<射撃ニュース4月>
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(「ツキノワグマ出没注意報」、初の3月発表:岩手)
岩手県は24日、クマ対策関係部局長会議を開催し、「ツキノワグマ出没注意報」を発表した。3月中に注意報を出すのは初めて。冬眠明けのクマの活動が今後活発化することが予想されるため、例年4月以降だった発表を前倒しした。県庁で開かれた会議には、県幹部ら約25人が出席。県の施設周辺での刈り払いの実施や緊急銃猟にあたるハンターへの報酬の補助など、新年度のクマ対策の取り組みを共有した。県は3月に狩猟免許を持つ5人を「ガバメントハンター」として採用。4月にはクマなどの野生動物を管理する専門職員1人を新たに採用する。効率的なクマの捕獲方法を調査したり、ガバメントハンターと連携して捕獲技術向上に向けた研修を行ったりする。会議では、クマが目撃された位置を共有できるアプリ「 Bearsベアーズ 」の運用についても説明。県の公式LINEを通して、24日から目撃情報を登録・閲覧することができるようになった。達増知事は「クマが冬眠から目覚めるこの時期は警戒が必要。今後も市町村や猟友会などと連携し、県民の安全安心の確保に取り組む」と話した。県によると、今年度のクマの捕獲数は1184頭(1月末時点)に上り、出没件数とともに過去最多となった。冬に入り出没は大幅に減ったが、2月には花巻市、3月には宮古市でクマによる人身被害が発生している。
(クマ出没注意報!、「くまログあおもり」は4月中に運用開始:青森)
青森県は明日4月1日から、県内全域にツキノワグマ出没注意報を発表します。注意報が発表されるのは過去最速です。注意報は県の自然保護課が明日4月1日から、県内全域を対象に発表します。各市町村から直近10日間で報告されたクマの出没件数が、基準となる5件を上回ったためです。県自然保護課 櫻田定博 課長「昨年は過去に類をみない大量出没、それから過去最多に並ぶ人身被害が起こりました」。去年、県内では過去最悪のクマ被害が発生しました。統計開始以降最多の3,333件の出没、人身被害は過去最多だった2023年に並ぶ10件発生しました。今年は最悪だった去年よりも早く、出出没注意報が発表されました。県自然保護課 櫻田定博 課長「まずはクマの出没情報に敏感になっていただいて、クマが出ているところにはなるべく近づかない。山に入る際には複数人で音を出しながら入る、クマを引き寄せる恐れがある食べ物や野菜くずを屋外に放置しない。こういう基本的な対策をきっちり講じてほしいと思います」。県ではクマへの注意喚起を促すため、目撃情報や人身被害情報をマップ化してメールなどで配信するシステム「くまログあおもり」の運用を、4月中に始めるとしています。
(クマ被害防止へ捕獲目標、行程表を策定)
政府は27日、2030年度までのクマ被害対策のロードマップ(行程表)を策定した。現在の推定個体数から地域ごとの捕獲目標を設定し、30年度の目標個体数を提示。クマの捕獲作業に従事する自治体職員数や資機材数も盛り込んだ。急増する人身被害に対応するため、個体数管理を強化するとともに自治体の体制整備を図る。
(「秋に大量出没した年の翌春は出没増える傾向」、冬眠明けのクマに注意を呼びかけ)
春になり、冬眠から目覚めたクマの出没が増えることを受けて、石原環境大臣は「秋に大量出没した年の次の年の春は、クマの出没が増える傾向にある」として注意を呼びかけました。環境省によりますと、今年度、クマの被害により亡くなった人は統計開始以降、過去最多の13人に上っています。春になり、冬眠から目覚めたクマの出没が増えることを受け、石原環境大臣はきょう(31日)の会見で、すでに各地で目撃情報が相次いでいるとしたうえで、「秋にクマが大量出没した年の次の年の春は、出没が増える傾向にある」として、注意を呼びかけました。具体的には、▼クマの生息地に入るときは、クマの行動が活発な明け方や日の入り前後を避けること、▼単独行動を避け、鈴やラジオなど音が出るものや適切なクマ撃退スプレーを携帯すること、▼山に入った時に残飯やゴミを放置しないことなどを呼びかけています。
(「あなた、クマと共存はできないよ」猟友会ハンターが熱弁:北海道)
高裁は2026年3月27日、猟銃所持許可の取り消しをめぐる訴訟で、北海道猟友会砂川支部長のハンター・池上治男さんの訴えを認め、処分を適法とした二審判決を破棄する上告審判決を出した。池上さんの逆転勝訴だ。SNSでは、判決後の会見で朝日新聞の記者からの質問に対する池上さんの回答に注目が集まっている。池上さんは18年に砂川市からの要請でヒグマを駆除したが、北海道公安委員会は銃弾が周辺の民家に当たる恐れのある発砲だったと判断し、猟銃所持の許可を取り消した。処分の取り消しを求めた訴訟では、一審は池上さん側が勝訴したが、二審の札幌高裁では逆転敗訴。最高裁では「処分は重すぎて妥当性を欠く」として、裁判官5人の全員一致で池上さんの逆転勝訴が確定した。SNSでは、判決後に開かれた会見で朝日新聞の記者から寄せられた質問への、池上さんの回答に注目が集まっている。男性記者は25年度のクマ被害が過去最多となったことを受け、「そもそも猟友会のハンターに依存していいのかという国内の野生動物管理に様々な課題はあると思うが、『クマとの共存』に向けて、今回の判決に抱く期待などはあるか」と問いかけた。池上さんは「えっと、『クマとの共存』? あなた、クマと共存はできないよ」と一蹴。「共存をどうお考えかっていう......」とした記者に、「『共栄』はなんぼかできるかもわからないけれど、『共存』っていうのはまず無理」とした。「そこにクマが出た!(と騒ぎになる)。共存できないよ。それだけ危険だってことを(理解しなければ)」と語り、池上さんのもとには、たびたびクマの保護を訴える電話がかかってくるとも明かした。「『人間75億いるから、人間の1人や2人、やられてもいいんだ』。こうやって、平気で私のところにクレームの電話が来るんですよ」。「もし本当にクマが可愛いんだったら、箱わなに入った熊を、頭を撫でに来いって。すると分かるから」と語り、「CNNも来ました、このクマ問題で。世界中が笑ってますよ。日本のヒグマ情勢については」と、海外と比べても異様な状況があると訴えた。「人間が被害に遭うっていうのは、生きたまま食われるんだよ。腹から食われるよ。そして(食べた)あとは埋める。『土饅頭を作る』ってのは、その肉を後から食べにくるんだよ」。記者に向け、「あなたがそう思ってるわけじゃないだろうけど、『クマとの共存』っていうことを言ってしまったら、被害にあったご家族の方々がどういう思いをするかってことを考えなきゃダメだと思う」とした。「クマと戦って助かる人はほとんどいませんから。ヒグマとだったら尚更そうだ。この天井まで(体高が)高いのがヒグマですよ。背、立ったらここまで行くんだよ」とクマの大きさに触れ、「そんな野生動物と共存するって安易なことを言ってたら、本当に人間、どこにも住めなくなっちゃうよね」とした。池上さんはクマとの共存については「絶対に無理です」とした上で、「『共存する』ってことは、こういう風に置き換えたらいい。『山の自然を、正しい形に取り戻せ』」とも訴えた。「鹿が多すぎてヒグマとかクマが増えてきた。そういう科学的な論拠を捉えた上で、自然の中でヒグマがどこに住んでいるか(調査・把握する)」。「北海道にヒグマがいなかったら困りますから。唯一の素晴らしい動物なんですよ」とした上で、「たまたま人間のコミュニティにヒグマが入ってきて、摩擦が起きる。摩擦が起きないってことは絶対ありませんから、『共存』っていうことはやっぱりちょっと違うかなという風に思いますね」と語った。
(セシウム濃度、全地域で減少:福島)
福島県環境創造センターの小松仁主任研究員らは、東京電力福島第1原発事故後の県内で14年間にわたり捕獲されたイノシシの放射性セシウム濃度の推移を分析した結果、県内全ての地域で減少傾向を示していることを解明した。減少幅は地域ごとに差があった。物理的半減期より早く減少していることも確認した。論文が26日、国際的な科学誌に掲載された。2011年から県全域で捕獲された約3600頭のイノシシのデータを集め、筋肉中に含まれる放射性セシウム濃度を統計解析した。全地域で時間がたつごとに減少傾向にあることが確認された一方、減少のスピードに地域差があった。県全体では食品の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を下回る個体の割合が増加しているが、帰還困難区域などでは依然として数値が高い個体が見つかった。濃度の減少スピードを示す生態学的半減期は約3~9年と推定され、物理的半減期の約30年より短かった。小松氏らは論文で「濃度が十分に低下した一部地域での鳥獣肉の利活用再開を検討する上で、極めて重要な科学的根拠だ」とし、今後は生態学的半減期に地域差がある要因などの研究を進める意向を示している。
(羅臼岳、危険なクマ出没で登山道早期閉鎖:北海道)
オホーツク管内斜里町の羅臼岳(1660メートル)で昨年8月、登山中の男性がヒグマに襲われて死亡した事故を受け、環境省などは25日、再発防止策を正式に決定した。人を恐れないクマの出没時、登山道を早期に閉鎖する。捕獲できない場合は、最短でも5日間閉鎖するなどの基準も示した。クマの出没に備え、国立公園の登山道の閉鎖に関する基準を設けるのは異例。
(クマ危機警戒本部を設置:岩手)
北上市は25日、ツキノワグマ出没に対応する危機警戒本部を設置した。
(仙台市が猟友会など3組織を市長表彰:宮城)
去年、仙台市で住宅街に現れたクマを「緊急銃猟」によって全国で初めて発砲し駆除した対応について、仙台市長が関係団体を表彰しました。仙台市長表彰を受けたのは、猟友会などで作る「仙台市鳥獣被害対策実施隊」など3つの組織で、去年、市内の住宅街に現れたクマを緊急銃猟で駆除したことが表彰の理由です。去年10月、仙台市太白区の住宅街にツキノワグマ1頭が現れておよそ13時間とどまり、猟友会が猟銃を発砲して駆除しました。市町村長の判断で、市街地での発砲を認める「緊急銃猟」の制度に基づいて、実際に発砲したのは、これが全国で初めてでした。仙台市は、この一連の対応が関係機関の連携によって迅速かつ的確に行われ、被害の未然防止、市民の安全確保につながったとしています。駆除した隊員「第一は安全を考えながら、市民をフォローする。隊員同士の絆がいかに大切かを伝えて、活動していきたい」。仙台市は、今後もクマ出没のおそれがあるとして、関係機関との連携を強化し、安全対策に取り組むとしています。
(ヒグマ対策強化、緩衝帯整備や銃猟支援:北海道)
昨夏に市街地付近でヒグマの出没が相次ぎ、ヒグマ注意報が出された初山別村内では、雪解けの季節を迎えて対策が進んでいる。新年度予算に、山と人里の間に設ける緩衝帯の整備費、民間ハンターの銃器購入の補助などヒグマ対策の費用を盛り込んだ。猟友会羽幌支部は「ここ数十年、クマの頭数が増えているのは体感的に間違いない」とし、警戒を強めている。
(人間将棋も熊対策を徹底:山形)
将棋駒の生産量日本一を誇る山形県天童市の春の風物詩「人間将棋」を4月11、12日に控え、会場となる市中心部の舞鶴山で28日、地元猟友会などがクマの生息調査を行った。
(夏樹陽子さん、副会長を退任)
日本クレー射撃協会は1日、俳優の夏樹陽子さんが2月に副会長を退任したと発表した。2022年に就き、2期目の途中だった。協会を通じ「本業の都合により任期満了前ではございますが、副会長の職を辞することとなりました」と説明した。
(クマ等の出没に備えた緊急銃猟想定訓練を実施します:埼玉)
近年、クマが人の日常生活圏に頻繁に出没する事態が北海道や東北地方を中心に発生していることを受けて、迅速な対応により被害を防止するため、令和7年9月1日付けで「改正鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」が施行されました。埼玉県内でもクマが目撃されているなか、埼玉県と飯能市が合同で緊急銃猟実施手順の確認を行うため訓練を実施いたします。人の日常生活圏内にクマ等が出没した場合を想定し、緊急銃猟の手順を確認する目的で訓練を実施します。訓練の様子は県内の自治体関係者や猟友会が見学します。訓練実施中、捕獲を想定している割岩橋付近の通行と立ち入りを制限させていただきます。ご不便をおかけいたしまして申し訳ございませんが、ご理解とご協力をお願いいたします。
(AIが防犯カメラのクマ検知、危険度を即座に通報:岩手)
一関高専(小林淳哉校長)は、ソフトバンクや米シリコンバレーの生成人工知能(AI)開発企業アイジップと連携し、生成AIを活用してクマ出没を検知・通知するシステムの開発を始めた。防犯カメラなどの動画からクマを自動検知し、危険度や状況を文章化してリアルタイムに通知する。人手をかけず低コストで広範囲を監視できるようになり、人的被害の防止など地域の安全に貢献する。
(防護ネットに金網組み合わせ、鹿やイノシシ侵入防ぐ:東京)
東京・御岳山で杉苗木を植林する東京都農林水産振興財団は、防護ネットに金網を組み合わせた柵で鹿などの野生動物による苗木の食害を防いでいる。化学繊維製のネット柵に亀甲型の金網を結束。
(熊駆除の公益性、ハンター守る態勢を急げ:信濃毎日新聞)
熊による被害防止が急務となるなか、駆除を担うハンターの公益性を重視した、妥当な判断といえる。地元自治体の要請で公務としてヒグマを駆除したのに、危険な発砲だったとして猟銃免許を取り消された猟友会員が、北海道に処分の撤回を求めた訴訟の最高裁判決である。道の処分は重すぎ、駆除活動を萎縮させるとして、発砲時の危険性を厳しく見た高裁判決を破棄、原告の猟銃所持を認めた。原告は、18メートル前後の近距離で熊と向き合う「緊迫した状況」で発射判断を求められ、撃った。そこには地元の市職員らが立ち会っていた。警察官が周辺住民に屋内避難を呼びかけてもいた。これに対して道公安委員会は、銃を向けた先に民家があったことから、弾丸が到達する恐れのある建物に向かって銃猟をしてはならないとする鳥獣保護管理法を厳密に解釈し、処分した。最高裁判決は、発砲は住民の生命や生活環境を保護するためだったと強調。建物や人に被害はなく、発砲までの経緯に不適切な点も見当たらないと結論づけた。熊の駆除は逆襲に遭いかねない危険な役目だ。猟友会員らはそれを半ばボランティアで引き受けている。万が一のときの責任を個人に負わせるべきではない。昨年始まった緊急銃猟制度では、発砲で生じた民事上の責任は自治体が負うと明示された。ただ最高裁判決も、弾丸が熊を貫通して「跳弾」となり、周りの人に当たる危険性はあったと指摘している。国は「注意義務を果たす限り」刑事責任を問うことは想定していないとするが、現場の不安は消えていない。ハンターが安心して駆除に当たれる態勢を急ぎ整えたい。大町市の取り組みが参考になる。市街地での出没に迅速、確実に対処するため、担当職員や猟友会員、警察官らが随時、情報共有できるアプリを開発した。関係者個々のスマホ上に、熊の居場所や立ち入り規制の範囲などを表示。安全確保や責任の所在を確認し合いながら対応でき、発砲に至るまでの判断の過程が記録されるので後に検証もできる。大きな安心材料になりそうだ。熊による全国の人身被害は本年度、過去最多の237人を数え、うち死者は13人に上る(2月末)。街なかでの出没や被害も目立っている。一方でハンターの担い手不足は深刻だ。その解消のためにも、公益性と安全性を両立できる環境づくりが求められている。
(大阪シカ騒動、人ごとにあらず:東京新聞)
万博に都構想。話題が尽きない大阪で新たな問題が浮上した。シカるべき対応が問われるのがシカだ。市街地に出没し、役所の人々が頭を悩ませたかと思えば、警察施設に「出頭」し、今は温泉地にいる。お隣の奈良から迷い込んだ説もあり、「どの自治体が対処すべきか」と問われる事態に。似た問題は各地でも取りざたされるところ。「やるシカない」のかけ声頼みにならない対策とは。関西を中心に連日報道されてきた西のシカ騒動。大阪市の担当者は「こちら特報部」の取材に「初めてのことで…。常時、数人が張り付いたが、見守るしかできなかった」と漏らした。市によると、21日から市北東部の住宅地などに1頭のシカが出没。毎日、日中は市職員らが近くでシカに目を光らせた。シカはマンション敷地や公園を移動し、25日に府警の施設に「出頭」。誘導はなく偶然だったという。市が捕獲すると27日、シカの飼育経験があり、受け入れを表明した府内の温泉施設へ運ばれた。その最中、「ネーミングセンスに定評がある」と自負する横山英幸市長が自身のX(旧ツイッター)でシカの名前を募集。「ど根性鹿『なにわ1号』」と私案を出すと、大阪府の吉村洋文知事が「『シカやん』。これでどうや」とアピール。他に「ナウ鹿」、大阪と奈良にちなんだ「阪奈(はんな)」などが挙がった。温泉施設のインスタグラムによると、名前は近日公開という。ところでシカはどこから来たのか。取り沙汰されるのが、シカの生息で知られる奈良公園(奈良市)だ。一部を除く市内でシカは国の天然記念物に指定。出没地から東に30キロほど。「大阪遠征」はありえるのか。森林ジャーナリストの田中淳夫さんは「大阪市での出没前に公園西側で目撃されており、山を越え、幹線道路を通って移動したのでは」とみる。11日以降、東大阪市でも複数目撃され、角が切られた痕跡が一部確認された。これは奈良公園のシカの特徴という。過去には公園から1、2キロの市街地での出没はあったが、昨年ごろから離れた場所で見られるように。その要因として公園内のシカの「過密状態」を挙げる。現在、1460頭超が生息するとされる。「観光客に人気で、シカせんべいが例年の何倍も売れている。餌が増えて過密になり、ストレスを感じたシカが新天地を求め旅立っている」。出身地を調べる研究もある。鍵になるのが「ミトコンドリアDNA」の遺伝情報の解析だ。100年近くシカがいないとされながら近年目撃されている茨城県では、森林総合研究所などの研究グループの解析で栃木・日光のシカと遺伝子型が一致したと判明した。福島大などのグループは奈良公園のシカを調べている。古くからシカは狩猟されており、兼子伸吾教授は「奈良時代のころには周辺地域で絶滅した」と話す一方で、奈良公園のシカは人々によって守られてきたとされ「独自の遺伝子型を残している」と説く。ただ近年は「市外や県外からも入ってきている」。大阪に現れたシカとの関連をつかむ場合、「奈良公園のシカの特異的な遺伝子型が検出されなければ、さらに調べないと分からない」と話す。今回の騒動、人間界では自治体同士が「どちらが対応するか」で議論に。吉村知事は25日の会見で「故郷に帰すのが普通かなと思っていた」と、奈良県側に対応を打診したと明かした。しかし奈良県の山下真知事は、エリア外に出たシカは法的扱いが変わるとし「大阪で捕獲されたシカは大阪にお願いする」と述べた。
(日常と切り離せないクマ問題。命と安全を守るための「正しい向き合い方」とは?)
昨今、クマの出没や被害に関するニュースがあとを絶たず、この問題はもはや山間部だけの出来事ではなく、我々の日常生活と切り離せないものとなった。こうした状況下で自らの命と安全を守るためには、クマの性質を正しく理解し、適切な距離を保つための具体的な知恵が不可欠である。そこで今回、山形県舟形町で狩猟・駆除活動を行う舟形猟友会のメンバー、斎藤優輝さんと、長野県軽井沢町でクマ保護管理活動を行っている特定非営利活動法人ピッキオのメンバー、玉谷宏夫さんにクマ問題についてインタビューを実施。日々の生活で注意すべき点や遭遇時の対処法について詳しく調査した。地域住民からレジャーを楽しむ人まで、自分たちの身を守るための実践的なガイドとして、ぜひ本記事を参考にしてみてほしい。クマの行動原理の大部分は「食」に直結している。ここでは、専門家の知見に基づき、その食性を解き明かしていこう。3月から4月ごろ、雪解けとともに冬眠から目覚めたクマは、ブナの新芽や草本類、あるいは厳しい冬を越せなかった動物の死骸などを口にする。夏から秋にかけては、実は山の中に食べ物が最も少なくなる過酷な時期。この時期のクマは、アリやバッタといった昆虫まで食べて飢えを凌ぐ。そしてこの時期になると、市街地ではスイカやトウモロコシなどが食べごろを迎える。特に夏季のトウモロコシ被害は甚大で、全国の被害の半分以上がこのトウモロコシ被害だという。そして秋、12月の冬眠を控えたクマは、ブナやミズナラの実、ヤマブドウ、山栗などを求めて猛烈に食欲を旺盛にする。山に十分な餌がなければ、彼らは市街地へ繰り出し、柿や栗をむざぼる。この「食への執着」こそが、人間との接触を増やす最大の要因となっている。クマと出合わないための行動指針。リスクを最小限に抑える「時間・場所・環境」の管理クマとの事故を防ぐために最も重要なのは、言うまでもなく「出合わないこと」である。クマを人里に呼び寄せないための環境づくりと、リスクの高い時間を避ける行動を徹底しなければならない。自分の街にクマを寄せ付けないためには、彼らにとっての「魅力的な餌場」を徹底的に排除することが鉄則だ。玉谷さんは、クマにとって魅力的な匂いを発する生ゴミの出し方には細心の注意が必要だと語る。また、屋外に置かれたペットフードや家畜の飼料などもクマを呼び寄せる原因となるのだそう。そして、特に注意が必要なのが、庭先に植えられた柿や栗の木だ。斎藤さんによると、これらはクマを強く引き寄せる「誘引物」となるという。実際に舟形町役場によると、2025年12月時点のデータで柿15本、栗5本、ラフランス10a、リンゴ1本といった甚大な果樹被害が確認されており、前年の被害ゼロから大幅な増加に転じている。今年はクマが柿の木に留まり続ける姿も目撃されており、例年以上に「執着」が強い状況だという。対策として最も有効なのは、思い切って木を伐採するか、あるいは実が熟す前にひとつ残らずすべて収穫しきることだ。こうした誘引物の除去のほかにも、クマが身を隠せそうな場所を作らないことが大切だ。対策の一例として、藪の刈り払いがあげられる。玉谷さんによると、家の周りや通学路など、移動経路や潜伏場所になりそうな藪を刈り払って見通しをよくするだけで、不意の遭遇リスクを大きく下げることができるのだという。また、行動するタイミングを誤らないことも生存戦略のひとつである。出没がピークを迎えるのは、冬眠を控えて食欲が極めて旺盛になる9月から11月ごろだ。ブナなどの実が不作な年だと、この時期にクマは食料を求めて広範囲を移動するため、人間との接触機会が激増する。特に警戒すべき時間帯は、早朝と夜間。斎藤さんによると、この時間帯は通報も多くなるといい、薄暗い中での活動はクマと鉢合わせる可能性を高めてしまう。レジャーや日々の散歩、農作業においても、この「魔の時間帯」を避けることで、遭遇リスクを下げることができるだろう。山歩きや農作業の際の代表的な対策として、自分の存在をクマに知らせる「クマ鈴」の活用が挙げられる。クマは本来、警戒心が強く人間を避ける習性を持っているため、音を鳴らしてこちらの位置を事前に伝えることは、不意の遭遇を避ける有効な手段となる。また、より確実な対策として「笛(ホイッスル)」の併用も効果的だ。クマ鈴の音は川のせせらぎや風の音にかき消されてしまうことがあるが、笛の鋭い高音は遠くまで届きやすく、広範囲に存在を知らせるのに適している。さらに、万が一動けなくなった際の救助要請にも役立つため、あわせて携帯しておきたいアイテムだ。「どこにリスクが潜んでいるか」を把握するために、行政のサービスを積極的に活用するのも有効である。例えば山形県では、最新のクマ出没情報を可視化した「出没マップ」をウェブ上で公開している。自分が住む地域や、これから向かおうとしているレジャー先の出没状況を事前にチェックすることは、現代における必須の習慣と言える。こうした公的なサイトやサービスを日頃から確認し、警戒レベルを適切に判断する知恵が、自分と家族の身を守ることにつながる。プロの猟師であっても、野生のクマと対峙した際の恐怖は想像を絶する。ここからは、もし不運にもクマと遭遇してしまったとき、私たちの「命」を左右する判断と行動について解説する。クマの体格とパワーは、まさに「プロレスラー」そのものである。斎藤さんは、実際にクマが頑丈な金属製の檻を力任せに破壊しようとする光景を目撃し、「檻の中にいてもなお、恐怖で震えた」と語る。それほどの怪力を持つ相手に、素手で立ち向かうことは不可能だ。また、特筆すべきはその「足の速さ」。クマは人間よりも遥かに速く走ることができるため、背中を向けて逃げ出すことは、自ら「追われる獲物」になることを意味する。一度標的にされれば、走って逃げ切れる確率は限りなくゼロに近い。では、実際に遭遇した際、私たちはどう動くべきなのか。まず、「遠くで見つけた場合」は、相手に気づかれないよう静かにその場を立ち去るのが鉄則だ。クマを刺激せず、距離を保つことが最優先となる。問題は、「数メートルで目が合った場合」である。この時、最もやってはいけないのは、パニックになって背中を向け走り出すことや、大声で威嚇することだ。専門家の推奨する基本的な動作は、「目を離さず、ゆっくりと後退して距離を取る」ことにある。もちろん、過去には「大声で威嚇したらクマが逃げ出した」というような体験談も存在する。しかし、それはあくまで結果論であり、実際にはクマがどのような反応を示すかは「運任せ」という側面も否定できない。だからこそ、生存確率を少しでも上げるためには、個人の直感よりも専門家が推奨するセオリーを最優先すべきなのだ。また、万が一遭遇した時に備えて、すぐ車内へ逃げ込める動線を常に用意しておくことも極めて有効であると斎藤さんは語る。実際、猟友会でも、現場では常に車へ戻る経路を最短距離で確保しながら活動を行っているという。強固な遮蔽物としての車は、野生動物の脅威から身を守るための盾となってくれる。出合ったとき用の対策グッズとしては、護身用のクマスプレーを携行する人も増えているが、斎藤さんは「持っているだけで安心」という考えに警鐘を鳴らす。一度も使ったことがない道具を、極限の緊張状態で正しく作動させるのは至難の業だ。頭で考えてから使おうとするようでは、本気で襲いかかってくるクマのスピードには到底間に合わない。スプレーの仕組みを理解しているか、有効な射程範囲を知っているか、風向きなどの使用条件を把握しているか、など、これらを反射的に判断し、体が動くレベルまで習熟していなければ、緊急時に生き残る可能性は下がる。道具はあくまで「使いこなせてこそ」の助けであることを忘れてはならない。私たちが安心して日常生活を送れる裏側には、クマ問題の最前線で活動する猟友会の存在がある。彼らの活動は、単なる「駆除」にとどまらず、地域とクマとの境界線を守るための多岐にわたる任務で構成されている。その最たる例が、クマの出没通報を受け、実際に現場へ向かう「緊急銃猟」だろう。よくテレビなどでも放送されているこの任務は、常に危険と隣り合わせだという。山中での駆除に用いられる銃器には主に2種類ある。長距離を狙えるライフル銃でも射程は約100メートル、散弾銃に至っては約50メートルまで接近しなければならない。前述の通り、クマは人間を凌駕するスピードとパワーを持っている。そのクマに対し、わずか50~100メートルという至近距離まで踏み込むことは、プロの猟師であっても相当なリスクと覚悟を伴うものだ。一方で、意外に知られていないのが市街地での対応である。「出没したら即駆除」と思われがちだが、市街地での通報があった場合、そこでの発砲は難しいため、基本的にはその場で駆除するのではなく、「山へ追い払う」ことが優先される。この際、物理的な攻撃ではなく「追い払い用花火」などが用いられるという。さて、このような派手な緊急銃猟が注目されがちだが、猟友会の日常においてメインとなるのは実は「罠の設置」による防衛策だ。非常に鼻が利く、このクマの習性を利用し、好物の餌を入れた罠を設置して山から降りてくる前に食い止める。基本的には山中に設置されるものだが、近年の出没傾向を踏まえ、最近では市街地付近に罠を設置する試みも行われているのだという。このように、猟友会が最前線で活動する一方で、自治体も多角的な対策を講じている。広報による注意喚起はもちろん、農地への電気柵設置や、クマの潜み場となる藪の刈払い、不要な果樹の伐採に対して補助金を出すなど、住民の防衛策をバックアップしている。また、猟友会が安全に緊急銃猟を行えるよう、保険加入や装備品の配備、マニュアル作成といった体制整備も進められている。このようにして行政とプロが手を取り合って街を守っていることも知っておいてほしい。いかがだっただろうか。クマが身近な存在となった現代において、最も重要なのはその生態を正しく理解し、誘引物の除去や時間帯の管理といった「出合わないための備え」を徹底することである。万が一の遭遇時には、パニックにならず、プロが提唱する生存戦略を冷静に実践することが、自身の命を守るためには重要となる。また、クマスプレーなどの道具を携行する際は、「持っているだけで安心」という過信を捨て、極限状態で反射的に使いこなせるまで習熟しておくといった、実効性のある備えをしておきたい。地域を支える猟友会の献身的な活動に敬意を払いながら、我々一人ひとりが当事者意識を持って対策に取り組むことが、安全な暮らしを維持するための確かな鍵となるはずだ。舟形猟友会・斎藤さん「テレビや新聞、インターネットで毎日のようにクマに関することが取り上げられており、実際に現場ではクマへの対応が過去最高レベルに多くなっています。ですが、クマによる死傷者数が過去最高になったとしても、交通事故による死傷者数のほうが多いようです。北海道や東北地方を中心にツキノワグマの出没、被害が発生しているようですが、すべての都道府県で同じような事態になっているわけではないようです。クマの出没に関する情報を自分で調べてみて、比較的安全な山などで自然に触れ合えるレジャーを計画していただくとよいのではないでしょうか」。ピッキオ・玉谷さん「かつてクマは「奥山の動物」でしたが、今では私たちのすぐそばで暮らす「身近な動物」になりつつあります。だからと言って、むやみに怖がる必要はありません。大切なのは、クマが近くにいることを前提として、事故を防ぐために「それぞれの立場でできること」を正しく実践することです。現在はクマの生態研究が進み、クマスプレーのような防衛手段が個人でも手に入るようになったのは、共存に向けた大きな進歩であり心強いことです。今後、人口が減少し、クマの勢力圏がさらに広がっていくであろう将来を見据え、私たちは知恵を絞って、人とクマが共生できる新たな『妥協ライン』を見つけていかなければならないと、私たちも考えております」。
(クマ出没時、誰が引き金を引くべきか)
クマが庭先に出た時、引き金を引くのは誰だろうか。火災なら消防、事件や事故なら警察が駆けつける。では、獣害からは誰が守ってくれるのか。その問いに対するヒントがないかと、京都府福知山市の鳥獣対策員、望月優さん(33)の仕事現場を取材した。全国でも珍しい、市の正規職員として獣害対策に臨むスペシャリストだ。「庭の木にクマの爪痕がある」という地域の農家からの通報を受け、望月さんは現場に向かう。一見クマがひっかいたように見えるが、ほかの動物の痕跡のこともあるという。現場を見た結果、雄ジカが角をこすりつけた跡だと分かった。「僕が一目見れば、クマとの違いがわかるんですけど、知らなかったらびっくりしますよね」。動物ごとに対応が異なるため、対象を見極めることは獣害対策では重要だ。
(「女性ハンター」を描く“読む狩猟体験”の書:中江有里)
近年、人間の脅威となっている熊。その被害が出る度に「駆除」が叫ばれる一方、「むやみに殺すな」という声も上がる。本書はある女性ハンターの誕生とその成長を追っていく。そして熊と一対一で対峙するその時を描く。実家は裕福、家族関係は良好、高身長で身体能力が高く、整った顔立ちの岸谷万智が主人公。札幌で暮らす大学生の万智は周囲から羨望と嫉妬の対象とされ、居心地の悪さを覚えていたある日、狩猟の雑誌を開いた。興味の赴くまま銃砲店に足を運び、そこで師匠となる人を得て、万智は順調に狩猟の道を歩み始める。初めての狩猟でいきなりエゾシカを仕留めたが、喜びは感じなかった。「ただ、体の力が抜けた」思いがけない感慨を覚える。万智が出会うハンター仲間の中に、勇吾という男がいる。若い女性ハンターの万智を下に見たり、口が悪く、周囲から浮いた存在だが、彼には彼のハンターとしての矜持がある。「俺は生き物としての俺の強さを信じたくてこの世界に飛び込んだ」。万智自身、狩猟の道へ進んだ理由は、当初ははっきりとしていなかった。ただこれだけはわかる。「撃たれる動物にとっては、撃った人間が男なのか女なのか、お金があるかないか、容姿がどうとか、関係ないんだって。そういうの全部、関係ないところに私は行く」。これは襲われる側にも重なることだ。つまり一歩山に入れば、誰の命も平等にそこに有るだけ。かつて人間と熊との棲み分けはできていた。棲み処を追われた熊は、驚くほど人間くさい。熊を追い立てたのは人間の方。だけど人前に現れた熊は駆除するしかない。熊を前にした万智の精神世界は野蛮で冷静。万智の魂は、このレベルに到達するために狩猟を選んだのだと感じる。言うなれば読む狩猟体験、読書中、五感が冴えわたった。
(ジビエ30種類を味わったライターが語る、狩猟の魅力と「クマ問題」)
あなたはこれまで、カラスを食べたことはありますか? タヌキやキツネはどうでしょう。あまり「食べ物」として想像しにくいこれらの動物も、実はクマやイノシシ、シカと同じく国が定める「狩猟鳥獣」。つまり、機会があれば誰でも食べられる存在です。狩猟鳥獣は現在46種類(2026年1月時点)。ただ、ジビエとして流通・消費されるのはごく一部に限られます。「せっかくなら可能な限り食べてみたい!」と、カラスを含む30種のジビエ食に挑んだのがノンフィクション作家・北尾トロさん。その記録は、著書『ツキノワグマの掌を食べたい! 猟師飯から本格フレンチまでジビエ探食記』(山と渓谷社、2024年)にまとめられています。東日本大震災を機に東京から長野県松本市へ移住し、50代で狩猟免許を取得した北尾さん。ハンターとして野生生物と向き合うなかで、価値観や死生観はどう変わったのか。さらに近年のクマ被害をめぐり、北尾さんが考える「荒唐無稽でも共存に近づくアイデア」を聞きました。── 2011年の震災は、多くの人が生き方を見つめ直すきっかけになりました。30年以上東京で暮らした北尾さんもご家族(妻と娘の3人)と長野に移住。しかし、どうしてまた、狩猟をやってみようと思われたのでしょう?移住してから僕は東京と松本を行き来する生活だったんですが、1年ぐらい経つと、家族は新しい環境に馴染んでいるのに、僕だけ溶け込めていない。かみさんは野菜づくりを始めてイキイキしてるし、娘も友達ができて楽しそうにしている。自分だけ置いてけぼりだぞと焦り出したんです。せっかく信州に来たんだから、ここでしかできないことをやりたい。そこで思いついたのが、狩猟だったんです。じつは、移住直後に「野生動物や猟師の取材をしてみないか」という依頼があったんだけど、知識がないしビビって断っちゃった。それがどこか記憶に残っていて、この機に自分がハンターに挑戦するのは面白いかもと。だからライター根性もありましたよね。── ご家族はさぞびっくりされたのでは?ええ。ハンターへの道で最初に立ちはだかった壁は、家族の理解でしたね。かみさんは、「火薬を使うような銃が家にあるのは物騒でいや」と言う。そこでエアライフル(主に鳥専用)にしたところ、今度は小学生の子どもが、「鳥さんは悪いことをしていないのに、なぜ殺すの」と、素朴な疑問をどんどん投げかけてくる。僕も子どもを説得するために一緒に考えながら、「じゃあスーパーで売られているお肉は良くて、自分で撃った動物のお肉はダメなの? そんなことはないよね。スーパーのお肉だって、食べる人のために誰かが代わりに動物を殺しているんだよ」と理論武装していくわけです。家族を説得したら、次の課題は、狩猟を教えてくれる人を探すことでした。地元の猟友会に連絡すると「50代!? 若いねえ!」とすごく喜ばれたんだけど、エアライフルと言うとがっかりされちゃって(害獣駆除では主に散弾銃を使用する)。── 家族のためにエアライフルにしたら、今度は教えてくれる人探しに苦労されて。そう。そのあと人づてに長野市のラーメン店の主人が猟をすると聞いて、行ってみたら、キジバトとヒヨドリの焼き鳥をポンと出され、それがまあ美味しかった。「エアライフルなら、こういう鳥が獲れるよ。教えられないけど、狩猟について来るのはいいよ」「お願いします!」と。彼はいわゆる猟師っぽくない。どこか文化系で、僕にぴったり。結果的にすごく良い師匠に出会うことができたんです。そうして師匠から銃の構え方や山の歩き方を教わり始めたある日、ついに僕にも川でカモを仕留める絶好のチャンスが来ました。師匠のアドバイスを聞きながら、これは当たるな...と思ったんです。当たったら、鳥は死ぬ。その時、それはしたくないなという思いが僕の中によぎった。でも師匠が見ているので、あからさまに外せない。── 葛藤、ですね。そこでちょっとだけずらし、「外れてくれ」と願いながら撃ったら、片方の羽に当たり、カモは最後の力を振り絞って飛んでったんです。僕は、ああ良かったと。でも師匠は、「結果として最悪です。あのカモは自然界では、もう生きていけないかもしれない。当たったからには、二の矢を打ってとどめを刺さないと」と。傷を負わせ、なおかつ逃がすことを半矢と言うんですが、これは最悪なことだと。なるほどと思いましたね。そのショックで初シーズンは1羽も取れないまま、やってもやっても獲れねえって本を書きました(笑)。── 心の迷いがかえって"相手"を苦しめる...! 狩猟の本質と対峙した1年目ですね。翌年からは、仕留められるようになったそうですが、ご自身で撃ったものは食べましたか?もちろんです。師匠が獲った鳥は残さず食べるという考えなので、その意識は最初から身についていました。自分で解体もできるようにと、初年度から羽をむしるところから解体も教わっていましたから。料理もほぼしたことがないのに、骨で出汁をとったり、心臓やレバーなど内臓もなるべく捨てずに調理したり。全部食べることが供養だと娘に話してきたからには、ちゃんとやっている姿を見せなきゃと。── 自分で仕留めた鳥だけでなく、さまざまな野生動物(ジビエ)を食べるようになったのはなぜでしょう?まず単純に美味しいから。家畜にはない肉本来のガツンとした歯ごたえや野生の旨味がある。個体差があるのも面白い。狩猟の時期やオスとメス、獲る地域によっても脂の乗り方や肉質が違います。シカなら夏ジカ、イノシシやクマはやっぱり秋がいい。家族全員が好きなヤマドリは、標高が高いところで木の実をいっぱい食べているので、淡白だけど脂が乗っててびっくりするぐらい美味しい。売買禁止の鳥だから、猟師だけが楽しめる味でもあるんですよ。野生動物だからこそ当たり外れもあり、いかに美味しく食べるかを考えるのもまた楽しいですよね。── 個体差があるとは新鮮です。一般的には食べるのをためらってしまいそうな鳥獣も食されていますが、そのモチベーションはどこから来るのでしょうか。たとえばカラスとかね。みんな「カラスは不味い。獲るもんじゃない」と言う割に、聞くと実際に食べたことはないんです。言い伝えや噂なんですよ。それなら自分で食べて確かめたいという好奇心がまず一つ。もう一つは、獲ってもいい狩猟鳥獣の中には「不味い」という噂が定着しているものが多い。そうでなくても駆除された獲物は、そのまま土に埋葬されがち。すると、それを掘り起こして食べる動物がいて、また繁殖しちゃうわけです。てことは、やっぱり獲ったら食べるのが基本。僕のすごく個人的な意見だけど、獲ったらなるべく食べようよと思っちゃう。── その結果、さまざまな動物を食し、どんな実感を持たれましたか?先入観がことごとく裏切られましたね。山で暮らしているカラスは赤身で美味しいし、アライグマやアナグマも臭みの原因と言われる外側のあぶらを取るとめちゃめちゃ旨い。ヌートリアやタヌキもふつうに食べられるし、キツネや野ウサギ、テンは筋肉質で肉が少ないけど、そこが好きと言う人もいます。唯一僕が、「うへっ」ってなったのはカワウかな。噛むほどに川の匂いが広がって、これはもう期待通り不味い(笑)。── 不味さが確認できたことも喜びに(笑)。そんなふうに狩猟から調理、食すまで野生動物と近しく触れ合ってきた経験から、近年のクマ被害についてはどう思われますか?まず要因の一つに、ハンターの高齢化で熊があまり獲られなくなり、個体数が増えたことが考えられます。その結果、山のテリトリー争いに負けた弱い個体が里に降りてくる。本来は脂肪が蓄えられるどんぐりを食べて冬眠しなくちゃいけないんだけど、栄養不足で冬眠すらできない熊も出てくる。そう考えると、荒唐無稽かもしれないけど、数十年単位でどんぐりの木を植えたり、不作の年は、森にどんぐりを撒いたりとか、人間が動物と共存できる道を探ったほうがいいと思います。人間側がちょっと偉そうですよね。僕は、邪魔者を排除する・駆除っていう言葉が好きじゃない。そもそも山は彼らのもの。勝手に開発して追い詰めてったのは人間のほうですから。ハンターを10年以上やってきて思うことは、やっぱり彼らのフィールドにお邪魔して、時々恵みとして命をもらっているということ。人間は生き物のエネルギーをもらって、なんとか生きられるわけですから。── 北尾さんにとって、「狩猟」とは何でしょうか?他の趣味と違うのは、命のやり取りがあることでしょうか。鳥に弾が当たった後、走って行くでしょ。するとまだ温かい。すぐに腸を出さないといけないので手を体の中に入れると、すごく熱いんですよ。それがだんだんと硬直してくる。さっきまで生きていたのに、ただの物質になっていく時間がすごくリアルでね。結局人も同じ。生まれて、生きて、死ぬ。そのサイクルをすごく生々しく感じるんです。きれいに言っちゃうと、美しい。僕にとっての狩猟のメリットはそれを実感することかもしれない。自分の死や家族の死と結びつけるのは違うかもしれないけど、死に対する感覚が身近になる。戦場じゃなくても流れ弾に当たったように死ぬ人生もあるでしょうし、案外、命はそんなものかもしれないなとも思う。だったら、明日のために今日を生きるんじゃなく、今日をしっかり生きないと明日は来ないぞっていうふうにも思うようになりましたね。── 最後に今後の目標を教えてください。まだ食べたことのないヒグマやミヤマガラス、タイワンリスなど未知のジビエを味わうこと! そして獲ったら残さず食べる。不味いと決めつけられている鳥獣も、自分の舌で確かめる。そんなハンターでありたいです。ここ数年、ニュースに取り上げられることの多い「クマ被害」の話題は、人間と野生生物との関係性を捉え直す転換点のようにも感じます。命は大事、でも駆除は必要、しかしハンターは不足している。さまざまな見解と課題が複雑に絡み合い、用意に答えを出すことはできないテーマではあります。必要なのは一面ではなく、多角的な視点から問題を捉えてみること。そういった意味で、北尾さんが語ってくれた「ジビエは旨い」「生死の生々しい実感」といった話は、私たちにまた一つ新たな視点を与えてくれるようです。
("ドングリの木"伐採進める県に「シカ目線で見ていない」憤る研究者)
連日、大勢の観光客で賑わう奈良公園。お目当てはもちろんシカです。鹿せんべいをやったり、くつろぐシカの横で写真を撮ったり、奈良公園は野生のシカと人間が共存する、世界的にも珍しい場所です。ところが今、シカの生態が脅かされかねない問題が起きているといいます。北海道大学・文学研究院招へい教員の立澤史郎さん(65)。長年、奈良公園周辺に生息するシカの研究に取り組んできました。そんな立澤さんが最近気になっていることが「切り株」です。(北海道大学 立澤史郎招へい教員)「これは新しいですね。枯れてるからじゃなくて、生きている状態で切られたわけですけど。奥とか右側の切り株は伐採されているんだと思います」。公園内には木の切り株が至る所にあるのです。あちこちに、最近切られたとみられるものが目立ちます。これらは奈良県が伐採したものです。中でもドングリの木が伐採されていることに立澤さんは憤っています。(北海道大学 立澤史郎招へい教員)「(シカが)かなり真剣にドングリだけ狙っている感じですね。ドングリ自体が秋から冬にかけてのシカの主食ですから、食べ物を供給するという点で一番、ドングリの木の伐採は問題になってくる。『誰もシカ目線で見ていないな』というのは非常に思いました」。シカにとって、ドングリは貴重な食料で食べられなくなると冬の生存率に大きく影響するといいます。また食料として以外にも冬を乗り越えるうえで必要なものだといいます。(北海道大学 立澤史郎招へい教員)「奈良は冬の底冷えが結構厳しいんですけど、そういうときはたいてい、大きなドングリの木の下に集まっている。落ち葉がたまった所に乗っかってみんなで寄り添って寒さをしのいでいるんですけど、照葉樹のドングリの大木の根元は、シカにとっては冬を越せるかどうか非常にクリティカル(深刻)なポイントになる環境だと言えます」。なぜ奈良県はドングリの木を伐採するのでしょうか?理由は、2012年に県が策定した「奈良公園植栽計画」にあります。1880年、明治時代に開園した奈良公園。その美しい景観が評価され、1922年には「国の名勝」にも指定されました。ところが、時が経つにつれ公園の木々が大きく成長し景観が損なわれたとして、県は適切な樹木管理として木を伐採し、マツやサクラに植え替えていくことを決めたのです。県はこの計画に基づき2019年から本格的に伐採を始め、これまでに280本の樹木を伐採。このうち40本近くがシラカシやイチイガシなどのドングリの木でした。奈良公園のシカは今、別の問題も抱えています。春夏の主食である「芝」が減ってきているのです。急激に増えた観光客が踏んでしまうことで芝が根っこから切れてしまっています。修復を試みた場所もありますが、3年前の写真と見比べても、変化は一目瞭然です。立澤さんは、こうした食料不足は「シカだけの問題ではすまされない」と指摘します。(北海道大学 立澤史郎招へい教員)「自然の食べ物が減った分、人間に食べ物を依存する。人間に対する『食べ物をくれ』という要求が強まってきて、場合によっては非常に攻撃的になることが考えられます。もうひとつは、食べ物がないんだから、平たん部にいても仕方がないということで、農地の多い公園の外側へ出ていく個体が増える可能性がある。そちら側に出て行ったシカは農作物被害を起こす可能性が高くなると思います。いずれにしても、人とシカの間のトラブルがより強まる可能性があると思います」。市民からもシカの食料不足を懸念する声があがっています。ドングリの木の伐採中止と芝地の回復を求めて市民団体が署名運動を開始。1か月足らずで約2万5000人の署名が集まり、5月、奈良県の山下真知事宛てに要望書を提出しました。計画を進める奈良公園室の担当者に話を聞くと…(奈良県・観光局奈良公園室 奥田篤室長補佐)「ドングリの木は確かに切っているんですが、伐採木の1割ちょっとの本数です。奈良公園には非常にたくさんドングリがなる木があるので、急激にシカが食料危機に陥ることはないと」。シカの数は伐採が始まった2019年以降も減っておらず、食料が不足しているわけではないと主張しました。そして…(奈良県・観光局奈良公園室 奥田篤室長補佐)「当然シカも大事なんですけど、それと同時に奈良公園の景観、これは『名勝』なので文化財で、実は同じくらい重いものです。それをシカだけの考えで進めるのは難しいのかなと」。ドングリの木の伐採について奈良県の山下知事は、5月30日。(奈良県 山下真知事)「(ドングリの木)約1000本のうち(伐採するのは合計で)58本なので、それくらい切ってもほとんど影響がないと思いますけど、仮に微々たる影響があったとしても、奈良公園の外側の山に行ってドングリの実を食べればいいということなので、シカの生態には全く影響がないと認識しております」。一方、北海道大学の立澤さんは、例え1割でもドングリの木が減るとシカに影響があり、人がやる鹿せんべいに依存するシカも出てきているといいます。(北海道大学 立澤史郎招へい教員)「今は鹿せんべいを持っていると(シカが)どっと来ますから。保護が成功したから今のシカの姿があるんですけど、増やした責任は人間にあるので、これからどうするかを人間が責任を持ってうまくバランスをとってやらないといけない」。1000年以上、人とシカが共生してきた奈良。景観を重視する県とシカの専門家の間で意見が割れています。前田春香アナウンサー「両者の意見はそれぞれあるんですけれども、取材をしてどのような印象でしょうか?」。金咲和歌子記者「県の主張もその通りで理解できるんですが、奈良のシカはやはり野生のシカであるということが大きなポイントです。そうした意味で、人間のあげる鹿せんべいに依存するような状況が続くと、野生という意味での価値が低くなってしまうのではないかという指摘が出ています」。前田春香アナウンサー「『観光地の景観を守る』と『シカの命を守る』。非常にバランスが難しい問題ですね。今後について奈良県はどのような方針なのでしょうか?」。金咲和歌子記者「県には鹿の保護について検討する委員会と、奈良公園の景観について考える委員会がそれぞれあって、少し縦割りになっている側面があったそうなので、情報共有をより密にしていくという方針を県も持っています。また、ドングリの伐採が鹿の食料事情にどのように影響を与えたかや、そもそも奈良公園内にシカの餌はどのぐらいあるのかを改めて調査する方針です」。河田直也アナウンサー「これまでに280本の樹木が伐採されているということですが、伐採はさらに続くのでしょうか?」。金咲和歌子記者「ドングリについてはプラス20本ほど、合計で約60本を伐採する計画にはなってはいるのですが、今後伐採を続けていくかどうかも、もう一度検討すると県の担当者は言っていました」。前田春香アナウンサー「非常に難しい問題ではありますが、中野先生、これは放ってはおけないですね」。神戸学院大学・中野雅至教授「どちらにも言い分があると思います。僕は奈良県出身ですが、昔からシカは鹿せんべいに寄って来ましたよ。50年前も60年前もそれほど変わっていないと思います。インバウンドの増加や芝生の面積など、ドングリ以外の要因もやっぱりもっと見た方がいいと思います。ドングリの伐採本数だけを見れば、確かに山下知事がおっしゃる考えも無理はないような気もするので、他の要因も見た方がいいと思います」。
(野生動物との共存は「森と人の暮らし」の再構築から始まる )
近年、全国各地でクマの出没や人身被害が相次ぎ、社会問題となっている。特に令和7年度は記録的な大量出没が見られ、多くの地域で住民に不安が広がった。その背景には、気候変動や凶作といった短期的な要因だけでなく、日本の森林環境の変化、そして地方の過疎化という深く複雑な構造的問題が横たわっている。長岡技術科学大学で野生動物管理工学を研究し、自身が代表を務める法人で鳥獣害対策の社会実装に取り組む山本麻希さんは「獣害対策をしていくには、森と人の暮らしのどちらも環境整備することが大切だ」と説く。研究者でありながら現場主義を貫き、自ら狩猟免許を持ち山に入る山本さんに、クマ大量出没のメカニズム、多様な野生動物の脅威、そして我々人間が向き合うべき「地域社会の在り方」について聞いた。山本さんは、長岡技術科学大学において、大型鳥獣類を対象とした行動生態学と管理工学を専門としている。野生動物の生態を深く知ることが適切な管理につながるという信念のもと、動物の体にセンサーを取り付けて行動を記録する「バイオロギング」という手法や、ドローン、ICTなどの工学技術を駆使した対策手法の開発を行っている。また「大学で研究した結果をスピード感を持って社会実装したい」という思いから、NPO活動などを経て、鳥獣害対策の現場指揮、地域住民への啓発を行う株式会社うぃるこを設立。さらに、未来里山技術機構(NEST)を立ち上げ、獣害対策と持続可能な森林管理、地域経済の活性化をセットにした、包括的な地域創生事業を展開している。山本さんの活動の根底にあるのは「野生動物と人間の共存」という信念。単に動物を駆除すればよいという考えではない。生態学的な知見に基づき、適切な工学技術を開発・導入し、それを運用できる地域の人材を育てることこそが鍵だと考え、様々な活動を行う。2025年、全国的にクマの出没がニュースとなったが、山本さんが拠点を置く新潟県もまた、深刻な状況に見舞われた。山本さんによれば、この大量出没は「起こるべくして起こった」という。直接的な引き金となったのは、ブナの凶作である。専門家たちの間では、夏の時点で山に実がないことが確認されており、「今年は出る」と予測されていた。新潟県では過去、ブナの凶作と連動してクマの出没が増加してきた歴史がある。2025年は、ブナが大凶作だった。しかし、問題は単年の凶作だけに留まらない。より深刻なのは、長期的なクマの分布と行動の変化である。山本さんは、まずクマという動物の生物学的な特性を指摘する。「クマは体重に対する大脳比率が非常に高く、とても学習能力の高い、かなり頭の良い動物なんです」。過去の凶作のたびに、本来は人を避けて奥山で暮らしていたクマたちが里に降りてきた。その際、彼らは成功体験を得てしまったのだ。「降りてきた時に、『柿がおいしかったな』とか『あそこに行けば餌があるな』と、良い思いをしてしまっている。そうすると、餌が少しでも不足するとすぐに降りてくるようになり、やがて山へ帰らずに、人里の近くで暮らす個体も出てくるわけです」。中山間地域の過疎化が事態をさらに悪化させた。里山の手入れがされず、奥山と人里の間が密林化したことで、「帰らなくていい状況」が生まれてしまったのだ。その結果、数十年の時を経て、事態は新たなフェーズに入ったと山本さんは警鐘を鳴らす。「今や里山どころか、民家の裏山に定住して繁殖する個体が定着してしまいました。彼らは人間の里近くで生まれ育ち、奥山の暮らしを知らない世代なのです」。さらに、山本さんが新潟県における大量出没の最大の原因として挙げるのが、森林環境の劇的な悪化、具体的には「ナラ枯れ」である。「新潟県ではカシノナガキクイムシが媒介する伝染病によって木が枯れる『ナラ枯れ』が発生しており、県の調査によると2002年から2010年にかけて大蔓延しました。多い年には5万本から10万本にも及び、全県に被害が広がったのです」。森林面積の多くを広葉樹が占める新潟県において、その被害は甚大だ。この喪失が、クマの生態に致命的な影響を与えた。本来、クマは高標高のブナが凶作の際には、より低標高にあるナラ(ドングリ)を食べて飢えをしのいでいたからだ。「かつては里山のナラが、クマたちの『セーフティーネット』として機能していました。しかし、ナラ枯れによってそのセーフティーネットがごっそりと消滅してしまったのです」。食べるものを失ったクマは、生きるために集落へと溢れ出すしかなかった。2006年以降、クマの大量出没が常態化してしまった背景には、このナラ枯れによる餌資源の枯渇が深く関係している。山本さんが長岡技術科学大学で研究をするようになったのも、新潟でのクマの大量出没がきっかけだった。幼少期から無類の動物好きで、実家では多くの保護犬や猫と暮らしていた山本さん。大学院ではペンギンなどの潜水行動を記録する研究に没頭し、博士号を取得した。しかし当時は「野生動物管理」が職業として成立していない時代。「仕事にならない」と研究者の道を一度断念し、高校教師として働いていた。転機は2006年。新潟県でクマが大量出没し、およそ500頭ものクマが捕殺されたニュースを目にしたことだった。「隣の長野県では科学的な管理が行われているのに、新潟ではあまりに多くのクマが殺されている。生態学者として『絶滅してしまうのではないか』と愕然としました」。このままではいけない──。山本さんは当時関わりのあった長岡技術科学大学に直談判し、「一番クマが出ているこの地域で、科学的見地から意見できる人間が必要だ」と訴えた。その熱意と実績が評価され、工学系の大学に生態学のポストが作られるという異例の形で、山本さんは再び研究の世界へ戻ることになった。新潟のクマ問題がなければ、現在の山本さんの活動は存在しなかったかもしれない。クマ対策について、科学的データに基づいた「順応的管理」と、徹底した「ゾーニング」の必要性を提唱している。まず課題となるのが、個体数管理の指標だ。野生動物の管理計画を立てる際、しばしば「何頭いるか」という推定生息数が議論の土台となる。しかし、広大な山林を移動する野生動物の正確な数を把握することは、科学的に極めて難易度が高い。そこで山本さんが推奨するのが、絶対数そのものではなく「トレンド(増減傾向)」を重視するアプローチだ。「正確な生息数を出すことは非常に難しく、推計にはどうしても大きな誤差が含まれます。そこで重要になるのが、『増えているか、減っているか』というトレンドを見ることです。新潟県では県内120箇所に自動撮影カメラを設置し、そこに写る頻度を指標として活用しています」。カメラに写る頻度が上がっていれば「増えている」と判断して捕獲圧を強め、下がっていれば緩める。このデータを元に、柔軟に対応を変えていく「順応的管理」こそが、不確実性の高い自然界に向き合うための現実的な手法という。さらに山本さんは、対症療法的な管理だけでなく、根本的な環境整備の重要性を説く。ナラ枯れで傷んだ森を再生させることだ。しかし、そこには「時間」という壁が存在する。「ナラの森を更新させるには、一度木を伐採して光を入れ、育林しなければなりません。それには30年という長い歳月がかかります。ですが、クマに対して森が戻るまで30年待ってくれとは言えません」。森が回復するまでの過渡期、そして人里にクマが定着しつつある現在において、どう共存を図るか。そこで不可欠となるのが、人とクマの生活圏を分ける「ゾーニング」という考え方だ。緩衝帯をどの程度の広さで設けるかは、地形や地域の実情によって異なり、専門家の間でも議論があるところだ。しかし、山本さんは「メスグマの行動圏」を一つの基準として考えるべきだと指摘する。「クマ、特にメスの行動圏はだいたい直径3キロから5キロメートルくらいと言われています。つまり、集落から5キロ以内の裏山にメスが定着してしまうと、その集落はすっぽりと生活圏に入ってしまうことになります」。もしその距離感でメスが定着し、子供を産んでしまうと、その子グマは最初から人を恐れない「新世代グマ」として育ってしまう。そのため山本さんは、単に草を刈ればいいという話ではなく、個体の性質を見極めた厳しい管理が必要だと訴える。「集落の近くを行き来しているだけの『通りすがり』の個体であれば、追い払いや電気柵で対応できます。しかし、集落周辺の裏山に定着してしまった個体に関しては、住民の安全を守るために、厳しく山へ押し返すか、場合によっては捕獲して排除する必要があります。ここに関しては、『かわいそう』という愛護の視点だけでは、地域住民の暮らしは守れません」。人と野生動物、双方が不幸にならないための境界線を引くこと。その覚悟を山本さんはこう表現する。「動物たちは決して『悪者』ではないということです。クマだって、人を襲いたくて降りてきているわけじゃありません。お腹が空いて、生きるために必死で餌を探しているだけなんです。それでも、里に定着してしまったクマに対しては、残念ながら心を鬼にして管理しなければなりません。でも、排除して終わりではないんです。同時に長い時間をかけて奥山の環境を整え、クマが本来帰るべき場所を作ってあげる。この個体管理と環境整備の両輪を回していくことこそが、私たち人間に求められている責任なんです」。日本の野生動物問題はクマだけに留まらない。山本さんは、シカ、イノシシ、アライグマ、サルといった動物たちもまた、それぞれ異なる形で脅威となっていることを指摘する。「シカは一度減ったかと思われましたが、再び増加傾向にあり、被害が減らない状況にあります。また、イノシシも豚熱で一時的に減少したが、繁殖力が高くすでに個体数が回復しつつあります」。特にシカについて、山本さんはその「食性の広さ(可塑性)」に恐怖を感じているという。「シカは餌がなくなると、それまで食べられなかったものを食べるようになるんです。例えばシカが嫌いなマムシグサのような、針がいっぱいで毒のある植物でさえも食べてしまう事例が出ています。最後は本当に森を全部食い尽くすまで増えてしまう動物なんです」。森の下草を食い尽くされると、土壌が露出し、土石流などの災害を引き起こす原因となる。日本の森林生態系を根底から破壊しかねない存在として警戒している。また、次に山本さんが警鐘を鳴らすのが、特定外来生物のアライグマだ。1970年代に放送されたテレビアニメブームでペットとして輸入されたが、その実態は愛らしいイメージとは程遠いという。「非常に凶暴で、ペットとして全く不向きで、飼いきれなくなった人たちが放してしまった結果、爆発的に広がりました」。アライグマは雑食で繁殖力が高く、日本の在来生態系に壊滅的な打撃を与える。タヌキやアナグマを駆逐し、絶滅危惧種であるサンショウウオやカエルなどの両生類を根こそぎ捕食してしまう。「彼らは木登りがとても得意なので、フクロウやサギ類の巣を襲って、一晩でコロニーを全滅させてしまうこともあります。彼らに罪はないですが、生態系からの根絶を目指さないと、日本の自然が大変なことになります」。これら全ての獣害問題に通底する根本的な課題について、山本さんは「獣害対策の技術自体は、もうすでに確立されているんです。問題は、それを実行する『人』が地域にいないこと。これに尽きます」と話す。例えば、イノシシ対策の電気柵。正しく設置すれば被害は防げるという。しかし、電気柵は一度設置して終わりではない。伸びた雑草が電線に触れると、そこから電気が地面に逃げる漏電が起きて電圧が下がり、動物を撃退できなくなってしまう。つまり、効果を維持し続けるには、柵の下の草を刈り続けるという、地道なメンテナンスが欠かせない。山本さんは、現場の実情をこう嘆く。「電気柵を張れば止まるのは分かっています。でも、誰がその下の草刈りをするのでしょうか。管理をするための労働力が、もう農村には残っていないんです。80歳のおじいちゃん、おばあちゃんに、急斜面で草刈りをしろなんて言えませんから。最大の問題は、日本の人口が異常なまでに都市部に一極集中してしまっていることです。地方に人がいなくなり、山の手入れをする人が消えた。その空白地帯に野生動物が進出しているのが現状です」。近年、この流れを変えるべく、地方自治体では「地域おこし協力隊」などの制度を活用し、外部からの人材導入や関係人口の創出に力を入れている。しかし、山本さんは現場を見てきた人間として、そこにある厳しい現実を指摘せずにはいられない。「協力隊の3年が終わった後、どうやって生活していくのか。田舎で暮らすには、やりがいだけではダメなんです。家族を養えるだけの経済基盤がなければ、優秀な若者はまた都会へと流出してしまう」。地域に産業がなく、仕事がない。この「稼げない」という現実こそが、獣害対策の担い手不足を招き、結果として野生動物との境界線を崩壊させている。「稼げる仕事」として鳥獣対策を確立するためには、日本の社会システムそのものをアップデートする必要がある。山本さんは、欧米との決定的な違いをこう説明する。「欧米では、ワイルドライフ・マネジメント(野生動物管理)が社会システムの中に組み込まれている国もあります。例えばイギリスでは、土地所有者(貴族などが多い)が、そこに住む生き物も管理する責務を負うという考え方になっています。ドイツでは、フォレスターという日本と同じような森林を管理するプロフェッショナルの職業の方がおり、彼らは森の管理とともにそこに住むシカの個体数も管理する役割を担っているようです。そしてアメリカ合衆国では、州の野生生物担当機関が管理の中心を担い、調査・モニタリング等の科学的データに基づいて施策を進めます。州機関が比較的安定した資金基盤を持つことが、専門人材の雇用や科学に基づく管理を支える構造になっています」。ひるがえって、日本はどうか。山本さんがかつて「そんな職はない」と言われたように、日本社会には野生動物管理を職業として遇する文化が存在しなかった。「日本には明治期以降、禿山になるまで木を切り、動物を獲り尽くしてしまった『野生動物があまりいなかった時代』が長く続きました。そのため、昭和40年代から取られた保護偏重の政策が続いていました。その後、1999年に科学的データに基づく順応的管理が導入されたり、2014年に『鳥獣保護管理法』へ改正されたりと、制度のアップデートは行われてきましたが、管理へと舵を切るのがあまりにも遅すぎたように感じています。結果として、今の自然環境の変化に対して、社会の仕組みが追いついていないんです」。森が戻り、動物が増えた現代において、科学的に「管理する」専門家が必要不可欠だ。一方で、獣害対策だけで生活することは現実的に難しい。そこで 山本さんは未来里山技術機構(NEST)で、森林管理や森の恵みを活用した地方創生業務を行い、地域経済を回すことを目指している。「森を整備し、そこから得られる木材で収益を上げつつ、森を育てる『育林』の価値に賛同してくれる企業からのスポンサーシップも募る。そうして得た資金で、森を守る専門家を雇う。さらに、そのプロセス自体をスタディツアーとして都市部の住民に販売し、学びの場を提供する。そうやって、獣害対策をしながら、地域で稼げる状況を作りたいと考えています」。この春、山本さんは大きな決断を下す。長年勤めた長岡技術科学大学を退職し、自身が立ち上げた事業による地域活性化に、活動の軸足を移す。「私は新潟のクマ問題がきっかけで、大学にポストを作ってもらってここに来ました。そして今、そのクマ問題を本格的に解決するために、大学を出ていくんです。結局、地域で経済が回らないと人は戻らないし、獣害もなくなりません。現場に出て、ビジネスを作って、獣害対策プラスアルファ、農業プラスアルファのように、地域で食べられる仕組みを作っていきたいい。森と人の暮らしを守るためには、私が実業でやりきらないといけないと思ったんです」。クマの大量出没は、我々に突きつけられた警告である。それは単に「動物が増えた」という話ではない。人間が森を利用しなくなり、地域社会から人が消え、自然と人間の境界線が崩壊したことの証左だ。しかし、その危機感は都市部の人には実感が持ちづらいものかもしれない。山本さんは、ぜひ現場を見てほしいと話す。「ニュースを見て『クマがかわいそう』と言うだけでなく、ぜひ現場に来て見てほしいんです。インターネットやAIで得られる知識は断片的です。実際に里山に足を運び、荒れた森を見て、畑を荒らされて途方に暮れるお年寄りの話を聞くこと。あるいは、対策に汗を流す人々と触れ合うこと。現場に来て、地域の人と話をしてみてほしい。そのリアルな体験こそが、野生動物との真の共存とは何かを考える出発点になります」。
(農業用倉庫内でクマ1頭目撃、緊急銃猟で駆除:山形)
酒田市によりますと、25日午前6時前、山形県酒田市中野俣の農業用倉庫内でクマ1頭が目撃されました。地区の住民から警察に通報があったということです。クマは午前11時前、緊急銃猟で駆除されました。駆除されたクマはメスの幼獣で、体調73センチメートル、体重20キログラムでした。
(“迷い”シカ「何かの縁」、能勢温泉が受け入れ:大阪)
大阪市内で目撃が相次いだシカについて、大阪市は27日午後に、大阪府能勢町にある「能勢温泉」に移送しました。今月21日以降大阪市内で目撃が相次いだシカは、25日大阪市城東区で捕獲され、市の施設で一時的に保護されていました。奈良公園から移動してきた可能性もあり、大阪市は当初、受け入れについて奈良県と調整しましたが、奈良県側の難しいという見解をうけ、大阪府内の施設と調整を進めてきました。大阪府能勢町の「能勢温泉」は、かつて敷地内に迷い込んだシカの世話をした経験があり、大阪市が依頼したということです。能勢温泉の西山竜也社長は「何かの縁で来てくれた。言葉は通じないが『ここに来てよかった』と思ってもらえるように、良い環境を作っていきたい」とし、受け入れに向け、敷地内にあるキャンプ場の一角に柵を設置し、木を植えて環境を整えるなど準備を進めたということです。大阪市の横山市長が26日夜、シカの名前について自身のSNSでアンケート実施したところ、吉村知事が提案した「シカやん」が過半数を占めました。能勢温泉の西山社長は市長の意向に沿いたいとしています。
(残雪期のヒグマを探せ、春季管理捕獲を実施中:北海道)
石狩市は残雪期に人里に現れるヒグマを捕らえる「春季管理捕獲」を、厚田、浜益両区で5月末まで実施している。今月30日現在、市内での目撃通報は無いが、両区の山中でハンターがヒグマとみられる動物の足跡を見つけており、冬眠明けのヒグマが出没する可能性が高まっている。市内では昨年1年間で、史上最多の7頭を駆除しており、市は「市街地や集落付近での出没抑制につなげたい」としている。
(民家敷地内にクマ、わなで捕獲:福島)
31日午前9時50分ごろ、会津若松署員が会津美里町旭寺入の民家の敷地内でクマ1頭を発見した。クマは、約5時間40分後に近くにある蔵の中で町が設置したわなで捕獲された。けが人や物的被害はなかった。同署会津美里分庁舎によると、クマの体長は約0.5メートル。3月30日に現場近くでクマの目撃情報が寄せられていたことから、周辺を警戒していた署員が発見した。連絡を受けた町が、蔵の中に侵入したとみられるクマをわなを使って捕獲したという。現場周辺は山あいの地域で、民家の敷地がやぶに隣接している。住人の男性は「クマは蔵の基礎部分に開いている穴から入り込んだようだ。小さいとはいえ怖かった。捕まって良かった」と安堵(あんど)の表情を見せた。
(小学生の尾瀬宿泊体験学習、相次ぐ熊出没で休止決定:新潟)
魚沼市は、市内の全小学校が尾瀬で毎年実施している宿泊体験学習を、2026年度は休止すると決めた。相次ぐクマの出没を受け、児童の安全を考慮した措置で、26年度はガイドが映像を使って自然環境を説明するなど、座学での代替案を検討している。魚沼市は10年度から、5年生を対象にした宿泊体験学習「魚沼尾瀬学校」を実施。豊かな自然や環境保全の大切さを児童に知ってもらい、郷土への誇りや自然愛護の心を育むことを目的とする。例年6~7月ごろ、魚沼市から船とバスを乗り継いで尾瀬に向かい、ガイドの案内で尾瀬沼周辺を散策するなど、1泊2日の環境学習を行ってきた。
(ジビエ活用、県推進:島根)
野生動物の食肉利用(ジビエ)の活用を推進するため、島根県が2026年度、野生イノシシのジビエに必要な豚熱(CSF)のPCR検査体制を構築する。
(鹿肉ソーセージ、観光協会認定の特産品に加わる:長野)
伊那市高遠町の信州高遠ジビエ加工センターの鹿肉ソーセージが新たに、市観光協会が市の特産品を認定する「信州伊那のすぐれもん」に登録された。粗びきの鹿肉ミンチにハーブと少量の豚肉を加え、ジューシーさと食べやすさを両立させた。
(ジビエ丼お肉ほろほろ:石川)
白山の山あいで「ジビエ」を使った丼ものや地元の巨大ナメコを使った料理が楽しめる。築100年の古民家らしく「実家」のぬくもりを感じる店内は、大きなクマの毛皮やシカの角が飾られ、猟師の家にお邪魔したような雰囲気もある。人気メニューはシカ肉のロースト丼(イノシシ肉も)(税込み1680円)。60度前後の低温で2時間以上かけて加熱し、柔らかい肉質に仕上げたジビエが県内産米にのり、ナメコやタマネギをいためた特製ソースがからむ。肉は口の中に入れると、ほろほろとほどけていく。付け合わせの生卵をかけるとまろやかになるが、今度はワサビがつんとしたアクセントになり、ボリュームはあるが飽きがこない。スタッフの馬嶋礁也さん(26)は「ジビエは臭いがあるというのはイメージだけで臭みはない」と話す。ジビエ初心者にも食べやすい。食堂は2021年、ジビエ加工や地元の自称「日本一でっかいなめこ」(長さ10センチ前後)、食用羊の生産を行う「山立会」(白山市)がオープンした。店では全国的にシカなどが作物を荒らす獣害が相次ぐ中、捕獲して安全に解体処理されたものを使う。時々、クマのどて煮がメニューに並ぶこともある。馬嶋さんは「里山での暮らしを感じながら味わってほしい」と話している。
(エゾシカ肉の食肉処理場がビストロフレンチをオープン:北海道)
エゾシカやヒグマなどを取り扱う食肉処理場を経営する株式会社Mt.がBistro Montagne(ビストロ モンターニュ)を2026年4月10日(金)にグランドオープンする。Bistro Montagneでは、北海道の山の恵みであるジビエや山菜、季節の野菜を使用したメニューをお届けし、日常の中の小さなご褒美を感じるような一皿と時間を提供します。アラカルトを中心としたメニュー構成で、お客様のお好みでメインの料理を選ぶことのできる「自分だけの一夜」をフレンチで楽しんでいただけるお店です。また、エゾシカ肉によく合うピエモンテバルベラ(2023)をはじめとする多彩なワインを取り扱い、ドリンクと料理のペアリングをご堪能いただくことができます。
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