、事故だって40年近く発生していない。それでもクマにはネガティブな印象があるのだ。そのような中で頭数を増やそうとしても、地元の人にとっては何のメリットもない。そこに生態系保全のやりにくさを感じている。これは四国だけに限らず、全国ほかの地域でもそうである。私が山梨でクマの調査を行っていたときも、地元の人はクマに対して特に無関心であった。この無関心がクマの生息にもじわじわと影響を及ぼしているように思うのだ。だから、私はクマのことをもっと研究して謎だった部分を明らかにしていきたい。クマの生態がもっと明らかになり、それが多くの人に知られていけば、人間はクマを必要以上に怖がることも嫌がることもなくなっていき、クマと人間がなるべく干渉しあわずにすみ分けながら暮らしていけるようになると思っている。さらに日本の森林で問題になっているのが野生のシカの急増である。国を挙げて駆除に乗り出したおかげで増加の勢いは何とかおさまったが、決定的な解決策が打ち出されているわけではない。何もしなければまたすぐに増えてしまうだろう。シカのせいで日本の山地や森林の風景は一変してしまった。かつて森の下草として生い茂っていたササもすっかりなくなってしまったし、貴重な高山植物も食べ尽くされてしまった。そのせいで、藪の中で暮らしていた昆虫や鳥がいなくなり、生態系には大きな影響が出ている。クマも例外ではなく、例えば丹沢ではこの40年でクマの食生活が変わり、以前は食べなかったものを食べるようになった。カナダでは、もともとシカのいなかった大西洋側のある島に人間がシカを導入したことで、シカが大増殖した。その結果、もともと島に住んでいたアメリカクロクマが絶滅してしまった事例がある。そこのアメリカクロクマは秋に地面になったベリー類を食べて脂肪を蓄えて冬眠していた。ところが大増殖したシカにそのベリー類を食べつくされ、冬眠ができなくなって数を減らしてしまったのである。日本では秋にクマは高い木になるドングリを食べるので、シカが増殖してもすぐに食糧不足に陥ることはないだろう。しかし、ドングリを実らせるブナ科の木々もいつかは寿命が尽きて枯れる。シカの増えたところでは、新たな芽生えすら食い荒らされてしまうため、次世代の木が育たない可能性が高まっている。そうなると、いつかは森林が縮小して日本のクマも絶滅してしまうのかもしれない。なお、ヒグマはツキノワグマとくらべるとシカを襲って食べることが多いが、やはり食べ物の中心は植物なので、ツキノワグマと同じ道をたどる可能性が高い。森の衰退はヒグマにとっても深刻な事態なのである。いずれにしても、森の恵みが小さくなれば、ヒグマもツキノワグマも食べ物を求めて人間がいる場所に出て来ざるをえない個体が今より増えることだろう。
(羅臼岳ヒグマ被害遺族の悲しみ)
「北海道の山に行く」。今年8月、久々に東京から実家に帰省した26歳の息子は、そう言って旅立った。「気をつけていくのよ」。母親は同じように短い言葉で送り出した。それが家族が見た息子の最後の姿だった。今年8月、兵庫県の曽田忍さん(59)は北海道・羅臼岳で登山をしていた長男の航平さん(仮名)を失った。息子を襲ったのは、羅臼岳で生息する「人なれした」ヒグマ親子だった。航平さんが実家をたってから4日後の8月14日午後1時頃、曽田さんの携帯電話が鳴った。「一緒に羅臼岳に登っていた航平君がクマに引きずられていってしまった」。2人で登山していた息子の友人からだった。テレビをつけると、北海道・知床半島にある羅臼岳(1661m)で、男性が下山中にヒグマに襲われたとのニュースが流れていた。「あれが航平なのか」。テレビでは、山中に残る登山客約70人がヘリで救助される映像が流されていた。今年7月に世界自然遺産登録から20周年を迎えた知床半島は年間170万人が訪れる。その中でも、「知床富士」とも称される羅臼岳は有数の観光スポットで、お盆の時期を中心に道内外から訪れる登山客でにぎわう。航平さんは、日本百名山踏破を目指して、前日は阿寒岳、翌日は斜里岳と、北海道東部の百名山3座を制覇する予定だった。現地の環境省などの国の機関や自治体、公益財団の知床財団でつくる「知床ヒグマ対策連絡会議」がまとめた事故報告書などによると、航平さんと友人は午前5時半前に登り始め、午前8時過ぎに登頂。下山中の午前11時前、航平さんが一人で先を進んでいたところ、見通しの悪い下り道で子連れのクマに遭遇したとみられる。現場は、クマの夏場の餌になるアリがわく岩場に続く道と、人が通る登山道の交差点だった。記録が残る1962年以降、知床では登山客のクマ被害は起こっていないが、現場はクマ出没が多発する場所として知られていた。航平さんの叫び声で追いついた友人が見たのは、登山道から外れた林の斜面にクマに連れ込まれ、襲われている姿だった。登山道から110番したが、山中に残された他の登山客の救助が夕方までかかり、航平さんの捜索は翌朝15日になった。父親の曽田さんらは15日、大阪(伊丹)空港から現地に向かった。「腕一本、足一本欠けても、無事に戻ってきてくれ」。直行便の機上で祈り続けたが、羅臼に到着後、まもなく悲報に接した。遺体が見つかったのは、クマと遭遇した登山道から約100メートル下の林の中。そばには、母グマと子グマ2頭がいた。3頭はその場で捕獲された。夕方、警察署で対面した航平さんは、体の各所に大きな傷を負っていた。「助けられなくて、すまん」。息子の頭や顔をなでながら、曽田さんは何度も謝った。2日後、航平さんは現地で 荼毘(だび)に付された。航平さんを襲った母グマは2014年から毎年のように目撃され、今春、2頭を出産したという。事故があった登山道では発生4日前の8月10日、同一とみられる親子グマが登山客を気にせず登山道を登ってきたほか、12日にはクマ1頭が約5分間、登山者につきまとう事案も報告された。その日中に、登山口には出没注意やクマスプレーの携行を呼びかける看板を掲示。SNSでも注意を呼びかけ、航平さんもクマよけの鈴を購入して登山に臨んでいた。翌13日、環境省や斜里町、知床財団が登山道をパトロールした際は、クマの姿は見えなかったという。 事故1週間後に知床財団が公表した調査速報では、航平さんが「走って移動していた可能性が高い」と書かれ、山道を駆けるトレイルランニングをしていたのでは、という批判がSNSで広まった。しかし、その後の調査で、一般的な登山スタイルだったことがわかっている。曽田さんは「仕事に遊びに真剣な息子だった。親としてやりきれない」と語る。航平さんは中学時代に陸上部の短距離選手でならし、高校ではロードバイクに目覚め、友人と野宿しながら東京まで走破したこともある。大学で一人暮らしを始め、アウトドアサークルでは会長も務めた。ロードバイクで北海道を1周し、解体した自転車を背負って富士山に登頂するなど、自転車、登山、釣りなどに没頭した。国内外の冬山にも挑み、今年はマレーシアのキナバル山(4095メートル)にも登頂したという。行動や考えに驚かされることもあった。難コースで知られる北アルプスの岩稜・ジャンダルム(3163メートル)に登頂した時は、一緒に登った別の友人と、どちらかが滑落しても、無事に下りるために助けない、と約束していたという。「人に迷惑をかけまいということなんでしょう。息子は、そうならないように綿密にイベントを計画し、皆で楽しむのが好きだった」。父親の曽田さんは、リクルートに就職後、コンサルタント業を始めるため41歳で独立した。仕事で忙しく、航平さんと密に関われたわけではない。「こちらが聞かないと何もしゃべらない。LINEで『夏休みどこ行ったの?』『長野』で終わり、みたいな」それでも年に数回、航平さんが帰省すると、近況を尋ねて「訓話」をした。「日本で仕事し続けようとせず、海外も視野に入れるんだぞ」「会計の知識は大切」――大学院まで進学し、レーザー科学を研究した航平さんが昨春、メーカーではなく自分と同じコンサル業界に就職した時にも、「新卒で入社する同期より2年遅れてる分を取り戻せ、やるなら1番に」と繰り返しはっぱをかけた。曽田さんは事故後、航平さんが、近しい人に「40歳頃に独立するつもりです、父がそうだったから」と話していたことを知った。荷物を片付けるため、初めて入った東京の航平さんのアパートの本棚は、ビジネス書や中国語、ロシア語などの本で埋め尽くされていた。警察から受け取った荷物の中にも、簿記の勉強ノートが2冊とビジネス関連の電子書籍を入れたタブレットがあった。「旅の途中も時間を惜しんで勉強していた。それを知って、対面した時に次いで、泣きました。本当は、心の中で息子のことをすごいなと思っていたのに、成長し続ける姿を見たくて、次々に課題を与えていた。生きている間に、もっと褒めてやりたかった」。事故からもうすぐ3か月。18歳で実家を出てから空きっぱなしだった航平さんの部屋には遺骨が置かれ、遺品であふれている。息子の不在には慣れていたが、部屋から漂ってくる線香の香りに、「不在ではなく、他界した現実」に気づかされる。曽田さんは今、自分とほぼ同じ背丈だった航平さんの服に袖を通す。ロードバイクや山道具は大切に保管し、多くの書籍も、少しずつ読んでいくつもりだ。「持ち物を通じて、彼が過ごした時間と心に触れることができる気がするので」。航平さんが肌身離さず使っていたガーミン製のスマートウォッチも着けている。心拍数や移動速度が記録できる機能がある。だが、事故時に計測された息子のデータは、まだ見られずにいる。北海道などによると、知床連山では半世紀以上にわたって登山客がクマに襲われた記録はなく、地元では「知床のクマは穏やかだ」とも言われてきた。国や北海道、地元自治体の斜里町、羅臼町などは、ヒグマと住民、利用客の共存を図る「第2期知床半島ヒグマ管理計画」に基づき、各エリアとヒグマの行動段階を区分けし、地域特性とクマの有害性に応じて対策を定めている。航平さんが通った羅臼岳のメーン登山道は「ゾーン2」で、「自己責任での利用が基本となる登山などの利用者らが一定程度訪れる遺産地域」と規定している。一方、「人に付きまとう」クマは「問題個体」と指定され、捕獲などの対策が取られるはずだったが、自治体などの担当者がクマの危険行動を実際に確認できなかったため、今回のヒグマは指定には至らなかった。改めて曽田さんに、航平さんの事故をどう受け止めているのか聞いた。「登山は自己責任が基本で、息子なら『俺がミスったんや』と言うかもしれない。でも、それ以前に、登山道にクマが出没していたという情報を関係者がもっと真摯に受け止めていれば、情報発信も変わったのではないでしょうか。知床は二十数年事故が起きなかったから『知床の熊は人を襲わない』というような“神話”は、人なれしていても、野生クマという猛獣に通用しないはず」「事故は世界遺産観光への期待やヒグマなどの動物愛護、登山客の存在がいびつな形になった結果だと思っています。何より、クマ被害がもう起きないよう、息子が一人で山を下りてしまった失敗を、登山客は教訓にしてほしい」。航平さんの事故後、現地では国や自治体、知床財団で作る「知床ヒグマ対策連絡会議」が再発防止策を検討している。連絡会議の構成団体の一つ、知床財団の玉置創司事務局長は「登山客の行動変容につながるような仕組みを考えたい」と話している。羅臼岳の登山道は今も閉鎖が続いている。
(命がけでも日当9000円、ガソリン代などで赤字に)
凶暴なクマと立ち向かうハンターたちが命がけにもかかわらず、今の報酬では赤字続きだと悲鳴の声を上げています。箱わなが壊れんばかりに荒々しくかみつきます。秋田県湯沢市で捕獲された凶暴なクマ、体重およそ150キロの大型です。雄勝猟友会のハンター「すごく暴れて本当に怖かった。見ているだけでも。今年のクマは凶暴。今年は違う。こっちに向かってくるからね。そうなれば危険。怖いですよ」。車に突進してくる巨大なクマ。北海道浦河町に現れたヒグマです。クマの専門家 岩手大学農学部 山内貴義准教授「口を開けて追っかけてきている状態なので、かなり攻撃行動の一つ。ヒグマだと体長、鼻から尻まで最大2メートルくらい、体重も300キロくらいになる。この個体に関しては、それくらいほぼマックス」。例年以上に凶暴化しているというクマ。今年、クマによる全国の死者は過去最多の13人。猟友会への出動要請が大幅に増えているといいます。そんな猟友会のハンターが緊急銃猟を行う緊迫の瞬間をカメラが捉えました。秋田県仙北市で、畑に入り込んで白菜をむさぼり食べる2頭のクマ。駆け付けたハンターが息を殺し、屋根の上で銃を構えます。そして、クマが潜む畑に向けて発砲。別の場所で狙いを定めていたもう1人のハンターも発砲し、2頭のクマは駆除されました。凶暴化するクマを相手に、立ち向かうハンターたち。しかし、その報酬は危険度に見合ったものとは言えません。北海道では、自治体からの日当がわずか9000円ほどの場合もあるといいます。北海道猟友会 堀江篤会長「自分たちは命を懸けてやっている。それなのにこれですかと。なかには行政とうまくいかない支部部会があります。一番少ないところで9000円前後、1回の出動すべてで」。ガソリン代や銃弾の購入費などを考えると赤字だといいます。堀江会長「1万円前後なら低い。弾代も1発につき1000円前後かかる。今は燃料代も高いし、(仕事を)休んで、有休を取ってまで出る人もいる。本来ならば足りない」。実質ボランティア状態で、猟友会のハンターたちの犠牲の精神に頼っているのが現状です。堀江会長「一番に『民の方は不安だろう』という気持ちがあるから、皆さん出てくれる。使命感です。常時出ているところ(猟友会)は負担が大きすぎる」。実際に、生死の境をさまよったハンターもいます。北海道岩見沢市の原田勝男さんは25年前、60歳の時にシカ猟の最中、突然現れたヒグマに襲われました。原田さん「ふっと振り向いたらクマが来ていた。2発撃ったんだけれども急所を外れて(クマが)飛びかかってきて押し倒した。ガリガリガリガリとかじって目から何からかじって。一時気を失って、自分で死んだと思っていた」。幸い、一命を取り留めた原田さんでしたが、左目を失うというあまりにも大きな代償を払いました。そんな経験をしてもなお、ハンターを続けています。その理由もやはり、犠牲精神にほかなりませんでした。原田さん「命を取るということはやりたくないんですけれども、誰かがやらなければ地域が崩壊する。クマは特に人の命を奪う状態にもなる。それだけは絶対に避けなければならない」。
(“モンスターベア”は捕獲して山へ帰してもまた戻ってくる)
熊被害に関するニュースが途切れる気配がない。11月7日朝、山形県米沢市の温泉旅館に熊による"立てこもり"が発生した。市の判断により「緊急銃猟」で駆除されたが、一時は旅館内に経営者らが取り残されており、周囲は緊迫した空気で張り詰めた。山林で密かに暮らしていたはずの熊が人間の居住地域に現れるのはなぜなのか。そこには、日本特有の事情がある────。より凶暴化した熊が日本各地で出没する背景について、別冊宝島編集部編『アーバン熊の脅威』から、一部抜粋・再構成して紹介する。なぜ日本は、世界でも類を見ない熊被害大国となったのか。現在日本には、北海道にヒグマが推計で1万1700頭、本州と四国には4万4000頭前後のツキノワグマが生息するとされ、全国トータルで最大5万6000頭程度が生息すると考えられている。北米大陸の熊の生息数は100万頭近いともいわれ、それと比べれば日本が特別に多いわけではない。だが北米では、人間の居住域の広がりとともに森林はどんどん切り拓らかれ、それに伴い熊は駆除される。そのため熊の生息域は限定され、人間と熊の接触する機会はきわめて少ない。中国でも北米と同様の理由で熊の駆除は進められている。同時に、熊の掌は高級食材として、胆嚢は漢方薬(熊胆)として珍重されているため、民間人の狩猟対象となり、生息数は減少の一途をたどっている。日本の場合は国土そのものが狭く、地勢的に人間の居住区と熊の生息域が隣接している。「熊」という言葉が「カミ」の語源だとする説があるように、熊を神聖視する文化・風習が残っており、人間に害を及ぼさないかぎり、無闇に熊を駆除することはしない歴史があった。そんな日本において、明治初期からの北海道開拓期には、新しい土地を求めて人間のほうから熊の生息域に踏み込んでいった。そのことで、日本人は多大な人的被害を熊から受けることになってしまった。北海道での熊害(ゆうがい)は、環境省に正式に記録が残る1962年以降だけでも発生件数155件、死者59人、負傷者118人に及ぶ。様々な文献に記された明治時代からの記録を含めれば、死亡数は優に100人を超える。なぜこれほどの熊害が発生するのか。北海道というと、「広い大地」を思い浮かべるだろう。しかし、その広い北海道ですら、熊の生息数、土地の広さと人口数の比率で計れば、他国を大きく上回る「熊密集地帯」となっている。人口密度の高い地域と熊の生息域が日本ほど近い環境は、世界を見渡しても他に例がない。そのため、熊が餌にしているドングリなどの木の実が不作になり、食糧確保のために活動範囲を広げれば、熊はすぐに山を降りて人里までやってくることになる。それでも、かつては人里と熊の生息域の間には、薪や山菜を採るため適度に手入れされた里山があり、これが熊と人間の生活圏の間のワンクッションになっていた。それが現代は里山の開発が進んで人間が山際にまで住むようになった。あるいは逆に、放置された里山が雑木林と化して熊の生息域になったことで、さらに人間と熊の生活圏は近づいている。環境省の試算では、放置された里山は日本の国土の2割強に及ぶという。かつては狩猟や炭づくりのために山間に住む人々がおり、これを熊が恐れて山から降りてこないことがあったが、高齢化の影響などから山間で生活する人が減ってしまった。そうして熊が山から降りやすくなったのと同時に、人間のほうも山登りや渓流釣りなどレジャー目的で山に入ることが増え、人間と熊の遭遇する機会は増えていった。環境省の調査によれば、現在、日常的に人間が居住する住宅地や市街地や農地で起きる熊害の発生率は、すでに山林での熊害を上回っているという。熊と突然遭遇し襲われるケースの多くは、これまで山間部にかぎられていた。だが今後は人間の生活圏でも熊との遭遇が増えると予測される。やっかいなのは人里近くに生息する熊たちが、大きな物音や人間そのものを恐れなくなることだ。本来、熊は警戒心が強く、熊鈴などの音を鳴らせば接触を避けられた。しかし、人間の居住区と熊の生息域が隣接する日本の特殊事情によって、これまでの熊対策が意味をなさなくなる可能性が高いのだ。2009年9月、初心者向けの登山コースとして普段から多くの人出がある乗鞍岳(岐阜と長野の県境)にツキノワグマが現れ、次々と観光客を襲う事件が起きた。山の中腹からバスターミナルを目がけて駆け降りてきた熊は、まったく人間を恐れるそぶりを見せず、車のクラクションを鳴らし続けてもいっさい怯まない。空腹でもないのに、ただただ人を襲い続けた。そのような行動は、一般的にいわれてきた熊の生態とまったく異なる。長年、多くの観光客と野生熊の接近が続いた結果、過去の常識が通用しないモンスターベアが誕生してしまったわけである。これも地勢的に熊と人間が関わる機会の多い日本ならではの特殊事情といえるだろう。この乗鞍岳の事件では、死者こそ出なかったものの、杖で撃退しようとした観光客は熊が振るった前脚の一撃で顔面の半分を潰され、片目がボロりと地面に落ちたという。発表された被害人数は重傷3人、軽傷7人ということだったが、救急車を使わず自家用車などで病院へ向かった負傷者も多数いたようで、被害の全容は判然としない。こうした特異な事件が、今後は山間だけでなく、都市部でも広がることが危惧される。現在、山地から100メートル以上離れた土地で熊被害が多数発生していることから、熊の生態の変質はもはや疑いようがない。これは日本人が受け入れざるを得ない事実となっているのだ。2023年5月には、札幌市の森林で熊に遭遇したユーチューバーが持参のピザを投げ出し、それを食べて味をしめた熊がたびたび人里近くに現れるようになった一件もあった。温暖化の影響で冬眠期間が短縮したせいか、これまで熊を見かけなかった時期の活動も報告されている。自治体が熊の駆除に乗り出せば、「熊愛護」の観点から多くの批判の声が集まるが、昔ながらの自然保護や動物愛護の精神では、もはやアーバン熊に対処できなくなったと心得なければならない。いったん人里に降りることを覚えた熊は、駆除せずに捕獲という手段を用いて山へ返したところで、またすぐに人里に戻ってくるという。
(クマ被害が急増している理由、気候変動による影響は?)
今秋、連日のようにクマの出没情報、被害が報道されています。環境省によると、令和7年のクマによる死亡事故は11月4日現在の速報値で12件にもなりました。今、日本のクマに何が起きているのでしょうか。「今年の出没・被害件数は近年でも特に多い。最大の要因は個体数の増加と分布域の拡大です」と、森林総合研究所東北支所動物生態遺伝担当チーム長・大西尚樹さんは説明します。詳しく教えていただきましょう。環境省によると、クマ類は34都道府県に恒常的に分布しており、四国を除いたすべて地域で分布が拡大しているといいます。クマ類とは北海道に生息するヒグマと、本州・四国に生息するツキノワグマです。特に今年はクマの出没が多く、東京都西部地域でも目撃情報が寄せられるなどしています。大西さんによると「クマが増えた、というよりも分布域が回復してきているというのが正しい」といいます。「実はニホンザルやニホンジカ、イノシシなど、ほかの大型動物の分布域も過去40年間で急速に拡大しています。ツキノワグマの分布域の広がりには共通の原因があります」(大西さん)。本州と四国のツキノワグマの出没情報の増加には、中・長期的な要因と直近の要因があるといいます。「明治時代以降の社会の大きな変化によって、クマは数を減らしました。これはニホンザルやニホンジカ、イノシシなども同様で、東北地方ではニホンザルやニホンジカが絶滅した地域もあります。しかし、狩猟の自粛や駆除の禁止など保護政策が取られたことから、1990年代にクマの数は再び増加しはじめました。その保護していた間に狩猟者が減少し、結果としてクマの駆除が追いつかない状況になってしまいました」(大西さん)。変化しているのは狩猟者数だけではありません。「人の生活や活動範囲が、かつてとは変わったことです。昔は、人里とクマなどが生息する奥山の間には、里山がありました。山際の柿の木や栗の木は貴重な資源であり、里山はよく整備されていました。農業が人力に頼ったものだったため、山に近い畑にも人の出入りが多くあり、犬も放し飼いにされていました。その時代には、里山が人とクマのエリアの緩衝帯(かんしょうたい)となっていたのです。ところが農業の機械化が進むことで畑に出る人は減りました。また、高齢化や過疎化が進むことで耕作放棄地や空き家が増え、里山に人の手が入らなくなってきました。クマにとってはエサとなる柿や栗があり藪に隠れられる、安心できる場所となってしまった。動物の生息するエリアと人間の生活するエリアが近接し、人里にクマが少しはみ出してくるという状況が生まれました」(大西さん)。では、なぜクマが人のエリアに“はみ出して”くるのでしょうか。鍵となるのがドングリの実りです。「図のように、ブナやミズナラの実、つまりドングリが豊作の年はクマが出没することが少なく、凶作の年には出没数が増えています。クマは秋にエサをたくさん食べて体に脂肪を蓄えます。秋のエサのなかでもエネルギー摂取量が高いのがドングリです。ドングリが凶作の年には、クマはエサを求めて活動範囲が広くなり、人のエリアに出没することが増えます」(大西さん)。ドングリの豊凶はクマの個体数にも影響します。「母グマは冬眠中に子グマを産み、その後1年半ほど一緒に過ごして次の夏に親離れします。ドングリが凶作の年にはエサが足りないため子グマを産みません。豊作の翌年の凶作の年に、出没数が増えるのはこのためです」(大西さん)。その年の気候などによってドングリの実り方は変わりますが、最近は地球温暖化によるドングリの豊凶の周期の変化がクマに影響しているという研究もあります。「温暖化によりドングリの豊作と凶作の間隔が短くなり、ドングリの全体としての量が増えています。そのため、クマの出産間隔が短くなり、クマが増えやすくなっているというものです。温暖化そのものが直接的にクマの個体数を増やしているわけではありませんが、近年のクマ増加の一因として指摘されています」(大西さん)。なぜ、今年これほどまでにクマの出没件数が増えているのでしょうか。「長期的な保護政策や狩猟が少なくなったことで人への恐れが減り、奥山だけでなく中山間地・住宅地周辺までクマの生息域が広がっています。さらに、過疎化や高齢化にともなって耕作放棄地や空き家が増加し、人の管理が及ばない空間が拡大したことで、人とクマの距離が急速に縮まっています。実際に2016年頃から、本州全域で捕獲頭数は新しいフェーズに入ったかのような増え方をしています。加えて、今年はブナなどのドングリ類の凶作が広範囲で起きており、山中のエサ不足が出没増加を後押ししています。これら複数の要因が重なり、クマが人里に入り込む事例が頻発していると考えます。なお、メガソーラーを不安視する声もあるようですが、ほぼ影響はありません。メガソーラーは多くの場合、耕作放棄地や放棄された酪農地など、すでに利用されていた場所に設置されています。森林を伐採して造成することは滅多になく、仮に伐採されたとしても、半径数kmの行動圏をもつクマにとってその生活圏の一部が失われたにすぎません」(大西さん)。今後は、クマが出るのが当たり前という時代に入るといいます。「すでに東北では市街地での出没が常態化しており、東京都西部など都市近郊にも波及しています。今後は、全国的に同様の傾向が広がるでしょう」(大西さん)。有効な対策はあるのでしょうか。「まず個体数の調整が不可欠です。人のエリアに現れた個体をその都度排除するだけでは限界があり、広域的に生息密度を下げる施策が必要です併せて、ガバメントハンター(自治体職員による専門駆除班)の常設や、地域の環境管理を担う人材の育成が求められます。研究面では、個体群動態や遺伝的多様性を長期的にモニタリングし、科学的根拠に基づいた管理基準を構築していくことが重要です」(大西さん)。クマ被害の急増は一つの要因ではなく、高齢化などによる人間社会や土地利用の変化、地球温暖化などの自然環境の変化など、様々な要因が複雑に絡み合って生じていて、私たちを取り巻く環境の変化がさまざまな形で進んでいることを改めて感じます。
(公務員クマ駆除、専門人材の育成を急げ:愛知)
クマ被害の深刻化を受け、政府は警察官によるライフル銃を使った駆除や、狩猟免許を持つ自治体職員「ガバメントハンター」の確保支援を打ち出した。これまでは猟友会の「協力」に頼ってきたが、地域によっては人命が脅かされる事態が日常化しており、公務員が「職務」として担う体制への転換は当然の流れだ。自衛隊の支援活動も始まった。より恒久的な対策のためには専門人材の育成を急ぐほかない。環境省によると、本年度のクマによる死者数は13人に上り、過去最多の6人だった2023年度の2倍以上となった。出没件数(速報値、北海道除く)も4~9月に2万792件と最多ペースだ。東北を中心に市街地や学校など人の生活圏での出没はもはや珍しくなくなっており、住民が外出をためらう異常事態が続いている。だが、駆除を担う猟友会の会員はこの半世紀で4分の1に減り、高齢化も進む。相次ぐ出没への対応で現場は疲弊している。政府は9月、人の生活圏でも自治体判断で銃器の使用を許可できる「緊急銃猟」を導入したが、肝心のハンターは足りない。山野に比べて事故のリスクが高く、ハンターに過度な負担を強いているとの指摘もある。「猟友会頼み」の限界は明らかだ。人命保護という公益性を踏まえれば、公的機関が駆除を担うしかないだろう。警察庁は、地域警察官が所持する拳銃ではクマの駆除は困難だとして、ライフル銃を持った機動隊の銃器対策部隊を人的被害が深刻な秋田、岩手両県に派遣し、13日から対応を始める。ただ、未経験の業務のため訓練を十分に積む必要がある。拙速な対応にならぬよう万全の体制で臨んでほしい。一方、駆除だけで被害を防ぐことは難しく、増加傾向が指摘される個体数の適切な管理や、クマと人の生活圏を分ける緩衝地帯の整備など、出没自体を抑えることが不可欠だ。鳥獣の専門知識を持つガバメントハンターが確保できれば、駆除との両輪で役割を期待することができ、対策も進む。課題となるのは、やはり人材の確保だ。研修体制の整備などにより、人材の「質」を担保する必要がある。長期的な対策に取り組むには安定した待遇での雇用も不可欠で、財政の厳しい自治体への国の支援が求められる。
(クマに襲われた女性、犬が救う:群馬)
群馬県内でもクマによる人的被害が過去最多となる中、紅葉シーズンを迎えた観光地への影響が広がっている。出没が確認された沼田市の名勝地は遊歩道の一部が通行止めになり、東吾妻町の体験型アトラクションは2週間近く利用を中止した。北毛地域を中心に観光協会や観光案内所にはクマに関する問い合わせが相次いでおり、観光関係者は「来る際はできるだけ注意してほしい」と警戒を呼びかける。3連休初日の1日、沼田市利根町追貝の名勝「吹割の滝」は周囲の木々が赤や黄色に薄く色づき、観光客でにぎわっていた。ただ、滝を囲む遊歩道の途中には「この先熊の目撃情報あり」と書かれた看板が立ち、一部通行止めに。観光客は「残念だね」と話したり物珍しそうに写真を撮ったりして、来た道を引き返していた。友人2人と訪れた千葉県山武市の会社員(55)は「(看板の)向こうに行きたかったが、クマが走って来たら怖いですね……」と不安そうに話した。市によると、10月14日に遊歩道の近くでクマが目撃されたことなどを受け、同日から遊歩道約2・2キロのうち約1・2キロを通行止めにした。滝は見られるが、近くで見下ろす場所には行けなくなった。解除の見込みは立っていない。沼田市観光協会やみなかみ町湯檜曽の谷川岳インフォメーションセンターによると、今年は「クマが出ますか?」などと出没状況を尋ねる電話が例年より多く、1日数件寄せられる。同町観光協会も同様で、町内で人が襲われたと報道された直後は10件前後の問い合わせがあるという。東吾妻町の廃線を利用した自転車型トロッコ「吾妻峡レールバイクアガッタン」は、上毛かるたにも登場する国指定名勝「吾妻峡」沿いを走り、山が色づく秋は平日でも予約で埋まることがある人気アトラクションだ。しかし、10月18日に線路付近でクマ2頭が目撃され、19~31日の運行を中止した。町は、出発前にルート沿いを車で見回り、トロッコに防犯ブザーをつけるなどして今月1日に運行を再開した。町まちづくり推進課は「吾妻峡の観光や登山の際は、クマ鈴を持参して複数人で歩くなど、各自で対策もとってほしい」と求めている。今年度のクマによる人的被害は10人に達し、県が把握する2009年度以降で最多となった。「死ぬかと思いました」 みなかみ町のパート女性(76)は、クマに襲われた瞬間をそう振り返った。10月18日午後4時頃、同町高日向の山林に近い住宅地の道路で、知人が飼う雌のシバ犬「リオン」と散歩していたところ、クマが突然やぶから現れた。逃げる間もなく、頭を殴られて転倒した。クマはうつぶせになった女性に乗り、背中や肩をひっかいて上着を引っぱり始めた。「やぶに引きずり込まれる」と直感し、「助けて」と大声を出すと、それまでおとなしかったリオンがほえ、驚いたクマは逃げた。「クマの動きが素早く、抵抗もできなかった」。女性は頭の骨を折り、全身に傷を負った。服はぼろぼろになった。入院して治療や抗生物質の点滴を受けた。痛み止めを飲んでも2週間の入院中は傷が痛んだ。退院した今も手のしびれが残るという。クマへの恐怖から、自宅の雨戸は必ず閉めるようになった。襲われた翌日、現場近くで猟友会がクマ5頭余りを駆除した。その後、付近で出没情報はない。けがは軽くても、爪などに付着した細菌により、感染症で重症に陥るケースがある。沼田市でクマに襲われ、右肩などに裂傷を負った60歳代男性は軽傷と診断され、自宅で療養していた。しかし高熱が出て3日後に受診したところ、皮下脂肪組織に侵入した細菌が痛みや発熱を引き起こす 蜂窩織炎ほうかしきえん と診断された。ほかの人への感染はないが、約2週間の入院が必要となった。クマに詳しい獣医師の坂庭浩之さん(60)は「傷の適切な治療管理を行わないと、重篤な感染症になるおそれもある」と話している。前橋市は7日、市内でクマの食害や目撃情報が相次いでいる状況を踏まえ、柿の木を伐採した世帯に1本当たり1万円の奨励金を交付する事業を始めた。1世帯上限3本で、事業費150万円は予備費で対応する。来年2月27日まで受け付ける。市農政課によると、対象地区は大胡、宮城、粕川、富士見の4地区と田口町、小坂子町、嶺町、金丸町。周辺では柿の木のそばでの出没や柿の実を食べたとみられるふんの確認が相次ぎ、10月下旬以降に31件の被害が報告されているという。申請には伐採前後の写真が必要で、市農政課や各支所に提出する。柿の木がクマを住宅地に引き寄せているとして、小川晶市長は「伐採や 剪定せんてい 、実の早期収穫などでの協力をお願いしたい」と話した。
(元旭山動物園園長は「人間はタンパク源として狙いやすい」と警鐘)
連日、全国紙やワイドショーで報じられるクマによる人的被害。この影響は全国各地に及んでいる。「環境省によると、今年度4~9月までの、北海道を除いたクマの出没件数は2万792件。中でも4005件と全国で2番目に多い秋田県では、10月28日に鈴木健太知事が防衛省を訪れ、小泉進次郎防衛大臣に自衛隊の派遣を要請しました。これを受け、11月5日から自衛隊員が現地で箱わなの設置などを行っています」(全国紙社会部記者)翌6日に秋田県で開かれた東北高校駅伝競走大会では、出場予定だった学法石川高校(福島)が、秋田県内での相次ぐクマの出没を理由に出場辞退を発表している。「10月28、29日には岩手大学の敷地内でクマが目撃され、両日ともに臨時休校となりました。周囲を山林に囲まれた青森公立大学でも、今年6月に3件のクマの目撃情報が寄せられています」(前同)。学びの場をも脅かし始めたクマの恐怖。その生息域は東北地方だけでなく、首都圏にも広がっている。東京都環境局の担当者が言う。「今年に入って、都内でクマが目撃された件数は241件です。クマが出没するのは西多摩地域で、奥多摩町、檜原村、あきる野市、日出町、青梅市、八王子市となります」。4月1日から9月30日時点で37件のクマの目撃情報が寄せられているという青梅市の農林水産課農政係の担当者が話す。「ちょうど今も、クマの出没先を見回りして来たばかりなんです。クマによる被害は農作放棄地で目立ちます。それこそ手入れされていない柿の木なんかがあると出現しやすいですね」。こういったエリアにはクマ檻を設置し、駆除を試みているという。「目撃情報が出た場合は、警察官と猟友会の方、それと市職員の5~6名で現場に向かいます。近年では人間の生活圏の近くで、クマの目撃が増えた印象です」(前同)。その一端を本誌記者が垣間見たのは次の瞬間だった。それまで電話越しに穏やかだった担当者の口調が一変し、緊張を帯びたのだ。「えっと、(取材は)時間かかりますかね? また、今、クマ出ちゃったみたいなんです。1回、電話切りますね。すいません」(同)。この日、担当者が通報現場に出向くと、周辺の柿の木にはクマの爪痕が残っていたという。環境省の担当者が、クマが住宅街へと頻繁に姿を見せる理由を推測する。「要因として大きいのは、今年のドングリが凶作だということ。それと、開発が進んだことにより森と住宅街の間で緩衝地帯の役割を果たしてきた里山が日本から激減したこと。つまり、環境の変化でクマが人間と遭遇する確率が上がったというわけです」。また、クマが街中で頻繁に目撃されるようになった背景に、別の害獣の存在を指摘する声もある。「シカです。野生鳥獣による森林被害面積は、年間に全国で約5000ヘクタール。このうちの約7割前後がシカによる被害なんです」(前出の全国紙社会部記者)。北海道庁によれば、2023年度のエゾシカの生息数は73万頭。環境省によれば、22年度に本州以南で生息するニホンジカは246万頭と報告されている。合計すると、300万頭以上のシカが日本国内で暮らしている計算だ。「シカは樹木を容赦なく食べ尽くす性質がある。それにより、クマの食べる木の実がなくなってしまった」(前出の全国紙社会部記者)。元旭山動物園園長で、札幌市環境局参与の小菅正夫氏が話す。「庭にサクランボやリンゴの樹を植えるとします。人間が生活している間は、クマも近くにまでは寄ってこない。しかし、過疎化が進んだ地域では空き家になることも多く、農作放棄地となった土地の木の実を食べたクマは、山の中にいなくても人間が暮らす土地に来ればエサがあると、味を占めてしまうわけです」。また、増えすぎたシカは別の問題も引き起こしているという。「シカの数が増加したことで車にひかれる個体も増えた。これらの死骸を食べたクマはシカの味を覚えてしまったんです」(前同)。アニメや映画の中では、ハチミツや木の実を食べる大人しい動物として描かれているクマ。しかし、野生のクマは肉食もする雑食動物なのだ。「シカは栄養価が高いし、消化もいい。シカを食べることで、クマも本来持つ野生の姿を取り戻した」(同)。一方で、シカは逃げ足が早いことから、クマにとっても捕獲は困難を極める。「人間の味を覚えたクマは、シカに比べると、はるかにのろまな人間のほうが、タンパク源として狙いやすいと考えられます」(同)。人肉の味を覚えたクマ。その存在は、かつて目撃されることがなかった大都市圏へも近づいているという。
(クマ犠牲「過去最多」緊急対策へ、クマ“異常事態”教育現場は今)
クマに襲われ、亡くなった人の数は過去最多に。各地で厳戒態勢となるなか、自衛隊が派遣され、13日から警察官がライフル銃でクマを駆除することが可能に。この異常事態、中学校の1日に密着すると、クマに振り回される教職員たちの姿がありました。
(クマ被害増えるなか加速する担い手不足、新ハンター養成講座:宮城)
全国的にクマの出没や被害が相次ぎ、猟友会の活動が増える中、狩猟初心者を対象にしたレベルアップ講座が宮城県登米市で開かれました。この講座は、将来、クマやイノシシなどの有害鳥獣捕獲にあたるハンターを育成しようと、県から委託を受けて宮城県猟友会が開いたものです。11月8日は、仙台市に住む猟友会の2人が参加し、9月から施行された「緊急銃猟」についても説明されました。また、50~100メートル先の標的を狙う射撃訓練も行われ、猟友会の指導者から狙う位置や撃つタイミングについて指導を受けました。県猟友会塩釜支部 鈴木一郎支部長「鳥獣被害対策を行うにあたって、若手の育成をしないと今後どうなるか危惧している」。宮城県猟友会によると、火薬銃を扱える県内の会員数は、1982年度には8326人いましたが、昨年度は1114人にまで減少しています。
(消防士ボランティア柿の木伐採に出動:宮城)
クマが民家の庭に入り込むのを防ごうと、宮城県内の消防士有志でつくる被災地支援ボランティアグループ「Five up SENDAI(ファイブ・アップ・センダイ)」が、柿の木の伐採支援を仙台市内で始めた。
(林業にも影響「砕いて燃やすしかなかった」“クマ剥ぎ”被害材:新潟)
全国各地でクマによる人身被害が相次いでいますが、“木の皮を剥がす″というクマの習性による『クマ剥ぎ』という被害が林業にも広がっています。一方で、この『クマ剥ぎ』を逆手に取った、ある取り組みが始まっています。新潟県三条市の山間部に近い集落で10月、民家の玄関先にクマが現れました。幸い住民に被害はありませんでしたが、2025年度の新潟県内でのクマの目撃件数はすでに2400件を超えており、過去最多。クマに襲われてけがをした人も11月4日時点で13人に上っています。新潟県関川村の杉林に、その“痕跡”はありました。根元付近の木の皮が広範囲にわたって剥がされています。【関川村森林組合 松田晃太業務課長】「これがクマに剥がされた跡ですね。爪痕が付いて…」。『クマ剥ぎ』と呼ばれる被害で、クマが前足や口を使って皮を剥いだもの。「クマ剥ぎされたところは濃く色が変わり、水がすぐに染みちゃう」。剥がされた部分は成長が止まり、その影響は木の中にも及ぶそうです。「クマが、剥がした樹液をなめるという話も聞きますし、いたずらで樹皮を剥がすというのも聞いたことがあります」。クマが好むのは主にスギの木。木の皮を剥がされた部分は腐り、数年後には枯れてしまうことも多いそうです。クマが樹皮を剥がす『クマ剥ぎ』の被害を受けた木は、製材品として利用することは難しいと、大川屋製材所の菅原保社長は話します。「ものにならないので、これを木質バイオマス発電の燃料チップとして、砕いて燃やして発電する…。そういう使い方にしかならないんです」。関川村森林組合によりますと、村内のある集落では1ヘクタールの村有林から200立方メートルの木材を搬出する計画でしたが、そのうちのおよそ7%はクマ剥ぎの被害を受けたために燃料チップにせざるを得ませんでした。「木というのは、約70年から80年前の先代たちが植えてくれた大切な木」「それを燃やすっていうのはできない…」。その実情を聞いて動き出したのが、関川村の工務店『ハウジングワーク本田』に務める海野大輔さん。サンプル品を見せてもらいました。「室内に張るような板で、クマ剥ぎ材を加工したものです。表面だけしかひっかかれていないので、製材すると傷なんか分からない」。クマ剥ぎ被害を受けたスギから、“使える部分”を取り出した『ベアウッド』。関川村森林組合と大川屋製材所とが手を組み、あえてクマ被害を“明示”して行う、新たな利活用の方法です。「僕が見る限り、使える部分はまだまだ使えると思った」という海野さん。「風合いが、普通の木よりすごく出やすい」と『ベアウッド』の特徴を話します。『クマ剥ぎ被害』を受けた杉でも、木の中心部分の「赤身」と呼ばれる色の濃い部分はまだ使えることもあり、被害を受けた部分の周囲は“塗料が染み込みやすくなる”という特徴もあるそうです。深い色あいやそこに至る物語も含め、『ベアウッド』がお客さんには好意的に受け止められていると話します。“クマ剥ぎ”被害を受けた材木の新たな利活用につながる『ベアウッド』を手掛けるハウジングワーク本田の海野大輔さんは、一方で「まだ解決できない課題がある」と話しています。「1本の丸太からどれだけの材料が使えるのか?といった歩留まりなどについてを、製材所や林業の方たちなどいろいろな人と組みながらやるんですけど、それは大変で、いまだにまだまだ解決していないものもたくさんあります」。クマ剥ぎ被害の影響は杉材の奥深くまで及んでいる場合もあり、どれだけの製材が可能かどうか、見極めが難しいのです。【大川屋製材所 菅原保社長】「ここがクマ剥ぎの被害に遭って、色が変わって…。こういうのも腐ってダメ」「ここまで製材しても大丈夫だろうっていう製材の仕方にしても、そこまで腐ってることがあるので、そこを見極めながら何回も製材しなきゃいけない」。それでも『ベアウッド』に挑戦するのは、林業への“危機感”を感じるから。『地元の杉を使ってもらうことで林業が活性化し、再び山に人の手が入ってクマ被害が減少する』そうした好循環が生まれると考えています。【関川村森林組合 松田晃太業務課長】「クマ剥ぎの形状とかによって、そういうのも有効に利用していただいて…」「少しでも付加価値が付いて新たな商品として出していただければ、なおのこと良いのかなと」。【大川屋製材所 菅原保社長】「クマは、“人工林”に私たちが行ってたので、境界線があったんですよ」「今、山に行かなくなっちゃったから境界線がなくなって、私たちが植えた木のところまで来ちゃったんですよ。だから、こういう被害がたくさん出ている」「山に目を向けていただく、ちょっとでも地元の木を使ってもらえるような取り組みをしてもらえれば、嬉しいなと思います」。クマ被害の増加が叫ばれるなかで始まった、林業の新しい取り組み。それは、『里山の重要性』も訴えかけています。
(鹿の角に刺されケガした観光客、前年同月の7倍に急増:奈良)
奈良公園(奈良市)にある鹿の保護施設「 鹿苑ろくえん 」で8日、秋の恒例行事「鹿の角きり」が行われた。9日は雨天が見込まれるため中止となった。発情期を迎えて気性が荒くなった雄鹿が傷つけ合ったり、人に危害を加えたりしないよう、江戸時代初期に始まったとされ、現在は保護団体「奈良の鹿愛護会」が主催する。例年10月に行っていたが、昨年は9月の1か月間で、鹿の角に刺されて負傷した観光客らが35人と、前年同月の7倍に急増したことから、今年は角の除去作業を優先するため、11月に延期した。この日は、鹿苑の角きり場に放たれた雄鹿を、はっぴを着た20人の 勢子せこ が追い込み、縄を投げて捕獲。神官役がのこぎりで角を切り落とし、切り取った角を披露すると、観客から「おー!」と歓声が上がった。大阪府吹田市の小学1年生(6)は「鹿があんなふうに走る姿を初めて見たが、速かった。捕まえていた人たちも格好良かった」と笑顔だった。
(「酔っ払いがえずく」鳴き声、大量繁殖キョンの〝現場〟:東京)
中国などに生息する小型のシカ科草食獣で特定外来生物の「キョン」が、伊豆大島(東京都大島町)で大量に繁殖して社会問題化している。島民の3倍超にあたる2万頭あまりに増え、特産のアシタバを食い荒らし、独特の鳴き声が住民の安眠を妨害。都は駆除に乗り出しているが、解決のメドは立っておらず、各地でクマ被害が相次ぐなか、獣害対応の難しさを物語っている。都心の南約120キロに位置する伊豆大島。午後7時過ぎ。記者が同乗した車の50メートルほど先を、子鹿のように小さくかわいらしい動物がとことこと横切った。キョンだ。「これまでにも2、3回飛び出してきて車とぶつかったことがある」。取材に協力してくれた一般社団法人「伊豆大島農業生産組合」代表理事の藤田光正さんは運転席でこう語った。特産のアシタバも以前は島のいたるところに生えていたが、キョンに食べ尽くされ、「今は全くない」と残念がる。畑の作物も被害に遭っている。住宅街で話を聞くと、50代男性は「何でも食べてしまうので家庭菜園もできない」。散歩中の80代女性は「庭に設置したわなで8頭捕獲した」といい、キョンの繁殖ぶりがうかがえた。翌朝5時。毎朝キョンを見るという女性の散歩に同行すると、あちらこちらの茂みから大きくて野太い奇声が反響する。「グアー」「ギョー」。キョンの鳴き声はしばしば「酒に酔った中年男性がえずくような声」(都の担当者)に例えられるが、難なくうなずけた。未明の鳴き声の反響は、島民にとって大きなストレスとなるだろう。キョンは中国南東部や台湾などに生息している獣だ。伊豆大島では昭和45年、都立大島公園の動物園で飼育されていた個体が台風で壊れた柵から逃げ出し、野生化。繁殖力が強く、天敵となるクマやオオカミもいないことから繁殖したようだ。都の推計では、令和2年時点で島人口の3倍以上の約2万1600頭にまで増加。「人間さまよりもキョンさまの方が数が多い」(小池百合子知事)状況になった。住民被害を受け、都も対応に乗り出している。平成19年から猟銃を使った駆除を始め、わなも改良し、令和3年に頭数は減少傾向に転じた。今年9月から捕獲に報奨金を設けた。住民が市街地に設置されたわなを毎日見回り、捕獲を通報すれば、1頭につき8千円が支給される。野良ネコが誤ってわなにかかるケースも多いため、予防策の研究も進めている。キョンの繁殖は千葉県でも問題化しており、捕獲した個体を食肉処理施設が処理したジビエとして活用している。ただ、小池知事は9月の記者会見で、キョンのジビエ活用に採算面から否定的な見方を示し、都は根絶を目指す考えだ。
(高感度無人カメラがとらえたシカの食害、むき出しの岩肌に登山道崩落)
滋賀、岐阜の両県にまたがる伊吹山(1377メートル)でニホンジカが増え、問題になっている。食害で草木が減少して土や岩がむき出しになり、大雨で登山道が崩落したり、麓の集落に土石流が流れ込んだりする被害も出た。植生を回復する取り組みが進む現場を訪ねた。集中豪雨で2023年7月に登山道が崩落し、立ち入り禁止の続く南側斜面の5合目に9~10月、許可を取って9回、無人カメラを設置。土や岩の目立つ斜面で日没後に現れたシカが、餌を探すのか地面に口を付けたり走り回ったりする姿を捉えた。南側斜面では00年代に入るとシカの食害が見られるようになり、10年頃には山頂付近まで広がった。斜面は崩れやすくなり、23年の登山道崩落に続き、24年7月には3回、麓の集落に土石流が流れ込み住宅などに被害が出た。シカの増加は、地球温暖化による積雪の減少で冬も餌を得やすくなったことや、狩猟をする人の減少などが原因とみられる。自然植生に影響が出にくいシカの生息数は1平方キロ・メートルあたり3~5頭以下とされるが、岐阜県野生動物管理推進センターの調査で、伊吹山では22年に30・5~61・1頭にもなっていた。滋賀県米原市のNPO法人「霊峰伊吹山の会」の高橋滝治郎理事長(66)は23年7月、登山道を整備中に雷雨に遭い、石や土砂が急斜面を流れ下るのを目の当たりにした。「大雨が降れば、緑の失われた斜面は崩落する。植生を早く戻さないと、災害のリスクが高い」と懸念する。滋賀県や米原市はシカの侵入防止柵の設置、植生の再生事業、シカの駆除と並行し、斜面の土石流対策を進めている。シカを防ぐ柵で囲んだ山頂付近では、植生が回復するなど成果もあがってきた。急斜面が多く、範囲も広いため簡単ではないが、緑と野生動物の共存を目指す取り組みを見守りたい。
(舛添要一氏、法でがんじがらめの現状に私見)
元東京都知事で国際政治学者の舛添要一氏(76)が9日、ABEMA「ABEMA的ニュースショー」(日曜正午)に生出演し、全国で相次ぐクマ被害と法的な問題点について見解を語った。各地で深刻化するクマ被害に対する対策として、自衛隊は秋田県内に出動。しかし、できる活動は箱わなの設置、駆除したクマの解体、運搬など限られたもので、実質的な後方支援に留まる。携帯しているものは銃やナイフではなく、銃の形をした木製の木銃。自衛隊では銃剣術の訓練に使われる。法的な制限のため、活動が限られる現状に、舛添氏は早急な対策が必要だと訴えた。「いろんな法律とかルールを変えないと。警察とか自衛隊が対応できない国というのは、バカみたいな国ですよ、基本的に」とバッサリ。「“猟友会がやるので、警察は後ろで見てる、自衛隊も後ろで見てるだけ”って国、他にありますか?」と苦笑いした。法にがんじがらめになった結果、国民の生命が脅かされる日々が続いている。舛添氏は「私なんて最初から、何でライフルを使わないんだって思っていたので」と指摘。「アメリカ人が見たら、笑い転げるというか。“みんな、女性を含めて、田舎に行ったらみんなライフルを撃ちますから”って、片っ端から家族を守るために撃ち殺しているはず。何で日本はそれをできないの?という疑問があるんじゃないかな。日本もいいところはあるけど、やっぱり変えるべきは変えるべきだなと思います」と述べた。今年度はこれまで過去最大だった23年の6人の2倍に当たる12人が犠牲になっている。舛添氏は「これはこういう状況だからって、法律を変えれば一発で済むわけですよ。そのために国会があるわけで、そのために法律を変えればいいわけで。国民的な課題だからやるべきだと思いますね」と、政府に早急な対策を求めた。
(東出昌大だけじゃない!実は“狩猟免許”を持ってる芸能人)
2024年、全国でクマの目撃情報と人的被害が記録的なペースで推移し、社会問題として深刻化しました。環境省によると、2023年度(2023年4月~2024年3月)のクマによる人身被害は、統計開始以来過去最悪の219人に上り、被害は人里や市街地といった生活圏でも多発しました。そして、この危機的な状況は2024年度も高水準で推移し、2025年11月現在、特定の地域では、市街地での出没や人的被害が相次ぎ、住民の生活に甚大な影響を与えています。この未曽有の事態を受け、獣害対策の担い手不足が改めてクローズアップされています。一部の地方自治体の知事までが自ら狩猟免許の取得意向を宣言し、狩猟の役割は「趣味」から「社会貢献・地域の安全」へと、その重要度を高めています。そんな中、親しみやすい存在である芸能人の中に、厳しい狩猟の世界に身を置き、その意義を発信する人々がいます。彼らの活動は、私たちに「命をいただくこと」や「野生動物との共存」について考えるきっかけを与えています。今回は、社会問題と結びつき、今改めて注目される「狩猟免許保持者」をご紹介します。俳優の東出昌大さんが狩猟をライフワークとし、山での生活を実践していることは有名です。東出さんは、捕獲した獣の肉を食し、皮を加工するなど、自然の恵みを無駄なく活用する自給自足的なスタイルを追求し、YouTubeで発信していました。2025年3月には配信を停止しているのですが、過去の動画は視聴することができまs。そして、2020年8月に離婚された元妻である女優の杏さんもまた、実は狩猟免許を所持しています。杏さんは過去のメディアで、「狩猟免許は持っているが、猟銃の所持許可がないため、実際には猟に出ていない」と明かしています。 離婚後、それぞれが独自の道を歩み、杏さんは現在海外を拠点に活動していますが、元夫婦が奇しくも共通して「狩猟」という自然と深く関わる資格を持っていたという事実は、彼らが「生きる力」や「自立心」といった本質的なテーマを重視していることを示唆しています。彼らのライフスタイルは、都市生活を送る私たちに、改めてサバイバル能力の重要性を問いかけています。俳優の松山ケンイチさんも、狩猟免許を持つことで知られています。彼は妻の小雪さんと共に、捕獲した獣皮を活用したライフスタイルブランド「momiji」を立ち上げるなど、狩猟を通じたサステナブル(持続可能)な活動に力を入れています。松山さんの活動の特徴は、自身のYouTubeチャンネルなどで公開した「発信のリアリティ」です。ジビエ肉の調理や皮の活用だけでなく、狩猟の生々しい現場を公開したことで、SNS上で大きな議論を巻き起こしました。この論争は、狩猟が持つ厳しさや残酷さを視聴者に突きつける結果となり、現代人に「獣害対策」や「食育」について考える機会を提供しています。お笑いコンビ「ガクテンソク」のよじょうさんは、相方の勧めを受けて2021年に狩猟免許を取得。初猟で鹿を一発で仕留め「天才」と称賛されるなど、その腕前は本格的です。よじょうさんは、「THE SECOND~漫才トーナメント~」で優勝で優勝し、一躍トップ芸人の仲間入りを果たしました。この肩書きに、「意外な特技」である狩猟免許が加わることで、バラエティ番組などで彼の個性をさらに引き立てる要素となっています。多忙な中でも、彼は自然との関わりを続け、その経験を自身の糧としています。今回紹介した芸能人たちの狩猟活動は、「獣害の深刻化」という社会問題が身近に迫る今、特に大きな意味を持っているでしょう。彼らは、単なるライフスタイルの開拓者としてだけでなく、「自然との距離感」「命を消費する責任」といった本質的なテーマを、その知名度を活かして世の中に提示し続けていると言えるでしょう。「クマ被害対策」が緊急の課題となっている中、彼らの活動や発信が、狩猟を担う人々の重要性を再認識させるきっかけとなり、社会全体でこの問題に向き合うための重要な一歩となるかもしれません。
(クマを敬い、クマを撃つ。:秋田)
秋田県横手市山内(旧:山内村)で生まれ育ち、いまも地元・秋田で、自然に寄り添いながら絵を描き続ける若き画家がいます。その名は、永沢碧衣(ながさわ・あおい)さん。1994年生まれ、秋田公立美術大学で絵画を学んだ彼女の作品は、まるで山や川、そこに生きる生き物たちの“声”が聞こえてくるような、静かで力強い世界を描き出します。その根底にあるのは、横手市山内という、大自然の中で過ごした子ども時代の原風景です。奥羽山脈の麓にある、大自然に囲まれた横手市の山内地区は、これまでにもシンガーソングライターの高橋優さんや、東北の酒造り集団である「山内杜氏」(齋彌酒造店・雪の茅舎:高橋藤一杜氏、阿櫻酒造・阿櫻:照井俊男杜氏、日の丸醸造・まんさくの花:高橋良治杜氏の“山内G3”)など、数多くのアーティスト・職人を育んできました。2025年9月13日(土)から11月30日(日)までは、愛知県で開催されている国際芸術祭「あいち2025」にも参加している、永沢碧衣さん。今回は、「描く」という行為をとおして、命と真剣に向き合おうとする永沢さんのまっすぐなまなざしと、その作品を紹介していきます。筆者が永沢碧衣さんと出会ったのは、2017年。その当時から、永沢さんの根本にある制作への姿勢は変わらず、一貫しています。永沢さんの絵には、よく「熊」や「鮭」など、山や川の動物たちが登場します。でもそれは、図鑑を参考にした絵ではありません。彼女は実際に山へ入り、川に足をつけ、動物たちの姿を自分の目で見て、感じたことを絵にしています。たとえば大学時代、「鮭の遡上」をテーマに絵を描こうと決めたとき。彼女は漁師さんや研究者に話を聞き、秋田県内の川を何度も訪ね、鮭が川をのぼる姿を自身の目で見届けました。魚の動き、水のにおい、川の音、山の静けさ――すべての感覚を絵に込める。それが彼女の制作スタイルの基本です。「自然の中に入っていくと、自分が小さな生き物に戻ったような気がするんです」と永沢さんは話します。絵を描く前に“自然の一部”になる。そんなふうにして、彼女は命の風景を描き続けています。あるとき彼女は、秋田県の北部、北秋田市にあるマタギの里・阿仁を訪ねました。「マタギ」とは、山のルールを大切にしながら狩猟をおこなう、昔ながらの山の民。その暮らしぶりに触れた永沢さんは、ますます自然と真剣に向き合うようになります。やがて彼女は、なんと狩猟免許を取り、自ら山に入り、熊の猟に同行するようになります。箱罠や猟銃で捕らえられた熊を解体し、肉は食べ、毛皮からは膠(にかわ)をつくり、それを絵の画材として使うという試みまで始めました。そこには、「命をいただいて、描く」ことへの覚悟があります。「自分が何を描いているのか、もっと深く知りたかったんです。命の重みを無視して、きれいな絵だけを描くことはできなかったから」。永沢さんの言葉は静かですが、その奥には強い思いが込められています。そんな彼女の名前を広く知らしめたのが、2023年に東京・上野の森美術館で開催された「VOCA展2023」でのこと。全国から選ばれた若手作家が参加するこの展覧会で、永沢さんは最高賞となる「VOCA賞」を受賞しました。受賞作のタイトルは『山衣(やまごろも)をほどく』。4メートル近い大きなキャンバスに堂々と描かれたのは、ツキノワグマ。その背景には、山々が広がり、霧のような空気が漂っています。墨や岩絵具、ティッシュ、そして自らつくった熊膠など、さまざまな素材が使われています。この絵に描かれた熊は、ただの動物ではありません。山の神としての存在であり、人間にとっては畏れの対象であり、時に脅威ともなる、複雑な存在です。永沢さんは、その両面をしっかりと見つめ、絵のなかに閉じ込めました。見る人の心に、ふと「自分は自然の中で、どんなふうに生きているだろう」と問いかけてくるような、不思議な余韻のある作品です。永沢さんの制作は、ますます自由に、広がりを見せています。あるときは、廃校になった体育館をまるごと使って、大地に絵を描くようなライブペインティングを行なったり、沖縄での滞在制作では、地元の自然や文化をテーマにした作品をつくったり。近年では、絵画だけでなく、音や映像、言葉、絵本など、さまざまな表現にチャレンジしています。「土地に生きること、それが自分にとっての制作の出発点なんです。自然があって、暮らしがあって、そこで感じたことを、どうやって伝えようかって考えていると、自然と表現が広がっていくんですよね」そんな彼女の姿に、いま多くの人が惹きつけられています。インタビューの終わりに、「これからどんな作品を描きたいですか?」と尋ねると、永沢さんはすこし考えてから、こう話してくれました。「絵を描くって、自分の手で何かを“生み出す”ことだと思っていたけれど、いまはむしろ、山や自然のなかに“描かせてもらっている”って感覚が強いです。命の声に、ちょっとでも耳を澄ませられるような絵を描いていけたら」。どこまでも謙虚で、誠実なその姿勢に、胸がすっとあたたかくなります。自然とともに暮らし、命に寄り添うようにして描かれた彼女の作品は、きっとこれからも、静かに、でも確かに、人の心を動かしていくでしょう。
(三井住友海上、クマ撃退スプレー購入費全額補助)
クマによる被害が相次ぐなか、大手損害保険の三井住友海上はクマ撃退スプレーの購入費用を補助するなどの対策を決めました。三井住友海上は全国各地に拠点があります。東北など山間部の取引先を行き来する社員らからの対応を求める声を受け、クマ撃退スプレーの購入費用を全額補助することを決めたということです。6日に社内に周知しました。また、希望する社員には在宅勤務を認めるほか、クマ出没に対する安全確保を目的とした社用車での帰宅も認めます。そのための駐車場の費用は全額負担するとしています。三井住友海上は「実効性のある防衛手段を用意し、自衛の意識を引き上げたい」とコメントしています。
(クマ被害急増のルーマニア、駆除ルールを緩和)
ルーマニア政府は6日、クマの駆除に関して「まずは脅かして追い払う」などと規定していた法律を改正し、人間に危害を与えそうな場合、速やかに射殺できるようにする案をまとめた。日本ではクマによる被害が増えているが、ヒグマの生息数が欧州で最も多いとされるルーマニアでも、人里にクマが出没して人間を襲うケースが増加している。ルーマニア環境省によると、ルーマニアでは過去20年間でクマに襲われて26人が死亡し、274人が重傷を負った。昨年には登山中だった19歳の男性が死亡する事案があり、対策を求める声が高まっていた。クマは、森林伐採などによる生息地の減少で、えさを求めて人間の住む地域に迷い込んで来るとみられる。東欧メディアによると、現在の法律では、人の多いところでクマが目撃された場合、まずは脅かして追い払ったり、麻酔銃などで捕獲したりすると定めている。だが改正案では、クマが人やその所有物に危害を加えそうだと判断されると、警察官らが速やかに射殺することができる。英紙ガーディアンによると、ルーマニアのヒグマの生息数は約8000頭とされてきたが、最近の研究では1万3000頭に上るとの推定もある。ルーマニア政府は個体数を減らすため、狩猟者による計画的な駆除にも以前から取り組んでおり、24年には前年の2倍以上となる約500頭が駆除された。それでも被害を減らすには不十分だとして今回の措置に踏み切った。環境省は「郊外や山間部に住む人々を守る」としている。
(やっと復活した絶滅危惧種のオオカミを100年ぶりに殺処分:アメリカ)
米国カリフォルニア州魚類野生生物局は、地元の牧場主たちからの切実な苦情を受け、4頭のタイリクオオカミを法律に基づいて殺処分するという異例の措置を取った。実に100年以上行われてこなかった対応だ。同局は2025年10月初め、カリフォルニア州のシエラネバダ山脈にあるシエラバレーと呼ばれる地区で、タイリクオオカミのつがいを捕獲して安楽死させた。この地域の牧場主たちからは、多くの家畜に被害が出ていると繰り返し苦情が寄せられていた。同局によると、最終的には「ベイエム・セヨ」と呼ばれる群れの完全な駆除を目指している。カリフォルニア州には、このようなオオカミの群れが合わせて10ほど確認されている。ベイエム・セヨについて言えば、殺処分の前にすでに2頭が死んでおり、残る個体は捕獲して野生動物保護区に放す計画だ。魚類野生生物局のチャールトン・H・ボーナム局長によると、この群れはここ7カ月で少なくとも87頭のウシを殺した。これは、オオカミが200頭以上いるオレゴン州での2024年の被害を上回る数だ。14年前には、タイリクオオカミがカリフォルニア州に戻ってきたというニュースが歓迎をもって伝えられ、現在は50頭まで増えていた。タイリクオオカミは、通常は灰色または黒の体色で、オスの体重は40キロほどになり、ヘラジカやシカといった大型の獲物を狙う。絶滅危惧種に指定されているため、州法と連邦法の両方で保護されている。しかし、ベイエム・セヨに対しては、威嚇、ドローン、24時間パトロールなど、数カ月にわたって試した非致死的手段は効果がなく、ほかの方法はないとの判断に至った。ボーナム氏は、「たいへん残念なことですが、ベイエム・セヨの行動パターンと規模は、長期的な回復計画の支障になると考えました」と述べている。家畜への被害は、カリフォルニア州に生息するほかのオオカミの群れでもときおり発生しているものの、ベイエム・セヨの場合、主な獲物は野生動物ではなくウシだったようだ。米国西部にオオカミを再導入する取り組みは、1995年にワイオミング州のイエローストーン国立公園から始まって30年を迎えるが、このような行動はめったに見られないと、米カリフォルニア大学の生物学者でナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探究者)でもあるアーサー・ミドルトン氏は言う。氏によると、シエラ地方にはイエローストーンのような手つかずの野生環境がないことも問題の一因となっているようだ。ミドルトン氏は、カリフォルニアの10のオオカミの群れを追跡し、捕食活動を分析する「カリフォルニア・ウルフ・プロジェクト(California Wolf Project)」を率いている。カリフォルニア州北部のオオカミは、ロッキー山脈北部地域(ロッキー山脈のうち、米国内にある部分の北半分を指す)から西に移動してオレゴン州に入り、そこから南下してシエラネバダ北部の森林地帯に定着した。しかしそこは、祖先たちが慣れ親しんできた環境とは大きく異なる場所だった。シエラ地方の大半を占める国有林では、獲物となるシカやヘラジカがロッキー山脈北部地域よりも少ない。ヒトも多いうえ、何よりも問題なのはウシの多さだ。オオカミが増えるにつれて、ヒトとの衝突も増えるとミドルトン氏は予測している。この観点からすれば、家畜を守るためのオオカミの駆除は避けられなかったのかもしれない。「この問題に対応したすべての場所で、非致死的手段と致死的手段を組み合わせた対策が取られています。カリフォルニアが新しい時代に入りつつあるということです」。ミドルトン氏はそう話す。ロッキー山脈北部地域に暮らすオオカミは、約2500頭とカリフォルニア州よりもはるかに多く、毎年約100頭が家畜保護のため駆除されている。「ディフェンダーズ・オブ・ワイルドライフ(Defenders of Wildlife)」という野生生物保護団体の支部長を務めるパム・フリック氏は、カリフォルニアではそのような事態にならないよう願っている。「ロッキー山脈北部地域とカリフォルニアでは、環境や生息数が大きく異なります。少なくとも、カリフォルニア州でタイリクオオカミが絶滅危惧種である間は、管理方法も変えるべきです」。フリック氏の団体は、シエラバレーの牧場主たちと連携して非致死的手段によるオオカミの抑止に取り組んでいる。2024年の夏にピンポイントでの抑止策を始めた時点で、群れがこの地域のウシを狙うようになってから1年半が経過していた。若いオオカミは年長のオオカミから家畜を襲う方法を学んでおり、すでに行動パターンができあがっていた。もっと早い段階で行動を起こしていれば、ベイエム・セヨの駆除を回避できたはずだとフリック氏は考えている。それはシエラバレーで検証できることになりそうだ。谷の北部に別の群れの巣があり、若いオオカミは伴侶や自分の縄張りを探して群れを離れることが多いため、シエラバレーに再びオオカミが現れる可能性が高い。この地域で牧場を営みつつ、カリフォルニア牧畜業者協会の会長を務めるリック・ロベルティ氏は、ここ数日、牧場の近くで見たことのないオオカミを目撃しているという。別の群れを離れたオオカミだと考えられる。ロベルティ氏は、国有林に囲まれた巨大な高原盆地であるシエラバレーでは、非致死的手段の効果は期待できないと考えている。サッカー場程度の小規模生産者ならともかく、数平方キロメートル級の牧場では広すぎて手に負えないからだ。氏は、オオカミが悪いとは考えていない。谷を囲む丘や山は、野生の獲物が豊富ではないのだ。「ほかに食べるものがないのはわかります。問題なのは、本当にここがオオカミに適した場所なのかということでしょう」。魚類野生生物局のボーナム局長は、オオカミと共存する方法を探るうえで、シエラバレーの事例から学べることは多いと考えている。「カリフォルニアのオオカミの未来が不透明なわけではありません。オオカミと共存する方法がわかっていないだけなのです」。
(木に登っているクマを発見、吹き矢を使用して捕獲:長野)
クマの目撃が相次いでいる大町市で10日午前、クマ1頭が捕獲されました。クマ1頭が捕獲されたのは、大町市平の大町温泉郷周辺です。クマの目撃情報を受けて現場に駆け付けた警察や市の職員が、木に登っているクマを発見し、10日午前10時前に麻酔銃を使って捕獲したということです。クマは体長がおよそ1.2メートルだということです。付近では、10日午前6時すぎに成獣とみられるクマ1頭が目撃されていました。
(通勤中の車にクマが衝突:宮城)
宮城県川崎町の県道で乗用車とクマが衝突する事故があった。ドライブレコーダーがその瞬間を克明に記録していた。事故が起きたのは11月6日午前10時ごろ。川崎町を走る県道14号線で、通勤中の乗用車が、草むらから突然飛び出してきたクマと正面から衝突した。映像には、車の進行方向左側の草むらからクマが飛び出し、車両と激突する様子がはっきりと映っている。乗用車を運転していた投稿者によると、「10年以上この道を通勤に使っているが、クマを見たのは初めて。早朝ならともかく、午前10時に出てくるとは思わなかった」と驚きを語っている。幸い、運転していた人にけがはなかったという。衝突したクマは、再び森の中へ逃げていったとのことだ。県内ではクマの出没が相次いでおり、今回のように日中に人と接触するケースも出てきている。
(JR新庄駅車庫の居座りクマ、捕獲:山形)
警察によりますと、JR新庄駅の車庫に居座っていたクマは、午後4時ごろ箱ワナによって捕獲されました。けが人などはいません。
(イノシシと乗用車が衝突、運転手にケガなし:新潟)
長岡市で9日午後8時45分頃、女性が運転する普通乗用車とイノシシが衝突する事故がありました。女性にケガはありませんでした。警察によりますと、車の運転手から警察に「イノシシとぶつかりました」と通報がありました。現場は長岡市来迎寺の市道上で、突然体長1メートルほどのイノシシが道路横から飛び出してきたということです。イノシシは車とぶつかった後、付近にある長岡越路体育館の方向に逃げて行ったということです。事故現場から民家まで約200メートルほどの距離であることから、警察は注意を呼び掛けています。
(寺にクマが出没し約2時間半居座る、地元の猟友会らが裏山に罠を設置:岐阜)
岐阜県大野町の寺の駐車場に7日、クマが現れたことを受け、地元の猟友会などが近くの山に檻を設置しました。7日正午ごろ、岐阜県大野町の寺の駐車場に体長およそ1メートルの成獣とみられるクマが出没しました。クマはおよそ2時間半居座った後、山へ戻り、けが人はいませんでした。猟友会などは8日、クマの捕獲に向け、寺の裏山に檻を設置しました。周辺には看板を設置するなどして住民に警戒を呼びかけています。
(「道南ハンターズフェスティバル2025」で鹿肉食べて銃撃って:北海道)
2025年11月8日(土)、「道南ハンターズフェスティバル2025」に行ってきました。道南ハンターズフェスティバルは、道南のハンターたち自身が主催する「食べて・見て・体験できる」ハンターイベント。ジビエ料理の販売、狩猟装備や剥製の展示、射撃体験まで――普段なかなか覗けないハンターの世界を体感できる企画です。
(ジビエ料理で活性化:神奈川)
ジビエ料理で地域の活性化を――。伊勢原市の大山地区で今月から「第4回大山猪鹿(ジビエ)フェア」が開かれている。地区内にある飲食店や旅館の計16店が参加し、しし鍋やシカ肉の竜田揚げといった料理が提供される。関係者は「ジビエをさらに広めて大山をアピールしたい」と意気込んでいる。
(若手猟師2人がジビエの解体処理場計画:岐阜)
郡上市高鷲町の若手猟師2人がジビエの解体処理場の建設を進めている。ジビエ料理専門店を営む西杉山裕樹さん(36)と野生のキノコを採る「キノコハンター」水上淳平さん(33)。猟師や解体処理業者の高齢化が進む中、山の恵みを生かす2人のプロが狩猟できる環境を未来に残そうと立ち上がった。来年3月の開業を目指し、クラウドファンディング(CF)で開業資金を集めている。
(大学生が挑む竹林問題解決アイデア商品:京都)
京都産業大学(京都市北区/学長:在間敬子)経営学部 上元ゼミ(7期生)は、地域課題である「放置竹林問題」の解決と地域活性化を目指すプロジェクト「Bamboo to the Future」を展開。このたび、京都市西京区で開催された『せせらぎシアター2025』に出店し、学生が考案した商品『京都大枝塚原産筍使用 京味新辛 筍鹿そぼろ』を販売しました。京都市内には約660haの竹林があり、その約4割が未管理で景観や生態系に悪影響を及ぼしています。上元ゼミは、株式会社DELICEキョウトとの連携を通じて規格外タケノコの廃棄問題に着目し、活用方法を模索。さらに、京都府内で深刻化するニホンジカによる食害問題にも対応するため、ジビエの鹿肉を組み合わせた商品開発に取り組みました。今回販売した『京都大枝塚原産筍使用 京味新辛 筍鹿そぼろ』は、地域食材を活かし、食を通じた循環型モデルの構築を目指す学生発アイデア商品です。イベントでは限定試食販売も行い、来場者に放置竹林問題を身近に感じてもらう機会を提供しました。
(ジビエ店が犬用おやつ販売:岐阜)
岐阜県高山市のジビエ加工会社「飛騨高山舞地美恵」は精肉段階で廃棄せざるを得ない部分を加工し、犬用おやつを販売している。規格外品のシカとイノシシの肉を活用したジャーキーやふりかけなど5種類ある。
(ジビエの魅力、伝えたい:和歌山)
深い山の中をひた走るとたどり着く、かつらぎ町梁瀬地区にその工房はありました。耳馴染みのない「メツゲライ」という言葉は「肉屋」を意味するドイツ語。扱うのは作物を荒らす害獣といわれる鹿や猪で、それらをおいしい食材に変える〝匠〟が、このジビエ専門食肉工房を営む阪本晃一さんです。──開業したいきさつは?「もともと保育士として働いていた園がシュタイナー教育やモンテッソーリ教育を取り入れており、研修で海外へ。そこで豚や牛の解体から精肉、加工を学べるギルド制度を知り、そっちの道に進みたくなったのが発端です。若気の至りというのもありますが、肉が好きだったというのが大きいですね。そこで退職してドイツに渡り、修業をしながらドイツの国家資格を取得。帰国後に開業場所を探してたどり着いたのが、鹿と猪がバランスよく獲れ、水がきれいなかつらぎ町です。2017年に地域おこし協力隊として大阪から移住しました」。──なぜジビエなのですか?「修業先では有機の餌と放牧で育てた特別な豚を扱っていたのですが、脂の質が野生の猪と似ていることに気づきました。運動量があって自然に乗っている脂がおいしい。日本で作るならジビエだなと。ジビエは性別や季節、環境で味が変わります。おもしろいのが、紀の川の平地と高野山の標高では出産や発情期がずれること。この時期の肉は癖が強くて嫌がられることもありますが、お酒と合わせると意外と相性が良かったりもします。奥が深くて飽きることがありません」。──肉はどうやって入手を?「罠にかかった鹿や猪がいると情報が入るんです。エリアは伊都郡全域と紀の川市、紀美野町、有田川町。仕留めて血抜き、回収、解体まで全部やります。ポリシーは安全かつ無駄に怖がらせることなく穏やかに、素早く処理してあげること。基本的に鹿と猪が中心ですが、たまにアナグマやアライグマなども扱っています」。――こだわりは?「いい状態の肉をいい状態で食べやすく。皆さんがジビエに抱く『食べにくい』というイメージを覆すような、ジビエだからこそのおいしいソーセージを作りたいと思っています。筋は取り除き、弾力があって濃厚なスネやネックは加工用に。使えない部位もペットフードなどに無駄なく活用しています」。
(鹿角から削り出した芸術的な贈り物)
所ジョージがMCを務める「所さんの世田谷ベース」(毎週土曜夜10:00-10:55、BSフジ/FOD・TVerでも配信中)の第450回 「もはや嫉妬だよ。」が11月8日(土)に放送された。所ジョージ的モノの考え方や閃いた遊び、世の中の楽しみ方を発信する同番組。今回は鹿角細工工房の鹿正さんが所に依頼されたあるものを納品しに来るのだが、思わぬ乱入者が現れる。番組がはじまると、世田谷ベースに和服に身を包んだ「鹿角細工工房」の鹿正さんが登場。鹿正は取材がきっかけで所と親交を深めた鹿角細工師で、鹿の角から形を削り出して根付などを作る職人だ。今回は所が敬愛するへの贈り物として発注した「刷毛に空蝉」の根付が完成したということで、納品するために世田谷ベースへやってきたという。設計図をもとに鹿正と所が話をしていると、さらなるゲストが世田谷ベースに登場。近所に遊びに来ていたという“ノリちゃん”ことが「こんちわっ!」と明るい声で乱入し、3人のトークが始まる。差し入れに持って来られた大量の寿司を並べながら、木梨にも鹿正がやってきた経緯について語る…と思いきや「ノリちゃんがいなくなってからゆっくりその辺はひも解いていくから!」といたずらっぽく笑う所だった。木梨は所が鹿正に作ってもらった作品を見たことがあると語り、実際に所の持っている根付を手にして語る。所は「あなた興味ないでしょ!」とツッコミつつも、鹿正と木梨の共通点があるかもしれないとこぼす。撮影時に開催していた木梨の個展に触れた所は、「こんな細かいこと書いてるの!?」と驚くようなことを書いていると告白。鹿正と木梨を交えた3人の会話はさまざまな方向へ展開していく。
(「クマ被害支援りんご入りふぞろい食材おためしセット」販売へ:青森)
食品のサブスクリプションサービスを提供するオイシックス・ラ・大地株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:高島宏平)が展開する「らでぃっしゅぼーや」は、規格外の青果を取り扱うなどして「生産者応援」をブランドの核として掲げています。この度、深刻化するクマ被害に遭う契約生産者「津軽産直組合」(青森県)を緊急支援するため、2025年11月10日(月)より、「クマ被害支援りんご入りふぞろい食材おためしセット」の販売を開始します。
(「熊?」と思ったら「大きめのネコ」でした:宮城)
宮城県多賀城市内の公園付近であったクマの目撃情報について、市は6日、目撃されたのはクマではなく、大きめのネコだったと明らかにした。市によると、県警塩釜署が目撃情報があった多賀城公園付近の防犯カメラを確認し、ネコと判明した。署から市に連絡があったという。ネコの体長などは不明。付近では10月29日夜、同31日朝、今月4日夜にクマの目撃情報が寄せられていた。31日には市職員らが30人体制で周辺を捜索。手掛かりは見つからず、一方で黒ネコを見かけた職員がいたという。市内ではクマの出没例はないとみられる。県内でクマの出没、目撃情報が相次いでいることから、市は引き続き注意を呼びかける。
(県内クマ出没情報:宮城)
宮城県内で5日午後3時から6日午後3時までに、警察が発表したクマの目撃情報は31件ありました。
(クマ出没:宮城)
色麻町によると、11日午後5時40分ごろ、色麻町大原にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
石巻市によると、11日午前7時40分ごろ、石巻市泉町3丁目にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
仙台市によると、11日午前6時ごろ、仙台市宮城野区岩切入生沢にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
白石市によると、11日午後4時50分ごろ、白石市小原町にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、11日午後6時30分ごろ、栗原市築館下宮野岡田にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
仙台市によると、11日午後2時ごろ、仙台市青葉区国見6丁目にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
角田市によると、11日午後4時30分ごろ、角田市毛萱小迫にクマとみられる動物が出没しました。
(クマ出没:宮城)
大和町によると、11日午後4時35分ごろ、大和町宮床下小路にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
宮城県警によると、11日午後3時20分ごろ、名取市ゆりが丘1丁目にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、11日午後4時25分ごろ、栗原市栗駒文字七曲にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
仙台市によると、11日午後0時ごろ、仙台市太白区茂庭馬尾坂南にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
仙台市によると、11日午前6時ごろ、仙台市太白区秋保町馬場竹林にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
南三陸町によると、11日午前8時40分ごろ、南三陸町志津川にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
仙台市によると、11日午前11時ごろ、仙台市泉区紫山1丁目にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
富谷市によると、11日午前11時45分ごろ、富谷市二ノ関田子沢にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
柴田町によると、10日、柴田町入間田中平にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
大河原町によると、10日午後0時ごろ、大河原町大谷原前でクマが出没したような痕跡が見つかりました。
(クマ出没:宮城)
白石市によると、11日午前7時ごろ、白石市越河平滝之沢にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、10日午後4時ごろ、栗原市一迫沼田にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、10日午後4時30分ごろ、栗原市若柳大林外袋にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
富谷市によると、10日午後4時50分ごろ、富谷市富谷宮ノ沢にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
大和町によると、10日午後5時20分ごろ、大和町宮床下小路にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、9日午後0時30分ごろ、栗原市築館萩沢土橋にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
仙台市によると、10日午前7時10分ごろ、仙台市泉区実沢熊野山にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
仙台市によると、9日午前9時30分ごろ、仙台市泉区小角惣膳原にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
富谷市によると、10日午前7時15分ごろ、富谷市富谷落合にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
色麻町によると、10日午前8時30分ごろ、色麻町黒沢北條にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
色麻町によると、9日午後4時20分ごろ、色麻町高根新山前畑にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、9日午後3時ごろ、栗原市鶯沢南郷日向にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
富谷市によると、9日午後4時20分ごろ、富谷市富谷清水沢にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
色麻町によると、9日、色麻町清水地区にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
仙台市によると、9日午前9時40分ごろ、仙台市青葉区国見6丁目にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
利府町によると、9日午前6時45分ごろ、利府町菅谷孝行松下にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
富谷市によると、9日午後1時30分ごろ、富谷市鷹乃杜3丁目にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、9日午後0時20分ごろ、栗原市鶯沢袋向山にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
富谷市によると、9日午後0時30分ごろ、富谷市富谷大清水下にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、9日午後1時10分ごろ、栗原市一迫真坂広川原にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
富谷市によると、9日午前7時45分ごろ、富谷市富谷大清水下にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、8日午後11時55分ごろ、栗原市栗駒猿飛来山根にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、9日午前7時ごろ、栗原市築館薬師4丁目にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、9日午前7時ごろ、栗原市築館薬師4丁目にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
富谷市によると、8日午前11時5分ごろ、富谷市富ケ丘3丁目にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、8日午前11時50分ごろ、栗原市鶯沢南郷日向にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、8日午前10時50分ごろ、栗原市栗駒桜田蛇壇にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
富谷市によると、8日午前8時ごろ、富谷市二ノ関南田子沢にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
富谷市によると、8日午前6時20分ごろ、富谷市石積三合田前にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、7日午後4時50分ごろ、栗原市栗駒中野菖蒲沢にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
富谷市によると、7日午後4時40分ごろ、富谷市明石台10丁目にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
白石市によると、7日午前5時45分ごろ、白石市福岡蔵本石神二番にクマが出没しました。
(サル出没:宮城)
登米市によると、7日午後0時10分ごろ、登米市豊里町竹ノ沢にサルが出没しました。
(クマ出没:宮城)
富谷市によると、7日午前4時45分ごろ、富谷市富谷仏所にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
色麻町によると、7日午前、色麻町大にクマが出没しました。
(サル出没:宮城)
登米市によると、7日午前7時50分ごろ、登米市米山町桜岡鈴根にサルが出没しました。
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(イノシシ狩りの76歳男性、クマに襲われけが:山形)
6日午後1時45分頃、山形県鶴岡市少連寺の山中で、同市の男性(76)がクマに襲われ、頭や腕などにけがをした。意識はあり、命に別条はないという。鶴岡署の発表によると、男性が1人でイノシシ狩りをしていたところ、体長約1メートルのクマと遭遇した。クマに向けて猟銃を3発撃ち、2発が命中したが、向かってきたクマに頭や左腕をかまれるなどしたという。男性は知人を通じて119番し、自力で下山した。県によると、記録が残る1977年以降、冬場の12~3月にクマの人身被害が起きたのは初めて。
(新聞配達中の男性(77)がクマに襲われけが:秋田)
4日未明、秋田市下新城で新聞配達をしていた77歳の男性がクマに襲われてけがをしました。また、4日は秋田市の繁華街や官庁街近い通称「寺町」にある保育園の園庭にクマが出没、隣の施設の職員はクマと「目が合った」と当時の緊迫した状況を振り返りました。秋田臨港警察署の調べによりますと、4日午前3時半ごろ、秋田市下新城岩城にある住宅に新聞配達をしていた77歳の男性が、やぶから現れた体長1メートルほどのクマ1頭に襲われました。男性は右目付近と右手をひっかかれけがをしましたが、その後うずくまって身を守っていたところクマは去っていたということです。男性は会話ができる状態で、自力で病院に行きました。今年県内でクマに襲われるなどしてけがをした人はこれで56人になっています。また県と警察は、自宅近くの山に出かけて、3日遺体で発見された湯沢市川連町の後藤キヨさん79歳について、クマによる被害だと断定しました。クマに襲われて死亡した人はこれで4人になっています。そして4日もクマの目撃が相次ぎました。4日午前7時すぎには、秋田市旭南にある保育園の園庭にクマが出没。園児が来る直前の時間帯に職員が目撃しました。これを受けて、敷地内の入り口すぐ近くまで車で入って登園してもらうなどの対応がとられています。入り口付近に設置された防犯カメラにもその姿が。体長約1メートルのクマが集合住宅などもある方向に進んでいきました。同じ時間帯には隣接する福祉施設の職員もクマを目撃しています。この周辺ではほかにもクマの目撃情報が複数寄せられています。墓参りや買い物で多くの人が訪れる地域。繁華街の通称川反や官庁街に近い場所にも姿を見せたクマ。人の生活圏への侵入が11月になっても後を絶ちません。
(帰宅途中の会社員男性がイノシシに襲われたか、両足や手をかまれ軽いけが:兵庫)
5日夜、兵庫県加東市で20代の男性が動物に襲われてけがをしました。警察はイノシシに襲われた可能性もあるとみています。男性は、頭を抱えてしゃがみ込み身を守りましたが、両足や手のひらを噛まれ、複数のかみ傷が残る軽いけがをしました。襲った動物について、男性は詳しい姿は見ていないと話していますが、警察によりますと、傷の大きさや深さなどからイノシシに襲われた可能性があるということです。警察は周辺を通る人たちに注意を呼びかけています。
(警察庁、ライフル銃によるクマ駆除に着手)
警察庁は6日、人的被害が深刻化しているクマ対策のため、13日から秋田、岩手両県で警察官によるライフル銃を使った駆除に着手すると発表した。他県警の機動隊に所属する銃器対策部隊の警察官を派遣。両県では、ライフル銃を携行する8人ら計16人の警察官が駆除にあたる。応援部隊はライフル銃を撃つ訓練を積んだ警察官で構成され、6日、両県に派遣された。現地警察と合同で、指揮官、自治体との調整役、射撃手2人の4人1組のチームを作る。両県では2チームずつの計16人態勢で活動にあたる。警察官は犬の駆除をしたケースはあるが、クマの駆除は初めて。派遣されたら、最初の1週間でクマの急所や生態を地元猟友会や専門家から座学で教わり、クマを念頭に置いた射撃訓練を実施する。その後、現地で待機して、人の生活圏でのクマの出没情報を受けて急行する。現場での活動は2週間をめどにし、ほかの部隊と入れ替わる。クマは冬眠期を控えており、当面の危険が収まるまで派遣を続ける。銃器対策部隊は通常、人を想定した訓練を実施している。皮下脂肪が厚く、俊敏に動くクマを仕留めるには、専門的な技術が必要で、派遣期間中には、猟友会員らにクマの出没地域に同行してもらい、技能を身につける。警察官による駆除は、自治体判断で発砲できる「緊急銃猟」とは別で、警察官職務執行法に基づく。ライフル銃など特殊銃の取り扱いを定めた国家公安委員会規則では、特殊銃を使える任務は「重要施設の警戒警備」「ハイジャック対処等」「凶悪な犯罪の予防・鎮圧、容疑者の逮捕」と規定されてきた。
(“クマ駆除”ライフル銃使用可能に、国家公安委員会規則を改正)
警察庁はきょう、警察官がライフル銃を使用してクマの駆除ができるよう、国家公安委員会規則を改正しました。来週13日に施行されます。今年度、クマに襲われて亡くなった人はきのうまでに13人に上り、すでに過去最多だった2023年度の2倍以上となり、被害は深刻化しています。警察庁は今週、クマの被害が大きい岩手県と秋田県に担当者を派遣し、自治体のニーズや現状などを調査。聞き取りの結果を踏まえ、警察庁はきょう、ハイジャックの対処などに限定していたライフル銃の使用対象を広げ、警察官がライフル銃でクマの駆除ができるよう国家公安委員会規則を改正しました。警察庁 楠芳伸 長官「本日11月6日から、特に被害の大きい岩手県および秋田県に他の都道府県警察から交代で応援部隊を派遣することといたしております。11月13日にはクマの駆除を開始できる体制を構築したいというふうに考えております」。警察庁はきょう、岩手県と秋田県に他の都道府県警の銃器対策部隊を派遣。運用開始の13日までにクマの習性や急所に関する知識の習得に努めるほか、クマの駆除を念頭に置いたライフル銃の射撃訓練などを実施するということです。施行後は、岩手県と秋田県にそれぞれ、▼スナイパー2人、▼現場指揮官、▼自治体との調整役のあわせて4人のチームを2組ずつ配置し、緊急銃猟が間に合わない場合などには警察官職務執行法に基づいてクマの駆除にあたります。
(自衛隊員15人、クマ対策で秋田入り:秋田)
クマによる人身被害を防止するため、秋田県と陸上自衛隊第9師団(青森市)は5日、クマの捕獲に向けて協定を結んだ。自衛隊が箱わなの運搬などで県内市町村を支援する。同日午後、秋田駐屯地(秋田市)の隊員が鹿角市で活動を始めた。大館市、北秋田市、八峰町への派遣も調整している。支援は自衛隊法100条(土木工事等の受託)などに基づき、〈1〉箱わなの運搬〈2〉箱わなの設置や見回りに伴う猟友会員らの輸送〈3〉駆除したクマの運搬や埋設のための掘削〈4〉情報収集――の4項目。武器による駆除は対象外で期間は11月末までとする。鈴木健太知事は県庁で協定書に署名し、「現場では手が回らないという悲痛な声もある。迅速に調整していただきありがたい」と語った。松永康則・第9師団長は「県民の安全確保のため、役立てるよう活動したい」と応じた。箱わなが設置された場所の付近に残る、クマの足跡(5日、秋田県鹿角市で)=永井秀典撮影鹿角市には陸自隊員15人が派遣され、重さが200キロほどある箱わなを運ぶ力仕事を担うなどした。クマの目撃が相次ぐリンゴ畑近くに地元猟友会の軽トラックで運搬し、荷台から隊員4人がかりで降ろした。箱わなの設置は免許が必要なため、猟友会のメンバーとともに作業を進めた。隊員は箱わなを運ぶ「作業組」と、周囲を警戒する「監視組」、上空から情報収集する「ドローン組」に分かれて支援にあたる。背面に金属製プレートを挿入した防弾チョッキを着て、撃退用スプレーを1本ずつ携行する。さらに監視組の隊員は防護盾と武道の「銃剣道」で使われる木銃(長さ1メートル66)も装備し、クマに遭遇した場合、盾と木銃で威嚇してスプレーを吹きかけて追い払うという。
(自衛隊がクマ対策開始、護身は「木銃」やスプレーで:秋田)
陸上自衛隊は5日、秋田県内で、箱わなの輸送などクマ対策の活動を始めた。クマ被害対策を目的とした自衛隊派遣は異例で、自衛隊法100条などに基づく「民生支援」の形で今月30日まで従事する。秋田県庁では5日午前、鈴木健太知事と陸自第9師団(司令部・青森市)の松永康則師団長が被害防止の活動に協力して対応する協定に署名。午後には、陸自秋田駐屯地(秋田市)の隊員約15人が同県鹿角市に派遣され、クマ用の箱わなを車両で6キロほど搬送し、山間部に地元猟友会が設置するのを支援した。自衛隊は今回、小銃などは携行せず、クマの駆除は実施しない。隊員はゴーグルと防弾チョッキを装備するほか、クマに襲われた際には銃身の長い銃と銃剣を模した「木銃」やクマよけスプレー、超高強度ポリエチレン製の網を放つネットランチャーで対応するという。また、活動中はドローンを飛ばし、周囲の警戒監視を行う。今後は、八峰町や北秋田市、大館市などでの活動も調整しており、猟友会員の輸送や捕獲されたクマの運搬、埋却するための掘削作業なども担うとしている。
(クマ出没急増、初の2万件超え・6000頭捕獲)
環境省は4日、今年度上半期(4~9月)の全国のクマの出没件数は2万792件(速報値)だったと発表した。2024年度同時期の1万5832件を大幅に上回り、統計の残る09年度以降では最悪のペースとなっている。今年度上半期の捕獲数も6063頭(同)と06年度以降、最多だった。環境省によると、警察への通報件数や市町村からの情報などをまとめた出没件数は、初めて上半期で2万件を超えた。件数を公表していない北海道を除く都府県別でみると、最多は岩手の4499件で、秋田4005件、青森1835件、山形1291件と続いた。東北地方だけで6割を超えている。また、捕獲数6063頭(北海道を含む)は24年度1年間の5345頭を超え、人身被害が過去最悪だった23年度上半期の5550頭も上回っている。6063頭のうち、5983頭は駆除されている。秋田では986頭が捕獲されたが、鈴木健太知事は先月の記者会見で、捕獲数は1000頭に達したと明らかにした。県によると、人里での出没が増え始めた6月頃から増えたといい、「危険が生じている以上、上限を超えても対応せざるを得ない」(担当者)という。
(岩手・秋田で警察がライフル駆除へ、特殊銃の使用可能に)
クマの人身被害対策として警察庁は6日、ライフルによる駆除を来週から実施する方針を決めた。ライフルの使用条件を定める内部規則にクマなどの駆除を追加した。被害が深刻な岩手・秋田両県には、危険性が高い事態に出動する専門部隊を設ける。ライフル銃を含む特殊銃に関する国家公安委員会規則はこれまで、ハイジャックや人質をとった犯罪などへの対応を想定していた。6日の国家公安委員会で同規則を改正し、クマを含む危険な鳥獣の駆除を追加した。13日に公布し、即日施行する。岩手・秋田両県警に設ける専門部隊には各地の警察からも警察官を派遣する。専門部隊には計4人のチームを2組ずつ配置。内訳は指揮官と自治体への連絡担当、ライフル銃の取り扱いに習熟したスナイパー2人とする。専門部隊は改正規則が施行される13日から活動を始める予定。活動開始に備え、部隊に入る各警察官はクマの習性についての講習や射撃訓練を受ける。警察によるクマの駆除の根拠法令は警察官職務執行法となる。同法は狂犬や暴れ馬などが出没し危険が生じた場合、警察官が被害防止のため必要な措置を取れると定める。安全を確保するために相当の理由がある場合には武器の使用も認める。人の生活圏にクマが出没した場合、現状は市町村の判断で「緊急銃猟」が実施されている。地元猟友会のハンターが中心となっている。警察が関わるクマの駆除は、ハンターによる対応が難しく住民に危険が及ぶ可能性が高い状況を想定している。実施時には跳弾の危険性がないと確認するなど、周囲の安全性を重視する。警察庁は4~5日に岩手・秋田両県に担当者を派遣し、クマ被害や駆除の実情などを調査した。同庁によると、両県では生活圏へのクマ出没が頻発し、ハンターを含めマンパワーが足りていないという。両県の担当者からは「警察による駆除を迅速に実施してほしい」といった意見が寄せられたという。同庁の楠芳伸長官は6日の記者会見で「地元自治体と緊密に連携し、住民の安全確保を最優先としてクマ被害防止の取り組みを進めたい」と話した。
(警察庁、クマ捕獲実施に向け県職員と意見交換:秋田)
相次ぐクマ被害を受け、政府は警察官によるクマの駆除を検討しています。警察庁の職員が4日、秋田市を訪れ、県内の状況を共有するとともに課題などについて県職員と意見を交わしました。10月30日のクマ対策の関係閣僚会議で木原官房長官は、警察に対し、ライフル銃を使用した駆除の検討、クマの知識を習得し訓練を受けた警察官の確保、装備資材の整備などを求めました。これを受け、警察庁の職員が4日、秋田県の職員に状況を聞き取りました。警察庁生活安全局保安課・保坂啓介課長:「住民の不安の解消に応えるため、引き続き自治体と県警察が連携し、全国の警察においてもクマの駆除に早急に対応していけるように、忌憚(きたん)なき意見をもらえればと思っている」。聞き取りは冒頭だけ公開され、県と県警の連携などについて共有されたほか、県が警察に求めることや警察がライフル銃を使う際の課題などについて意見を交わしました。聞き取りの場で県は、県民の安全確保や銃の使用に伴う二次被害の防止などを求めたということです。一方、警察庁は、ライフル銃による捕獲は「警察官職務執行法に基づいての使用」を想定していて、緊急銃猟とは異なる制度とする方針です。具体的な今後のスケジュールや担当する部署などについては、検討を続けることにしています。また、石原環境相は4日、警察によるクマの捕獲について「ある程度の準備や訓練が必要」とした上で「個人的な思いだが、将来の人口減少を考えると、警察組織において捕獲を行ってもらえたら非常にいいのではないかと」と述べました。
(警察庁がライフル銃でのクマ駆除を検討、県庁で被害の現状を聴取:岩手)
クマによる人身被害が全国で相次ぐなか、警察庁ではライフル銃を使用した駆除を検討しています。自治体からのニーズや現状について聞き取りをするため、11月5日、警察庁の担当者が岩手県庁を訪れました。5日は警察庁の前田勇太警備第三課長らが県庁を訪れて、県の担当者などと対面し、現在の検討状況を説明するとともに、岩手県の現状について聞き取りをしました。警察庁 前田勇太警備第三課長「警察官が市町村による緊急銃猟に協力し、人里に侵入してきたクマを、警察が保有するライフル銃を使用して駆除できるようにしたいと考えている」。全国で相次ぐクマの人身被害を受けて、警察庁では警察官によるライフル銃を使用した駆除を検討していて、この聞き取りは4日の秋田県に続いて行われました。聞き取りは冒頭を除いて非公開で行われ、県からはハンターの人材が不足していることや、実際にクマが出没した際の状況などについて説明があったということです。会談後、警察庁警備第三課の前田課長は「クマが人の生活圏に出没する現状は非常事態で、ライフル銃の使用などについてスピード感をもって検討したい」と述べました。警察庁の担当者は5日にクマが出没した現場の視察も行ったということです。
(クマ駆除のため、自衛隊や警察OBに狩猟免許取得を要請へ)
環境省は、クマの駆除や捕獲に向けた体制強化のため、自衛隊や警察のOBに対し、狩猟免許の取得を要請する方針を固めた。猟友会員やハンターの減少と高齢化が進むなか、銃器の扱いや危機管理の経験がある人材を確保し、現場の負担軽減にもつなげる狙いだ。狩猟免許の所有者でつくる民間団体の全国組織「大日本猟友会」(東京)によると、クマに有効な散弾銃やライフルを扱える「第1種銃猟免許」を持つ会員は1978年度に41万2440人だったが、2024年度に5万6577人まで減少。わなの狩猟免許を持つ会員らも含め、近年は全会員約10万人のうち60歳代以上が6割超を占めるという。9月から市町村の判断で市街地での発砲を認める「緊急銃猟」も始まり、ハンターの負担は大きくなっている。数か月にわたって出動が続いたり、駆除中に負傷したりするケースもある。こうしたなか、北海道恵庭市長らが環境省を訪問。市町村が退職自衛官らをハンターとして任用できるよう財政支援や人員確保を求める声が上がっていた。環境省は具体的な支援策の検討を始めており、「警察官や自衛隊のOBには、年度内に開催するハンター育成研修への参加も依頼する」としている。
(大日本猟友会、クマ駆除での自衛隊の後方支援派遣に「反対」、警察官の銃での捕獲も疑問視)
クマによる被害が各地で続発し、政府の対応が問われている。こうしたなか、全国のハンターが加入する一般社団法人「大日本猟友会」(佐々木洋平会長)が5日、自民党のクマ被害緊急対策プロジェクトチームの会合で、クマ駆除のため自衛隊が派遣されることには「反対」だと表明した。国防がおろそかになるといった理由からだ。また、捕獲しようと市街地でも自治体判断で発砲できる「緊急銃猟」を警察官が行うことにも疑問を投げかけた。複数の関係者によると、同会には狩猟免許を持つ人が加入でき、全国で約10万人の会員がいる。同会の下に都道府県の猟友会や、市町村を単位とした支部猟友会がある。同会は昨年1年間にクマを計約9100頭、今年に入り5000頭を捕獲した。シカやイノシシも年間に100万頭以上を仕留めている。ハンターは、銃を使うたびに2回以上の射撃練習を実施し、身の安全を確保したうえで狩猟に臨んでいるという。佐々木会長はこの日の会合で自民側のヒアリングに応じた。「クマは人を見ると向かってきて、非常に危険。知識も経験も少ない警察官が、一定の研修や訓練を受けただけで緊迫した現場で『緊急銃猟』ができるとは非常に疑問だ」と指摘した。また、自衛隊の現場派遣についても「緊迫した国際情勢のなか、国防を担う自衛隊がクマ対策で箱わなの設置といった後方支援に出動することにも反対」だとする考えを示した。同会は、クマが各地で出没している原因に①ナラなど実のなる木の不作②イノシシの増加で、クマが好物の栗やドングリをイノシシが食べ尽くしている③クマの楽園であるはずの国有林で、スギやヒノキの造林のため、ブナやミズナラといった実のなる樹木が伐採されてしまった④これまでは生肉を食べていなかったツキノワグマの食性が変わり、わなにかかったシカを食べるようになった⑤人の生活圏と、クマの生息域があいまいになった⑥中山間地域で空き家が増え、クマはそこを冬眠場所に利用している⑦メガソーラー(大規模太陽光発電施設)の開発が広範囲で進み、里山が崩壊したことーを順に挙げた。そのうえで、同会は政府への要望を出した。9月1日の改正鳥獣保護管理法の施行で「緊急銃猟」は可能にはなったが、多くの市町村で対応マニュアルの整備が進んでいないことなどから、「いまだに現場は混乱している」「緊急猟銃で生じた損害は市町村が賠償責任を負うが、猟銃を撃った捕獲者の銃刀法上の責任は明確ではない」と前置きしたうえで、4項目の対応を求めた。各項目は以下の通り。1、クマ対策に関わる緊急銃猟の意義や実態、現場に即した組織のあり方、担い手(狩猟者)の育成や確保について早急に検証、検討し、対策に万全を期す。2、緊急銃猟をした狩猟者が、跳弾などで事故を起こした場合に責任が及ばないよう、法改正や補償制度を確立する。3、捕獲者は非常に危険な作業に携わっている。捕獲者との調整や、後方支援の従事者に支払われる報酬などは「専門職待遇」として統一してほしい。4、緊急銃猟はあくまで緊急時の対処療法に過ぎない。適正な個体数の管理や、総合的な野生鳥獣の管理施策、狩猟者の育成のための制度と十分な予算確保が必要。
(クマ対策、北海道東北知事会が国に緊急提言)
北海道東北地方知事会(会長・村井嘉浩宮城県知事)は6日、全国的に拡大しているクマ被害の対策強化を求める国への緊急提言を取りまとめた。自治体への財政支援に加え、捕獲の担い手確保、クマの個体数管理や侵入防止対策の強化を主な項目として盛り込んだ。自衛隊のクマ対策支援を巡っては、活動基準を明確化するよう求める方向性を確認した。今後、関係省庁に提出する。同日、むつ市のプラザホテルむつで、北海道、東北6県と新潟県の知事らが提言内容を議論した。提言では、捕獲の担い手確保に向けて、自治体職員が銃猟を担う新たな枠組みや、麻酔銃の使用要件の緩和を求めた。ドローンや人工知能(AI)を活用した侵入防止・捕獲の技術開発、放任果樹を伐採する制度の運用、定期的なクマの分布・個体数調査など、各種クマ対策への国の関与を訴えた。環境省によると、4~9月のクマ出没件数は岩手県が全国最多の4499件、次いで秋田県の4005件、青森県の1835件と続く。会議に出席した知事からは、クマ被害への危機感を示す声が相次いだ。秋田県の鈴木健太知事は、クマ対策の後方支援で陸上自衛隊が活動している現状を説明。「毎回自衛隊に頼むのは良しとしない防衛省側の姿勢が明らかになった。本当は国として、自衛隊に頼らずに事態をコントロールするのが筋ではないか」と語った。岩手県の達増拓也知事は、北海道・東北地方で特に被害が深刻化している実情を踏まえ「通常の提言ではなく、北海道東北地方知事会の緊急提言として、独立した形で発信してはどうか」と提案し、提言を格上げする方針を申し合わせた。開催地の知事として議長を務めた宮下宗一郎知事は「街にクマが出る恐怖感の中で暮らしている人が、東北・北海道にたくさんいる。関係知事と連携して、緊急提言として国に課題を共有していただくことは大事だ」と強調した。
(クマ対策の新たな対策パッケージ、策定に向け関係省庁が2回目の課長級会議)
東北地方などで相次ぐクマ被害を受けて11月中旬までに取りまとめる新たな対策パッケージの策定に向け、関係省庁の課長級の会議が6日、環境省で行われました。クマ被害対策を話し合う環境省や警察庁など関係省庁による課長級の会議は9月以来2回目ですが、10月末に関係する省庁を増やして閣僚会議に格上げされたことから今回、防衛省や文科省、観光庁の担当者も新たに出席しました。政府は11月中旬までにクマ対策のパッケージを新たに取りまとめる予定で、会議ではその方向性やスケジュールなどについてすり合わせたということです。新たなパッケージは去年4月に策定された現行のパッケージの改訂版になる見通しで、各省庁が新たに書き込む施策を検討しているということです。また、会議では「クマ対策に必要な交付金の確保」やクマの駆除に必要な免許や技術を持つ自治体職員、いわゆる「ガバメントハンターの確保支援」などの要望が各地から出されていることが環境省から紹介されたということです。
(アミューズメント施設敷地内にクマ、緊急銃猟で駆除:秋田)
秋田市は4日、市中心部の旭南地区で目撃されたクマについて、市の判断で銃が使える緊急銃猟で駆除した。秋田市の緊急銃猟は初。市農地森林整備課によると、午前7時10分に市民から目撃情報を受けた警察から市に連絡。9時18分にアミューズメント施設・ラウンドワンスタジアム秋田店の敷地内にとどまるクマ1頭を確認し、緊急銃猟を決めた。建物が近く跳弾の危険を避けるため、麻酔銃を使用。午前10時35分に駆除した。体長1・28メートルのオスだった。
(2件目のクマ緊急銃猟、1頭を駆除:富山)
富山市は5日、同市栗山の国道41号沿いに出没したクマ1頭を「緊急銃猟」で駆除した。市街地での猟銃使用を許可する緊急銃猟で駆除したのは、10月23日に次いで2件目だ。市によると、体長約120センチのメスの成獣だったという。目撃した住民から4日夕に連絡があり、パトロール中の市職員らが5日朝、そばにある農産物直売所の茂みにいるのを確認。市は午前9時22分ごろに緊急銃猟を指示し、約1時間後に猟友会のメンバーが3発を発射した。
(山林で見つかった79歳女性の遺体はクマ被害と断定:秋田)
秋田県湯沢市川連町の山林で3日に遺体で見つかった後藤キヨさん(79)について警察は4日クマによる被害と断定しました。遺体の頭部や両腕には動物のものと見られるひっかき傷やかまれた傷があり、後藤さんの行方が分からなくなった際、周辺でクマの目撃情報がありました。秋田県内で今年クマに襲われて亡くなった人はこれで4人となりました。
(クマ駆除のため、自衛隊や警察OBに狩猟免許取得を要請へ)
環境省は、クマの駆除や捕獲に向けた体制強化のため、自衛隊や警察のOBに対し、狩猟免許の取得を要請する方針を固めた。猟友会員やハンターの減少と高齢化が進むなか、銃器の扱いや危機管理の経験がある人材を確保し、現場の負担軽減にもつなげる狙いだ。狩猟免許の所有者でつくる民間団体の全国組織「大日本猟友会」(東京)によると、クマに有効な散弾銃やライフルを扱える「第1種銃猟免許」を持つ会員は1978年度に41万2440人だったが、2024年度に5万6577人まで減少。わなの狩猟免許を持つ会員らも含め、近年は全会員約10万人のうち60歳代以上が6割超を占めるという。9月から市町村の判断で市街地での発砲を認める「緊急銃猟」も始まり、ハンターの負担は大きくなっている。数か月にわたって出動が続いたり、駆除中に負傷したりするケースもある。こうしたなか、北海道恵庭市長らが環境省を訪問。市町村が退職自衛官らをハンターとして任用できるよう財政支援や人員確保を求める声が上がっていた。環境省は具体的な支援策の検討を始めており、「警察官や自衛隊のOBには、年度内に開催するハンター育成研修への参加も依頼する」としている。
(県猟友会が知事に緊急銃猟に関する要望「猟友会の安全を」:山形)
各地でクマによる被害が相次ぐ中、対策も少しずつ進んでいます。そうした中、きょう、県内の猟友会が知事に対し、9月から運用が始まった「緊急銃猟」の制度を円滑に進めるための要望活動が行われました。県によりますと、今年9月末までのクマの捕獲頭数は585頭と、去年の倍近くにのぼっています。議員からは、河川のヤブの刈り払いなどクマ対策にかかる予算の増額や、県民の暮らしを守る早急な対策を求める声などがあがりました。森谷仙一郎 県議「猟友会の人はここずっと1か月疲弊している。猟友会だけに頼んでいくのは、極めて大変な時にきている」。こうした中、県猟友会に所属するメンバーが知事に対して、クマの緊急銃猟に関する要望書を提出しました。ことし9月から全国的に運用が始まった緊急銃猟は、人の生活圏にクマが出没した場合、安全面などの条件を満たせば市町村長の判断で銃での駆除を許可できる制度です。発砲までの時間が短縮できる一方、人への被害などのリスクが伴うため、猟友会の中では不安の声も上がっているということです。県猟友会 梅川信治 会長「まずは猟友会の会員の安全を私は守らなければいけない。みなさんのために猟友会あげて一生懸命やりたいと思う」県では今後、猟友会のメンバーを対象に緊急銃猟に関する研修会を行う予定だということです。
(クマの早急な対策求める、県政クラブが知事に要望:山形)
各地でクマの出没が相次ぐ中、県議会の県政クラブはきのう(5日)県に対して、県民の安全確保に向けた緊急の対策を求める要望書を提出しました。河川のヤブの刈り払いなど少しずつ対策は進んでいますが、もう一歩、踏み込んだ対策を求めています。県議会の県政クラブは、県内はもちろん、隣県でもクマによる被害が相次いでいることを受け、きのう吉村知事の元を訪れ緊急の対策を求める要望書を提出しました。吉村知事「雪が降るまでの間、あるいは降ってからも冬眠しないで出る場合もあるのかとか、しばらく本当に注視しなければならないと思っている」。要望書は、大きく5つの対策を求めています。主なものとしては、今年9月から運用が始まった緊急銃猟に関して、制度は確立されたものの、発砲に伴う法的責任といった不安についてのケアが不十分なため、不安を解消するための取り組みを政府に求めたり、猟友会に向けた研修会を行ったりすること。また、クマがひそむ可能性がある河川のヤブについては、現在行われている刈り払いに加えさらなるヤブの刈り払いを行うこと、また不要な果樹を伐採しクマが近寄ることのないよう対策を強化することなどを求めています。県政クラブ 木村忠三 代表「もし今自分がクマに襲われたら。自分の子どもたちが、親がクマに襲われた時を考えてみてください。そういうふうな気持ちで対策にあたっていただきたい」。県では現在、猟友会のメンバーを対象とした緊急銃猟に関する研修会を行う方向で調整していて、今後もできることから対策を講じていきたいとしています。
(『総合緊急対策』、不足する“箱わな”確保や“ガバメントハンター”の派遣も検討:宮城)
宮城県は、市町村がクマ対策に追われる中、総合緊急対策を5日に打ち出し、全国で不足する箱わなの確保や“ガバメントハンター”の派遣も検討する考えです。県が発表したクマ総合緊急対策は、市町村を支援するものです。村井知事「箱わなが少ない、箱わなを設置する人出が足りない、巡回する人手が足りない」。箱わなは、全国からの注文殺到で数が不足する中、県が業者に一括発注して市町村に配備する計画です。自治体職員でありながら 狩猟免許も持つ“ガバメントハンター”については、警察官や自衛官OBなどを採用しての派遣を検討しているということです。5日、秋田県に派遣された自衛隊については次のように述べ、現時点で要請する考えはないとしました。村井知事「自衛官は鉄砲を持っているが、狩猟免許を持っていない。箱わなも設置できないし、獣に対して鉄砲を撃つことはできない。民間事業者でもやれるところはやっていくということで、対応できるのではないか」。県では、クマの市街地への侵入経路となる河川については、下草刈りを民間事業者に発注する考えです。この総合緊急対策は、5日午後からの県内すべての市町村担当者が参加した会議で説明されました。そして、担当者からはクマ対策に追われる現状が聞かれました。
(猟友会への「丸投げ」のツケ、町議とのトラブルでヒグマ駆除1カ月超休止:北海道)
後志管内積丹町で、ヒグマ駆除を巡るハンターと町議とのトラブルをきっかけに、地元猟友会が活動を休止して1カ月以上になる。この間、小中学校近くにクマが出没した際も出動はなく、一部イベントが中止になるなど、町民は不安を募らせる。休止が長期化している背景には、駆除などを主導するべき町が、猟友会にクマ対策のほとんどを「丸投げ」してきた構造の行き詰まりがある。
(クマ被害34人、死者過去最多5人:岩手)
岩手県内ではクマの出没が相次ぎ、被害も深刻な状況となっています。2025年4月から9月末までの県内のクマの出没件数は4524件で、年度全体で過去最多だった2023年の同時期より約1000件多い数字です。人身被害も相次ぎ、八幡平市、雫石町、宮古市、北上市など県内各地で9月までに34人がクマに襲われけがをしました。さらに、疑い事例を含めて5人が死亡しており、死者数は過去最多です。被害の状況は次の通りです。山菜採りやキノコ採り中に襲われた人:2人、自宅敷地内で襲われた人:北上市の80代女性、一関市の60代男性、温泉旅館の露天風呂清掃中に襲われ、山林に連れ去られた北上市の60代男性は、過去に例のないケースの被害。こうした事例は、山間部だけでなく生活圏にも危険が及んでいることを示しています。岩手県は、クマに遭遇した際の対処法のひとつとして「防御姿勢」を紹介しています。「防御姿勢」とは、首の後ろで両手を組み、うつぶせになって体を丸める姿勢です。県のホームページでは次の行動を呼びかけています。クマに出会ってしまったら…・走って逃げない、背中を見せない・目を離さず、静かにゆっくり後退する・クマとの間に木や岩を挟むようにする・風向きに注意して撃退スプレーを使用・攻撃されたら両腕で顔・頭をカバーし、体を丸くして地面に伏せて防御。
(クマ対策で組織強化、総勢61人:岩手)
岩手県は5日、ツキノワグマ対策関係部局長会議を初めて開き、6日付で県庁内の組織体制を強化することを決めた。兼務者を含め総勢61人で被害対策に取り組む。従来は17人だった。環境生活部長をリーダーとする組織横断のツキノワグマ緊急対策チームを設置する。関係省庁や市町村との連絡調整役も置く。達増拓也知事は「市町村などと連携しながらこの難局にオール岩手で取り組もう」と述べた。
(「麻酔の吹き矢」の人的態勢強化へ:岩手)
岩手県盛岡市の中心部などにクマが相次いで出没していることを受けて内舘茂市長は、麻酔の吹き矢を使った捕獲について「人的な体制の強化を国や県に要望している」ことを明らかにしました。内舘茂市長「市中心部に出てきていて、吹き矢による捕獲は有効な手段の一つであるという風に考えている。国や県に対して、麻酔の吹き矢の使用による捕獲についての人的な態勢の強化などについて要望をしているところ」。内舘市長は4日の定例会見でこのように述べ、吹き矢を使った捕獲を重視している考えを示しました。麻酔の吹き矢を扱うには「麻酔を調合する資格」が必要で、これまで県内では、盛岡市動物公園の獣医師1人が麻酔によるクマの捕獲を行ってきました。盛岡市内では、2026年4月から10月29日までにクマの目撃や農作物被害などが400件に上っています。盛岡市では市街地でクマが出没した際、自治体の判断で発砲が可能になる「緊急銃猟」について、マニュアルはすでに作成していますが、国と県の補助金の交付申請をして決定を待っている状態です。交付が決まり次第、猟友会と契約を結び、損害保険に加入して、緊急銃猟の態勢をスタートすることにしています。
(クマのエサとなるブナの実、東北5県すべて「大凶作」)
県内ではクマのエサとなるブナの実がこの秋開花時の予想通り2年ぶりに「大凶作」でした。東北森林管理局によりますとブナの実の付き具合を調べる結実状況調査で県内の豊凶指数は2023年に次いで過去2番目に少ない「0.2」となりました。
(シカとの交通事故5千件、8年連続で最多を更新:北海道)
突然飛び出してきて衝突。回避しようとして路肩の木にぶつかる――。エゾシカが関係する交通事故は年間5千件以上。秋から冬にかけて多発する。道の野生動物対策課の担当者はそう話す。10月~11月はエゾシカの繁殖期。動きが活発になるほか、越冬地に移動する時期も重なるため、道路に出ることも増える。活動のピークは日の出や日没前後だ。習性として、気になることがあると、立ち止まって様子をうかがう。アスファルトの上ではひづめが滑りやすくなる。群れで行動し、一頭が飛び出すと、集団が続く。そのため、一度道路に出ると、車が近づいてきても、立ち往生してしまうという。「クラクションを鳴らせば逃げるはず」という考えは甘い。北海道警によると、2024年中に発生した、エゾシカが関係する交通事故は5460件。8年連続で最多を更新している。10月の発生がもっとも多く23.1%、次いで11月が多く15.5%。夜間の発生が全体の8割超。シカが道路を横断しているときに起きる事故が9割を占める。
(クマによる人身被害の未然防止へ、放任果樹伐採に補助金交付へ:青森)
クマによる人身被害の未然防止を図るため、むつ市はきょうから人の生活圏にあるクマを誘引する放任果樹の伐採費の一部を補助します。対象は伐採する樹木の所有者や所有者から委任を受けた人で、1本当たり最大3万円、1回の申請で3本まで伐採や処分にかかる委託料を補助します。申請期間はきょうから来年2月28日までで、申請書や現況写真、伐採に係る経費を確認できる書類などの提出が必要です。【むつ市 山本知也市長】「市街地にある放任果樹を伐採することで、クマを寄せ付けないそういう取り組みが加速していくものだと認識しております」「市でこういう補助があるので、伐採してくださいと、進むような取り組みになればいいなと期待している」。市内では今年クマの目撃が相次いでいて、先月30日時点で前の年の11倍以上の959件、捕獲頭数は前の年の44倍以上の179頭に上っています。
(狩猟解禁日に合わせ適切な狩りをするよう呼びかけ:静岡)
狩猟解禁日にあわせ静岡県内各地でハンターに対し、適切な方法で狩りをするよう呼びかけが行われました。静岡県では毎年11月1日からイノシシやシカの狩りが許可されます。この狩猟解禁にあわせ静岡県は警察や各市町村と協力し、県内7カ所で猟友会に所属しているハンターに対し、許可証やバッジを携帯しているか確かめたほか、わなを仕掛ける際の注意点を伝えました。また、今年懸念されるクマと遭遇した場合の対応については。静岡県県自然保護課 小澤真典さん「走って逃げると追いかける習性があるので、背を向けずにゆっくり後ずさりして距離を取る対応を」。一方、静岡県議会の自民改革会議は、県警に対しクマの駆除に関する要望書を提出しました。全国で相次ぐクマの被害をめぐっては政府が警察庁に警察官によるライフル銃を使用した駆除を検討するよう求めています。要望書では、駆除の制度が整い次第速やかに体制を整備することや訓練を実施することなどを求めました。県警ではクマが出没した際の対応を確認するため、各自治体との訓練を調整しているということです。
(クマに襲われ死亡した人数過去最多となるなか、鳥取は今年クマ出没数が85%減)
東北や北海道などを中心に人がクマに襲われる被害が相次ぎ、もはや災害となっています。毎年この時期は山陰でもクマ出没やクマ被害が相次ぎますが、実は今年、鳥取ではクマ出没が異常に少なくなっているんです。なぜなのでしょうか?全国で相次ぐクマの被害。今年度、クマは特に東北で多くの目撃情報や被害報告が出ていて、クマに襲われて死亡した人はなんと13人。これまで過去最多だった2023年度の6人から2倍以上になる異常事態となっています。山陰でもクマはたくさん出没しているのでしょうか。日野郡鳥獣被害対策実施隊の高野さん、実は今年、クマをほとんど見ていないと言います。日野郡鳥獣被害対策実施隊 高野伸也チーフ「いまこの山陰という広いくくりですけど、この日野郡においては全国ほど多くはないというところです」。ここ江府町の山の中には、クマのエサとなる大量のドングリがありました。日野郡鳥獣被害対策実施隊 高野伸也チーフ「(Q食べるんですか?)食いますね」。例年だとこの時期はクマはエサを求めて動き回り、罠にかかるクマもよく見るそうです。高野さんは、去年4月から12月に6件くくり罠などにかかったあとのクマを見ましたが、今年はまだ1件しか見ていません。去年相当目撃があった夏場も落ち着いていたそうです。東北では毎日のように人がクマに襲われる被害が出ている中、本当に山陰ではクマ出没が少なくなっているのでしょうか…クマは例年、10月から11月にかけて冬眠の前に栄養を蓄えようとエサを探して動きが活発になりますが、鳥取県のツキノワグマの出没件数は去年、10月は77件だったのに対し今年はわずか11件。全国でこれほどクマ被害が話題になる中、鳥取県のクマ出没は去年に比べ85%も減っているのです。こうした状況は島根県側も似ていて、9月のクマ出没件数は去年の3割程にとどまりました。なぜ山陰では今年、クマの出没が極端に減っているのでしょうか。クマは集落の柿の木などにエサを求めて人里に現れることがあり、ドングリが凶作の年ほど、目撃件数が多くなる傾向です。しかし…鳥取県 鳥獣対策課 前田真吾さん「今年に関しては、鳥取県で主なドングリになるコナラとかが豊作だという風に言われています。ですので山の中でエサをしっかり食べているので、今のところ人の生活エリアとかそういった所への出没は低く抑えられているのではないかなと思っています」。鳥取県では、ドングリのなるコナラが去年は大凶作でしたが、今年は大豊作なのです。標高の高い場所にあるブナよりも、標高の低い場所にあるコナラの方が人の生活圏に近いため、出没の影響を受けやすいのだそう。猟友会が感じている箱罠やくくり罠でクマを見かける回数が少ないという状況もここに理由がありそうです。鳥取県 鳥獣対策課 前田真吾さん「エサがたくさんある時というのは、行動圏がかなり狭まるという風に言われていて、(クマが)歩き回る機会が減れば、その分くくり罠とか箱罠にかかる確率というのは減ってくると思う」。ただ、クマは人の行動を避けて、人がいない朝方や夕方、夜間にエサを探すために集落に近づくことが多いため、注意が必要なのが、柿の木といった放置果樹です。ドングリが豊作であっても、柿のように匂いが強く、カロリーが高いエサの味を一度覚えたクマは毎年同じ時期に同じ場所を狙って出てくる可能性があります。放置果樹は伐採するか実を取り除くほか、ペットフードを屋外に放置しない。クマの隠れ場所になる、集落のやぶを刈り取ったり、登山道の草むらに入らないことが対策になるということです。
(クマの管理計画を策定:和歌山)
和歌山県は、ツキノワグマの生息数が増え、人への被害の危険性が高まっていることから、クマの生息域や緩衝地帯、人の生活圏といった地域分けで対策をし、有害捕獲による殺処分も含めた個体数管理をする「県第二種特定鳥獣(ツキノワグマ)管理計画」を策定した。紀伊半島のツキノワグマの推定生息数は、1998年度の調査報告書で180匹とされていたが、昨年度の調査では467匹となった。目撃情報も増加傾向にあり、昨年度は180件あった。これまで生息数が少ないとして保護してきたが、増加して絶滅の危惧が低下した一方、人の生活圏への出没が目立ち、住民への被害発生の恐れも高まっている。そのため、計画では生息地の環境維持や適正な個体数の管理を行い、個体群の安定的な維持や人的被害の防止を図ることを目標とする。具体的には、クマを保護する「コア生息地」、人の生活圏への出没を抑制する「緩衝地帯」、人の生活圏である「防除地域」(農業、水産業など人の活動が盛んな地域)と「排除地域」(市街地や集落内の住居集合地域など)を設定し、地域に応じた対応をする。人の生活圏(防除地域と排除地域)に出没したり、人的被害を発生させたりした問題個体は有害捕獲として殺処分する。緩衝地帯では、クマが出没した場合、付近住民への注意喚起や追い払いなどを実施。クマの目撃情報が例年より多く、秋に大量出没が見込まれる年には、管理捕獲としての殺処分も行う。捕獲上限割合は半島全体の推定生息数の8%以下とするが、上限に達しても必要と認められる場合は有害捕獲する。被害防止対策として、林業従事者や入山者などには鈴やラジオなどの携帯を推奨し、クマ撃退スプレーや携帯電話、無線機の準備、複数で行動するなどの啓発を図る。また、人の生活圏へ誘引する生ごみの処理を適切に行うように啓発したり、作物や養蜂巣箱に執着する個体を生み出さないよう、電気柵の設置や、やぶの刈り払い、見通しを良くするなど、クマが出没しにくい環境整備の指導、啓発を行うことも挙げている。生息地の保護や整備では、特に奥地の育成不良の人工林では、強度間伐による下層植生の回復や針葉樹と広葉樹の混交林化、広葉樹林化などで、生息地の確保に努めるとしている。
(日本郵便、クマ出没で一部で配達見合わせ:秋田)
日本郵便(東京都千代田区)は2025年11月5日、全国的なクマの出没や被害を受け、状況により「一時的に集配業務(集荷・取集・配達)を見合わせる可能性」があると発表した。実際に、6日正午時点で、秋田県内の一部地域で配達を見合わせているという。日本郵便は公式サイトで、「社員の安全を守るため」として、次のような状況のもとでは「一時的に集配業務(集荷・取集・配達)を見合わせる可能性がございます」と発表した。「・クマの出没が確認され、自治体や警察等から立ち入り規制等の指示があった場合・クマを目撃した場合等、集配業務の継続が困難と判断した場合」。近隣にクマが出没している地域については「夕方以降(原則として17時以降)の二輪車による配達業務を見合わせます」とした。そのため、郵便物・ゆうパック等の配達に遅れが生じる場合があるとした。また、配達の際にクマとの遭遇が懸念される場合には、「安全対策のため、お客さまの敷地内への駐車を郵便局からお願いする場合がございます」として協力を呼びかけた。窓口業務についても、クマの出没状況により一時的に見合わせる場合があるという。日本郵便は、「お客さまにはご不便をお掛けいたしますが、ご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます」と理解を呼びかけている。6日にJ-CASTニュースの取材に応じた日本郵便広報宣伝部の担当者は、6日正午時点では、「秋田県内の一部地域で配達を見合わせています」とした。
(自民党クマ対策PT、鹿角森林組合長ら参加:秋田)
自民党は5日、党本部でクマ被害対策を緊急に協議するプロジェクトチーム(PT)の第2回会合を開いた。先月クマに襲われ、腕などを負傷した鹿角森林組合の宮野和秀組合長など、被害が多い地域の関係者3人を招き、深刻さが増す実情を聞き取った。会合は非公開。宮野組合長のほか、クマによる襲撃で計3人が死亡した岩手県北上市の八重樫浩文市長、大日本猟友会の佐々木洋平会長が出席した。
(クマ被害多発、催し中止続々)
クマによる人身被害の多発などを受けて10月以降、各地でイベントの中止が相次いでいる。学校行事やマラソン大会、植樹ツアーなど種類はさまざまだが、いずれも周辺で目撃情報が寄せられたことから、取りやめを余儀なくされた。主催者側は「苦渋の決断」「安全が第一」と話している。宮城県立仙台第一高(仙台市)は全校生徒や卒業生約950人が約35キロを歩き通す「強歩大会」を取りやめた。今年60回目の伝統行事でコロナ禍でも続けてきたが、蘓武康明教頭(55)は「生徒や保護者が楽しみにしており苦渋の決断だった。来年も同じ状況なら中止は避けられない」と困惑した様子で話した。群馬県沼田市では小学校4校でマラソン大会を中止したほか、校外学習なども中止や内容変更となった。市教育委員会は20ある小中学校の保護者に児童生徒を車で送迎するよう求めた。長野県飯田市教委などは「風越山トレイルマラソン大会」を取りやめた。全国から小学生や高齢者ら400人近くが参加予定だったが、同教委の後藤武志さん(55)は「ボランティアの警備員に鈴やラジオを持たせるなどの対策も考えたが、参加者らの安全担保は困難と判断した。安全な運営態勢を検討し、来年の開催につなげたい」と話した。人的被害が深刻な秋田県。大仙市などは「旧池田氏庭園ハロウィンナイト」を中止した。担当者は「夜間でもあり、来場者の安全を第一に考えた。予約してくれた方々がいたのでとても残念」とつぶやいた。北海道北斗市では、今月3日まで八郎沼公園で開催予定だった紅葉のライトアップが中止に。沼に映る紅葉が人気で昨年は約2万3000人が詰め掛けたが、市観光協会の松野憲哉事務局長(63)は「客らの安全が第一と考えた。来場者も増えていたので残念」と落胆した。埼玉県秩父市では16日に予定していた植樹体験ツアーを中止した。親子連れなど30人ほどが参加予定だったが、広報担当の長江豊さん(69)は「全国で人身被害が多発し秩父でも出没情報がある。参加者の安全を守るため関係者と協議して中止を決めた」と肩を落とした。
(駆除は3日連続「今年は異常」、クマハンターの活動に密着)
過去最悪のペースで増え続けるクマの被害。秋田県では、3日だけで、3件のクマによる可能性が高い被害や、遭遇が確認されました。湯沢市で、後藤キヨさん(79)が遺体で見つかりました。顔や腹などに外傷があり、クマにかまれたとみられる痕が複数、あったそうです。人的被害が過去最悪のペースで増えているなか、個体数管理などは、急務となります。しかし、実情は、厳しいものがありました。盛岡市で新聞販売店を経営する稲葉順一さん(68)。配達から戻ったら、すぐに猟友会の仕事。リンゴ畑に仕掛けた罠を確認しに行きます。クマの痕跡がありました。盛岡猟友会 稲葉順一事務局長「いま、一番ひどいのがリンゴ被害。かき入れ時に全滅するところもある、クマ1頭のために」。3連休もクマの駆除に費やしていた稲葉さん。3日朝も1頭、罠にかかっていました。体重が推定50キロのメスです。盛岡猟友会 稲葉順一事務局長「小グマじゃない、成獣。(Q.このくらいでも人を殺せるか)怖いよ。絶対、負ける。負けます」。これで3日連続の駆除となりました。稲葉さんが4月から捕獲したクマは、すでに30頭を超えています。捕獲だけでなく、解体までが業務です。盛岡猟友会 稲葉順一事務局長「クタクタになるのは確か。ただ、今年に限っては例外ですよ。あんなにクマが頻繁に出てくるということはないですから」。ハンター不足は解消されておらず、その負担は増すばかりです盛岡猟友会 稲葉順一事務局長「(Q.ガバメントハンターについては)このままでは、絶対、続かない。安定したお給料をいただけるような。そのほうが駆除活動にしてはいいんじゃないでしょうか」。人数を確保しても、育成は難しいとしています。盛岡猟友会 稲葉順一事務局長「育成するためにはどうしたらいいの?って。昔なら先輩に付いて、いろんな猟を覚えてくるけど、動じる人もいるんですよ。クマを目の前にして吠えられたら。いくら腕が良くても。どうしたらいいんでしょうね」。大日本猟友会によりますと、クマの駆除ができる会員は、1970年代、40万人超えるという時期もありましたが、現在は5万6000人まで減少しています。本来は、趣味で狩猟をする人たちですが、ハンターとして、クマ対策を担っている人が多いというのが現状です。例えば、秋田県のある自治体では、猟友会メンバー77人が自治体の対策チームに所属しています。活動内容は、箱罠の設置・撤去、罠の見回り、捕獲、駆除、解体などです。自治体によってハンターの報酬は異なりますが、秋田県のある自治体では、基本的な手当てとして、1人当たり、年間5000円。これに加えて、見回りや捕獲などで出動すると、1日、2500~3000円が支払われます。さらに、クマを捕獲した場合、実働したハンターのチームに1頭につき1万円が払われます。例えば、ハンター5人で捕獲した場合は、1人2000円ですが、これは捕獲後、解体などの処理作業を行って、初めて支払われる報酬です。処理作業を別の業者が担った場合、捕獲、駆除しても報酬がありません。出動が多い人は、年間100~150日ほどで、年間30万円ほどの報酬を得ているといいます。ただ、見回りなどで使う車のガソリン代や猟銃の維持費などは、ハンターの負担のため、報酬はほとんど手元に残らないそうです。取材に応じた秋田県の自治体は「いまは、お金のためではなく、人の役に立ちたいというハンターの善意に頼っているのが実情だ」と話します。
(獣害のリアルつづったブログ休止、イノシシ駆除で大けが:鳥取)
警察官を退職後に有害駆除などを行うハンターになった鳥取県倉吉市の男性(72)が、日々の生活を発信してきたブログが、2年前に途絶えた。イノシシに襲われて大けがを負ったためだ。ようやくけがのショックから抜け出した男性は「近く再開して獣害を防ぐ意義とともに、危険と背中合わせであることを知ってほしい」と話す。「わなの餌をサツマイモのつるに変えるようにと、先輩猟師からアドバイスされた」「朝早くイノシシに4日連続で水田に入られた。何とかしてほしいとの電話で起こされた」――。ブログのタイトルは「定年後は忙しい」。男性がハンターの重要性を知ったのは、警察官だった2008年頃だ。倉吉署泊駐在所で勤務中の夜、イノシシが梨の木を折っているのを目撃した。スイカの収穫前日に全て食べられた農家の話など、怒りの声を何度も聞いた。多くの人が獣害に頭を悩ませていることを知った。在職中の13年に狩猟免許を取得。翌年に退職し、本格的にハンターとして活動を始め、その「リアル」を伝えるブログを開設した。長い時には原稿用紙10枚分を月2、3回のペースで投稿し、読者は延べ6万~7万人。しかし、23年12月23日を最後に投稿をやめた。その翌日のクリスマスイブ。仕掛けたわなの見回りで午後、倉吉市内のスギ林に入った。空気銃やナイフを手にわなへ向かうと、左前足を挟まれた体重80キロはあるイノシシが暴れていた。「こいつは危険だ」。10メートルほど離れた木の陰から額を狙い、銃を2発撃ったが、倒れる気配はなかった。銃の状態を確認するため手元に目をやった直後、「灰色の霧」が地面をはうように向かってくるのが見えた。「とにかく股関節を守れ」。先輩ハンターの教えを思い出し、太もも内側の動脈をやられないように銃を構えたが、体が宙に浮いた。仰向け(あおむ)に倒れた顔にかみついてきた。両手で必死に顔を殴り、足で体を蹴りつけた。まもなく逃げていったが、額はぱっくり割れ、流血で目の前が見えなかった。右太ももと尻、左ふくらはぎも牙などで負傷し、入院生活は2か月に及んだ。「彼らが本気なら、人間なんてスローモーション。銃を持っていても、近くに来られてしまったら赤子と一緒」と振り返る。しかし、鳥獣による農作物被害はなくならない。大けがをしてもなお、使命感が男性を駆り立て、昨年4月に現場に戻った。「ブログを再開して日常をつづるだけでなく、常に向き合っている『危険』を伝えたい」と力を込める。また、クマが次々と人を襲う最近の状況に、「イノシシも危険だが次元が違う。地域の安全を守るために力を尽くすハンターの気概も理解してほしい」と話す。
(ベテランハンターが警鐘、仕留めるには相当な技量必要)
北海道や東北を中心にクマ被害が相次ぐ中、各自治体は手をこまねいている状況だ。特にやっかいなのはそのスピード。時速50キロ近い速さで走り、木に登ることもできる俊敏なクマを仕留めるのは相当な技量が必要だ。現状は地元の猟友会の協力を要請するしかないが、あくまで民間。ハンターとして15年以上のキャリアがある50代男性が取材に応じ、「早急に国が対策すべき」と指摘した。また、クマが続々と山から下りてこざるを得ない自然環境についても解説した。男性は奈良県在住で、1000頭を超えるイノシシやシカなどの野生動物を駆除してきた。普段はレストラン経営をしながら自治体の要請で定期的に山に向かう。「手当?安いよ。駆除できれば一日数万円。命懸けてるのにね」と笑った。知人にはシカの角で太腿の大動脈を貫かれた者、イノシシにはね上げられた者もいる。いずれも命を失った。関西では先月、観光地の京都・嵐山の近くでクマが出没。「東北や北海道より経験値は少ないので、もしクマが市街地に出た場合に対応ができるかどうか」と緊張が増す。市街地での駆除は特に難しく「クマはとにかく速い。それを射撃で正確に仕留めるのは相当の腕が必要。ハンターも高齢化しており対応が難しい」と語る。本州に棲息するツキノワグマの成獣は時速50キロ近く(100メートル換算で7秒台)の速度で走り、一撃で人間に致命傷を与える力がある。駆除する方も命懸けだ。加えて危惧するのは、クマの行動の変容。危険回避で人間を襲う場合はあるが、襲った人間を山に引きずり込むという行動が頻発する状況は「異常」と語る。「人を襲うことに慣れて、恐怖感を持たない個体が増えている。そういう個体には音を鳴らすなどのクマ対策が逆効果。かえって注意を引く可能性がある」と指摘する。それでもクマと遭遇したら「気配を消してゆっくり後ずさりをして視界からいなくなること」とアドバイスした。なぜ、クマは山を下りてくるのか。男性は「人工林が増えすぎたのが原因」と考える。人工林とはスギやヒノキなどで、高度成長時代に人間が建築木材などの調達のために全国で次々と植林された。そのため木の実や下草など野生動物のエサを生む自然林が減り、山の環境は少しずつ変化した。特にここ数年は各地で過疎化が進み、人工林が伐採されず自然林も激減。「最近、シカが畑でジャガイモの葉っぱを食べてる。そんなの過去になかった。シカが好む青草が山からほとんどなくなり仕方なくだろう」。野生動物にとっても人里に出没しないと生存できない環境となっているが「自然環境の整備は100年かかる。今のところ山を下りるクマは駆除するしか方法はない」と話した。相次ぐ被害の現状に政府も動いた。先月、木原稔官房長官は警察にライフル銃の使用を要請。クマ被害が頻発する秋田県は自衛隊の派遣を依頼している。ただ、クマの駆除には一定の技量が必要で一朝一夕にはいかない。自衛隊の武器使用も法的に困難。現状は民間のハンターと公的機関が協力し合いながらの対応となりそうだ。
(撃ち殺したはずのクマが目の前に…69歳ベテラン猟師が直面した“手負いヒグマとの格闘戦”)
クマ被害に揺れる日本社会。現場では一体何が起きているのか。書籍『 ドキュメント クマから逃げのびた人々 』(三才ブックス)より、北海道のヒグマに襲われた猟師・山田文夫さん(当時69歳)の事例を抜粋して紹介する。2022年7月、役場からの通報を受けて同業者のSさんとクマの出没現場に急行した山田さん。そこで彼らを待ち受けていたのはー。山田さんとSさんの二人は銃を持ち、現場に向かう。道路上では発砲できないため、高くなった道から下のくぼ地へと降り、身をかがめクマに気づかれないよう身を隠した。そこから草を食べている二頭を狙う。距離は約60m。地形は知り尽くしていた。山田さんは牧草地の内側にいる一頭を、Sさんは牧草地の淵にいる一頭に向かって同時に発砲。しかしSさんの弾は外れ、驚いたクマは崖下へと逃げていった。山田さんの弾は狙ったクマの横腹に当たった。クマは一度倒れたが起き上がり、牧草地の淵まで歩いていった。そして、淵ぎりぎりの場所に座り込んだ。「逃げたクマよりは、目の前のほうをやっつけるのが先。その座り込んでいるほうを二人で同時に撃ったら、その反動で崖の下に転がって落ちたんだわ。これがまず、一つ目の誤算さ」崖の高さは6~7mほど。二人はお互い二発ずつ撃ったあと、急いでクマが落ちた地点へと走り、上から下を覗いた。山田さんは地面についた血のり、転がっていった跡のササに血がついていたことから「クマは死んでから転がっていった」と思った。しかし一部分のササ藪がガサガサと動く。「なんだよオイ。動いてるわ!」と、山田さんは動くササ藪から目を離さないようにしながらSさんを崖の上にとどまらせ、崖の中腹まで下りて足場を固めた。「姿が見えたら撃ってやろうと思ってさ。そうしたら、動いていたササが動かなくなってね。あれ? と思ったら、先に逃げていた一頭がどこからか走ってきて、木につつつーって登ったのよ。上にいるSくんが撃ったら、今度はそのクマは滑るようにして木から落ちてきたから、弾当たったかな? と思っているうちに、さっきまでピンポイントで凝視していたクマの居場所を見失っちゃって。これが二つ目の誤算」。しばらく見当をつけてササ藪を見つめるものの、動きはない。「少なくても二発は当たっているし、今度こそ死んでいるな」と思った山田さんは、クマの死骸を確認するため、さらに崖を下りていった。「確かこのへんだったよなぁ」とササ藪を進む。上にいるSさんの「山田さん! 動いているわ!」という叫び声が聞こえたか聞こえないうちに、突然、ササ藪の中から半矢(手負い)のクマが正面から襲いかかってきた。その瞬間、山田さんは仰向けに倒され、持っていた銃はどこかに飛ばされてしまった。クマと目は合っていない。気づいたら鼻先が顔の目の前にあり、クマの開いた口や牙が見えたかと思うと、顎に食いつかれた。実際にはその前に頭を爪で引っかかれ、その傷はかなりの深さだった。「どう噛まれたかなんて、順番は分からん。ただクマとくっついて格闘して引っ張り回されたな。顎にがっつり噛みつかれてたから、下の入れ歯は割れて、口は裂けたしね。目のところも引っかかれてさ。クマの爪痕がまぶたの上と下に残っているんだけど、眼球をえぐられなくて良かったよ。腕や腹も噛まれながら、足で蹴ったり手で殴ったりと抵抗したな」。自身が命がけの格闘を続ける中、Sさんには「来るなよ! 来るなよ!」と叫んでいた。「しつこい! しつこい! いつになったら離れるんだ!」という思いが繰り返し脳裏をよぎった。クマは体重70~80kgくらいで、そんなに大型ではなかったという。Sさんが「うわーっ!」と大声を出すと、ふっと自分の身体からクマが離れて隙間ができる瞬間があった。「これはと思って、空砲を撃ってもらえばもっと離れるんじゃないかと思ってさ『Sくん! 撃ってくれ!』って叫んだのさ。そうしたら『山田さん、弾ないんだわ! 取ってくるわ!』って言って、車まで弾を取りに行っちゃったのさ。あれは参ったな(笑)」。
(「人の味を覚えたクマが…」被害多発に青ざめる専門家)
全国各地でクマによる被害が相次いでいる。今年度のクマ被害による死者数は全国で13人(10月28日時点)と、統計を取り始めた2006年以降で過去最悪に。人を食べる目的で襲った食害のケースも複数報告されている。今年の状況を2年前から予言していた日本ツキノワグマ研究所の米田一彦所長が、東北地方で連鎖的に発生する食害事件を分析。これまで被害が突出していた秋田のみならず、隣県・岩手が“人身被害大国”になる可能性を指摘している。米田氏は1948年、青森・十和田市出身。秋田大教育学部を卒業後、秋田県立鳥獣保護センターや秋田県生活環境部自然保護課に勤務、県庁職員としてクマ対策に当たってきた。86年からは当時被害が深刻だった西日本のクマ調査に携わり、2001年にNPO法人「日本ツキノワグマ研究所」を設立。クマ被害が多発した2年前のENCOUNTのインタビューでは「私は2年後の2025年に、今年以上の大出没が起こると予想しています」と断言していた。50年以上ツキノワグマの生態調査を続ける米田氏は、今年の状況について「明らかに攻撃性が今までとは違う段階に入っています」と分析。クマの出現パターンについて、これまでにはなかった兆候が表れていると口にする「10月上旬頃までは、大きいクマに追いやられた親子グマや、2~3歳の若グマの出没が多い。若グマは一番活発な時期で、人を殺せるほどのパワーはないけど、飛び上がって頭を狙ってくるので重篤なけがに至ることもある。行き場のなくなった親子グマが建物への閉じこもりを起こすのもこの時期です。季節が進み、10月下旬から11月に入ると、次第に大きいクマも里に下りてきて重大な死亡事故が発生するというのが例年のパターンだった。それが今年は、10月頭から死亡事故が起こり始め、それがずっと続いている。これは明らかに異常事態です」。報道を過熱させているのが、各地で報告されている食害被害の実態だ。米田氏によると、過去130年間のツキノワグマによる死亡事故の被害者は、狩猟中の事故を除き、2024年時点で68人。そのうち食害が疑われる遺体は23件あった。今年は13件の死亡事故に対し、食害は4件。中でも、7月4日に岩手・北上市和賀町の民家にクマが侵入し80代の女性を殺害した事件は、最初から人を食べる目的で襲った可能性が高く、これは過去に類を見ない史上初めてのケースだという。「パニックになって逃げ込んだ先で人を襲ってけがをさせることはありましたが、侵入した民家で家人を殺害して食べるというのは過去130年をさかのぼっても初めてのこと。事故以前には、近隣で金属製の保管庫が破壊され中の玄米が荒らされる事件が多発していました。これは偶発的な事故ではないと判断し、自治体は直ちに集落全員を緊急避難させ、オスの加害グマを駆除した。DNA鑑定でも間違いなく加害個体と特定されましたが、不気味なことに、駆除後も玄米の食い荒らし被害は続いたんです」3か月後の10月8日、同じく北上市和賀町の山林で首と胴が離れた遺体が発見。17日には同町温泉施設の露天風呂で、従業員の男性が襲われ亡くなる事件が発生した。遺体にはいずれも食害の跡が認められ、米田氏は今年発生した4件の食害事件のうち、同じ町内で起こったこれらの3件に強い因果関係を感じている。「人の首と胴体が離れることってそうそうないんですよ。2番目と3番目の現場は、直線距離で1.8キロしか離れてない。2番目の被害が、露天風呂の事件の後に駆除されたオスグマによるものと見ることもできます。ただ、そうなると気になるのが、最初の民家の事故との関係です。この3件は攻撃性が非常に似ており、連続性を感じる。ここからは推測ですが、それぞれ事件が親子や兄弟など、何らかの遺伝的関係を持ったクマによるものではなかったか。だとするなら、食害の性質を持った母グマはまだ見つかっていないということにもなります」。残る1件が、10月3日に宮城・栗原市栗駒でキノコ採りに入った4人が襲われ、1人が死亡、1人が行方不明となっている事件。40~50キロの距離があるため、この事件は北上とは別の個体群による可能性が高いが、気がかりなのは行方不明になった女性が約1か月がたった今も見つかっていないことだ。米田氏が懸念するのは、2016年、4人もの犠牲者を出した戦後最悪の獣害事件「十和利山クマ襲撃事件」の再来だ。「クマは人を殺害したあと、遺体を抱きこんでなめたりかじったりしているうちに、味を覚えて食害に至ります。時間がたつほど、人の味を覚えたクマが増える。十和利山の時も食害があり、当時の秋田では遺伝子分析の体制がなかったため、私は徹底的にやらないといけないと発信し、一帯のクマを根こそぎやったわけです。今年、栗駒山系ではブナ科の堅果類が大凶作で山麓での惨禍が続いている。行方不明となった女性の捜索や箱わなによる加害個体の捕獲作業が続いていますが、いずれもまだ有力な手掛かりはありません。行方不明者が見つからないまま、加害グマが野放しになっている状況は極めて危険です」。4件のショッキングな食害事件はなぜ発生してしまったのか。米田氏は、被害が突出して多い秋田ではなく、隣県の岩手・宮城でこれらの事件が発生したことに、強い危機感を抱いている。「被害の多い秋田では、問題行動のある個体を先手を打って積極的に駆除しています。一方、岩手は人的被害が多いにもかかわらず保護的傾向が強く、奥山放獣(殺さずに山に返す)が実施されてきた。宮城も大都市・仙台を含め保護的対策が主流。長野はさらに奥山放獣が盛んで、これまでに推定5000頭を山に放っています。その保護姿勢が強い岩手や宮城で、相次いで重大な死亡事故が起こってしまった。クマに県境はない。殺さない被害対策を長く続けると、近隣の県で被害が増えることも起こり得ます。共存を目指すのは美しい姿勢ですが、残念ながら現状は秋田の方が先進的と言わざるを得ない。岩手は、これから人身被害大国になるのではと危惧しています」。27日には、秋田市雄和の側溝で80代女性とみられる遺体が発見。報道によると遺体は損傷が激しく、5件目の食害を疑われる事例となっている。秋田県の鈴木健太知事は、相次ぐクマ被害に対し自衛隊による支援を要望。例年であれば、さらに大きな被害が増え始める11月以降、クマ問題はどんな局面を迎えるのか。
(死者12人《クマ被害》、山で起きている「残酷な現実」)
「どれだけいるんだ。本当に」――。狩猟免許を持つ俳優の松山ケンイチ氏がYouTubeに投稿した動画「Hunter―なぜ駆除が必要なのか―」で、ハンターたちとの会話の中で、クマについて思わず漏らした言葉だ。森林面積が国土の約7割を占める日本で、クマの大量出没が続いている。人口減少に直面する地域では人の生活圏に侵入し、人とクマの棲み分けが崩れつつある。クマによる人身被害も過去最悪のペースで推移している。原因は、クマの個体数の急増と分布域の拡大に伴い、エサを求めて生活圏に出没しているためだ。エサとなるドングリなどの大凶作に見舞われている東北地方では、クマのそうした行動に拍車をかけている。こうした中、クマの捕獲数(大半が殺処分)は今年度、過去最多だった2023年度の約7700頭(ツキノワグマ)を上回るとの見方も出ている。20年以上クマの生態を研究している兵庫県立大学の横山真弓教授は、2年前に秋田県が特に深刻だったが、今年度は被害が多発している地域が各地にみられると指摘。捕獲数は過去最多を更新し「8000頭から1万頭程度に達する可能性が高い」とみる。秋田県の鈴木健太知事は10月14日、クマの大量出没を受け、「フェーズはもう変わった」と指摘。10月25日には小泉進次郎防衛相と会い、クマの駆除で側面支援を求めた。もはや災害級の状況だ。知事は、同県での有害駆除によるクマの捕獲数が今年度、1000頭を超えていることを明らかにした。大量出没した2023年度を上回るペースだという。実は横山教授は、5年前にもクマの数を減らさないと深刻な事態になると警鐘を鳴らしていた。クマの問題は、2010年ごろから続いている課題だと強調する。もっとも、東日本と西日本とでは状況がまったく違う。西日本では個体数管理を10年前から実施し、個体数の増加を抑えている。一方、「(予算の問題などもあり)東日本では個体数管理が遅れてしまったことが増加の背景としてある」と分析する。個体数管理とは、生態系のバランスを保ちながら、野生動物の調査・保全・捕獲を通じて個体数を適正に保つことで、人と野生動物の棲み分けを図ることである。クマが人の生活圏である市街地や人家周辺、道路に出没するケースが続いている。中には、「こんな所にも出るのか」といった事例も事欠かない。10月には群馬県沼田市のスーパーマーケットに侵入したほか、長野県にある善光寺近辺でもクマが出没した。岩手県では盛岡市の中心部にある岩手銀行本店の地下駐車場に子グマ1頭が侵入。ほかにも、保育園や老人福祉施設にも現れている。横山教授は、老人ホームや保育園では、食事の準備で大量の食べものを煮炊きすることがあるため、嗅覚が優れているクマが臭いをかぎつけて来ている可能性があると指摘する。クマはまず、人間の活動が低下した里山などで放置されていた柿や栗などを食べ、「安全においしく食べられる」と学習した。「5年前くらいから、集落周辺で生活するクマが増加し、学習を重ねるうちに、人間はクマにとって『怖い生き物』ではないと判断している」という。いわゆる「人慣れクマ」と呼ばれる個体で、人間側にも責任がある。環境省によると、クマは今年7月と8月、約7割が人の生活圏で出没している。今年4月から8月末までの出没数は、過去5年間で最多の約1万6000頭となっている。クマが生活圏に入れば当然、人との軋轢(あつれき)が生まれ、事故が起こる。被害にあわなくても、クマが近くにいることで、住人の不安や恐怖は募る。人身被害は9月末時点で108人と被害が大きかった2023年度と同水準だ。死者数は過去最多の12人に達している(10月30日時点)。クマは本来、臆病な動物で、見通しが悪い場所などで、出会い頭に人を襲うケースが多いとされている。だが、最近は、積極的に人を狙って襲うようなケースも出ている。山の中でキノコ取りしている最中に被害にあうケースも相次いで報道されている。横山教授は、キノコ取りで人が森に入ると、「クマは自分のエサ場に部外者が侵入したと認識し、攻撃性が高まる」という。ただでさえ、今年はエサが不足している状況で、人が食べ物の争奪戦に加わることは危険だと指摘する。またクマはドングリなどを好むが、元々は肉食系だという。特定の獲物にこだわらず、環境や状況に応じて、チャンスがあれば何でも食べる「機会的捕食者」とされている。行動が過激化すると、人間も捕食の対象となってしまうこともある。観光シーズンの中、岩手県北上市では旅館の露天風呂を清掃していた男性がクマに襲われ、近くの山林で遺体が発見される痛ましい事故も起きた。横山教授は、これは「たまたまではなく、クマが人を食べるために狙っていたことが強く示唆される」と推測する。クマは聴覚と嗅覚が優れ、鋭いツメと大きな歯を持つ。全身が「筋肉の塊」で、時速40km程度で走るため、人が全力疾走で逃げても、追いつかれてしまう。一方、体の割に目は小さく、視力は弱い。景色が白黒のように見えているという。横山教授は、10年前は年間4000頭も駆除して大丈夫かという懸念があったが、今や7000頭以上駆除しても数が減らないと述べ、「出てくる個体を駆除するだけでは、個体数の管理が追いつかないで、後手に回っている」と語る。そのうえで、数年前から集落周辺で計画的に捕獲を強化していれば、「現在のような深刻な状況にはならなかっただろう」と振り返る。横山教授は、「兵庫県や岐阜県で毎年15%ほど増えることがわかっているため、東北地方はそれ以上かもしれない」と推測する。例えば秋田県でクマの推定母数が5000頭としても1年間で750頭増える。しかし、「一昨年度同県で2000頭以上捕獲しても減らなかったということは、元の数字の5000頭では計算が合わない。8000頭ぐらいいて、毎年1200頭ぐらい増えていると考えるべきではないか」と分析する。横山教授は、「今は完全に人間が負けている状況なので、クマは増え続ける。人間がしっかり対処しない限り、負け続ける」と警鐘を鳴らす。そのうえで、「いったん、数を減らすことをしない限り、こうしたことが2年後にも起きてしまう」と語る。環境省はクマによる人身被害が相次いだことで、昨年4月、集中的かつ広域的にクマの個体数や分布域の減少を図る「指定管理鳥獣」に指定した。保護重視からの転換である。また、今年9月からクマが市街地に現れた際、市町村の判断でハンターが猟銃を発砲できる「緊急銃猟」を導入した。10月中旬に宮城県仙台市で初めて実施された。さらに同省は10月17日、大臣談話の中で「クマの捕獲を含めた個体数管理を一層強化することにより、痛ましい人身被害の防止に取り組む」と明言した。クマは広い行動圏を持ち、食物連鎖の上位に立つアンブレラ種と呼ばれることがある。アンブレラ種とは、その保護が生態系全体の多くの生物を守る重要な種を指す。横山教授も、クマが森にいることは重要だと語る。しかし、本来、低密度で棲息するクマが増えすぎることによって、生態系に悪影響を及ぼす恐れもある。森の中で、争いに敗れたクマ、特にメスが人里に出没するという。横山教授は、「来年の春からは、出没がなくても捕獲を強化しなければ、個体数を減らすことはできない」とし、「まずは緊急的に数を減らし、そのうえで、クマを含む野生動物の個体数管理と被害対策を両輪で進めていく必要がある」と語った。クマは猛獣で人に被害を及ぼす反面、「くまモン」のようにキャラクターとしても親しまれている。動物愛護の観点から殺処分には反対する声も根強い。しかし、人身被害や農業被害を受けている人々の苦難を考えれば、駆除はやむをえない。科学的なデータに基づいた個体数管理を通じ、適正な個体数にすることで、長期的にはクマと人の共存が実現することが期待される。
(「国レベルの抜本対策が必要」)
11月に入ってもクマの出没が止まらない。2日、北海道・札幌市の住宅街では体長約70cmの子グマが5時間以上にわたって徘徊。岩手・大槌町では男性ハンターがクマに襲われ大けが。秋田・湯沢市では山に入った女性の遺体が発見され、かまれた痕からクマの襲撃とみられている。1日からの3連休も相次いだクマの出没。11月もクマ災害が猛威を振るっている。住宅の塀をよじ登る1頭のクマ。体長約70cmの、子グマだ。2日午後2時頃、札幌市南区の住宅街に現れ、5時間以上にわたり、付近を徘徊した。2日午後4時半頃、出動したハンターに駆除された。さらに2日午後0時頃、札幌市の北東、砂川市でも…砂川市の住宅近くのやぶの中に、体長約1.2mのクマが出没し、警戒が続いている。そして、クマ被害から住民を守る立場のハンターまでが被害に遭った。1日、岩手・大槌町の山中で、男性ハンター(75)がクマに襲われた。一緒に狩猟していた人:顔からこの辺まで血だらけで真っ赤だった。男性ハンターは鼻などを引っかかれ、大ケガをしたという。同じ岩手県の西和賀町では2日午前6時半頃、3頭のクマが発見されている。今年度のクマ被害による死者は、過去最多の12人。3日、13人目の犠牲者の恐れがあるという遺体が発見された。秋田・湯沢市で、2日朝「山に行ってくる」と家族に話した後から行方がわからなくなっていた、後藤キヨさん(79)の遺体が山林で発見された。遺体は損傷が激しく、かまれたような痕があり、クマに襲われた可能性が高いとみられている。被害の報告は東北以外でもあった。2日午前11時頃、京都府の京丹後市で、80代の男性がクマに襲われた。現場の近くには、クマが好んで食べる柿の木があった。80代の男性は、柿の木を見ていたところを襲われたという。京都・京丹後市の職員:2024年から出没数が倍近くにまで増加している。人身被害ということになると事態としては重く受け止めております。番組の調べでは、この3連休、東北を中心に長野県や京都府でもクマが確認されている。3日午前3時頃、は山形・南陽市でも監視カメラがクマの姿を捉えた。近くにある小学校では、10月29日にもクマが出没していた。山形・南陽市 白岩孝夫市長:街中に頻繁に現れることになったのが大きな変化。抜本的な対策が国レベルで必要ではないか。災害レベルの異常事態を迎えている、クマ被害。専門家は、次のように注意を呼びかけている。石川県立大学 大井徹特任教授:8月下旬から出没が始まって10月から今(11月)がピークということで、警戒が必要。越冬準備のためえさをたくさん食べるが、主要なえさになるどんぐり類が大凶作で、えさを求めてたくさんのクマが出没。さらに、この季節、極めて危険というのが。石川県立大学 大井徹特任教授:子連れのメスは、子どもを守るために特に攻撃的になるので危険。母親グマに襲われる瞬間を捉えたおととしの映像を確認すると…岩手・岩泉町の山中で、キノコ狩りをしていた男性を、クマが突然襲撃。大声を上げながら木の棒で脅し20秒ほど抵抗するうち、追い払うことができた。男性はこの時、木に登る子グマを見たという。原生林の熊工房 佐藤誠志さん:親子連れで、若い母親クマが襲ってきた。(母グマの大きさ)1m以下だと思う。見たらわかるとおり、力もあるしスピードもすごいので、人間が勝てるものではない。
(「クマだ…!」もし運転中に“見つけた”場合どう逃げる?)
例年、クマの冬眠準備が始まる10月から11月にかけてはクマの目撃情報が増加しますが、2025年は特に深刻な事態となっています。市街地への出没が急増し、人身被害の件数も多発。環境省によると、2025年4月から9月の半年間で、重軽傷者を含むクマ被害者は全国で計108人に上り、これは過去最悪だった2023年と並ぶペースです。さらに、今年度のクマによる死亡者数はすでに9人に達し、過去最多を更新しています。では、クルマを運転しているときにクマに遭遇した場合、どのように対応するべきなのでしょうか。この2025年にクマ被害が急増している背景には、複数の要因が複合的に絡み合っていると言います。一つ目の要因は、「記録的な少雪の影響」です。偏西風の蛇行によって、東北や北海道などで積雪が例年より減り、クマの冬眠期間が平均で10日から14日も短縮しました。また、雪解けが早まったことで、主食の一つであるブナ帯の堅果が発芽・腐敗し、可食性が低下。これらにより、クマが人里周辺へ移動するタイミングと、人間の山菜採りや畑作業といった春作業が重なり、遭遇のリスクを高めたと推定されています。二つ目の要因は、「餌不足の影響」です。東北地方などでは、クマの栄養源であるドングリなどの凶作が報じられており、冬眠を前に餌を求めて人里へ出没する可能性がさらに高まっています。三つ目の要因は、「人に馴れたクマの増加」です。さらにこれらの要因にくわえて、「耕作放棄地の増加」や「高齢化による管理不足」など、人間側の環境変化も、人里周縁部がクマの新たな生活環境となる一因となっています。こうした状況下では、山間地域や郊外の道路を走行するドライバーも、クマとの遭遇は決して他人事ではありません。クマの出没は、冬眠明けの4月と、冬眠前の餌が必要な11月前後に多発する傾向があります。クルマを運転中にクマに遭遇した場合の対処法について、JAF(日本自動車連盟)北海道本部・札幌支部事業課の担当者は過去の取材で以下のように説明しています。「クマを見つけたら、まずぶつからないようにスピードを落とし、クマを回避しつつ警察に通報し情報提供するのが望ましいです。そして何よりも重要なのは、クマを見かけても近寄らないようにすることです」このように、珍しいからといって、クルマを停めて観察する行為は厳に慎むべきなのです。また、北海道のヒグマ対策室の担当者は、クマがクルマに驚いて威嚇することがあっても、「クルマの中にいる限りは安全」であるため、「冷静にその場から離れること」を推奨しています。そして「クラクションを鳴らす行為」はクマを興奮させ、危険につながる可能性があるため避けるべきです。SNSなどの一部で出回っている「バックで逃げてはいけない」という情報については、根拠がないとのこと。さらに、もしクルマを降りていて、歩行者としてクマに遭遇してしまった場合は、目を離さずに静かに距離を空けることが基本。通常、クマも警戒して人間と距離を空けてくれることが考えられますが、大声を上げて逃げ出すとクマを興奮させてしまうため、かえって危険です。そのほか、登山や釣りなどでクマの生息地に入る際には、万が一に備えてクマ撃退スプレーを携行することが推奨されています。クマ撃退スプレーは、もし襲われた際には非常に有効な手段となるでしょう。気温が下がり、紅葉が見頃となる秋の行楽シーズンは、アウトドアレジャーの機会が増えます。しかしクマの出没が増加するのも、この時期です。万が一クマに遭遇してしまった際は、パニックにならず、落ち着いて冷静な対処を心がけることが大切です。
(クマ急増「生息範囲を広げようとする習性+ドングリ不足」)
秋が深まってきて紅葉狩りや登山、キャンプなど山での活動を楽しむ方もいらっしゃると思いますが注意が必要なのが、クマによる被害です。なぜクマの被害が増えているのか、原因と対策について調べました。環境省によりますと2025年度クマの被害で亡くなった方は、10月30日時点で12人過去最多の人数です。人身被害や出没情報も過去最多のペース。また、愛知県内でも2025年度は15件のツキノワグマの目撃情報があります。10月29日には、新城市の山林でニホンジカやイノシシ用のわなにツキノワグマがかかり、興奮状態でわなが外れる可能性があったため、安全確保のために殺処分されました。県によりますと、近年この周辺でのクマの目撃はありませんでした。クマの生態に詳しい東京農業大学・山崎晃司教授に取材をしました。近年クマの出没が増加している背景には、「クマの生息域の拡大」と「活動の長期化」の2つが関係しているといいます。さらに、山里から行動範囲を広げようとするクマたちが人里にも出るようになり、人との遭遇が増えているとのこと。ここ数年はクマの餌になるドングリが不作になっているのも関係しています。山の中にクマの餌が少なくなっていることも要因の1つだといいます。そして山崎教授によりますと、クマが冬眠する時期には個体差もありますが、だいたい11月・12月から3月ごろまで。ただ、近年は気候変動によって冬でも厳しい寒さにならず、冬眠に入るまでが遅くなっています。そのため、活動期間が長いクマもいるということです。山崎教授は「山はクマのいる環境だと思って、遭遇する前提で行動してほしい」と話します。まず山に入る際の対策は、クマの出没情報を山のビジターセンターやキャンプ場に確認する、クマ鈴やクマよけスプレーといった道具を活用すること。山崎さんが特に大事だと話すのは食べ物の取り扱いです。登山やキャンプでは「匂いを発する食べ物は容器に入れて持ち歩く」「食べる際は長時間放置しない」のが鉄則。クマは匂いに敏感な生き物で、信州大学の研究によると3.3キロ先にあるものの匂いを嗅ぎつけて移動したケースもあるほど嗅覚が優れているといいます。クマが食べ物の匂いに反応して近づいてこないよう注意しましょう。また、最近は山の中でなくても、クマが人間の生活圏に出てくる場合もあって心配です。山崎教授は山が近くにある住宅でも注意してほしいことがあるといいます。家の外に食べ物や生ごみ、ペットフードを放置しないこと。特にペットフードはクマが好む食べ物の1つなので必ず片付けをしてください。もし遭遇してしまった場合、まずは落ち着いてクマに背を向けずに静かに後退して距離を取ります。万が一襲われそうな場合は、うつ伏せになり両腕で頭や首を覆って急所を守ってください。クマとの遭遇を避けるための対策、遭遇した時に命を守るための行動を今一度確認しましょう。
(世界でも類を見ない「凶悪で危険な熊の大量発生」が起きているワケ)
東北・北海道を中心に、熊被害が相次いでいる。人々が震えるのは、山中どころか、市街地で襲われるケースが多発していることだ。そもそも熊は「狩りが苦手」で「主食は木の実や樹木、肉食は魚や昆虫が基本」だという生態がある。なのになぜ、人里に近づくようになったか。 近現代の熊被害をまとめた別冊宝島編集部編『アーバン熊の脅威』では、市街地に現れる"アーバン熊"誕生の背景を分析。それによれば、昭和時代、一度は絶滅寸前まで追いやられた熊をはじめとした野生動物は、その後の「熊撃ち禁止令」やハンターの減少などで増加。並行して農作物への食害を及ぼすシカやイノシシを捕まえる「罠猟」を仕掛けたところ、若熊たちがその罠にかかった動物を食べることを覚えたのだという。そして肉の味を知った熊たちは、住宅地近辺の里山にやってきて、ついには「山を捨てる」ようになった。その経緯を同書より一部抜粋、再構成して紹介する。熊の寿命は生存環境によるが、20年から30年とされている。絶滅寸前まで追い詰められた旧世代の「昭和熊」は人間を恐れ、人里を"恐ろしい場所"と認識していた。農作物や家畜を食べたことはなく、その"味"を知らなかったはずだ。だが1989年に熊狩りが禁止となり、熊保護が叫ばれてきた平成期に生まれた熊は、人間を"恐ろしい存在"として認識しなくなった。たとえ人里に降りても殺されずに山へと戻されるだけなのだ。恐れることはない、むしろ人間を次第にナメていったことだろう。人里近い果樹園や農地へと進出した「平成熊」は農作物の"美味しさ"に気づく。また、罠にかかった害獣を食べて肉食化していた熊のなかには、家畜の味を覚えた個体も増えたことだろう。熊は1年半から2年かけて小熊の子育てをする。平成生まれの熊たちは「人間を恐れる必要はない」「罠にかかった獲物は横取りできる」「人里近い果樹園や農地で農作物を食べることができる」といった新たに獲得した特性を小熊に教えていったはずだ。この平成熊から生まれた新世代の熊たちが「アーバン熊=令和熊」となっていくのだ。アーバン熊=令和熊の最大の特性は、「山を捨てた世代」という点にある。たしかに放棄された荒廃山林や里山は野生動物の楽園となった。だが、そこで生きていける数には限度がある。生息数が増えれば、当然、過酷な生存競争が発生する。しかも激増したシカやイノシシとも食糧をめぐって争っているのだ。ドングリ類など食糧の豊富な環境域である荒廃山林や放棄里山は、「熊の楽園時代=平成期」には、経験と肉体を大きく成長させた"成体"の熊が独占してきた。だから平成熊は山を降りる必然性はなかった。しかし令和期に入って生まれた若熊たちは違う。老練な平成熊との競争にさらされる山では"生きていけない"のだ。そして2023年、ついにアーバン熊の存在が誰の目にも明らかになった。若くて、飢えていて、農作物や家畜など人間の食べ物の味を知り、人をまったく恐れずに平然と人を襲う凶暴性と、新たな生息地=楽園を求める強い生存欲求を併せ持った、人間にとって最悪の特性を獲得した新世代熊が誕生していたのだ。それは世界でも類を見ない「凶悪かつ危険な熊の大量発生」と言い換えていい。そんな令和熊の向かう先は、もちろん住宅地=アーバンである。水先案内人は「アーバンシカ」と「アーバンイノシシ」。やはり生存競争に負けた若い新世代のシカやイノシシが住宅地へと進出し、人里や農地を荒らす。それを追いかけるよう熊が街=アーバンへと進出する。そんなサイクルが令和期にはすでに完成していたのだ。既存メディアの多くは、2023年の熊害(ゆうがい)を「ブナの大不作の影響で餌を求めて住宅地に出てきたのだろう」と解説するが、そんな甘っちょろい認識は間違いだとわかる。なぜなら生息環境に優れた里山を根城にした平成熊は、これからも令和熊を次々と出産しては余剰となった若熊たちを都市へと送り込み続けるからである。令和期の熊の生息域は九州を除く全国の都市部へと拡大していき、いずれ都市部での繁殖が始まる。それは人間とアーバン熊の生存競争を意味しているのだ。
(ノコ採りのクマ被害相次ぐ、70代男性は『顔に裂傷』:青森)
きょう午前、十和田市でキノコ採りの男性がクマに襲われけがをしました。秋田県ではキノコ採りの女性が遺体で見つかるなど、クマ被害が後を絶ちません。十和田市などによりますと、きょう午前10時半まえ、十和田市切田の山中で70代の男性が、体長およそ1メートルのクマに襲われました。男性はクマに顔を引っかかれるけがをしました。男性は自力で逃げて警察に通報し、ドクターヘリで八戸市内の病院に搬送されました。命に別条は無いということです。現場は木々に囲まれた十和田市切田にある集落から奥の山です。男性は午前7時に1人でキノコ採りのため山に入り、その3時間後にクマに襲われました。猟友会は午後、現場周辺に箱わなを設置しました。また市は防災無線で注意を呼びかけるなどしています。ことし県内でクマによる人身被害は9件・9人目です。一方、秋田県湯沢市の山ではきょう、キノコ採りに入った79歳の女性が遺体で見つかりました。顔面の損傷が激しく、クマに襲われたとみられています。
(クマ被害、「帰省」への影響は?)
クマの出没が相次ぎ、今年度に襲われて死亡した人はすでに12人にのぼる。昨年度の2倍にあたる深刻な事態だ。とりわけ被害の大きい秋田県では、学校の敷地内などでの目撃も相次ぎ、「玄関をドキドキしながら開ける」と話す住民もいる。子どもの安全確保が大きな課題だが、送迎に追われる保護者の負担も少なくない。県知事は自衛隊の派遣を要請し、現在はその調整が進む。年末年始を前に、クマの存在は帰省の判断にどのような影響を与えているのか。弁護士ドットコムニュース編集部は、県外で暮らす秋田県出身者21世帯に意識を尋ねた。回答によれば、一部の人たちの間では、クマの被害が帰省の判断をするうえで、決して無視できない要因になっていた。「何かできればと思うけれど、何をしたらよいのか分からず心苦しい」。県外に住む人たちも、ふるさとを案じている。回答者の多くは東京都やその近郊在住の30~40代。属性に偏りがあるため、あくまで「一部の声」として紹介する。主な質問は(1)年末年始に秋田に帰省するかどうか、(2)クマ被害がその判断に影響しているか──となる。回答した約半数にあたる10世帯は「クマの被害とは関係なく、もともと帰省の予定はなかった」と答えた。別の用事や旅行などが理由とみられる。一方、「帰省する予定」と答えたのは5世帯。そのうち関東在住の3世帯はクマに不安を感じていた。「クマが冬眠して出没がなくなっていれば安心して帰省できるが、どうなるかわからない。小さな子どもが2人いるので、帰省しても外遊びができないとつらい」(40代男性)東北在住の2世帯は「帰省予定」としつつも、クマへの不安は特に感じていなかった。「秋田に帰らない理由のひとつがクマだ」と明確に答えたのは1世帯だった。「秋田市の実家近く、よく行くプールや温泉などの施設でも目撃情報がある。子どもがいる友人も怖くて外遊びができないと言っている。街中の小学校もクマが出たため、休校中と聞いた」〈東京の40代女性(小学生の子どもあり)〉。「家族や知人が被害に遭うのではないかと不安。安心して外に出られない状況なので、一刻も早く解決してほしい。両親も免許返納を検討する年齢に差し掛かっているが、現状では外を歩けないため、しばらくは車が必要だと思う」〈同女性〉。帰省を「まだ迷っている」と答えたのは、残りの5世帯。そのうち3世帯が「クマ被害が判断に影響している」とした。「秋田市に住む両親と小学生の子どもを会わせる貴重な機会だが、いつも冬に帰ってスキーに行っているのでスキー場にもクマが出る可能性があり、帰省したとしても何もできない可能性があり、迷っている」〈東京の40代男性〉。「千秋公園やスーパーなど実家近くで目撃情報があり怖い」「秋田の方たちが安心して住めるよう、出身者が安心して帰省できるようにどうにかしてほしい」〈同男性〉。回答者の多くが未就学児や小学生の子どもをもつ親世代であり、「子どもとの外遊び」が帰省の目的のひとつであることから、クマの出没が大きな心理的ブレーキになっているようだ。帰省をするかしないかにかかわらず、「クマの被害がその判断に影響する」と答えたのは21世帯のうち7世帯だった。クマの存在は「帰省を中止する」ほどの決定的な要因にはなっていないものの、判断において無視できない懸念材料になっているといえるかもしれない。帰省への影響とは別に、ほとんどの人が秋田に残る家族や友人を心配していた。いくつかの声を紹介する。(すべて秋田市出身の男女)。「父からは『夜間の外出は避けている』『犬の散歩は中止』『買物は車で行く』と聞いています」「市街地でも目撃情報があるくらいなので、『不安があるのなら帰省を延期してはどうか』と母親から言ってもらっている」「姪の通う中学では、ほぼ毎日親への引き渡し下校になり、送り迎えが必要になった。部活動は、中止になることが多い。妹の勤務先の大学病院では、熊による外傷患者が増えて対応に追われている。家族は朝早くや暗くなってからの外出を控えるようになった」「妹の子ども(中学生)の送り迎えが必須になった。前日に柿を採っていた家のすぐ近くにクマがいる写真、動画が共有され、妹の家族および近隣住人も警戒をしている話を聞いた」「ゴミ出しや集積場所の見直し、クマ対策用の堅牢なゴミ箱の設置補助などを検討してほしい」「何かできればと思うけれど、何をしたらよいのか分からず心苦しい。親を東京に呼び寄せたい気持ちもあるが、親の気持ちも尊重したい。ボランティアなどあるなら参加したいです」安心できる日常を早く取り戻してほしいという声が多く寄せられた。「批判の声に負けず、できる限り駆除等の対策をしてほしい」という意見も目立つ。また、「秋田県知事が自衛隊の派遣を求める判断をされたのは適切であると考えております」など評価する声もみられた。このように「今の状況をどうにかしたい」という思いは、県外に住む出身者も同じだ。学校の敷地などに出没するケースが相次ぎ、文科省は10月30日、全国の教育委員会に登下校時などの安全確保を通知した。国交省も、観光客の安全対策に着手する。さらに英国政府は公式ホームページで、日本渡航者に向けて注意を呼びかけており、観光への影響も懸念される。市街地まで活動範囲を広げたクマの駆除、ゾーニングは容易ではなく、長期的な取り組みが見込まれる。秋田県だけの問題ではない。クマの存在を感じながら生活している地域の人たちに思いを寄せ続けたい。
(過去最悪のクマ被害とハンター不足、対策の切り札として期待される「ガバメントハンター」とは)
クマによる人的被害が過去最悪のペースで続くなか、政府は関係閣僚会議を開き、抜本的な対策を急ぐ構えを見せています。そこで急浮上してきたのがガバメントハンター、つまり公務員ハンターです。現在のクマ駆除は地元猟友会のハンターに委託するケースがほとんどですが、猟友会のメンバーたちは高齢化が進み、各地でハンター不足は深刻です。それを補うための存在がガバメントハンターとされていますが、実際はどんな役割を担うのでしょうか。「ガバメントハンター」をやさしく解説します。「ガバメントハンター」という語句が一気に広がったのは、10月30日に首相官邸で開かれた「クマ被害対策等に関する関係閣僚会議」でのことです。石原宏高・環境大臣が対策の1つとして、2025年度補正予算を利用したガバメントハンターの早期育成を掲げ、これを各メディアが相次いで報じたためです。国民民主党は、関係閣僚会議に先立って木原稔・官房長官にクマ対策に関する7項目の緊急要望書を提出。そのなかで「自治体職員等ガバメントハンターを含む捕獲技術者・専門職員の確保・育成を支援する」ことを強く求めました。環境省によると、2025年度のクマによる死者は10月末現在で12人。1年間の記録として過去最悪だった2023年度の死者6人を大きく上回っています。クマの目撃情報についても同様で、8月末までに全国で1万6000件を突破。1年間の数字で過去最多だった2023年度の約2万4000件を大きく上回るペースが続いています。目撃地点も市中心部や住宅街に広がり、人々の不安は高まる一方です。そうしたクマ被害の拡大に伴って鮮明になってきたのが、ハンター不足という現実です。環境省の直近データによると、狩猟免許の取得者は2020年に全国で21万8000人となっています。1975年の51万7000人と比較すると、6割程度も減っていますが、2012年に18万1000人で底を突いたあとは増加傾向にあります。その一方、高齢化の波は隠せません。若い20代の取得者は2006年の2100人から上昇に転じ、直近では1万人目前となっていますが、全体的な高齢化には歯止めがかかっておらず、60歳以上は12万7000人で全体のおよそ6割を占めています。クマの出没地域はそもそも高齢化が進んでいる地方都市が多く、実働可能なハンターの年齢層は全国統計の年齢分布よりもさらに高くなっているとみられます。また、狩猟免許を持っていれば、誰でも猟に参加できるわけではありません。猟期の前に、猟をする都道府県に狩猟者登録を行う必要があります。登録には手数料、狩猟税のほか、3000万円以上の損害賠償能力があることを示す被保険者・被共済者の証明なども必須です。そのため、手続きを経て狩猟者登録を済ませても、ビギナーにとってはハンターの知人などがいない限り、実際に山へ入って経験を積むのは至難の業。そうしたことから、免許を取っても狩猟者登録をしない「ペーパーハンター」が相当数いるとされています。こうしたハンターの人材不足という状況を踏まえ、安定した身分でクマ対策に従事してもらおうというのが、「ガバメントハンターの確保・育成」という考え方です。ガバメントハンターとは、地方公務員の身分を持つハンターのことです。狩猟免許取得者を公務員として採用するか、採用済みの公務員に狩猟免許を取得させるか、主にどちらかの方法で人材を確保していくことになります。日本にはいくつかの先行例があります。皮切りは長野県小諸市で、2011年度からガバメントハンターの仕組みを導入しました。2013年度の日本哺乳類学会・日本霊長類学会合同大会で小諸市農林課が発表した内容によると、同市では2007年に95人いた猟友会メンバーがその5年後には57人にまで減少。年齢の中央値も65歳となり、ハンターの減少・高齢化が大問題となっていました。このため、猟友会の負担を減らしつつ、農作物や人的被害を最小化させる「新たな野生鳥獣問題対策」を構じることにしたのです。ガバメントハンターとは、地方公務員の身分を持つハンターのことです。狩猟免許取得者を公務員として採用するか、採用済みの公務員に狩猟免許を取得させるか、主にどちらかの方法で人材を確保していくことになります。日本にはいくつかの先行例があります。皮切りは長野県小諸市で、2011年度からガバメントハンターの仕組みを導入しました。2013年度の日本哺乳類学会・日本霊長類学会合同大会で小諸市農林課が発表した内容によると、同市では2007年に95人いた猟友会メンバーがその5年後には57人にまで減少。年齢の中央値も65歳となり、ハンターの減少・高齢化が大問題となっていました。このため、猟友会の負担を減らしつつ、農作物や人的被害を最小化させる「新たな野生鳥獣問題対策」を構じることにしたのです。同様のガバメントハンターは、ほかの地域にもいます。リゾート地・トマムを抱える北海道占冠村の農林課林業振興室で働くのは、40代のハンター。もともとは地域おこし協力隊員として占冠村にやってきて、その後、正職員となりました。現在は「野生鳥獣専門員」という村独自の肩書で活動し、必要に応じてクマの駆除も手掛けています。占冠村には2025年度、新たに酪農学園大学大学院を卒業したばかりの男性も、地域おこし協力隊員として着任。「野生鳥獣専門員」を補佐する「調査員」として業務に携わっています。同じ北海道の岩見沢市や三笠市、本州の自治体などでもガバメントハンターの活動実績があります。ただ、多くは「地域おこし協力隊」事業の一環で現地へ赴き、それぞれの自治体で任期付きの会計年度任用職員として働くパターンです。正規雇用の公務員としてハンターを雇い入れるケースはまだまだ少ないのが実態です。ガバメントハンターは、クマ対策の決め手になるのでしょうか。ガバメントハンターの確保・育成といっても、クマ駆除に必要な狩猟用ライフル銃の所持許可には原則、最初に散弾銃の所持許可を得てから10年以上が必要です。ライフルの銃弾は1発で大型獣のクマを絶命させる威力を持っているため、所持するには相応の経験と銃に関する知識・技術が必要とされるのです。それでも、クマ被害が深刻さを増す県や自治体では、「ガバメントハンターの確保・育成」を図ろうという動きが活発になってきました。政府の関係閣僚会議による方針も受け、群馬県では山本一太知事が「野生動物の被害は深刻。知事が率先して狩猟免許をとり、免許取得の機運を高めたい。クマを駆除できる知事を目指したい」と表明。自ら知事ハンターとなり、ガバメントハンター育成の先頭に立ちたいとの姿勢も見せています。ただし、いくらガバメントハンターを増やしたとしても、猟友会との協力関係は今後も絶対に欠かせないでしょう。駆除に失敗し、「手負いのクマ」になったり、行方を見失ったりすれば、危険度は何倍にも増加します。クマの駆除はガバメントハンターだけで完結するものではないのです。とくに住宅地で駆除を行う場合、周囲の安全確保や確実にクマを仕留める必要性などから、クマの習性に熟知した複数のハンターが欠かせません。猟友会の協力がなければ、ガバメントハンターの役割も十分に発揮できないのです。ガバメントハンターを有効に機能させるには、ハンター全体の底上げが欠かせません。野生動物や自然環境に関する学習や、狩猟技術向上のための講習などの機会を増やし、若い世代がこの世界に入りやすくする施策も必要。そして何より、「安すぎる」と言われる手当を引き上げるなど、現在活動中の猟友会ハンターたちに十分報いる制度を整えなければ、どんな対策も実を結ばないでしょう。
(自衛隊出動で“クマ擁護派”が役所に勘違いクレーム)
連日「クマ被害」のニュースが報じられるなか、環境省によると、今年度のクマ被害による死者数は全国で13人(11月5日時点)となり、統計を取り始めた2006年度以降で過去最悪の数字を記録している。事態の深刻さを受け、防衛省は秋田県に陸上自衛隊を派遣し、5日午後から活動を始めたが、秋田県では“クマ擁護派”による苦情の電話があり、業務にも支障をきたしているという。防衛省は5日、秋田県でのクマ対策を支援するために、陸上自衛隊を秋田県鹿角市に派遣した。陸上自衛隊は、さっそく5日午後から活動を開始している。箱わなの設置や見回り、ハンターが捕獲したクマの運搬を行なういっぽうで、武器による駆除は行なわない。しかし、秋田県庁や自治体の役場、猟友会にはこんな問い合わせがきているという。「自衛隊の派遣をすごく誤解されている方が多く、なかには自衛隊がライフルを使ってクマを駆除したり、捕獲したりするのはどうなのかと、“クマ擁護派”による苦情の問い合わせが相次いでいます」(秋田県・行政関係者)。秋田県庁の担当者は、「自衛隊まで出動させるのはどうなのかといった旨の問い合わせは確かに来ています」と認めたものの、「苦情の数や具体的な内容については控えさせていただきます」とした。そのいっぽうで、「ここ1~3週間はクマによる事故が多発し報道量も増加しているせいか、『クマを殺すな』などの苦情電話が多く、業務が止まる傾向にあり、支障が出る場合がほとんどです。訛りなどからして、県外からのお電話が多いなという印象です」と述べた。“クマ擁護派”による苦情は秋田県だけではない。北海道の南に位置する福島町の住宅街で今年7月12日、新聞配達員の佐藤研樹さん(52)がクマに襲われて死亡した。佐藤さんは事故が起きる前に、3回ほどクマを目撃していたという。社会部記者によると、佐藤さんが襲われた事故が起きたのは午前3時前の出来事だった。「襲ったクマはヒグマで、約1~1.5メートルの大きさでした。事故現場には血痕が約30センチ四方に広がっており、現場の至る所にも血が点々とついていました。佐藤さんの遺体は近隣のやぶで見つかり、腹部をひどく咬まれており、全身に爪痕が残っていました。近隣住民は事故当時、悲鳴を聞いており、自宅玄関を出たところでヒグマを目撃。その後、佐藤さんの体を口でくわえ、引きずりながらヒグマは移動したそうです」。さらに佐藤さんを襲ったクマは4年前に町内で女性を襲い死亡させたクマだったことも判明した。同月 18日にこのクマはハンターによって駆除されたという。事故を受け、北海道庁と福島町役場には200件以上の抗議の電話があったという。福島町役場の担当者が語る。「クマを駆除した18日以降、県外の方からの問い合わせ(電話やメール)が急増しました。一番多いのは、『クマを殺すな』といったものです。細かい数字までは集計しておりませんが、1日1~2時間ほどは職員が対応に当たらなければならず、業務に支障が出ていました。苦情の問い合わせは9月まで続き、クマによる事故の報道がされると、福島町で起きた事故の映像が使われたりもするので、思い出したかのようにご連絡を頂くケースもあります」。苦情が来た場合、担当者によると「町民の安心安全を守るための手法なんです」と伝えることを心掛ける。ただ、それでも話が進まないことがほとんどで、「向こうのご意見を一方的にうかがうことになる」と肩を落とす。「あくまで捕獲して山に返しなさいというようなご意見もいただきますが、到底無理な話です。『駆除』するということがやっぱりなかなかご理解いただけないのが実態です。『駆除』という言葉が、相手に悪い印象を与えてしまっているのかなとも感じております」(同前)。いっぽうで北海道庁の関係者によると、今年、北海道庁の関係先に対して、以下のようなメールが送られてきたという。「お前等が熊の駆除をしっかりしないからまた人が殺されたじゃねーかーよ。日本で一番危険害獣の熊との共生なんて出来ないんだってのお前等どんだけバカなんだ? 絶滅させろって種を残したいなら適当に檻の中で管理しろよいい加減にしろって無能集団が!」 (原文ママ)。また、“クマ擁護派”からはこんな電話も受けている(カッコ内はおおよその通話時間)。「なんでもかんでもクマを殺すな。 クマを山に返すべきだ。 里山を復活させるべきだ」(約5分)「動物たちは意味があって生きている。麻酔で眠らせて動物園に送り、 その姿に癒やされるべき。 クマを殺さないでほしい」(約10分)「クマを殺すのはかわいそう。 動物の命を何だと思っているのか。 殺すのではなく、 山へ返せば良い」(同じことを話し続け、約30分)。ある関係者は、「こういった電話はこちらから切ることができません」と苦しい胸の内を明かす。東北地方のある猟友会は“クマ擁護派”の動きについて、こう解説する。「抗議の電話なんて今日始まったことではないですよ。クマの駆除については1980年代から抗議が出始めました。当時は、猟友会に直接訪れて『なんでクマを殺すんだ!』と怒鳴り込んできたりしていましたが、こちらとしても駆除する必要性をきちんと話し、説得していました。現代になって、発信する方法が変わって、『猟友会は自由に動物を殺している』などのデマも広がっているのか、すぐ調べたらわかるのに何も調べないで一方的に匿名で電話や手紙などで抗議してきます。ここ最近では1日10件は必ず苦情の電話がきますが、『まあまたか』という感じで対応しています」。クマによる被害は深刻で、今後も被害者が多く出る恐れがあると見込まれている。役場や猟友会、そして自衛隊もクマの対応に追われる中、さらにクレームの対応にも追われなくてはならないのか。
(クマを「素手で撃退」「おばあちゃんが餌付け」、生成AIで偽動画・SNS拡散)
各地でクマの被害が相次ぐ中、生成AI(人工知能)で作られたとみられる偽の動画がSNSで拡散している。街中にクマが現れたとする出没情報や、遭遇した人が餌付けをしたり、追い払ったりする内容が目立つ。専門家は「クマへの対応について誤解を与える内容で、危険を助長する。注意が必要だ」と指摘している。飼い犬をくわえて逃走。おばあちゃんが畑で果物を与える――。動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」では、クマの偽動画が次々と表示される。記者はティックトックで「熊 動画」と検索し、表示された100本の内容を調べた。少なくとも約6割で、米オープンAI社の動画生成AIで作成されたことを示すマーク「Sora」の表示や、投稿者のプロフィル欄にAIで作成したとの書き込みが確認できた。数十万回再生された動画もあった。ただ、本物の動画かどうか判別しにくい内容もあり、実際はさらに多い可能性がある。クマが出没している具体的な地名を挙げたものもある。秋田県能代市のコンビニで体長1メートルのクマが侵入し、捕獲されたとする動画はニュース映像のような構成。同市農業振興課の担当者は、読売新聞の取材に、該当する事例はないと回答し、「住民が不安に感じることになりかねない。誤った情報をもとに問い合わせがあれば、本来の業務にも支障が出かねない」と困惑する。石川県七尾市の住宅街の路上でクマが現れ、住民が避難するという動画もあるが、同市農林水産課は事実ではないとし、「自治体で公表する出没情報をみてもらいたい」としている。偽の動画の中には、クマを撃退したり、餌付けしたりする内容も含まれている。住宅街でクマに女子高校生が襲われて素手で撃退したり、建物内に入ろうとするのを高齢女性がほうきを使って追い払ったり。また、近づいてきたクマに餌を与える動画も複数あった。生成AIで作成されたとみられる動画のほとんどは10月以降に投稿され、同月下旬以降に急増している。市街地に出没するなどクマの被害が全国各地で深刻化する中、広く拡散されることを期待して遊び半分で動画を制作、公開している人がいるとみられる。クマの生態や対策に詳しい東京農工大の小池伸介教授の話 「偽の動画のように餌付けすることは非常に危険で、クマが人間を恐れなくなる影響が懸念される。クマに遭遇した時は近づかずに逃げ、襲われた時はクマ撃退スプレーを使ったり、首や頭部を守る防御姿勢をとったりすることが重要で、SNSの情報が正しいか複数の媒体で確認する意識を持ってほしい」。
(「捕殺だけでは解決しない」「子グマ殺すな」日本熊森協会が緊急要請)
自然保護団体「日本熊森協会」(本部・兵庫県西宮市)は11月6日、都内で記者会見を開き、北海道や東北などで相次ぐクマの出没を受け、同日付で環境大臣宛てに「緊急要請」とする要望書を提出したことを明らかにした。要望書では、捕殺一辺倒の対策には限界があるとして、被害防除や森の再生など、長期的な視野に立った取り組みの必要性を訴えている。協会は記者会見で「毎日のように人身事故や大変なことが起きていて、私たちも人身事故を止めたいという気持ちで活動しています」と理解を求めた。クマによる被害は深刻化しており、今年度の人身被害による死亡者数はすでに過去最多の13人に達している。地域によっては、イベントの中止や保育園・小学校の送迎強化など、生活や経済活動に大きな影響が出ている。要望書は環境大臣のほか、農林水産大臣にも送付したという。会見には、協会会長で弁護士の室谷悠子さんのほか、北海道、秋田、岩手、宮城、福島の各支部長が出席した。政府は10月30日の関係閣僚会議で、人里に侵入したクマの迅速な駆除に向け、緊急猟銃を実施できる者の拡大措置などの対策に向けて議論が進められた。こうした流れに対して、協会は「捕殺だけでは問題が解決しないことは、これまでの状況から明らかです」と指摘。出没防止、緩衝帯整備、追い払いなどの「被害防除」への予算投入を求めた。クマ出没増加の背景について、中山間地域の過疎化や高齢化による「クマと人との生活圏の近接」に加え、メガソーラー建設などによる森林伐採も要因の一つだとした。室谷さんは、かつてはクマと人との間に自然なすみ分けがあったと述べ、捕殺よりも環境整備が重要だと訴えた。「いくら自衛隊や機動隊を入れて、捕殺し続けても、絶滅寸前まで捕殺しないといけなくなる。長い目でみれば、動物の来ない集落をつくるほうが効果が上がる。人身事故を防ぐためにも防除に予算をと、国にも自治体にも訴えていきたい」(室谷さん)。協会は捕殺そのものに反対しているわけではなく、必要な場合もあるとの立場を示している。一方、SNS上では、「熊森協会が自治体に『クマを殺すな』などのクレームを入れている」といった投稿も見られる。こうした指摘に対して、室谷さんは「日本熊森協会が『自治体に連絡してください』という呼びかけをしているなどの事実はない。把握している限り、うちの会員がどこかに電話をかけて、ものすごく困った事態になっていることはない」と否定した。同協会の会員は、2023年ころの2万人からゆるやかに増え、現在は約2万1000人を数えるという。会見では、北海道や東北の支部長らが現場の状況を報告し、捕殺偏重の現状に疑問を投げかけた。「(ゴミなどがクマを寄せ付けているとして)近づけてクマを呼び出しているのは私たち」「呼ばないことが大事。呼ばないイコール人的被害にならない」(北海道支部長の鈴木ひかるさん)「2023年にも大量出没があり、推定生息数の半数が捕殺されたが、現在も状況はよくならず悪化し、当時よりも早いペースで捕殺が進んでいる」(秋田県支部長の井阪智)「子グマを殺すのは人道的にも問題。クマだから殺してよいという風潮が広がるが、子グマに手をつけるのは間違っている」(岩手県支部長の東淳樹さん)。
(クマハンター「副議長トラブル」、当事者が明かす信じられない暴言:北海道)
クマと人間の関係は戦争状態に入ったと言っても過言ではない。過去最悪の死者数を記録して「クマ対策」は待ったなし。大慌ての政府は閣僚会議を開き本気度をアピールするが、駆除現場では人間同士のトラブルが見え隠れ。先行きに危うさを感じてしまうのだ。クマとの戦いの最前線に立つハンターには、例年以上に負担がかかっているというが、ついには彼らが“ストライキ”を起こす騒動まで発生している。北海道の日本海側に位置する積丹(しゃこたん)町では、クマの駆除でハンターが不当な扱いを受けたとして、猟友会が1カ月強も役場からの出動要請を拒否し続けているのだ。この間、町内ではヒグマが小学校などに出没を続けていたが、役場はハンターに駆除を要請できていなかった。出動拒否の事実を、町は議会を通じて町民に説明していなかったことが発覚。解決に動かない役場へは爆破予告が来る始末で、今月1日からの町主催の文化祭が中止に追い込まれた。ことの発端は9月27日、積丹町議会で副議長を務める海田一時氏(74)が、ヒグマ駆除で出動した猟友会のハンターたちとトラブルを起こしたことだった。「あの日は、町から“海田副議長の自宅敷地内に設置された箱わなでヒグマが捕獲された。殺処分してほしい”との要請があったんです」そう明かすのは、現場に立ち会った男性ハンター。「駆け付けたハンター9名に対して、副議長は“こんなに人数いらないだろ”と言ったんです。それならとわれわれの仲間の一人が“これからクマを殺処分して箱わなから引っ張り出しますから、一緒にやってみませんか?”と答えたわけです」。生け捕りにされたヒグマは、道内でも大物の部類で体重が284キロもあった。少ない人数で処理できないのは明らかだったが、それを理解できない副議長は言い返してきたという。「彼は“誰にモノを言っているんだ”と激高して“議会の予算を削って辞めさせてやる”“大勢いるのは金がもらえるからだろう”などと怒鳴り始めました」(同)。ハンターたちにとって、“暴言男”に付き合っている暇はなかった。「目の前にいるヒグマは活発に動いていました。箱わななど簡単に破壊する力を持っているので仕留めるまでは時間との勝負。ハンターは銃刀法上、周囲に人がおらず跳弾の危険がないなど、安全が確保された環境でなければ発砲できません。“お願いですから下がって”と言っても、副議長は“俺を誰だと思っている”などと大声でわめいていた。なんとか離れてもらって、役場の職員さん指導の下で無事に発砲。仕留めることはできましたが……」(同)。もともとこの副議長は、以前からハンターに言いがかりをつけてくる存在だったとか。「もう何年も前から、彼は狩りの現場に勝手に現れては“お前らは下手くそだ”などと誹謗中傷を繰り返してきた。ずっとわれわれは嫌な思いをしていたわけです。これまでは町から要請があれば、仕事を中断して出動してきました。もともとハンターは忙しないので、会社をクビになると揶揄されるほど。特に今年は出番が多くて疲れ果てています。そもそも義務でもなければ仕事でもない。ボランティアとして協力してきたので、町にお金を要求したこともありません」(同)。地元テレビに暴言の有無を問われた副議長は、“俺は言っていない”などと主張しているが、ハンターたちからすれば問題の本質はそこではないという。「今後も副議長が勝手に現場に現れるのなら、われわれは安全に活動できない。町が対策を講じてくれるまで、猟友会として協力を中断することにしたのです。報道されているように怒りに任せて『出動拒否』しているわけではありません」(前出のハンター)ある町議が話を継ぐ。「議場の控室で副議長本人は“俺は悪くない”と釈明していましたが、過去の議会で彼は“町外のハンターに予算が使われることは情けない”と言っていた。町のことは町でやるべきと考えていた節があるのですが、今年はヒグマの出没が多い。われわれはハンターさんに助けてもらわないといけない立場ですから、町民からも“早くなんとかして”という声が上がっています」。
(ヒグマ襲撃事件、“地獄絵図”の一部始終:北海道)
先月末から住宅地でクマが人を襲う悲惨な出来事が全国で相次いでいる。ついには北海道が初めてとなる「ヒグマ警報」を発出。ことの発端は、ヒグマが深夜に新聞配達員を襲った死亡事故だった。第一通報者が見た地獄絵図は、もはや対岸の火事とはいえないのだ。登山や釣り、山菜採りなどで山林に入った人間を襲うならまだしも、住宅地で普通に暮らす人間がクマの餌食になる物騒な出来事が、立て続けに起きている。死亡事故を受けて、北海道は2022年の制度創設以来初めて「ヒグマ警報」を発出した。住民や観光客に警戒を呼びかけるもので、対象地域は道南にある福島町の全域だ。人口は約3300人。かの横綱・千代の富士の故郷でもある港町には、かつてない緊張感が漂う。町内の三岳(みたけ)地区で今月12日、ヒグマに襲われた新聞配達員の佐藤研樹(けんじゅ)さん(52)が、変わり果てた姿で発見された。草むらに隠されるように倒れていた被害者の体には、腹部を中心にかまれた痕跡があった。襲撃現場は、役場や交番、消防署のある町の中心部から1キロ圏内にある住宅地。周辺には学校や介護施設、スーパーやコンビニもあって車の往来も多い。「人間の呻き声、“うわぁ~”というような悲鳴が聞こえて、なんだべと思って玄関の扉を開けたら目の前にヒグマがいた。距離は2~3メートル。怖かったよ」。そう振り返るのは、警察への第一通報者となった笹井司さん(69)である。「最初パッと見た時は黒い塊しか見えず、クマがいるだけだと思った。だけどもよく見れば、クマの体の下に人間の腕らしきものがあって、たまげた。人に覆いかぶさっていたんだ。自分が大声を上げてもクマは振り返りもしない。それで警察に通報したんだ」(同)。携帯の履歴を見せてもらうと、110番は午前2時53分に発信されていた。「通報の最中、クマは佐藤さんの体を口でくわえた格好で、あっという間に草むらの方へと引きずり込んでいった。ものすごいスピードだったよ」(笹井さん)。その後の現場検証で、クマは遺体が発見された草むらまで約100メートルもの距離を引きずっていたことが分かった。体長1.5メートルほどのヒグマとみられる。第一通報者の隣人・柏崎進一さん(53)は、大きな物音で目が覚めたと明かす。「叫び声が聞こえて、何事かと家の2階にある窓から外を見たらクマと目が合った。恐怖ですぐには体が動かなかったですね。玄関に置いてある金属バットを持ち外に出たけど、クマと戦うのははばかられました。襲われた人は、クマの攻撃を払い除けようと必死に体を動かして、抵抗しているように見えました」。そんな被害者に助太刀するかのごとく、一匹の白い野良犬が現れたという。「ワンワンと吠えながらクマに飛びかかったのですがね。クマはフンッとばかりに腕で犬を一撃して吹き飛ばしてしまいました。クマが通った塀や道の上には血が飛び散った跡がついていた。近所の人から、佐藤さんの靴や靴下が方々に落ちていたと聞きました」(柏崎さん)。前出の笹井さんも、「玄関前に敷いた砂利は赤く染まり、血痕が30センチ四方に広がっていた。通路脇の塀にも点々と血が付いていたね。あの日、俺がコンブ漁の手伝いに行くため準備している時に、玄関先で自転車のスタンドを立てる音が聞こえた。ああ、新聞を配りに来てくれたんだと思ったら、人の叫び声が聞こえて……。ポストにはちゃんと新聞が入っていたから、佐藤さんはウチに配ってくれた後、襲われてしまったんだよ」。被害者の勤め先「なりた新聞販売所」の成田雅人所長(47)によれば、「佐藤さんは20年近く勤めて、大雨や大雪の日でも休まず新聞を配達してくださった。亡くなる数日前、彼が自宅の近くでクマを見たと言っていたので、気を付けるようにと伝えていたんですが……」。そして住宅地を襲うクマは北海道だけではない。福島町の凄惨な死亡事故から1週間ほど前の今月4日、岩手県北上市和賀町では、高橋成子(せいこ)さん(81)が、自宅の居間で血を流し亡くなっているのが発見された。
(クマに襲われた女性が死亡、近隣住民は「たやすく侵入できたんじゃないか」:岩手)
先月末から住宅地でクマが人を襲う悲惨な出来事が全国で相次いでいる。ついには北海道が初めてとなる「ヒグマ警報」を発出。ことの発端は、ヒグマが深夜に新聞配達員を襲った死亡事故だった。第一通報者が見た地獄絵図は、もはや対岸の火事とはいえないのだ。さらに、北海道での凄惨な死亡事故から1週間ほど前の今月4日、岩手県北上市和賀町でも、クマが人を襲う事故が起きていて……。福島町の凄惨な死亡事故から1週間ほど前の今月4日、岩手県北上市和賀町では、高橋成子(せいこ)さん(81)が、自宅の居間で血を流し亡くなっているのが発見された。遺体には鋭利な爪による引っ掻き傷があり、室内にはツキノワグマのものと思しき足跡が残っていたという。近隣住民に聞くと、「この辺りの人たち、特に高齢者は玄関の鍵をかける習慣がない。開けっ放しになっていたので、クマはたやすく侵入できたんじゃないか。今年のように至る所でクマの目撃情報があるのは初めてだし、人を襲うなんて聞いたことがない」。地元の和賀猟友会・鶴山博会長(76)の話。「家に上がったクマが人に危害を加えるなんて前例がない。ましてや亡くなるのは想定外。6月下旬、住宅の小屋に侵入したクマが保管してあった米を食べたということがあった。それ自体も珍しく、大変だと言っている矢先の出来事でした」。高齢女性の死亡事故から1週間後、クマ1頭の駆除に成功した。「クマが隠れていた小屋の中は、破られた袋から米が出て散乱していました。外壁にはクマの足跡がついており、地面から1メートルほどの高さにある窓枠に手をかけ、よじ登って中へと入ったのでしょう。実際その窓からクマが出てきて、警官やハンターを避けるように水路へ入って行った。ちょうど足がもつれた感じになったので、ハンターが狙って撃ちました」(同)。翌日にはもう1頭駆除された。ほっと一安心したのも束の間、今でも同地域ではクマの目撃情報が絶えない。現地ではワナを設置するなどして警戒を続けている。「本来クマは人間を怖がるはずが、お構いなく住宅地まで出てくる。そんなクマが増えている状況です」。とは、岩手大学農学部准教授の山内貴義(きよし)氏だ。「2年前の秋はクマの餌となるドングリの大凶作で、親子連れや若い個体が人里に降りてきた。人間の住むエリアには、畑の野菜や果物、家畜の餌まで食べ物が豊富にある。それを学習して人慣れしたクマが増えているのかもしれません。街中での出没が増えれば人と接触する確率も高まり、死亡事故が増える可能性はあります」。人間とクマの危うい関係は、新たな局面に入ってしまったようだ。
(そもそも自衛隊の「89式5・56mm小銃」でクマを駆除するのは至難のワザ)
秋田県の鈴木健太知事は10月28日、防衛省で小泉進次郎防衛相と面会した。秋田県は相次ぐクマの出没と被害に悩まされている。鈴木知事は「クマ問題が長期化し、現場は疲弊している。県内のマンパワーや資源では対応できない」と訴え、自衛隊の出動を要請した。担当記者が言う。「ニュースを見た人の中には『自衛隊がクマを駆除する』と誤解した人もいると思います。しかし鈴木知事も小泉防衛相も“武力行使”までは考えていないようです。あくまでも実際の駆除は地元の猟友会が行い、自衛隊は“後方支援”に回ると見られています。具体的にはワナを設置しての巡回や、付近住民の安全確保、クマ目撃情報の対応と集約という任務になるでしょう」。これに反対する声も決して少なくない。例えば元航空幕僚長の田母神俊雄氏はXに《銃を使っての駆除は行わないということだ。それならなぜ自衛隊が派遣されるのか》、《自衛隊の行動を縛るべきでない》と投稿している。だが軍事ジャーナリストは「あまりクマの能力を過小評価しないほうがいいと思います」と警鐘を鳴らす。「『ヒグマは巨大で凶暴だが、ツキノワグマは小型で臆病』というイメージもあるようですが、これは全く事実に反しています。ツキノワグマでも体長が180センチに達し、体重も100キロを超える個体はいます。さらにツキノワグマは時速50キロという非常に早いスピードでの移動が可能です」。時速50キロがどれほど早いか、100メートル走の世界記録保持者であるウサイン・ボルト氏の時速は37・6キロだ。「ボルト氏の1・5倍のスピードですから、どれほどツキノワグマが早く走るか、数字が歴然と示しています。さらにツキノワグマの“腕力”や噛む力は突出しています。『前足で鉄筋をへし折った』、『鉄板をかみ砕いた』という目撃情報があるほどです。これほどの運動能力を持っているのですから、興奮して凶暴化すると人間の手には負えません。アメリカ軍の特殊部隊、陸軍のデルタフォースや海軍のネイビーシールズの隊員が3人1組でツキノワグマに立ち向かっても、重傷を負ったり死亡したりする危険性は高いと思います」(同・軍事ジャーナリスト)。なぜ特殊部隊の隊員であってもツキノワグマに勝てないのか、クマの傑出した身体能力は見た通りだが、もう一つの大きな理由は装備だ。陸上自衛隊の主力小銃は89式5・56mm小銃。アメリカの戦争映画でおなじみの自動小銃M16の口径も5・56mmだ。ここで重要なのが国際法のハーグ陸戦条約だ。非常に単純化すると戦争の“ルール”を定めている条約であり、重要な考えの一つに「非人道的な兵器の使用は禁止する」というものがある。「つまり敵の兵士であっても、必要以上の攻撃を加えてはならないわけです。その一例として弾丸の種類があります。ハーグ陸戦条約は『完全被甲弾(フルメタル・ジャケット)』の使用を推奨しています。この弾丸は全体が真鍮の一種で覆われているため、当たっても貫通する確率が高くなります。このため完全被甲弾で撃たれた兵士は“過剰な苦痛”から免れる可能性と、後方の医療施設に送られる可能性が高まるというわけです。一方で銃弾には『ホローポイント弾』というものもあります。こちらは命中すると破裂したようになり、体の広い範囲にダメージを与えます。貫通することも少ないので、腹部に当たると内臓のあちこちを傷つけて致命傷を与えます。そしてハーグ陸戦条約はホローポイント弾を非人道的と見なして使用を推奨していません。ところが狩猟の場合は全てが逆になるのです」(同・軍事ジャーナリスト)。もちろん陸上自衛隊はホローポイント弾を持っていない。一方、欧米のハンターは熊狩りでは炸裂するタイプの弾丸を使う。日本のハンターは散弾銃だ。その口径は18・5mmが一般的だ。M16の口径に比べると3倍を超える。それだけ威力が強いのは言うまでもない。「自衛隊の特殊部隊であるレンジャーの隊員にツキノワグマの駆除を命じても、クマに対しては89式5・56mm小銃から完全被甲弾を放つしかありません。これでは致命傷を与えられないでしょう。もちろん何発かは命中するでしょうが、弾が貫通してしまう重大なリスクがあります。結果は“手負いのクマ”を生み出す可能性が高く、凶暴化したクマがレンジャー隊員に向かってきたら最悪の事態が想定されます」(同・軍事ジャーナリスト)。重要なのは「どんなに優秀な自衛隊員であっても、訓練されていないことはできない」ということだという。「レンジャー隊員に散弾銃を持たせ、猟友会の皆さんと行動を共にしても何の役にも立ちません。むしろ足手まといになります。ハンターは長年の訓練と経験を積んでクマの駆除を行えるようになったわけで、いくら屈強で優秀な自衛隊員であったとしても一朝一夕でクマの駆除ができるはずもありません。長期的な計画で『自衛隊もハンターを育成する』というならまだしも、『自衛隊員が今、クマの駆除を行えばいい』という意見はクマの“腕力”を過小評価しているだけでなく、ハンターの皆さんにも失礼なことを言っていると自覚するべきでしょう」。それでは自衛隊にとってクマの駆除は不可能なのかと言えば、それも違うという。
(射撃はクマの「即時無力化」が重要、緊急銃猟想定し訓練:岐阜)
市街地に出没したクマを市町村の判断で駆除する「緊急銃猟制度」の運用に向けた研修会が5日、飛騨市の古川町コミュニティセンターなどであった。クマの出没や被害が全国で相次ぐ中、県内の市町村や県警、猟友会の関係者ら約100人が、専門家の講義や屋外の訓練で対策を考えた。県と岐阜大でつくる「県野生動物管理推進センター」が企画。野生動物被害対策クリニック北海道(札幌市)の石名坂豪代表は自身の狩猟経験に基づき、住居集合地などでクマを仕留めた事例を解説した。
(クマ被害で「緊急銃猟」、街中での発砲に不安の思いも:神奈川)
全国で相次ぐクマによる被害を受け、9月には日常生活圏での銃猟を各自治体首長の判断でできる「緊急銃猟制度」がスタートした。神奈川県内では約80頭が生息するとされている丹沢山塊を抱える自治体では同制度への体制構築が急ピッチで進むが、地元では街中での発砲などを不安視する声も聞こえてくる。緊急銃猟の実施には市町村長の判断と実施条件が定められており、(1)危険鳥獣が住宅などに侵入(2)人命などの危害防止へ緊急措置が必要(3)銃猟以外での方法では迅速かつ的確な捕獲が困難(4)銃猟による人身などへの危害を防ぐ安全確保措置-の4点すべてを満たす場合に可能となる。昨年度の県内でのクマの目撃情報は122件で、けがなどの人身被害は1人と全国的には少ないとされる。ただ今年8月には伊勢原市の大山ケーブル駅付近でツキノワグマが目撃され、観光客約100人が足止めとなった。大山登山の主要ルートである同駅周辺ではその後もクマが目撃され、観光地に衝撃が走った。市内では昨夏に住宅のニワトリに執着したクマが駆除されており、人間の生活圏とクマとの距離が年々狭まっていると感じる市民は多い。萩原鉄也市長は今月23日の定例会見で緊急銃猟について「対応マニュアルは粗々でできている。銃猟の事前準備やクマ出没時の対応など、緊急で整備している」と述べた。市はクマが1カ所に居座る、店舗に侵入する、など“フェーズ”が上がった際には従来の農業振興課ではなく危機管理課が対応し、複数部署で連携するなど準備を進めているという。ただ、実際にクマと対峙(たいじ)することになる県猟友会の地元会員は「街中で発砲できるところまで体制ができていない。伊勢原の山は観光地。他の自治体に後れを取らないように、会としても(緊急銃猟の)体制を取らないといけない」と不安を口にする。猟師が撃つライフル銃の威力は強く、銃弾は約4キロ飛ぶものもあるという。野山での狩猟時は山の斜面などに着弾するが、街中では道路のアスファルトなどで弾かれて「跳弾」となる可能性もあり、住民避難や通行制限などが不可欠となる。地元会員は「本当に市民の命が危険なら撃つしかないが」と悲壮な覚悟をにじませる。
(ドローンで空から「ワンワン」、猟犬の鳴き声でクマ追い払い作戦:岐阜)
全国で相次ぐクマの被害。岐阜県がクマ対策に使おうとしているのがドローンです。動物を追い払うために開発されたドローン。そこには驚きの秘策がありました。岐阜県では、中津川市で高校生がクマに襲われるなど今年度、4件の人身被害が発生。名古屋市の小学生を対象にした野外学習を行っている中津川の野外教育センターでは、夜間のイベントを中止するなどクマ出没による影響が広がっています。そこで、11月4日に岐阜県が打ち出したのがドローンを使ってクマを追い払う対策。岐阜県 江崎禎英 知事:「(クマが)いたり、いそうなところにドローンを飛ばして、“攻めのクマ対策”をやっていきたい」。どのように行うのか。害獣対策ドローンを開発した会社を訪ねました。アエロジャパン 志村伊織 社長:「こちらが鳥獣害対策用の ハンティングドローンです」。このドローンの特徴は…。志村社長:「シカ・イノシシ・クマが嫌がる実際の猟犬の音声を流すことができます」。リモコンのボタンを押すと、スピーカーから音が流れる仕組みで、その音声は猟犬の鳴き声を高性能のマイクを使って収録したものだといいます。実際の狩猟の現場で使用した際、犬の鳴き声を流してシカを猟師の方へ誘導することに成功したといいます。さらに、こんな機能も。大きな音を出す、いわゆる追い払い花火も搭載しています。志村社長:「実際の猟師さんと二人三脚でつくったのがこのドローン。直接(山の)中に入らなくてもよくなるので、安全を確保できるというところがドローンの大きなメリット」。クマが嫌がる音を出して、山奥へ追い払う計画。岐阜県は委託業者を選定し、11月から人身被害が発生した中津川市や白川村などでの実施を検討しているということです。
(カキ目当てにクマが連日出没、それぞれ所有者が違い対応が進まず:秋田)
1日、秋田市河辺の民家のベランダに設置したセンサーカメラにクマの姿が映っていました。クマが枝を折る大きな音も記録されています。秋田市河辺の民家2階のベランダに先月末に設置したセンサーカメラ。今月1日、クマの姿が映りました。クマは枝をくわえながら手で折ったり、食いちぎったりしてカキの実を食べています。このあたりにあるカキの木はそれぞれ所有者が違い、問題になっているということです。住民からは不安の声が聞かれました。その後、クマがのぼっていた木は伐採されましたが、周辺にはまだ実をつけたカキの木が多くあるということです。
(カキの木周辺でクマ目撃多発、所有者が分からないケースも:群馬)
クマによる人身被害が群馬県内で過去最多10人(8件)となる中、カキの木周辺での目撃情報が増えていることが5日、県警沼田署などへの取材で分かった。自宅で庭木として育てる家庭も多く、同署や自治体は早めの収穫を促す。中之条町は管理が難しくなったカキやクリの木の伐採を業者に依頼した場合の費用補助を決めた。一方で所有者の分からない木もあり、住民は対応に悩んでいる。
(クマ出没を防ぐため専門家が警鐘、カキの木の伐採ややぶの管理:富山)
今年は平野部でもクマの出没が相次いでいて、出没件数はすでに直近5年間で最多となっています。クマはどのような経路で人里へ下りてくるのか。そして出没を防ぐために私たちにできることは。専門家に聞きました。平野部で相次ぐクマの出没。今年の出没件数はきのうまでに777件。出没が多かったおととし1年間の件数をすでに上回り、直近5年間で最多となっています。また、この秋は3人がクマに襲われ、けがをしています。山に生息しているクマはどのように平野部にやって来るのか。20年以上クマの調査に携わってきた専門家は河川敷の林がクマの移動ルートになっていると指摘します。富山県自然博物園ねいの里・赤座久明さん「今年みたいにドングリ類ができないと、広い範囲で餌を求めていつもより行動域を広げますよね。だから結局ここが移動ルートになり、日中の隠れ家になって」。話を聞いたのは、富山市や立山町を流れる常願寺川の上流。常願寺川沿いは例年クマの移動ルートとなっています。クマが身を隠すのに十分な高さのやぶが河川敷を覆うように下流へと続いています。クマの出没情報をまとめたマップを見ると、川の近くを中心に離れた場所にも移動していることがわかります。自然博物園ねいの里・赤座久明さん「昼はここで休憩していて夜になると集落に出てきて。場合によっては、集落の中の空き家の屋敷林みたいなね、ジャングルみたいになっているところでじーっとしている」。今年、平野部で相次ぐクマの出没。しかし赤座さんはこの状況は想定内だと話します。自然博物園ねいの里・赤座久明さん「2010年では海岸で夜釣りをしている人が海の中でクマに襲われたっていうそんな被害もありましたよね。その時に比べると常願寺川流域だけを見るとね、まだ今年は下流ではペースが穏やか。これまでの富山県の出没パターンの中に収まっている状況ですよね」。被害に遭わないためにはどうすればよいのか。赤座さんはクマをおびき寄せるカキなど不要な果実を取り除くことが重要だと言います。自然博物園ねいの里・赤座久明さん「短期的に言うと食べ物になるものを除去する。カキの実を全部取ってしまうとか、食べないんなら根元から切り取って、来年以降もここは餌場にならないようにっていう風に作り変える」。出没した場所の多くにはカキの木がありました。先月26日には南砺市の福光地域で庭のカキの実をとっていた女性がクマにかまれてけがをしました。自然博物園ねいの里・赤座久明さん「個人が所有する財産は自己責任のもとに管理しなさいっていうのが原則じゃないですか。だけどこの問題についてはもうそういうことを言ってる場合じゃなくって」。県内15市町村のうち、カキの木などの伐採を補助しているのは富山市や立山町など10の自治体です。このうち砺波市は自治会だけでなく個人も補助の対象にしています。また、上市町は条件付きで町の職員が伐採を請け負っています。赤座さんはクマの移動ルートとなるやぶの管理とあわせて、行政が中長期的に出没を防ぐ対策を進める必要があると訴えています。自然博物園ねいの里・赤座久明さん「これもう自然科学の動物の専門家だけの問題じゃなくて地域がどうあるべきかっていう人の生き方の問題なんですよね。これがまた一番難しい。だけど地道にやっていく必要があると思っています」。赤座さんはカキの実の除去や木の伐採を行う際にはヘルメットを着用し、複数人で行うよう呼びかけています。
(親子クマに要注意!クマスプレー検証映像)
車に向かって突進してくるのは、子どもを連れた母グマです。こうした親子グマがこの時期、特に危険だと専門家は指摘しています。親子グマの危険性はどのようなところにあるのでしょうか。岩手大学農学部 山内貴義准教授「子グマを守らなくてはいけない。単独でいるより母グマは神経質になっていることが多い。人間が至近距離で子グマ、親子グマに遭遇すると、母グマに襲われる確率は、単独のクマに比べると高い」。子グマに関しては…。岩手大学農学部 山内貴義准教授「(子グマに)至近距離で遭遇した場合、まず母グマをすぐ探して、見えない所から(母グマが)急に襲ってくる可能性もある。冬眠も一緒に穴に入ると言われている。母グマと一緒に入る穴を今、探しているところだと思う」。そんななか、今、急激に需要が伸びているものが…。クマスプレーを輸入 エアーイズム 奈良真代表「いつクマが入ってくるか分からない。一家に1本、用意した方が良いと思う」。一家に1本、クマスプレーです。エアーイズム 奈良真代表「一部の特定の人が購入される商品だったのが、ここ2~3年くらい、市街地へのクマ出没とかが多くなってきた中で、一般の人もお母さんが『公園に行った時に怖い』『ピクニック行った時に怖い』ので購入。購入層がだいぶ広くなってきた」。生活必需品になりつつあるクマスプレーですが、どの程度の力を発揮するのでしょうか。実際に使用した際の映像がこちら。森の中で1頭のクマと対峙します。一定の距離を取りつつ下がりますが、クマの動きはそれを上回る俊敏さです。そしてクマとの距離が近くなったタイミングで発射。正面からスプレーを浴びたクマは一目散に逃げていきました。エアーイズム 奈良真代表「(Q.成分は何が入っている?)分かりやすく言うと唐辛子」。成分には唐辛子に含まれるカプサイシンが含まれているといいます。エアーイズム 奈良真代表「クマ撃退用に作られたスプレーは、平均で7~8メートルの噴射距離がある。距離を取ったうえで噴射することがまずは必要になってくる」。追い風の場合はさらに噴射距離も伸びるため、風上から噴射することも重要だといいます。
(クマ出没で観光地に“緊張”、本州唯一「クマなし県」に観光客殺到)
各地でクマへの警戒感が高まるなか、“本州唯一”のクマ知らずの県がありました。それが、千葉県です。名所・鋸山では、ハイキング客からクマ鈴の音は聞こえず、クマ注意の看板も見当たりません。標高329メートルの頂上。ここにもクマの影すらありません。専門家も…。石川県立大学 大井徹特任教授「千葉県は本州で唯一、クマが生息していない県。過去にさかのぼっても化石なども発見されていない」。ここ十数年のクマの捕獲数も、本州で千葉県だけゼロです。竹林の中にドーム型のテントが並んでいます。3連休、予約でいっぱいだったそうです。緑に囲まれて過ごしてもクマの心配がいらないのも、宿泊客の安心感につながっています。ザ・バンブーフォレスト 柄木田輝マネージャー「この地域で『クマが出た』という情報は聞いたことがない。大自然でも安心して過ごせる地域」。では、なぜ千葉にはクマがいないのでしょうか。石川県立大学 大井徹特任教授「主な原因は地形にあると考えられる。他のクマ生息地から房総半島までの移動はかなり困難」。千葉県は県境を江戸川と利根川に囲まれ、クマの生息地と遮断されています。仮にクマが川を渡ったとしても、標高の高い山はかなり南にあるため、街を越えなければなりません。石川県立大学 大井徹特任教授「房総半島の東側、南側、西側は海です。孤立した状態になっていて、今後も房総半島でクマが生息する可能性はかなり低い」。
(クレー射撃競技体験会を開催します:大分)
津久見市クレー射撃協会では、オリンピック競技であるクレー射撃の疑似体験会を実施します!もちろん本物の銃を撃つことはできませんが、プロジェクターを使った射撃シミュレーターにより、リアルな射撃体験が可能になりました。指導員が丁寧にアドバイスいたしますので、クレー射撃や狩猟に興味のある方は気軽に挑戦してください。また、当日は、模擬銃の展示も行います。
(ハンターになる、次の射撃教習に進めることになりました:長野)
「射撃教習に進めることになりました」。記者のもとに、長野中央署からそんな電話があったのは、9月上旬のことだった。実弾を使って猟銃の使い方を学ぶ「射撃教習」の申請をしてから、約1か月が経過していた。この間、記者に銃を所持させても問題ないかを探ろうと、警察官が両親や会社の同僚、友人ら計5人の自宅などを訪ねていた。気分の浮き沈みは激しくないか、お酒を飲むと性格が変わらないか――。そんな普段は見えない一面についても聞いてきたという。記者は自分でいうのもなんだが温厚な性格の方だと思う。お酒を飲んで気持ちが大きくなることもあまりない。それでも、他の人からみれば違うかもしれない。緊張して待っていただけに、吉報に胸をなで下ろした。次のステップである射撃教習をクリアすれば、銃の所持許可を申請できる。警察がこれほど手間暇をかけて申請者の身辺を調べるのは、一歩間違えれば人の命を奪いかねない銃を所持する重みからだろう。警察は、統合失調症やそううつ病などの精神疾患がある人や、アルコールにおぼれている人に対しては銃の所持を認めていない。記者にこうした側面がないかを様々な角度から入念に調べたのだろう。「不適格者には銃を持たせない」という、警察の執念のようなものを感じた。思い出したのが、2023年5月に中野市で4人が殺害された事件だった。この事件では凶器に猟銃が使われた。長野地裁で9~10月に行われた裁判員裁判では、被告は大学生の頃、統合失調症を疑われていたものの、周囲が精神科を受診させていなかったことが明らかにされた。被告はその後、猟銃の所持許可を得ていた。取材をしてきた先輩ハンターたちは「この事件の後に身辺調査が厳しくなった」と口をそろえていた。以前は、近所の住民らに銃を持って大丈夫かと尋ねる程度だったという。警察が、今のような調査をしていたら、被告は銃を所持できなかったのではないか――。そう思わずにはいられなかった。ハンターになるために必須となる「狩猟免許」を取得する手続きも同時に進めていた。記者は8月下旬、装薬銃と呼ばれる火薬を使う銃を扱える「銃猟1種」と、くくりわななどを扱う「わな猟」の試験を受け、無事に免許を取得することができた。 安堵あんど とともに、身が引き締まる思いを胸に免状を受け取った。
(高校生がシミュレーターで野生動物駆除を体験:大分)
若い世代に有害鳥獣の駆除について関心を持ってもらおうと、大分県日田市の日田林工高校でシミュレーターを使ったユニークな特別授業が行われました。日田市で行われた6日の特別授業には日田林工高校林業科で学ぶ2年生25人が出席。鳥獣被害対策を行っている県の担当者がイノシシなどによる農作物被害の現状について説明しました。このあと、生徒たちは実際に使用しているくくり罠を手に取り、有害鳥獣を捕獲する仕組みについて学んだほか、スタンドで立てられたスクリーンに向かって模擬銃を放つシミュレーターを使い、野生動物駆除を体験しました。(生徒)「シカの被害が多いと思ってたんですけど、農作物被害はイノシシが一番多いとわかって正直びっくりしました」「自分が狩猟するとなったら、被害がちょっとでも少なくなったらいいと思います」。県の担当者は有害鳥獣駆除の意義を学んでもらうことで、狩猟免許取得者の高齢化に歯止めがかかればとしています。
(ハンターの若返りを!高校生がベテランからワナ猟を学ぶ:熊本)
イノシシやシカなどによる農産物の被害を防ごうと、高校生たちがハンターからワナ猟を学びました。熊本県あさぎり町の南稜高校で開かれた研修会には、総合農業科・環境コースの28人が参加しました。生徒たちは初めに有害鳥獣による被害の現状について説明を受け、その後、地元のベテランハンターから、ワイヤーでイノシシやシカを捉える「くくりワナ」の設置方法を学びました。熊本県内で狩猟免許を持つハンターは約7割が60歳以上と、高齢化していて、あさぎり町の協議会は「狩猟を維持するにはハンターの若返りが必要。新たな担い手の確保と育成を急がなければいけない」と話しています。研修会は5年前から行われていて、南稜高校ではこれまでに12人の生徒がワナ猟の免許を取得しています。
(もし道路で野生動物に遭遇・衝突したら?ドライバーが取るべき対応)
近年、全国各地でシカやタヌキ、イノシシ、クマなどの野生動物が道路に現れるケースが増えています。山間部だけでなく、市街地近くでも見かけることがあり、ドライバーにとっても身近なリスクとなっています。動物の飛び出しや衝突は大きな事故につながるおそれがあります。一般道や高速道路で野生動物に遭遇したり、衝突してしまった場合は、どう対処すればよいのでしょうか。「ロードキル」とは、道路上で車などにひかれて野生動物が命を落とす事故のことです。道路が動物の生息地を分断してしまった結果、動物が道路を横断せざるを得なくなり、車両との衝突が発生するのが主な原因です。日本では年間十数万件以上のロードキルが発生しているとされ、シカやタヌキ、キツネなどが特に多く報告されています。ロードキルの発生を防ぐため、野生動物の生息域に近い高速道路などでは、動物の侵入を防ぐ防止柵の設置や、安全に移動できるアニマルパスウェイの整備といった対策が進められています。また、野生動物が出没しやすい道路には「動物が飛び出すおそれあり」という警戒標識が設置されており、地域によってシカ、タヌキ、サル、キツネ、ウサギなど、さまざまな動物の絵柄が描かれています。この標識を見かけた際は、速度を落として周囲をよく確認し、慎重に運転しましょう。特に夜間や早朝は動物の活動が活発になるため、ハイビームを活用して視認性を高めることが有効です。運転中に野生動物を見かけた場合は、急ハンドルや急ブレーキを避け、落ち着いて行動することが重要です。急な操作はスリップや他車との衝突を招く危険があります。また、クラクションを鳴らすと音に驚いた動物が興奮して暴れたり、予測できない動きをするおそれがあるため控えましょう。動物が進行方向にいる場合は、減速して安全を確保し、通り過ぎるのを待つようにしてください。高速道路では速度が早いため、衝突時の被害が大きくなります。やむを得ず衝突を避けられない場合、無理にハンドルを切らず、できる限り直進姿勢を保つことが乗員の安全につながります。シカ、タヌキ、キツネなどの野生動物と衝突してしまった場合は、まず落ち着いて行動することが大切です。最初に車を安全な場所(路肩など)に停め、ハザードランプを点灯して後続車に注意を促します。可能であれば三角表示板を設置するなどして、二次事故を防ぎましょう。道路交通法第72条に基づき、野生動物との衝突も「交通事故(物損事故)」として警察への報告義務があります。事故の場所や車両の損傷状況、負傷者の有無などを伝え、警察の指示に従ってください。任意保険を利用する際には「交通事故証明書」が必要となるため、通報を怠ると保険が使えなくなる場合があります。野生動物が負傷して動けない場合、そのまま道路に放置すると、後続車の事故など二次被害につながるおそれがあります。そのため、きちんと対応することが大切です。ただし、野生動物に安易に触れると、感染症などの危険があります。一般道では、市役所や保健所、動物病院や保護施設に連絡し、指示を仰ぎましょう。高速道路の場合は、管理団体や道路緊急ダイヤル「#9910」(全国共通・無料)に通報してください。また、クマなどの大型動物に遭遇した場合は、まず自分や同乗者の安全を最優先にしてください。絶対に車外へ出ず、ドアと窓を閉めて車内で安全を確保し、警察に連絡して指示を仰ぎましょう。野生動物との衝突事故(ロードキル)は、誰にでも起こり得る身近なリスクです。万が一遭遇した場合は、慌てずに「安全確保」「警察への通報」「関係機関への連絡」を徹底し、冷静に対応しましょう。
(クマと普通列車が衝突:岩手)
11月4日午前6時前、JR東北本線の普通列車がクマと衝突しました。このため列車の運休や遅れが生じましたが、午前8時38分に運行が再開されました。4日午前5時50分ごろJR東北本線の村崎野駅から花巻駅の間で、下りの普通列車が1頭のクマと衝突しました。JR東日本盛岡支社によりますと、この影響で北上駅から花巻駅の間で一時運転見合わせとなりましたが、クマの死骸が撤去されたことに伴い、午前8時38分に運転が再開となりました。乗員・乗客へのけがはなかったほか、クマと衝突した列車は車両点検をした結果、安全が確認できたということです。このため上下線合わせて10本の列車に運休と区間運休が、また2本の列車に遅れが生じ、乗客約3480人に影響がでました。
(高校でクマを撮影、敷地内では目撃が相次ぐ:秋田)
秋田市の秋田高校の敷地内でクマの姿をカメラがとらえました。2日午前7時40分ごろ、秋田市手形中台の秋田高校の建物の中から生徒が撮影した映像です。体があまり大きくないことから、子グマとみられます。この日は校内でバスケットボールの交流試合があり、集合時間より早く到着した生徒が偶然撮影しました。県のツキノワグマ等情報マップシステム「クマダス」によりますと、秋田高校の敷地内では、先月下旬からクマの目撃が増えいて、先月30日には体長約50センチのクマ1頭が敷地内に入り込み、生徒が一斉下校を余儀なくされたこともありました。この日、秋田高校では登下校時の安全確保のため、保護者の送迎がある場合に限り部活動が行われたということです。
(大学キャンパスにクマ、構内に緊張走る:宮城)
宮城県内ではクマの出没が相次いでいます。大和町にある宮城大学では、敷地内にクマが現れました。また、仙台市や大崎市ではカキの木に登るクマが目撃されています。4日午前10時20分頃、宮城大学大和キャンパスでクマ1頭が目撃されました。大学によりますと、クマは、1時間ほど敷地内を歩き回っていたということです。被害はありませんでしたが、学生に対し、建物から出ないように呼びかけられるなど緊張が走りました。
(一関高専敷地でクマのような鳴き声安全確保のため休校:岩手)
一関市萩荘の一関高専(小林淳哉校長)は4日、敷地内でクマのような鳴き声を聞いたとの情報を受け、安全確保のため休校した。現時点で今週末まで継続し、部活動も休止する。クマの警戒による休校は初めて。同校によると、3日午後7時ごろ、学生が学校敷地内の武道館付近で、クマのような鳴き声を聞いた。連絡を受けた学校側が110番通報し、警察が巡回。クマの姿は確認できなかったが、安全のために休校を決めた。4日午前、職員が武道館周辺と野球場でクマのような足跡を見つけた。同校には821人が在籍し、敷地内の寮には280人が住む。男子学生(19)は「休校と聞いて最初はうれしかったが、すぐに笑ってはいられない、やばいと思った。これからどうなるのか」と話した。市によると付近では、数日前からクマの目撃のほか足跡の発見が相次ぐ。
(江戸川区でイノシシの目撃相次ぐ:東京)
4日朝から、東京・江戸川区の旧江戸川周辺でイノシシの目撃情報が相次いでいます。撮影された映像からは4日午前6時すぎ、江戸川区中葛西4丁目で市街地をイノシシが走っていく様子がわかります。警視庁によりますと4日午前6時ごろ、江戸川区東葛西3丁目の旧江戸川にかかる浦安橋付近でイノシシを目撃したと最初の通報がありました。その後、イノシシは徐々に南下する様子が目撃され、葛西橋通りを中心に、合わせて9件ほどの通報があったということです。イノシシの体長は1メートルほどということで、午前6時半ごろに西葛西8丁目で目撃されて以降は目撃されておらず、行方は分かっていません。今のところ被害やケガ人などの報告はないということです。江戸川区役所は区立の小中学校や保育施設にメールで連絡するとともに、区のホームページでイノシシの目撃情報を公表し、イノシシを発見しても近づかないよう注意を呼びかけています。
(住宅の玄関ひっかくクマ、敷地内に居座るも爆竹・ロケット花火で退散:宮城)
3日午後、宮城県大崎市の住宅で玄関をひっかくクマが目撃され、約1時間、敷地内に居座った。警察によると、3日午後3時30分ごろ、大崎市岩出山下真山の住宅で「クマが家の玄関をガリガリしていて、柿を食べている」と通報があった。通報を受けて現場に駆けつけた警察が確認したところ、クマは住宅の敷地内にとどまっている可能性が高く、現在も逃走していないとみられる。これまでのところ、けが人の情報は入っていない(午後4時20分現在)。その後、午後4時30分ごろ、警察などが爆竹やロケット花火を使用したところ、クマはその場から立ち去った。住人は玄関先に柿を吊るし、干し柿にしていたという(午後5時情報更新)。
(被害現場近くで駆除、感電させ:富山)
富山県南砺市は2日、同市小山の山沿いに仕掛けたクマのわなにかかった雌の成獣1頭を、感電させて駆除したと明らかにした。10月31日夜にクマが入ったことが感知装置や人工知能(AI)カメラの映像で分かり、11月1日朝、市職員や猟友会員が現場で確認。2日午前8時50分ごろ、市から委託を受けた猟友会員が感電させるやりをクマに当てて駆除した。 わなの場所から北東に約1・3キロ離れた山本地区では、10月26日に70代女性がクマにかまれ軽傷を負った。小山地区でもクマの痕跡や目撃情報が複数あったため、市は同27日に、中に入ると扉が閉まって出られなくなる金属製ドラム缶型(長さ2メートル、幅40センチ)のわなを設置した。
(国道でワゴン車がシカと衝突:北海道)
小樽市銭函の国道で、道路脇から飛び出したシカと車が衝突しました。事故の瞬間をドライブレコーダーが捉えられていました。道路脇から突然現れ、車と衝突した1頭のシカ。角を生やした雄ジカです。先月27日午前6時半すぎ、小樽市銭函の国道でドライブレコーダーが捉えました。札幌への通勤途中に、事故に遭ったという男性。けがはありませんでしたが、ワゴン車の前方部分が壊れました。道などによりますと、早朝と夕方はシカの出没が多く、通勤や帰宅で交通量も多いことから運転には特に注意が必要です。
(シカに遭遇、死角から現れ突然目の前に:栃木)
紅葉が見頃の栃木・日光市で目撃されたのは、突然、目の前に現れたシカです。夜の山道を走行中、対向車線の何かに気づいて急ブレーキ。車のライトが照らした先にいたのは、1頭のシカでした。すると突然走りだし、去っていったといいます。何とか衝突を回避した目撃者は「しばらく心臓のバクバクが止まらなくて怖かった。死角から現れた感じで、突然目の前にシカ」と話します。観光名所・中禅寺湖周辺で「イット!」のリモート取材を受けている最中にも、斜面にいるシカを目撃したということです。栃木県は、夕方から早朝にかけて野生動物が頻繁に出没する場所では徐行し、前方に十分注意を払いながら走行するよう注意を呼びかけています。
(海を泳ぐイノシシ発見、専門家「10キロ泳げる可能性」:長崎)
長崎県西海市の沖合で、泳いで移動するイノシシの姿が目撃されました。専門家は「大人のイノシシなら10キロ泳げる可能性もある」と話しています。泳ぐイノシシが見つかったのは、長崎県西海市「崎戸島」の沖、およそ500メートルの海上です。先月30日の昼ごろ、付近を哨戒中だった佐世保海上保安部の巡視艇「つばき」の乗組員がその様子を撮影しました。画像には、小さな尻尾を海面に出し、ふりふり振りながら、時には一回転ターンをするなどして泳ぐ姿が映されています。目撃した乗組員は「漂流物かと思ったが、近づくと細い尻尾が見えた」などと話しているということです。長崎市でイノシシなどの有害鳥獣対策のコンサルティングを行う「ながさき夢ファーム」に、イノシシの泳力について話を聞きました。ながさき夢ファーム・福山真尉代表社員「西海市の松島から直線距離で5キロほど離れている長崎市の池島まで、子どものイノシシが泳いで海を渡るのが確認されています。海を渡る理由や時期については不明ですが、大人のイノシシだと10キロほど海を泳げる可能性があります」。海の漂流物はイノシシに限らずプロペラや船の損傷につながることから、海上保安部ではむやみに近づかないよう呼びかけています。長崎県では2023年度、イノシシによる農作物の被害が1億5千万円を超えており、野生鳥獣の被害の7割を占めています。
(クマ出没全国に、各地で厳戒態勢)
5日朝、クマが現れたのは、外国人も訪れる人気の観光スポットでした。さらには、一つの畑に11頭ものクマが出没する事態となっています。現場は、秋田県仙北市のJR角館駅のすぐ近く。武家屋敷通りのそばにある美術館の敷地です。時刻は午前6時ごろ。県外から観光客が集まるエリアにクマが現れました。大村美術館の副館長「日中はかなり観光の人が訪れ、にぎやかな場所。すぐ脇に国有林の山がある。いつクマがおりてきてても、おかしくない。ついに来たかという感じ。クマが映った5分後に、犬の散歩をしている人の姿も。朝方は気を付けてほしい」。秋田県内では、今年クマによる被害で4人が死亡、56人がけがをしています。クマの被害を防ぐため、自衛隊が秋田で本格的な支援活動を始めました。隊員は防弾チョッキなどを装備し、箱わなの運搬や設置訓練を実施。今後は、要望のあった市町村ごとに活動を拡大する予定です。秋田市内。夜の歩道を駆け抜ける1頭のクマ。一度、壁に手をかけたかと思うと、再び急加速。しばらく走ると、数メートルの壁を軽々と登り、クマは住宅の方向へと姿を消しました。撮影者によると、この周辺では目撃情報が相次いでいるといいます。そして岩手では、さらに衝撃の映像が…。ソバ畑に現れた2頭のクマ。カメラを振ると、さらにまた1頭。なんと画面で確認できるだけでも、同じ畑に9頭ものクマがいます。北海道旭川で撮影された映像。カメラの前に姿を現した2頭のクマが、じゃれあっている様子が記録されています。巨体を揺らして組み合い、転がっています。この地域ではクマの出没が相次ぎ、近くの畑では農作物の被害も出ています。雨が降るなか、宮城県の住宅近くの柿の木に現れたクマ。3日、通りがかった人が撮影しました。細い枝に座り、器用に柿の実を食べているのが分かります。富山市の国道沿いのやぶに潜んでいるクマ。すぐ近くにクマがいるのか、猟友会が銃を向けます。そして、「緊急銃猟」による発砲が2発。さらに、もう1発。クマ1頭が駆除されました。「緊急銃猟」は富山市で4回目です。クマの出没が常態化するなか、その脅威を先回りしようと、最新技術による予測も始まっています。上智大学の研究チームが開発したのは、AIでクマとの遭遇確率を予測する「クママップ」。上智大学 大学院 深澤佑介准教授「×印が直近でクマと遭遇が発生した場所。赤い丸の所は、クマとこれから遭遇する可能性が高いことを示す」。マップ上には色分けした丸が並び、色が濃いほどクマとの遭遇率が高いと予測しています。丸一つの範囲は一平方キロメートル。街中でも、過去にクマが出没した場所と似た特徴があれば、遭遇確率は高いと予測されます。例えば先月23日、クマが出没した盛岡市中心部の河川敷。AIは「遭遇の確率が非常に高い」と予測していました。この周辺では銀行の敷地にクマが入り込む事態も起きました。深澤准教授「山の際と川が流れているところで、遭遇する可能性が高いと予測。実際にクマも出ているというふうになっている」。現在、この予測マップは東北や関東に加えて京都などでも公開されています。深澤准教授「自分が思っていた場所と違う所が警戒が高い表示なら、注意してほしい」。
(三陸道でクマとトラック衝突、死んだクマは成獣か:岩手)
高速道路でトラックがクマと衝突。子グマがとどまり続け、10時間にわたり通行止めとなりました。6日午前0時過ぎ、岩手・野田村の三陸自動車道下り線で、走行中の大型トラックが体長1メートルほどのクマをはねました。はねられて死んだクマは成獣とみられ、現場には子グマと思われる2頭が数時間にわたりとどまり続けました。この事故の影響で、三陸自動車道は一部区間の上下線で10時間にわたり通行止めとなりました。その後、2頭は山へと立ち去り、安全が確認されたとして上下線の通行止めは解除されました。
(クマのフンが県庁の"目の前"で見つかる:山形)
今年県内で目撃されたクマの件数が2000件を超え、過去最多を大幅に更新しました。こうした中、きょう山形県庁の目の前の広場でもクマのフンが確認され、県は警戒を強めています。クマのフンが見つかったのは、山形県庁の目の前、広場にある噴水のそばでした。県によりますときょうの午前中、清掃をしていた職員がフンを発見しました。その後の確認で、それがクマのものであるとわかったということです。これを受け、県は周辺の警戒を強めるとともに、公園にあるトイレを当面封鎖することにしたということです。
(都内近郊でイノシシの目撃相次ぐ)
東京都江戸川区内で4日、野生と思われるイノシシの目撃情報が相次ぎ、一時パニックと状態となった。報道によると、同日の早朝、江戸川区中葛西の市街地に現れ、道路を走るイノシシの姿が多数目撃された。目撃者によると「大きな犬かと思った」と語っており、都会にイノシシが突然現れたことに対し驚きを隠せない様子だった。このイノシシはどこから現れたものなのかは不明で、ネットでは「ペットが逃げ出したのではないか」と考察する意見が多い。一方、このイノシシについて、その場所に生息しているはずがない動物が目撃される「テレポートアニマル」との指摘もあった。また、江戸川区でイノシシ騒動が起こる前日の3日には、千葉県松戸市でもイノシシの目撃情報が6件通報されたという。さらに、5日には千葉県浦安市でもイノシシの姿が確認されている。それぞれ三カ所で現れたイノシシが同一個体なのかどうかは不明だが、神出鬼没のイノシシに「ステルスイノシシというUMA(未確認動物)かもしれない」といった声までも聞こえる。イノシシの走る速さは時速40~50キロメートルほどであり、走って移動していたことは十分に考えられる。また、松戸と浦安は江戸川でつながっており、少なくとも千葉県に現れたといわれる2頭は同一個体である可能性が高いようだ。5日の昼までに三カ所に現れたイノシシは行方が分からなくなっており、巷では「クマから逃げてきたのではないか」「幻だったのではないか」「天変地異の前触れでは」といったオカルトじみたうわさも出ているようだ。最近はクマの被害が相次いでいるが、イノシシも鋭いキバを持ち自動車並みのスピードで走ることができる「猛獣」である。イノシシに出会った際はくれぐれも近付かないよう注意していただきたい。
(子グマを市の職員が網で捕獲:長野)
長野県大町市常盤の安曇沓掛駅から東方に約100メートル離れた場所で子グマが捕獲されました。警察によりますと、11月6日午前10時過ぎ、安曇沓掛駅付近で「田んぼの中をクマが歩いている」と目撃者から通行人を通じて警察署に連絡がありました。現場に向かった警察官がクマの姿を確認し、その後見失ったり見つけたりを繰り返した後、警察や市職員などがやぶの中にいる子グマを発見。午後2時前に市の職員が網で捕獲しました。クマは体長約50センチメートルの子グマだということです。これまでに被害の情報は入っていません。専門家が麻酔銃で眠らせ、山に放獣する予定だということです。
(民家にイノシシ侵入、室内荒らして逃走:石川)
中能登町川田の守山一(かず)さん(85)方に10月下旬、イノシシが侵入していたことが6日、分かった。玄関ドアを突き破って入り、室内を荒らし回って逃げたという。家族にけがはなかったといい、守山さんは「まさか玄関からイノシシが入ってくるなんて夢にも思わん。参った」と驚きを隠せなかった。守山さんによると、10月29日午後9時ごろ、就寝していた守山さんは家を壊すような「ドカーン」という大きな音に飛び起きた。家族が集まったところでキッチンから体長約1㍍ほどのイノシシが現れ、廊下を通って玄関ドアに空いた穴から屋外へ出て行った。自宅の玄関ドアは下部のガラスが割れ、金属製の格子も折れ曲がった。キッチンは鍋などがひっくり返り、壁にはイノシシの血痕が付いていた。守山さん夫妻が寝ていたリビングを通った痕跡も見つかり、守山さんは「誰もけががなくて良かった」と話した。町内では今年度、イノシシによる水稲の被害が3地区計67㌃で確認されている。守山さんによると、自宅裏山では、イノシシがタケノコを食い荒らした跡が見つかっていたという。
(住宅敷地内にクマ居座る 捕獲し駆除に:山形)
警察や山形県鶴岡市によりますときょう午前7時40分ごろ、山形県鶴岡市長者町の住宅敷地内にクマが居座っていると住民から通報がありました。クマは体長およそ70センチで、住宅の窓のすぐ外を歩く姿も確認されました。午前8時45分ごろ麻酔銃による処置で捕獲され、午前9時20分ごろに駆除されたということです。
(クマ食害か、リンゴ500個以上:岩手)
5日午前8時35分ごろ、奥州市前沢狐石のリンゴ園でクマとみられる食害があったと、園主の50代男性が市前沢総合支所に連絡した。男性によると1~5日、12本の木に被害があった。1本に50個ほど実るといい、500個以上を食べられた可能性がある。約1ヘクタールの園内にはクマのふん、枝を折られた木があった。園内に設けたカメラには1、2日、リンゴを食べるクマの姿が映っていた。食害は9月8日から断続的にあり、計30本の木で確認された。
(巨大イノシシ vs 猟師、命懸けの闘い!)
熊が人を襲ういたましい事故が毎日のように報道されている。人と野生動物の接近はかねてより危惧されており、中国新聞では2002年ごろからイノシシによる農業被害の実態を半年にわたり連載するなどかねてより「獣害」について語られてきた。とくに西日本で被害の原因とされる野生動物でもっとも多いのが「イノシシ」である。2025年11月6日に発売された『猪之噛』(矢野隆/集英社)は、福岡県の山林に突如現れた巨大なイノシシと対峙することになった地元住民、行政、そして最前線で対応する地元猟友会の猟師たちを描いた小説だ。著者の矢野隆氏は、2008年に『蛇衆』で第21回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。その後も多数の時代小説を手掛けてきた著者の、初となる現代小説だ。東京から福岡県の山村に移住してきて4年目の猟師の明神マリアは、山から獣たちの気配が消えていることに気付く。山で何かが起こっている。得体のしれない不安が漂う中、ある日マリアは村内で“軽自動車ほど”の巨大なイノシシを目撃する。猟師たちは村に古くから伝わる巨大なイノシシ「イノガミ」と突如現れた巨大イノシシとを重ね、村には動揺が広まる。マリアたち猟師はイノガミを駆除しに山に入っていくのだが…。
(エゾシカ革の有効活用から生まれた「美肌ミトン」:北海道)
「いいこと いいもの ぎゅぎゅっとむすぶ」をコンセプトに2024年9月に開設したECサイト「Omusubi(おむすび)では、世界でも北海道だけに生息するエゾシカの革を有効活用した美肌ミトン「Yukure(ユクレ)美肌ミトン」の商品企画に挑戦し、クラウドファンディング「Makuake(マクアケ)」にて11月4日(火)午前9時より先行販売を開始します。
(白神ジビエ「食べにおいでよ!」:青森)
白神山地の目屋マタギは「山の神からの授かりもの」として大切にいただいてきました。西目屋村では目屋マタギの精神を継承し、くま肉等を活用した新しい観光資源の創出に取り組んでいます。西目屋村のブナの里白神公社が3年前に商品化した「白神ジビエ」のレトルト商品「クマカレー」「クマ丼」のパッケージには冒頭のように記されている。今年登場した「クマシチュー」もしかり。土地に根差したマタギ文化と、食肉加工の熟成・調理の技が相まって、今や道の駅津軽白神の人気商品となっている。2001年から食品加工と研究に携わってきた事務局長の角田克彦さん(49)は「観光施設を運営するわれわれにとって、地元産の肉を提供することは悲願だった」と語る。クマ肉は何度も煮てアクを取り、硬さや臭みとは無縁。やわらかいのに力強い味わいで、西目屋産リンゴジュースとスパイスを加えたカレーは自信作という。「クマの出没が増えて騒ぎになっていますが、われわれは捕獲されたものを有効活用するだけ。白神山地という一番太い観光資源に並ぶくらい、ジビエを食の観光資源の柱に育てていきたい」。西目屋村では、農作物に被害を及ぼしているクマを箱わなで捕獲し、捕獲したクマはジビエ工房白神にて熟成・加工しています。加工したクマ肉はお土産品として「白神クマ丼」「白神クマカレー」と、今年から新たに販売を開始した「白神クマシチュー」の3品を販売しており、中でも「白神クマカレー」は数種類の香辛料と村産のリンゴジュースをブレンドし、そこに熟成させたクマ肉を使用したスパイシーな味わいで人気商品となっております。西目屋村にお越しの際は、ぜひ白神ジビエ商品をお買い求めください。道の駅津軽白神では「クマカレー」などお土産品以外にも、レストラン「森のドア」でクマ肉を使った「熊そば」「熊丼」(各1500円)をそれぞれ1日10食限定で提供している。お土産品の商品展開ではチョリソーウインナー、スモークハム、ジャーキー、炊き込みご飯の素と拡大させていく予定という。また、道の駅近くの温泉宿「ブナの里 白神館」では<白神の恵み ジビエ御膳プラン>を用意。宿泊者限定で鍋物や焼き肉「くま串」を味わうことができる。
(ジビエでレトルト:石川)
一般家庭で気軽にジビエを味わってもらおうと、石川県白山市内の企業が、白山麓産のイノシシやシカの肉を使ったレトルト食品を作った。処理の難しさなど食材としての「敷居の高さ」や「臭いやくせがある」といったジビエのイメージを拭い、消費拡大につなげるため1年かけて商品化した。いずれは全国の産地のジビエを使って生産したい考えで、クラウドファンディングサイトで先行販売している。レトルト食品は、スパイスをふんだんに使った「鹿カレー」や、白飯とうどんによく合う「鹿の万能肉みそ」、本格的なジビエの味わいを楽しめる「猪(いのしし)の味噌煮(みそに)込み」など6種類ある。
(クマ出没:宮城)
大崎市によると、7日、大崎市古川保柳氏子にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、6日午後9時10分ごろ、栗原市一迫柳目大郷にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、6日午後8時20分ごろ、栗原市栗駒沼倉幡戈にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、6日午後6時50分ごろ、栗原市一迫真坂寺下にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
富谷市によると、6日午後6時20分ごろ、富谷市富谷源内にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
仙台市によると、6日午前6時30分ごろ、仙台市青葉区折立1丁目にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、6日午後3時20分ごろ、栗原市鶯沢南郷下久保前にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、6日午後4時40分ごろ、栗原市栗駒稲屋敷後原にクマが出没しました
(クマ出没:宮城)
丸森町によると、6日午後3時ごろ、丸森町耕野問場にクマが出没しました。
(サル出没:宮城)
登米市によると、6日午後2時30分ごろ、登米市米山町桜岡貝待井にサルが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、6日午後1時40分ごろ、栗原市鶯沢南郷日向にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
大和町などによると、5日午後4時40分ごろ、大和町宮床磯ケ沢二番にクマが出没しました。
(サル出没:宮城)
登米市によると、6日午前7時40分ごろ、登米市登米町寺池桜小路にサルが出没しました。
(クマ出没:宮城)
利府町によると、5日午後7時10分ごろ、利府町森郷内ノ目北にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、6日午前6時10分ごろ、栗原市一迫真坂清水ケ袋にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
色麻町によると、6日午前6時35分ごろ、色麻町大原にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
仙台市によると、4日午後9時50分ごろ、仙台市太白区秋保町長袋原にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
仙台市によると、4日午後5時ごろ、仙台市太白区秋保町馬場上ノ原にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
仙台市によると、4日午後1時50分ごろ、仙台市太白区秋保町長袋水上北にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
富谷市によると、5日午後10時25分ごろ、富谷市富谷南裏にクマが出没しました。
(サル出没:宮城)
登米市によると、5日午前11時ごろ、登米市中田町浅水小島にサルが出没しました。
(クマ出没:宮城)
富谷市によると、5日午後5時15分ごろ、富谷市明石台7丁目にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、5日午後6時5分ごろ、栗原市栗駒渡丸西原にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
白石市によると、5日午後6時15分ごろ、白石市福岡八宮大嶽後にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
色麻町によると、5日、色麻町四竃道命にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
柴田町によると、5日、柴田町葉坂下道地でクマが出没したような痕跡が見つかりました。
(クマ出没:宮城)
柴田町によると、5日、柴田町入間田前原でクマが出没したような痕跡が見つかりました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、4日午後4時ごろ、栗原市一迫柳目葉の木沢にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、4日午後4時ごろ、栗原市鶯沢南郷向原にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
色麻町によると、4日午後5時ごろ、色麻町下高城地区にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
色麻町によると、5日午後2時30分ごろ、色麻町清水地区にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
色麻町によると、5日午前10時ごろ、色麻町志津鷹巣屋敷岸にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
色麻町によると、5日午前9時ごろ、色麻町志津前原にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
仙台市によると、4日午後0時50分ごろ、仙台市泉区朴沢宮床山にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
仙台市によると、4日午前6時ごろ、仙台市泉区福岡熊ノ沢にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
色麻町によると、5日午前10時10分ごろ、色麻町黒沢にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
大和町によると、4日午後5時50分ごろ、大和町吉岡まほろば2丁目にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
丸森町によると、5日午前6時ごろ、丸森町舘矢間山田市子沢にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、5日午前7時ごろ、栗原市一迫真坂山の上にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
富谷市によると、5日午前0時15分ごろ、富谷市穀田土屋沢にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
多賀城市によると、4日夜、多賀城市鶴ケ谷にクマが出没しました。
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(70代男性がクマに襲われけが、仲間7人と山林で狩猟中:岩手)
1日午前、岩手県大槌町の山に入っていた70代の男性がクマに襲われ、けがをしました。病院への搬送時意識はあり会話が可能だったということです。警察によりますと、1日午前10時半ごろ、大槌町金澤の山中で狩猟を行っていた70代の男性が、成獣のクマ2頭を追いかけていたところ、向かってきたこのうちの1頭に襲われ、鼻から口にかけて顔面を引っかかれるけがをしました。男性は運ばれた釜石市内の病院で輸血をした後、岩手県内の内陸にある病院に移送され、搬送時意識はあり会話が可能だったということです。男性は仲間7人とともに狩猟を行っていました。クマは男性を襲った後、もう1頭と現場から立ち去り、見つかっていません。
(クマ警戒パトロールの南陽市職員、クマに襲われ骨折:山形)
1日午前6時40分頃、山形県南陽市の林で、市職員の男性(58)がクマ(体長約1メートル)に襲われ、右手を骨折した。命に別条はないという。市によると、クマの目撃情報が相次いでいたため、職員が2人1組で車に乗り、パトロールをしていた。枝が折れた柿の木を見つけたため、車から降りて調べていたところ、クマが突然現れ、襲われたという。
(2日連続クマ被害、新聞配達中の70代男性けが:秋田)
4日未明、秋田市で新聞配達をしていた70代の男性がクマに襲われてけがをしました。現場は秋田市下新城岩城にある住宅の敷地内です。秋田臨港警察署の調べによりますときょう午前3時半ごろ新聞配達をしていた70代の男性が、やぶの中から現れた体長1メートルほどのクマ1頭に襲われました。男性は右目付近と右手をひっかかれるけがをしています。その後うずくまって身を守っていたところクマは去っていたということです。男性は会話ができる状態で、自力で病院に行きました。秋田市北部で人がクマに襲われるのはこれで2日連続です。警察が周辺に警戒を呼びかけています。
(落ち葉拾い中、クマに尻を噛まれる:岩手)
花巻市で落ち葉拾いをしていた89歳の女性がクマに襲われけがをしました。警察によりますと2日正午ごろ、花巻市石鳥谷町で、自宅の庭の落ち葉を1人で拾っていた女性(89)が背後から来たクマに襲われました。女性は尻を噛まれましたが命に別状はありません。クマは親子連れで3頭いたとみられていて、その後逃げたということです。現場はJR石鳥谷駅から南西におよそ3.5キロの田園地帯で、東北自動車道が近くにあります。
(クマの人的被害相次ぐ、山道で男性2人が襲われケガ:福島)
福島県内では週末にかけてクマによる人的な被害が相次いでいる。被害があったのは、大玉村玉井の農場で、10月31日の夕方、男性従業員(60代)の叫び声を聞いて駆け付けた同僚が、牛舎の近くで倒れている男性を発見した。農場の女性従業員は「(男性が)うずくまった状態で倒れて、どうしたのか聞いたらクマにやられたと…」と当時の状況を振り返った。男性はクマにひっかかれ後頭部や腕にケガをして病院へ運ばれ、命に別状はなかった。襲撃後、牛舎の付近には体長1メートルを超えるクマ2頭がいて、そのうち1頭は駆除された。一方、会津美里町でも11月1日の午後2時過ぎ山道をジョギング中の男性(60代)がクマ2頭と遭遇し、左肩と脇腹にケガを負う被害があった。警察などが注意を呼びかけている。
(柿の木を見ていた80代男性がクマに襲われけが:京都)
京都府京丹後市で2日午前、柿の木を見ていた80代の男性がクマに襲われ、軽いケガをしました。2日午前11時ごろ、京丹後市弥栄町溝谷で、近くに住む80代の男性が柿の木を見ていたところ、クマに襲われました。市によると、男性は右太ももを引っかかれたほか、目を打撲しましたが、いずれも軽傷です。クマの大きさや逃げた方向は分かっていないということです。現場は狭い畑が点在する地域で、2日朝、市の職員や警察官らがパトロールを行いました。【京丹後市の職員】「実際の人身被害ということになると事態としては重く受け止めておりますので、対策を強化することを検討していきたいと考えています」。市は3日午後、捕獲用のおりを設置するということです。
(山林に79歳女性遺体、クマ被害か:秋田)
秋田県警湯沢署は3日、同県湯沢市の山林で朝、近くに住む無職、後藤キヨさん(79)の遺体が見つかったと発表した。顔面の損傷が激しく、クマに襲われたとみている。後藤さんはキノコ採りで山に入ったとみられる。署によると、後藤さんは2日朝に「山に行ってくる」と別に住む家族に電話していた。家族が後藤さん宅を訪ねたが、夕方になっても戻らないため110番通報。3日午前9時ごろ、捜索中の署員らが発見した。
(クマに襲われたとみられる人身被害が相次いで判明)
秋田、青森両県で3日、クマに襲われたとみられる人身被害が相次いで判明し、1人が死亡、3人がけがをした。秋田県湯沢市川連町の山林で3日午前9時頃、近くに住む女性(79)が死亡しているのが見つかった。顔にひっかかれたような傷があったという。湯沢署の発表によると、女性は2日午前、「山に行ってくる」と家族に電話で伝えた後、連絡が取れなくなっていた。遺体が見つかったのは、自宅から数十メートル離れた山林で、女性は日頃からキノコを採りに行っていたという。秋田市飯島緑丘町では3日午前5時半頃、出勤しようと自宅を出た男性(65)が体長約1・2メートルのクマに襲われ、顔にけがをした。現場には体長約50センチ・メートルのクマもいたという。秋田県大仙市神宮寺の山林では3日午前7時頃、散歩中の男性(83)がクマに背後から襲われ、顔や腕をひっかかれた。青森県十和田市切田の山中では3日午前10時15分頃、キノコ採りをしていた同市の70歳代男性から「クマに襲われてけがをした」と110番があった。十和田署によると、男性は顔にけがをしたという。
(散歩中の男性がクマと遭遇し負傷:福島)
31日午後4時頃、福島県会津坂下町片門の只見川堤防沿いの道路で、散歩中の50歳代男性がクマ(体長約1・5メートル)に襲われ軽傷を負い、病院に搬送された。会津坂下署などによると、男性はクマと遭遇し、堤防の陰に隠れたが、追いかけてきたクマが飛びかかってきた。男性はしゃがんでよけようとしたが、クマの爪が背中に引っかかったという。
(クマに襲われ70代の男性が『顔にけが』、キノコ採り中に被害で自ら警察に通報:青森)
警察などによりますと、3日午前10時半まえ、十和田市切田で男性がクマに襲われました。襲われたのは、70代の男性で、顔にけがをしたということです。男性は自ら警察に通報したということで命に別条はありません。十和田市によりますと、現場は十和田市切田字中屋敷の山林です。被害にあった市内に住む70代の男性は、午前7時ごろキノコ採りのために所有する山に入ったということです。クマに襲われたあと、自力で避難し、警察に通報しました。その後、ドクターヘリで八戸市内の病院に運ばれました。男性は顔に裂傷を負ったものの、搬送時は意識があったということです。市と猟友会は事故現場を確認し、3日中に箱わなを設置する予定ということです。市は公式LINEや防災行政無線で、注意を呼びかけています。
(警察庁がクマ被害深刻地域に担当官派遣へ、ライフル銃での駆除を検討)
赤間二郎国家公安委員長は31日の閣議後記者会見で、週明けにもクマ被害が深刻な県に警察庁の担当官を派遣すると明らかにした。警察庁は県警の機動隊員ら警察官によるライフル銃を使用したクマの駆除を検討しており、現地のニーズを踏まえて対策にあたる。赤間氏は会見で、クマによる人身被害が拡大する状況に対し、「追加的、緊急的な対応として、警察官が市町村の緊急銃猟に協力し、人里に侵入してきたクマをライフル銃を使って迅速かつ的確に駆除できるようにしたい」と説明した。
(「警察官がライフル銃でクマ駆除 可能にしたい」国家公安委員長が方針示す)
赤間国家公安委員長は、警察官がライフル銃を使用してクマの駆除をできるようにしたいと明らかにしました。赤間二郎 国家公安委員長「人里に侵入してきたクマを警察が保有するライフル銃を使用して、迅速かつ的確に駆除できるようにすることとしたい」。
(クマ被害、警察庁が秋田と岩手に幹部ら派遣へ)
クマによる人身被害が相次いでいることを受け、警察庁は31日、秋田県と岩手県に11月4~5日、担当幹部らを派遣すると発表した。同庁では緊急時に警察官がライフル銃でクマを駆除することを想定しており、自治体による駆除の実情や要望を把握したい考えだ。同庁の楠芳伸長官は31日、都内で開かれた全国警察本部長会議で「地域住民の安全確保を最優先として対応する必要がある」と述べた。クマの駆除を巡っては、市町村長の判断で市街地での発砲を認める「緊急銃猟」が9月に始まっているが、今後も専門知識のあるハンターによる駆除が原則だ。警察としては、警察官職務執行法に基づき、人里近くでクマが暴れるなどの緊急時に限り、ライフル銃での駆除を行うことにする。各警察本部の機動隊に配備されたライフル銃や防護資機材を使い、駆除の訓練を進めるという。
(機動隊ライフル銃でクマ駆除検討、実施には課題も)
相次ぐクマの被害を受け、警察庁は警察官による駆除の実施に向け検討を急いでいる。機動隊が保有するライフル銃の使用を想定するが、前例はなく規則の改正や射撃訓練など課題もある。警察幹部は「被害は深刻。速やかに対応可能な体制を整えたい」と話す。警察は従来クマに対しては住民の避難誘導や安全確保、行方不明者の捜索などを実施。駆除は警察官職務執行法の「狂犬や暴れ馬などの出没で危険が生じた場合、警察官は被害防止に必要な措置を取るか関係者に命じることができる」という規定に沿い、ハンターらに対応を依頼してきた。被害の拡大や政府の要請を受け、警察自ら駆除に乗り出した格好だが、実施にはハードルもある。一つは人員の確保だ。これまでクマに対応してきたのは地域警察官だが、クマは頭蓋骨が硬い上に皮下脂肪が厚く、地域警察官の拳銃では効果がないとみられる。このため警察当局は機動隊が所持するライフル銃の使用を想定。ただ、機動隊でもライフル銃の訓練をしているのは銃器対策部隊など一部の人員に限られ、内容も犯人狙撃など対人のもの。実施前にはハンターからクマの生態や有効な射撃部位などを学び、射撃訓練を積む必要がある。また、ライフルなど特殊銃の使用目的を定めた国家公安委員会規則の改正も必要だ。目的をハイジャックや人質事件などへの対応としており、クマへの発砲は想定外。実施には規則でクマ駆除を任務と定めなければならない。警察庁は被害の大きい北海道や東北での駆除を想定し、11月4日から秋田、岩手両県に担当者を派遣。詳しい状況や自治体のニーズを調べることにしている。
(倉庫内にクマが、県内2例目の「緊急銃猟」:新潟)
県内で2例目の『緊急銃猟』です。31日午前10時すぎ、阿賀野市の建設会社の建物内に体長約50cmのクマが閉じこもりました。約5時間後に緊急銃猟が実施され、捕獲されました。住宅近くの庭を歩くクマ。阿賀野市新保で撮影されたものです。この数分後、近くの建設会社の倉庫に侵入しました。午前10時ごろ、建設会社の社員から「体長約0.5mのクマを目撃した」と110番通報がありました。建物は3階建てで、クマは1・2階の倉庫部分に閉じこもったということです。渡辺建設 渡辺政利社長「最初見たときは前の家の庭で騒いでいた、散歩していた。畑に移動して畑からまっすぐシャッター開いていたので、突き抜けて今この状態」。当時、3階のオフィスには社員4人がいましたが、いずれも別の出口から逃げたためケガ人はいません。倉庫はシャッターを下ろし閉鎖され、警察は付近の住民に建物から出ないよう呼びかけていました。午後3時に緊急銃猟の許可が阿賀野市長かか下りると、その15分後に猟友会が倉庫に突入。麻酔銃2発を打ち、午後3時20分にクマを捕獲しました。阿賀野市の担当者「棚の上から撃ち手が、(クマが)エンジンポンプの奥にいたので撃った。しばらく効かないで、もう1発はしごから撃った」。今回確保されたクマは子グマとみられており、阿賀野市は引き続き注意喚起をしていくとしています。
(クマ捕獲上限が近づく、今年度200頭を追加へ:岩手)
岩手県の達増知事は31日の定例記者会見で、今年度に県内で捕獲するクマの頭数を200頭追加し、1000頭規模に拡大する考えを明らかにした。来週にはクマ被害に関する国への要望をとりまとめる関係幹部会議を開催し、クマによる人身被害事例や各市町村からの意見、国の支援策の動向を踏まえた上で、環境省に支援を求める。県によると、今年度の県内の捕獲上限数は796頭。9月末現在で既に714頭に達しており、市町村からは捕獲ペースの速さについて県に相談が寄せられているという。県は11月から冬場にかけ、環境省の捕獲事業を活用。猟友会に委託する形で、クマ200頭を目安に追加で捕獲する。県内では今年度、過去最多の5人がクマ被害で犠牲になっている。達増知事は「県民は引き続き警戒する必要がある。県としても捕獲に力を入れる」と述べ、被害拡大を防ぐため、クマの捕獲が重要との認識を示した。関係幹部会議では、人間を襲ったり里山や街に出没したりするクマへの対策や、捕獲に関する支援などの要望をまとめる。具体的には、クマの生息地と人里との間の緩衝地帯を確保することや、クマが隠れるやぶや河原付近を整備することの支援を想定。クマがどの地域に何頭いるかといった詳しい生態の調査分析を国が行うことも要請するという。達増知事は「国からの人的、財政的支援は強く求めることになる」と強調した。
(クマ遭遇の恐れ考慮、学法石川が東北高校駅伝辞退:福島)
秋田市で6日に開催予定の東北高校駅伝競走大会を巡り、出場権を得ていた福島・学法石川の男女が出場を辞退することが31日、学校への取材で分かった。同校の担当者は「朝の練習などで市内を走る際、選手たちがクマと遭遇する恐れを考慮した」としている。同大会を巡っては31日までに、秋田市内でクマの出没が相次いでいることを受けてロードレースを取りやめ、トラックレースとして行われることが秋田陸上競技協会のホームページで発表されていた。同校男女は10月の県高校駅伝競走大会で優勝し、12月に京都市で開かれる全国大会と東北大会の出場権を得ていた。事務局は出場を各校の判断に委ねるとしており、安全面を理由とした辞退も認めている。本県からは男女の帝京安積とザベリオ、男子の田村といわき秀英、女子の日大東北と安積黎明が出場権を得ている。
(クマ対策に「空のペットボトル」自然界にない「ペコペコ音」で撃退か)
駐車場の背後から、のそのそと歩き近づいてくる1頭のクマ。31日午前10時ごろ、新潟・阿賀野市の住宅街で撮影された映像です。クマを目撃した従業員:最初向こうの家の庭の方にいて、それで事務員さんが見つけまして。クマだ!クマだ!とずっと見ていたらシャッター開いてたんで、閉めないとなって思ったときには、すでにクマが入っちゃいまして。突如現れたクマは建設会社の建物の中に侵入。体長は約50cm。幸いにも従業員たちは全員避難し、けがはないといいます。クマを目撃した従業員:このクマがこの辺りにのぼりついて、このサッシの下をぐっとのぼって、そのまま上に上がってきたんですよ。白昼堂々起きたクマの居座りに、近隣住民は「ここは山奥までかなりありますからね。まさかこんなところに出るとは思わなかったですね」「柿あるもんね…。取ってくださいって言わんばかりだもんね」と話しました。午後3時過ぎ、猟友会などが建物の中へ。そして午後3時半ごろ、市長の許可を得た猟友会などが緊急銃猟を実施。クマは麻酔銃により捕獲されました。2025年度、クマに襲われて死亡した人は12人と、すでに過去最悪の状態に。前代未聞の事態に、秋田県から自衛隊の派遣要請を受けている小泉防衛相は「箱ワナの運搬に伴う輸送支援などの依頼を受けており、自衛隊として、これを実施する方向で調整を進めている」と述べ、自衛隊の派遣について、任務遂行に支障のない範囲で最大限協力したいとしています。一方、赤間国家公安委員長は「人里に侵入してきたクマを警察が保有するライフル銃を使用して、迅速かつ的確に駆除できるようにすることとしたい」と述べました。さらに、駆除にあたる警察官が、クマの生態や急所についての理解を深めるよう、対策を速やかに実施する方針も示しました。生活圏への相次ぐクマの出没で高まるクマに遭遇するリスク。そこで30日、文部科学省は全国の教育委員会に学校施設などでのクマ対策を通知。その中で、クマが嫌う音の1つとして例示したのが、空のペットボトルを握って鳴らすペコペコ音です。松本文科相は「ペットボトルの音については、岩手・花巻市の教育委員会が作成したもののうち、クマよけベルの装着や食べ物を持ち歩かないといった様々な指導例の1つとしてあげられているものである」としています。岩手・花巻市では小中学校の全生徒にクマよけベルを配布しているものの、学校以外で持っていない時の対処として、ペットボトルを鳴らすことを指導しているといいます。クマにとって有効なのか、石川県立大学・生物資源環境学部の大井徹特任教授は「クマっていうのは用心深い動物でして、ペコペコ音は森の中で聞かない音なので、クマが警戒心を出して立ち去る可能性があると思う」と話していて、森の中では聞き慣れないペットボトルのペコペコ音は一定の効果が期待できるといいます。
(人里に出た個体「捕獲にかじを」、緊急連絡会議で専門家:岩手)
クマの出没が相次いでいることを踏まえ、県は30日、市町村職員や県警を対象とした緊急連絡会議を開いた。岩手大農学部の山内貴義准教授(野生動物管理学)が講演し、人里に現れた個体について「捕獲にかじを切って状況を打開する必要がある」と強調した。盛岡市内丸の盛岡地区合同庁舎で開き、オンラインを含め約50人が出席。山内准教授は出没や被害増加の背景を「全体的にクマの行動が変容してきている」と分析した。「人間とクマのパワーバランスが崩れ、人の生活圏に出没している」とし、問題を起こす個体の駆除や山と里の緩衝地帯での環境整備、個体数管理の重要性を主張した。今後の冬眠に関しては「山にいるクマは比較的早く眠るが、人里の餌に依存している個体は遅くまで現れる可能性が高い」と説明。その上で「出没情報を細かく確認し、農作業を行う際は装備を万全にするなど命を守る行動を取ってほしい」と呼びかけた。
(クマ問題、自衛隊が「銃でクマ駆除」は「非現実的」)
10月28日、秋田県の鈴木健太知事は、小泉進次郎防衛相に自衛隊の派遣を要請した。クマによる人身被害が拡大しているためだ。自衛隊を派遣すれば、クマ被害を食い止めることはできるのか。秋田県におけるクマによる人身被害は、10月(26日時点)だけで35人。過去最悪の数字を記録した。鈴木健太知事は28日、「状況はもはや県と市町村のみで対応できる範囲を超えており、現場の疲弊も限界を迎えつつある」として、防衛省で小泉進次郎防衛相に「クマ被害に対する自衛隊派遣要請」文書を手渡した。鈴木知事は元自衛隊員だ。京都大学法学部を卒業後、2000年に陸上自衛隊に入隊。東ティモール国連平和維持活動(PKO)やイラク復興支援活動などで部隊を率いた経歴を持つ。そんな鈴木知事によると、自衛隊派遣要請は、自衛隊による直接的な「クマ駆除」のためではないようだ。自身のSNS(インスタグラム)には、クマの駆除に「自衛隊を出動させればよいとのご意見をいただいた」と明かしたうえで、駆除のための「武器使用は法的に不可能」と投稿。「駆除そのものを目的とする武器使用は現在の法令では許されない」(鈴木知事)。さらに、「銃や訓練の性質からもクマの駆除は難しい」と記した。つまり、自衛隊が銃を使ってクマを駆除するのは、現実的ではないということだ。なぜなのか。「自衛隊員は銃器の取り扱いに慣れていますが、装備している小銃と猟銃では、使用目的も銃弾の威力も全く違うんです」陸上自衛隊が装備している主力の銃は、防衛省によると、「89式5.56ミリ小銃」だ。「対人用の小銃で、防弾チョッキ(最新型を除く)に対する貫通力がある程度あり、直径5.56ミリの尖った弾頭を高速で発射します。けれども、クマに対して致命傷を与えることはできません」(玉木さん)。クマの駆除で一般的に使用される猟銃は大口径の「7.62ミリ」。直径わずか約2.1ミリの差だが、弾頭の重量は約2倍も違う。それだけ威力が大きいのだという。弾頭の形状も異なる。猟銃の銃弾の頂部は平ら、もしくはくぼんでおり、着弾の衝撃で変形炸裂する。つまり、目標を貫通せず、内部組織を大きく破壊するのだ。「一般的に『ダムダム弾』と呼ばれる銃弾です。人道的ではないことから、軍隊での使用は国際条約で禁止されており、自衛隊も保有していません。けれども、こうした威力のある銃弾でないと、クマの動きは止められないのです」(同)。発射に際しては、周囲への配慮も求められる。弾がクマの体を貫通することも想定して、その背後で跳ね返るなどして事故を起こさないように、土手などの「バックストップ」の確保が必要だ。自衛隊はより威力の高い口径7.62ミリの機関銃なども装備しているが、それをクマ駆除に用いることも現実的ではないという。貫通力を重視した銃弾ため、クマを突き抜けた弾が跳ね返り、二次被害をもたらす恐れがあるためだ。では仮に、自衛隊員が猟銃を持ち発砲できるのであれば、クマを駆除できるのか。玉木さんはこう話す。「いくら自衛隊員とはいえ、いきなり猟銃を撃ったのでは、当たらないと思いますよ」。自衛隊が一般的に用いる5.56ミリ弾に比べて、猟銃の7.62ミリ弾を発射する際の反動は大きく、簡単に扱える代物ではない。また、弾頭の重量や形状が違えば、弾頭が発射されてから目標に達するまでに描く軌跡、「弾道」の特性も違ってくる。「われわれハンターも、弾が変われば、50~100発ほどは発射しないと、弾道特性を把握できません」(同)。さらに、クマの駆除には極めて高い射撃技術が要求される。一撃でクマの脳(脳幹)や心臓、肺などの「バイタルポイント」を撃ち抜かなければ、反撃される恐れがあるうえに、手負いのクマが市街地に逃げ込む恐れがあるからだ。「そもそも、自衛隊員は銃で相手を殺害する訓練は受けていません」(同)。自衛隊の「発砲」は、相手を負傷させ、救護人員を割くことが主な目的だ。「クマの駆除に適した装備もなければ、訓練も受けていない自衛隊員が、クマ駆除を行うのは、現状では極めて非現実的だと思います」(同)。ではなぜ、自衛隊派遣が要請されたのか。主な目的は、災害派遣と同様、マンパワーを生かし、ハンターの「後方支援」を意図してだという。具体的には、クマを捕獲するための箱ワナの輸送や設置、ワナの巡回と捕獲の確認などが想定されるという。「自衛隊から『こういう手伝いができますよ』と言ってくださるのであれば、ハンターたちはとても助かると思います」(同)。たとえば、箱ワナは大型のものになると200キロ以上にもなる。設置にはクレーン車が必要で、設置場所も限られる。ハンターは高齢化が進んでおり、環境省によると、60歳以上の狩猟免許所持者は約6割(2020年度)。各地で年々、クマの駆除が困難になっている。自衛隊が活動を支援してくれるのであれば、大きな助けとなるかもしれない。玉木さんは、こんな期待も寄せている。「猟友会がクマの捕獲を担うことが難しい地域は、今後増えていくでしょう。狩猟免許を持つ自衛隊員が猟友会に入り、3年くらい学び、駆除の現場に立つような仕組みは、政府が本気で取り組めば、できるかもしれません」(同)。学びとして、「3年」もの期間を要する理由は、クマ駆除の難易度の高さにある。射撃の技術に加え、地域の特徴をつかむ必要があるからだ。「長年、ヒグマを駆除しているわれわれでさえ、札幌以外の地域から応援を求められると、二の足を踏みます。その地域の特徴がわからないからです」(同)。クマの動きは地形によって異なる。「現場に立ったとき、クマが姿を現したときの動きを頭の中に描けなければ、的確に対応できず、事故のリスクが上がります。仮に、自衛隊員がクマを駆除できるようになったとしても、初めての現場にいきなり行って活動するのは困難でしょう」(同)。10月30日、秋田市に駐屯する陸上自衛隊第21普通科連隊は猟友会員や県職員から箱ワナの設置方法やクマから身を守る防御姿勢などを学んだ。後方支援を行ううえで、大切なのは、地元のハンターとの連携だという。「自衛隊が保有する特殊な機材を使えば、もっと的確な場所に箱ワナを設置できるかもしれない。そのためには、日ごろから地元とのコミュニケーションが必要で、今回の事例は、その試金石になるかもしれません」(同)。増えるクマ被害に、自衛隊派遣が奏功することを願ってやまない。
(クマ被害で自衛隊派遣もなぜ直接駆除せず?立ちはだかる“法的根拠”と“装備の検討”)
クマ対策にかんして、国をあげての対応について“ハードル”もあるようです。2025年は過去最悪のクマ被害となっています。死者は12人、これまで過去最多だった2023年の6人の2倍です。被害が突出しているのが秋田県と岩手県。特に秋田県では25年、1000頭以上が駆除されていますが、そうしたなか自衛隊に出動を要請しました。ただ自衛隊は直接駆除をするのではなく、箱わなの運搬やハンターが駆除したクマの輸送など、後方支援を担う方針です。自衛隊が武器を使ってクマを駆除するためには、様々なハードルがあります。自衛隊の出動は、他国から侵略を受けた際の▼「防衛出動」、国内で暴動が起きた場合の▼「治安出動」、大規模災害が起きたときの▼「災害派遣」、国民の生活に役立てる▼「民生支援」などがあります。武器の使用についてはそれぞれ、「防衛出動」「治安出動」は可能ですが、「民生支援」は原則不可能と決まっています。▼「防衛出動」→〇▼「治安出動」→〇▼「災害派遣」→△▼「民生支援」→×(原則)ただ、そもそも武器の使用は動物の駆除を想定しておらず、法的根拠は不明確です。2016年に公開された映画「シン・ゴジラ」。劇中の政府は、「防衛出動」か「治安出動」かを検討し、結局、「防衛出動」を命じました。一方、当時、映画を見た石破茂前総理は「ゴジラの攻撃は他国からの侵略ではないので『災害派遣』が適切だ」と指摘。そのうえで、「武器を、災害を取り除くための“道具”とみなして使用すればよい」としたのです。このように、自衛隊の出動や武器の使用には様々な検討が必要で、今回の出動は「民生支援」との位置づけです。自衛隊による動物対策は過去にも数回、行われてきました。異例だったのが、60年ほど前に北海道で行われたトドの駆除。漁業被害を防ぐため、戦闘機が機銃を連射し、陸からは機関砲などが撃ち込まれました。なぜ武器が使えたのかというと、本来の任務としてではなく、「訓練」名目として行ったからだということです。今回と同様の「民生支援」は、2010年代に北海道や高知県でシカの駆除の支援活動として行われました。このときは、自衛隊がヘリコプターでシカの群れの位置を伝えるなどしました。仮に自衛隊がクマの駆除を行う場合は装備の検討も必要です。クマは脂肪が厚く、頭蓋骨も硬いことから、ピストルでは駆除が難しいといわれています。では、自衛隊の自動小銃なら有効なのでしょうか。元陸上総隊司令官の高田克樹氏は、「自衛隊が通常使う自動小銃は相手の制圧を目的とし、殺傷能力が高くない。クマを一発で仕留められるか不明で、威力の強い狙撃銃など、武器の慎重な選定が必要」と指摘します。今回、自衛隊は直接クマの駆除は行わない方針ですが、国は警察や公務員がライフル銃などを使ってクマの駆除を行うことを検討しています。
(市街地のヒグマ駆除は超高難度「腕前だけでは足りぬ」:北海道)
196万人が暮らす札幌市のヒグマの出没状況が過去最多ペースで推移している。民間人ながらハンターとして最前線に立つ「ヒグマ防除隊」の玉木康雄隊長(63)に、市街地でのクマ対応の難しさやプロフェッショナルの現場の背景を聞いた。猛獣であるヒグマの捕獲の難易度はそもそも高いのですが、市街地での駆除は、山中よりもさらに高難度になります。ヒグマは反撃してくるのが当たり前。手負いで興奮した状態は非常に危険です。そんなクマを市街地に逃すような事態は、絶対に起こしてはなりません。一般的に、ヒグマの急所とされるのは、バイタルポイント(=心臓や肺周辺)とブレーンシステム(=脳幹神経周辺)です。命中率が高いのは、範囲が広いバイタルポイント。クマ狩猟では、まずバイタルしか狙いません。ただ、バイタルは着弾しても、即倒するとは限らない。猛スピードで反撃や暴走をされるリスクが払拭(ふっしょく)できません。そのため、私は隊員にあえて「市街地では、可能な限りブレーンシステムを狙って欲しい」と依頼します。ブレーンシステムはだいたい人間の拳ぐらいの大きさ。命中の難度は飛躍的に上がりますが、脳幹を撃ち抜けば、ヒグマは即倒し、行動不能にできます。その上で、暴走リスクをさらに下げるため、防除隊は「脳幹と同時にバイタルも同時貫通させる完璧な一発」を狙います。その範囲は、わずかに5センチ程度です。
(全国で深刻化する熊被害、AI活用した「遭遇予測マップ」を上智大が公開)
北海道だけでなく、全国各地で相次ぐクマの出没。10月28日には岩手県盛岡市の中心部に出没。通勤通学の時間帯に銀行の駐車場に居座り、周辺は一時騒然となった。その後捕獲されたが、各地でクマが大きな脅威となっている。そんな中、いま話題になっているのが「クマ遭遇AI予測マップ」だ。このマップは、AIを活用してクマとの遭遇リスクを色分けして表示するもので、上智大学の深澤研究室が開発した。クマ被害が深刻な秋田県や岩手県盛岡市、北海道札幌市などのマップが公開されていまる。その中から今回は、札幌市のマップを詳しく見ていく。まずはこのマップの見方から。マップ上に点在している「○」マークは、色の濃さによってクマとの遭遇率の高さを表している。色が濃いほど遭遇リスクが高く、薄ければ低いことを示す。そして「×」マークは、直近12ヶ月のクマの遭遇被害を表している。札幌市のマップを見ると、南区や西区、手稲区、豊平区などの山に近いエリアで濃い色が目立っている。一方で、中央区や東区、北区といった市街地にも、やや高い遭遇確率を示すオレンジ色のエリアが点在。これは実際に被害があったという訳ではなく、遭遇するリスクがある、ということを示している。では、このAI予測マップ、どんなデータを読み込み予測しているのだろうか。札幌市の場合は過去4年間の出没記録、人口分布、周辺の自然環境(山林や河川との地近さ)、道路状況、木の実の豊凶状況など、さまざまな要因を組み合わせて作成されている。こちらの「クマ遭遇AI予測マップ」は研究段階だが、開発した深澤佑介准教授は「地元の方や観光客など、土地に詳しくない方にも参考にしてもらえたら」と話している。クマの出没は北海道だけでなく、今や全国的な問題だ。国レベルでの対策も求められる。
(危険鳥獣駆除、町判断で猟銃使用が可能に:神奈川)
9月1日の改正鳥獣保護法施行により、市街地に出没したクマを市町村の判断でハンターに委託し猟銃駆除できる「緊急銃猟」が始まった。他県では既に実施による駆除報告も出ており、足柄上地域でクマの目撃が多い山北町と松田町でも対応に向けた協議を進めている。松田町と山北町では昨年度から「ツキノワグマ等対策協議会」を設立し、クマの目撃情報の共有や対策事業を実施している。10月の協議会では、緊急銃猟のガイドラインを確認し、今後は国のガイドラインに基づく対応を行っていくとしつつ、発生時に備えた町独自のマニュアル作成にも取り組んでいくという。今回の改正法では、人の生活圏へのクマなど危険鳥獣の出没が増加する背景を受けて、迅速な対応をするため新たに市町村がハンターに猟銃の使用を委託できるようになった。委託できる条件は「人の生活圏に侵入」、「緊急性が認められる」、「銃猟以外での捕獲が困難」、「人に弾丸が到達する恐れがない」の4つで、全てを満たしている時に市町村の判断で緊急銃猟の実施が可能となった。実施にあたっては、通行制限や住民の避難指示など安全確保が義務付けられているほか、人や住宅への被害がでた場合は市町村が補償を行う。松田町の担当者によると、4つの条件をすべて満たすハードルは高く、他市町ではクマが移動したことで緊急銃猟が取り消された事例もあるという。担当者は「緊急銃猟が実施される時は、担当課以外の職員の協力も必要。町民の命を守るためにも危険が生じないよう体制を含めて運用を進めていきたい」と話した。足柄上郡猟友会の中野博支部長は「事態が起こったときにどのように行動するか、町との段取りはこれから。いざという時に対応できるよう準備したい」と話した。
(1500円「この時給で命張れって言われても...」ハンターがX投稿で訴え)
狂暴なクマを駆除するのに時給があまりにも安過ぎると、長野県内で活動しているハンターの男性が、Xへの投稿で窮状を訴え、反響を呼んでいる。時給は1500円となっており、牛丼店のアルバイトよりも安いのではないかとの声が上がった。命をかけて出動するハンターに必要な報酬とは――。クマが人を襲うケースが各地で続発し、2025年9月からは、市街地での緊急銃猟も始まった。怖くて家から出られないといった悲鳴が住民から上がり、観光地の人出にも影響が出ているとされている。そんな中で、クマを撃てるハンターが減ってきているとされ、各自治体も対応に頭を悩ませているようだ。長野県内でハンターをしている「信州ジビエ職人」さん(@nekota_gorou)は10月30日、ハンターが不足するのももっともだとして、県内のある市から提示された報酬額の明細画像を投稿した。それを見ると、ツキノワグマに対応する報酬額として、2時間で3000円となっていた。つまり、時給が1500円ということだ。ジビエ職人さんは、「そりゃそーだよね。この時給で命張れって言われてもね」と溜め息をつき、「まあそれでもやるけどさあ」とハンターとして続ける意思を示した。この投稿は、21万件以上の「いいね」を集め、様々な意見が寄せられている。ジビエ職人さんは、クマを駆除したときの1頭ごとの報奨金もなく、弾薬代も自腹で支払っていると現状を明かした。ジビエ職人さんは31日、J-CASTニュースの取材に応じ、「うちの地区には、クマが住宅街に出ることは幸いない」とし、リンゴ畑などにクマ用の罠を設置したり、罠にかかったクマの止め刺しをしたりする出動が主だという。それでも、クマを駆除するには、相当の危険が伴っていると明かした。「罠にかかれば、手順を守って駆除するなら、危険は少ないと思います。しかし、イノシシ用などの罠に誤ってかかった錯誤捕獲では、クマは力強いので、ワイヤーをかけた木をなぎ倒して突進してきたりします。こうした経験は何度もあり、とても身の危険を感じましたね」。そんな中でのハンター活動だけに、ジビエ職人さんは、市などの出動要請に伴って支払われる報酬額に疑問を呈した。「ハンターの高齢化が進んで、次々に辞めていっています。次の世代は、時間的・経済的に余裕があってボランティア活動ができた前の世代とは違います。みな仕事を持っており、ボランティアですぐに来てほしいと言ってもできるかどうか。時給1500円でやります、という人はいなくなるのではないかと危惧しています」。ハンターが出動する基準としてその対価は重要だとし、少なくとも現在の倍にしたり、日当制にしたりするなど、待遇は改善すべきだと指摘した。クマ対応に当たる長野県内のある市の担当課は10月31日、取材に対し、ハンターの出動に対しては、時給1500円を支払っていると答えた。「長野では、冬の狩猟期以外は、勝手に猟銃で撃つことはできません。県が許可して、罠の設置や止め刺しに対して、緊急対応の賃金として報酬を支払っています。それだけではなく、パトロールをしたり、クマを追い払ったりする出動も対象です」。報酬は、弾薬代などの経費込みとして支払っており、猟銃で撃つことを認めていないため報奨金もないという。「ハンターの方が赤字になりかねないので、燃料費・弾薬代が高騰するようでしたら、来年度以降に見直していきます。ご意見を元にして、適正な報酬額になるよう検討します。緊急銃猟は未実施ですが、危険性が高いので、別の仕組みにしたいと思っています。状況を確認しながら、何が一番いいのかを考えていきます」。
(体重70キロのクマの手足、 凶暴性を伝える写真が衝撃)
各地でクマによる人的被害が相次ぐ中、猟師の男性がSNSに投稿した写真が注目を集めている。体重70キロあるツキノワグマの手足の裏側。肉厚な手足は皮に覆われ、甲には鋭く湾曲した形の爪5本が隠されている。凶暴性を伝える1枚に、ネット上では「そりゃ、この手で振りかぶってこられたら顔の皮剥がされるわ…」「人間の70キロと全然違う」などの声が寄せられている。投稿したのは、長野県でジビエ加工施設を営むX名・信州ジビエ職人さん(@nekota_gorou)。行政から依頼を受け、クマやイノシシなどの捕獲・駆除も行っている。「今年の捕獲数は4頭と少ないですが、地元での目撃、農業被害は例年以上に多いです。以前は夜間にリンゴを食べに来るくらいでしたが、最近は早朝、夕方にも出没が増えています」と状況を説明する。この日、Xに投稿したのは、今月の有害駆除で捕獲された個体。リンゴの食害が報告され、クマ用の罠で捕獲し、猟銃でとどめを刺した。大きさは測定していないが、「手は人間の5倍くらい重いです。骨も強くて、イノシシやシカと比べても圧倒的に硬い。以前、骨を砕こうとトンカチで叩きましたが、全く砕けなかったです。ニュースでも人的被害が報道されていますが、まともにパンチをくらったら首の骨をやられますね」と話す。一方、足は手よりも小さいという。「肉球はとても硬いのでクリのイガ踏んでも痛くないし、有刺鉄線も簡単に登る感じです」。ではなぜ、山奥で暮らしていたクマが人里に出没するようになったのだろう? 男性は、クマの個体数が増えたことを指摘する。「クマが増え過ぎてテリトリーを追い出されたり、クマを維持できるエサがなくてエサを求めて山から降りてきたりしているのではないでしょうか」と推測する。また、ニホンジカも爆発的に増えているといい、クマのエサの一部がシカに食べられ、エサが少なくなったことも考えられるという。「シカは、クマも食べる落ちたどんぐりも食べますね」と男性。このほか、里山の過疎化、耕作放棄地の増大、放置された柿など果樹の放置、ハンター人口の減少…といろんな要因が絡んでいるという。
(熊の“おとなしくて怖がり”説はすでに崩壊)
全国各地で相次いでいる熊による被害。かつては山地だけでの出来事かと思われていたが、昨今は住宅地に熊が出没し、人間を襲撃するケースが多発している。なかでも、"おとなしい性格"だと言われていたツキノワグマが無差別に人間を襲う事件も珍しくない。これから人間はどう熊と相対していけばいいのだろうか。それを考えるには、過去の熊被害と向き合う必要があるだろう。別冊宝島編集部編『アーバン熊の脅威』から、ツキノワグマによる襲撃事件を2件紹介する。2023年10月17日の夜、富山市江本の住宅敷地内で熊に襲われたとみられる住人の70代女性が死亡した。女性の夫が「午後6時頃から妻の姿が見えない」と警察に通報し、駆けつけた署員が敷地内で血を流してうつ伏せに倒れている女性を発見。頭やアゴに深い切り傷があり、死因は首や胸を骨折したことに伴う出血性ショックだと明らかになった。顔の損傷があまりに激しく、住宅敷地内の事件で身内である夫もいる状況でありながら、身元の特定に時間がかかったという。顔面を集中的に狙う攻撃方法は、熊の襲撃の特徴そのものだ。これらの要素から女性が熊に襲われて死亡したのは、ほぼ間違いないとみられたが、それを特定することが難しいほど遺体の損傷も激しかった。夫の気持ちを思うと、なんともやりきれない事件だ。現場は富山駅から南に8キロほど離れた田園地帯だが、周辺には住宅が点在しており、近くには小学校もある。まぎれもなく「住宅地」であり、そこに人間を襲うような熊が堂々と現れるということ自体が異常性を感じさせる。この8日前にも近辺で70代の女性が熊に襲われ、顔などをひっかかれて重傷を負う事件が起きており、小学校の校庭でも熊の足跡が見つかるなど、例年にないほど熊が出没していた。10月23日には、死亡事件の現場から約2.5キロ離れた富山市安養寺の住宅敷地内の納屋の中で作業をしようとしていた70代男性が熊に襲撃される。男性は応戦したが、熊と格闘したことで両手に全治1か月のケガを負った。地元のハンターたちが付近を捜索し、体長1.2メートルほどの雄のツキノワグマを発見。熊は猟銃で射殺されたが、70代女性を殺害したとみられる熊と足の大きさが酷似しており、同一の個体である可能性が高いと判断された。高齢の女性を鋭い牙と爪で痛めつけて命を奪い、さらに別の男性を襲ったという事実を踏まえると、ツキノワグマの特性とされる「おとなしくて怖がりな性格で、積極的に人間を襲うことはない」という定説はとっくに崩壊しているのだと思い知らされる。一連の事件の現場となった地域には柿の木が多くあり、ツキノワグマは柿の実を狙って出没したと指摘されている。実際、被害を防ぐために柿の木を伐採した地域は、熊がまったく姿を現さなくなっていた。だが、地域によっては高齢化が進んでいるため、柿の木を伐採する人手が足りず、放置されているケースが少なくない。高齢化社会と過疎化が熊による人身被害を呼び込んでしまった側面もあるのだ。2023年10月19日、秋田県北秋田市の市街地で一日のうちに6人が次々と熊に襲われるという驚くべき事件が起きた。最初の被害は午前6時40分頃、83歳と81歳の女性2人が熊に相次いで襲われ、このうちのひとりは右肩を骨折し、頭を咬まれたり右目のあたりを引っかかれたりして重傷を負った。午前7時頃、熊は約700メートル離れたJR奥羽線・鷹ノ巣駅前の交差点付近に移動。バス停にいた16歳の女子高校生が左腕を咬まれるなどの被害に遭い、さらに付近を散歩していた82歳の女性も背中と肩を引っかかれ、転倒した際に頭を打った。それで被害は終わらず、午前11時20分頃にバス停近くの菓子店の主人である66歳の男性が外出しようとガレージのシャッターを開けると、わずか2メートほどの距離で熊と遭遇。とっさに男性は逃げようとしたが、熊が猛スピードで追いかけてきて後ろから押し倒された。男性はテレビ番組のインタビューで「(攻撃を)手で防いでいたんですけど、もう顔と頭に執着するんですね、熊が」「すごい勢いで『コォー』ってすごい声を出して(頭を)かじってくる。死ぬかもしれないなと……」と恐怖の体験を語っている。熊の攻撃が一瞬だけ緩み、男性は隙を見て逃走。熊が追ってきたがなんとか振り切り、約40メートル離れた建物に逃げ込んで間一髪助かった。頭や顔に大ケガを負った男性はドクターヘリで病院に搬送された。男性によると、建物に逃げ込んだ時に鏡で咬まれた箇所を確認したら「頭蓋骨が開いていた」と言い、右の耳たぶは咬みちぎられていた。顔面にも攻撃を受けたが、あと5ミリずれていたら失明のおそれもあった。幸い命に別状はなかったが、顔や背中などに痛々しい傷が残り、事件から1か月以上経っても目のかすみや立ちくらみ、少量の出血などの後遺症があったという。さらに同一の個体かは不明だが、同日の午後6時半すぎにも北秋田市の路上で、学校から歩いて帰宅していた14歳の女子中学生が熊に襲われ、頭や首などにケガをした。女子中学生は自力で自宅にたどり着き、姉が「妹が熊に咬まれて出血している」と119番通報をして病院へ搬送された。次々と人を襲った熊が現場に残した糞からは、人里で栽培されるソバの実が見つかった。山でブナの実などが不作となったことから、人里へ下りてきて普段は食べないソバの実などを食べていたとみられる。しかし、そのような事情があったとしても、市街地で一日に6人も熊に襲われるというのは異常事態。幸いにも死者は出なかったが、熊の性質や状態によっては、とてつもない大惨事になっていた可能性もある事件だった。
(80年間の新聞を分析して判明「人食いグマ」から生き延びる方法)
今年度クマに襲われて死亡した人は12人にのぼり、過去最多の被害となっている(10月30日時点、環境省まとめ)。ノンフィクション作家・人喰い熊評論家の中山茂大さんは「約80年分の北海道の地元紙を通読し、クマと遭遇するも逃げ延びた事例を分析した。その結果、無事に生還できたケースには、いくつかのパターンがあることがわかった」という――。今夏は、北海道福島町で新聞配達員が、知床の羅臼岳で登山客が喰い殺されたのをはじめ、秋以降は本州のツキノワグマが近年になく凶暴化し、クマによる人身被害が過去最多を記録している。これにともない、クマに出会ったときの心得のような特集をあちこちで見かける。筆者は明治大正昭和と約80年分の北海道の地元紙を通読し、また市町村史、部落史、自伝、林業専門誌などにも目を通して、ヒグマに関する記事、挿話を抽出、データベース化し、拙著『神々の復讐』(講談社)にまとめた。その中には、実際にクマと出会ったのち無事に生還した事例も数多く存在する(襲いかかってくるクマを「巴投げ」で投げ飛ばして助かったというような都市伝説的な話などもある)。先人達の体験から、クマと遭遇した時の効果的な対策について考えてみたい。①「死んだふり」は有効か?「ヒグマに遭ったら死んだ真似をすると助かる」という俗説は広く信じられているが、これは「クマは動かない物は食わない」という、これまた俗説によるもので、専門家によれば確率は五分五分であるという。実際に助かったケースでも、けっこうな怪我を負わされることが多いようだ。古い事例では明治の初め頃に、次のような事件があった。亀田郡七飯村の者が単身で舞茸採りに出かけ、たまたま大きな舞茸を見つけて、天の賜と喜んで思わず声を発したところ、生い茂る木立から大牛にも等しい猛熊がこちらを目がけて進んで来た。その勢いの恐ろしさは「胆魂魄も天外に飛去り」という有様であった。某はかねて聞いていた通り、死ぬも生きるも天の運と度胸を据えて自らそこへ打ち倒れて息を殺し「死したる体」を見せかけた。やがて彼の熊が側に近づき、某の体をしきりに打ち叩き、爪でもって散々傷つけた後、手を口に当てて呼吸の有る無しをうかがい、真に死んだと思ったのか、その場を立ち去った(後略)(『函館新聞』明治14年10月10日)。結局この男性は27カ所の傷を負って病院に運ばれたそうである。他にも全治3週間の重傷を負ったり、後遺症が残ったりした事例が以下の二つである。夕張炭鉱の坑夫、中村理吉(三二)は、炭層調査のため八名の人夫と共に従事中、巨グマが突如、前途に立ち塞がり、咆哮一声したので、理吉は大地に俯伏した。飛びかかったクマは、その後頭部に噛み付いたが、必死に痛みをこらえて仮死の状態を装い、しばらくして静かに頭をもたげてみると、クマはなおかたわらを去っておらず、手を挙げてさらに頭部を掻きむしり、紅に染めて倒れた姿を見て、悠々と立ち去った(後略)(『北海タイムス』明治41年9月3日)。“熊は死んだものは襲わない”と教えられていたのは嘘でした。熊は私の上に腰を下ろして長い爪で尻べたにズブリと刺しました。痛いのでビクッと動くとウワッと唸って咬みつきました。ひっくり返すやら手玉に取ったり、まるで熊のおもちゃでした。追っ手の人が来て仕止めてくれましたが、片目、片手、片足になりました。それでも猟師の人達が熊をなげおいて、病院に運んでくれたので助かりました(吉本国男)(『東三川百年史』平成7年)。②静観して生還する「死に体」を装わないまでも、クマの存在を無視して助かった、つまり「静観して生還した」事例もある。特に、煙草を一服しているうちにヒグマが立ち去ったというケースは多い。昭和三〇年六月、(中略)二〇林班曲線車道で自動二輪がすぽっと埋まり、動けなくなって降りて押しても動かず煙草を一服してちょっと横を見ると一〇m位先に頭を下げてこちらを睨んでいる、静かに見ると背中毛を立て段々顔のまわりの毛も逆立てかまえる、これはちょっと相手が悪いので自動二輪のエンヂンをとめて煙草をくわえ横を見ながら腰の山刀を持って最悪を考え構える。エンヂンを止め横を向いたので安心して横の藪に入って行った(後略)(六、実話の一遍 及川公『東山郷土史』)。小樽市信香町に住む松嶋慶章が馬に乗って我が家を出て、奥澤村奥字ガビタイの炭焼場見廻りに行く途中、(中略)馬は何物にか驚いて進まず、ハテなと思い四辺を見廻すと、やがて彼方の藪中より丈四尺あまりの大熊が、ガサガサ笹を分けて出て来たので、同氏も驚くこと大方ならず、さっそくマッチを取り出し煙草をスパスパ喫ひ、臆せずにいたところ、熊は十分間ほどヂロヂロ此方を眺めた末、元の笹藪の中へ逃げ入ったので、同氏は駈け通り、用を済まして帰ったという(『小樽新聞』明治28年8月13日)。幌去村の大西松次郎(六一)という者が、同村右左府原野よりの帰途、(中略)わずか十五六間の所から、がさりがさりと笹の音をさせて熊が道路に姿を現し、そのまま不動の姿勢を取った。(中略)かかる時に急いては事を仕損ずると、生死を天に任せ、そのまま地上に腰をおろしマッチをすって煙草を吹き付ける瞬間、熊はいずれかへ姿を隠した(後略)(『北海タイムス』明治43年11月3日)。これらのケースを見ていると、遭遇した当初はクマも警戒し、毛を逆立てているが、こちらに害意がないとわかると、次第に落ちつき、静かに去って行くというパターンが多いようである。③「気合い」で助かる次に紹介するのは、クマに立ち向かって撃退した事例である。士別市で農業を営む武山藤吉(七十四歳)は、自宅から十キロ離れた山林で三十メートルほど先にヒグマを見つけた。五歳くらいで体重は百二十キロほど。開拓に入って以来ヒグマを見たのは二度目で、全身の血がサーッと引いていくのがわかった。ヒグマは頭を左右に振りながら、ゆっくり近づいてきた(筆者註:これはヤバイ個体の行動パターンである)。睨み合いながらジリジリと後ずさりするうち、何かにつまづいて転んでしまった。尻の左側にカッと熱いものが突き刺さり、噛みつかれたのだとわかった。立木を背にした武山は腰に鉈を下げていたことを思い出し、ヒグマの顔面めがけて渾身の力をこめて打ち込むと、手応えがあり、クマの右目下から血が噴き出した。クマは数メートル下がって立ち上がった。毛を逆立てて物凄い形相である。「さあ来い!」三十年竹刀を振るってきた剣道四段のれっぱくの気合いに、さすがのクマも怖じ気づいたのか、背中を向けて笹藪に駆け込んだ。(『読売新聞』昭和45年9月27日)。この事件は、かの日高山脈で福岡大学ワンゲル部員3人が喰い殺された事件とほぼ同時期に起きているが、それはともかく、絶体絶命の状況で「気合い」を放つことで死地を免れた人は意外に多い。小栗さんが熊を撃って手負わせ山の中腹に居たところ、熊が峰の頂上に現れ、小栗さんを見ると十数間を一直線に突っ込んできて、鉄砲を構える隙も与えず、両前足で小栗さんを抑えつけてしまった。小栗さんが絶体絶命と思い、「貴様は俺を食うつもりかあ」と精いっぱいの声を出しで絶叫すると、熊は驚いて手を放した。その一瞬、小栗さんは鉄砲を持ったまま下の谷底にとびおりた。(中略)小栗さんは重傷を負いながら山小屋に辿り着いて救いを求め、辛うじて生命が助かったのである(『サロベツ原野 ―わが開拓の回顧―』佐々木登)。浦河町の平野清博も決してヒグマを恐れず、いわば「度胸勝ち」でヒグマを逸走させたが、ある年の秋、野深の奥にマイタケ採りに入って、ヒグマに出遭った。(中略)彼は山用に改造したマキリ一丁をふりまわしながらなおも進んだ。立ち止まったらやられる。頭のどこかに“熊なんて弱いものなんだ”という父のことばが聞こえる。その時ヒグマは鼻から勢いよく白い液を、かれめがけて飛ばした。かまわず進む。(中略)「こら、オレみたいな強い男に向かってくるのか……」叫びかけたかれの声にヒグマが驚いたように立ち止まり、クルッと後ろむきになると逃げだした。かれがなおも追いかけると根曲がり竹の上を飛ぶように逃げ失せたという。(文責 高田)(『続浦河百話』)。相手を「手強い」とみると、クマもひるんで退散する。まさに「気合い」でクマに勝つわけである。④戦って生還する次の記事は、ヒグマの指を噛み切って助かったという珍しい事例である。中頓別の自転車販売業、和田元五郎が勝井沢にヤマベ釣りに出かけたところ、突然仔熊を連れた猛熊が和田に飛び付き大格闘となり、熊が和田の顔面を剥ぎ取ろうとする際、親指が和田の口中に入ったので、死力をもって親指を咬み切った勢いに辟易し、藪中に逃げ失せた。和田の傷は十四ヶ所に及んだが、生命に別条ない(『北海タイムス』大正9年7月22日)。指を噛み切らないまでも、口に手を突っこんで助かったケースも散見した。ある年、中宇津々部落では多くの緬羊が熊の被害にあい、ハンターがアマッポー(仕掛け銃)をかけたところ、クマが手負いのまま逃げた。傷を負った熊は、ところどころで休んだらしく血痕の跡が草や土にベッタリ付着している。ハンターの一人が「近いぞ」とささやいて間もなく、待ち伏せしていた熊がハンターめがけて飛びかかり、体をかわす暇もなく熊に押さえつけられてしまった。熊が大きな口を開け、ハンターの頭に噛みつこうとした時、身を捨てる思いで握りこぶしを作った腕を熊の口の中におもいっ切り入れた。腕を噛まれたが、噛み切るところまではいかず、熊の方が息苦しくなってハンターを離して逃げた(後略)(熊狩り逸話[昭和31年6月15日、16日]『紋別市宇津々部落開基九十周年記念事業宇津々郷土史』昭和61年)。布部部落の渡辺代次郎は、富良野沿線で知られた狩猟家で、十数頭のヒグマを撃ち取っているという。渡辺が九死に一生を得たのは、昭和三十八年九月末のことであった。(中略)突然、大木の根元に潜んでいた熊が飛びかかってきた。不意を突かれて組み伏せられた渡辺は、咄嗟に右手を熊の口中深く差し込んだ。その状態で左手だけでライフル銃を操作して、熊の喉元に銃口をあてがい、不発でないことを念じながら引き金を引いた。弾は見事に咽喉を貫通して、熊がひっくり返った。(後略)(大西松次)『富良野こぼれ話』(富良野市郷土研究会 昭和54年)。⑤拝んで助かる「クマに拝んで命拾いした」という事例も、数は少ないが記録されている。網走の農業一ノ瀬利助の妻イト(二九)が立木伐採小屋で昼飯の準備中、長男義一(六ツ)が隣家の子供二人と遊びに出かけた。しばらくして子供らが息せき、熊が出たと蒼くなって逃げて来たが、義一の姿が見えない。イトは驚き、二歳の男の子を背負ったまま裸足で駈け出して我が子の行方を探し回るうち、遙かの藪中に義一の足をくわえ引きずっていく大熊を見つけた。半狂乱で熊に近より、義一を抱えて引っ張ると、義一のゴム靴だけ熊の口に残り、義一を熊から奪い取って小脇に抱えたが、熊は義一を見付けてなおも挑みかかり、義一の足に喰いつこうとするので、(中略)絶体絶命となって、「どうか熊さん親子三人の命を助けて下さい、決して仇をしないから」と手を合わせて二、三度拝んだ。その精神が熊に通ったかどうか、熊もボンヤリ二三間後退りしたので、イトは義一を抱いて一目散に駈け戻った(『小樽新聞』大正11年12月4日)。クマに説教するエピソードはアイヌの逸話にもよく出てくるが、語りかけることで気が立っているクマを落ちつかせる効果があるのかもしれない。⑥奇抜な方法で助かる傘が有効だという話は都市伝説的に知られているが、以下はその実際にあったという事例である。ある年の秋もやや更けた黄昏時、街道を広尾方面に向かって行く一人の洋服姿の男があった。それはエスという十勝支庁の技手で、公用で広尾に出張する途中であった。折から広尾方向からこの方に向かって一人の旅人がとぼとぼと歩いて来る。ところがその後方二、三町はなれたところにも黒点が二つ、追い迫るように進んでくる。よく見ると、その黒点の一つは大熊で、その後ろの黒点は鉄砲をもって追跡して来るアイヌであった。熊は全身の金毛を逆立て、猛然と矢のように走ってくる。その後ろからアイヌは大声で「熊だあ、逃げろ!」と叫んでいる。この様子を見たエス技手は、びっくり仰天して路傍の柏の大木によじ登ったが、かの旅人は「熊だ」というアイヌの声に驚きふり向くと、すでに熊は背後に迫り、猛然立ち上がってまさに一撃を加えんとしている。しかるに旅人は逃げようともせず泰然自若として、そのまま路上に座してしまった。(中略)エス技手が恐る恐る目をあけて見ると、血に染まって倒れているはずの旅人は相変わらず平然として静座している。しかも肩には悠々と洋傘をひらいてかざしているではないか。(中略)熊はなぜ旅人に一撃をくわえなかったか。その謎はこうであった。旅人がびっくり仰天、腰をぬかして路上に座ると同時に、無意識のうちに肩にかついでいた洋傘がパッと開いて身をかばった。一方の熊は、鼻先に自分より大きな真っ黒なものがニュウッと現れたので、さすがの猛熊も三十六計をきめこんで逃げ出したのであった。(東川村 佐藤楽夫氏談『開拓秘録北海道熊物語』宮北繁 昭和25年)。変わったところでは香水のおかげで助かった例もある。旭川の私の友達の奥さんですが、若い娘さんを連れて勇駒別からはいったところ、クマが現われたわけです。若い人達は逃げたそうですが、その奥さんはつまづいてたおれ、失心に近いようになったそうです。おぼえていることは、クマが奥さんの頭のところに顔をやって、嫌な顔をしていってしまったというんです。きっと香水の匂いが嫌だったのでしょう、山にいくときは香水をたくさんつけていくと良いと、その奥さんが笑ってましたが(笑) (斎藤春雄談「てい談ヒグマ」)『林』(1968年5月号 北海道林務部)。現代であれば洗濯用柔軟剤の、いわゆる「香害」も効果的かもしれない。最後に筆者が調べた中で、もっとも参考になる、クマと出くわしたときの心得を、古老の談話より以下に転載しよう。もし出合った場合、いきなり駆け出して逃げることは禁物である。熊・犬等は逃げ走る物を追いかける習性があるから如何に早く駆けても四つ足の動物に勝てる訳がない。この様な時は落ちついて相手の目を見て絶対に目を逸らさない事、睨み合いが長くなると熊は必ず目を逸らすから、すかさずたばこか煙の出る物を燃やす。煙を非常にきらうようである。山路の曲がり角でいきなり出逢った場合、熊が異状に大きく見えたと出逢った人はいう。それは熊も人以上に驚き、瞬間全身の毛を逆立てるために異状に大きく見える、(中略)毛を逆立てている時が一番危険な時である。熊が目を逸らす時は逆立った毛も納まった時である。山へ入る時はナタ等を持ち、また、鈴・鐘等の鳴り物を持って行くこと、それらを鳴らし大声を出してもなお、近付いて来る熊は非常に危険である。その様な時は、まず食物を持って居たらそれを捨てる。一目散に走りながらそれでも追ってきたら、ぼうし・手拭い・上着等間隔をおいて捨てる。後は死にもの狂いで逃げるしかない(七、開拓と熊 佐々木辰吉『東山郷土史』)。
(「人を食べるクマ」を山から街に追い出している“意外な動物”の正体とは?)
秋田で自衛隊派遣も検討されるなど、過去最悪ペースで増加する「クマ被害」。人間を恐れず人里を襲う「アーバンベア」の恐怖が日本中を覆っています。なぜクマはこれほど凶暴化し、被害が増え続けるのか?「クマは全て駆除すべき」という議論が高まる中、「本当の原因は別にある」と筆者は指摘します。クマを人里に追いやっている“ある動物”の存在とは。犠牲者を減らす、驚きの解決策に迫ります。いよいよ「怪獣退治」のようなムードになってきた。秋田県内でのクマによる人身被害が50人を超えたことを受けて、鈴木健太県知事が自衛隊派遣を要請したところ、小泉進次郎防衛大臣が派遣の方向で調整をしているというのだ。要請内容としては、主にワナの設置や見回りなどの「後方支援」。「そりゃそうだろ、自衛隊の仕事はあくまで国防であって、クマの駆除なんてやらせたら気の毒だ」という人もいるだろうが、過去には自衛隊が実際にクマと「対決」した記録もある。1962年、北海道の標津町内の集落が深刻なクマ被害に見舞われた際、やはり派遣要請があり陸上自衛隊の第5師団27名の隊員が現地に向かった。パトロール中などでヒグマに遭遇した場合、発砲してよいという許可があったという。1971年、北海道芽室町で自衛隊の航空機が遭難して捜索をしていた際に、ヒグマと遭遇した自衛隊が小銃によって射殺している。ということは、今回も住民の警護やワナの設置をしている際に、陸上自衛隊とクマが「交戦」する可能性もゼロではないということだ。このような前例ができれば他自治体からの要請も増えるし、法整備も進んでいく。「人間vsクマ」の戦いは、ここにきて新たなステージに入ったのである。そう聞くと「だったら自衛隊の装備や組織力を使って、殺すのではなく捕獲して山に返してやればいいだろ」という心優しい方もいらっしゃるだろう。小さな子グマと母グマが連れ添っている映像とともに「猟友会によって駆除されました」というニュースが流れるのを聞いて、心が痛まない人はいないはずだ。しかし、犠牲者をこれ以上出さないためには「駆除」はやむを得ない。今、全国で人身被害をもたらしているクマというのは、本来の生息地である山から下りてきて市街地周辺に生息し、住宅街などに繰り返し出没する、いわゆる「アーバンベア」と呼ばれる新しい時代のクマだからだ。アーバンベアの特徴は人間を恐れることもなく、人間の気配を警戒することもなく、自ら人間と距離をつめて、襲いかかる点にある。わかりやすいのは今年7月、北海道福島町で新聞配達をしていた52歳の男性を襲ったヒグマだ。これは典型的なアーバンベアで、実は襲撃の4日前からこの男性の前に頻繁にあらわれていた。男性は母親に「ナイフを持っていった方がいいかな?」と不安を口にしていたという。町役場から700メートルのところで、発見された男性の遺体は全身に爪痕、腹部を中心に噛まれていた(7月21日 UHB)。つまり、人間を恐れて警戒するどころか、人間を「獲物」として狙いを定めていた可能性が高いのだ。なぜそのように推測されるのかというと、実はこのクマ、4年前にも人を殺しているからだ。2021年7月、福島町内で農作業中だった77歳の女性がクマに襲われて亡くなっているのだが、現場に残った体毛のDNA分析から同じクマだと判明したのである。これがアーバンベアの恐ろしさだ。市街地周辺で生息しながら、人間を恐れるどころか、「動きがのろくて、狩りやすい標的」と認識してしまっている。だから発見次第、「駆除」をしなくてはいけないのだ。「それは極端な例だろ」というクマ擁護派の方もいらっしゃるだろうが、被害数を見ると、アーバンベアが増えているというのは紛れもない事実のようだ。「朝日新聞」(10月26日)が集計したところ、今年4月から10月22日までにクマにより死傷した172人の中で、なんと66%に達する114人が市街地などの人里で被害にあっていた。全体の死傷者数も、過去最多ペースで増え続けているという。実際に、各地でアーバンベアによる凶行としか思えない凄惨な事件が続いている。宮城県大崎市では庭先でリードに繋がれていた体長50センチの柴犬がクマに襲われた。クマは柴犬をくわえて近くの森に消えた。岩手県一関市厳美町では、自宅の庭で67歳の男性が死んでいた。引っかかれ噛みつかれた跡があったのでクマに襲われたのではないかと見られている。すぐそばでは、飼い犬も殺されていた。秋田市雄和萱ヶ沢でもクマの目撃情報があった後、田んぼ近くの側溝でかなり損傷の激しい女性の遺体が見つかった。このような形で人間を恐れず、人間に自ら襲いかかるようなアーバンベアを捕獲して山に返したところで、しばらくしたら市街地に舞い戻り、また同じ凶行を繰り返すだけである。一度でも「人間の味」を知ってしまったクマが繰り返し人を襲うように、「人間密集地帯の味」を知ってしまったクマは、市街地から離れられず繰り返し犬や人間を襲い続けてしまうものなのだ。アーバンベア対策には残念ながら「駆除」という選択肢しかないということがわかっていただけたと思うが、これはあくまで「対症療法」に過ぎない。これ以上、被害を広げないためにも「原因療法」に取り組む必要がある。つまり、山の中に生息しているクマに人里に近づかせない、アーバンベア化しないような対策を講じていくのだ。では、どうするか。自治体によっては人里とクマの生息地に緩衝地帯をもうける「ゾーニング」を進めたり、オオカミ型のロボットが眼を赤く光らせて、鳴き声で威嚇をする「モンスターウルフ」の導入を進めたりしている。しかし、個人的には国をあげて「シカの駆除」に力を投じるべきだと思っている。なぜかというと、クマが人里に下りてくるようになった要因のひとつは、シカの「爆増」にあるからだ。よく言われるが、山で人間を襲ったり、人里まで下りたりしてくるクマはわりと小さい。あまりいいものを食べていないのだ。わかりやすいのは少し前、岩手県岩上市の温泉旅館の露天風呂を清掃していた60歳の男性を襲って殺害したツキノワグマだ。男性の遺体近くで駆除されたこの個体は、冬眠直前にもかかわらず、かなり痩せていたという。猟友会の会長がメディアに答えたところでは、この時期の一般的な成獣の場合、身体には5センチくらい脂肪がついているものだが、それが全くなかったという。では、なぜこんなに激痩せしているのかというと、冬眠前の栄養としてクマがたらふく食べる木の実が、シカによって日本の山から急速に消えているからだ。林野庁の「森林におけるシカ被害の現状と対策」によれば、ニホンジカは本州だけでも246万頭(令和4年末)もいる。北海道のエゾジカも急増して73万頭(令和5年度)となっているので、合わせると軽く300万頭を超える「シカ天国」となっている。「奈良のシカもかわいいし、たくさんいるのはいいことじゃん」と動物愛護の方は思うだろうが、実はこの300万頭が、日本の美しい自然を文字通り「侵食」している。《生鳥獣による森林被害面積は、近年、全国で約5000ha、このうちシカ被害が約7割前後で推移》(同上)《植栽木への食害、樹皮剥ぎ、下層植生の衰退などがあり、被害が深刻な地域では裸地化し、表面浸食が発生》(同上)。わかりやすく言えば、300万頭のシカたちが樹木を枯らして背の低いササやシダを消滅させ、土壌を壊すことで、いたるところにハゲ山をつくっているというのだ。なぜあんな可愛らしい動物が、そんなエグい自然破壊をするのかというと、「なんでも食う」からだ。《イネ科草本からササ類、広葉草本、樹木の葉、堅果類(どんぐり)まで1000種類以上の植物を採食》(同上)。さて、ここまで言えばもうお分かりだろう。冬眠前のクマが痩せこけて、露天風呂にいた人間を襲うようになったのも、人里に下りてきてエサになりそうなものがないかと徘徊するようになったのも、つきつめていけば「山や森にある1000種類以上の植物を食べ尽くすシカが300万頭以上に激増した」ということが原因である。シカに山や森林を荒らされ、木の実を食い尽くされて、人里に下りざるを得なくなっているのだ。だから、まずはシカを徹底的に駆除する。環境省・農林水産省が2013年に策定した計画では、2028年までにシカは155万頭まで減らすということになっている。あと3年でこれが達成できるかは疑わしいが、猟友会を日給8000円とかでこき使うのではなく、政府が予算を確保して、しっかりと制度設計して、シカを少しでも減らすことを推進していくしかない。そうすると、山や森の環境が多少は改善される。クマが十分に木の実を食べることができるので、痩せ細って民家に出没したり、市街地まで下りていって、人間がゴミとして排出する食べ物などを漁る必要がない。アーバンベアへ身を堕とすクマが減っていくのだ。……という話をすると「シカを殺すなんてかわいそう」と言い出す人もいるだろう。確かに残酷に聞こえるかもしれないが、これは日本人がやらなくてはいけない「償い」でもある。シカの数を抑えて、環境破壊も食い止めていた存在を、自分勝手なエゴで絶滅させてしまったからだ。それは、ニホンオオカミ、エゾオオカミである。両方とも「害獣」として我々の祖先の手によってこの世から永久に消えた種だが、実はこれらのオオカミがいたことで、山や森のバランスが保たれていた。なぜかというと、シカを狩る捕食者だったからだ。先ほどの林野庁の資料にあるような自然破壊が防げていたのは、ニホンオオカミやエゾオオカミがシカを適度に減らしてくれていたからだ。オオカミがいた時代、山や森は豊かで木の実も豊富にあった。クマはそれを食べて冬眠に備えていればよかった。また、クマは時たまオオカミからエサを横取りするので、捕食されたシカの死骸を食べることもあった。生態系の中で腹がしっかり満たされているので、わざわざ市街地周辺まで下りる必要がなかった。しかし、日本ではオオカミは絶滅した。捕食者が消えてマタギのような職業ハンターも激減したことで、脅威がなくなってしまったシカは爆発的に繁殖することになる。「クマは脅威じゃないの?」と思う人もいるだろう。YouTubeなどでも、クマが子シカを追いつめて襲う映像や、ワナにかかったシカを生きたままクマが捕食する衝撃映像が流れているからだ。ただ、先ほど触れたように、クマがシカを食べるのはオオカミからの横取りスタイルだ。クマも走ると早いが、やはりシカの方が俊敏だし、警戒心も強いのでクマが近づくのも難しい。つまり、シカにとってクマはオオカミほどの脅威ではないのだ。このように我々が直面している「クマ被害」の根本的原因を辿っていくと、かつてオオカミを「駆除」の名で絶滅させたことに突き当たる。自分たちの身勝手な理屈で、ひとつの種を地球上から永遠に消したことのツケを払わされているのだ。動物愛護家の皆さんは「クマを殺すのはかわいそう」というが、実はすでに我々の手は血まみれで、これからも日本の自然を守るために何十万頭というシカを屠(ほふ)らないといけない。クマを殺すべきか、保護するのかという議論の前に、まずは「人間は他の種を大量虐殺して生きている」という厳しい現実と向き合うことが必要ではないか。
(各地でクマ出没増加「メガソーラーによる森林伐採のせい」論を有識者に聞いてみた)
日本国内でクマによる人身被害が続出している。2025年度の死者は過去最多の倍以上にまで増加。各地では、法改正により自治体の指示によりハンターが出動できるようになった「緊急銃猟」も相次いでいる。被害増加については、クマが住んでいる森林の伐採なども理由に挙げられ、中でも大型太陽光発電「メガソーラー」も原因の一つではという説も出ている。「ABEMA Prime」では度々クマ、太陽光発電について取り上げている中で、この2つの因果関係について専門家とともに議論した。日本に約7000件あるといわれるメガソーラー。定義としては、出力が1MW(1000kW)以上の大型太陽光発電施設を指す。約300世帯の年間消費量を補え、建設には2~3ヘクタール、サッカー場のフィールド1.5面分以上の敷地が必要だ。中でも、東京ドーム何十個分の広さを持つ「大規模メガソーラー」は、環境を破壊していると指摘を受けるものもあり、社会問題化している。。近年、クマが市街地に多く出没するようになっているが、メガソーラーの開発による森林伐採が影響しているのではないか、と語られるケースも増えている。では実際、クマ出没とメガソーラー建設に相関はあるのか。エネルギーアナリストの大場紀章氏は「私が調べた限りにおいて、全く影響がないとも言い切れないが、クマが出没している地域の近隣でメガソーラー開発が確認されている例はほぼない。あるとしても、かなり昔に作ったもので最近の(クマ出没の)増加との因果関係を示すことは難しい。メガソーラー開発がされた森林あたりでクマ出没が増えたという例がない」と述べた。山に関する著書もある情報キュレーターの佐々木俊尚氏も、2つの因果関係は見えないという。「エビデンスが出ている話は1つもない。少なくとも言えるのは、メガソーラーが作られているところは杉林が多い。要するに林道がちゃんとあって、そこからソーラーパネルを設置する。杉林にはクマは住んでいない。クマはブナ林や日本古来の広葉樹林帯に住んでいる。そこにメガソーラーが設置されているケースは少ないはず」と否定的だった。また政策アナリストで元経産官僚の石川和男氏も「今はたまたま『太陽光反対』となっている。これは太陽光が問題になっていなければ、誰も(クマの出没原因だと)言わない。ゴルフ場を開発しても、それによってクマが出るとは誰も言わないようなもの。ゴルフ場のせいで人が食われたなんて聞いたことがない。原子力発電所が反対された時と同じだ」と述べていた。
(「クマだって人間を避けて生きたいんだ」餌得られる山に、猟師が奔走:神奈川)
全国でクマによる人身被害が相次ぐ中、神奈川県山北町の猟師たちが「クマを里から山奥に帰す」取り組みを続けている。ブナやクルミ科の苗を山奥に植え、クマが人里に下りなくても餌を得られる環境を山中に取り戻す。発案者の杉本一さん(87)は「このままでは神奈川でも絶対に被害は避けられない。対策を急がなければ」と警鐘を鳴らす。「山奥はスギとヒノキばかり。こんな森では野生動物が生きられない。猟師の俺から言わせるとクマが増えたのではなく、人間が餌場を奪った結果、里に下りてきている」。語気を強める杉本さんは近年は年3回ほどクマを見かけるという。町内を含む県内でも目撃情報は寄せられるが「よく遭遇する人はいちいち通報なんかしていないよ」と実情を明かす。全国的に戦後の拡大造林によって各地で針葉樹のスギやヒノキが植えられたが、安価な輸入木材の流通拡大や需要の低下により伐採されず放置され、山には密集した人工林が広がる。このような日が差さない森では若草が育たず、動物の餌が乏しい状態が続いているという。この現状を変えようと、杉本さんは10年前、狩猟仲間などに呼びかけ、広葉樹であるクヌギの実(ドングリ)を集めて苗を育て、森に植える活動を始めた。しかし、近年はドングリがなかなか森で見つからなくなり、苦慮していたという。そんな折、昨年に孫で猟師の鈴木康之さん(38)が松田町を車で走行中、偶然ドングリを踏んだ音に気付いた。降りて確認すると一面にドングリが落ちており、杉本さんに連絡。半信半疑で現場に向かった杉本さんは二つの買い物かごがいっぱいになるほどのドングリを集めることができた。ひっそりと立つ数本のクヌギを見上げて「何年も探して見つからなかった幻の木だ」と息をのんだという。杉本さんらはこのドングリ約2千個を自宅の畑にまき、苗木を育てた。高齢のため、西丹沢周辺で狩猟を行う豊猟会の豊田里己会長(67)に後を託し、取り組みは本格化。今年3月には、ボランティアら約80人が大野山周辺でクヌギの苗木約1400本、クルミ約100本を植樹した。豊田会長は「森がスギやヒノキばかりだと、クマもシカも餌を得られない。多くの人にこの現実を知ってほしい」と話す。杉本さんらは今後、庭で育てた「幻のクヌギ」の苗をクマ被害が続く地域に配布し、全国で森の再生を広げていく考えだ。「クマを駆除するより森の改善を。クマだって人間を避けて生きたいんだ。共に生きられる山を取り戻したい」と力を込める。大野山では杉本さんが10年前に植えたクヌギが実をつけている。地道な努力が確かに実を結びつつある証しだ。人と野生動物が調和する森を目指して、猟師たちの挑戦は続く。
(クマ狩猟期間スタート、マタギが感じた異変:秋田)
去年はゼロだった10月の人身被害が、今年は30件以上も起きている秋田県。1日から、ツキノワグマやイノシシなどの狩猟期間に突入しました。番組が訪ねたのは、北秋田市で猟師をしている松橋さん(28)。江戸時代から続くマタギの家系に産まれ、現在16代目として修業中の身です。今年から猟に持っていく道具が増えたと言います。16代目のマタギ 松橋翔さん「クマスプレーも持っていくようになりました。今までのクマの生態から予想がつかないような動きをしてくるので、 そういうのに対峙するには、今までの猟具ではどうともいかない」。今季初めての猟に向かうと、早速異変が。イノシシやシカ用の罠を仕掛けようと栗林へ入った時でした。16代目のマタギ 松橋翔さん「これクマが食べてますね。こっちは(罠を)かけるのやめておきます。これもこれもそうなんですけど、クマの糞なんですね」。想定以上だったクマの痕跡。16代目のマタギ 松橋翔さん「クマがいるところにはイノシシが近寄りたくないし、イノシシがいるところはクマが近寄りたくないし、そういう関係性だったのが、今回で明確になったのが、共存はバッチリしているなというところ。かなり異常かなと思います」。クマ対策が猟師頼みになっている現状にも危機感をつのらせていました。16代目のマタギ 松橋翔さん「(猟師の)募集をかけて免許を持って銃を持って、という人が増えても、ライフル銃を持って、いざクマと立ち向かえるのは10年後なので、まだまだその間にクマの数も増えて、里にも近くなってくるでしょうし」。先月31日、秋田県男鹿市でクマが目撃された場所は、山から6キロ以上も離れた海岸沿いでした。報告・富樫知之ディレクター「この辺りでは連日クマが目撃さていますが、近隣住民の方によると、箱罠の数が足りず、設置が進んでいないということです」。秋田市内で住民に話を聞けば、必ずといっていいほど、「クマを見た」と言われる状況です。庭の柿の実をクマに食べられたという人は…庭の柿がクマ被害にあった住民「怖いけど年齢が年齢だから食べることもできないし、そのままにして置いてるの」。こうした状況を打開するための対策が急ピッチで進められているところも…報告・内田吾郎ディレクター(先月31日 新潟・関川村)「こちらの河川敷では重機で草木を踏み倒す作業をしているようです」。新潟県・関川村の河川敷周辺では、クマの目撃情報が相次ぎ、隠れ場所になっている河川敷の草木を重機で踏み倒す作業やくるみの木を伐採していました。関川村役場 市井謙太郎 主幹「9月上旬時点ではまだクマ数頭の目撃だったんですが10月の時に急激にクマの村全体においても出没が増加してきたもので10月に入りまして村から(国に)要望したものです」。3連休なのに自由に過ごせない街もありました。「こちらは南砺市です。クマの目撃・痕跡情報が相次いでいます」。富山県・南砺市では3日まで「朝夕の不要不急の外出」や「単独での野外活動」の自粛を呼びかけています。先月26日。70代女性がカキの実を採っていたところクマに襲われケガをするなど市内でクマの目撃情報が相次いでいます。これは同じ先月26日に撮影されたドライブレコーダーの映像。クマと遭遇した女性「あ、クマや、クマおった」。車を車庫にいれずにバック。すると、車庫の横にある茂みから1頭のクマが…そのまま道路を横切って歩いていきました。動画を提供してくれた女性はクマよけスプレーを買いに行った帰りの出来事だったといいます。クマと遭遇した女性「怖かったというのが一番で家の中にも子どもがいたので子どもが外に出てこないか、とても不安で外には出ないようにと、すぐ連絡をしました」。市内にある屋内スポーツ施設で出会ったのは、2日に屋外でソフトテニスの試合がある女子中学生。翌日にソフトテニスの試合がある女子中学生「(施設の)中のコートは人工芝で造られているので(ボールの)バウンドとかは(施設の)中の方がいいってこともあるけど、やっぱり大会は外だから」。施設には、クマ対策として入り口に犬の鳴き声と銃声のような音が出るセンサーを設置。利用には送り迎えもしてもらうよう徹底しています。スポーツ施設の館長「本来であれば、当然外で練習してこの風の中、吹いている中でやった方が絶対にいいと思うんですけれどもやっぱりこれだけクマがこれだけ頻繁に出没するとそうも言っていられないかなと思います」。収まる気配のないクマ被害に対して政府も対策に本腰を入れ始めています。自衛隊による『箱わな』の運搬支援なども始まる見通しですが、他にはどんな動きがあるのでしょうか?今週開かれたクマ被害の対策を話し合う閣僚会議を受けて、赤間国家公安委員長は、警察がライフル銃を使ったクマの駆除に乗り出す方針を示しました。具体的な運用はこれからだと思いますが、どんな部署が担当して、どういった課題が考えられるのでしょうか?元機動隊員で特殊部隊SATにも所属していた伊藤鋼一さんにうかがったところ、「警察でライフル銃を持っているのは機動隊内の銃器対策部隊で、日頃から100メートルの距離から5センチほどの的を撃ちぬく訓練をしている」ということです。ただ「クマの駆除に対応するためにはクマの生態や急所などの専門知識が必要で、高い射撃技術を持つSATによる集中的な訓練も想定され、実際の運用までには1~2週間はかかるのではないか」ということでした。また、銃器対策部隊は全国でおよそ2100人いるものの「ライフルを扱える隊員は限られていて、頻繁な出動要請には対応が難しく効果に関しては未知数」と指摘しています。政府としても、クマ被害対策に本腰を入れているということですが、柳澤さんどうご覧になっていますか?人的被害をこれ以上増やさないためにも、駆除対策は必要だと思うんです。でも、それだけでは決して十分ではない、根本的な解決になっていないのではないかとの指摘もあるんですよね。クマが生息している自然の生態系が壊れてしまっているのではないか。そうすると専門家が指摘しているように、人間とクマが生息している地域をゾーニング、分離するということが必要になってくると思うんですが、そのためには人も物もお金も必要。でも山間地帯ですから、なかなか思うようにはいかない。かといって手をこまねいているわけにいきませんから、ここはやはり政府が司令塔となって、待ったなしで次の手を打つ、そういう段階に来てると思いますね。駆除というのは対症療法にすぎないわけですからね。緩衝地帯を作る、ゾーニングをする、など先を見据えた対策を同時に進めていく必要性を感じますね。
(「クマ鈴」、じつは熊にとっては「おやつのお知らせ」だった)
今年は熊による被害が尋常ではない。被害状況を集計している環境省によると、10月25日時点で死者は10名。これは過去最悪で人身被害も150件を超えている。熊が人里に降りてきた原因として、鹿との食べ物の奪い合いや作物の味を覚えたこと、人口が減って人間のテリトリーが後退したこと、メガソーラーによる大規模な森林伐採などが挙げられているが、理由が何であれ、あきらかに人間が押されている。秋田県では自衛隊の要請も検討しているというから、もはやクマとの戦争だ。市街地にクマが出るという、これまでないことも起き始めており、山間部だけの話ではなくなってきている。熊を避けるにはどうすればいいのか、本職の猟師に話を聞いた。Sさんは10年前に北海道に移住、プロの猟師として活躍している女性だ。猟師が仕事として成り立つのか、今ひとつピンと来ないが、いろいろな稼ぎ方があるのだそうだ。「撃った鹿を内臓とって肉に分けて、と手間はかかりますが、鹿の肉を取引のあるレストランへ下ろせば、5~10万円になります。害獣駆除もありますし、一番はガイドですね。ハンティングが趣味の方を山に案内し、猟場に連れて行きます」。狩猟シーズンの冬場は、山の中の水道も電気もない一軒家で、薪とランタンで暮らし、雪を溶かして風呂を沸かす生活はおとぎ話に出てくる猟師の生活そのものだ。「どちらかといえば山姥ですね。体が臭い方が動物に気づかれないので、風呂もあまり入らないようにしています」。そんなSさんが主に撃つのは鹿だが、駆除対象としてヒグマも撃つ。「クマは頭が良いんです。止め足というんですが、人間が近づいてくるのに気がつくとステップバックする。自分の足跡を踏みながら2~3メートル下がって、横に飛ぶんです。そして大抵は木の上に登ります。人間が足跡を追っていくと急に足跡が消えるわけです。気づいた時には、木の上から襲ってきます」。猟師はそんなクマと戦うため、車のわだちを見るだけで誰の車がいつ通ったか、ほぼわかるのだそうだ。「北海道で人間を襲う動物は圧倒的に熊です。熊を駆除をするように言われた時は、だいたい囲み撃ち、巻き狩りともいいますが、複数人でクマを挟み撃ちにして真ん中で仕留めます。熊を狩る人の中には、山にわざわざ行って、一人で撃つこともあります。忍び猟と呼びます」。まさに人間VSクマのバトルである。では一般人が山歩きでクマに遭遇したらどうすればいいのか?「クマと遭遇した時は、その場から後ずさりで逃げるしかありません。死んだマネをしたらいいというのは、よほど遠い場合(クマとの間に谷があるなど)で20メートル以内ならクマは興味を持って寄ってきます」。死んだマネをすると生きているかたしかめるために引っかかれる。ヒグマにひっかかれると顔なら半分えぐられるので、死んだマネをして本当に死んでしまう。「ハンターの中には大声を出せば追い払えるという人もいます。しかしハンターは火薬のにおいがしみ込んでいるので、クマは匂いで敬遠します。危ないやつだと思って寄ってきません。普通の人が大声を出したら、ごはんですよ、と言っているようなものです。弱いやつがイキってんじゃねえと食われます」。声も立てずに後ずさりをして静かに逃げる、これしかない。「クマスプレーですが、あれは目を狙ってかけるものです。どんな動物でも、カラスでもイノシシでも弱点は目なので、目を狙います。クマは近づいてきて、襲う時は2本足で起ち上がります。その時に目に向けてスプレーをすると効きますが、目に当たらなかったり、スプレーを撒き過ぎて、目にあたる前になくなっちゃったりすると食われます」。熊は戦闘モードになると立ち上がるのだ。体の小さなツキノワグマでも体長1.5メートル前後なので、立ち上がると2メートルにはなる。ヒグマは軽く2.5~3メートルだ。そんな生き物を前に目を狙えるかという話だ。「うまく目に当たっても、距離が近すぎると自分に向かって倒れ込んでくることがあります。そうすると爪でやられます。また風下に自分がいたら、スプレーは自分の方に流れてきます。当然ですが、そうするとクマではなく自分の目がやられてしまいます」。クマスプレーは御守以上の意味はないと思うとIさん。最後の最後で食われる直前で相手がかがんで噛もうとしてきた時とか運よく風上で自分の方が先にクマに気づいた時ぐらいにしか使えないのだから、たしかに御守だろう。よく言われるのがクマ鈴だ。ようはチリンチリンなる鈴をつけておけば、クマが警戒して近づかないというのだが?「クマ鈴ですが、あれもクマが音を覚えてしまっています。クマ鈴を鳴らしながら歩くと、クマからすれば、おやつがここにあるよと教えているようなものです。クマ鈴は逆に危ない」。じゃあどうすればクマを遠ざけられるのか?「クマも人が多いと怖がるので、1人で歩かず、必ずグループで歩きましょう。話ながら歩くとクマは近づきません。クマ鈴は逆効果ですが、クマは機械音が嫌いです。携帯電話のアラームなどの電子音が効果あります。クマが近づいてきたときにそういう音を流すといいわけです」。みんなでワイワイしゃべりながら歩くとクマも警戒する。もし現れたら、携帯のアラームのような電子音を鳴らせば、逃げていく可能性は高い。「クマは匂いが強烈です。生臭い匂いがするので、近づくとわかります。クマのことを山親父と呼びますが、オヤジ臭の何倍も強い匂いだと思ってください。変な匂いがすると思ったら、すぐに下山しましょう」。そこですぐに下山の判断ができるかどうかで生死が決まる。臭いと思ったらすぐに下山だ。「人間とクマの共存はバランスです。北海道では知床を保護地区にしたら、クマが増え過ぎて人間の方が押されています。人間が入り過ぎても入らなくてもダメなんです」。
(「人間をナメ切っている」“アーバン熊2.0”が「住宅街は安全でエサ(人間)がいっぱい」と知ってしまったワケ)
10月28日、盛岡市中央通りにある岩手銀行本店の地下駐車場でクマが1頭確認された。程なくして吹き矢で麻酔を撃ち捕獲したが、周囲は緊迫感に包まれた。このクマは誤って市街地に迷い込んだのか、それとも「住宅地は安全」と知っている“確信犯”だったのか──。 かつて熊被害といえば、きのこ狩りや山菜採りにいった人が遭遇して襲われるケースが多いとされていた。しかし今、全国を恐怖に陥れているのは、住宅地や市街地など、人間の生活圏に進出する「アーバン熊」だ。優秀な頭脳を持つ「アーバン熊」は、さらに人間について学び、“アーバン熊2.0”へと進化しているという。そのアーバン熊の実態について、2024年1月に発行された別冊宝島編集部編『アーバン熊の脅威』から、一部抜粋・再構成して紹介する。2024年以降、日本は未曽有の「熊害」に怯えることになるのではないか。人身被害が170人を超えた2023年の熊被害レベルのみならず、今後、人の活動領域が熊によって奪われていくことが予想されるからである。いかに現在の日本が異常なのか。それは本州のツキノワグマ生息数が、実に4万5000頭に迫る勢いで伸び続け、北海道のヒグマも1万数千頭へと急伸している点からも理解できる。つまり1億2000万人がひしめく経済大国で実に4万頭に及ぶ「猛獣」が生活圏を接するようになっているのだ。しかも、その猛獣とは、殺傷能力を持った人間を恐れない「アーバン熊」なのだ。アフリカのサバンナ並みの危険度と言いたくなる。そもそも熊は絶滅危惧種だ。世界の生息地域では「人間の保護」がなければ多くの固有種が絶滅しかねない状態にある。熊害は日本だけに起こった異常事態なのだ。とはいえ日本も1980年までは世界のトレンドに近い状態にあった。九州では1950年代に絶滅(野良となった元飼育熊が1990年代頃まで生息、絶滅認定は2012年)、四国も実質的な絶滅状態(現在の生息数は数十頭で回復の見込みはない)。本州では中国・近畿・関東・北信越では国定公園といった自然保護区を中心に数十頭から100頭程度の小グループが複数点在するのみだった。唯一、熊の餌となるブナの原生林が広がっていた東北地方で1000頭以上のグループを複数確認という程度まで落ち込んでいたからである。熊は巨体を維持するために莫大な餌を必要とする。生息域における餌の供給総量で熊の生息総数が決まるわけだ。とくに人口と経済活動が安定した室町時代から戦前・終戦直後までは煮炊きや暖房で薪や建材などの材木需要は高く、生息地は人が立ち入らない原生林・山岳地帯(国土の4割)にかぎられ、最大でも1万頭が限界値となってきた。ところが1970年以降、国内林業の崩壊と急速な少子高齢化によって国土の4割に相当する人工林を含んだ里地里山の2割相当を人間が「放棄」した。植生が乏しい原生林とは違って、この放棄地には堅果類のなる広葉樹林帯と放棄果樹(柿や栗など)、餌となる魚類・昆虫・小動物が豊富にある。文字通りの「熊の楽園」が開放されたのだ。熊は一日で30 キロ移動できる。若熊たちは、この“開放区”を求めて本州全土へと移動し、新たな生息地で急激に数を増やした。増えた頭数より開放区(放棄地)の拡大のほうが大きく、この開放区の限界値は2万頭を超えると推定されているほどなのだ。この開放区の限界値を超えて生まれた熊たちは、当然のごとく新たな新天地として人間の活動域へと侵出する。これがアーバン熊となり、人間の生活圏へと出没してきた。問題は、このアーバン熊が世代交代している点だ。アーバン熊を母に持ち、人間を知り尽くし、より人間をナメ切った第二世代「アーバン熊2.0」が登場してきたのだ。2023年12月7日、東京郊外の八王子市に出没した熊は、明らかにそうした「アーバン熊2.0」だった(イノシシとする説も有)。その証拠に、この「2.0」は市の中心地である八王子市役所近辺をうろつき、地域住民を震撼させている。人の少ない市の郊外より、人と建物の多い市の中心部のほうが「安全」と学んでいるのだ。事実、熊被害問題では、駆除を依頼された猟友会と住宅地での発砲を許可しない警察との間でトラブルが何度も起こってきた。これは熊用の猟銃弾の破壊力がすさまじいからである。コンクリートの壁も一撃でぶち抜く威力があり、住宅地で発砲して外れた場合、簡単に建物を貫通する。住民に被害が出かねないために安易に許可できなくなっているのだ。では警察で対処すればいいと言う声もあるが、熊は分厚い脂肪と有刺鉄線でもケガすらしない頑強な体毛で覆われている。当然、警察官が持つ拳銃では殺傷できず、手負いとなって大暴れして被害を拡大しかねない。対テロや凶悪犯を射殺する特殊部隊のライフルでも、心臓を一撃しなければ仕留めることはできない。熊は四足歩行する。立ち上がるまで待ち続けるのか、となる。これは自衛隊の小銃も同様で、肉体の脆弱な人間向けの対人用銃弾は精密射撃と連射性、携帯性を優先させているので威力が弱いのだ。逆に大型動物用の猟銃弾は、仕留め損ねた場合、反撃を受けることを想定して一撃で動きを止めるように威力を高めている、それでかえって人の多い場所や住宅地では使用が難しくなった。先の「アーバン熊2.0」は、これを理解しているとしか思えないのだ。人間の活動域に侵入し、パトカーなどのサイレンで騒ぎになったら、山へ逃げるよりも住宅地へと進んだほうが「安全」。その住宅地で餌を漁ったあと夜にかけて逃走すればいいと「アーバン熊2.0」はすでに理解している。完全に人間をナメ切っているのだ。そんな「アーバン熊2.0」が母熊となればどうなるか。当然、住宅地近くをテリトリーとするだろう。そして高齢化が加速している僻地の住宅地や農地では、熊が何度も出没すれば、現実問題として「人が住めなくなる」。農地に電気柵を設置しようとすれば莫大なカネがかかる。駆除するにせよ、餌環境のいい放棄里山が熊のテリトリーのままなら、空いた縄張りに別の熊がやってくるだけ。まったく解決策にはならないのだ。出没多発地帯の地価はタダ同然となり、人間は、このエリアを「放棄」せざるをえなくなる。この流れを「アーバン熊2.0」は理解して、それを「アーバン熊3.0」へと伝えていった場合、熊による本格的な人間領域への侵攻が始まるのではないか。その可能性は、もはや絵空事ではなくなりつつあるのだ。
(クマ被害への「最も効果的な解決策は、自衛隊の投入」と言える“深刻すぎる熊の凶悪化”)
熊の出没事件・襲撃事件が多発し、日本を恐怖に陥れている。環境省によると、2025年度の熊による犠牲者は過去最多となる10人(10月27日時点)。被害が続いている秋田県では、鈴木健太知事がついに自衛隊の派遣を要請し、小泉進次郎防衛相は10月28日、「速やかに検討し、できることから進めていきたい」と述べた。いま問題になっているのは、人間の生活圏に出没する“アーバン熊”。彼らは市街地に迷い込んでいるのではなく、「ここにはエサが豊富にある」と知っている“確信犯”なのだという。2024年1月に発行された別冊宝島編集部編『アーバン熊の脅威』にも、「最も効果的な解決策は、自衛隊の投入」と書かれている。熊の「狡猾さ」や「獰猛さ」はもはや民間では太刀打ちできないレベルになっているというのだ。たとえば熊が盛んに出没すればゴルフ場は倒産しかねないだろう。新たに造成した住宅地にせよ、ここを狙い撃ちして熊が出没を繰り返せば、住宅を買う人はいなくなる。こうしてジワジワと人間の活動域の周辺部を奪えば、その成功体験は次世代へと受け継がれていく。熊は3年かけて子育てし、その間、母熊が得てきた知恵と成功体験を小熊へと叩き込む。人間の活動域をどうすれば奪えるのか、という情報は世代を超えるたびにブラッシュアップされ、バージョンアップしていくのだ。アーバン熊は、2004年(2300頭)、2006年(4600頭)、2010年(2000頭)という世界でも例をみない大量駆除を乗り越えた世代から生まれたと考えられる。この大量捕殺の生き残り世代は、ハンターとそれ以外の人間を区別できるようなったのだろう。それで人間を恐れなくなった。それだけでなく狩猟区と禁猟区、さらに禁猟期間も理解しているといわれている。ハンターがやってくれば、どこに逃げればいいのかを知っているのだ。そんな悪知恵を覚えた世代(新世代クマ)の母熊から学んだ「アーバン熊」が人間を恐れることはない。当然、人間の農作物と家畜を奪おうと人間の活動域へと進出する。そして2024年現在、第2世代となる「アーバン熊2.0」が、どうすれば安全に人間の生活圏で活動できるのか、その方法を試みるようになってきた。人のいなくなった里山地域は、熊撃ちのハンターが活動できる。それならば人間の生活圏で繁殖したほうが「安全ではないか」と理解しても不思議はない。そんな「アーバン熊3.0」が登場すれば、日本はどうなるのか。想像するだけでそら恐ろしくなろう。いずれにせよ、先進国の住宅エリアで人を恐れず、人を襲う「猛獣」が大量発生しているのだ。この状況を政府はどう考えているのか。繰り返すが、大量駆除したところで放棄された里山と人工林が現状のままでは、数年で頭数は回復する。そして、より「狡猾」となって人間の活動域へ出てくるだけだろう。最も効果的な解決策は、自衛隊の投入となる。熊を一撃で倒せる大口径の銃を持たせ、定期的に大量駆除を繰り返せばいいのだ。実際、外国の軍隊では、危険動物と害獣の駆除を精鋭部隊の訓練の一環として行っている。現在の熊の生息域の多くは民間が所有する山地だ。そこで自衛隊の部隊が強力な武装をして実弾発砲する。ズルズルと何も決断できない間に、死者4名、重軽傷者多数を出した「十和利山熊襲撃事件」(2016年)のような悲惨な事件が全国各地で、何度も繰り返されてないためにも、このアーバン熊問題に対し、政府は即座に「大規模災害」レベルの認定を行うという、果敢な決断を下す必要があるのだ。
(「アーバン熊」は肉食に進化した“新世代の熊”)
日本全国で相次いでいる熊による被害。特に市街地で熊が出没するケースが増加し、秋田県の鈴木健太知事は10月28日、小泉進次郎防衛相に面会し熊対策支援のために防衛省に自衛隊派遣を要請した。山に住んでいたはずの熊が、どうして今、市街地に降りてきているのだろうか。どうやら彼らは、“新世代の熊”なのだという。その恐るべき生態とは──。近現代の熊被害をまとめた別冊宝島編集部編『アーバン熊の脅威』では、市街地に現れる“アーバン熊”誕生の背景を分析。同書より一部抜粋、再構成して紹介する。「アーバン熊」を一言で定義すれば都市対応型へと進化した「新世代の熊」となる。日本列島の長い歴史のなかで日本人と共存していた、これまでのツキノワグマやヒグマとはまったく違う生態を獲得しているのだ。いかにしてアーバン熊が誕生したのか、日本の戦後史から分析していこう。戦後、日本人のライフスタイルは大きく変化する。その結果、1980年代までの戦後昭和期は熊にとって絶滅寸前にまで追い込まれた「受難」の時期となるのだ。最大の要因は植林である。電信柱需要や人口増大による住宅需要を見越して全国の山ではスギやヒノキの植林が激増する。これによって熊の重要な主食であるドングリ類(広葉樹)が減少し、巨体を維持するだけの食べ物を失う“食糧難”で生息数が激減する。これに追い打ちをかけたのが戦後のスポーツハンティングブームだった。1950年代まで10万人だった狩猟人口(狩猟免許所有者)は、1970年代にかけてのブームで富裕層を中心に5倍となる50万人まで拡大する。当然、ハンターたちにとって最高のトロフィー(獲物)は、日本列島の生物の頂点に立つ熊だ。1970年代頃までは東北地方や北海道を中心に多くの「熊狩り名人」が健在だった。とくに北海道では三毛別羆(さんけべつひぐま)事件(1915年)に代表されるように多くの人喰い熊被害が発生してきた経験から、マタギやアイヌの熊狩りの専門家たちが地元を中心に精力的に活動していた。彼らは熊の巣穴を探してマーキングし、冬眠に入った熊を巣穴から燻出して出産したばかりの小熊もろとも狩っていたという。地元の狩猟者たちは、林業との兼業で生活をしている人も多く、富裕層たちのハンティングガイドはかっこうの現金収入となるので積極的に協力してきた。こうして1970年代から80年代にかけ、日本列島の熊は狩り尽くされていった。実際、「里に熊が出た」と目撃情報が入れば、地元の役場は禁漁時期に関係なく狩猟許可を出す。すると地元の猟友会は“おっとり刀”で猟銃片手に100人単位が集結し、「熊撃ち」に興じていた。戦後昭和期、熊の生息域は人が絶対に入ってこない山地や山脈の奥地へと逼塞。原生林は植生が貧しく、食糧となる広葉樹も少ない。1990年代以降、熊の頭数は下がり続け、ついに九州では絶滅(2012年に確定)。北海道のヒグマも急激に数と生息域を減らした。昭和末期、山奥に立ち入る林業専門家ですら熊の姿はおろか足跡や糞を見ることがなくなった。“昭和末期ベアー”は「幻の生き物」になっていたのだ。「このままでは日本列島の熊は絶滅する……」。世界的な自然保護や動物愛護もあって熊保護の機運が高まり、1989年、農林水産省と環境庁(現・環境省)は、いわゆる「熊撃ち禁止令」を出す。それまで冬ごもり(冬眠)明けで飢えて活発に行動をする“春熊(はるぐま)”をターゲットにしたヒグマ駆除活動は禁止となる。さらに1970年代以降、木材需要が一変し、国内林業が崩壊していく。パルプなどの材木は海外の輸入材へ置き換わり、電信柱も木材からコンクリートへと変わった。これにより林業従事者は1万人から激減し、2000年代にかけて2000人にまで減少する。これがアーバン熊大量発生への「第一歩」となった。1970年代以降、先に述べた林業崩壊で、人工林(二次林)の多くが放棄されて「荒廃山林」となった。同時に農業では化学肥料が普及し、里山の腐葉土を使わなくなった。さらに灯油やエアコンの普及で薪まき需要が消滅し、里山がどんどん荒廃していった。これに加えて都市化と核家族化が加速し、とくに中山間部では過疎化と廃村が進んで耕作放棄地が増大する。この中山間部の荒廃山林と耕作放棄地が野生動物の「楽園」となるのだ。スギの人工林といっても間伐処理したのち、10年単位で人の手が入らなければ、広葉樹林が生い茂り、ドングリ類の宝庫となるのだ。荒廃山林となったスギの人工林では7割が広葉樹化するという。耕作放棄地も食用となる草や低木が増え、野生動物にとって安全な生息域へと変わる。要するに日本の国土の4割に当たる里地里山のうち、中山間部を中心に野生動物の楽園へと様変わりしていったのだ。その一方でスポーツハンティングは下火になり、狩猟人口は半減(現在は20万人)。高齢化も進み、当然、熊狩り名人たちの引退も相次ぐ。この劇的な環境の変化の結果、北海道全土で5000頭にまで減少していたヒグマは、わずか30年で倍増したほどなのだ。当然、ツキノワグマも生息数と生息域が一気に倍増する。奥山でひっそり暮らしていた幻の熊たちが、平成期にかけて人里近い中山間部まで降りてきたのだ。ここで重要なのは、熊だけが倍増したわけではないという点だ。北海道ならばエゾシカ、本土ならばシカやイノシシもまた一気に激増する。ここでアーバン熊は「二歩目」へと進む。肉食化である。激増したシカやイノシシの農作物への食害拡大で農林水産省は、これらの狩猟を推奨してきた。高齢化した猟友会ではこれに「罠猟」で対応。その罠にかかったシカやイノシシを、生息数の増加で飢えた若熊たちが横取りするようになったという。意外に思うかもしれないが、熊は狩りが苦手で主食は木の実や樹木(皮を剥いで柔らかい形成層を食べる)。肉食は魚や昆虫が基本となる。それが罠にかかった、文字通り「おいしい獲物」を食べることを覚えた。つまり、罠を仕掛けてある住宅地近くの里山まで熊が接近してきたのである。
(「小さいクマでも絶対に勝てない」襲われた男性が語った“恐怖と異変”)
全国で相次いでいるクマ被害ですが、深刻なのは被害の多くが市街地で相次いでいることです。熊に襲われる人も相次ぎ、死者は過去最多となっています。クマはなぜ人を襲うのか、被害に遭った男性の証言から考えます。2日朝、福島県内の住宅の敷地内で80代の男性がクマに襲われ、けがをしました。命に別状はないということです。1日午後7時ごろ、札幌市内の住宅街にクマが現れました。人を恐れず、生活圏内に入り込むクマ。山形県・南陽市の小学校では、クマが玄関のドアに突進。ガラスが破られ、臨時休校となりました。クマに襲われる人も相次いでいて、環境省によりますと、2025年4月以降、被害者の数は全国で100人を超え、死者は過去最多の12人に上っています。実際に襲われると、どうなるのでしょうか。その様子を撮影した被害者がいます。岩手県岩泉町に住む佐藤誠志さん(59)がクマに襲われたのは2023年9月、キノコ狩りの最中でした。クマに襲われた佐藤さんは木の棒で応戦しますが、クマは何度も飛びかかって攻撃してきました。クマは運よく逃げていきましたが腕をかまれてけがをし、太ももを爪でえぐられました。2年経った今も傷の跡が残っています。佐藤さん「クマには、小さいクマでも絶対勝てない。もしあの時、木の棒がなかったら、顔はめちゃくちゃだったと思う。スイッチが入っているクマはどうしようもない。本当にやられるだけ、本当に怖い」。キノコ狩りなどを生業とする佐藤さん。佐藤さん「(クマから)パンチが来ても重傷にはならない」。クマよけの鈴2つに、警報音を出す装置。そして、撃退用のスプレーを携帯。佐藤さん「視界が悪いところに行ったら『はっ!』」。山の中では時折り声を出し、警戒しながら歩きます。山で30年以上、仕事をする佐藤さん。2025年に感じた“ある異変”があります。佐藤さん「山に(クマのエサとなる)どんぐりが見えない。2024年は山を歩いているだけで、どんぐりが落ちてきた。2025年は1個もない」。林野庁の推計では、猛暑などが続いた2025年、東北の5つの県でクマの主食であるどんぐりが「大凶作」に。この影響からか、佐藤さんは「山でクマを見ない」と話します。佐藤さん「(クマの)足跡すらあまりない。(クマは)みんな里の方に行っている。腹減りすぎてる。本当に飢えていると思う」。秋田県のまとめでは、2025年、クマに襲われた56人のうち、大半の54人が「人里」で被害を受けています。2025年はクマのエサとなるドングリが「凶作」という予想がでていますが、グラフを見てみると、ドングリは「凶作」と「豊作」を繰り返しているように見えます。そして、クマの駆除数は2000年以降、急激に増えているような動きとなっていますが、どう見ていますか?森林総合研究所 主任研究員 岡輝樹さん:クマの駆除数の急激な変化は、おそらくブナの凶作・豊作が前後に大きく変動し始めたことと関連していると考えられます。クマの出没が市街地で増えているということも全体的にわかりますが、これはどのように分析していますか?森林総合研究所 主任研究員 岡輝樹さん:2000年以降のクマの出没数をならしてみると、少しずつ右上がりになっていますが、これはおそらくツキノワグマの繁殖力が最初に想像していたよりも強く、どんどんと数が増えているのではないかと考えられます。今、クマの個体数がそもそも増えているような状況だということですね。
(クマはどこからやってくる?目撃情報に見る「川沿い」の危険性)
クマがエサを求めて人の生活権に入っているのをどう防げばいいのでしょうか?クマが人里に現れた場所を調査しました。クマはエサを求めて人の生活圏へ。堂々と店の入り口から侵入したのは、体長1.4メートルほどのクマ。果物売り場に積まれたアボカドの山を崩すなど、店内を荒らしたうえ、男性客2人を襲い、逃げていきました。その後も、現場周辺では相次いでクマが出没。狙われたのは柿の実でした。自宅の玄関から外に出た直後に、クマに襲われたケースも。クマは、どこから、どう移動して出て来たのか。野生動物管理のエキスパート・森林総合研究所の岡輝樹主任研究員に、クマが出没したスーパーの周辺を見てもらうと…森林総合研究所 岡輝樹 主任研究員「一番問題なのは、(クマが)身を隠す場所が非常にたくさんありそうだっていうとこですね」。――例えば、どこが?「利根川が流れているところです」。上空から見てみると、スーパーの西側には川が流れていて、その両岸に木が生い茂っているのが分かります。岡 主任研究員「周りの草の妙な動きは気にしてください。(クマが)隠れている可能性もありますので」。川沿いの林、いわゆる「河畔林」に近づいてみると…岡 主任研究員「そうですね、やっぱりこういうところでしょうね。河畔林をつたってやってきて、こういうところをつかって向こうへ進んだ。それで上がってみたらなんか眩しい明かりが見えて」。群馬県のクマ出没マップを確認してみると、確かに、川沿いでの目撃情報が相次いでいます。岡 主任研究員「市街地で食料を探すというよりも、食料を探してるときに偶然市街地に出ちゃうだけで」「(クマは)『どうしてこんなとこにいるんだろう』と思ったんでしょうね」。スーパーにクマが現れた後、沼田市は川沿いの一部のエリアを立ち入り禁止に。周辺住民からは、林の整備を求める声もあがっているということです。岡 主任研究員「クマが身を隠して移動する場所をできるだけ少なくすることは、ひとつ大事な対策ではあります」。一方で、「生態系の維持」という課題も。岡 主任研究員「(川沿いの林は)河川の生態系の重要な構成要素ですので、これがなくなると棲めない生き物たちもたくさん出てきます」。人とクマが出あわないような環境を、どう実現していくのか。各地で模索が続く中、新たな取り組みを始めた自治体があります。山々に囲まれた長野県・箕輪町。クマに危機感を抱いたのは、2024年のことでした。クマの目撃が例年の約4倍に急増。住民がクマに襲われる被害も発生しました。町が6月に始めたのが、「ゾーニング」という対策。「クマが暮らす場所」「人が暮らす場所」とエリアを分類。その中間地点を「緩衝地域」とします。具体的には、川沿いの河畔林など山を下りてきたクマの多くが通る「緩衝地域」をどう整備するのでしょう。箕輪町 みどりの戦略課 井上貴之さん「真ん中に電気柵が走っている。その電気柵より奥側を緩衝地域。電気柵より手前が排除地域(人が住む場所)というゾーニング」。緩衝地域では、ヤブを切り、クマが身を隠せない、いわば“居心地の悪い”場所に。さらに、人の生活圏との境目には、場所によっては電気柵を設置。まめに草刈りをして実のなる木もできるだけ切ります。箕輪町 井上さん「人間の側が積極的に刈払いや活動することによって、クマも人をちょっと警戒する。『人間の線はここまでなんだぞ』とクマに知ってもらう」。夏に撮影されたクマの映像には、緩衝地域から人の生活エリアに出てきたものの、すぐに林に戻っていく様子が映っていました。別のクマは、立ち止まって警戒し、人のエリアに向かいますが、その後目撃されておらず偵察のような形で入ってきたものの、まもなく山に帰ったとみられるということです。町によると、「ゾーニング」を始めて以来、人が襲われる被害はゼロに。目撃情報は、2024年の19件から9件に減り、町の奥深くにクマが入ってくることもなくなりました。箕輪町 井上さん「(今回)刈り払いをした人は主に地域の皆さん。地域の方の力を借りながら、クマ対策を進めていく必要がある」。クマに出会わない町づくりには、住人の協力が欠かせないのです。クマと共存していくためにどう対策を取ればいいのかどのように考えますか。岡 主任研究員:一度でもクマが現れた地域では、「なぜそこにクマが来たのか」、「どのルートを使ってきたのか」、「どこへ行ったのか」をきちんと分析して、障害を消していく必要があると考えます。“緩衝地域”を整備していくといった話もありました。その有効性はどのように見ていますか。岡 主任研究員:この地域では非常に成功したという例がありました。ですが、実際にはかなり難しいというのが実情ではあります。そのため、まずは排除地域をきちんと作り上げることが重要です。というのは、人が生活している圏内で誘引物を除き、隠れられそうな場所を少しでも少なくしていく。そういった新しいゾーニング管理の方法へと舵を切っていかなければいけないのかもしれないと考えます。となると、どういった空間を作ればいいですか。岡 主任研究員:まずは、地域の小さな単位でも構いませんので、隣の方と連携をとりながら、誘因物がある場所や隠れられそうな場所をなくしていく。そして、徐々に連携する単位を少しずつ大きくしていく。いずれは、“地域ぐるみ”や、さらには“街ぐるみ”でそういった管理の手法を取り入れられるようになればと考えています。
(“クマハンター”知られざる活動に密着)
2025年度、各地でクマが目撃され、秋田県では1000頭を超えるクマが駆除されるなど、まさに“異常事態”となっています。バンキシャ!が、秋田県の猟友会で活動する「クマハンター」に密着しました。知られざる、ハンターの1日とは。10月31日、訪ねたのは、クマの生態に詳しい、岩手大学農学部の山内貴義准教授。貴重な“あるもの”を、見せてくれた。クマの頭蓋骨と前足の爪。すべて本物だ。2025年、岩手県内で人を襲った個体を、自治体から提供を受け、研究のため保管しているという。許可を得て、手にとると…このするどい爪と牙が今、各地で人々の日常生活を脅かしている。10月29日の早朝には、山形県南陽市の小学校にクマが侵入。ほかにも、高校の敷地内。さらには、山内准教授が勤める岩手大学でも、2日連続で目撃された。岩手大学 山内貴義准教授「(クマが)この辺に入り込んだみたいです。なので、警察が、人が入れそうなところは全部封鎖して」「(今年の状況は)めちゃくちゃ異常だと思います。年々行動が大胆になってきて、一部凶暴化している可能性はある」。過去最悪の、全国で12人がクマに襲われ亡くなるという“異常事態”。バンキシャ!は、まさに今、最前線でクマと向き合っている、ある猟友会に密着。その過酷な実態とは―。日が昇ってまもない、10月31日午前6時すぎ。バンキシャ!は、秋田市の猟友会に所属するハンターを訪ねた。会社に行く前、“やること”があるという。秋田市の猟友会所属 ハンター「いまから仕事なんだけど、オリの巡回してから出勤しようと思っています」。猟友会では、住民などからの要望で、クマの出没が多い場所に箱ワナを設置。その様子を確認して回るという。バンキシャ!も同行させてもらった。クマが活動をはじめる4月から、毎朝欠かさずパトロールを続けているという。まず向かったのは、りんご園だ。箱ワナの中にクマの姿はない。その後もパトロールを続ける。20分間で3か所を回ったが、クマはワナにかかっていなかった。1日。秋田県湯沢市の猟友会からクマがワナにかかったという情報を得て、現場へと向かった。ハンターとともに車を降りると…体長およそ1mの成獣。湯沢市では、かつてないほどクマの出没や被害が多いため、駆除するかどうかは猟友会に一任されている。今回は駆除を行った。しかし、これで終わりではない。カラになった箱ワナを車の荷台へ。重さは、実に100キロを超える。6人がかりでようやく載せることができた。箱ワナを載せて向かった先は、近くの田んぼ。用水路の水を吸い上げると…高圧洗浄機で洗い始めた。バンキシャ!「洗わないといけない?」。湯沢市の猟友会所属 ハンター「いけない。前のクマのにおいも入っているから」「そのまま設置すれば(次のクマが)入らない。ほとんど入らない」。箱ワナの掃除が続く中、ハンターが近くのりんご園に案内してくれた。真っ赤な実のなる木。だがその周りには…りんご園農家「(クマが)折って食べるんだよ」。こうしたクマ被害は至るところに…「枝が折られれば、3年4年くらい収穫できない」。一方、箱ワナの洗浄は約20分かけて終了。クマが出没している別の場所に仕掛けなおす。中には、香りでクマをひきつけるための味噌や、果樹園で分けてもらったりんごを入れる。その時、ハンターのスマートフォンに着信が。市役所からの電話だ。湯沢市の猟友会所属 ハンター「誰か行くようにする。鉄砲持って行くから。もし撃てれば。一応巡回してみます」「クマが柿の木にあがってたんだと。1.5メートルくらい大きいやつだと」。すぐに別のハンターが現場へ向かった。こうしてクマの駆除から3時間。ようやく箱ワナを仕掛けなおした。ハンターたちにとって大きな負担になっている、箱ワナの運搬や設置。これに、ようやく政府が動いた。自衛隊がこうした活動を支援する方向で、調整を進めているという。バンキシャ!「こういう作業を自衛隊がやると楽になる?」。ハンター「一緒にやればな。重いからみんなで持ってやればいい」。しかし、ハンターにとって重い負担となっているのは、それだけではない。秋田市の猟友会所属 ハンター「ボランティアみたいなものだよ」。ハンターにかかる重い負担。課題は山積している。秋田市ではこれまで、出動1回につき報酬を支給していたが…ハンター「おりの設置等に対して、1人4000円。まあボランティアみたいなものだよ」。秋田市は、11月からこの出動報酬を倍の8000円に増額した。しかし自治体によって、報酬額には差があるのが実情だ。また、同じ秋田市のハンターは、別の課題を指摘する。猟友会所属 ハンター「(猟友会は)もともと趣味の会の集まりだから、同じ猟友会でもクマには関わりたくないという人も少しいる」。さらに猟友会メンバーも減少しているという。クマによる被害を食い止めることはできるのか。
(日本でクマ被害が急増、政府が対策強化へ:BBC)
日本でクマによる被害が急増し、国内で不安が高まるなか、政府はクマの駆除に向けてハンターを募集する計画を立てている。30日には、「クマ被害対策等に関する関係閣僚会議」が初めて開かれ、数々の施策が提案された。環境省は、住宅地に迷い込み人を襲っているクマへの対応として、狩猟免許を持つ人や、その他の人員を雇用するための予算を確保する方針を示した。政府は、クマを公共の安全に対する深刻な脅威と位置づけており、警察に対し、ライフル銃を使用したクマの駆除を認める方向でも検討を進めている。今週には、秋田県からの要請を受け、自衛隊をクマ駆除の後方支援に派遣すると発表した。日本には2種類のクマが生息している。本州などに分布するニホンツキノワグマと、北海道に生息し、より大型で攻撃的とされるエゾヒグマだ。クマによる攻撃で死亡した人は、今年すでに12人に上り、2000年代に記録が開始して以来で最多。犠牲者には、北海道で新聞配達をしていた男性や、岩手県で自宅の庭で死亡しているのが発見された67歳の男性などが含まれている。また、クマによって負傷した人は100人を超えており、その中には、世界遺産に指定されている岐阜県・白川郷のバス停で襲われた外国人1人も含まれている。クマがスーパーマーケットや学校に侵入して人を襲うなど、住民の日々の暮らしを脅かす事例も確認されている。クマの問題は特に、東北地方で山岳地帯を多く抱える岩手県や秋田県で顕著だ。小泉進次郎防衛相は31日、秋田県から要請を受けた自衛隊の支援について、「実施場所、輸送要領などを調整している。協力し得るものから速やかに実行に移していく」と述べた。一方で、「防衛省・自衛隊の本来任務は国防で、無制限にクマ対策は実施できない」と述べた。日本の現行法では自衛隊員が武器でクマを駆除することは難しいものの、わなの設置や死骸の解体処理などでハンターを支援することは可能だ。秋田県の鈴木健太知事は27日、自衛隊派遣の検討を要請した際、「現場の疲弊も限界を迎えつつある」と述べた。日本ではハンターの高齢化が進んでおり、その数も減少している。これは、かつて毛皮や胆嚢(たんのう)を目的に人気があったクマ狩りの衰退と一致している。その結果、クマが人間の生活圏に侵入する事例が増え、住民が攻撃を受けるリスクが高まっている。専門家らは、今年はクマが主食にするブナの実が凶作のため、空腹のクマが人家に引き寄せられている可能性があると指摘している。また、温暖化や住宅地の人口減少も、要因の一つとして挙げられている。日本政府は今年9月、住宅地に侵入したクマを駆除しやすくするため、鳥獣保護管理法を改正した。
(クマ「頭数」が増え「生息域」が拡大している、意外な県・地域)
クマ対策で自衛隊が派遣される方針ですが、抜本的な対策になるのでしょうか?クマの繁殖力を踏まえて、頭数と分布域のデータを見ると驚きの事実が判明しました。頭数が年間平均約14.3%も増えている県、生息域が全国で最も拡大している地域はどこか、見ていきましょう。10月28日、小泉進次郎防衛相と秋田県の鈴木健太知事が面会し、クマ対策に自衛隊の派遣を正式に要請しました。同日、陸上自衛隊の関係者らが秋田県庁を訪れ、派遣後の具体的な任務や役割分担について協議を開始しています。自衛隊によるクマ対策が進むのは喜ばしい一方で、自衛隊が担う役割は、あくまでも緊急的な対症療法になりそうです。現段階ではクマの殺傷は想定しておらず、後方支援などを検討しているとのこと。クマによる犠牲者をこれ以上増やさないためには、より抜本的な対策を行う必要があるはずです。実は、クマの頭数や分布域(生息域)は公表資料から確認が可能です。それらを丹念に分析すると、「クマは放っておけば自然に増える」ということは明確。つまり、駆除をしないと、抜本対策にはならないのです。ヒグマは、2~3年おきに1~4頭(多くの場合2頭)の子も出産するとされています。ツキノワグマは、数年おきに1~2頭の子を出産します。つまりヒグマもツキノワグマも年間20%程度の繁殖力があることが、さまざまな研究結果から明らかになっています。ただし、自然に死んだり、狩猟が行われたりしているので、現実的には20%もの高い率で増えているわけではありません。それでは、実際の数字はどうなのか?頭数と生息域を分析すると、都道府県によってかなりの格差があることが分かりました。まず、北海道のヒグマの個体数推定値について。1991年の全道中央値は5514頭ですが、2023年末の推定中央値は1万1661頭に達しました。約2.1倍の増加です。つまり年間で約2.4%増となります。次に、本州のツキノワグマはどうでしょうか。データが継続的に公表されている都府県が限られるので、分かる範囲でまとめました。岩手県では、16年度の推定個体数が約3400頭(第4次ツキノワグマ保護管理計画の開始時)でしたが、20年度末には推定約3700頭に増えました(大規模ヘア・トラップ調査)。つまり、年間平均で約2.1%の増加があったと推定されます。また、宮城県では08年度に633頭だった推定個体数(中央値)が、20年度には3147頭に増加。年間平均約14.3%も増えています。これには驚いた人も多いのではないでしょうか。次に、クマがどこに生息しているのかを分析します。環境省の「クマ類の分布メッシュの増減率(03年度→18年度)」から地域別の傾向を見てみましょう。ヒグマは北海道に広く生息し、15年間で分布域は約1.3倍に拡大しました(なお、推定個体数は30年間で2倍以上に増加)。ツキノワグマは本州と四国の33都府県に生息し、15年間で分布域は約1.4倍に拡大しました。ただし、四国での分布域は縮小し、九州では絶滅しています。年平均の推測もしてみましょう。北海道・東北・関東・中部では、15年間で分布メッシュの増減率が1.26~1.34倍なので、年平均で約1.55~1.97%増となります。近畿と中国地方は拡大が顕著で、近畿は約1.7倍(年平均3.60%増)、中国地方は約2.7倍(年平均約6.87%増)と全国で最も高い拡大率です。このように頭数の増加だけでなく、分布域も拡大しています。従前の対策のままでは、今後も増えて広がる一方であることは明らかです。野生動物保護の観点も重要ですが、クマは基本的にはライオンと同じ食肉目に分類される動物です。群れでなくライオンとクマが1対1で戦えば、クマが勝つと言われています。つまり、クマが住宅地を徘徊する状況は、ライオンが住宅地を徘徊すると同じかそれ以上に危険なことなのです。現在、緊急時には市街地での猟銃が自治体の判断で可能になるなど、クマ対症療法は進みつつあります。しかし、数字で見ればより根本的な対策が必要なはずです。特に本州ではデータが継続的に公表されている都府県が限られるので、きちんと個体数と生息域を把握し、住民に明確な説明責任を果たすことが重要だと思います。何しろ、生命が脅かされる事態なのですから。
(殺人クマと対峙した猟師の不満、国と現場の《あまりに大きな温度差》:野田 洋人)
クマによる人的被害が全国で相次ぐ中、すでに、今年クマに襲われて死亡した人の数は過去最悪の12人にまで上っている(10月30日時点)。一連の深刻な被害を受けて、ついに政府も重い腰をあげ、関係閣僚会議を開催。11月中旬までに緊急のクマ対策パッケージをとりまとめることを決定した。だが、日夜クマの駆除に追われている猟友会の人間に言わせれば、これまでの経緯も踏まえて「国の対応にはまったく期待できない」という。なぜ彼らはそこまでの不信感を抱くに至ったのか――。以下は、今回取材に応じてくれた、ある猟師の主張だ。その言葉の節々には、熊がどれだけ恐ろしい生き物か、にもかかわらず、これまで甘い対応しかしてこなかった国や自治体への怒りが込められていた。環境省は長年、自然動物保護重視の政策をとり続けてきていました。我々狩猟者の権利は認めつつも基本的には野生動物の保護を理由に上限を設けて最低限しか撃つなという政策だった。彼らは、その野生動物たちが人間が計り知れない恩恵を受けている自然環境の重要な構成員だとし、捕獲数の増加と野生動物の総数が減っているというデータを示してくる。確かに野生動物との共生は美しい文句だ。それができれば素晴らしいと思います。素人はデータと聞くと、正確な数値だと誰もが思う。それは自分たちでもそうだ。でも考えてみてください、山の猪や鹿、熊の生息数などどうやって調べるんだ。奥山に人が入れるか。雌熊がどれだけいて、どれだけ子熊が増えて、どれだけが自然死してなど誰にも分からないんだよ。農作物被害が減っていると言っても、そもそもの農家数が減っているわけだし、数値を示されると人はコロリと信じてしまうんだ。そういうデータに騙されるなと強く言いたい。里山での暮らしは都会にいてパソコンをいじっている人間には決して理解はできないと思う。身近に熊の危険を感じて、犬の散歩にもいけないのがここでの日常なんだ。普通に生活ができないのが現状なんだよ。熊だけではない、猪も鹿も増えていることは実感として感じているのです。山では餌の奪い合いが起きている。木の実が少ないから熊は腐った木や土の中をほじくり返して昆虫の幼虫、木の皮や葉、山菜なども食べている。生存本能というものは行動原理の一番大きなものだ。生きるために、小熊を育てるために熊は危険な市街区域であっても生きるために餌をとろうとする。それが本能なのです。熊は子供のうちは可愛い。白目をクリクリさせて左右に体を揺すりながら歩く姿からは害獣とは思えないことも分かる。しかし、成獣になれば場合によっては人間も飼い犬も作物も全て餌になる。熊に襲われた動物は、まず動きを止められてから、まだ呼吸して生きているまま腹を破られて内臓から食べられる。それから頭蓋骨を割って脳みそを食べる。肉は少し腐らせてからゆっくり食べる。獣の本能というのはそんなものだ。以前、八幡平(岩手県)の熊牧場で飼育しているヒグマに人間が喰い殺された事件があっただろう。経営状態も悪化し、働き手が最低限しかおらず、餌もギリギリしか与えられない飢餓状態に陥っていたクマが雪の壁を伝わって脱走した。そのことを知らない女性従業員達がバケツに餌を入れて持ってきたところを襲われた。身体よりも大きなヒグマに襲われる。その時の彼女達の恐怖を想像してみたことあるか。経営管理のできない人間が悪いのは間違いないが、獣の本能を軽く見過ぎなんだ。連絡を受けて最初に到着した消防と猟師は生きたままヒグマに喰われている女性の姿を間近に見ているんだよ。よほど腹を空かしていたんだろう、ヒグマは女性の体から溢れた血液も残さずに食い尽くした。血の跡など何も残さなかった。ヒグマは雪の上に溢れていた赤い血液も雪ごと喰ったんだ。それだけ腹を減らしていたんだよ。それでも発砲許可が出てないから我々は撃てないんだ。誰もヒグマを撃った経験はない。使用する銃弾などツキノワグマとは違うんだよ。警察は遠くの安全な場所に陣取って我々を監視するように待機するだけだ。我々は喰われ続ける女性を遠巻きにして見るしかなかったんだよ。その間、悠々とヒグマは入れ替わり立ち替わり女性の遺体を貪ったんだ。女性達の遺体はもうほんの少ししか残っていなかった。その場にいた人間や、熊に喰われた女性の家族や親戚の、その気持ちを想像してほしい。当時はそのことを誰にも伝えられなかったが、熊を守れと連呼している人たちにこそその実態を知ってもらいたい。熊は子供のうちは可愛いかもしれないが、成獣になれば人間も餌になる。このことだけは都会の人たちにも知ってもらいたい。可哀想だから熊を撃つなという意見は最もだ。でも、身近に熊がいるところに住んでみろ。そんなことひっくり返っても言えないよ。猟師への取材後、熊出没の多い地域の自治体職員にも話を聞くと、「熊はもうすぐ冬眠します。もう少しの辛抱です」と、本音の言葉であるなら張り倒したくなるような軽口を叩いた。算の問題があるのかもしれないが、熊に怯える住民の心情を無視し、抜本的な対策を後回しにするような物言いは、心通わない上位下達の官僚的な言い分であろう。このままでは人里に現れる熊は増え続け、人的被害が拡大していくばかりだ。里に出てきた熊を撃つことに終始していては、猟友会も住民も警察も自治体職員も関係する誰もが消耗するだけだろう。国民の生命や国土を守るのが国の役割でもあるのなら抜本的な対策が今まさに求められている。
(イノシシ、シカ猟解禁:和歌山)
和歌山県内で1日、イノシシとシカの狩猟が解禁した。各地で農業や林業への獣害が深刻化しており、猟期での捕獲が期待される。上富田町岩田の国本昇さん(83)はこの日、近くの山中でイノシシを2匹を捕獲した。国本さんが仕掛けていたくくりわなに、約70キロと約80キロのイノシシがかかっていた。捕獲したイノシシは、自家用として食べたり、地域の人に配ったりするという。国本さんは狩猟を始めて63年。地元の猟友会に所属し、町からの依頼を受け、猟期以外にもイノシシやシカの有害駆除に取り組んでいる。国本さんは「農作物が荒らされて地域の人が困っている。狩猟している人は高齢者が多いので若い人が増えれば」と話した。イノシシとシカの猟期は来年3月15日まで。
(農作物被害額は年間5000万円にも“害獣”「ヌートリア」)
外国から持ち込まれた大型ネズミ「ヌートリア」。その生息域は年々拡大していて、農作物を食い荒らすなど深刻な被害が相次いでいます。かわいい見た目とは裏腹に、実は農作物を食い荒らす「害獣」です。その生息地は拡大し、都会にも出没しています。被害をもたらすヌートリア捕獲に、報奨金を出す自治体も。進撃する「ヌートリア」の実態に迫りました。姫路市立水族館で飼育されているヌートリア。お食事タイムでは、固い生野菜をボリボリと食べる姿が「かわいい」と来館者に人気です。「カピバラ」と似ていますが、「ヌートリア」は農作物を食い荒らすため、特定外来生物に指定されたいわゆる「害獣」なのです。もともと南アメリカに生息し、軍服の毛皮のために輸入されたヌートリア。その後、野生化し西日本を中心に広く生息しています。農作物への被害は、近年、増加傾向にあり、およそ5000万円にも上ります。深刻な被害が出ていると聞き、取材班が向かったのは兵庫県加西市。ヌートリアの被害にあった田んぼを見せてもらいました。鈴木さんは今年8月、収穫直前の米およそ90キロを食べられました。周辺には現在、おりが設置されていますが、まだ捕獲できていないということです。また、隣の畑ではブロッコリーがヌートリアにかじられたという被害が出ていました。榊原さんの畑では去年も被害に遭い、収穫直前の野菜が全滅し、およそ20万円の損害が出たといいます。畑にはヌートリアが通ったとみられる獣道があります。しかし、姿は見当たらず帰ろうとしていると…すぐ隣のため池にヌートリアの姿が!畑を荒らした個体でしょうか。周囲を気にすることなく草を食べ、悠々と歩いていきました。ヌートリアの“脅威”はあの世界遺産にも…これまでに少なくとも6匹のヌートリアが捕獲された世界遺産・姫路城。ヌートリアはおよそ6メートルにも及ぶ巣穴を掘るため、石垣の間に巣を作ると石垣を空洞化させる恐れがあるということです。大阪でも、生息エリアが拡大しています。取材班が大阪市内の川へ行ってみると…R環状線・桜ノ宮駅のすぐ近く、“街中の川”に現れたヌートリア。優雅に泳いでいますが、噛まれると骨折したりフンや尿を介して感染症をもたらすなどの危険性があります。こうした状況を受けて、対策に動き出した自治体があります。兵庫県加東市では去年から、1匹捕まえるごとに報奨金3000円を払う対策を始めていて、中には、26匹のヌートリアを捕獲した人もいます。【26匹のヌートリア捕獲中川繁美さん】「農業されている方の救済。捕獲を1匹でも多くしたら被害がなくなるんちゃうかなと。『補助金が出ますよ』とありましたので、一回頑張って捕獲してみようかと」。しかし、専門家は、強い繁殖力から対策の難しさを指摘します。【北海道大学文学研究院 立澤史郎招へい教員】「ネズミ算式といいますか、1頭のメスが状況が良かったら、年3回繁殖します。1回の繁殖で多い場合には7~8頭こどもを産むことがありますので、状況次第では、非常に急速に増える動物」。イタチごっこならぬ“ヌートリアごっこ”の現状。有効な対策はあるのでしょうか。厄介者「ヌートリア」を活用する取り組みがあります。静岡県磐田市では、市、農協、猟友会、大学が連携。ヌートリアを捕獲し、食材として活用する動きがあるようです。味はどうなのか。すでに食材として活用している大阪市北区のジビエ料理を提供する店では、コースの中にヌートリア料理があります。ヌートリアのコンフィを食べた記者によりますと、「独特の臭みはなく、食感や風味は鶏肉に近く、食べやすく美味しかった」ということです。シェフによると、「ネガティブなイメージを裏切るぐらい食材としてポテンシャルがある」と仰っていました。特定外来生物のヌートリアは、自治体の許可なく駆除すると罰せられることもあります。自治体に相談の上、指示に従ってください。
(クマ出没相次ぐ、カキ伐採する人も:富山)
県内ではきょうも、クマの出没が相次いでいます。富山市南部の地域ではクマを目撃したことを受けて、自宅のカキの木を急遽伐採する人の姿がありました。富山市東黒牧ではきょう未明、農家の斉藤大悟さんが農作業のため、畑に出たところ近くのカキの木にクマ1頭がいるのを目撃しました。斉藤さんは富山市に通報し、自宅敷地にあるカキの木2本を伐採しました。現場の近くには、熊野川が流れていて、クマの出没が多い地域です。富山市ではきょう、大沢野総合運動公園や小見小学校の近くでもふんが見つかるなどしました。また、立山町では午後1時40分ごろ、常願寺川にかかる富立大橋近くの田んぼでクマ1頭の目撃がありました。町の職員や警察がパトロールを行いましたが見つかっておらず、引き続き注意を呼びかけています。
(「わな猟免許」県内で取得者増:熊本)
熊本県内で、獣害対策として「わな猟免許」を取得する人が増えている。イノシシやシカの個体数が増えて農作物被害が深刻化しているためだ。県は毎年6回程度実施している試験回数を2025年度は9回に増やしており、「被害を少しでも減らすため取得して活用してほしい」と呼びかける。県が発行する狩猟免許はわな猟のほかに、網猟、銃猟(一種、二種)がある。県自然保護課によると、24年度のわな猟免許所持者は3947人。約2500人だった12年ごろと比べて約1・6倍に増えた。近年では年間に約300人が新たに免許を取得している。銃猟免許所持者は高齢化で減少しており、1985年度の7889人から2024年度は1824人となった。県によると、銃を取り扱う技術や知識、経験が求められる銃猟と比べて、わな猟は設置するだけで害獣を捕獲できる利点がある。免許取得のハードルが低いことも、関心が集まる理由という。取得可能な年齢も銃猟の「20歳以上」に対し、わな猟は「18歳以上」で、県は「若い人も挑戦してほしい」としている。一方、県内では野生鳥獣による農作物被害は深刻な状況が続く。県むらづくり課の集計では、23年度の被害額は5億3757万円。イノシシが全体の約55%を占め、シカ約15%、カモ類約12%と続いた。前年度と比べて鳥類による被害が少なく総額は約5900万円減ったが、イノシシ、シカ、サルなど獣類は約2500万円増えた。イノシシやシカはミカンやブロッコリー、キャベツなどを食べるといい、被害の約6割が野菜と果樹だ。イノシシやシカは11月~3月の狩猟期間のほかに、自治体に申請して行う「有害駆除」がある。自治体によっては、わなの貸し出しや資格試験の費用助成もあり、取得を後押しする体制を整備している。
(ロードキル防止センサー設置、クロウサギの事故多発線で:鹿児島)
鹿児島県徳之島町は10月30日、国の特別天然記念物アマミノクロウサギのロードキル(交通事故死)の町内での多発場所に、ドライバーに事故の危険度を知らせるミリ波レーダー機ロードキル防止システム1台を設置した。車のスピードを検知し、事故発生リスクの段階ごとに色が点滅してドライバーに減速を促す。町は2026年3月31日まで実証実験を行う。設置されたのは事故が多発している県道松原轟木線。ミリ波レーダーセンサーは約120メートル先まで電波を発し、向かってくる車の速度を検知。事故発生の可能性が高い速度(時速40キロ以上)の場合は赤、安全速度(時速29・9キロ以下)は緑が点灯する。時速30~39・9キロは黄が点灯する。センサーにはデータ収集機能もあり、車両の通行日時や速度も記録。データを収集・蓄積することで、事故が発生しやすい曜日や時間帯の検証に役立てる。26年3月以降はLiDAR(ライダー)と呼ばれる赤外線センサー装置も設置予定。ライダーは車の自動運転にも使われているシステムで、赤外線センサーで対物の形や道路周辺環境を感知。これにより夜間でもアマミノクロウサギの姿を感知でき、ミリ波レーダーと連動することでドライバーに減速を促すシステムの構築を目指す。将来的には畑での食害防止にも活用したい考え。両センサーの開発に携わり、奄美大島と徳之島で環境保護活動を行っている太平電機(横浜市)の樋口公平社長(60)は「アマミノクロウサギだけでなく他の希少動物のロードキルもゼロにしたい」と話す。徳之島町おもてなし観光課の仲田英貴自然保護係長は「県道松原轟木線は島内でも1位2位を争うロードキル多発地点。システムの構築で事故が減らせたら」と期待した。
(ハンター確保へ、狩猟免許取得を後押し:青森)
青森県は、クマなど有害鳥獣の捕獲を担うハンターの確保策を強化している。年3回だった狩猟免許の試験回数を今年度から4回に増やしたほか、新規免許取得者向けに銃取得費用を助成する仕組みも新設。免許の新規取得を後押ししたい考えだ。「弾を 装填そうてん してください」「射撃姿勢を取ってください」。指示を受けた男性が静かに銃に弾を込めると、緊張した面持ちでガラス窓に銃口を向けた。9月13日に弘前市中央公民館で開かれた第1種免許試験の一コマで、受験者は模擬銃を使って分解や組み立てなど発砲前後の動作を進めた。弘前市の男性(74)はカキや栗をクマに食べられる被害を機に受験したといい、「花火などで対策をしてきたが、どうしようもない。空砲でもいいから撃ちたい」と切迫した様子だった。この日は今年度3回目の免許試験で、従来であれば次回は来年度まで待つ必要があったが今年度は12月に4回目が受けられる。さらに9月からは新規免許取得者に対し、試験前の講習会費用に加え、第1種免許限定で10万円を上限に銃など装備品の購入費用も助成している。いずれも県内での有害鳥獣捕獲への参加が条件だ。県内では、クマ対策に効果的なライフル銃を扱うのに必要な第1種免許の所持者が2023年度末時点で1123人にとどまり、ピークだった1981年度の6964人から8割超も減った。捕獲した獣類を食料としたり、敷物に加工したりする風習が廃れたことが一因に考えられ、2016年度以降の新規取得者も年平均70人を割り込む。ライフル銃を新たに持つには、銃刀法で10年以上の猟銃所持歴も求められる。県自然保護課の近藤毅・総括主幹は「狩猟免許所持者をしっかり増やしていかないと、鳥獣被害の高まりに対応していけなくなる」と強調する。
(マラソン大会で猟友会が監視:山形)
クマの目撃情報が相次ぐなか天童市で行われたマラソン大会では地元の猟友会が監視にあたりました。生産量日本一のラ・フランスをPRするこのマラソン大会には全国からおよそ5100人がエントリー。果樹園を縫うように走るのが特長で辺でもクマが目撃されているためコース脇に猟友会メンバーを配置し、5台のスピーカーを設置してラジオを流す対策が取られました。不安の中参加したランナーは給水所で振る舞われた秋の味覚、ラ・フランスを堪能していました。
(児童がクマ問題を紙芝居に?:山形)
森林の保全活動を行っている山形県東根市の高崎小学校で、児童たちが考えたマルシェが開かれました。森が身近にある児童たちにも、クマ被害は関心ごとのようです。東根市の山間に位置する高崎小学校では、木を活用する事で森林の保全につなげようと、毎年木炭を作っています。きょうは、3・4年生が夏場に作った木炭の販売会の日です。児童は「こんなに売れるんだなって感じですね。自分たちで頑張って切ったりした関山炭が、こんなに売れてすっごく嬉しいです」。この販売会と合わせて開かれたのが「森林マルシェ」です。訪れた人に森を考えるきっかけにしてもらおうと、児童たちが考えました。マルシェではキーホルダーやコースターを廃材や間伐材を使って作るコーナーが設けられました。また、「環境」をテーマにした児童たち手作りの紙芝居が発表されました。クマが高崎小学校の炭づくりを見て森の現状を知るといった内容です。児童たちの中でも、昨今のクマによる被害の話題は少なくありませんでした。児童は「自然豊かで手入れもされてクマも森に住んでみんなの望んでいる森林になれば」。高崎小学校では、炭づくりを通して森林の保全活動を行いたいとしています。
(被害続出も「クマを駆除する自治体に抗議する」と家族に協力を求められた…)
クマ(熊)による人的被害が相次ぎ、政府も「緊急クマ対策」に乗り出した。そんな危機的な状況にあっても、動物愛護の観点から「クマの駆除に抗議したい」と家族に協力を呼び掛けられた時、どう対応すればいいのだろうか。「大人研究」のパイオニアとして知られるコラムニストの石原壮一郎氏がその対策を提言した。義母が「熊を駆除する自治体に抗議したい。あなたも手伝って!」と言い出した。それはできない相談だが、昔から人の話を聞かないタイプで勢いが止まらない……。近くに住んでいる義母は、悪い人ではないのだが、昔から思い込みが激しくて人の話を聞かないタイプです。何に感化されたのか、ある日「熊を駆除する自治体に抗議したいんだけど、あなたも手伝って! メールはどこに送ればいいの! 電話番号も調べて!」と言い出しました。「鉄砲で撃ち殺すなんて、そんな残酷なこと許せない!」と激しく怒り続けています。義母には日頃お世話になっていますが、事態の深刻さを思うと、さすがにこれは協力できません。妻と顔を見合わせながら曖昧(あいまい)な態度を取っていたら、「あなたたち、熊がかわいそうだと思わないの!」と、どんどんヒートアップする一方です。なんとも面倒臭い状況になりました。ケンカにならずに平和を保ったままお引き取り願うには、どうすればいいのか。静かな口調で「お義母さんの気持ちもよくわかります」と、いったん寄り添う姿勢を見せるのは、相手を落ち着かせるセオリー。その上で「たしかに熊の命も大事ですけど、人間の命はもっと大切だと思うんですが」と言ってみる手はあります。しかし、「動物の命を大切に思える心やさしい自分」に酔っている義母にとって、熊が出没する地域に住む人たちの恐怖心や危険性なんて知ったこっちゃありません。正論を説けば説くほど、ますます頑なになって、やがて怒り出してしまうでしょう。ここは、義母に「こいつらに話しても無駄だ」と思わせたいところ。まずは、ノンキな口調で「いやあ、まさにクマったクマったですねえ」と力の抜けるダジャレを繰り出します。さらに「出くわしたら、あっかんベーアってやると逃げてくれるかな。ベアだけに」と畳みかけましょう。義母がひるんだ(呆れた)スキに、こう提案してみます。「お義母さん。壺に入れたハチミツを持って、熊がいそうな山に登りに行きましょう。熊にもお義母さんの愛情が伝わって、きっと喜んでくれると思いますよ」。熊がかわいそうというセリフは、安全圏にいる人にしか言えません。そして、そんなことを気軽に言っている人は、現地に行って熊と対峙する度胸はカケラもありません。あるいは「そうだ、長い目で見て多くの熊の命を救うために、お義母さんが『保護熊』の制度を立ち上げるのはどうですか」と提案してみるのも一興。「そして、まずはお義母さんが、たくさんの熊を引き取ってください。きっとかわいいですよ」とも。言うまでもなく、暗に「そんな覚悟もないくせに、外野から無責任に『熊を守れ』と言うのは人としてどうなのか」という皮肉を込めています。しかし、関係者の苦労も想像できずに「駆除はケシカラン!」なんて言えるトホホな人が、皮肉を察知できる可能性は限りなく低いでしょう。お気の毒ですね。
(クマ1頭を駆除、出没が相次ぐ住宅街に銃声響く:北海道)
2日午後、札幌市南区にクマが相次いで出没しました。体長などから同じ子グマとみられ、午後4時半までにハンターが猟銃2発を発砲し、クマ1頭を駆除しました。2日午後2時ごろ、札幌市南区藤野3条7丁目の住宅で、クマが塀をよじ登るのを通りかかった人が目撃しました。このおよそ2時間半ほど前にも、近くの南区藤野5条8丁目付近でもクマが目撃されました。目撃されたクマは、いずれも体長およそ50センチの子グマとみられ、近くの墓地に移動したあと、午後1時半前に藪の中に姿を消したということです。その後、出動したハンターが警戒に当たっていたところ、再びクマが藪から出てきたため、午後4時20分ごろと午後4時半ごろに猟銃を1発ずつ発砲しました。警察によりますと、この発砲でクマ1頭を駆除したということです。札幌市によりますと、駆除したクマは体長72センチのオスで、今年生まれた子グマだということです。
(クマが「柿に夢中」、県内各地の住宅街で目撃続発:宮城)
11月1日午後4時40分ごろ、大崎市岩出山の民家敷地内で、体長1メートルほどのクマ1頭が柿の木に登っているのを住民が目撃。クマはすぐに立ち去り、発見には至っていない。同日午後4時45分ごろには、仙台市泉区の畑でも、同様に柿の木に登るクマが目撃された。関係機関が箱わなを設置したり、花火を鳴らすなどの対応をとったが、クマは長時間にわたり木に居座り続けた。夜間まで警戒が続けられたが、その後行方が分からなくなっている。午後5時20分ごろ、大和町の民家敷地内でも、柿の木に登る体長1.3メートルほどのクマが目撃された。駆けつけた警察が爆竹を鳴らすなどの対応をとった結果、クマは近くのやぶに逃げ込んだという。午後5時30分ごろには栗原市一迫で、路上で柿を食べている体長1メートルほどのクマが目撃された。近くには川が流れており、同じ場所で3日連続で目撃が続いていることから、川沿いを移動している可能性があるとみられている。午後8時ごろには、住人が犬の散歩から帰宅した際、自宅の東側の柿の木にクマがいた。飼い犬が吠えたことでクマは立ち去った。11月2日午前0時30分ごろ、仙台市泉区実沢の河川敷でも、柿の木に登る体長1メートルほどのクマが目撃された。クマが登った木はその後折れ、姿を消した。さらに午前6時55分ごろには、民家敷地内の柿の木から山林に向かって移動する、体長70センチほどのクマも目撃されている。同日午前6時40分ごろには、仙台市泉区虹の丘の路上でも、体長1メートルほどのクマが目撃された。この地域ではその後も複数の目撃情報が寄せられており、付近に住宅や学校があることから、警察は区役所に対し「緊急銃猟の可能性も視野に」と伝えている。11月1日午後2時から2日午前8時30分にかけて、県内で確認されたクマの目撃件数は32件にのぼる。現時点で人的被害は報告されていないが、引き続き警戒が必要な状況だ。
(クマがワナ破って脱走か、日本一にも選ばれた紅葉の名所「中野もみじ山」が一部立ち入り禁止に:青森)
黒石市によりますと30日午前8時ごろ、黒石市南中野の「安らぎの駐車帯」から北東におよそ1.4キロに設置された金属製の箱ワナの格子が破られているのを市の職員が確認しました。市は、クマが1度罠にかかり抜け出して逃げたとみています。すでに箱ワナは回収し、別のわなを設置したということです。これを受けて市は駐車帯を利用する中野もみじ山で、中心にある中野神社より山側の散策ルートを立ち入り禁止としました。中野もみじ山では、10月18日から11月9日まで、夜間ライトアップが行われていますが、ライトアップは継続して行うということです。中野もみじ山は京都の名所「嵐山」になぞらえて「小嵐山」とも呼ばれる紅葉の名所です。1802年に弘前藩主 津軽寧親(つがるやすちか)公が、京都から百余種の楓苗を取り寄せ移植したのが始まりとされています。樹齢100年以上のもみじが織りなす絶景が人気で、2023年には旅行情報誌「じゃらん」による「夜の紅葉絶景ランキング」で、全国1位に選ばれていました。
(快速エアポートがシカと衝突、JR千歳線9本運休:北海道)
31日午後5時5分ごろ、JR千歳線の長都(千歳市)―サッポロビール庭園駅(恵庭市)間で、新千歳空港発小樽行きの快速エアポート(6両編成)がシカと衝突し、緊急停止した。乗客乗員にけがはなかった。
(「杉の木にクマがいる」、麻酔銃で捕獲:福島)
2日午後1時15分ごろ、福島県福島市松川町水原字赤沼の住宅敷地内で「杉の木にクマがいる」とこの家に住む70代男性から福島署に通報があった。周辺でクマの目撃が相次いでいるため、地元の猟友会が麻酔銃を使用してクマを捕獲した。けが人はいなかった。同署によると、クマは体長約1メートルで、庭にある杉の木に登っていたという。
(列車とシカ衝突し6本運休:北海道)
1日午後7時ごろ、後志管内仁木町のJR函館線銀山ー然別駅間で、長万部発小樽行き普通列車(1両)がシカと衝突した。JR北海道によると、乗客にけがはなかった。列
(役場ロビーにクマ侵入:青森)
4日午前9時50分ごろ、青森県の西目屋村役場1階ロビーに一時、クマが侵入した。村によると、子グマで正面玄関自動ドアから入った。何かにぶつかる音がし、その後出て行ったという。
(家電の廃プラでエゾシカわな:北海道)
野生鳥獣の対策に取り組むNPO法人ファーミングサポート北海道(札幌市)と三菱電機(東京)は、家電の製造過程で出る廃プラスチックを使ったエゾシカのくくりわなを開発した。従来の金属製のわなと比べ、軽量化も実現。環境に配慮した「エコなシカわな」として、来年以降の販売を予定している。
(郷土料理の販売やジビエの焼き肉が振舞われる:長野)
3連休の最終日の3日、長野市中条地区では時折冷たい雨が降る中で、秋恒例の「むしくらまつり」が開かれています。「信州むしくらまつり」は、地域の魅力を伝えようと開かれていて、今年で19回目です。会場には、手打ちの細麺に野菜たっぷりの汁をかけた郷土料理「おとうじ」の販売など31のブースが並びました。きょうは、時折冷たい雨の降る天気となりましたが、地元で獲れたシカの焼き肉の振る舞いや、木工やピザ作りが体験できるブースもあり、訪れた人は中条地区の魅力を満喫していました。
(ジビエ活用:福島)
狩猟で仕留めた鳥獣の肉「ジビエ」の人気が高まっている。低カロリーで高タンパク。古くから欧州では貴族が楽しむ高級食材として重宝がられた。シカやイノシシなどの駆除は、畑の実りを守ることにもつながる▼県内は原発事故の影響で、野生鳥獣肉の出荷制限が続く。縛りが解かれる時期は見通せないが、西会津町は将来に先手を打つ。ジビエを活用した地域振興策を考える検討会を発足させ先月、初会合を開いた。猟友会や飲食店関係者らが膝を交え、特産品化やメニューでの提供について意見交換した▼町によると、昨年度までの10年間で鳥獣被害が最多だったのは2019年度の1100万円。被害総額は減少傾向となっている。電気柵設置による対策が功を奏しているとみる。ただ、イノシシや熊、サルによる被害がゼロになったわけではない。敵もさるもの。出没はやまず、大切な作物が奪われ続けている▼会合では他県産のジビエの試食もあり、害獣の駆除を消費につなげる可能性を探った。専用の食肉処理施設の開設も検討する。生命を余さず頂く。特産物が新たに生まれ、農業も一層活気づく。「一石二鳥」ならぬ「一石二獣」か。
(「阿波地美栄まつり」を開催:徳島)
徳島県では捕獲した野生鳥獣(シカ・イノシシ)を食肉として有効活用し、地域の活性化につなげるため、「地域が美しく栄えて欲しい」という気持ちを込めて「阿波地美栄(あわじびえ)」と名付け、ブランド化を推進しています。この度、「阿波地美栄」の消費拡大およびブランドの認知度向上を図るため、次のとおり、ジビエ加工品やグッズが抽選で当たる「阿波地美栄まつり」を実施します。
(ジビエ鹿革のバッグブランド『ENISICA(エニシカ)』でワークショップ開催:兵庫)
神戸・大倉山にあるショップアトリエ『育てる革小物 ma-sa』(神戸市中央区)で革小物制作のワークショップが体験できると聞いて、取材に伺いました。ここでは、主に牛革ブランド『ma-sa.jp』と、鹿革ブランド『ENISICA』を取り扱っています。場所は、各線神戸駅から徒歩約10分。大倉山駅からは徒歩5分ほどの場所にあります。ここで「国産ジビエ鹿革ワークショップ」が定期開催されています。この日はタッセルまたは丸巾着を作るワークショップでした。国産ジビエ鹿革ブランド『ENISICA(エニシカ)』は、害獣駆除された日本の鹿革を素材にした神戸発のバッグブランド。ワークショップでは、エニシカのバッグや帽子でも使われている鹿革を使います。革のカラーは古墨(こぼく)、茅葺(かやぶき)、ラムネ、雪曇(ゆきぐもり)、紅杉(べにすぎ)、朝霞(あさがすみ)の6色。ワークショップでは、本体部分も紐も、自分好みの革を選べるのも嬉しいポイント。まず、駆除される鹿のこと、鹿革の特徴やエニシカブランドのお話を聞いてから、制作の流れをざっくりと教わります。やさしい色合いで、薄くて軽いのに強度もある鹿革。撥水加工されているため、少し雨に濡れてもシミになりにくいです(完全防水ではありません)。アトリエで制作中の代表・革職人 松木真麻さんが、金型で革を切り出す作業を見せてくれたり、質問に答えてくれるシーンもありました。さて、いよいよ制作です。革選びは、同じカラーでも一枚一枚個性があり、さらに1枚の革でも使う部分によって表情や厚みが異なります。巾着の正面をどの部分にするかも、アドバイスをもらいながら決めていきます。丁寧に教えてもらえるので、革を使ったものづくりが初めての方も安心です。この日のワークショップ参加者はお二人とも、巾着のメインカラーに朝霞(アッシュブルー)を選ばれました。革は自然由来のものなので個体差があります。同じ色でもこんなに違いがあるのですね!実は厚みも、左は薄くてカットしやすいのに比べて、右は鹿革にしては厚めでかたい革でした。しっとりしたヌバック調の『エニシカ』オリジナルの鹿革。初心者向けワークショップでも、“革の切り出し”から体験できるのは、薄くてしなやかな鹿革ならではといえるかもしれません。自分で作った革小物は、使っていくうちにさらに風合いが増して、愛着がわくことでしょう。
(クマ出没:宮城)
丸森町によると、3日午後、丸森町耕野登花東にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
登米市によると、4日午前5時40分ごろ、登米市迫町新田中葉ノ木沢にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
色麻町によると、4日午前9時10分ごろ、色麻町大下新町北にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、4日午前9時ごろ、栗原市栗駒桜田中有賀にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、3日午後9時25分ごろ、栗原市高清水宿の沢にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
富谷市によると、3日午後4時50分ごろ、富谷市三ノ関狼沢にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
色麻町によると、3日午後4時15分ごろ、色麻町清水地区にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、2日午後11時30分ごろ、栗原市栗駒芋埣倉沢にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、2日午後10時30分ごろ、栗原市栗駒稲屋敷大鳥の路上にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、3日午前9時55分ごろ、栗原市鶯沢南郷日向にクマが出没しました。
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(自宅から外に出ると2頭のクマ、このうちの1頭に襲われ男性がけが:秋田)
秋田市の住宅の敷地内でこの家に住む65歳の男性がクマに襲われけがをしました。警察によりますと3日午前5時半ごろ、秋田市飯島の住宅でこの家に住む65歳の男性が家の外に出たところクマ2頭と遭遇し、このうち1頭に襲われたということです。男性を襲ったクマの体長は約1.2メートルで、もう1頭は約50センチでした。男性のけがの程度は分かっていませんが、意識はあり会話はできるということです。
(クマによる死者数12人、これまで過去最多だった年の2倍に)
クマによる被害が全国で相次ぐ中、今年度、クマに襲われて死亡した人の数が12人に上り、これまで過去最多だった2023年度の6人から2倍になったことが分かりました。環境省は、秋田県秋田市で今月27日に遺体で見つかった女性について、クマに襲われて死亡したものと認定し、今年度、クマによる死者数が12人に上ったと先ほど発表しました。これまで過去最多の死者数だったのは、2023年度の6人でしたが、今年度は2倍の数となっています。クマによる被害が相次いでいることを受け、政府は、これまで開催していた関係省庁連絡会議を関係閣僚会議に格上げし、今後の対策を検討する方針です。
(警察がライフル銃使用検討、環境省はハンターを公務員に)
政府は30日、クマ対策に関する関係閣僚会議の初会合を開いた。議長の木原稔官房長官は同日の記者会見で、警察に対し「ライフル銃を使用したクマの駆除について、早急に対応してくれというお願いをした」と述べた。環境省は自治体がハンターを職員として雇うための交付金を2025年度内に新設する。農林水産省などと作成した対策パッケージに盛り込む施策も増やす。クマによる人身被害の対策をてこ入れする。木原氏は30日の会議で「クマ被害対策施策パッケージ」を11月中旬までにまとめると表明した。「必要な予算措置の検討も含め、関係省庁が緊密に連携し、実効性の高い対策を着実にかつ段階的に実施するようお願いする」と述べた。当初は環境省や警察庁などの実務者が集まる予定だった。被害の拡大を踏まえて切り替えた。25年度にクマが原因で亡くなったのは30日時点で疑い事例も含めて13人と、遡れる08年度以降で最多となっている。環境省は駆除に必要な免許やスキルを持った人に「公務員ハンター(ガバメントハンター)」として働いてもらう仕組みを整える。自治体が新たに専門人材を雇ったり、職員向けに研修を開いたりするための財源を確保する。30日の会議で石原宏高環境相が「ガバメントハンター等の捕獲者の確保など、補正予算を活用した対応を進める」と言及した。もともと26年度予算の概算要求で37億円を求めた「指定管理鳥獣対策事業費」の一環だった。25年度補正予算に前倒しして計上する。環境省と農水省、林野庁、国土交通省、警察庁の5省庁は24年、クマ対策のパッケージをまとめた。個体数管理の強化、専門家やハンターの育成といった内容だ。この施策集も11月中旬までに充実させる。9月施行の改正鳥獣保護管理法は、クマが人の生活圏に出没した際の緊急銃猟を認めた。これまでは原則として発砲できなかった住宅地でも一定の条件を満たせば市町村の責任で猟銃を使える。既に札幌市や仙台市、秋田県横手市などで実施した。
(クマに警察官がライフル使用へ、北海道と東北6県を念頭に準備急ぐ)
クマによる被害の深刻化を受け、警察庁は、警察官によるライフルを使用したクマの駆除に乗りだす方針を決めた。ライフルをもつ機動隊が担当する。まず東北6県と北海道の警察を念頭に、訓練など実施にむけた準備を急ぐという。クマの出没や人的な被害をめぐって警察は従来、住民の避難誘導や警戒にあたってきたほか、警察官職務執行法に基づきハンターらに猟銃を使った駆除を命じる形で関わってきた。市町村の権限による「緊急銃猟」でも、現場で安全確保の観点から警察官が協力してきた。被害が深刻化する中、警察庁は緊急に新たな対応ができないかを検討。地域警察官らがもつ拳銃ではクマの駆除は無理だが、都道府県警の機動隊が保有しているライフルであれば威力の点からも駆除が可能で、法的にも体制面でも問題ないと判断した。警職法の「必要な限度において武器を使用できる」や「危害防止のために必要な措置を命じ、または自ら措置をとることができる」といった規定が根拠になるという。今後、関係の県警などが実際の運用方法などを検討する。例えば、ハンターが行うクマの駆除の様子を実際に見て、学ぶことなども想定している。警察官が駆除する場合の自治体など関係機関との調整や連携のあり方についても検討していくという。
(“クマ対策”11月中旬までに政府が取りまとめ、「ガバメントハンター」確保や柿の木伐採など盛り込む)
各地で相次ぐクマ被害を受け、政府は関係閣僚による会議を初めて開き、対策の政策パッケージを11月中旬までに取りまとめることにしました。木原官房長官:国民の命と暮らしを守るため、追加的・緊急的なクマ対策を強化する。会議の議長を務める木原官房長官は、生活圏でも猟銃を使用できる「緊急銃猟」が可能な人材を増やすことや、迅速な駆除に向けた速やかな対応を関係閣僚に指示しました。そして、追加的・緊急的な対策を含む政策パッケージを11月中旬までに取りまとめる方針を表明しました。新たな対策として、柿の木の伐採などクマの出没の未然防止や、狩猟免許を持つ自治体職員、いわゆる「ガバメントハンター」の人材確保などが盛り込まれます。木原官房長官:警察においては、ライフル銃を使用したクマの駆除について早急に対応してくれとお願いをした。また、木原長官は記者会見で、警察に対しライフル銃を使用した駆除や、クマの知識を習得し訓練を受けた警察官の確保などの検討を求めたことを明らかにしました。
(クマ被害、トクリュウ対応を指示)
警察庁は31日、全国の警察本部長を集めた会議を東京都内で開いた。楠芳伸長官は各地で相次ぐクマ被害を受け、警察官によるライフル銃を使用した駆除の検討を進めているとし、警察庁と緊密に連携して対応するよう指示。「自治体のニーズを踏まえながら必要な措置を迅速に講じてほしい」と訓示した。また、「匿名・流動型犯罪グループ」について「治安上の課題の多くに深く関与しており、撲滅に向け対策を一層強化する必要がある」と強調。10月に発足した警察庁と警視庁の新組織とともに、中核人物の実態解明や、犯行に使う口座や端末を用意する「道具屋」といった犯罪インフラの解体に取り組むよう求めた。
(クマの被害が大きい都道府県に担当官を週明けにも派遣へ)
全国でクマによる被害が相次ぐなか、赤間二郎国家公安委員長はクマによる被害が大きい都道府県に週明けにも担当官を派遣し、現地の状況の把握にあたると明らかにしました。赤間国家公安委員長は31日の会見で、相次ぐクマ被害への追加的・緊急的な対応として「警察官が市町村による緊急銃猟に協力し、警察が保有するライフル銃を使用してクマを迅速かつ的確に駆除できるようにしたい」との方針を示しました。そのため、クマによる被害が大きい都道府県に週明けにも担当官を派遣し、現地の状況の把握にあたります。また、クマの駆除にあたる警察官に対し、関係機関とも連携してクマの生態などについて知る機会を設け、クマの駆除に早急に対応できるように指導を行うとしています。
(農林水産大臣、クマ対策の3本柱「捕る・守る・寄せつけない」を強化)
鈴木農林水産大臣鈴木憲和農林水産大臣は10月31日、閣議後の会見でクマ対策について「農業現場では、農作業の際クマに会わないか、不安感が大きくなっている」とし、捕獲活動で「捕る」、進入防止柵の整備で集落の生活を「守る」、緩衝帯の整備で「寄せ付けない」の3本柱の取り組みをさらに強化する方針を示しましました。また、木原稔官房長官の指示に従い「クマ被害対策施策パッケージ」の見直しと強化を関係省庁と連携をとり、11月中旬までにまとめることを明らかにしました。環境省によると、今年度のクマによる死者数は30日までに12人と過去最悪。被害件数も過去最多だった2023年度と同水準で、特に市街地での被害が連日発生している。「国民の安心安全を脅かす深刻な事態」とし、30日にはクマ対策で初の閣僚会議が実施されたばかりである。
(自民党がクマ緊急対策PT立ち上げ)
各地でクマによる被害が相次いでいることを受け、自民党は31日、緊急対策プロジェクトチーム(PT)を立ち上げた。初回会合に出席した小林政調会長は、2025年度のクマによる死者が既に12人と過去最多となっていることについて「非常に深刻な状況だ」と述べ、「速やかに実効性ある駆除対策を打ち出していかなければいけない」と強調した。会合には環境省や警察庁など関係省庁からも担当者が出席し、直ちに実施すべき対策について自民党側が申し入れを行った。申し入れで自民党側は、クマ対応にあたる人員を増やすための「機動隊の派遣」「駆除できる人材の育成」「猟友会と連携してのハンター増員支援」などに加え、「自治体間で異なっている捕獲手当の標準化」「箱わななどの資機材を購入する自治体の負担を軽減する予算措置」などの財政支援や、外国人向けに注意喚起の多言語対応も求めた。会合の出席者からは、侵入経路を検証し必要に応じて木々を伐採したり緩衝地帯を設けることなどについても意見が出たという。自民党は、来週もPTを開いて秋田県などから聴き取りを行うとともに、随時政府に申し入れるとしている。
(自民党、クマ被害緊急対策チームが初会合)
自民党はクマ被害に対応するため緊急対策チームを立ち上げ、初会合を開きました。「地域にお住まいの方の不安は計り知れないものがあると、速やかに実効性ある駆除対策を打ち出していかなければいけないと考えています」(自民・小林政調会長)。クマ対策の初会合には、環境省や農水省のほか、警察庁、防衛省などの幹部が出席しました。小林政調会長は「ハンターの人材確保が喫緊の課題だ」と指摘し、政府に対し、猟友会と連携して増員をはかるよう求めました。また、捕獲手当の増額や箱罠やクマスプレーなどへの財政的な支援も要請しました。自民党は今後、森林や河川の管理など中長期的な対応策もまとめ、政府に提言する方針です。
(学校でクマ出没相次ぐ、文部科学省「対策マニュアル」通知へ)
29日、各地の学校でクマの出没が相次ぎました。高校の屋内練習場でもクマが出没。別の小学校でも目撃され、注意が呼びかけられています。なぜ学校にクマが頻繁に出没するのでしょうか。岩手大学の山内准教授は、学校は緑などが多く絶好の“隠れ場”と指摘しています。もし学校近くでクマを目撃した場合、現場を封鎖し、明るいうちに下校するのが大切だといいます。クマ被害が相次ぐなか、文部科学省は早ければ今月中にもクマへの対応策を『危機管理マニュアル』に盛り込むよう促す通知を出す方針を明らかにしました。クマが多く生息する地域で実践されている対策として、「学校のゴミ集積所に鍵をする」や「クマの足跡を見たらその場を離れる」といった事例とともに、対策や登下校時の留意点を示す予定です。
(陸自隊員、地元猟友会と県職員からクマ対策学ぶ:秋田)
陸上自衛隊秋田駐屯地(秋田市)で30日、自衛隊員約130人が地元猟友会と秋田県職員から、クマの生態や箱わなの仕組みなどについて説明を受けた。クマに遭遇することも想定し、撃退用スプレーの使い方や防御姿勢の取り方も学んだ。陸自は同県からのクマ捕獲への協力要請を受け、具体的な支援内容について県と協議している。自衛隊法などで銃の使用は厳格に規制されているため、陸自の活動は箱わなの運搬や設置といった側面からの支援になる見通しだ。同法などには有害鳥獣駆除に関する明確な規定はなく、陸自は「訓練」の一環として活動する方針。
(クマ、麻酔で初の緊急銃猟:新潟)
31日午前10時20分ごろ、新潟県阿賀野市新保の建設会社で「クマが会社の建物内に入って閉じこもった」と社員が阿賀野署に通報した。クマは建物にとどまり、市によると同日午後、麻酔銃による緊急銃猟で捕獲された。環境省によると、麻酔銃による緊急銃猟は全国初。市や署によると、別の階にいた社員5人は全員逃げ、けがはなかった。クマは体長約50センチ。倉庫兼社屋に侵入した。午後3時20分ごろ、猟友会のメンバーが麻酔銃を2発撃ち、どちらも命中し倒れたところをネットで捕獲。クマは死んだ。現場は磐越自動車道の安田ICから約400mの住宅や畑が点在する地域。近くに阿賀野川が流れている。
(猟友会に出動要請も拒否、小中学校は休校に:北海道)
2025年10月30日午後7時ごろ、積丹町美国町の美国小学校の前で、クマの目撃情報がありました。警察によりますと、付近を車で走行中だったドライバーから「小学校の校門前にクマ2頭が居座っている」と通報があったということです。クマの体長は2頭ともに1メートルほどで、警察官が駆け付けましたが、クマの姿はなく、その後の調査でも痕跡は確認されていません。警察によりますと、美国小学校と近くにある美国中学校は31日休校となったということです。積丹町は、今回の目撃を受けて30日午後7時半に猟友会に出動要請をしましたが、猟友会は要請を拒否したということです。町によりますと、町議会の副議長と猟友会がトラブルになっていて、猟友会が出動を拒否する事態となっているということです。
(渦中の副議長が激白「僕は悪くない」:北海道)猟友会の出動拒否が続く積丹町。積丹町議会 海田一時副議長Q.猟友会には謝罪しないですか?「しない」。Q.なぜしないのですか?「僕は悪くない」。渦中の積丹町議会・海田一時副議長。きょう(30日)午後、HTBの取材に応じました。海田副議長の自宅近くで体重284キロのクマが捕獲されたのは、先月27日。このクマの駆除をめぐり、地元の猟友会と副議長がトラブルに発展となりました。関係者によりますと、到着した猟友会のハンターが、現場にいた副議長に声を掛けたといいます。「誰ですか」。副議長と面識のなかったハンター。これに対し。「誰にモノを言ってるか」。現場にはクマの駆除や運び出しのため、10人ほどのハンターが集まり、副議長に安全のため現場から離れるよう促します。しかし、副議長は応じず、このように話したといいます。「こんなに人数が必要なのか。金もらえるからだろ。俺にそんなことするなら駆除もさせないようにするし、議会で予算も減らすからな。辞めさせてやる」。このトラブルの後、一部のハンターから「駆除をやりたくない」という声があがったことから、猟友会は町からの出動要請に応じないことを決めました。当時の状況についてきょう(30日)、副議長は。積丹町議会 海田一時副議長「(ハンターが)2発撃った。こんなに人いないといけないのかと言ったら、(クマを)出してみたらと言ってきた。撃ったクマを、枠の中から出してみなさいって。それでとんでもないことを言うんだと、俺ハンターでもなんでもないって。ハンターじゃないでしょ。生きてるかも死んでるかもわからないものを出せっていうのもおかしいんじゃない」。Q.「辞めさせてやる」とか「予算減らす」とか言った?「議会で言っただけで、それをどうやって。偏向報道だ」。Q.言った?言ってない?「議会ですよって言ったの俺。それは1頭いくらで獲ってるから、そういうふうにしてくださいっていうのをお願いしているだけで」。Q.その場では言ってない?「ノー。それだけ言って通る?俺予算減らしてやるとか言って通ります?簡単に。議会ですよ。多数決ですよ」。Q.「辞めさせる」とかは?「何も何も何も」。クマが出没してもハンターが来てくれない状況に陥った積丹町。そんな中。須藤真之介記者「クマは、積丹町内にある美国小学校近くの山の斜面で目撃されました」。きのう(29日)午前8時前、美国小学校からおよそ200メートルの場所で、何かを食べている子グマ1頭が目撃されました。これまで学校近くでクマが出没した場合には、町から猟友会にパトロールを要請していたといいますが、きのう(29日)は町職員だけで現場の見回りが行われました。積丹町内では猟友会が出動拒否を決めた先月28日以降、クマの目撃や痕跡の情報が少なくとも9件寄せられています。積丹町民「気持ちは不安、ハンターが出動しないなら。警察のピストルでは対応できない」。猟友会は町に対し、海田副議長の謝罪と駆除現場への第三者の立ち入りを禁止するよう求めています。副議長に謝罪の意思はあるのでしょうか。積丹町議会 海田一時副議長Q.猟友会には謝罪しないですか?「しない」。Q.なぜしないのですか?「僕は悪くない。積丹町で方針を誰が決めるかわからないが、そういう人たちで町民を守るって言えばそれで決まるんです」。「謝罪しない」と断言した海田副議長。問題解決の兆しは見えず、町民の不安な日々が続きます。
(地元猟友会への“パワハラ疑惑”で役場がパンク状態:北海道)
北海道、東北地方を中心に深刻化しているクマ被害。10月30日にはクマ被害対策に関する関係閣僚会議が初めて開かれ、秋田県の要請に応じて自衛隊が派遣されるなど政府も本格的な対応に乗り出している。そんななか北海道・積丹町(しゃこたんちょう)では、町議会の海田一時副議長(74)の地元猟友会に対する“パワハラ疑惑”によって、クマの駆除が難航しているというのだ。この件を最初に報じた「HTB北海道ニュース」によれば、9月27日に海田氏の自宅近くで体重284キロのクマが捕獲され、地元猟友会のハンターが出動。現場にはクマの駆除や運び出しのため、10人あまりのハンターが駆けつけたという。だがその際に、海田氏と面識のないハンターが、海田氏に「誰ですか」と声をかけたところ、海田氏が「誰にモノを言ってるか」と反発。ハンターが安全確保のため現場を離れるように促したところ、トラブルに発展したようだ。同メディアの報道では、関係者の証言として海田氏は、「こんなに人数が必要なのか。金貰えるからだろ。俺にそんなことするなら駆除もさせないようにするし、議会で予算も減らすからな。辞めさせてやる」と発言したと伝えられている。しかし、海田氏本人は同メディアの取材に「『辞めさせてやる』とは言っていない」「僕は悪くない」などと主張し、猟友会への謝罪を拒否。対する猟友会では、海田氏から文句を言われたことで意欲を削がれたハンターもおり、町からの出動要請に応じていない状況だという。全国的にも高い関心が寄せられている“クマ問題”。海田氏と猟友会のトラブルは瞬く間にネットやSNSでも注目を集め、命がけでクマの駆除を行うハンターに盾突くような態度をとった海田氏を批判する声が相次ぐ事態に。さらに日を追うごとに騒動は過熱し、海田氏の個人情報を特定する動きまで出てきている。そこで本誌は31日、積丹町役場にトラブルの進捗状況などについて話を聞いた(以下カッコ内は、担当者)。まず現時点では、海田氏と猟友会の間で膠着状態が続いたままだといい、担当者は「報道にあるとおり、“言った・言っていない”という風に互いの主張にかなり食い違いが生じています。副議長が謝罪を拒否しているといった報道もあることから、事案についての解決が難しい状況です」と説明。また、双方のやりとりの事実関係を尋ねると、「両者に聞き取りを行っていますが、映像や音声が残っているわけではないので、正確な情報が把握できていない」とのことだった。町からは双方にどのような働きかけを行っているかの質問には、「(クマの駆除は)町民の安全を守っていただくことが本来の目的でありますので、猟友会でもそういった理由で任務を受けていただいております。ですので、町民の安全を守ることを優先して通常の活動体制に戻っていただけないかという趣旨の働きかけや協議を続けている最中です」との説明があった。いっぽう、全国的にも海田氏と猟友会のトラブルが知れ渡ったことで、役場で働く職員たちの負担が増しているという。役場には苦情の電話が殺到しているといい、「かなり数えきれないぐらい苦情やご意見が寄せられています」とのこと。あまりの多さに件数を把握することもできていないようで、担当者は「常に(苦情の電話が)かかってきている状況」と語っていた。また、主な苦情内容としては、「副議長に対して『姿勢を正せ』『謝れ』といったご意見だけでなく、ハンターに対して『内容はともあれ、町民が困っているから活動再開してあげてほしい』とのご意見もあります。また町に対しても、『町の方で動いて収束に向かう方法を早急にとってください』と求めるご意見も寄せられております」とのことだった。そうした状況のなか、電話対応に追われる職員が残業することも少なくないようだ。担当者は、「苦情の電話対応に時間がとられてしまい、平常業務ができない部分はかなりあります。その分をとり戻すため、閉庁時間以降に対応せざるを得ない状況もあります」と明かしていた。「海田氏は報じられている発言内容を一部否定していますが、猟友会を怒らせてしまったことは事実でしょう。積丹町では10月に入ってからクマの目撃・痕跡情報が10件報告されており(30日時点)、町民の間で不安が増しています。北海道では秋田県のように自衛隊への協力要請はいまのところ検討されておらず、猟友会に頼らざるを得ない状況のようです。人身被害が起きてしまってからでは遅いので、一刻も早く海田氏と猟友会の間でトラブルが解決されることが求められています」(全国紙社会部記者)「謝らない」と断言していた海田氏だが、町民の命を守るために考えを転換させることはあるだろうか。
(クマにガバメントハンターは有効か、識者「現制度では期待できない」)
全国で相次ぐクマ被害を受けて、政府は30日、関係閣僚会議を開いた。会議では、対策を担うガバメントハンター(公務員ハンター)も議題となった。政府は雇用に関する補助などを打ち出したが、野生動物の管理や狩猟制度に詳しい岐阜大学の鈴木正嗣教授は、現在の制度では活躍を期待できないという。現在、市街地に出たクマに対処したり、増えすぎたシカやイノシシを減らしたりする際には、狩猟免許を持ち、自治体から委託を受けたハンターが出動することが多い。ただ、狩猟免許制度はもともと、趣味での狩猟をする際、銃やわなを安全、適法に使うためのものだ。自身も狩猟免許を持つ鈴木さんは狩猟免許制度について、①野生動物の保護・管理など、公的な鳥獣業務に関わる知識がわずかしか問われない②免許取得後の公的なトレーニングや考査が体系立てられておらず、地域の先輩ハンターの経験則による指導になっている、と特徴を挙げる。「現状は個人の趣味の狩猟しか想定していない免許制度に後付けで公的な被害対策などをかぶせており、ハンターの技能を保証するシステムになっていない」。9月から市街地にクマなどが出没した際に自治体の判断で発砲する「緊急銃猟」が可能になったが、そのガイドラインでも、市街地での対応は誤射による人身事故のおそれなどがあることを明記。「非常に危険な行為を引き受けることを、現に実力を有するというのみで私人に依頼せざるを得ない状況は、本来是正するべきもの」とされている。
(危険なクマ駆除、民間ハンター任せは「異常」)
各地でクマによる被害が相次ぐなか、警察庁は、警察官によるライフルを使用したクマの駆除に乗りだす方針を決めた。主に猟友会のハンターが担ってきた駆除の現場に、警察官も加わる形に変わる。ハンター側からは歓迎の声が上がった。「これまでずっと訴えてきたことだ」。北海道猟友会の堀江篤会長は、警察によるクマの駆除についてそう期待する。猟友会は、狩猟免許を所持する狩猟者(ハンター)による趣味の団体だ。全国組織の大日本猟友会だけでなく、各都道府県や市町村にもある。自治体などから有害鳥獣の駆除依頼を受けた場合、駆除したハンターには一定の料金が支払われる。しかし、実働時間や経費などを踏まえると、「ボランティア同然」の例も少なくない。報酬も十分とは言えず、自分がクマに襲われる危険もある。それでも駆除に協力してきたのは、地域住民の安全を守るという思いからだという。堀江会長は「今後どのように進むのかまだわからないが、警察がクマを仕留めるノウハウを身につけるには時間もかかるだろう。体制が整うまで協力したい」と話す。
(クマ被害「爆撃のようなものでまさに戦争」、「専門部隊を」緊急銃猟も限界:秋田)
秋田県の前知事が取材に応じ、相次ぐクマ被害について「歩いていたら爆撃を受けるようなもの」と表現したうえで、今の「緊急銃猟」制度だけでは対応できないと苦言を呈しました。危機的な状況に陥っているのが秋田県です。今年1月から49件の被害が報告されていますが、そのうち31件が今月に入ってからのものです。秋田県 佐竹敬久知事(当時)「(Q.クマ駆除で行き過ぎた電話にはどう対処?)はい、すぐ切ります、ガチャン」(2023年10月)。今年4月まで県のクマ対策を仕切っていた秋田県の佐竹前知事は、現在の状況をこう表現します。「普通に道路を歩いていて、爆撃受けるようなもの。クマは単純に兵器。まさに戦争だよ。街の中も、駅からすぐの繁華街にも出てる」。秋田県が公開しているツキノワグマの出没マップ「クマダス」。赤いマークが目撃情報ですが、1カ月間で県全体を覆うようになっています。29日、秋田市だけでも100件以上の目撃情報が寄せられていました。29日は福井県内で初めて自治体の判断で発砲する緊急銃猟が行われ、クマ2頭が駆除されました。佐竹氏は緊急銃猟の現在の制度には限界があり、クマ対策専用の部隊が必要だと訴えます。「猟友会も人数少ない。猟友会でなくて警察が業務としてSATのような部隊を作って、駆除とかクマに対する対応をするのが本当。今のところ警察官は拳銃ではどうしようもない。自衛隊もクマを撃つような体制ない。(今は)制度的にも技術的にもできない。警察官の中でそういう部隊を作って業務としてやることが必要」。政府も動き出しました。クマによる被害が極めて深刻だとして、連絡会議に防衛省などを追加し閣僚会議に格上げします。30日、初会合を行う予定です。
(クマ銃猟に抗議して農産物「不売運動」呼びかけ、愛護家の投稿に県人会は反発「秋田産を応援して」)
北海道や東北各県でクマが人を襲うケースが続発し、緊急銃猟が行われる中で、一部の動物愛好家から、「親子グマを射殺するのはありえない」として秋田県などの農産物について「不買運動」ならぬ「不売運動」が呼びかけられ、波紋が広がっている。この投稿は、その後削除されたが、関係者からは困惑する声が上がっている。ある秋田県人会は、「心のない方たちに負けません」として、X上で県産を応援してほしいと呼びかけている。秋田県横手市内では2025年10月22日、親子グマ3頭が横手川の河川敷に居座っていたとして、市がハンターらの協力で緊急銃猟を行って駆除した。全国では4例目だが、秋田では初のケースだった。3頭は、市街地に出没し、近くの横手南小学校が緊急休校に追い込まれたほどだ。ところが、県内在住という投稿者の動物愛好家は、この殺処分はありえないと反発し、青森、岩手両県でも射殺を容認する意見が多くて怖いと漏らし、子どもたちのためにも、子育て中の母親たちが団結して、3県で農産物「不売運動」を立ち上げようと呼びかけた。このSNS投稿は、波紋を広げ、29日にはX上で転載されて、人がクマに殺されるのを容認しているのかと指摘された。ネット上で批判が相次いでいることを受けたためか、愛好家のSNSアカウントは、一時非公開になった。この愛好家は、クマを殺処分するのは、あまりにもかわいそうだとし、投稿で行政当局やハンターなどを罵倒し続けていた。代替案として、クマが出る時期は農作業や散歩をむやみにしない、学校はネットで授業すればいい、などと独自の主張を展開していた。秋田県知事が自衛隊の派遣を要請したことに対しても、疑問視していた。愛好家による「不売運動」が取り沙汰されると、ネット上では、過激な主張に戸惑う声が相次いだ。クマへの気持ちに共感する声も一部であったが、「人が怪我したり亡くなってるのに」「住民の生命・財産・生活の方が優先です」「人間の脅威なんだから即処分が妥当」といった意見が多くを占めている。今回の愛護家投稿に対し、秋田県の関係者からは、戸惑う声が聞かれた。宇佐見康人県議(自民党)は10月29日、「どうせなら東北で作られた電気なども使わないでほしいです」とXで切り出し、こうした投稿は、状況に対する想像力が乏しく口先だけに終わっていると指摘した。秋田での居酒屋探訪などを呼びかけている秋田県人会の1つ「あきたいざたん」は同日、「熊騒動の中、秋田県産品の不買を促したり、秋田の価値を下げるような投稿があるようです」とXへの投稿で明かし、こう訴えた。「私たちはそのような心のない方たちに負けません。秋田から仕入れている秋田アンテナショップや秋田居酒屋飲食店を応援して盛り上げよう!! 」。この投稿は、3000件以上の「いいね」が集まり、苦境にあえぐ秋田を応援しようとの賛同の声が相次いでいる。愛護家のような抗議はどのくらいあるのかについて、秋田県の自然保護課にJ-CASTニュースが取材しようとしたが、クマ対策に追われていて取材対応は難しいとのことだった。農産物販売を進める県の農業経済課は、「不売運動」のような情報は入っていないと取材に説明し、「何もコメントできません」と答えた。今回投稿した愛護家は、その後SNSを公開に戻し、農産物の不買運動ではなく、「不売運動」だったと主張した。自身に対し、秋田から出て行くようにとの声が寄せられているとし、クマを助けたかったのが目的で、投稿で傷付く人がいたとしたら謝罪したいと述べた。今後は、クマについての投稿は控えたいという。
(クマ捕獲1頭1万円、緊急対策で「公務員ハンター」募集:秋田)
相次ぐクマ被害の防止に向け、秋田市は30日までに、クマを捕獲したハンターに1頭当たり1万円の報奨金を支給することなどを盛り込んだ緊急対策を発表した。市によると、現場に出動する猟友会員の報酬は現行の4000円から8000円へと倍増。報奨金1万円については、支給は今年限りで狩猟期間の11月1日~来年2月15日までの捕獲が対象となる。個体数の減少を目的とし、全国のハンターにも協力を呼びかける。そのほか、箱わなの増設などの措置も発表した。秋田市では市街地でクマの目撃が相次いでいる。今月27日には農作業中の女性(81)が襲われ、死亡するなど計3人の被害が出ている。秋田市の沼谷純市長(52)は「事態を災害レベルと受け止め、市民の安全安心を最優先に、この危機的な状況を一日も早く収束させる」とコメント。クマ対策に市民の理解を求めた。同市は迅速かつ安定的な駆除のために「公務員ハンター」を募集・採用することも明らかにした。採用用件は、有害鳥獣駆除に必要な免許の有資格者となっている。公務員ハンターは、長野県小諸市が「ガバメントハンター」として2011年に1人を採用したのが最初。現在は2人いる。同市農林課でわな猟のガバメントハンターとして勤務する佐藤勝弥さん(28)は「猟友会などのハンターさんは、町中で猟銃を撃つ経験がない。行政のなかで判断できる調整役の方がいい」と利点を語った。2025年度のクマによる死者は全国で過去最多の12人。クマの被害対策として自衛隊派遣を受ける秋田県では30日、担当する職員をこれまでの11人に加え、26人増員する人事を発令した。陸上自衛隊秋田駐屯地(秋田市)では同日、隊員約130人と秋田県、地元猟友会による訓練があり、県要望の自衛隊派遣に向け、クマの特性や箱わなの輸送方法を共有した。
(「クマ対策員」を特別職の非常勤職員に任用:長野)
クマの出没が各地で相次ぐ中、長野県は被害防止などの対策を強化するため、専門家8人を31日付けで特別職の非常勤職員に任用しました。8人は「クマ対策員」として人身被害が発生したり、危険が切迫したりしている現場で調査を行うほか、対策について県職員を指導します。県によりますと、クマ対策員にはこれまでも同様の役割を依頼してきましたが、業務に伴う事故への補償などを考慮し、非常勤職員にしたということです。任期は今年度末までです。
(緊急銃猟制度で出動したハンターに“3万円の報酬”:岐阜)
市街地でも相次ぐクマの出没。岐阜県下呂市は、「緊急銃猟制度」で出動したハンターに3万円の報酬を支払うことを決めました。緊急銃猟は、一定の条件を満たせば市町村の判断で市街地でもクマに発砲できる制度で、2025年9月に導入されて以降、岐阜県ではまだ実績はありません。こうした中、下呂市は緊急銃猟で出動した猟友会の会員に一律2万円、その中で銃を扱うハンターには、発砲の有無に関わらずさらに1万円の報酬を支払うことを決めたということです。2025年度、下呂市に寄せられたクマの目撃件数は、昨年度1年間を上回る43件に上り、下呂市は速やかな報酬制度の導入のため、議会の招集を伴わない専決処分で条例を一部改正しました。
(クマ対策、県が強化方針:群馬)
県内でもクマによる人身被害が相次いでいることを受け、県は30日、人里への出没対策や市町村への支援を強化する方針を発表した。狩猟免許の取得に向けた機運醸成のため、山本知事も免許を取得する意向を明らかにした。今年度のクマによる負傷者は、29日までに10人に上り、県が把握する2009年度以降で最多を更新している。県の対策はソフト、ハード両面で行う。ソフト面では、人とクマのすみ分けが目的の「ゾーニング管理」の導入と県庁の体制強化、被害が相次ぐ北毛地域での住民向け緊急研修会が柱だ。ゾーニングは、クマの生息地域と人の生活圏、その間の緩衝地域の三つに区分する方法で、県内1地域で導入・検証する。県庁の体制強化は、狩猟免許・経験を持つ職員1人を捕獲対策専門職員として自然環境課に配置し、市町村への助言・指導を行う。知事と職員による狩猟免許取得チームも設置し、来年度中の取得を目指す。銃猟やわな猟の免許を想定している。知事は定例記者会見で、「必要な時に現場に立てる知事になれるよう頑張りたい」と話した。ハード面では、荒廃した里山の整備と、クマの移動経路となる可能性がある河川林の伐採に取り組む。里山整備では、やぶの刈り払いの経費を市町村に支援する。河川林の伐採は、北毛地域を中心に進める。関連経費は、県議会第3回後期定例会に提出する補正予算案に計上し、冬眠明けのクマの活動が活発化する春頃までの実施を目指す。
(クマ目撃件数過去最多更新、初の「人身被害防止強化期間」に:宮城)
宮城県内のツキノワグマの目撃件数が29日、1666件に達し、年度別での過去最多件数を更新したことが、県への取材で分かった。相次ぐクマの出没と人身被害を受け、県は7月末から続く「クマ出没警報」を11月末まで延長するとともに、初の「ツキノワグマ人身被害防止強化期間」(~11月末)を設定し、注意喚起している。県によると、4月1日からの目撃件数は1666件で、過去最多だった2016年度の1642件を上回った。県内の人身被害は4件確認されており、死亡事案もあった。目撃件数も急増しており、10月21、22日には仙台市中心部の大町西公園駅付近(同市青葉区)にも出没した。県の担当者は「山にエサとなるブナの実などが少ないことで、クマがエサを求めて行動範囲を広げており、人身被害のリスクが非常に高まっている」と話す。県は目撃情報に注意するとともに、クマが潜む可能性がある河川敷の藪(やぶ)に近づかないよう呼びかけている。山に入る時にはリスクがあることや、クマのエサとなるようなものの管理に気をつけるよう促している。朝夕に出没する傾向にあることから、この時間帯には行動を避けたり、ゴミを放置したりしないなどの対策を続けることも訴えている。クマの目撃件数の急増などを受け、県内では大崎市、色麻町、加美町が独自に「非常事態宣言」を発出している。
(専門家派遣、熊好物の果樹伐採を:福島)
「熊を寄せ付けるので切った方がいい」。30日に福島市在庭坂地区で実施した県の専門家緊急派遣事業では、委託を受けた合同会社「東北野生動物保護管理センター」(仙台市)の今野文治主席研究員が、熊を引き寄せる柿や栗などの「誘引木」の伐採を地元住民に推奨した。持ち主らと協議した上で今後、県が伐採を支援する方針。今野研究員によると、たわわに実った柿は熊の好物。落果した後は熊にとって「楽に食べられる」餌になる。「誘引木」のうち、収穫予定のない木や集落に近い木などを選び、早急に伐採すべき木として印を付けていった。ごみ捨て場も見て回った。生ごみなどは回収日に出すように住民間で徹底するなど注意点を確認した。花火による追い払い方法の指導もした。「熊は渋い柿を食べない」「猿のいる場所に熊は出てこない」といった口伝は、科学的根拠に基づかない情報だとして住民の認識を改めながら歩みを進めた。市によると、300件を超える市内での熊目撃件数のうち、在庭坂地区周辺が40件ほどを占める。30日も住宅から数十メートルの木の下で熊のふんが見つかった。参加した庭塚北部区長の阿部良重さん(67)は在庭坂では住民の高齢化が進み、実がなっても収穫されない木が多いと指摘する。その上で「外に出るのも怖いと感じる住民がいる。収穫も伐採も難しい場合があり、県が支援してくれるのはありがたい」と述べた。福島大食農学類の望月翔太准教授(野生動物管理学)によると、熊は人間と遭遇した場合、顔周辺を狙ってくる傾向がある。かがんでうずくまり、両手を頭から首にかけて抱え込む防御姿勢を取るよう呼びかけている。望月氏は「人の熊慣れ」が原因で、山林に入って負傷するケースが多いと指摘。望月氏は大きなけがを負わないために「入山する前に爆竹を鳴らしたり、火薬銃を持参したりするなどの対策を徹底してほしい」と警鐘を鳴らしている。
(止まらぬクマの出没と人的被害、広がる恐怖・社会機能はマヒ)
クマ出没による被害が全国的に広がる中、学校やスーパー、民家など人口密集エリアの施設や敷地内に入り込み、人に危害を加えたり、居座ったりする深刻な事案が相次いでいる。人的被害だけでなく、社会生活がかき乱され、機能不全を引き起こしている。岩手大学(盛岡市)では、クマ出没の影響で28日午後と29日の終日、全学部の講義を休講にした。構内でクマ出没が確認された後、行方が分からなくなったためだ。現場は盛岡駅から北に約1キロの市街地。市や大学によると28日正午過ぎ、学生から「キャンパスにクマがいる」と目撃情報が寄せられた。市職員や警察が現場に駆け付けると、すでにクマの姿は見当たらなかったが、様子を撮影していた住民の映像などにより体長1メートル程度のツキノワグマと判明した。周辺ではその後、クマが逃げ去ったという目撃情報がなく、依然として大学構内にとどまっている可能性があることから、翌29日も終日休講とせざるを得なかった。休講期間中、大学関係者は「もう潜んでいないと考えられる状況にならなければ講義の再開は難しい」と苦渋の心境をにじませた。クマは、29日朝にも再び構内で姿が確認された。ただその後、警察や行政はクマが現地を離れたと判断したため、講義は翌30日から再開した。周辺では、直前の27日夜から28日にかけても出没騒ぎがあったばかりだった。27日夜のケースでは、市街地にある河川敷で親子とみられるクマ2頭が目撃され、その後、近くの民家の木に登るなどした。28日になり、そのうち子グマとみられる個体が岩手銀行本店の地下駐車場に入り込んだ。同行は市中心部の官庁街にあり、岩手大からも2キロほどの近距離にある。子グマは約3時間半にわたり駐車場に居座ったが、麻酔の吹き矢で眠らせられて捕獲された。市によると、相次ぐクマの出没に、住民らからは「怖い」「情報をもっと手厚くしてほしい」といった問い合わせや要望が相次いだという。秋田県でも、秋田大学(秋田市)に25日、敷地内にクマがいるとの目撃情報が寄せられ、大学や行政、警察が対応に追われた。大学によると、タクシー運転手が大学正門からクマが侵入するのを目撃して通報。その後、クマがフェンスを越えるなどして学内外を出入りしているのが確認された。休日だったが、構内にはサークル活動の学生や、業務につく職員がいたため、すべての活動を中止させ、校内放送で1時間おきに注意を呼び掛けるなどした。大学では、県による「ツキノワグマ出没警報期間」の11月30日まで、遅い時間の授業のオンライン化や課外活動を中止するなどの対応を取っているという。また、大学周辺ではこれに先立つ10月15日にもクマが出没。会社員の60代男性が襲われ、顔や腕を負傷して病院に搬送されている。一帯は秋田駅から北東に約1・5キロの住宅街で、クマ出没の懸念が周辺住民らを脅かしている。北関東でも発生した。群馬県沼田市で7日、体長1・4メートルほどのクマの成獣1頭がスーパー「フレッセイ沼田恩田店」に侵入し、客らを相次ぎ襲った。午後7時半ごろ、目撃した人が「店内の客に覆いかぶさっている」と110番通報。客2人が負傷し、そのうち、両腕をひっかかれるなどした70代男性が病院に搬送された。クマはその後、店外に逃げた。このスーパーは住宅やホームセンターなどの店舗が点在する場所に立地している。31日午前には、新潟県阿賀野市で建設会社の社屋兼倉庫にクマが侵入し、倉庫内部にとどまり、5人の社員が避難している。環境省によると、今年度のクマ被害による死亡事例は過去最多の12件(30日現在)。そのなかには人の生活圏や人口の集中するエリアで起きた事案も複数ある。27日の岩手県一関市の事例では、67歳男性が自宅の敷地内で襲われ、同県北上市では16日、露天風呂を清掃中の60歳男性が襲われた。7月4日には同市の民家に侵入したクマが、住民の81歳女性を襲撃。いずれの被害者も亡くなった。また、同月12日、北海道福島町では新聞配達中の52歳男性が襲われて亡くなっている。
(小中学校に保護者の送迎を求める緊急通知、臨時休校する学校も:秋田)
秋田県内でクマによる人身被害や目撃情報が相次いでいることを受けて、21市町村の教育委員会が小中学校に対し、保護者による送迎を求めるよう伝えたことが28日、県教委への取材でわかった。県教委は15~24日、全25市町村教委を対象に、過去に地域にクマが出た際、どんな対応を学校に求めたかなどを尋ねるアンケート調査を実施した。県教委による同調査の実施は初めてという。調査結果によると、学校側に求めた対応として「部活動や校外学習の制限」をしたのが20市町村、「教職員が引率して集団下校」をしたのが6市町村だった。関係機関との連携については「警察に見回りなどの協力を依頼」をしたのが16市町村、「通学路やスクールバスの停留所などで市町村職員による見回り」をしたのは11市町村に上った。「クマの出没状況の共有」は全市町村で行っていた。この他の対応では、「学童保育施設まで児童をスクールバスで送迎」(横手市、鹿角市)、「スクールバスの経路を変更し、自宅近くで下ろす」(北秋田市)などがあった。県教委は、クマの人身被害が相次いでいることや、2023年10月に中高生がクマの被害に遭ったことから、今月15日に全市町村教委に対し、屋外活動の制限などを求める緊急の通知を送付した。県教委保健体育課の菊池勇拓チームリーダーは「各市町村の危機意識が高まっている。市町村教委で対応できないことがこれから出てきた際は、県教委として支援することを検討したい」と話した。26日に警察官がクマを目撃し、立ち入りが規制されている秋田市中心部の千秋公園付近では、28日もクマの目撃が相次ぎ、付近の学校では臨時休校とするなどの措置を取った。秋田中央署によると、午前4時50分頃、公園近くの同市千秋矢留町の民家で住人の女性が敷地内にいるクマを目撃。公園北側の市立明徳小では午後0時20分頃、同小の教諭が、敷地内のグラウンドでフェンスの上を歩くクマを目撃した。クマは公園方向に立ち去ったという。同署によると、この日は公園付近で体長約1メートルのクマが複数回目撃されているが、同じ個体かどうかは分かっていないという。明徳小はこの日から31日まで安全確保のため休校とした。このほか、公園に近い市立保戸野小や市立秋田東中は、児童・生徒の送迎を保護者へ依頼した。保戸野小の小野寺純也教頭は「学校の敷地内での目撃など、危険性が増すことがあれば休校も必要になる」と危機感をあらわにした。
(クマ出没マップで見る住宅街や学校との近さ、今年度の目撃状況は?)
クマによる死者が過去最悪を記録し、人身被害も最悪ペースで増えている今年度、クマはどんな場所で目撃されたり、痕跡を残したりしているのか。都府県がまとめた出没データを「クマ出没マップ」にまとめた。マップに掲載しているのは、クマが目撃されたり、フンや爪痕といった痕跡があったりした場所の位置。都や県などがまとめているデータを朝日新聞が集約した。ただ、岩手県は人身被害があった場所のみで、目撃や痕跡のデータは公表していない。出没があった地区は公表しているものの、緯度経度までは公表していない県もあり、そうした場合はデータなしとした。また、九州地方や千葉県、四国の一部にはクマは生息していないとされる。出没マップは、人口密度が高い「人口集中地区」や、小中学校から100メートル以内で出没があった場所を確認できるようにした。クマは、山間地から続く緑地や川沿いを伝って、人間の生活圏に近づいているとみられる。環境省によると、今年度の人身被害は、過去最多だった2023年度とほぼ同じペースで増加。特に死者数は過去最悪になった。月別でみると、例年、9~11月に多くの人身被害があり、23年度には10月だけで73人が被害に遭っていた。今年度も似たペースになっている。クマの出没数は東北地方が多く、今年度は過去5年間で最多ペースだ。ただ、東京都や関西地方でも出没は確認されており、市街地近くで目撃された例も増えている。
(クマ駆除の新制度《緊急銃猟》にハンター大激怒の理由:野田 洋人)
連日クマによる人的被害が全国で相次ぐ中、その抑止策として新たに運用が始まった制度がある。「緊急銃猟」制度だ。鳥獣保護管理法の改正により、今年9月から市街地や農地など人の生活圏にクマなどの野生動物が出没した場合、市町村長の判断の下、猟銃を用いて捕獲を行えるというもの。現在、各自治体では同制度のマニュアル策定、および緊急猟銃に協力してもらえる人員の確保に動いている。いざという時に、速やかに発砲許可を出すことで、駆除までの時間を短縮できるという触れ込みだが、実際はどうなのか。当事者である猟師たちに詳しく聞くと、意外にも冷ややかな声が返ってきた。あるひとりの猟師が語った、緊急銃猟制度に対する「本音」をお届けする。国内でも緊急銃猟制度を利用した駆除がようやく始まりました。この新しい制度でどのような効果が得られるのかなど、現段階では誰にも判断はつかないと思います。制度が変わっても現場でやることは同じです。通報を元に出没した個体を確認し、危険が及ぶ可能性があればハンターを呼んで駆除する。それだけです。緊急銃猟では役所の担当者が撃てる、撃てないなどの判断をするのですが、その場で決められず関係各所に電話して相談を仰ぐばかり。マニュアルなどが整備されていない中、どこでどう撃てば安全を確保できるのかなど彼らには判断できないので時間がかかるのはこれまでと同じです。ようやく発砲許可が出て、我々が撃つとしても、熊が移動して撃つことができなかったりすることもありますし、発砲後に安全確保に不備があるとして警察が問題視すれば猟銃を取り上げられてしまうことになります。長い時間とお金をかけて免許を維持してきたのに、皆のためだと出動した駆除で資格が失われる可能性がある。そんな馬鹿げたことに気持ちよく協力などできません。これまでと違い警察の許可なしに役所の判断で発砲許可を出せるということですが、実際には警察が現場で発砲許可を含めて実権を握ることになります。ですから、警察にとっては発砲の責任を自治体に押し付けることのできる使い勝手の良い制度なのだと考えています。私自身も地域に住む住民です。地域の安全を守ることができるのであれば喜んで協力をしたいです。しかし、役所も警察もいつの間にか住民たちもが、熊の駆除は猟友会の役目だと思っていることに抵抗があります。私たちは本業もあるし、単なる民間人であって、自分の趣味で鳥やウサギなどを撃っているだけの存在です。罠にかかった熊を殺すために許可を取ったわけではない。一方的な殺害は後味の悪い思いが残るだけです。そんなことをするために我々がいるのではありません。熊撃ちに関しては本場の東北であってもわずかな数の経験者しかいません。使い物になるのは会員50人に1人いるかいないかです。10年経験しないとライフルは持てませんし一人前のクマ撃ちになるためには実際の山での経験値というものが大きく関わってきます。危険だから山には行きたくないなどという会員がいることは憂慮すべき事態なのです。
(なぜ猟友会の“クマ駆除拒否”が頻発するのか:野田 洋人)
「熊を殺すために許可を取ったわけではない。一方的な殺害は後味の悪い思いが残るだけです。そんなことをするために我々がいるのではありません」。全国で相次ぐクマによる被害。行政、警察、そして地域住民たちが頼りにしているが猟友会による駆除だ。しかし、当の猟師たちの中には、その風潮に疑問を投げかける者も少なくない。今回、取材に応じてくれた猟師もそのひとりだ。熊の駆除の本来あるべき姿とはどういうものなのか、猟師の“生の言葉”から辿っていきたい。最近の会員の中には箱罠に入った熊を殺して、その数を誇ってるような質の悪い者もいます。そういう人は、私に言わせると熊撃ち猟師ではないです。箱罠に入った熊は目が血走り、口から泡を吹き出して檻を揺らして恐怖心から大暴れします。そんな熊を安全な場所から撃つことは心理的に非常に大きな抵抗があります。あまりに酷く、一方的でフェアではまるでない。それを嬉々として撃って、殺して、まるで自分の手柄のように吹聴している輩もいる。山の中で熊を追っている身からすると、そんなことをするために免許を取ったのではないと強く言いたいのです。駆除に関する私の中の結論としては、山の中に関しては猟友会が受け持ちますが、市街区域に出てきた熊に関しては警察なり自衛隊など国や行政に関わる連中が駆除をすべきだと考えています。発砲に関わる許可を出すことのできる立場の人間が撃てばいいのです。何かあった時だけ我々を都合よく利用するのだけはやめてもらいたい。そういう考えが透けているので全国で猟友会の理解を得るのが難しくなるのです。明らかに増えている熊に関しては、ただ撃って殺すだけではなく、どうして里に降りて来ているのか、その根本を考えるべきです。なぜ増えているのか、それは餌が豊富にあるからです。では今年は餌がないから出てきているのか。いや違う。以前も凶作はあったが、ここまで出てくることはなかった。山自体が熊の頭数増加を吸収できなくなったのです。山の力が弱って来ているのだと考えています。なんでそれが変化したのか。気候変動など色々なことが考えられるが、それは責任転化の発想だ。人が自力で対策出来ることを考えなくてはならない。私の考えでは山の管理が行き届いていないからだと思う。一度でも人の手の入った森はしっかり管理をしなくては荒れてしまう。東北三県は全国でも人工林の多いところです。それだけ人の手が入り、商売のために多くの開発が行われてきました。売れるとなれば自生していた広葉樹林を広く伐採して針葉樹を植えます。もちろん針葉樹には熊の餌になるものはありません。結果、広葉樹が減り続け、カネになる針葉樹が増えることとなりました。山の中に道路や細かな林道が通り、特にアクセスの良いエリアに人工林は集中します。熊の縄張りが産業のために圧迫されているのです。県知事も林業は県の看板産業ですから、その点は指摘してきませんでした。産業を潰すことになるからできないのであれば、せめて放置されている私有林の管理をしっかりと徹底したらいい。山は国有林と私有林に大きく分けられる。国有林はある程度は管理されている。だが私有林の方はバラバラだ。中には固定資産税を支払うばかりで自分の地所がどこなのかを知らない人も多い。世代が変わればその傾向はより強まる。放置され荒れた森林に、熊の餌になるような広葉樹を植樹すればいい。特に里に近い放置林は所有者を見つけ徹底的にやるべきだ。擬似的であっても時間がかかってもおカネがかかっても、本来の森の姿に近づけるしかないのです。里に住み着いてしまった熊については可哀そうだが駆除するしかない。山の中に帰ってもらえばいいという考えもあるのかもしれないが、里で育った熊が山で餌を取れますか? 縄張りの主にすぐに追いやられ、餌をとれず餓死するか、殺されてしまう。里に出てくる熊の総数を減らさない限り、被害は出続けることになる。人を襲った熊は一刻も早く駆除すべきです。それはもう絶対だ。
(「自衛隊で解決できるレベルじゃない」秋田県のベテラン猟師、怒りの指摘:野田 洋人)
自宅敷地に、通学路に、いつもの散歩道など、これまでいるはずの無い、来るはずがないと思われていた市街地にも次々と熊は姿を表す。いつ、どこで出没するのか、どれだけの死傷者が発生するのかなど想定できない事態はまさに新たな《災害》と呼ぶに相応しい。「里に出てくる熊は縄張りから追い出された弱い個体。雌や子熊が多いが、雄熊であっても争いに破れた熊です。箱罠にかかって駆除される熊はそういう弱い個体なのです」。取材に応じた秋田県のべテランの熊打ち猟師はこう話す。だが、弱い個体であったとしても、人間が“弱い”以上、やはり脅威になりうるのだ――。以下は、積極的に熊との関わりを持つ、猟友会の会員である猟師が克明に語ってくれた“実情”である。弱い個体であってもさらに弱い人間には脅威となります。大型の強い個体は餌の豊富な奥山の広い縄張りを独占していて、人の目に触れることは滅多にありません。足跡や木肌についた痕跡でしか判断できませんが、今もそのような大型の熊はいます。少し前の話になりますが私が奥山近くで遭遇した熊は、毛の色、首周りの筋肉のつき方、額が出っ張った顔つきもよく知られたツキノワグマとは明らかに違いました。同じ種なのかもしれないが別の生き物ですよ、あれは。そのような大型の熊は臆病というか、慎重な性質です。我々が銃を持って近づいても先に気がついてジッと動かずにやり過ごしてしまう。本来の熊の性質は無用な争いを好まない、そういうものなのです。凶作であることは先ほど述べましたが、奥山は凶作でも里に近い山中にあるトチやクルミ、クリには実が付いている場所もあります。過去にも凶作年はありましたが、奥山のナラやブナの実が駄目でもその下方に自生しているドングリは豊作になるなどバランスがとれていました。でも、今年は両方とも不作です。大型の強い個体は広い縄張りを持ち、そこで餌を確保できます。それ以外の個体は山の奥の方から順繰りに追い出され、山を下りて里近くに出てきてしまう。里にはゴミも畑の作物もあり、冬場でも物置には何かを貯蔵しているし犬の餌も置かれていたりする。山よりも楽に餌にありつくことが出来ます。そうなると里を餌場とする熊が住み着くことになり、そこで子を産み繁殖します。一度でも里に居着いた熊は決して山には戻っていきません。すでに秋田県内ではハイペースで駆除が進み、すでに1000頭を超えているということですが、とても足りてはいないと思う。いくらでも殺せば良いという意見なのではない。想定数より遥かに多くの熊が生息している実態を国が真剣に認識をして欲しいのです。専門家は電子チップを埋め込んで熊の行動半径を調べたり、生息数などの調査をしていますが実態とは大きく離れていても確認しようがありません。チップをつけられた熊は奥山に生息している大型の賢い熊ではありません。他の熊の縄張りに侵入できない行動半径のそれほど広くない弱い個体なのです。専門家がいくら知恵を絞っても奥山には近づけず、熊の正確な生息数すら導き出せないのです。私も研究者によく話をしますが、彼らは真面目で礼儀正しい。でも、想定の範囲内で事を理解しようとして私の意見を聞かないような気がする。熊は山に生息するものであって、環境次第でいくらでも順応していく。なぜ、増えたのか、どうしていけばいいのかなど建設的な意見を言う専門家は今のところ見当たらない。原因を正していかなければ熊の騒ぎは毎年起きますよ。そのことを専門家も国も見ないようにしているとしか思えないんだ。
(クマ大量出没でゴーストタウン化まっしぐら:野田 洋人)
全国で熊の人的被害が止まらない。目撃情報は日々更新され、熊による被害事例が例年にないペースで増加の一途を辿っている。10月15日時点での熊による今年の死亡者は全国で7名、怪我人を含めると被害者は100名を超えている。単なるニュースとして消化する都会の住民に比べ、日常生活において熊の存在を嫌でも意識せざるを得ない地域に住む住民にとっては、熊の目撃情報は無機質な情報ではなく、日々の生活に影響するダイレクトな恐怖などの感情を伴うものでもある。国内でも有数の熊の生息地を抱える秋田県。今月中旬にはJR秋田駅にほど近い秋田大学近くでも人的被害が報告され、県知事公舎付近でも建設中の住宅で熊の居座りが確認されている。熊の本来の生息域から離れた市街地でも目撃情報や被害情報が続々と報告されていることを受け、県知事は10月14日の記者会見で「県民の日常生活に支障をきたしており危機的かつ緊急事態だ」と、文字通り尋常では無い危機意識を見せた。しかし、肝心の対策は狩猟者増加の後押しや箱罠の設置を増やすことに終始しており、従来の対策の域を出てはいないようだ。「緊急銃猟」制度は開始されたが、発砲までのハードルが依然として高く、その効果は実感されていない。県や市の担当課は懸命に被害が出ないよう各所に働きかけてはいるが、その努力は日々報告される熊出没の現実には追い付いてはいない。きりたんぽ発祥の地として知られ、世界文化遺産にも登録された大湯環状列石を擁する秋田県東北部の鹿角市。この地は県内でも常に熊の脅威にさらされてきた地域でもある。近年は山域の開発とともに登山やキャンプ、釣り人など多くのレジャー客を集める地域としても名を知られている。一方で熊による人的被害にも事欠かない。'24年5月にタケノコ採りの最中に熊に襲われた男性の遺体を搬送する際に警察官2名が襲撃されたことはまだ記憶に新しい。'12年には冬季閉鎖中の八幡平熊牧場からヒグマ6頭が逃げ出し従業員2名が襲われ死亡する痛ましい事件が発生している。'16年には「スーパーK」と呼ばれた熊により4人の犠牲者が出た。1頭は駆除されたものの同地区では複数の人的被害が続いた。人に危害を加えるスーパーKは1頭だけでない。今も山中に生存し繁殖を繰り返しているのだ。続出する熊出没情報を受けて県知事が口にした「日常生活に支障を来たす危機的な状況」とはどんなものなのか、熊の出没の多い鹿角市大湯地区の現状をレポートする。本取材は学者や専門家ではなく地域に居住する人を対象とした。机上の研究ではなく肌感覚で熊の存在をどのように捉えているのかを中心に聞き取りを行った。十和田湖への観光の玄関口に位置する大湯温泉は開湯800年の歴史を持つ県内有数の温泉地である。周囲は山々に囲まれ、大湯川と並行するように国道103号線が通っている。ここは歴史ある温泉地として華美ではなく落ち着いた風情を求める多くの観光客を集めてきた。過去、何度か立ち寄ったことはあるが今回訪ねると人の気配があまりしないことに気がついた。国道には車は走っているものの集落内には人の姿が見えない。本来であれば散歩する住民や食料の買い出しに出る住民の姿があるはずだ。ところが下校時間帯になっても子供の姿も確認できない。緑豊かな公園に向かうも誰一人として姿は見えなかった。まるでゴーストタウンのような光景だが、大袈裟ではなく熊の出没に怯える地域では現実に起きている状況でもあるのだ。コンビニエンスストアの駐車場で地元の主婦に声をかけた。高校生の子供を持つ主婦はこう話してくれた。「ほとんど毎日のように熊を見たという話を耳にします。親同士のSNSの情報の方が早いですし、秋田県のクマダスよりも正確です。登下校の時間帯は熊のよく出る時間帯と重なっています。これまでは子供に自転車を使わせていましたが、今は無理をしてでも車で送り迎えをしています。週3回は学習塾の送り迎えもしなければならず夫と交代でなんとかやりくりしています。先月バス停で待っていた同級生が熊に襲われそうになりました。今の熊は昼間でも出てくるのですよ。栗がそろそろ終わるので少しは熊の出没が減ると思うのですが、冬眠前の時期です決して油断はできないのです」。不安げな表情で答えてくれた。ちなみにその店舗近くでも熊は何度も目撃されているという。
(「どこにでもクマがいる日常を理解できますか」秋田県民の憂鬱:野田 洋人)
国内でも有数の熊の生息地を抱える秋田県。本来の生息域から離れた市街地でも目撃情報や被害情報が続々と報告されていることを受け、県知事は10月14日の記者会見で「県民の日常生活に支障を来たしており危機的かつ緊急事態だ」と、文字通り尋常では無い危機意識を見せた。いったい日常生活に支障を来たす危機的な状況とはどんなものなのか、熊の出没が特に多い鹿角市大湯地区の現状をレポートする。なお、本取材は学者や専門家ではなく地域に居住する人を対象とした。机上の研究ではなく肌感覚で熊の存在をどのように捉えているのかを中心に聞き取りを行った。秋田県鹿角市大湯地区にある地元旅館の従業員は、剥き出しの危機意識をこう語ってくれた。「毎年、クマ騒ぎはあるのですが今年はひどい。栗と柿の木は伐採しました。それでも敷地近くに糞や足跡は毎日確認しています。怪我のないようお客様には出歩かないで館内にいるようにお願いをしています。とくに夜間は熊の多い時間帯です。警察のパトロールは増えていますが、どれだけ効果があるのか疑問です。夕食後に酔い覚ましに出歩かれて遭遇することもありますのでお客様の被害のないよう祈るだけです。お一人でも被害が出れば営業できなくなりますから」。住宅地で送迎中の高齢者施設のドライバーは気弱な表情を見せる。「毎日のように熊は見かけます。これまで見なかった住宅地にいますし、路上だけでなく塀の上や木に登っていたりと、どこにでもいる感覚です。はっきり言って怖いですよ。都会の人には分からないかもしれませんが、そういう状態が今では日常になってしまいました。利用者をお迎えする時も車両の前後左右を見て熊の有無を確認するようにしています。万が一のためにナイフと棒を携帯してますよ。襲われることを頭に入れて行動するようにしています。そうならないことを願うばかりですが……」。杖をつきながら台車に家庭ゴミを入れたビニール袋を載せゴミ回収場所へ運んでいる高齢者に「こんにちは」と声をかけた。「うっ、熊が出たかと思った。あんた黒い服着ているから間違われる。命が縮んだよ」ゴミ出しを手伝うと男性は「これまでは近所の人にゴミ出しをお願いしていたが今は自分でやるしかない。車に乗れないので買い物はお願いしているが、不便でならない。自宅の木は切ってもらった。草刈りもやってもらっている。いつまでもこんな毎日では年寄りには辛い」と、うなだれた。人の姿を求めて民家の間を走ると、杉の人工林を背にした畑で作業をしている男性を見つけた。この土地に住んで60年以上という男性は気丈な素振りで語ってくれた。「今年の熊はいつもと違う。これまでは山の近くでしか見ることがなかったのに、家のすぐ近くにいる、車庫にもいるし、集落内の道を堂々と歩いている。大声出しても、爆竹鳴らしても逃げもしない。毎年楽しみにしていた30年物の栗の木は泣く泣く5本とも切ってもらった。近くにある柿の木はうちのではない。ここらでは柿は少し食べるだけであとはそのまま残してしまう。今朝、その柿の木に熊が2頭いたよ。朝夕の熊が出る時間帯はなるべく家から出ないようにしているし、今年は昼間でも出るからほとんど家にこもっている。仲間の家で飲むのが楽しみだったがそれもできね。いつ熊が出るかわからない。まるで檻の中で暮らしているようなもんだ。やることなくて動かねもんだから足腰が弱ってきた。うちの妻に『行くな』と言われているが、運動を兼ねて畑で熊の食わない大根と葉物野菜だけは作っているよ」。「家に上がるか」と招かれたその男性の家で同世代の友人呼んでもらった。製材所に勤めていた男性は子供の頃から山が遊び場だった。「長年、ここに住んでいるがこんなに熊が出てくるのは初めてだ。家族に言われてきのこ採りに行くのは諦めた。周辺の草刈りはしているが、今年の春に納屋の扉を壊して中に置いてあった米を食べられた。そしたら、先月は修繕したところをまた壊して備蓄してある米と犬の餌に加えて洗濯洗剤まで食べられた。あんなもの食べて大丈夫なのか。どれだけ腹を減らしているのか。以前の熊はこっちが大声出したら逃げたが、今の熊はいくら騒いでも無視したまま平然としているんだ。昨日は玄関先にうんこの土産を残していった。栗の実は早くに全て取ってしまったが、それでも何頭ものクマが毎日のように見回りにくる。この辺りも空き家が目立ってきた。年寄りばかりになって子供など数えるほどしかいない。里の集落が奴らの棲家になってしまったということなんだ。対策はゴミの管理に草刈りや実のなる木を切るくらいしかない。役所に言われたことを全部やったがそれでもクマは来る。このまま我慢するしかないのか」。一通り話したきり、黙ってしまった男性。沈黙の中、お茶受けに知人から分けてもらったという旬のナラタケ(サモダシ)と天然椎茸をいただく。天然物のキノコ類は日常に口にしている栽培物とは香りも歯応えも違う。噛み締めると鼻から抜ける香気には驚くほどだ。山の幸は山間に住む者の特権なのだろうが、その権利すら脅かされている。
(今年のクマがいつもより“イライラ”神経質になっている理由:野田 洋人)
秋田県と青森県にまたがる十和田湖。同地の観光の玄関口に位置する大湯温泉は開湯800年の歴史を持つ県内有数の温泉地である。ここは歴史ある温泉地として華美ではなく落ち着いた風情を求める多くの観光客を集めてきた一方、熊の出没が多いことでも知られる。「長年、ここに住んでいるがこんなに熊が出てくるのは初めてだ」と住民たちは口々に言う。熊の出没に怯える地域では今、現実に何が起きているのか――。秋田県大湯地区で暮らす70代の男性に話を聞くことができた。この男性は年間を通じて山に入り、春は筍を、その後は様々なきのこ類を採って友人たちに振る舞っているという。昭和40年代に狩猟免許を取り、本業の傍ら付近の山々に入ることを続けていた。還暦を迎え体力の衰えを感じ狩猟は辞めたがそれでも山に入ることは継続している。専門家ではないが経験から導き出される深い知識には驚かされた。以下にできるだけ要約する。私が入る山は登山客など決して来ないところです。これまで熊とは何度も出会ってます。もし、やられたら自己責任と考えてます。怖いけれど、これが私の習慣だし楽しみは山にしかないからやめらんねぇな。季節を通じて山は美味しいものを沢山くれます。今年は夏の大雨で山の中の沢沿いの地形が変わってしまった。夏場のキノコは異常な暑さと大雨でほとんど全滅だった。どんぐりもブナも胡桃もあまり実をつけていない。ナラクイムシにやられてナラの大木が何本もダメになっている。強いはずのブナも枯れている。広葉樹の実が成らないと獣たちが困るな。餌がないからイライラしているんだ。熊も怖いが猪も怖い。猪は大きな群れで動いていて、いきなりこちらに突っ込んでくる。転ばされたこともあったよ。熊も猪も頭数は明らかに増えている。ただでさえ少ない餌を互いに奪い合っているので生存するのに必死なんだよ。おまけに最近は人工林の切り出しが多い。そうなると車両が多く山に入り、騒音と木材を運ぶ林道が作られてさらに熊を追い込むことになる。今年のような大雨地形が変わってしまって熊も混乱しているんだ。いつもの場所に餌がないから余計に神経質になっている。決まった習慣で活動している熊にとっては大問題だ。山で餌を取れないので里に降りてきたばかりの熊は、里での環境にかなり神経をすり減らすことになる。里には山にはない騒音や家に人に車に色んな匂いなど山中とは全くの別環境に緊張する。だから里にいる熊は山の熊よりも気が立っている。事故が多いのはそういった神経を尖らせた熊が多いのだと思う。本当はもっと臆病な動物だが環境がそうさせているのだろう。山と違って里には熊の食べ物がたくさんある。米、蕎麦、りんごや栗、柿、畑には食い物がいくらでもある。夏場のとうもろこしなんて大好物だ。コメも精米すれば、その匂いが好物だから釣られてやってくる。奴らは常に腹を減らしているから餌を探して匂いを嗅ぎつけどこにでもやってくる。畑も家の中も倉庫も畑もゴミ箱も奴らにしてみたら同じことだ。誰かの所有だなんて事は考えね。自分の餌場となるとそこに執着するから出会い頭に人間がいたらやられることもあるし、一度でも人間を襲ったクマはそれを学習する。今度は人間が餌になるということだ。大型で強い熊は奥山で条件のいい広い縄張りを持っている。弱い熊になるほど、里の方に追いやられる。一度でも里に降りてきたら他の熊の縄張りがあるので山には戻れない。里の近くで巣を作り、子を育てそこからエッサホッサと里に出てくる。里で生まれた小熊は山での移動の仕方も餌の取り方も知る術がない。だから里で餌を取り、遊び、活動し繁殖することになる。針葉樹林には冬でも雪が積もらないので暖かいからそこに居着く。秋田は人工林(針葉樹)が日本一多い。道路脇、市街地近くの伐採しやすい場所はほとんど人工林だ。そこにジッといるわけだ。山を知らない人には熊がどこにいてどこを移動しているのかなど分からないよ。私も熊のことを知っているつもりだったが、それでも今年の熊は違うな。気が立っているよ。山中でも木を揺すぶったり、吠えて威嚇されることが多い。これまでは、こちらも動きを止めて一服していれば安心できた。でも今は違う。熊鈴なんて何の効き目もない。自分の考えでは熊が寄ってくると思っている。拡声器を使って音を鳴らせば大丈夫だと言うのは昔の話だ。余計に刺激してしまう。キャンプの人も登山の人も食べ物持ってくるだろう。熊の鼻はすごく効くんだ。弁当の匂いに寄せられて腹を減らした熊は必ずやってくるよ。自分は水だけで食糧は絶対に持っていかね。匂いのする甘いドリンクもダメだ。はちみつレモンってのがあったろ。あんなの持ってきたら自殺行為だよ(笑)。熊のいる山では匂いのあるものを持ち込まず、音を立てずにゆっくり動くことしかない。
(「もしクマと遭遇したら…」山のプロが実践している《本気の対処法》:野田 洋人)
国内でも有数の熊の生息地を抱える秋田県。なかでも熊の出没が相次いでいる鹿角市大湯地区の現状を調べていくうちに、地元民から「今年のクマは例年以上に神経質になっている」との声を聞くことができた。もはやこれまでの常識は通用しない。では、運悪くクマに出会ってしまったらどうすればよいのだろうか。青森県在住ではあるが、県境の山々で山菜採りをしている男性を紹介してもらった。彼は年金生活の足しにと山菜やきのこを採って売ることを仕事にしてきたプロの山菜採りである。他人が怖がって近寄らない山中に一人で何度も立ち入ってきたという。以下は、熊と遭遇した経験を数多く持つその男性が明かす“対処法”だ。自分だけの意見だけどな、山にはほんの少ししか平地で視界の効く場所はない。大抵は斜面になる。そんなところで奴らが真っ直ぐに向かってきたら、奴らが聞いたことのない声や動きをすることだ。これまで見たこともない生き物に見せるんだよ。奴らは臆病だから、できるだけ体を大きく見せることも効果がある。熊は鼻は効くが、目は悪い。出来れば10メートル以内で両手を広げて、左右の足をバタバタ動かしながら大声で喚くといい。これは里でも同じだ。決して背を向けたり逃げたらダメだ。習性で必ず追いかけてくる。奴らの足の速さには決して敵わない。もし、斜面の上から勢いをつけて走って来た場合はこちらに当たる瞬間に出来るだけ身を小さくして転ばすといい。左右に素早く動くことでも熊が対応できずに斜面の下に転がる場合も多い。下り斜面では急に左右に動けないんだ。真っ直ぐに受け止めたらそこで終わりだ。斜面の上に自分がいた方が相手を威嚇できるし(精神的に)優位に立てる。距離ができたら奴らの方が逃げる場合が多い。ただしそれも絶対ではないよ。武器があっても決して向かって行こうとしないこと。山の中は藪が生い茂り視界が効かない場合が多い。どんなに体力があっても藪から飛び出していきなり襲われたらひとたまりもない。空手チョップで撃退したなどのニュースがあったが、そんなの偶然に過ぎない。小熊でも敵わないよ。一番は熊に出会わないことだが、少しでも生き残るためには奴らの敵意を逸らすことだ。それしかないな。そうすれば少しは生存する可能性が上がるかもしれない。今話したのは、直接攻撃されないための方法だ。爪や顎で攻撃されたらやれる事は限られている。頭を庇って相手が飽きるのを待つしかない。運が良ければ生きていられる。里に出てきた熊の対策は分からない。苛立っている熊には何をやっても無駄だ。どこにでもいると考えて出会わないような行動をするしかない。熊の生活圏の中で暮らしているのだと考えるしかないな。男性は表情を変えずに淡々と話をしてくれた。指摘の通り、山の中では平地は少ない。熊と遭遇した状況次第で対処の違うことは理解した。最初の攻撃からいかに身をかわすかが肝心なのだろうが、気の動転した素人には真似は出来ないだろう。日が暮れてくると大湯の住宅街では人気が皆無になる。住宅地であっても植え込みや畑、空き地が点在している。少しでも物音がするとビクッとしてしまう。そんな中、猛スピードで自転車を飛ばす男性がいた。自宅に入った男性に声をかける。「娘の自転車を取りに行ってました。いつやられるか分からないので自転車は乗せられません。この状態がいつまでも続くようなら引っ越しも本気で考えなければならないかもしれないです。あなたも早く車に戻った方がいい」と口にし、玄関に入ってしまった。30名ほどではあるが、様々な世代の人に声かけをした。大半の住民達は「家から出るのが怖い」と、玄関での会話となった。熊の存在を脅威に感じ、日常生活に大きな影響があると話してくれた。中には「外国人対策よりも熊対策をしっかりしてほしい」と言う声や「ニュースで知ってますが、付近で熊など見たこともありません。マスコミが騒いでも何にもならない。迷惑だから帰ってください」と、じっと視線を外さずに批判する住民もいた。地域では警察官によるパトロールも強化されているが安心感を与える一方で「警官には駆除はできないから」と冷めた思いを語ってくれる住民も複数いた。実のなる木の伐採や草刈り、ゴミ出しなどをいくら実施しても効果が薄い現状に諦め、疲れ果てているように感じられた。
(クマ緊急銃猟手順、帯広市は独自策定へ:北海道)
市街地に侵入したヒグマを市町村の判断で猟銃駆除できる「緊急銃猟」について、帯広市は地元猟友会と連携し、本年度内に発砲手順などをまとめた独自マニュアルを策定する。
(ローソンが「クマ対策」を発表、クマ出没地域の店舗に“撃退スプレー”配布)
大手コンビニチェーン・ローソンが「クマ」対策を発表しました。ローソンは、▼クマが出没している北海道、東北、北関東のおよそ100店舗にクマの撃退スプレーを配布するほか、▼沖縄と九州を除く全国の店舗に、クマが店舗に近づくのを防ぐ低周波発生装置の設置も検討しているということです。また、自治体のホームページからクマの出没情報を収集することや、実際にクマと遭遇した場合、店舗でどう対応するかなどのマニュアルを作成しました。今後、ローソンは客や従業員を守るために周知を進める方針です。
(秋もマダニ感染症に注意!患者数は過去最多を更新)
過去最多の患者数を更新しているSFTS=重症熱性血小板減少症候群。マダニが媒介する感染症です。マダニは秋に活動が活発になります。紅葉狩りやピクニックなど秋の行楽シーズンを迎えどんな場所に注意したらよいのでしょうか。ABURAYAMA FUKUOKA 自然観察センター 大野敦子さん「最初はこんな所にかさぶたあったかなと思って触ったら、あれ取れないなって。よく見たらマダニが血を吸っていて、ちょっと大きくなっているっていう状況でした。その時点ではまったく気づいていないので、痛みもかゆみもありませんでした」。マダニにかまれた経験があるという大野さん。これから紅葉シーズンを迎える福岡市の油山で、観光ガイドなどを務めています。マダニにかまれた可能性があるのは、仕事中です。どういった場所に潜んでいるのでしょうか?ABURAYAMA FUKUOKA 自然観察センター 大野敦子さん「油山ですと、イノシシがミミズとかを探したり掘っているような場所が時々見られます。草をちょっとどけて下にいるミミズとかを多分探していたんじゃないかと思います。イノシシがよく利用する所にいるので、おそらくこういう場所で待ち構えていて、イノシシがやってきて動いているときにまた付いて血を吸ったりというようなことかなと思います」。マダニがよく潜んでいるのが、土が掘り返されり、水がたまっている場所。イノシシがエサを食べていたとされる場所です。マダニはイノシシなどの野生動物に寄生し、移動します。そして、人に移って血を吸います。そのマダニが、SFTSのウイルスを持っていた場合、感染症を引き起こすことがあるのです。SFTSは発熱や嘔吐、下痢などが主な症状で、致死率は10%から30%とされています。山道で土を掘り返したような場所を見かけたら、まずは近づかないことが重要だと大野さんは言います。Qこういった、ある程度道ができているところは大丈夫なんですか?ABURAYAMA FUKUOKA 自然観察センター 大野敦子さん「そうですね、道があっても真ん中を通っていただければ。それとマダニはそんなに動きが速くないので、普通のペースで歩いている分には多分そんなに素早い動きで付くっていうことはないと思うんですが、立ち止まったり中に入ってじっと過ごすことは気をつけた方がいいと思います」。マダニが潜んでいるのは「山の中」だけではありません。福岡県福津市、山のふもとに位置する自然公園です。アライグマ防除研究会 菊水研二さん「これがシカのフンです。シカはここに現れて、芝を食べてフンを落とすんだけど、実はそれ以外にマダニも落とすよってことなんです」。開けた芝生の上にもマダニがいると注意を呼びかけているのが、害獣の調査などを行う団体「アライグマ防除研究会」の菊水さんです。この公園にマダニを運んでいるとされているのが、ニホンジカです。福岡県によりますと、県内には2020年の時点で約2万7000頭のニホンジカがいるとされていて、生息域は年々拡大しています。菊水さんがシカのフンが落ちていた周辺を調べたところ、30分で40匹ほどのマダニを捕獲したこともあったそうです。さらにーアライグマ防除研究会 菊水研二さん「私が一番恐れているのは、自宅の庭や家庭菜園にマダニが運ばれて、そこでかまれる事故が発生することです」。マダニを人の生活圏まで運ぶ可能性が高い害獣として警戒しているのがアライグマです。アライグマは繁殖力が高く、福岡県内で去年確認された数は5825頭。5年間で4倍にも増えているんです。身近な場所にも潜んでいるかもしれないマダニ。身を守るにはどのような対策をとれば良いのでしょうか?マダニから身を守るには肌の露出を少なくすることです。具体的には、・首にタオルをまく・シャツの袖口は手袋の中に入れる・長ズボンの裾は靴下の中に入れるマダニの大きさは2ミリから4ミリ程度で肉眼で確認できます。明るい色の服の方がマダニが付いていた場合、確認しやすくなります。虫除けスプレーも有効です。ディート、またはイカリジンという成分が入ったものが有効的だということです。万が一マダニにかまれたら無理に取り除こうとはせず病院で取ってもらいましょう。無理に取ると一部が残り化膿したり、病原体が入るおそれもあります。秋の行楽シーズン、十分注意してください。
(10人襲撃のツキノワグマが驚いて逃げた「身近にある器具」とは?)
2009年に岐阜県乗鞍岳の畳平駐車場で発生した、ツキノワグマによる襲撃事件。襲われている人を助けようとした人が次々と襲われ、結果10人が重軽傷を負った。駐車場からバスターミナルに飛び込んできたクマを、売店に閉じ込めるのに成功させた「身近にある器具」とは?※本稿は羽根田 治『人を襲うクマ』(山と溪谷社)の一部を抜粋・編集したものです。今でもときどき夢を見ることがある。真っ黒い大きなものが、大きな口を開けて襲いかかってくる夢だ。恐怖で飛び起きると、全身が汗でびっしょりと濡れている。あのときの光景はくっきりと脳裏に焼き付き、決して消えることはない。石井恒夫(66歳)が50~70代の友人16人と乗鞍高原へ遊びにいったのは、2009(平成21)年9月のことである。石井らは会社のワゴン車を借りて18日の晩に横浜を出発、諏訪SAで休憩をとり、翌19日に畳平へと向かった。石井が乗鞍岳を訪れるのは、このときで5回目だった。畳平バスターミナルから15分ほどで登れる魔王岳からの眺望が素晴らしく、気に入って何度も足を運んでいたのだ。登山は中学2年生のときに尾瀬の燧ヶ岳と至仏山に登ったのが最初で、社会人になってからもトレーニングがてら年に何度か丹沢の山々を歩いていた。ときには会津磐梯山や白馬岳など地方の山に登ることもあり、富士山にも5回登っていた。畳平到着後、17人中14人は畳平周辺を散策し、石井を含めた3人が魔王岳へと向かった。異変が起きたのは、遊歩道を登りはじめた直後の午後2時20分ごろのことだった。後方から「クマが出たぞ」という声が上がり、続けて「助けてー」という女性の悲鳴が聞こえてきたのだ。それまで畳平にクマが出るなんて考えもしなかったが、助けを求める声を聞いて、とっさに体が反応した。「お、クマが出たらしいぞ。俺、助けにいってくる」。友達にそう言って遊歩道の階段を下りはじめた。友達は「おい、やめとけ」と止めたが、人を助けるのが先決だと思って聞かなかった。現場までの距離は約20メートル。着いてみると、うつ伏せに倒れている女性の背中にクマがのしかかっていた。周囲にはたくさんの観光客や登山者がいて、石を投げつけてクマを引き離そうとしていた。石井も石を投げながらクマに接近し、来るときに高速道路のサービスエリアで買い求めていた杖でクマの鼻っ柱を殴りつけ、目を突こうとした。そのときの心境を、石井は「女性がクマにやられているのを見ていられなかった」と振り返る。攻撃を受けたクマは女性から離れたので、石井は「早く岩陰に隠れな」と女性に告げて自分も逃げようとした。しかし、次の瞬間にはもう石井の目の前でクマが仁王立ちになっていた。四つん這い状態のクマは小さく見えたが、立ち上がったクマの前脚は石井の頭の上にあった。その素早さと大きさに驚く間もなく、左前脚で頭部に一撃を食らった。「その一撃で右目がぽろっと落っこっちゃって、上の歯もなくなりました」。激痛のあまりその場に倒れ込んで左手で顔を覆ったら、今度はクマが上からのしかかってきて、左腕に噛み付かれた。そのまま頭を左右に激しく振ったため、左腕が千切れそうになった。石井は右手に握っていた杖で必死に抵抗していたが、次第に意識が遠のいていき、その後のことはまったく覚えていない。その日は9月の三連休の土曜日で天気もよく、畳平は朝から大勢の登山者や観光客で賑わっていた。山小屋「銀嶺荘」のオーナー・小笠原芳雄(59歳)が悲鳴を聞いたのは、建物の前で掃除をしていたときだった。悲鳴が上がったのは魔王岳の登り口となっている石段のところで、そこにたくさんの観光客や登山者が群がっていた。急いで駆けつけてみると、男性が倒れており、その上にクマが覆いかぶさっているのが見えた。取り囲んでいる人は30~50人ほどもいただろうか。「これは危ない」と思い、小笠原は周囲の人たちに「クマが向かってくるかもしれないので、ツアーの方は乗ってきた観光バスの中に、そのほかの方は近くの建物の中に避難してください」と勧告した。そのあと、石井を襲っているクマに向かって、10メートル離れた場所からパンパンと手を叩くと同時に大声を上げた。「とくに『お客さんを守らなければ』というようなことは考えませんでした。クマの注意をこちらに向かせるつもりで、気がついたら無意識的に行動していました。当然、自分も警戒していたし、充分逃げられると思ってました」。目論見どおり、クマは小笠原の存在に気づくと、石井への攻撃をやめて猛然とこちらに向かってきたので、小笠原は急いで銀嶺荘の中に駆け込もうとした。だが、そのときに想定外の誤算が生じた。小笠原といっしょに現場に駆けつけた銀嶺荘の男性従業員が、逃げる途中でつまずいて転倒してしまったのだ。そこにクマが追いついて男性にのしかかり、攻撃を加えた。小笠原は銀嶺荘の近くまで逃げていたのだが、従業員が襲われているのを見て引き返し、再び手を叩いて大声を上げた。その音に反応して振り返ったクマの目を、小笠原は今でも忘れない。「そのときのクマの目は真っ赤に充血していました。クマは目と目を合わせると興奮するとよく言われますが、それはほんとうだと思いました」。従業員から離れたクマは、小笠原に向かって突進してきた。再び走って逃げ、銀嶺荘の玄関の前まで来て振り返ったら、目の前にクマがいた。「振り向かなければよかったのに、つい振り向いてしまいました。それがいけなかったんです」。最初に石井を襲っているクマを見たときは、全長120センチぐらいの大きさかなと思っていたが、二本足で立ち上がったクマの身長は160センチほどもあり、ちょうど小笠原の目の高さにクマの顔があった。とっさに小笠原は左手でクマの右腕をつかんだが、太いうえに毛並みで手が滑った。次の瞬間、左腕で顔面に一撃を喰らった。そのままうつ伏せに倒れ込んだ上にクマがのしかかってきた。とにかく頭部を守ることだけを考え、両手で後頭部を抱えて防御姿勢をとったが、右手にクマが噛み付いてきた。そのとき、目の端に小笠原の長男が近づいてくるのが映った。「来るな」と叫ぼうとしたが、声が出なかった。駆けつけた長男が思い切りクマの腹を蹴りつけると、クマは標的を長男に変えて襲いかかっていった。のちに小笠原が長男に「なんであんなバカなことをしたんだ」と問うと、「親父が死ぬと思ったからだ」と言われた。次々とクマに人が襲われている間、周囲にいた観光客の間からは怒号と悲鳴が上がり、駐車場に停められていたバスやタクシーはクラクションを鳴らし続けた。そのなかのひとり、現地のパトロール員が軽トラックをクマに接近させ、クラクションを鳴らして威嚇した。これに逆上したクマは、今度は軽トラックに立ち向かっていき、爪や牙で攻撃しようとした。この隙にほかの車が負傷者をピックアップし、バスターミナル内にある救護室に運び込んだ。いちばん重傷だった石井も、周囲にいた人たちによって救助されていた。トラックと格闘していたクマは、さすがに分が悪いと感じたのだろう、逃げ惑う人たちを追いかけるような形で、最初に石井を襲ったあたりまで引き返し、当時その場所にあった岐阜県の乗鞍環境パトロールの詰所の中に侵入した。しかし、詰所の中には先にパトロール員が逃げ込んでいた。そこへクマが飛び込んできたので、パトロール員は慌てて窓を開けて外に飛び下りたのだが、そのときに足を骨折してしまった。クマが詰所の中に入ったのを見て、先のパトロール員は詰所のドアに軽トラックを横付けして中に閉じ込めようとした。だが、クマは窓から外へ飛び出し、逃げる人々を追いかけて駐車場を横切り、3階建てのバスターミナルの建物の正面玄関に突進してきた。そのバスターミナルの中には、従業員の誘導に従って大勢の観光客や登山者らが避難しており、正面玄関入口には長椅子を並べたバリケードが築かれていた。こちらに向かってくるクマを見て、従業員が正面玄関のシャッターを閉めようとしたが、間一髪間に合わず、膝ぐらいの高さまで下がったところでクマが飛び込んできてバリケードを突破した。事故翌日の20日付の『信濃毎日新聞』には、ターミナル内にいて左耳をクマに噛み付かれたバスの女性運転手の生々しい証言が掲載されている。〈外でしきりに車のクラクションが鳴っているので、何かしらと思った。しばらくすると突然何人かがどっとターミナルに駆け込んできて、後を追い掛けるように熊が飛び込んできた〉〈逃げ惑うお客さんに出口を示すとみんな飛び出していって、私が出る前に出口が閉まった。出口を背にする私に熊が迫ってきて引きずり倒された。ターミナル内に残っていた人が熊に応戦してくれたが、やられてしまった〉。女性からクマを引き離そうとした従業員のひとりは、モップの柄で突いたり足で蹴ったりしているうちに右腕を噛まれ、足も爪で引っ掻かれた。椅子を手にクマを追い払おうとした女性従業員は、気がついたらいつの間にか噛まれていて出血していた。彼女を助けようとして素手で立ち向かった同僚の男性も、引っ掻かれてケガをした。バスターミナルの一階に避難していた約50人(100人前後という報告もある)の人々は、パニックに陥りながら逃げ惑い、テーブルの上に飛び乗るなどしてクマの攻撃をかわそうとした。一部の者は上の階へ避難し、3階部分の屋根裏部屋に逃げ込んで内側から机などでバリケード封鎖する者もいた。そんななかで、従業員らはケガにも怯まずに必死でクマに立ち向かっていった。従業員のひとりがこう証言する。「お客さんから手渡された消火器でクマを叩こうと思ったのですが、重くて無理だったので、噴霧して追い出そうとしたんです。クマは消火器の白煙にびっくりしたようでしたが、外に追い出すことはできず、最終的に売店の中に逃げ込みました」。勢いよく噴射される消火器の白い薬剤はクマが初めて目にするもので、薬剤の刺激臭と相まって、驚いて逃げ出したものと思われる。ターミナルの1階部分には食堂と休憩所、それに売店があり、食堂の売店の仕切りのところで格子状のシャッターが下りるようになっている。従業員はそのシャッターを下ろして、クマを売店内に閉じ込めた。そして午後6時前、報せを受けた高山猟友会丹生川(にゅうかわ)支部のメンバー4人が現地に到着。防犯用ミラーに映ったクマの様子をシャッター越しに探り、通路に姿を見せた瞬間、シャッターの隙間から銃撃して射殺したのだった。その後の解剖の結果、クマは21歳の高齢の雄だったことが判明。体長は136センチ、体重は67キロの、健康な個体だった。小笠原によると、襲撃された人はみんな顔をやられたそうだ。「クマが人を襲うときは、やはり顔を狙ってくるようですね」。しかし、後にも先にも乗鞍岳周辺で立て続けに人が襲われたという例はほかにない。この事故のクマに限って、なぜ特異な行動に出たのだろうか。それを検証したのが、岐阜大学応用生物科学部附属野生動物管理学研究センターの「乗鞍クマ人身事故調査プロジェクトチーム」である。同チームは、事故の目撃者らから独自に聞き取り調査を行ない、「乗鞍岳で発生したツキノワグマによる人身事故の調査報告書」(2010年3月)として公表した。〈通常クマが何のきっかけもなく走り出し人前にでるということは考えにくく、周囲に隠れる場所のない乗鞍のような高山帯においてその原因となる可能性が高いのは人間との遠・近距離での接触である。おそらく、斜面上部で人とのなんらかの接触があったのではないだろうか。ひとつの可能性として、本個体が採食に夢中になっているところで突然人に大声を出されるなどしたため、驚き斜面を駆け下りたところ車の往来する道路に出てしまいパニックになり、たまたま接触したバスを攻撃したということが考えらえる。本個体がパニック状態であることは、その後の駐車場の柵や石壁での行動から明らかである。通常森林内であれば人間との遭遇により驚き逃げたクマは人の目の届かない藪や林内に入り落ち着きを取り戻すことができるが、今回は高山帯のためそのような環境がなかったと考えられる〉。いくつかの偶発的な不幸が重なってクマが追い詰められ、この事故が起きたことは間違いなさそうだが、人間の側に「乗鞍岳周辺はクマの行動圏である」という認識が低かったことも、被害が拡大した一因であることは否定できない。事故を振り返って小笠原が思うのは、もしあのとき石井が襲われておらず、クマだけが単独でいたら、ということだ。「手を叩いたり大声を出したりするのは、クマを威嚇することになるので、やはり危険だと思います。しかもあのときは周囲を取り囲んでいた人たちから『わーっ』『きゃー』という悲鳴が上がっていたので、よけいにクマも興奮したのでしょう。でも、もしあのままにしていたら、石井さんは命を落としていたかもしれません。放っておくわけにはいきませんでした」。ただ、被害者が出ておらず、ふつうの状態でクマがいたときには、自ら静かに遠ざかること。観光客や登山者がいる場合は、静かに避難させるだけにとどめること。決してクマに向かっていくものではない。それがこの事故から得た教訓だと、小笠原は言う。
(熊の人里出没と被害防止策に注目集まる)
熊の人里への出没や被害防止策としての柵やフェンスの整備について、Yahoo!ニュースのコメント欄で話題になっています。ユーザーの意見では、熊による農作物や人への被害が深刻化している現状を受け、電気柵やフェンスの設置、果樹の伐採、ゴミ管理などの自己防衛策が必要だという声が寄せられています。また、熊が人里で食べ物を得ることを学習してしまったことや、駆除や管理の難しさ、被害防止のための対策の重要性についても意見が出ています。- 熊の被害が増えているので、電気柵やフェンスなどの対策をもっと進めてほしいです。- 人里で熊が食べ物を覚えてしまった以上、自己防衛策を徹底するしかないと感じます。- 果樹の伐採やゴミの管理など、今まで以上に自分たちでできる対策が必要だと思います。
(イノシシの生息域拡大と人間社会への影響)
イノシシの生息域拡大と、それに伴う人間社会への影響について、Yahoo!ニュースのコメント欄で話題になっています。ユーザーコメントでは、これまでイノシシが見られなかった都市部や平地でも目撃されるようになったことに驚きや警戒の声が寄せられています。また、イノシシによる農作物被害や人への危険性についても指摘されており、今後の対策や共生のあり方について意見が交わされています。- 八潮のような平地でイノシシが出るとは思わず驚きました。今後の被害が心配です。- イノシシは農作物への被害も大きいので、適切な対策が必要だと感じます。- 都市部でもイノシシが目撃されるようになり、人や子供の安全が気になります。
(熊の出没増加と対策を巡る議論)
熊の個体数増加と駆除の必要性について、Yahoo!ニュースのコメント欄で話題になっています。ユーザーコメントでは、近年熊の出没が全国的に増加し、人的被害や生活圏への侵入が深刻化していることから、駆除を含めた積極的な対策が必要だという意見が寄せられています。また、駆除した熊を食肉や皮革製品として有効活用するジビエ化の提案や、熊肉の味や調理法に関する体験談も見られます。一方で、熊が人間を恐れなくなった背景や、従来の対策が通用しなくなっている現状への懸念も示されています。- 熊の個体数が増えすぎているので、駆除を進めるしかないと感じます。- 駆除した熊をジビエとして活用し、食肉や皮革製品にするのは良い案だと思います。- 熊が人間を恐れなくなってきているので、従来の対策だけでは不十分だと感じます。
(なぜ野生動物の獣害被害が続くのか、個人レベルで取れる対策は:静岡)
クマやサル、イノシシといった野生動物の獣害が問題となっている。人を襲ったり、田畑を荒らしたりと、被害はさまざまだが、背景の一つに地域の過疎化や高齢化がある。専門家は「対策を実行するための人員の確保が課題」と指摘する。クマの目撃情報が相次いでいる東京都青梅市。担当者は「原因は分からないが、今年はクマの目撃がとても増えている」と話す。ハイキングで同市を訪れる観光客も多く、「被害に遭わないよう注意してほしい」と危機感を募らせる。環境省などによると、2025年度のクマによる死者数は12人(10月30日現在)で過去最多となった。7月、北海道福島町で新聞配達中の男性が襲われて死亡し、10月には宮城県栗原市の山にキノコ採りに来ていた70代の女性が亡くなった。なぜ被害が相次いでいるのだろうか。クマなど野生動物の生態に詳しい東京農業大の山崎晃司教授は、過疎化、高齢化のため里山近くの集落から住民がいなくなり、動物が活動する範囲が広くなったと指摘する。
(新芽を食べられ「実がつかない」、シカによる食害:福井)
敦賀市東浦地区で江戸時代から栽培が続く「東浦みかん」。今年は“表年”で豊作が期待される中、一部の農園ではシカによる被害が深刻となっています。丸々としたミカンが陽の光を浴びて輝く、敦賀市元比田にある観光みかん園。敦賀市の北東に位置する東浦地区では、太陽光が行き届きやすい傾斜地を生かして江戸時代からミカンを栽培しています。今年も例年通り、20日からミカン狩り体験が始まり、子供たちは「甘い」「酸っぱいけどおいしくて最高」と言いながら頬張っていました。このみかん園を経営する下野浩稔さんは「今年は表年。雨が降らず夏の日照りも強かったので虫もつかず、非常においしいミカンが育った」と胸を張ります。ところが別のミカン園では、シカによる食害が深刻になっていました。東浦みかん特産化組合の岡本幸男組合長は「120~130本作っている農園では、上の方だけ実がなって下の方がほとんどなっていない。これは冬場、シカに食べられてしまったからで、不作だった去年と比べても6割から7割しかなっていない」と話します。エサを求め山から下りてきたシカに新芽となる部分を食べられたことで花が咲かず、実がつかなかったのです。岡本組合長は、これほどの被害は初めてだと言います。岡本組合長によると「シカが最も嫌がるのは電気」だということで、ミカン園全体に電柵を設置しているといいます。山側を中心にミカン園の周りに電気柵を設置。その後は、シカが侵入した形跡が見られなかったため「来年こそはミカンを守ろう」と、この冬までに電気柵で完全に囲う予定です。岡本組合長は「シカの被害がなければ今年は豊作なので未来は明るかったんですが、今年はちょっと暗い感じに」と肩を落とします。そして今年は、ミカン狩りの営業日数を減らすという苦渋の決断をしました。JA福井県によりますと、約30あるミカン農家の少なくとも5、6軒でシカの被害が確認されていて、今後は市とも相談し、電気柵の範囲を広げたり柵を高くしたりして対策を進める考えです。
(オオバナノエンレイソウ、シカ食害からどう守る:北海道)
石狩市内での道道工事の影響で消失の恐れがあったオオバナノエンレイソウの群落を、市民団体「石狩浜夢の木プロジェクト」(安田秀子代表)が北海道の協力を得て近隣に移植して今年9月で3年がたった。今月市内で開かれた保全活動の報告会では、シカによる食害や食害対策のための柵の設置費用といった新たな課題について、道職員や専門家が説明。道の協力がなくなる次年度以降の活動をどうしていくか考えていくことの重要性を指摘する声も上がった。
(豚熱、野生イノシシ5頭が感染:三重)
三重県は29日、県内で今月の中旬から下旬にかけて捕獲した野生イノシシ71頭のうち、熊野市、志摩市、伊賀市、鈴鹿市の計5頭について、豚熱への感染を確認したと発表した。県内で豚熱への感染が判明した野生イノシシは1240頭となった。
(クマが玄関ガラス破壊、住宅に侵入:岩手)
31日朝、岩手県雫石町でクマが玄関のガラスを壊して住宅に侵入しました。この住宅には当時、70代の男性などがいましたがけがはありませんでした。午前7時半ごろ、雫石町長山の柿木三四二さん(74)の住宅で「玄関のガラスが壊されてクマに入られた」と別居する息子から110番通報がありました。柿木さんの妻が玄関にゴミを置いてリビングに戻ったところ、ガラスが割れる音が聞こえ、成獣とみられる1頭のクマが家に入るのを目撃しましたが、壊した玄関からすぐに外に逃げたということです。現場は田園地帯の住宅地で、敷地内にはクマの足跡が残されていました。クマの行方は分かっていません。30日、ガラスの自動ドアに体当たりして去っていくクマが確認された雫石町立中央公民館から北西におよそ2.5キロで、警察や町が警戒を呼びかけています。一方、達増知事は31日の定例記者会見で(達増知事)「人がいるようなとこに出てくるクマはかなり確信的に食べ物を求め、あるいは人を襲うことを求めてやってきているので、これはかつてとは違うんだという認識を県民の皆さんには持ってほしいと思います」。さらに、達増知事はクマの捕獲について今年度の上限である796頭を超え、11月から冬ごろにかけてさらに200頭を目安に捕獲する方針を示しました。(達増知事)「死亡事例に至らなくても人間を襲うクマについてはとにかく捕獲していくこと。里山や街に迷い出たようなクマについてもしっかり捕獲していくこと。これに努めていきたいと思います」。
(市道の街路樹にクマが5時間居座る、麻酔銃で捕獲:宮城)
仙台市泉区の市道の街路樹にクマが約5時間も居座り、麻酔銃によって捕獲されました。周辺では交通規制が敷かれるなど一時騒然となりました。31日午前9時ごろ、仙台市泉区住吉台東の市道を車で走行していた人から、「イチョウの木に登っているクマがいた」と警察に通報がありました。クマはそのまま木の上に居座ったため、警察は午前10時ごろから周辺の道路に交通規制をかけました。そして目撃からおよそ5時間後…麻酔銃によってクマは捕獲されました。体長77センチ・体重11キロの子グマだったということです。警察によりますとけが人などの被害はなかったということです。
(自宅の庭にクマ3頭、わなで捕獲:宮城)
庭先で捕えられたクマ。しかも3頭も……。クマによる被害が全国的に過去最悪の状況になり、目撃情報が相次ぐ中で、宮城県の住宅敷地内で捕獲された親子とみられるクマの映像が、大きな反響を呼んでいる。投稿者は「まさか」と驚がくしている。わなに掛かった3頭のクマ。2頭はまだ小さい。親グマだろうか、大きな1頭は、内側からおりをつかんで暴れ、威嚇(いかく)するような動きを見せている。母親の実家で撮影されたものだといい、「母は自宅の方に帰宅しており、現場にはいなく、わなは近隣の方が許可を得て設置してくれたそうです。ただ、詳細は分からないです。その後、クマがどうなったのかも聞くことができていません」と話す。先週にもクマが柿を食べに現れていたとのことだ。宮城県の中心都市・仙台市でもクマの目撃情報が多発。県内では10月3日に栗原市栗駒でキノコ採りに入った4人がクマに襲われ、1人が死亡、1人が行方不明になる重大事案も起きている。北海道、東北をはじめ、岐阜、新潟などでも出没しており、全国的に危機が差し迫っている状況だ。政府はクマ被害に対する初めての関係閣僚会議を開くなど、抜本的な対策が急がれている。今回の生々しい映像に驚きが広がり、議論に。ネット上では「親グマが荒れてて恐ろしい…」「怖すぎます」「子熊は何も分かってなさそうだけど、親熊の荒々しさが怖いです」「今年は異常ですね。いったいどれだけいるんだろう」「可哀想ですが駆除していかないと、増えすぎてしまっては人間が餌になるしかなくなりますので」「おとなしくしてるとかわいいとも思えるけど、そんな綺麗ごとでは済まない」「人間と共存出来たら…」「こうして見てるだけなら可愛いのに…」「一刻も早く安心して暮らせるようになりますように!」など、さまざまな意見が寄せられている。
(またクマと車が衝突する事故が発生:新潟)
31日、湯沢町土樽の県道で、車とクマが衝突する事故がありました。午後0時半頃、運転手から「湯沢町土樽の県道を普通乗用車で走行中、左側から道路を横断してきたクマ(体長約1.5メートル)1頭と車の前部が衝突した」と110番通報がありました。運転手にケガはありません。クマの行方はわからず、現場は民家直近であることから、警察は湯沢町と連携して注意を呼びかけています。30日から31日にかけ、湯沢町や隣の南魚沼市では車とクマの衝突事故が相次いでいます。30日、南魚沼市東泉田の国道291号で軽自動車とクマが衝突する事故がありました。運転していた人から「午後6時15分頃、国道を走行中に、右側から左側に道路を横断してきた子グマ(体長約0.6メートル)1頭と車の右側前部が衝突した。その後、クマは左側の路側帯で動かない」と110番通報がありました。クマは死んでいるのが確認されています。運転していた人にケガはなかったということです。また30日午後11時50分頃には湯沢町土樽の町道で軽トラックとクマが衝突する事故がありました。運転していた人から「午後11時50分頃、町道を軽トラックで走行中に右側から左側に道路を横断してきたクマ(体長約1メートル)1頭と車の前部が衝突した。クマは立ち去った」と通報がありました。運転手にケガはなかったということです。
(クマが公民館の自動ドアに突進:岩手)
30日午前6時25分ごろ、雫石町上曽根田の町中央公民館正面入り口の自動ドアにクマがぶつかり、ドアが破損した。盛岡西署によると、ガラス戸2枚にひびが入り、下部フレームが壊れた。爪痕もあった。防犯カメラには自動ドアに向かって走り、衝突するクマ1頭が映っていた。体長は1メートルほどとみられる。現場は町中心部。
(「クマが会社内に入って閉じこもった」社員5人が居合わせるも逃げてけがなし:新潟)
新潟県阿賀野市で31日、クマ1頭の目撃情報がありました。クマは建設会社の倉庫内に立てこもっています。クマが目撃されたのは阿賀野市新保です。警察によりますと31日午前10時すぎ、建設会社の社員から「今、クマ1頭(体長約0.5メートル)を目撃した。クマはうろついている。会社の建物に入って閉じこもった」と通報がありました。クマが入っていったのは会社の倉庫で、一時、社員5人が居合わせましたが逃げてけがはなかったということです。クマは倉庫内に立てこもっていて、警察が警戒に当たっているほか、猟友会と阿賀野市が連携して今後の対応を検討しています。
(わなに1メートル80センチの巨大グマがかかる:山形)
山形市の高瀬地区で31日朝、体長が1メートル80センチを超える巨大なクマ1頭が捕獲されました。クマは猟友会によって駆除され、けが人はいませんでした。午前6時半ごろ山形市下東山の村山高瀬川に面した並木道でわなにかかったクマ1頭を近くに住む鑓水輝保さんが発見し、地元の猟友会が捕獲しました。猟友会によりますと捕獲したクマは体長1メートル81センチ、体重が180キロあるオスのツキノワグマです。クマはその後、猟友会によって駆除され、けが人はいませんでした。クマが捕獲された場所は高瀬小学校から南西におよそ300メートル離れた住宅街に面していて、これまでクマの目撃情報が複数ありました。同じ場所では10月中旬以降、親子とみられるクマの目撃も寄せられているということです。下東山の別の集落では30日夜、住宅の窓ガラスと網戸が壊される被害がありました。当初はクマによるものとみられていましたが、山形市のその後の調査で鳥が衝突したことによる被害と判明しています。
(クマ捕獲に「イノシシ・シカ用の檻」活用:宮崎)
北海道・東北地方を中心に、クマによる被害が相次いでいる。環境省によると、2025年度、クマに襲われて亡くなった人は全国で12人(10月30日時点)にのぼり、過去最多となっている。こうした状況を受け、宮崎市で鳥獣被害対策製品を製造・販売する企業では、クマの捕獲用に檻の問い合わせが急増している。宮崎市の「イノホイ」は、動物による農業被害対策として、罠や檻などを販売する企業だ。本来イノシシやシカの捕獲に使用する檻が、2025年の春ごろからツキノワグマの捕獲用として問い合わせが増え、売れているとう。イノホイ 福士憲吾さん:クマの被害も増えていたり、目撃情報も増えている中で、例年から比べて120パーセント(約1.2倍)くらいで推移していっているような感じ。猟友会に所属されていたり、有害の駆除資格を持っている方からのご注文になると思う。同社が販売する檻は、幅と高さが1メートル、奥行きが2メートルで、体長約100センチから150センチのツキノワグマの捕獲が可能だ。福士さんは、一般的にクマ用の檻は15万円以上するが、イノホイが販売するイノシシ・シカ用の檻は約7万円と、半額以下で購入できるため、問い合わせが多いのではないかと話していた。イノホイではクマ用の護身グッズも販売しており、特に撃退スプレーの売れ行きは、前年の約1.5倍に増加している。現在、撃退スプレーは欠品状態となっており、春先まで入荷はない見通しだ。福士さんは、「そもそも僕らの仕事自体が農作物の被害を減らしたりというのをメインにやっているが、クマは人への被害というのが出ているので、そういったことが少なくなるように少しでも寄与していきたいなと思っています」と、被害軽減への願いを語った。
(「全国ジビエフェア」を開催:)
2025年11月1日から2026年2月28日まで、全国各地のジビエにスポットを当てた「全国ジビエフェア」が開催されます。本イベントは、株式会社ぐるなびが後援しており、農林水産省による「令和7年度ジビエフェア開催事業」の一環として進められます。今年のフェアのテーマは「この肉、ただの肉じゃない」。これは、ジビエがただの肉ではなく、その魅力や背景を知ることで、新たな食文化を体験してほしいという思いが込められています。今年は、全1,448店舗が参加予定で、これは過去最大の数となります。飲食店や小売店で国産の野生鳥獣肉を使った料理や商品を楽しむことができ、地域ごとの特色を活かしたジビエのプログラムが楽しめます。参加店舗は特設サイトで紹介されるので、訪れる前に気になるメニューのチェックが可能です。新たに提供されるコンテンツには、ユーザーが自分にぴったりなジビエと出会える「診断コンテンツ」や、ジビエの多様な楽しみ方を紹介する特集記事があります。診断コンテンツでは、ジビエの経験度や好みに応じて、最適なメニューを提案してくれます。また、ジビエフィーチャーの特集で、その魅力を深掘りしていく計画も立てられています。ジビエに対するニーズが高まる中で、野生鳥獣による農作物被害も深刻化しています。野生鳥獣の生態や環境の変動、農村の過疎化などが影響を与えており、これに対処するためにはジビエの利活用が重要になります。ジビエの利用量は令和6年度で2678トンに達し、そのうち1724トンが食肉として販売され、需要が着実に増えています。しかし、国の目標である令和11年度のジビエ利用量4000トンを達成するためには、さらなる需要創出が必要です。フェアでは、ジビエの安全性を確保するために、全国のジビエ処理加工施設を紹介するプログラムも用意されています。信頼できる加工施設の取り組みを紹介することで、消費者が安心してジビエを選べる環境を整え、同時にジビエの認知度向上を図る狙いがあります。
(県内初ジビエ加工施設:福島)
福島県郡山市の市街地に県内初の野生鳥獣(ジビエ)の加工施設「ふくしまジビエファクトリー」が誕生した。同市で捕獲したシカやマガモを加工し、隣接するレストラン「四季彩 平山」で提供する。運営する平山真吾さん(40)は「ジビエが苦手な人にも楽しんでもらい、多くの方においしさを伝えていく」と話す。平山さんは猪苗代町出身。料理人として大阪などでの修業を経て、2015年にレストラン「インコントラ ヒラヤマ」を同市に開業、人気を集めた。一方、知り合った農家から野生動物による深刻な食害の状況を聞く中で、自身も新型コロナウイルス禍に狩猟免許を取得。県内では東京電力福島第1原発事故の影響で野生鳥獣を捕獲しても、その肉を利活用できないことに歯がゆさを感じていた。「一番良い状態で食べてもらい、魅力を広めたい」と一念発起し、今年3月にいったん店を閉め、ジビエや自然食材を中心に提供する形態にリニューアル。元々は敷地内の倉庫だった場所に解体室や動物をつるす設備、冷蔵庫などを備えた加工場を整備した。開業に先立ち、施設では県の出荷、検査方針に基づくことを条件に郡山市で捕れたシカを出荷できるようになっており、シカなどを中心に受け入れる。放射性物質検査で安全が確認された肉を処理、熟成させて隣の店で調理し、コース料理で提供する。市内の飲食店や直売所などへの販売も視野に入れている。クマについても、全頭検査を条件に出荷制限が解除されるよう働きかけていくつもりだ。平山さんは「個体個体で違うのがジビエの魅力。おいしくて体にも良い肉を皆さんにもっともっと食べてほしい。地域の資源と命を未来につなげていく」と意気込みを語った。
(クマ出没:宮城)
色麻町によると、3日午前6時40分ごろ、色麻町大原にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
富谷市によると、3日午前0時50分ごろ、富谷市穀田瀬ノ木にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
宮城県警によると、2日午後0時40分ごろ、名取市那智が丘1丁目にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
登米市によると、2日午後7時20分ごろ、登米市迫町新田駒林にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
登米市によると、2日午後2時55分ごろ、登米市登米町日根牛谷木前にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、2日午前9時30分ごろ、栗原市築館下宮野町にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
色麻町によると、1日午後6時15分ごろ、色麻町下高城地区にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
富谷市によると、2日午前4時ごろ、富谷市杜乃橋1丁目にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
宮城県警によると、1日午後7時30分ごろ、仙台市青葉区中山台西にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
富谷市によると、1日午後7時45分ごろ、富谷市富谷大清水下にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、1日午前11時21分ごろ、栗原市栗駒沼倉薬水にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
石巻市によると、10月31日午前11時ごろ、石巻市北村にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
石巻市によると、10月31日午前11時ごろ、石巻市渡波浜曽根山にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
色麻町によると、1日午前11時30分ごろ、色麻町清水地区にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
色麻町によると、1日午前7時ごろ、色麻町北大地区にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
色麻町によると、1日午前6時20分ごろ、色麻町清水地区にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
色麻町によると、31日午後6時30分ごろ、色麻町四竃荒井にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
仙台市によると、31日午後4時30分ごろ、仙台市泉区西田中北屋敷にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
富谷市によると、31日午後4時20分ごろ、富谷市穀田要害にクマが出没しました。
(イノシシ出没:宮城)
登米市によると、31日午後3時30分ごろ、登米市津山町横山宮田にイノシシが出没しました。
(クマ出没:宮城)
仙台市によると、31日午前6時ごろ、仙台市太白区茂庭1丁目にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
仙台市によると、31日午前6時ごろ、仙台市太白区八木山本町2丁目にクマが出没しました。
(クマ出没:宮城)
栗原市によると、31日午後1時ごろ、栗原市築館下宮野町にクマが出没しました。
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