<射撃ニュース12月>
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(クマ駆除で誤射した猟友会隊員に町が1663万円請求へ:山形)
2023年に小国町で、クマの駆除で猟銃を誤射した事故について。町は、弾が当たりけがをした男性に支払った約1600万円を、誤射した隊員に請求する方針であることがわかった。この事故は、2023年4月、小国町の「鳥獣被害対策実施隊」がクマを駆除していた際、猟友会の男性隊員が発砲した弾が、別の男性の右膝に当たり大けがをさせたもの。この事故をめぐっては、被害男性が町を相手どり、慰謝料として3000万円あまりを求める訴えを起こしていて、「誤射した隊員の重過失が認められるか」が争点となっている。一方、町はこれまでけがなどへの補償・賠償金として、被害男性に対し計1663万円を支払っている。しかし、裁判で「誤射した隊員の重過失」が認められれば、町には国家賠償法で、被害男性への肩代わり分を支払わせる「求償権」が生じる。そのため町は今後、「誤射した隊員」と「保険会社」を相手どり、求償金1663万円の支払いを求める訴えを起こす考えで、10日に行われた町議会で関連する議案が可決されている。

(苦渋の決断」なぜ小国町はクマ駆除のハンターを訴えるのか:山形)
【クマ駆除中の誤射事故で山形県小国町が元隊員らに約1660万円の賠償請求へ】。こうした見出しで各社が報じると、全国でクマの目撃が相次ぎ猟友会による駆除が続く中、世論が揺れました。「ハンターの行動に水を差す」「町は何を考えているんだ」ネットに書き込まれるコメントも多くがこうしたトーンです。「お叱りのメールと電話が、きょうも来ました・・・」と町の担当者。しかし、考えてください。小国町もクマ被害に悩む町。その町が、しかも「マタギの町」として”熊まつり”という催しを毎年行って来た町が、ハンターをないがしろにするでしょうか。町はなぜ、ハンターに賠償請求をする方針なのか。その理由を取材しました。ことの発端は、小国町で発生したクマ駆除中の猟銃誤射事故です。町に依頼されて狩猟に出たハンターが猟銃を誤射したとされています。この事故で、誤射した弾に当たり負傷した男性に、町は補償金など約1660万円を支払いましたが・・・、支払ったこの金について町は誤射した元男性隊員と保険会社に支払いを求めて提訴する方針を固めたのです。町議会は12月10日、関連議案を可決しました。こうした町の動きが報道されるや、クマ出没で大変な中、「ハンターの活動に水を差す」と衝撃的に受け取られたわけです。問題の事故は2023年4月9日に起きました。町から鳥獣被害対策実施隊として委託を受けていた隊員の男性が、クマを狩猟する際に猟銃を発砲し、その弾が別のハンターの男性の右膝に当たったのです。負傷した男性は右脚などに後遺症が残る大けがをしました。(狩猟のより詳しい態勢については後述する裁判の訴状から読み取れますが、民事の一方的主張の可能性もあるためあえて当記事で詳細はお伝えしません)。町は、けがや休業の補償などとして、けがをした男性に対しこれまでに1663万円あまりを支払っています。しかし、けがをした男性は、今後のことも考えると補償金が足りないと、町を相手取って裁判を起こしたのです。けがをした男性は今年6月、町を相手取り約3000万円の損害賠償を求めて山形地裁に提訴しました。訴状では、発砲した元隊員が「基本的な注意義務を怠った」として、”重大な過失”があったと主張しています。実はこの「重過失」がひとつのポイントです。けがをした男性の訴訟の相手は町ですが、「誤射した元隊員に重過失があるのか」が争われているのです。そもそも事故のあと町が、誤射した元隊員に「過失があることを認めるか」を聞いたところ、元隊員とハンター保険の保険会社は、「過失を認めない」と返答したといいます。元隊員らが過失を認めないがゆえに、町がけがをした男性に補償金を支払うことになったわけですが・・・けがをした男性は元隊員に「重過失がある」として訴えたのです。では、いよいよ町がハンターと保険会社を訴える理由です。町が今回、元隊員らを提訴する方針を決めたのは、先行して争われている裁判で誤射した元隊員の重過失が認められた場合、すでに支払った1663万円以上の補償金を支払うことになる恐れがあるからです。(3000万円を求めて提訴されているため)同時に、誤射した元隊員の重過失が認められた場合、町が支払った(肩代わりした形になる)補償金1663万円を、町が誤射した元隊員側に請求する権利(求償権)も生じるのです。求償権が発生したのに請求しないというのは、税金を扱う町としては「なぜ請求しないのだ」と批判されることになりかねません。業務を委託した責任はあるにしても、誤射した元隊員と保険会社は非を認めない・・・。こうした事情から町は誤射した元隊員を訴え、裁判で町の立場を述べた上で、元隊員に「重過失があったか」を明確にしてもらう必要性が出てきたのです。町の担当者は「ハンターの活動に水を差す意図はない」と強調します。言ってしまえば、今回の問題はたまたま”クマ関係”だっただけで、町が委託した業務における事故の補償金をどう処理するか、という問題です。「重過失が認められるかがポイントなので、今このタイミングで、町の主張も含めて一緒に審理して解決してもらうことが最適だと思っています」。町の担当者は、最後にこう添えました。「今回の対応は苦渋の決断で、遺憾です。私たちもハンターの皆さんの活動には感謝しています」。

(2025年の世相を表す「今年の漢字」は「熊」)
2025年の世相を漢字一字で表す「今年の漢字」に12日、「熊」が選ばれ、世界遺産・清水寺(京都市東山区)で、森 清範貫主 が 揮毫 した。「熊」が選ばれるのは初めて。

(住宅地の柿の木に熊とどまる、緊急銃猟で駆除:新潟)
住宅地の柿の木にクマがとどまり危険だとして、南魚沼市は13日、自治体の判断で発砲を可能とする「緊急銃猟」を実施し、クマ1頭を駆除した。

(木の上に子グマ、麻酔銃使った“緊急銃猟”で捕獲:富山)
13日午前、富山県立山町で、クマが木の上に登っているのが見つかり、約4時間半後に麻酔銃を使った緊急銃猟によって捕獲されました。立山町によりますと、13日午前11時35分ごろ、富山県立山町下田で、木の上に登っている子グマ1頭が見つかりました。子グマは木の上に留まっていたため、町は周辺住民に対して防災無線などで注意を呼びかけるとともに、警察や消防が周辺を警戒。午後4時すぎに町長が緊急銃猟を許可しました。緊急銃猟の許可を受けて、消防が放水して子グマを地上に落とし、午後4時15分ごろ、ハンターが麻酔銃を撃って眠ったところを、捕獲したということです。立山町での緊急銃猟は2例目です。

(2頭の野生のイノシシが豚熱に感染:秋田)
上小阿仁村で捕獲された野生のイノシシ2頭が豚熱に感染していたことがわかりました。県によりますと、豚熱への感染が確認されたのは先月27日に上小阿仁村で狩猟によって捕獲された野生のイノシシ2頭です。1頭はメス、1頭はオスの成獣です。県内で豚熱の感染が確認されるのは2022年に初めて確認されて以来22例目と23例目で、今年度は4例目と5例目です。豚熱はブタやイノシシが感染する病気です。県内の養豚場で飼育されているブタはワクチンを接種しているため、移動や出荷の制限はありません。また人には感染せず仮に豚熱に感染したイノシシの肉を食べても人の健康に影響はありません。

(豚熱感染イノシシ:宮崎)
宮崎県は11日、都城市山田町と吉之元町、高原町で4日から8日にかけて捕獲された野生イノシシ3頭が豚熱(CSF)に感染していたと発表した。県内での野生イノシシ感染は、4月の初確認から47~49例目。捕獲場所はいずれも経口ワクチン散布エリアのため、新たな対応はしない。

(クマの「緊急銃猟」全国最多は山形)
人里に出たクマを銃を使って捕獲する「緊急銃猟」の制度が9月に始まり、全国で46件が実行された(12月11日午前10時現在、環境省調べ)。都道府県別では、山形の14件が最多だ。人身被害や街中での出没が目立った秋田や岩手よりも多かった。運用を進める中で、課題も見つかった。「箱わなに子グマがかかった。近くに親グマもいる」。11月20日朝6時50分ごろ、寒河江市の職員に、地元の猟友会員から情報が届いた。現場は集落の一角で学校も近い。市の職員、警察官、猟友会員が集まり、緊急銃猟の検討に入った。職員3人が近所の家を一軒ずつ回り、外出しないよう声をかけた。付近の道路を通行止めにして、SNSでも発信。現場の職員らは、環境省のチェックリストを見ながら、実施条件を満たしているかを確認した。バックストップ(弾が止まる場所)として土の急斜面があることも確かめた。斎藤真朗市長も現場へ。最初の通報から約2時間後、緊急銃猟を決め、猟友会員が約20メートルの距離から発砲した。近くの70代女性は「子どもたちが学校の行き帰りで歩くので心配だった。(駆除されて)安心しました」と話した。8月までは、警察官が命令した場合などを除き、市街地では原則、銃猟ができなかった。しかし、それでは増えるクマに対応しきれない。緊急銃猟の制度により、条件を満たせば、市町村の判断で夜間や建物に向けた発砲も可能になった。県内で初めて発砲に至ったのは、米沢市だった。11月7日、山あいの温泉旅館にクマが入り込んだ。近藤洋介市長は別の公務のため、緊急銃猟を判断する権限を市民環境部長に委任。経営者ら家族3人が建物の外に逃げた後、発砲を指示した。クマは、猟友会によって駆除された。11月下旬にも2回、実施した。柿の木にクマが登っていたケースでは、バックストップがなかったため、木から下りていたところを仕留めた。市の担当者は「目撃情報が非常に多い今年は、追い払うだけでは対応できなかった」と振り返る。実は10月にも市長が2頭の緊急銃猟を指示したことがあったが、現場職員の装備や連絡用トランシーバーの調達が間に合わなかったという。この時は、1頭を箱わなで捕獲。もう1頭は庭石の見間違いだった。緊急銃猟の実施件数の多さについて、山形のクマ対策を担当する県みどり自然課の木内(きない)真一課長は「関係機関の連携が取れている」と話す。自治体からの「判断に困る」という声を受け、県と県警は10月、「緊急銃猟タスクフォース」を設置。米沢、酒田、尾花沢など5市町で、担当者らに助言した。訓練の予算も組み、天童市などが県警も交えて訓練をした。事務手続きなどを通じた猟友会との関係づくりや、経験豊富な人にすぐ出動してもらうためのリストも連携に役立っている、と木内課長は見る。市町村のクマ担当者同士も、SNSなどで情報共有しているという。

(県警、クマ対策でライフル銃訓練:山形)
山形県は17日、クマ被害の緊急対策会議を開き、県警の水庭誠一郎本部長が、市町村判断で発砲する「緊急銃猟」での駆除が困難な場合に警察官がライフル銃で対応できるよう、訓練や準備を進めていると明らかにした。今後機動隊などで構成するプロジェクトチームを設置する。県は2025年度一般会計を5300万円増額する補正予算を専決処分した。河川や地域のやぶの刈り払い支援、市町村や県警の装備品購入に充てる。県によると今年の人的被害は12人に上り、統計を取り始めた1977年以来過去最多となった。

(エゾシカ増、車と事故増:北海道)
クマの出没が問題化するなか、北海道では野生の「エゾシカ」による交通事故も、人々の暮らしに影を落としている。昨年は過去最悪の5460件。車の前方に飛び出し、衝突するケースが目立つ。観光で北海道を訪れた人も事故に遭っており、注意が必要だ。

(不要果樹の伐採・処分費を補助:山形)
相次ぐクマ出没などの野生鳥獣被害対策として、山形市は11日、不要果樹の伐採・処分費を補助すると発表した。

(シカ目撃増加、今後の対策は:秋田)
有識者や国、青森、秋田両県の関係者で組織する白神山地世界遺産地域科学委員会は12日、秋田市の東北森林管理局で会合を開いた。近年目撃や撮影事例が増え、生態系への影響が懸念されるニホンジカについての調査内容などを報告、今後の対策について意見交換した。

(鳥獣被害対策 クマ23頭を捕獲、イノシシは521頭:新潟)
上越市内で今年4月から11月末にかけて捕獲されたクマの頭数は23頭で、昨年4月から今年3月までの捕獲頭数(15頭)を上回っていることが分かった。11日の市議会一般質問で、小菅淳一市長が草間和幸氏(久比岐野)の質問に答えた。イノシシは、4月から10月末までに捕獲された頭数が521頭。昨年4月から今年3月の合計は962頭となっている。小菅市長は「猟友会による積極的な活動で捕獲対策は着実に成果を上げている。人身被害、農作物被害の発生の抑制に大きく貢献していると考えている」と述べた。イノシシは水田を走り回ったり畑を掘り起こしたりして、農作物への被害が深刻になっている。市が昨年度行った調査によると、鳥獣による被害面積は19・8ヘクタールで、農作物被害のあった面積は10・6ヘクタールに上った。9割程度をイノシシによる被害が占めている。

(クマ出没が「企業活動に影響」400社超)
各地でクマの被害が相次ぐなか、企業活動にクマの影響があると答えた企業が400社を超えたことがわかりました。東京商工リサーチの調査によりますと、クマの出没が日頃の企業活動に影響があると回答した企業は414社でした。具体的には「従業員への周知や啓蒙に迫られた」「被害防止のための投資が必要になった」が多かった一方、「イベントの延期・中止」「来客・受注の減少」など実害も出たということです。業種別でみると宿泊業が最も多く39.1%、次いで、電気・ガス・水道業21.7%、飲食料品小売業21.2%となりました。地区別では東北と北海道が突出していますが、クマの絶滅宣言が出ている九州でも「影響がある」と回答した社があったということです。

(クマ対策で春期管理捕獲の経費支援:北海道)
道は12月12日の道議会に、29億2000万円余りの一般会計補正予算案を追加提案すると発表しました。クマ対策推進費として4000万円を計上し、市町村が「春期管理捕獲」を行うための経費を支援します。

(シカ事故調査「ポスター賞」:北海道)
北海道開発技術センター(札幌)が主催した「第25回『野生生物と交通』シンポジウム」で、義務教育学校市立海星学校の児童が制作したポスターが「ポスター賞」に輝いた。急増するエゾシカと車の衝突事故について調べた作品で、大学や研究機関などに交じっての快挙となった。

(マダニ大量発見、感染症は全国で過去最多に:福岡)
「シカが出没する福岡県内の公園でマダニが多く見つかった」。西日本新聞「あなたの特命取材班」に、ボランティアの男性から声が届いた。県内ではシカやアライグマなどマダニが寄生する野生動物が増加。動物に運ばれる形で都市部にも脅威が迫っているという。マダニが媒介するウイルス感染症は今年、過去最多を更新しており、識者は注意を呼びかけている。投稿を寄せたのは、害獣の調査や啓発に取り組む団体「アライグマ防除研究会」の代表、菊水研二さん(64)=福岡市。森林総合研究所(茨城県つくば市)の「シカが多い地域の森林ほどマダニの数が多い」という調査結果を知り、福岡都市圏でシカが生息する山の周辺を7~9月に調査した。シカのふんが見つかったのは古賀市の薬王寺水辺公園や福津市の本木川自然公園「ほたるの里」、久山町の町総合運動公園など。いずれも周囲の草むらから、計20匹以上のマダニを捕獲したという。県が2020年度に実施した調査によると、シカは福岡都市圏東部に隣接する犬鳴山などに約2万7400頭が生息すると推定。アライグマは繁殖力が高く、昨年度の発見件数は5825頭と10年前の16倍に急増した。生息域は福岡市などにも広がっており、菊水さんは「シカやアライグマが増えることで、マダニが山間部から市街地へ運ばれる」と懸念する。マダニの生態に詳しい山口大の早坂大輔教授(ウイルス学)によると、マダニは山林や草むらで葉の裏に潜み、通りがかった動物や人間に移って数日から10日ほどかけて吸血する。ウイルスを保有する場合は感染症を媒介することもある。感染症の中で近年増加が目立つのが「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」。発熱や嘔吐(おうと)などの症状がみられ、死に至ることもある。国立健康危機管理研究機構は9月、今年の患者数が過去最多の161人に上ったと発表。県内では9月21日までに5人が発症し、過去には死亡例もある。SFTSはこれまで発症者がいなかった地域でも確認されるようになったといい、早坂教授は「宿主となる野生動物の行動範囲が変化するのに伴い、マダニの出没地域も広がっている」とみる。マダニの対策としては、肌の露出を避けることや、山林や草むらで活動した際に付着していないか確認すること、ペットの状態もチェックすること-などが挙げられる。「身近な場所にマダニがいるかもと思って行動してほしい」。早坂教授は警鐘を鳴らす。

(ドローンでクマ探索、高専が研究:岩手)
一関高専(小林淳哉校長)は、草むらや林に潜むツキノワグマを赤外線カメラ搭載のドローンで探索する研究を進めている。クマは河川敷の草むらなどに隠れて人の生活圏に近づくため、早期発見して機先を制する。学校敷地内のクマパトロールの支援に活用しながら技術を高め、地域のクマ対策に役立てる。11日は職員5人が学校敷地内で撮影テストを実施。赤外線カメラ付きのドローンを高度20~30メートルに飛ばして草地を撮影すると、動き回るクマ役の職員の様子がはっきりと映し出された。ドローンは、北海道の函館高専でヒグマの探索やメガソーラー発電所の太陽光パネルの発電効率チェックなどに使っていたもので、今春の大船渡市の大規模林野火災後は残った火種の発見にも活用された。

(市街地出没「アーバンベア」冬眠しない?)
クマが人を襲う被害が深刻化するなか、市街地に出没する「アーバンベア」が冬眠しない可能性が出てきた。人里で冬場も餌を確保できるためだといい、被害拡大が懸念される。環境省によると、北海道に生息するヒグマの個体数は約1万2千頭、本州や四国に分布するツキノワグマは約4万2千頭以上とみられるが、正確な状況は把握できていないのが実情だ。そのため、東京農業大の山崎晃司教授(動物生態学)は「生息状況には地域差があり、一概に駆除か保護かで決められる問題ではない」と個体数管理の難しさを指摘する。クマは11月下旬から12月ごろにかけて冬眠するとされている。冬眠によって飢えを抑え、エネルギーを節約して餌が少なくなる冬を乗り切る。しかし、山崎氏によると、市街地で冬場でも継続的に餌を確保できるようになったアーバンベアは、「12月末から翌年1月初旬まで活動する可能性も否めない」という。冬眠時期が先送りとなれば、年末年始にも被害が拡大する恐れがある。また、冬眠で一時的に被害が収束しても、抜本的な手立てを講じなければ、将来的に危機は繰り返される可能性がある。山崎氏は「個体数や生息域の調節は必須だが、生物多様性の視点も欠かせない。自治体は頭数管理やデータ分析を担う専門職を置くなど、中長期的な対策を考える時期に来ている」と話した。

(シカ食害で森林は「ギリギリの状態」、防止柵効果を市民参加で検証へ)
シカの侵入を防ぐ柵を設けることで、森林や草原の生態系はどう変化するのか――。市民に調査を担ってもらい、全国50カ所以上の写真や試料を集めて分析する研究プロジェクトを若手研究者が計画している。各地でシカが増え、植物を食べ尽くす食害が問題になっている。希少な種や生物多様性の喪失につながるほか、森林に備わる水源や炭素貯留の機能が損なわれかねない。「全国規模で調べることで効果的な設置方法を探り、保全を後押ししたい」という。プロジェクトに取り組むのは、九州大の阿部隼人助教(28)と京都大、東京大の生態学が専門の研究者。11月下旬から1月19日まで、費用をクラウドファンディングで募っている。調査は、柵の内側と外側で植生や土壌の状態を比べる。シカ対策にかかわる地域の団体や学校、企業の関係者など、広く参加者を募って調査キットを配布。1地点あたり5カ所で、写真撮影、植物の高さや密度などの簡単な計測、土壌の採取などをしてもらう。送り返された土は、成分や微生物のDNAなどを研究者が分析する。参加者は春から募り、秋の調査を目指している。こだわったのは、この「市民参加型」の研究スタイルだ。それぞれの研究者は、九州、近畿、北海道などでシカと生態系の研究を続けてきた。ただ、得られた研究成果がほかの地域で通用するとは限らない悩ましさがあるという。柵の内側では植生の回復が期待されるが、効果の程度は場所の条件によって異なる。特定の植物ばかりが繁茂し、かえって多様性が損なわれるケースもある。設置や維持管理にも手間と費用がかかる。それぞれの地域が手探りで取り組んでいるのが現状という。そこで同じ調べ方で得た多数のデータをもとに、柵の設置手法の一般化を目指す。科学的な根拠ができれば、行政も設置を後押ししやすくなる。関係者の横のつながりをつくること、地域の生態系の状態を知ってもらうことも目的だ。「研究者にできる範囲は限られる。現場を知る人同士のコミュニティーをつくりたい」と阿部さんは言う。シカの食害は、駆除などで数を減らしていくことが根本対策になるが、ハンター確保などの課題もあって時間がかかる。柵ならすぐに手を打てる。食害で地面がむき出しになり、土が流されてしまうと、回復には長い時間がかかる。ただ、小さな範囲でも守れれば、そこから生態系が復活する道筋は残る。「各地で森林や草原が荒れていて、生態系の姿が変わってしまうギリギリのところにある。プロジェクトを通じて現状を伝えたい」。

(クルマを運転中「クマ」に遭遇したら?)
例年以上にクマによる被害が報告されている2025年。人里離れた場所だけではなく、市街地でも出没例が報告されていて、冬眠の時期もずれているらしい。そんな昨今、もしドライブ中にクマと遭遇してしまったらどうせればいいのか。環境省などでは、落ち着いてクマを刺激しないことがいちばん重要とアナウンスしている。まだクマが遠くにいるうちに気づくことができた場合は、落ち着いて静かにその場から離れるのが最善。クラクションを鳴らしたり、エンジン音を高めたりするのは、クマを刺激してしまう恐れがあるので、極力避けたほうが無難。急ブレーキ、急加速もNGで、ゆっくり静かにUターンするか、ゆっくりバックして距離をとるようにしよう。光もクマを刺激し、興奮させる可能性があるので、ヘッドライトをアップにしたりパッシングしたりするのは厳禁。カメラのフラッシュなどもNGだ。もう少し近い距離でクマに出会ってしまった場合は、クルマを緩やかに止め、すべての窓をしっかりと閉めて、クルマから決して降りないこと。写真を撮りたい、もっと近くで見たいといった好奇心はもってのほか。エンジンをかけたまま停車して、クマが立ち去るのを待つしかない。クマがクルマに気づくと、威嚇突進といって、一度こちらに向かってきて、すぐに立ち止まって引き返す行動を見せることがあるそうなので、こちらに気づいて近づいてきたとしても慌てないこと。急にクルマを動かしたりすると、クマが興奮して攻撃的になる場合もあるし、逃げるものを追う習性もあるので、クマが立ち去るのを待つのが一番。クマの姿が見えなくなったら、ゆっくりクルマを動かして現場を通り過ぎるようにしよう。クルマでクマに遭遇してしまったときは、なるべく手前で距離をとって、慌てず、クマを刺激しないこと。この3つが鉄則で、窓を全閉にしてクルマから降りず、クマがいなくなるのを待つしかないと覚えておこう。

(ツキノワグマの目撃下関で21件、対岸の北九州市に「クマはいるのか」と問い合わせも)
東北地方を中心に東日本でクマによる被害が深刻化する中、山口県内でも今年度、ツキノワグマの目撃件数が372件と高い水準で推移している。九州に最も近く、出没が少ないとされてきた下関市での目撃情報は21件で、ここ4年間で最多となった。クマが「絶滅」したとされる九州では、関門海峡を挟んで隣接する同市の状況を注視している。山口、広島、島根の3県にまたがる西中国山地には、ツキノワグマが生息している。山口県自然保護課によると、記録が残る1997年度から2017年度までは、400件前後の年も数回あるものの100件前後の年が多かった。だが、18年度以降は200件を切ることがなくなり、23年度は最多の444件に。24年度はその倍近い799件に急増した。今年度も今月5日時点で372件と高い水準が定着しつつある。県内では岩国市や周南市の一部など県北東部が、恒常的な分布域とされてきた。だが、近年は中部の山口市や西部の下関市でも複数の目撃情報が寄せられるようになり、生息範囲は広がりつつある。特に下関市での目撃情報は、市が記録を残している22年度が6件、23年度は8件だったが、県内全域で増えた24年度は18件に。昨年9月には、空き家に入り込んだクマが木の台を両手で払いのけたり、壁をたたき壊したりする様子を市設置のカメラが捉えた。今年度(今月2日まで)はすでに21件と前年度を上回っている。県内では昨年、周南市の里山で男性がクマに頭を引っかかれて大けがを負う被害も出た。今年はまだ人身被害はないが、山口市と周南市で7~8月、車とクマの衝突事故が起き、人が住む地域への出没が懸念されている。山口市吉敷地域では、10月の1か月間で5件のクマの目撃情報が寄せられたが、うち1件は同市立 良城りょうじょう 小(760人)の近くで目撃されており、一時期、教員が見守る一斉登下校と、県警山口署員によるパトロールが実施される事態となった。本州最西端の山口県でも西側の地域で目撃が増えていることもあり、狭いところでわずか約650メートルの関門海峡で隔てられた九州の玄関口・北九州市でも下関市での出没情報に注意を払っている。北九州市は全国的にクマ被害が報じられた23年12月から、市内での出没に対する市民の不安を解消するため、市のウェブサイトに被害を防ぐ自衛策を掲載した。今年は東日本の深刻な被害を受け、「北九州にクマはいるのか」という問い合わせも寄せられているという。下関市などで目撃例が増えていることについて、クマの生態に詳しい東京農工大の小池伸介教授(生態学)は「昔は山奥にしかいなかったが、全国でクマの分布域は広がっている。山口県でも人が住むすぐ隣にクマがいるという状況になっている」と指摘する。クマが九州に渡る可能性については、「泳ぐ能力はあり、東北で沿岸の島に数百メートル泳いで渡った記録もある」とした上で、「渡った先の北九州市沿岸部には森がない。なかなか定着できないのでは」と推測する。北九州市鳥獣被害対策課も、クマが海を渡るには下関市街地を通る必要があるほか、関門海峡は流れが速く、船の往来が多いことから泳いで九州に渡ってくる可能性は極めて低いとみている。九州で最後にツキノワグマが確認されたのは1957年。87年には大分県の山中で捕獲されたが、DNA鑑定の結果、本州から連れて来られたか、その子孫と判明した。環境省は生息した確実な記録は57年が最後とし、「すでに絶滅の目安となる50年以上経過している」として2012年に「絶滅」の判断を下した。九州でのクマ絶滅について、クマの生態に詳しい森林総合研究所東北支所の大西尚樹・動物生態遺伝チーム長は「1800年代にはすでに九州にほとんどいなかった」と指摘する。背景には江戸時代に燃料とされたまきを大量に取るために、人々が木を伐採したことがあるといい、「その頃にははげ山が多くなっていた」と説明。九州では植林の際、クマが餌とするドングリなどが実る広葉樹から針葉樹の人工林への置き換えが進んだため、生息しにくくなったという。

(「放置柿」でクマ誘引、法的責任は?)
クマによる人身被害が過去最悪となった今年(11月末時点で被害件数209件、被害人数230人)、人の生活圏にやってきたクマが柿の木に居座る様子を、報道などで目にする機会も多かったのではないだろうか。12月は、本来ならクマの冬眠シーズンに入っているはずだ。しかし、4日には、長野県の野沢温泉で除雪作業中だった70代の男性がクマに襲われ、顔や足にケガを負う事故が発生するなど、依然として人の生活圏へのクマ出没は続いている。クマは、寒さを理由に冬眠するのではなく、食べ物がある限り活動を続けるという。高齢化や過疎化などによって、食べごろになっても収穫されない「放置柿」は、クマ誘引の一因として問題視されているが、対策には法的な壁も立ちはだかる。11月下旬、都内在住の会社員Aさんは東北新幹線で東京から仙台へ向かっていた。大宮を過ぎ、徐々に景色がのどかになっていく中、完熟した柿の実がたわわになった木が点在していることに気がついたという。「ちょうど紅葉の時期だったので、北に行くにつれて木々の赤や黄色が濃くなっていくのを楽しみながら車窓を眺めていました。すると、あちこちで、どう見ても収穫期を過ぎた柿の実が大量になったままの木が目についたんです。誰も収穫する人がいないのかもしれませんが、もったいないと思うと同時に、今年は連日クマ関連の報道を目にしていたので、『こんなにたくさん放置されていて大丈夫なんだろうか』と心配にもなりました」(Aさん)。こうした柿は「放置柿」と呼ばれる。法律上、柿の実の所有権は柿の木の所有者にあるが、過疎化や高齢化などによって収穫されないまま熟れてしまう放置柿は、クマなど野生動物による獣害をもたらすリスクを高めることから、各地で問題となっている。柿の実を収穫せずに放置すること自体が違法行為に直結するわけではないが、クマ被害が深刻化する中、特に出没情報が多い地域では、近所に放置柿があれば不安に感じる人も少なくないだろう。しかし、近隣トラブルなどに詳しい遠藤知穂弁護士は、不安だからといって第三者が勝手に柿の実を採ったり、柿の木を伐採したりすることには「刑事・民事どちらの観点からも法的な問題がある」と指摘する。「まず刑事的な観点から、第三者が勝手に柿の実を取ることは窃盗罪(刑法235条、10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)に、柿の木を伐採することは器物損壊罪(刑法261条、3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金もしくは科料)にあたります。そして民事的な観点では、いずれの行為も、柿の木(および柿の実)の所有者から不法行為責任(民法709条)を追及される可能性があります」。では、放置柿を収穫・伐採するのが行政であればどうか。遠藤弁護士は、「たとえば、クマ対策として行政が柿の実を採れる、柿の木を伐採できるといった条例があれば別ですが、そのような条例がなく、所有者本人の同意も得られない場合、法的な根拠なくこれらを実施することは難しいと思います」と述べる。現状、放置柿をめぐっては、伐採費用の助成金制度を設けるなどの対策にとどまっている自治体が少なくない。根本的な対策として収穫・伐採に踏み込めない背景には、法律の壁があることもうかがわれる。クマ被害に遭ったら「放置柿の所有者」「行政」の責任問える?結局のところ、現状としては柿の木(および柿の実)の所有者が責任を持ち、放置柿を生まないよう適切に収穫・伐採するのが原則となる。そうである以上、もし放置柿がクマを誘引し、人身被害が発生した場合、被害者は所有者に損害賠償請求することができるのだろうか。遠藤弁護士は、「そのクマが放置柿に誘引されたのだということを証明するのは難しく、因果関係が認められないのではないか」と、損害賠償の難しさを指摘する。また、行政の責任を問う場合は国家賠償請求の訴えを提起することになるが、所有者への損害賠償請求と同様、被害と行政の過失との因果関係が認められない可能性が高いという。加えて、前述したように「行政が放置柿を収穫・伐採できる」との条例があれば話は別だが、現状の法律の枠組みでは行政がそれらを勝手に行うことはできない。よって、「行政がすべきだったと言える行為が想定しづらいことも、国家賠償請求が認められないのではと考える理由のひとつ」だと遠藤弁護士は話す。クマによる人身被害は、もはや従来の手段では食い止めることができないところまで来ていることは、多くの人が感じているだろう。放置柿の問題も含めて、抜本的な対策が求められている。遠藤弁護士も、「条例などがあれば、行政ができたこと、すべきだったことが明確化される。まずは行政が対策を取れる仕組みづくりが必要なのではないか」と指摘した。

(クマが人を襲う理由とは?)
今年、日本各地でクマによる人身被害が深刻化しています。環境省の発表によると、今年4月から10月末までの間にクマの被害に遭った人は11月時点で全国で196人に上り、そのうち13人が死亡するという痛ましい事態となっています。特に秋田県では10月だけで37人が被害に遭うなど、統計開始以来、最も被害者数が多かった2023年度を上回るペースで増加しています。かつて山奥に生息していたクマが人里に現れるようになった背景には、何があるのでしょうか。さまざまな情報が飛び交うなかで、「わかっていること」と、「わからないこと」とは? 長年にわたり、クマをはじめとする大型野生動物の生態を研究している東京農業大学教授の山﨑晃司さんに訊きました。日本には主に2種類のクマが生息しています。北海道には「ヒグマ」、本州には「ツキノワグマ」が分布しています。四国には約30頭のツキノワグマが残るのみで、九州では1940年代に絶滅してしまいました。山﨑教授によると、クマは食肉目に分類されていますが、見た目とは異なり雑食性であり、地域にもよりますが食べ物の8割から9割は植物質だといいます。「体に見合わず果実とか、草の葉っぱとか、あるいは花なんかを食べている、そういう動物です」と山﨑教授は説明します。ヒグマとツキノワグマでは生態にも違いがあります。ヒグマは開放的な環境に適応していて、大人になると木に登るのが苦手です。一方、ツキノワグマは「樹上生活がすごく得意で、短い爪をスパイクみたいに使って木にスルスル登っていき、木の上にある果実や花、葉っぱを他の動物が食べられない場所で食べる」という特徴があります。クマの出没件数、人身被害件数、捕獲されたクマの数はいずれも右肩上がりで増加しています。しかし山﨑教授は「それが異常ということではなく、起こり始めたのは実は2000年代初頭。もう20年ぐらいこの状況が続いていて、十分予測できる話なので、今年が異常だということではない」と指摘します。地域別に見ると、2023年と2025年のクマによる被害が最も多かったのは北東北(秋田県、岩手県、青森県)で、特に秋田と岩手で顕著だったといいます。「西日本は今年も落ち着いているので、本州全体でクマが暴れ回っているという印象を皆さんが持たれるのは事実として正しくない」と山﨑教授は説明します。確かに北陸地方や東京でもクマの出没が報道されましたが、山﨑教授によれば「背景としてはクマの分布域と、それに伴って個体数も増えているのは確かなので、北陸であろうと東京であろうと、傾向としてはそういうことはあると思うが、東北のような状況にすぐになるわけではない」とのことです。クマが人里や街中に出没する理由については、いくつかの要因が考えられます。山﨑教授は「よくテレビなどでは柿や栗の木が人家周辺にあって、そこにクマが執着している映像が出ていますよね。あれは一つの大きい要因だと思います」と説明します。しかし、近年特に注目しているのは農地の管理状況だといいます。「やはり農地がきちんと管理されていない場所があって、そういうものが広大なクマの餌場になっている可能性がある」と山﨑教授は指摘します。東北の具体例として、水田の代わりにソバや大豆を作付けしている場所が、適切に管理されていないケースがあるといいます。「そうなると山の中よりも集落周辺の方がクマにとって住みやすい場所になってくる。その先はもう市街地ですから、市街地に飛び出てくるクマが確率的にどんどん増える」と山﨑教授は危惧します。さらに、「もしかしたら山の中よりもその集落周辺、いわゆる山裾の方がクマの密度が高くなってきているのかもしれない」という仮説も提示します。メガソーラーの開発がクマの出没に影響しているという説については、山﨑教授は「メガソーラーが直ちに山の状況を変えて、結果としてクマの出没を促進しているかというと、それは証拠をもっては言えない」と、慎重な見解を示します。また、森林環境については「1970年代初頭ぐらいまでは拡大造林のような戦後の復興のための杉や檜の植林が国の施策で行われていたが、それ以降はそんなに山を改変していない。1970年と考えるともう50年以上は山の状況が大きく変わっていない」と説明します。むしろ変わったのは「集落周辺」だと山﨑教授は指摘。過疎化や高齢化の進行によって、人とクマとの接点となる場所の環境が変化しているというのです。気候変動の影響については「全然影響がないとは確かに言えないと思う」としながらも、「ものすごく短期的に見れば、今の東北みたいなところで積雪がどんどん減っていますよね。あるいは雪の時期が降雪して積雪になる時期が後ろにずれるとなると、林床という森の床の部分に落ちた木の実などをクマが晩秋や初冬まで食べることができる」と説明します。もう一つ大きな要因として山﨑教授が挙げるのが、ハンター(狩猟者)の減少です。「これまでは趣味の狩猟のほか、いわゆる東北のマタギのような人たちが山の中でクマを追い立てて捕る狩猟によってクマにプレッシャーをかけること、人は怖いんだと教えることと、ある一定のクマの数を捕って全体の数を抑制してきたが、それがもうできない状況」だと説明します。「ハンターになる人が若手にほとんどいなくなってしまった。今活動しているハンターの平均年齢もおそらく70歳や80歳になっています。今市街地などでクマが出ると、オレンジ色のベストを着たハンターの方が出ていますが、皆さんお年寄り」という現状があります。クマが人を襲うケースとしては、大きく2パターンあるといいます。一つ目は、クマが「自分でもよくわけがわからない状況に追い込まれてしまって、手当たり次第に目の前にいる人を襲って自分の逃げる道を確保しようとしている場合」で、これはパニック状態だと山﨑教授は説明します。もう一つは「すごく特殊なケースで稀」だとしながらも、「自己防衛のために人を襲った結果、人が亡くなってしまうと、その後に山で落ちている動物の死体と同じように食べ物として扱っちゃう場合がごく稀にある」と説明します。そして人がクマを引き寄せてしまう行為として特に問題なのが、餌付けや残したゴミなどだと山﨑教授は指摘します。「クマは頭がいいんですよ。学習能力はものすごいので、何かと何かを結びつけて、人に近づけば食べ物が手に入る、キャンプ場に行けば手に入るとか、人がザックに入れているお弁当を食べることを覚えるとか、そういう風になってきちゃうと人に積極的に近づいてくるクマが出てくる可能性がある」と警告します。「クマに食べ物を投げる、パンやソーセージを投げるなどの行為は知れたところでは時々あったんですけど、そうなるとクマは人と食べ物の連想を覚えちゃって、それがエスカレートすると人が怪我をする、あるいはテントを壊されるとかということになる」と説明します。山でのクマとの遭遇について山﨑教授は「山の中のクマは比較的穏やかなんです。登山者がクマを刺激したり、ある一定の距離を保って無理に近づいたりしなければ、普通はクマが立ち去ってくれます」と説明します。ただし「最近北アルプスなどで登山者のザックを狙ってくるクマとか、あるいは山小屋周辺に出てくるクマとかがいるという話も聞いているので、一部のクマは行動を変えている可能性がある」とも指摘します。「クマの嗅覚はものすごい。一般的に犬は人間の数千倍から1万倍以上と言われていますが、クマの嗅覚はその犬よりも数倍優れている」。山崎教授は警告します。「お弁当の中の海苔の匂いとかお米の匂いとかを覚えちゃうと思うんですよね。だから1回そういうものを食べちゃうと、テントの中にあっても、あるいはザックの中に入っても匂いが出ちゃうので、近寄ってくる可能性がある」。登山時の鈴の効果については「山の中では有効だと思います。クマによっては鈴の音がしても気にしないクマもいるかもしれないけれども、それよりはそれを気にして人間の接近に気がついて立ち去ってくれるクマの方が多いので、持たないよりも持った方がずっといい」とアドバイスします。現在政府が発表しているクマ対策のパッケージについて、山﨑教授は「とりあえず個体数を減らそうというところ」だと説明します。「集落周辺のクマを一回押し戻さないといけないのでやらなくちゃいけないんですけれども、短期であったり、さらに中期で言うとクマをこれ以上集落に引き寄せないための環境整備をきちんとしていかないといけない」と強調します。「とにかく今の状況だと一回クマを減らさないといけないんですけど、それを延々と続けていくわけではなくて、その効果を検証しながら、同じことが起きないようにするための努力をする」ことが重要だと指摘。山﨑教授は見通しも示してくれました。「来年はきっと少し落ち着くと思うんです。なぜなら2023年の翌年の2024年はある程度落ち着きました。その時に何ができるかなんですよね。また喉元過ぎれば忘れちゃうと、同じことが今度2027年に繰り返したら、ずっと右肩上がりで進んじゃいますよね。来年は何とかしたいなという風に思います」。個人でできる対策としては「自分の自宅周辺で管理できる食べ物、つまり庭先の柿の実とか、取り残しの農作物とか、あるいは家で作るコンポストなんかもクマを呼んじゃうので、そういうものは管理した方がいい」とアドバイスしています。

(“人を襲った経験”がクマを凶悪化させる)
クマの出没や人身被害が急増する昨今。どうすれば危険を回避できるのだろうか。『日本クマ事件簿』『ドキュメント クマから逃げのびた人々』(ともに三才ブックス)の編集・執筆を手掛けた風来堂が、当事者や識者を取材して得た、クマの生態や命を守るためにできる知識を紹介する。クマと人間が出会う場所は、里山から郊外、市街地へと移り、今年はその傾向が一段と強まっている。環境省によると、クマに襲われて死亡した人は13人、被害件数は209件・230人(12月5日時点)と、記録が残る2006年度以降の同期比で過去最悪だ。本来、人を避けて暮らす臆病な動物のはずが、なぜ人を襲う事態が相次いでいるのか。その背景には、飢えだけでは説明できない行動の変化や、人との距離の失われ方があるという。これまでも「クマの出没が増える年」はあった。その際にしばしばいわれるのが「ドングリなどの餌不足」だ。確かに山の実りが少ないと、生きるために食べ物を求めてクマは人里に下りてくる。これは従来通りの行動だ。しかし、今やすべての被害を飢えだけで説明することはできない。2025年7月、岩手県北上市の住宅にクマが侵入し、居間にいた女性が襲われ、命を落とした。加害クマの胃の内容物は、3分の2が米で、残りの3分の1が草であり、脂肪もついていた。栄養状態は良好だったという。つまり「餌がなくて仕方なく人を襲った」のではなく、「すでに人の生活圏で食べ物を得ることを学習した個体」だったと、同個体を解剖した岩手大学農学部の山内貴義准教授は指摘する。「本来クマは草や木の実を主に食べる雑食性の動物です。シカやイノシシなどの死骸を口にすることはあっても、人を獲物として襲うケースは極めて稀です」(山内さん)。かつては開け放たれた納屋や家屋に偶然入り込む程度だったが、近年は、人がいても逃げず、冷静に侵入を繰り返す個体が確認されている。「冷蔵庫の取っ手を開けて米を食べた」「同じ民家に再び侵入した」、そんな報告もある。人間の生活圏で餌を得る“成功体験”を積むことで、クマは恐怖心を失い、行動が大胆になる。山内さんは「コソ泥が凶悪犯に変わるようなもの」と表現する。先の加害クマも、人を襲う目的で家に入ったのではなく、食料を探して侵入したとみられている。事件の数日前には別の家の廊下で米を食べていたことも確認されている。つまり、人間を標的にしたのではなく、たまたま鉢合わせてパニックに陥り攻撃に転じた可能性が高いというわけだ。間を捕食目的で襲うことはほとんどない。しかし、過去に人を襲った、あるいは人の死肉を食べた経験をもつ個体は違う。2016年5~6月、秋田県鹿角市と青森県新郷村にまたがる十和利山の山麓で、タケノコ採りに入った人々が相次いでクマに襲われた。いわゆる「十和利山熊襲撃事件」だ。被害は死亡4人、重軽傷4人にのぼり、本州では最悪規模、国内でも過去3番目の深刻な獣害とされる。山内さんによれば、加害個体の胃から人の肉片や頭髪が確認されている。最初の襲撃は偶発的だった可能性があるものの、後半の事例では「クマが人に向かっていった」という証言もあるという。きわめて稀ではあるが、人を襲うことを学習した異常な個体が出現した可能性を示唆している。「“人を襲って食べた”という経験が、クマの行動を大きく変えてしまうんです。一度それで食料を得られると学習した個体は、再び襲う可能性が高い。そのため、こうした個体は早期に捕獲・駆除する以外にないんです」(山内さん)。近年、クマが人の生活圏に現れるのは、複数の要因が重なった結果だ。まず山の餌不足。さらに過疎化や高齢化で耕作放棄地や空き家が増え、里山の管理が弱まり、山と人里の境界が曖昧になったこと。放置された柿やクリの実は誘引源となり、ハンターの減少や、保護政策による個体数の回復も拍車をかける。こうして人の生活圏で餌を得る“成功体験”を重ね、人への警戒を失って市街地周辺に定着するクマを「アーバンベア」と呼ぶ。結果として、人との距離が縮まり、遭遇件数と事故のリスクは高まる。さらに危惧されるのは、出没が秋だけの問題でなくなることだ。人里で冬も十分に餌が得られる状況が続けば、冬眠しない個体が出てくる可能性がある。人を襲うかどうかを決めるのは、クマの本性ではなく経験だ。そしてその経験を与えるのは、私たち人間の行動にもかかっている。恐れるべきはクマそのものではなく、「クマに学ばせてしまう人間の環境」ともいえるのではないだろうか。クマは本来、豊かな森林環境をつくる重要な野生動物だ。だからこそ、人の生活圏と山の行動圏を分け、クマを本来の生息域に押し戻す「棲み分け」を徹底し、問題個体を生まない環境を維持することが要となる。草刈りによる見通し確保、放置果実や生ゴミの管理、建物や倉庫の戸締りの徹底…。「人を襲うクマと襲わないクマの違い」とは、突き詰めれば、人間がどれだけ“学ばせない環境”を維持できるかにかかっているのではないだろうか。

(クマは“緑のトンネル”を通って街に降りてくる?)
街中や住宅街へのクマの出没が相次ぎ、玄関を出た直後に襲われたケースさえある。クマはどこから、どうやって人の暮らしの場に入り込むのか。共通点は「身を隠せる導線が連続している」こと。河畔林や草むら、放置地の茂みが“緑のトンネル”となり、山から市街地までクマを導いている。「クマは基本的に川沿いや草むらなど、身を隠しながら移動できるルートを通って人里へ下りてきます」。岩手大学農学部でクマを研究する山内貴義准教授はそう説明する。河川の周辺に生い茂る森林、いわゆる「河畔林」は、野生動物たちの通行路になりやすい。市街に通じる川沿いに山から下りてくるのだ。「草が繁って見通しが悪くなるほど、クマにとっては安心できるルートになります。餌を探しながら河畔林づたいに移動した結果、そこがたまたま市街地だったというわけです」(山内さん)。実際、富山県立山町では2025年10月20日朝、ごみ出し中の80代女性がクマに背後から突き飛ばされ負傷。現場は常願寺川の河川敷から約200mの地点で、周辺には足跡やフンも確認された。市街地近くまで続く河畔の緑地が、導線になった典型例だ。今年のように山の餌が不足した年は、この動きがいっそう顕著になる。ドングリなどが不作だと、クマは生きるために人里へ下りざるを得ない。山内さんは、過去の調査結果をこう説明する。「同じく凶作だった2年前、本学の学生が河畔に自動撮影カメラを設置して出没状況を追ったところ、街中に近い場所で親子グマの映像が非常に多く記録されました。山に餌がないため、親グマが一時的に町まで下り、そこに『食べ物がある』ことを経験したのだと思います」母グマに連れられて里に下りた当時の子グマは、約2年で成獣になる。「2年前の凶作時に子グマだった個体が成長し、学習したルートをたどって再び自分の足で里に戻ってきたとみるのが妥当でしょう」と山内さんは指摘する。こうして、生まれたときから里に下りることをためらわない「アーバンベア」が常態化しつつある。山の外を「危険な場所」と認識しないまま成長した個体が増えることで、人との接触機会は必然的に多くなり、遭遇リスクは高まっていく。「以前は山の中腹や林縁で捕獲していましたが、今はもう“平場”です」。そう話すのは、クマ用箱罠を製造する栄工業の山村則子さんだ。「畑や工場の敷地、道路脇など、人のすぐ近くで捕まるケースが本当に増えました。今年は例年以上に問い合わせが多く、出荷数も急増しています」(山村さん)。栄工業の箱罠はドラム型で、内部に引っ掛かりが少なく、捕獲後に爪やキバを傷めにくいのが特徴だ。かつては、捕獲しても駆除せずにクマの嫌がる刺激を与えて山に戻す「学習放獣」が主流だったため、フィールドに返した後も自活できるよう、傷を負わせない設計が重視された“やさしいワナ”だ。「いわゆる獣道といいますが、クマは同じ道を繰り返し通る習性があります」と、自身もハンターである山村さん。「罠を置けばかかるものではなく、まずは餌付けが必要です。動物は通い慣れた道に異物があると警戒して近づきません。まずはセンサーカメラで『どこから来るか』を確認し、その導線上に箱罠を置いてしばらく餌だけを与えるんです。安心して中で採餌しているのを確認できてから、初めてワイヤーを通してセットします」(山村さん)。山村さんは、現在の現場の状況に複雑な思いも抱いている。「これまでクマは保護の対象でした。本来は“やさしいワナ”で棲み分けを図るはずが、今、現場では駆除が前提として求められています。正直、複雑な心境です。人が襲われるのは重大事態で、迅速な対応は不可欠。そのうえで、クマを本来の生息域へ押し戻す『棲み分け』の徹底が必要だと改めて感じます」(山村さん)。ちなみに個人が自宅周辺に罠を設置して対策することはできるのだろうか。答えは「ノー」だ。「野生動物の捕獲は、狩猟免許と行政の許可が必要です。個人が箱罠を置くことは原則できません」(山村さん)。箱罠は、一般家庭や町内会などが独自に設置することはできず、狩猟免許を持つ猟友会員などが自治体の要請で設置する形が一般的だ。つまり“個人の防衛手段”として罠を導入するのは、現行法では難しい。もしクマの出没などで困っている場合は、まずは自治体に相談し、専門機関や猟友会などの正式な対応を仰ぐことが重要だ。罠はかけられなくとも、やれることはある。人口減少や過疎化により里山の管理が弱まり、山と里の境界が曖昧になるほど、人とクマの距離は縮まっていく。「境界を守るのは“人の手入れ”です。草を刈る、放置された果実を片づける、戸締まりをする…。そうした日常の行動が、クマ対策につながります」(山内さん)。長野県箕輪町は、人の生活圏・緩衝帯・野生動物域を区分する「ゾーニング」を導入して成功した例だ。住民と連携して刈り払いを徹底し、場所によっては電気柵も設置。導入後は人的被害がゼロとなり、目撃件数も2024年の19件から今年は9件へと減少(11月20日時点)、町の奥深くに入り込む事例もなくなったという。クマが身を隠して移動できる場所や、果実など誘引物のある場所を増やさないこと。派手さはないが、これがクマを山へ返す道の一つであり、駆除一辺倒にしないための前提だ。

(クマ被害頻発の秋田で不肖・宮嶋が密着撮)
クマ被害が相次ぐ日本社会。自衛隊の後方支援が終了した今なお、現場では水際対策が続けられ、その緊張は収まらない。現役の猟友会員でもある報道カメラマンの不肖・宮嶋が、クマ急増で浮き彫りになる“課題”を指弾する。40年以上のカメラマン人生で初めて降り立つ大館能代空港(秋田県北秋田市)では、肌を刺す寒風が吹きすさんでいた。空港のレンタカー屋に1台だけ残っていた軽自動車のカーラジオから早速流れてきたのは、隣町の能代市内のスーパーにクマが「立て籠もり」続けているという一報であった。「これはまた早速どえらいことやないか。早速クマの先制パンチかいな」と思いつつ、もちろん立て籠もりクマの駆除は自治体などに任せるしかないのだが、慌てずハンドルを能代市内に向ける不肖・宮嶋であった。本音は愛銃「ベレッタ」と30-06スプリングフィールド弾持参でクマと対峙したかったところだが、仕事(カメラ)と趣味(ライフル)の二足の草鞋などという半端な気分で人食いクマという凶暴な猛獣に立ち向かうと、それこそ怪我のもと、いや命取りにもなりかねない。そんなことになったら秋田の民にも大迷惑をかけかねんと、誤射防止のため、猟友会より支給された蛍光色のベストとキャップに身を固めてきたのである。さらにクマよけスプレー(1万4000円)も準備しようと、常連でもある都内の専門チェーン店にも出かけたが、なんと全店で売り切れ、再入荷も未定という。しかし、なんとか痴漢退治の警報器を懐に収めて、クマの立て籠もるス-パー、イオン能代店にライフルならぬカメラを担いで向かうのであった。それにしても、人口5万弱の都市の市役所の隣だというのに、なんやこの人気の無さは。日曜午後だというのに、飲食店のほとんどもシャッターを下ろしたまま。クマは地元産業まで脅かしているのではないか。目につくのは「秋田魁新報」などカメラ担いだ地元メディアや制服警察官くらいである。いったい、どうやってこんな街中までクマは出てきたのか。イオン能代店にこの日午前中に侵入したクマは、従業員により家具売り場に追い込まれ、その後、パーテーションで封鎖された家具売り場に立て籠もった。警察と従業員は昼までに買い物客と従業員全員を避難させ、スーパー出入り口にも「クマ出没のため営業してません」の張り紙を出し、店内の映画館も含め全店が無期閉店となった。隣接する老舗旧料亭の紅葉の華やかな日本庭園も閉鎖された。クマはこの庭園を通り抜けスーパーに侵入したと見られる。従業員に家具売り場へと追い込まれ、店内に立て籠もっていたクマだが、その2時間後、県職員が麻酔の吹き矢を命中させて駆除したという。現役ハンターとしては吹き矢でクマを駆除した「県職員」の正体や、その麻酔の吹き矢なるものがどんなものなのか、また「麻酔で駆除? どうやるんやろ?」と、興味は尽きないが、なぜか現地ではこれ以上の情報は得られなかった。翌日からは昨日までの晴天がウソのようにどんより。上空は厚い雲に覆われ、午後には雪も降り始めた。しかも横殴りである。秋田の農村部もハンター業界と同様、過疎化、高齢化が進み、畑や庭の柿の木を手入れする農家の人口も減少するばかり。それがまたクマが人里に降りてくる一因ともなっている。昨日は鹿角(かづの)市、今朝は秋田市で目撃情報、午後にはお隣り岩手県の岩泉町でクマの親子連れが柿の木の上で立て籠もると、クマはまさに神出鬼没。ただでさえ秋田も岩手も広い。クマ出没情報に振り回されるように出動を重ねて、移動だけで一日が過ぎていく。駆除や緊急銃猟に駆り出される猟友会や自治体職員の苦労もしのばれる。県庁所在地の秋田市内、しかも中心部の、燃えるような紅葉の季節の千秋公園にまでクマが目撃され、立ち入り禁止が続いていた。周囲の百貨店やコンビニも、二重扉の外側の自動ドアは軒並み電源が切られ「クマ侵入防止のため」と言葉は若干ちがうものの、張り紙が張られたままである。県庁所在地の日中だというのに通りに人影はまばらである。特に日没後には「ここが新幹線の終着駅と県庁所在地か」とは信じられないほど、人が歩いていないのである。これでは非力なお年寄りや子供らは一人でコンビニにも入れない。通りから人気が消えるわけである。まだ日が暮れたばかりやというのに、人気が絶えた鹿角花輪駅前通りはシャッターが下ろされた商店ばかり。こんな日がまだまだ続いたら、この駅前商店街はどうなってしまうのであろう。煌々と灯りがともるのは駅前のコンビニくらい。そのコンビニの自動ドアも閉じられたままである。そんな秋田県下の自衛隊と猟友会の箱罠設置やその回収活動等も取材せんと、恐る恐るながら畑作業に出ている農家の方々や、山間部で林業伐採している作業員に情報を聞いて回る。皆、東北弁ながら立て板に水とばかりにお教えくださる。そのほとんどの方が道路上で、自らの畑や庭でクマを目撃したばかりか、懐からスマホを取り出して動画を見せてくれた。それら情報をもとに発見した箱罠のほとんどは、民家や道路に近い畑や茂みにあった。もはや相当数がすぐそこの茂みや林に潜んでいると覚悟しなければならないだろう。それだけの数のクマに対処するためには、現在の猟友会と自治体による駆除、出動した警察、自衛隊部隊の規模では到底無理であろう。いや、規模と予算を増やせば時間はかかるが、できるはずである。それくらいの決断と覚悟が政府にあるのか。今から準備を始めなければ、クマ被害は来年、いやこの冬季も増え続けるのではないだろうか。そんな雪が降り止まぬ鹿角市の山間部で、箱罠を回収していく猟友会と自衛隊部隊に偶然遭遇した。確かに、300キロ近い鉄製の箱罠を設置したり回収したりするのは、少人数のしかも高齢の猟友会員だけでは困難である。しかし、その光景には涙が誘われた。それは、木銃を構えた自衛隊員の周囲に猟銃を所持した民間ハンターが控えているという、信じられない光景であった。クマという危険に立ち向かうのは、猟銃だろうが木銃だろうが危険に違いないが、民間人のほうが殺傷力の高い猟銃を所持している。こんなあべこべはどう見てもおかしいではないか。確かに、野生動物の生態や大自然の中での環境知識や地理感覚に関しては、いくら優秀な警察官や自衛隊員でも、今日明日ハンターから学んだだけではすぐに効果を出せないだろう。しかし、警察にしろ自衛隊にしろ部隊にもよるが、普段から銃の扱いに慣れ、いかなる環境下でも適切に扱えるよう訓練を続けているのである。しかも皆、猟友会員よりはるかに若い。予算と命令と時間さえあれば、瞬く間に充分な装備と人員を備え、国民の期待する結果を出すはずである。一方で、民間人の銃所持の厳格化は必要だろう。実際、猟銃を使用した事件や事故のたびに銃所持の条件や所持許可銃の制限は厳しくなっている。最近ではDV(家庭内暴力)やストーキングを行ったり、自殺の恐れがある者も銃所持の欠格事由に加わった。繰り返し言うが、アメリカのような「銃社会」がいいというのではない。しかし日本人は「銃」や「狩猟」に対し、あまりにアレルギーが強すぎるのではないか。偏見と言えるほどである。もう少し「銃」に対する危険性や利便性を理解し、そのうえで「狩猟」に親しむ機会を与えられてもいいのではないか。所詮、人間は大自然の猛威を前にしたら無力で無知である。自らを亡ぼしかねない核兵器を造れても、地震すら予知できない。現在の日本のようにクマが次々人を襲い、コロナ禍のように外も出歩けない日がまた来ると想像することもできなかった。それでも近い将来、災いはまた必ずやってくる。戦災は避けることができても天災はそうもいかぬ。それに備えることならできる。しかし、いくら備えがあってもいざというときに使えないと意味がない。11月30日をもって、クマ被害に対する自治体、猟友会への自衛隊による後方支援活動は終了した。だが、近い将来、またクマ被害が爆発的に増えるかもしれないのである。そのような事態になっても慌てぬよう、国民や自衛隊員の安全を守るためにも、官民協力して法整備を急ぎ、装備を整えておくべきではないか。

(過去最悪の被害の一方で猟友会は「数が減ってきている」、駆除されたクマの“ある特徴”とは)
今年の漢字に選ばれた「熊」。人が襲われるケースが相次ぎ、冬眠を迎えるはずの今の時期も市街地での目撃や被害が後を絶ちません。訪ねたのは、岐阜県高山市に住む男性。11月、自宅のすぐ裏でクマが出たといいます。(自宅裏でクマが出た田川昭彦さん)Q.このひもは何ですか?「向こうにクマよけの鈴があって、これを引くと鈴が鳴る。こっちもそうです」Q.かわいい音ですけど逃げる?「最近は来ないですね」。山裾にある男性の家。クマが出たのは、森と家の間にある柿の木のあたり。(田川さん)「木の皮が剥がれている所がクマが何回か登って皮が剥がれている」Q.ここから登っていった?「上の方まで登っていった」Q.枝が折れたり木が裂けたりしているが?「全部クマですね」。木に登ったクマは、柿の実をほとんど食べ尽くしていったと言います。男性が監視カメラを設置すると、夜な夜な山から下りてきた周辺をうろつく親子とみられるクマの姿が。11月までに計5頭が確認され、このうち2頭が仕掛けた罠の檻にかかりました。(田川さん)「こんなにひどいのはことし初めてです」Q.来年どうしましょう?「どうしたらいいんですかね…」。罠を設置したのは地元の猟友会。猟師歴46年のベテラン・脇谷雅彦さんは、親子で狩猟を生業としています。(飛騨猟友会 脇谷雅彦さん 66歳)「こちらが踏み板になります。奥からクマが入ってきて、手前にはちみつを置いて、はちみつを舐めるために踏板に足をかけると奥の扉が閉まって、捕獲されるという仕組みになっています」。(脇谷雅彦さん)Q.檻にかかったらクマは出られない?「そうです。出られないんですけど、特別にことしは…中を見ていただくと分かりますが」Q.穴が開いていますね「口と手で破っちゃったドラム缶を。考えられない。クマの毛付いていますね。この隙間から無理やり出るために、ケガもしたと思う」。檻を壊され、逃げられたことも。例年、地元で罠にかかるクマは1~2頭ですが、ことしは5頭を駆除。それだけ人里に侵入してきたという現実があります。近くの桃農家を訪ねても…(つむぎ果樹園 前坂治臣さん)「おそらく400~500個は食べられていたかな」。一晩で畑の桃を食べ尽くされる被害にあった前坂さん。その畑にはいま、桃の木は1本もありません。クマが覚えてまた来ると近隣住民に被害が出る恐れもあるため、全て切り倒しました。(前坂さん)「桃を作って経営している中で、(クマに襲われる)リスクを作ってしまうのは、責任がないわけではないと。今後は考えていかないといけない」。15年前に被害にあった大坪さんにクマの怖さを聞くと。(大坪達也さん 61歳)「これが上あごです。ここが牙。こちらが下あご。ガブっと噛まれた」。当時、市役所で有害鳥獣の駆除を担当していた大坪さんは、イノシシ用の罠にかかったクマを山に放そうとしたところ襲われ、1か月入院する重傷を負いました。(大坪さん)「クマスプレー持っているなと思って出した時にロックがかかっていて、これもうだめだなと。クマは犬より速いくらい。ピューっと黒い弾丸が向かってきた。来るなと思った時には、足を噛まれて腕を噛まれて頭を噛まれて」Q.頭をつかまれて噛まれた?「耳のあたりを噛まれて」。目のすぐ下を爪でやられ、あわや失明するところでした。(大坪さん)「やっぱりクマはでかい。何かしでかせばダメージも強いし、1回スイッチ入るとすごいクマは」。クマの狩猟は、冬眠前に脂がのる今の時期が本番です。脇谷さんに、いつもクマ狩りを行うという場所を案内してもらいました。山へ入ると早速、ニホンカモシカが。さらに車で奥へ進み、たどり着いたのは標高1100メートルの山の中。冬眠場所を探すクマが頻繁に現れ、猟師の間で「クマの渡り場」と呼ばれるスポットです。クマ撃ち用のライフルを持った脇谷さんに、カメラをつけて山へ入ってもらうと。(脇谷雅彦さん)「今のところ足跡ないですね。雪が夕べも降っているので、クマは動いていないかもしれない。どんぐりがなる年だったら、雪をどけてでも食べるからすぐ分かるけれど、エサがないので、じっとしているだけだと思います」。クマの痕跡は全く見つかりませんでした。さらにことしは、冬眠しているクマをほとんど見かけないと言います。山にいるはずのクマが、次々に人里へ降りてきては駆除されるため、冬眠するクマそのものが減っていると脇谷さんはみています。捕獲したクマを食肉用に解体する、脇谷さんのジビエ工房を訪ねました。(飛騨猟友会 脇谷将斗さん 39歳)「これがクマですね」Q.ピンク色が脂肪?「そうですね。脂になります」。駆除されたこのクマにはある特徴が。(脇谷将斗さん)「上半身にいくにつれて、ちょっと脂が薄くなってきて。全体的に見ると冬眠できるクマではないですね」。冬眠前に蓄えているはずの脂も少なく、山でエサが見つからない実態も見えてきます。駆除され持ち込まれるクマは例年2~3頭のところ、今年はすでに27頭と10倍近くに増加。続いて、ジビエ料理を提供するお店を訪ねました。(山の幸うり坊屋 田中政亮さん 35歳)Q.脇谷さんの仕留めたクマを提供されているが、どんな関係?「僕は脇谷家の次男です」Q.何人きょうだい?「4きょうだいで、下に弟がいて妹もいる。みんな一緒に働いています」Q.脇谷家はみんなクマに携わっている?「そうですね」。一家はクマの肉を堪能できる料理店も経営しています。ここで頂いたのが…(田中さん)「クマのしゃぶしゃぶです」Q.赤い部分が少なく、脂が多いですね「しゃぶしゃぶにするクマは、冬の脂の乗った上質なクマを選んで用意している」。そのほかクマの串焼きや、クマ肉100%のソーセージも。(脇谷将斗さん)「猟師の立場からすると有害駆除じゃなくて、狩猟でとって美味しく食べてあげたい。里に下りてくるクマはお腹が減って出てくるので、脂肪も蓄えられないし、色んなもの食べているのでクセがある。シンプルな出し方はできない」。全国でクマ被害が激増したことし。専門家は個体数の増えすぎを原因の一つに挙げますが、脇谷さん親子は違う見方を示します。(脇谷将斗さん)「間違いなく実感では、クマが減ってきていると感じていて、他の地域とは違うかと思いますが、きょう山にクマの足跡を拾いに行っても拾えなかった。山で足跡をこの時期に拾えなかったことはない」Q.猟師としてはクマがとれなくなる?「そうですね」。(脇谷雅彦さん)「姿を見かけられたら射殺される。檻でとられることが常識的になってくると、確実に保護動物になってしまうと思う」。クマの被害が急増する中、ただ捕獲して駆除するのではなく、人里に出てこないようクマとどう向き合うのかを考える必要があります。

(米NJ州でクマ猟解禁、科学的に個体数を管理する「管理狩猟」とは)
アメリカ東部のニュージャージー州で今週、クマ猟が解禁になりました。クマが増えすぎるのを未然に防ぐための個体数を管理したうえで猟が行われています。ハンター フィッシャー・ニールさん「よく目を凝らすんだ。見渡す限り茶色と灰色だけど、クマは漆黒なんだよ。だから、いれば必ず目に入る」。アメリカでは多くの州で銃を使ったクマ猟が認められています。 ニュージャージー州でもクマを減らしすぎず、増やしすぎないように上限を設定し、許可証を発行するなど厳しい規制のもとで猟が行われています。猟の目的は個人の趣味がほとんどですが、仕留められたクマは行政が管理する検査場に持ち込んで個体数を管理するためのDNAサンプルを採取することが義務付けられています。ニュージャージー州職員 事務・オックスリーさん「ニュージャージー州では狩猟だけでなく、教育プログラムや殺傷しない手段など、総合的な個体数管理を行っています。ただし、減らすという点では管理された狩猟が最も効果的です」。クマ猟は住民の反対などで一時中止になったこともありましたが、住居への侵入やヒトやペットに危害を加えることが増えたため再開されたということです。

(クマの出没ルートをAI活用で特定:小幡 祐己)
近年、私たちの身の回りにおけるクマ被害の報道は、もはや他人事では済まされないレベルに達しています。環境省のデータによれば、クマによる人身被害の約66%が、人里や農地といった生活圏で発生しているといいます。観光地での死亡事故や、市街地での出没が常態化する現代において、目視、巡回といった「これまでの対策」は機能不全に陥っています。私が現在のクマ被害の深刻化において、最も危機感を覚えているのは、「クマの行動が根本的に、そして決定的に変化している」という点です。かつては、山に入るときに鈴を鳴らしたり、ラジオを流したりすれば、クマは警戒して逃げていきました。しかし今のクマは「音=人間がいる=美味しいものがある」と学習してしまっています。特に人間の食べ物(生ゴミや農作物、時には人間の肉の味さえも)を覚えてしまった個体は、執着心が非常に強く、追い払うのが困難です。「音で威嚇すれば逃げる」というこれまでの常識は、もはや通用しないのです。このような行動変容が起きている中で、これまで中心となってきた自治体や猟友会による「従来型パトロール」(目視、巡回)は、対策として限界を迎えています。最大の課題は、人手不足と高齢化です。猟友会の方々の負担は限界に達し、後継者も不足しています。さらに、人間が24時間365日、山や集落の境界を監視し続けることは不可能で、パトロールする人間がクマと鉢合わせし、襲われる危険性も高まります。人間が直接危険に晒される前に、まずは「機械(AI)で検知し、安全に情報を伝達する」仕組みを確立する必要があります。私たちが開発・提供するAIカメラシステムは、この課題に対し、単なる監視ではなく、「即応力」と「予測力」という2つの新しい軸で、人命と生活を守るための防御策の確立を目指しています。屋外での監視・検知という点では、私たちが普段AIカメラを提供している建設現場もクマ対策も本質的な構造は似ています。違いは、クマが「生き物」であり、人間が全てをコントロールできない存在であるという点です。しかし、私たちが屋外環境で蓄積してきたAIカメラの技術・ノウハウは、そのままクマ対策にも応用できます。AIカメラシステムが従来のパトロールと一線を画す点は、その「即応力」と、そこから生まれる「予測力」にあります。まず、カメラが捉えたクマの危険な位置情報をカメラの位置によってリアルタイムで住民に提供するため、不用意な接近による人身事故を未然に防ぐことができます。次に、クマが検知された際には、これまでの「目撃情報」といった曖昧な報告ではなく、画像と正確な位置情報という確実なデータが即座に共有されるので、自治体や猟友会などの関係者の初動の迅速化につながります。さらに、検知システムと外部の威嚇装置を接点を使用し連携させることで、安全性を高めることができます。カメラの検知と同時に、回転灯やサイレンによる威嚇だけでなく、忌避剤スプレーなどの装置を自動で作動させることも接点を使用することで可能になります。クマを効果的に人里から遠ざけ、システムを単なる監視ツール以上の「防御・威嚇システム」へと進化させることができます。しかし山間部での運用には、特有の技術的な壁が立ちはだかります。まずは電源の確保です。AIのシステムはそれなりに電力を使います。ソーラー+バッテリーもありますが、永遠に安定するものではない。試験導入には使えても、本格運用で安定性を求めると電源をどう確保するかが、避けて通れない大きな壁になります。次に通信環境の確保です。クマの出没しやすい場所は、往々にして電波が届きにくいエリアです。微弱な電波環境でもアラートを確実に届けるため、様々な通信方式を組み合わせる設計が求められます。最後は誤検知についてです。夜間や霧の中では、イノシシやカモシカ、大型犬などをクマと間違えて誤報を出してしまう可能性もあります。人なら「二足歩行のこういう形は全部人だよ、それ以外は検知しないでね」という教え方ができる。一方で、熊のような頻繁に出てこない特殊例は、実例を積み上げながらパターンを覚えさせていく必要があります。だからこそ、早い段階から導入して、学習に使えるデータをためていくことが大事だと思います。AIカメラの真価は、単に「クマを見つける」という受動的な検知にとどまりません。蓄積されたデータを分析し、能動的な「予測」に活用できる点こそ、私たちが目指す次のステップです。AIカメラが収集したデータ(いつ、どこで、どの方向にクマが移動したか)を地図上にマッピングし、分析する。このデータが豊富になることで、従来の「勘と経験」に頼ってきた対策を、データに基づく対策へと進化させることができます。データの予測分析によって、まず出没ルートの特定が可能になります。素人から見れば、全部同じクマに見えてもプロの目にかかれば、“この個体はA地点にもB地点にも出ている”といった見立てができます。その感覚とAIが蓄積したデータを組み合わせることで、ようやく生きた予測になります。むやみに人が動き回るより、カメラに見てもらい、経験のある人のところにデータとアラートを集約する方が、はるかに効率的です。例えば、木の伐採作業には伐採した木を職人さんがA・B・Cとランク分けしていく作業があるのですが、職人さんの目利き技術をAIに覚えさせて、カメラが自動でランク分けできるようにすることも可能です。クマ対策も、基本は同じ発想です。高齢化して継承が難しい、猟友会の方が持っている勘と経験をそのまま消してしまうのではなく、データとして残していくことが大事だと思います。AIカメラはあくまでツールですが、これらをうまく使いこなし、現場の負担を減らしながら、地域の安全を守る「インフラ」として普及させていくことが重要だと考えています。人命と地域の安全を守るために、デジタルの力を最大限に活用し続けます。

(「クマがすめる森をつくろう」、「ドングリ植樹」イベント:神奈川)
人の生活圏を脅かす「アーバンベア」対策として、奥山に実のなる木を植え「クマを里から奥山に返す」活動を行っている猟師たちが、神奈川県山北町にいる。狩猟グループ「豊猟会」と、活動に賛同するボランティアら約70人は13日、町に隣接する南足柄市内の山中で、植樹の第一段階としての「ドングリまき」を行った。発起人であるベテラン猟師・杉本一(はじめ)さん(87)が「みんなで豊かな森をつくって、動物を里から山に返そう」と挨拶すると、用意されていたドングリ約1万2000個を畑に植えていった。

(「やばい、クマじゃない?」中学校近くでシカ死骸を:山梨)
全国各地で12月になってもクマの目撃情報が相次ぐ中、山梨県北杜市では中学校の近くにクマが現れました。「やばい、クマじゃない?食ってる食ってる」。映像を撮影した女性によりますと、クマはシカの死骸を食べていました。おととい、北杜市で女性が中学校から約200mの場所にある道路を車で走っていた際、体長70~80cmほどのクマを見つけました。クラクションを鳴らすと、クマは一度、その場を去りましたが、数分後に戻ってきて再びシカの死骸を食べていたということです。北杜市は、外出する時に音の出るものを携帯する他、食べ物を屋外に放置しないよう呼びかけています。

(「目が合った」クマがスキー場に出没:長野)
本来なら冬眠を迎える時期だが、スキー場にクマが出没した。クマに遭遇にした男性が緊迫の様子を語った。そして、クマは一体いつ冬眠に入るのか、専門家に聞いた。冬本番を迎える中、本来、冬眠を迎えるはずの“クマ”の出没が止まらない。12月7日、長野・白馬村のスキー場。スノースケートをしていた男性が白銀のゲレンデを華麗に滑り降りていたその時!突如目の前に、クマが現れ急接近。さらに猛ダッシュであとを追いかけてきた。男性は追ってくるクマに恐怖を感じつつ、後ろを見ながら安全な場所まで急いで滑っていく。スキー場に出没したクマ。パトロール隊が出動する事態となった。冬眠することなく、市街地や人の集まる場所に出没するクマ。一方、どのような条件が整えばクマは冬眠するのか?北海道・新得町にあるヒグマを野生に近い姿で見ることが出来る施設では、まもなくクマが冬眠に入ろうとしていた。サホロリゾート ベア・マウンテン 坂出 勝園長:外気温がだいぶ下がって(クマの)代謝が下がらないと寝ることができないので、目安として(冬眠は)12月中旬から後半に毎年行う。クマは冬眠に入ると何も食べないため、秋口から通常の3倍にもなるえさを与えられ、たくさんの脂肪を蓄える。そのため、体重が400キロを超えるクマもいるという。そして冬眠が近づくにつれ、えさの量を徐々に減らしていき、12月に入ると“絶食日”を設けて胃を小さくし、冬眠へと入っていくという。今は獣舎の中にワラを敷き、春まで眠る“ベッド作り”にも余念がない。冬眠の準備を進めるクマ。ベア・マウンテンの園長は、街に出没するクマの特徴について、“冬眠するには体がまだ小さい”と指摘する。サホロリゾート ベア・マウンテン 坂出 勝園長:冬ごもりには少し肉付きが欲しいな、(脂肪がもっと)あったほうがいいという体格のクマが多いように感じる。山にえさがないので町中に出てきて、なんとか冬ごもりの体格を目指している感じにとれる。

(イノシシが車に接触、運転の60代男性にけがなし:新潟)
12日午後6時過ぎ、新潟市秋葉区金津の県道で、60代男性が運転する乗用車がイノシシ1頭と接触した。男性にけがはなかった。秋葉署によると、3頭のイノシシが県道を右から左に横断した際、男性がブレーキをかけたが1頭と接触した。3頭はそのまま立ち去ったという。

(「北海道エゾシカフェア」:北海道)
「北海道エゾシカフェア」が12月13日、道内の飲食店や販売店100店以上で始まる。主催は北海道。同フェアは、北海道内で捕獲されたエゾシカの有効活用を目的に2011(平成23)年に始めた取り組みで、今回が15回目。運営事務局を務める北海道バリュースコープの蝦名訓さんによると、2024年度のエゾシカ捕獲頭数は約15.8万頭という。北海道が運用するエゾシカ肉処理施設認証制度の認証を受けた高度な衛生管理を行う施設で生産されたエゾシカ肉を使い、飲食店での利用促進と一般消費者への普及拡大につなげる。期間中は、道内で100店以上がエゾシカ料理や精肉を提供する。札幌市内からはイタリア料理店、焼き肉店、ラーメン店、カフェ、ホテルレストランなど42店が参加。メニューは、「夜空のジンギスカン」(中央区)の焼き肉、「イタリア料理 イルピーノ」(中央区)の「エゾシカのミートソースパスタ」など。「ホテルエミシア札幌」(厚別区)は2026年1月1日から「エゾシカソーセージとビストロポテト盛り合わせ」を提供する。蝦名さんは「エゾシカ肉は今が旬。衛生的に処理され安心しておいしく食べられる。当フェアをきっかけに、北海道ならではのエゾシカのおいしさを味わってもらえたら」と話す。

(ジビエフェア、今年は「熊メニュー」:富山)
若鶴酒造株式会社(本社:富山県砺波市三郎丸、代表取締役社長:稲垣貴彦)は、施設内レストラン 竈 flamme 炭三郎 にて、「とやまジビエフェア」の新メニュー 【つきのわ熊のストロガノフ】の提供を開始いたしました。

(ジビエ料理の普及、物語で価値を高めよう)
熊やイノシシ、鹿などによる農作物被害が深刻化する中、今こそジビエ(野生鳥獣の肉)料理を広めたい。ジビエ振興は農山村に経済的な潤いを与え、地域資源を生かした活性化の一助となる。獣の命を頂くことへの食育を取り入れながら、ジビエを価値ある食材として定着させよう。農水省によると2024年度のジビエの利用量は2678トンと、23年度と比べ1・9%減った。うち食肉として販売した数量は1724トンと同0・4%減となった。政府は29年度にジビエの利用量を4000トンまで増やすことを目指しており、食肉利用を増やす工夫が求められる。ジビエは捕獲が不安定で歩留まりも悪く、単価が高いため、ホテルや旅館、飲食店で提供されることが多い。食肉利用を増やすには、おいしく料理して、魅力を発信する伝導者を増やすことが重要だ。山梨県は11月、都内の飲食店経営者らを対象とした産地見学ツアーを開き、富士河口湖町にあるジビエの処理施設などを案内した。参加者は解体の様子を見学し、猟師から仕留めてから搬入までの苦労や、どんな思いで取り組んでいるかなどを聞いた。飲食店経営者が産地に出向いて話を聞く機会は少ないだけに、自分の言葉でジビエの魅力を伝えることで、ファンを増やす役割が期待される。日本ジビエ振興協会は、本年度からジビエを「付加価値の高い、地域の貴重な食材」と位置付ける。15年に鳥獣食肉利活用推進議員連盟が発足してからの10年間は、「(廃棄するのは)もったいないから食べる食材」だった。付加価値を高めるにはジビエの背景にあるストーリーを伝えることが有効だ。ジビエには個体差があり、季節や雄・雌、年齢、食べた物によって味や肉質が変わる。一頭一頭がストーリーを語る上で重要な要素となり、食育につながる。同協会の藤木徳彦代表は「ストーリーを添えてジビエの価値を知ってもらい、広めることが大切」と強調する。神奈川県秦野市で今月6日に開かれた、消費者向けのジビエセミナーでは藤木代表が、アナグマ肉のおいしさ、冬眠中の熊のエピソードなどを紹介した。こうした機会を増やす必要がある。鳥獣害は年々、深刻になっており、熊による人身被害が後を絶たない。駆除と保護の意見も対立する。農山村に暮らす狩猟者や住民の高齢化、森林や里山の管理状況など、多くの消費者がジビエを取り巻く状況について理解を深めることが、対立や分断の解消につながる。ジビエを通して命を大切にし、山の恵みに感謝をすること、人と野生鳥獣との共存の在り方を見つめ直す機会をつくろう。

(学校給食にジビエ料理を提供します:山口)
山口県における鳥獣被害による農林業被害は、令和6年度で3億4千8百万円となっています。このような中、被害対策として捕獲したイノシシやシカを地域資源として食するジビエの取組が進んでいます。そこで、山口県における有害鳥獣の状況及び捕獲した野生鳥獣の命を大事にいただく「食育教育」を山口大学教育学部附属山口小学校にて実施します。

(クマ出没:宮城)
白石市によると、14日午前6時45分ごろ、白石市越河平矢尻にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
富谷市によると、13日午後9時45分ごろ、富谷市あけの平1丁目にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
富谷市によると、13日未明、富谷市あけの平1丁目にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
石巻市によると、12日午前1時30分ごろ、石巻市西山町にクマが出没しました。

(イノシシ出没:宮城)
角田市によると、13日午前9時ごろ、角田市毛萱小迫でイノシシが出没したような痕跡が見つかりました。

(クマ出没:宮城)
角田市によると、12日午後8時28分ごろ、角田市毛萱小迫にクマとみられる動物が出没しました。

(クマ出没:宮城)
栗原市によると、12日午後6時50分ごろ、栗原市瀬峰大境山にクマが出没しました。

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12/12
(国スポで女子選手参加「義務化」、クレー射撃)
日本スポーツ協会は11日、東京都内で国民スポーツ大会(国スポ)委員会を開き、クレー射撃の各都道府県代表に女子選手を含めることを求める案を承認した。女性の選手や競技役員の増加を促すことが狙い。青森県で開催される来年の大会から適用される。国スポではトラップとスキートの2種目を男女混合で実施。各都道府県代表は各種目2人の計4人で、女子選手が参加できない場合は計3人に制限される。

(射撃場の新設「非現実的」も改善検討:島根)
クマに大きなダメージを与えるスラッグ弾の射撃場が島根県内にないことを巡り、丸山達也知事は11日の定例会見で「県猟友会の話を聞きながら、改善策が考えられないか検討していく」と述べた。県内に4カ所ある狩猟用銃の射撃場では、威力のあるスラッグ弾を撃つことができない。県内自治体では練習可能な県外の射撃場を往復する際の旅費など補助がなく、ハンターの負担軽減や練習機会の確保が課題となっている。丸山知事は、射撃場の新設については「非現実的だ」とする一方、金銭的補助を含め「支援を検討する必要性があるかどうかを市町村と一緒になって考えていく」と話した。

(危険な違法わな、山林に複数:千葉)
市原市内の山林に標識のない危険な狩猟用わなが多数設置され、ハンターが誤ってわなにかかる事故が発生していたことが10日までに分かった。わな設置は県の許可が必要で、交付される標識は事故防止などの観点から鳥獣保護管理法で掲示が定められている。千葉県自然保護課によると、今回のわなは規格も同法に抵触する可能性がある。イノシシが多く出没する地区で、何者かが捕獲を狙った可能性がある。関係者は「人命にかかわる危険な行為」と危惧。ただ、現状で撤去が難しく、県は「県警と情報を共有しながら対応を検討していく」としている。設置されていたのはシカやイノシシといった野生動物などを捕獲する、いわゆる「くくりわな」。踏み板を踏むと台座を埋めた穴にはまり、踏み板の外枠が上に稼動してワイヤを跳ね上げる仕組み。設置には県の許可が必要で、設置場所には住所や氏名などを明記した標識を見やすい場所に掲示することが義務付けられている。市原市寺谷の山林で狩猟期間に入った11月中旬ごろ、ハンターの男性が標識のないわなを誤って踏み、足を挟まれる事故が発生。幸い狩猟用シューズを履いていたため大事には至らなかったが、周囲を調べたところ計5カ所で無標識のわなを発見。うち一部のわなには鳥やウサギなどがかかっていたという。事故に遭ったハンターの知人男性と、通報で駆け付けた県自然保護課の職員が12月9日、改めて現場周辺を調査。さらに二つの無標識のわなが見つかった。同課職員は計七つのわなに警告表示を取り付けた。いずれも市販のわなに自作のワイヤなどを取り付けたものとみられる。人間の足も入りそうな大型の穴が掘られ、かかった際にワイヤを緩める金具などが壊れているものも。土などで巧妙に隠され、知識がない人が山に入れば誤って踏む可能性がある。ハンター歴が長い市内の50代男性は「こうしたわなは初めて見た。人間が誤って踏んでも抜けられず、山深く携帯電話で救助を求めるのが難しい可能性もある」と重大事故への懸念を示し、「人命にもかかわる危険な行為。われわれが狩猟犬を放すのもちゅうちょするため、本来の狩猟活動にも影響が出ている。対策が必要ではないか」と話す。県自然保護課によれば、市内での無標識わなの通報は過去にもあったという。今回は無標識なうえ、わなの輪の直径が法定の12センチを超え、締め付け防止金具も未装着で、いずれも鳥獣管理保護法に抵触。違法と認定されると設置者に罰金などの罰則が科される。引き続き悪用される恐れもあり、わなの撤去などの対策は必要だが、設置された土地と、わなそのものの所有者が不明のため撤去は難しいという。同課は所有者の確認などに向け「県警と情報共有しながら対応を検討していく」としている。併せて、鳥獣保護管理員による通常の巡回で違法なわなの設置の確認なども実施していく考え。

(クマ2000頭駆除「やりたくてやっていることではない」:秋田)
今年、全国的にクマの出没が相次いだ問題について、秋田県の鈴木健太知事が11日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で行われた会見に出席。県内の深刻な被害状況と今後の対策方針を語った。今年だけで2000頭を超える有害駆除を実施したことや自衛隊派遣に至った経緯について、鈴木知事は「決してやりたくてやっていることではない。市街地に出てきたり人や農作物に危害を与えてしまう、その有害個体の駆除だけでその数になってしまった」と説明。人命優先のためのやむを得ない措置であったことを強調した上で、佐竹敬久前知事がクマ駆除へのクレームに対し強く抗議する姿勢を取ってきたことに触れつつ「全く同じ立場を取っていきたい」と話した。今秋は緊急対策として、箱わなの追加調達や学校通学路の安全確保に注力。クマ撃退スプレー1500本を配布し、警察や警備会社による見回り、爆竹による出没抑制などを実施したが、一方で深刻なマンパワー不足も露呈した。「箱わなを仕掛けても見回りに行く人がいない、もしくはクマが入っていると分かっていても、それを回収しに行く人もいない。夜遅くまでその駆除した個体の解体作業をし、また次の日は朝早くから出動。かなり限界に近い状況になっていた」。現場のひっ迫した状況を受け、県は10月28日に防衛省に対し自衛隊の派遣を要請。11月30日までの活動期間中、延べ900人を超える隊員が箱わなの運搬や設置、見回りなどの後方支援を行った。要請を巡り、自衛隊の迅速な派遣や警察官によるライフル銃の使用を可能にする規則改正につながったことについては「地方のリソースだけでは対応できないという、悲鳴にも似たようなメッセージになった。そうしたシグナルとして国に伝わったと思う」と振り返った。自衛隊出身の鈴木知事は、今回の派遣に県内から感謝の声が多数寄せられたとしたうえで、「自衛隊の本来の任務は国防であり、地域の困り事に毎回対応するべきではない」と指摘。「二度と自衛隊の力を借りなくてもいいように、こうした鳥獣害の対処に関しては、自治体や警察といった従来の対応力を高めていくというのが本質。クマに県境は関係ない。国レベルでぜひ対応していただきたい」と語った。クマ被害が急増した背景については、「クマの性質が変わってきたということ。非常に学習能力が高いので、もう最近現場でも人を恐れない『新世代グマ』が非常に増えている。2年前の大量出没の時に市街地に出てきた子連れのクマの中で、人や街というものは恐れるものではないということを学んでしまった個体がかなり増えたのではないかと思っています」と分析。その上で「今年、秋田県だけでなく全国的にクマの出没が増えたわけですが、これは本県における2年前の状況に近い。つまり、他県でもいずれ起こりうる話だと考えます」と警鐘、全国的な対策の必要性をあらためて訴えた。

(豚熱確認:佐賀)
野生イノシシの豚熱(CSF)について、県は10日、佐賀県有田町で初めて確認されたと発表した。県によると6日、同町上本区岩谷で、住民が野生イノシシ1頭が死亡しているのを発見。9日に陽性が確認された。県内の野生イノシシのCSFは130例目。

(クマとイノシシに関する会議を開催、緊急銃猟制度を確認:大阪)
大阪府は11日、「危険鳥獣」に該当するクマとイノシシの対策会議を初めて開催した。府内の全市町村や府警、府立環境農林水産総合研究所の担当者ら約100人が参加。市街地に出没したときの対応や、緊急時に市街地で猟銃を用いて駆除する緊急銃猟制度の先例を確認した。府では、11月27日時点でクマの目撃情報が北部を中心に24件寄せられている。イノシシは29日時点で5件あった。日野有紀子・動物愛護畜産課長は、クマの目撃件数が直近3年間で増加していることに言及し「人的被害が起きてからの対応では遅い。迅速に対応できる体制づくりや準備が必要不可欠だ」と呼びかけた。市町村からは、銃弾が私有地を損壊した場合の備えや、県境で出没した際の対応などに関する質問が出た。府は各自治体の保険加入や府県間での協議など、想定する対処法を答えた。全国で緊急銃猟の実施例は12月11日までにクマは46件、イノシシは未実施。2024年には兵庫県姫路市の園児らがイノシシにより重軽傷を負うなど、関西圏でも市街地の出没が危惧されている。

(イノシシがキョン食べる姿:千葉)
クマだけではありません。イノシシによる被害も広がっています。冬眠することはなく、列島各地で暴れていて、千葉県ではキョンを襲う姿が目撃されました。土を掘り起こしてミミズや農作物を食べるイメージが強いイノシシですが、本来の姿だと専門家は指摘します。日本大学 生物資源科学部中島啓裕准教授「動物の死骸を好んで食べることが知られています。(死骸に)一番やって来る動物の一つがイノシシだったりします」。各地で相次ぐクマの出没。記憶に新しいのが、鶏舎に入ってニワトリを襲うクマです。イノシシは生きた動物を襲わないと言いますが、肉食化することはないのでしょうか。「周りに餌(えさ)がない状況、トリがおいしいと学習したイノシシが出てきたら、何度も何度も襲うことが起こり得ると思う」。深刻さを増すのはイノシシによる農業への被害です。千葉県の獣類による農作物の被害金額を見てみると、イノシシが半分以上を占め、1億4900万円に上ります。取材したのは、食用の菜花を育てている農園です。炒めものや、おにぎりにも使われます。毎年イノシシに悩まされている農園。鉄柵を設置して畑を守ろうとしてきましたが、何度も壊されてしまい、被害が集中した箇所に電気柵を導入することにしました。冬眠をせず、冬も活動するイノシシ。その姿は、全国各地で目撃されています。新潟県では、すでに1990頭を捕獲。過去最多となった昨年度の同じ時期に比べ、200頭上回るペースとなっています。環境省の調査です。赤色が最近新たにイノシシが確認された場所ですが、東北や千葉、茨城、東京の西側など、生息分布は40年間で1.9倍に拡大しています。宮城県石巻市の網地島では先月、初めてイノシシが目撃されました。これまでも、海を渡る様子が目撃されてきたイノシシ。島でイノシシが目撃された直後、早くも農業被害が生まれていました。その後、1頭を捕獲。それ以降、イノシシ出現の情報はありませんが、島民の不安は募ります。

(シカとの衝突が最多の44件:北海道)
稚内署は11月の同署管内(稚内、猿払、利礼3町)の交通事故発生状況をまとめた。人身事故は、道道緑地区で40代男性が運転する軽自動車が、横断歩道を渡る80代女性と接触し、左後頭部打撲で全治5日間のケガ、港地区の市道で70代男性が運転するタクシーがバックした際、20代女性と接触し、右足関節捻挫で全治1週間のケガなど3件(昨年同期0)、傷者3人(同)。物損は94件(稚内68、猿払21、利尻1件、利尻富士2、礼文2)。シカとの事故は今年最多の44件(稚内31、猿払13)発生した。高木交通課長は「全道的に車対歩行者の交通事故が目立っている。稚内で発生した2件とも夜間の事故であり、横断歩道などの安全確認徹底とスピードダウンを心掛けて欲しい」などと話していた。

(緊急銃猟の条件検討も、警察・市・猟友会が連携:岩手)
12月になっても各地でクマが目撃されています。岩手県一関市では住宅の敷地にクマが出没した想定で訓練が行われ、警察らが現場の対応を確認しました。訓練は「クマが民家の柿を食べているのを住民が発見し通報した」という想定で行われ、警察や市、猟友会などからあわせておよそ40人が参加しました。訓練では警察と市が協力した住民の避難誘導の流れや、クマを監視する警察官の配置を確認していました。また猟友会とも連携し、安全な状況で緊急銃猟が行える条件などを丁寧に協議していました。

(猟友会出動手当てに地域差:岐阜)
人里に出没するクマの増加を受けて、猟友会への出動要請に手当を導入する山間地域の自治体が増えている。手当がなかった下呂市は10月から2時間2万円の支給を始めた。郡上市は19日の定例会最終日に6千円の日当を盛り込んだ一般会計補正予算案の提出を予定している。手当の額は統一の基準がなく自治体ごとに決めており、金額のばらつきを疑問視する声もある。郡上市では本年度、11月までに50件の目撃情報が寄せられ、昨年度の19件を大幅に上回った。その都度、要請を受けた猟友会員3人ほどが現場に駆けつけ、花火や爆竹による追い払いや見回りに当たっている。

(泣く泣く柿の木を伐採、“日本の原風景”に異変:秋田)
いまだクマへの警戒が必要な秋田県。クマの出没が相次ぐことで、昔からある“日本の原風景”にある異変が起きています。地面が真っ白になるほど雪が積もった秋田県横手市。すると、画面下側から…。10日早朝にツキノワグマが現れました。クマが歩いた雪には、足跡がくっきりと残っています。クマはそのまま車道の方へと進むと、画面左へと歩き、そのまま崖を登り山の方へと戻って行きました。横手市は、食べ物があれば冬眠しない個体がいるとして、クマの餌(えさ)となる食べ物の管理を呼びかけています。その餌となるのは「柿」です。秋田県潟上市で度々目撃されているのは「柿を食べるクマ」です。この柿の木には次の日も現れ、警察が爆竹などで追い払っても何度も柿の木に現れたといいます。クマを引き寄せる誘引物の約7割が「柿」といわれています。そのためクマを寄せ付けないよう、11日、地元の有志によって柿の木の伐採作業が行われました。11日に伐採した柿の木にも、これまでクマが出没。去年には12月下旬にもかかわらず、冬眠しないクマが柿の木に登る姿が。クマは今年もこの柿の木に現れたといい、伐採することを決めました。ただ、この柿の木、地元の人たちは断腸の思いで伐採していました。特別な思い入れがある背景には、代々先祖から受け継がれてきた“教え”がありました。雪が積もる新潟県十日町市でも、今も柿を食べるクマの姿が…。雪が降っても柿を食べにくるクマが増える中、東北では田舎の原風景が失われつつある場所も。秋田県潟上市では、クマを寄せ付けないために柿の木を伐採。潟上市の山田地区では、昔から柿の木を庭先に植えることが多いといいます。今は72歳の伊藤さんも小さいころから秋になると、この柿を干し柿にして食べるのが楽しみの一つだったそうです。この集落では、柿を植える理由に代々先祖から伝わる教えもあるといいます。潟上市では柿の木を伐採するにあたり補助金が出ることはなく、地元の人たちが有志で伐採作業を行っています。有志の伐採作業に参加する石川さんも、クマが周辺に出始めた3年前に自宅の柿の木を切っていました。今年78歳になった石川さん。柿とともに成長してきたといいます。これまで記念撮影の場所として親しまれてきた柿の木は、もうありません。

(銃刀法違反の疑い、拳銃コレクターの65歳男性書類送検:長野)
殺傷能力のある回転式拳銃など合わせて16丁を所持していたとして長野市に住む65歳の男性が11日、書類送検されました。銃刀法違反の疑いで書類送検されたのは長野市に住む65歳の無職の男性です。警視庁によりますと、男性は今年7月、長野市の自宅で殺傷能力のある回転式拳銃1丁と人にけがをさせる威力のあるエアガン=「準空気銃」5丁、本物に似せた「模造拳銃」10丁を所持した疑いが持たれています。警視庁がインターネットオークション上に出品されていた銃を見つけ、購入者である男性の自宅を家宅捜索したところ、今回の拳銃などが見つかったということです。調べに対し、男性は「銃はコレクションとして置いていた」「子どもの頃から銃を集めるのが好きだった」などと容疑を認めているということです。

(野生シカの捕獲計画に「待った」、女性が撤回求め署名提出:京都)
京都市北区の深泥池や左京区の宝ケ池で市が進める野生シカの捕獲中止を求める署名を、左京区の女性会社員(33)が、京都市農林振興室に提出した。「駆除計画を撤回し、地域と共に持続可能な解決策を探ってほしい」としている。

(「クマどんだけ出るんですか」政府の予備費1兆円に積み増す根拠の“クマ対策”)
政府が補正予算案において残り3か月しかないのに7098億円の予備費を要求していることをめぐり、衆議院予算委員会で議論となった。立憲民主党の下野幸助衆議院議員は、今年度の当初予算の予備費が現在2902億円残っていることを指摘したうえで、「そこに合計1兆円に合わせるために7098億円積み増す補正予算を政府が提案されてます。そこで片山財務大臣に端的にお伺いします。残り3か月予備費1兆円積み増す根拠は何でしょうか」と質問。片山大臣は「予備費は予見し難い予算の不足に充てるために設けられた制度でございまして、災害対応につきましても当初予算や補正予算の予算編成において、見込めるものについてはその時々で計上してきておりますが、見込めないものについてはそういったことを使用するためにあるわけで、他方で災害発生について被害の状況、被災地のニーズに合わせて機動的かつ弾力的に財政措置を講じていく観点から一定の時間を要する補正ではなくて、予備費をある程度余裕を持って積んでおくということが考えられるわけでございます。今般の予備費の追加につきましてもリスクへの備えとして、今後仮に自然災害の発生さらなる物価高等といった事態が生じた場合の予期せぬ財政需要に迅速に対応し、暮らしの安全安心などを確保するために十分な額を措置するものとしたことでございましてご理解をいただければと思います。」と述べた。さらに下野議員は「熊本の震災でも初動対応ということで予備費は23億円です。そして今年度残り3カ月です。そこで1兆円も本当に必要なんでしょうか。」「私が予備費の追加説明を政府にお願いしましたら、A4の1枚紙でこういうのが出てきましたけれどもここに書かれていることを少し読み上げますけれども、『Q.予備費は何で追加するんですか。A.自然災害の発生、さらなる物価高、クマ被害の拡大等』って書いてあります。」と話すと、議場から「クマどんだけ出るんですか」と声が上がった。続けて「クマはもうどんだけ出るんだ、ということですけど、クマ被害対策パッケージといたしましても129億円計上しているんですよ既に。そこで、なぜ7098億円なんでしょうか。国民1人当たりにするとさらに6000円規模の負担を強いられるということでございます。更なるクマ被害対策とは何か端的に片山大臣にお伺いいたします。」と質問。片山大臣は「クマ以外のところから始めますと、今回能登につきましても自然災害からの復旧復興に必要な予算というのがございますが、非常に進まないと思われていた地盤の再建ですとか、公費による解体ですとか、そういったものが一気に進捗してくることがございます。そういった意味を考えますと数百億とか1000億円単位の追加的な復旧工事等の費用というのは今までにもあったことでございますので、何と言っても繰り返しになりますがリスクへの対応ですから、そういったものを大きな余裕を見て考えておるということでございまして、クマにおきましてもおそらくさまざまな統計やさまざまな手法が出ておりますが、まだ全容がわかっていない部分もあるんでしょうから、環境省のほうでそのようなものをお考えになって、それを参考にさせていただいたということでございますが、仮に3か月たって使わなければそれは国庫に返納し、それはどこかに使われてしまうということではなくて、新たにまた財源になるというものであるのが予備費でございます。」と回答した。下野議員は11月に秋田へクマ対策の調査・視察を行った話をしながら「自衛隊の皆様延べ924人の方々が本来業務や大切な訓練を中断して、クマ除去対策を秋田県民のためにしていただきました。これ私が試算すると例えば1日1人5万円の人件費といたしますと3か月でも15億円程度といわれます。クマ対策だけじゃないと言われるんですが、この予備費の説明ペーパーにはさらなる物価高対策の次にクマ被害対策拡大って書いてあるんですよ。そんなことで残り2902億円あるんですよ。これ先ほどからも金利の話が出てましたけれども、7000億3か月金利1.9%で約35億円程度かかってこんだけあれば後に話をさせていただきますけれども学校の建て替え等も回せるんです。今一度予備費の計上を再検討いただけないでしょうか。」と高市総理に問いかけた。高市総理は「私はですねむしろ予備費というのは今のような時代には一定程度積んだ方がいいと思ってます。仮に使い残しがあってもこれは消えてしまうお金ではなくて、国庫に戻るものでございます。特に昨日もありましたけれども大きな災害が来てそれを復旧しようというときにですね、時間とともに明らかになる被害状況があったり、復旧復興が進む中で新たに生じる課題があったりして、今回もですね、補正予算で能登半島にかかるお金を措置しました。おとつい私も能登に入りましたけれどもやはり想像を超えたお金がかかり、どうしてもこれ補助を積み増してもらわないとできないんだというお声がございました。ですからやはり自然災害への対応ですとか、今でしたらさらに物価高が進んだり、不要な事態が起きたりというようなさまざまなリスクに対応するために、早急に使える予備費というのは一定程度あったほうがいいと私は思っております。」と話した。

(ジビエ食べて育った大泉洋の娘、友人との“食べ物しりとり”で「クマ!」と答えたら)
俳優の大泉洋(52歳)が、12月9日に放送されたバラエティ番組「おにぎりあたためますか」(北海道テレビ)に出演。娘が悲しそうに話したという、“食べ物しりとり”について語った。 現在、全国制覇3周目の旅として、栃木県を巡っている大泉洋、戸次重幸、室岡里美アナの一行。移動中の車内で、大泉は「我々はシャモであったり、クマであったり、シカであったり、めちゃくちゃいっぱい食べるじゃないですか。うちはやっぱり、娘の子どもの頃から、そういうジビエもよく食べてましたから。そしたら娘が、この間、“食べ物しりとり”したんですって」と切り出す。 そして「“食べ物しりとり”したときに、『クマ!』って言った瞬間に、『はい、負けぇ~!』って言われた、と。『クマ食べるんだよ!』って言っても、『クマ食べるわけない』って言われて、娘は『クマとシカで負けた…』って」と話し、室岡アナは「北海道に住んでいる子であれば、シカは食べるものとして、ある程度みんな認識してると思いますけど、道外になるとそうかもしれないですね」とコメント。 大泉は「(娘は)『誰もとりあってくれなかった…』って悲しそうに(笑)」と、娘の様子を明かし、室岡アナは「いろんなものを食べてきてるということを、誇りに思って欲しいですね」とフォローする。 また、話を聞いていた戸次重幸は「腹立つな…悲しい」とポツリ。そして「『おめえの親が食に興味ねぇだけだよ!』ってオレが横にいたら言ってやるんで」と語った。

(現役ハンターが首を傾げる「クマを撃つ」までの高すぎるハードル)
クマ被害が相次ぐ日本社会。自衛隊の後方支援が終了した今なお、現場では水際対策が続けられ、その緊張は収まらない。現役の猟友会員でもある報道カメラマンの不肖・宮嶋が、クマ急増で浮き彫りになる“課題”を指弾する。日本では、銃を所持できるのは警察、自衛隊、海保、マトリ(厚生労働省麻薬取締官)や刑務官、入国警備官等を含めて約52万人ほどである。そのほとんどが所持するのは、殺傷力が最小の「拳銃」であり、うち約22万人いる自衛隊員の場合は「小銃」である。つまり、1億人以上いる日本人のほとんどは、いや警察官ですら職務執行上で銃を発砲した経験がほとんどない。犯人射殺は数年に一度あるかないか。戦後では「瀬戸内シージャック事件」や「三菱銀行人質事件」などに限られ、警察官に射殺された犯人はごく少数である。自衛隊員にいたっては、戦後80年で一度も敵対行為に対する銃による発砲がないのである。民間人では銃所持許可、狩猟免許等のハンターになるための諸手続きの合格率は各都道府県や年度により大差があり、また公表されていないところもあるが、年々低くなりつつあるとみられている。猟友会の全国組織「大日本猟友会」によれば、1970年代のピーク時には、猟友会に入会しない者も含め銃所持者は約50万人、所持許可銃は100万丁が日本に存在した。だが、半世紀を経た2024年度には第1種銃猟免許を持つ会員数は約5万6000人まで減少し、それ以外の会員も含む全会員約10万人のうちの実に6割が60歳以上という危機的状態にあるのである。さらに戦後1968年の金嬉老事件、1972年のあさま山荘事件、1979年の三菱銀行人質事件、2007年のルネサンス佐世保銃乱射事件、そして一昨年に長野県中野市で起きた警察官2名を含む猟銃を使用した4人殺害事件など、猟銃が事件に使用されるたびに、銃所持許可の条件や所持できる猟銃の種類や機能は制限され続けている。若いハンター希望者が「そんなに面倒くさくて、時間もかかるんやったら、もうええわ」と諦めていくのが目に見えるようである。しかし、ここまで読み進められながら「狩猟」にご興味がわいてきた若い衆! あきらめるのはまだ早い。今もほとんどの猟友会は若い力を求めている。そして、日本政府も「ガバメントハンター」と称して、ようやく自治体職員や警察・自衛隊のOB・OGらに狩猟免許の取得を奨励するようになった。群馬県の山本一太知事も狩猟免許を取得すると公言しているし、実は故・石原慎太郎元東京都知事も猟銃を所持していた。さらに上皇陛下も散弾銃射撃を嗜まれていたのである。かように銃はそれを扱う人物により、評価が分れてしまうのである。そもそも日本で民間人が猟銃を所持する目的は3つしか認められていない。「標的射撃」と「狩猟」と「有害鳥獣駆除」のみである。アメリカのような「護身用」やコレクションの目的での銃所持は認められていない。さらに自動車免許を取得すればトヨタでも日産でもレンタカーでも運転できるのと違い、銃所持許可があればどんな銃でも射撃できるわけではない。実は銃の所持にあたっては、銃そのものにも許可が必要で、銃はその許可を受けた所持者1人しか射撃できない。だから、他のハンターの銃を撃つだけでも違法となる。また、銃所持許可が下りても、3か月以内に銃を所持(購入または譲り受け)しなければ、許可は失効してしまうのである。また、所持許可は3年ごとに更新が必要なうえ、毎年、銃に違法な改造が施されていないかなどの一斉検査を受ける義務も課されている。まだまだややこしい手続きはあるのだが、今回はこれくらいにしておく。所持目的の一つになりうる「標的射撃」というのは、オリンピックでも見られるようなライフル銃により紙の標的を射撃して得点を競う競技や、散弾銃により飛翔標的を割るクレー射撃などがある。これら標的射撃で使用する銃は口径、使用弾薬、機能等、競技種目により厳しく制限されており、目的の銃を買えば、即ハンターになれるわけでもない。さらに銃による狩猟のためには、猟銃所持許可のほかに狩猟免許も必要になる。これは居住する都道府県庁で発行され、不肖・宮嶋の場合は小池百合子都知事の名で交付される。ただ、狩猟免許にも第1種(散弾銃、ライフル銃)、第2種(空気銃)、わな猟、網猟の4種類がある。猟銃所持許可と狩猟免許ともに法令、銃の構造、さらに狩猟鳥獣と禁猟鳥獣の判別等々の知識、適性、実技試験があり、医師の診断書や経歴書等々……文字通り、山のような書類が必要であり、当然、警察による身辺調査もしっかり行われる。もちろん、反社会的勢力の構成員などに許可は下りない。もうこれだけでもうんざりするくらい手間と時間がかかるのである。そして、これらの許可・免許が交付され、やっと出猟できるかというと、まだまだある。出猟する都道府県での狩猟者登録や、国有林に立ち入るための入林届も必要なのである。つまり、狩猟免許さえあれば全国どこでもいつでも狩猟できるわけでなく、各都道府県ごとに登録が必要であり、一県ごとに高額な手数料と時間もかかるのである。さらに、猟期以外での有害鳥獣駆除には地元自治体から依頼される必要があり、実質、他県の猟友会員は、地元自治体以外での駆除や緊急銃猟には参加できないのが実状なのである。しかし、犠牲者が13人、負傷者が200人にも及ぶようになり、日本政府もやっとクマ対策に本腰をいれて……とまではいかないが、対策に乗り出している。法整備の末、警察の機動隊の銃器対策部隊に、ライフル銃による緊急逮捕ならぬ、緊急駆除が認められるようになったのである。だが、それでもどうにも「泥縄感」は否めず、現状の法体系と部隊の規模でどれほどの成果が期待できるのか、まだまだ未知数である。それに、クマ被害対策に参加している自衛隊員が丸腰というのはいかがなものか。確かに自衛隊の第一の任務は国防である。クマ退治は本来の仕事ではないし、動物に対して武器使用できる法的根拠がないのは先述した通りである。今回の出動も「輸送」任務の一環という法的根拠で、箱罠の輸送など後方支援に活動を限定し、クマへの攻撃はあくまで「専守防衛」、つまりクマからの襲撃がない限り反撃できないとされている。とはいえ、兵士よりも凶暴な敵を相手にして、盾とクマ避けスプレーと木銃だけで戦えというのは、あまりにも酷な話のように思える。コロッセオで猛獣と戦った古代ローマ帝国のグラディエーターと同じではないか。

(「自衛隊のライフル銃弾ではクマを倒せない…」その意外な理由とは?)
さて、ここらでもう少し冷静に、ハンターの立場から猟具に関して言わせていただきたい。本来は都市型テロリストに対処する警察の銃器対策部隊や国防が主任務の自衛隊がクマ駆除にどれだけの成果が期待できるか、さらに問題点があるならどこかを考えてみたい。我々民間ハンターと警察、自衛隊のクマ対策部隊の違いは、公務員と民間人という身分上の違いだけではない。道具(銃)や使用弾薬、経験値も全く違うのである。テレビのニュース番組でクマ対策に制服警察官が出動している現場を見ていて、「なんで拳銃で対処せんのやろう」とイライラされていた方々。その疑問も当然である。しかし、警察官職務執行法では警察官の拳銃使用に厳しい条件が課せられ、必要と認める「相当な理由」は緊急避難や正当防衛などに限られている。つまり、野生動物への発砲はその「相当な理由」から認められないのである。そのうえ、拳銃ではそもそもクマに歯が立たない。特にライフル銃弾に比べ、日本の制服警察官が所持する威力の小さい38口径弾(38/100inch=2.54cm×0.38)ではクマの毛皮の下の厚い脂肪層に弾かれてしまう。それどころか、逆に半矢(手負い)にして逆上させ、余計に危なくなってしまう恐れがある。弾頭の初速自体も拳銃弾が秒速300m程度に対して、ライフル弾は音速の3倍の秒速1000mになる。それくらい拳銃弾とライフル弾は威力が違う。昨年末、秋田県のスーパー内に55時間にわたって「立て籠もった」クマに対し、県警が人質立てこもり事件専門の特殊部隊ともいえるSIT(捜査1課特殊班)を派遣したのがニュース映像でも流れていた。しかし、その際もSITは拳銃を使用することなく、箱わな設置等の後方支援に従事していた。そのうえ、今回の警察ライフル部隊の出動では、訓練で繰り返していたような紙の静止標的に射撃するのではなく、動きまわるクマを相手にする。民間ハンターは鳥やキツネやウサギなどの動きの素早い小動物には散弾銃を使用する。もちろんクマ相手でも、散弾のカテゴリーに入るスラグ(1発)弾やOOB(ダブルオーバック)弾という、パチンコ玉くらいの鉛玉が6粒か9粒はいっている強烈な弾を使用することはある。散弾銃は公式的には特殊部隊以外の日本の警察にも自衛隊にも配備されていないはずだが、ライフル銃は当然配備されている。ただし警察、自衛隊双方とも対人用、つまり軍用である。警察は国産の豊和M1500ライフルなどで、自衛隊はアメリカ・レミントン社製のM24対人狙撃銃に国産の64式小銃。ともに使用弾は7.62mmNATO弾、口径は30口径(30/100inch=2.54cm×0.3)である。実は、連発(機関銃)機能がある64式小銃は別として、豊和M1500とM24のオリジナルとされるレミントンM700は猟銃としても流通しており、外見も性能もほぼ変わらない。さらに軍用の7.62mm弾は民間の308Winchester弾とまったく同じ弾、つまり併用できるのである。ただし、口径が同じでも弾頭が猟用と軍用では違い、当然、弾頭重量や火薬量、弾道も異なる。実は、軍用で使用される対人用弾頭は、鉛の弾頭が銅合金で完全に覆われて先端が尖ったFMJ(フルメタルジャケット)弾だけだと、国際条約(ハーグ陸戦条約)で決められている。それ以外は傷口がひどく損傷し、残酷だから使用禁止なのである。理由はそれだけでない。それどころか現在は、7.62mm弾より口径がより小さく、貫通力もあり、当然殺傷力も低い5.56mm弾が小銃弾の主流になっている。自衛隊も64式小銃が7.62mm弾だったのに対し、1989年に制式化された89式小銃から5.56mm弾を使用するようになり、米軍のM4ライフルや仏軍の小銃H&K(Hechler und Koch)416等、西側の制式小銃もすべて5.56mmFMJ弾である。その理由は口径が小さく、弾が小さく軽くなり、より多くの弾数を歩兵が携行できるから……というのもあるが、もっと現実的な理由がある。前線で撃たれて死亡した遺体はそのまま放置される。一方、より小さい弾頭で殺さず負傷させると、まともな軍隊であればその負傷兵を後方へ移送する。そのために、さらに2人の兵力を割かなければならないので、戦力が削がれる。さらに、負傷兵の悲鳴は敵兵の士気を低下させられる……そんな残酷な理由から殺傷力が低く、貫通力の高いFMJ弾の5.56mm口径が主流になったのである。こんな思考回路に陥る人間は、ある意味クマより残酷である。話を戻して、狩猟においても同様に、どんな弾種でも自由に使うことができるわけではない。実際、北海道ではオオワシやエゾフクロウなどの猛禽類が、ハンターが仕留めたエゾシカの死肉を漁った際に残留していた鉛弾頭の破片を摂取して鉛中毒を起こし、死んだとする例が報告されたため、狩猟には散弾銃のスラグ(1発)弾やライフル弾には銅製弾頭の使用が義務づけられている。当然、銅は鉛より比重が小さく、風の影響を受けやすくなり、弾道もブレやすくなる。また鉛より硬いため変形しづらく、弾頭形状も複雑に、そして高価になった。そのため、狩猟ライフル弾は現在、ホローポイント弾という先端が平たく穴が開いた銅製の弾頭を使用している。空力性能上、穴が開いた先端部には緑や青色の先端が尖った樹脂がはめられているが、目標に命中するや先端の樹脂部は取れ、映画『エイリアン』の卵が開く場面のように弾頭がマッシュルーム状に広がることで貫通しにくくなり、目標に大きなダメージを与えるという結果を生む。これが軍用のFMJ弾頭だと、目標にもよるが、動物の骨に当たってもわずかに変形する程度で貫通してしまう。実際、日本ではホローポイント弾が狩猟ではなく犯罪で使用された例もある。1995年に発生し、迷宮入りのまま時効を迎えてしまった国松孝次警察庁長官狙撃事件で使用された凶器、コルト・パイソンから発射され命中した3発の銃弾は、357マグナムのホローポイント弾だと言われているのである。国松長官は重傷を負いながら奇跡的に回復し、長官に復帰。のちにスイス大使などを務めたが、事件は2010年に時効を迎えた。さて、警察のライフル銃部隊や自衛隊に編成されている対人狙撃班は、一般の制服警察官などと違い、普段から銃器の取り扱いに慣れた人たちである。7.62mm弾は弾頭重量や火薬量が変われば弾道が変わるが、射撃場で1日もあればスコープのゼロイン(照準合わせ)は可能なはずである。射撃能力に至っては民間ハンターよりはるかに優秀かつタフだろう。今回、警察に課された任務は複数のハンターを配備し、数人の勢子(追い立て役)で巻き狩り(待ち伏せ)する「先手必勝」パターンでなく、街に侵入してきたところを仕留める「専守防衛」スタイルである。となれば、さらに自衛隊も含めた法整備を進めていけば、警察の能力を結集させ、自衛隊の装備をフルに活用した、大規模で効果的な作戦も組めるようになるであろう。万が一、街中で仕留めそこない、山間部に逃げられて見失えば、そのときこそ自衛隊の対人狙撃班の出番。彼らは山間部での潜伏しながらの隠密行動やサバイバル能力に長け、猟友会から狩猟の知識を受け継げば、クマ狩りにも向いているのではないか。ドローンやヘリ、雪上車などまで展開させたら、かなり効率的な駆除活動が期待できるはずである。しかし今回、自衛隊のクマ駆除活動に与えられたのは、狙撃銃ならぬ木銃である。こと「戦争」状態に至っては軍官民の共同作戦でなければならないのに、それを自衛隊の活動だけ制限するなど片手落ちである。今から「ガバメントハンター」を育成するなどという時間がかかることより、予算、人員、作戦立案などの権限を現地部隊に与え、フリーハンドで活動させるべきではないか。災害派遣にPKO(国連平和維持活動)と自衛隊や警察、海保、ほか官公庁は災害のたびに人命救助や復旧復興に成果をあげてきたのである。自衛隊の第一の任は国防である。「町の便利屋」ではない。そのうえ慢性的に定員割れを起こしており、1人の自衛隊員にかかる負担は増える一方である。それでも、このような国民の生命と安全な暮らしを守るべき事態にもしっかり対峙できるように、直ちに人員補充、そのための待遇改善等の措置を国は急ぐべきではないか。ここに至っては何としてでも現場を見ざるを得ない。不肖・宮嶋、現役ハンターと猟友会員の1人として、いや報道写真家としても「口舌の徒」だけにはなりたくない。現場の地域住民やクマと対峙する自衛隊員らとともに、その恐怖と苦難を共にせず、なにがハンターか。どこが報道写真家か。かくして、やってきました。所は佐竹敬久前知事が「まさに戦争」と表現したばかりか、今年に入ってから死者4人を含む66人もの被害者(11月30日時点)を出し、狩猟を生業にする職業マタギの本家、阿仁マタギの故郷の阿仁を擁する秋田県である。

(比内地鶏約300羽が死んでいるのが見つかる、クマに驚いて圧死したか:秋田)
大館市の鶏舎で10日、比内地鶏約300羽が死んでいるのが見つかりました。近くには、クマのものとみられる足跡があり、市や警察は、「クマに襲われた可能性が高い」とみています。現場は、大館市比内町大葛の住宅の敷地内にある鶏舎です。大館市やJAあきた北によりますと、10日午前7時ごろ、この家に住む生産者の60代の男性が鶏舎の中を確認したところ、飼育していた比内地鶏約300羽が死んでいるのを見つけました。比内地鶏は生後約3か月で、9日夜から10日朝にかけて被害にあったとみられています。鶏舎の周辺には、クマのものとみられる足跡があり、大館市や警察は、「クマに襲われた可能性が高い」とみています。約300羽の比内地鶏のほとんどは、クマに驚いて圧死したとみられるということです。現場のすぐ近くにある住宅のイヌ小屋では、9日に飼いイヌ1匹が死んでいるのが見つかっていました。クマに襲われたとみられています。減少傾向ですが県内では12月に入ってもクマの出没が続いています。

(かまれて死んだ飼い犬、ほえたためクマに襲われたか:山形)
11日朝、鶴岡市の住宅地で、クマ1頭が緊急銃猟によって駆除されました。周辺では9日、飼い犬がクマに襲われて死んでおり、同じクマにかみつかれたとみられています。午前6時15分ごろ、鶴岡市友江町の住宅地近くの路上でクマ1頭を目撃したと歩行者から警察に通報がありました。目撃されたクマは体長1メートル60センチほどで、午前7時20分頃には同じ町内のドラッグストア近くでも同じ個体と見られるクマの目撃情報がありました。そして午前8時半過ぎ、クマは近くの住宅の敷地内で見つかり、鶴岡市の緊急銃猟の判断によって駆除されました。このクマによる人的被害は確認されていません。周辺では3日前から、クマの目撃情報が寄せられていて、9日には住宅の屋外で飼われていた犬がクマに襲われ、死んでいました。駆除されたクマにかみつかれたとみられています。鶴岡市によりますと当時、クマは住宅地から川の方に向かっていたところ、その途中の住宅で飼い犬と鉢合わせとなり吠えられたため襲いかかったようだということです。鶴岡市では、近くでクマの目撃情報があった場合は飼い犬を屋内で飼育するか、夜の間は玄関に入れること。また、ドッグフードや餌を食べ終わったあとの容器は匂いでクマを引き寄せるため犬が食事した後はすぐに片付けることを呼びかけています。

(スキー場にクマ“緊迫の一部始終”:長野)
今度はスキー場にもクマが現れました。ゲレンデを猛スピードで横切る様子も。パトロール隊が出動する事態となっています。3日前、長野県内のスキー場でスノースケートをする男性が360度カメラで撮影した映像です。時刻は午前8時半ごろ、青空の下、銀世界を滑り降りていきます。しかし、滑り出しからおよそ40秒、男性の左手前に現れた黒い影。一瞬こちらへ向かってくるようにも見えます。クマは滑走する男性のすぐ近くを通り、想定外の遭遇に男性は驚きを隠せません。安全な場所まで急いで滑り降ります。この時、リフトに乗っていた人がスキー場に連絡したといいます。もう一度映像を確認すると、クマは男性に近づき、追いかけるような仕草を見せています。3日前、長野県内のスキー場で、滑走中の男性がクマに遭遇し追いかけられたといいます。男性は辛うじてクマから逃げ切りましたが、近くには別の人の姿もあります。今回クマが出たスキー場ではクマよけスプレーを携帯した隊員によるパトロールを強化しています。雪が降っても、まだクマの気配が消えることはありません。新潟県猟友会 池田富夫会長「(Q.これからどこに?)これからクマの出没した所に行く」。番組は10日も、対応に追われる新潟県十日町市で猟友会を取材しました。十日町市では、街がこれだけ白く染まっても、クマの出没が後を絶ちません。9日も、まだ実が残る柿の木にクマが現れ…。「急に出てきて木に登った。一番上、柿がないでしょ。上のほうで食べ始めて、だんだんおりてきた」。クマは周りに人が集まっても気にすることなく柿を食べていたといいます。「ちょっと変、最近のクマは。普通、人間が近づくと一目散に逃げるが、懐いているクマなので、ここから見ていても逃げない」。近くには建物も多く、現場は緊張感に包まれました。猟友会は10日も目撃情報があった場所をくまなく調べます。「この林の中から出てきたクマが、この裏に跡をつけているので、道路を越えて向こうへ行ったか。これから道路の向こうを確認する」。雪がしんしんと降るなか、住宅街に現れたクマの痕跡を探します。するとすぐに…。「これがクマの跡だよ。今朝の跡」。降り積もった雪の上にはクッキリとクマの足跡が。足跡は住宅近くから向かいの道路へと続いています。「道路を越えたか越えてないか確認します」。パトロール中も雪はさらに強まります。現場を入念に調べると…。「この国道を越えたと思うので、国道の向こう側を一回調査します」。クマは交通量の多い目の前の国道を横断したとみられます。向かいの通りへ行くと…。近隣住人が道路を渡るクマの痕跡を確認していました。池田会長「これは今朝。雪が降ったから隠れたけど」「(Q.大きい)大きいよ。約80キロある」「(Q.成獣?)完全に成獣」。の後、猟友会が付近のエリアを改めて捜索。池田会長「越えていないということであれば、この中にいる」。猟友会「出ていないでしょう」。池田会長「出ていないんだよな」。10日はクマが山に戻ったとの結論に至りました。「私たちも知らないことがいっぱい。最近のクマは。クマが増えすぎて、冬眠する穴持たずのクマが増えてきた」。

(「クマ肉」精肉店に問い合わせ増加)
全国的にクマの出没や被害が報道される中、クマ肉にも注目が集まり、扱っている長野県飯田市の精肉店には問い合わせが増えています。店は「自然との関係について考える機会になれば」としています。長野県の南端部に位置し、山々に囲まれた飯田市南信濃。創業68年の精肉店「肉のスズキヤ」の店頭には―。肉のスズキヤ・鈴木理代表:「シカもあるし、あとクマも。クマ肉を味付けてるんですが、この商品のクマ肉は若い個体」。初心者におすすめの味付き肉や煮込むとうまみが増すという上質な脂のスライス肉など、クマ肉が販売されていました。地域では昔からイノシシやシカ、クマなどのジビエを食べる文化があり、店でも商品として扱ってきました。店は、地域の山で猟師がとった動物を受け入れて食肉に加工しています。取材した11月24日も店には、持ち込まれたイノシシと一緒にクマが置かれていました。クマは、ジビエの中でも特別な存在で、肉はもちろん内臓は薬として、毛皮は道具として余すことなく大切に使われてきました。肉のスズキヤ・鈴木理代表:「いわゆる、最高のおもてなし料理です。肉質もそうだし脂の質もそうだし、おいしさもあるし、もたれない。うちの場合は『山獲り』っといって、山でとってくるクマとかイノシシなので、人里とか街に出てきたものではなく、まるきり別物(として販売)」。全国的にクマの出没や被害が報道される中、クマ肉も注目され、問い合わせが増えています。11月24日もクマ肉を買いに来た客がいました。南信濃でも今年は、人里近くでのクマの目撃が相次ぎ、イベントが中止になる影響が出ています。長く地域の山を見てきた鈴木社長は、現状をどう見ているのでしょうか。肉のスズキヤ・鈴木理代表:「クマが増えすぎちゃって、山がクマを養いきれないということ。人の住んでいるところに居つくというのは人への警戒心を持ってないわけですから、悪い学習をしてしまいますよね」。鈴木社長は、人里への出没を減らすには猟に関わる人材の育成や、山の管理が重要だと考えていて、客にも伝えるようにしています。肉のスズキヤ・鈴木理代表:「山の恵みとして、こんなに仕上がったクマ肉なんですから食べてみませんかと。そういうことを考えてもらってもいいのでは」。

(三重県×高校生で開発した「鹿肉ヘルシーキーマカレー」)
LAMPS株式会社(本社:北海道函館市、代表:國分晋吾)は、三重県の「県内高校生等と連携した低利用食材の利用拡大推進業務」の一環として、三重県立高校生と地域の食関連事業者が協働開発した新商品の試食会「三重県×高校生 食べて守ろう!里山の未来~鹿肉活用試食会~」を、2025年12月7日(日)に名張市で開催される「隠 BALIBALI NABARI fes(通称:ばりフェス)」にて実施いたしました。鹿肉ヘルシーキーマカレー(三重県立名張高等学校):丁寧に仕上げた鹿肉はクセがなく、ほろりとほどけるやわらかさです。鹿肉と伊賀牛が生み出す深い旨みを、香り高いスパイスとともに味わえる特製キーマカレーに仕上げました。三重県が抱える環境課題について、三重県では現在、「獣害」や「磯焼け」などの地域課題が深刻化しています。獣害に関しては、農作物被害や交通事故の原因となるニホンジカやイノシシの個体数調整を目的に捕獲が行われていますが、それらの多くが十分に活用されていないのが現状です。また、藻場の減少は、アイゴやブダイなどの植食性魚類の食害や海水温の上昇が原因とされ、これが水産資源や環境保全に影響を及ぼしています。県では、こうした未利用の植食性魚類や捕獲獣を地域資源と捉え、「食べる環境対策」や「いのちの有効活用」を推進しています。県内の高校や食関連事業者と連携し、新たな商品・メニュー開発やプロモーションを通じての利活用を進めています。高校生が挑む「食×地域課題」――新たな社会探究モデルの創出について、本事業は高校生が“取り残された食材”に主体的に向き合い、「食べること」を通じた地域課題解決のモデルを構築し、高校生の地域との関わり方に関する視座を育てることを目的としています。今回のイベントは、高校生が現地での体験や関係者との対話、商品開発を通して取り組んできたプロジェクトの成果を示すものであり、開発した商品の食味や魅力について地域の方々から直接フィードバックを得るとともに、その活動を広く発信する機会となりました。名張高校2年生の生徒たちが開発に関わる高校生自らの手で商品を手渡し、名張市で開催された「ばりフェス」会場には開始直後から多くの来場者が集まり、高校生が開発した“鹿肉ヘルシーキーマカレー”を求める列ができました。生徒たちは自ら試食カップを手渡しながら、「なぜ鹿肉を使うのか」、「どんな思いで商品をつくったのか」を丁寧に説明しました。相手の目を見て話す姿や笑顔で応える様子から、彼らがこのプロジェクトに込めてきた熱量が伝わりました。

(ジビエ学び調理実習:和歌山)
和歌山県白浜町中の南白浜小学校6年生11人が、近くの中区民会館で県の「わかやまジビエ出前授業」を受けた。ジビエについて学び、イノシシ肉を使った調理実習に取り組んだ。県畜産課の高橋康喜さんがジビエについて講話した。野生動物の肉をフランス語でジビエと言い、イノシシ肉は日本語で「ぼたん」、シカ肉は「もみじ」といった呼び方があることや、イノシシやシカによる農作物の食害などを説明。狩猟した動物は肉だけでなく、皮や骨も加工して利用できると話し「頂いた『いのち』を大切にしよう」と呼びかけた。調理実習では、県調理師会白浜支部会長の雑賀弥一さんから指導を受けた。田辺市上芳養のジビエ処理施設「ひなたの杜」で購入したイノシシ肉を中心に、根菜や近海で取れた魚介類などを使って「イノシシ肉のくわ焼き」「炊き込みご飯」「寄せ鍋」を作った。ごはんには、くわ焼きにする肉から取った筋の部分をそぼろにして入れ、鍋は昆布とかつお節から取っただしをベースにして、薄切りのイノシシ肉を入れて味わった。新宙生君は「お肉はやわらかいイメージをしていたけど、かみ応えがあった。臭みがなくておいしかった」、玉置瑠惟君は「肉の名前の呼び方を初めて知って驚いた。ジビエについて少し詳しくなれたし、また食べられる機会があったら食べてみたい」と話した。県は、2017年度から出前授業をしている。本年度は県内の小学校と特別支援学校の計15校で、ジビエを使った調理実習のほか、シカやイノシシの革、獣毛を使ったクラフト教室を開いている。

(クマ出没:宮城)
白石市によると、12日午前6時10分ごろ、白石市斎川上山入前にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、11日午後4時20分ごろ、仙台市泉区西田中萱場山にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
石巻市によると、11日午前8時ごろ、石巻市鹿又新内田にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
石巻市によると、10日午前5時50分ごろ、石巻市泉町3丁目にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、11日午後1時ごろ、仙台市泉区西田中萱場にクマが出没しました。

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12/11
(クマに襲われたか、民家敷地内で飼いイヌが死ぬ:秋田)
9日の朝、大館市の民家の敷地内でイヌが死んでいるのを飼い主の女性が見つけました。クマによる被害とみられています。大館警察署の調べによりますと、9日午前6時ごろ、大館市比内町大葛の70代の女性が屋外にあるイヌ小屋を見たところ、飼っていたイヌ1匹が死んでいるのを見つけました。イヌは体長が50センチほどの雑種だということです。イヌの近くにはクマのものと思われる足跡が残されていて、8日午後7時ごろから9日朝までの間に被害にあったとみられています。

(物置小屋にクマ居座り、緊急銃猟:山形)
9日午前11時40分ごろ、鶴岡市五十川の物置小屋の中にクマがいると、近くで作業していた男性から市温海庁舎に連絡があった。市はクマが居座ったことから、緊急銃猟の実施を判断。ただ、猟銃を発砲した場合、安全が十分確保できないことなどから、本県での緊急銃猟としては初めて麻酔銃を使用し、捕獲した。その後クマは駆除しており、人的、物的被害はなかった。市によると、クマは体長約70センチで雌の幼獣とみられる。小屋のそばを国道7号が通り、銃弾が壁を貫通した場合に止めるバックストップがないことから、猟銃の使用は難しいと判断。幼獣で麻酔が効く可能性が高いため、佐藤聡市長から権限を委任されていた担当職員が午後1時5分、麻酔銃を使用した緊急銃猟を決めた。市職員が銃を使用し、命中させた。猟友会員らの協力を得て収容した後、山中で駆除した。現場周辺では8~9日に2件の目撃情報があり、大きさなどから同一個体の可能性があるという。現場は鈴自治公民館から南に約150メートル。緊急銃猟には、猟銃だけでなく麻酔銃の使用も含まれる。県内での実施は14件目で、捕獲・駆除は13件計16頭となった。9日午前9時35分ごろ、飯豊町椿にある飯豊中のグラウンドで、クマ1頭がいるのを同校の職員や生徒が目撃した。当時は授業中で生徒らは校舎内にいた。町によると、クマは体長約50センチの幼獣とみられる。グラウンドをうろつき、西側の山に逃げていった。同10時20分ごろに同校北側の町民野球場近くで、午後2時50分ごろには北側の路上にいる幼獣が目撃された。同一個体とみられる。この日は午前6時50分ごろ、鶴岡市友江町の農地でも、体長1メートルほどの成獣とみられる1頭も目撃された。

(クマ緊急銃猟、1頭駆除:岩手)
二戸市によると、10日午前、同市上斗米字上川代の農場の牛舎に居座っていたクマ1頭が、自治体判断で発砲できる「緊急銃猟」で駆除された。経営者が8日午前4時半ごろ、クマを発見し、その後通報。付近に設置したわなにかからず、とどまっていた。牛舎では肉用牛約60頭が飼育されている。

(21日開催の全国高校駅伝 クマ出没でレース中止か:京都)
京都市内でもクマの目撃情報が相次いでいることを受け、主催者はコース近辺でクマが出没した場合、大会を中止すると明かした。 江原吉信事務局次長は「クマが出没した場合、警察はその現場に向かうため、レースを続けることはできないと言われている。 クマが出没した場合は、その他の危機的状況と同じ扱いをして中止とします」と説明。

(クマ対策、河川敷で伐採推進)
国土交通省は、クマの通り道となる河川敷で木々の伐採を進めている。各地で相次ぐ被害を受け、クマの隠れ場所となる茂みの除去や、重機による草木のなぎ倒し作業を加速し、出没しにくくする。捕獲用箱わななどの河川敷での設置許可手続きも簡素化し、効率的な駆除につなげる。国交省によると、クマは山間部から河川敷の木立や草むらを通って、市街地に下りてくるケースが多い。国が管理する河川の堤防沿いや中州では普段から伐採作業に当たっている。クマの目撃地点を中心に作業を急ぐ必要があり、政府の2025年度補正予算案に関連経費を計上した。

(「豚熱発生リスク高まる」、県内7例目の野生イノシシ豚熱:鹿児島)
県は、曽於市で豚熱に感染した野生のイノシシ2匹が見つかったと発表しました。曽於市で確認されたのは初めてです。県は、曽於市で今月1日と4日に見つかった野生のイノシシあわせて2匹が、遺伝子検査の結果、豚熱に感染していたと発表しました。県内では、先月からこれまでに豚熱に感染した野生のイノシシが霧島市で5匹確認されており、今回、曽於市で初めて確認されたことで、県内では7例となりました。県は、感染拡大を防ぐため、消毒の徹底やワクチン散布などの対策を強化しており、これまでのところ、霧島市や曽於市の養豚場で、異常は確認されていないということです。県は「豚熱の発生リスクが一層高まっている」として、山林に立ち入るときは、▼ウイルスを拡散させないよう靴の泥を山で落とす。▼死んだイノシシを見つけたら触れずに、県や市町村に連絡することなど注意を呼びかけています。

(野生イノシシの豚熱感染46例目まで広がる:宮崎)
宮崎県内で4月に初めて確認された豚熱の感染は46例にまで拡大しています。豚熱は、アフリカ豚熱と違ってワクチン接種などが可能ですが、県内では野生のイノシシへの感染が広がっています。宮崎県内では小林市や都城市、高原町で豚熱ウイルスに感染し死んだ野生のイノシシが見つかるなど46例確認されています。11月には鹿児島県霧島市でも確認されました。自然の中でウイルスが拡散している状態で、県は捕獲の強化や感染が確認された区域に経口ワクチンを散布するなどして感染の拡大を防ぐ対策を進めています。県は養豚場へ防護柵などで野生動物が侵入しないようにする対策の徹底や、農場入口での消毒などを呼びかけています。県内では1980年以降、養豚農場での豚熱は確認されていません。

(イノシシ豚熱:岡山)
岡山県は10日、鏡野町で発見された野生イノシシ1頭が家畜伝染病「豚熱(CSF)」に感染していたと発表した。県内での感染確認は67例目。県によると、河川敷で衰弱したイノシシを住民が見つけ、県の検査で陽性が確定した。発見場所から半径10キロ圏内を感染確認区域に指定し、狩猟者に野生イノシシの流通自粛を求めている。

(イノシシ捕獲数が過去最多:新潟)
県内で2025年4~10月に捕獲されたイノシシが1990頭(速報値)に上り、過去最多だった24年度の同時期を上回っていることが8日、県の調査で分かった。イノシシの個体数が増えたことが要因とみられる。県は今後捕獲を強化し、農作物被害の軽減につなげる考えだ。県内で2025年4~10月に捕獲されたイノシシが1990頭(速報値)に上り、過去最多だった24年度の同時期を上回っていることが8日、県の調査で分かった。イノシシの個体数が増えたことが要因とみられる。県は今後捕獲を強化し、農作物被害の軽減につなげる考えだ。

(ブナの実、2021年から周期に変化:秋田)
クマによる人身被害が全国で最も多い秋田県で、クマの餌となるブナの実が2021年以降、1年おきに豊作と凶作を繰り返していることが8日、県林業研究研修センターの調査で分かった。センターが先月公表した26年の豊凶予報は「豊作」で、27年は凶作になることが見込まれる。ブナの実の凶作は、クマが人里に出没する大きな要因とされる。豊作の翌年に凶作になった場合は人身被害が深刻化する傾向にあり、23年はけが人の数が過去最悪の70人、同様の状況だった今年も死者4人を含む66人(11月末時点)が被害に遭った。同センターの和田覚環境経営部長によると、ブナの実は通常、5~7年に1回豊作になる。しかし、センターが02年から実施する結実状況調査では、豊作となったのは05年、13年、15年、18年と間隔が次第に狭まっていた。その後は22年、24年が豊作で、いずれも翌年は凶作と、豊作と凶作が隔年周期になった。周期が変化した具体的な要因は分かっていないが、夏が猛暑になった翌年に豊作になるデータもあることから、温暖化が一因として考えられるという。ブナの実は栄養価が高く、冬眠前のクマにとり貴重な栄養源になる。豊作の年はクマの繁殖が盛んになり個体数が増加する一方、翌年が凶作になると生存競争が激しくなり、人里に出没しやすくなる。

(イノシシ、山林火災後目撃多発:岡山)
岡山市は9日、3月に大規模山林火災が起きた南区の児島半島で、イノシシの捕獲強化に向けた実証実験を進めていると明らかにした。火災後に付近の住宅地周辺で目撃情報が相次いでいることへの対応。

(野生クマに襲われ死傷したら「法的責任」誰が負う?)
各地で、ツキノワグマやヒグマによる人身被害が記録的な水準で発生している。環境省が11月17日に発表した速報値によれば、今年4月から10月末までのクマによる人身被害件数は176件、被害者数は196人に到達。2006年度以降の同期で最多だった2023年度(被害件数165件、被害者182人)を既に上回る深刻な状況だ。なかでも深刻なのが死亡者数の増加だ。10月末時点で死者は12人、さらに11月には秋田県湯沢市の山林で高齢女性が死亡する事故が発生した。今年度の死亡者は全国で13人(5日現在)となり、過去最悪だった2023年度(6人)の2倍以上に達している。被害が集中しているのは秋田県(56人)が最多で、岩手県(34人)、福島県(20人)が続く。背景にはクマの個体数増加や、冬眠前の栄養源となるドングリの凶作などが指摘されるが、人の生活圏とクマの活動エリアが重なり始めているとの見方もある。こうした状況を受け、国は法改正を行い、9月から一定の要件の下、人の生活圏における緊急銃猟を可能とした。また、自衛隊による駆除支援が導入され、国家公安委員会規則の改正により、警察官がライフル銃でクマを駆除できるようになった。しかし、そもそもクマの繁殖状況が十分に把握されておらず、状況が改善しているとは言いがたい。クマ被害はすでに社会問題となっている。例年であれば11月末には冬眠に入り、生活圏への出没は落ち着くが、被害の多い秋田県は2日付で被害防止体制の強化を発表する状況。内容としては、自衛隊支援に向けた人員増強、小中学校周辺の巡回や忌避作業、市町村への箱わな・センサーカメラの貸与、さらにツキノワグマ出没による売上減少に悩む事業者向けの経営相談窓口の設置など、多面的な対策が取られている。民間でも企業向けのクマ保険が登場した。東京海上日動火災保険が12月に提供を開始した「クマ侵入時施設閉鎖対応保険」だ。施設内にクマが侵入し、閉鎖を余儀なくされた場合、営業利益の損失やクマ対策費用を補償するという。同社は、「自治体向けに『緊急銃猟時補償費用保険』を提供してきたが、宿泊施設やゴルフ場、キャンプ場などでもクマ侵入による経済的負担が顕在化しており、これを踏まえて新たな保険商品を開発した」と説明している。は、クマに襲われ死亡・負傷した場合、国や個人に法的責任を問うことは可能なのか。動物関連法規に詳しい荒木謙人弁護士は次のように解説する。「結論から言えば、損害賠償責任を追及することは一般的に『ほぼ不可能』です。野生動物であるクマは、ペットや家畜のように特定の人物が占有・管理する『物』ではありません。民法では、飼い犬などが他人に損害を与えた場合、占有者(飼い主)が賠償責任を負うと定めていますが、野生動物には占有者が存在しないため、この規定を適用することはできません。仮に餌付けを行う人物がいたとしても、加害個体の特定と、その個体と餌付け行為との因果関係を立証することは極めて困難で、現実的ではありません」野生動物である以上、誰かの管理下にあるとはいえず、責任追及が困難なのはある意味当然といえる。しかし、人里など「従来は安全と考えられていた場所」で事故が起きても、国や自治体に責任を問うのは難しいのだろうか。「例外的に、国・自治体の国家賠償責任を追及できる可能性はありますが、非常に限定的です。まず、公務員が職務の執行にあたり、違法に損害を与えた場合(国家賠償法1条)。たとえば、条例等に基づきクマの捕獲権限を有する行政が、その権限を適切に行使しなかったために事故が起きた場合などですが、『権限不行使の違法性』の立証が極めて難しく、さらに加害個体と行政が捕獲すべきだった群れとの関連を証明することも困難です。次に、道路や公園といった『公の営造物』の設置・管理に瑕疵があった場合(国家賠償法2条)。動物侵入防止策を講じる義務があったにもかかわらず、怠ったような例が想定されますが、実際には具体例がほとんどなく、こちらも成立はほぼ不可能とされています」以上のとおり、野生動物による被害で国や個人の責任を問うことは極めて難しいのが現状だ。賠償請求が難しい一方で、自治体が独自に補償制度を設けている例もある。被害が深刻な秋田県では、「野生鳥獣(ツキノワグマ・イノシシ)による人身被害見舞金給付事業」が実施されている。秋田県民が2024年4月以降に県内でクマによる事故に遭った場合、死亡30万円、重度被害10万円、人身被害10万円の見舞金が給付されるというもの。要件として、秋田県民であること、県内で発生した事故であること、30日以上の治療を要することなどが定められている。クマ出没が頻発する地域では、住民が外出を控えるなど、日常生活にも影響が出ている。野生動物による人身被害の頻発は、もはや従来の想定を大きく超える事態となっている。結果、従来の対策が半ば無力化し、後手に回ってしまった…。自衛隊の後方支援や警察官による駆除などの動きもあるが、発想の転換を図り、個体数管理も含む、より抜本的な対策で自然の脅威に立ち向かうことが、いよいよ求められている。

(クマ対策で「緊急銃猟実施マニュアル策定」:栃木)
栃木県内でもクマによる人への被害が発生している中で、佐野市は市街地などでクマが出没した時に、自治体の判断で緊急的に銃で駆除する「緊急銃猟」を想定した、実施マニュアルを策定しました。佐野市が策定したのは、「緊急銃猟実施マニュアル」です。緊急銃猟は今年9月に施行された改正鳥獣保護管理法により、市街地などでクマなどが出没した時に、危害を及ぼす恐れが差し迫った場合など、4つの条件に基づいて自治体の判断で緊急的に銃で駆除することができるようになりました。県によりますと、緊急銃猟を想定したマニュアルの作成は、県内自治体では佐野市が初めてということです。佐野市は金子裕市長を本部長とする危険鳥獣対策本部を、11月に立ち上げ、国のガイドラインに基づいて実施マニュアルを策定しました。マニュアルでは、緊急銃猟の普段の事前準備から、実施の手順と対応体制など、役割を明確にしていざというときにスムーズに対応できるようにしています。具体的には、対応体制では内部が判断する本部長と指揮者らの3つの班を、外部は現場指揮者や捕獲班、サポート班など10におよぶ班を編成し、緊急銃猟に当たります。緊急銃猟の実施の判断を現場に移行するのではなく、対策本部長の市長が判断するとしています。県自然環境課によりますと、クマに人が襲われた事案は今年度4件にのぼり、記録がある2008年度以降、13年度と17年度と並び過去最多となっています。佐野市によりますと、市内でクマの目撃情報が12月3日までに38件寄せられています。

(ヒグマ対策で河川の樹木伐採を:北海道)
自民党道連ヒグマ被害対策本部と北海道砂利工業組合は8日、ヒグマが市街地に出没するのを防ぐための対策として、クマの通り道になる川沿いの樹木や土砂を撤去するよう、北海道に要望した。

(ニホンジカの鳴き声解析、繁殖場所や集団の数把握:山形)
山形大農学部の江成広斗教授(45)=野生動物管理学=が、ニホンジカに取り付けた衛星利用測位システム(GPS)を搭載した録音装置データを解析し、雄が雌を囲い込む鳴き声の頻度が繁殖集団の中心部で高いことを突き止めた。広範囲で声を集める別の調査法にこのパターンを反映させることで、繁殖場所や集団の数を把握でき、個体数の適正管理につながることが期待されるという。第2期県ニホンジカ管理計画によると、本県では2009年度に大石田町で1件目の目撃が報告された。23年度は239頭に上り、県内で定着・繁殖している地域がある。イノシシやクマと比べて林業や自然植生への被害が特徴的で、地表面の植物や樹皮を食べるため、土砂の流出など森林環境に深刻な被害をもたらすとされる。江成教授らは19年、立ち木に録音装置を付けて雄の鳴き声を集め、シカが設置エリアに定着しているかを検知する「ボイストラップ法」を開発した。雄がエリアに入った後、雌が定着して集団をつくり始めるまでの段階を確認できる。従来のセンサーカメラに比べてカバー範囲が広く、東北各地で活用されている。今回の調査では、江成教授らが録音機やGPSを搭載した首輪「音響バイオロギング」を設計し、20~22年、雄10頭に装着した。7頭のデータを回収した結果、雄が縄張りを主張する鳴き声「ハウル」は個体差が小さく、雌を囲い込む際の声「モウン」は集団の中心部で多くなることが分かった。この傾向をボイストラップ法と組み合わせることで、個体数の増減把握や、繁殖場所の特定と効率的な捕獲活動が可能になるという。江成教授は「シカは雌が一定数以上になれば爆発的に増える。雄が入ってきても雌が少ない段階で管理することが重要だ」と話す。研究成果は10月、ドイツ哺乳類学会の国際誌に掲載された。

(クマについて考えるシンポジウム:秋田)
相次ぐクマの市街地での出没に県民はどう向き合うべきか、6日に秋田市でシンポジウムが開かれました。専門家はクマと人とのすみ分けの対策に本腰を入れなければ、今後同じ被害が繰り返されると警鐘を鳴らしています。シンポジウムはクマに対する正しい知識を身に付けてもらおうと、県内の報道機関や金融機関が合同で開催し、およそ300人が参加しました。東京農業大学の教授で日本クマネットワークの元代表・山崎晃司さんは、人里に出没するクマについて北秋田市などを拠点に研究を進めています。クマの冬眠は寒さではなく「飢餓」が引き金で、まだ冬眠に入っていないクマは集落周辺で食べ物を見つけている可能性があります。また、クマは飢餓状態になりそうなときに長距離移動をする習性があるといいます。移動の際に集落でカキの実など食べ物を見つけると、その食べ物に対して執着を見せるようになるといいます。第2部では「市街地に押し寄せるクマとどう向き合うか」をテーマに、議論が交わされました。クマがどこにでも現れるフェーズに入っている現状を踏まえ、草刈りや果樹の管理を徹底するなどの対策でクマを寄せつけないようにしてほしいと話しました。

(シカ食害防ぎ、森林再生を:和歌山)
シカなどによる食害対策を考える検討会が11月、2011年の紀伊半島豪雨で山腹崩壊し、復旧を目指す田辺市本宮町上切原の工事現場であった。シカが立ち入りにくくしたり、シカが好まない植物を植えたりする対策が示された。豊かな森林を取り戻すための根気強い取り組みが求められている。

(元グラドル自民議員「わたしも狩猟免許を持っていますが…」)
自民党の衆院議員で、高市早苗内閣で環境大臣政務官に就任した森下千里氏が、8日までに自身のX(旧ツイッター)を更新。各地で相次ぐクマ被害への対策について言及した。5日のポストで「衆議院での環境委員会にて答弁に立たせていただきました。(質問者は国民民主党の臼井秀剛議員)」と報告した森下氏。「今日はクマ被害対策について審議が行われており、ガバメントハンターや個体数把握等について質問がありました。地元でも柔軟な対応を求められています。もう雪も降り始めています。除雪作業もありますので、安全確保が求められます」と記述。さらに「また、ハンターを育成するということに関しても声を多くいただきます」といい、「わたしも狩猟免許を持っていますが、なかなか活動していく難しさを感じています。とは言え、銃の所持許可は慎重に行うべきですし、銃の管理にも万全の備えが必要です」と指摘。「宮城県では鳥獣被害対策専門指導員がおられて、銃の管理は県で行っているとも伺います。こうした事例を取り入れながら、ハンターの育成に取り組んでいただける体制を作っていきたいです」とつづった。森下氏はグラビアアイドル、タレントとして芸能界で活躍した後に政界に進出。2024年の衆院選で初当選した。

(クマ対策のドングリ、山北町が町有地を提供:神奈川)
山北町の湯川裕司町長は8日の町議会本会議で、人の生活圏に出没するツキノワグマ対策として、ドングリ(ブナ科の果実)から苗木を育てる取り組みに町有地を提供する考えを明らかにした。現在、町内の猟師のグループがクマを人里近くから奥山に戻すため、クマが好んで食べるドングリを苗木に育て、奥山に植える活動をしている。活動に町有地を使ってもらうことで取り組みを支援するという。この日の町議会で湯川町長は「(苗木作りをするにも)ドングリが不作で手に入らない。協力できることはやっていきたい」と述べた。池谷仁宏氏(無所属)の一般質問に答えた。今後、グループと協力して町有地から適した場所を選ぶという。

(「マタギの里」小国町のクマ共存策とは:山形)
山形県小国町は東京23区がすっぽり入るほどの広さ。9割以上が森林に覆われ、そのうち8割がブナ林を中心とする天然広葉樹林だ。「旅マタギ」と呼ばれる本家・秋田県の「阿仁又鬼」が約400年前、小国の地を訪れ、狩猟技術を伝えたとされる。以来、マタギによる独自の文化や習慣を継承してきた。250頭以上のツキノワグマを仕留めた猟歴55年のベテランハンターに、クマとどう共存すべきか聞いた。

(本州で唯一のクマなし県があった)
クマによる人的被害が東北地方を中心に相次いでいる。そんな中、本州で唯一、野生のクマがいないのが千葉県だ。今いないだけでなく、過去にいた痕跡もない。その理由とは。国内にいる野生のクマは、ヒグマとツキノワグマの2種類。ヒグマは北海道のみに生息し、本州以南にいるのはツキノワグマだ。本州では千葉以外の全都府県にいる。四国では頭数が少なくなって絶滅が危惧されているが、いることはいる。九州では過去には生息していたが、確実に目撃されたのは1957年が最後で、以降、絶滅したとされる。一方、千葉では「過去にいた痕跡」さえない。

(イノシシ被害が前年比3割増:宮崎)
宮崎県内各地ではイノシシによる農作物被害が深刻化している。長年、鳥獣駆除に携わる日之影町の有害鳥獣駆除員は、イノシシの生息数増加と被害拡大を肌で感じており、「昔はイノシシを見ることがなかったが、今は集落近辺で子連れのイノシシが歩いている」と現状を語る。高齢化による狩猟者の減少が、この問題に拍車をかけている。九州ではクマによる被害の心配が少ない一方、宮崎県内各地ではイノシシが頭を悩ませる存在となっている。県によると、2024年度のイノシシによる農作物などへの被害額は約1億3,000万円に上り、前年度に比べ約30%増加した。日之影町で20年近く鳥獣駆除を行っている田中弘道さんは、「昔はイノシシを見かけることはなかったが、今は田んぼや集落付近でも子どものイノシシが連なって歩いている。かなり増加していると思う」と話す。田中さんが田起こしをしていた際に撮影した映像には、イノシシがトラクターの近くを平然と歩く様子が記録されている。日之影町によると、2024年度のイノシシによる農作物などへの被害額は約470万円。ここ数年、国の事業を活用して防護柵を設置するなど対策の効果があり被害額は減少傾向にあるものの、農業を基幹産業とする日之影町にとっては依然として深刻な問題である。有害鳥獣駆除員 田中弘道さん:この畑は昨年まで作付けがあったが、イノシシが全て掘り返している。ミミズを食べるために掘り起こす。今年から作付けができない状態。さらに足跡をみつけ、「かなり大きい」と話す。田中さんも農作物を守るため、防護柵など様々なイノシシ対策をとっているが…。有害鳥獣駆除員 田中弘道さん:この向こう側に栗とかあるから入らないように作ったけど、獣道を通ってきて、これだけ押し上げて獣が中に入っている。かつてこの地域では、複数の猟師が協力して獲物を追い込んで仕留める「巻き狩り」が盛んに行われていた。しかし、高齢化による狩猟者の減少で「巻き狩り」が困難となり、イノシシ増加の一因となっていると田中さんは感じている。現在、田中さんは罠を仕掛けて年間約150頭のイノシシを駆除している。被害を減らすには、地道に狩猟を続けるほかないと話す。有害鳥獣駆除員 田中弘道さん:地域住民が一緒になってですね、罠で一匹一匹捕獲するしかないと思う。県内の農作物に被害をもたらすイノシシは、人にも危害を加える恐れがある。万が一イノシシに遭遇した場合、大きな声を出したり騒いだりすると突進してくる恐れがあるため注意が必要だ。イノシシに背中を向けずにゆっくりと後退し、物陰や建物の中に逃げるようにしよう。

(「一日狩猟体験会」開催へ:東京)
東京都猟友会青梅地区会員で構成する青梅猟友会(青梅市黒沢)が3月1日、「巻き狩り猟」を開催する。当日は銃砲による巻き狩り猟を行う。6時30分にJR青梅駅集合。その後、入山し、斜度のある山を登りながら銃砲によるシカ、イノシシの狩猟を見学する。下山後に解体作業を体験。同猟友会メンバーから活動報告を聞き、質疑応答の時間も設ける。巻き狩り猟は、シカやイノシシなどが生息する狩場を多人数で四方から取り囲み、囲いを縮めながら獲物を追いつめて射止める比較的大人数での狩猟をいう。日の出町・青梅市・あきる野市などを中心に西多摩山あいの地域ではクマの目撃が相次いでいる。こうした事態を受け、都は11月28日からクマが冬眠に入る目安の12月末まで、都猟友会のハンターによる緊急パトロールを続けている。

(クマ出没抑制へ「巻き狩り猟」を広めたい:秋田)
来春から始まる緩衝地域でのクマの管理捕獲を効果的に進めるため、秋田県は8日、猟友会員らを対象にした「巻き狩り猟」の研修会を来年2~3月に計画していると明らかにした。同日、開会中の12月県議会に追加提出した本年度一般会計補正予算案に関連費用150万円を計上した。

(狩猟に若い力を、魅力発信へ県がセミナー:石川)
県内の狩猟者が高齢化する中、若い担い手を確保しようと、県は狩猟の魅力発信に取り組んでいる。特に最近は全国でクマによる人への被害が相次ぎ、県内でも出没が多数確認される中、県の担当者は「若い人材の確保と育成は急務」と話す。金沢市小立野の県立図書館で7日にあった県主催の「狩猟の魅力発見セミナー」。事前の申し込みに集まった40人余が、県猟友会の会員ら現役ハンター4人を囲んで話を聞いた。自身の経験を語ったのはハンター歴40年以上のベテラン。イノシシや鹿による食害に対して狩猟の必要性を訴え「若い人に免許を取ってもらって次につないでいくことが私の使命だと思っている」と呼びかけた。一方、4年目の新人ハンターは「自分の知らない世界を学べる」と魅力を説明。猟期の具体的な活動も紹介した上で、セミナーの参加者と近い立場から免許取得への背中を押した。参加者からは「危険な目に遭ったことは」「猟の場所の決め方や獲物の分配の方法は」などと質問が相次いだ。「免許を取得しても仕事で土日しか活動できない。そういったハンターもいるか」との問いには「多くがそう。中には猟期の中で1、2回の人もいる」と答えていた。県によると、3日時点で今年確認されたクマの出没は375件。2005年以降の統計では3番目に多い。登壇したハンターも「今年は特にクマを見ることが多い」と実感を話す。こうした中、技術と経験の両方を備えたハンターの育成は重要課題だが、県内の狩猟者は60歳以上が半数以上を占め、高齢化が進む。県の担当者は「セミナーなどを通じて狩猟の魅力を発信し、今後も広くなり手を募っていきたい」と話した。

(猟友会の出動報酬、来年度引き上げへ:秋田)
8日に開かれた秋田県能代市議会の一般質問で、斉藤滋宣市長は、クマの出没対応で負担が増している猟友会員への出動報酬を来年度に引き上げ、新たに緊急銃猟対応時の報酬を設ける方針を明らかにした。関連経費を来年度当初予算案に盛り込む。

(クマ被害防止策、ゾーニング管理強化に150万円:秋田)
秋田県は8日、ツキノワグマの被害防止対策費を含む約108億2千万円の追加補正予算案を県議会に提出した。クマと人の生活圏を分けるゾーニング管理強化事業150万円を計上したほか、猟犬を使った猟や、大勢のハンターでクマを追い込む「巻き狩り」を試行する考えが示された。ゾーニングは、市街地とクマのすむ「コア生息地」を緩衝地帯によって分ける。緩衝地帯の中で、クマが市街地に出てきてしまう可能性がある地域を市町村が「管理強化ゾーン」に設定し、春の捕獲を強化する。具体的には、2月から3月上旬に市町村の担当者や実際に猟を行うハンターを対象にした座学と現地実践の研修をそれぞれ1回行う。猟犬を使った猟も秋田市内で3回、試みる方針。捕獲頭数については現時点では定めず、今年度中に出るモニタリング調査の結果などを踏まえて頭数を管理するという。ツキノワグマ被害防止対策のうち、新規事業はゾーニング管理強化事業150万円と広域緩衝林帯整備事業2050万円。いずれも国の補正予算に対応している。広域緩衝林帯整備事業では、住宅地や農地などに面する森林の不用木を除去する。このほか、これまでの農家向け研修会や新型の電気柵実証設置の農作物鳥獣被害防止対策事業に132万円を計上した。鈴木健太知事は県議会で「人の日常生活圏における人身被害ゼロを目指す」と宣言している。

(「アーバンフォックス」や「アーバンディア」:北海道)
北海道釧路市に今年度(12月2日まで)寄せられたキタキツネの目撃や苦情の通報は85件で、最多だった昨年度1年間(97件)に迫る勢いで増えている。エゾシカも67件に達して高止まりが続く。「餌を与える人がいる」との苦情が後を絶たず、「アーバンフォックス」や「アーバンディア」と呼ばれる人なれした個体が当たり前になりつつある。市環境保全課によると、キツネは住宅地や繁華街など市内各地に出没し、買い物袋を持った人を追いかける姿が目撃されている。散歩中の餌やりのほか、車の窓から食べ物を与える人がいるとの苦情もあった。市が餌やりをしていた人に理由を尋ねると「姿がかわいい」「やせてかわいそう」などと答えたという。キツネは寄生虫エキノコックスを媒介。人がキツネに触れたり、わき水などを介したりして寄生されると、潜伏期間を経て重い肝機能障害などを起こす。同課の担当者は「餌をやると人間を恐れなくなり、依存して何度でもやってくるようになる。自分で餌を探さなくなることは野生動物にとっても不幸なこと」と理解を求める。市は箱わなを設置しているが、今年度は捕獲の割合が低下。わなへの警戒心が高まっている可能性もあるという。エゾシカに関する通報は、統計を取り始めた2014年度は18件だったが、20年度に70件に急増して以降、毎年80~90件台の高水準が続いている。食害の通報が多く、今春は住宅街の「鳥取10号公園」や市中心部の幣舞(ぬさまい)橋に近い「ぬさまい公園」で、花壇のチューリップの大半が食べられた。交通事故にも注意が必要で、同課は「1頭に続いて2頭目、3頭目が飛び出してくることもある。周囲に気を配って運転してほしい」と呼びかけている。

(猟銃製造のミロク、株価11%安:高知)
猟銃製造大手のミロクが大幅に反落している。前日比167円(11.92%)安の1233円を付けた。8日、2025年10月期(前期)の連結業績の下方修正を発表した。最終損益は25億円の赤字(前期は22億円の赤字)。

(ハンター試験で出題ミス:北海道)
北海道が実施した狩猟免許試験で、正解がない問題を出題するミスがあったことがわかりました。道によりますと、12月7日に道内10振興局で実施した狩猟免許の"知識試験"で、鳥獣保護管理法に関する問題のうち1問について、回答の選択肢に正解がない状態で出題していました。試験当日、受験者から「選択肢の中に正解がないのではないか」と指摘がありましたが、道は設問と根拠法令を確認した結果、誤りはないと判断し試験を続行。翌8日に環境省へ照会したところ、問題の誤りが判明しました。道はこの問題について受験者258人全員を正解扱いとする措置を取りました。これにより2人が不合格から合格となりました。道は2人に謝罪し、後日改めて"技能試験"を実施することを説明して理解を得たということです。道は再発防止策として、野生動物対策課内に知見を有する職員による検討会を設置し、法令解釈を含めた問題のチェック体制を強化するとしています。狩猟免許は鳥獣保護管理法に基づく国家資格で、猟法ごとに、第一種銃猟免許(散弾銃、ライフル銃)、第二種銃猟免許(空気銃)、わな猟免許、網猟免許の4 種類に分かれています。各狩猟免許を取得するためには、知識試験、適性試験、技能試験にそれぞれ合格する必要があります。道によりますと、道内での狩猟免許受験者、合格者はここ数年増加傾向にあります。

(今年の狩猟免許試験の合格者は190人:鳥取)
今年、鳥取県が実施した狩猟免許試験の合格者は190人で2022年以降では最も多くなりました。鳥取県によりますと今年、鳥取県内では6月(倉吉会場)と8月(米子会場・鳥取会場)、11月(倉吉会場)に狩猟免許試験が行われました。合格者は190人で、網猟は7人、わな猟は125人、第一種銃猟が58人でした。年齢別では20代未満18歳以上が8人、20代31人、30代47人、40代46人、50代32人、60代16人、70代10人です。銃を使う第一種銃猟の合格者の水位は2022年29人、2023年36人、2024年35人、2025年は58人となっています。狩猟免許全体の試験合格者は2022年149人、2023年171人、2024年163人、2025年190人で今年は2022年以降、最も多くなっています。試験の時に配られたアンケートによると、捕獲する理由は「ジビエに興味がある」「鳥獣被害を減らすため」が多かったということです。

(狩猟免許持つ「公務員ハンター」採用検討:新潟)
新発田市は9日、急増するクマの目撃情報、出没に迅速に対応するため、2026年度に狩猟免許を持つ公務員「ガバメントハンター」の採用を検討していると明らかにした。経験豊富な地元猟友会メンバーを想定し、会計年度任用職員として採用する方針。実現すれば県内初となる見込みだ。市議会12月定例会本会議の一般質問で、二階堂馨市長が答えた。

(高校生がイノシシ捕獲おり製作:鳥取)
農地を荒らす害獣の駆除に役立ててもらおうと、新見高(新見市新見)生徒がイノシシ用の捕獲おり3基を製作し、市に納品した。市と新見高の連携事業の一環。市から材料の提供を受け、頑丈なおりを作り上げた。

(クマ緊急銃猟に職員も:岡山)
12月定例美作市議会は10日、一般質問を続行。4氏が市政全般をただした。市はクマなどの出没時に自治体判断で市街地での発砲を可能とする緊急銃猟で、狩猟免許を持つ市職員が地元猟友会の一員として出動する可能性を示した。

(緊急銃猟に備え人材育成へ、ツキノワグマ対応で支援:三重)
三重県は9日の県議会予算決算常任委員会で、出没が相次ぐツキノワグマの緊急銃猟に備え、人材育成を支援する考えを示した。専門知識を学ぶ研修の開催や、県外で開かれる講習会の参加者に対する補助などを想定。伊藤雅慶委員(新政みえ、1期、三重郡選出)の質疑に対し、枡屋典子農林水産部長が明らかにした。県によると、緊急銃猟を実施するには狩猟免許の取得に加え、猟友会に所属してベテランの指導を受けたり、射撃場で開かれる講習会に参加したりして、専門技術を習得する必要がある。枡屋部長は答弁で、クマの銃猟について「県内に経験者はほとんどいない。非常に危険で、これまでにない対応が必要」と説明。狩猟免許の取得者を対象に、講習会を開く考えを示した。加えて「クマに関する知識や捕獲の技術を持っている人も、ほとんどいない」と説明。捕獲の経験がある県外の人材を講師として招き、人材育成を進めるための研修を開く考えも示した。一方、県内では銃猟の練習環境に課題がある。散弾銃の練習施設は伊賀市にあるが、クマの駆除に使うライフルでの銃猟を練習する施設は県内になく、県外の施設で練習する必要がある。このため、枡屋部長は県外での練習を支援する考えも示した。支援の具体的な方法は決まっていないが、県外で開かれる講習会などに参加した人を対象とした旅費の補助を想定している。また、枡屋部長は駆除したクマの処分について「県立博物館に運び込んで学術研究に活用している」と説明。「駆除数が大幅に増えた場合は、市町と相談して対応を検討する」と述べた。県はツキノワグマについて、自然環境保全条例に定める希少動物の指定を解除し、人里に出没した場合は「原則駆除」とする方針。この方針を盛り込んだ「管理計画」を月内に策定する。

(ふるさと納税「クマ被害対策支援の寄附受付を開始」:山形)
山形県米沢市がクマ被害対策に充てるふるさと納税の寄附受付を開始した。近年クマ被害が全国的に増加しているなか、同市でも出没や被害が深刻化しており、地域住民の安全を守るため対策強化が急務となっている。市によると、2025年は山間部だけでなく、住宅街や市街地、小中学校などの教育施設付近でもクマの姿が相次いで確認されている。人的被害や建物被害も発生しており、出没頻度は「これまでにない水準」に達しているという。こうした状況を受け、米沢市は対策の柱として、クマ出没情報の周知強化、市民への注意喚起、捕獲体制の強化、出没対策への支援の4点を掲げている。米沢市のLINE公式アカウントやXでの速報発信、広報車によるアナウンスに加え、早朝や夕方、夜間の散歩やジョギングの自粛を呼びかけるほか、柿の実など誘引物となる果実の除去を促している。捕獲に向けた体制強化としては、箱罠の設置や緊急銃猟の整備を進める方針。また、ヤブの刈払い、雑木林伐採、不要果樹の伐採にかかる費用を補助し、クマが市街地に近づきにくい環境作りも進める。今回募集する寄附は「猟友会の活動費用」「箱罠の設置など捕獲活動関連費用」「ヤブの刈払い、雑木林伐採、不要果樹伐採の助成費用」の事業に活用される。寄附額は1000円、3000円、5000円、1万円の4区分で、募集期間は令和8年3月31日まで。返礼品は設定されていない。米沢市長は「豊かな自然に囲まれた米沢市において、近年クマの出没が市民の皆様の生活を脅かす深刻な問題となっております。私たちは、市民の皆様が安心して暮らせるよう、そして米沢市の豊かな自然と共生できるよう、クマ被害対策に取り組んでおります」。「しかし、これらの対策には多大な費用と労力を要し、市の予算だけでは十分に対応しきれない現状があります。この度のふるさと納税を通じたご支援は、米沢市のクマ被害対策に直接的に充てられ、地域の安全・安心に繋がる確かな力となります。皆様の温かいご支援とご協力を心よりお願い申し上げます」と呼びかけている。

(中国製“おもちゃの銃”全国で流通、回収期限12月31日が迫る:高知)
ゲームコーナーの景品として扱われ全国に流通する、中国製の“おもちゃの銃”の回収期限が12月31日に迫ってます。実際の拳銃と同様の発射機能があり、来年以降に所持・販売した場合は銃刀法違反となる可能性があるため、全国の警察が今年中の回収を呼びかけています。回収が呼びかけられているのは、中国製の玩具銃「リアルギミックミニリボルバー」などです。ゲームコーナーの景品として扱われ、高知県内では、2024年12月から2025年1月にかけて、中西部と西部の2か所で扱われていました。玩具銃(おもちゃ)ですが、実際の拳銃と同様の発射機能があることがわかっていて、全国で回収が呼びかけられています。警察庁によりますと、この“おもちゃの銃”は、今年10月までに全国で17種類・およそ4700丁が回収されているということです。高知県内では、警察が発表した7月25日の時点で「360丁」が流通していて、このうち「77丁」が回収済みだということです。回収の期間は2025年12月31日までで、この回収期間を過ぎた後=来年以降に所持・販売などを行った場合は、銃刀法違反で摘発されるおそれがあるということです。警察は、心当たりがある人は最寄りの警察署に届け出るよう、強く呼びかけています。

(冬眠しないクマが各地で人襲う)
雪が積もるなか、冬眠しないクマに襲われる被害が全国で相次いでいます。専門家は年を越してからも被害が深刻化する恐れを指摘しています住民も驚くのは雪が積もるなか、クマが出没したこと。スキー客らでにぎわいを見せる温泉街の長野県野沢温泉村で除雪中の男性が襲われました。男性は顔や足などをひっかかれ転倒、骨折の重傷を負いました。今シーズン最強の寒気が列島を襲うなか、全国各地で冬眠しないクマに襲われる被害が相次いでいます。雪がちらつく富山市の住宅街では、新聞配達中の70代夫婦が襲われました。最低気温マイナス3℃を下回った岩手県奥州市でも、いなくなった飼い犬の足跡を追っていた女性がクマに遭遇してけがをしました。雪が降る前までは、山に近い柿の木や果樹園の果物などを餌(えさ)にするケースが多かったのですが、季節が進んだ今、さらなる注意が必要だと専門家は指摘します。岩手大学農学部 山内貴義准教授「柿の実を逆に食べているうちは、まだそこに依存する形なのでまだいいんですけども、食べ物がなくなった時に今度は家の中に入って、何か食べ物を物色し始めたりとか、そういった行動を起こすのじゃないかと思って非常に心配しています」。秋田市の住宅の玄関先に現れたクマ。玄関のクリスマス用の飾りを必死にかじっています。そこに帰宅した住民は…。クマ対策のため子どもを学校に迎えに行った帰りでした。クマが食べていたのはリースと一緒に飾っていた小さなリンゴだったといいます。クラクションを鳴らしてもなかなか逃げていかなかったというクマ。目撃されたのはJR秋田駅から車で10分ほどの住宅街。秋田市では12月の6日間だけで、クマの目撃情報が59件に上っています。山内准教授「徘徊(はいかい)して餌を探索していても基本的に危険が及ばないと、人間は何もしてこないことをだんだん学習してきているのだと思う。人の餌に依存した個体は冬眠が遅れると言われていて。場合によっては年をまたいでまで、出没が続く可能性があるなと思っている」。

(銃の準備中にクマに襲われたベテランハンター、顔から出血したまま追跡し駆除:新潟)
新潟県新発田市で先月、クマの出没情報を受けて出動した猟友会員の奥村勉さん(80)が、駆除しようとした際にクマに襲われて負傷した。狩猟歴60年で初めての経験といい、奥村さんは読売新聞の取材に対し、「ハンターは命がけのボランティア」だと実感を口にしている。「クマのフンや柿の木をひっかいたような跡がある」。先月12日朝、同市の押廻地区でクマ出没の痕跡があるとの通報が市に寄せられ、市から依頼を受けた奥村さんが出動した。奥村さんが市の職員らとともに地区を捜索すると、民家の敷地内の竹やぶにいるクマを発見した。クマが逃げ出したため、先回りしようと軽トラックに乗り込んだ。同地区から約1キロ離れた二本木地区の水田地帯に着き、銃を準備しようと軽トラから降りたそのときだった。目の前に体長約1・5メートルのクマが現れた。気がついた瞬間に飛びかかられ、顔面や後頭部をかみつかれた。クマともみ合っていると、市の職員の車が到着した。クマは奥村さんから離れ、再び逃走した。出血がひどかったが、現場に他の猟友会員はいない。「おれが仕留めるしかない」。すかさず銃に弾を込め、クマを追跡して駆除した。その後、救急搬送され、口や鼻の周り、後頭部を縫うなどの治療を受けた。当日中に自宅に戻ることができた。クマに襲われたときのことは「必死で覚えていない」と振り返るが、「他の人がけがしなくて良かった」と表情を緩めた。奥村さんは狩猟歴60年のベテランだが、クマに襲われたのは初めて。近年、特に今年は、人里にクマが出没する事案が増えたと感じている。一方、高齢化とともに自身の周囲でも猟友会員の減少が進む。「手間も金もかかるから、よっぽど好きでなければ、やる人はいない」と担い手の確保に危機感を示す。「警察でも自衛隊でも、クマ駆除の訓練を行う人を増やさないといけない」。奥村さんは、人身被害の拡大を防ぐためにはさらなる体制の強化が必要だと訴えている。クマに襲われないためにどうしたらよいのか。県は、クマの活動が活発になる早朝や夕方の入山は避けるよう促している。また、県ホームページから確認できる「にいがたクマ出没マップ」を見て、出没があった場所には近づかないよう呼びかけている。やむを得ず山に入る場合は、複数人で行動し、鈴など音の鳴るものやクマ撃退スプレーを携行することも重要という。クマに出会ってしまった際は、慌てずにゆっくり後退し、襲われた場合は、地面に伏せて両手で首の後ろを守る防御姿勢を取るよう勧めている。

(特定外来生物キョンが江戸川を泳いで東京の土を踏む日)
東京のお隣、千葉県で外来種のシカ「キョン」が爆発的に増えているのを知っていますか? その小さなシカが、川を渡り、東京23区内に現れる日はもうすぐそこかもしれません。『新 都市動物たちの事件簿』(佐々木洋著)では、プロ・ナチュラリスト(プロの自然解説者)の著者が思わず人に教えたくなる“都会派動物たち”のエピソードについてお伝えしています。今回は本書から一部抜粋し、千葉で爆発的に増えるキョンの生態と、その驚異的な拡大の背景について紹介します。日本には、爆発的に増え続けるキョンに悩まされている地域がある。それは、千葉県の房総半島である。正確には、今では、房総半島とその周辺の地域、と言ったほうがいいだろう。ここのキョンは、猛スピードで、数ばかりでなく、生息域も拡大している。こちらのキョンは、2001年に閉園した勝浦市内にあったレジャー施設から、1960年代から1980年代にかけて逃げ出し房総半島に定着したと考えられている。2025年1月9日の「朝日新聞」のウェブ記事によれば、2023年には千葉県内のじつに17市町で生息が確認され、その数なんと推定8万6000匹だそうだ。2006年の千葉県内の推定生息数は1万2200匹だったので、わずか17年ほどで7倍近くも増えたことになる。このペースでいけば、県内の推定生息数が10万匹を超えるのは時間の問題だろう。キョンが千葉県内で爆発的に増えた主な原因は、5つあると私は考える。1つは、ものすごい繁殖力によるものだ。2つ目は、温暖な房総半島の気候がキョンに適していたことだ。3つ目は、餌が豊富であることだ。4つ目は、キョンを日常的に襲う天敵がいないことだ。ここまでは、伊豆大島のキョンと同じだが、房総半島のキョンが増え続けている理由には、もう1つ見逃せないものがある。それは、なわばりを守る習性の強いキョンがどこまでも生息域を広げていくことができる立地条件がある、ということだ。四方が深い海に囲まれた伊豆大島とは違い、勝浦市のキョンはほかの市町などに簡単に広がっていけるのだ。その結果、今、県境を越え、隣の茨城県各地でも次々とキョンが目撃されている。茨城県のホームページでは、2025年4月末時点での県内でのキョンの確認はわずか4例となっている。だが、それらは、死体が見つかった2例に、生存個体がセンサーカメラで撮影された2例を足した、確実なもののみである。単なる目撃情報まで加えていくと、かなりの件数になるだろう。そして、ついに茨城県は、2024年4月1日以降に県内で撮影されたキョンの画像や動画の提供に対して1件につき2000円を支払い、県内自治体から許可を受けた狩猟免許を持つ個人や団体が、県内でキョンを捕獲した場合には、1匹につき3万円を支払うという、キョン褒賞金制度をスタートしたのだ。県内への本格的な進出が始まってからでは遅いからである。じつは、キョン進出の懸念は、東京にもある。東京と言っても伊豆大島のような島ではなく、本土の都心部だ。千葉県にもう一度目を戻すと、県内ではすでに柏市に到達している疑いがある。2023年12月16日の「週刊現代」のウェブ記事によると、柏市の農家の方が、3度も市内でキョンを目撃しているというのだ。このことは、何を意味するか。続いてキョンが、松戸市や市川市などへ進出したとしよう。すると、もう江戸川を渡れば東京23区の葛飾区や江戸川区なのだ。キョンはシカの仲間なので、泳ぎは達者である。実際に、私は利根川を泳いで渡っていると思われる画像を見たことがある。また、房総半島では、海を泳ぐキョンの姿がときおり目撃される。キョンは、江戸川の柴又付近の約150メートルの川幅など、難なく泳ぎ切ることができるはずだ。もちろん、人や自動車などが渡る国道6号線の新葛飾橋や国道14号線の市川橋を使う可能性もある。そして東京都に入ったあとは、江戸川の河川敷に沿って移動し、近くの都立水元公園でマスクラットに「合流」するかもしれない。外国から連れてこられ、管理上の問題などで野に放たれた小さな外来のシカが、ついに東京23区の土を踏む時が迫っている。そのXデーは、予想以上に近いかもしれない。

(小さな村に公務員ハンター2人、異例の体制で新人育てる師の思い:北海道)
「いたいた、シカ4頭」「シカの群れって面白くて、血縁関係で集まってるわけじゃなくて……」。11月下旬、北海道占冠(しむかっぷ)村の野生鳥獣専門員・浦田剛さん(48)は、車窓から双眼鏡をのぞき込みながらシカの生態を熱っぽく語っていた。助手席には後輩の小田中温(おだなかあつし)さん(26)。村のクマやシカ対応を一手に担う「ガバメントハンター」の師匠から弟子への生きた授業だ。2人はこの日、ヒグマの行動を調べる定点カメラの回収のため、役場から車で30分ほどのトマム地区の山林に向かっていた。道中、浦田さんは運転席から目を凝らし、次々とシカを見つける。「シカによる畑の食害もある。群れの規模や行動を把握したい」と説明しつつ、「でも正直、楽しくて見たくなっちゃう」と笑う。隣の小田中さんも共感するようにほほえんだ。目的地につくと、小田中さんが茂みに分け入り、木にくくりつけたカメラを手際よく外す。数日前にヒグマの足跡を見つけた林の脇道を撮影していたもので、個体の体格や年齢、性別を把握する手がかりを期待していた。だが姿は映っていなかった。浦田さんが「どこ行ったんだろうね」と問うと、小田中さんは「カメラ手前で茂みにそれたんでしょうか。雪が解けて足跡が見えにくいけど、ここで途切れているのかな」と地面を指しながら分析。自然に残る情報からヒグマの動きを読み取る力も鍛えられていた。小田中さんは今年4月、狩猟免許を持つ自治体職員、ガバメントハンターの卵として占冠村にやってきた。全国でクマ被害が深刻化し、ハンターの成り手不足や高齢化が叫ばれる中、人口約1400人の小さな村に2人目の専門職員が誕生するのは異例だ。

(危険な「人間依存型クマ」特徴は?)
今、最前線のハンターが危険性を訴えるのが「人間依存型のクマ」です。そのクマの特徴は。秋田市では12月に入っても市街地の中心部でクマが徘徊(はいかい)しています。6日には午前6時ごろから8時ごろまでの2時間で17件もの目撃情報が。同一の個体なのでしょうか。番組の取材班が入手した防犯カメラの映像にクマの姿が…。時刻は午前7時ごろ。歩道を歩く人がいるなか、その先にある建物の脇にクマが現れます。歯医者の建物を通り過ぎると、歩行者と鉢合わせに。するとクマは車の前に飛び出し、車道を横断していきます。その後もクマが走り去った方向で複数の目撃情報が…。住宅街にある弁当店のスタッフは驚きを隠せません。冬眠の時期になっても市街地をうろつく「アーバンベア」にハンターは注意を呼び掛けています。クマ撃ちの“マタギ” 西村昭二さん(53)「山に戻っていないクマなので、食の変化というのは人間に依存している『人間依存型クマ』。もう人里でしか餌(えさ)を食べない感じになっているのだろう」。クマの出没が相次いだ2年前、人間依存型クマの行動が記録されていました。岩手県で牛小屋の中に侵入したクマを捉えた映像です。牛が頭を出して餌を食べているなか、奥を見るとクマが3頭いるのが分かります。さらに左側にも。この牛小屋には合わせて5頭のクマが現われ、牛の餌を食べていました。クマ撃ちの“マタギ” 西村昭二さん「通年で牛舎にクマが通って餌を食べている状況。1頭、2頭、3頭、4頭、5頭とどんどん増えていって牛舎に餌があると認識したクマが餌場として通うようになってしまった」。市街地でクマの出没が相次いでいる岩手県。二戸市では8日から農場の牛小屋にクマが居座り、自治体などが対応しています。人間依存型のクマは人を恐れない傾向があると警鐘を鳴らしています。クマ撃ちの“マタギ” 西村昭二さん「牛舎の中に入って20メートルくらいまで近付いても(クマと)目は合うが逃げなかった。人間が危害を加えないことを学習してしまったクマ。今の『アーバンベア(都市型クマ)』も全く一緒」。もそも雑食であるクマは冬眠前に脂肪を蓄えるため、秋にはブナやミズナラなど比較的カロリーが高い木の実を食べるといいます。ところが今年、人里に現れるクマは様子が違います。9月、牛小屋の近くに現れたのは丸々と太った巨大なクマ。地面に付きそうなほど脂肪がたっぷりと垂れ下がっています。体重は165キロ。牛の餌を食べていたとみられます。岩手県内の別の牧場では今年6月から今月までクマが度々、出没しています。2年前から牛の餌を狙ってクマが牛小屋に侵入するように…。最初のころは警戒する様子を見せていたものの、クマの行動は日を追うごとに大胆になっていきます。牛の目の前で餌が出てくるパイプに顔を突っ込んでいます。食べているのはトウモロコシなどが配合された飼料です。作業をしていた牧場のスタッフが近付くと、クマはようやく人間に気付いたのか、窓から去っていきます。クマ撃ちの“マタギ” 西村昭二さん「異常な光景。街に下りてきて徘徊するようになって色々な物を食べたり、餌場を探したり、自分の縄張り、行動域を広げていったのが今の『アーバンベア』『街クマ』。クマが人間との共生社会を作ってしまっているという考え方」。人間社会に依存するクマ。人里に行けば簡単に餌が食べられると学習したクマが増えているといいます。クマ撃ちの“マタギ” 西村昭二さん「街に出てくる『街クマ』に関しては人間がどこにいようが『いる』という確認をするだけで堂々と歩いている。非常に大胆な行動でどんどんエスカレートして、今度は住宅に入り込んだり、つながれている犬を襲ったり、今の街に出ているクマは恐ろしい生物だと思う」。さらに、人間依存型のクマは人里近くで冬眠する恐れもあると指摘します。クマ撃ちの“マタギ” 西村昭二さん「街中では眠りが浅いと思うので、ちょっとした騒音や何かで目を覚まして仮に冬眠していたとしてもすぐ場所を移して寝る所を探す。街の近くのクマが『床替え』をして行動する時に目撃されることは増えてくると思う」。

(踏切内で車が“イノシシ”とぶつかる:鳥取)
JR西日本は8日朝、伯備線の根雨駅と黒坂駅間で車が猪と接触する事故があり、安全確認のため一時運転を見合わせていたと発表しました。JR西日本によりますと、事故があったのは8日午前5時13分頃、伯備線の根雨駅から黒坂駅の間にある上鍛治原踏切です。警察から「上記踏切付近で、車が動物(イノシシ)と接触し、その反動で電柱に衝突している」と連絡があったため、現地に社員を派遣して安全確認を行うとともに、新見駅から伯耆大山駅間で列車の運転を一時見合わせました。その後、安全が確認できたため、午前6時17分に運転を再開したということです。この事故の影響で、特急やくも2本(岡山~出雲市駅間)と普通列車2本(新見~米子駅間)の上下合わせて4本が運休となりました。また、上り特急やくも1本に、最大約50分の遅れが生じました。JR西日本によると、この影響で約300人の乗客に影響が出たとのことです。

(クマ出没で「移動スーパー」一部休止:栃木)
中山間地でクマの目撃情報が相次いでいることを受け、栃木県鹿沼市は7日、高齢者の買い物支援などを目的にした「移動スーパー」事業の一部を休止することを明らかにした。利用者と販売員の安全確保が目的で、再開する時期は未定という。無料通信アプリLINE(ライン)の市公式アカウントで発表した。市によると、移動スーパーは食品スーパーを展開する「カスミ」(茨城県つくば市)との協定に基づき、2021年11月に始まった。毎週月~金曜日に市内7~8カ所を巡って販売しており、地域の高齢者らの生活に影響が出る可能性がある。

(民家の床下に子グマ、庭でザクロ食べた後に潜り込んだか:新潟)
8日午前9時45分頃、新潟県加茂市下高柳の民家の床下に子グマ1頭がいるようだと、市役所から加茂署に通報があった。クマは約1時間半後に駆除された。同署によると、クマは体長約50センチ。民家敷地内のザクロの木に登って実を食べた後、床下に潜り込んだとみられる。猟友会が箱わな1台を設置して捕獲し、駆除した。住人の女性(86)は「こんなところにクマが出るなんてぞっとした。もう冬眠の時期だと思っていたので、まさか出るとは」と驚いた様子だった。

(牧場で内臓を食い荒らされたヒツジの死骸を発見:北海道)
北海道苫小牧市の牧場で12月8日、ヒツジ1頭が死んでいるのがみつかりました。クマによる被害の可能性もあります。8日午前6時ごろ、苫小牧市美沢の牧場の従業員が、内臓が食べられているヒツジを発見しました。牧場は高さ約1.5メートルの柵に囲われていて、これまでのところ、他の痕跡は確認されていませんが、警察はクマの可能性があるとみて警戒しています。

(鹿肉入りキーマカレー、高校生が試食会:三重)
ジビエの鹿肉を有効活用しようと、三重県名張市の県立名張高校の生徒が企業とカレーを共同開発した。7日、試食会を市役所前の市民広場で開き、本格販売に向けて感想を聞き取った。鹿による農作物の被害がある一方、捕獲した鹿肉は十分に活用されていない。同校の2年約20人が探究学習の一環で、7月から奈良県宇陀市で処理された鹿肉を使ったメニューの開発に着手。地元の農産物加工会社「イーナバリ」とカフェ「ideca」とともに、農作物被害を聞き取るなどしながら、鹿肉を伊賀牛とともに入れたキーマカレーを考え出した。イベント「隠(なばり) BALI BALI NABARI fes」に合わせて開いた試食会では100食分を準備。高たんぱく・低脂肪で豊富な鉄分をPRし、「くさみがない」と好評だった。商品開発チームリーダーの江崎祐太さん(16)は「食べていくことでもっと鹿肉が流通してほしい」と話した。試食の感想を踏まえたうえで、今後商品化をめざすという。

(”シカ革”使って小物入れづくり:静岡)
ものづくりを通して地域課題について考えてもらおうと、静岡県伊豆市で12月7日、シカの革を使った小物入れづくりのワークショップが開かれました。これは蝶番の製造・販売をする伊豆市の企業が企画し、市内から親子連れなど10人が参加しました。参加者たちはシカの革を使って小物入れをつくりながら、伊豆市ではシカの食害による経済損失は年間1億円にも及び地域の課題となっている一方、シカの革は丈夫で油分が多いなど魅力もあり、有効活用するための取り組みなどを学んでいました。主催者は今後もこうした取り組みを続け、捕獲されたシカの有効活用につなげていくということです。

(ジビエ利用、中国5県最少:島根)
イノシシやシカなどの「ジビエ」の利用に関する農林水産省中国四国農政局の2024年度調査で、島根県の利用実績は中国5県で最も少なかった。2位だった鳥取県の実績の3分の1にとどまっている。

(鹿肉・猪肉などのジビエと、鰻・蟹など冬の食材を味わい尽くす:長野)
各施設が独創的なテーマで、圧倒的非日常を提供する「星のや」。その始まりの地である長野県・軽井沢の「星のや軽井沢」のメインダイニング「日本料理 嘉助」では、2026年1月1日より「山の懐石」冬限定メニューの提供を開始します。「山の懐石」は、山川の素材を味わう休息のための料理です。冬限定メニューでは、鹿肉や猪肉などのジビエや、鰻、蟹などの冬の食材を、日本料理と掛け合わせた仕立てで堪能できます。

(「房総ジビエフェア2026」の参加店舗を募集:千葉)
県では、「房総ジビエ」のおいしさを多くの皆様に味わっていただき、更なる房総ジビエの消費拡大を図るため、「房総ジビエフェア2026」を開催します。このフェアに参加していただける飲食店や小売店を、12月10日(水曜日)から募集いたします。多くの皆様の御参加をお待ちしています。

(クマ出没:宮城)
富谷市によると、10日午後4時ごろ、富谷市三ノ関馬場沢下にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
栗原市によると、10日午後4時23分ごろ、栗原市高清水福塚にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
大河原町によると、9日午後5時ごろ、蔵王町矢附東山にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、9日午後7時30分ごろ、仙台市泉区実沢八乙女札原にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、9日午後1時50分ごろ、仙台市泉区西田中萱場山にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
栗原市によると、9日午後4時20分ごろ、栗原市金成末野日向山にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、9日午前9時50分ごろ、仙台市太白区坪沼砂田にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、9日午前7時ごろ、仙台市太白区秋保町長袋宿にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、9日午前9時20分ごろ、仙台市泉区西田中萱場山にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、8日午後4時ごろ、仙台市泉区西田中萱場山にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、8日午後0時15分ごろ、仙台市泉区西田中萱場山にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
石巻市によると、8日午前0時10分ごろ、石巻市あけぼの3丁目にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
栗原市によると、8日午後3時15分ごろ、栗原市若柳上畑岡田袋にクマが出没しました。

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12/8
(クマに襲われ男性負傷:島根)
4日午前7時15分ごろ、島根県益田市波田町で、近くの70代男性がツキノワグマに襲われ、けがを負った。県によると、県内で人がクマに襲われてけがをする被害は今年度初めて。益田市農林水産課によると、現場は山あいの集落の公民館の近く。男性はゴミを出しに行く時に襲われ、自ら救急車を呼んだという。顔や右手にけがをして病院に運ばれたが、命に別条はないという。クマは体長1メートル、体重70~80キロほどで、山のほうに逃げたとみられる。市は防災無線などで注意を促し、現場周辺にセンサーカメラや捕獲おりを設置した。県によると今年度、10月末までのツキノワグマの目撃件数は676件、捕獲頭数は60頭。2024年度同期の1348件、281頭に比べて大幅に減っている。今回の出没現場近くにある益田市立真砂小学校によると、この日はクマの出現を受け、近所に家があり普段は徒歩で登下校している児童全員に対し、今後当分、車で登下校するよう指示した。現場近くでは、クマの餌となる柿の実がなっている枝や、柿の木そのものを住民や市職員が協力しながら伐採していた。作業に加わっていた60代の女性は、男性が襲われた後、男性のものとみられるゴミが路上に散らばっているのを見たという。「クマがあさったのではないか。(伐採によって)クマが好む甘い柿はだいぶなくなっていたから、もう出ないのではないかと思っていたが、驚いた」と話していた。

(クマ緊急銃猟したら報道発表する?しない?:新潟)
人の生活圏に出没したクマに対し、市町村の判断で発砲が可能となる「緊急銃猟」が9月に導入されて3カ月が経過した。県内では今月5日時点で8市が計10件実施。各自治体は実施後に事例を公表しているが、報道発表するかどうかの判断は分かれている。明確なルールがないためで、対応がまちまちな状況が続きそうだ。環境省によると、緊急銃猟は5日時点で全国43件となり、本県は都道府県別で2番目に多い。住民の安全が前提で、交通規制や外出しないよう周知をした上で実施する。環境省のガイドラインでは、交通規制をする場合はウェブサイトで内容を明示するといった対応を自治体に求めている。ただ、実施後の報道発表については決まりがなく、県内では自治体によって対応が異なる。阿賀野市は、10月31日に全国初の麻酔銃による緊急銃猟を行った際、報道発表した。市では「市民に危険が及ぶ状況だったということを知らせるために発表した」と説明し、次回以降も発表するとしている。糸魚川市も同様だ。市環境生活課は「今後も対応は変わらない」とし、「避難の必要があれば住宅を回って避難誘導する」と実施前の周知徹底を強調する。

(クマ被害者、最多230人)
環境省は5日、4~11月のクマによる人的被害が速報値で230人に上ったと発表した。記録が残る2006年度以降、年間で過去最多だった23年度の219人を更新した。4~10月の全国のクマの出没件数、捕獲数も速報値を公表し、いずれも記録が残る限り過去最多だった。4~11月に被害者数が最も多かったのは秋田の66人。岩手37人、福島24人、新潟17人と続いた。11月の被害者数も秋田が10人と最多だった。11月の被害者は犠牲者1人を含む33人だった。4月以降の全国の犠牲者数は、11月20日現在で過去最多の13人。4~10月のクマの出没件数は、公表していない北海道、生息していないとされる九州、沖縄を除き計3万6814件だった。09年度以降、年間で最も多かった23年度の2万4348件を大きく上回った。捕獲数(北海道を含む)は06年度以降、年間で最多だった23年度の9276頭を超える計9867頭。最も多かったのは秋田1973頭で、青森1154頭、福島1153頭と続いた。

(エゾシカ捕獲15.7万頭、3年連続最多更新:北海道)
北海道は4日、2024年度の道内でのエゾシカの捕獲数(確定値)が前年度比0.4%増の15万7525頭だったと発表した。3年連続で過去最多を更新した。

(野生イノシシ2頭が豚熱ウイルス感染:秋田)
秋田県北秋田市で捕獲された野生のイノシシが豚熱に感染していることが分かりました。県によりますと、11月24日に北秋田市で野生のイノシシ2頭が捕獲され、県立大学で遺伝子検査を行ったところ、12月3日に2頭が豚熱に感染していることが分かりました。県内での豚熱の確認は20例目と21例目です。イノシシの捕獲場所から半径10キロ以内には養豚場がありますが、これまでに異常は確認されておらず、県内で飼育されているブタは豚熱ワクチンを接種しているため、移動や出荷に制限はありません。豚熱はブタやイノシシが感染する病気で人にうつることはなく、仮に感染したイノシシの肉などを食べても健康に影響はないということです。

(野生イノシシ2頭が豚熱感染:宮崎)
宮崎県は4日、高原町と都城市で捕獲された野生イノシシ2頭が豚熱(CSF)に感染していたと発表した。県内での野生イノシシ感染は、4月の初確認から45、46例目。県家畜防疫対策課によると、45例目は幼獣の雄、46例目は成獣の雌で、いずれもわなにかかっていた。

(豚熱、10市町で22頭:三重)
三重県は3日、県内で先月の中旬から下旬にかけて捕獲した野生イノシシ183頭のうち、亀山、津、松阪、鳥羽、志摩、熊野、大台、紀北、御浜、紀宝の10市町で捕獲した22頭について、豚熱への感染を確認したと発表した。県内で豚熱への感染が判明した野生イノシシは1304頭となった。

(アプリ「くまMap」開発者も驚く人気に)
スマホアプリエンジニアのSeiu(@seiuK)さんが、クマによる人身事故防止を目指すアプリ「くまMap」を開発し、11月にリリースした。全国の自治体が出しているクマ出没情報を地図上で一元管理しているのが強みで、プッシュ通知とSNS機能を組み合わせた新しい安全対策ツールとして注目を集めている。開発のきっかけは、2~3か月前に東北地方で相次いだ熊による死亡事故だった。埼玉県在住のSeiuさんだが、本業で関わる工場が秋田県にあり、東北出身の同僚も多い。「年末年始には多くの方が地元へ帰省される中で、『本当に大丈夫だろうか』『何かあってからでは遅いのではないか』と、私は他人事とは思えませんでした」との懸念から、自身のスキルを生かして何かできないかと考えたという。現状を調べると、秋田県の「クマダス」のように詳細な情報を公開する自治体がある一方で、情報が点在していたり、都道府県や市町村をまたいで確認できるサービスがほとんどないことが分かった。スマホアプリによる情報提供も、自治体・民間ともにほぼ存在しなかった。「帰省する人や旅行者の目線で考えると、『この地域は今どういう状況なのか?』を事前やリアルタイムに把握するのは、決して簡単ではないと私は考えております」特に旅行は他県にまたがることも多い。自身も以前は群馬や長野方面へドライブに出かけていたが、最近はクマの出没が気になり、妻を危険な場所に連れて行けないと、山方面への外出を控えるようになった。自治体をまたいで横断的にクマ出没情報をまとめて入手できるツールの必要性を実感したことが、開発の理由となった。全国のクマ情報が、ひと目で分かるアプリ。それが、「くまMap」の特徴だ。全国マップ機能では、各自治体が公開するオープンデータを定期的に取得し、全国のクマ出没情報をマップ上で確認できる。現在地や旅行先周辺の熊情報を直感的に把握でき、アプリを開くだけで最新情報が反映される。ピンは経過時間とともに表示され、詳細を見なくても直感的に分かるよう工夫されている。スマホアプリならではの強みを生かしたプッシュ通知機能も実装した。自宅や実家、よく行く場所を「マイエリア」として登録すると、周辺で新たなクマ情報が更新された際に通知が届く。「知らないうちに近くで出没していた」という状況を減らすことを目指している。さらに、ユーザー自身が目撃情報を投稿・共有することもできる。目撃・痕跡・人身事故・捕獲などの状況を選んで投稿することが可能だ。一方で、荒らし対策として、通報やブロックが多いユーザーの投稿は通知対象から自動的に除外される仕組みも導入するなど、アプリの健全性を担保している。また、アプリ内には、簡易的なSNS(タイムライン)機能も用意。フォロー・フォロワー機能を通じて、信頼できる投稿者を判断し、情報の信頼性を、ユーザー自身が見極められるように意図している。反響は予想を超えるものだった。Seiuさんはこれまで車のエンジンオイル交換アプリや薬服用通知アプリなど、小規模なアプリをリリースしてきたが、くまMapはリリース後3日でそれらのトータルユーザー数を超えた。12月3日時点で2003人がインストールしている。利用にあたってメールアドレスやパスワード、本名、性別、住所などの個人情報は一切不要。SNS機能を利用する際のニックネームとユーザーIDも、デフォルトでランダムな値が入るため、何も入力せずに利用できる。セキュリティー面については「私自身、本業でのスマホアプリ開発でも、個人でのスマホアプリ開発でも強く危機感を持って対応している部分」と説明。「Google社のクラウドという信頼性の高い公式サービスのみを利用し、不要な個人情報を持たず、攻撃されにくい構造」を基本方針としている。ユーザーからは「マップを一度閉じて開いた後は、前回の範囲を維持してほしい」といった改善要望も寄せられており、Seiuさんは「使ってくださるユーザー様の生の声をお聞きできてうれしい」と語る。初回リリースは11月12日だったが、アプリの肝となるプッシュ通知機能を正式にリリースできたのは11月29日。「やっとここまでこれたが、これからはさらに使いやすくなるようにアップデートを重ねていきたい」としている。くまMapは、行政や専門家の取り組みを補完し、「知っていれば防げたかもしれない被害」を一つでも減らすためのツールとして開発された。Seiuさんは「クマによる人への被害を、少しでも減らすこと」という目標に向けて、今後も改善を続けていく方針だ。

(クマ探索にドローン、14分間でクマ1頭とイノシシ3頭発見:福島)
クマ被害が深刻化する中、福島県昭和村がドローンを使った対策を始めた。クマに襲われる危険を避けながら上空から探索し、発見時にはスピーカーで追い払いもできる。熱を感知してクマの移動ルートを探すことで、駆除の効率化にもつながっているという。県内では今年度、エサ不足が要因となって人里でのクマの出没が増加している。目撃数は1894件(11月30日時点)で、過去最高だった2023年度の709件を既に大幅に上回っている。昭和村の集計では、村内で26件(12月1日現在)の目撃があり、捕獲数は90頭を超えた。10月16日には村道で50歳代男性がクマに左手をかまれる被害があった。村担当者は「例年とは出方が違う。朝や夕暮れだけでなく、日中も出るようになった」と危機感をあらわにする。そこで村が10月に取り入れたのがドローンによるクマの探索だ。村では昨年、山岳遭難が多発したことから、NTTドコモビジネス(東京都)と提携し、ドローンによる遭難者の捜索を進めてきた。今回は、そのシステムを応用した。ドローンは、ルートを設定すれば自動で飛行する。200~300メートル離れた場所から操作も可能で、映像でドローン周辺にクマがいないか監視ができる。クマの発見時には、スピーカーで音を出して追い払う。爆竹や犬の鳴き声、サイレン、銃声など複数の音を使い、効果を検証している。カメラは通常のものに加え、熱を感知する「サーマルカメラ」を搭載。通常では発見が難しい夜間や、草むらに隠れたクマも探し出せる。クマやイノシシなどが通った獣道も、動物が残した熱で判別し、猟友会に情報提供することで効果的な場所にわなを設置できるという。追い払い後に追跡することでも獣道の特定が可能だ。発見時には、村のホームページ上にある有害鳥獣の出没を知らせるサイトで発見場所を示し、注意を促している。ドローンは、クマの目撃など住民らからの通報を受けて出動する。10月の運用開始以降、ほぼ毎日出動しており、11月11日には14分間の飛行でクマ1頭、イノシシ3頭を発見した。村総務課の担当者は「猟友会にドローンを加えることで他の自治体より数段早い対策を打てる」と手応えを話す。現在は職員3人が扱っているが、講習などを行って運用体制を拡充する考えだ。村職員に講習や導入後の運用支援を行ったNTTドコモビジネスには、秋以降多くの自治体から問い合わせがあるという。

(科学的モニタリングと順応的管理、クマ対策「最先端」:兵庫)
クマによる人的被害が深刻となる中、科学的モニタリングとその結果に基づく順応的管理による最先端の取り組みで注目されているのが兵庫県だ。独自の個体数推定システムを構築し、絶滅させない生息数を保ちつつ人身被害や農林業被害を防ぐ範囲内にクマの数を維持、クマを集落に寄せ付けないゾーニング(棲み分け)管理の徹底を展開している。誤ってイノシシなどのわなにかかった個体にマイクロチップを装着して放す手法でのデータ収集を平成14年から始め、統計的データから個体数を推定する独自の手法を確立。19年には野生動物や森林の管理と研究を一元化した「森林動物研究センター」(丹波市)を開設した。同センターの研究者を含む計16人と全国最多の専門的職員が県の管理計画や施策立案にも積極的に関与している。円山川を境界に東西に分布するツキノワグマの数は今年度、西側の「東中国地域個体群」が763頭、東の「近畿北部地域個体群」が688頭と推定。管理計画に基づき、今年度は有害鳥獣捕獲許可による集落周辺での箱罠での捕獲「有害捕獲」は実施するが、狩猟は禁止だ。頭数管理に併せて重視しているのがゾーニングだ。各市町と調整して、クマの生息に適した「森林ゾーン」▽里山・集落の周辺地域の「集落周辺ゾーン」▽人間活動が盛んな「集落ゾーン」に区分けし、被害リスクを軽減させるための管理目標を設定、生息数に応じた管理を徹底している。クマの集落出没要因となった誘引物の約7割が適切に管理されていない柿だといい、未利用果樹の伐採などを実施。クマが健全に生息できる多様性の高い森林環境整備も進めている。

(ハンター資格持つ議員、国会でルールと規制求める)
狩猟免許を保持している立憲民主党の川原田英世議員が、5日の衆院環境委員会にて、一部のクマスプレーの効力に懸念を示した。川原田議員は「クマスプレーはだいぶ前から『問題あり』ということで、猟友会や知床財団の皆さんから指摘をいただき、環境省の皆さんも『ちょっと問題ある』と言っていた。クマが不安だということで飛ぶように売れているようで、ネットを見るといろいろな商品がある。今まで私たちがクマスプレーだと思っていたものは値段がグーンと上がって、1万8000円くらいだったものが3万円超えとか売り切れ続出状態。下を見ると2000円台からある。『ヒグマ対応』『ツキノワグマ対応』とか書いてあるが、これ本当かいなという感じですごく不安だ」と憂慮した。続けて「情報が明確にならない中で、スプレーがあるとあたかも安心と思っている方がいる。全然そんなことない。一定のルールをしっかり決めて規制しなくてはいけない」として現状の対策を聞いた。これに堀上勝自然環境局長は「環境省においても、クマと遭遇した時にどのようにクマスプレーを使っていたかと、あるいは、使用した結果どうだったかも含めて、利用等の状況について情報収集をしている。ただ、消費者向けにどのように情報発信していくかについては、消費者庁の方での対応になる。連携しながら進めていきたい」と回答。消費者庁 田中久美子審議官は「景品表示法では、事業者が自己の供給する商品や役務の内容について、実際のものよりも著しく優良であると示す表示を禁止している。消費者庁としては、引き続き景品表示法に違反する恐れのある具体的な事実に接した場合には、法と証拠に基づき適切に対応する」と答えた。さらに川原田議員は「クマスプレーを使用しているものを見たことがあるか?」と尋ね、石原宏高環境大臣は「YouTubeで見たことがある」と回答。川原田議員は「よかったです」と笑顔を見せ「目の前まで来て使うという状況で、ブシャーと出す感じだ。ところが、今売られている安いものは本当シューって消臭剤みたいな感じ。YouTubeを見たら、全然効き目がないということが分かると思う。『クマスプレーを持っていれば大丈夫』ではなく、目の前まで来ないと意味がないものであるにもかかわらず、全く効果がないだろうというものがたくさん売っている。それで安心だとなってしまう感覚が非常に危険だ。早急に対策を取っていただきたい」と訴えた。

(アーバンベア対策で「管理強化ゾーン」、冬眠中の親子グマ捕獲も可能に:秋田)
人とクマのすみ分けを徹底するため、秋田県は市町村と共に、人身被害が発生する可能性が高いと考えられる地域「管理強化ゾーン」の設定を進めている。来春には、ゾーン内で個体数の減少を目的にした「管理捕獲」を強化し、市街地への出没を減らすことを狙う。県は、年明けの早い段階に全市町村で設定を終えたい考えだ。県はこれまで、クマが生息する奥山を「コア生息地域」、人が住む住宅地や農地などを「防除・排除地域(人の生活圏)」とし、その間を「緩衝地域」として区分けしてきた。しかし、市街地でクマの出没が多発していることから、県は緩衝地域のうち、クマが定着することで市街地での出没や人身被害のリスクが高い地域を管理強化ゾーンに定め、対策を重点的に行うことにした。今年3月策定の「県第二種特定鳥獣管理計画(第6次ツキノワグマ)」(2025~29年度)に盛り込んだ。管理強化ゾーンは、市町村が、県から示された緩衝地域の配置案を基に、クマの出没状況や地形、土地利用状況などを踏まえて設定する。ゾーン内では、県と調整した上で、これまで県の方針で行っていなかった春季の冬眠中のクマや親子グマの捕獲が認められる。また、県や市町村は、管理強化ゾーンを中心にやぶの刈り払いに努めるとしており、人の生活圏周辺でクマがすむ範囲を狭め、人とクマの適切な距離を確保することを目指す。県は管理強化ゾーンの早期設定に向けて、11月に開かれた「県・市町村協働政策会議総会」で、出席した県内自治体の首長らに対して協力を求めた。各自治体は現在もクマへの対応に追われているとし、これから市町村と最終調整を進めるという。鈴木知事は今月1日の県議会一般質問で、管理強化ゾーンの設定について、「予防的な管理捕獲を来春から強化し、人の生活圏での人身被害ゼロを目指していく」と語った。

(箱わな妨害騒動、獣害悩むハンター怒り)
冬眠しないのでしょうか。4日もクマによる被害が相次ぎ、猟友会が設置した箱わなを破壊する被害も頻発しています。4日、岩手県奥州市では降り積もった雪に血の痕が残っていました。60代の女性が自宅からおよそ100メートル離れた路上でクマに顔を引っかかれ、けがをしました。富山市でも新聞配達をしていた70代の夫婦がクマに襲撃され、顔にけがをしています。今シーズン最強の寒気が列島を襲うなか、いまだ冬眠しないクマによる被害。4日も全国で4人がけがをしました。岩手大学農学部 山内貴義准教授「里に執着する個体が非常に多いので、ずるずると里のものを何かしら食べてしまうと、冬眠がどんどん遅れていく可能性はあると思います」。クマを捕獲する動きも進められていますが、害獣を捕まえる取り組みを妨害する動きもあります。画面右側から静かにゆっくりと箱わなに歩み寄る人物。箱わなの前に来ると、右足で入り口部分を蹴り上げ、扉を閉めます。カメラに気付いたのでしょうか、懐中電灯を照らすと足早に去っていきました。イノシシやシカなどの鳥獣被害に悩む福岡県では、捕獲を妨害する被害が去年3月から相次いでいます。ハンター歴6年 40代男性「モチベーションは下がりますね、やっぱり。僕らもクマではないのですが、イノシシやシカに関してもやっぱり一歩間違えたら、命を失うという事故は発生していますので、実際」。1メートル30センチ四方、奥行き2メートル、およそ200キロの鉄製の箱わなを設置するのはかなりの重労働です。「わなもかけたら終わりじゃなくて、やっぱり見回りであったりとか、他の(わなも)追加したりということで、やっぱりそれ相応の苦労はしています」。男性は被害届の提出を検討しています。

(増えるエゾシカと車の交通事故、73万頭生息:北海道)
北日本を中心にクマの出没が問題化するなか、北海道では野生の「エゾシカ」による交通事故も、人々の暮らしに影を落としている。昨年は過去最悪の5460件。車の前方に飛び出し、衝突するケースが目立つ。観光で北海道を訪れた人も事故に遭っており、注意が必要だ。北海道東部の別海町。走行中の乗用車の前に、メスのエゾシカが勢いよく飛び出てきた。強い衝撃とともに、「ボン」という音が響いた。運転していたのは地方紙の女性記者(27)。一昨年のことだが、今も脳裏から離れない。早朝に、取材先の漁港から車で戻る途中だった。突然の出来事で、頭が真っ白に。思わずハンドルを切って避けようとした。対向車線に入り込んだ。エゾシカとの衝突で車の前方部はへこんだが、幸いけがはなかった。しかし、「もしあのとき、向かい側から車が来ていたら、正面衝突で命を落としていたかもしれない。そう思うと、今でもゾッとします」。道内では実際、エゾシカの飛び出しがきっかけで人命が失われる事故が起きている。同じ東部の標茶(しべちゃ)町の国道では22年、車同士の衝突事故に発展し、男性2人が亡くなった。エゾシカは大きいオスだと体長約190センチ、体重約150キロに及ぶ。衝突の際に車が受けるダメージは深刻だ。運転者が無事だった場合でも、車両は大破することが珍しくない。

(クマ対策でカキ・クリの木の伐採に補助金:群馬)
クマによる人身被害を防ごうと、群馬県川場村は4日、村民が自宅周辺のカキやクリの木の伐採を業者に依頼した場合、5万円を上限に半額を補助すると発表した。4日から申請を受け付けている。同様の支援や補助は中之条町、前橋市に続いて県内3カ所目とみられる。

(シカ出没多数、「夜9時以降の運転は注意」:兵庫)
連日報道される全国各地の「クマ被害」。しかしながら、こうした野生動物とヒトとの間に勃発する問題は今に始まったことではありません。それぞれがすこやかに生きるためにどのように向き合うべきなのでしょうか? 兵庫県宍粟市の洋飾店「Sagua」の土井景子さんに話を聞きました。土井さんによると、宍粟市ではクマだけでなくシカ・イノシシ・サルによる農作物の被害が多いのだとか。収穫間近の農産物をはじめ植林した苗木の新芽、なんと民家に侵入し家庭菜園や花壇の植物まで荒らすといいます。中でもシカによる被害は深刻で、同市は頭を抱えているとのこと。「シカと車による交通事故も多く発生しています。繁殖期などに関わらず、『夜9時を過ぎたらシカに気を付けて』と注意喚起がなされるほど。群れで行動し道路脇から飛び出てきたり、車と鉢合わせても逃げずに道路でじっとしている。大きな個体と接触すると廃車になるケースも」(土井さん)。同市の猟師が捕獲した野生鹿の原皮を地域資源として、鞄や財布・ポーチ・アクセサリーなどの小物を制作している土井さん。鹿革を扱うようになってから、幼少期に感じた「何も悪さはしていないのに可哀そう」という気持ちを思い出したと話します。「ヒトも野生の野生動物も、生きるために行動しているのは同じ。しかしながら、人間の影響で野生動物の行動範囲を変えてしまっているのかもしれないと思っています」と土井さん。その理由として、戦後の復興開発のための山の掘削、温暖化による野生動物の冬眠・繁殖行動の変化、心無いレジャー客による山中へのゴミの遺棄を挙げました。最後に、野生動物とうまく共生するためにはどうすればいいか土井さんの考えを聞いてみました。「食べ物を粗末にせず、大根の葉も捨てずに食べていた時代……人間は山を大事にし、特に山奥には神が宿るとされ『入るべからず』と言い伝えられてきました。そうした山への畏敬が薄れきている今こそ、ヒトは自然をよく知り向き合うべきなのかもしれないと思います」(土井さん)。

(“空白地域”にも出没、クマ増加の背景は?:京都)
全国的にクマの目撃・被害が相次ぐ2025年。関西では、これまで生息域とされていなかった“空白地域”での出没情報も多く、住民からは不安の声があがっています。そんな中、冬眠するとされる12月になっても活動を続けるクマも…。人とクマとの距離を、どう取るべきか?共生へのカギを取材しました。取材班が向かった京都・木津川市では、2025年5月、記録に残る2007年以降初めてクマが目撃されました。その後10月頃から増え始め、11月20日までに目撃や足跡発見の情報は58件。駅などに近い市街地を含め、市内各所に広がっています。住民たちからは「怖いのであまり外へ出ないようにしている」といった声が聞かれ、小・中学生たちは市が配布した『クマよけの鈴』をつけて登校していました。さらに市は、11月からセンサーカメラの設置を始めました。クマの目撃情報が寄せられる地域に取り付け、出没が相次ぐ場合に捕獲用のオリを設置したい考えです。職員は毎朝、パトロールをかねてカメラの設置場所へ向かいます。カメラに反応があり、録画があった場合は、市役所に持ち帰って内容を確認します。この日映っていたのは、クマではなくシカでした。ただ、“空白地域”ならではの新たな問題もあります。クマを捕獲した際は本来『殺処分』ではなく、不快な刺激を与えて山奥に返す『学習放獣』が基本です。しかし、クマが生息していないはずの木津川市では、住民から放獣の理解を得るのが難しいといいます。市は京都府に対し、駆除を前提とした捕獲許可を求めていく方針です。(森林総合研究所・大西尚樹さん)「2000年に入るあたりまでクマは全国的に数が少なく、特に関西地方・中国地方は個体群が孤立していて、数も少なくなっていました。そのため、有害駆除や狩猟の禁止もしくは自粛によって、個体群を保護したのが、うまくいきすぎたという状態です。数が増えて分布域が広がり、クマの“空白地帯”だった所に入ってきています」。一般的に、クマが人里に下りてくる大きな要因となるのは『ドングリの凶作』です。ただ、2025年の関西は事情が異なるといいます。大西さんは、「今までいなかった地域でクマが目撃されるようになったが、今年凶作だから来たわけではないと思う。去年、凶作だったので人里に下りてきて、そこに定着した可能性もある」といい、すでにクマが定着しつつある可能性があるというのです。いわゆる“対症療法”だけでなく、根本的な対策に挑む自治体があります。兵庫・豊岡市では、有害鳥獣が出やすい山すその木を30~40メートル幅で切り進め、人とのすみ分けを図っていて、2025年度内の完成を目指すといいます。豊岡市農林水産課の西村文紀さんは、「獣も人が怖いので、隠れながらゆっくり出てくるという性質がある」と話していました。さらに豊岡市は11月21日、県内で初めて『緊急銃猟』に向けた訓練を行いました。“市街地にクマが出没し、公園の倉庫に居座っている”という想定で、「銃猟以外の方法では的確な捕獲が困難なこと」など4つの条件を満たすか判断し、狙撃するまでの手順を確認しました。訓練で最前線を担っていたのは、3人の『ガバメントハンター』です。ガバメントハンターとは、狩猟資格を持ち、クマなどの鳥獣対応にあたる自治体職員のことで、豊岡市では2014年から会計年度職員としてハンターの雇用を始めました。そのうちの一人、神戸市出身の岡居宏顕さん(56)は、自然豊かな環境に惹かれて豊岡に移住し、市の職員として働いています。(豊岡市・有害鳥獣主任対策員 岡居宏顕さん)「生き物を観察することが好きで、ずっと観察しているうちに生き物のことに詳しくなって。そこで得た知識を、農林業被害などを抑えるために使えることに気がつきました」。この日は、町内会長から依頼を受け、住宅付近の柿の木の調査へ。野外で鳥獣対策に向けた調査を行うのが岡居さんの業務です。伐採業者と共にクマなどの痕跡がないか確認します。(豊岡市・有害鳥獣主任対策員 岡居さん)「思いっきりホテルの寮のところ。やばいね、このルートを絶対に断たないと…」。住民の安全確保のため、付近の4か所の木を伐採しました。そこには、あるポイントがあるといいます。(豊岡市・有害鳥獣主任対策員 岡居さん)「集落の外周の山際に柿の木があったとして、クマが来ているからといってその柿の木を切ってしまうと、クマは集落内部にある柿に行きます。だから、どういう動線・どういう目的で来ているかを完全に読んでからでないと、逆に危ないことになるんです」。豊岡市は、かつてシカによる食害に悩まされていました。ガバメントハンターを雇用する前はほとんど捕獲できなかったといいますが、導入後は年間の捕獲数が5000頭以上に。雇用の効果を感じていました。豊岡市農林水産課の西村さんは、「知識のある方、地域で調査に携わっていただいている方を育てて、地域の有害鳥獣被害対策を進めたいと考えている」としています。クマ対策の切り札として、市は来年度予算を増やし、ハンターの増員を視野に体制を強化する方針です。相次ぐ目撃情報に、住民たちも自ら対策しようと動き始めています。取材班が同行したのは、京都市が2025年度から始めた『集落環境点検』です。専門家と地元住民が一緒に街を歩き、クマの出没対策の現状や課題を確認する取り組みです。(参加者)「干し柿をいっぱいしているのですが、あれはいけませんか?」。(野生動物保護管理事務所・菅野慎主任研究員)「はっきり言ってしまうと、ダメなんです。よく干し柿以外にも玉ねぎなど乾燥で干している方がいますけど、屋外に置いておくと動物のエサになってしまうので、あれも実はダメです」。我々の生活に忍び寄るクマ。どのようなことに気をつければ良いのでしょうか。その①は『ゴミの捨て方』です。菅野主任研究員によると、カラスよけとしては十分な金属製フレームのゴミ捨てネットも、クマよけには不十分だといいます。例えば生ゴミのにおいがしていたら、クマはフレームを壊してメッシュの布も破って食べてしまうため、ゴミ自体が誘引物になります。その②は『灯油の保管』です。クマは揮発性の物質のにおいを好むため、寒い冬を支える灯油のほか、ガソリンやペンキなどの扱いにも注意が必要です。菅野主任研究員によると、屋外に置かれた缶に微量でも残っていたらにおいがするため、屋内にしまうのが原則的に正しいということです。そして、これからの季節に気になるのは、クマの冬眠についてです。ニホンツキノワグマ2頭が飼育されている東京・上野動物園では、約20年前から“ある取り組み”を行っています。秋に向けてエサの量を調整し、冬眠に耐えられる体づくりを行った後、専用の部屋で人為的に冬眠状態に誘導します。今は14歳のメスが冬眠準備中です。上野動物園・鈴木仁課長によると、クマが食べるエサの量は普段4キロですが、冬眠前は一番多い時で倍の8キロになるそうで、エサは小松菜やさつまいも・フルーツなど植物性のものが中心ですが、クマは基本的に雑食で、煮干しなど動物性のものも食べるということです。また、冬眠中のクマの様子をリアルタイムで展示し、来場者が確認できるようにしていますが、展示を通して伝えたいことがあるといいます。(上野動物園・鈴木課長)「動物たちが、どういう暮らしをしているか、本来どういう生態を持っているかを見ていただくことによって、親近感も湧きますし、理解も深まると思いますので、多少は恐れみたいなものが和らぐかなとも思います」。12月に入り、朝晩の冷え込みも強まりますが、安心できる日は近いのでしょうか。森林総合研究所・大西さんは、「人里に出ている個体は、良いエサ場を押さえているので、なかなか冬眠しないと考えられる」と話しています。クマは本来、エサが少ない冬を乗り切るために冬眠するとされますが、専門家は「冬眠の開始が遅くなるのではないか」と指摘します。その冬眠のタイミングは、どのように決まるのでしょうか。(森林総合研究所・大西さん)「それは個体によって違います。私たちは眠気に左右されて、自分の意思でベッドに行くじゃないですか。でもクマに関しては、自分の意思というよりもホルモンバランスで冬眠に入っていく感じなので、人里に出ている個体については12月下旬まで活動している可能性があると思います。もしかしたら年越し1月まで出ているかもしれません」。しばらくは、引き続き注意が必要です。そして、クマはこれから冬眠に入り、春にはまた活動が始まります。その習性を正しく理解して生活圏に寄せ付けない、長期的な目線で未然に防ぐことが『共生』へのカギとなります。

(緊急銃猟体制を整備へ、猟友会や警察と協議:岐阜)
岐阜市の定例会は5日、本会議を再開、一般質問を行った。9月に改正された鳥獣保護管理法で新たに設けられた緊急銃猟制度について、大久保義彦経済部長は「体制整備に向け、国のガイドラインなどを参考に猟友会や警察などと協議を進めている」と述べた。

(ツキノワグマゾーニング管理導入、目撃件数が大幅減少:長野)
全国的に熊の出没が相次ぐ中、ツキノワグマの生息域と人の生活圏を分ける「ゾーニング管理」を6月に導入した長野県箕輪町で、熊の目撃件数が減っている。今年は5日時点で9件にとどまり、昨年の19件から大きく減少。町は、緩衝帯の整備などの被害対策に住民とともに取り組んだ効果ではないかとしている。町内では昨年、熊の目撃件数が前年比16件増の19件、捕獲件数が9件増の17件と急増。昨年6月には下古田区で人身被害が発生したこともあり、ゾーニング管理実施計画の策定に取り掛かった。町の計画では、天竜川以西地域を対象に▽奥山や森林など熊が主に生息する「主要生息地域」▽里山林や段丘林など熊と人の活動が重複する「緩衝地域」▽市街地や農地など人の活動が盛んな「排除地域」―の3区分を設定。地域区分ごとの被害対策を示した。今年5月には目撃が多い西部地区で、地元区や学校、警察、猟友会などの関係者が参加した安全点検を行い、やぶの刈り払いが必要な箇所などを確認した。町は今年度、区が被害対策で行う刈り払いに対して補助金を出し、4区が活用。緩衝地域を中心とした子どもたちの通学路周辺などで、道路延長約3キロの刈り払いが行われた。地域住民の協力で木の実などの誘引物の除去も進めた。また電気柵設置に対する補助金を新設。5件の申請があり、果樹園などを囲むように電気柵が設置された。同町の野生鳥獣による農作物被害額も、昨年は約19万円に上ったが今年は約1万5000円と大幅に減少した。上伊那地域では同町と伊那市がゾーニングを導入している。町みどりの戦略課は「緩衝帯を整備し、熊と人の生活圏の境界線がはっきりしたことが、目撃数減少の要因の一つではないか」とし、ゾーニング計画策定により「被害対策が明確化し、住民に伝えやすくなり行動に移しやすくなった」と話していた。

(「ハンター養成塾」活況:千葉)
イノシシによる獣害が深刻化する中、捕獲と担い手の育成を兼ねた「ハンター養成塾」と呼べる取り組みが千葉県館山市で成果を上げている。狩猟免許を持ちながら活動していない都市部などの「ペーパーハンター」を対象に、わなの設置から解体までを実践的に学べる場を提供。開始1年余りで延べ38人が参加し、地域の捕獲数増加に貢献している。

(クマ対策で河川の樹木伐採:山形)
天童市で登校中の小学生が、クマ3頭を目撃した。また鶴岡市では、クマの移動範囲を減らすため、河川敷に生い茂る樹木の伐採が行われた。天童市によると5日午前7時40分ごろ、天童市蔵増にある神社付近で、登校中の小学生が親子とみられるクマ3頭を目撃した。発見した小学生が一度自宅に戻り、家族が警察に通報した。12月に入っても相次ぐクマの目撃。5日、国交省酒田河川国道事務所が、クマの早期発見と移動範囲の縮小を目的に、鶴岡市赤川の河川敷で樹木の伐採作業を行った。伐採は、先月、政府が策定した「クマ被害対策パッケージ」にも含まれていて、5日は3人の作業員が、およそ300メートルの区間にある樹木をチェーンソーなどで伐採した。近くの運動公園では、10月にクマが出没していて、住民からも伐採の要望が出ていた。(酒田河川国道事務所 岡部賢所長)「近くの果樹園の被害の話や、下流には一般の方が利用する河川公園もある。クマ被害の防止につながるとの事で今回の場所を選んだ」。伐採作業は赤川河川敷の1.7ヘクタールで、2月下旬まで続けられる。

(狩猟免許試験、冬も実施へ:宮城)
県議会11月定例会は5日、一般質問を続けた。県はクマ対策の一環として狩猟免許試験を来年度以降、冬季にも実施する方向で検討する考えを明らかにした。

(クマ生態理解した対策必要:秋田)
全国的にクマの人的被害が相次ぐ中、「市街地に押し寄せるクマとどう向き合うか」と題したシンポジウムが6日、秋田市で開かれた。専門家からは、人間とクマの「すみ分け」を実現するため、クマの生態を理解した上で対策を推進していく必要があるとの指摘が上がった。秋田県自然保護課でクマ対策に取り組む近藤麻実主査は「人を見ても逃げないなど、クマが人を気にしなくなっている」と危機感を表明。クマを町や人里に寄せ付けないために、餌となる果樹や食べ物の管理徹底を呼びかけた。東京農業大の山崎晃司教授(動物生態学)は、秋田県でのGPSを使ったクマの生態調査を紹介し「データサンプルに基づく科学的管理」を目指していくとした。

(シカ防除柵増強、市民団体が再整備:北海道)
ラムサール条約登録湿地、春国岱のハマナス群落の再生に向け、市民団体「根室ワイズユースの会」(千葉勝博代表、事務局・市農林課)は本年度、エゾシカ防除柵を増強した。ハマナスの群落には虫や野鳥を呼び込む大切な役割があるが、エゾシカに食べられる被害が深刻になっている。このため柵で囲む保護面積を1.6倍に拡大し、再生の取り組みを加速させる。

(ロケット花火打ち上げ、小中学生に熊鈴:兵庫)
クマによる人的被害が北日本をはじめ全国で相次ぐ中、兵庫県の西播地域や兵庫県姫路市内でも自治体や民間団体が対応に追われている。県内では今年、痕跡を含めた目撃件数が例年より少ないものの、山間部の市町を中心にクマに関する情報が市役所や町役場に次々と届く。各自治体などは近隣住民らの不安を払拭(ふっしょく)しようと、あれこれ対策を打ち出している。「ヒュー、パンッ!」。ロケット花火の破裂音が何度も山あいに響き渡った。11月下旬、兵庫県神河町などであったウオーキングイベント。主催者の一人、前嶋茂徳さん(70)が、コース上でクマの目撃情報があった地点を重点的に計15発の花火を打ち上げた。過去の催しでもサルよけのために10発程度を打ち上げたが、今回は多めに。前嶋さんは「目撃数は減っているが、参加者に少しでも安心してもらいたくて数を増やした」と話す。同町では今年、クマに関する通報が今月3日時点で17件あった。昨年の58件から大幅に減っているが、警戒態勢は続く。通報があれば、防災メールや防災無線の定時放送で町民に知らせたり、当該地域の区長に報告したりする。昨年には、町内の小中学生全員にクマよけの「熊鈴」を配布し、今年も新1年生に支給。捕獲用の檻(おり)も2個購入した。一方、市域の9割を森林が占める兵庫県宍粟市。9年前に男性がクマに襲われて重傷を負ったほか、今年は市中心部にある恵比須神社(同市山崎町山崎)周辺などで30件超の目撃例がある。こうした状況を受け、市は市内の全小中学生に熊鈴の配布を決めた。「クマは鈴の高音を嫌うため、突発的な遭遇を避けることができる」と市教育委員会の担当者。今月中旬までに計2520個を支給する予定だ。西播北部の佐用町は、目撃情報が相次げば、柿の木を切るよう公式ホームページなどで勧告しているが、今年は実施していないという。佐用郡森林組合(同町佐用)では、クマが人間の食べ物の味を覚えてしまわないよう、森林で働く作業員に弁当の食べ残しなどを山に置きっぱなしにしないよう声かけをしている。各市町は、クマの目撃例が今年は少ない点について「餌となるドングリの豊作が要因になっているとみられる」などと推測するが、今後も継続的な警戒は必要と認識。姫路市では、9月に施行された改正鳥獣保護管理法に合わせ、自治体が許可すれば住宅街でも発砲できる「緊急銃猟」の体制を整備した。今年の目撃通報がない兵庫県相生市のほか、兵庫県市川町、神河町、兵庫県上郡町などでも近く緊急銃猟のマニュアルを策定する方向だ。

(クマ目撃しても通報しない住民も:島根)
クマが日常的に出没する益田市の中山間地域では、目撃しても市などに通報しない住民がいる。行政側の対応が限定的で「連絡しても意味がない」と感じている。

(人とクマ、すみ分け図り緩衝帯整備:三重)
三重県議会本会議は5日、一般質問が行われ、多気郡選出の松浦慶子氏(自由民主党)が登壇し、ツキノワグマによる被害防止策などについて尋ねた。県は「管理計画に基づいて緩衝帯を設けるなどして、人とクマとのすみ分けを図りたい」と答えた。松浦氏は、全国で相次ぐクマによる被害について、県民への被害防止はもちろんのこと、ツキノワグマを県指定希少動物の指定から解除することも含めて、どのように取り組むかと県の取り組みを問うた。これに対し、枡屋典子県農林水産部長は3日現在で県内のクマ出没件数は82件で、昨年度に次いで多いことに触れ、人身被害発生を懸念。今後は12月中頃に人とクマとのすみ分けを図り、クマによる被害を防止することを目的とした「県ツキノワグマ管理計画」に基づき、問題個体の駆除、注意喚起などの被害防止対策や、人の生活圏への出没防止に向けた緩衝帯の整備を行い、針広混交林への誘導などの環境整備について、国のパッケージを活用して取り組んで行くことなどを話した。松浦氏は「政府のパッケージも活用していただけるとのことで、まず緊急対策に注力していただき、中長期的な対策も見据えて考えてほしい」と結んだ。松浦氏は他にも、森林整備について、林業人材の確保、多様な主体による森林整備の推進、また中小企業・小規模企業における経営力向上についてや、みえ子ども・子育て応援総合補助金について質問し、子供への性暴力の根絶などを求めた。

(柿や栗伐採希望7400本に、年度内の完了断念:栗原)
栗原市は、クマ対策で進める柿や栗の木などの伐採事業について、5日時点で想定の13倍以上となる約7400本の伐採希望が市民から寄せられたと明らかにした。希望はさらに増える見通しで、市は当初予定していた今年度内の事業完了を断念した。市は11月、クマを生活圏に出没させないため、人家から300メートル以内にある実がなる木について、所有者の負担なしで市が伐採する「誘引木伐採事業」を独自に実施することを決定。当初は対象を550本と見込み、同18日に専決処分で2000万円を計上した。1本の伐採には最低でも5万円、場所によっては運搬費、処分費がかさみ10万円以上かかる可能性がある。佐藤智市長は今月1日の記者会見で「事業費が膨大になり、一気に7000本は伐採できない」と頭を抱えつつ「自分の身を守るために木の伐採をしなければならないと市民が感じているのではないか」と語った。市は予算が足りないため、出没が多い一迫、花山、金成などの地区で、人家の近くにある木を優先する方針。早ければ今月下旬にも始めるとしている。

(狩猟免許試験、令和に入って最多の受験者数:岩手)
岩手県内で出没が相次いでいるクマの捕獲などを担う狩猟者の免許試験が滝沢市で行われています。狩猟免許は都道府県知事が許可・交付するもので、県では年に3回試験を行っています。2025年度最後となる7日はわな猟、網猟、銃猟1種と2種の合わせて4種類に令和に入って以降最多となる254人が受験しています。狩猟免許の取得は若い世代にも広がってきていて、会場には若手や女性の姿も見られました。「最近の野生鳥獣被害を見て、ぜひ自分でも対策に取り組まれるとか、そういう方々もいらっしゃると思います。そういうことで(受験者数が)増えているのかなと思っています」。

(クマ発見の切り札に!AI+ドローンで自動追尾:秋田)
クマ対策の切り札としてドローンや人工知能(AI)を駆使した技術開発が進んでいる。秋田県五城目町のドローンスクール「Dアカデミー東北」は、山中や住宅街に潜むクマを検知、自動追尾するシステムを製作。位置情報はスマートフォンで共有可能で、2026年中の実用化を目指す。秋田県のほか、岩手県や青森県などの自治体から問い合わせが相次いでいるという。使用する機体は長さ98センチ、幅76センチ、高さ48センチ。夜でも写る暗視機能付きカメラと温度を測る赤外線カメラを搭載し、継続飛行は最大約1時間。監視を後続機に引き継ぎ、バッテリーが切れる前に基地へ自動帰還する機能もある。

(電磁石銃、国内で14丁回収)
今年3月から改正銃刀法で規制されることになった電磁石銃について、8月末までの回収期間に国内で計14丁が回収されていたことが、警察庁への取材でわかった。多くは手作りだったといい、同庁は「所持すれば違法になるので注意してほしい」と呼びかけている。

(クマ出没も想定した「緊急銃猟」の体制は?:熊本)
北海道や東北地方を中心にクマによる人的被害が相次ぐ中、熊本市議会でも対応について議論が交わされました。議員「クマが出没したことも想定した『緊急銃猟』の発令を含めた準備・体制など、本市の取り組み状況を農水局長にうかがいます」。相次ぐクマ被害をめぐり、国は鳥獣保護管理法を改正し、9月から一定の条件を満たせば市街地でも銃を使った駆除を可能とする「緊急銃猟制度」の運用が始まりました。住民の避難など安全の確保は市町村の判断で実施し、銃の使用はハンターに委託できます。農水局長「本市でクマが出没、生息、繁殖する可能性は低いと考えられます。このため本市では、まずはイノシシへの適用を想定し、緊急銃猟対応マニュアルとして取りまとめ、実施体制を整えました」。緊急銃猟の対象となる「危険鳥獣」には、ヒグマやツキノワグマのほか、イノシシも含まれています。熊本市によると、2024年度に市内で捕獲されたイノシシは1807頭と過去最多を更新。今年度は10月末現在で826頭が捕獲されています。これまでイノシシを対象に緊急銃猟が行われた例はありませんが、市は「警察、駆除隊、自治会などと連携を図りながら、市民の安全が確保されるよう取り組む」としています。なお、九州のクマは、環境省が2012年に「絶滅」を宣言し、いないとされています。

(高校生対象に猟友会の活動と現状を知る講習会:長野)
4日に雪かきをしていた男性がクマに襲われ大けがをした野沢温泉村では猟友会の会員がパトロールにあたっています。こうした猟友会の活動について高校生が学びました。飯田市の下伊那農業高校で3日に開かれた講習会には、地域の課題などを学ぶ3年生30人が参加しました。地元の猟友会の村松繁秀(むらまつしげひで)さんが講師の1人を務め、捕獲に使うワナや、猟銃に似せて作られた模擬銃を紹介し、生徒たちは模擬銃を手にしたり、ワナの仕組みなどを学んだりしました。クマなどの捕獲にもあたる猟友会を巡っては、会員の負担の増加や高齢化などが課題とされています。飯伊猟友会 村松繁秀さん:「50人くらい昔はいたが今は20人しかいないので切羽詰まっています」。下伊那農業高校 高野善之(たかの・よしゆき)教諭:「今後継者不足が言われているのでぜひ興味を持った子たちは自分たちも猟友会に入ってこの地域を支えていくような人材になってくれれば」。講習会は10日にも予定されていて、生徒たちが野生動物による農業被害について学ぶということです。

(クマの目撃場所、県がすべて公開:奈良)
クマの出没が相次ぐ中、奈良県のホームページ(HP)で、今年度目撃されたすべての位置情報が確認できるようになった。県はこれまで、「観光への影響」を懸念する地元自治体に配慮し、人身被害があった場合などに限り公開していたが、都市部に近い地域での目撃も増えたことから情報公開のあり方を見直した。県はツキノワグマの目撃場所の公開について、9~10月に各市町村の意向を確認。全市町村の同意が得られたとして、10月下旬からHPで目撃場所の一覧と市町村別件数の掲載を始めた。これまでは「人身被害があった場合」や「既存の生息域以外の自治体で初めて目撃された場合」などに限定し、大半は非公開だった。だが、目撃件数が増加し生息域も拡大。県が実施したクマの保護管理計画をめぐるパブリックコメントでも、目撃場所の公開を求める意見が寄せられていた。一方、隣接する京都、和歌山、三重の3府県や奈良市ではいずれも、目撃場所を地図上に示すマッピングを実施して注意喚起を図っている。奈良県でも視覚的に分かりやすい目撃マップの公開を「検討している段階」(農業水産振興課)という。12月3日時点では、十津川村(19件)や川上村(11件)、東吉野村(11件)でクマの目撃が相次いでいるほか、これまで生息域とされていた「保護管理重点地域」以外の奈良市(29件)、宇陀市(10件)、山添村(7件)などでの目撃も目立つ。県全体では125件と、過去最多となった昨年度(累計145件)と同様のペースで増えている。

(クマやシカなど野生動物から農作物守る「電気柵」、農家やJA職員が取り付け方学ぶ:岩手)
クマやシカなどによる農作物の被害を減らそうと5日、山田町で電気柵の設置に関する研修会が開かれました。研修会には、地元の農家やJAの職員などおよそ20人が参加し、野生動物から農作物を守るために設置する電気柵の取り付け方を学びました。田んぼや畑など、農作地の周辺に電気の通ったワイヤーを張り、野生動物の侵入を防ぐ電気柵。研修会では、岩手独自の常設型電気柵が紹介され、県の職員が設置方法を説明すると、参加者は熱心に耳を傾けていました。県によりますと、昨年度、山田町の野生生物による農作物被害はおよそ1150万円に上るものの、その多くはシカによる被害で、クマの被害はまだないということですが、関係者は警戒を強めています。5日研修会が開かれた地区では、今年度中に国の補助金を活用して田んぼや畑の周囲を囲う大規模な電気柵を設置する予定です。

(小学校で猟友会を招いてクマの学習会を開催:山形)
村山市の小学校で猟友会がクマに関する学習会を開き、参加した子どもたちは、クマに遭遇した際の対応策などを学んだ。この学習会は、児童がクマに遭遇した場合、どのようにしたらうまく逃げられるかなど、クマの習性を学んでもらおうと村山市の冨本小学校とPTAが猟友会の協力を得て開いた。学習会には、冨本小学校の全校児童41人と保護者たちが参加し、児童たちはクイズを通してクマの行動について学んだほか、猟友会のメンバーは事前に寄せられた質問に答えていた。(クマ講習)「走って逃げても駄目。走ると獲物だと思って食べられるので、走って逃げないで静かに下がりながら逃げるようにしてほしい」。会場には、クマの毛皮や頭蓋骨、実物の猟銃なども展示され、普段見ることがない貴重なものを前に、児童たちは興味深く観察した。(村山市猟友会・中里邦男副会長)「私も初めての経験だったので、もし機会があれば、(猟友会の)生の声を子どもたちに教えたい」。今年、冨本小学校の周辺では、クマの目撃情報が14件寄せられ、冨本小学校では児童の安全を守る機会を今後も作っていきたいとしている。

(学生がシカ防護用ネット設置:宮崎)
高千穂町の土呂久鉱山事務所跡地のサクラをシカの食害から守ろうと、宮崎国際大学の学生たちがシカ防護用ネットを設置しました。亜ヒ酸製造による公害に苦しんだ高千穂町土呂久の魅力を発信しようと、宮崎国際大学の学生が4年前から行っている「土呂久に集まれ!プロジェクト」。現在14人の学生が参加していて、毎年数本のサクラの苗木を植栽しています。しかし、シカによる食害で枯れるなどの被害が出たことから6日、学生たちは住民と一緒に、シカ防護用のネットを苗木の周辺に設置しました。7日は、鉱山事務所跡地周辺の草刈り作業を行うということです。

(名古屋城のシカ“絶滅”寸前、京都から受け入れる案が浮上もクマ出没で計画難航:愛知)
名古屋城の堀に住み着く「シカ」がいなくなってしまうかもしれないということで、市ではシカが多い京都市から新たなシカを受け入れる案が浮上しています。しかし、それも足踏みしています。理由はクマです。金のしゃちほこで有名な、名古屋のシンボル、名古屋城。その堀には2頭のシカが住み着いています。江戸時代にはすでに名古屋城でシカを飼育していたという記録が残っていますが、戦時中に一度“絶滅”しました。戦後、市内の動植物園からもらい受けると、どんどん増え、1970年代半ばには50頭を超えていたといいますが、その数は激減し、現在は2頭だけに。両方メスのため、繁殖もできず、再びいなくなってしまう危機に瀕しています。名古屋市議会でも…。自民党名古屋市議団 浅井正仁議員(61)「京都・宝が池公園のシカを助け、名古屋城で引き取ってあげてはどうでしょうか」。名古屋市 広沢一郎市長(61)「京都市からは年内に殺処分されると聞いておりますので、12月をめどにできるだけ早く迎え入れることができるよう、課題解決に向けて最大限努力をしてまいります」。京都市では、深泥池・宝ケ池の区域に、野生のシカが多数住み着いています。天然記念物である深泥池の希少な植物を食い荒らすだけでなく、バイクの男性がシカと衝突して死亡する事故も発生しました。市は今年度中に付近の野生のシカをすべて駆除する方針を打ち出していました。そこで突如浮上した、京都市のシカを名古屋市が受け入れるというプラン。名古屋市長は今月をめどに受け入れを目指すと宣言しましたが、全国で出没が相次ぐクマのせいで作業が難航しているといいます。名古屋城総合事務所「シカを生け捕りにする際は専門の業者に頼むのですが、そもそも頼める業者の数も少なくて、全国的にクマ対策に追われているため、協力してもらえない」。長時間の輸送や感染症などの検査といった多くの課題が残っているため、進まない受け入れ。神鹿を守る有志一同 山中香苗共同代表「今回の名古屋城のご英断は道徳心とか慈悲心とか、命への尊厳・思いやりをベースにしたご判断ですので、そういったものはとても日本に大事だと思っていて、次世代の子どもたちに残していくべき。日本人としての社会であり文化であり精神性だと私たちは思っております」。

(ヒトの生活圏にクマ 意図的に攻撃」も多発、「なぜ」解明はこれから)
人の生活圏で住民がクマに襲われる被害が深刻化した今秋。自治体判断でクマに発砲可能な「緊急銃猟」が始まり、環境省は被害対策費として34億円を今年度の補正予算案に計上、希望する自治体に専門家を派遣する事業も始めた。だが、かつてない事態がなぜ起こっているかは不明な部分が多く、科学的な究明はこれからだ。専門家からは科学的なモニタリングに基づく順応的管理の実現などを求める声が上がっている。環境省によると、今年4~11月のクマによる人的被害は速報値で230人。犠牲者数(11月20日時点)は過去最多の13人に上る。事態を受けて、ヒトとクマ類の共存を目指すNGO「日本クマネットワーク」(代表・小池伸介東京農工大教授)は先月6日、「2025年秋季のクマ類を巡る状況に関する現状整理」と題した見解を発表。従来、クマ類の攻撃は「身を守る」「子熊を守る」ためと考えられてきたが、今秋は複数人で行動しても襲われたり、「最初から意図的に攻撃」したりする事例が多発しているとし、「特定個体の特異行動か、クマ側の特性によるものか、人間側の特定行動などに起因するものか、分かっていない」とした。また、これまで出没が確認されなかった市街地中心部や住宅街で「パニックで逃げ惑う状態ではなく、日中でも落ち着いた状態と考えられるようなクマ」が確認された事例については「どのような個体がどのような目的で侵入したか、ほとんど分かっていない」と指摘。今秋の「異常事態」の背景や要因の多くについて、未解明であるとしている。問題の背景にあるのは、クマ類の増加と分布拡大だ。兵庫県の分析では、近畿圏の場合クマの増加率は年15%で、捕獲がなければ5年で倍増する計算になる。日本クマネットワークは、平成30年までの40年間でクマ類の分布が約2倍に拡大していると指摘。少子高齢化や都市への人口一極集中に伴う「農山村からのヒトの撤退」に比例して起こっているとする。今秋、出没が多い地域ではクマの秋の主食であるドングリ類が不作だ。これまでもドングリ類不作の年にクマの行動範囲は拡大傾向にあるといい、人間活動域に放棄された果樹や電気柵が設置されていない耕作地があれば、クマの人間活動域への出没を誘引するとし、クマとヒトのゾーニング(棲み分け)の重要性を指摘する。だが、過疎化する中山間地ではマンパワーが顕著に低下しており、対応は難しい。環境省のまとめではクマが生息する34都道府県のうち、ゾーニング実施は半分の17道府県で、自治体側の対応は追いついていないのが現状だ。政府は先月、春季のクマ捕獲を強化し、人間活動域周辺で増えすぎたクマの個体数を削減することなどを柱とする「クマ被害対策パッケージ」をまとめた。中期的な取り組みとして、環境省による全国的な個体数調査・推計も盛り込んだ。だが、研究者らでつくる市民団体「ヒグマの会」(北海道江別市)事務局長の佐藤喜和・酪農学園大教授は「個人的な見解としては、一定の前進はあるが、十分かといえばそうとはいえない」とする。野生動物の管理を行政的な専門組織が行うのではなく、猟友会などのボランティアに委ねられてきたわが国の対応は世界的には珍しいケースといい、「市街地でビルの中に入ってきたクマに対応すべきなのは、山の中でクマを撃つ人ではないはず。『今までのやり方では抑えきれない』と認識し、対応を変えていくときだ」と話す。日本クマネットワークは、被害防止対策に関する提言として、ヒトとクマのゾーニング実現と維持のほか行政の体制整備、個体群管理のための科学的モニタリング実施と順応的管理などを提案。最新の科学的知見を対応に生かす体制整備などが必要だとしている。

(冬本番になってもまだクマ出没、警戒続く)
岐阜県山間部で30cmを超える積雪を記録するなど、冬本番です。各地で人を襲うなど私たちの生活を脅かすクマも冬眠かと思いきや、まだ警戒が必要なようです。一面の雪化粧となった岐阜県白川村の世界遺産「白川郷」の合掌造り集落には、5日朝も多くの観光客が訪れていました。こうした山間部で特に気がかりなのがクマ。白川村では、11月以降クマの目撃情報は確認されていませんが、白川郷と同じ豪雪地帯の長野県野沢温泉村では12月4日、雪かき中の男性がクマに襲われて大けがをしました。国の重要文化財に指定されている白川郷の「和田家」では、本格的な冬を迎えた今もクマ対策を続けているといいます。「柿の木に近づかないよう、木に登れないように鉄のトタンの波板を巻いて対処してあるが、まだ取らずに巻いたままにしてある。これだけ雪が降ればクマは冬眠に入って(人里に)いないはずだが、白川郷も気を付けないといけないとやはり思ってしまう」(和田家 和田正人 館長)。また、三重県熊野市飛鳥町小阪の国道42号の近くでは12月2日、市民から「クマとみられるもの」の目撃情報がありました。12月に入ってからも目撃されるクマ。熊野市に隣接する尾鷲市の観光物産協会では、鈴やスプレーといったクマ対策グッズを一年を通して、無償で貸し出しています。「尾鷲の山は雪山ではなく、比較的暖かい冬なので、冬眠はあまり考えていない。安心して歩いてもらえるよう、冬でも貸し出す予定」(尾鷲観光物産協会 梅谷陽子 事務局長)尾鷲市では2024年1月にクマが目撃されていて、冬の時期でもクマが出没した想定の訓練を行っています。「冬でも暖かい地域ではあるので、どこからクマがこちらの山に動くかわからないので、しっかりと準備をし続ける必要がある」(梅谷事務局長)。クマなどの生態に詳しい岐阜大学の浅野玄准教授が考える原因は、「個体数の増加」と「どんぐりの不作」です。「通常であれば、高山や飛騨のあたりでは冬眠に入っていてもおかしくないが、山の中でエサを食べられないクマが出てきてしまって、エサを入手しやすい人里のほうに出てきてしまう」(浅野准教授)一方、三重県の場合は、比較的暖かい気候が関係していると考えられます。「紀伊半島は岐阜と比べると冬も温暖なので、どんぐりを探しやすい状況にある。ギリギリまで食べて冬眠する時期を遅らせようとする行動をとる個体がいる」「あとひと月ぐらいで大方のクマはもう冬眠してしまうと思う。これまでどおり、一定の警戒を続けながら、過ごしていただければいいかなと思います」(浅野准教授)。

(“新世代クマ”人里付近で冬眠も)
冬眠するクマが眠る場所を替える恐れがあることが新たに分かりました。3日午後5時すぎ、道路脇から突然、クマが…。クマはまだ小さく、撮影した団体によりますと、捕獲された母グマとはぐれた個体ではないかといいます。冬眠する場所を求めて徘徊(はいかい)している可能性もあります。そして、5日も雪国でクマが出没します。秋田県仙北市にある「こども園」。午前7時ごろ、雪が積もる駐車場に体長約80センチのクマが現れました。角館こども園 保育教諭 「早番で出勤したが、駐車場一面、雪が降って積雪があったので、黒いものが目立って見えた。びっくり。冬も安心して外を歩けないと思った」今シーズン最強の寒気が入り、雪が降り積もる新潟県では…。新潟県猟友会 池田富夫会長(76) 「枝をクマが折った。これが全部、爪痕」。柿の木にはクマの爪痕が刻まれています。新潟県猟友会 池田富夫会長 「自分の力で降りてくる時に(爪痕を)付ける。これだと100キロクラス。本来のクマは60キロくらい。最近は『新世代クマ』ということで山から下りてきたクマが里で冬眠するようになって子グマを産んだもんだから、栄養も豊かで大きくなった。去年で一番大きいのが164キロ。大きい。2人で引っ張り出せないくらい」。4日、住宅の近くでクマを目撃した人がいました。クマを見た住民 「それで坂上がっていって、ずっと向こうへ下りて。こたつにあたりながら外を見たら、周りが白いなか黒いのが上がっていくのを見て」猟友会が確認すると、雪の上にクマの足跡が…。市街地を徘徊(していることが分かりました。新潟県十日町では2日、住宅の柿の木にクマが出没。猟友会の池田会長らが現場に駆け付け、「緊急銃猟」によってクマは駆除されました。現場は幹線道路沿いで、近くにはコンビニ店や保養施設などもあります。新潟県猟友会 池田富夫会長 「そこですね。あの柿を食べていた。これは子グマだったので爪痕は残っていない」 「(Q.どの場所で緊急銃猟を?)この木に上ったクマを従業員が見つけて通報をもらって、協議をしながら最終的には緊急銃猟をしなくてはいけないと。小さい林に入ったクマを皆で寄せて最終的には、そこで捕殺した。街の真ん中、こんなところにクマが出たことはない」。先月29日には小学校の校門の前に子グマが居座りました。麻酔を打って捕獲する作戦に。ところがクマは茂みに逃げ込み、捕獲することはできませんでした。クマによる農作物の被害も甚大です。ただ、今年はクマ用の箱わなが足りない事態となり、代わりにイノシシ用を設置しました。新潟県猟友会では、クマの捕獲数が今年すでに去年の倍以上に及んでいるといいます。新潟県猟友会 池田富夫会長 「(クマが)人慣れしてしまった。だからラジオや鈴では逃げなくなって極端な棒で木をたたく、大声を出すとかしないと逃げてくれない。人に懐いてしまったクマ」。冬眠中のクマを捉えた貴重な映像です。今年1月、木にできた穴の中をライトで照らすと、穴の奥で身を隠すクマ。目が覚めたのか、人がいる方をじっと見ています。岩手県宮古市でクマの狩猟にあたるマタギが撮影しました。マタギの一人である西村昭二さん(53)。冬眠中のクマを狙う「穴撃ち」を行っています。クマ撃ちの“マタギ” 西村昭二さん 「(クマは)木の穴に寝ている場合もある。土に穴を掘って寝る。岩の穴、大きく分けると3つ」。木の幹に上るハンター。この木の中でクマが冬眠しているといいます。ハンターが木の隙間に枝を刺します。幹の内側は空洞になっているようです。するとこの後、木の中で冬眠していたクマが姿を現します。木の上側に注目。幹の穴からクマが顔を出しました。冬眠中のクマは何かの刺激で目を覚まし、行動することがあるといいます。クマ撃ちの“マタギ” 西村昭二さん 「私の山での経験ではクマが冬眠している穴を替える時がある。周りがうるさくて目が覚めて私たちは床を替えるという。穴に入らず、穴の上で休みながら、そのまま冬眠に入るケースも。ささの中で、そのまま寝ているのも時々いる。ごろ寝しているという」。今年は市街地に度々、現れる「アーバンベア」が人里の近くで冬眠する恐れがあると懸念しています。クマ撃ちの“マタギ” 西村昭二さん 「『アーベンベア』は里に下りてきたクマがそのまま居ついてしまって、雌グマが里で子グマを育ててしまうケースが非常に多い。その環境で育ったクマは親から離れた時に必ず同じ所に戻って来る習性がある。山を知らないので、山に戻ることができなくなっている。ふるさとがここ(人里)だと認識してしまっている。今後、空き家や廃墟(はいきょ)と化した小屋で冬眠する可能性もあり、非常に心配」。

(変化する「食性」、これまで食べなかった“飼い犬”や“錦鯉”をエサと認識か)
未曽有のクマ被害の終焉はいつになるのか──多くの人が気を揉む問題のトンネルの出口は見えない。人身被害が増え続けるなか、クマはより大きく、強く、恐ろしくなっている。最新の実態に迫った。わなの中で重低音のうなり声をあげ続け、周囲を威嚇する巨大なヒグマ。体長約2m、体重400kgに迫ろうかという個体が持つ鋭い爪は、いまにも鉄製の檻を引きちぎらんばかりの迫力だ。11月25日の早朝、北海道苫前町で捕獲されたこのヒグマには、地元ハンターも「稀にみる巨体」と驚くばかりだった。「捕獲の約2週間前に、ヒグマが箱わなを左右に揺さぶり、中に仕掛けられた鹿肉を振り落として食べようとする姿が撮影されていました。この箱わなは300kg以上あるにもかかわらず、軽々と揺らしてエサをうまく取るパワーと知能の高さに、周辺地域では警戒を強化していました。今回捕獲されたのは、同一個体と思われます」(猟友会関係者)この地は、1915年に発生した「三毛別ヒグマ事件」の現場としても知られている。ヒグマが2軒の開拓農家を次々と襲い、胎児1人を含む7人が死亡。3人が重軽傷を負う惨事だった。日本史上最悪の獣害を起こしたヒグマは約380kgの巨体だったが、今回出現したヒグマは、そのときと同等か、それ以上のサイズ。もし捕獲されなければ、再び悪夢が繰り返されていたかもしれない。目下、クマによる人身被害は過去最悪のペースで推移している。環境省の発表によると、今年4~10月のクマによる死傷者は197人。10月だけで89人が被害に遭い、うち7人が死亡した。この数字は前年同期比の約2.5倍だ。さらにここにきて、クマの「食性」の変化を物語る事態が起きている。東北地方では7月以降、クマによる襲撃で少なくとも10匹以上の「飼い犬」が犠牲になった。10月25日には、宮城県大崎市の住宅の庭で飼われていた犬を、クマがくわえて連れ去る姿が目撃された。本来、クマの主食は植物だ。しかし、屋外飼育されている犬の味を覚え、「エサ」として認識し始めているという指摘もある。11月12日には、新潟県小千谷市内の養鯉池(ようりち)で、クマが錦鯉を捕食したこともあった。長らく錦鯉を育てている業者でも、「錦鯉がクマに食べられたというのは初めて聞いた」という。岩手大学准教授の山内貴義氏が話す。「本州にいるツキノワグマは魚を食べません。おそらく、はじめは魚のエサを狙って養鯉池に入り込んだのでしょう。魚に与える配合飼料はクマにもおいしく感じるのではないかと思います。そういった個体が偶然に魚を食べ、それで魚の味を覚えた可能性はあります」。その先に待つのは、冒頭の“400kg級クマ”のようなクマの「巨大化」かもしれない。秋田県内では、栄養価の高いカモシカなどの動物をエサとしたことで、クマが巨大化していると指摘されている。歯止めをかけるためにクマが捕食しそうな動物の駆除も併せて行うべきと、ハンターが訴えたこともあった。本来であれば、日本に生息するヒグマもツキノワグマも、11月中旬~12月頃には冬眠に入る。だが、12月に入ってもクマの目撃情報はなくならない。東京農業大学教授の山﨑晃司氏が解説する。「そもそも、クマは寒さを感じて冬眠するわけではありません。冬になると山の中に食べ物がなくなるため、その間の“飢え”をしのぐために冬眠するのです。つまり、食べ物がある限り冬眠は遅れます。近年は降雪量が減少しているため、地面に落ちたどんぐりなどが雪に覆われず、見つけられる環境にあります。また、人の生活圏の近くであれば庭先の果樹や人間の食べ残した生ゴミなどがあって食べ物に困りませんから、冬眠が遅れることにつながる可能性があります。市街地に出没する期間が長くなれば、人身被害のリスクも高まります」。

(クマ被害拡大の日本を救う"公務員ハンター"を直撃!?:長野)
各地で拡大するクマ被害を受け、これまで猟友会任せなことも多かった大型害獣の駆除について、自治体が"公務員"として直接ハンターを雇う流れが生まれつつある。その職の名は「ガバメントハンター」。彼らは日々、どんな仕事に従事しているのか? 待遇は? 長野県小諸(こもろ)市で活動する現役のガバメントハンターに密着した!全国各地でクマによる被害が相次ぐ中、対策の切り札として「ガバメントハンター」が脚光を浴びている。ガバメントハンターとは、狩猟免許と実猟経験を持ち、有害鳥獣の捕獲や駆除を公務として担う自治体職員のこと。11月上旬、高市早苗首相は国会で「ガバメントハンターの確保を進める」と明言。その後、政府が取りまとめた「クマ被害対策施策パッケージ」では、その人材確保を主要施策に位置づけ、人件費支援制度の創設も盛り込まれた。ガバメントハンターの雇用形態は正規と非常勤に分かれるが、現状では非常勤が多い。例えば兵庫県神戸市は2025年度、年収200万~500万円、賞与年2回、1年契約の条件で「鳥獣対策専門員」を公募している。呼称は違えど、これも実質的にはガバメントハンターだ。そんな中、正規職員として雇用する数少ない自治体が、長野県小諸市である。標高2568mの浅間山南麓に広がる人口約4万人の市で、これまではシカ、イノシシ、ハクビシンの農業被害が多かったが、24年に入ってクマの出没が急増し、市内では初めて人身被害も発生した。一方で、捕獲従事者である小諸市猟友会の会員は、08年の102人から現在は40人弱に減少。加害獣の増加とハンター不足、この穴を埋める存在として活動しているのが、同市農林課の2人のガバメントハンターだ。そのひとりが、櫻井優祐(40歳)。16年、わな猟免許と散弾銃、ライフル銃を扱う第一種銃猟免許を取得し、23年4月に一般行政職として小諸市役所に入庁した。鳥獣対策の専門職として採用されたわけではなかったが、「実猟経験があるなら」との人事判断で農林課に配属。今も狩猟期間中の毎週日曜には趣味としての狩猟を続ける現役のハンターで、数日前にも「猟仲間と一緒にクマ3頭を仕留めた」と語る。もうひとりの佐藤勝弥(28歳)は、「まさか自分がこんな仕事に......」と苦笑する。新卒で入庁して7年。企画課で広報を3年、教育委員会で学校関連業務を2年半担当した後、24年10月に農林課へ配属された。櫻井のサポートを受け、現在は鳥獣対策の主担当を任されている。今年6月には「業務上必要だから」とわな猟免許を取得。今後は銃猟免許の取得も視野に入れているという。「山で獣と向き合い、命のやりとりをする時間は、"生"を実感する得難い瞬間」と語る櫻井に対し、佐藤は等身大の思いを打ち明ける。「正直、狩猟に興味はありません。できることなら動物の生き死にに関わりたくない。仕事と割り切って日々の業務に臨んでいますが、現場に行くときは、いつも怖いです」同じガバメントハンターでも、ふたりのスタンスは驚くほど対照的だ。ガバメントハンターは、平時はどんな仕事をしているのか? 櫻井はこう話す。「普段は、鳥獣の個体数調整に関する事務のほか、農家や市民の相談対応、県との捕獲許可の調整、国からの要望調査などを担当しています。私の場合は農業者への補助金交付など、農業振興に関する業務を兼務しています。鳥獣の捕獲や生態に関する知識だけでなく、行政職としての事務スキルやコミュニケーション力も欠かせません」櫻井が農業被害の現地調査に行くというので同行した。移動は公用車の軽バン。運転席からすぐ手の届く場所には、獣を追い払うロケット花火や監視用の双眼鏡が置かれ、荷台には鉄パイプや猟具が積まれている。畑地に着くと、農家が心配そうに待っていた。タマネギ畑の一角には無数の足跡が......。「シカに踏み荒らされちゃってね。このままじゃタマネギは冬を越せない」と肩を落とす。櫻井は足跡の向きや周囲の地形を確認し、「侵入ルートは、やっぱりあちらのやぶですね」と指さした。その先には、市が無償で貸与し、櫻井が設置したくくりわなが仕掛けてある。落ち葉や土に隠された踏み板をシカが踏むと、ワイヤーが足を締めつける構造だ。この日は踏み板の脇を通られ、わなは空振りに終わった。櫻井は踏み板の角度や位置を調整し直し、落ち葉や土で再び覆って見えなくして、さらにシカが踏み板を確実に通るよう、太めの枝を束ねて地面に置き、通り道を限定した。「電話すれば専門職員がすぐ駆けつけてくれる。この対応の早さが本当に助かる」と農家は安堵(あんど)する。しかし、櫻井は不安げにこう話した。「現場確認やわなの設置に猟銃は携帯できないので、最悪に備えて鉄パイプやクマスプレーを携帯しますが、クマやイノシシが頻繁に出没する林内では、ほぼ丸腰同然です。正直、怖いですよ」。小諸市域の猟期は11月中旬から翌年2月中旬まで。その期間に山で狩猟を担うのは猟友会員らハンターである。一方、櫻井らが公務として担当するのは有害鳥獣への対応だ。通報が入れば現場へ駆けつけ、被害状況を確認して箱わなやくくりわなの設置を地元ハンターに依頼したり、スポット的に自らも捕獲に当たったりする。そして、獰猛な大型獣がわなにかかり、ハンターが出動できない場合には、櫻井自らが銃を手に取り、引き金を引く。櫻井の"相棒"は散弾銃だ。散弾銃にも種類があるが、彼が手にするのは大物猟向きの単発自動銃。普段は、市役所から離れた場所に自ら用意したガンロッカーで厳重に保管している。わなにかかった獣の種類や位置、周辺の安全確保など、猟銃使用の条件が整えば、市役所から一度保管場所に行って銃を取り、そのまま現場へと急行する。「止(と)め刺(さ)しに銃器を使用する場合、課の上長にも共有しますが、最終的な判断と責任は自分にあります。銃砲所持許可は"公務員だから"ではなく、あくまで個人に対して公安委員会から付与されている。だからこそ、引き金を引く判断はすべて自分が背負うんです」。現場で最も警戒すべき相手はクマだ。シカやイノシシ用のくくりわなに誤ってかかる「錯誤捕獲」も多い。錯誤捕獲されたクマは放獣するのが原則だが、ワイヤーが損傷していたり、かかりが浅かったりすると、振り切って襲いかかってくる危険がある。櫻井はまず遠距離から双眼鏡で状況を観察。安全が確認されて初めて事業者と共に放獣作業に当たる。ただ、櫻井は「現場の主役は猟友会のハンターさんたち。自分はあくまでサポート役です」と強調する。「猟銃による止め刺しが必要なときでも、まずはハンターさんの出動が優先です。どうしても彼らが動けない場合に、私たちが代わりに現場へ入る。人里にクマが現れた場合は、移動経路やわなの設置ポイントを絞り込み、ハンターさんと共有します。猟銃の使用が可能かどうか判断に迷う場面では、行政職員として適法かどうかの確認や助言をすることもあります。現場では一分一秒の判断が命に関わります。私たちがいることで、ハンターさんの負担が減り、迅速かつ安全な対応が可能になるのです」。「ガバメントハンターとして最も苦労するのは、クマではなくヒトへの対応です」。そう語るのは、北海道羅臼(らうす)町・産業創生課の田澤道広(66歳)だ。30年ほど前に正職員として採用されて間もなく、野生鳥獣担当となり、「最終手段を自分で持っていないと現場で迅速に動けない」と、第一種狩猟免許を取得。以来、鳥獣駆除の最前線に立ち続けてきた。彼が相対してきたのは、本州のツキノワグマよりひと回り大きいヒグマだ。「ツキノワグマのほうがやんちゃな印象ですが、ヒグマは大きいぶん、一発の事故が命取りになる」と田澤は警戒を崩さない。知床半島という国内屈指のクマ多発地帯にあって、田澤の駆除実績は群を抜く。これまでに仕留めたヒグマは数百頭。今年だけでも町域で駆除された24頭のうち、半数を担った。地元猟友会のハンターは二十数人だが、クマ対応の先頭に立っているのは、猟友会ではなくガバメントハンターである田澤だ。この点は、小諸市とは大きく異なる。そんな"レジェンド"が「クマよりヒトに苦労する」とこぼす理由とは何か。「『クマを殺すな!』といった類いの電話がしょっちゅう来ます。公務員なので、調べれば名前も部署の連絡先も出てしまう。『田澤を出せ』と名指しで電話が来れば、公務なので出ざるをえません」。多い日には1日10件。1件当たりの対応は30分、長ければ1時間に及ぶ。「なぜ駆除が必要だったのか?」という同じ説明を、何時間も延々と繰り返さなければならない日もあるという。しかも、クマ出没が急増した今年は、真逆の苦情も増えているという。「『電気柵なんて言ってないで、どんどん駆除してしまえ!』という電話をいただくことも増えました」。田澤が続ける。「クマは、なんでも撃てばいいというものじゃない。繰り返し同じエリアに出る個体なら駆除の判断もありますが、初めての出没で悪さもしていなければ様子を見ることもあります。そんなときに無線機のスピーカーから『駆除ではなく追い払え』という指示が響くと、周りの住民から『なんで駆除しないのよ!』『はよ~駆除せいっ!』なんて声が飛んでくる」。公務員の立場で猟銃を持つガバメントハンターは、地元で目立つ存在となりがちだ。「外出先で車を止めただけで、『田澤さん、クマかい?』と声をかけられる。いえ、シカですよ、と。私がそこにいるだけで『クマが出た』と思われてしまうのも困りものです」。一方、ガバメントハンターが存在しない東北地方のある自治体では、鳥獣対策を担当する職員がこう嘆く。「クマ対応もそうですが、私たちが最も手を焼くのは猟友会との調整です。ハンターそれぞれに縄張り意識があって、『あの山に箱わなを仕掛けてほしい』と依頼すると、『あそこは俺のシマじゃない』と断られる。じゃあ、そのシマのハンターさんに頼めば、『本業が忙しくてそれどころじゃない』と断られる」。この自治体では、シカ1頭につき1万円ほどの報奨金を支給しているが、不正も横行している。「駆除したシカ1頭を撮影して、そのまま裏返してもう1枚撮り、『2頭捕獲』として申請してきた例もありました。一番の問題は、行政側がおかしいと思っても、強く言えないことです。『じゃあもう駆除しないよ』と言われたら、お手上げですから」。職員はこう続ける。「ガバメントハンターは、普段から猟友会と密に関わり、週末には趣味の狩猟を一緒にやるような関係性を築いています。委託先と発注者ではなく、同じ現場に立つ同志に近い関係です。だからこそ、調整役としてうまく猟友会をコントロールできる。その存在意義は大きい。うちも本格的に導入を考えなければならないと思っています」。とはいえ、ガバメントハンターには大きな課題が残る。田澤がこう明かす。「現場に出れば、弾を10発ほど撃つこともあります。火薬や弾頭などを含めると、1発当たりのコストは500円ほど。現状では、その多くが自己負担です。加えて、射撃練習や猟銃、弾薬の調整のために射撃場へ通う際の施設利用料、そこまでの交通費なども支給されません」。猟銃所持許可は個人の資格であるため、関係する経費も個人の趣味の領域と見なされている傾向がある。「クマ対応で自家用車を使った際には、特殊勤務手当として1回1000円が出ますが、十分な額とは言えません。経費や支給の仕組みをきちんと整えなければ、後進を育てることは難しいでしょう」。こうした問題は、小諸市でも同様だ。現役のガバメントハンターからは、経費を含め、命の危険を伴う職務に対して、まとまった「危険手当」の支給を望む声が多い。小諸市農林課長の佐藤工は言う。「私たちの課題は、まず職員の安全対策。そして、経費や待遇の整備です。今はどうしても、個々の職員の使命感に頼っている部分が大きい。ガバメントハンターを持続可能な制度にするためには、こうした部分を明確に位置づける必要があります」国も期待を寄せるガバメントハンター。しかしその拡充には、明確な予算措置と制度的な裏づけが急務となる。

(狩猟歴64年最長老マタギが“ド素人”の対応に警鐘:栃木)
「警察官がライフル銃でクマ撃ちをやるって話だが、平場だらできねくもねぇが、山ん中じゃまず無理だ。クマがいつ出て来っかもわかんねぇ。2、3日入ったぐれぇで撃てるもんでもねぇよ。自衛隊の箱罠も一緒だべ。俺もやったが、今までに2、3頭しか獲れねがった」。阿部久次さん(84)は、日光マタギ歴64年のベテラン猟師。栃木県日光市の猟友会湯西川地区に16名の会員がいるなかでの最長老だ。 阿部さんは、たんにライフル銃が扱えるとの理由だけで、クマの習性や行動、急所、出没ポイントなどをまったく知らない “ド素人” の警察官や自衛隊が、駆除をすることに懐疑的だ。「親父もマタギだったんで、俺も二十歳で始めた。二十歳になんねぇと猟銃は所持できねぇからだ。それでも持てんのは散弾銃。10年修業して、ようやくライフル銃の所持資格が取れたんだ。マタギの修業っちゃ、山に入って親から子、先輩から後輩っていうように口伝と行動で教えんだ」。例年になく今年はクマによる人的被害が相次ぎ、11月末時点で死者は13名に上る。とくに岩手、秋田の両県は被害が多発し、このため警察庁は機動隊の銃器対策部隊を両県に派遣し、クマ駆除にあたらせた。防衛省も陸自部隊に箱罠設置を命じた。さながら “令和のクマ騒動” だ。「けど、クマは悪くねぇ。原因は人間にあんだ。クマは人間を見っと逃げる習性があった。ところが、今は人慣れしてる。奴らが人間の食うもんの味を知ったからだよ」。阿部さんが、マタギになってまず最初に教えられたのがクマの習性。クマの食べ物、住む場所、行動だ。「奴らの食うもんはドングリ、ナラ、ブナ、山ブドウ、山栗、キノコだ。これらを9月ごろからたっぷり食って冬眠に入る。枝になってるやっこい実を食うんだ。落下したのは皮が硬いし甘くもねぇ」。クマは本来草食系だという。「たまにシカも食うけんと草食だ。今、人の被害も出てっけんと、この味を覚えたらこの先も当たりめぇになっかもしんねぇな」。クマの住処を見つけるには、クマの習性を理解しなければいけない。素人は土の穴の中に、と思いがちだが違う。「大木の洞穴だの岩石の隙間、崖の穴に潜ってんだ。クマ撃ちはだいたい5、6人一組で山に入っけんと、大木に隠れた奴を撃つときは篠笹を穴の中に立てんだ。笹がカサカサ揺れれば奴が這い出す証拠。出てきたらしめたもん。ここで一斉にぶっ放すんだ」。このときもすぐに近寄らない。息があれば逆襲の危険があるからだ。近寄る場合も、まず見分役がクマの体を足で蹴る。このとき後方に銃を構えた仲間が待機し、見分役が襲われたときに備える。「急所は頭と心臓だが、そこは撃たねぇで、前足の付け根を狙うんだ。付け根をやっと心臓も貫通すっから、血がドバーッと噴き出して前のめりに倒れんだ」。獣道を見つけるのも、クマの行動を把握するうえで欠かせない条件だ。「獣道っちゃ、クマが歩く道だ。クマの爪痕が一定の歩幅で歩いてんのを見っけだら必ず奴らはそこを往復すっから、俺らはそこで2時間でも3時間でもじっと待機してんだ。こんとき先輩がおめはあっち、おめはこっちって待機場所を指示する。クマ撃ちは単独でね、共同だ。今までにいちばん危ねぇ目に遭ったのは30代ごろ。崖をよじ登ってたら奴も上から下りてきてバッタリ出っかせ、40cmぐれぇまで接近した。俺もたまげたが奴もたまげた。こんときだよ、先輩の教えが効いたのは。けっして慌てんな、目をぱちぱちやったり視線を逸らすな、ゆっくり、そろそろ後ずさりしろっち教えられたんだ。これに反してたら、崖から転落して助かんねがったべ」。クマの出没は木の実など山の餌不足をはじめ、さまざまな原因が指摘されている。だが、山にはないミカンや柿、あるいは人の食品の味を覚えたのも原因と、阿部さんは言う。「実際、ここではミカンも柿も作ってねぇから、奴らが里に出てきた話はねぇ。シカだのイノシシは野菜を食い荒らすけんと。クマは味でねぇ、匂いを覚えんだ。実際、俺は箱罠で獲ったクマをトラックさ乗せて十数キロ離れた山に逃がした。ところが3日ほどしたら、まだ箱罠さ戻ってんだ。なんでかっつーば、人間が食うもんがあんのを覚えてっからだよ」。最後に、クマに遭遇した場合どうすればよいか。マタギ歴六十数年の “阿部流対策” を伝授していただいた。「まず慌てねぇことだ。体を動かしたり声を上げたりすっからクマを刺激すんだ。目を逸らせねぇこと。奴の目をまっすぐ見て睨みつける。そして少しずつ、ゆっくり後ずさりすんだ。もしクマが突進してきたときも、直前でサッと脇に身をかわすんだ。すっと、奴はそのまま突進して逃げっちゃう。クマは犬みてぇに噛みつかね。仁王立ちして、前足の鋭い爪でガバッと引っ掻くんだ。山に入っときは鈴を鳴らす、おーおーっち怒鳴んのも効果があっからやってみっといい」。マタギは、クマを食料として以外にも、毛皮は敷物、胆は漢方薬として珍重している。山の獣たちは山の神の賜物として無駄なく、 “すべていただく” のがマタギの作法であり、人と野生動物の共生なのだ。

(158kgのヒグマに襲われ、全身140針を縫う大けがを負った男性が語る一部始終:北海道)
クマ被害が過去最悪を記録し、死者13人・負傷者197人という異常事態に陥っている今年。どんぐり不作や人馴れの進行、冬眠しない個体の増加により、市街地での遭遇リスクはかつてないほど高まっている。とくに興奮状態のアーバンベアは警戒心が弱く、人を見つけるや否や襲いかかる危険性がある。そんな“今そこにある脅威”を体験した被害者が、突然の襲撃とその後の壮絶な現実を語った。「最初はクルマにはねられたと思い、次に犬かな?と思ったのですが……気づいたときには抵抗のしようもなかった」。そう語るのは、’21年6月に連続して4人が襲われた札幌市東区ヒグマ襲撃事件の被害者の一人、安藤伸一郎さんだ。出勤中に158kgの雄のヒグマに背後から襲われ、全身140針を縫う大けがを負った。「押し倒され、背後を確認したら目の前にクマの口が迫っていてとっさに顔をガードしたんです。その腕を噛まれながら体を丸めて耐えました」。幸運にも巡回中のパトカーが駆けつけたことで、ヒグマは逃走。安藤さんは、すぐさま救急搬送された。「最初の体当たりで肋骨が6本折れて、肺に穴が開く肺気胸になり、腕と背中の傷は神経が見えるほど深いものでした。6か月の入院とリハビリを経て退院しましたが、膝と肋骨の痛みが消えずに、今も通院しながら痛み止めの薬と電気治療をしないと歩くのもままならない」。その後復職したが、後遺症の影響で出勤日数が減り、収入も減ってしまったという。「100万円以上の治療費がかかっていますが、公的な支援は受けられませんでした。障害者手帳の交付を求めても、一番軽度の7級しか認められなかった。クマ被害に遭ったら、すべて自腹という現実は何とかしてほしい」。そんな安藤さんは今でもクマに怯えながら過ごしている。「外出時は行政のSNSなどでクマ出没の情報を必ず確認します。そのうえで、クマが近づかない明るくて人通りの多い道を通る。クマ被害の教訓から、万が一目撃したら電柱や柵などの障害物に身を隠すことを念頭に入れています。ただ、襲われてしまったら打つ手はない。誰にも制止できませんから……クルマで突っ込んできてくれ!と助けを呼ぶほかないでしょう……」。体験者のみが知る身の守り方を胸に刻みたい。

(行き過ぎたクマ出没報道に警鐘を鳴らすネットニュース編集者の分析)
昨今テレビを中心にクマ出没・クマによる被害報道が過熱している。駆除をした場合、その自治体やハンターには愛熊家ら抗議電話やメールが殺到し、業務が滞るケースもあるという。「もちろんクマ出没情報は大切な情報だと思うけど、報道が過熱することによる弊害も大きいのではないか」と懸念を示すのは、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏だ。中川氏が行き過ぎたクマ出没報道に警鐘を鳴らす。クマ出没報道が多数の秋田県をめぐっては、こんなタイトルの記事も登場しました。〈クマの目撃相次ぐ秋田市 影響は経済にも…商店街には客が激減「忘年会の問い合わせすらない まるでコロナ禍」〉(TBS NEWS DIG・11月29日)。記事によると、秋田市の繁華街から人が激減したとのこと。コロナの時、飲食店や繁華街は閑古鳥が鳴き、その時は補助金が出ましたが今回はまだそのような制度はありません。このまま連日クマ出没ニュースが出続けると、東北や北海道の繁華街・観光地から人が消える恐れがあります。実際、秋田はそのような事態になりつつあるようですし、イギリス政府は日本へ渡航する自国民に対してクマへの注意喚起を呼びかけています。相次ぐクマ報道を見て思うのは、注意喚起は重要なものの、実態以上に恐怖を煽るのは違うのではないかということ。なにしろ、誰しも道を歩いていたら突然クマに出くわすかのような報道になっており、いかにクマが狂暴かを伝えるものが目立つ。狂暴なのは事実ですが、ある程度の警戒心を持ち、自治体やハンターの対応に任せる、ということで身の安全を守ろうという冷静な視点も必要ではないでしょうか。報道するメディアの側というのは恐怖を煽れば数字が取れるし、それが社会貢献につながっていると自負するようなところもあります。クマ出没報道と同列に並べるのに異論はあるかもしれませんが、私が思い出すのが、これまでのFIFAワールドカップや五輪関連の報道です。とにかくマスコミは、危険と失敗を訴え続けるんですよ……。……私自身もメディア界に従事する人間なのでよく分かるのですが、メディア人ってとにかく「ちゃんと注意喚起した」という既成事実を作りたいものなんですよ。我々が事前に危機を想定し、伝えたため尊い命が守られた──、このようなストーリーを使命感として持っている人もいます。そのことでむしろ、視聴者・読者に余計な心配を与え、行動を委縮させることの方が多いのかな、とも思います。結局、上記ワールドカップにしても、五輪にしても、メディアが想定していた煽りは当たりましたか? ヨハネスブルクとリオデジャネイロで日本人の大きな被害はありましたか? ないんですよ。私は日韓大会のイングランドvsスウェーデン戦を生で観戦しましたが、試合前、浦和美園駅から埼玉スタジアムまでの道中、イングランドサポーターとスウェーデンサポーターは和気藹々としていましたよ。もちろん、本当に渡航が危険な国・地域はありますし、南アフリカやブラジルにもそれなりに危険なエリアはあるでしょう。それでも、普段からそこまで注意喚起しているわけではないし、なんなら、普段から日本に多く来ているイギリス人を危険視するようなこともない。結局、ワールドカップの注目度と組み合わせることにより、「世界最凶サポーターのイングランドのフーリガン」を強調したかったわけです。そして、何もなかったら「私達は最悪のケースを想定していました。何もなくて良かったですね(ニッコリ)」となる。クマ報道についても、一部ではそういった側面があるのではないかと思うのです。確かにクマは怖いです。でも、その怖さをことさら煽って、北海道・東北の観光・飲食業界に必要以上に打撃を与えるものであってはいけない。報道というものは適切な距離感をもってやるべきもの。楽観過ぎてもいけないし、過度な恐怖煽りもいけない。事実を淡々と伝え、それでいて出せば読まれるからといって、同じニュースばかりに拘泥し続けるのではなく、他に重要な話題があれば、そちらもきちんと取り上げる。それが報道のあるべき姿だと私は思います。

(わなで捕らえたクマ、果樹農家「ごめんね」葛藤)
「箱わなにクマが入りました」――。役場からの一本の電話。山形県内で果樹園を営む女性は、複雑な心持ちで、その一報を受け取った。今年、全国的に最悪のペースで推移しているクマ被害。人身の安全確保という重要な目的は分かっていながらも、“命のやりとり”に心が痛み、詳細を聞くことはできなかった。夫と一緒に、果樹園内のわなが置かれていた場所に手を合わせに行ったという。弔いの意味について胸中を明かした。東京で生まれ育ち、夫の故郷である山形・遊佐町に移住し、6年前に新規就農した女性。家族にも手伝ってもらいながら、庄内柿とイチジクを育てている。「昨年7月にあった豪雨災害で被災し、イチジクのハウス1棟と、ようやく成木になった42本のイチジクを失いました。今は新たにハウスを建て、イチジクの苗を育成中です」。困難を乗り越えながら、果樹農家としての歩みを進めている。一時期は毎日のように、すぐそばでクマの目撃情報が入り、ゴミ捨てすら不安な日々。「近くに民家もある場所で畑を管理するにあたり、危害を加える可能性の高いクマなどの害獣に関しては、役場に目撃情報を正確に伝えることが、山と人里の境界で仕事をする自分の役目であると考えています。箱わなの設置は、自分の希望も伝えつつ、役場の判断に任せています。今回は、民家も近いほ場(農業用地)であること、収穫直前の柿も被害に遭っていること、これから収穫のために人が毎日ほ場に向かうため安全を確保したいと言うことを伝えました」。収穫がピークを越え、終わりに近付いていた今年11月初旬。役場からわなの設置期限のため撤収するとの連絡が来た。収穫作業に来るスタッフの安全を何より心配しており、安全を最優先に、「役場には『まだ収穫が終わっていなくて、バイトさんが来ている間だけでも置いてほしいです』と延長を希望しました」。こうして庄内柿の果樹園の中に残していた箱わなに、クマが掛かった。実は、箱わなを置いた後に恐るべき事態が発生していた。「設置のすぐ後に、真上の枝が折られて『クマ棚』が形成されました。外から仕掛けた餌を食べた形跡もあり、箱わなを設置しただけでは脅しにはならないことが分かりました」と明かす。電話を受けた時、女性は遠出しており、帰宅前に果樹園に向かった。「箱わなに掛かってくれれば安心できるという気持ちと、できればわなが設置された異変に恐怖を感じて人里へ近付かなくなってほしいという気持ち。設置からずっと複雑な心境でいました。『あぁ、掛かってしまったか……』。これが最初の感情でした。それと同時に、誰もけがをすることなく無事に収穫を終えたことへの安堵(あんど)感がありました」。去来した思いは、言葉にできないほど複雑だった。役場の職員も重い口調で伝えてくれた。きっと同じ気持ちだったのではないか、と感じた。ただ、成獣だったのか、駆除されたのか。その後を聞くことができなかった。「分かりました、ありがとうございました」。それだけ伝えて現場へ向かった。女性はバイトの皆に知らせるため真っ先に現場の撮影をした。その横で、夫はおりのあった場所で手を合わせていた。「私も隣で手を合わせて、2人でごめんねと言いました」。あの日以来、ずっと自問自答している。「動物たちが必死で生きていることは分かっています。しかし、この場所にある柿の木は古くに植えられていて、樹齢100年以上になる柿の木もまた必死で生きています。私が農家としてできることは、大切にされてきたこの木を、大切に未来へつなぐことだと思っています。その果樹を守るために、我々もまた必死なのです。『クマの生息するような場所にいる人間が悪い』という意見もありますが、山と人里の境界にいる我々が、野生動物たちにお返しして、ここを捨てていなくなったらどうなるのか、問題は解決するのか。クマの出没範囲が広がって対岸の火事ではなくなっている今、本当の意味で自然を守ることについて思いを巡らせてほしいと思うと同時に、自らも学び直したいと思いました」。真摯(しんし)な思いを語る。女性はSNSで今回の出来事を報告。「安心のために捕まってほしいような、わなを置くことで警戒して山へ逃げてほしいような。複雑な気持ち。とにかくここに働きに来てくれている仲間を危険にさらしたくなかった」と、悩ましい思いを吐露した。投稿は反響を呼び、「熊のいるところに住んでいます。状況によって駆除は絶対必要なことだと考えています。大切に育てた作物をやられた腹立ちやおつらさ、人的被害がでなかったことの安堵、それでも、罠にかかった熊の末路も思われて、今日合掌されたというご夫婦のお気持ちを思うと涙がでそうです」「殺したい訳でも殺されたい訳でもない。心中さまざまとお辛いですよね」「今年は改めて考えさせられた。農作物が手に入るのって農家さんたちが命がけで守ってくれたおかげなんだなーって。いただきますのありがたみと大切さ」「物ではなくてお互い命ですからね 仕方がないんですよね 手を合わせる心って大事だと思います」など、共感の声が寄せられた。一方で、「クマがかわいそう」など駆除への批判も聞こえてくる。女性はまだ“答え”を探している途中でもある。「まだ不勉強な私が言えることはないのですが……。『かわいそう』と思う気持ちは人として大切であるけれども、かわいそうだからこそ、これ以上野生動物を増やさないことが大切かと考えます。野生動物を思いやることができる人ならば、不運にも野生動物により被害に遭った方への思いやりを同時に持っていてほしいと願っています。命懸けで駆除に当たる人たちがいるからこそ生活ができているのであって、感謝することはあっても批判することはあってはならないとも思います。人間がかわいそうだからと逃しても、その思いやりはクマには通じないのではないでしょうか」。言葉を選びながら、自身の考えを教えてくれた。12月になって冬眠が本格化する時期に入ってきた。「人里へ下りてきたクマは、人里にあるものの味を知り、簡単に手に入れることができて、今や『人間は全く恐くない』と認識しているなと日々感じます。子グマを連れた母グマは、人里を餌場として教えている、とも聞きました。今年はもう12月になるというのに妙に暖かい日もあって、眠れないクマも多いだろうと思います。ドローンやロボットの研究が進んでいる今、人間の代わりに追い払うなど、動物たちの脅威となるドローンなどの開発を進めてほしいなとも思います」。今年の冬に、一抹の不安がよぎる。自然の恵みに感謝し、果樹を育て、守り続ける。クマの命に思いをはせながら、山についても学びを深めていく。女性は「駆除の話だけでなく、誰もやりたがらないような仕事を誰かが担ってくれていることで、間接的に自分の生活が支えられていることを、未来を生きていく子どもたちに優しい言葉で伝えられる大人でありたいと自分は考えます。まだ私は山で何が起きているのかを正確には分かっていません。人里と山の境界で仕事をする者として、今後はもっと勉強をして正しい発信ができるようになりたいと感じています」と結んだ。

(緊急銃猟でクマ1頭駆除:岩手)
大船渡市末崎町では、緊急銃猟でクマの成獣1頭を駆除しました。市役所によりますと、現場付近の林では2週間ほど前からクマが頻繁に出没していて、3日午後4時ごろもクマが目撃されていました。さらに、4日午前6時半ごろに、その場所で市の職員がクマを確認し、追い払いやわなでの捕獲も難しいことから緊急銃猟が実施され、11時すぎに駆除されました。県によりますと、県内で実施された緊急銃猟は洋野町、釜石市に続いて3例目です。

(小学校から「敷地内にクマがいる」と通報、地元猟友会が子グマ駆除:岩手)
岩手県北上市は2日、先月28日に同市和賀町横川目の和賀西小(児童数36人)の敷地内に出没した子グマ1頭を駆除したと明らかにした。市によると、28日午後2時頃、「敷地内にクマがいる」と通報があり、駆けつけた市職員が同小の中庭にいる体長50センチほどの子グマを確認。同日午後5時頃、地元猟友会のメンバーらが駆除した。児童らにけがはなかった。

(冬眠の時期なのに、クマ警戒続く:福島)
4日朝、福島県福島市中心部の森合地区でクマ3頭の目撃情報があった。森合地区では11月29日に最初の目撃情報が寄せられてから計7件に上る。周辺の学校は保護者同伴で登下校したり、部活動を中止するなどの安全対策を練るが、収まらない事態に、児童生徒の保護者や学校関係者の不安は増す一方だ。市は4日、捕獲に向けた箱わなを、ようやく設置した。地域住民は「朝晩に出歩くのも不安になる。早く落ち着いてほしい」とため息をつく。森合地区では4日午前8時15分ごろ、森合小や福島工高に近い同市森合字北谷地の市道で「クマが3頭いる」とバイクで通りかかった50代男性から福島署に通報があった。同署によると、クマの体長は1頭が約1メートル、残り2頭が約0.5メートル。約300メートル離れた同市森合字中谷地でも3日午後8時半ごろ、子グマ1頭の目撃情報があった。森合小は4日、午後の授業を取りやめ、保護者に児童の送迎を依頼するメールを送信した。昇降口は子どもたちを引き取るため、大勢の保護者が訪れた。5年生と2年生の子ども2人を迎えに来た40代女性は「学校近くでの目撃にとても驚いた」と目を丸くした。福島工高は部活動を中止し、生徒が午後3時半ごろまでに下校した。教員らは人通りの多い道路を選んで通るよう生徒に呼びかけたという。同校は1日から、生徒が出入りする校門の扉を閉じた状態にするなど警戒を強めている。現時点で人身被害は出ていないが、先行きの見えない状況から住民や学校関係者には不安や疲れが出ている。森合小に子どもが通う保護者は児童の送迎や緊急引き渡しが必要となり「即時に対応ができず、仕事の都合がつかなくて困っている」「今後の授業はどうなるのか」と心配している。福島市によると、隣接の曽根田を含めて森合地区では11月29日~12月4日、クマの目撃情報が7件寄せられた。列車とクマが衝突する事故も起きている。市は森合地区の1カ所に箱わなを設置。ドラム缶型で、安全の観点などから場所は非公開としている。被害防止のためLINE(ライン)で注意情報を配信したり、付近の信夫山公園など11公園に看板を設置したりした。市民からは「わなの設置が遅いのではないか」「警戒する姿があまり見られない」と疑問視する声が出ている。クマが冬眠の時期を迎える中、なぜ福島市中心部など市街地で目撃が相次いでいるのか。クマの生態に詳しい福島大食農学類の望月翔太准教授は「山中や山に近い地域の餌がほとんどなくなり、餌を求めて河川などを伝って市街地まで出てきている」と分析。福島市森合地区は信夫山に近い立地から「信夫山には柿がまだ残っている。隠れ場所にもなるため、拠点にしている可能性が高い」との見方を示した。望月准教授によると、クマは本来11月後半~12月前半に冬眠を始め、12月下旬にはほとんどが冬眠するという。「冬眠しないクマはいない」としつつ「市街地に出てきたクマはすぐには冬眠しない可能性が高い」と警戒する。

(迷惑サルの群れ「城崎A群」42頭いよいよ捕獲へ:兵庫)
兵庫県の豊岡市が、市中心部近くに生息する野生のサルへの対策を強化している。農作物を食べ荒らしたり、人を威嚇したりする被害が相次いでおり、大型の捕獲用のおりを設置するなどして、群れの頭数削減を目指す。豊岡地域の五荘・奈佐地区から城崎地域にかけて、「城崎A群」と呼ばれる個体群が生息。今年4月時点で42頭いると推定されており、集落に出没し、民家に侵入して食品を食べ荒らしたり、屋根瓦を割ったりするほか、農作物が狙われる被害も出ている。市は、雌ザル2頭に装着した発信器をもとに群れの動きをサル対策にあたる集落支援員が監視し、追い払いや捕獲に取り組んできた。ただ、頭数は近年横ばい状態で被害が続いており、効果がより高いとされる大型おり(幅3メートル、奥行き7メートル)を初めて導入した。餌を求め、おりの上部から侵入したサルを閉じ込める仕組みで、サルの出没が多い城崎町二見の山中に設置した。10月中旬以降、出入りが自由な状態でサルに慣れさせており、山中で餌が少なくなる今月以降、本格的な捕獲を開始することにしている。市はサル対策として捕獲と防除を掲げ、今年7月から出没地域の農地に設置する防護柵の購入費補助を拡充。補助率を対象経費の4分の3(従来は半額)とし、補助額の上限も金網と電気柵を組み合わせた複合柵などを設置・修繕した場合、15万円(従来3万5000円)に引き上げている。門間雄司市長は「以前から被害が深刻で、寄せ付けない対策をしてきたが、サルが慣れてきて効かなくなってきた。対策のてこ入れをしなければいけないと判断した」と話している。

(絶滅したはずのニホンアナグマが東京23区に)
絶滅したはずの動物に、東京23区でばったり会えるかも? その正体は「森の道化師」とも呼ばれるニホンアナグマです。あなたは、タヌキやアライグマとの違いを知っていますか?『新 都市動物たちの事件簿』(佐々木洋著)は、思わず人に教えたくなる“都会派動物たち”のエピソードについてプロ・ナチュラリスト(プロの自然解説者)の著者が紹介する一冊。今回は本書から一部抜粋し、ことわざ「同じ穴のムジナ」の語源にもなったニホンアナグマの生態と、彼らがなぜ今、都会へと進出しているのかについて紹介します。ニホンアナグマは本州、四国、九州などに分布する、日本固有種だ。オスは全長68から85センチメートルぐらいの大きさ、メスは全長65から77センチメートルで、個体差はあるが、全体的に薄茶色で、顔面は白味がかっていて、目のまわりの黒い部分は縦長で、どこかサーカスのピエロの典型的な化粧のようだ。それで私はニホンアナグマを「森の道化師」と呼んでいる。警戒心があまり強くなく温厚な性格で、人間が近くにいてもあまり気にせず、のんびりと歩いて逃げることが多い。基本的に夜行性だが、日中に姿を見せることもけっこうある。寒冷地では冬眠するが、暖かい地方では真冬でも動き回っている。「アナグマ」の名前の通り、土などに穴を掘り、そこを繁殖場所やねぐらとして使う。四肢に長く鋭い5本のかぎ爪があり、扁平な体つきで、穴を掘る能力にたけているのだ。丘などの北向きの斜面に小型犬なら入っていけそうな入り口の穴を開けるので、巣穴はわりと簡単に見つかる。入り口付近に落ち葉がたまっているとその穴はしばらく使っていないが、そこに落ち葉がほとんどなく、また体を擦ったような跡がついていれば、ほぼ間違いなく今使っている穴と考えてよい。ニホンアナグマもタヌキも、ムジナと呼ばれることがあり、ニホンアナグマの掘った穴を、1から穴を掘ることのできないタヌキが使ったりもすることから「同じ穴のムジナ」という言葉が生まれたとも言われている。私は、実際、神奈川県清川村でニホンアナグマが入っていった穴の入り口の近くで、再びそれが出てくるのを待っていたところ、同じ穴からタヌキが出てくるところを目撃したことがある。雑食性でいろいろなものを食べるが、とくにミミズを好む。ミミズがたくさんいる郊外の腐葉土の山などには、ほぼ必ずニホンアナグマの痕跡がある。交尾期は春から夏にかけてで、春に平均2ひきを出産する。興奮すると「ガッ」というような鳴き声を出す。このニホンアナグマが、近年、東京の都市部にも姿を見せ始め、ついには東京23区でも確認されている。2023年発行の『東京都レッドデータブック(本土部)』では、東京23区内でのニホンアナグマは戦前の記録しかなく、絶滅したと考えられている。しかし、2024年に私自身が目撃した練馬区ばかりでなく、2013年6月11日のNPO法人生態工房の事務局ブログには同年6月10日に杉並区の駅の近くで目撃したという記述があったり、2022年5月9日午後7時49分ごろと同5月19日午前3時36分ごろの2回、世田谷区内で調査のために設置したトレイルカメラに、ニホンアナグマの動画が映ったりしている。大田区でも、目撃証言が複数ある。ニホンアナグマが少しずつではあるが、東京23区内に進出していることは間違いないだろう。野生哺乳類の多くは、川沿いに大きく移動する。世田谷区や大田区で目撃されているニホンアナグマは、多摩川沿いに移動してきた可能性が高い。あるいは、東京の区部と郊外の境目のようになっている国分寺崖線沿いを移動してきたのかもしれない。このあたりにも野川という川が流れている。そして、最初は川沿いに定着したニホンアナグマは、いずれ内陸に向かって面のように生息エリアを広げていくのだろう。このあたりの事情は、アライグマのケースに似ている。ニホンアナグマは、さほど人間を怖がらず、また雑食性が強い。この2つの特徴を持つ生物は、大都会でもじゅうぶんに生きていける。タヌキ、ハクビシン、アライグマ、ドブネズミ、クマネズミ、ハシブトガラスなど、都会でおなじみの生物は、みなそうだ。

(「ぐんまこどもの国」が臨時休園:群馬)
群馬県太田市長手町で4日午後に子グマ1頭の目撃情報が市に寄せられたことを受け、県は5日、目撃場所から700メートルほど北東にある県有施設「ぐんまこどもの国」(太田市長手町)を5日から臨時休園すると発表した。県都市整備課によると、施設内の被害は確認されていない。再開時期は未定で、市や県警、地元猟友会と連携して周辺をパトロールした上で、判断するという。臨時休園を受け、こどもの国の指定管理者は6日に開催予定だった「かなやま健康ウオーキング」の中止を決めた。子グマは4日午後、下校中の小学生が発見した。児童はクマがいる場所を避けて帰宅し、けがはなかった。市内ではこの他、2日午前に成塚町で子グマの死骸が見つかり、午後には別のクマの目撃情報も寄せられていた。

(狩猟・ジビエ体験ツアー:北海道)
佐呂間町の地域おこし協力隊員で、ハンターでもある市川明さん(41)が事業化を目指すエゾシカの狩猟・ジビエ体験のモニターツアーが佐呂間町で行われた。オホーツク管内の協力隊員ら26人が参加し、市川さんらの狩猟現場に同行したほか、解体したエゾシカを炭火で焼いて実食。「命をいただく」ツアー造成の可能性や課題を探った。

(駆除したシカをレトルトカレーに:三重)
尾鷲市周辺で捕れたシカの肉を使用したレトルトの「鹿肉ごろごろジビエカレー」が誕生した。開発者は、駆除されたジビエ(野生鳥獣肉)を有効活用するとともに、実際に食べることを通して農作物の獣害について考えてもらいたいと願う。

(「ジビエ居酒屋」の多彩なメニュー:広島)
子連れ歓迎のおいしい居酒屋があると聞き、家族で行ってみました。平原にあるジビエ居酒屋 山鯨亭です。まず猪肉を試しました。「山鯨名物」と銘打つ猪肉うどんです。肉のやわらかさに驚きました。一般的な肉うどんと同じような食感です。猪肉をこんなに薄く切ってやわらかく調理できるとは知りませんでした。スープはだしがきいていて濃厚。体もあたたまって冬に満足の一品です。

(フレンチレストランが宅配とジビエで切り開く新たな道:秋田)
秋田・横手市のフレンチレストランが、クマ被害による外食控えの逆風に挑んでいる。地元食材を生かす料理で愛されてきた店は、宅配や真空パックによる料理の発送に加え、秋田産のクマ肉を使ったジビエ料理にも挑戦。危機をチャンスに変える新たな試みが、地域の食文化に新たな風を吹き込んでいる。横手市十文字町にある「ル・カフェ・プランタニエ」は、創業から40年近く続くフレンチレストラン。地元食材を生かした料理で県内外の客から高い評価を受けてきた。しかし県内でクマによる人身被害が相次ぎ、外出を控える動きが広がった。予約は激減し、売り上げは例年の半分にまで落ち込んだ。オーナーシェフの近藤範一さんは「コロナ禍のように経営に重くのしかかっている」と語る。打開策として始めたのが料理の宅配サービスだ。フレンチのほか、丼ものやラーメンも注文に応じて配達。真空パックでの発送も行い、県外からの注文も増えている。クマに出くわす心配がなく、自宅で本格的な料理が食べられるとあって評判は上々だ。近藤さんは「家庭でもホームパーティのような雰囲気を味わってほしい」と話す。新たな挑戦はこれだけではない。さらに県産のクマ肉を使ったジビエ料理の提供を始めた。代表的なメニューは「クマ肉の赤ワイン煮込み」で、硬くて臭いというイメージがあるクマ肉も、丁寧に煮込むことで柔らかく、クセのない味わいに仕上がる。近藤さんいわく「クマ肉の味わいは牛肉に近い」という。串焼きなど多彩な調理法も可能で、調理代行サービスも展開している。出張調理は1人5000円から、調理代行は1200円から受け付けていて、地域に新たな食の魅力を広げている。近藤さんは「命は命。粗末にせず、おいしくいただくことで供養になる」と語り、秋田の食文化の“売り”としてジビエを広めたい考えだ。地域に根ざした「ル・カフェ・プランタニエ」の挑戦は、逆境を乗り越える新たな食の魅力を生み出している。

(高校生が駆除されたクマとシカ肉を使いジビエ料理学ぶ:長野)
連日クマの目撃情報が後を絶ちません。そんな中、有害鳥獣による里山被害への対策の一環として下高井郡木島平村の高校生が駆除されたクマなどを使ったジビエ料理を学びました。リンゴ畑で器用に実を取り、食べるクマ。その姿は長野市の善光寺近くでも…。県内各地で相次ぐクマの目撃情報。こうした中、木島平村の下高井農林高校では有害鳥獣による里山被害の対策の一環としてジビエ料理講習会が開かれました。学んだのは環境創造コースの2年生26人。これまで授業の中で「シブガキ応援隊」としてクマの生態や環境整備、出没調査などを行っています。クマの人的被害などを踏まえ、県は11月14日、対策本部を設置し対策を強化。捕獲されたクマは全頭駆除することを決めました。主に駆除されたクマは猟友会などが自家消費するか埋設もしくは焼却して処分されます。下高井農林高校では有害鳥獣の活用を検討しようと猟友会が駆除したクマとシカを使ってジビエ料理を学びました。生徒たちは大きく硬い肉に悪戦苦闘。しばらくすると…。慣れてきたのか様になってきました。その後は野菜と一緒にいためたり、肉は皮に包んだり。シカ肉のいため物とクマ肉のシューマイなど4品を完成させました。「クマが人里に来るのは困ることだが結局それも人の都合であるので捕まえたクマをこうやって命に感謝して食べるというのはすごく大事なことだろうなと」「クマの対策とかで地域に貢献できつというのは幸せなことでもあるので今後も考えていきたい」。命の大切さも学んだ生徒たち。今後も地域に合ったクマ対策を考えていきたいとしています。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、7日午後5時20分ごろ、仙台市泉区根白石八千代にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
柴田町によると、7日、柴田町入間田上台でクマが出没したような痕跡が見つかりました。

(クマ出没:宮城)
利府町によると、6日午後7時30分ごろ、利府町菅谷館にクマとみられる動物が出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、5日午前9時10分ごろ、仙台市青葉区上愛子折葉にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
栗原市によると、5日午後4時40分ごろ、栗原市築館上宮野秋山前にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、4日深夜、仙台市太白区秋保町長袋清水久保にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、4日午後4時30分ごろ、仙台市泉区福岡吹付にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
栗原市によると、5日午前10時ごろ、栗原市一迫柳目葉の木沢にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
栗原市によると、5日午後0時ごろ、栗原市花山本沢虚空蔵にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
柴田町によると、5日、柴田町入間田本屋敷でクマが出没したような痕跡が見つかりました。

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(犬捜し中、クマに襲われけが:岩手)
4日午前6時半ごろ、岩手県奥州市胆沢小山で、60代女性がクマに襲われたと119番があった。奥州署と市によると、自宅からいなくなった飼い犬を捜すため、雪上に残った足跡を追っていたところ、道路脇から現れたクマに顔や腕をひっかかれた。搬送時に会話ができ、命に別条はない。犬はその後、家に戻ってきた。署によると、女性は自宅に戻り、親族が119番した。

(クマに襲われ70代夫婦けが:富山)
4日午前2時半ごろ、富山市婦中町河原町で、北日本新聞を配達していた男性(75)と女性(70)がクマ1頭に襲われた。市によると2人は夫婦で、顔などに大けがを負い救急搬送された。いずれも命に別条はないとみられる。富山県内でのクマによる人身被害は今年に入って計6人となった。関係者によると、男性は民家の敷地内で襲われた。この家に住む藤田真作さん(61)によると、藤田さんの父が自宅の玄関先で男性に覆いかぶさっているクマを発見。助け出そうとしてクマを素手で複数回殴ったところ、クマは逃げ出した。男性は顔面血だらけで、藤田さんが119番通報した。市によると、クマはその後、付近で新聞配達をしていた女性を襲ったとみられる。午前5時半ごろ、市職員や富山西署員、猟友会員らが現地でクマの痕跡を確認した。捜索したが、発見できなかった。現場はJR千里駅の北約1キロで、田んぼに囲まれた集落の一角。近くには神保小がある。4日午前10時ごろ、白山市三宮町の石川県林業試験場樹木公園内で、職員がクマの幼獣1頭を目撃し、市に通報した。公園は入り口を閉鎖、来園者を退園させた。約1週間は園を閉鎖する。

(男性がクマに襲われ負傷:島根)
全国で相次ぐクマの被害。12月4日、益田市波田町で70代の男性がツキノワグマに襲われけがをしました。現場の近くには小学校があり益田市は防災無線や防災メールで注意を呼び掛けています。益田市によりますと4日午前7時15分頃、波田町内に住む70代の男性がツキノワグマに襲われ左目の下や右手の甲を負傷しました。命に別条はないということです。ツキノワグマは体長1メートル、体重70キロから80キロ程度で山の方へ逃げたとみられます。近所の人によりますと男性はゴミ出しに行った際にクマに襲われ自分で救急車を呼んだということです。4日午後、周辺ではクマによる被害防止のため柿の木を切る人の姿が見られました。益田市では引き続き注意を呼び掛けるとともに、箱わなとセンサーカメラを5カ所に設置したということです。

(クマ「緊急銃猟」導入から3か月、対策の切り札として定着)
クマによる人身被害の増加を受け、市町村の判断で市街地での猟銃の発砲を認める「緊急銃猟」の導入から、1日で3か月となった。環境省によると、11月28日までに11道県で計40件実施され、対策の「切り札」として定着しつつある。一方、市街地では、跳弾などの危険から発砲の判断が難しいケースもある。環境省は、今年度中に改定する運用指針に事例を盛り込み、判断の参考にしてもらう考えだ。富山県砺波市で11月10日朝、民家の納屋に侵入したクマが緊急銃猟で駆除された。住民を母屋に退避させ、周辺道路の通行を制限。弾がそれた場合に備え、納屋の窓から地面に向けて2発発砲した。市の担当者は「警察や市が連携し、住民の安全確保や通行制限がスムーズにできた」と話す。制度が始まった9月の実施はなかったが、10月15日に仙台市で初めて実施されてからは急増。都道府県別では山形県が12件と最多で、新潟県が8件、秋田県が6件と続いた。緊急銃猟は、クマが〈1〉日常生活の場に侵入するか侵入の恐れが大きい〈2〉緊急性がある〈3〉銃猟以外で捕獲が困難〈4〉発砲で人に危害が及ばない――が実施の条件。射撃がそれた際に弾を受け止める「バックストップ」の確保が必要となる。住宅密集地では確保できず発砲できないケースも目立つ。秋田県湯沢市で10月20日に人を襲ったクマが民家に侵入したケースでは、発砲で隣家に被害が出る可能性があったため、箱わなを優先し、捕獲に丸5日かかった。同23日に盛岡市中心部の川に出没した際も、コンクリートの遊歩道などがあり、跳弾が懸念されたため、発砲を見送った。環境省は自治体向けに緊急銃猟の指針をまとめた。だが、自治体からは具体的な事例の周知を求める声も上がる。このため、同省は各地の実施事例を盛り込み改定を進めている。担当者は「蓄積した事例を示し、自治体が速やかに緊急銃猟の実施判断ができるようにしたい」としている。緊急銃猟で人身事故が発生した場合、民事の対応は国家賠償法に基づき市町村が行うが、現場からは刑事責任への懸念の声が上がる。山形県猟友会は11月4日、ハンターが刑事責任を問われないよう求める要望書を知事に提出。全国組織の大日本猟友会も法改正などを要望する。環境省は同月28日、都道府県に、刑事・民事の責任について「(ハンターが)不利益を被ることは通常想定されない」と通知した。警察官職務執行法に基づく警察官の命令でハンターが猟銃を発砲した場合も、警察庁は、ハンターが命令に従って駆除する場合は刑事責任を問われることはないとの通達を各都道府県警に出している。

(刑事責任は「想定されない」、クマ銃猟で石原環境相「不安の声いただき、解説した」)
石原宏高環境相は2日の閣議後記者会見で、自治体判断でクマに発砲可能な「緊急銃猟」について、ハンターの不安を払拭するための資料を作成し、都道府県に送付したと発表した。人身事故のおそれがないことを確認するなど注意義務を果たす限り、刑事上の責任といった不利益を被ることは「通常想定されない」と明記した。緊急銃猟制度は9月に開始。環境省はこれに先立ち7月に指針を公表したが、石原氏は「不安の声をいただき、責任の考え方を解説した」としている。資料では、緊急銃猟は市町村が行い「最終的な責任は市町村が負う」と説明。物損事故は市町村長が補償し、人身事故は国家賠償法に基づき市町村が賠償する。人の財産に危害が生じた場合も、原則としてハンターに注意義務違反での行政処分は「適当ではない」とした。捕獲は中長期的には公的機関が行う必要があるが、短期的には猟友会などのハンターに要請せざるを得ず、応諾義務はないことも改めて示した。

(クマ「特別対策」活用呼び掛け、捕獲手当の拡充可能に)
農林水産省は、農作業中などのクマによる人身被害が相次いだことから、「特別対策」の仕組みを活用するよう、自治体への呼び掛けを強化している。対象地域となれば、国の手厚い財政支援を受けられるため、捕獲手当を拡充させることなどが可能となる。対象地域拡大によって国民の安全確保につなげる狙いで、2025年度補正予算案に関連費用を盛り込んだ。

(イノシシ豚熱:岡山)
岡山県は3日、美咲町で発見された野生イノシシ1頭が家畜伝染病「豚熱(CSF)」に感染していたと発表した。県内での感染確認は66例目。県によると、町内のわなにかかり、県の検査で陽性が確定。発見場所から半径10キロ圏内を感染確認区域に指定し、狩猟者に野生イノシシの流通自粛を求めている。

(「事態の深刻さ認識」、警察庁長官がクマ出没現場視察:岩手)
警察庁の楠芳伸長官は2日、クマによる人身被害が続く岩手県を訪れ、ライフル銃による駆除任務を行う機動隊員らを激励し、盛岡市内のクマ出没現場を視察するなどした。楠長官は「事態の深刻さを認識した」と話し、住民の安全確保を最優先に被害防止の取り組みを進めるよう指示した。相次ぐ被害を受け、警察は応援の機動隊員らで構成し、ライフル銃による駆除を行う対応チームを秋田、岩手両県に設けた。11月13日に活動を開始し、同18日には岩手県岩泉町のクマ出没現場に初出動したが、日没で発砲はしなかった。県警幹部から対応状況の報告を受けた楠長官は、県警本部で対応チームら関係職員約90人に訓示。「クマ駆除はこれまで警察が経験したことのない任務だが、使命感と気概、全国警察が一丸となっているという自負を持って任務に当たってほしい」と要望した。その後、10月20日にクマ1頭が出没し、捕獲された盛岡市の原敬記念館を視察。報道陣に「市中心部で保育園も隣接する場所であり、地域住民の安心、安全を脅かす深刻な事態だと認識した」と話した。

(クマ警報・強化月間を年末まで延長:岩手)
岩手県はクマの出没警報期間を12月31日まで延長すると発表した。10~11月としていた「クマ被害防止取り組み強化月間」も年内いっぱい継続する。警報は北上市でクマによる死亡事故が発生した7月4日に県内全域に対して発表していた。2025年度の県内のクマ出没件数は10月末時点で7608件と、既に20年度以降の年間件数を上回った。市街地での出没が増えているため、県は安全最優先で行動するように呼びかけている。

(クマに特化した研修会も検討:鈴岡)
クマによる被害への対策を共有しようと、12月1日、静岡県は市町との意見交換会を開きました。猟友会の会員などにクマに特化した研修会などを検討しています。オンラインで開かれた1日の会合には各市町の担当者が参加し、県の職員が国のクマ被害対策パッケージの概要を示し捕獲用ワナの導入支援が手厚くなることなどを説明しました。また、県は県内の猟友会のハンターにクマに特化した研修会の開催や自治体の判断で行う緊急銃猟の事例集作りをする方針です。県くらし・環境部 縣茂樹 部長:県民に安心して過ごしてもらえるよう、(重要なのは)市町と連携し必要な準備を迅速に進めること。県内では2025年度に人的被害はないものの、11月までに149件のクマの目撃情報が寄せられていて、県は注意を呼びかけています。

(「物価高騰」や「クマ対策」に約207億円の一般会計補正予算案:宮城)
仙台市議会の12月定例会が2日開会し、物価高騰やクマ対策の費用などを盛り込んだ、約207億円の一般会計補正予算案などが提出されました。郡仙台市長:「生活者、事業者に向けた幅広い物価高騰対策を実施することに加え、ツキノワグマ対策に要する経費について所要の予算を計上した」。クマ対策としては、クマを引き寄せる恐れがある樹木の伐採など、冬から春の被害を防ぐ短期的な対策を実施するための費用として、2億3050万円を計上しています。

(狩猟免許取得者じわり増、定員オーバーする試験も:秋田)
市街地へのクマ出没が相次ぐ秋田県で近年、捕獲に必要な狩猟免許の取得者がじわじわと増えている。背景には後を絶たない被害への危機感があるとみられ、担い手不足が顕在化しているハンターらの確保に期待が高まる。

(AIやドローン駆使、クマを検知:秋田)
クマ対策の切り札としてドローンや人工知能(AI)を駆使した技術開発が進んでいる。秋田県五城目町のドローンスクール「Dアカデミー東北」は、山中や住宅街に潜むクマを検知、自動追尾するシステムを製作。

(クマ対策、年明け早々住み分けのゾーン設定:秋田)
クマ対策についての質問が出た秋田県議会。鈴木知事は人とクマのすみわけをはかるゾーニング管理を推進していく方針を示しています。

(クマ被害に危機感、狩猟免許を取得した県議会議員:秋田)
12月秋田県議会一般質問でクマ対策をただした福田博之氏(立憲民主)は今秋に狩猟免許を取得したことを紹介しつつ、危険と隣り合わせの状況で駆除に当たる猟友会員の処遇改善を訴えた。

(クマ駆除への苦情電話を録音へ:秋田)
秋田県の鈴木知事は2日、クマ駆除に関する長時間の苦情電話などで業務に支障が出ているとして、クマ対策担当の自然保護課への電話内容を録音すると明らかにした。同日の県議会一般質問で鈴木知事は「10月中旬からの1か月間で、700件を超える電話とメールが寄せられた」といい、半数以上が「クマの捕獲などに対する県外からの批判的な意見」と説明した。同課によると、具体的には「なぜクマを殺すのか」といった内容だという。録音機能は、同課の電話複数台に導入する。また、電話が担当者につながる前に、通話内容が録音されることを告知するという。鈴木知事は「県政に対する頻繁な問い合わせや長時間の苦情による業務への支障を防ぐため適切に対処する」と話した。

(クマ駆除に有効なスラッグ弾、山陰に練習場所なし)
クマに大きなダメージを与えるスラッグ弾の射撃を練習する場が山陰両県になく、ハンターから整備を求める声が上がっている。練習には両県外に行く必要があり、島根県内の自治体では旅費などの補助もない。東日本を中心にクマ被害が相次ぎ、市街地に現れたクマを駆除する「緊急銃猟」でスラッグ弾を使用する機会が増える可能性は高い。命中率向上のため、ハンターに腕を磨いてもらう対策が問われている。鳥取県智頭町で11月中旬にあった緊急銃猟を想定した研修会で、同県猟友会の徳山幸一会長が「スラッグ弾は相当訓練しなければならないが、練習できる射場がないために我流でやっている人が多い」と訴えた。スラッグ弾は粒の細かい散弾より殺傷能力が高い単発弾頭でクマやイノシシ、シカなど大型動物を捕獲する場合に使う。散弾銃に込めて使用し口径は12番(約18ミリ)が一般的という。島根県猟友会や鳥取県警などによると、狩猟用の銃を使用できる射撃場は島根県に4カ所、鳥取県に3カ所あるが、いずれも威力のあるスラッグ弾は撃てない。練習するには、広島県庄原市や兵庫県三木市、岡山県真庭市まで行く必要がある。約30年の狩猟歴を持つ浜田市三隅町の三浦幸人さん(75)は「練習しないと距離感や感触をつかめず命中率が上がらない。日頃の猟で磨くしかない」と打ち明ける。捕獲を巡っては、警察官によるライフル銃での駆除や自治体判断に基づくハンターらによる緊急銃猟が可能になった。市街地で発砲するだけに、安全に捕獲するための高い技術が求められる。三浦さんは「獣害対策の一環で銃猟を要請するなら、練習しやすい拠点整備が必要。真っ先に取り組むべきことだ」と強調した。兵庫県はハンターの確保と育成に向け、2024年6月、三木市に総合射撃場を整備した。スラッグ射撃のほかクレー射撃やライフル射撃、わなを仕掛ける訓練もできる。総事業費は約35億円で、スラッグ弾は50メートルと30メートルの距離から撃つことができる。県の担当者は「緊急銃猟を見据えて県外からも練習に来ている」とし、ハンターの技術向上の重要拠点になっているとする。鳥取県は、同県各市町村と合わせ、ガソリン代や高速料金など県外での練習にかかる旅費や射撃場利用料など費用の3分の2を補助する。島根は金銭的補助はないという。スラッグ弾用の射撃場整備については、両県とも費用やハード面での課題があるとして、具体的な予定はないとしている。

(忘年会シーズンに「クマ禍」直撃)
市街地でクマによる人身被害が相次ぐ秋田県などの東北地方では、繁華街の一部で人通りが減少し、忘年会シーズンを前に予約キャンセルなどの影響が出ている。酒類の売り上げも落ち込み、関係者は「コロナ禍以来の窮状になりそう」と頭を悩ませる。自治体は影響を受ける飲食業者などを支援するため、相談窓口を開設した。「クマはどこに出てもおかしくない状況だ。客足が遠のき、宴会のキャンセルも出始めている」。秋田市の繁華街・ 川反かわばた にある飲食店など55事業者が加盟する「川反外町振興会」で事務局長を務める佐藤智司さん(66)は嘆く。有害鳥獣の目撃情報を集約した秋田県のサイトによると、市内でのクマの目撃情報は10月に1936件、11月も1435件に上り、100件台だった夏場から急増した。今月も目撃情報が寄せられている。佐藤さんによると、市内では夜間の外出を控えたり、2次会に行かず帰宅したりする人が増えている。閉店時間を早め、クマの侵入を防ぐため自動ドアを手動に切り替えた店もあるという。「客や従業員はクマの存在を肌で感じている。物価高も重なって『危険を冒してまで宴会に行かなくてもいい』と考えているのでは」と話す。県内の多くの飲食店に酒類を出荷する「英雄」(秋田市)では、9月後半以降の売上額が前年同期比で1割ほど減った。冨野和巳社長(52)は「店主らは『コロナ禍の時みたい』と困惑している」と嘆く。「12月は稼ぎ時なので、影響が長引かないでほしい」と語るのは、盛岡市内で六つの飲食店を運営する渡辺史朗さん(77)。中心部の「本町通」に面した店舗の周辺では10~11月、クマが銀行の駐車場に侵入したり、道路沿いの木にとどまったりした。10月以降は客が激減し、売り上げは3割以上落ち込んだといい、「やっとコロナ禍があけたところで今度はクマか」とこぼす。秋田県は11月中旬、クマの問題で売り上げが落ちた飲食業者や観光業者などを対象に相談窓口を開設した。「支援してもらえる制度はあるのか」「休業補償を検討してほしい」といった相談や要望が寄せられているという。山形県も窓口を設置し、経営や資金繰りの相談に応じている。県商業振興・経営支援課の担当者は「経営に支障が出ている事業者がいる。状況に応じた支援メニューを紹介して支えていきたい」と語る。

(シカ急増、食害対策急務:石川)
県内で農作物や下草を食べるニホンジカの増殖が懸念されている。シカが増え過ぎると、生態系への影響や土砂災害の発生につながるとの指摘がある。白山市木滑の里山総合会社「山立(やまだち)会」などは対策を考えるため、県職員らを招いた初のシンポジウムを開いて他県の被害例を共有し、狩猟した後のシカの活用策を考えた。被害が深刻になる前に何ができるか、関係者が知恵を絞る。シンポジウムは9月27日、県立大(野々市市)であった。哺乳類の生態に詳しい同大生物資源環境学部の東出大志(だいし)准教授は、全国的にシカが増えているとし、主な理由として資源利用や狩猟者の減少を挙げた。

(クマ出没“激増”で引き取り施設「フル稼動でも間に合わない」、ジビエ料理店では“旬”のクマ肉入り鍋が人気)
師走に入り冬眠シーズンが到来しても、依然として各地でクマの出没が止まりません。秋田・横手市の住宅街では2日、体長約1.3メートルのクマ1頭が小屋に居座り。現場は小学校も近く、吹き矢による麻酔で捕獲し駆除されました。災害級のクマ出没に、駆除されたクマも激増しています。そのクマを引き取る北海道の施設では、手が回らない事態に追い込まれていました。南部桧山衛星処理組合・上戸等場長:前年約30頭ほどだったんですけども、現時点で120頭ほどになっています。過去最高です。フル稼働でも間に合わない。駆除されたクマの引き取りに頭を悩ます一方で、食用となるクマ肉はどのように活用されてきているのでしょうか。「イット!」取材班が訪れたのは、クマ肉を推している都内のジビエ料理専門店です。きれいに切り分けられたクマの肉を見てみると赤身の上に、たっぷりと脂肪がついているのが分かります。あまからくまから 人形町店・林育夫店長:基本的に冬眠前に脂をつけるんですけど、その脂がおいしいので、よく食べられるのは冬、この時期です。毎年この時期はクマを食べるために来られる方が多いです。旬を迎えているというクマ料理の一番人気は圧倒的に“鍋”。肉の味は食べている餌によって変化し、柿などのフルーツが多ければ脂が甘みを増し、木の実などが多ければこってりとした味になるといいます。この日、クマ肉初挑戦だという人は気になる味について、「おいしいです、すごく。なかなか弾力のある感じというか」「馬とも牛とも違うような野性味を感じる味でした。(Q.馬と牛と比べるとどう?)クマの方が好きです」と話しました。しっかりと処理されているクマ肉は、気になる臭みも抑えられているといいます。多くのクマが駆除されている中、クマ肉の流通量はどうなっているのでしょうか。あまからくりから 人形町店・林育夫店長:元々の処理施設の限界ぐらいまで稼働はしていると思いますので、多少増えていると思いますけど…。クマが多く捕獲されても処理施設の不足などから食用にできず、処分されるケースも少なくないといいます。癖になる味わいのクマ肉ですが、広く流通させるにはまだ時間がかかりそうです。

(「マジで迷惑」猟友会怒り、駆除用の箱わなドアが連続盗難:福岡)
有害鳥獣の駆除のために設置した「箱わな」に異変が――。鉄製のドアが何者かによって盗まれる被害が続出しているのだ。地元猟友会のメンバーが、SNSを通して困っている実情を報告。今回、不審人物が箱わなを蹴って閉めてしまう被害が発生したため、防犯カメラの映像公開に踏み切った。相次ぐ異常事態に、「やるせない気持ちでいっぱいです」。怒りと困惑で、頭を抱えている。福岡県内の山中に設置された、おりの形をした箱わな。真夜中に懐中電灯を持ち、半袖・半ズボンで軽装の人物が近付く。おもむろに足で蹴ると、箱わなのドア部分が勢いよく落ち、わなが閉まった。その人物は一度振り返り、立ち去っていった。防犯カメラが記録していた迷惑行為の生々しい様子だ。「箱罠のドアをパクられ続けたので『カメラ撮影中』とデカデカと看板もかけたのに撮ってないと思ったんかな?何を考えてるん?マジで迷惑なんやけど」。猟友会メンバーは、Xアカウント「とある県下の猟友会(@k_f_ryoyukai)」で窮状を訴えた。11月22日の日中に設置し、同30日の夕方に箱わなの状況を確認。「(迷惑行為は)11月22日深夜から30日未明の時間と思われます。嫌がらせだとは思いますが、我々にも彼(彼ら?)に何の利があるか不明です」。理解し難い行為にため息をつく。取材に応じた猟友会メンバーは、福岡県でイノシシ、シカ、アナグマ、アライグマなどを対象に、法律に基づいて自治体からの許可を得て行う有害駆除を中心に猟を行っており、「本業はサラリーマンですので、ほぼボランティア活動になります」という。そもそも、箱わなをなぜ設置しているのか。「福岡県にはクマはいないので、イノシシ、シカ、アナグマが対象のわなになります。目的としては、保護林内の鳥獣数の管理になります。加害鳥獣が増え過ぎると、植生に壊滅的な影響が発生します」と説明する。一方で、箱わなが使用不能になるドアの盗難被害が、8月下旬と11月上旬に相次いで発生。今年9月にはXで、「箱罠のドアをパクられた。この箱罠をここまで持って来るのどんだけ大変かパクった奴に分からせてやりたい」とSOSを発信していた。この時は、カメラのメンテナンスなどによって証拠映像を押さえることはできなかった。今回は防犯カメラで不審者による迷惑行為が確認された。警察への通報に関しては「現在、過去の盗難と合わせて相談を検討しております」。さらなる対応を考えているという。一連の迷惑行為に対して、ネット上では、「何者で何がしたいんだよ」「獣達よりよっぽど怖い」「ホラー映像やん」「え、怖っ、なにやってんの」「こんな装備でよく夜の山に行ける」「最悪の嫌がらせですね」「本当に許せない、悪質な行為ですね」など、批判の声が殺到している。狩猟の箱わなが狙われる被害。「箱わなには管理のために連絡先など明記しております。何かあれば、ご連絡をいただければ話し合いでご説明もできたのにもかかわらず、卑劣な行為に出られたことを残念に思っております」。過去の盗難2件でなぜドアだけ盗んだのか。今回のドアを蹴る迷惑行為と関係があるのか、判然としないが、不可解なトラブルの連続に、猟友会は不安を強めている。全国的にクマ被害が最悪ペースになっており、狩猟という行為自体に注目が集まっていることは確かだ。猟友会メンバーは狩猟の意義について考えを深めているといい、「生き物の命を奪う行為を行っているのは間違いない事実です。それを理解したうえで、本当に自分にできるか? ということを自問自答した後に猟師になられることを強く勧めます。また、その行為について自分には合わないと思い、猟師にならないのも立派な決断です。中途半端な気持ちで猟師になると鳥獣にとっても自分にとっても最悪な結果しか生みません」と話している。

(クマへの不安が全国で前年比2倍超に)
調査会社のインテージ(東京・千代田)の調査によると、クマの出没に不安を感じている人が全国で56%に上ることが分かった。前年の調査に比べ2.3倍と大きく増えた。北海道や東北、北陸などでは7割超が不安だと回答した。11月19~25日に全国の15~79歳の男女5000人を対象に、クマの出没への不安について調査した。

(東通村が猟友会を“集落支援員”に任命:青森)
東通村はクマの駆除にあたる猟友会の会員を集落支援員に任命しました。猟友会が行っていた地域のパトロールを村内全域に拡大しクマ警戒の強化として報酬をアップします。東通村ではクマやイノシシなどに食べられたデントコーンなど農作物の被害面積が今年度193.2アールで前の年度のおよそ12倍と被害が拡大していました。クマの駆除には下北郡猟友会があたっています。東通村は猟友会の報酬アップとともにクマ警戒を強化するため会員21人を地域を見回る集落支援員に任命しました。会員はこれまでわなを設置したあとに周辺地域のパトロールを行っていましたが、それ以外に月に1度村内全域をパトロールしてクマ警戒を強化します。下北郡猟友会 成田功会長「集落周辺にイノシシのあとクマのあととかその辺を重点的に見ていきたい」。猟友会にはこれまでの委託契約の金額50万円に加え、集落支援員としてのパトロール分の報酬や車両の運行にかかる費用などが上乗せされます。東通村 畑中稔朗村長「(猟友会では)ガソリン代とか訓練の費用とか銃のメンテナンスとかさまざまな部分で費用がかかっているのは確かだと思いますので」。東通村の集落支援員となった猟友会の会員たちは、今月14日最初のパトロールに出発する予定です。

(柿や栗など熊の誘引木の伐採、想定の12倍超える:宮城)
宮城県栗原市がクマ対策として進める誘引木の伐採事業を巡り、市は1日、対象本数が当初想定の12倍超となる6790本に上ると明らかにした。集計が終わっていない行政区もあり、さらに増える見通し。同事業は、人の生活圏へのクマの出没を抑えるため、市が柿や栗などの樹木を処分する。市は11月18日に緊急対策を決定し、対象を550本と見込んだ。同月末までに全255行政区の希望本数を調査した結果、想定を大きく上回った。同28日時点で報告が済んでいないのは31区に上る。事業費は専決処分で2000万円を確保したが、概算で4億~5億円規模に膨らむ見通し。一部には県の補助を充てる。工事は来年3月末の完了を予定していたが、大幅に遅れる見通し。出没が多い栗駒、一迫、鶯沢、金成、花山の各地区で、人家に近い場所から優先して伐採する方針。県や伐採業者との調整を進め、年明けから作業を開始する。佐藤智市長は今月1日の定例記者会見で「予想以上で驚いている。7000本近くなると思うので、伐採計画を作りながら対応したい」と話した。

(柿の木伐採し罠も設置、小学校前のクマ対策:福島)
須賀川市鳥獣被害対策実施隊は2日、クマの目撃情報が相次いだ仁井田小付近の現場を確認し、対策として罠を1基仕掛けた。また仁井田区はクマが登っていた柿の木を伐採するなどして、地域の安全・安心確保を図った。クマは1日午前に2回、午後に3回、同じ柿の木付近で市民や警察に目撃されており、学校では保護者の協力で児童を車により送迎したり、校庭の利用を中止するなど安全対策に取り組んでいる。仁井田区は柿の木の所有者に許可を得て木を伐採し、クマが近寄らないようにと柿の実も撤去した。須賀川署は付近でもクマが目撃されていることを踏まえ、不要不急の外出を控え、移動は車で行うよう呼びかけている。

(クマの市街地に近いエリアでの出没が続いた場合、捕獲機材を設置し市街地への侵入を防ぐ方針:静岡)
クマによる人身被害が全国で相次いでいることを受け、静岡市は市街地に近いエリアで出没が続いた場合、捕獲機材を設置し市街地への侵入を防ぐ方針を示しました。全国的に人里での出没が相次ぎ、静岡県内の住宅街近くでも目撃されているクマ。環境省は対策として34億円の補正予算案、いわゆる「クマ被害対策パッケージ」を提出。その施策として自治体への交付金や狩猟免許を持つ公務員の雇用促進などが盛り込まれています。3日の静岡市議会では市の対策について質問が上がりました。静岡市 大畑夏男 森林経営統括監「捕獲機材を追加で購入し、市街地に近い山際出没が続いた際には、機材を設置することにより市街地へのクマの侵入を未然に防ぐよう努めます」。また、中山間地域の自治会に収穫しない柿や栗の木などを伐採することや、周囲のやぶなどを刈って見通しを良くし、クマを集落に寄せ付けない環境づくりを呼び掛けているということです。

(熊対策に県知事「さらなる外部人材も」:長野)
阿部守一知事は2日の県会一般質問で熊対策に関し、狩猟免許保有者を公務員として任用する「ガバメントハンター」などを念頭に「さらなる外部人材の登用も必要だ」と述べた。緊急銃猟を含む捕獲態勢の強化に向けては、広域連携の重要性を強調。モデル地域で県と市町村、猟友会による協議会を設け、課題の整理や合意形成を進める方針を示した。阿部知事は県内の熊対策の実情について、小規模町村が多く狩猟者の偏在も目立つことから「自治体単独で対応するには限界がある」と指摘。

(シカ急増、食害対策急務:石川)
県内で農作物や下草を食べるニホンジカの増殖が懸念されている。シカが増え過ぎると、生態系への影響や土砂災害の発生につながるとの指摘がある。白山市木滑の里山総合会社「山立(やまだち)会」などは対策を考えるため、県職員らを招いた初のシンポジウムを開いて他県の被害例を共有し、狩猟した後のシカの活用策を考えた。被害が深刻になる前に何ができるか、関係者が知恵を絞る。シンポジウムは9月27日、県立大(野々市市)であった。哺乳類の生態に詳しい同大生物資源環境学部の東出大志(だいし)准教授は、全国的にシカが増えているとし、主な理由として資源利用や狩猟者の減少を挙げた。

(白山麓、サル被害深刻:富山)
クマの出没や人的被害が各地で相次ぐ中、白山麓ではサルによる農作物への影響に農家が頭を悩ませている。昨年度の被害額が石川県内の自治体で最悪だった白山市は今年度も同水準で推移、イノシシとともに「田んぼ荒らし」が横行している。有効な対策ははなく、追っ払っても繰り返されるいたちごっこが続いている。「今年は最悪や」。白山麓で米作りに励む70代男性がため息をつく。男性によると、今年は稲刈り前に水田がイノシシに踏み荒らされ、全体の約3分の1が収穫できなかった。サルも数十頭の群れでやってきては、稲穂を駄目にしていったという。電気柵を設置したり、サルを見つける度にロケット花火で大きな音を出して追い払っているものの、「一時しのぎに過ぎない」とあきらめ顔だ。白山市によると、サルによる農作物被害額は2020年度が371万3千円と大きく、21年度78万6千円、22年度185万円、23年度0円(報告なし)、24年度250万円だった。今年度は10月末までで244万7千円となり、24年度の年間被害額に迫っている。石川県は捕獲用の箱わな設置への補助や、農家・市町職員らを対象にした研修会を実施。白山市でも、JA松任と連携して箱わなの餌として規格外のナシを活用するなど対策を強化している。市の担当者は「サルは増えている。農作物への被害をできる限り抑えられるよう適正管理に努めたい」と話した。

(若手狩猟者、わな猟学ぶ:徳島)
有害鳥獣駆除の担い手となる狩猟者を育てる講習会「とくしまハンティングスクール」(県主催)が鳴門市であり、わな猟の実習が行われた。受講者5人と県、県猟友会青年部の担当者ら計18人が参加した。

(林業関係者、クマ遭遇不安:島根)
全国的にクマの出没が相次ぐ中、島根県内の林業関係者が影響を懸念している。クマの生息地で作業をするため、従事者からは「安心して仕事ができない」との切実な声が漏れる。

(クマ被害対策費など総額4285万円の補正予算案可決:岩手)
北上市議会(岩手県)の通常会議が12月4日に招集され、クマ被害の対策として温泉施設を運営する事業者が電気柵を整備する際の補助費などを盛り込んだ、総額4285万円の補正予算案が可決されました。北上市はクマ被害の対策として、総額4285万円の補正予算案を4日、市議会に提案し全会一致で可決されました。補正予算の内訳は鳥獣被害対策事業として、クマ捕獲用のわなの購入などに450万円。学校など公共施設へのクマスプレーの配置と市内の児童生徒へのクマよけの鈴の配布などに1237万円。小中学校の登下校時にタクシーを利用した場合の送迎費用に、250万円などとなっています。また2025年10月に市内の温泉施設で従業員がクマに襲われて死亡した事案を受けて、温泉施設を運営する事業者が電気柵などを整備する際、300万円を上限に経費の一部を補助する費用として1500万円が計上されています。

(シカ食害、防除柵の効果を検証)
シカの防除柵がどの程度、食害からの生態系の保護につながっているのか検証しようと、九州大などの研究グループは、各地の柵設置者にサンプル調査に協力してもらうプロジェクトの立ち上げを計画している。クラウドファンディング(CF)で支援を呼びかけており、来年1月19日までに150万円の集金を目標とする。計画では最低50地点の柵の内外で、設置者に植物や昆虫の調査や、土壌の収集などを依頼。報告の内容や土壌サンプルを研究グループが分析し、食害の実態や柵設置の効果を明らかにする。九州大大学院の阿部隼人助教(森林生態学)によると、柵内外で動植物の数や種類に大きな差がみられることが多い。「シカの食害による生態系の荒廃は深刻だ。全国規模の調査を行い、より効果的な柵の活用法を模索し、問題の解決に向けた新たな道筋を示したい」と意義を強調した。プロジェクトには東京大や京都大の研究者も参加。支援は学術系CFサイト「アカデミスト」を通じて行える。

(「クマ被害」がJR貨物でも深刻化、シカとの衝突よりもさらに厄介なワケ)
JR貨物の10月の輸送動向は前年同月比2.5%増。リニア中央新幹線の建設工事で出た「土」の運搬が増えたこと、自動車部品も一部顧客により2桁増となった。ドライバー不足を見越した「鉄道シフト」もプラス影響だった。一方、11月20日の会見で犬飼新社長は「クマの被害」について「列車との衝突で運休などが前年度の2倍を超えるペースで推移している」と明かした。JR貨物はシカとの衝突に悩まされてきたが、クマの場合はいっそう難しく、「現時点で有効な対策が見当たらない」と悩んでいる。クマによる被害が連日ニュースを賑わせているが、JR貨物(本社・東京都港区、犬飼新社長)でもクマと列車の衝突による輸送障害が拡大している。今年度にクマとの接触によって運休など何らかの輸送障害が発生した件数は、11月20日現在で17件にのぼっており、すでに前年度の8件の2倍を超えるペースで推移。直近の11月では、6日に函館線でクマとの衝突が起こり、貨物列車2本が運休したほか、10日と11日にも道南いさりび鉄道で接触が連続で発生し、運休に追い込まれる事態となった。JR貨物を含む鉄道会社は長らく、シカとの衝突に悩まされてきたが、クマの場合はさらに深刻だ。

(“りんご爆食いクマ”が出没、麻酔吹き矢が3発命中:岩手)
岩手県盛岡市のりんご園にクマが出没した。クマが現れたのは盛岡駅から北に3キロほどの地点。住宅街にあるりんご園に侵入し、小屋に籠城。中で撮影された映像にはクマがりんごを爆食いする様子が捉えられていた。近くには学校や保育園もあるため、麻酔の吹き矢でクマを眠らせることにしたという。獣医師の放った矢はクマの左肩あたりに命中。3発の吹き矢が当たってから約1分後、フラフラと横になった。2時間におよぶ緊迫の捕獲作業となった。130キロにも及ぶツキノワグマは、麻酔で眠らされた後、そりで搬出され駆除されたという。吹き矢でクマの麻酔を扱うには専門の資格や環境省などの許可が必要。そのため、麻酔吹き矢を扱えるのは獣医師や医者など、数少ない人に限られている。

(“冬眠しない”クマに…各地で襲われる被害相次ぐ)
本来なら冬眠する時期を迎えていますが、クマの被害が相次いでいます。長野県野沢温泉村では、除雪作業をしていた男性がクマに襲われけがをしました。4日朝、長野県野沢温泉村で撮影された写真に写っていたのは、雪が積もった車の近くにいる、クマとみられる動物。雪が降る12月になっても、人里に現れています。写真が撮影された約15分前、150メートルほど離れた場所で78歳の男性がクマに襲われたのです。撮影されたクマとみられる動物と男性を襲ったクマが、同一の個体かどうかはわかっていません。警察によると、襲われた男性は自宅前の雪かきをしていたといいます。そこに現れたクマ。男性は突然、顔をひっかかれ、左の太ももを4か所かまれたということです。男性は病院へ搬送されましたが意識はあり、命に別条はないということです。男性を襲ったクマはまだ見つかっていないため、警察は付近の住民に注意を呼びかけています。4日、相次いだクマによる被害。富山市では未明、新聞配達中の70代の夫婦がクマに顔などをひっかかれました。2人とも顔から血を流していたものの、命に別条はないということです。岩手県奥州市ではペットの犬をさがしていた女性が、道路脇から現れた体長約1メートルのクマに突然、襲われたといいます。女性は顔などをひっかかれ、病院へ搬送されましたが意識はあるということです。師走に入っても相次ぐクマ被害。専門家は「12月でもクマへの警戒が必要だ」と警鐘を鳴らします。岩手大学 山内貴義准教授「『雪が降ったから大丈夫』という話はよくされるが、基本的に気温とか雪の量で冬眠が早くなるわけでない。クマはまだ出没する可能性はある」。気温が低い12月でも、柿の実などクマのエサとなるものがあれば、人里に現れることはあるといいます。さらに…。岩手大学 山内貴義准教授「確実に言えるのは、(来年の)春先は出ると思う、間違いなく。春先は、ここ数年で連続、街中に出ている」。「災害級」ともいわれる今年のクマ被害。この先も警戒が必要です。

(講演「不適切な森林管理がクマ出没招く」:新潟)
里山の保全と活用を考える講演が、長岡市大手通2のミライエ長岡で行われた。増加する鳥獣被害や林業の担い手不足などの解説があり、里山を適切に管理していく重要性を学んだ。地域の自然を取り巻く課題について考える場をつくろうと、長岡市の科学博物館が新たに始めたトークイベントの初回で、11月29日にあった。野生動物と人の共生について研究、活動を続けている長岡技術科学大の山本麻希准教授が講師を務め、約40人が参加した。山本准教授は、森林資源の活用などに取り組む「未来里山技術機構」の代表も務める。講演では鳥獣被害に触れ、森林が適切に管理されずに老木が生じることがクマの餌不足、出没につながったとしている。

(山と人が紡いだ営み:岩手)
シカの頭を家の入り口に飾ると魔よけになるらしい。山田町の猟師から頂いた立派な角を携えた頭が自宅の玄関に鎮座している。今年はシカだけではなく、山の文化的な側面にも触れた。岩泉町で最もおいしい食べ物はクマで、かつてはごちそうだったという。ジビエ料理教室は独特の香りに包まれる。一昔前は傷の治療に重宝されたクマの油の抽出も興味深かった。クマ汁の肉は予想に反してほろりとやわらかい。猟友会員の話を聞いていると「クマノイ」という未知の単語が耳に飛び込んできた。胆のうを乾燥させて中にある結晶を砕いて飲むらしい。木箱に入った実物が手元に回ってきた。紙の上には砕いた粉がある。「さすがにこれは…」と思いつつ、決死の覚悟でぺろりとなめた。強烈な苦みが口の中に広がった。巨木に取り残されたとみられる子グマのミイラにも出合った。年1回の「山の神の日」に公開され、発見者の思いやモチーフにした絵本に心を引かれた。野生動物による被害を防ぐことは大前提だが、山と人が紡いできた営みは興味深く、得るものがたくさんありそうだ。「ハンターになってみたら」との提案に驚きつつ、何かのヒントになりそうな気がしている。

(おもちゃと称した拳銃24丁を販売目的で密輸した疑い:宮城)
実弾を発射できる、おもちゃと称した拳銃24丁を販売目的で中国から密輸したとして中国籍の男(46)が逮捕されました。拳銃営利目的輸入違反の疑いで逮捕されたのは、中国籍で住居不詳の支逸峰(ジ・イフォン)容疑者(46)です。警察によりますと、支容疑者は2024年5月から10月にかけて東京都の会社役員の男らと共謀し、実弾を発射できるおもちゃと称した上下二連式の拳銃24丁を、販売目的で中国から密輸した疑いが持たれています。 拳銃は殺傷能力があり1丁3000円でインターネットで販売されていました。警察は、捜査に支障があるとして支容疑者の認否を明らかにしていません。

(狩猟の意義などを解説:京都)
京都府福知山市野花の川口中学校(芦田晃樹校長、生徒39人)で2日、森の京都DMO文化観光サポーターを務める筈巻の猟師、公庄美保子さん(44)が、狩猟や鹿肉の活用をテーマに講演した。野生の命と向き合う狩猟の意義などを説明し、全校生徒が熱心に耳を傾けた。同校の給食週間(12月1日~5日)に合わせて実施。初めに生徒会の保健体育委員会が、給食の始まりについて説明したり、「一番人気のおかずは?」といった給食に関するクイズをしてから、公庄さんが登壇した。公庄さんは、市内で数少ない女性猟師の一人で、2020年からわな猟を始めた。「近年は耕作放棄地が増え、人と獣の生活圏が重なってきていて、有害鳥獣による農作物被害が増えている」とし、狩猟者不足と高齢化が課題になっていることを伝えた。これらを解決するため、狩猟者、そして鹿肉などジビエを食べる人を増やすことで、被害を少しでも減らしたい-と活動しているという。また捕獲した鹿は、大半が焼却処分される状況に疑問を抱き、「命を扱う身として何とかしたい」と、解体して家族で食べるほかにも、犬用ジャーキーを開発・生産・販売していることも紹介した。生徒たちは最後まで集中して聴き、講演終了後には「今まで捕獲した中で、一番大きいのはどれくらいでしたか」など、積極的に質問。公庄さんが持参した雄鹿の頭蓋骨にも興味津々で、角を触ったりしていた。

(有害鳥獣駆除、里山を守る:佐賀)
佐賀の豊かな自然を未来につなぎ、持続可能な地域社会の実現を目指す公共広告プロジェクト「さが_みどりのわ」。今回の「みどりを往く」は、過剰に増えたイノシシなどを捕獲する「有害鳥獣駆除」の現場を訪ねた。鹿島市の山中、荒れ放題となった竹林が行く手を阻んだ。鹿島市猟友会の中島和也会長は、イノシシの匂いを追う猟犬3頭を従え、猟銃を抱えて先頭を歩く。倒れた竹の障害物をくぐり、乗り越え―。その驚異的な体力は、とても74歳とは思えない。 やがて1頭が吠え始めた。イノシシを見つけた合図。辺りは緊張感に包まれる。足を止め、息を潜め、次の動きを待った。間をおいて、「逃げられた」と中島会長の声。張りつめた空気が緩んだ。その後も猟犬たちを追って歩き続けたが、同行取材の間、中島会長が引き金を引く機会は訪れなかった。人の手が入らない荒れた山は、県内の至る所にある。「イノシシが安心して棲める場所になっとるよね」と中島会長は言う。人と森林のつながりが希薄になり、イノシシの生息域は拡大。 食欲旺盛なイノシシは里山に姿を現すようになり、農作物被害が深刻化した。2002年度、イノシシによる農作物被害は佐賀県内全域で4億1700万円。それをピークに減少しているものの、23年度は県内で1億1400万円と農家の苦悩は尽きない。国と自治体は、電気柵などによる侵入防止策と並行して、被害や生息数のデータに基づいた「有害鳥獣捕獲」を進めてきた。捕獲・駆除しないと、イノシシは増えすぎて、生態系全体のバランスが崩れる恐れもある。鹿島市は、嬉野市、太良町と共同で鳥獣被害防止計画を策定。イノシシは鹿島市内で年間1050頭を捕獲する計画を立て、猟友会が委託を受けている。中島会長のように猟銃での駆除もあるが、中心は「罠猟」だ。箱型のケージに餌でおびき寄せる「箱罠」と、ワイヤーで脚をくくる仕掛けの「くくり罠」。イノシシの生態を熟知した上での知恵比べが鍵を握る。今回の同行取材は、東京都在住の女性の〝体験会〟も兼ねていた。野外活動に関心が深い女性は「罠猟の免許を取りたい」と望み、知人のつてで鹿島市猟友会が受け入れた。 この日、同会事務局長の藤井信博さん(55)らが仕掛けた箱罠にイノシシ3頭がかかっていた。相手は獰猛な野生動物。捕獲後の作業は危険を伴う。会員らは十分に注意しながら、電気ショックで止め刺しを行った。イノシシは激しく抵抗したが、すぐ静かになった。「なるべく苦しみを与えないよう、止め刺しの技術を磨くことが大事」と藤井さん。〝命の尊厳〟を思う作業だ。猟友会はジビエの商品化にも力を入れ、精肉にする解体場を独自に持っている。女性は精肉前の下処理も体験。猟友会会員の指導の下、刃物で腹を割き、内臓に手を入れた女性は「あたたかい」と一言。そのぬくもりは、さっきまでイノシシが生きていたことを物語っていた。藤井さんは「イノシシは独特の臭みがあるという人もいるけど、血抜きの技術向上で、おいしい肉が提供できる」という。利用するのは、より味がいいと言われるメスの肉。ソーセージやハムなどの加工品も手掛ける。この日の夜はジビエ試食会も開かれ、ボタン鍋やすき焼き、チンジャオロースなど多様なメニューが振る舞われた。確かにうまい。昼間の作業を見てきただけに、命をいただく重みも実感した。農業や日常生活に影響を及ぼすのはイノシシだけではない。アライグマやアナグマ、カラス、カモ…。計画に基づき、対象鳥獣ごとの対策を講じているが、佐賀県内で近い将来の被害拡大が懸念されるのがシカだ。これまで県内にはシカはいないとされてきたが、近年は目撃情報が相次ぐ。他県では、農作物だけでなく、森林生態系への甚大な影響が指摘されている。鹿島市猟友会は昨年10月、シカ被害が深刻な長崎県の対馬市で視察・研修を行った。「鹿島でシカの被害が出た時、どう対処すればいいのか考えておかなければならない」と藤井さん。得られた最大の教訓は、「鹿島市単独ではなく、広域での対処策」と「若手猟師の育成」だったという。今秋、東北などではクマによる甚大な被害が人間の暮らしを脅かしている。九州にクマはいないとされ、「緊迫度」は異なるかもしれないが、根底にある課題は重なっている。人間と野生動物は共存していけるのか―。暮らしの安全と農家の苦悩、生態系の維持、そして命の尊厳…。切実な問いは、社会全体に向けられている。

(ツキノワグマ1頭の死骸見つかる:群馬)
群馬県太田市は2日、同市成塚町の田んぼで同日朝、幼獣のツキノワグマ1頭の死骸が見つかったと発表した。市によると、市内でクマの死骸が見つかったのは初めて。近くの小学校が保護者同伴での下校に切り替えるなどし、市は外出時に注意するよう呼びかけている。見つかった死骸は体長65センチ、体重約5キロのメスで、死後3日程度が経過していた。2日午前6時半ごろ、犬の散歩をしていた住民男性が見つけ、知らせを受けた男性の家族が太田署強戸駐在所に届け出た。数日前から周辺にカラスが飛来していたという。死骸があった田んぼは、桐生市に隣接する八王子丘陵の南に位置する。太田市農業政策課によると、死骸に交通事故などによる外傷がないことから、11月に桐生市内で目撃が相次いでいた子グマが丘陵の山林を移動し、衰弱死した可能性があるという。2日午後には近くで別のクマの目撃情報が寄せられており、太田市は「外出の際は周囲に注意し、出没した場合は刺激しないでほしい」と呼びかけている。

(銃使用禁止のクマ対策が浮き彫りにした、自衛隊活用の“限界”とは:吉永ケンジ)
自衛隊がゴジラならぬ、クマへの対処で出動するという前代未聞の事態となった。しかし、陸上自衛隊が「クマ退治」で出動したと勘違いされるとともに、盾に木銃という前時代的な姿に失笑の声も聞こえた。今回の出動は11月末で打ち切りとなったが、来春には冬眠から目覚めたクマが再び徘徊するかもしれない。その時に自衛隊は再び出動するのか。本物の銃が解禁され、クマと直接戦うことはできるのか。現役自衛官へのインタビューをもとに考えていきたい。野生動物の脅威を身近に感じるのは、アフリカのサバンナや南米のアマゾンぐらい――。多くの日本人はそう思っていたが、2025年秋は現代日本がクマの脅威に震撼することになった。秋田県を中心にクマによる人身被害が過去最悪のペースで増加し、全国で死者が多数発生するなど被害が深刻化した。2025年度の被害者は197人、そのうち死者は12人(10月末時点)。死者数は、近年最多だった2023年度の6人(被害者数は219人)を大きく上回っている。クマの出没増加や人身被害の背景には、エサの不足、生息域の拡大・密度の増加、ヒトへの警戒心の低下など複数の要因が複合的に絡んでいると言われる。しかし、原因が分かったからといって、クマの被害が減るものではない。秋田県の鈴木健太知事は10月28日、防衛省を訪れ、駆除を支援するよう自衛隊の派遣を緊急要望した。このような要望は、現代日本では極めて珍しい。20代の頃に東北地方の普通科連隊(歩兵)で勤務したことがある、ベテラン陸上自衛官のA氏は「クマ対策で自衛隊が出動することは全く考えられなかった」と当時を振り返る。近年、自衛隊が鳥獣対策で出動するケースは、鳥インフルエンザや口蹄疫が流行した際の災害派遣が中心だった。これらは伝染病の拡大防止に向けた措置であり、主な活動内容は家畜の殺処分など。自衛官が山の中に分け入り、害獣と直接対峙する機会はなかった。ただ、少し古い話になるが、興味深い例外が2つある。1つ目は、1950年代から60年代にかけて行われた北海道でのトド駆除だ。この時は、漁業被害をもたらすトドに対して、陸上自衛隊が「射撃訓練」という名目で出動し、高射砲まで実弾射撃したほか、航空自衛隊も戦闘機を繰り出した。とはいえ、本当の目的は射撃の爆音でトドを追っ払うことであり、撃ち殺すことではなかったという。2つ目は、こちらも50年以上前のことだが、北海道で陸上自衛官が自動小銃でクマを射殺したという記録が残っている。1971年5月、十勝平野西部で遭難したヘリコプターの搭乗員を捜索していたところ、クマが突然現れて襲いかかろうとしたため、身の危険を感じた隊員が小銃で射殺した。クマは4歳の雄で体重は120キロだったとされる。過去には陸自駐屯地の資料館に剥製が展示されていたというが、現在は定かではない。現代日本に話を戻す。秋田県知事の緊急要望を受けた小泉進次郎防衛大臣は直ちに動いた。陸上自衛隊は11月5日、秋田県とツキノワグマによる被害防止に関する協力協定を締結。陸自が箱ワナや人員の輸送、駆除した個体の処理などをサポートし、自治体職員や猟友会など現場の負担を軽減することが決まった。SNSで勘違いする人が続出したため、あらためて強調しておくが、今回の出動では自衛隊が銃器などを駆使して「クマ退治」を直接行ったわけではない。あくまで自衛隊が任されたのはサポートであり、駆除を担うのは現地の猟友会などであった。実際、小泉防衛大臣の閣議後会見(11月28日)によると、「昨日までに秋田県内の11の市町村において、延べ815人の隊員によって、箱わなの運搬を137件、駆除後のクマの運搬を9件、駆除後のクマの埋設のための掘削を1件、そしてドローン等による情報収集を行った」という。ここで疑問なのは、なぜ猟友会よりも高性能な武器を持ち、組織的な戦闘訓練を積んでいる陸自がクマを駆除しなかったのかということだ。その理由を、前出のA氏は次のように語る。「今回のクマ対策支援は、自衛隊法第100条に基づく民生支援です。自衛隊の武器使用は、自衛隊法により厳しく制限され、防衛出動や治安出動などに限られます。災害派遣や民生支援での武器使用は想定されていないのです」「もちろん、警察官職務執行法を準用して、正当防衛や緊急避難での使用はできます。しかし今回は“自衛隊が国内で武器を使う”というインパクトに加え、猟友会や警察が対応可能という代替性の問題もあって、民生支援に落ち着いたのだと思います」陸自の派遣部隊は約200kgの箱ワナを運搬したわけだが、隊員の装備が公開されるやネット上に失笑があふれた。ヘルメットと防弾ベストを装着した隊員の手には、木銃とポリカーボネート製の盾。クマよけスプレーも携帯したというが、その姿は衝撃的だった。しかし、木銃は陸自隊員にとって、もっとも使い慣れた「武器」だ。木銃とは銃剣道で使う武器で、読んで字の如く銃の形をした槍のようなもの。銃剣道は旧陸軍から伝統の表芸の一つで、突きを主体とする。固い樫でできた木銃の突きは防具の上からでも痣ができるほど。無理解な世論に対する小泉防衛相の対応はまたしても早かった。7日には自身のXで「クマ対策のプロである猟友会の皆さんの助言も反映した結果」「ドローンも活用して(中略)万全の監視体制を敷いています」と説明した。要は、銃で撃たれて手負いになったクマが最も厄介なので、安全に距離をとってクマを追っ払える装備をチョイスしたということ。体長130cmほどのツキノワグマなら、銃剣道で鍛え上げた隊員であれば、十分に対応できると判断されたのだろう。ただ、A氏は「自分を守る小銃を持たずにクマと対峙せざるを得ない隊員は複雑な思いだったでしょう。あまり知られていませんが、演習場ではクマとよく遭遇するんですよ」と語った。陸自の隊員が訓練するのは山間部にある演習場であり、隊員たちは「ヤマ」と呼ぶ。年間で40日から80日、1回あたり数日から数週間を演習場で過ごす隊員たちは、多くの野生生物に遭遇している。その実態を、A氏は次のように明かす。「ツキノワグマだけじゃなく、猪、鹿、猿も出ますよ。訓練中にクマを発見すれば、無線で『クマ情報』を報告し、周りの部隊や隊員に周知します。『クマ情報』が解除されるまで車内で待機して、解除されたら訓練を再開するという感じです。今はドローンを飛ばして上空から捜索しているでしょう。ドローン操縦手にとっては良い訓練機会ですね」「隊員がクマから襲われた話は聞いたことないです。クマが出るのは春から秋なので、その間は警笛を持ったりと備えはします。ただ、演習中は空砲を持っており、クマと出会えば発砲して威嚇することもできるので、正直なところ怯えていないというか、意識していないですね」。実は自衛隊員は、日頃からクマなどの野生動物に接する機会が多く、門外漢ではないのだ。その上、クマに関する情報を部隊で共有したり、警笛や空砲で追い払ったりするなど、うまく対処する術も心得ている。にもかかわらず、ヤマで培った能力をフルに発揮できなかった上、ネットで失笑されたのだ。このことに対し、思うところがある自衛官もいるに違いない。では、自衛隊によるクマへの銃器使用が解禁され、自衛官が悔しさを晴らせる日は来るのか――。今後を占う上で、一つ興味深い視点がある。北海道の陸自部隊に所属するB氏は、万が一銃器使用が解禁されたとしても、陸自が装備する「20式5.56mm小銃」が大型のクマには通用しない可能性を指摘する。「仮に小銃を持っていたとしても、5.56ミリの軽い弾丸では(クマへの)ストッピングパワーが足りません」(B氏)ストッピングパワー(阻止能力)とは、弾丸が標的(人間や動物など)を即座に無力化する能力のことで、一般に運動エネルギーで説明される。上述の20式小銃の弾丸重量を4.0グラム、初速を秒速920メートルとすると、運動エネルギーは約1690ジュールになる。陸自の「対人用狙撃銃」であるM24狙撃銃(約3356ジュール)と比べると、20式小銃のストッピングパワーは半分程度なのである。これに対し、狩猟界ではクマのような危険動物には4000~5000ジュールを推奨している。20式小銃だけでなくM24狙撃銃ですら物足りない。加えて、貫通力を重視した軍用の弾丸は、狩猟用の弾丸のように体内に入ってマッシュルーム状に変形または炸裂しないため、殺傷力が小さい。もっとも、B氏が住む北海道に生息するヒグマは、本州に生息するツキノワグマよりもさらに大型かつ狂暴である。北海道と本州の“クマ事情”の違いは差し引いて考えるべきだが、B氏の指摘もあながち間違いではない。「なぜ自衛隊は銃でクマを駆除しないのか」と批判していた方々は、「軍用」と「狩猟用」では武器の威力や特性が異なることも知っておいていただきたい。最近の災害派遣の風潮を「自衛隊は便利屋じゃない」と批判する意見がある。この意見の是非は横に置いて、自衛隊が「何でもできる」わけではないことは、小銃のストッピングパワーからも明らかだ。もし小泉防衛相が世論におもねって、小銃や狙撃銃を持った陸自部隊にクマ狩りを命じていたら、致命傷を与えられず逆上させ、隊員が犠牲になっていたかもしれない。自衛隊は部隊の練度や装備の能力をよくわかっているため、「狙撃手を派遣しようという声は全く上がらなかった」(A・B氏)という。年が明けて雪が溶け、春が訪れれば、冬眠から目覚めたクマが一斉に動き出す。おそらく、そのうちの何割かはエサを求めて人里に近づいていくだろう。その時、今秋のように自衛隊の出動が求められるかもしれない。だが、これまで述べてきたように、自衛隊にもできることと、できないことがある。小泉防衛相が派遣にあたって、「クマ対策のプロである猟友会」からの意見を重視したように、世論に流されて右往左往したり、即断したりしないことが肝要だ。自身が出動する可能性があるB氏は、「あくまで想定」と断った上で、陸自によるクマ対策の未来像を語る。「今回の派遣は、いわばおっとり刀で駆けつけたようなものです。今後も猟友会や警察が『駆除』を担当するとしても、自衛隊は箱ワナの運搬以外にもできることがあります。例えばドローンによる赤外線センサーでの捜索、発見・追跡から、クマを委縮させる爆発音の発生や、さまざまなセンサー技術を組み合わせた早期警戒システムの構築などです」「私は陸自がこれまで培ってきた野戦の技術は、クマ対策にも応用できると思います。むしろ、ドローンやセンサー技術などは実環境に投入することで、信頼性が高まるのではないでしょうか」(B氏)。陸自のクマ対策は予定どおり11月末日をもって終結した。しかし、これは対策が効果を挙げたからではなく、クマが冬眠に入ったからに他ならない。来春・来秋、その先を見据えた戦いは始まったばかり。災害級とも言えるクマ被害への対策は、平時における自衛隊の活用の限界を私たちに教えてくれた。

(クマ被害を止めるには「思い切って大きく減らすしかない」:兵庫)
クマの被害が深刻化する中、兵庫県では個体数を管理可能な範囲に抑える「低密度管理」に成功している。一方で、秋田県など多くの地域ではすでに対応能力のキャパを超えていると推測される。「被害を抑えるためには、思い切って大きく数を減らすべきではないでしょうか」と話すのは、兵庫県立大学の横山真弓教授。野生動物の保全管理を研究し、現場で対策指導を行う横山教授に詳しく話を聞いた。【兵庫県立大学 横山真弓教授】昭和の初め頃まで、日本はさまざまな野生動物を乱獲しました。また、当時は日本中“はげ山”だらけでした。生活のために薪(木材)が必要でしたし、炭鉱など鉱物資源の採掘で木を切り倒したことで、もう再生できないんじゃないかというぐらい“はげ山”にしていったのです。その結果、野生動物が激減。絶滅の危機に陥り、慌てて「保護政策」をとったのです。第二次世界大戦が終わった頃には、動物がいなくなったとまで言われていました。そして戦後は厳しい狩猟規制が続き、できるだけ捕らせない政策をとりました。その後、燃料革命が起こり我々の生活は一変。電気、ガスなどボタンを押せばよくなり、皆、山に見向きもしなくなったのです。私たちが最初に野生動物の増加に気づいたのは「鹿」でした。1990年頃に鹿が増え始め、2000年代に入るとイノシシが増えだした。そして2010年にクマが増えはじめたのです。野生動物の増加は、狩猟者の減少や温暖化による積雪量の減少など、さまざまな要因が働いていると言われています。そして人間が耕地や住居を放置したまま里山から離れ、都会に出てしまったたことも大きな影響を与えています。柿や栗など、野生動物が「安全に美味しく食べられる」恰好のエサ場になってしまっているのです。我々『兵庫県森林動物研究センター』が15年ほど前から「クマの個体数推定」をした結果、「クマは1年で15%ほど増える」ことがわかりました。仮に100頭いたとして、一年後には115頭、二年後には132頭…5年で2倍になります。100頭ならよいのですが、1万頭だったら5年後に2万頭になってしまうのです。同様に個体数推定を行っている岐阜県でも「増加率15%」というデータを出しています。捕獲がなければ、「5年で倍増」は、決して大袈裟ではなく、現実の数字なのです。兵庫県、岐阜県のデータから考えると、クマの数が多い地域では増えないように一定に保つためには、増加する分の15%の駆除が目安になります。。秋田県は2023年の大量出没を受けて、23年24年で2600頭もの駆除の努力をされてきたのに、今年も大量出没してしまいました。しかし秋田県が5年ほど前に推定したクマの生息数は4400頭。数が合いません。これはどういうことなのか?データは1回の調査ではなかなか安定しないものです。古典的な手法ですし、あくまで推定値ですから乱高下するのです。ですが、データが蓄積されると変動幅が小さくなってきます。秋田県の前回の調査は過小評価だったのかもしれません。今、最新の調査を行っている最中です。結果が待たれます。そして…山は繋がっています。2023年は全国で9099頭という驚異的な数を捕獲したにも関わらず、今年被害が深刻化している状況を考えると、県同士の連携や、継続した調査が非常に重要だと思われます。今の東北地方は、相当数のクマが高密度に生息している状態だと推測されます。動物は、高密度化すると行動が変わってきます。争いが激しくなり、行動が過激になっていくのです。食べ物をめぐる争いも激しくなり、体の大きなオスのクマは子クマにとっては脅威となります。メスや子供はオスが怖い。だから山の中の争いが激しくなると、弱い母子が里に逃げて来ている可能性があると思います。里に着いた時はもう必死に食べ物を探している状態。また、人は怖い生き物ではないと学習しているクマも多くなってきていて、人里での活動がエスカレートしているように見えます。さらに、クマは鼻が凄く良いので、食べ物の匂いがする場所、例えばスーパーや、人が多くいる介護施設や幼稚園など、たくさん煮炊きをする所に匂いに誘われてしまっているのだと思います。現在、兵庫県に生息しているクマは約800頭です。私たちが野生動物の保全管理をはじめた25年前は鹿が増えだした頃。当時は「鹿は増えているけれど、クマは絶滅に瀕している」と保護政策をとっていました。クマは100頭いないと言われていて、一生懸命保護していたのです。ですが、2年おきにクマが大量出没し、2010年には1600件もの目撃情報が報告されました。「100頭しかいないはずなのにおかしい」と、さまざまな角度から調べた結果、600頭ほど生息していることが分かりました。どのぐらいの生息数が適正なのか、非常に難しいところですが、600頭の出没対応で、すでに非常に大変でした。我々が管理できない数になったらお手上げです。議論を重ね、環境省が「800頭いれば絶滅しない」という数値を出していたこともあって、800頭を目安とすることになりました。それまで完全保護政策だったのを、集落に侵入する個体は初めから駆除するなど、段階的に政策を転換していったのです。それでもあっという間に800頭に達しました。2016年のことです。そこで政策を大きく転換。狩猟を一部解禁にしたり、集落周辺での捕獲強化を始めました。15%ずつ増加しますから、一年で120頭程を捕獲しないといけない場合も出てきます。今、9年目ですが、クマ被害は減少傾向にあります。管理可能な数は自治体によって異なりますが、今の秋田県や岩手県は完全にキャパを超えていると思われます。被害を抑えるためには、ここはいったん、思い切って大きく数を減らすしかありません。クマという動物と共存するのは、本当に大変ですから、現状の対策としては「低密度管理」がベストではないでしょうか。兵庫県は2007年、野生動物管理のための拠点施設「森林動物研究センター」を設立しました。研究員は現在6名。動物の個体数推定を専門に行う研究員や、森林の豊作凶作を調べる研究員など、それぞれ専門分野をもったメンバーが研究と対策の実行・指導を行っています。私は動物の体の中を調べ、健康状態や繁殖状況などを分析していくのが専門です。日本は1999年の法改正で「地方分権」が強く進められ、「問題のある野生動物の対応は各都道府県が責任をもつこと」となりました。この時、法改正には『付帯決議』があり、「都道府県に専門的人材を配置することや研究機関の設置などに国が支援する」ということが書かれていたのですが、結局、何も進んでおらず支援体制も出来ていません。しかし、野生動物が増えている今、対応できる人材を育てないと大変なことになります。増えきってから対応するのは本当に大変なのです。今の自治体の仕組みでは、私たちの分野は「林業職」とか「農業職」とか、あるいは「獣医職」の方が担っているのですが、野生動物について学んできている人は非常に少ないのが現状です。研究者はたくさんいますが、行政機関に配置されている人はほとんどいないのです。例えば都道府県には必ず獣医師がいます。動物愛護法などで獣医師を配置することというのが定められているのです。畜産の獣医とか、公衆衛生の獣医とか。鳥インフルエンザなどが起きた時、専門知識がないと対応できないからです。野生動物の保護管理も同じです。今後ますます野生動物の増加が見込まれる中、早急に「鳥獣職」というのをきちんと法律で定める必要があると思います。今、国会で色々と対策を議論していますが、まずは専門職種の「鳥獣職」を各自治体に配置するべきではないでしょうか。人を育てることと人材配置はセット。学生たちも職種がない現状では、勉強もなかなか進みません。そういうところを、これから数年かけて変えていく。日本の鳥獣行政の仕組みを変えていかなければ、今後ますます野生動物が人間社会を脅かすことになると思います。

(難航するリニア工事に新たに立ちはだかる「クマの壁」:静岡)
リニア工事が行われる静岡工区は南アルプスの奥山で、クマが何度も目撃されている。ジャーナリストの小林一哉さんは「リニア工事でクマの生息地を侵した結果、人里にクマが出没するなどということがあれば目も当てられない」という――。JR東海がリニア中央新幹線のトンネル工事を行う静岡工区は、人里、山里から隔絶された南アルプスの奥山に位置する。全国的にクマの被害が深刻化し、人間の生活圏への出没が問題となる中で、リニア工事が直面するのは、クマの「生息域」でいかに安全に工事を進め、自然と共存するかという新たな難問だ。ことし4月から10月までにクマによる人身事故が東北、北陸などで176件発生し、被害者は196人、11月20日までに13件の死亡事故が起きて過去最高となった。この結果、クマの被害対策に関する関係閣僚会議が初めて設けられ、クマの駆除が喫緊の課題となり、人間の生活圏に出没するクマはすべて駆除対象となっている。南アルプス地域には300頭から600頭のクマが生息すると推定されるが、リニア工事が行われる大井川上流部で調査が行われたことはない。作業員らは実際に、大井川上流部のリニア工事現場近くでクマを何度も目撃しているというから、奥山には数多くのクマが生息する可能性がある。クマの生息地である森などの自然環境を開発していくのだから、何があってもおかしくない。工事着手となれば、南アルプス上流部の工事は10年以上続くこととなり、それこそ、JR東海にとってクマ対策とともにクマとどのように共存するかが大きなテーマとなるはずだ。ただでさえ遅れているリニア工事が、クマ被害によってストップするなどという事態は何としても避けたいのは言うまでもない。まだ具体的には決まっていないが、JR東海は作業員の安全確保を最優先に、自動撮影カメラを使った生息状況の調査や、クマが住みやすい環境保全などで静岡県と協力していくことになるだろう。リニア工事現場となる大井川上流部は環境保全団体などが立ち入ることができないから、JR東海の果たすべき役割は非常に大きいと言える。静岡県とJR東海はこれまで、多様な生態系を誇る南アルプスの自然環境をリニア工事で破壊しないよう、県の生物多様性専門部会で何度も対話を行ってきた。その中でJR東海は、自然環境を現状以上に回復させる「ネイチャーポジティブ宣言」を行っている。永長隆昭・JR東海静岡工事事務所長は「カネと労力を掛けるのはもちろん、技術的な知見が必要となる。生半可な覚悟ではできない」などと話した。一方で、部会で議題に上ったのは生息数の多いニホンジカ(ホンシュウジカ)や絶滅のおそれがあるとされるヤマトイワナなどについてで、クマに関しては何も議論されてこなかった。それもそのはず、シカは南アルプスにおいて高山植物を食べ尽くすなどの悪影響を与えているのに対し、クマによる直接的な害はこれまでのところ報告されていない。また生息数もシカなどと比べ微々たるものだからだ。環境省の推計によると、ニホンジカは2019年現在、全国で約260万頭が生息、毎年約60万頭が捕獲されている。環境省は2023年度末までに約152万頭までに減らす計画を立てた。これに対して、クマの生息数は全国でも3万~4万頭と推測され、ニホンジカとは比べものにならない。ニホンジカの食害による影響が非常に大きいことで、JR東海はその対策の一端を担うことが決まっている。南アルプスのお花畑を食い荒らさないように防鹿柵を設置するなど、積極的な協力を惜しまない姿勢だ。だが、ここにきていよいよクマ対策も無視できないものになってきた。大井川の水環境問題がほぼ解決し、残された主な課題は自然環境の保全だ。JR東海がネイチャーポジティブによる具体的な貢献を果たせば、地域の理解を得ることにもつながるだろう。現在、連日のように報道される日本特産のツキノワグマ(ヒグマは北海道のみに生息)だが、過去には絶滅が危惧され、約30年前にはどのようにツキノワグマ(クマ)と共存するのかが大きなテーマだった。ところが最近、東北や北陸などで急速な個体数の増加に転じたことで、人間を襲うなどの被害が顕著となり、「危険な害獣として駆除しろ」と国を挙げてクマを撃ち殺すことに躍起になっている。クマは九州では戦後絶滅し、四国などでは絶滅のおそれが高いとされる。ただ単に「駆除しろ」では、ニホンオオカミ、オキナワコウモリ、ニホンカワウソ、トキなどと同様に日本からクマが姿を消してしまう可能性も出てくる。人間がクマとの闘いに完全に勝ってはいけないのだ。クマとの共存には絶妙なバランスが求められるが、そのバランスを見極めるのは非常に難しい。その大きな理由は、クマの生息の実態がわかっていないからだ。30年以上前、ツキノワグマの減少が大きな問題となった。当時、環境庁(現環境省)は日本国内には約1万頭生息し、このうち、毎年約2000頭前後が狩猟対象や害獣として捕獲されていると推測していた。それとほぼ同じ頃、ある米国の学者が国際学会誌に「日本ではクマの胆のうを取るため幼獣や雄、雌の区別なく年間を通じて殺している。この野放しの状態が続くと絶滅の危険性がある」と厳しく追及し、英国などでも同様の批判が起きた。このため、1992年から94年までクマの狩猟が自粛された。この結果、2004年秋にはクマの大量出没の状況が報告され、クマの生息地内で事故が発生、人間の生活圏への出没が見られるようになった。南アルプス周辺でも、一時期、生息数がかなり減ったが、現在は回復しているとされる。静岡県では現在でもクマの狩猟を自粛している。静岡県は2024年度に自動撮影カメラを南アルプス地域及び富士地域に20基設置して、個体数を推定するカメラトラップ調査を行った。この結果、富士地域に70頭から150頭、南アルプス地域に300頭から600頭が生息していると推定された。ただ、クマの生息数を正確に把握するのは非常に難しいという。この生息数でクマが現在でも絶滅の危機にあるのかどうかはわかっていない。環境省の「豊かな森の生活者 クマと共存するために」というパンフレットによると、クマは基本的には人を避ける動物だが、突発的に出会うと防御的な攻撃を招き、危険な場合があるという。クマは、鼻、耳がよく、食べることに夢中になると周りが見えなくなる。学習能力が高く、人間の食べ物の味を覚えると執着する。足が速く、木登りがうまい。広い行動圏を持ち、鋭い嗅覚を持っているため、カキ、クリなどの放棄果樹、残飯などの誘引物は遠く離れたところで生活しているクマを人里へ引き寄せてしまうという。クマによる人身被害、農業被害の発生が必ずしもクマの個体数の多さに比例しないと環境省は見ている。かつてニホンジカも明治時代の乱獲で捕獲が規制される「保護」の対象だったが、今では増えすぎて駆除の対象になった。環境省パンフレットには「シカは植物を食べる日本の在来種で、全国に分布を拡大し個体数が増加、シカが増えることは良いことと思うかもしれないが」と断り書きをした上で、「全国で生態系や農林業に及ぼす被害は深刻な状況になっている」と徹底的に駆除することの理由を説明している。「シカが増えることは良いとされてきたのに、今では徹底的に駆除する」のは、「生物多様性」が人間の安全や経済活動という都合によってさまざまに変わることを意味している。奥山での開発を推進するリニア工事が、クマという新たなリスクに直面し、その対応を迫られている点も、過去のシカの事例と軌を一にするかもしれない。すべては人間の都合である。明治期以前、ニホンオオカミが動物界の食物連鎖の頂点にいたが、人間によって絶滅させられたあと、ニホンジカの天敵は人間以外いなくなった。雑食性のクマは、ニホンジカの天敵にはならない。ニホンジカの死骸などを食べる程度で、襲うことはないという。それに対して、クマが人間を襲うという不幸な事例ばかりが目立っている。JR東海は「ネイチャーポジティブ宣言」を行ったが、その実行は、大井川の地下400メートルという難工事、そしてクマという南アルプスの自然との困難な「共存」というミッションへの挑戦を意味する。関連性を指摘するのは容易ではないが、JR東海がクマの生息地を開発していくことで、人間の生活圏に南アルプスのクマが出没し、リニアにケチが付く事態は何としても避けたいはずだ。この挑戦を単なる宣言で終わらせないためにも、「ネイチャーポジティブ宣言」で掲げた理念に基づき、具体的なクマ対策のアクションプランを策定し、今こそ県とJR東海がタッグを組む時だろう。

(それでも《現役・女性ハンター》が“狩猟を辞めない”理由)
「動物を駆除すると『同じ目に遭わせてやる』といった批判コメントがつき、“もう辞めたい”と泣いて落ち込みました」。そう話すのは、現役女性猟師で登録者約18万人の「Nozomi's狩チャンネル」のYouTuber・Nozomiさんだ。もともとは東京で営業職に就いていたが、2018年に茨城県へ移住し、狩猟免許を取得。19年から自身のチャンネルで実際の狩猟の様子や、狩猟に関する情報発信をし、講演やメディア出演も多数の「狩猟インフルエンサー」である。なぜ彼女は、なり手が減っている猟師の世界に飛び込み、その様子を伝えているのか。近頃、クマによる人身被害や農作物・家畜の被害が連日ニュースになっている。自衛隊や警察も出動し、11月14日には政府が「クマ被害対策パッケージ」を発表する事態となるなど、国家規模で対策に乗り出しているが、一方で、いまだ「クマを駆除するな」という声もある。この状況を、現役猟師はどう見ているのか。Nozomiさんは普段、罠と猟銃でイノシシやカモなどの駆除を行っている。人間と野生動物が共生するための手段として、「住み分け」が重要だと話す。「現在、人間は食物連鎖の頂点にいます。クマなどの害獣を根絶やしにしようとするのではなく、管理するという考えで、生息している場所を把握して、住み分けられる仕組みができればいいのではないでしょうか」。だがもちろん、すぐに実現させるのは難しい。そこで人にとって重要な指針になるのが、厚労省や環境省が発表する、信頼できるデータだ。クマの出没の可能性が高いエリアに足を踏み入れる場合は、クマよけ鈴やクマよけスプレーの携帯を必須とするなど、できる限りの対策を個人でするべきだとNozomiさんは続ける。クマが人里にまで下りてくる現状を、被害の多い秋田県の鈴木健太知事は「異常事態」と訴えた。確かに従来の常識が通用しない、予測不能の状況だからこそ、定量的なデータは対策をするうえで重要だろう。そもそも、なぜ害獣が人里に下りてくるようになったのか。さまざまな要因があるが、その1つが「農家を廃業する人の増加」だと指摘する。「山のすそで農業をしていた人が辞めていって、耕作放棄地がに増えています。近くにはエサになりうるゴミもあるし、温かいし、野生動物にとって耕作放棄地は居心地がいい。だから人里に出てくるようになったのだと思います」。その背景には、農家が直面している厳しい現実がある。体力が必要な仕事に加え、高齢化や後継者不足、肥料の高騰、外的要因に左右される不安定さなど、事業として成立させづらいのだ。志を持って参入する若者もいるが、厳しい現実を知り撤退してしまうことも少なくない。助成制度はあるものの、その存在を知らず、すべての負担を抱えてしまう人もいるという。Nozomiさんはインフルエンサーとして、農家や猟師を志す人への有用な情報発信も、積極的に行っていきたいと話す。「農業や猟師になる方が増えるようなお手伝いをしていきたいです。猟師になったとして、すぐに獲物をたくさん狩るのは難しいと思うけれど、山のすそで活動していただくだけで意味があると思いますから」。とはいえ、Nozomiさんの活動に、必ずしも賛同する人ばかりではない。クマの駆除を行った自治体に「なぜ殺した」「殺すな」とクレームが相次いだ事例があったが、Nozomiさんのもとへも同様の声があったという。具体的には、狩猟をする動画へのコメントで「死ね」「(駆除した動物と)同じ目に遭わせてやる」「内臓を出してやる」などという過激なもの。仕事の合間にメイクをした状態で猟場に入ったことに対しても「命への冒涜だ」とお叱りを受けたこともあった。最初はショックを受け、YouTubeを止めたいと泣きながらメンバーに相談したこともあったが、現在は冷静に向き合えているそうだ。「誹謗中傷をしてくる人たちは、彼らの正義感で動いていただけで、恐らく私を傷つけるつもりはないんです。今は『そういう考えの方もいるよね』と思えるようになりました。私は自分の信念のもとに情報発信をしているので、(考えの違う視聴者とは)お互いの信念のもとに動いていきましょうね、というスルーする力と鈍感力が付きました」。動物の命を奪うという事実だけを見れば、「ひどい」「可哀そう」「止めろ」と思うのは当然だと、Nozomiさんも理解している。駆除に反対・批判をする人が間違っているとは決して思っていないという。そもそも害獣の駆除は、人間が自分たちのために、自分たちの理屈で行うもの。だが視点を変えると、地球の環境に最も悪影響を与えているのは、人間かもしれない。「そう考えると、何が正しくて何が間違っているのか、簡単には結論を出せない問題だと思います」と、Nozomiさんは真剣な面差しで語った。東京で会社員をしていときは、ピンヒールを履いて得意先を回る日々。そこからなぜ猟師に転身したのだろう。もともと自然に囲まれた土地で生まれた。子どものころは、男の子と外で遊ぶことが多く、よくケガもしたという。「傘でアバンストラッシュ(『ダイの大冒険』に登場する必殺技)の練習をしたり、(『ドラゴンボール』の)舞空術の真似をしてみたりと、活発なほうでした。追いかけっこをして転んで骨折したことは何度もあります。過激な遊びばかりしていましたね」。上京して大学を卒業後、会社員に。RPGゲームが好きだったこともあり、ミッションをクリアして成績を上げる営業の仕事は、肌に合っていた。上司や同僚にも恵まれ、営業成績もよかったが、せわしない日々に少しずつ違和感を覚えるようになったという。当時は朝7時に家を出て、満員電車で出勤し、終電間際で帰宅することも珍しくなかった。食事はコンビニで買ったものばかりで、体重は10キロ近く増え、体調を崩しがちになる。そんなNozomiさんをリフレッシュさせてくれたのは、茨城県で農家をする祖父母が送ってくれた米や野菜だった。「祖父と祖母のつくった野菜が本当に美味しかったんです。いつか東京を離れて、自然の中で毎日この野菜を食べて暮らしたい。そう思うようになっていきました」。実際に移住を決めたのは、祖父の死がきっかけだった。祖母1人では農業を続けるのが難しく、廃業せざるをえない。そう聞いたとき、畑を守りたいという思いで決断。体調を崩してから興味があった、ヨガのインストラクター資格を取得し、ヨガ教室の経営と農業の2本柱で生活する計画を立てた。上司に退職の意向を伝えると、安定した仕事を手放すことに驚かれたが、Nozomiさんの意思は変わらなかった。移住後、Nozomiさんの日々は一変した。朝3~4時に起きてヨガ教室のチラシを配り、その後は畑仕事で落花生を育てた。農業の勉強もしつつ、ヨガ教室や事務作業を夜中までこなす。毎日睡眠不足で、忙しさは会社員のころと変わらない。しかも、引っ越しやヨガ教室の開業で貯金を使い果たしていたが、メンタルは驚くほど快適だった。「毎日が楽しくて仕方ありませんでしたね。東京に比べると不便だし、収入も減りましたが、心はすごく自由で満ち足りていました。増えてしまった体重も、いつのまにか適正に戻っていました」。子どものころに戻ったように、大自然の中で楽しく健康的に過ごす日々。畑に植えた落花生も順調に育ったが、いざ収穫の直前に事件が起きた。イノシシによって、落花生がほとんど食い荒らされてしまったのだ。金銭に換算すると、数十万円の損害。だがそれ以上に、丹精込めて育てた作物が荒らされたことに、やりようのない悲しさや悔しさが込み上げてきた。実は近所の畑も、イノシシによって大きな被害を受けていた。だが電気柵などを設置するのは多額の費用がかかり、対策ができないまま廃業してしまう農家も少なくなかった。獣害を駆除する猟師も減少し、高齢化も進んでいる。このままだと10~20年後はどうなってしまうのか……。う考え、Nozomiさんが出した決断は、自身がハンターになることだった。「おばあちゃんの畑を守りたい、自分たちで解決できる力が欲しい。たどり着いた答えが、猟師になることでした。私だけじゃなく、茨城で暮らす3人の孫が全員で狩猟免許を取りました。全員で力を合わせれば何とかなるだろう、という思いでしたね」。狩猟に必要な道具や衣類を買い揃え、ベテラン猟師に教えを請いながら、Nozomiさんたちの狩猟活動が始まった。その中で、忘れられないことがある、という。初めて罠にかかったイノシシの、止め刺し(とどめを刺すこと)を行ったときのことだ。鉄パイプで殴打して気絶させ、ナイフで心臓を突いたのだが、必要以上に苦しませてしまったのだという。「心臓ではなく、肺の辺りを何回も刺してしまったんです。気絶していたイノシシも、痛みで意識が戻って悲鳴を上げ、あちこちから血も出る。パニックになって大号泣する私の目の前で、イノシシは死んでいきました。ものすごく反省して、次のイノシシには絶対に同じ苦しみを与えない、と強く思いました」。害獣指定された動物であっても、当然1つの命であることに変わりない。猟師が駆除をする際も、決して命の尊厳を軽視してはいけない。だからこそ、極力苦しめずに止め刺しをする必要があるのだ。新米だから、という言い訳は許されない。猟師としての意識が大きく成長した出来事だった。もちろん、猟師側にも危険はつきまとう。Nozomiさんは幸い、狩猟中に大きなケガをしたことは無いが、周囲では「イノシシに噛まれて指を数本無くした」「太ももを噛まれて大ケガをした」「ほかの猟師に誤って撃たれてしまった」などの事故が起こっているという。大げさでなく、猟師も命を懸けて、野生動物たちと対峙しているのだ。狩猟を通じて命と向き合ううちに、死生観も変化していったとNozomiさんは明かす。「狩猟を始める前は、私はおばあちゃんになって老衰で死ぬんだろうな、と思っていました。けれど、そうとは限らないんだと考えるようになりました。私が仕掛けた罠の数センチ横に足跡があって、イノシシがかからなかったと思えば、違う罠にかかっていることがある。鉄砲でカモを撃つとき、タイミングが0.1秒ずれると逃げられてしまう。本当に、数センチや0.1秒の差で生き死には決まるんだって痛感しました」。「メメント・モリ(死を忘れるな)」という言葉がある。死はいつか必ず訪れる、だから今を大事に生きよう、という意味合いだ。動物たちの命に向き合い続けているうちに、Nozomiさんも「いつ何が起こるかわからない」「ではいかに日々を生きるか?」と自身に問い続け、生き方そのものが確実に変わっていったのだ。猟師やYouTuberの金銭事情も、Nozomiさんは動画で赤裸々に明かしている。結論から言うと、どちらも赤字だという。Nozomiさんが所属する猟友会の支部では、成獣のイノシシを1頭駆除すると1万円、ウリ坊は5000円の報奨金がもらえる。最も多いシーズンでは16頭を駆除したが、罠に獲物がかかっていないか見回りをするためのガソリン代や、鉄砲の弾、壊れた罠の修復費などで出費が30万~40万円かかった。ちなみに、イノシシを食肉加工業者に販売すると数万~数十万円になるが、東日本大震災の影響で動物が放射能に汚染されている可能性があるため、同県では禁止されている。YouTubeも、動物の血や死骸、あるいは連想させる場面が映ると広告がつかなくなり、結果的に制作費でマイナスになっている。NozomiさんのYouTuberとしての収入は、「高校生のお小遣いくらい」だと言う。登録者約18万人はすごい数字なのだが、ジャンルが狩猟であるというだけで、他ジャンルとは収益で大きな差が生じてしまうのだ。れでも、狩猟もYouTuberも続ける理由を、Nozomiさんはこう説明する。「男の人と比べると、私は体も小さいし力もないので、害獣駆除の現場で大きな戦力にはなれないんです。けれど、代わりに情報発信をすることで、間接的に皆さんの力になれたらと。狩猟免許を取ったけど、何からすればいいのかわからないという人が、私の投稿を見て、最初の1歩を踏み出すきっかけになってくれたらと思います」。そのほかにも、近所の農家の方からの「あなたが畑を守ってくれているのね」「ケガしないように頑張ってね」という応援や、イベントや講演での観客からの「会いたかった」という言葉が糧になっているという。そう話すNozomiさんの表情は、満面の笑顔だ。獣害とされる動物といかに共生するか。それは、命の在り方や、自身の生き方を考えることでもある。住み分けのための根本的な対策も、簡単に実現できるものではない。だからこそ、最適解は何かを問い続け、議論し続ける必要があるのではないか。これは獣害だけの問題ではない。多様性が叫ばれて久しいが、さまざまな国や思想や規律やビジネスモデルで生きる人々と共生するために、我々はお互いのことを理解して尊重しつつ、身を守るために対策をして生きていくべきなのだろうと、取材を通じて心から思えた。

(「いえいえ、エサがあれば冬眠しません」:静岡)
全国的に人里での出没が相次ぎ、県内でも各地で目撃されているクマ。11月27日、先週木曜日、静岡市葵区北沼上では午後9時すぎに、クマと見られる動物1頭が目撃されました。警察には「山の斜面にクマらしい動物がいた。山へ逃げていった」と通報が入りました。静岡市によりますと、住民からは「外で動物の鳴き声が聞こえ、ドアを開けたところ驚いて逃げていった」と連絡があり、目撃場所の近くでは柿の木に複数の爪痕が確認されたといいます。クマを引き寄せる柿の木。近隣住民は不安を抱えて生活しています。静岡市では、11月23日に葵区の常葉大学静岡瀬名キャンパスの近くで、クマとみられる動物が目撃されていて、1日朝にも清水区広瀬で子グマ1頭が目撃されています。4月から11月27日までの県内のクマの目撃件数は146件。すでに昨年度の目撃件数に迫る勢いとなるなか、県も本格的にクマ対策をスタートさせました。藤枝市の県警察学校で行われたクマの「緊急銃猟」の訓練。緊急銃猟とは、クマなどが人の生活圏に侵入し危害の恐れが大きい場合に、自治体の判断でハンターによる捕獲を委託できる制度です。危害防止に緊急が必要なこと、銃猟以外では捕獲が困難なことなど4つの条件をすべてクリアしていることが条件で、県内ではこれまで緊急銃猟が行われたことはありません。そのため、訓練前には…。講師:「肺に穴が開いても走ったりするし、心臓を打ち抜いてもなかなかその場ですぐに止まったりしない場合があります」。行われているのは、ハンター目線でのクマの習性などを共有する講義。講師は、交通課に勤務しながら、現役でハンターも行っている警察官が務めました。100人以上の関係者が参加した講習会。ところが、実際にクマと向き合った経験があるハンターや県職員は少ないのが実態です。静岡県警生活保安課 山内兼光管理官:「訓練だとスムーズにことをなすことができるが、実際の現場となるといろいろな要件があると思う。実際に避難を求めるとしても避難できない住民もいると思うので、どういうところまで気をつかっていくかということが課題になると思う」。静岡でも本格化し始めたクマ対策。一般的にクマは寒さが本格化する12月には冬眠に入るといわれていますが、野生動物の専門家は警鐘を鳴らします。森林・林業研究センター森林育成科 大橋正孝科長:「冬眠といってもクマの場合はヘビやカエルのように(寒さで)動けなくなる冬眠ではなく、むしろ12月中は山里でクマが好みそうなエサがある環境では注意していただくことが必要」。大橋さんによると、クマはエサがなくなることによって冬眠をするため、まだ柿などのエサがとれる場合は冬眠を行わず、12月下旬ごろまでは活動し続けるのではないかといいます。また、人の生活圏でエサを見つけたクマには、ある特徴も。森林・林業研究センター森林育成科 大橋正孝科長:「クマのように学習能力の高い動物は、ある年に山里に出て柿や栗に味を占めると、次の年も(山に他の)エサがあっても出てきてしまうということが起こりえる」。こちらは去年、静岡市清水区の養蜂場で撮影された防犯カメラの映像。1頭のクマが画面左側の蜂箱の様子を見ています。ただ、目の前には電気柵が張られていて中に近づくことはできません。すると、その3日後には、子どもと見られる3頭の子グマが同じ場所に。3日前に現れたとみられる成獣のクマも現れ、周りのポールを破壊しました。電気柵のおかげでこの日は蜂箱への被害はなかったそうですが、クマのエサに対する執着性がうかがえます。森林・林業研究センター森林育成科 大橋正孝科長:「動物用の飼料や犬のペットフード、そうしたにおいのするもの、あるいは残飯やごみの処理も屋外にあればクマがついてしまった事例もあるので、そうしたものも注意していただく必要があると思う」。県は「クマ出没マップ」を随時更新していますが、大橋さんはクマの数と生息エリアが広がってきていると分析しています。そうした中、気を付けるべきこととは。森林・林業研究センター森林育成科 大橋正孝科長:「クマと出会わないようにすることが大事。目撃があった近くでは行動はなるべく昼間にする。クマは活発に行動するのが朝と夕方が一番活発に動くといわれているし、そういう時間にあまり出歩かないとか、エサが目的で出ていることが分かれば、それを取り除くとか」。

(40歳女性マタギ「危険だから駆除せざるを得ないけど」山と町の境界の大切さを語る:山形)
各地の人里へクマが出没するニュースが連日のように報じられています。山形県小国町でもその影響は深刻で、町の中心部にまで姿を現すように。町役場に勤務しながらマタギとして活動する蛯原紘子さん(40)は、クマとの共生について知ってほしいことがあると言います。── 蛯原さんは山形県小国町役場に勤務しながら、クマなどを狩るマタギとしても活動されています。最近は人が住む町中にもクマが多数出現しています。マタギから見て、こうした状況をどのように感じていますか?蛯原さん:私のまわりでも「家の近くでクマを見かけた」という話をよく耳にします。クマは本来、臆病な性格で人を恐れる生き物です。それがこんなに人里に現れるというのは、異常な状況だと思います。今年の夏の猛暑の影響がとても大きかったようです。雨が降らなかったので、どんぐりの実をはじめとした、クマのエサになるものがほとんど実っていないようです。これまでも山の実りが悪い年はありました。それでもなんとかクマたちが食べられるだけのぶんはあったんです。でも今年に限っては桁違いの不作で…。例年とあきらかに違うのは、体の大きな強いオスも町中に下りてきていること。今年、駆除されたクマを見ると、100キロくらいのけっこう大きい個体が多いです。これまでであれば、不作の年は強いオスが山の中のわずかな食べ物を独り占めしていました。山を下りてきていたのは、勝ち目のない弱い個体や親子連れだったんです。今年のように大きな個体のクマまでが現れているとなると、個体の大きさに関係なく町に出てきていて、「山にクマがいない」状態という可能性もありそうです。── クマにとっても深刻な状況ですね。蛯原さん:そうなんです。とはいえ「かわいそうだから駆除しない」というのは非常に危険です。全国で、すでに悲しい事故も起きています。一度、畑や果樹へ来たクマは「ここに来たら食べ物がある」と、覚えてしまうんです。とくに親子のクマだと、子どもが「ここがエサ場だ。山の食べ物よりもこっちのほうがおいしい」と学習します。子どもを駆除せず見逃すと、成長したときにエサを求めて簡単に山から出てきてしまいます。人間とクマの住む場所はきちんと線引きをしなければ共存できません。人の住む場所に現れ、人を恐れなくなったクマは、結局は駆除せざるを得なくなります。それは、クマのためにも、人のためにも悲しいことです。長年、クマと人の間で保たれていた力関係が崩れている気がします。── 駆除するのは、マタギの方々にとってもつらい選択ですよね。蛯原さん:そうなんです。クマだけでなくサルやイノシシなども人の住む場所にたくさん現れます。放っておくと畑も荒らされるし、危険だから駆除せざるを得ません。でも、マタギだって街に出た野生動物を何も利用せずに、ただ駆除するのは本意ではありません。自然への畏怖の念を忘れず、自然とともに生きるのがマタギです。本当はよけいな殺生はしたくないし、恵みを与えてくれる山から、必要なぶんだけ狩らせていただくのが、本来の姿です。── 「自然とともに生きる」というのは、人間の本来の姿のように感じます。蛯原さん:最近はだいぶ簡略化されてきてはいますが、山でクマを仕留めたら、儀式を行うんです。神さまに対して獲物をいただいたことへの感謝の祈りを捧げます。命は決してムダにしません。山で獲ったクマは、その場で解体し、肉は狩りに参加した人の数だけ均等に測り、持ち帰ります。肉はきちんと食べるし、昔は毛皮を敷物や手袋にするなど、すべてを活用していました。── クマの肉はどんな味がするのでしょうか?蛯原さん:それほど臭みもなく、意外と食べやすいです。かなり脂がのっていて、鍋にすると1センチくらいの脂の層ができるのが特徴です。わりとサラッとした脂で、私はマタギから「この脂がおいしい」と教えられ、それが当たり前だと思っています。でも脂がきついと言う人も多いです。クマを食べなれない人は、脂を煮こぼしてから食べるそうです。チャーシューにしてもおいしいですよ。クマはすべて自家消費しています。でも、有害捕獲で獲られたイノシシやシカは、数が多すぎて…。消費が追いつかない場合は廃棄されてしまいます。もっとジビエとして流通させる方法があればいいのに…と思います。でも、一般に流通させるには、一定の質を保って安定した量を供給する必要があるから難しいんですよね。── 言われてみれば、必要な量を確保するのが難しい年もあるはずですよね。蛯原さん:マタギになるまでは、1年を通してスーパーで一定の品質の肉や魚が供給されているのが、ふつうだと思っていました。でも、マタギになり野生動物を食べるようになると、その年の山の状況によって、肉質が変わると気づいたんです。秋に木の実がよく成った年は、クマもたくさん食べるから皮下脂肪をたっぷりたくわえ、脂がのっています。イノシシやシカも同じです。秋から冬にかけては脂がのっていますが、夏は逆に脂がないので味気ないです。食べるもので体が変化するのは当たり前のはず。でも、現代の日本に生きていると、同じ動物ならいつも味も同じと考えがち。毎年、肉質が変わることのほうに驚いてしまうんですよね。物に不自由しない便利な世の中になったのは、たくさんの人が努力をしてくれているおかげです。いっぽうで、管理が行き届くあまり、人間も自然のなかで生きていることを忘れてしまった気もします。── もしかすると、自然との向き合い方を見直すタイミングに来ているのかもしれません。蛯原さん:そうですね。もしイノシシやシカの肉が一般に流通した場合「今年もジビエが楽しめる季節になったな」「その年によって肉の味が違うのは当たり前。今年はどんな味だろう?」と、受け入れてもらえたらといいなと思います。そして、一人ひとりが自然のなかの一員だと考えるようになると、環境は変わってくるのかもしれません。クマが出現しやすい原因のひとつに、山と町の境目がなくなっていることも挙げられます。以前は林業や農業に携わる人が、草刈りをしたり木を間引いたりすることで、山の手入れができていたんです。住民もいまよりもっと山を利用することが多かったですし、人里の周囲はヤブもなく、見晴らしがよかったです。だからクマも人身を隠す場所がありませんでしたし、人に気づけば逃げていきました。自然と「ここから先は行ってはいけない場所だ」と理解できていて、境界が守られていたんですね。それが最近は山の利用が減り、高齢化も進んでいるから、手入れをする人が少なくなりました。山がどんどん荒れているんです。境界を守るためには、山を手入れする必要もあります。たとえば、その土地に住んでいる人みんなで協力し合って山際や川沿いのヤブを刈るなどすれば、状況も変化するのではないかなと思います。山と里の境目は明確になるし、一部の人だけが負担を負うことがなくなります。自分たちの土地は自分たちで守るという意識が大切です。それが町を守ることにつながると思います。

(雪降り積もる中“クマ痕跡”ハンター語る課題)
雪の中を走るクマが撮影された近くの温泉街では4日朝、男性が襲われる被害がありました。雪が降り積もってもなお、クマ被害が相次いでいます。雪が積もる師走の北国。いまだクマへの警戒は続いています。先週、箱わなで380キロのヒグマが捕獲された北海道苫前町。この巨大なヒグマがいなくなっても住民の不安は消えていません。苫前町猟友会 林豊行会長(76)「(雪が)15センチくらいあるのかな」。巨大ヒグマ捕獲の直後にも、ここから2キロ離れた地点でヒグマの痕跡が確認されているといいます。林豊行会長「まだ近くの人は心配でしょう」。長野県では4日、雪道を歩くツキノワグマの姿が…。列島は“今季最強寒気”が流れ込んだにもかかわらず、いまだ冬眠しないクマが街中をうろつく異常事態です。住民は雪かきの対応に追われながらクマにも警戒しなくてはなりません。クマが現れたのは長野県野沢温泉村。13カ所の外湯巡りなどが楽しめる温泉街ですが、午前6時半ごろ、雪かきをしていた78歳の男性が突然、クマに襲われました。この写真は、男性が襲われた場所から100メートルほど離れた所で撮影されました。男性が襲われてからわずか15分後に現れたといい、同じ個体とみられます。辺り一面、銀世界となった岩手県奥州市。降り積もった雪に赤くにじむのは血です。吹雪のなか、60代女性がクマに襲われました。富山市では新聞配達員の男女2人がクマに襲われたところ、近隣住民の勇気ある行動によって助けられたといいます。襲われた新聞配達員を助けた家の人はクマと遭遇し、パンチを2発食らわせて撃退したということです。配達員の2人は病院に搬送されるも、意識はあったということです。雪が降っても人身被害が相次ぐなか、訪ねたのは日本海側に位置する北海道の苫前町です。380キロの巨大ヒグマを捕獲したベテランハンターの林さんに4日、同行させてもらいました。積もる雪が根雪になるギリギリまで箱わなの設置を続けているといいます。近年増える、人とクマのあつれき。対応に追われるハンターが語るのは2年前に遭遇したあるヒグマのエピソードです。林豊行会長「人を見ても恐れないクマ」。当時、クマの目撃情報を受けて駆け付けると…。デントコーンの畑の近く。車の存在に気が付いても近付いてくるヒグマの姿が。箱わなを設置して捕獲しました。ヒグマの体の中から出てきたのは見覚えのない散弾銃の弾丸です。撃たれてもなお人里に現れたヒグマ。それだけ、人里の食べ物に執着していたのかもしれません。林豊行会長「山のクマも飽和状態だと…」。う語るハンターの林さんが根本を解決するために必要だと感じているのが「春期管理捕獲」の強化です。政府が取りまとめた対策パッケージでも増えすぎたクマの個体数の削減・管理が必要とされています。そんななかで北海道が行う「春期管理捕獲」はまだ雪が残る春、2月から5月にかけて人里に現れるクマの管理を目的に捕獲する活動です。林豊行会長「(春に行うメリット)足跡は雪があった方が分かりやすい」。また、視界が開けているためハンターにとっても比較的安全。元は1990年に北海道で廃止された「春グマ駆除」が近年の頭数増加を受け、2年前に再開された形です。ただ、苫前町では人手不足で実施できていません。林さんが1人で稼働する日も多いという苫前町猟友会。会員数は現在9人です。会員の多くは農家で、春は繁忙期のため仮に予算がついたとしても人の確保は難しいといいます。林豊行会長「(猟友会の)ほとんどが農家の責任を持って先頭になって働かないといけない人たち。その報酬のために自分の仕事を置いて山に入れる人はまずいない」。北海道が先月発表した調査では、春期管理捕獲を今年実施しなかった自治体は回答を得た160のうち110に上りました。道の担当者は、新たな人材を育成していくためにもいかに多くの自治体に取り組んでもらえるかを一番の課題に挙げています。

(ハンターが明かす「責任」)
全国でクマの出没が相次ぎ、過去最悪レベルの被害を出している。駆除を巡って議論が巻き起こり、クマ肉料理が話題を呼ぶなど、ニュース報道も過熱。公務員として働きながら、山の中での狩猟をライフワークにしているハンターは、一連の問題をどう捉えているのか。12月に入って本格化する冬眠の時期でも、油断できないという。過去にツキノワグマ2頭を仕留めた経験を持つ40代の男性ハンターが取材に応じ、本音を明かした。「山の神様に感謝しながら、山の恵みをいただく。私たちハンターはこの哲学を大事に、常に覚悟をしながら活動しています」。25歳の時から山に入っている男性ハンターは、狩猟の世界の基本的な姿勢について、こう語る。ハンターの父親の背中を見て育った。「私が子どもの頃、休みの日に父親が鉄砲を持って近所の里山に鳥を撃ちに行っていました。小学生の時、自宅周辺は雑木林と田畑が広がる田舎で、父親と一緒に里山を歩いた記憶が残っています」。これが原点だ。公務員の仕事に就き、社会人になって、必要な狩猟免許と銃砲所持許可を取得。冬場に設定される狩猟期間中の休みの日に、父親とハンター仲間たちのグループに交ざって猟場に出かけるようになった。初めて仕留めたのはニホンジカで、狩猟や解体の技術を究めている。20年以上の狩猟歴で、猟銃で仕留めたクマは2頭。ツキノワグマで、いずれも東日本の山中でのことだ。「1頭目は30歳前後の時、親離れをした子グマでした。2頭目は30代半ばの時で、体重150キロ近くあった成獣のオスでした」。2頭目を撃った時のことは、鮮明に覚えている。父親と一緒に行動して、山中の持ち場に向かう途中のことだった。「父の持ち場で別れた直後、ニホンジカが8、9頭ほど走ってきたんです。車から1時間半も歩く場所だったので、シカを仕留めても運ぶのも大変だから見逃そうと、2人で申し合わせていました。そのシカの列の後ろにイノシシが来ました。イノシシは父親と2人で撃ちました」しかし、弾がかすっただけ。血を垂らしながら逃げるイノシシを追いかけたが、見失った。その瞬間だった。「逃げられたと思ったら、また何か足音が近付いてきたんです。イノシシとすれ違うような感じで、クマがこちらに走ってきました」その時、男性は斜面の低い位置にいて、クマは高い位置にいた。「マタギの世界では、自分より高い斜面にいるクマを撃つなと言われています。撃たれたクマが斜面を転がり落ちながら反撃してくることがあるので、危ないんです」。瞬時に「この距離なら避けられる」と判断。狙いを定めて引き金を引いた。「弾が急所に当たると、クマは『踊り』をします。立ち上がって前足で頭をかきむしるように暴れる動作です。踊ったので、『これは当たっている』と判断しましたが、もう1発を撃ち込みました」。致命傷を負って転がり落ちるクマ。直撃を避けるために男性は冷静に横へ逃げた。「クマはそのまま、私が立っていたところを通過して斜面を転がり落ちていって、斜面の下にいた父の目の前であおむけに倒れました。父も銃を構えていましたが、お腹を見せて倒れるということは、もう息絶えている証拠です」。一瞬の出来事だった。仕留めた獣はクマを含めて、グループのみんなで分け合って食べるのが慣例だ。2頭目の巨大クマは水煮で食べた。「大きな鍋で煮るのですが、普通の水の状態からお肉を入れて、沸騰させないように少しずつ温度を上げていきます。しっかり中まで熱が伝わるのを確認したところで食べます。味付けは塩だけです。まさに、クマの味がします」今年の秋、串焼きなどクマ肉のジビエ料理がにわかに注目を集めた。男性は「有害駆除で捕獲されたものを、捨てるのはもったいないから食べようという考えは理解できます。狩猟の場合は『山の神様からいただいた恵み』という考え方で、余すところなく食べる。昔の人は仕留めた動物の毛皮で着物を作ったりもして利用していました。今でも私はその心がけを大切にしています」との受け止めを語る。クマの駆除に対して、「かわいそう」など批判の声も上がっている。男性は有害駆除の出動経験はあるものの、本業の仕事があるため多くはない。ライフワーク・趣味の範囲で狩猟に取り組んでいるが、山で生きる人間の一人として、思うことがあるという。「日本列島という狭い国土の中で、人間と野生動物が、生きていくための陣取り合戦をしていると私は考えています。その中に、人間と動物の境界線が生まれるわけです。かつては農山村の人たちが、林業や農業という産業活動を続けることで里山が生まれ、その境界線に幅を持たせていました。でも今は、人口減少社会となり、その境界線が細い1本の線になってしまい、人間が住む都市のすぐ傍らにまで迫ってきました」人間が住む世界と動物の領域。細くなってしまった境界線を互いに踏み越えると、命の危険が生じてしまう。「境界線に幅があった頃は、無用な殺生は少なかったと思います。しかし、線が細くなったことで、次々と衝突が起きている。命のやり取りが起きてしまっているのではないでしょうか。動物をかわいがる気持ちはとても大切ですが、今現在は、『クマがかわいそう』とクマを擬人化して人間の感情を乗せるような状況ではないと考えています」と、自身の見解を明かす。そのうえで、駆除への批判について、率直な思いを口にした。「人と野生動物が隣り合ってしまった現状では、駆除は必要な取り組みです。その最前線の人たちに、『何やってんだ』と言って『悪』を背負わせてしまうのは、ちょっと行き過ぎじゃないかと思います。殺すことが楽しくて、命を奪うためだけに殺すということではありません。地域住民の安全を守るため、地域のコミュニティーを守るために、仕方なく、本意ではないところでやっている人が多いのではないでしょうか。猟友会の仲間たちと話していても、みんなそういう思いを持っています」。クマは一般的に12月から積雪と共に冬眠に入っていくと言われているが、実態はどうなのか。「マタギの世界では、どんなに遅い個体でも、冬至(2025年は12月22日)までには冬眠すると言われています。一方で、お正月過ぎまで山を歩き回るクマもいるとの専門家の調査もあります」。世間的なイメージとの“違い”があるといい、「冬眠と言うと、穴にこもってぐっすり寝込んで出てこないイメージを持たれるかと思いますが、『冬ごもり』という表現の方が正しいと思います。食べ物が少なくなる冬の時期に、無駄なエネルギーを使わないように穴の中でおとなしくじっとしている。呼吸の回数が減ったり、体温が下がったりはしますが、ずっと眠っているわけではありません。一度入った穴でも、居心地が悪かったりすると出てきて移動するケースもあります。『もう眠り込んだから大丈夫』ではなく、一定の注意が必要だと思います」と指摘する。今冬以降のクマの動向は未知数だ。人間が山に入ることのリスクも高まっている。それでも男性は、ハンターとしての覚悟を強調。「山の中を自分の足で歩いて、野生動物と真剣に対峙(たいじ)する。捕獲した後は丸ごと山から下ろしてくる。解体する時も、ちゃんと手入れの行き届いた道具を使って、肉を無駄なく取り出す。そして無駄なく食べる。命に向き合って、感謝をすること。そのことを忘れずに、引き金を引いて仕留めた責任をしっかりと感じながら、これからも狩猟を続けていこうと思っています」と話している。

(冬眠するはずが…寒気襲来でクマが家に侵入?)
今季一番の寒気が列島を襲うなか、クマの目撃情報が止まりません。専門家は「これから寒い季節になると、家の中に侵入するクマが増えるのでは」と警鐘を鳴らしています。辺りは真っ白に染まり、数十センチの積雪も確認できます。青森県酸ケ湯では50センチ以上の積雪を観測。北海道猟友会砂川支部 池上治男支部長「12月3日。外は雪です、一面真っ白。きのう全く雪がなかったのに、また一晩で雪が積もりました」。一面、銀世界となった北海道砂川市では、3日も猟友会が早朝から町を見回ります。池上治男支部長「上砂川町、箱わな作動していません」。朝はヒグマの痕跡は確認されませんでした。わなの中で激しく暴れるクマ。箱わなも大きく揺れています。この映像が撮影された岩手県盛岡市では、冬本番を迎えてもなお異常事態が続いています。盛岡猟友会 稲葉順一事務局長「毎日市街地に出てきているクマが複数いる。もう毎日」。今年は過去最多の122頭のクマを捕獲している盛岡市。3頭の親子グマが同時に箱わなにかかる珍しいケースも。母グマは時折、子グマを守るような仕草も見せます。師走でも毎日のようにクマが出没。3日朝もクマは目撃されています。その場所をよく見ると、山からは比較的距離のある街の中心部です。稲葉順一事務局長「民家の周りにある柿の木に取り残しや取らないところを狙って、人里に下りてくるクマが現在のクマ」。冬を迎え、今まで以上に人に近付いているクマ。その瞬間を捉えた映像が…。秋田市の住宅に設置された防犯カメラに映ったクマ。時刻は午後5時半すぎです。クマは壁際で立ち上がる様子を見せます。この時、住民は一部始終を車の中から撮影していました。クマは帰宅した住人をじっと見つめています。秋田市では12月に入ってからもクマの目撃情報がすでに25件。1日、目撃されたのはJR秋田駅から車で10分ほどの住宅街です。撮影者は子どもを学校に迎えに行った帰りだったといいます。住人によると、クマは子グマとみられ、クリスマス用に飾り付けてあったリースのリンゴを食べていたといいます。住宅に設置された防犯カメラの映像を見てみると、クマは玄関前でヒメリンゴをしばらく食べたのちに、住人が運転する車のライトに驚いた様子で、近くにあった台を倒して立ち去りました。冬眠を控えているはずのクマが、なぜこの時期にこれだけ人に近付くのでしょうか。過去に類を見ない出没数のクマの餌(えさ)は今。岩手大学 山内貴義准教授「だんだん季節が過ぎていって、標高の高い農村部食べ物がない。標高が低い畑などリンゴ、カキ。東北を見ると秋田市・盛岡市などかなり人口が多い所、標高が低く餌が豊富に残っている。そういった都市部に現れているのが現状だと思う」。専門家は、庭先のカキなどの食べ物がなくなった後がさらに危険だといいます。山内貴義准教授「カキが終わって食べ物がなくなった時に、今度は家の中に入って食べ物を物色し始めたりとか、そういった行動を起こすのではないかと心配している」。

(クマ出没急増で猟友会に負担集中、ベテランハンター連日出動:富山)
県内では今年、クマの出没が相次いで確認されています。猟友会の出動も増えていますが、近年は会員数や経験者の減少により現場に出るハンターの負担が大きくなっています。この道50年以上のベテランハンターに同行し、クマ対策の課題を取材しました。長谷川大記者のリポートです。辺りがまだ薄暗い午前6時半。ハンターの一日はすでに始まっています。八尾町猟友会長 佐々木孝さん「7時半に小長谷いうところで待ち合わせ。はじめ7時だったが。ほんで今もうそろそろ40分になったら出ようかなと思っとったん。クマ情報で確認に行くがですよ」。富山市の八尾地域で猟友会長を務める佐々木孝さん(77)。この道54年のベテランハンターです。八尾町猟友会長 佐々木孝さん「川沿いで、この下に(クマが)よく出た。この河原に何年か前もよう出たしね」。この日は前日の夜、住民から「クマのふんらしきものを見つけた」と富山市に通報があり、佐々木さんのもとに調査依頼が届きました。家の裏手に落ちていた動物のふん。八尾町猟友会長 佐々木孝さん「タヌキかなんかの(ふん)。カキの種は入っとっけどクマだったらまだ子どもでもこんな太いが」。調査は、動物に詳しいハンターなどが痕跡を確認します。八尾町猟友会長 佐々木孝さん「ふんの中にカキの種があるもんだから『いやこれはクマでねえか』言うて心配しとられるんやちゃ。安心してもらうときは『これはクマのふんじゃないですよ』と言えば家の人も安心して過ごせる」。富山市は、クマの出没情報があれば原則、地元の猟友会とともに現地調査を行っています。今年はクマの出没が相次ぎ、八尾地域での出没件数は過去10年で最多の98件にのぼりました。痕跡がクマではなかった場合は件数に含まれないため、猟友会が同行する現地調査の回数は出没件数を上回ります。八尾地域での調査の大半に自ら足を運ぶ佐々木さん。この日も、クマのふんらしきものがあったとの通報を受け、現場に駆け付けます。KNBカメラマン「ついさっきですよね?」。八尾町猟友会長 佐々木孝さん「いま、いま。すぐ(前)だ。ひょっとしたらそう(通報者)かもしれんね」「弱ったね。タヌキだね。タヌキのふん」。通報した女性「タヌキですか?よかった」「『クマ出る』ってずっとおびえてるからもうクマにしか見えませんでした。もうホッとしました」。心な暮らしのために欠かせない猟友会の存在。しかし、会員数の維持が喫緊の課題です。県内の会員は、1978年の2175人をピークに右肩下がりで推移。2013年には693人と過去最少となりました。その後、狩猟免許試験の実施回数を増やすなどの取り組みにより増加に転じ、去年は768人まで持ち直しましたが、半数を60歳以上が占めています。八尾地域の猟友会もかつては100人を超えるハンターが所属していましたが、現在は50人。そして、その全員がクマの対応に当たれるわけではありません。八尾町猟友会長 佐々木孝さん「やっぱりね、会社行っておられるがに、わざわざ休んでその現場行って(というのは難しい)。本当は、その人らも順番に出ていただければいいんだけど」。富山市は、クマの出没に関する猟友会の活動費として、出動1回につき3000円を支給しています。しかし、会社勤めの人が平日の日中に対応することは難しく、現地調査は自営業や定年退職後のハンターが中心となっています。そして、こんな課題も。「パン!」。自治体の判断で銃器によるクマなどの駆除が可能となる緊急銃猟が、この秋から始まりました。八尾地域の猟友会では、これまでの実績や経験、ライフル銃の所持などから判断し、緊急銃猟に対応できるハンターは50人のうち9人としています。不測の事態に対応できるこの9人が結果的にクマ出没時の現地調査を担うことが多く、負担が集中しています。八尾町猟友会長 佐々木孝さん「今まで1か月ほどの間に携帯にかかってこなかったのが1日ぐらいだけやないかなと思う。その倍くらいの人数で回していければ、ローテーションみたいになれば数出んでもいいしちょっと楽になるかなという気持ちもありますわ」。佐々木さんは8年前、猟友会の活動中にクマに襲われ、顔に大けがをしました。その脅威を肌で感じながらも最前線で猟友会の活動を続けています。八尾町猟友会長 佐々木孝さん「いちばんやっぱりみなさんの安全を考えるわけですから。何か貢献できることがあれば自分らもますます信用を得たいなという思い」。安心して暮らせる地域を守るために、猟友会の活動をどう支えていくか、地域全体で取り組むべき課題です。

(クマ緊急銃猟、住宅地近くの茂みにとどまる:新潟)
クマが住宅地付近の茂みにとどまり危険が及ぶ恐れがあるとして、十日町市は2日、自治体の判断で発砲を可能とする「緊急銃猟」を実施し、クマ1頭を駆除した。十日町市での緊急銃猟実施は初めて。県によると、県内10例目。市によると、2日午後3時前、十日町市中条で「クマが畑の柿の木に登っているのを見た」と目撃者から市に通報があった。地元猟友会や十日町署、市職員らが、畑の脇の茂みにいるクマを確認。

(民家小屋、緊急猟銃視野に警戒続く:秋田)
2日、横手市で民家の小屋にクマがとどまり続けています。市は捕獲に向けて小屋の入り口におりを設置した他、緊急銃猟も視野に警戒を続けています。

(小学校近くでクマ目撃相次ぐ、保護者が車送迎するなど警戒:福島)
福島県須賀川市の小学校の近くでクマの目撃が相次ぎ、保護者が車で校庭まで児童を送迎するなど警戒が続いています。須賀川市の仁井田小学校は近くでクマの目撃が相次いだことを受け、2日は保護者に車での送迎を呼び掛けて、子どもたちは校庭で車から降りて登校していました。警察によりますと、体長1メートルほどのクマが小学校の正門の近くで3回目撃されていて、1日夜から2日未明にかけては警戒にあたる警察官が柿の木に登っているクマを確認していました。クマはその後、行方が分からなくなっていて、警察などが警戒を続けています。

(自転車に乗っていた男性がけが「クマのようなものに襲われ」:福島)
12月2日、福島県福島市野田町6丁目で男性がクマのようなものに襲われた。消防と警察によると、午後6時すぎ、男性から「荒川桜づつみ公園を自転車で走っていたところクマのようなものに襲われた」などと119番通報があった。男性は意識があり会話が可能な状態だという。警察は付近の状況や男性のけがの状態などから「クマではない可能性もある」としている。男性が自転車を運転中に転倒したものとして、転倒の原因を調べている。

(イノシシと衝突、博多行き「みどり62号」:長崎)
JR九州によりますと、2日午後9時前、佐世保発博多行きの「みどり62号」がイノシシと衝突したということです。これにより、ダイヤの乱れが発生しています。

(「雪が降ってもクマ出没のおそれあり」:山形)
県内は雪が降ったものの、4日も各地でクマの目撃が相次いだ。4日午前6時50分ごろ、三川町助川の寺の近くで、近くに住む住民が体長約1メートルのクマを見つけて110番通報した。クマは寺から北側の農地の方へ逃げて行った。警察がその後、周囲をパトロールしたが、クマの姿は見つからなかったという。山形市では、4日正午ごろ、車を運転していた人が釈迦堂地内の馬見ヶ崎川河川敷で、茂みの中を歩くクマ1頭を見つけて市に通報した。大きさは不明だが、クマは川の上流へ向かって歩いていたという。県内ではこのほか、鶴岡市などでもクマの目撃情報が寄せられている。県などは「雪が降ってもクマは出没するおそれがある」として、県民に対し警戒するよう呼びかけている。

(網地島のイノシシ、捕獲:宮城)
石巻市の離島・網地島で11月、イノシシが目撃されたことを受け、市と県猟友会石巻支部が島内に設置したくくりわなの一つにメスのイノシシ1頭がかかったことが分かった。くくりわなは同月28日に島内5カ所に設置。29日午前6時ごろ、イノシシがかかっているのが発見された。かかったのは体重53キロのメスで、猟友会によって駆除されたという。島内では同19日に最初の目撃があり、20日に住民に撮影されていた。その個体と捕獲された個体が同一かは不明。以前の目撃情報などを基にすると、サイズに差があることから、複数頭が島に渡った可能性を指摘する声もある。わなにかかった個体を確認した長渡中区長の高橋秀一郎さん(66)は「1頭は捕獲されたが、他にもいる可能性があり、畑に行きづらい状況が続いている」と島民の不安を代弁する。市ニホンジカ対策室では、島に動物カメラを2台貸与して生息の有無を確認しつつ、状況を注視していくという。

(イノシシ肉のキーマカレーを試食:和歌山)
和歌山県産のイノシシやシカの肉を使った特別メニューが楽しめる「わかやまジビエフェスタ」が1日、始まった。料理人が工夫を凝らしたジビエ料理を88店舗で販売する。県庁北別館の「きいちゃん食堂」ではイノシシ肉のキーマカレーとコロッケのセットが提供され、試食した宮崎泉知事は「歯応えよく、臭みもない。みなさんもジビエを楽しんでほしい」とPRした。ジビエは狩猟で得た野生鳥獣の食肉の意味。令和6年度に県内で捕獲されたイノシシは1万2576頭、シカは1万4939頭。このうちジビエとして処理されたのは計2084頭(7・6%)にとどまる。同フェスタはジビエの販路開拓や飲食店への誘客、狩猟による鳥獣の有効活用が目的で15回目。来年2月28日まで、鍋やコース料理、ホットドッグなどのジビエ料理が販売される。期間中、きいちゃん食堂ではイノシシ肉のキーマカレーとコロッケのセット(990円)を提供する。営業は午前10時~午後1時(オーダーストップは午後0時45分)。スタンプラリーも行われ、抽選で県内宿泊施設のペア宿泊券などの賞品も当たる。

(「とっとりジビエレストランフェア2025」:鳥取)
料理王国(発行:株式会社JFLAホールディングス)は鳥取県より委託を受け、11月17日(月)~30日(日)の期間、東京・大阪の名店10店舗で「とっとりジビエレストランフェア2025」を開催いたします!自然豊かな鳥取の山々に生息する野生のシカは、豊富な木の実などの餌ときれいな雪解け水で育つことによる雑味のないクリアな味わいと高低差のある急斜面を駆けることにより、運動量が多く、肉が締まってしなやかで上品でクセのない風味が特徴です。さらに鳥取県は、恵まれた自然の中で育ったシカの捕獲してからの処理に力を入れており、「鳥取県HACCP適合施設認定制度」に基づいて、仕留めてから解体されるまでのすべてのプロセスが速やかに衛生的に行われることで、臭みのないジビエを提供できるようになっています。

(元地域おこし協力隊がジビエ関連の実店舗の営業を開始:高知)
最近、ジビエのペットフードが注目されていることをご存じでしょうか?大豊町の地域おこし協力隊卒業者でもある岡本裕太(ゆうた)さんがペットフード向けのショップ「ジビエラボ」を営業を開始したとの情報を入手!今回は、岡本さんが毎週金曜日に営業している店舗へ訪れてみました。岡本さんは2021年11月に地域おこし協力隊(以下協力隊と記載)として、大豊町へ移住をしました。ミッションはジビエの販路拡大や商品開発。活動期間中に「ジビエラボ」という自身のブランドを立ち上げました。岡本さんは協力隊の3年間の任期を終え、現在も大豊町で暮らしています。岡本さんは「ジビエラボ」というブランドを作り、大豊の山中で捕れた野生のイノシシや鹿などを使用してペットフードやアクセサリーを製造し販売。以前は、イベントなどを中心に活動していましたが、現在は毎週金曜日に大豊町穴内地区にある「あなない出愛ひろば」にて販売しています。店内ではジビエを使用したペットフードを中心に、自身で加工したアクセサリーも取り揃え、ペットがいない人でも楽しめる店舗となっています。また、地域の人の憩いの場にもなってほしいという思いからコーヒーとホットサンドも吉野川を見ながらいただけます。岡本さんは元々ジビエの食品開発を活動のミッションとしていました。しかし、食品開発をしているうちに骨や内臓などが破棄となることが多く、その点に違和感を感じたそうです。岡本さん曰く「協力隊になった当初はジビエの食品販売などを考えていましたが、実際にジビエの加工などを行ってみると骨など食品ロスの多さにビックリしました。」と話されていました。そんな、食品ロスをなくすため、骨などをどうやったら利用できるのか考えた末に、ジビエグッズの販売をはじめたとのことでした。岡本さんは町内でもジビエ関係の仕事を現在でもしています。ペット関連商品は地道な努力をしていたこともありリピーターも増えているそうです。今後も、活動の幅を広げて将来的には自分の加工場や店舗を持つことが夢だと。ちなみにジビエラボの由来は、好きな芸能人のコンサートの名前を参考にしたとのことで、ちょっとお茶目な部分も感じられました。岡本さんの営業している「ジビエラボ」は毎週金曜日に大豊町穴内地区にある国道32号線沿いの「あなない出愛いのひろば」で営業を行っています。ジビエグッズ以外にも趣味のコーヒーやホットサンドもあり、吉野川を見ながらいただいたりテイクアウトもできます。ドライブついでに、訪れてみてはどうでしょうか。店舗は毎週金曜日に営業していますが、一人で切り盛りをしているため、お休みの際はインスタグラムで告知をするとのことでした。訪れる前にインスタグラムの確認をお忘れなく!

(エゾシカ革、名刺入れに:北海道)
道東のエゾシカを活用した鹿革製品の開発を進める釧路市北大通8の文具店「山一佐藤紙店」は、製品化の第1弾として鹿革の名刺入れを作った。既に鹿革製造の企画運営を行う新会社「エゾシカル」を設立しており、これまで利用されずに捨てられてきた皮を使った製品をブランド化して流通させたい考え。

(クマ出没:宮城)
富谷市によると、4日午後2時45分ごろ、富谷市富谷源内にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、3日午後6時10分ごろ、仙台市青葉区川内にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、3日、仙台市太白区秋保町長袋清水久保にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、3日午前1時50分ごろ、仙台市青葉区芋沢横向山にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、3日午前10時30分ごろ、仙台市太白区茂庭門野にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、3日午前7時45分ごろ、仙台市太白区秋保町長袋摩賀院山にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、2日午後7時ごろ、仙台市泉区北中山4丁目にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、2日午後3時50分ごろ、仙台市泉区実沢鼻毛にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、1日午後9時ごろ、仙台市泉区実沢二ノ関屋敷にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、1日午後7時ごろ、仙台市太白区郡山行新田にクマが出没しました。

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12/2
(紛失の散弾銃を川の中で発見:青森)
1日三戸町の熊原川で狩猟をしていた男性が散弾銃を川に落とし紛失しました。警察が捜索した結果2日午後銃は見つかりました。三戸警察署によりますと、きのう午後4時45分ごろ三戸町斗内の熊原川でカモ猟をしていた男性が、誤って散弾銃1丁を水中に落としたと知人を介して警察に届け出ました。警察官が確認したところ散弾銃を落としたのは県南地方に住む60代の男性で、猟銃所持の許可は持っていました。男性はきのう午前11時ごろ撃ち落としたカモを拾おうとして、誤って持っていた散弾銃を川に水没させて見失ったということです。散弾銃は長さ1.1メートルで銃弾が装填された状態だったということです。警察は紛失した場所の周辺を捜索していましたが、きょう午後2時まえに川の中から発見されたということです。警察が当時の状況を詳しく調べています。

(陸上自衛隊による活動が終了、のべ900人以上の隊員が参加:秋田)
クマ対応をめぐっては陸上自衛隊による市町村や猟友会の支援する活動が、30日に終了しました。期間中、のべ900人以上の隊員が活動に参加したということです。自衛隊による支援活動は、鈴木知事が小泉防衛大臣に派遣を要請してから8日後の先月5日に始まりました。県と陸上自衛隊秋田駐屯地によりますと活動期間は30日まででしたが実際の活動は29日までで、期間中、活動に参加した隊員はのべ924人でした。県内12の市町村で捕獲用のおりの運搬を141件、駆除されたクマの運搬を9件、クマを埋める穴を掘る作業を1件、それにドローンなどによる情報収集を行ったということです。秋田県以外への派遣について小泉防衛大臣は「現時点ではさらなる自衛隊の派遣は考えていない」とした上で、今後は「自衛隊OBに対する情報提供などを通じて狩猟者の確保の観点から協力していく」と述べています。

(野生イノシシが豚熱に感染:佐賀)
佐賀県は1日、佐賀市富士町で捕獲した野生イノシシ1頭が豚熱(CSF)に感染していたと公表した。県内127例目で、佐賀市での確認は初めて。県生産者支援課によると、猟友会の関係者が11月24日、同町上無津呂で衰弱している成獣を捕獲した。28日に陽性が判明した。

(豚熱感染イノシシ2頭確認:宮崎)
宮崎県は1日、都城市吉之元町と同市高崎町で死んで見つかった野生イノシシ2頭が豚熱(CSF)に感染していたと発表した。県内での野生イノシシ感染は、4月に同市高崎町で初確認されてから43、44例目。県家畜防疫対策課によると、野生イノシシはともに雄の成獣で、見つかったのはそれぞれ11月27、28日。

(ブナの実2027年も凶作?:秋田)
クマの人的被害が深刻な秋田県で、主な餌となるブナの実の結実が2021年以降、「凶作」と「豊作」を隔年で繰り返していることが、県林業研究研修センターの調査で分かった。25年は凶作となり、クマが人里に下りてくる原因の一つとみられている。26年は豊作の見通しで、再来年の27年も凶作なら出没が多発する可能性があり、センターは警戒を呼びかけている。センターは02年から独自の基準で県内5カ所の結実状況を調査。一般的にブナの豊作は5~7年周期とされる。豊作は05年以降しばらく空き、13、15、18年と記録。いずれも翌年は極端に実りが悪く、22、24年は豊作で、実った数は他の豊作年と比べても多かった。同センターの和田覚環境経営部長は「凶作が当たり前だったブナは近年、豊作の翌年に100%凶作になる」と指摘する。周期変化の原因は不明だが、地球温暖化や猛暑による何らかの影響と考えられている。和田氏によると、ドングリの一種であるブナは10月ごろに実がなり、栄養価が高い。豊作の年はクマの繁殖が盛んになり、個体数が増加する。翌年が凶作であれば、餌を求めて人里に出没する個体は多くなる。凶作の翌年は冬眠明けの春に注意が必要だという。クマは地面に落ちて残っている実などを食べるが、凶作の影響で不足しているためだ。和田氏は来年の春先について「山の植物がまだ芽吹いておらず、ブナの実がなければクマの食べるものが少ない」と述べ、警鐘を鳴らしている。他の調査でも今シーズンのブナの実りは悪い。東北森林管理局(秋田市)は25年度、管轄する青森、岩手、宮城、秋田、山形5県全てで「大凶作」と判定。この秋の人身被害が確認されている福島、長野、群馬でも各県の調査基準で「凶作」や「大凶作」だった。

(クマ対策など2000万円、児童の送迎や果樹伐採に補正予算:東京)
ツキノワグマの目撃情報が増えていることを受け、東京都・日の出町議会は28日、登下校する児童生徒の車での送迎や、未収穫の果樹を伐採した人への補助金の新設などを内容とする計2千万円の補正予算案を可決した。児童生徒の登下校では、町が保有するワンボックスカーの運転手の採用などに240万円を計上。既に保護者が自家用車で子どもを送迎する例が増えており、車での通学を希望するが保護者の対応が難しい家庭を対象にする予定だ。

(クマの頭数管理、兵庫の手法に注目:兵庫)
ツキノワグマやヒグマによる人的被害が東北や北海道を中心に全国で相次ぎ、深刻な問題になる中、兵庫県の取り組みに注目が集まっている。県は2007年、野生動物や森林の管理と研究を一元化した全国唯一の機関「森林動物研究センター」(丹波市)を設立し、ツキノワグマの個体数管理を進めてきた歴史がある。兵庫県のクマ対策は同センターの設置で本格化。世界的な霊長類学者の故・河合雅雄氏が携わり、科学的な調査や研究に基づいて野生動物を管理する「ワイルドライフ・マネジメント」を導入した。欧米では既に主流の手法。人口減少で人里が縮小する一方、野生動物の生息域が拡大し、いずれ人とのあつれきが深刻化するのを見据えていた。

(狩猟初心者向け「ハンタースクール」:福島)
熊など有害鳥獣による被害が広がる中、福島市で狩猟初心者を対象にしたハンタースクールが開講しました。30日に開講したハンタースクールは、狩猟免許の取得後3年以内の人を対象にハンターとしての実践力を身に付け、仲間との交流を深めてもらおうと県が開きました。2026年3月上旬まで、有害鳥獣の生態などを学ぶほか、銃猟とわなのコースに分かれて、体験などを行う予定です。参加者「熊の被害などがすごく多いので、自分も社会貢献できればと」。福島県内では今年、熊の目撃件数と人的被害がいずれも過去最多となっていて、県はこうした取り組みを通し、将来的に熊など有害鳥獣の対策に貢献できる人材を増やしていきたいとしています。

(街にいながら狩猟を追体験できる罠シェアリングコミュニティ「罠ブラザーズ」)
バイオフィリック・スタジオ「土とデジタル」をはじめ、「山学ギルド」、「食季cafe展」が共同で運営する、街にいながら狩猟を追体験できる罠シェアリングコミュニティ『罠ブラザーズ』は、環境省主催の「第13回グッドライフアワード」において、生物学者・作家である福岡伸一氏が委員を務める『EXPO2025いのち動的平衡賞』を受賞いたしました。本アワードは、環境に優しい社会の実現を目指し、日本各地で実践されている「環境と社会によい暮らし」に関わる活動や取組を紹介・表彰し、地域循環共生圏(ローカルSDGs)の創造を支援するプロジェクトです。「罠ブラザーズ」は単にジビエ肉を購入できるサービスではなく、罠シェアリングによって狩猟からジビエ肉を“いただく” までの過程を追体験できるサービスです。2022年に「グッドデザイン賞」(主催:公益財団法人日本デザイン振興会)を受賞いたしました。狩猟が減った近年、野生の鹿は個体数の増加や分布の拡大が一層強まり、生態系や農林業に及ぼす被害が深刻化しています。罠ブラザーズは、狩猟を行う人達の活動支援と、この課題について共に考える機会の提供に繋がる事を目指しています。

(猟友会が高校生に手ほどき)
クマの相次ぐ出没で浮き彫りになったハンターの不足と高齢化。こうした状況を少しでも改善するため、若手ハンターを育成したり、狩猟に関わる人全体を広げようとしたりする取り組みが各地で続けられている。

(森下環境大臣政務官がクマ対策で意見交換:宮城)
森下千里環境大臣政務官が宮城県大衡村を訪れ、クマ対策について地元自治体などと意見交換しました。大衡村をはじめ6つの自治体や宮城県、猟友会などが参加し猟友会の報酬を挙げることや、事務手続きの簡素化を求める意見などが出たということです。この後、箱わなが設置されたリンゴ畑を視察し、クマ捕獲の流れなどを確認していました。森下千里環境大臣政務官「県ともしっかり連携して市町村ともしっかりタッグを組んで、クマ対策に取り掛かってまいりたいと思っています」案内役を務めた大衡村の小川ひろみ村長は、現場を見ることで猟友会や自治体職員の苦労を分かってもらえたのではないかと話していました。

(クマ駆除に有効なスラッグ弾、山陰に練習場所なし)
クマに大きなダメージを与えるスラッグ弾の射撃を練習する場が山陰両県になく、ハンターから整備を求める声が上がっている。練習には両県外に行く必要があり、島根県内の自治体では旅費などの補助もない。

(クマ駆除に警察がライフル使用…なぜ法的に可能になったのか)
2週連続でクマの話題ですが、今回はより法律的な話をしましょう。警察によるクマのライフル駆除を可能にするために国家公安委員会規則が改正されたというニュースを聞いたことありませんか? この聞きなれない規則の改正を通じて、厄介な法解釈の世界を少しだけ体験してみましょう。日本は法治国家なので、行政が何かを行う際には法律上の根拠が要ります。そして警察については「警察官職務執行法」という法律があります。その第7条が武器の使用条件について定めていますが、全て人に対する武器の使用について書いてあるので、さすがにクマには使えません。では諦めるしかないのでしょうか? いいえ、ここに法解釈が生きてきます。先ほどの法律の第4条を見ると、人の生命などに危険を及ぼしうる害獣が出現した場合に、警察官が危害防止のための措置を講じることが認められています。この「措置」にライフル駆除が含まれたら、法律上の根拠ができるので、警察によるクマのライフル駆除が正式に可能になるのです。ここで、基本法である「警察法」という法律も見てみましょう。第5条において、内閣府の外局である国家公安委員会が、警察装備に関して警察庁を管理すると書かれています。そして、警察法を実施すべく内閣が定めた「警察法施行令」という政令では、装備に関する細かなルールは国家公安委員会規則で定めるとあり、その規則の中に「警察官等特殊銃使用及び取扱い規範」があります。ここでも、根拠のもとをたどれば警察法という法律にたどり着きます。今回、この「警察官等特殊銃使用及び取扱い規範」の改正により、害獣に対する捕獲・殺傷任務にあたって機動隊にライフル銃を配備することが可能となり、危害防止のための措置にライフル使用が含まれると解釈できるようになるのです。弁護士や官僚など法律に携わる人たちが、日々何と格闘しているのか、少しは体験していただけたでしょうか? 今まで興味が湧かなかったかもしれませんが、法改正に関するニュースの裏には、こんなパズルみたいな厄介な仕事が隠れているんです。

(「長野県中野市4人殺害事件」がカゲを落とす「ハーフライフル規制」とは)
男女4人の命が奪われた凄惨な殺人事件が、クマ駆除に深刻な影響を及ぼしている──。この一文を読んで、すぐに意味を理解できる人はどれほどいらっしゃるだろうか。クマの駆除を巡っては“クマ愛護派”の抗議電話が社会問題になるなど様々な余波が広がっているが、まずはクマが今も猛威を振るっている状況を確認しておこう。環境省は11月17日、クマによる被害状況の速報値を発表した。それによると、今年4月から10月末にかけてクマが人に危害を加えた事案は176件で、被害者は196人に達した。これは記録が残る2006年度以降、同期比で過去最悪だという。犠牲者の数も増え続けている。11月5日の時点で、クマに襲われて亡くなった人は13人。過去最悪だった23年度は6人だったので倍以上に増えており、さらに、11月25日にも新潟県でクマに襲われたと見られる55歳男性の遺体が発見された。「今の状況は異常。クマの駆除に力を入れ、個体数を減らす必要がある」と指摘する専門家は多い。クマの駆除には一般的に銃か罠が使われる。ところが、クマの駆除に強い威力を発揮する銃に対し、国が規制を強化してしまったのだ。狩猟に詳しい関係者が言う。「2023年5月、長野県中野市で4人が殺された殺人事件が発生しました。当時31歳の男が2人の女性をサバイバルナイフで刺殺し、2人の警察官を猟銃で射殺したのです。今年10月に長野地裁で開かれた裁判員裁判で男には死刑判決が下りました。4人を殺した男が所持の許可を得ていた猟銃は『ハーフライフル銃』と呼ばれるもので、当時は散弾銃と同じ扱いだったのです」。猟銃は基本的に散弾銃とライフル銃に大別される。従来の銃砲刀剣類所持等取締法では、新人ハンターが所持できる猟銃は散弾銃。それから継続して10年以上、猟銃の所持許可を受けているとライフル銃が所持できた。そして散弾銃でクマに立ち向かうのは無謀だとされ、クマの駆除に最も力を発揮してきたのはライフル銃だ。ところがハーフライフルは散弾銃の扱いを受けていたにもかかわらず、散弾銃より有効射程距離が長く、命中精度が高いという優れた長所があった。「ツキノワグマでも体長180センチ、体重100キロを超える個体もいます。しかも時速50キロという非常に早いスピードでの移動が可能です。100メートル走の世界記録保持者であるウサイン・ボルトさんの時速は37・6キロですからどれだけ早いか分かります。そんなクマを撃つ際、ハーフライフルは射程距離が長いので、より離れた場所からクマを狙うことが可能です。さらに弾はサボットスラッグ弾を使います。これは非常に威力が強く、大型の鹿でも打ち抜けるほどです。経験の浅いハンターは銃刀法の規制でライフルを所持できません。しかしハーフライフルとサボットスラグ弾を持てばベテランのハンターと共にクマの銃猟に参加できるのです」(同・関係者)。ハーフライフルはクマの駆除に“必要不可欠”な猟銃だった。ところが長野県中野市の殺人事件で凶器として使われてしまったため警察庁が規制強化に乗り出す。ハーフライフルを所持できる条件をライフル銃と同じレベルに厳格化する方針を打ち出したのだ。読売新聞オンラインは2023年12月21日、「手製銃・猟銃も『発射罪』対象に規制強化、銃刀法改正へ…ローン・オフェンダーの事件防止狙い」との記事を配信した。この記事で読売新聞は警察庁が銃刀法改正案を24年の通常国会に提出する方針を決めたと伝え、ハーフライフルに関して《所持許可の基準をライフル銃並みに厳しくする。ハーフライフル銃が長野の事件で使われたことを受けたものだ》と報じた。「具体的には『散弾銃を10年間所持してきた』ハンターしかハーフライフルを持てないよう規制を強化したのです。つまりハンターになっても10年間はハーフライフルを使えないことになります。先に見たように、経験の浅いハンターこそハーフライフルとサボットスラグ弾が必要です。ところが、にもかかわらず10年選手しか持てないというのですから……。ハンターの危険性が高まれば、ただでさえ担い手不足が叫ばれる現状に拍車がかかりかねません」(同・関係者)。この規制には多くの狩猟関係者から反対の声が上がった。中でも強く抗議したのは北海道の猟友会だった。2024年1月10日に声明文を発表したのだが、その要点をご紹介する。▼問題の本質は使用した男性被告にあり、銃の種類ではない。▼ハーフライフルの有効射程距離は150メートル。一方、散弾銃の射程距離は50メートルしかなく、ヒグマ猟に必要な距離を確保できない。極めて危険だ。▼北海道の狩猟を始める者のほとんどはエゾシカの捕獲を目的としており、有効射程距離が150メートル程度あるハーフライフル銃とサボットスラグ弾を使用している。▼法改正が行われると、北海道ではエゾシカやヒグマの狩猟、有害鳥獣捕獲の担い手が不足する深刻な事態に襲われる。現場を熟知する北海道猟友会の訴えは、国に届いたのだろうか──。

(クマ駆除に暗雲の「ハーフライフル規制」に北海道では“特例”が出たが)
狩猟に詳しい関係者は「ハーフライフルはクマの駆除に不可欠な猟銃であり、特に経験の浅いハンターこそ持つべき銃です」と言う。「ところが、2023年5月に長野県中野市で4人が殺されるという殺人事件が発生しました。当時31歳の男が2人の女性をサバイバルナイフで刺殺し、2人の警察官を猟銃で射殺したのです。その際に使われた猟銃がハーフライフルでした。事態を重く見た警察庁は2024年の通常国会に改正銃刀法の法案を提出します。そこには『散弾銃を10年保有した者がハーフライフルを保有することができる』と改められていたのです」。改正前のハーフライフルは散弾銃と同じ扱いだった。そのため新人ハンターでも保有することができた。だが改正銃刀法が施行されると、新人ハンターは散弾銃しか保有できない。これに猛反発したのが北海道猟友会だ。「散弾銃の有効射程距離はおよそ50メートル。一方、ハーフライフルは150メートルです。北海道猟友会は『50メートルの距離からヒグマを狙うのは危険だ』と反論しましたが、ツキノワグマでも同じです。経験の浅いハンターこそハーフライフルが必要であるにもかかわらず、この改正銃刀法が『ハーフライフルは10年間所持できない』と定めたことが大問題なのです」(同・関係者)。それこそベテランのハンターならライフルを所持することができる。ライフルの射程距離は1キロを超えるものも少なくない。ただし、北海道猟友会の切実な訴えは、最終的には国を動かした。特例を認めさせることができたのだ。「北海道の状況を理解した警察庁は、『ヒグマやエゾシカの駆除に従事する者』に加え、『都道府県が被害防止に必要だと通知し、ハンターが通知が出た都道府県で狩猟を行うと申告する』場合は、新人ハンターでもハーフライフルを所持できると特例措置を拡大したのです。北海道の狩猟関係者が安堵したのは言うまでもありませんが、気になるのが他の都府県に特例が広がっていないことです」(同・関係者)。クマの被害に悩まされている東北地方の関係者は「北海道とは違い、こちらでは銃でクマを駆逐できるハンターが昔から少ないのです」と言う。「基本的には罠が主体という歴史があります。そのため各地の猟友会に意見を求めても『そもそも銃を使うことがないし、後継者不足で新人ハンターもいない。改正銃刀法が施行されても影響は少ない』という回答が大半を占めたのです」。だが、これで終わりとするわけにはいかないという。前出の狩猟に詳しい関係者は「クマの駆除を進めるためには結局、地元に密着したハンターの地道な育成しかないのです」と言う。「今はクマ被害が非常事態ということもあり、警察官がライフルを使い、自衛官が後方支援を担う取り組みが実施されています。しかしクマ駆除には何よりも経験が必要です。近隣の山を深く知り、山に住むクマの現状を深く理解しているハンターだからこそ、的確な判断に基づいて猟銃を使用し、クマの駆除が実現するのです。警察官はライフルには精通していても、クマを撃った経験はありません。まして地域の土地勘など皆無でしょう」(前出の関係者)。しかも今年9月から「緊急銃猟制度」の運用が開始された。人間の生活圏にクマが出没した場合、市町村が委託したハンターなどに緊急発砲が許可される。ハンターの数が多いほど、制度の運用がうまくいくのは言うまでもない。「クマの数を減らすためには、地元で生活するハンターを増やしていくしかありません。それを痛感している自治体の職員や首長もたくさんいます。ハンターの育成に乗り出した自治体もありあすが、いくら行政が頑張っても、『ハーフライフルは持たせられません』では最も大切なハンターの命が保証できないのです」(前出の関係者)。ただし、ハンターの数を増やすのは非常に難しいと専門家は口を揃える。その理由の一つに過剰な動物愛護を訴える抗議電話があるという。クマの駆除がニュースで報じられると自治体などに抗議の電話が殺到するのはご存知の通りだ。

(“クマ愛護”がハンターの「若手確保」を妨げる決定的な理由)
担当記者は「暴言の内容もひどいものです。『クマではなく、お前が死ね』とか、『税金泥棒』、『無能』と罵声を浴びせる電話も多く、まさに“カスタマーハラスメント”に該当します」と言う。「こうした過激な“動物愛護”が様々な悪影響を及ぼしているのは言うまでもありません。その中の1つに、『抗議電話がハンター不足をさらに助長させるのではないか』という懸念が囁かれています。クマの個体数は正確な把握が難しいと専門家も口を揃えていますが、今は異常に増えている可能性が取り沙汰されており、当分の間は駆除で数を減らすより他に方法はないと考えられています。目下、警察官がライフルを使用したり、自衛官が後方支援を担当したりする対応策も実施されていますが、最も注力されるべきは地元のハンターを増やすことにほかなりません」。狩猟に詳しい関係者は「クマを猟銃で駆除するためには、山を熟知し、クマの習性や現状を深く理解している地元のハンターが活躍するしかありません」と言う。「どれほどライフルを熟知した警察官であっても、山に土地勘もなければ、クマを撃った経験もありません。高齢化で猟友会のメンバーも引退が相次いでいます。若いハンターの育成は待ったなしの状況ですが、ここで心配なのが例の抗議電話です」。「何しろクマ駆除を批判する電話は地元の役場だけでなく、猟友会も狙い撃ちにしています。地元の住民は猟友会の現状をよく知っています。クマが異常な頻度で人間のエリアに現れるためパトロールや駆除に忙殺される。にもかかわらず、報酬はごくわずか。その上、世論から袋叩きとなると、誰だってハンターになろうとは思わないでしょう」(同・関係者)。この問題が根深いのは、「クマがかわいそう」という意見や、行政に対する抗議電話は最近になって始まった社会現象ではないということだ。「新聞記事のデータベースを調べると、少なくとも1990年代の終わりごろには『クマの駆除を実施すると、役場に抗議の電話が殺到した』という記事が掲載されていたことが分かります。さらに同じ頃、クマの問題に詳しい北海道新聞はヒグマさえ“展示”されれば『かわいい』と観光客が殺到する状況を懐疑的に伝えました。一部の観光業者が経営優先でヒグマを飼育している実態をレポートしたほか、“見世物”という人工的な空間でクマと人間の“偽りの生態”を見て喜ぶ観光客の姿にも疑問を呈しました」(前出の担当記者)。仮に1990年代を“クマかわいそう”の原点だと規定したとしても、少なくとも日本には40年近くにわたって「クマは可愛い」という価値観や、過剰な動物愛護の観点が広がってきたことが分かる。だからこそ、「クマを殺すのはかわいそう」という行政に対する抗議も40年間、ずっと繰り返されてきたわけだ。「今年のクマ被害で大問題なのは、犠牲者も非常に多い点です。11月5日の時点で、クマに襲われて亡くなった人は13人を数えます。2023年度は6人だったので倍以上に増えていることになります。ところが、これほど深刻な人的被害が発生していても、新聞社がクマの保護に取り組む団体に取材を依頼すると、『クマがかわいそうだという主張に行政は耳を傾けるべきだ』と答えるのです。この問題の根は深いと言わざるを得ません」(同・記者)。抗議運動の悪影響を乗り越え、地元出身の新人ハンターの育成に成功したとしても、そのハンターが威力の強い猟銃を所持できないという問題も指摘されている。

(東北クマ被害は人や養魚場、新米にも)
市街地へのクマの出没が大きな問題となっている。東北地方でも目撃例と駆除件数が急増し、人身被害も過去最多となった。秋田県では自衛隊が出動し現場を支援する異例の対応となった。制度面でも緊急銃猟の解禁や国の対策パッケージ策定など動きがあった。しかし事態の進展は速く対策とのギャップも目立つ。どう向き合えばよいのか。東北6県の人身被害は全国でも突出している。環境省が発表した4~10月の被害(速報値)によると、都道府県では秋田の56人を筆頭に岩手(34人)、福島(20人)と続き、東北が全国の約3分の2を占める。死亡者も9人に上る。打撃は経済にも及ぶ。クマが出没して農林水産物が食害に遭う事例が増えている。東北農政局によると、クマによる例年の被害額は約1億円で推移してきたが、23年度は約3.3億円と急増している。ドングリの凶作や人口減少などによりクマが市街地まで侵入するようになったと分析する。青森県むつ市の山口養魚場で7月、養殖サーモン500匹以上が酸欠になって死んでいた。クマがサーモンを捕ろうといけすで動き回るうちに酸素を送る水車をひっくり返し、いけすの水位が下がっていた。死んだ魚の一部を食い散らかした跡もあったという。被害額は約200万円に上る。魚のエサが狙われた事例は過去もあったが、魚は初めてという。同養魚場の麦沢智暁さんは「2年かけて大切に育ててきた魚を一晩で失った。クマは魚の味を覚えたので、来年も来るだろう。行政は速やかに対策をしてほしい」と訴える。リンゴやカキなどが食い荒らされているほか、宮城県大崎市のある農家では倉庫に保管していた新米の袋が破られ食べられたという。倉庫の壁は壊され、クマとみられる足跡やフンなどが残っていた。輸送網にも影響が及ぶ。東北地方のJR管内では、クマと列車との衝突事故が大幅に増えている。列車の遅延や運休が発生、線路に侵入する事例も散見されている。観光への影響も懸念事項だ。旅行や飲食の手控えが起きている。秋田県の鈴木健太知事は11月18日の記者会見で「今後、聞き取りなど調査が必要」との認識を示した。市街地での出没や捕獲例は年ごとの木の実の豊凶で増減しながら「数年に1回、平均値が急増するパターンを示している」と秋田県立大学生物資源科学部の星崎和彦教授は分析する。16年の目撃数が約1300件に急増、23年には3700件に達した。現在は第5フェーズ(局面)にあるという。「人間社会は事態の変化を認識できなかった」と指摘する。ただ、単純にクマが増えた結果、市街地に出没すると結論づけるのは早計だ。出産で増えた個体が活動するのは春から夏にかけて。一方、目撃例が増えるのは秋だ。クマが過密になるのは「食べ物の少ない年や場所による。情報をより整理する必要がある」と星崎氏は語る。クマの行動も変化しているとの見方は多い。秋田県北秋田市で旅館業を営む松橋利彦さんは「山林や里山のクマと街中に出没するクマは違う」と語る。松橋さんが山菜採りの際などに山で遭遇するクマは「こちらを観察・警戒しており、ある程度予防や対処の仕方もある。しかし街中のクマはどう行動するかわからない」と困惑する。星崎氏は「クマは春にブナの花が少なければ不作を予見して山奥から移動できる。里山はクマが好むサクラの実やキイチゴなどが豊富で魅力的な場所といえる」と話す。人間社会の変容も背景にあると指摘する。秋田県では林業が衰退し山に分け入る人が減った。林業従事者が活動拠点としていた中山間地域の集落も多くが消滅し、クマにとって脅威が低下している。急増する被害はクマの生態に突発的な変化が生じたわけではなく、自然環境と人間社会の変化が時間をかけて複合した結果だといえる。

(里に出るクマ「人間のせい」は現実と逆)
人とクマのすみ分け――。政府は「クマ被害対策パッケージ」でそんな理念を掲げた。しかし「現体制では不可能に近い」というのは兵庫県立大教授で同県森林動物研究センター研究部長、横山真弓さんだ。長年、野生動物の保全管理に携わってきた第一人者に、人口減少が続くこの国で、人間はクマとどう向き合っていけばよいのかを聞いた。――クマによる人的被害が増えています。死亡件数は過去最悪になりました。いったい何が起きているのですか。◆今年の北海道や東日本でのクマの大量出没の背景には、クマの増加と行動変容があります。よく言われる「ブナの凶作」は一因ではありますが、それだけでは春から出没が多かったことを説明できません。かつてクマは「繁殖力が弱い」「増えにくい動物」と考えられてきました。九州では絶滅。四国では今でも存続が危ぶまれています。しかし他の地域ではむしろクマは増加傾向にあります。科学的な個体数調査を早急に進めるべきです。今年は、2023年の大量出没時と比べ、市街地への出没や建物への侵入、人間に危害を加えるケースが目立ちます。つまり、クマの行動が明らかに変容しているのです。その背景に、クマの学習能力の高さがあります。人里の果樹園や畑、人家周辺などには餌となるものが多くあり、いつどこに行けば効率が良いのかを知り、人間は弱い生物で人里は安全だ、ということを学習した個体が増えているのだと思います。人慣れしたクマ、いわゆる「アーバンベア」が増えているのです。

(問題を起こしたクマの“共通点”とは)
〈クマに居間で襲われたか、81歳女性が死亡 全身に多数の傷 岩手〉(「朝日新聞」デジタル版2025年7月4日)。居間? クマが人家に侵入して人を殺したのか……? そんな話はこれまで聞いたこともなかったが、記事はその「まさか」が起こったことを伝えていた。・4日午前7時40分ごろ、岩手県北上市の住宅で、この家に一人で住む81歳の女性が居間で血を流して倒れているのを女性の息子が発見。・女性の遺体には、動物の爪によるとみられる多数の傷が頭など全身にあった。・室内にクマとみられる足跡が複数残されていた。事故から一週間後の11日、地元猟友会が現場近くで成獣のクマを駆除。DNA鑑定により、女性を襲ったクマと同一個体であることが確認された。衝撃的な事故は続く。7月12日午前2時50分ごろ――北上市でクマが駆除された翌日――今度は北海道渡島管内福島町の住宅街で、新聞配達中だった男性(52)が、ヒグマに襲われて死亡する事故が起きた。このクマは18日に駆除されたが、その後のDNA鑑定によって、2021年に同町の山林で77歳(当時)の女性を襲い、死亡させた個体だったことがわかった。同一のクマが4年の間隔をおいて、再び人を死亡させたケースは過去にない。環境省によると、令和7年度のクマ類による人身事故の発生件数は62件、被害人数は69人で、うち5名が死亡している(8月末時点)。例年と比べて飛びぬけて多いわけではないが、前出の2件のように、従来の常識では考えられない異常な事故が続いている。日本のクマに何が起きているのか。「二つの事故にはそれぞれの背景と原因があるので、一概に論じることはできませんが、共通点がひとつあります」。そう語るのは、「南知床・ヒグマ情報センター」の藤本靖氏である。「それはいずれの事故にも“予兆”があったということ。具体的には、事故前から、問題の個体が現場周辺に何度も出没している点が共通しています」(同前)。北上市の事故では事故の数日前からクマが倉庫に侵入し、米などを食害する被害が複数回起きていた。福島町のケースでも事故前からゴミ捨て場がクマに荒らされる被害が続いていた。こうした事実が意味するのは、問題を起こしたクマは「人間を恐れていなかった」ということである。「もっといえば、人間を下に見ているといってもいい。近年、クマの生息数の増加と山のエサ不足を背景に、人里近くで生活する『アーバンベア』の存在が指摘されていますが、彼らは人間を間近で観察した結果、人間に慣れてしまう。さらに農作物や生ゴミなどを通じて人間の食べ物の味を覚えてしまったクマはそれに執着するようになる。こうなると、いつ人間を襲ってもおかしくはない」(同前)。クマは学習能力の非常に高い動物である。人間とクマの生活圏が近くなり、“人慣れグマ”が増えていけば、市街地での不慮の事故の可能性もそれだけ増える。そうした状況の中、市街地でのクマ出没に備えて2025年9月1日から導入されたのが「緊急銃猟」という制度である。というのも、従来の鳥獣保護管理法下においては、原則として市街地での発砲は禁じられていた。そのためクマが市街地に出没した際は、警察官が〈人命にかかわる危険が差し迫った状況〉と判断した場合のみ、ハンターに発砲許可を出すことで対応するしかなかった(警察官職務執行法第4条第1項)。「ただクマ相手の現場では、瞬時の判断が求められるので、そのタイムラグが大きい。経験上、クマを一日追いかけても、撃てるチャンスがあるのは、ほんの4、5秒しかないからです」(同前)。そこで鳥獣保護管理法を改正する形で導入されたのが「緊急銃猟」である。これにより市街地においても安全面で一定の条件を満たせば、市町村長の判断でハンターに銃による駆除を委託できるようになった。だが、現場のハンターの表情は複雑だ。「自治体が判断といっても、現実的にはハンターに“丸投げ”するしかない。それで、もし何か事故が起こったら、その責任は誰が負うのか。警職法を適用した場合、ハンターは“みなし警察官”となるので免責特権がありますが、鳥獣保護法での対応では、単なる“みなし公務員”です。たとえ刑法上の責任は問われなかったとしても、行政処分を受けるリスクは残る。明確な免責特権がないことが一番の問題だと思います」(北海道猟友会所属のハンター)。本来、猟友会は狩猟を趣味とする同好の士の集まりであって、有害鳥獣の駆除に協力する義務はない。「狩猟と有害駆除とでは目的が違うのにどちらも銃を使うというだけで、有害駆除がハンターに押し付けられてきた面はあると思います」(同前)。前出の藤本氏は、「そもそもの問題は“銃で有害鳥獣を駆除する”という行為に二つの法律が絡んでいる点にあると思います」と指摘する。すなわち環境省が所管する鳥獣保護管理法と、警察庁が所管する銃刀法である。その意味では、クマの市街地への出没は、その二つの法律の狭間で起きている問題ともいえる。「今後、市街地でのクマによる人身事故は増えていくでしょう。それに対して鳥獣保護法の改正(緊急銃猟)という“継ぎ接ぎ”の対応だけで本当にいいのか。私は銃刀法の改正も視野に入れつつ、有害駆除という目的を明確にした新たな法体系を整えるべきだと思います」(同前)。国民の生命と財産を守ることは、国家の使命である。これ以上、駆除の現場に責任を押し付けることは許されない。

(クマとの対峙で警察官が猟銃を撃つリスクと厳しい現状)
今年はクマによる人身被害が過去最悪だ。環境省の速報によれば、4~10月の人身被害は196人で昨年(79件)の2倍以上。うち死亡事故は12件(4日時点)も。最近は、市街地や住宅地での目撃が増えた。現在、一部自治体では警察や猟友会などがクマやイノシシを銃を使って仕留める「緊急銃猟」の実地訓練が始まっている。これは「住宅地などの日常生活圏にクマなどが侵入」「人命への危害を防ぐため、緊急の措置が必要」「銃以外の方法では迅速な捕獲が困難」「弾丸が人に当たるおそれがない」の4つの条件を満たした場合に適用されるが、クマとの対峙は警察官をもってしても厳しい現状がある。2015年9月には千葉県松戸市の住宅街で大型犬が通行人らを次々襲い3人がケガをした事故があった。その際、松戸署員3人が「緊急避難の発砲」で拳銃計13発を発砲し、射殺。発砲によるケガはなかったが、銃弾は近隣の住宅の壁や塀に命中したことで批判の声も上がった。元警視庁刑事の吉川祐二氏が言う。「警察学校の訓練では標的を撃つだけで生きている動物を撃つ経験はありません。銃を1発発射できるまでは約5秒かかるといわれています。そのため、確実に安全に仕留めるには速い状況判断が必要。また流れ弾による被害が起こらないように技術を学ぶには時間もかかります」。一方で有害鳥獣駆除のプロである猟師はクマ駆除を拒否している。クマの大型化や凶暴化で命の危険があるし、出動手当は少なく、誤射した時のリスクが大きいといった負担がのしかかるからだ。また、そもそも狩猟免許の所持者は高齢化が深刻だ。環境省の統計によれば、1975年に約51万人いたが、20年には約21万人に減少。6割近くが60歳以上になっているという。猟師に許可される銃では大半が近距離発砲となることから、仕留められなかった時の危険が大きすぎるとの声も。「安全で優れた銃が使えない日本では、旧態依然とした猟銃規制が逆に猟を危険なものにしている側面がある。800メートル近くまで撃てる中長距離射程の銃の個人輸入許可の可能性も探られています」(政府関係者)。可能性は低いとされるが、「PSG-1」の将来的な活用に焦点が当たっているという。「高精度セミオート狙撃銃」のことで、SAT(特殊部隊)が使用、民間は所持不可となっている。「距離を保って狙える“猟銃”は猟師の安全を確保するためにも、検討が必要になります。もっとも安全に仕留められる技術も伴わなければなりませんから簡単なことではありません」(吉川祐二氏)。

(クマは驚くほど「食べ方が雑」だった)
クマが人里に近づく事例が増える2025年、食べ物の確保が行動に影響を与えていると言われています。実は、ツキノワグマの食生活は季節ごとに多彩で、時には意外なほどの雑さを見せ、毒草さえ上手に活用している模様。自然写真家・永幡嘉之氏の著書『クマはなぜ人里に出てきたのか』(旬報社)から一部抜粋し、10年の観察から見えてきた“クマの意外な食行動パターン”を紹介します。これを知れば、クマの行動が予測しやすくなるかも?ツキノワグマは春にほころびかけたブナの新芽を食べますが、葉が広がってしまえば、あとは見向きもしません。特に、蕾の入った花芽を好みます。晩春に尾根道をたどっていると、ブナの根元に花芽がついた小枝が折り重なっている場面を見かけることがあり、見上げるとそこだけ枝がなくなって青空が見え、どれほどたくさんの枝を折って食べたのかを思い知ります。なお、春にはクマ棚(樹上で餌を食べる際に、折った枝を敷き詰めて座った跡。枝の上に棚があるように見えることからこう呼ばれる)を見たことがありません。新潟県村上市の朝日山系の4カ所では、計8本のブナで足をとめて観察しました。それにしても、食べ方の何と雑なことか。枝を折ってしまうのに、たくさんの花芽が残っているのは実にもったいないことで、歯でこそぎ落せる部分だけを口に入れると、そのまま枝を捨てているようです。5月から7月にかけて、ツキノワグマがスギの人工林で次々に樹皮を剥いでまわる「クマ剥ぎ」という行動がみられます。生木の樹皮を剥がす、非常に乱暴に見える行動です。2018年から山形県小国町と新潟県村上市で重点的に観察しているうちに、傾向がつかめてきました。とりあえず剥いでみて、「当たり」の木は、樹皮の下の形成層をすきまなく削りながら丁寧に舐めていますが、「はずれ」の木だと、ひと口ふた口舐めただけでやめています。それは樹皮を剥いだ部分に残された歯形の密度でわかります。そして、前年あるいは数年前に剥いだ木の残りの樹皮を剥いで、狭い部分をすきまなく舐めている場面も増えてきています。つまり、クマはなにか特定の成分を必要としてこの行動を続けているようですが、目的の成分はスギならどの木にでも含まれているわけではなく、当たりが出るまで樹皮を剥ぎ続け、出ればしっかりと舐めるということを繰り返しているようなのです。ツキノワグマは雑食性で、さまざまなものを食べていることは、いろいろな本に書かれています。一般的には、やみくもに歩いて目の前のものを食べる、というように受け止められていることが多いのですが、実際にはさまざまな植物の生えている場所を記憶し、毎年の結実状況を確かめ、季節になれば的確に移動するなど、計画的に行動しているのではないかと受け止めています。・ミズバショウを食べる 人間からみれば、美しい花であると同時に毒草としても知られていますが、ツキノワグマはミズバショウを食べます。春に花を食べることもありますが、大人の腰のあたりまで伸びた大きな葉を食べた跡を、初夏や初秋に見たことがあります。人間にとって有毒な成分でも、クマにとっては毒ではないのでしょう。ここで重要なのは、同じ場所にたくさん生えていても、食べている葉は数枚に限られているので、明らかに主食として食べているわけではないことです。なにか特定の場面で、人間にとっての薬草のような使い方をしている可能性が高いと考えています。・動物を襲う ツキノワグマが動物を襲う場面を見たことがあります。2020年6月20日、兵庫県北部の低山のブナ林でのことでした。林道の角を曲がったら正面にツキノワグマがいたので、あわてて見えないところまで戻ってカメラのレンズを交換していると、クマは逃げるどころかこちらに向かって走り出します。まずい、と少し離れて身を隠したところ、クマは斜面を下に向かって走り、直後にシカの子どもと思われる悲鳴と、母親のシカの鋭い鳴き声が聞こえました。藪の向こうに目をこらすと、仔ジカをくわえて歩き去るツキノワグマの影が少し見えましたが、すぐに見えなくなりました。・ミツバチを襲う 夏になると、ツキノワグマはサクラ類やクワなどの木の実を食べる以外にも、好んで現れる場所があります。それはミツバチの巣です。養蜂家が並べたセイヨウミツバチの巣箱が襲われることもありますし、自然状態で木の洞に巣を作っているトウヨウミツバチの巣が食べられた跡もしばしば見かけます。

(クマの「個体識別」と「生息数の推定」の舞台裏)
場所によっては雪もちらつくこの時期になっても、クマの出没が続いています。そうした中、対策を講じる上で欠かせないとされているのが、「個体識別」と「生息数の推定」です。取り組みの舞台裏を取材しました。番組が同行したのは、秋田県男鹿市のハンター。取材中、出動依頼の電話が鳴ります。「今クマの足跡があったという一報を受けて、猟友会の方が現地に向かいます」。現場は山から離れた住宅地です。畑に手のひらサイズの足跡が残されていました。冬眠の季節になっても続く、クマの出没。秋田県など、東北各県で出没警報の期間が延長されています。“出没長期化”は、クマを捕獲する箱ワナにも影響しています。秋田県猟友会の佐藤さんの担当エリアでは、7基をフル稼働させるも足りず、新たにもう1基取り寄せたばかりですが。秋田県猟友会 佐藤寿男会長(81)「足りないちょっと、まだまだ」。秋田県では、半数の市や町で箱ワナが不足する事態に。さらに、重さ200キロほどの箱ワナを運ぶ人手も追いついていないといいます。秋田県猟友会 佐藤寿男会長(81)「ある程度に年配なっているから、みんな。なかなか少人数で、持てないんだよ。やっぱり、異常も異常、大異常だ、これは」。箱ワナを製造する会社は、この時期になっても対応に追われています。北日本鉄工 萩野進工場長(28日 北秋田市)「きょうも2台発注がありましたんで。11月に入ったら、もうそろそろ無いのかなと思っていたんですけどね。びっくりしている状況ですね」。製造しているのは、重さ約70キロ。大人2人で運べる“軽い箱ワナ”です。北日本鉄工 萩野進工場長「発注したらすぐ欲しいという感じになると思うので、もう在庫を増やしておくと。猟師さんも高齢になっているので、負担を減らせるように協力できれば」。複数の被害の関連性やクマの行動の把握に使われるのがDNA分析です。番組が訪ねたのは、自治体から調査を委託されている会社。野生動物保護管理事務所 中川恒祐さん(28日 神戸市)「クマの体毛ですね。毛の毛根部に細胞が残っていますので、これを遺伝子分析にかける」。調査に使うのは、クマの毛です。クマ対策に欠かせない「生息数の推定」にも、実はDNA分析が活用されています。「ヘア・トラップ」と呼ばれる手法では、有刺鉄線で囲ったワナを使用します。有刺鉄線に触れ、絡みついたクマの毛のDNAを分析します。周辺の生息数が少ない場合は、同じ個体の毛の割合が高くなるといい、一方で、生息数が多い場合は、さまざまな個体の毛が採取され、同じ個体の割合が低くなるといいます。野生動物保護管理事務所 中川恒祐さん「クマが多すぎるのであれば、管理を強めるという方針にするでしょうし、クマの数が少ない状況であれば、もうちょっと保護に寄った施策を展開していくようなことになる。そういう基本的なデータになってくる」。しかし、こんなデメリットも。野生動物保護管理事務所 中川恒祐さん「野外に体毛をずっと放置しておくと、紫外線などでDNAが劣化してきてしまって分析が失敗してしまう」。そのため、定期的な見回りが必要だといいます。手間もコストもかかる「生息数の推定」。もう1つの方法が「カメラトラップ」です。どのようなものなのか、考案者に話を聞きました。石川県立大学環境科学科 東出大志准教授「森の中にカメラをかけて、ツキノワグマの胸の模様を撮影するということをしています」。胸にある三日月のような白い模様。「斑紋」と呼ばれ、個体ごとに特徴が異なるため、識別の大きな手がかりになります。「カメラトラップ」では、エサの匂いでクマを立ち上がる姿勢に誘導。取り付けた自動カメラで、胸の「斑紋」を撮影します。石川県立大学 生物資源環境学部 東出大志准教授「クマがちょうど立ち上がったら届きそうな高さにエサを置くようにしています。それが150センチくらい」。斑紋が鮮明に映った部分を切り出し、他の場所などで撮影された画像と比較します。大変なのは、膨大な「斑紋」データを目視で見分けていること。石川県立大学 生物資源環境学部 東出大志准教授「きれいに映っているものを見つけ出して、それを目で見てですね、リストしていくのはかなり大変な作業」。見分けるポイントは、大きさや形の細かい部分が一致するかどうかです。石川県立大学 生物資源環境学部 東出大志准教授「特徴的な形状というのは、真ん中部分や端の部分で出やすい。この個体だと左側の模様の先端がちょっとV字のように、くぼんでいるのが分かると思うが、そういう特徴もこっちも同じように表れていると」。東出准教授によると、9割以上の精度で識別できるといいますが、斑紋が小さい場合は、判別が難しくなるといいます。石川県立大学 生物資源環境学部 東出大志准教授「クマと人間がどのように付き合っていったらいいかを考える1つの指標になるかなと思います。将来的には人の目ではなく、機械学習によって自動的に個体を識別できるような未来が来るかなと」。

(「クマ被害」を防ぐ意外な“奥の手”)
連日、日本中を震撼させているクマ騒動。クマが市街地に出没し、人を襲撃するケースは後を絶たない。そんなクマが人里にやって来る要因として挙げられるのは、山に食べ物がない一方で、人里には果物が実った樹木がたくさんあるためといわれている。確かに、地方に行くと、空き家の庭に柿などの木が実ったまま放棄されているのを見かける。空き家は所有権が不明になっているケースも多く、庭の果樹を行政などの第三者が無許可で伐採することも極めて難しい。また、家主が高齢になり、実を採取できずに放置しているケースも見られる。こうした樹木を“放棄果樹”といい、クマの誘引材のようなものになってしまい、クマが人里に出没する原因の一つになっているのだ。さて、放棄果樹とクマを巡る問題は、本州のツキノワグマと、ヒグマが生息する北海道では少々事情が異なるのだという。北海道のヒグマ事情に詳しい環境市民団体「エコ・ネットワーク」の代表・小川巌氏に話を聞いた。小川氏は2020年から、札幌市や市と連携するNPO法人と協力して、放棄果樹を撤去するボランティア「クマボラ」を組織している。――北海道でヒグマの餌になる放棄果樹が増えている背景には、人口減少や高齢化などの影響が大きいのでしょうか。小川:本州の放棄果樹はカキのイメージがありますが、私が暮らす札幌郊外ではリンゴ、ナシ、モモなどが中心で、柑橘類を除いてほとんどのモノがあります。札幌の中心部の南側には観光農園を中心とした、果樹園地帯があります。定山渓温泉に向かう観光客を意識して、50~60年前から整備された観光農園がたくさんあるのです。ところが、そうした観光農園が、後継者がいないとか、高齢化が進んでいるなどの理由で営業をやめる事例が増えました。小規模なものでも1~2ヘクタールほどの広さがあり、果樹もたくさんあります。特に多いのがサクランボで、札幌では6月末~8月上旬にかけて実を付けるのですが、これが格好のクマの餌になってしまうのです。――ヒグマはサクランボが好きなのでしょうか。小川:ヒグマは、冬眠から明けた後、しばらくは草やフキを食べています。ところが、夏になるとフキが固くなるので、食べなくなってしまう。それに代わるものとして、ほったらかしになっているサクランボが絶好の餌になるのです。――小川さんが行っている活動について、詳しく教えてください。小川:私たち「クマボラ」は、コロナが流行しはじめた2020年頃に組織しました。NPO法人の「EnVision環境保全事務所」、札幌市の三者で連携しながら、市街地へのヒグマの侵入を防ぐために活動しています。その代表的な活動が、放棄果樹の伐採です。クマが木登りした際、体毛が樹皮に引っかかることがあります。それを採取してDNAを分析したところ、ある果樹園には5頭のクマが入れ替わり立ち代わりやってきていることがわかりました。夜間に交通量がある国道を横切り、サクランボを食べて帰っていく。それならば、放棄果樹を伐採すべきだと3者で話がまとまり、実施に移したのです。――果樹の伐採はどのようなプロセスで行うのでしょうか。小川:札幌市役所にはヒグマ対策を行う部署があり、職員が観光農園や、果樹を作っている農家を調べています。そんな農家にEnVisionが1軒ずつ問い合わせて、伐採の合意を得ます。そして、我々がボランティアに参加してくれる方を集めて伐採を行う流れです。もちろん、許可も得ずに伐採することはありません。――所有者がわかっていない果樹の場合は、どうすればいいのでしょうか。小川:どんな空き家であっても敷地内の果樹は勝手に伐採できないため、所有者不明のまま残っているものをどうするのかは、最大の課題です。また、何十年も守ってきた果樹を伐ることを嫌がる人も、当然ながらいます。こうした事例は札幌では少数なのですが、丁寧に対応していきたいと考えています。なお、現在も営業中の果樹園は、周囲を電気柵で固めて、ヒグマの侵入を防ぐ対策を行っています。――現在、クマボラにはどのくらいのスタッフがいるのですか。小川:登録しているボランティアは100人くらい。チェンソーを使えるなど、樹木の伐採に慣れている人がたくさんいます。クマが出て困っている人たちにも賛同してもらえるよう、輪を広げるよう努力しているところです。放棄果樹だけでなく、営業している果樹園や、川の周りの草刈りをして、ヒグマが隠れる場所をなくすようにしています。幸いにも、我々の活動で、ヒグマの目撃情報は明らかに減っているといわれています。少なくとも、札幌では、市街地や住宅地でヒグマに襲われた人は、今年は1人です。札幌は森林と住宅が接している地域が多く、もともとヒグマに遭遇しやすい環境ですから、今後も地道に取り組んでいきたいと考えています。――クマ問題に関しては、マスコミの報道が過熱しすぎという意見もあります。小川:マスコミの報道が過熱していることには、私どもも戸惑いを感じています。私は以前から、“クマ問題は人の問題でもある”と話しています。本来は両者が共存を図るべきなのですが、今はクマがまったくの悪者で、出てきたら殺すという選択肢しかないように見受けられますが、人の在り方は正しいのでしょうか。改善すべき点はないのでしょうか。クマが餌を求めているところに、たまたま人間が出くわしてしまった。クマも人間が怖いので、人を驚かせてしまった。両者が興奮し、驚いてしまったので、事故につながってしまった。クマが多く出没する地域で、人が早朝に単独で行動するのは極めて危険です。クマがやってくるようなゴミの出し方に、問題があることもあります。このようなケースも多いと思うのですが、人間が一方的にクマに襲撃されたという文言で語られてしまうのです。――人の行動にも問題があると。小川:はい。クマにまつわるトラブルは、人の落ち度や不注意で生じたものもあるはずですが、そういった視点で語られることがほとんどありません。人を襲ってしまったクマを悪者にするだけでは、いくら警察や自衛隊が出動しても解決しないと思います。人間が行動を改めるべき点もあるのではないかと考えます。――クマと人間が共存していくためには、どのような取り組みが必要だと考えていますか。小川:今まで語られてきたクマへの対処法は、人間がクマの生息域である森で遭遇したケースを想定し、作られていました。大きな声や、クマ鈴などで音を出すなどの対策もそうですね。しかし、現在のように市街地でもクマに遭遇する状況になってしまうと、今までのような対処法ではいけないでしょう。新たな対処法、マニュアルを作る必要があります。そのためには、実際に市街地でクマに襲われ、ケガをした人に状況などを徹底的にヒアリングすべきです。どういう状況で襲われたのか、一種のパターンが見えてくるはずです。クマは市街地に、人間を襲うために来ているわけではありません。本州のツキノワグマでも、北海道のヒグマでもそれは同じ。行動のパターンを探ったり、放棄果樹の伐採などでクマを寄せ付けないよう手を打ったりすることによって、共存の道を探っていくべきでしょう。

(家の近くにあったら要注意の「クマが大好きな木」)
日本各地でクマによる被害が急増している。東京でも今年に入ってから目撃例が相次いでおり、「都民もクマ鈴が必要になる日が来る」という声すら聞かれる。なぜ都心部でクマの目撃例が増えているのか。自然解説者・佐々木洋氏の『 新 都市動物たちの事件簿 』(時事通信社)より、東京や神奈川にツキノワグマが現れる「2つの理由」を抜粋して紹介する。私は長年にわたり、テレビ朝日の「スーパーJチャンネル」という番組で野生生物の問題の解説を行っている。この町田市のツキノワグマの事件も取り上げることになり、2023年11月13日、番組のディレクターらとともに、今回ツキノワグマの目撃された現場へ向かった。ここは自分の住んでいる市内であるということもあり、いつも以上に徹底的に検証をするつもりであった。自宅を出て1時間ほどで撮影場所に到着し、改めて「こんな近くにクマが出たのか」と背筋が寒くなった。しかし、周辺でツキノワグマの痕跡を探すが、だいぶ時間が経っていることもあり、見つかるのはイノシシのものばかりだった。考えてみれば、ここにそれほどイノシシがいるということも、怖いことである。やがて、私たちは、車道わきに立派な獣道を発見した。私はここをツキノワグマも通った可能性が高いと判断した。なぜなら、その獣道は、イノシシ、ニホンジカなどの体重の重い哺乳類がわりと頻繁に通っていると思われる、幅の広い、そして、草がかなり平らに倒れた道だったからだ。また、今までの各地での私の観察や調査では、どの獣道もたいてい複数の種類の哺乳類が利用していて、日数が経つとともにそこを通る動物にだんだん大型の種が加わっていく傾向がある。今回の現場からさほど離れていない八王子市の緑地で調べたときも、初めのうちはニホンイタチ、テン、ノウサギなどが通り、やがてそれらにタヌキ、キツネ、アライグマなどが加わり、その後イノシシも通るようになった。私のもう一つの経験では、とくにニホンカモシカが通ったあとは、まさに“大トリ”という感じでツキノワグマもよく通る。ツキノワグマがやってくるのは、先に通っている哺乳類を餌にするためというより、ほかの動物のにおいがすると安心するからではないだろうか。だから、私は、獣道のあった場所の近くの住民に「カモシカを見かけたらクマに注意して下さい」と必ず伝えることにしている。同時に、住宅地などに入ったツキノワグマ以外の大きな哺乳類も、ツキノワグマがやってくる前になるべく早く山に追い返すことが大切だ。この日のロケでは、この町田市内の現場のあと、そこから近い神奈川県相模原市の一戸建て住宅に向かった。ここではしばらくの間、ほぼ毎晩、部屋の窓の外の暗闇から大型の動物の気配がするので、そこの住民がイノシシだと思い、猟友会にお願いしてイノシシ捕獲用の罠(わな)をかけてもらった。しばらくしてその罠にかかったのはイノシシではなく、なんとツキノワグマだったのである。「毎晩窓の外から聞こえていた音の主はクマだったかもしれないんですね」とその家の住民は震え上がっていた。この事件は、私が現場を訪れる前に起きていたのだが、ここにツキノワグマが来た理由を考察してテレビカメラに向かって話すのが私の仕事だった。そして、その答えはすぐに出た。理由は主に二つあり、一つは、家の近くにオニグルミの大きな木があることだ。ツキノワグマはオニグルミの実が大好きなのだが、それが秋なのでたくさんなっているし、地面にも落ちていたのだ。もう一つは、その木のすぐわきに道志川(どうしがわ)という川が流れているということだ。野生哺乳類は川に沿ってよく移動する。流れに沿って草木が繁ったり、道路などより低いところを水が流れていたりして、人目につきにくいからだ。しかもそこを通るときに餌を見つけることもできる。このツキノワグマは、おそらく、毎晩のようにねぐらにしていた場所から、川に沿ってこのオニグルミの木へ通っていたのだ。

(体重約400キロ…こうして巨大ヒグマは捕獲された:北海道)
11月25日朝、北海道苫前町で、巨大なヒグマが捕獲されました。箱わなの中で暴れるそのヒグマは、体重は約400キロ、体長は2メートルに迫る大きさです。町内で、夏ごろからデントコーンが食い荒らされるなどヒグマの出没が相次いでいたため、地元の猟友会が箱わなを設置していました。今回の捕獲を受けて、苫前町猟友会の林豊行会長は、その大きさに驚きを隠せません。「今まで捕獲したもので一番大きいもので325キロ。それと比べても相当大きい」と話します。また、この場所では、約2週間前の11月11日から12日にかけて、巨大なヒグマが箱わなを押し倒すようすがカメラに捉えられていました。今回捕獲されたヒグマは、このときのわなを倒した個体と同じ可能性もあるということです。今回捕獲した巨大ヒグマについて、林会長に詳しく話を伺いました。――今回の箱わなにかかったヒグマの大きさは?苫前町猟友会 林豊行会長:わなに入っているのを見たが、今までにこんなにボリュームのあるヒグマが捕れたことはない。「よく(わなに)入ったな」という感じです。こんなに大きいヒグマを今まで見たことはない。9月ごろに、別の場所に設置したトレイルカメラに映っていたヒグマがかなり大きくて、400キロくらいあるのではないかと言っていたが、その個体かなとも思うのですが、実際にわなに入っているのを見るのと、カメラの映像とでは、感覚的にずれがある。正直いうと、大きすぎてわなには入らないだろうと思っていた。――わなを押し倒したヒグマと同じ個体の可能性は?苫前町猟友会 林豊行会長:前回わなが倒されたのが12日で、今回捕獲したのが25日。約2週間、この場所には1頭もヒグマは来ていない。わなにかけている餌をキツネやタヌキ、アライグマ、テンなどが来て、少しずつ食べていたので、前日24日に、新しい餌を入れた。その餌に釣られて入ったのかなと思う。前回この場所でわなを押し倒したヒグマだとしたら、相当学習しているクマだから、わなには入らないだろうと思っていた。――わなに入った時間は?苫前町猟友会 林豊行会長:前日夜、24日午後11時20分ぐらい。――ヒグマが撮影された時間は?苫前町猟友会 林豊行会長:動画が撮影されたのは、今朝、11月25日午前9時ごろです。――今回捕獲されたヒグマの性別は?苫前町猟友会 林豊行会長:ヒグマがこんなに大きくなるのはオスしかいない。オスです。駆除した後に確かめたが、間違いなくオスだった。――推定年齢は分かりますか?苫前町猟友会 林豊行会長:年齢が一番わかりにくいです。これまで大きさから見て、8歳か10歳くらいかなと思っていても、調べたら最終的に18歳だったということもあります。今回の大きさでいうと、18歳から20歳くらいと言っても、全くの間違いではないかもしれないです。――捕獲までの経緯は?苫前町猟友会 林豊行会長:前回わなをひっくり返したヒグマは、ひっくり返してそのまま冬眠するために山の奥へまっすぐ歩いて行ったのかなと思って、たぶんもう戻ってこないと思っていた。もし、わなを倒した個体と同じだとすれば…13日ほど経ってから戻ってきて、一発でわなに入ってしまった。これもちょっと信じ難いのですが…。――前回、この場所でわなが倒された後、何か対策をしたのですか?苫前町猟友会 林豊行会長:特別な対策というのはなく、両サイドに2本ずつアンカーを打っていたが、そのアンカーをもっと深く打ち込んだ感じ。――ヒグマは、ここに餌があると認識していたのでしょうか?苫前町猟友会 林豊行会長:前回わなをひっくり返したヒグマであれば、ここに来ると餌があると思っていたかもしれない。ただ、同じ個体かどうかは推測の域を出ない…。前回わなをひっくり返したヒグマであれば、餌については知っているはず。何がきっかけで、ヒグマがわなに入ったのかは正直分からないです。ちょうど、わなを撤去しようかと話し始めていたところだった。――もしかしたら、同じくらいの大きさのヒグマがまだいる可能性は?苫前町猟友会 林豊行会長:現実的に、そんなに大きいヒグマは他にはいないと思うが…否定はできないです。猟友会によりますと、今回捕獲されたヒグマは、25日のうちに駆除されたということです。その後、巨大なヒグマは現れていないということですが、冬になっても、北海道内では各地でヒグマの出没が続いており、引き続き注意が必要です。

(“人喰い熊”から『エサだ』と見なされてしまう意外なアイテムとは?)
「クマの被害は、もはや台風や地震と同じ自然災害と考えるべきです。これまでの常識は通用しない。被害を防ぐためには、意識を大きく変える必要があります」。岩手大学の山内貴義准教授はこう警鐘を鳴らす。各地で猛威を振るう、災害級の“クマ禍”。人身被害の件数は、過去最多の200人超えを記録した2023年度と同水準でカウントを刻み続ける。とりわけ深刻なのが、死者の数だ。10月末までに12人がクマの犠牲に。さらに11月3日、秋田県湯沢市で、13人目の犠牲者とみられる女性の遺体が山中で発見された――。環境省担当記者が語る。「これまで、過去最悪の死者数は23年度の6人でした。今年は既に、その倍以上の数に達している。日本に生息するクマは、北海道のヒグマ、本州と四国にいるツキノワグマの2種類。今年亡くなった10人以上が、東北エリアを中心としたツキノワグマの犠牲者です」。見過ごせないのは“人喰い熊”の被害が出ていることだ。今年10月、岩手県北上市で1匹のクマの襲撃による2件の死亡事故が立て続けに発生。クマは地元の猟友会に駆除されたが、「遺体の状態や、駆除後に解剖したクマの胃の内容物から、人が“捕食”されたのは明らかでした」(同前)。クマにとって冬眠に備える秋のエサは、脂肪源となるドングリやブナの実。今年を含め、それらが大凶作の年は“エサ”を求めて人里に出没するとされる。飢えたクマが“人喰い化”する条件はあるのだろうか。森林総合研究所東北支所の大西尚樹氏が解説する。「クマからすれば、人も同じ大型動物。できれば避けたい存在で、ましてや襲って食べようとする対象ではない。ただ、例外もあります。北上市の最初の被害者はキノコ採りに山へ入った方。おそらく出会い頭の事故で、驚いたクマに襲撃された。そこでこのクマは人が簡単に倒せると知り、食べられることも学んでしまった。過去に鹿や猪など大型動物の死体を食べた経験もあったのかもしれない。となると、2人目の被害者は“食べるために狙われた”可能性があるのです」。人喰いをも学習する恐怖の生態。クマはいまや、山間部や中山間地域にかぎらず、住宅地や市街地など人口密集エリアにも出没する。野生動物の調査や鳥獣被害対策を手掛ける「株式会社うぃるこ」専門員の梅村佳寛氏が指摘する。「里山の荒廃や中山間地域の人口減少に反比例するように、クマの個体数は激増し、生息域は人の生活圏付近まで拡大しています。クマは自分のエサと認識したものに強い執着をみせます。人里周辺に生息するクマが増えれば、人の生活圏でエサ場を覚え、出没を繰り返す問題個体も増加する」。環境省の見積もりによれば、全国のツキノワグマの推定個体数は中央値で4万2000頭に達する。「個体数を正確に把握するのは難しいが、個体数が増加するほど、人の生活圏に現れて被害を与える問題個体の出現率も高まり、人への脅威は加速度的に増していきます」(同前)。ただでさえ、人の生活圏にはクマにとって魅力的な食物が溢れている。国の対策会議資料によれば、クマの出没を招く「誘引物」の7割を占めているのが柿だ。「クマの出没地域で、敷地内に柿や栗の木があるご家庭は、伐採を検討した方がよいでしょう」(同前)。樹以外でも、生ゴミやコンポスト、ぬか漬けなどの発酵食品は、強い匂いでクマを引き寄せてしまう。食料だけではない。ガソリンや混合油などの燃料、ペンキなどの塗料も誘引物となる。草刈り機などに使われるガソリンなどの揮発性物質はクマを引き付け、燃料の入った農業機具が破壊される被害もある。住宅地や集落では、庭に置いていたペットフードがクマに食べられる事例もあるが、今年10月、宮城県大崎市では飼い犬そのものがクマに襲われ、連れ去られる悲劇が起きた。昨年まで北海道の知床財団でヒグマの研究に携わっていた梅村氏が続ける。「かつて知床半島の羅臼町でも、民家の庭に繋がれた犬を次々と襲うヒグマがいました。通称『RT』と呼ばれたオス成獣の問題個体で、すでに駆除されていますが、飼い犬を簡単に手に入る食糧だと学習してしまっていた。ツキノワグマでも、同様のケースが起きる可能性があります」。

(思い出の柿の木、クマ対策で切るべきなのか)
クマを寄せ付けないために、思い出の柿の木を切るべきなのか。人身被害が多発する東北地方で、人々が悩んでいる。自治体は伐採や早めの収穫を呼びかけるが、空き家で所有者がわからなかったり、連絡がとれなかったりといった難しさもある。山形県南部の白鷹町。山あいの集落に1人で暮らす女性(76)は、長くめでてきた柿の木を、やむなく切る決断をした。10月下旬の夕方、玄関で飼い猫の皿を洗っていると、玄関の外に大きな黒い塊があるのが目に入った。ガラス戸の前で仁王立ちし、クマとわかった。わずか数十センチの距離。恐怖で体が硬直し、声も出せなかった。クマはエサを探すように庭先を行ったり来たりした後、立ち去った。女性から連絡を受けた町役場が付近を調査。女性がもつ田んぼのあぜにある柿の木で、柿を食べた痕跡が確認された。柿の木は、7人いた子どもたちのために義父が植えたと聞いていた。毎年秋に実を収穫し、焼酎で渋抜きして食べた。夫が亡くなった後も、1人分をとって食べるのが晩秋の楽しみだった。

(「心臓を撃ち抜いても止まらない」ヒグマの凄絶な生命力)
クマの出没が相次ぎ、警察官がライフル銃を使ってクマを駆除することを可能とする国家公安委員会規則が11月13日に施行された。実際に現地に出向く前にクマの生態に関する学習などが行われたというが、「当会では、初心者に対して、山の中での狩猟経験を何年もかけて十分積んだうえで、それからクマを撃つかどうか判断してもらっています。それまでは、山でクマを見かけても、撃たないで帰ってくるように指導しています」。こう言うのは、猟友会札幌支部ヒグマ防除隊の隊長・玉木康雄さん。それほどクマ撃ちは危険なのだそう。「クマは心臓や肺などの重要器官を損傷しても、平気で100m走って茂みの中に隠れ、追ってくる人間を迎え撃つ戦闘能力をもつ動物なんです」。玉木さんが相手にするのはヒグマだが、大きなツキノワグマもおそらく同じだろうという。撃った人間に向かって走ってくる場合もあるし、走ってこないから死んだのだと思って近づくと、突然起き上がって襲ってくることもあるとか。「ですから、被弾したクマにむやみに近づくことは、うちの隊員は誰もしません。しばらく様子をみて、クマの顔が向いていない方向から、ゆっくりゆっくり回り込みます。そして、わずかでも生命反応があれば、もう一度頭を撃ちます」。心臓を撃ち抜いても走るなんて、すごい生命力だ。「最終的には出血多量で死にますが、そうなるまでに時間がかかる。動かないようにするには、脳から脊髄につながる神経を一発で仕留める射撃能力が求められます。運動神経を司っている神経を切断できれば、万一生きていたとしても、クマは動くことができません。近づいていって、そこでとどめを刺すことができる。私たちはそういう狙撃を心がけています」。では、脳を狙えばいいのかというと、そう簡単でもないらしい。「頭に対して垂直に当たればいいのですが、角度が浅いと致命傷にならない。どんな角度だったら致命傷を与えられるのか判断できる能力も必要とされます」。テレビなどでは市街地の柿の木に登っているクマをよく見かける。とても撃ちやすそうに思えるが……。「木の上にいるクマを撃つことは、弾を受け止める安土(盛り土)がないので、できません。また、一般的にも斜面など高いところにいるクマは原則として撃ってはいけないということが、我々の定説になっています。自分より高い位置にいるクマを狙撃すると、落ちながらダッシュして向かってくる。クマは通常時速40~45㎞で走るといわれていますが、坂道を転げ落ちてくると、もっと速くなる可能性がある。2発目を準備する時間がない。そのため高いところにいるクマは撃てないのです」。市街地で発砲して、壁などにぶつかった弾が跳ね返って住民を傷つけることも危惧されている。「警察の方々の銃の取り扱いについては、十分信頼していますが、どのようにクマが動くのか、どういう姿勢になろうとしているのかなどは、クマとフィールドを共にしているからこそわかること。初めてクマと対峙する人には、なかなか難しいと思います」。今年は市街地にクマが出没することが大きな話題になっているが、実は札幌では’21年に市街地にクマが現れ、次々に人を襲うという事件があり、その後も数回市街地での出没が相次いだ。「そのときに、今後同じようなことが起こったら、今のままでは対応できないと、市街地での出没にも対応できるように法を踏まえた部隊整備を進めていたんです。今年は札幌の市街地にも多くのクマが出没していますが、それでも対応できたのは、準備がギリギリ間に合ったからです」。札幌のクマ防除隊は、経験豊富なベテランハンターと、ハイテク機器を使いこなせ、機動力のある若手のミックスで編成し、クマ防除にあたっている。猟友会の会員は高齢化して、後継者不足が問題になっているが、「幸い札幌支部は、この2~3年で加入してくださる方が増え、現在600~700人在籍しています」。札幌支部では年功序列を廃止し、能力主義。「私もいつか肩を叩かれる日が来るかもしれない」と、玉木さんは笑う。クマ捕獲に出動したときには報酬が支払われるが、その半額を支部に提供。後進を育てるために、猟友会札幌支部では初心者研修会、射撃大会など、さまざまなイベントを催す費用の一部に充てているという。「国が本腰を入れて警察のライフル隊というセーフティーネットを用意してくれたのは、本当にありがたいと思います。けれど、クマ防除の最前線で我々が行っていることと同じことを警察官がするのであれば、我々と同じような情報量と経験を共有しないとリスクは高い。我々も後継者の育成に力を入れますが、専門職の育成も待たれます」。

(エサ不足で凶暴化したヒグマ同士が繰り広げた壮絶な戦いの実態:中山 茂大)
今年度クマに襲われて死亡した人は13人にのぼり、過去最多の被害となっている(11月20日時点、環境省まとめ)。ノンフィクション作家・人喰い熊評論家の中山茂大さんは「クマは人間を襲うだけでなく、クマ同士で共食いをすることがある。約80年分の北海道の地元紙を通読すると、その壮絶な実態が確認された」という――。クマの冬ごもり時期に入った11月下旬になっても、いまだクマの人身事故が続いている。環境省の発表によれば、今年4月~10月末のクマによる人身被害件数が177件、被害者数が197人と、過去最悪となった。さらに11月25日には、新潟県胎内市の飯豊連峰胎内口登山道付近で男性の死体が発見され、顔や首などにひっかき傷があったことや、近くにクマ1頭がいたことから、クマに襲われた可能性が高いという。相次ぐクマによる被害の原因は、東北地方を中心に山の木の実が凶作であることが挙げられる。東北森林管理局によれば、今年は東北五県(青森、岩手、宮城、秋田、山形)すべてで「大凶作」と判定された。クマは冬ごもり前に大量の脂肪を蓄える必要がある。ヒグマ研究で知られる犬飼哲夫北大名誉教授によれば、その量は体重の25%にも達し、腰のあたりには皮下脂肪が10センチも蓄えられるのだという。だからこそクマは、秋になるとドングリやコクワ、山ブドウなどを大量に食べる必要がある。そしてそれが手に入らないとなれば、あらゆる手段を使って4カ月近くに及ぶ穴居生活に耐える栄養を確保しようとする。人間を襲うのもそのためである。そしてその一方で、人跡未踏の深山幽谷では、私たちの知らない恐るべき殺戮が繰り広げられている可能性がある。それはクマ同士の共食いである。筆者は明治・大正・昭和と約80年分の北海道の地元3紙を通読して、ヒグマによる事件を収集、データベース化して、拙著『神々の復讐』(講談社)にまとめたが、クマの共食い事例については極めて少ない。上述のように深山幽谷で発生するために、私たち人間にほとんど知られることがないからであるが、筆者が入手した資料には、肌が粟立つような壮絶な実態を記したものがある。以下はそのひとつである。この事件は、記録者の奥山氏が北海道上川地方の愛別町で伐採事業を担当していた昭和17年4月に、朝日村との境界、天塩川支流ペンケ川一線沢で目撃した出来事である。その頃、営林署の事務所前を通って山に入る2人の猟師がいた。夕方へとへとになって山を下りてきて、事務所でひと休みして帰る。そうした日が数日続き、奥山氏が「そんなに苦労して見込みはあるのか」と尋ねると、「見込みがあるから辛抱しているのだ」と笑っていた。ある日の夕刻、「二頭収穫したから明日、人夫を都合してくれ」という。肉は持てるだけやるというので全員が参加することになった。現場に近づくと猟師が手を挙げて一行を制止して偵察に行き、戻って手招きした。近づいて見ると、笹地と残雪の境目に漆黒の巨大な熊が横になっている。ここでは場所が悪いといって十人ほどで雪の上に引出して見るとなお大きく感じた。猟師のいうには六十貫(※編集部注:225キロ)はあるだろう。雄で七才ぐらいという。それからもう一頭はこちらですと猟師が案内する。百五十米くらい斜下の沢寄りの方に、大きなナラの立木と風倒木の間に一頭横になっている。これは四十貫(※編集部注:150キロ)ほどで五才ぐらいのやはり雄で背筋が見事な茶褐色の熊であった。それが片腕と肩腿の毛皮がぼろぼろになって肉が無い。誰も愕然として黙視するだけでした。猟師の話にはこの熊のどちらかが眠っているところを双方とも感づかず接近して、突然身を引くことの出来ない場面となり、漆黒の大熊と背筋茶褐色の剽豹な中熊との大格闘となったものらしい。双方の決闘は断末魔のうめきで静まった深山を震がいさせたことであろう。その場は土や石や笹の根が踏みしどり上げられて、周囲には土と小石と血が飛散っていた。ナラの木の張根がむけてドス黒い血がべっとり付いて当時の凄惨な場面を想像して身慄がとまらなかった。(「深山の出来ごと」(奥山吉雄)『寒帯林』67号)。猟師によると、それは4日前の出来事で、獰猛な褐色熊も、漆黒の大熊には敵わず、この場で打ち倒された。その肉を毎日食っては峰に上って身を隠していた大熊の通路を、猟師がひそかに狙って、ついに仕留めたのだという。剽悍な中型の赤グマは大型の黒クマに敗れ、身体がボロボロになるほど食い荒らされてしまった。二頭のヒグマによる壮絶な死闘が、北海道の山中で人知れず行われたのである。次の記録もまた北海道日高地方の深山で繰り広げられた恐るべき闘争である。四十三年初夏、静内営林署の西の沢合宿所近くで夜九時を過ぎたころ猛烈なヒグマの鳴き声が聞こえた。このあたりではヒグマの闘争は珍しいことではなかったが、翌朝ハンターが現場に行って見ると、小川の中に内蔵のはみ出した約三百四十キロの大きな雄グマが死んでいた。さらに、ここから約五十メートル離れたササヤブの中に背中をズタズタに引きさかれ、頭部を鋭くひっかかれた約百九十キロの雄グマがころがっていた。闘争の原因は発情のこじれかららしい。「発情期のヒグマは実に恐ろしい」と静内のハンター行方正雄さんもいう。(『ひぐま その生態と事件』斎藤禎男 昭和46年)。340キロの大型のヒグマと190キロの中型のヒグマとの激闘は、双方が致命傷を負う形となって終結したのであった。筆者の手元には他にも樺太で起きた事件の記録がある。五日午後三時頃、豊原郡西久保村大字軍川共同牧場で、柵内の飼い牛の頭数がどうしても不足なのであちらこちらを捜索中、場内東北の一隅に飼い牛一頭の股と首を喰い去られ、胴体を穴に埋めてある無残な屍体を発見したので、さては熊の仕業と屍体をそのままにして、なお付近各所の足跡を捜してみると、現場より百間と隔たない所に三才くらいの一頭の熊の屍体が一面、ツメ跡生々しく、鮮血で四辺を紅にして横たわっていたので、部落へ取って返し、重立ちの者と、なおよく取り調べたところ、最初二頭の熊がこの牧場を襲ったが、一頭の牛を屠った際に、その肉の争奪により、たちまち激烈なる闘争をひき起こし、甲の熊は遂に乙の熊を斃死させたものと推測されたが、同牧場の飼い牛はなお頭数が不足していて、また他の熊まで斃した熊は、さぞかし希代の獰猛な巨熊だろうと見込まれた(後略)(「樺太日日新聞」大正5年10月8日)。同じ獲物をねらって共闘した者同士が、今度は獲物の奪い合いで殺し合いを演じる。凄絶な野性の実像を見せつけられるようである。最後に共食いではないが、実験用に飼育されたヒグマとツキノワグマが突然闘争を始め、ヒグマが勝ちを収めたという珍しい記録である。私どもは北大の博物館で隣りあわせの檻の中で五才になる長野県産のツキノワグマの雄と、四歳の渡島産のヒグマの雄を別々に飼っていた。当時はどちらも同じくらいの大きさで、二歳の子熊の時から飼っていたもので、掃除の時だけ檻の仕切りを開けて一所にしたが、いまだかつて喧嘩をしたことがなかった。ところがどうしたことか、晩秋のある日のこと、一所にした途端に猛烈な闘争がはじまって、まったく手がつけられなくなってしまった。その光景は真に凄惨そのもので、以前には餌を与える時には体に似合わない大きな声で鳴いたことがあるのに、この闘争ではいずれもうなり声ひとつ出さず、互いに血走った眼で隙をねらって猛然襲いかかり、手や爪は使わずに咬みあいばかりの喧嘩で、本能的に内股と下腹の間の毛の薄いところを目がけて咬みつき、組み合ったと思うとまた離れて、息づかい荒くにらみあう様相はものすごく、檻の外から怒鳴りたてる人声には気もとめず、ひたすら相手を斃そうと決死の闘志には、われわれは見るにたえなくて眼をおおってしまった。身体の大きさは同じで、体力も同格、たがいに負けをとらないが、ヒグマが頭を振って咬みつく一撃は、毛の短いツキノワグマにはそのたびに有効な衝撃となるのに、ツキノワグマは顔が平らで顎が短く、相手のヒグマは毛が長いために渾身のひと咬みも皮に止まって肉に達しない。結局はツキノワグマの腸が引き出されて、ついに斃れてしまった(犬飼哲夫『林』1952年9月号)。エサ不足が深刻である今年は、人里から遠く離れた深山幽谷のあちこちで、このような凄まじい闘争が繰り広げられているに違いない。前出の犬飼教授はまた、次のように指摘する。こんなの(エサに飢えた個体)が、雪が降ると“穴もたず”になるんです。このまま冬眠しても餓死することがわかっているから、雪が降っても穴ごもりをしないで手あたりしだいに家畜や人間を襲うようになる。雪が降ってもクマが出没するようならなんとしても殺さなきゃいけません。でなければ反対に人間がやられます。穴持たず」の恐ろしさについては、以前の記事〈遺体の両目は飛び出し、顔面はグジャグジャ…札幌に現れ、幼児含む4人を食い荒らした「最悪の殺人グマ」の正体〉で詳述したとおりである。闘争に敗北した手負いクマが、空腹を抱えて「穴持たず」となり、人里に下りてくる。それはもはや最悪のシナリオと言っていいだろう。

(後を絶たない市街地へのクマ出没、自動ドアの開閉を手動に切り替える施設も:岩手)
また、盛岡市中心部でクマの目撃です。市街地での出没が相次ぐ中、付近では建物への侵入を防ごうと対策を取っています。1日午前7時半ごろ、盛岡市内丸にある「もりおか歴史文化館」前の地下駐車場の入り口付近で、通行人がクマ2頭を目撃し、警察に通報しました。クマはその後、姿を消し、現時点で被害の情報は入っていません。内丸地区では、2日前と3日前にもクマが目撃されています。また、1日朝早く、付近の交差点でクマが目撃された盛岡市立厨川小学校は休校の措置を取りました。1日朝以降、目撃情報が寄せられていないことから、2日朝から再開する予定です。こちらは、盛岡市の岩手教育会館で11月18日に撮影された映像です。1日にクマが目撃された「もりおか歴史文化館」から西におよそ240メートル離れています。岩手教育会館 谷地舘誠也主事「ちょっと大変ではあるが、みなさんに手で開けてもらっている」。市街地でのクマの出没が相次ぐ中、自動ドアの開け閉めをクマの出没状況に応じて、手動に切り替える対策を取り、建物への侵入を防ごうとしています。岩手教育会館 谷地舘誠也主事「盛岡といえば結構、都会の方なので、ここまで来て、歩いているとなるとちょっと怖い」。岩手教育会館は来館者がドアを開けやすいよう、取っ手を付けることを検討しています。岩手県は1日、県内に出している「ツキノワグマの出没に関する警報」と「クマ被害防止取組強化月間」を12月末まで継続・延長すると発表しました。

(雪の中でカキを食べる「熊」:秋田)
秋田県は11月28日、公式X(@pref_akita)で「雪の中でカキの実を食べる熊」の写真を公開した。食べ物がある限り、氷点下や積雪の中でも冬眠せず活動するケースがあるといい、「カキの実はすべてもぎとる/枝を落とす/木を伐採するなどの対策により、クマに食べさせないようにしましょう」と注意喚起している。秋田県が投稿した写真は、鹿角市が提供したもの。今年1月11日に撮影されたもので、雪に埋まったカキの実を食べるような熊の様子が写っている。この写真を見た人たちからは、「熊は寒くなると自然に冬眠するものだと思っていました」「みんな気をつけて!」といったコメントが寄せられていた。同県では10月以降、熊がカキの木に多数引き寄せられているという。直近では11月10日、鹿角市花輪で熊による人身事故も発生している。県は「季節を問わず、いつでも・どこでも・誰でもクマに会う可能性がある」と、次のような対策を徹底するよう周知している。①鈴・ラジオ・スマホなどで音を立て、人の存在を知らせて歩く②熊を見たら市町村・警察へ連絡するとともに、出没情報共有システム「クマダス」で情報共有する③田畑や動物小屋に電気柵を設置したり、廃棄作物を適正に処理したりし、農地に食べ物を残さない④米・米ぬか・家畜飼料・生ごみなどを放置しない⑤物置や車庫の扉は普段から必ず閉める⑥小屋等に侵入された場合は、居座りの有無に関係なくすぐ市町村や警察へ連絡する⑦集落周辺のクリ・カキなど実のなる木は、利用しない場合は伐採も含めて管理する⑧家の周りや農地周辺のやぶは刈り払って見通しを良くする。このほか、ガラス戸や自動ドアから建物へ侵入するケースも報告されていることから、ガラス面に飛散防止シートを貼るなどの対策も有効という。

(クマ出没、休校も:岩手)
盛岡市内では1日朝もクマの目撃が相次ぎ、休校になった小学校も出ています。クマが目撃されたのは盛岡市前九年にある厨川小学校近くの交差点です。午前5時15分ごろ、「クマ1頭が横断した」と通行人から通報がありました。クマは体長1メートルほどと見られ、その後の行方はわかっていません。厨川小学校は児童の安全確保のため休校となりました。このほか1日朝はもりおか歴史文化館前の地下駐車場の入口近くでクマ2頭が目撃されたほか、上飯岡の社会福祉施設のグラウンドでも体長1メートルほどのクマが目撃されています。

(中学校に侵入したクマが逃走する瞬間をカメラがとらえた:)
11月30日、山形県山形市の市街地にクマが出没し、目撃情報が相次ぎました。山形市若宮にある中学校の敷地にクマが侵入するなどしましたが、そこから逃走する瞬間を偶然にもカメラがとらえました。視聴者提供の「その瞬間」と、警察が声を張り上げる緊迫の様子を動画で掲載します。クマは相当大きく、また痩せているようには見えません。今のところ人や物への被害は確認されていませんが、こうしたクマが市街地にいる現状が、今も住民の頭を悩ませています。11月30日、山形県山形市の市街地ではクマの目撃が相次ぎ、市や警察が警戒を続けています。山形市によりますと、30日の午前5時ごろ、山形市あかねケ丘三丁目地内でクマ1頭の目撃が2件相次ぎました。その後、午前6時ごろには山形市若宮一丁目で、市立第十中学校の敷地内に入っていくクマ1頭が目撃されました。これらのクマは体長およそ1メートルで、同一個体とみられています。クマはしばらくして中学校敷地から逃走しました。さらに、市立第十中学校から南におよそ1キロ離れた山形市桜田西四丁目の路上でも、体長およそ1メートルのクマ1頭が目撃されました。クマは住宅前の道を北の方角へ走っていったということです。周辺は住宅密集地で、目撃された場所の近くには山形大学附属病院があります。市や警察がパトロールを続けました。その後30日の夜には南館で目撃されています。

(登下校、終日クマ警戒:福島)
福島県福島市の中心部でクマの目撃が相次いでいることを受けて、警察や市、目撃現場に近い小中学校は1日、見回りを強化するなど対応に追われた。11月30日にクマが目撃された同市森合では1日朝、市職員が、公用車のスピーカーから注意喚起を呼びかけながら周辺を巡回した。福島署も複数台のパトカーで周囲を警戒するなどした。福島四中や森合小では、登下校時間に教職員らが、通学路に立ち、児童生徒を見守った。森合小では保護者に子どもたちの送迎を依頼。福島四中は普段徒歩通学の生徒の自転車通学を許可し、部活動を中止にした。5日まで同様の対応を行う。渡部正晴校長は「生徒の安全を考えるとしばらくは安心できない。少しでも明るい時間に下校してもらうなど安全を最優先に対応していきたい」と話した。市教委は、クマが校舎内に侵入するのを防ぐため、一部の小学校で、校舎昇降口や玄関にあるガラス扉の下方を補強している。クマが逃げた可能性がある信夫山では、市が「付近でクマ目撃情報あり」との張り紙を掲示した。山中にある観光案内施設「信夫山ガイドセンター」は、予定されている行事などの中止や延期を検討するという。同センターを運営するNPOストリートふくしまの山尾良平理事長は「信夫山には多くの利用者が訪れるが、20世帯ほど民家もある。高齢者も多いため、本当に不安だ」と困惑した。県警によると、今年のクマの目撃件数は11月末時点で、1905件(前年同期比1294件増)、人的被害は21件24人(同14件17人増)となり、過去最多の更新が続いている。

(動物と車の衝突相次ぐ)
宮城・大崎市で22日、運転中の車の前に突然イノシシ3匹が飛び出し、衝突する事故が発生した。ドライバーは修理費約12万円の被害に遭ったという。また、栃木・上三川町では15日、早朝に紅葉を見に行く夫婦の車の前に中央分離帯から大きなシカが飛び出し、避けきれずに衝突した。宮城・大崎市で22日午後6時半頃、仕事帰りで田んぼ沿いの道を走っていたドライバーのカメラが捉えたのは、突然飛び出してきたイノシシだ。ギリギリで回避したと思った次の瞬間、さらに2匹が飛び出してきて衝突した。イノシシは衝撃でゴロゴロと転がっていく。目撃者は「ブヒッ!と言いながら逃げていった。ショックだった。かなり衝撃が強かったので、これは修理費がいくらかかるかと」と話す。ひび割れたバンパーは、修理費用は約12万円になるという。一方、栃木・日光市の上三川町の路上で15日午前5時半頃、紅葉を見に行こうと、早朝に出発した夫婦のカメラが捉えたのは、中央分離帯から飛び出してきたシカだ。妻が「きょう2時に起きて…」と言うと同時にシカが飛び出し、夫が「ああっ!!」と驚きの声を上げた。あまりに突然のことに、避けることができず衝突した。目撃者は「バゴーン!という感じ。(体長は)大きかった。車の幅ぐらいはあった」と話している。シカは衝突直後、道路の外に逃げたとみられる。目撃者によると、衝突の影響で車から煙が出て走行不能になり、警察に連絡してレッカー車を呼んだという。もみじ狩りを楽しみにしていた夫婦は「タクシーで宇都宮まで行って、ギョーザを食べて帰った。近くの公園で紅葉の写真も撮った」と無事観光を楽しんだ様子だ。

(富士山ジビエセンターDEAR DEERで学び、体験する:静岡)
株式会社ふじよしだまちづくり公社とAppBank、KCJ GROUPが協力し、2026年1月17日に「Out of KidZania in 富士山ジビエセンターDEAR DEER」を開催します。このイベントでは、小学生から中学生を対象に、鳥獣被害の現状を学びながら、捕獲した野生鳥獣を利用した鹿肉ソーセージ作りや鹿革のコインケース作りを体験します。参加者は地域資源としてのジビエの重要性を理解し、将来の職業選択や社会貢献への関心を深めることが期待されています。申込は12月1日から開始します。株式会社ふじよしだまちづくり公社と、ジビエのポータルサイト「ジビエト」を運営するAppBank株式会社、さらに「キッザニア」の企画・運営を行うKCJ GROUP株式会社が共同で企画した「Out of KidZania in 富士山ジビエセンターDEAR DEER」が、2026年1月17日(土)に開催されます。このイベントでは、参加する子どもたちが富士山ジビエセンターDEAR DEERにて、鳥獣被害の現状やその対策について学び、実際に鹿肉ソーセージ作りや鹿革を使ったオリジナルコインケース作りを体験します。

(「わかやまジビエフェスタ」開幕:和歌山)
和歌山県内で捕獲されたシカやイノシシの肉を使った「ジビエ料理」を県内の料理店やホテルなどで提供する「わかやまジビエフェスタ2025ー2026」が、2025年12月1日からスタートしました。初日のこの日、フェスタに参加している和歌山県庁北別館1階の「きいちゃん食堂」に宮﨑泉知事が訪れ、昼食に県内産イノシシ肉を使ったキーマカレーとコロッケの定食を食べてPRしました。キーマカレーとコロッケにはいずれも県内産で捕獲されたイノシシ肉が使われ、サラダ付きで税込み990円で販売されています。宮﨑知事は「とても美味しい」と感想を述べ「私もジビエフェスタが大好きで、レストランやホテルが特別にジビエメニューを提供するのがとても嬉しい。ジビエが美味しい冬に参加しないと損をするので、ぜひ、期間中に食べに来て欲しい」と、県民や観光客に参加を呼びかけました。今回で15回目となる「わかやまジビエフェスタ」には県内の88店舗が参加し、県内で捕獲し食肉処理されたシカやイノシシの肉を使った和洋様々なジビエ料理が期間限定で提供されています。これにあわせて「モバイルスタンプラリー」も行われ、抽選で県内の宿泊施設のペア宿泊券や、ジビエの詰め合わせなどが当たります。県によりますと、県内で2024年度に捕獲されたイノシシはおよそ1万2500頭、シカはおよそ1万5千頭で、それらのおよそ7.6%が県内の食肉加工施設でジビエ肉として処理されているということで、県では消費拡大と獣害対策の両立を目指しています。「わかやまジビエフェスタ」は、2026年2月28日まで行われています。

(「やまなしジビエフェア」2月末まで:山梨)
ニホンジカやイノシシなどの狩猟が全国的に15日に解禁され、山梨県内でも「やまなしジビエフェア」が始まった。県は適切に処理されたシカ肉を「やまなしジビエ」として認証しており、参加店では安心安全なシカ肉料理が食べられる。来年2月末まで。森林が約8割を占める県内では、シカによる農作物への被害額は、2024年度は約3千万円。サルやイノシシなどを含めた全体の被害額1億2900万円の2割強を占める。捕獲したシカの活用を図るため、県は2017年から「やまなしジビエ認証制度」を始めている。適切な衛生管理や処理を行っているとして、県が認定する施設は、北杜市、富士吉田市、早川町、富士河口湖町、丹波山村の5自治体にひとつずつある。24年度は、認定施設から1049キロが出荷された。フェアに参加する16店では、この認定施設で加工されたシカ肉料理が味わえる。県農政部販売・輸出支援課の柳沢幸喜課長は「認定施設での適切な処理でジビエ特有の臭みや硬さを減らした。脂肪が少なく高たんぱく質でヘルシーなシカ肉は、ワインや県産食材と合います」とアピールする。

(カツライス×養護学校×ジビエ:島根)
島根県松江市のソウルフードとして知られる「カツライス」。市内の多くの飲食店で味わえる人気のメニューですが、そのカツライスを松江市内のある学校の食堂でメニュー化する取り組みが行われました。しかも、ジビエを使ったまったく新しいカツライスの誕生です。揚げ立てのトンカツをご飯にのせ、デミグラスソースをかける。これが、松江のソウルフード「カツライス」。100年近くも前に、松江で誕生したとされ、今や、観光客にも人気のメニューとなっています。松江カツライス研究会 河合賢治代表「松江のカツライスはいつからありますか?」「昭和7年から」。松江カツライス研究会代表、河合賢治さん。大阪府出身の河合さんは、35年ほど前に松江に移住し、カツライスと出会いました。そして、その魅力に取りつかれ、カツライスの普及活動を続けています。松江カツライス研究会 河合賢治 代表「(店の)数が少なくなってきて、このままだと、せっかく松江で生まれた貴重な料理なのに、カツライスが、もしかしたらなくなっちゃうかもしれない」。そんな、河合さんに届いたのがオリジナルカツライス、メニュー化のオファー。オファーしたのは、なんと、松江養護学校です。松江養護学校乃木校舎 吉岡未希教諭「松江養護学校が地域との連携を密にしていることもあって、地域の中にある学校のサービスショップとして美味しいものを提供している一員ということを自覚してもらいたいと思っています」。松江養護学校乃木校舎では、「働く力を養う」ことを目的に、高等部の生徒が、様々な取り組みをしています。校外の職業体験はもちろん、学校の中でも、コンビニの営業や自動車の洗車・タイヤ交換など、実際に代金をもらって働くことで実戦的な力を身につけています。その中で、食堂サービス班が取り組むのが、校内にある食堂「みのり亭」。月に4、5回程度営業し、本物レストランさながらの定食メニューやスパゲッティなどを提供しています。この「みのり亭」の新メニューの候補となったのが「カツライス」。目指すのは、どこにもない松江養護学校オリジナル。なんと、ジビエをつかったカツライスです。松江カツライス研究会 河合賢治 代表 「普通のデミグラスソースももちろんおいしいけど、ここならではみたいなものが出来れば、おもしろいかなと」。河合さんは、松江市でも有害鳥獣として、駆除の対象となっているイノシシの骨を使ったデミグラスソースを考えました。松江カツライス研究会 河合賢治 代表「(イノシシの)数を減らしてあげないと、イノシシにとってもちゃんとした環境で過ごせないし、人間にとってももちろん(良くない)。だったら、イノシシを使って、デミグラスソースを作ればいいじゃん、と思いませんか?」。早速、始まったデミグラスソース作り。河合さんが考案したレシピをもとに松江養護学校食堂サービス班の生徒たちが、2日かけて、イノシシの骨を煮込みデミグラスソースの素となる「フォン・ド・ジビエ」を作ります。これにトマトペーストや調味料などを加えて、再び煮込めば、カツライスに欠かせないデミグラスソースが完成します。さて、その味は?松江カツライス研究会 河合賢治 代表「ちゃんと野趣が残っているんで、これは想定以上」。生徒たちは、レストランで安定して提供できるよう様々、試作を重ねました。そして、いよいよ、カツライス販売の日。松江養護学校乃木校舎 古瀬知美教諭「松江のカツライスだとトンカツだけど、やっぱりうちらしくイノシシを、頑張って使おうということで」。ソースだけでなく、カツもイノシシに。松江養護学校のレストラン「みのり亭」では、以前から、イノシシ肉を使った料理を提供していました。そこで、カツライスのカツも、イノシシに変更することに。丁寧に肉を処理し、ミルフィーユ状に重ね、食べやすくします。そして、営業開始の時間。なんと、カツライスは提供前から予約で完売する人気に。そして、松江のカツライス誕生当時と同じアルミの皿に、ワンプレートでサラダも一緒に盛り付ければ、松江養護学校オリジナルフォン・ド・ジビエのデミグラスソースとイノシシ肉のカツを組み合わせたカツライスの完成です。松江カツライス研究会 河合賢治 代表「奥底にジビエを感じる」「そういった点では、唯一無二のカツライスになっていると思う」。デミグラスソースを一から作るという一大プロジェクトとなった今回の挑戦。松江カツライス研究会 河合賢治 代表「一般の店で、このカツライスを作るのはなかなか難しい」「ここでしかできない料理だと思う」「100年、松江で続いた郷土料理だから、これをんなんとか残して、さらに活かしていければいいかなと思う」。カツライスにかける熱い情熱と生徒たちの料理への真摯な思いが重なり、100年の歴史を未来につなぐ新たな味が誕生しました。

(レトルトでジビエの可能性を引き出す:東京)
東洋製罐グループホールディングス株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:中村琢司)は、辻調理師専門学校(本部:大阪市、理事長:辻芳樹)と日本ジビエ振興協会(本部:長野県、代表理事:藤木徳彦)と共同で、レトルトでジビエの可能性を引き出す「+GIBIERプロジェクト(プラスジビエプロジェクト)」を始動しました。本取り組みは、2021年に辻調理師専門学校と共同で発足し、2024年9月に発表した、食を通じた社会課題解決を目指す「+Recipeプロジェクト(プラスレシピプロジェクト)」※1の中で、ジビエに特化して展開するものです。そして本日、約3年間の研究開発を経て誕生した 「長野のジビエ三種缶」を、クラウドファンディングを通じて販売開始しました。食材を常温で長期保存可能とするレトルト技術を応用し、野生鳥獣の利活用という社会課題の解決を目指し、プロジェクトを推進していきます。近年、野生鳥獣による農作物被害は日本における重要課題の1つとなっています。農林水産省のデータ※2によると、令和5年度の野生鳥獣による全国の農作物被害は164億円(対前年度+8.0億円)、被害面積は4万1千ha(同+7千ha)、被害量は51万t(同+4万t)と増加傾向にあります。特に昨今ではクマによる人的被害なども増加し、対応を迫られています。こうした被害の増加を背景に、野生鳥獣の捕獲量も年々増加傾向にあります。被害防止のための補助金、自動捕獲装置等によるスマート捕獲普及事業、自治体主導の対策強化や「鳥獣被害対策優良活動表彰」など、公的な対応や報道での注目が高まっていることも要因として挙げられます。一方で、捕獲後の利活用については年々増えてはいるものの、未だに約9割が廃棄処分されているのが実態です。こうした状況を受け、2021年に辻調理師専門学校と共同で発足した「+Recipeプロジェクト」における第2弾の取り組みとして、レトルト技術でジビエの利活用を推進すべく、日本ジビエ振興協会と共に「+GIBIERプロジェクト」を立ち上げ、ジビエの新しい価値を提供できる社会システムを作り上げることを目標に活動を開始しました。

(「シカのふん」で着火剤製作:静岡)
学校のグラウンドに落ちているシカのふんを使って地域活性化につなげようと、浜松市天竜区佐久間町の浜松湖北高佐久間分校の生徒が、ふんを活用した着火剤作りに挑戦した。完成した着火剤はキャンプ場利用者らに使ってもらおうと、同校近くの上島キャンプ場や愛知県東栄町の奥三河紅葉園などに配布した。

(クマ出没:宮城)
柴田町によると、2日、柴田町入間田本屋敷でクマが出没したような痕跡が見つかりました。

(クマ出没:宮城)
富谷市によると、1日午後3時45分ごろ、富谷市石積荒屋敷前にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、11月30日午後7時15分ごろ、仙台市太白区秋保町境野上戸にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、11月30日午後7時10分ごろ、仙台市太白区秋保町長袋原にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、11月30日午後5時10分ごろ、仙台市泉区野村中岫にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
南三陸町によると、1日午前9時20分ごろ、南三陸町志津川立沢にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
色麻町によると、1日午前、色麻町黒沢八幡にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
登米市によると、1日午前6時ごろ、登米市中田町浅水浅部玉山にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
色麻町によると、1日午前8時40分ごろ、色麻町高城にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
栗原市によると、1日午前6時20分ごろ、栗原市瀬峰下田にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
富谷市によると、30日午後9時ごろ、富谷市三ノ関坂ノ下にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
栗原市によると、30日午前11時40分ごろ、栗原市栗駒松倉新倉にクマが出没しました。

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(クマに襲われ80代男性けが:福井)
27日午後1時15分頃、福井県勝山市平泉寺町大渡で80歳代男性がクマに襲われてけがを負ったと同市が発表した。発表によると、男性は意識があり、命に別条はないという。クマの行き先は不明という。現場は、九頭竜川近くの集落。

(未明の駅前トイレでクマと遭遇:群馬)
28日午前1時20分頃、群馬県沼田市清水町のJR沼田駅東口にある公衆トイレ内で、同市の警備員男性(69)がクマに襲われ、右足を引っかかれて軽傷を負った。県警沼田署によると、男性がトイレから出ようとしたところ、中をのぞいていた体長1~1・5メートルの成獣とみられるクマが侵入してきたという。尻餅をついた男性が大声を上げ、足をばたつかせたところ、クマは逃げていったという。現場付近は住宅が多く、県警が住民に注意を呼びかけている。

(イノシシが住宅街に、目撃相次ぎ3人けが:新潟)
イノシシが新潟市内で出没し、人や車に衝突するなどして3人がけがをしました。警察によりますと、29日午前9時すぎから、新潟市の江南区と秋葉区でイノシシが人や車に衝突したという通報が十数件寄せられました。県の猟友会と警察官などがイノシシの行方を追ったところ、午後1時すぎ、やぶの中にいる1頭を発見し、近くの用水路に落ちたところを電流が流れるやりを使って駆除しました。イノシシは雌で、体長はおよそ1メートル30センチでした。これまでに50代の男性がイノシシに衝突されて軽いけがをしたほか、70代と80代の女性もぶつかられたり、驚いて転んだりしてけがをしています。

(13警察にライフル配備へ、クマ駆除想定)
相次ぐクマによる被害を受けて、警察庁は28日、東北地方など13道府県警に計44丁のライフル銃を配備することを決めた。各警察の機動隊が訓練を重ね、今後の被害の発生状況に応じて駆除に出動することを想定している。警察庁はクマの駆除に適したライフル銃や銃弾のほか、ヘルメットやジャケットの購入費用として、今年度の補正予算に4億8千万円を計上した。早期の配備を目指す。ライフル銃の配備先は東北6県のほか、クマによる被害が多い北海道、新潟、長野、管区警察局がある埼玉、愛知、大阪、広島。管区警察局の周辺でクマが出没した場合は、機動隊員がライフル銃を装備して派遣される可能性があるという。

(クマ対策に34億円、公務員ハンター人件費など)
人身被害が相次いでいるクマの対策費用として、環境省は約34億円を、今臨時国会に提出予定の補正予算案に計上する。地方自治体が雇うガバメントハンター(公務員ハンター)の人件費などに充てる。ガバメントハンターの配置や、クマを引き寄せるカキなどの果樹の伐採、やぶを刈るなどクマと人里との間に設ける緩衝帯の整備といった、地方自治体むけの交付金が主で、28億円を計上した。国による個体数推定調査などにも5億円を充てており、まずは被害が大きい東北を念頭に調査の準備を進める方針だ。今年度はクマによる死者が20日現在で13人に上り、過去最悪の事態となっている。「緊急事態」として、11月中旬に官房長官をトップとする関係閣僚会議で対策パッケージがまとめられていた。

(陸上自衛隊の活動は11月末で終了へ:秋田)
クマ対応にあたる市町村や猟友会の支援を目的とした陸上自衛隊の活動が、当初の予定通り、今月いっぱいで終了することになりました。元自衛官で、自衛隊の派遣を要請した鈴木知事は、県民を代表して感謝の言葉を述べました。小泉防衛相「自治体と緊密に連携するとともに、地元の猟友会の皆さんから助言を受けながら、隊員の安全確保に万全を期すなど、十分な準備のもと活動に臨んだことで特段の課題が生じることもなく無事に活動を終了できる見込みであります」。小泉防衛大臣は28日、閣議後の記者会見でこのように述べ、陸上自衛隊が続けてきたクマ対応への支援活動を、当初の予定通り、今月いっぱいで終えることを明らかにしました。活動に参加したのは秋田駐屯地の隊員たちで、今月5日から27日までに県内11市町村で、捕獲用のおりや駆除したクマの運搬などを行いました。秋田駐屯地によりますと活動に参加した隊員は延べ815人で、5日からきのうまでの23日間のうち17日間、現場での活動にあたりました。国防に関わる任務の傍ら、“クマへの対応”という異例の活動に臨んだ自衛隊に対し、元自衛官でもある鈴木知事は県民を代表して感謝の言葉を述べました。鈴木知事「前例のほぼない、非常にわかりづらい活動であったかもしれませんがまずは現場の隊員の皆さん、そして防衛省の関係者の皆さん、大変迅速でかつ親身な対応をしていただきました。おかげで駆除の現場、また住民の皆さんから安心の声、感謝の声多数届いております。心から県民を代表して自衛隊の皆さんには御礼を申し上げたいと思います」。28日、最後の活動が行われた鹿角市では市内に設置されていた捕獲用のおり1基を回収しました。市内で運んだおりの数は、のべ51基に上るということです。派遣が始まった今月5日から自衛隊の支援を受けてきた鹿角市。鹿角市 笹本真司市長「市民のみなさんも、とくに農家さんとか含めてですね非常に勇気づけられたところもありますし、実際にいろいろお手伝いいただく中で助けれられた部分もありますし。またおりの移動のノウハウとかそういったもの、むしろですね自衛隊さんのやり方が今後参考になる部分とかもあったりして、スピーディーに来ていただいてそして3週間活動いただけたこと本当に感謝したいと思います」。秋田県以外への派遣について小泉防衛大臣は「現時点ではさらなる自衛隊の派遣は考えていない」と述べています。

(死んだ野生のイノシシの豚熱感染が3例確認、県が経口ワクチン散布:鹿児島)
霧島市で死んだ野生のイノシシの豚熱感染が3例確認されたことを受けて、県は経口ワクチンを散布しました。県によりますと、今月25日に、霧島市霧島田口で死んだ野生のイノシシが見つかり、遺伝子検査の結果、豚熱ウイルスの感染が確認されました。野生イノシシの豚熱感染は、今シーズン県内3例目です。県は、27日午前に霧島市、午後から曽於市でイノシシが食べることで豚熱の免疫を得る経口ワクチンを散布しました。死んだイノシシが見つかった場所から半径概ね10キロ圏内では、10の養豚場で約1万4300頭が飼育されていますが、これまでのところ異常は確認されていません。県は、養豚場に侵入防止対策の徹底を改めて指導し、野生イノシシの捕獲や検査を強化しています。

(野生のイノシシから豚熱、養豚場に異常なし:鹿児島)
27日、霧島市で見つかった野生のイノシシの死骸から県内で4例目となる豚熱ウイルスが検出されました。県によりますと、27日、霧島市で野生のイノシシの死骸が見つかり、遺伝子検査で豚熱への感染が判明しました。豚熱は豚やイノシシの伝染病で強い感染力と高い致死率が特徴です。霧島市では、今月19日以降、死んだ3頭の野生のイノシシから豚熱が確認されていて、今回で4例目です。死骸が見つかった地点から半径10キロ圏内にある県内の10の養豚場に異常は見つかっていません。県は養豚場に防護柵の再点検など衛生管理の徹底を指導するほか、野生のイノシシの死骸を見つけても近づかず、県や市町村に連絡するよう呼びかけています。

(野生イノシシ8頭豚熱感染:三重)
三重県は26日、県内で今月中旬に捕獲した野生イノシシ95頭のうち鈴鹿、亀山、津、松阪、志摩、大台の6市町で捕獲した8頭について、豚熱への感染を確認した。

(再来年も凶作?クマ出没に警戒:秋田)
クマの人的被害が深刻な秋田県で、主な餌となるブナの実の結実が2021年以降、「凶作」と「豊作」を隔年で繰り返していることが29日、県林業研究研修センターの調査で分かった。

(クマ駆除へ、ライフル銃の訓練開始:長野)
警察官によるライフル銃でのクマの駆除を可能とする国家公安委員会規則の改正を受け、県警の機動隊員はクマ対策を目的としたライフル銃の訓練を始めた。警備2課によると、すでに警察庁が開いたクマの生態や急所を学ぶ研修と射撃訓練に参加。今後、県内の自治体や猟友会と連携した訓練も始める。

(大館市長、公務員ハンター導入に慎重な考え:秋田)
秋田県大館市の石田健佑市長は28日の定例会見で、クマ被害対策の一環として狩猟免許を持つ人を公務員に任用する「ガバメントハンター」について、活動体制や費用負担などの面で課題があるとして、現段階では採用に慎重な考えを示した。

(焼却施設が限界、駆除数17倍で処理に追われる自治体が疲弊:北海道)
2025年度、北海道でこれまで駆除されたクマの数は960頭を超えました。駆除されたクマは、その後どうなるのでしょうか。11月25日夜、北海道苫前町の箱わなで捕獲されたヒグマ。体重は約400キロにのぼります。2週間前には、同じ個体の可能性がある巨大グマが、シカ肉を仕掛けた300キロ以上の箱わなを、いとも簡単になぎ倒す映像が捉えられていました。駆除されるクマの数も増加していて、処理する焼却施設は、「 9月と10月はフル稼働。今年は数が異常すぎる」と四苦八苦しています。北海道南部の上ノ国町では2025年に入り、町内で駆除したクマの数は104頭。これは、6頭だった去年の約17倍にも上ります。役場の職員は、通常業務に支障が出るほど、対応に追われているといいます。通常、駆除したクマはハンターなどが解体し、その日のうちに処理場に運ばれます。しかし、作業が追い付かず、町は駆除したクマを保管する冷凍庫を設置しました。上ノ国町農林課 杉野匡課長「冷凍庫を使い出したのは今年からです。駆除数が多くなったことで、当日に搬出できない場合も出てきて、夏場に腐ったり、臭いが強かったりするから、一時的に保管するために使っていました」。しかし、冷凍庫にはクマ1頭分が入るスペースしかなく、収容量を上回ることもありました。上ノ国町農林課 杉野匡課長「そういうときはやむを得ず、冷凍庫の周りに一時的に置いたときもありました。今までこれだけ駆除したのは聞いたことがありません」。江差町にある南部桧山清掃センターは、上ノ国町を含む周辺5町のゴミ処理などを担う施設で、駆除したクマの焼却処理も行っています。南部桧山衛生処理組合 上戸等 場長「去年は大体30頭ぐらいだったけど、もうすでに4倍を超えている。もう120頭ちょっとぐらい来ている」。こちらの焼却施設では、1頭のクマを焼却するために約100リットルの灯油の使用します。去年の使用量は年間で3000リットルでしたが、今年はすでに7000リットルを超え、費用も倍増しています。処分する頭数が多いときは、焼却できない状況もあるといいます。南部桧山衛生処理組合 上戸等 場長「1日2頭が限界で、だんだん燃やせなくなって、やっぱり腐ってくるんです。そういった場合には埋める。これまでは、適正に焼却できていたので、埋めた経験はほとんどありません」。今年はドングリなどの餌が山でとれず、餌を求めて市街地の畑や公園に出没していました。その市街地でも、日によっては雪が積もり、餌がとれなくなってきているため、専門家は12月上旬ごろに冬眠に入る個体が多いとみています。

(「緊急銃猟」、県警が訓練:静岡)
クマ出没時に自治体判断で市街地での発砲を可能とする「緊急銃猟」の運用開始を受け、静岡県警は27日、関係機関を招いた対処訓練を藤枝市の県警察学校で行った。出没を認知してから市町の判断で緊急銃猟を行うまでの一連の流れを実演し、市町職員や猟友会員らと確かめた。山林に隣接する住宅街にクマが出没し、負傷者が出ているとの想定。関係機関職員役を含めて警察官が分担して演じた。現地本部で市職員や猟友会員、警察署員が情報を共有し、クマの所在をドローンで確認した上で、市職員が緊急銃猟を判断。住民の安全確保に向けた避難誘導と交通規制を進め、猟友会員が駆除するまでの流れを確認した。県警生活保安課の秋山友昭課長補佐は、緊急銃猟の条件の一つ「住民に危害が及ぶ恐れがない」ようにする対応に時間がかかると説明。「いかに避難が必要な範囲を設定し、早期に完了させるかがポイント」と伝えた。県内では今年、クマとみられる動物の目撃情報が100件以上寄せられているという。同課許可事務指導管理室の山内兼光管理官は「関係機関と連携して迅速、的確に行動できるよう努める」と力を込めた。

(猟友会、捕殺に苦慮も対応に追われる:青森)
八戸市が現在、市街地に出没するツキノワグマへの警戒を呼びかけている。クマの出没状況を取りまとめる同市農業経営振興センターによると、市内のクマの目撃情報は2020年の56件から増加傾向にある。今年は11月26日現在で107件。人的被害や農作物への被害は報告されていないが、昨年同月の41件を大幅に上回る。海沿いの鮫町・白銀町地区、内陸部の田面木地区、山沿いの南郷地区など、中心街以外の広範囲で目撃されているという。同センターによると、生息域を拡大するシカやイノシシとの餌の競合や、主食のナラの実の不足が原因の一つだという。職員の高山紀行さんは「クマ対策にはさまざまな議論があり、現時点で正解が分からない。クマに接触しないような対策をお願いしたい」と話す。市では、青森県のマニュアルに基づき、畑に野菜を廃棄しないこと、餌になり得るごみを適切に処分すること、クマの隠れ場所になるような雑草地帯の草刈りをこまめに行うこと、クマが通った場所に近づかないことなどを呼びかける。「これほど木の実や山の恵みがない状況は見たことがない。この環境下で縄張り争いに敗れたクマが、山を下りて来ていることも目撃が増えている一因では」と話すのは、青森県猟友会八戸支部事務局長の吉田功一郎さん。市では八戸警察署をはじめ関係機関とも情報を共有。市が委託した有害鳥獣被害対策実施隊と猟友会が連携し、緊急の捕獲作業や、高さ1メートル、奥行き2メートルほどの箱わなの設置などの対応に当たる。やむを得ず捕殺したクマは処分するほかない。吉田さんによると、貫通力の高いライフルを使っても一発で仕留めるには熟練の技が必要で、周囲の安全に十分配慮する必要もある。銃弾がクマに当たらずに向こう側に飛んだりする危険もあるため、クマの向こう側に土手や斜面がなければ発砲できないという。吉田さんは「経験のある人と実地で経験を積まないと技術や知識は身につかない。人の安全を守ることは最優先だが、山を追われ、餌を求めて人里に入ったクマを捕殺することには胸が痛む。クマを取り巻く現状をより多くの人に知ってもらい、自分たちにできることを考えてもらえれば」と苦慮する。

(治山事業地でのシカ被害対策:和歌山)
和歌山森林管理署では、平成23年に発生した紀伊半島大水害の復旧工事を行っている下モしもの谷たに西側地区において、シカによる深刻な食害への被害防止対策を実施しており、令和7年11月18日(火曜日)に農林業関係者を集めた現地検討会を開き、課題や対策事例等について意見交換を行いました。 当日は、秋晴れのもと約80人の参加者があり、(ア)竹を使用した新たなシカの侵入防止対策、(イ)獣害防護柵の色の違いによる視認性検証や効率的な見回り方法、(ウ)地域の苗を使用した植栽等、試験的に実施していることを紹介しました。また、開発メーカーによる(エ)姿勢制御機能付き電動クローラー型4輪車の走行デモンストレーションを行いました。これらの技術は治山事業だけでなく、造林事業や農業分野等においても応用できることから、幅広くシカ被害対策の技術交流ができたものと考えます。 現在は試験的に実施している段階ですが、将来、緑彩る山へ復旧することを願いつつ、今後も引き続きシカ被害対策に貢献していけるよう、取り組んでいきます。

(自称「クマよけスプレー」販売会社を直撃、専門家は苦言「国が規制すべき」)
各地で出没し、人を襲う事故も頻発しているクマを撃退するための「クマスプレー」の導入支援を盛り込んだ「対策パッケージ」を、11月14日、政府は公表した。だが、市場には依然として効果が疑問視される商品が多く出回っている。クマスプレーの購入に補助金を支給する岩手県花巻市は、11月5日、対象となるスプレーの目安を示した。クマに対する撃退効果が認められない製品が市場に出回っているためだ。具体的な目安は、成分「カプサイシン(トウガラシエキス)1~2%」、噴射距離「7メートル以上」、噴射時間「6秒以上」。この目安は、「米国EPA(環境保護庁)の認証基準に基づくもの」だと、同市の担当者は言う。米国製クマスプレーのEPAの認証基準は、北米に生息するホッキョクグマ、グリズリー、クロクマを対象に効果の検証を重ねて規定されたものだ。日本のヒグマやツキノワグマに対しても効果が確認されている。米国で「クマスプレー」を販売するには、EPAの基準を満たす必要がある。つまり、EPAが認証した製品以外、「クマスプレー」として販売することは禁止されている。EPA認証製品の具体例は、「COUNTER ASSAULT」「FRONTIERSMAN」「GRIZ GUARD」「GUARD ALASKA」「UDAP」などのブランドで、国産では「熊一目散」(バイオ科学・徳島県阿南市)がEPAのガイドラインに準拠しているという。だが、日本にはクマスプレーに関するガイドラインがいまだ存在しない。現在、市場にはクマスプレーとしてさまざまな商品が出回っており、EPAの基準を満たさないものも少なくない。そんななか、花巻市の動きは、クマ対策を一歩進めたとみるべきだろう。クマ研究者の間で「クマスプレーとしてはいかがなものか」と問題視されている商品のひとつが、米国製の催涙スプレー「ポリスマグナム」だ。ポリスマグナムの輸入販売会社「ティエムエムトレーディング」(北九州市、以下TMM社)によると、この製品は「複数の県警察本部でクロクマ(ツキノワグマ)用『クマよけスプレー』として正式採用されている」という。だが、ポリスマグナムのメーカーホームページ(英語記載)には、対人用の「催涙スプレー(pepper spray)」として説明されている。今年8月、「クマスプレーを取り扱っているか」と問い合わせた人には、メールで次のような回答があった。「We do not have any designated bear sprays as it requires a special license to make it」(製造に特別な免許が必要なため、クマに特化したスプレーは用意しておりません)。本国からのこの回答について、TMM社に尋ねた。「回答したやつは誰? この製品は、もともと軍隊・警察用の対人スプレーをクマよけスプレーとして使っている。ホームページを読んだらわかるよな。あなたは勉強不足。まともに答えてやるだけの価値はない」。電話口の男性はそう怒り気味に言って、電話を切った。ちなみに、ポリスマグナムは「JSDPA認定品」とある。JSDPAとは日本護身用品協会のことだが、同協会の事務局はTMM社にあり、TMM社の代表取締役と同協会の会長は同一人物だ。花巻市の担当者は、記者の問い合わせにこう返答した。「ポリスマグナムは催涙スプレーで、クマ用の製品とは認められないので、補助金の支給対象外となります」。クマの研究者らが、「ポリスマグナム」をクマスプレーとして販売するTMM社の姿勢に不信感を抱くのには、まだ理由がある。同社のホームページには、実績ある米国他社製クマスプレーについて否定的な記述がいくつも見受けられるからだ。(1)「米国製のクマスプレーは大型のグリズリーの撃退を目的としているため、小型・中型のクロクマ(ツキノワグマ)には催涙剤濃度が強烈過ぎて不向き」(2)「同クマスプレーの催涙剤は洗い流すことが相当に困難。長時間、激痛に襲われ続けて、さらに重篤な後遺症を含むけがを負う可能性がある」(3)「万一でもクロクマ(ツキノワグマ)に使用すると極度の対人間恐怖症となり人間を襲うようになる」。これらの記述について、日本ツキノワグマ研究所の米田一彦代表は「科学的な根拠はまったくない」と断じる。米田さんは、秋田県自然保護課でクマ対策に従事していた50年ほど前から、数え切れないほどツキノワグマに出合ってきた。襲われた経験も少なからずある。「何回も米国製のクマスプレーに助けられました。1、2メートル先のクマに噴射すると、跳ね返った黄色い刺激物をもろに浴びます。このとき、目は見えていたし、呼吸困難にもならなかった。30分ほど猛烈な焼灼感が続きますが、痛みを覚えたり、後遺症が残ったりすることは全くありません」(米田さん)。スプレー缶の側面やメーカーホームページなどにも、けがや後遺症がないことが明記されている。「迫ってきたクマの鼻先に向けて噴射すると、どのクマも逃げて行きました。クマスプレーが原因でクマが人間を襲うようになったという報告は、聞いたことがありません」(同)。対人用催涙スプレーとして開発された商品を、「クロクマ(ツキノワグマ)専用」とうたうことに妥当性はあるのか。一般にヒグマの体長220~230センチ、体重150~250キロ、ツキノワグマは体長110~150センチ、体重80~120キロなどといわれているが、ツキノワグマでも大きな個体は250キロほどになる。「EPA基準からはずれた商品で、クロクマ撃退に使えるとはとても思えない」(米田さん)。対人用の催涙スプレーとクマスプレー、双方を製造している米国メーカーのホームページによると、二つはそもそも設計が異なるという。一般的に催涙スプレーの噴射距離は1~2メートルで、広がらず、直線的に催涙剤が飛ぶ。暴漢以外の人にかかる被害をできるだけ防ぐためだ。クマスプレーは噴射距離が10メートル前後で、噴射力が強く、多少風があっても遠くまで届く。広がりながら噴射されるため、多少狙いがずれてもクマの顔に当たりやすい。現在、日本市場にはさまざまな「クマスプレー」が販売されているが、クマの研究者らで構成する「ヒグマの会」のホームページにも、「クマスプレーは噴霧の『壁』を作り、それ以上、近寄らなくさせることも重要なので、水鉄砲のように噴射するものは不適当」と記されている。EPAは十分な飛距離と噴射時間を確保するため、「内容物は225グラム以上」と定めている。この内容量を確保すると、スプレー缶は500ミリリットルのペットボトルよりもひと回りほど小さなサイズになる。大手通販サイトでよく目にする、「携行しやすい手のひらサイズのクマスプレー」は、そもそもEPAの基準では存在し得ない製品なのだ。米国製のEPA認証元祖クマスプレー「COUNTER ASSAULT」の開発にも関わったヒグマ学習センターの前田菜穂子代表は、「EPA基準を満たさない『クマスプレー』は、それを信じて使用した人がクマに襲われかねない。最悪、人命にかかわる危険な商品です」と言い、こう続けた。「効果が疑問視される製品を市場から一掃するためには、国や行政がクマスプレーの基準を設けて規制することが必要です」。クマ対策は急務だ。国がクマスプレー導入を支援するのであれば、基準を整備することも急務といえるだろう。

(日没後に熊が出ても夜の銃猟できるのは1事業者のみ、現場が訴える担い手確保の必要性)
熊による人身被害対策として、市町村の判断で市街地での発砲が可能になった「緊急銃猟」。これまで捕獲を担ってきた地元猟友会のメンバーが高齢化し、ハンター不足が深刻化する中、特に夜間の銃猟ができるハンターの確保が課題になっている。夜間の銃猟は日中に比べて難易度が高く、射撃技能の要件を満たす必要がある。現在、長野県が把握する夜間銃猟が可能な県内事業者は1事業者にとどまっている。日の出前や日没後の銃器による鳥獣の捕獲は高い危険性をはらむため、夜間の銃猟はかつて禁止されていた。2015年の鳥獣保護管理法改正で、国は都道府県などが行う「指定管理鳥獣捕獲等事業」を創設。知事から「認定鳥獣捕獲等事業者」の認定を受けた上で、環境省の安全管理講習で射撃技能の要件を満たせば、夜間銃猟の実施が認められるようになった。県林務部によると、県内の認定鳥獣捕獲等事業者は現在、一般社団法人やNPO、会社など8事業者。うち県事業で夜間銃猟を実施できると認定されたのは「合同会社やまびこ」(上伊那郡南箕輪村)のみ。同社によると、夜間銃猟ができる社員は6人だけだ。やまびこ以外の7事業者の中にも、講習を修了し夜間銃猟ができるハンターがいる可能性もあるが、県は「いたとしても一握り」とみている。東筑摩郡山形村で10月下旬、商業施設敷地内に熊が出没した事案では、日没後に専門家が吹き矢を使って麻酔をかけて捕獲した。村産業振興課によると、緊急銃猟も検討したが、「辺りは暗くなってきており、跳弾のリスクなども考えられた。安全面を考えて実施しなかった」という。やまびこ社長で南箕輪村猟友会員の加藤尚さん(62)は山形村の事例も踏まえ、夜間銃猟の担い手確保が必要だと指摘する。加藤さんは「夜間は人の視野が昼間と違って狭くなる」とし、周囲を確認して照準を合わせたり、発射のタイミングを計ったりするのに難易度が上がると話す。加藤さんは、緊急銃猟によって市街地で発射すること自体、熟練者が射手となる必要があるとも説明。熊は頭部の直径約5センチの部位を正確に撃たないと即死せず、手負いの熊が街中を歩き回ると余計に危険―と言い、「1回のチャンスできちんと仕留める技術が必要」と強調する。緊急銃猟の導入に合わせて環境省は今年、講習を受講できる対象を拡大。知事認定の事業者だけでなく、「市町村から推薦を受けた者」も受講できるようになった。ただ、本年度の講習の実施期間は10月下旬から12月中旬までで、修了者の増加はすぐには見込めない状況だ。県森林づくり推進課は、夜間銃猟のできるハンターの確保に向け、「市町村や事業者へ講習の周知に努める」とする。加藤さんは、県内のどこで夜間銃猟が必要になっても即応できる態勢が求められるとし、若手を育てる環境整備の必要性を訴えている。

(クマの目撃相次ぐ秋田市、影響は経済にも)
秋田市内でのクマの目撃情報がいまも相次いでいる。11月26日までの1週間で、クマの目撃件数は171件にのぼった。クマの出没件数の多さもそうだが、何より驚かされるのはクマが目撃される場所だった。14日の朝方には秋田県庁や裁判所など行政機関が密集する市の中心部で立て続けに目撃情報が入り、市民を震え上がらせた。さらに、大型スーパーなどがある商店街でもクマの姿は次々と確認されている。人の生活圏でクマの出没が相次ぐ秋田市では、商店街や繁華街の利用客数が減少している。秋田市大町にある県内最大の繁華街・川反も例外ではない。かつては道行く人が肩をぶつけ合うほどの賑わいを見せていたが、14日の金曜日の夜、人通りはまばらだった。「売上は去年に比べて、半分以下。常連さんもまったく来なくなりました」。川反で飲食店を営む高西千治さんは、そう漏らして深い溜息をついた。客足が落ち始めたのは10月、クマの目撃情報が急増してからだという。特に平日の夜の落ち込みが顕著で、「物価高で経営が苦しいなか、クマでさらに追い打ちをかけられている」と語った。例年この時期は忘年会の予約が埋まり始めるが、今年は問い合わせすらなく、「店はコロナ禍の頃とほぼ同じ状況だ」と肩を落とした。このまま12月も街中にクマが出るようなら厳しいとしつつ、「クマは災害だ」と強調した。このような事態を重く受け止めた秋田県は、11月17日から飲食業を対象とした専用窓口を設置し、対応にあたっている。産業政策課の担当者は、窓口を設置した理由について「各商店街から 『お客さんが来なくなり、経営が厳しい』という相談が相次いでいたため」と説明した。現状、クマ被害に特化した支援金や支援策はないものの、経営に苦しむ店舗に対して、利用可能な支援制度を個別に案内しているという。また、影響は店舗経営だけにとどまらない。クマの出没により、屋外イベントも中止になることが多く、イベント用に仕入れた食材が無駄になったケースもあるという。担当者は「いつまでこの状態が続くか分からないが、クマが冬眠に入り、事態が収まるまで相談窓口を継続する」と話した。一方で、クマの出没により外出を控えている客の声を受けて新たなサービスを始めた店も次々と登場している。通町商店街などに店をかまえるコーヒー販売店「南蛮屋おあい」では、11月7日からコーヒー豆を300グラム以上購入した客を対象に、宅配送料を無料にする取り組みを始めた。サービス開始後、山に近いところを中心に、毎日のように利用する客が増えているという。青井智社長は「年配の方を中心に、『クマが怖くてお買い物に行けない』という声が多く寄せられた」と話す。実際に、来店客数は前年同月比で約1割ほど減っており、「もうけも大切だが、クマを怖れて外に出られないお客様に、おいしいコーヒーを届けたいと思った」とサービス開始の理由を説明した。さらに「早くクマが冬眠してくれたらいいんだけど」とも語った。連日、メディアを賑わせているクマ被害。その多くは人的被害を伝えるものだが、実際には地域経済や住民生活にも深刻な影響が広がっている。飲食店や観光業では客足の減少が続き、屋外イベントの中止によって準備した食材が無駄になるといった、目に見えにくい損失も積み重なっている。クマの冬眠が待たれる一方で、こうした影響が来年以降も繰り返されれば、地域経済の疲弊は避けられない。生息環境の変化や餌不足など、背景にある課題に向き合いながら、行政・住民・専門家が協力して持続的な対策を構築する必要があるのではないか。人的被害を抑える対処だけでなく、被害の拡大を未然に防ぐための長期的で抜本的な手だてが求められている。

(白神山地の核心地域でニホンジカ3頭確認、生態系への影響懸念:青森)
世界自然遺産・白神山地の核心地域でニホンジカが確認され、生態系への影響が懸念されています。確認されたのは、先月9日にオス1頭、17日にオス1頭ずつの合わせて3頭で、いずれも鰺ヶ沢町の櫛石山南側の尾根で自動撮影カメラがとらえていました。核心地域で確認されたのは2022年10月以来4回目です。

(クマいないが…県民悩ませるイノシシ:長崎)
北海道や東北を中心にクマ被害が後を絶たない。九州では絶滅宣言が出され野生のクマはいないが、長崎県民を悩ませるのがイノシシだ。専門家は「冬を前にイノシシの行動が活発になっている」と注意を呼びかけている。「九州に野生のクマはいない」。ツキノワグマの生態に詳しい九州医療科学大非常勤講師、橋本幸彦氏=動物生態学=は断言する。橋本氏によると、九州で最後にクマの生息が確認されたのは1957年。その後50年以上「確実には確認されていない」として環境省が2012年に絶滅宣言を出した。熊本と宮崎の県境で目撃情報があり「日本クマネットワーク」の専門家が集中調査したが、痕跡は見つからなかった。なぜ絶滅したのか。広葉樹が伐採され、人工林への植え替えが進んだことが理由の一つと考えられる。「クマが好むドングリがなる広葉樹が減り、生息域が狭まった」と橋本氏。危険な害獣として駆除も進んだ。生息地の山口県や四国から海を泳いで渡ってくる可能性は「あり得る」が、そうした目撃情報はなく現実的ではないとみられる。クマがいない九州ではイノシシが猛威を振るう。11月中旬。長崎市の委託で有害鳥獣の駆除や被害対策に取り組む「ながさき夢ファーム」(四杖町)は被害相談の対応に追われていた。冬を前にイノシシの行動が活発化。春に生まれたウリ坊(イノシシの子ども)が独り立ちするため、今の時期は被害が増えるという。年間約千件の相談が寄せられるが、現在は連日10件前後のペース。「庭を荒らされた」「丸々と太ったイノシシが箱わなにかかった」など住宅地での目撃情報も目立つ。「越冬するため、餌を求めて人が住むエリアに姿を現している。クマとイノシシは体の大きさが違うだけで凶暴性、行動パターンは同じ」と代表社員の福山真尉さん(50)は警戒を呼びかける。県によるとイノシシによる農作物被害額は例年約1億~2億円。今月上旬、長崎市の新興住宅地で植え込みが広範囲にわたって掘り起こされる被害が確認され、付近の児童らが通学中にイノシシと遭遇。一時集団下校などの措置が取られた。住民の40代女性は「年々、被害が拡大している」と不安そうに話した。一定の条件を満たせば自治体判断で市街地での「緊急銃猟」を可能とする改正鳥獣保護管理法が9月に施行された。環境省によると、今月20日までに計32件あり、いずれも関東以北のクマの駆除。イノシシ駆除の事例はまだない。長崎市農林振興課は「緊急銃猟の必要性に迫られるケースは市内にない」と想定しており、引き続き防護柵や箱わなの設置を促して被害抑止を図る方針という。

(アフリカ豚熱、防疫手順確認:三重)
致死率が高い豚の伝染病「アフリカ豚熱」(ASF)の侵入リスクが高まっていることを受け、三重県は27日、伊賀市下友生の県上野森林公園で「防疫演習」(訓練)を実施した。県や関係機関から約50人が参加。感染が判明した野生イノシシを山林から運び出す手順などを確認した。県によると、ASFの発生に備えた実地での訓練を実施するのは、県内で初めて。東海農政局や近隣県のほか、発生時に協力を得ることが想定される民間の担当者らも見学に訪れた。山林で見つかった野生イノシシの死体を検査したところ、ASFへの感染を確認したとの想定。国の基本方針に基づいて半径3キロ圏内を捜索し、他に2頭の死体を発見したとの想定も加えた。うち2頭については、イノシシに見立てた土のうをブルーシートなどで包み、そりや一輪車に載せて山林から搬出。残る1頭は付近に埋め、動物に掘り返されないよう周囲に電気柵を設けた。二重に手袋をした状態では、ビニールテープの取り扱いが難しいなどの課題も浮かび上がった。参加者からは「実際に訓練と同じように進めるのはかなり難しい」との声も上がっていた。県は当初、風評などを懸念して訓練を公表しない方針だった。「訓練であることを明確に示すなどの対応を取れば、公園の利用者に不安を抱かせることはない」などとして、公開を決めた。ASFは豚やイノシシに感染するウイルス性の伝染病。国内で確認された豚熱(CSF)とは異なる。有効なワクチンや治療法はなく、致死率はほぼ100%とされる。人には感染しない。10月に台湾で豚への感染が確認され、東アジアで感染例がないのは日本だけ。県は野生動物の侵入を防ぐ柵の設置や入場時の消毒などを改めて徹底するよう、養豚業者に呼びかけている。家畜防疫対策課の庄山剛史課長は「想定よりも多くの参加があり、有意義な訓練だった。対応の実現可能性を高めていくことが大事。今後も定期的に訓練を実施したい」と話していた。

(クマ出没で営業休止、東京海上日動が補償保険販売へ)
東京海上日動火災保険は、旅館やキャンプ場などレジャー施設を対象に、クマが敷地内に出没して営業休止となった際の損失を補償する保険商品を12月から販売する。休業で予約がキャンセルになった分の被害額などを、1000万円を上限に支払う。商品名は「クマ侵入時施設閉鎖対応保険」で、対象施設は予約が必要なゴルフ場やキャンプ場、ホテル宿泊施設など。クマの出没で営業できなくなった分の損失のほか、新たな被害を防ぐためにクマを威嚇する装置を設置する費用や、従業員の通勤手段変更による費用などを補償する。クマが敷地内に侵入した様子がわかる防犯カメラ映像の提示や、ホームページやSNSで休業を公表したことを条件として保険金を支払う。保険料は年間契約で1事業者あたり10万~50万円程度となる。来年度までに全国で300件の契約を目指す。全国のレジャー施設では、ツキノワグマやヒグマの出没による営業休止が相次いでいる。東京海上の担当者は、「レジャー業界の経済的安定を支援することで、地域観光の持続可能性を高めることに貢献したい」としている。

(坂網猟県無形民俗文化財に:石川)
加賀市片野町のラムサール条約登録湿地「片野鴨池」で行われている県有形民俗文化財の伝統猟法「坂網猟(さかあみりょう)」が28日、県の教育委員会会議で県無形民俗文化財に指定されることが決まった。無形として登録し直すことによって、後継者の育成などに県からの補助が期待でき、大聖寺捕鴨(ほこう)猟区協同組合の猟師ら関係者は指定を喜び、伝統を次世代につなぐ決意を新たにした。坂網猟は大聖寺藩が藩士の鍛錬として推奨した猟法で、最大で長さ約4メートル、幅2メートル近くにもなる逆三角形型の網を用いる。組合では、11月15日から翌年2月の狩猟期間に向け、毎年鴨池の草刈りや猟場の手入れに励み、坂網猟法の継承・保存に取り組んでいる。坂網猟を担う猟師は現在21人で、年々猟師の減少と高齢化が進んでいる。猟師が交流サイト(SNS)で坂網猟の魅力を発信するなど、組合の維持を図ってきた。県によると、片野鴨池の坂網猟は、カモの生態を熟知した猟師が、周辺の地形を利用し、伝統的な形態・製法による捕獲網を使用している点が全国的にも珍しく、古式の様相がそのまま継承され、民俗学的にも貴重と評価された。昨年、片野鴨池坂網猟保存会が、2023年まで猟師が坂網猟でカモを待ち構える猟場をくじ引きで決める際に使用していた入札箱などの資料を市に寄贈した。坂網猟の来歴や伝承を記した明治期の文献などと含めて一体的に保存する必要があるとして、県有形民俗文化財に追加指定され、名称も「坂網猟の用具及び関係資料38点」と改められた。組合の世川馨理事長(71)は「指定に向けて頑張ってきた先人の思いを胸に、今後も猟だけでなく、カモを捕りやすい環境を守り、坂網猟を次世代につなげていきたい」と決意を述べた。保存会の中村元風会長(70)は「次は国レベルでの指定を目指したい」と次を見据えた。市文化課の担当者は「坂網猟やカモ料理の魅力を発信していきたい」と話した。坂網猟 江戸時代から片野鴨池で行われてきた伝統的な猟法。猟師が夕暮れ時に、マガモが飛び立つ瞬間に合わせて坂網と呼ばれるY字型の網を投げ上げて捕獲する。捕らえられた「坂網鴨」は、銃で撃つ猟のカモに比べて傷がつかないため、臭みがないとされる。

(小学生新聞グランプリ、シカ猟を徹底取材:北海道)
小学生が取材して記事をまとめる新聞コンクール「第30回どうしん小学生新聞グランプリ」で、南小4年の田中咲麻(えま)さん(10)による「鹿と生きる新聞~シカはやっかい者?」が最高賞のまなぶん大賞に輝いた。エゾシカの狩猟や解体現場を訪問するなど徹底した現場取材を重ね、イラストや写真を多用した見やすいレイアウトも評価された。「ずっと目指してきた大賞をとれてうれしい。これからもいろんなことに挑戦したい」と笑顔を見せた。コンクールは北海道新聞社などの主催。今年は全道5021人の小学生から、4185作品の応募があり、まなぶん大賞は各学年1人の6作品が選ばれた。田中さんは2年生から毎年同コンクールに応募し、昨年はアイデア賞を受賞。3回目の挑戦となる今年は7月から本格的な取材に取り組み始めた。家族と新聞を読んだり、ニュースを見たりする中で、たびたび目にするシカの話題を新聞のテーマに選んだ。「ドライブに出かけると、かわいいシカをよく見かける。どうして駆除しなければいけないのか」と疑問に感じていたという。父の知人で、道東在住のハンターに取材を申し込み、シカの狩猟に同行。新聞には「早朝3時30分、日が昇る前に出発。約100メートルの距離に1頭のシカを見つけ、『ダァーン』。遠くにいるシカが一瞬飛ぶような動きを見せた」などと、狩猟の様子を具体的に描写した。シカの皮をはぐのを手伝った解体現場の写真も掲載した。このほか、道内のエゾシカ推定生息数と農業被害額の推移をグラフでまとめ、生息数が増え続けていることなども紹介。田中さんは「取材を通じて、シカが畑を荒らしたり、事故の原因になるから駆除していることを知った」といい「シカと私たちがお互い幸せに暮らせる方法をこれからも考えていきたい」と話した。

(クマなど野生動物を撃退、“恒久電気柵”:岩手)
雪が降る時期もクマやシカなど野生動物を撃退します。軽米町にある県の農業研究施設に1年を通して稼働可能な「恒久電気柵」が設置されました。農作物を食い荒らす野生動物への対策として用いられる電気柵。興味深そうに匂いをかぐクマも鼻が電気柵に触れた瞬間、勢いよくその場から逃げていきます。軽米町の県北農業研究所で行われた設置作業には、市町村の担当者らも参加し講習を受けました。従来の簡易電気柵は雪の影響で劣化するため冬場は撤去する必要がありますが、今回用いられた恒久電気柵は鉄製のパイプとワイヤーを使うため強度が高く、1年中設置できるということです。参加者は支柱を打ち込むとワイヤーを調整しながら外周およそ200メートルの電気柵を設置しました。ワイヤーは20センチから130センチの高さまで5本が張られていて、クマやシカ、イノシシによる食害を防ぎます。価格は従来の電気柵とほぼ変わらないということで県は恒久電気柵の普及を進めていきたい考えです。

(真冬の八甲田登るクマ撮影、研究グループ「冬眠短縮の可能性」指摘:青森)
真冬の八甲田でクマが歩く様子を、北里大学の研究グループが撮影しました。青森市内でも出没が相次いでいて、ことしは冬場も警戒が必要です。おととい青森市原別ではクマの目撃が続き、きのう午前5時の目撃を最後に情報はありません。いまのところ捕獲には至っていませんが、人里での確認が相次ぎ、冬でも油断はできません。雪の中をゆっくり歩くクマの姿は、ことし1月16日に北里大学獣医学部の研究グループが八甲田で撮影したものです。★北里大学 獣医学部 岡田あゆみ 教授「1月の雪深い時期にクマが撮影されたのは初めてです。これまでは遅くても12月半ば~下旬でしたので、今回の撮影はひじょうに驚きました」「場所は十和田湖に近く、観光客が車で通る道路からも離れていない地点です」。岡田教授は、冬眠期間中に巣穴を移動する個体もいる一方、冬眠期間そのものが短くなっている可能性もあると指摘しています。★岡田あゆみ 教授「“冬眠しているから大丈夫”と油断しがちですが、この時期でもクマに遭遇する可能性があります。事故を防ぐためにも準備をして山に入っていただきたい」。県内ではことし1月にも別の山で冬期間の出没が確認されていて、県などが引き続き警戒を呼びかけています。

(クマの「個体識別」と「生息数の推定」の舞台裏)
複数の被害の関連性やクマの行動の把握に使われるのがDNA分析です。番組が訪ねたのは、自治体から調査を委託されている会社。野生動物保護管理事務所 中川恒祐さん(28日 神戸市)「クマの体毛ですね。毛の毛根部に細胞が残っていますので、これを遺伝子分析にかける」。調査に使うのは、クマの毛です。クマ対策に欠かせない「生息数の推定」にも、実はDNA分析が活用されています。「ヘア・トラップ」と呼ばれる手法では、有刺鉄線で囲ったワナを使用します。有刺鉄線に触れ、絡みついたクマの毛のDNAを分析します。周辺の生息数が少ない場合は、同じ個体の毛の割合が高くなるといい、一方で、生息数が多い場合は、さまざまな個体の毛が採取され、同じ個体の割合が低くなるといいます。野生動物保護管理事務所 中川恒祐さん「クマが多すぎるのであれば、管理を強めるという方針にするでしょうし、クマの数が少ない状況であれば、もうちょっと保護に寄った施策を展開していくようなことになる。そういう基本的なデータになってくる」。しかし、こんなデメリットも。野生動物保護管理事務所 中川恒祐さん「野外に体毛をずっと放置しておくと、紫外線などでDNAが劣化してきてしまって分析が失敗してしまう」。そのため、定期的な見回りが必要だといいます。手間もコストもかかる「生息数の推定」。もう1つの方法が「カメラトラップ」です。どのようなものなのか、考案者に話を聞きました。石川県立大学環境科学科 東出大志准教授「森の中にカメラをかけて、ツキノワグマの胸の模様を撮影するということをしています」。胸にある三日月のような白い模様。「斑紋」と呼ばれ、個体ごとに特徴が異なるため、識別の大きな手がかりになります。「カメラトラップ」では、エサの匂いでクマを立ち上がる姿勢に誘導。取り付けた自動カメラで、胸の「斑紋」を撮影します。石川県立大学 生物資源環境学部 東出大志准教授「クマがちょうど立ち上がったら届きそうな高さにエサを置くようにしています。それが150センチくらい」。斑紋が鮮明に映った部分を切り出し、他の場所などで撮影された画像と比較します。大変なのは、膨大な「斑紋」データを目視で見分けていること。石川県立大学 生物資源環境学部 東出大志准教授「きれいに映っているものを見つけ出して、それを目で見てですね、リストしていくのはかなり大変な作業」。見分けるポイントは、大きさや形の細かい部分が一致するかどうかです。石川県立大学 生物資源環境学部 東出大志准教授「特徴的な形状というのは、真ん中部分や端の部分で出やすい。この個体だと左側の模様の先端がちょっとV字のように、くぼんでいるのが分かると思うが、そういう特徴もこっちも同じように表れていると」。東出准教授によると、9割以上の精度で識別できるといいますが、斑紋が小さい場合は、判別が難しくなるといいます。石川県立大学 生物資源環境学部 東出大志准教授「クマと人間がどのように付き合っていったらいいかを考える1つの指標になるかなと思います。将来的には人の目ではなく、機械学習によって自動的に個体を識別できるような未来が来るかなと」。

(クマ対策、民間頼みは限界に:北海道)
この秋、各地で人が暮らす生活圏への出没が相次ぎ、人が襲われて死傷する事件が毎日のように報じられているクマ問題。駆除を担うのは、いまも民間の猟友会が中心です。札幌で取材に当たってきた片野裕之記者は、本来は狩猟愛好家の集まりである猟友会頼りの現在の対策は限界にきていると指摘。公共機関が責任を持って対策に当たる体制を整えよと訴えます。政府がようやく新たなクマ対策に乗り出したのは、今年度の死者数が過去最悪に達した10月。政府の対応は後手に回ったことは否めない。今も最前線で駆除の中心を担うのは民間のハンターだ。小手先の対応ではなく、公的機関がクマの駆除を担う将来を見据えた、抜本的な体制の変革が求められている。状況は最近4カ月で様変わりした。自衛隊派遣や警察による駆除など政府が矢継ぎ早に講じる対策に、「緊急銃猟」を巡るこの夏の北海道の騒動は、何だったのかと思う。クマを銃駆除できる枠組みは限られている。時期や場所が限定された山林での狩猟▽都道府県などが許可を与える有害鳥獣駆除▽警察官職務執行法に基づいて警察官が発砲を命じる駆除。2023年のクマ大量出没を受け、政府は、自治体の判断で市街地などで発砲できる「緊急銃猟」制度を新たに追加した。今年7月に環境省が公表した緊急銃猟のガイドラインは124ページに及んだ。関係者の役割や実施条件などが細かく記され、作成に時間を要したことが伝わる。だが9月の制度開始が近づくにつれ、道内では反発の声が強まった。「盲点がある。いろんな想定ができていない」。8月中旬、北海道猟友会の堀江篤会長は取材に、怒りをあらわにした。緊急銃猟制度には、民間のハンターが自身がけがをした時の補償も、意図せず他人に銃弾が当たった時などに、猟銃所持許可を取り消されないという身分保障もない。「猟友会ありきの制度だ。なぜ我々が命をかけてそこまでの義務を負わねばいけないのか。警察や自衛隊が前に出て捕獲する制度にすべきだ」実施の責任を負う市町村にも不安は広がった。たった2カ月ではマニュアル作成や保険加入、訓練実施といった準備が整わない。制度の周知を図る立場の道の関係者でさえ、「対応が後手に回っている自覚はある」と漏らした。

(クマ目撃情報急増、緊急パトロール実施へ:東京)
東京都の小池百合子知事は28日、都内でもツキノワグマの目撃情報が増えているとして、都猟友会のハンターによる緊急パトロールを始めると発表した。人の生活圏を中心に、同日からクマが冬眠に入る目安の12月末まで続ける予定。今年度は都内でも、クマの目撃情報が27日までに166件にのぼっている。とくに西多摩地域東側の市街地付近で増加傾向にあるという。こうした状況を受けて、八王子市や青梅市など6市町村の「人の日常生活圏」で緊急パトロールを実施する。都猟友会のハンターが銃器を持ち、クマを発見した際には追い払う想定だが、市町村の判断で「緊急銃猟」の対応をとる可能性もあるという。小池氏は「クマによる被害を未然に防いで、住民や観光客などの安全安心を確保していきたい」と話した。

(JRの列車がクマと衝突、大幅に増加し12件:宮城)
宮城県で2025年度、JRの列車がクマと衝突した回数は例年より大幅に多い12件に上っています。JR東日本の28日の発表によりますと、南東北3県では4月1日から11月27日までの間に列車がクマと衝突し、10分以上の遅延や運休が発生した事例が42件ありました。2023年の14件や2024年の9件を大きく上回っています。このうち宮城県は12件で、2023年の3件、2024年の2件から大幅に増えています。衝突現場の近くに親グマや子グマがいる可能性があることから、他の野生動物に比べ確認や撤去に時間がかかるケースが多いといいます。今のところけが人はなく、ツアーのキャンセルといった観光などへの目に見えた影響もないということです。

(「米ぬか」の味を覚えて繰り返し訪れたクマ:岐阜)
去年8月、岐阜県中津川市の民家のすぐ近くにある、農機具倉庫で撮影されたのは…体長140センチを超えるクマ。大きな袋をくわえて、その場を後にします。クマが持ち去ったのは「米ぬか」。イノシシのワナに仕掛けるエサや肥料として保管していましたが、クマはその味を覚えてしまったようです。クマはイノシシ対策で囲ったトタンを軽々と乗り越え、何度も訪れたといいます。ついに冷凍庫まであさるようになり、猟友会は市や警察と相談し倉庫にワナを設置することに。そして、クマが最初に現れてから1か月後の去年9月。ワナに捕獲されたクマ。その後、猟友会によって駆除されました。クマは体長142センチ、体重130キロのオスのツキノワグマでした。民家の近くまで繰り返し姿を見せるクマ。この地区では、ことし9月にはクマが男子高校生を襲う被害も起きました。

(異常事態“過去最多ペース”)
関東でもクマの目撃が相次いでいます。28日も群馬県沼田市の駅のトイレで男性がクマに襲われました。この時期になってもクマの出没が後を絶ちません。今年のクマは要注意です。時刻は午前1時すぎ。市街地の道路に現れたのは、親子とみられる2頭のクマです。母グマが道路脇の斜面を登ると、子グマがその後を追っていきます。群馬県みなかみ町で新聞配達をしていた人が遭遇しました。群馬県内では28日、多くの通勤客や学生などが利用する市街地の駅前でクマによる被害が出ました。クマが出没したのはJR沼田駅にある公衆トイレです。警備員の69歳の男性が公衆トイレを利用した後、出入り口でクマに襲われ、けがをしました。午前1時20分ごろ、男性は巡回中に公衆トイレへ。外に出ようとしたところ突然、目の前にクマが現れます。クマは体長1メートルから1.5メートルほどの成獣とみられ、建物の中をのぞいていたといいます。男性は驚いて尻もちをつきます。クマが襲ってきたため抵抗した際に、右足を引っかかれました。男性が大声を出すと、クマはその場から立ち去ります。その後、自ら交番に駆け込み被害を訴えたということです。クマの行方は分かっていません。通勤時間帯に大きな盾を持った警察官が巡回しています。駅前で人がクマに襲われる異常な事態。クマ鈴を鳴らしながら駅前を歩く人もいます。JR沼田駅から2.5キロ離れたスーパーでも先月、クマが出没しています。体長1.4メートルほどのクマが店内に侵入。客の男性がクマに両腕を引っかかれ、病院に搬送されました。駐車場でも警備員がけがをしました。群馬県では今年、クマによる人への被害が過去最多の10件に及んでいます。冬眠の時期に差し掛かっても、クマの出没が絶えません。宮城県では今月、雪が積もるなか、箱わなにクマが掛かりました。自治体や猟友会は日々、対応に追われています。北海道札幌市の市街地ではクマの出没が相次いでいます。札幌市は先月、住宅街の公園に現れたヒグマ2頭を緊急銃猟で駆除しました。近年、市街地にやってくるヒグマが増えているなか、今年は異常事態が起きています。札幌市 環境共生担当 坂田一人課長「今年は9月以降の出没がこれまでに類を見ないほど、異常な出没があった。例年、多い時でも200件くらい。今年は11月時点で350件超」。クマの目撃情報を受けて現地を調査する市の職員を取材しました。札幌市 熊対策調整担当 藤田将係長「クマスプレー。ヒグマがいたとみられる場所に行って調査。自分の身は自分で守るということで、携帯して調査」。住宅街の河川敷で前日の夜にヒグマの目撃情報があったため、痕跡を探します。河川敷の道路でシカの足跡を発見。その後も周辺を調査したものの、ヒグマの痕跡は見つかりませんでした。札幌市 熊対策調整担当 藤田将係長「シカの痕跡であることは間違いないが、クマがいなかった証明にはならない。100%否定できるものではない。目撃情報があったということで、周りに住む人は引き続き注意してほしい」。北海道の旭川市旭山動物園で飼育されているクマの生態を取材すると、今年、市街地に相次いで出没している野生のクマの危険性が見えてきました。旭川市旭山動物園 坂東元統括園長「基本、食べ物がずっと継続して安定してあれば寝ない。冬眠はしない」。動物園では冬でも餌(えさ)を与え続けるため、クマは冬眠しないといいます。野生のクマについても、人里で食べ物を探す個体は冬眠しない恐れがあると警鐘を鳴らします。旭川市旭山動物園 坂東元統括園長「食べ物とひも付くのが一番怖い。人間の存在と食べ物がひも付いてしまうと、人がいるところには食べ物があると。安定してそこに行けば食べ物があるという場所が確保できてしまうと、冬眠モードに入っていかない可能性はあると思う」。クマの出没に引き続き注意するよう呼び掛けています。

(人襲うクマ、山の恵みが害獣に:秋田)
古来、山奥深くにわけ入ってクマなどを捕ってきたマタギ。伝統的な狩猟者たちが「山の恵み」として向き合ってきたクマが、今や人を襲い、「害獣」として毎日のように駆除される事態となっている。秋田県仙北市に住むマタギの一人で、狩猟歴60年の太田京治さん(86)も、その異常な行動に驚きを隠せない。――今の状況をどう見ていますか。いやー残念というか……。俺らが知るクマの行動とはまったく違う。これまでは、こっちからわざわざ山奥に入って行って、雪上の足跡などを頼りに居場所や動きを見極めながら、捕る。山からいただいてくるわけだよ。こんな人里や、まして市街地にまで出没して、人にかかってくるなんて考えられなかった。――昔はどんなふうに捕ったのですか。昭和の時代までは、集団で猟をする「巻き狩り」が盛んだった。多い時だと20人以上が参加する。若いころは、ベテランの年寄りマタギに、「山を知るため」との理由で、クマを駆り立てる役の「勢子(せこ)」をよく言いつけられたもんだ。山の下から上へと2~3時間かけて、徐々にクマを追い上げる。すると、尾根筋のあたりで待ち構えた人が、できるだけ引き寄せて発砲する。仕留めると、「ショウブ!(勝負ありの意)」と大声で叫ぶ。他の仲間にクマの状況を知らせる意味もあるから。――仕留めたクマはどうするのですか。大きなやつはその場で解体することもあるが、たいていは林道まで引っ張り下ろして、車に積んで持って来る。運び込む家は「宿(やど)」と言って、そこで解体し、肉や肝臓などをみんなで等しく分け合う。昔は感謝と祈りの神事も必ずやったもんだよ。心臓と肝(きも)を12等分に切って串に刺し、あぶってお神酒とともに神棚に供える。串に使う木はシナノキ(地元の呼称はマンダ)とクロモジ(同トリキシバ)と決まっている。「また(マンダ)捕らせて(トリキ)ください」と願って。12切れにするのも、12カ月つまり1年間豊かな恵みがありますように、と願いを込めてのことだ。

(ハンターが見るクマの大量出没「変化は20年前に始まっていた」:福井)
全国で相次ぐクマの出没。27日には勝山市の高齢男性が自宅の庭でクマに襲われ顔にけがをするなど、近年、人の住む集落や街なかでクマによる被害が増えてます。なぜ、いまクマが里に増えているのか。坂井市丸岡町の竹田地区に住むベテラン猟師に、山で起きている変化やクマ出没への認識を聞きました。取材したのは、この日、78歳の誕生日を迎えた猟師歴50年の竹内作左エ門さんです。1カ月に10回は通っているという丸岡町竹田地区での狩猟に同行させてもらいました。昭和50年に狩猟免許を取り、ちょうど今年で50年が経つ竹内さん。「1人で猟に行くわけではなく3~4人で行って、イヌも連れて行く。自分の猟のポイントは覚えている」。そう話し、到着した場所で車を降りると、イノシシの掘り起こした跡が。「古いものなら、木の葉が落ちている。だから、昨日かその前に掘り起こしたと判断して、どこから来たのかを見る」。獲物の探し方を教えてくれた竹内さん。また、しばらく進んで見つけたのは、幹の一部が大きく剥がされたネムノキ。シカの大好物だといいます。「50年間、猟師をやっている中で一番変わったのは、環境。きょう始まったことではない。ずっと積み重ねで起きていること」。竹内さんは山や川、そこに暮らす野生動物や植物とって、生きる環境が悪化していると感じています。「山に入る人がいなくなり、木が大きくなり、樹齢を重ねればその木も枯れる。循環性がない。広葉樹のないところに野生動物は生活できない。この20年間でイノシシ、シカが来て山の動物の環境が変わってきた。カモシカはシカに自分の縄張りをとられてしまう」と話します。人の営みが山から離れることにより「山の循環」が滞っていることに加え、「雪の量」が大きな環境の変化をもたらしていると指摘します。竹田地区では、以前と比べ降雪量が減ったことで、シカやイノシシなどの分布域が広がり、クマやカモシカなどの野生動物が山から追いやられているのではないかと竹内さんは推測します。すると突然、ゆっくりと運転をし始めた竹内さん。何かを探しているようです。「クマが木に登っていればいいかな。木が黒くなっている。枝を折ったから」。どうやら木に登っているクマを探しているようです。「どの木でも上がらるわけじゃなくて、実がついている木だけ。里に下りずに山で生活しているクマもいる。里に出るのは山のクマではない。里山のクマ。だから山に帰ってくることはない。山のことを知らないから」。竹内さんによると、山から追いやられた里山のクマは、畑の農作物や人が植えたカキなど栄養価の高いエサを食べるため体も大きく、一度に生む子どもの数も増えるといいます。近年、問題となっているクマによる人身被害の一因とも言えそうです。「里グマが増えていることは事実。クマを減らして済むわけではない。シカやイノシシが増えて、居場所がなくなったクマが里に出てきている可能性もある」。クマによる人身被害を減らすためには、ただ駆除するだけでなく山の野生動物全体の管理が必要だと指摘します。竹内さんはかつて3、4人のハンターとともに狩猟を行っていましたが、みな高齢になり今では地区のハンターは竹内さんただ1人となってしまいました。「クマを獲って持って帰って、村中が一緒になって食べて騒いだり…あんなことは今はない。20年ほど前からほとんどない。クマをとるメンバーが誰もいないから、それを教えることができない」。「人の生活」が「山」から離れつつある今、人と野生動物との「適切な境界線」のあり方が問われています。「山が変化すれば、人間も変化するし同時に地域も変化していく。田舎だからこそできること、田舎だからあるものを生かして解決策につなげていけたら」そう竹内さんは話し、山と向き合います。

(ハンターたちに同行「巨大ヒグマとの命がけの闘い」:北海道)
鼓動が激しく高鳴る。わずかな異常でも見逃せば、命取りになりかねない。彼らは私が山に入ったことを当初から認識し、ヤブの中からじっと様子をうかがっているはずだ。鼻も耳も、人間よりはるかに優れているのだから。報道カメラマンとしてウクライナやアフガニスタンなど多くの戦場を取材した私でも、極度の緊張からノドが渇く。比較的新しい糞や足跡があればなおさらだ――。猟銃と狩猟の免許を取得して17年になる私が、ヒグマを追って北海道十勝(とかち)地方・足寄(あしょろ)町の山に入ったのは10月下旬のことだ。頼ったのはハンティングの師匠と仰ぐ、猟歴49年の黒川光雄氏(70)。一日で2頭のヒグマを仕留めたこともある凄腕ハンターだ。黒川氏が話す。「年々、ヒグマの数が増えているのを実感するね。ヒグマが好むドングリなどの木の実が猛暑の影響で不作だったため、山から下りてくるんだろうな」。環境省によると、今年度上半期(4~9月)のクマの出没件数は2万792件にのぼり過去5年間で最多だった。人的被害は99件108人となり、とくに7月~9月の発生場所は7割以上が人間の生活圏だったという。クマの駆除は喫緊の課題だ。冒頭の場面に戻ろう。前日に黒川氏と行った車で林道を走る「流し猟」に対し、この日、私が同行したのは山中を歩いて獲物を仕留める「忍び猟」だ。ヒグマが潜む山を実際に歩くため、いやがうえにも緊迫する。一緒に山に入った若手ハンターの伊藤有理沙(ありさ)氏(36)は、この前の週に戦慄の体験をしたという。「ヤブに潜んだヒグマが唸り声を上げてきたんです。姿は見えませんでしたが、初めてヒグマの気配を近くで感じ恐怖で身体が震えました」。私たちが進む周囲の白樺(しらかば)の幹にはヒグマのツメ痕があり、地面には足跡や糞が残されていた。しかし結局この日、私たちがヒグマに遭うことはなかった。私はこれまでに100回以上狩猟に出ているが、まだヒグマと対峙したことはない。「ヒグマは警戒心が強く、めったに人間を襲わない。ハンターでもヒグマを撃ったことのない人はいる。でも子連れの母グマは、脅威を感じると容赦なく襲ってくる。子グマの周囲には必ず母グマがいるから注意が必要だよ」(前出・黒川氏)。私は2年前の’23年10月、ヒグマの駆除現場に遭遇している。場所は北海道・足寄町の山中。同じく山に入った仲間のハンターから、体重100㎏を超える母グマと子グマを撃ったと連絡が入ったのだ。私たちが当該のハンターと合流すると、子グマは息絶えていたが、母グマは弾を1発食らうも山の斜面を駆け上がっていったという。我々は山を大きく迂回し、高い場所から下りながら徒歩で現場へ向かった。低い場所からだと、高い所にいるクマの素早い動きに対応できないためだ。現場では、母グマが斜面にうずくまっていた。黒川氏が3~4発撃ってとどめを刺す。黒川氏が話す。「倒したと思っても油断は禁物。クマがあおむけに倒れていれば安心だが、うつ伏せの場合は危険だ。死んだふりをして人間を待ち伏せし、近づくと突然起き上がって襲ってくることがある。しばらく様子を見て、動かなくても何発か撃ち込んでみることが大切だ。昨年も北海道で、うつ伏せのクマから逆襲を受け大ケガしたハンターがいた」。駆除したヒグマは、その場で解体し小分けにして山から下りる。解体しないと身体が大き過ぎるうえに重いため、とても持ち帰れない。黒川氏が「解体中も注意が必要だ」と続ける。「弟子の50代の男が、エゾシカを解体していた時のことだ。近くの笹の中に身を隠していたのだろう。臭いにつられて、ヒグマが背後から襲ってきた。銃は離れた木に立てかけていて、弟子の手元にない。仕方なく弟子は解体用のナイフを持ち両腕を広げ、できるだけ身体を大きく見せ『ワァー!!』と叫び威嚇したそうだ。弟子は身長180㎝ほどある大柄な男だ。ヒグマは恐れをなし、一旦はヤブの中へ退散。しかし諦められなかったのだろう。再び後方から襲ってきたが、銃を確保した弟子に倒された。ヒグマに遭遇して最もやってはいけないのは、背中を見せて逃げること。勢いづいたヒグマに、背後から鋭いツメで襲われるだろう」。一つ間違えれば殺される――。巨大ヒグマとハンターたちの、命がけの闘いが続いている。

(「クマは5年で倍になる」大学教授が警告:兵庫)
クマの出没がとまらない。そろそろ冬眠かという時期なのに、出没件数が過去最多を更新し続けている。しかも北海道や東北だけでなく、関西の観光地や住宅地でも目撃されているのだ。なぜこんなことになっているのか。今、人間がすべき対策は何なのか。25年以上クマなど野生動物の保全管理を研究し、現場で対策指導を行う、兵庫県立大学の横山真弓教授に詳しく話を聞いた。我々『兵庫県森林動物研究センター』が15年ほど前から「クマの個体数推定」をした結果、「クマは1年で15%ほど増える」ことがわかりました。仮に100頭いたとして、一年後には115頭、二年後には132頭…5年で2倍になります。100頭ならよいのですが、1万頭だったら5年後に2万頭になってしまうのです。同様に個体数推定を行っている岐阜県でも「増加率15%」というデータを出しています。捕獲がなければ、「5年で倍増」は、決して大袈裟ではなく、現実の数字なのです。兵庫県、岐阜県のデータから考えると、クマの数が多い地域では増えないように一定に保つためには、増加する分の15%の駆除が目安になります。。秋田県は2023年の大量出没を受けて、23年24年で2600頭もの駆除の努力をされてきたのに、今年も大量出没してしまいました。しかし秋田県が5年ほど前に推定したクマの生息数は4400頭。数が合いません。これはどういうことなのか?データは1回の調査ではなかなか安定しないものです。古典的な手法ですし、あくまで推定値ですから乱高下するのです。ですが、データが蓄積されると変動幅が小さくなってきます。秋田県の前回の調査は過小評価だったのかもしれません。今、最新の調査を行っている最中です。結果が待たれます。そして…山は繋がっています。2023年は全国で9099頭という驚異的な数を捕獲したにも関わらず、今年被害が深刻化している状況を考えると、県同士の連携や、継続した調査が非常に重要だと思われます。昭和の初め頃まで、日本はさまざまな野生動物を乱獲しました。また、当時は日本中“はげ山”だらけでした。生活のために薪(木材)が必要でしたし、炭鉱など鉱物資源の採掘で木を切り倒したことで、もう再生できないんじゃないかというぐらい“はげ山”にしていったのです。その結果、野生動物が激減。絶滅の危機に陥り、慌てて「保護政策」をとったのです。第二次世界大戦が終わった頃には、動物がいなくなったとまで言われていました。そして戦後は厳しい狩猟規制が続き、できるだけ捕らせない政策をとりました。その後、燃料革命が起こり我々の生活は一変。電気、ガスなどボタンを押せばよくなり、皆、山に見向きもしなくなったのです。私たちが最初に野生動物の増加に気づいたのは「鹿」でした。1990年頃に鹿が増え始め、2000年代に入るとイノシシが増えだした。そして2010年にクマが増えはじめたのです。野生動物の増加は、狩猟者の減少や温暖化による積雪量の減少など、さまざまな要因が働いていると言われています。そして人間が耕地や住居を放置したまま里山から離れ、都会に出てしまったたことも大きな影響を与えています。柿や栗など、野生動物が「安全に美味しく食べられる」恰好のエサ場になってしまっているのです。クマの出没のニュースの際、「凶作でエサのどんぐりが足りないからどんぐりの木を植えましょう」などと耳にしますが、これは皆さん、誤解されています。どんぐりは何本あっても同じなのです。確かにクマはどんぐりが大好きですし、どんぐりの凶作が食糧不足につながります。しかし、どんぐりの木がたくさんあっても、増やしても、凶作の状況は変わらないのです。どんぐりはブナ科の実で、栄養価が高く、多くの野生動物の貴重な食糧です。植物の種ですから、植物側からすると、「毎年豊作にすると、動物が増えてしまい、生き残こる『どんぐり』がなくなってしまう」のです。地域一帯を凶作にすることで、ネズミやリスなどが繁殖できなかったり死んだりします。動物の数が減った所へ、豊作年を作ると、生き残る「どんぐり」が多くなるという訳です。つまり、「植物の繁殖戦略」と言いますか、豊作と凶作をつくるのは、植物のメカニズムなのです。地域一帯で凶作とか豊作となるので、「どんぐり」の木の数を増やしても同じ。例えば今年は、西日本は豊作で「どんぐり」は余っている。だけど東北はブナもミズナラも全部凶作という具合です。植物が長い時間をかけて進化したシステムで、人間がどうこうできることではないのです。「どんぐり」の木を増やしても、クマの出没を減らす対策にはなりません。今の東北地方は、相当数のクマが高密度に生息している状態だと推測されます。動物は、高密度化すると行動が変わってきます。争いが激しくなり、行動が過激になっていくのです。食べ物をめぐる争いも激しくなり、体の大きなオスのクマは子クマにとっては脅威となります。メスや子供はオスが怖い。だから山の中の争いが激しくなると、弱い母子が里に逃げて来ている可能性があると思います。里に着いた時はもう必死に食べ物を探している状態。また、人は怖い生き物ではないと学習しているクマも多くなってきていて、人里での活動がエスカレートしているように見えます。さらに、クマは鼻が凄く良いので、食べ物の匂いがする場所、例えばスーパーや、人が多くいる介護施設や幼稚園など、たくさん煮炊きをする所に匂いに誘われてしまっているのだと思います。現在、兵庫県に生息しているクマは約800頭です。私たちが野生動物の保全管理をはじめた25年前は鹿が増えだした頃。当時は「鹿は増えているけれど、クマは絶滅に瀕している」と保護政策をとっていました。クマは100頭いないと言われていて、一生懸命保護していたのです。ですが、2年おきにクマが大量出没し、2010年には1600件もの目撃情報が報告されました。「100頭しかいないはずなのにおかしい」と、さまざまな角度から調べた結果、600頭ほど生息していることが分かりました。どのぐらいの生息数が適正なのか、非常に難しいところですが、600頭の出没対応で、すでに非常に大変でした。我々が管理できない数になったらお手上げです。議論を重ね、環境省が「800頭いれば絶滅しない」という数値を出していたこともあって、800頭を目安とすることになりました。それまで完全保護政策だったのを、集落に侵入する個体は初めから駆除するなど、段階的に政策を転換していったのです。それでもあっという間に800頭に達しました。2016年のことです。そこで政策を大きく転換。狩猟を一部解禁にしたり、集落周辺での捕獲強化を始めました。15%ずつ増加しますから、一年で120頭程を捕獲しないといけない場合も出てきます。今、9年目ですが、クマ被害は減少傾向にあります。管理可能な数は自治体によって異なりますが、今の秋田県や岩手県は完全にキャパを超えていると思われます。被害を抑えるためには、ここはいったん、思い切って大きく数を減らすしかありません。クマという動物と共存するのは、本当に大変ですから、現状の対策としては「低密度管理」がベストではないでしょうか。兵庫県は2007年、野生動物管理のための拠点施設「森林動物研究センター」を設立しました。研究員は現在6名。動物の個体数推定を専門に行う研究員や、森林の豊作凶作を調べる研究員など、それぞれ専門分野をもったメンバーが研究と対策の実行・指導を行っています。私は動物の体の中を調べ、健康状態や繁殖状況などを分析していくのが専門です。日本は1999年の法改正で「地方分権」が強く進められ、「問題のある野生動物の対応は各都道府県が責任をもつこと」となりました。この時、法改正には『付帯決議』があり、「都道府県に専門的人材を配置することや研究機関の設置などに国が支援する」ということが書かれていたのですが、結局、何も進んでおらず支援体制も出来ていません。しかし、野生動物が増えている今、対応できる人材を育てないと大変なことになります。えきってから対応するのは本当に大変なのです。今の自治体の仕組みでは、私たちの分野は「林業職」とか「農業職」とか、あるいは「獣医職」の方が担っているのですが、野生動物について学んできている人は非常に少ないのが現状です。研究者はたくさんいますが、行政機関に配置されている人はほとんどいないのです。例えば都道府県には必ず獣医師がいます。動物愛護法などで獣医師を配置することというのが定められているのです。畜産の獣医とか、公衆衛生の獣医とか。鳥インフルエンザなどが起きた時、専門知識がないと対応できないからです。野生動物の保護管理も同じです。今後ますます野生動物の増加が見込まれる中、早急に「鳥獣職」というのをきちんと法律で定める必要があると思います。今、国会で色々と対策を議論していますが、まずは専門職種の「鳥獣職」を各自治体に配置するべきではないでしょうか。人を育てることと人材配置はセット。学生たちも職種がない現状では、勉強もなかなか進みません。そういうところを、これから数年かけて変えていく。日本の鳥獣行政の仕組みを変えていかなければ、今後ますます野生動物が人間社会を脅かすことになると思います。

(クマ“大量出没”、対策の最前線を取材:新潟)
クマの大量出没に自治体の担当者は日々対応に追われています。9月の法改正によって市街地で銃器を使う“緊急銃猟”が可能となりましたが、課題も見えてきました。クマ対策の最前線を取材しました。暗闇の中黒い影をカメラがとらえました。11月7日の深夜。長岡市の栃尾地域です。住民が自宅の中から撮影したのは1.5メートルほどのクマでした。木から下りて周囲を歩く様子が写っています。連日、クマが出没している栃尾地域。この日、市の職員と地元の猟友会が集まっていました。集落の要望を受け、ワナでクマを捕獲しようというのです。長岡市の担当者「(クマが)通っているような跡がありますね」。周囲にはクマのフンやカキを食べた跡が。猟友会「ここから来る。ここが通り道、昔から」。クマの通り道とみられる場所にワナを仕掛けます。このようなワナを栃尾地域の各地に、合わせて25基設置しているといいます。猟友会「(クマは)ハチミツの匂いを嗅いで、警戒心が強いので、ドラム缶の周りをまわったり、中を眺めたり。それで安全だと思うと、エサが食べたいので入ると」。栃尾地域は今年度クマの目撃情報がおよそ200件にのぼり昨年度のおよそ4倍に。3件の人身被害が発生しています。9月には40代の男性がクマに襲われ、わき腹などにケガをしました。すぐ近くには小学校や中学校がありました。異例とも言えるクマの大量出没。約10年にわたり、栃尾地域でクマ対策にあたっている担当者は。長岡市の担当者「(例年と比べ)だいぶ多いですね。これまで、今年のような本当に市街地というようなところに出てきたというのは、なかったわけではないんですけども、このように頻繁に起きるというのは、この仕事に携わって初めての経験です」。今年度県内のクマの目撃情報は過去最多の約3000件。クマに襲われてケガをした人も。10月には、上越市の山林で測量作業をしていた男性2人が。新発田市ではクマの捜索に出ていた猟友会の男性が襲われる被害も。猟友会の男性「ここにいれば来るだろう。まだ向こうにいるだろうと思って、車止めてドア開けて降りたら、途端に目の前にいたんだね。それでいきなり噛みつかれた」。こうした中、ことし9月の法改正で可能になったのが「緊急銃猟」です。これまでは禁止されていた市街地などでの銃器の使用が市町村の判断で特例で認められるようになりました。10月には阿賀野市の建設会社の倉庫にクマ1頭が侵入。体長50センチほどの子グマとみられ会社の周辺で目撃されていました。建設会社の社長「私が帰ってきたときに、『クマいた、クマいた』って話になって」。倉庫の中へ入ったクマを建設会社の社員が閉じ込めたということです。通報からおよそ5時間。周辺住民に危険を及ぼすおそれがあるとして、麻酔銃による緊急銃猟で捕獲されました。この時、緊急銃猟を実施する判断をした阿賀野市の加藤博幸市長です。阿賀野市 加藤博幸市長「住宅街となると、よほどの状況じゃないとですね、実弾は使いづらいと思いますね。最終的には麻酔銃が一番安全なやり方だろうということで判断しました」。元獣医師という経歴を持つ加藤市長。倉庫にクマを閉じ込めたものの、銃弾が跳ね返る“跳弾”の恐れがあることから、麻酔銃を使用したといいます。しかし、麻酔銃の使用には課題も。通常の猟銃とは必要な資格が異なることから、県内で麻酔銃を扱えるのは3人と2つの団体に限られているのです。阿賀野市 加藤博幸市長「麻酔は麻薬の関係もありますので、取り扱いの注意が必要。銃という非常に危険なもの、それから麻薬類という危険なもの、2つの危険なものを、同時に扱うわけですから、法律のたてつけも含めて、ハードルは高い」。栃尾地域を中心にクマの対応に追われている長岡市。メールなどでクマの出没情報を発信しています。長岡市の担当者「警察と協力をして、見守りとかパトロール、広報車等を使って住民に注意喚起をしています。もう銃は撃てない、夜間に銃は撃てないので民家の方に行かないように見守るのが基本なんです」。時には盾を持って現場に向かうこともあるということです。麻酔銃については。長岡市の担当者「麻酔銃は有効な手段だと認識しておりますので、我々も市内の専門業者と協定を結んでおりましたので、いざという時の、麻酔銃の使用の体制というのは、想定して整えてはおります」。クマの大量出没に翻弄される自治体、猟友会、そして住民たち。冬眠の時期が近づいてきましたが、目撃件数は減っていないことから県は最大級の警戒を続けるよう呼びかけています。

(クマとの対峙で警察官が猟銃を撃つリスクと厳しい現状)
今年はクマによる人身被害が過去最悪だ。環境省の速報によれば、4~10月の人身被害は196人で昨年(79件)の2倍以上。うち死亡事故は12件(4日時点)も。最近は、市街地や住宅地での目撃が増えた。現在、一部自治体では警察や猟友会などがクマやイノシシを銃を使って仕留める「緊急銃猟」の実地訓練が始まっている。これは「住宅地などの日常生活圏にクマなどが侵入」「人命への危害を防ぐため、緊急の措置が必要」「銃以外の方法では迅速な捕獲が困難」「弾丸が人に当たるおそれがない」の4つの条件を満たした場合に適用されるが、クマとの対峙は警察官をもってしても厳しい現状がある。2015年9月には千葉県松戸市の住宅街で大型犬が通行人らを次々襲い3人がケガをした事故があった。その際、松戸署員3人が「緊急避難の発砲」で拳銃計13発を発砲し、射殺。発砲によるケガはなかったが、銃弾は近隣の住宅の壁や塀に命中したことで批判の声も上がった。元警視庁刑事の吉川祐二氏が言う。「警察学校の訓練では標的を撃つだけで生きている動物を撃つ経験はありません。銃を1発発射できるまでは約5秒かかるといわれています。そのため、確実に安全に仕留めるには速い状況判断が必要。また流れ弾による被害が起こらないように技術を学ぶには時間もかかります」。一方で有害鳥獣駆除のプロである猟師はクマ駆除を拒否している。クマの大型化や凶暴化で命の危険があるし、出動手当は少なく、誤射した時のリスクが大きいといった負担がのしかかるからだ。また、そもそも狩猟免許の所持者は高齢化が深刻だ。環境省の統計によれば、1975年に約51万人いたが、20年には約21万人に減少。6割近くが60歳以上になっているという。猟師に許可される銃では大半が近距離発砲となることから、仕留められなかった時の危険が大きすぎるとの声も。「安全で優れた銃が使えない日本では、旧態依然とした猟銃規制が逆に猟を危険なものにしている側面がある。800メートル近くまで撃てる中長距離射程の銃の個人輸入許可の可能性も探られています」(政府関係者)。可能性は低いとされるが、「PSG-1」の将来的な活用に焦点が当たっているという。「高精度セミオート狙撃銃」のことで、SAT(特殊部隊)が使用、民間は所持不可となっている。「距離を保って狙える“猟銃”は猟師の安全を確保するためにも、検討が必要になります。もっとも安全に仕留められる技術も伴わなければなりませんから簡単なことではありません」。

(買取店で暴発した拳銃、実は売却前に署に相談:愛媛)
松山市内の買い取り専門店で5月、客から遺品のモデルガンとして買い取った自動式拳銃のようなものが暴発した事件で、愛媛県警は28日、生前に拳銃4丁と実弾6発を所持したとして、同市の80代男性を銃刀法違反の疑いで容疑者死亡のまま書類送検したと発表した。県警は、客はこの男性の遺族で、専門店へ持ち込む前に県警松山南署に持参して処理方法を相談していたが、対応に当たった署員が鑑定や動作確認をせずに「(拳銃ではなく)モデルガンで問題ない」と判断し、客がそのまま持ち帰っていたことも明らかにした。送検容疑では、男性は今年5月中旬、自宅で自動式拳銃など計4丁と実弾6発を所持したとしている。県警によると、暴発事件は5月27日午後5時ごろに店内で発生。従業員が買い取った複数のモデルガンを整理中、自動式拳銃のようなもの1丁が暴発し、銃弾1発が店内の仕切りを貫通した。けが人はなかった。専門店は同21日、客から「遺品整理中に見つかった」という模造刀1本のほか、「モデルガン」として拳銃のようなものやライフル銃のようなもの計15丁を買い取っていた。県警はその後、店に持ち込まれたものを押収して鑑定した結果、一部の拳銃に発射能力があったという。県警によると、専門店に持ち込んだのは、書類送検された男性の遺族で、事前に拳銃など十数丁を同署へ持参して処理方法などを相談していた。この際、対応に当たった当直中の署員1人が、持ち込まれたものの中に拳銃がないと判断。遺族がそのまま持ち帰り、4日後に専門店へ持ち込んだ。署員は「(持ち込まれたものが)モデルガンで問題ない」と上司に口頭で報告していた。県警では、拳銃などが持ち込まれた際、本物かどうか判別できない場合は回収して鑑定に回す運用にしているが、署員は独断で判断し、本来は必要な書類の記録も残していなかったという。県警は「今後より一層、職員に対する指導教養を徹底する」とコメントした。

(「BB弾で撃たれたようだ」と110番、駆けつけた警察官に玩具銃発射した疑いで39歳男を逮捕:福岡)
福岡県警小倉北署は28日、北九州市の自営業の男(39)を公務執行妨害容疑で逮捕した。発表では、27日午前11時40分頃、自宅から、約20メートル先のホテル前路上で職務中だった同署員2人に向け、玩具銃で弾を発射した疑い。約20分前に現場付近で「BB弾で撃たれたようだ」と110番があり、駆けつけた署員2人が通報者から事情を聴取。その際に弾が当たる音がし、周囲を確認したところ、マンション1階の容疑者の自宅ベランダから玩具銃がのぞいていたという。「警官ではなく道路標識に向かって発射した」などと供述している。

(小学校の防犯カメラにクマ、スクールバス利用拡大など安全対策へ:宮城)
栗原市教育委員会は11月クマによる人身被害が発生した地域の小学校で防犯カメラにクマが映っていたことを受け、きょう臨時の校長会を開きスクールバスの利用範囲の拡大など安全対策を打ち出しました。栗原市の一迫小学校の昇降口に設置された防犯カメラには、11月22日の午前7時半頃、親子と見られるクマ2頭の姿が映っていました。この日、学校は休みでしたが、別のカメラには中庭を横切るクマ2頭の姿も映っています。この約20分後には南に500メートルの住宅地で70代男性がクマに襲われ顔などにけがをする人身被害が発生しました。28日の臨時校長会はこの事態を受けて開かれたもので、栗原市教委はクマ出没が相次ぐ地域では徒歩通学の児童生徒もスクールバスで送迎を行うなどの緊急対策を打ち出しました。クマが出没した一迫小学校 菅原研校長「バス通学の子どもはバス停への送迎。J子どもたちが一人でバス停から帰らないようにそういう対策をしております」。栗原市教委ではクマ出没は深夜や早朝が多く学校からの連絡だけでなく栗原市のラインに登録して出没情報を確認するよう呼びかけています。

(熊の錯誤捕獲が増加:長野)
塩尻市で本年度、熊がシカやイノシシ用のわなに誤ってかかる「錯誤捕獲」が増えている。26日時点で8頭で、昨年同期より2頭多い。熊が人里に近づき、生活圏内で目撃される機会が増えたことの現れでもある。27日開会の市議会12月定例会に提出した本年度一般会計補正予算案に、放獣手数料40万円(1頭8万円)を追加計上している。熊の捕獲は県の許可を得て設置したおりで行われるが、シカやイノシシ用のくくりわなに誤ってかかった場合、殺処分せず、麻酔銃などで眠らせて速やかに野生に放つ必要がある。本年度一般会計当初予算に放獣手数料56万円を盛ったが、不足が生じた。先日、熊の出没急増を受けて県が熊の嫌がる行為をして山に戻す「学習放獣」を一時休止し、全頭駆除に方針を切り替えたことから、市は今後くくりわなにかかった場合は駆除するとしている。市内では本年度、熊とみられる目撃情報が今月26日までに88件あり、昨年同期に比べ20件多い。人的被害は発生していないが、今月には大門田川町の住宅の防犯カメラで撮影されたほか、楢川小中学校の窓サッシが壊される建物被害も出た。

(クマ、阿武隈急行と衝突:福島)
阿武隈急行やJR東日本によると、阿武隈急行線福島ー東福島間でクマと列車が衝突した影響で運休や遅れが出た。列車は撤去作業の後、午後7時20分ごろ運転を再開。この影響で、阿武隈急行線の上下線普通列車計5本が運休、上り線1本に1時間50分の遅れが発生。また、東北線では福島ー仙台間上下線計2本が運休、計2本に最大約1時間50分の遅れが発生し、約470人に影響した。

(イノシシ3頭駆除、12年ぶり共猟:沖縄)
沖縄県猟友会石垣地区(石垣克治地区長)は16日、石垣市川平で12年ぶりに共猟を実施した。会員26人が参加して3頭のイノシシを駆除した。狩猟解禁は15日。この日は川平前岳の麓から山頂にかけて、イノシシが出没する可能性のある山中にハンターを配置。イノシシの足跡などをたどりながら獣道を確認した。猟銃を手に待機し、他の会員と無線を使って猟犬の動きを伝え合っていた。山中の河川近くに約30キロのイノシシが出没すると、約10メートル離れたハンターが猟銃を3発放って仕留めた。 参加した60代のハンターは「獣道などにはイノシシの足跡や土を掘った跡がある」などとし、狩猟に必要な動物の習性や長年の経験の重要性を説明していた。

(関西写真記者協会賞、組み写真「命巡る~洛北のジビエ~」:京都)
新聞、通信、テレビなど67社が加盟する関西写真記者協会は28日、優れた報道写真・映像に贈る2025年度の協会賞と各部門の受賞作品を発表した。新聞・通信の部では、企画部門で京都新聞社の吉原直歩記者が撮影した組み写真「命巡る~洛北のジビエ~」が金賞を得た。吉原記者は今年1月に始めた連載で京都市左京区で野生鳥獣の食肉(ジビエ)処理施設を営む猟師一家に密着し、その暮らしぶりを追った。5枚組みの受賞作ではハンターに肉薄し、命の尊さや里山の現状などを力強く表現した。

(秋のジビエ祭、すべて捕獲駆除されたイノシシやシカの肉:愛媛)
愛媛で獲れたイノシシやシカの肉を楽しむ「秋のジビエ祭」が、愛媛県松山市の城山公園で開かれています。イノシシの肉がゴロっと入ったスープカレーに串焼き、ハンバーグなど。使われているのは県内で捕獲・駆除されたイノシシやシカの肉。会場には12店のキッチンカーが並び、それぞれが考案したオリジナルのジビエ料理を楽しむことができます。昨年度の県内の鳥獣害の総被害額は約5億円。このため県はジビエの魅力を発信し、利用拡大につなげようと3年前からこのイベントを開いています。秋のジビエ祭は今夜9時まで開催されています。

(シカ、イノシシ「ジビエ精肉店」開業:福井)
「いい肉の日」の29日、福井県敦賀市相生町に、ジビエ専門の精肉店「山と太陽」がオープンする。シカ、イノシシなどの野生動物は駆除された後、ほとんどが廃棄処分されている現状を変えるのが目的で、店主らは「安全とおいしさにこだわって、持続可能なジビエの流通を確立させたい」と意気込んでいる。市農林水産振興課によると、市内で2023年度に駆除されたシカやイノシシは約2200頭。一部は猟師が食肉として自家消費するが、ほとんどが埋設されるか焼却処分され、市は年間数百万円の処理費用を支出しているという。店主の坂本雅利さん(45)は5年前、転勤で敦賀に移住。趣味の渓流釣りで山に入るうち、多くの野生動物が駆除されていることに心を痛め、有効活用を考えるようになった。そんな中、ジビエ処理加工施設の設立を計画していた、猟友会敦賀支部の宮迫太一さん(50)と知り合い、意気投合。実現に向けて動き出した。宮迫さんは今年2月、市内初となる処理加工施設を稼働させた。猟師から連絡を受けてからおおむね1時間以内に冷凍車で回収。鮮度を維持しながら解体処理し、高品質な食肉に仕上げている。数年後には年間1000頭の出荷を目指すが、そのためには販路の確保も重要となる。坂本さんも2年前に起業し、ジビエのネット販売などを行いながら、実店舗の開業に向けた準備を進めてきた。宮迫さんの施設で処理加工したシカ肉を中心に、家庭で手軽に食べられるよう、解凍後すぐ調理できるスライス肉を中心に扱う。価格は1パック1000円と「高級ではない国産牛」程度とする。坂本さんは「野生動物を地域資源とし、新たな食文化として発信したい」と話す。29、30日は「良い肉を喰(く)らう」と銘打ち、数量限定でもみじ鍋(シカ鍋)を振る舞う。営業時間や定休日などはインスタグラム(@yamatotaiyo_fukui)で随時更新している。

(「厄介者」のアライグマ、ジビエ料理でおいしく:神奈川)
特定外来生物に指定されているアライグマなどの害獣を食肉として活用する「ジビエ」事業が今秋、横須賀市内で始動した。環境保全に取り組む「NPO法人三浦半島生物多様性保全」が捕獲許可を得て捕らえた個体を移動式食肉処理場で解体・加工し、飲食店に提供する。現在、提携する市内2店舗で、この肉を用いた料理の試作品製作が進んでいる。高い繁殖力と適応力を持つアライグマは、在来種の捕食や農作物への食害などで問題視されて久しい。神奈川県では捕獲や駆除に関する実施計画を立てるなど対策を図っている。取り組みの発案者である同法人のメンバーで横須賀市議の天白牧夫さんによると、三浦半島全域では、年間500~600頭が捕獲されており、そのほとんどが燃えるゴミとして処理されているという。「根絶を早期に完了させることが第一であるが、一方で命の尊厳の観点から、できれば駆除個体を活用してやりたい」という思いを抱き続けてきた。構想を実現するため、天白さんは行政などとの調整を図り、今年10月に食肉処理業の許可をNPO法人として取得した。市から有害鳥獣捕獲許可を受けている天白さんが、わなを用いて捕獲する。その後、トラックを改造した移動式の「ジビエカー」に運び、肉を小分けに。真空パックにし、グラム売りで希望の飲食店に提供していく。現状、処理対象はアライグマを主としているが、体重10kg程度までの動物に対応可能だという。「利益を出すことが目的ではない」と天白さん。取り組みを広めることで、害獣の被害に遭う農家や家屋だけでなく、「市民に当事者意識が芽生え、捕獲の協力者が増えてくれたら」と願いを込める。骨の周りの肉をほぐしてパスタのソースにしたり、はたまた赤ワインでじっくり煮込んでパサつきを抑えたり-。秋谷のイタリアンレストラン「Loriga」店主の伊藤亮太郎さんは現在、最適な使い道を図るべくアライグマ料理を試作中。「想定より臭みは少なく旨味がある。脂が少ないため、お腹が満たされたコース料理の終盤にも出しやすい」とアライグマの活用に手応えを感じており、「野菜や魚介類だけでない、横須賀の新たな食の資源となれば」と期待を寄せている。小川町のカレー店「SPOONYOKOSUKA」でもメニューとして提供可能か試作を通して模索中だ。

(良質なジビエの確保には、猟師との密な連携が欠かせない:鹿児島)
野生鳥獣肉(ジビエ)の利活用研修会が、さつま町役場などであった。県内の処理施設や普及に取り組む行政担当者ら35人が参加。処理加工に必要な技術や赤字に陥らない経営方法を学び、需要と消費拡大への道筋を探った。県が主催して18日に開いた。

(鹿肉使ったカレー開発「獣害問題解決し、名物になれば」:三重)
三重県尾鷲市朝日町の食肉加工販売業「尾鷲ジビエ」が、地元で捕獲した野生の鹿肉を使ったレトルトの「ジビエカレー」を開発した。農作物を荒らす厄介者を逆手に取り、食肉用に加工して製品化。代表の山崎裕之さん(55)は「獣害問題を解決し、尾鷲の名物になれば」と力を込める。市によると、県猟友会尾鷲支部が駆除した昨年度のニホンジカ頭数は580頭。市水産農林課の芝山有朋課長は「年々少しずつ増え、猟師の負担になっている」と頭を悩ませる。同市向井、三木里町で農作物を育てる住民が多く、市の昨年度の農作物の鳥獣被害額は約75万円だった。尾鷲ジビエは、自らも約5年前から狩猟を行う山崎さんが「うまい鹿肉を活用したい」と、令和4年に開業。東紀州初の食肉加工処理施設を建設し、解体から製造、販売まで手掛ける。これまで捕れた動物は山に埋められたが、現在は山崎さんが猟師から年間約50頭仕入れているという。鹿肉は筋肉質で脂肪が少なく、独特の獣臭さが特徴。一方で、高タンパク質でビタミンや鉄分を豊富に含む。尾鷲ジビエでは、健康志向の高まりに商機を見いだし、消費者から敬遠される臭みや固さをなくそうと、試行錯誤。解体後すぐにシートで包み、冷蔵庫で1週間ほど熟成している。カレーは、1頭当たり20キロしか取れず廃棄されがちな前足のすね肉を活用すべく、約1年前から開発に着手。南横手商店(和歌山県)の協力の下、辛さ控えめのルーに大きく切った鹿肉を入れた。「尾鷲の自然の恵み 野生を喰(く)らえ。」をうたい、全体の4分の1(50グラム)を鹿肉が占める。28日、尾鷲市向井の畑で会見があり、山崎さんは「手軽なカレーを食べて、ジビエを身近に感じてほしい。獣害問題を知り、社会貢献につなげて」と話した。芝山課長は「紀伊半島には多くのニホンジカが生息している。消費が拡大すれば今後の猟友会の活動にもつながる」と語った。200グラム入りで税込み1500円。今月から市総合交流施設「夢古道おわせ」、商業施設「おわせマルシェ」など、市内で販売している。近日中に市ふるさと納税の返礼品として新たに加わる。

(高校生が夜祭で鹿肉料理販売:埼玉)
秩父高校(秩父市上町)と秩父農工科学高校(大野原)の生徒が12月2日・3日、秩父夜祭で鹿肉を使った料理を販売する。昨年から参加する秩父高校に加え、今年は秩父農工科学高校も取り組みに加わり、隣り合うテントで地域の鹿肉を使ったメニューを提供する。秩父高校では4月に始まった「総合的な探究の時間」の中で、生徒がそれぞれ関心のあるテーマを選んで班活動を行っている。2年生約20人が「食農業」をテーマに選び、その中からジビエを扱う班が立ち上がった。夜祭への出店を行うのは、そのうちの1チームで、4人のメンバーが参加する。「使われにくい鹿肉の部位をどのように料理に生かすか」などを課題に調査や議論を行った。過去に鹿肉を食べた経験がある生徒から「調理の仕方によっては、少し硬く感じた」という声があり、鹿肉をひき肉にして「つみれ」にする方向に考えをまとめた。当初はラーメンやつくね串という案も出たが、夜祭が開催される時期の寒さを考慮し「鹿団子と秩父食材のおでん」に決まった。具材は秩父産鹿肉のつみれ団子と、岡田豆腐店(上町)の厚揚げ、ふるさと両神(小鹿野町両神薄)のコンニャク、秩父産の大根。秩父高校の生徒たちは、販売時に購入者を対象としたアンケートを実施する。年齢層や居住地、ジビエ料理への興味の有無などを聞き取り、来年2月に予定する校内発表に向けた分析に活用する予定。レシピ開発を担うのが、ジビエの加工・販売・飲食を手がける「秩父フードクリエイツ」(中町)社長の福島剛さん。同社は「ちちぶジビエ市場」をはじめ、「おだし料理と土鍋ごはんの店DAdA(ダダ)」「食彩秩父じんじんばあ」などを運営し、ジビエの加工や商品化を行ってきた。秩父高校とは昨年から連携を続けており、今年はその流れで農工科学高校にも声をかけた。秩父農工科学高校では、フードデザイン科の授業の一環で鹿肉を使ったレシピを募集し、生徒約30人の案の中から「秩父鹿と麦みそのおっきりこみ」を採用。生徒の考案したレシピをもとに、福島さんが販売用に調整を行った。秩父産の鹿肉を使い、清川製麺(中村町)のおっきりこみ、秩父産の野菜を具材とする。味付けは小川こうじ店(中村町)の麦みそを使う。レシピを考案した1年の生徒は「ジビエについて調べてみて、初めて知ることが多かった。寒い夜祭でも体が温まる料理にしたいと考えた。おっきりこみを食べて夜祭も楽しんでもらいたい」と話す。当日は、両校の生徒が販売の現場に立ち、来場者への対応も行う。秩父高校の新井幸希さんは「ジビエは解体や処理が大変だと、調べていく中で知った。夜祭は寒いので、自分たちの考えたおでんで温まってもらい、ジビエもおいしく食べてもらえたらうれしい」と話す。出店場所は「埼玉信用組合秩父支店」駐車場。販売時間は、2日=16時~21時、3日=15時~21時を予定。価格は、いずれも1,000円。

(イノシシ皮、ウマれ変わる:福島)
伊達市振興公社は12月3日から、有害鳥獣として市内で駆除されたイノシシの皮を使い、来年の干支(えと)の午(うま)年にちなんでウマをモチーフにしたキーホルダー「ウマキー」を販売する。イノシシ皮のオリジナルレザーブランド「ino DATE(イーノ伊達)」の新商品で、いのしし年から続く干支キーホルダーの第8弾。ウマは力強く前進するイメージから「勝負運」「出世運」を高めるとされ「馬九行久(うまくいく)」の語呂合わせのように、運気を呼び込み縁起の良いモチーフとされている。一つ一つ手作りで、茶色とナチュラルの2色展開。価格は1700円で1年間販売する。

(鹿肉の魅力を広めたい:三重)
大台町佐原にあるジビエ料理店「スイスイ」は、町内で捕れたシカの肉を使った料理が自慢だ。店主の神田友美さん(46)は「鹿肉の魅力を町で広めていきたい。こんな料理ならおいしく食べられるよと伝えられる場になったら」と力を込める。R三瀬谷駅近くの細い路地をおいしそうな匂いに誘われて進むと、その先に緑色の建物のスイスイが現れた。名物のシカのカレーは、ジビエ特有の臭みを感じることがなく、こだわりのスパイスと相まった逸品に仕上げている。神田さんは大阪市出身。田舎暮らしに憧れていた夫の靖英さん(45)と2018年、町に移住した。当初は同町茂原の自宅で民宿を経営していたが、長女を妊娠し、新型コロナ禍と重なったこともあって19年に閉じた。その長女が保育園に入園すると時間ができ、「自分も何か仕事をしたい」と思うように。大阪に住んでいたときは、食い倒れのまちでグルメを満喫していた。しかし少子高齢化が進む同町では飲食店が少なく、自らさまざまな料理に挑戦した。その中で料理の腕を生かし、「若い人も楽しめるような飲食店を作ろう」と一念発起した。靖英さんは田舎暮らしに備え、わな猟の免許を取得していた。現在はジビエ加工場も営んでおり、捕獲してすぐに加工場で処理をすることで、臭みのない肉を用意できる。町の自然が生み出し、夫が捕ったシカの肉を生かそうと、ジビエ料理を提供することを決め、今年6月にスイスイを開店した。ただ、町の人は鹿肉になじみのない人も少なくない。神田さんも「鉄臭く、おいしくない肉というイメージが強いと思う」と話す。店ではカレーやハンバーグなど、家庭でも作れる料理を用意している。「鹿肉のおいしさを感じてもらい、町の人が鹿肉を買ったり、シカを捕ったりして、食べる習慣が増えたら」と語った。

(クマ出没:宮城)
栗原市によると、30日午前7時55分ごろ、栗原市高清水熊野にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、29日午前5時30分ごろ、仙台市青葉区西花苑2丁目にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
仙台市によると、28日午後11時30分ごろ、仙台市青葉区川内亀岡町にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
栗原市によると、29日午前9時10分ごろ、栗原市高清水宮脇にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
富谷市によると、29日午前10時ごろ、富谷市富谷源内にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
栗原市によると、29日午前7時ごろ、栗原市高清水宿の沢にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
白石市によると、28日午後4時35分ごろ、白石市小原上屋敷にクマが出没しました。

(クマ出没:宮城)
栗原市によると、28日午後4時25分ごろ、栗原市築館城生野峯岸にクマが出没しました。

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